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特開2024-56751抗炎症療法に応答しやすい対象を特定するための可溶性TREM-1レベルの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056751
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】抗炎症療法に応答しやすい対象を特定するための可溶性TREM-1レベルの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/10 20060101AFI20240416BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K38/10
G01N33/53 D ZNA
A61P29/00
A61P31/04
A61P37/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011668
(22)【出願日】2024-01-30
(62)【分割の表示】P 2021542268の分割
【原出願日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】18306277.7
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521127963
【氏名又は名称】イノトレム
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デライブ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ,オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】カーラスコ,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】コッホ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】サルセド-マギウッリ,マルガリータ
(72)【発明者】
【氏名】ボウフェンザー,アミール
(72)【発明者】
【氏名】ジョリー,ルシエ
(72)【発明者】
【氏名】ガロー,ジーン-ジャック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】TREM-1阻害剤に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象を特定するための方法に関し、特に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害に罹患し、治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすいヒト対象を特定するためのin vitro方法を提供する。
【解決手段】本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルがステップb)の所定のsTREM-1値よりも高い、炎症性障害に罹患しているヒト対象を、治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)を用いて測定される骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルが1050pg/mLより高いか、または別のイムノアッセイを用いて測定される対応する値を有するヒト対象における急性炎症性障害の治療に使用するための、ナンギボチドを含む医薬組成物であって、ナンギボチドが配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するTLT-1ペプチドであり、前記急性炎症性障害が敗血症性ショック、敗血症、または全身性炎症反応症候群(SIRS)である、医薬組成物。
【請求項2】
前記急性炎症性障害は、敗血症性ショックである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記sTREM-1のレベルは、sTREM-1の血液のレベルである、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記sTREM-1の血液のレベルは、sTREM-1の血清のレベルまたはsTREM-1の血漿のレベルである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ナンギボチドは、少なくとも24時間の投与用である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ナンギボチドは、1時間当たり体重1kg当たり0.1mg(mg/kg/h)から2.5mg/kg/hの範囲で連続注入により投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ナンギボチドは、0.3mg/kg/hから1mg/kg/hの範囲の用量で連続注入により投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト対象、特に治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすいヒト対象の亜集団における炎症性障害、好ましくは急性炎症性障害の治療に関する。したがって、本発明は、炎症性障害、好ましくは全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害に罹患し、治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすいヒト対象を特定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、全身性炎症および広範な組織損傷を特徴としている。SIRSは、感染性起源または非感染性起源のいずれかの非特異的傷害に対する応答として発生し得る。非感染性起源の傷害の例としては、これらに限定されないが、外傷、熱傷、膵炎、自己免疫疾患、および外科手術が挙げられる。感染性起源の傷害の例としては、細菌感染症、真菌感染症、およびウイルス感染症が挙げられる。
【0003】
敗血症は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全として定義されている(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。したがって、敗血症は、感染に対する身体の応答が自身の組織および臓器を傷つけ、最終的には症例の30~50%で死に至る場合に生じる(Fleischmannら、Dtsch Arztebl Int.2016年3月11日;113(10):159-66)。さらに、多くの生存者は敗血症後症候群に罹患しており、敗血症後の感覚、外皮、消化、呼吸、胸痛、腎臓および筋骨格の問題の増加が報告されている(Huangら、Int J Qual Health Care.2018年6月19日)。世界保健機関(World Health Organization)によれば、敗血症は世界で毎年3,000万人以上に影響を及ぼし、600万人が死亡に至る可能性があると推定されている。
【0004】
敗血症性ショックは、敗血症のサブセットとして定義され、特に深刻な循環器、細胞、および代謝の異常は、敗血症のみの場合よりも高い死亡リスクと関連している(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。臨床的に、敗血症性ショックの患者は、(i)65mmHg以上の平均血圧を維持するために昇圧剤の使用を必要とする、適切な輸液蘇生後に持続する低血圧に罹患している、かつ(ii)2mmol/Lを超える血清乳酸値を有する敗血症患者として特定され得る(Shankar-Hariら、JAMA.2016年2月23日;315(8):775-87)。
【0005】
現在、敗血症または敗血症性ショックの特定の原因治療は存在していない。したがって、患者の管理は主に早期認識に依存しており、これにより、適切な抗生物質の投与、必要な場合のソース制御手段、ならびに必要な場合の静脈内輸液および血管作用薬による蘇生など、正しい治療手段を迅速に開始することが可能になる(Cohenら、Lancet Infect Dis.2015年5月;15(5):581-614)。エンドトキシンおよびTLRを標的とする治療法などの治療を開発する以前の試みは奏功しなかった(Cuvierら、Br J Clin Pharmacol.2018年6月8日)。
【0006】
近年、出願人は、TREM-1(骨髄細胞で発現されるトリガー受容体-1)経路を標的とする治療法を開発した。TREM-1は、自然免疫細胞(単球/マクロファージ、好中球、血小板、樹状細胞)および内皮細胞によって発現される免疫受容体である。TREM-1の活性化により、急速な好中球の脱顆粒および酸化的バーストと共に、サイトカインおよびケモカインの産生がもたらされる。TREM-1の機能は、Toll様受容体(TLR)などの病原体認識受容体(PRR)と相乗作用することにより、豊富な免疫応答を引き起こすために、炎症を活性化/開始するのではなく、調節/増幅することである。特に、TREM-1経路は、敗血症および敗血症性ショックの病態生理学に関与している。したがって、出願人は、TREM-1阻害剤、すなわち、TREM-1活性を阻害する短鎖TLT-1(TREM様転写物-1)ペプチドが、炎症性障害、特に全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害の治療に使用され得ることを示した(WO2011/124685)。TLT-1(Trem様転写物-1)は、TREMファミリーのメンバーである受容体であり、巨核球および血小板によってのみ発現する。
【0007】
しかし、TREM-1阻害剤がSIRS、敗血症、または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害の治療に最大の治療効果をもたらすためには、治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすい急性炎症性障害に罹患しているヒト対象を特定する必要が依然としてある。特に、治療法、特にTREM-1活性を阻害するTLT-1ペプチドに応答しやすいSIRS、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害に罹患しているヒト対象を特定する必要が依然としてある。
【0008】
出願人は、現在、敗血症性ショックに罹患しているヒト対象からの生物学的サンプル中の可溶性TREM-1(sTREM-1)のレベルを測定し、それらの測定されたsTREM-1レベルを所定のsTREM-1値と比較することにより、TREM-1阻害剤に応答しやすい敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定できることを示している。特に、出願人は、敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の参照集団において所定の中央値sTREM-1レベルよりも高い循環レベルのsTREM-1を有する敗血症性ショックに罹患しているヒト対象が、TREM-1活性を阻害するTLT-1ペプチドの投与に応答し、したがってそれらから利益を得る可能性が高いことを示している。
【0009】
したがって、本発明は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害に罹患し、治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすいヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルがステップb)の所定のsTREM-1値よりも高い、炎症性障害、好ましくは、SIRS、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害に罹患しているヒト対象を、治療法、特にTREM-1阻害剤に応答しやすいとして特定することと、を含む。
本発明はまた、それを必要とする対象における、炎症性障害、好ましくは、SIRS、敗血症または敗血症性ショックなどの急性炎症性障害の治療に使用するための治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に関し、対象からの生物学的サンプル中で測定され、所定のsTREM-1値よりも高いsTREM-1のレベルは、対象が治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいことを示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明は、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルがステップb)の所定のsTREM-1値よりも高い、炎症性障害に罹患しているヒト対象を、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0011】
一実施形態では、ステップb)の所定のsTREM-1値は、参照集団から得られる。一実施形態では、参照集団は、炎症性障害、好ましくは全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト患者の集団である。
【0012】
一実施形態では、ステップb)の所定のsTREM-1値は、参照集団におけるsTREM-1中央値、または参照集団におけるsTREM-1の第3の四分位数である。
【0013】
一実施形態では、ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルは、治療法の開始前に、好ましくはTREM-1阻害剤の投与前に測定されるレベルである。一実施形態では、ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルは、炎症性障害のためのヒト対象の診断または入院後の最初の24時間以内に測定される。
【0014】
一実施形態では、生物学的サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、または血漿サンプルである。
【0015】
一実施形態では、ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルはタンパク質レベルであり、好ましくはELISA、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)または酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)とも呼ばれるエレクトロケミルミネッセンス(ECL)によって測定される。
【0016】
一実施形態では、治療法は、好ましくはTREM-1の機能、活性または発現を阻害するペプチド、TREM-1および/もしくはsTREM-1、またはTREM-1および/もしくはsTREM-1リガンドに向けられた抗体、TREM-1の機能、活性または発現を阻害する小分子、TREM-1に向けられたsiRNA、TREM-1に向けられたshRNA、TREM-1に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチド、TREM-1に向けられたリボザイムおよびTREM-1に向けられたアプタマーからなる群から選択される、TREM-1阻害剤の投与を含む。一実施形態では、治療法は、TREM-1阻害剤の投与を含み、TREM-1阻害剤は、sTREM-1リガンドを標的とするペプチド、好ましくは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施形態では、治療法は、TREM-1阻害剤の投与を含み、TREM-1阻害剤は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0017】
一実施形態では、治療法は、TREM-1阻害剤であり、好ましくは、TREM-1の機能、活性または発現を阻害するペプチド、TREM-1および/もしくはsTREM-1、またはTREM-1および/もしくはsTREM-1リガンドに向けられた抗体、TREM-1の機能、活性または発現を阻害する小分子、TREM-1に向けられたsiRNA、TREM-1に向けられたshRNA、TREM-1に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチド、TREM-1に向けられたリボザイムおよびTREM-1に向けられたアプタマーからなる群から選択される。一実施形態では、TREM-1阻害剤は、TREM-1リガンドを標的とすることにより、TREM-1の機能、活性または発現を阻害するペプチド、好ましくは配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである。一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0018】
一実施形態では、炎症性障害は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症および敗血症性ショックを含む群から選択され、好ましくは、炎症性障害は敗血症性ショックである。一実施形態では、ヒト対象は、少なくとも2ポイントの逐次臓器不全評価(SOFA)スコアの急性変化として定義される臓器機能不全に罹患している。
【0019】
一実施形態では、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、治療法の投与後、好ましくはTREM-1阻害剤の投与後に逐次臓器不全評価(SOFA)スコアの低下を有しやすいヒト対象である。一実施形態では、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすい敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、治療法、好ましくは、TREM-1阻害剤の投与期間内または投与期間後に低血圧ショックを逆転させやすい敗血症性ショックに罹患しているヒト対象であり、低血圧ショック逆転は、24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないこととして定義される。
定義
【0020】
本発明において、以下の用語は以下の意味を有する:
【0021】
数字の前の「約」には、その数字の値のプラスマイナス10%、またはそれ以下が含まれる。「約」という用語が指す値は、それ自体も具体的に、好ましくは開示されることを理解されたい。
【0022】
「APACHEII」は「急性生理学および慢性健康評価II」を指す。APACHEIIは、集中治療室に入院した成人患者の疾患の重症度を評価し、その予後を判断するために一般的に使用されるスコアリングシステムである。APACHEIIは、12の日常的な生理学的測定値(すなわち、変数)、年齢、および以前の健康状態の初期値に基づく0~71の範囲のポイントスコアを使用して、疾患の重症度の一般的な測定値を提供する(Knausら、Crit Care Med.1985年10月;13(10):818-29)。
【0023】
「APACHEIII」は「急性生理学および慢性健康評価III」を指す。APACHEIIIは、重症の入院成人の病院死亡リスクをより正確に予測するために、APACHEIIスコアリングシステムから再定義されたスコアリングシステムである(Knausら、Chest.1991年12月;100(6):1619-36)。APACHEIIIスコアリングシステムは、APACHEIIスコアリングシステムに類似しているが、いくつかの変数は、APACHEIIスコアリングシステムで使用される変数に追加され、17の変数が0~299の範囲のポイントスコアに計算される。
【0024】
「APACHEIV」は、「急性生理学および慢性健康評価IV」を指す。APACHEIVは、短期死亡リスクを推定するため、ならびに集中治療室(ICU)の滞在の長さを予測するための、改善され、更新されたモデルである(Zimmermanら、Crit Care Med.2006年5月;34(5):1297-310)。APACHEIVスコアリングシステムでは、特に人工呼吸、血栓溶解、鎮静がGlasgow昏睡スケールに及ぼす影響、再スケーリングされたGlasgow昏睡スケール、PaO/FiO比、および疾患固有のサブグループなど、より多くの変数が考慮される。APACHEIVでは、0~286の範囲のポイントスコアを使用する。
【0025】
「エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)」は、シグナルの検出がエレクトロケミルミネッセンス、すなわち、発光化学発光反応の前に電気化学反応が起こる化学発光の形態に基づくイムノアッセイを指す。
【0026】
「輸液療法」とは、特に水と電解質のバランスに関して、体液の容量および組成を正常まで回復させる、かつ/または維持することを目的とした治療法を指す。したがって、輸液療法は、容量および/または電解質の不足を修正および/または予防することを目的としている。
【0027】
「免疫不全」とは、例えば感染症または癌と戦うために、正常な免疫応答を発達させる能力が損なわれているか、または完全に欠如している対象を指す。同様に、「免疫低下」とは、例えば感染症または癌と戦うために、正常な免疫応答を発達させる能力が損なわれている対象を指す。「免疫抑制された」とは、特に免疫抑制療法の投与によって、免疫系の活性化または有効性が低下している対象を指す。例えば、対象における免疫抑制は、PD-1レベルの測定、循環IL-7レベルの測定、またはHLA-DRの測定により評価され得る。
【0028】
「測定すること(measuring)」または「測定(measurement)」、あるいは「検出すること(detecting)」または「検出(detection)」は、所与の物質、すなわち、ヒト対象からの生物学的サンプル中でのsTREM-1の存在、不在、数量(quantity)、または量(amount)(有効量であり得る)を評価することを意味する。本明細書で使用される「測定すること」または「測定」、あるいは「検出すること」または「検出」は、生物学的サンプル中およびヒト対象中の物質、すなわち、sTREM-1の定性的または定量的濃度(例えば、血中濃度または血漿中濃度)を導出することを含む。
【0029】
本明細書で使用される「臓器機能不全スコア」または「臓器機能不全スコアリングシステム」は、入院時、特にICUまたは救急室に入院時に、ヒト対象、特にSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象における臓器機能不全を評価するために使用されるスコアを指す。臓器機能不全スコアの例としては、これらに限定されないが、SOFAスコア、qSOFAスコア、MODS(多臓器不全スコア)、P-MODS(小児多臓器不全スコア)、およびLODS(ロジスティック臓器不全システム)が挙げられる。
【0030】
「qSOFAスコア」とは、クイックSOFAスコア(quickSOFAとも呼ばれる)を指す。qSOFAスコアリングシステムは、次の3つの基準:呼吸数≧22呼吸/分、意識障害(Glasgow昏睡スケール<15)、および収縮期血圧≧100mmHgに依存する(Seymourら、JAMA.2016年2月23日;315(8):762-74)。
【0031】
「分位数(複数可)」とは、(a)集団で行われた観測値/測定値を同じサイズのグループに分割するカットオフ値(複数可)を指し、各グループは、等しい割合(パーセンテージ)の前述の観測値/測定値を構成する。したがって、本明細書で使用される場合、「分位数(複数可)」は、参照集団のヒト対象の各々由来の生物学的サンプル中で測定されたsTREM-1レベルをそれぞれ等しいサイズのグループに分割するカットオフsTREM-1値(複数可)を指し、それぞれ、等しい割合(パーセンテージ)のsTREM-1レベルの測定値を含む。換言すると、「分位数(複数可)」とは、カットオフsTREM-1値を指し、その上下には参照集団で測定されたsTREM-1レベルの所定の割合(パーセンテージ)が存在する。例えば、本明細書で使用する場合、「四分位数」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを4つのグループに分割する3つのカットオフsTREM-1値を指し、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%を含む。「分位数」は、カットオフ値によってそのように定義されたグループを指すこともあることに留意されたい。例えば、「四分位数」は、3つのカットオフsTREM-1値によって定義され、そのように参照集団で測定されたsTREM-1レベルを分割する4つのグループを指す場合もある。しかし、本書で使用されているように、特に明記されていない限り、「分位数」という用語はカットオフ値を指す。
【0032】
「SAPS」は、「簡略化急性生理学的スコア」を指す。SAPSは、ICU患者の死亡リスクを反映するスコアリングシステムである。SAPSは、14の生物学的変数および臨床的変数に依存する(Le Gallら、Crit Care Med.1984年11月;12(11):975-7)。
【0033】
「SAPSII」は、「簡略化急性生理学的スコアII」を指す。SAPSIIは、集中治療室(ICU)に入院した成人患者の院内死亡率を推定するためのスコアリングシステムである。SAPSIIには、17の変数が含まれ、12の生理学変数、年齢、入院の種類、および基礎疾患に関する3つの変数である(Le Gallら、JAMA.1993年12月22~29日;270(24):2957-63)。SAPSIIでは、0~163の範囲のポイントスコアを使用する。
【0034】
「SAPS3」は、「簡略化急性生理学的スコアIII」を指す。SAPS3は、集中治療室(ICU)に入院した患者の病院死亡率を予測するためのスコアリングシステムである(Metnitzら、Intensive Care Med.2005年10月;31(10):1336-1344およびMorenoら、Intensive Care Med.2005年10月;31(10):1345-55)。SAPS3は、20の異なる変数に基づく。
【0035】
本明細書で使用される「重症度スコア」または「重症度スコアリングシステム」は、ICUまたは救急室に入院時に、ヒト対象、特にSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の疾患の重症度および/または予後を評価するために使用されるスコアを指す。重症度スコアの例としては、これらに限定されないが、APACHEIIスコア、APACHEIIIスコア、APACHEIVスコア、SAPSスコア、SAPSIIスコア、およびSAPS3スコアが挙げられる。
【0036】
本明細書で使用される「SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法」は、SIRS、敗血症または敗血症性ショックの治療のためにそれを必要とする対象に投与される治療法を指す。一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法は、免疫調節療法または抗炎症療法である。免疫調節療法または抗炎症療法の例としては、これらに限定されないが、抗PD-1、抗PD-L1および抗CTLA4などのチェックポイント阻害剤、TLR(Toll様受容体)阻害剤、抗サイトカインまたは抗サイトカイン受容体などのサイトカイン阻害剤(例えば、インターロイキン-1受容体アンタゴニストのIL-1RA)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、IL-7(インターロイキン-7)、CD28アンタゴニストペプチドおよび抗体、特にCD28に対するモノクローナル抗体などの免疫賦活剤の阻害剤、ならびに養子細胞療法などの細胞療法が挙げられる。一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法は、血管新生阻害剤、特にアンジオポエチン-2(Ang-2またはAng2)阻害剤である。一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法は、TREM-1阻害剤である。一実施形態では、TREM-1阻害剤は、TREM-1リガンドを標的とするペプチドであり、好ましくは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドである。
【0037】
「ショック」または「低血圧ショック」または「分布異常性ショック」は、臓器機能を損ない、かつ一般に動脈血圧の低下に関連する低下したまたは不十分な灌流を指す。低血圧ショックは、輸液蘇生に応答しない可能性があり、動脈血圧を上昇させ、効果的な組織灌流を回復し、かつ細胞代謝を正常化するために昇圧剤療法を必要とし得る。
【0038】
本明細書で使用される「ショック逆転」または「低血圧ショック逆転」は、少なくとも24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないものとして定義される(すなわち、昇圧剤療法の終了後24時間で昇圧剤療法を再開する必要がない)。一実施形態では、ショック逆転は、SIRS、敗血症、または敗血症性ショック療法の投与期間内に起こり得る。一実施形態では、ショック逆転は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法の投与の開始から6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66または72時間後に起こり得る。一実施形態では、ショック逆転は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法の投与期間後に起こり得る。一実施形態では、ショック逆転は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック療法の投与の終了から6、12、18、24、30、36、42、48、54、60、66または72時間後に起こり得る。
【0039】
「SOFAスコア」とは、臓器機能不全の存在を評価するために一般的に使用される逐次臓器不全評価(SOFA)スコア(元々は、敗血症関連臓器不全評価と呼ばれていた)を指す。SOFAスコアリングシステム(Vincentら、Crit Care Med.1998年11月;26(11):1793-800)は、呼吸器系(すなわち、PaO2/FiO2(mmHg))、神経系(すなわち、Glasgow昏睡スケール)、心血管系(すなわち、平均動脈圧または必要な昇圧剤の投与)、肝機能(すなわち、ビリルビン(mg/dLまたはμmol/L))、凝固(すなわち、血小板数)、および腎機能(すなわち、クレアチニン(mg/dLまたはμmol/L)または尿量(mL/d))の評価に依存する。
【0040】
「標準治療」とは、炎症性障害、特に全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、または敗血症性ショックに罹患している患者に日常的に提供される治療を指す。一実施形態では、患者は敗血症性ショックに罹患しており、標準治療には、抗菌療法、輸液療法、昇圧剤療法、心血管サポート、呼吸サポート、腎サポート、および鎮静のうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0041】
「TREM-1」は、「骨髄細胞に発現するトリガー受容体-1」を意味する。TREM-1は、Igスーパーファミリーに属する膜結合型糖タンパク質受容体であり、特に骨髄細胞上に発現する。TREM-1は、DAP12と呼ばれるアダプタータンパク質の助けを借りて下流のシグナル伝達経路を活性化する。TREM-1は、3つの異なるドメイン、Ig様構造(主にリガンド結合に関与する)、膜貫通部分、およびDAP12と結合する細胞質尾部で構成されている。特に明記しない限り、TREM-1タンパク質は、2000年10月1日に最終改訂されたUniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9NP99-1および2005年11月22日に最終改訂されたUniProtKBアクセッション番号Q38L15-1に対応する配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する。TREM-1については、いくつかの転写物が公知である。一般にTREM1-201と呼ばれる転写物(転写物IDアンサンブルENST00000244709.8)は、配列番号1に記載されているアミノ酸配列をコードする。一般にTREM1-202と呼ばれ、TREM-1アイソフォーム2としても知られる転写物(アンサンブル転写物ID ENST00000334475.10)は、配列番号2(UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9NP99-2に対応)に記載されているアミノ酸配列をコードする。一般にTREM1-207と呼ばれ、TREM-1アイソフォーム3としても知られる転写物(アンサンブル転写物ID ENST00000591620.1)は、配列番号3(UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号Q9NP99-3に対応)に記載されているアミノ酸配列をコードする。一般にTREM1-204と呼ばれる転写物(アンサンブル転写物ID ENST00000589614.5)は、配列番号4(UniProtKB/Swiss-Protアクセッション番号K7EKM5-1に対応、2013年1月9日に最終改訂)に記載されているアミノ酸配列をコードする。
【0042】
「骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1」の「sTREM-1」は、TREM-1の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを有さない可溶性形態のTREM-1を指す。したがって、一実施形態では、sTREM-1は、TREM-1の細胞外ドメインの可溶形態に対応する。可溶性TREM-1は、マトリックスメタロプロテイナーゼによる膜アンカー型TREM-1からのTREM-1Ig様外部ドメインのタンパク質分解切断によって生成され得る(Gomez-Pinaら、J Immunol.2007年9月15日;179(6):4065-73)。したがって、一実施形態では、sTREM-1は、骨髄細胞の膜、特に活性化された骨髄細胞から出された短縮型TREM-1に対応する。sTREM-1は、TREM-1mRNAの選択的スプライシングに起因することも示唆された。TREM-1スプライスバリアントは、2015年にBaruahらによって特徴が明らかになり(J Immunol.2015年12月15日;195(12):5725-31)、一次および二次ヒト好中球顆粒から分泌されることが見出された。したがって、一実施形態では、sTREM-1は、TREM-1スプライスバリアント、特に、一般にTREM1-202と呼ばれ、TREM-1アイソフォーム2としても知られるTREM-1転写物に対応し、配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする。
【0043】
本明細書で使用される「sTREM-1中央値」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを2つのグループに分割する参照集団から得られた所定のsTREM-1値を指し、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%を含む。
【0044】
本明細書で使用される「sTREM-1三分位数」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを3つのグループに分割する参照集団から得られた所定のsTREM-1値を指し、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の1を含む。一実施形態では、sTREM-1三分位数は、最後のsTREM-1三分位数(すなわち、sTREM-1の第2の三分位数)であり、それより下では、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の2が存在し、それを超えると、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の1が存在するsTREM-1値に対応する。
【0045】
本明細書で使用する場合、「sTREM-1四分位数」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを4つのグループに分割する参照集団から得られた所定のsTREM-1値を指し、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%を含む。一実施形態では、sTREM-1四分位数は、最後のsTREM-1四分位数(すなわち、Q3とも呼ばれるsTREM-1の第3の四分位数)であり、それより下では、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの75%が存在し、それを超えると、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%が存在するsTREM-1値に対応する。
【0046】
本明細書で使用する場合、「sTREM-1五分位数」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを5つのグループに分割する参照集団から得られた所定のsTREM-1値を指し、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%を含む。一実施形態では、sTREM-1五分位数は、最後のsTREM-1五分位数(すなわち、sTREM-1の第4の五分位数)であり、それより下では、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの80%が存在し、それを超えると、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%が存在するsTREM-1値に対応する。
【0047】
本明細書で使用される場合、「sTREM-1十分位数」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを10のグループに分割する参照集団から得られた所定のsTREM-1値を指し、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%を含む。一実施形態では、sTREM-1十分位数は、最後のsTREM-1十分位数(すなわち、sTREM-1の第9の十分位数)であり、それより下では、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの90%が存在し、それを超えると、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%が存在するsTREM-1値に対応する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「sTREM-1パーセンタイル」は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの所与のパーセンテージに対応するグループに分割する、参照集団から得られた所定のsTREM-1値を指す。したがって、本明細書で使用される場合、sTREM-1パーセンタイルは、参照集団から得られた所定のsTREM-1値であり、それより下では、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの所与のパーセンテージが存在する。例えば、40パーセンタイルは、参照集団から得られたsTREM-1値であり、それより下では、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの40%が存在する。
【0049】
「治療有効量」または「治療有効用量」は、治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の量または用量を指し、ヒト対象に重大な負の副作用または有害な副作用を引き起こすことなく、(1)ヒト対象における炎症性障害(好ましくは、SIRS、敗血症または敗血症性ショック)の発症を遅延させるかまたは予防する、(2)炎症性障害(好ましくは、SIRS、敗血症または敗血症性ショック)の重症度または発生率を低下させる、(3)ヒト対象に影響を与える炎症性障害(好ましくは、SIRS、敗血症または敗血症性ショック)のうちの1つ以上の症状の進行、憎悪、または悪化を遅らせるまたは止める、(4)ヒト対象に影響を与える炎症性障害(好ましくは、SIRS、敗血症もしくは敗血症性ショック)の症状の改善をもたらす、または(5)ヒト対象に影響を与える炎症性障害(好ましくは、SIRS、敗血症もしくは敗血症性ショック)を治癒することを目的とする。一実施形態では、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象への治療有効用量(または量)の治療法、好ましくはTREM-1阻害剤の投与は、対象に次のうちの少なくとも1つを誘発することを目的とする:
-好ましくは治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与期間内または投与期間後、例えば、投与終了後6時間、12時間、18時間または24時間にわたって低血圧ショックが逆転することであって、低血圧ショックが逆転することは、少なくとも24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないこととして定義される(すなわち、昇圧剤療法の終了後24時間以内に昇圧剤療法を再開する必要がない)、
-ICUまたは救急室への入院時に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している対象の疾患の重症度および/または予後を評価するために使用される重症度スコア(APACHEIIスコア、APACHEIIIスコア、APACHEIVスコア、SAPSスコア、SAPSIIスコア、またはSAPS3スコアなど)が低下すること、
-ICUまたは救急室への入院時に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の臓器機能不全の存在を評価するために使用される臓器機能不全スコア(SOFAスコア、qSOFAスコア、MODS(多臓器不全スコア)、P-MODS(小児多臓器不全スコア)、またはLODS(ロジスティック臓器不全システム)など)が低下すること、
-好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアを参照して、特に治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、SOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアが低下することであって、一実施形態では、SOFAスコアが低下することは、好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアを参照して、特に治療法の投与開始後3日目または5日目に、少なくとも1ポイント(デルタ-1ポイントまたはΔSOFA-1ポイントとも呼ばれる)、好ましくは少なくとも1.5ポイント低下すること、
-心血管サポートの必要性が減少することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の心血管サポートの必要性を参照して、特に治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって昇圧剤療法の使用が減少すること、
-呼吸サポートの必要性が減少することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の呼吸サポートの必要性を参照して、特に治療法、好ましくはTREM-1阻害剤の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって侵襲的人工呼吸(IMV)の使用が減少すること、
-腎サポートの必要性が低下することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の腎サポートの必要性を参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたってRRT(透析など)とも呼ばれる持続的または非持続的腎代替療法の使用が減少すること、
-再感染のリスクが減少することであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後における再感染のリスクが減少すること、
-再感染がないことであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後に再感染がないこと、
-再入院のリスクが減少することであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後における再入院のリスクが減少すること、
-再入院がないことであって、特に最初の入院から28日、90日または365日後の再入院がないこと、
-生存機会が増長することであって、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与の開始後、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年生存すること、一実施形態では、特に複数の併存疾患を有する対象における生存機会は、Charlson併存疾患指数(CCI)で評価され、10年生存機会の増長が、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたCCIを参照して、Charlson併存疾患指数の減少に対応する、増長すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目に敗血症関連死のリスクが低下すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目にすべての死因のリスクが低下すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目に敗血症後またはショック後の罹患率のリスクが低下すること、
-例えば、生存率および質調整生存年(QALY)の評価により評価され得る、生活の質(特に敗血症後またはショック後の生活の質)が向上することであって、これは、一般的にEQ5Dとして知られているEuroQoL Quality of Life Scaleから推定される。例えば、EQ 5D 5L(5レベルEQ-5Dバージョン)の健康関連生活の質(HRQoL)スコアが計算され、治療法の投与開始後、特に3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月または36ヶ月のユーティリティスコアに変換され得る。
-好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたレベルを参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、例えばCRPまたはIL6、IL-8、IL-10、MCP-1およびTNF-αなどの炎症マーカーのレベルが低下すること、または
-好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたレベルに関して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、例えば、Ang-2、VCAM-1、VGEFR-1およびE-セレクチンなどの内皮損傷マーカーのレベルが低下すること。
【0050】
治療有効量の治療法、好ましくはTREM-1阻害剤は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの発症前、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの診断前、ICUもしくは救急室への入院前、または昇圧剤療法の開始前に予防または防止作用のために投与してもよい。代替的にはまたは追加的には、治療有効量の治療法、好ましくはTREM-1阻害剤は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの発症後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの診断後、ICUまたは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後に治療作用のために投与してもよい。
【0051】
「TLT-1」は、TREM様転写物-1を指す。TLT-1は、TREMファミリーのメンバーである受容体であり、巨核球および血小板によってのみ発現する。TLT-1は、v-set Igタイプの細胞外ドメイン、膜貫通領域、および免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)およびポリプロリンリッチドメインを含む細胞質尾部を含む。
【0052】
「治療すること」または「治療」は、治療的治療、予防的もしくは防止的手段、あるいはその両方を指し、その目的は、標的となる病的状態または障害、すなわち炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックを予防、減速(軽減)または治癒することである。本発明の一実施形態では、「治療すること」または「治療」は、治療的治療を指す。本発明の別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、予防的または防止的治療を指す。本発明のさらに別の実施形態では、「治療すること」または「治療」は、予防的(または防止的)治療および治療的処置の両方を指す。治療が必要な場合としては、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックにすでに罹患している場合、ならびに炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックを発症しやすい場合、または炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックが防止されるべき場合である。炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、治療有効量の治療法、好ましくはTREM-1阻害剤を投与された後、ヒト対象が以下のうちの少なくとも1つを示す場合、奏功して「治療」される:
-好ましくは治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与期間内または投与期間後、例えば、投与終了後6時間、12時間、18時間または24時間にわたる、低血圧ショックが逆転することであって、少なくとも24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないこととして定義される(すなわち、昇圧剤療法の終了後24時間以内に昇圧剤療法を再開する必要がない)低血圧ショックが逆転すること、
-ICUまたは救急室への入院時に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している対象の疾患の重症度および/または予後を評価するために使用される重症度スコア(APACHEIIスコア、APACHEIIIスコア、APACHEIVスコア、SAPSIIスコア、またはSAPS3スコアなど)が低下すること、
-ICUまたは救急室への入院時に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の臓器機能不全の存在を評価するために使用される臓器機能不全スコア(SOFAスコア、qSOFAスコア、MODS(多臓器不全スコア)、P-MODS(小児多臓器不全スコア)、またはLODS(ロジスティック臓器不全システム)など)が低下すること、
-好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアを参照して、特に治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、SOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアが低下することであって、一実施形態では、SOFAスコアが低下することは、好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアを参照して、特に治療法の投与開始後3日目または5日目に、少なくとも1ポイント(デルタ-1ポイントまたはΔSOFA-1ポイントとも呼ばれる)、好ましくは少なくとも1.5ポイント低下すること、
-心血管サポートの必要性が減少することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の心血管サポートの必要性を参照して、特に治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって昇圧剤療法の使用が減少すること、
-呼吸サポートの必要性が減少することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の呼吸サポートの必要性を参照して、特に治療法、好ましくはTREM-1阻害剤の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって侵襲的人工呼吸(IMV)の使用が減少すること、
-腎サポートの必要性が低下することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の腎サポートの必要性を参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたってRRT(透析など)とも呼ばれる持続的または非持続的腎代替療法の使用が減少すること、
-再感染のリスクが減少することであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後における再感染のリスクが減少すること、
-再感染がないことであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後に再感染がないこと、
-再入院のリスクが減少することであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後における再感染のリスクが減少すること、
-再入院がないことであって、特に最初の入院から28日、90日または365日後の再入院がないこと、
-生存機会が増長することであって、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与の開始後、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年生存することであって、一実施形態では、特に複数の併存疾患を有する対象における生存機会は、Charlson併存疾患指数(CCI)で評価され、10年生存機会の増長が、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたCCIを参照して、Charlson併存疾患指数の減少に対応する、増長すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目に敗血症関連死のリスクが低下すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目にすべての死因のリスクが低下すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目に敗血症後またはショック後の罹患率のリスクが低下すること、
-特に敗血症後またはショック後の生活の質において生活の質が向上することであって、これは、例えば、EQ5Dから推定される生存および質調整生存年(QALY)の評価により評価され得る。例えば、EQ 5D 5Lの健康関連生活の質(HRQoL)スコアが計算され、治療法の投与開始後、特に3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月または36ヶ月のユーティリティスコアに変換され得る。
-好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたレベルを参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、例えばCRPまたはIL6、IL-8、IL-10、MCP-1およびTNF-αなどの炎症マーカーのレベルが低下すること、または
-好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたレベルを参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、例えば、Ang-2、VCAM-1、VGEFR-1およびE-セレクチンなどの内皮損傷マーカーのレベルが低下すること。
【0053】
奏功した治療および疾患の改善を評価するための上記のパラメータは、医師が精通しているルーチンの手順によって容易に測定可能である。
【0054】
「TREM-1阻害剤」は、TREM-1の機能、活性または発現を阻害することができる活性剤を指す。TREM-1阻害剤の例としては、これらに限定されないが、TREM-1の機能、活性、または発現を阻害するペプチド、TREM-1および/もしくはsTREM-1、またはTREM-1および/もしくはsTREM-1リガンドに向けられた抗体、TREM-1の機能、活性または発現を阻害する小分子、TREM-1に向けられたsiRNA、TREM-1に向けられたshRNA、TREM-1に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチド、TREM-1に向けられたリボザイムおよびTREM-1に向けられたアプタマーが挙げられる。
【0055】
「昇圧剤療法」は、ショック、すなわち、低血圧ショックの治療に使用される治療法を指し、臓器機能を損ない、一般に動脈血圧の低下に関連する灌流の減少または不十分として定義される。特に、低血圧が輸液蘇生に応答しない場合は、昇圧剤療法が必要である。昇圧剤療法は、動脈血圧を上昇させること、適切な血圧を維持すること、効果的な組織灌流を回復させること、および細胞代謝を正常化することを目的としている。昇圧剤療法の例としては、これらに限定されないが、ノルエピネフリン、ドーパミン、エピネフリンなどの血管作用性カテコールアミンホルモン、バソプレッシン、および/またはフェニレフリンを投与することが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、治療法に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルがステップb)の所定のsTREM-1値よりも高い、炎症性障害に罹患しているヒト対象を、治療法に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0057】
換言すれば、本発明は、治療法に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、ヒト対象からの生物学的サンプル中で測定された骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルが所定のsTREM-1値よりも高いことは、ヒト対象が治療法に応答しやすいことを示している。
【0058】
本発明はまた、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤による治療のために、炎症性障害に罹患しているヒト対象を選択するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルがステップb)の所定のsTREM-1値よりも高い、炎症性障害に罹患しているヒト対象を、治療法、好ましくは、TREM-1阻害剤により治療するために選択することと、を含む。
【0059】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象における炎症性障害の治療に使用するための治療法、好ましくはTREM-1阻害剤であって、対象からの生物学的サンプル中で測定され、所定のsTREM-1値よりも高いsTREM-1のレベルは、対象が治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいことを示す。
【0060】
したがって、本発明はまた、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいと特定されたヒト対象における炎症性障害を治療するための方法に関し、本方法は、
治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象を、
a)ヒト対象からの生物学的サンプルを得て、生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルがステップb)の所定のsTREM-1値よりも高い、炎症性障害に罹患しているヒト対象を、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいとして特定することによって特定することと、
治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいと特定された炎症性障害に罹患している対象に治療法、好ましくはTREM-1阻害剤を投与することであって、それによって治療法、好ましくはTREM-1阻害剤に応答しやすいと特定されたヒト対象の炎症性障害を治療することと、を含む。
【0061】
TREM-1(骨髄細胞で発現するトリガー受容体-1)は、特に骨髄細胞で発現するIgスーパーファミリーに属する糖タンパク質受容体である。sTREM-1は、TREM-1の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含まないTREM-1の可溶形態である。理論に拘束されることを所望するものではないが、出願人は、Nod様受容体(NLR)およびToll様受容体(TLR)などのPRR(病原体認識受容体)の関与がTREM-1の発現および/またはその細胞膜での動員およびクラスター化の上方制御を誘導し、その二量体化および多量体化につながることを示唆している。上記のNLRおよびTLRの活性化は、DAMP(危険関連分子パターン)またはPAMP(病原体関連分子パターン)を連結することによって発生し得る。特に、NLRおよびTLRの活性化は、DAMP(危険関連分子パターン)および/もしくはアラーミンを連結することによる無菌炎症条件下で、またはPAMP(病原体関連分子パターン)を連結することによる感染条件下で起こり得る。NLRおよびTLRのこの活性化は、プロテアーゼ、特にメタロプロテイナーゼの上方制御を誘導し、これにより、複数の標的の中で、膜に固定されたTREM-1のタンパク質分解による切断により可溶性TREM-1の遊離が誘導される(Gomez-Pinaら、J Immunol.2007年9月15日;179(6):4065-73)。タンパク質分解による切断は、TREM-1受容体の二量体化に依存する。したがって、sTREM-1は、骨髄細胞の膜、特に活性化された骨髄細胞から出され、sTREM-1の放出はTREM-1活性化のマーカーである。一実施形態では、sTREM-1は、TREM-1の細胞外ドメインの可溶形態に対応する。一実施形態では、sTREM-1は、骨髄細胞の膜、特に活性化された骨髄細胞から放出された短縮型TREM-1に対応する。
【0062】
sTREM-1は、TREM-1mRNAの選択的スプライシングからも生じ得る。TREM-1スプライスバリアントは、2015年にBaruahらによって特徴が明らかにされ(J Immunol.2015年12月15日;195(12):5725-31)、一次および二次ヒト好中球顆粒から分泌されることが見出された。一実施形態では、sTREM-1は、TREM-1スプライスバリアントに対応する。一実施形態では、sTREM-1は、一般にTREM1-202と呼ばれるTREM-1転写物に対応し、TREM-1アイソフォーム2としても知られ、配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする。したがって、一実施形態では、sTREM-1は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する(MRKTRLWGLLWMLFVSELRAATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFRCSTLSFSWLVDS)。
【0063】
一実施形態では、sTREM-1は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有し(ATKLTEEKYELKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFSGTPGSNENSTQNVYKIPPTTTKALCPLYTSPRTVTQAPPKSTADVSTPDSEINLTNVTDIIRVPVFN)、配列番号1のアミノ酸21~205に対応する。
【0064】
別の実施形態では、sTREM-1は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を有し(LKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGFSGTPGSNENSTQNVYKIPPTTTKALCPLYTSPRTVTQAPPKSTADVSTPDSEINLTNVTDIIRVPVFN)、配列番号1のアミノ酸31~205に対応する。
【0065】
別の実施形態では、sTREM-1は、配列番号19に記載のアミノ配列を含み(LKEGQTLDVKCDYTLEKFASSQKAWQIIRDGEMPKTLACTERPSKNSHPVQVGRIILEDYHDHGLLRVRMVNLQVEDSGLYQCVIYQPPKEPHMLFDRIRLVVTKGF)、配列番号1のアミノ酸31~137に対応し、200またはそれ以下のアミノ酸長、好ましくは185またはそれ以下のアミノ酸長を有する。
【0066】
別の実施形態では、sTREM-1は、配列番号2、配列番号5、または配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する。別の実施形態では、sTREM-1は、配列番号5または配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する。
【0067】
一実施形態では、sTREM-1は、配列番号2のバリアント、配列番号5のバリアント、または配列番号6のバリアントである。一実施形態では、sTREM-1は、配列番号5のバリアントまたは配列番号6のバリアントである。
【0068】
一実施形態では、配列番号2、配列番号5または配列番号6のバリアントは、少なくとも25の連続するアミノ酸、好ましくはそれぞれ、配列番号2、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列の少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、165、170、175、180または185の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列である。
【0069】
別の実施形態では、配列番号2、配列番号5または配列番号6のバリアントは、それぞれ配列番号2、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列、および配列番号2、配列番号5または配列番号6のC末端またはN末端における追加のアミノ酸を含むアミノ酸配列であり、追加のアミノ酸の数は、1~50、好ましくは1~20、より好ましくは1~10のアミノ酸、例えば、C末端においては1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸および/またはN末端においては1、2、3、4、5、6、7、8、9または10のアミノ酸の範囲である。
【0070】
別の実施形態では、配列番号2、配列番号5または配列番号6のバリアントは、典型的には、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、付加および/または挿入により、配列番号2、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列である。一実施形態では、置換(複数可)、欠失(複数可)、付加(複数可)および/または挿入(複数可)は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のアミノ酸に影響を及ぼし得る。
【0071】
別の実施形態では、配列番号2、配列番号5または配列番号6のバリアントは、少なくとも25のアミノ酸、好ましくは少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、165、170、175、180または185のアミノ酸のアミノ酸配列であり、配列番号2、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列とそれぞれ少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%、または少なくとも96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を有する。
【0072】
「同一」または「同一性」という用語は、2つ以上のポリペプチドの配列間の関係で使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基のストリング間の一致の数によって決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度を指す。「同一性」では、特定の数学的モデルまたはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって処理されるギャップアラインメント(存在する場合)を有する2つ以上のより小さい配列間の同一の一致の割合を測定する。関連するポリペプチドの同一性は、既知の方法によって容易に計算することができる。こうした方法は、これらに限定されないが、以下に記載されている:Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.,編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,編、Academic Press,New York,1993年;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,編、Humana Press,New Jersey,1994年;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987年;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,編、M.Stockton Press,New York,1991年;およびCarilloら、SIAM J.Applied Math.48,1073(1988年)。同一性を決定するための好ましい方法は、試験された配列間で最大の一致となるように設計されている。同一性を決定する方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータープログラム方法としては、以下などのGCGプログラムパッケージが挙げられる:GAP(Devereuxら、Nucl.Acid.Res.\2,387(1984年);Genetics Computer Group,University of Wisconsin,Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschulら、J.MoI.Biol.215、403-410(1990年))。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の情報源(BLAST Manual、Altschulら、NCB/NLM/NIH Bethesda、Md.20894;Altschulら、上記)から公開されている。よく知られているSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定することもできる。
【0073】
一実施形態では、配列番号2、配列番号5または配列番号6のバリアントは、配列番号1ではない。
【0074】
一実施形態では、sTREM-1は、配列番号2の断片、配列番号5の断片、または配列番号6の断片である。一実施形態では、sTREM-1は、配列番号5の断片または配列番号6の断片である。
【0075】
一実施形態では、配列番号2、配列番号5または配列番号6の断片は、少なくとも25の連続するアミノ酸、好ましくはそれぞれ、配列番号2、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列の少なくとも50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、165、170、175、180または185の連続するアミノ酸を含むアミノ酸配列である。
【0076】
一実施形態では、sTREM-1は、プロテアーゼ、好ましくはマトリックスメタロペプチダーゼ、より好ましくはマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)による、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する膜結合TREM-1の切断によって生成される細胞外断片に対応する。
【0077】
本明細書で使用される場合、「生物学的サンプル」は、ヒト対象から単離された生物学的サンプルを指し、例として、これらに限定されないが、体液、細胞サンプル、および/またはヒト対象から得られたホモジネートまたは可溶化組織などの組織抽出物を含み得る。
【0078】
一実施形態では、本発明の方法は、対象からの生物学的サンプルを得ることを含まない。一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、以前にヒト対象から得られた生物学的サンプルである。生物学的サンプルは、本発明の方法で使用される前に、適切な条件で保存され得る。
【0079】
一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、体液サンプルである。体液の例としては、これらに限定されないが、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、気管支肺胞洗浄液、脳脊髄液、汗、または任意の他の体液またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「血液」としては、全血、血漿、血清、循環上皮細胞、構成成分、または血液の他の任意の誘導体が挙げられる。
【0081】
一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、血液サンプルである。一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、全血サンプルまたは血漿サンプルである。血漿サンプルを得るための方法は、臨床検査室で日常的に使用されている。一実施形態では、ヒト対象からの全血サンプルまたは血漿サンプルを処理して、血清サンプルを得る。全血サンプルまたは血漿サンプルから血清サンプルを得るための方法は、臨床検査室で日常的に使用されている。
【0082】
別の実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、組織抽出物である。組織抽出物は、組織生検および剖検材料から日常的に得られる。
【0083】
本発明によれば、本明細書で使用される「レベル」という用語は、sTREM-1の発現レベルを指す。代替的には、sTREM-1の転写レベルまたはsTREM-1の翻訳レベルを指すことができる。発現レベルは、細胞内または細胞外で検出され得る。
【0084】
TREM-1のレベルは、ポイントオブケア検査(POCT)もしくはベッドサイド検査、患者の近くで行う検査、または中央検査室アッセイで測定され得る。
【0085】
転写レベルまたは翻訳レベルなどの発現レベルを測定するための方法は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、RT-PCR、RT-qPCR、ノーザンブロット、例えばマイクロアレイの使用などのハイブリダイゼーション技術、およびこれらに限定されないが、それらの組み合わせ、例えば、RT-PCRによって得られたアンプリコンのハイブリダイゼーション、例えば、次世代DNAシーケンシング(NGS)またはRNA-seq(「全トランスクリプトームショットガンシーケンシング」としても公知である)などの配列決定のそれらの組み合わせ、免疫組織化学、マルチプレックス法(Luminexなど)、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチELISA、マルチプレックスELISA、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)とも呼ばれるエレクトロケミルミネッセンス(ECL)(Elecsys(登録商標)など、Roche Diagnostics)、酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)(VIDAS(登録商標)など、Biomerieux)、蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)、酵素免疫測定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメトリー(FACS)、表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、イムノクロマトグラフィーアッセイ(ICA)(NEXUS IB10など、Sphingotech)および質量分析ベースのアプローチが挙げられる。
【0086】
一実施形態によれば、本明細書で使用される場合、「レベル」という用語は、sTREM-1の数量、量、または濃度を指す。したがって、ヒト対象からの生物学的サンプル中で測定されたsTREM-1のレベルは、生物学的サンプル中のsTREM-1の数量、量、または濃度を指す。
【0087】
一実施形態によれば、sTREM-1のレベルは、タンパク質レベル、タンパク数量、タンパク量、またはタンパク質濃度を指す。
【0088】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、配列番号2、配列番号5および/もしくは配列番号6に記載のアミノ酸配列、ならびに/または上記に記載のその断片および/もしくはバリアントのレベルを指す。一実施形態では、sTREM-1のレベルは、配列番号5および/もしくは配列番号6に記載のアミノ酸配列、ならびに/または上記に記載のその断片および/もしくはバリアントのレベルを指す。
【0089】
一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、血液サンプルであり、生物学的サンプルで測定されたsTREM-1のレベルは、ヒト対象のsTREM-1の血中濃度に対応する。
【0090】
一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、血漿サンプルであり、生物学的サンプルで測定されたsTREM-1のレベルは、ヒト対象のsTREM-1の血漿中濃度に対応する。
【0091】
一実施形態では、ヒト対象からの生物学的サンプルは、血清サンプルであり、生物学的サンプルで測定されたsTREM-1のレベルは、ヒト対象のsTREM-1の血清中濃度に対応する。
【0092】
本発明によれば、sTREM-1のレベルは、当技術分野における任意の既知の方法によって測定され得る。
【0093】
上記のような生物学的サンプル中のsTREM-1のレベル、特にsTREM-1タンパク質レベルを測定するための方法は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、免疫組織化学、マルチプレックスメソッド(Luminexなど)、ウエスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、サンドイッチELISA、マルチプレックスELISA、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)(Elecsys(登録商標)など、Roche Diagnostics)、酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)(VIDAS(登録商標)など、Biomerieux)、蛍光結合免疫吸着測定法(FLISA)、酵素免疫測定法(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、フローサイトメトリー(FACS)表面プラズモン共鳴(SPR)、バイオレイヤー干渉法(BLI)、イムノクロマトグラフィーアッセイ(ICA)(NEXUS IB10など、Sphingotech)および質量分析ベースのアプローチが挙げられる。
【0094】
典型的には、上記のように生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルを測定することは、生物学的サンプル中のsTREM-1と選択的に相互作用することができる結合パートナーと生物学的サンプルを接触させることを含み得る。一実施形態では、結合パートナーは、例えば、モノクローナル抗体またはアプタマーなどの抗体である。
【0095】
一実施形態では、上記のように生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルを測定することは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体などの抗体の使用を含む。
【0096】
sTREM-1の検出を可能にする抗体の例としては、これらに限定されないが、ヒトTREM-1のMet1-Arg200アミノ酸に対して産生されたポリクローナル抗体(リファレンスAF1278、R&D Systems)、ヒトTREM-1のAla21-Asn205に対して産生されたモノクローナル抗体(リファレンスMAB1278、R&D Systems)、精製された抗ヒトCD354(TREM-1)抗体(クローンTREM-26、リファレンス314902、BioLegend)、精製された抗ヒトCD354(TREM-1)抗体(クローンTREM-37、リファレンス316102、BioLegend)、モノクローナルマウス抗ヒトsTREM1(クローン15G7、リファレンス298099、USBio)、マウス抗ヒトTREM1(クローン2E2、リファレンス134704、USBio)が挙げられる。sTREM-1の検出を可能にする抗体の他の非限定的な例としては、以下の特許または特許出願:米国特許第2013/150559号、米国特許第2013/211050号、米国特許第2013/309239号、国際公開第2013/120553および米国特許第8,106,165号に記載されているsTREM-1および/またはTREM-1抗体が挙げられる。
【0097】
生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルを測定するための前述のアッセイのいくつか(例えば、ウエスタンブロット、ELISA、またはサンドイッチELISAなど)は、一般に、固体支持体へのパートナー(すなわち、抗体またはアプタマー)の結合を伴う。本発明の方法の実施において使用することができる固体支持体としては、これらに限定されないが、ニトロセルロースなどの支持体(例えば、ニトロセルロース膜またはニトロセルロースマイクロタイタープレート)、ポリ塩化ビニル(例えば、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニル膜またはポリ塩化ビニルマイクロタイタープレート)、ポリスチレンラテックス(例えば、ポリスチレンラテックスビーズまたはポリスチレンラテックスマイクロタイタープレート)、ポリビニリデンジフルオリドまたはPVDF(例えば、PVDF膜)、ジアゾ化ペーパー、ナイロン膜、活性化ビーズ、および磁気応答性ビーズが挙げられる。
【0098】
sTREM-1のレベルは、競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイなどのイムノアッセイなど、標準的な免疫診断技術を使用して測定してもよい。そのようなアッセイとしては、これらに限定されないが、凝集試験、ELISAなどの酵素標識および媒介イムノアッセイ、ビオチン/アビジン型アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫電気泳動、免疫沈降が挙げられる。したがって、イムノアッセイとしては、これらに限定されないが、ELISAまたは酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)などの酵素標識および媒介イムノアッセイ、ビオチン/アビジン型アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫電気泳動、免疫沈降、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)が挙げられる。
【0099】
特定のタンパク質を同定するための例示的な生化学的試験では、ELISA試験などの標準化された試験形式を用いるが、本明細書で提供される情報は、他の生化学的試験の開発に適用され得、これは、ELISA試験の開発に限定されない(例えば、ELISA試験の説明については、Molecular Immunology:A Textbook、Atassiら編、Marcel Dekker Inc.,New York and Basel 1984を参照されたい)。様々な血漿成分のための市販のアッセイ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットが利用可能であることが理解されている。
【0100】
したがって、ELISA法は、生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルを測定するために使用することができ、マイクロタイタープレートのウェルは、sTREM-1を認識する少なくとも1つの抗体でコーティングされている。次に、sTREM-1を含む、または含む疑いのある生物学的サンプルを、コーティングされたウェルに添加する。抗体-sTREM-1複合体の形成を可能にするのに十分なインキュベーション期間の後、プレート(複数可)を洗浄して非結合部分を除去し、検出可能に標識された二次結合分子を添加することができる。二次結合分子は、捕捉された任意の抗体-sTREM-1複合体と反応することができ、プレートを洗浄し、当技術分野で周知の方法を使用して二次結合分子の存在を検出する。
【0101】
一実施形態では、上記のような生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルの測定は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)(Elecsys(登録商標)Roche Diagnosticsなど)または酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)を使用することを含む。
【0102】
ELISAアッセイの例としては、これらに限定されないが、TREM-1 Quantikine ELISAキット(リファレンスDTRM10C、R&D Systems)、ヒトTREM-1 DuoSet(リファレンスDY1278BおよびDY1278BE、R&D Systems)、sTREM-1 ELISA(リファレンスsTREM-1 ELISA、iQProducts)が挙げられる。
【0103】
エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)の例としては、Elecsys(登録商標)(Roche Diagnostics)が挙げられる。
【0104】
酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)の例としては、VIDAS(登録商標)(Biomerieux)が挙げられる。
【0105】
典型的には、生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルは、sTREM-1に特異的なモノクローナル抗体を用いた二重抗体「サンドイッチ」技術に基づく免疫測定アッセイによって測定され得る。したがって、一実施形態では、上記のように生物学的サンプル中のsTREM-1のレベルを測定することは、サンドイッチELISAを使用することを含む。
【0106】
一実施形態によれば、sTREM-1のレベルの測定(イムノアッセイベース方法の有無にかかわらず)はまた、生物学的サンプル中に存在する化合物の分離(すなわち、sTREM-1の分離)、化合物の分子量に基づく遠心分離、質量および電荷に基づく電気泳動、疎水性に基づくHPLC、サイズに基づくサイズ排除クロマトグラフィー、および使用される特定の固相に対する化合物の親和性に基づく固相親和性を含み得る。
【0107】
分離されると、化合物(すなわち、sTREM-1)は、その化合物の既知の「分離プロファイル」、例えば、保持時間に基づいて同定され、標準的な技術を使用して測定され得る。あるいは、分離された化合物(すなわち、sTREM-1)は、例えば、質量分析計によって検出され、かつ測定され得る。
【0108】
一実施形態によれば、sTREM-1のレベルは、核酸レベル、核酸数量、核酸量、または核酸濃度を指す。一実施形態では、核酸は、RNA、好ましくはmRNA、またはcDNAである。
【0109】
上記のような生物学的サンプル中における発現レベル、特にsTREM-1核酸レベルを測定するための方法は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、PCR、qPCR、RT-PCR、RT-qPCR、ノーザンブロット、例えばマイクロアレイの使用などのハイブリダイゼーション技術、およびこれらに限定されないが、RT-PCRによって得られたアンプリコンのハイブリダイゼーション、例えば次世代DNA配列決定(NGS)、またはRNA-seq(「全トランスクリプトームショットガンシーケンシング」としても公知である)などの配列決定などのそれらの組み合わせが挙げられる。
【0110】
一実施形態では、sTREM-1核酸レベルは、それぞれ、配列番号13(GTGGTGACCAAGGGGTTC)および配列番号14(AGATGGATGTGGCTGGAAGT)に記載されているヌクレオチド配列を有するフォワードおよびリバースプライマーを使用して測定される。
【0111】
一実施形態では、sTREM-1核酸レベルは、それぞれ、配列番号15(GTGACCAAGGGTTTTTCAGG)および配列番号16(ACACCGGAACCCTGATGATA)に記載されているヌクレオチド配列を有するフォワードおよびリバースプライマーを使用して測定される。
【0112】
一実施形態では、sTREM-1核酸レベルは、それぞれ、配列番号17(AAAGGCAAGAACGCCTGAC)および配列番号18(GGGACTTTACCAAGAGGGAC)に記載されているヌクレオチド配列を有するフォワードおよびリバースプライマーを使用して測定される。
【0113】
一実施形態では、上記のように生物学的サンプル中で測定されたsTREM-1のレベルは、ベースラインレベルである。換言すると、sTREM-1のレベルは、治療法、好ましくはTREM-1阻害剤の投与の開始前に炎症性障害に罹患しているヒト対象から得られた上記のような生物学的サンプル中において測定される。
【0114】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの発症後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックを有するヒト対象の診断後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUまたは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後、最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは、最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間にヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0115】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックの発症後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックを有するヒト対象の診断後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUもしくは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内にヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0116】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの発症後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックを有するヒト対象の診断後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUまたは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後、最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは、最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間に上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0117】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックの発症後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックを有するヒト対象の診断後、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUもしくは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内に上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0118】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再感染後最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間にヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0119】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再感染後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内のヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0120】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再感染後最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間に上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0121】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再感染後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内の上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0122】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再入院後、特にICUまたは救急室への再入院後最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間にヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0123】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再入院後、特にICUまたは救急室への再入院後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内のヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0124】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再入院後、特にICUまたは救急室への再入院後最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間に上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0125】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の再入院後、特にICUまたは救急室への再入院後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内の上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0126】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、敗血症性ショックの発症後、敗血症性ショックのヒト対象の診断後、敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUまたは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後最初の2時間から最初の48時間の間、好ましくは最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間にヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0127】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、敗血症性ショックの発症後、敗血症性ショックのヒト対象の診断後、敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUもしくは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内のヒト対象から得られた上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0128】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、敗血症性ショックの発症後、敗血症性ショックのヒト対象の診断後、敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUまたは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後最初の2時間から最初の12時間の間、最初の12時間から最初の24時間の間、または最初の24時間から最初の48時間の間、上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0129】
一実施形態では、sTREM-1のレベルは、敗血症性ショックの発症後、敗血症性ショックのヒト対象の診断後、敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUもしくは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間以内の上記の生物学的サンプル中で測定される。
【0130】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、個人化された参照値であり、すなわち、所定のsTREM-1値は、ヒト対象から得られた生物学的サンプルを使用して得られる。
【0131】
一実施形態では、sTREM-1の所定の値は、指標値であるか、または炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの1つ以上のリスク予測アルゴリズムまたは計算された指標から導出される。
【0132】
一実施形態では、sTREM-1の所定の値は、参照集団から得られる。
【0133】
本発明によれば、所定のsTREM-1値は、例えば、同様の年齢範囲を有する対象、同じまたは同様の民族グループ内の対象、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックのリスクの増加に関連する慢性病状(心房細動、癌、慢性腎臓病、慢性肺疾患、肝硬変、冠状動脈疾患、深部静脈血栓症、糖尿病、脂質異常症、心内膜炎、高血圧、インフルエンザ、マラリアなど、または他の原生動物寄生虫症、心筋梗塞、神経疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、末梢動脈疾患、肺線維症、重度の肥満および脳卒中)またはSIRS、敗血症、敗血症性ショックなどの炎症性障害の病歴を有する対象などの集団研究から導出され得る。
【0134】
一実施形態によれば、sTREM-1の所定の値は、実質的に健康である1名以上のヒト対象からの生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。本明細書で使用される場合、「実質的に健康である対象」は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックを有するまたは罹患しているとこれまでに診断または特定されていないヒト対象である。したがって、一実施形態によれば、所定のsTREM-1値は、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られる。
【0135】
一実施形態では、「実質的に健康である対象」は、感染症に罹患していないヒト対象である。
【0136】
一実施形態によれば、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られるsTREM-1の所定の値は、約50pg/mL~約250pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0137】
一実施形態では、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られるsTREM-1の所定の値は、約50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、125pg/mL、150pg/mL、175pg/mL、200pg/mL、225pg/mL、または250pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0138】
一実施形態では、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られるsTREM-1の所定の値は、特に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定した場合、約50pg/mL~約150pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0139】
一実施形態では、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られるsTREM-1の所定の値は、特に酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定した場合、約50pg/mL、75pg/mL、100pg/mL、125pg/mLまたは150pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0140】
一実施形態では、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られるsTREM-1の所定の値は、特にエレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)を使用して決定した場合、約150pg/mL~約250pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0141】
一実施形態では、実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られるsTREM-1の所定の値は、特にエレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)を使用して決定した場合、約150pg/mL、175pg/mL、200pg/mL、225pg/mL、または250pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0142】
別の実施形態によれば、sTREM-1の所定の値は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している、または罹患していると診断または特定された1名以上のヒト対象からの生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。したがって、一実施形態によれば、所定のsTREM-1値は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している、または罹患していると診断または特定されたヒト対象の参照集団から得られる。
【0143】
一実施形態では、sTREM-1の所定の値は、敗血症に罹患していると診断または特定された1名以上のヒト対象からの生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、敗血症に罹患していると診断または特定されたヒト対象の参照集団から得られる。
【0144】
一実施形態では、本発明のin vitro方法は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい敗血症に罹患しているヒト対象を特定するためのものであり、sTREM-1の所定の値は、敗血症に罹患していると診断または特定された1名以上のヒト対象からの生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。換言すれば、一実施形態では、本発明のin vitro方法は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい敗血症に罹患しているヒト対象を特定するためのものであり、所定のsTREM-1値は、敗血症に罹患していると診断または特定されたヒト対象の参照集団から得られる。
【0145】
一実施形態では、sTREM-1の所定の値は、敗血症性ショックに罹患していると診断または特定された1名以上のヒト対象からの生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、敗血症性ショックに罹患していると診断または特定されたヒト対象の参照集団から得られる。
【0146】
一実施形態では、本発明のin vitro方法は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのものであり、sTREM-1の所定の値は、敗血症性ショックに罹患していると診断または特定された1名以上のヒト対象からの生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。換言すれば、一実施形態では、本発明のin vitro方法は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのものであり、所定のsTREM-1値は、敗血症性ショックに罹患していると診断または特定されたヒト対象の参照集団から得られる。
【0147】
一実施形態では、sTREM-1の所定の値は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているとこれまでに診断または特定された1名以上のヒト対象の生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。
【0148】
一実施形態では、sTREM-1の所定の値は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックを発症するリスクが高い感染症に罹患している1名以上のヒト対象の生物学的サンプル中のsTREM-1レベルの測定値から導出される。
【0149】
本発明によれば、所定のsTREM-1値は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックの数学的アルゴリズムおよび計算された指標から得られた上記の参照集団の統計分析および/またはリスク予測データから導出できる。
【0150】
一実施形態によれば、sTREM-1の所定の値は、統計的分類および/または構造的分類の方法を使用して、上記のように参照集団から得られる。
【0151】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、sTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0152】
一実施形態では、治療法に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象は、所定のsTREM-1、好ましくは上記のとおり実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られた所定のsTREM-1よりも少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、または10倍高い、上記のように測定されたsTREM-1レベルを有するヒト対象である。
【0153】
一実施形態では、治療法に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象は、所定のsTREM-1、好ましくは上記のとおり実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られた所定のsTREM-1よりも少なくとも1.6倍、1.8倍、2倍、2.2倍、2.4倍、2.6倍、2.8倍、3倍、3.2倍、3.4倍、3.6倍、3.8倍、4倍、4.2倍、4.4倍、4.6倍、4.8倍、5倍、5.2倍、5.4倍、5.6倍、5.8倍、または6倍高い、上記のように測定されたsTREM-1レベルを有するヒト対象である。
【0154】
一実施形態では、治療法に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象は、所定のsTREM-1、好ましくは上記のとおり実質的に健康であるヒト対象の参照集団から得られた所定のsTREM-1よりも少なくとも2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、または4倍高い、上記のように測定されたsTREM-1レベルを有するヒト対象である。
【0155】
別の実施形態では、治療法に応答しやすい炎症性障害に罹患しているヒト対象は、所定のsTREM-1、好ましくは、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している、または罹患していると診断または特定されたヒト対象の参照集団から得られる所定のsTREM-1よりも少なくとも1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍または2.5倍高い上記のように測定されたsTREM-1のレベルを有するヒト対象である。
【0156】
一実施形態では、上記の参照集団から得られる所定のsTREM-1値は、参照集団の平均sTREM-1レベル、好ましくは平均血液、血漿または血清レベルである。別の実施形態では、上記の参照集団から得られる所定のsTREM-1値は、参照集団の中央sTREM-1レベル、好ましくは平均血液、血漿または血清レベルである。
【0157】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値は、上記の参照集団から得られ、参照集団のヒト対象の各々の生物学的サンプル中で測定されたsTREM-1レベル(すなわち、参照集団で測定されたsTREM-1レベル)は、「分位数」と呼ばれるカットオフ値によって同じサイズの群に分割され、各群は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの所定の割合(パーセンテージ)に対応する。分位数の例としては、これらに限定されないが、中央値(2つの群を定義し、各群が参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%を含む)、三分位数(tercile)または三分位数(tertile)(3つの群を定義し、各群が参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の1を含む)、四分位数(4つの群を定義し、各群が参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%を含む)、五分位数(5つの群を定義し、各群が参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%を含む)、および十分位数(10の群を定義し、各群が参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%を含む)が挙げられる。
【0158】
本発明によれば、「分位数」は、カットオフsTREM-1値を指し、その上下には参照集団で測定されたsTREM-1レベルの所定の割合(パーセンテージ)が存在する。したがって、第1の分位数より下の測定されたsTREM-1レベルを有するヒト対象者は、最も低いsTREM-1レベルを有するヒト対象者であり、最後の分位数よりも高い測定されたsTREM-1レベルを有するヒト対象者は、最も高いsTREM-1レベルを有するヒト対象者である。例えば、第1の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%がそれよりも下であり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの90%がそれよりも上であるsTREM-1値である。
【0159】
さらに、「分位数」という用語は、カットオフ値によってそのように定義された群を指すこともある。したがって、本発明に適用される場合、「分位数」という用語は、カットオフsTREM-1値によって定義される参照集団で測定されたsTREM-1レベルの群を指すこともある。例えば、第1の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの最も低い10%に対応する、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの群を指す場合がある。したがって、第10の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの最も高い10%に対応する、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの群を指す。したがって、第1の十分位数にあるsTREM-1値は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの最も低い10%に含まれるsTREM-1値であり、第10の十分位数にあるsTREM-1値は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの最も高い10%に含まれるsTREM-1値である。
【0160】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団から得られ、参照集団で測定されたsTREM-1レベルは、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%に対応する2つの等しいサイズの群に分割される。
【0161】
本発明のこの実施形態によれば、sTREM-1中央値は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%がそれより下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%がそれより上にあるsTREM-1値に対応する。
【0162】
したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記に示したとおり、参照集団のsTREM-1中央値である。
【0163】
したがって、一実施形態では、本発明は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを参照集団sTREM-1から得た所定のsTREM-1値と比較することであって、所定のsTREM-1値は、参照集団の中央値である比較することと、
c)ステップb)の中央値よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0164】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団から得られ、参照集団で測定されたsTREM-1レベルは、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の1に対応する3つの等しいサイズの群に分割される。上記のように、カットオフ値(「分位数」)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを分割するため、「三分位数(tercile)」(または「三分位数(tertile)」)と呼ばれる。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記に記載したとおり、参照集団のsTREM-1三分位数(tercile)(または三分位数(tertile))である。
【0165】
本発明のこの実施形態によれば、
-sTREM-1の第1の三分位数(tercile)(または三分位数(tertile))は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の1がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の2がその上にあるsTREM-1値に対応し、かつ
-sTREM-1の第2の三分位数(tercile)(または三分位数(tertile))は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の2がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの3分の1がその上にあるsTREM-1値に対応する。
【0166】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のように、参照集団の第2のsTREM-1三分位数(すなわち、最後のsTREM-1三分位数)である。
【0167】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団から得られ、参照集団で測定されたsTREM-1レベルは、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%に対応する4つの等しいサイズの群に分割される。上記のように、カットオフ値(「分位数」)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを分割するため、「四分位数」と呼ばれる。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記に示したとおり、参照集団のsTREM-1四分位数である。
【0168】
本発明のこの実施形態によれば、
-sTREM-1の第1の四分位数(またはQ1)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの75%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第2の四分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%がその上にあるsTREM-1値に対応し(したがって、第2の四分位数は、中央値と同等である)、
-sTREM-1の第3の四分位数(またはQ3)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの75%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの25%がその上にあるsTREM-1値に対応する。
【0169】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団のsTREM-1 Q1とも呼ばれる第1のsTREM-1四分位数である。
【0170】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、参照集団のsTREM-1 Q3(すなわち、最後のsTREM-1四分位数)とも呼ばれる第3のsTREM-1四分位数である。
【0171】
したがって、一実施形態では、本発明は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを参照集団sTREM-1から得た所定のsTREM-1値と比較することであって、所定のsTREM-1値は、参照集団の第3の四分位数である比較することと、
c)ステップb)の第3の四分位数よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0172】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団から得られ、参照集団で測定されたsTREM-1レベルは、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%に対応する5つの等しいサイズの群に分割される。上記のように、カットオフ値(「分位数」)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを分割するため、「五分位数」と呼ばれる。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記に示したとおり、参照集団のsTREM-1五分位数である。
【0173】
本発明のこの実施形態によれば、
-sTREM-1の第1の五分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの80%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第2の五分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの40%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの60%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第3の五分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの60%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの40%がその上にあるsTREM-1値に対応し、かつ
-sTREM-1の第4の五分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの80%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%がその上にあるsTREM-1値に対応する。
【0174】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、参照集団の第2のsTREM-1五分位数である。
【0175】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、参照集団の第3のsTREM-1五分位数(すなわち、最後から2番目のsTREM-1五分位数)である。
【0176】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のように、参照集団の第4のsTREM-1五分位数(すなわち、最後のsTREM-1五分位数)である。
【0177】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団から得られ、参照集団で測定されたsTREM-1レベルは、それぞれが参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%に対応する10の等しいサイズの群に分割される。上記のように、カットオフ値(「分位数」)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを分割するため、「十分位数」と呼ばれる。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記に示したとおり、参照集団のsTREM-1十分位数である。
【0178】
本発明のこの実施形態によれば、
-sTREM-1の第1の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの90%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第2の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの80%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第3の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの30%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの70%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第4の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの40%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの60%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第5の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの50%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第6の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの60%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの40%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第7の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの70%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの30%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第8の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの80%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの20%がその上にあるsTREM-1値に対応し、
-sTREM-1の第9の十分位数は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの90%がその下にあり、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの10%がその上にあるsTREM-1値に対応する。
【0179】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、参照集団の第6のsTREM-1十分位数である。一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、参照集団の第7のsTREM-1十分位数である。一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、参照集団の第8のsTREM-1十分位数(すなわち、最後から2番目のsTREM-1十分位数)である。
【0180】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のように、参照集団の第9のsTREM-1十分位数(すなわち、最後のsTREM-1十分位数)である。
【0181】
一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記のとおり参照集団から得られ、参照集団で測定されたsTREM-1レベルは、参照集団で測定されたsTREM-1レベルの特定のパーセンテージに対応する群に分割される。上記のように、カットオフ値(「分位数」)は、参照集団で測定されたsTREM-1レベルを分割するため、「パーセンタイル」と呼ばれる。したがって、一実施形態では、所定のsTREM-1値は、上記に示したとおり、参照集団のsTREM-1パーセンタイルである。
【0182】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値は、上記の参照集団から得られ、この値は、参照集団において20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%の予測死亡率に関連している。
【0183】
例えば、参照集団において50%の予測死亡率に関連する所定のsTREM-1値は、この値よりも高いsTREM-1レベルを有する参照集団の対象について、死亡率が50%であることを意味する。
【0184】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値は、上記のとおり、かつSIRS、敗血症、または敗血症性ショックに冒された患者を含む参照集団から得られ、参照集団において、最初の感染または最初の入院から28日、90日、または365日後に死亡している対象の20%超、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%が所定のsTREM-1値よりも高い値を呈する。
【0185】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約20pg/mL~約6000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0186】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950、3000、3050、3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、3950、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300、4350、4400、4450、4500、4550、4600、4650、4700、4750、4800、4850、4900、4950、5000、5050、5100、5150、5200、5250、5300、5350、5400、5450、5500、5550、5600、5650、5700、5750、5800、5850、5900、5950または6000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0187】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約30pg/mL~約2000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0188】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950または2000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0189】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約50pg/mL~約1000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0190】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約50、75、100、125、150、175、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980または1000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0191】
別の実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約250pg/mL~約400pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0192】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395または400pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0193】
別の実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約300pg/mL~約800pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0194】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、630、635、640、645、650、655、660、665、670、675、680、685、690、695、700、705、710、715、720、725、730、735、740、745、750、755、760、765、770、775、780、785、790、795または800pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0195】
別の実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約350pg/mL~約600pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0196】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595または600pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0197】
別の実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約400pg/mL~約500pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0198】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495または500pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0199】
別の実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約500pg/mL~約600pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0200】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、約500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595または600pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0201】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)により決定されたsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0202】
上記に示したとおり、ELISAアッセイの例としては、これらに限定されないが、TREM-1 Quantikine ELISAキット(リファレンスDTRM10C、R&D Systems)、ヒトTREM-1 DuoSet(リファレンスDY1278BおよびDY1278BE、R&D Systems)、sTREM-1 ELISA(リファレンスsTREM-1 ELISA、iQProducts)が挙げられる。
【0203】
一実施形態では、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、TREM-1 Quantikine ELISAキット(リファレンスDTRM10C、R&D Systems)である。
【0204】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合は約50pg/mL~約1000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはエレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)または酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)などの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0205】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを用いて決定される場合、約50、75、100、125、150、175、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980または1000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0206】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合は約300pg/mL~約800pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0207】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合、約300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、630、635、640、645、650、655、660、665、670、675、680、685、690、695、700、705、710、715、720、725、730、735、740、745、750、755、760、765、770、775、780、785、790、795または800pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0208】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合は約350pg/mL~約600pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0209】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを用いて決定される場合、約350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595または600pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0210】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合は約400pg/mL~約500pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0211】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合は約400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495または500pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0212】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELISAを使用して決定される場合は約500pg/mL~約600pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0213】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定される場合は約500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595または600pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0214】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)により決定されたsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0215】
上に示したとおり、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)の例としては、Elecsys(登録商標)(Roche Diagnostics)が挙げられる。
【0216】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)を使用して決定される場合は約20pg/mL~約6000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)もしくは酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)などの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0217】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを使用して決定される場合、約20、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950、3000、3050、3100、3150、3200、3250、3300、3350、3400、3450、3500、3550、3600、3650、3700、3750、3800、3850、3900、3950、4000、4050、4100、4150、4200、4250、4300、4350、4400、4450、4500、4550、4600、4650、4700、4750、4800、4850、4900、4950、5000、5050、5100、5150、5200、5250、5300、5350、5400、5450、5500、5550、5600、5650、5700、5750、5800、5850、5900、5950または6000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0218】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを使用して決定される場合は約30pg/mL~約3000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0219】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを用いて決定される場合、約30、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950または3000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0220】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを使用して決定される場合は約500pg/mL~約1500pg/mL、好ましくは約800pg/mL~約1200pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0221】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを使用して決定される場合は、約500pg/mL~約600pg/mL、約600pg/mL~約700pg/mL、約700pg/mL~約800pg/mL、約800pg/mL~約900pg/mL、または約900pg/mL~約1000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは、血液、血漿もしくは血清レベルであるか、またはELISAまたはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0222】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを用いて決定される場合、約500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980、1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340、1360、1380、1400、1420、1440、1460、1480または1500pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0223】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを使用して決定される場合は約1000pg/mL~約2000pg/mL、好ましくは約1200pg/mL~約1600pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0224】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを用いて決定される場合、約1000pg/mL~約1100pg/mL、約1100pg/mL~約1200pg/mL、約1200pg/mL~約1300pg/mL、約1300pg/mL~約1400pg/mL、約1400pg/mL~約1500pg/mL、約1500pg/mL~約1600pg/mL、約1600pg/mL~約1700pg/mL、約1700pg/mL~約1800pg/mL、約1800pg/mL~約1900pg/mLまたは約1900pg/mL~約2000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAまたはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0225】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ECLIAを用いて決定される場合、約1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340、1360、1380、1400、1420、1440、1460、1480、1500、1520、1540、1560、1580、1600、1620、1640、1660、1680、1700、1720、1740、1760、1780、1800、1820、1840、1860、1880、1900、1920、1940、1960、1980または2000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0226】
一実施形態によれば、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)により決定されたsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0227】
上に示したように、酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)の例としては、VIDAS(登録商標)(Biomerieux)が挙げられる。
【0228】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを使用して決定される場合は約30pg/mL~約3000pg/mL、好ましくは約300pg/mL~約2000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)もしくはエレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)などの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0229】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを使用して決定される場合、約30、50、100、150、200、250、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、1000、1025、1050、1075、1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、1300、1325、1350、1375、1400、1425、1450、1475、1500、1525、1550、1575、1600、1625、1650、1675、1700、1725、1750、1775、1800、1825、1850、1875、1900、1925、1950、1975、2000、2050、2100、2150、2200、2250、2300、2350、2400、2450、2500、2550、2600、2650、2700、2750、2800、2850、2900、2950または3000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0230】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを使用して決定される場合は約500pg/mL~約1500pg/mL、好ましくは約800pg/mL~約1200pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0231】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを使用して決定される場合は、約500pg/mL~約600pg/mL、約600pg/mL~約700pg/mL、約700pg/mL~約800pg/mL、約800pg/mL~約900pg/mL、または約900pg/mL~約1000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは、血液、血漿もしくは血清レベルであるか、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0232】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを用いて決定される場合、約500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980、1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340、1360、1380、1400、1420、1440、1460、1480または1500pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0233】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを使用して決定される場合は約1000pg/mL~約2000pg/mL、好ましくは約1200pg/mL~約1600pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0234】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを用いて決定される場合、約1000pg/mL~約1100pg/mL、約1100pg/mL~約1200pg/mL、約1200pg/mL~約1300pg/mL、約1300pg/mL~約1400pg/mL、約1400pg/mL~約1500pg/mL、約1500pg/mL~約1600pg/mL、約1600pg/mL~約1700pg/mL、約1700pg/mL~約1800pg/mL、約1800pg/mL~約1900pg/mLまたは約1900pg/mL~約2000pg/mLの範囲のsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであるか、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルである。
【0235】
一実施形態では、所定のsTREM-1値、好ましくは上記の参照集団から得られた所定のsTREM-1値は、ELFAを用いて決定される場合、約1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340、1360、1380、1400、1420、1440、1460、1480、1500、1520、1540、1560、1580、1600、1620、1640、1660、1680、1700、1720、1740、1760、1780、1800、1820、1840、1860、1880、1900、1920、1940、1960、1980または2000pg/mLのsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿または血清レベルであり、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応するsTREM-1レベル、好ましくは血液、血漿もしくは血清レベルである。
【0236】
したがって、一実施形態では、本発明は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを、好ましくは参照集団sTREM-1から得られた所定のsTREM-1値と比較することであって、所定のsTREM-1値は、約350pg/mL~約600pg/mLの範囲の血中sTREM-1レベルである、比較することと、
c)ステップb)の所定のsTREM-1値よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0237】
別の実施形態では、本発明は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを、好ましくは参照集団sTREM-1から得られた所定のsTREM-1値と比較することであって、所定のsTREM-1値は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して決定される場合、約300pg/mL~約800pg/mL、好ましくは約350pg/mL~約600pg/mLの範囲の血中sTREM-1レベルであるか、またはECLIAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応する血中sTREM-1レベルである比較することと、
c)ステップb)の所定のsTREM-1値よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0238】
別の実施形態では、本発明は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを、好ましくは参照集団sTREM-1から得られた所定のsTREM-1値と比較することであって、所定のsTREM-1値は、エレクトロケミルミネッセンスイムノアッセイ(ECLIA)を使用して決定される場合、約20pg/mL~約6000pg/mL、好ましくは約30pg/mL~約3000pg/mLの範囲の血中sTREM-1レベルであるか、またはELISAもしくはELFAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応する血中sTREM-1レベルである比較することと、
c)ステップb)の所定のsTREM-1値よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0239】
別の実施形態では、本発明は、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを、好ましくは参照集団sTREM-1から得られた所定のsTREM-1値と比較することであって、所定のsTREM-1値は、酵素結合蛍光アッセイ(ELFA)を使用して決定される場合、約30pg/mL~約3000pg/mL、好ましくは約300pg/mL~約2000pg/mLの範囲の血中sTREM-1レベルであるか、またはELISAもしくはECLIAなどの別のイムノアッセイを使用して決定される場合、対応する血中sTREM-1レベルである比較することと、
c)ステップb)の所定のsTREM-1値よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0240】
一実施形態によれば、治療法は、免疫調節療法または抗炎症療法である。
【0241】
免疫調節療法または抗炎症療法の例としては、これらに限定されないが、抗PD-1、抗PD-L1および抗CTLA4などのチェックポイント阻害剤、TLR(Toll様受容体)阻害剤、抗サイトカインまたは抗サイトカイン受容体などのサイトカイン阻害剤(例えば、インターロイキン-1受容体拮抗薬のIL-1RA)、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、GM-CSF(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、IL-7(インターロイキン-7)、CD28アンタゴニストペプチドおよび抗体、特にCD28に対するモノクローナル抗体などの免疫賦活剤の阻害剤、ならびに養子細胞療法などの細胞療法が挙げられる。
【0242】
一実施形態では、治療法は、チェックポイント阻害剤、TLR(Toll様受容体)阻害剤、抗サイトカインまたは抗サイトカイン受容体などのサイトカイン阻害剤、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、IL-7(インターロイキン-7)、免疫賦活剤の阻害剤、および細胞治療法からなる群から選択される。換言すれば、一実施形態では、治療法は、チェックポイント阻害剤、TLR(Toll様受容体)阻害剤、サイトカイン阻害剤、G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)、IL-7(インターロイキン-7)、GM-CSF(顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)、免疫賦活剤の阻害剤、または細胞治療法のうちの少なくとも1つの投与を含むか、またはそれらの投与からなる。
【0243】
本明細書で使用される場合、チェックポイント阻害剤(CPI、免疫チェックポイント阻害剤またはICIとも呼ばれることがある)は、T細胞上に発現される阻害性受容体とそれらのリガンドとの間の相互作用を遮断する化合物を指す。チェックポイント阻害剤としては、抗体、特にモノクローナル抗体、および小分子阻害剤などの非抗体阻害剤が挙げられる。
【0244】
チェックポイント阻害剤の例としては、これらに限定されないが、CD279(分化クラスター279)としても公知である細胞表面受容体PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)の阻害剤、CD274(分化クラスター274)またはB7-H1(B7ホモログ1)としても公知であるリガンドPD-L1(プログラムされたデスリガンド1)の阻害剤、CD152(分化クラスター152)としても公知である細胞表面受容体CTLA4またはCTLA-4(細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4)の阻害剤、CD223(分化クラスター223)としても公知であるLAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)の阻害剤、HAVCR2(A型肝炎ウイルス細胞受容体2)またはCD366(分化クラスター366)としても公知であるTIM-3(T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有-3)の阻害剤、VSIG9(Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有タンパク質9)またはVSTM3(Vセットおよび膜貫通ドメイン含有タンパク質3)としても公知であるTIGIT(IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)の阻害剤、CD272(分化クラスター272)としても公知であるBTLA(BおよびTリンパ球アテニュエータ)の阻害剤、CD66a(分化クラスター66a)としても公知であるCEACAM-1(癌胎児性抗原関連細胞接着分子1)の阻害剤が挙げられる。
【0245】
本明細書で使用される場合、TLR阻害剤(TLRアンタゴニストとも呼ばれることがある)は、TLRシグナル伝達を遮断する化合物を指す。TLR阻害剤は、TLRリガンドの受容体への結合を遮断することによって、または細胞内シグナル伝達経路を遮断してシグナル伝達を停止することによって作用し得る(Gaoら、Front Physiol.2017;8:508)。TLR阻害剤としては、これらに限定されないが、小分子阻害剤、抗体、特にモノクローナル抗体、オリゴヌクレオチド、リピドA類似体、マイクロRNAおよびナノ阻害剤が挙げられる。
【0246】
本明細書で使用される場合、サイトカイン阻害剤は、サイトカインの合成を減少させる、遊離活性形態でそれらの濃度を減少させる、特定の受容体とのそれらの相互作用を遮断する、またはサイトカイン受容体のシグナル伝達を妨害する化合物を指す。サイトカイン阻害剤としては、これらに限定されないが、抗体、特にサイトカインに対するモノクローナル抗体(すなわち、抗サイトカイン抗体)、抗体、特にサイトカイン受容体に対するモノクローナル抗体(すなわち、抗サイトカイン受容体抗体)、サイトカイン受容体アンタゴニスト、およびデコイ受容体として作用する可溶性受容体が挙げられる。
【0247】
一実施形態によれば、治療法は、エンドトキシンを阻害または除去しようとする治療法であり、本明細書では抗エンドトキシン療法とも呼ばれる。
【0248】
抗エンドトキシン療法の例としては、これらに限定されないが、抗エンドトキシン抗体、特に抗エンドトキシンモノクローナル抗体などのエンドトキシン阻害剤、例えば、ヒト組換えAP(recAP)などの組換えアルカリホスファターゼ、および体外循環中の血液を、例えば、ポリミキシンB固定化ファイバーカートリッジ(PMX-DHP)など、毒素を吸着する材料と直接接触させることによって毒素の除去を可能にする血液灌流が挙げられる。
【0249】
一実施形態によれば、治療法は昇圧剤療法である。換言すれば、一実施形態によれば、治療法は、昇圧剤の投与を含むか、または昇圧剤の投与からなる。
【0250】
昇圧剤療法の例としては、これらに限定されないが、ノルエピネフリン、ドーパミン、エピネフリンなどの血管作用性カテコールアミンホルモン、バソプレッシン、および/またはフェニレフリンを投与することが挙げられる。
【0251】
一実施形態によれば、治療法は、血管新生阻害剤、特にアンジオポエチン-2(Ang-2またはAng2)阻害剤である。換言すれば、一実施形態によれば、治療法は、血管新生阻害剤、特にアンジオポエチン-2(Ang-2またはAng2)阻害剤の投与を含むか、またはそれらの投与からなる。
【0252】
特にアンジオポエチン-1(Ang-1)とTie 2などのアンジオポエチン-Tieシグナル伝達系は、正常な血管の発達に不可欠な血管特異的受容体チロシンキナーゼ経路である。当初、Ang-2は、Ang-1のアンタゴニストとして同定され、Ang-1によるTie2の活性化を阻害した。しかし、Ang-2が血管リモデリングの状況においてTie2のアンタゴニストまたはアゴニストであるかは依然として不明である。複数の研究では、Ang-2が炎症誘発性の血管リモデリングおよび腫瘍の血管新生および成長においてある役割を果たすことが示されている(Thurston&Daly、Cold Spring Harb Perspect Med.2012年9月1日;2(9):a006550)。
【0253】
本明細書で使用される場合、Ang-2阻害剤(Ang2アンタゴニストとも呼ばれることもある)は、Ang-2シグナル伝達を遮断する化合物、特に、Ang-2とTie2との相互作用を遮断する化合物を指す。したがって、本発明によれば、Ang-2阻害剤は、Ang-2に結合する阻害剤およびTie2に結合する阻害剤を含む。Ang-2阻害剤の例としては、これらに限定されないが、Ang-2に対する抗体、特にモノクローナル抗体、ABAとも呼ばれるAng2ブロッキング抗体(Hanら、Sci Transl Med.2016年4月20日;8(335):335ra55)、ABTAAとも呼ばれるAng2結合およびTie2活性化抗体(Hanら、Sci Transl Med.2016年4月20日;8(335):335ra55)、例えばVEGF(血管内皮増殖因子)およびAng-2を阻害する二重特異性ナノボディなどのAng-2に対するナノボディ、阻害性Ang-2結合ペプチドとIgFcドメインとの融合に対応するAng-2に対するペプチボディ、可溶性リガンド補足受容体とも呼ばれる可溶性デコイ受容体、アンチセンスRNAなどのオリゴヌクレオチド、Ang-2を特異的に遮断するRNAアプタマーなどのアプタマーが挙げられる。
【0254】
一実施形態によれば、治療法は、アドレノメデュリン(ADM)およびアドレノメデュリン標的療法である。
【0255】
アドレノメデュリンおよびアドレノメデュリン標的療法の例としては、これらに限定されないが、アドレノメデュリン(ADM)、例えば、ADMのボーラスまたはADMの持続注入、ADMを認識する抗体(抗AMD抗体)、例えば、生物学的に活性なADMを認識する抗体(抗バイオADM抗体)、特に、アドレシズマブなど非中和抗体などのモノクローナル抗体が挙げられる。
【0256】
一実施形態によれば、治療法は、TREM-1阻害剤である。換言すれば、一実施形態によれば、治療法は、TREM-1阻害剤の投与を含むか、またはTREM-1阻害剤の投与からなる。
【0257】
本発明によれば、TREM-1阻害剤は、TREM-1の機能、活性または発現を阻害することができる活性剤である。
【0258】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、TREM-1の機能、活性または発現を阻害するペプチド、TREM-1および/もしくはsTREM-1、またはTREM-1および/もしくはsTREM-1リガンドに向けられた抗体、TREM-1の機能、活性または発現を阻害する小分子、TREM-1に向けられたsiRNA、TREM-1に向けられたshRNA、TREM-1に向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチド、TREM-1に向けられたリボザイムおよびTREM-1に向けられたアプタマーからなる群から選択される。
【0259】
したがって、一実施形態では、本発明は、上記のTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定するためのin vitro方法に関し、本方法は、
a)ヒト対象からの生物学的サンプル中の骨髄細胞に発現する可溶性トリガー受容体-1(sTREM-1)のレベルを測定することと、
b)ステップa)で測定されたsTREM-1のレベルを上記の所定のsTREM-1値と比較することと、
c)ステップb)の所定のsTREM-1値よりも高いステップa)で測定されたsTREM-1レベルを有する、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を上記のTREM-1阻害剤の投与に応答しやすいとして特定することと、を含む。
【0260】
TREM-1の機能、活性または発現を阻害するペプチドの例としては、これらに限定されないが、例えば、TLT-1ペプチドなどの、TREM-1リガンドを標的とするペプチドが挙げられる。
【0261】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、TREM-1リガンドへのその結合を介してTREM-1を阻害するペプチドである。
【0262】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、TLT-1ペプチドである。
【0263】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号7(MGLTLLLLLLLGLEGQGIVGSLPEVLQAPVGSSILVQCHYRLQDVKAQKVWCRFLPEGCQPLVSSAVDRRAPAGRRTFLTDLGGGLLQVEMVTLQEEDAGEYGCMVDGARGPQILHRVSLNILPPEEEEETHKIGSLAENAFSDPAGSANPLEPSQDEKSIPLIWGAVLLVGLLVAAVVLFAVMAKRKQGNRLGVCGRFLSSRVSGMNPSSVVHHVSDSGPAAELPLDVPHIRLDSPPSFDNTTYTSLPLDSPSGKPSLPAPSSLPPLPPKVLVCSKPVTYATVIFPGGNKGGGTSCGPAQNPPNNQTPSS)に記載のアミノ酸配列を有するヒトTLT-1からの6~20の連続アミノ酸からなる短鎖TLT-1ペプチドであるか、または、配列番号7に記載のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85または90%の同一性を有する配列である。
【0264】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号7に記載のアミノ酸配列またはその機能保存的バリアントまたは誘導体を有するヒトTLT-1由来の6~20の連続アミノ酸からなる短鎖TLT-1ペプチドである。
【0265】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、6~12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸からなり、かつ配列番号8(LQEEDAGEYGCMVDGAR)に記載のLR17とも呼ばれるアミノ酸配列、配列番号9(LQEEDAGEYGCM)に記載のLR12とも呼ばれるアミノ酸配列、配列番号10(LQEEDA)に記載のLR6-1とも呼ばれるアミノ酸配列、配列番号11(EDAGEY)に記載のLR6-2とも呼ばれるアミノ酸配列、もしくは配列番号12(GEYGCM)に記載のLR6-3とも呼ばれるアミノ酸配列、またはそれぞれ、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85または90%の同一性を有する配列を含むTLT-1ペプチドである。
【0266】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、6~12、13、14、15、16、17、18、19または20のアミノ酸からなり、かつ配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12に記載のアミノ酸配列またはそれらの機能保存的バリアントまたは誘導体を含むTLT-1ペプチドである。
【0267】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号12に記載のアミノ酸配列、またはそれぞれ、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85または90%の同一性を有する配列を含むか、またはそれらからなるTLT-1ペプチドである。
【0268】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、または配列番号12に記載のアミノ酸配列またはそれらの機能保存的バリアントまたは誘導体を含むか、またはそれらからなるTLT-1ペプチドである。
【0269】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号12に記載のアミノ酸配列、またはそれぞれ、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85または90%の同一性を有する配列を有するTLT-1ペプチドである。
【0270】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、もしくは配列番号12に記載のアミノ酸配列、またはそれらの機能保存的バリアントもしくは誘導体を有するTLT-1ペプチドである。
【0271】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号9に記載のアミノ酸配列(LR12もしくはナンギボチドもしくはモトレムとしても公知である)を有するTLT-1ペプチド、または配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85、もしくは90%の同一性を有する配列である。
【0272】
一実施形態では、TREM-1阻害剤は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するTLT-1ペプチドであり、LR12もしくはナンギボチドもしくはモトレム、またはそれらの機能保存的バリアントもしくは誘導体としても公知である。
【0273】
本明細書で使用される場合、「機能保存的バリアント」という用語は、上記のとおりTLT-1ペプチドに由来するペプチドを意味し、ペプチド中の所与のアミノ酸残基が、TLT-1ペプチドの全体的なコンフォメーションおよび機能を変化させることなく変更されたものであり、これに限定されないが、類似の特性を有するものによるアミノ酸の置換が挙げられる(例えば、別の酸性または塩基性アミノ酸によって置換された同様の極性、同様の水素結合能の酸性または塩基性アミノ酸、別の疎水性アミノ酸によって置換された疎水性アミノ酸、別の芳香族アミノ酸によって置換された芳香族アミノ酸)。
【0274】
保存されていると示されたもの以外のアミノ酸はタンパク質内で異なる可能性があるため、類似の機能を有する任意の2つのタンパク質間のタンパク質またはアミノ酸配列の類似性の割合は、変化する可能性があり、例えば、類似性が、MEGALIGNアルゴリズムに基づくクラスター法などのアラインメント法に従って決定された場合、70%~99%であり得ることは一般に公知である。
【0275】
「機能保存的バリアント」はまた、例えば、BLASTまたはFASTAアルゴリズムによって決定されるように、上記のように、TLT-1ペプチドと少なくとも20%、30%、40%、50%、または60%のアミノ酸同一性を有し、上記のTLT-1ペプチドと同じまたは実質的に同様の特性または機能を有するTLT-1ペプチドを含む。好ましくは、「機能保存的バリアント」は、上記のようにTLT-1ペプチドと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%または90%のアミノ酸同一性を有し、かつ上記のTLT-1ペプチドと同じまたは実質的に同様の特性または機能を有するTLT-1ペプチドを含む。
【0276】
本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語は、ペプチドまたはその機能保存的バリアントのバリエーションを指し、ペプチドのin vitroまたはin vivoのコンフォメーション、活性、特異性、有効性または安定性を変化させるために他の方法で修飾される。例えば、バリエーションは、ペプチドへの任意の種類の分子の共有結合による、またはペプチドの任意のアミノ酸への化合物(複数可)の添加による修飾を含み得る。
【0277】
一実施形態では、上記のようなTLT-1ペプチドまたはその機能保存的バリアントまたは誘導体は、DまたはL配置を有し得る。
【0278】
一実施形態では、上記のTLT-1ペプチドまたはそれらの機能保存的バリアントまたは誘導体のアミノ末端からのアミノ酸は、アセチル化末端アミノ基を有し、カルボキシル末端からのアミノ酸は、アミド化末端カルボキシ基を有する。
【0279】
さらに、上記のTLT-1ペプチドまたはそれらの機能保存的バリアントまたは誘導体は、その生物学的利用能(安定性および脂溶性など)ならびに血液脳関門および上皮組織を通過するその能力を高めるために、可逆的化学修飾を受け得る。このような可逆的化学修飾の例としては、アミノ酸のグルタミン酸およびアスパラギン酸のカルボキシ基のアルコールによるエステル化が挙げられ、それによってアミノ酸の負電荷が除去され、その疎水性が増加する。形成されたエステル結合は、その結合を加水分解する細胞内エステラーゼによって認識され、アスパラギン酸およびグルタミン酸の残基への電荷を回復するため、このエステル化は可逆的である。内在化され、脱エステル化されたペプチドは細胞膜を通過できないため、正味の効果は細胞内ペプチドの蓄積である。
【0280】
そのような可逆的化学修飾の別の例としては、さらなるペプチド配列の添加が挙げられ、これにより、TATペプチドまたはペネトラチンペプチドなどの膜透過性が増加し得る(Charge-Dependent Translocation of the Trojan.A Molecular View on the Interaction of the Trojan Peptide Penetratin with the 15 Polar Interface of Lipid Bilayers.Biophysical Journal、第87巻、Issue 1、2004年7月1日、332-343ページを参照されたい)。
【0281】
上記のTLT-1ペプチドまたはその機能保存的バリアントまたは誘導体は、Fmocおよび/またはBocベースの方法論に従って、固相化学ペプチド合成の従来の方法により得ることができる(Pennington,M.W.and Dunn,B.N.(1994年)Peptide synthesis protocols.Humana Press、Totowa.を参照されたい)。
【0282】
あるいは、上記のTLT-1ペプチドまたは機能保存的バリアントまたは誘導体は、組換えDNA技術に基づく従来の方法、例えば、簡潔に言えば、ペプチドをコードする核酸配列を適切なプラスミドまたはベクターに挿入すること、プラスミドまたはベクターのためにコンピテントセルを形質転換すること、およびペプチドの発現を可能にする条件下で細胞を成長させること、ならびに所望の場合、これらの問題の専門家に公知である従来の手段を介して、ペプチドまたはペプチドを発現する真核細胞を単離および(任意により)精製することを含む方法によって得られ得る。組換えDNA技術の原理のレビューは、例えば、タイトル「Principles of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Engineering」(R.W.Old&S.B.Primrose、Blackwell Scientific Publications発行、第4版(1989年))の教科書で見ることができる。
【0283】
一実施形態によれば、TREM-1阻害剤は、上記のTLT-1ペプチド、特に、LR12またはナンギボチドまたはモトレムとしても公知である、配列番号9に記載のアミノ酸配列、または配列番号9に記載のアミノ酸配列と少なくとも60、65、70、75、80、85または90%の同一性を有する配列を有するTLT-1ペプチドであり、TLT-1ペプチドは、連続注入によって、好ましくは連続静脈内注入によって、体重1kgあたり約0.1mg/h(mg/kg/h)~約2.5mg/kg/h、好ましくは約0.3mg/kg/h~約1mg/kg/h、さらにより好ましくは約0.3mg/kg/h~約0.9mg/kg/hの範囲の用量で、ヒト対象に投与されるものとする。一実施形態では、TLT-1ペプチドは、連続注入によって、好ましくは連続静脈内注入によって、約0.15g/24時間~約4.5g/24時間、好ましくは約0.5g/24時間~約2g/24時間、さらにより好ましくは約0.5g/24時間~約1.5g/24時間の範囲の用量でヒト対象に投与されるものとする。
【0284】
一実施形態では、TLT-1ペプチドは、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1mg/kg/hの用量で、好ましくは約0.3mg/kg/hの用量で、連続注入によって、好ましくは連続静脈内注入によって、ヒト対象に投与されるものとする。一実施形態では、TLT-1ペプチドは、約0.3mg/kg/hまたは約1mg/kg/hの用量で、連続注入によって、好ましくは連続静脈内注入によって、ヒト対象に投与されるものとする。一実施形態では、TLT-1ペプチドは、連続注入によって、好ましくは連続静脈内注入によって、約0.15、0.30、0.45、0.60、0.75、0.90、1.05、1.2、1.35、1.5、1.65、1.8または2g/24時間の用量でヒト対象に投与されるものとする。
【0285】
一実施形態では、TLT-1ペプチドは、少なくとも24時間および/または最大で5日間ヒト対象に投与されるものとする。一実施形態では、TLT-1ペプチドは、24時間、48時間、72時間、96時間、または120時間、ヒト対象に投与されるものとする。したがって、一実施形態では、TLT-1ペプチドは、1日間、2日間、3日間、4日間または5日間ヒト対象に投与されるものとする。
【0286】
一実施形態では、上記のTLT-1ペプチドの連続投与の前に、負荷用量のTLT-1ペプチドを投与するものとする。一実施形態では、TLT-1ペプチドの負荷用量は、約0.5mg/kg~約5mg/kgの範囲の用量である。一実施形態では、TLT-1の負荷用量は、約0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.665、1.75、2、2.25、2.5、2.75、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75または5mg/kg、好ましくは約1.665mg/kgまたは5mg/kgの用量である。一実施形態では、上記のTLT-1ペプチドの負荷用量は、好ましくは静脈内注射によって、約15分にわたって投与されるものとする。したがって、一実施形態では、TLT-1ペプチドの負荷用量は、約2mg/kg/h~約20mg/kg/hの範囲の用量である。一実施形態では、TLT-1ペプチドの負荷用量は、約2、3、4、5、6、6.66、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20mg/kg/h、好ましくは6.66または20mg/kg/hの用量である。
【0287】
一実施形態によれば、上記のような治療法は、患者ケアの開始後、特に昇圧剤療法の開始後、最初の2時間~最初の24時間に投与されるものとする。
【0288】
一実施形態では、上記の治療法は、患者ケアの開始後、特に昇圧剤療法の開始後、最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間または24時間以内に投与されるものとする。
【0289】
一実施形態では、対象は、医療処置を受けるのを待っているもしくは医療処置を受けている、または医療処置の対象であった/ある/予定であるか、または炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックなどの疾患の発症または進行について監視されているヒト患者である。
【0290】
一実施形態では、対象は、敗血症性ショックで入院しているヒト患者である。
【0291】
一実施形態では、対象は、記録された、または疑わしい感染症に罹患している。
【0292】
一実施形態では、対象は、市中感染に罹患している。一実施形態では、対象は、院内感染に罹患している。
【0293】
感染症の例としては、これらに限定されないが、呼吸器感染症、腹部感染症、および尿路感染症(UTI)、髄膜炎、心内膜炎、皮膚感染症、骨感染症、創傷感染症、カテーテル関連血流感染症、デバイス関連感染症が挙げられる。
【0294】
一実施形態では、対象は男性である。別の実施形態では、対象は女性である。一実施形態では、対象は妊婦である。
【0295】
一実施形態では、対象は成人である。一実施形態では、対象は高齢者である。一実施形態では、対象は小児である。一実施形態では、対象は乳児である。一実施形態では、対象は新生児である。
【0296】
一実施形態では、対象は、免疫低下状態、免疫抑制状態、または免疫不全状態ではない。別の実施形態では、対象は、免疫低下状態、免疫抑制状態、または免疫不全状態である。別の実施形態では、対象は免疫抑制療法を受けている。
【0297】
一実施形態では、対象は、心房細動、癌、慢性腎臓病、慢性肺疾患、肝硬変、冠状動脈疾患、深部静脈血栓症、糖尿病、脂質異常症、心内膜炎、高血圧、インフルエンザ、マラリアなどの慢性病状、または他の任意の原生動物寄生虫症、心筋梗塞、神経疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、末梢動脈疾患、肺線維症、重度の肥満および脳卒中に罹患している。
【0298】
一実施形態によれば、炎症性障害は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、敗血症性ショック、敗血症に関連する臓器機能不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、急性腎障害(AKI)、膵炎、炎症性腸疾患、肺炎、内毒素血症および出血性ショックを含むか、またはそれらからなる群から選択される。
【0299】
一実施形態によれば、炎症性障害は急性炎症性障害である。
【0300】
急性炎症性障害の例としては、これらに限定されないが、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性腎障害(AKI)、膵炎および出血性ショックが挙げられる。
【0301】
一実施形態では、急性炎症性障害は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性腎障害(AKI)、膵炎および出血性ショックを含むか、またはそれらからなる群から選択される。
【0302】
一実施形態によれば、炎症性障害は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症、敗血症性ショック、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および急性腎障害(AKI)を含むか、またはそれらからなる群から選択される。
【0303】
一実施形態では、炎症性障害は、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症または敗血症性ショックである。
【0304】
一実施形態では、炎症性障害は敗血症性ショックである。
【0305】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、全身性炎症および広範な組織損傷を特徴としている。臨床的には、SIRSは次の4つの基準のうち少なくとも2つを満たすと定義されている:発熱>38.0℃または低体温<36.0℃、頻脈>90拍/分、頻呼吸>20呼吸/分、および白血球増加>12x10/Lまたは白血球減少<4x10/L(Boneら、Chest.1992年6月;101(6):1644-55)。SIRSは、感染性起源または非感染性起源のいずれかの非特異的傷害に対する応答として発生し得る。非感染性起源の傷害の例としては、これらに限定されないが、外傷、熱傷、膵炎、自己免疫疾患、および外科手術が挙げられる。感染性起源の傷害の例としては、細菌感染症(例えば、呼吸器感染症、腹部感染症および尿路感染症(UTI)、真菌感染症(例えば、呼吸器感染症)およびウイルス感染症(例えば、呼吸器感染症)が挙げられる。
【0306】
上記のとおり、敗血症は、感染に対するヒト対象の調節不全の応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全として定義されている(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。敗血症の患者は、記録された、または疑われる感染症および臓器機能不全に罹患している患者として臨床的に特定され得る。一実施形態では、ヒト対象における臓器機能不全は、臓器機能不全スコア、すなわち、特にICUまたは救急室への入院時に、ヒト対象における臓器機能不全を評価するために使用されるスコアを使用して特定することができる。臓器機能不全スコアの例としては、これらに限定されないが、SOFAスコア、qSOFAスコア、MODS(多臓器不全スコア)、P-MODS(小児多臓器不全スコア)、およびLODS(ロジスティック臓器不全システム)が挙げられる。一実施形態では、ヒト対象における臓器機能不全は、感染の結果としての2ポイント以上の総SOFAスコアの急性変化として特定することができる(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。ベースラインSOFAスコアは、既存の臓器機能不全を有することが知られていない患者ではゼロであると見なされ得る(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。
【0307】
敗血症性ショックは、敗血症のサブセットとして定義され、特に深刻な循環器、細胞、および代謝の異常は、敗血症のみの場合よりも高い死亡リスクと関連している。したがって、敗血症は敗血症性ショックを包含する。敗血症性ショックの患者は、敗血症を患っており、(i)十分な量の蘇生にもかかわらず平均動脈圧を65mmHg以上に維持するために昇圧剤を必要とする低血圧が持続し、かつ(ii)血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超える患者として臨床的に特定され得る(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10に記載されている敗血症-3の定義)。これらの基準では、病院死亡率は40%を超えている(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。
【0308】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の調節不全反応を誘発する感染症は、細菌感染症、真菌感染症、またはウイルス感染症である。
【0309】
感染症の例としては、これらに限定されないが、呼吸器感染症、腹部感染症、および尿路感染症(UTI)が挙げられる。
【0310】
一実施形態によれば、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、重症度スコア、すなわち、ICUまたは救急室への入院時の疾患の重症度および/または予後を評価するために使用されるスコアを使用して評価され得る。重症度スコアの例としては、これらに限定されないが、APACHEIIスコア、APACHEIIIスコア、APACHEIVスコア、SAPSスコア、SAPSIIスコア、およびSAPS3スコアが挙げられる。
【0311】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、APACHEII(「急性生理学および慢性健康評価II」を参照)スコアリングシステムを使用して評価され得る。APACHEIIは、集中治療室に入院した成人患者の疾患の重症度を評価し、その予後を判断するために一般的に使用される。APACHEIIは、12の日常的な生理学的測定値、年齢、および以前の健康状態の初期値に基づく0~71の範囲のポイントスコアを使用して、疾患の重症度の一般的な測定値を提供する(Knausら、Crit Care Med.1985年10月;13(10):818-29)。APACHEIIスコアは、集中治療室(ICU)または救急室に入院時最初の24時間に決定され得る。より高いスコアはより高い予測死亡率と関連しており、25のスコアは50%の予測死亡率を表し、35を超えるスコアは80%の予測死亡率を表す。
【0312】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、34未満のAPACHEIIスコアを有する。一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は瀕死状態ではない。
【0313】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、APACHEIII(「急性生理学および慢性健康評価」IIIを参照)スコアリングシステムを使用して評価され得る。APACHEIIIは、重症の入院成人の病院死亡リスクをより正確に予測するために、APACHEIIスコアリングシステムから再定義される(Knausら、Chest.1991年12月;100(6):1619-36)。
【0314】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、APACHEIV(「急性生理学および慢性健康評価IV」を参照)スコアリングシステムを使用して評価され得る。APACHEIVは、短期死亡のリスクを推定するため、ならびに集中治療室(ICU)の滞在の長さを予測するための、改善され、更新されたモデルである(Zimmermanら、Crit Care Med.2006年5月;34(5):1297-310)。APACHEIVスコアリングシステムでは、特に人工呼吸、血栓溶解、鎮静がGlasgow昏睡スケールに及ぼす影響、再スケーリングされたGlasgow昏睡スケール、PaO/FiO比、および疾患固有のサブグループなど、より多くの変数が考慮される。APACHEIVでは、0~286の範囲のポイントスコアを使用する。
【0315】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、SAPSII(「簡略化急性生理学的スコアII」を参照)スコアリングシステムを使用して評価され得る。SAPSIIは、集中治療室(ICU)に入院した成人患者の院内死亡率を推定するためのスコアリングシステムである。SAPSIIには、17の変数が含まれ、12の生理学変数、年齢、入院の種類、および基礎疾患に関する3つの変数である(Le Gallら、JAMA.1993年12月22~29日;270(24):2957-63)。SAPSIIでは、0~163の範囲のポイントスコアを使用する。
【0316】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、SAPS3(「簡略化急性生理学的スコアIII」を参照)スコアリングシステムを使用して評価され得る。SAPS3は、集中治療室(ICU)に入院した患者の病院死亡率を予測するためのスコアリングシステムである(Metnitzら、Intensive Care Med.2005年10月;31(10):1336-1344およびMorenoら、Intensive Care Med.2005年10月;31(10):1345-55)。SAPS3は、20の異なる変数に基づく。
【0317】
上記のように、敗血症または敗血症性ショックに関連する臓器機能不全の存在は、SOFAスコア、qSOFAスコア、MODS(多臓器不全スコア)、P-MODS(小児多臓器不全スコア)、またはLODS(ロジスティック臓器不全システム)などの臓器機能不全スコアを使用して評価され得る。
【0318】
逐次臓器不全評価(SOFA)スコア(当初は、敗血症関連臓器不全評価と称されていた、Vincentら、Intensive Care Med.1996年7月;22(7):707-10)は、特にICUまたは救急室への入院時にヒト対象の臓器機能不全を評価するために一般的に使用されるスコアリングシステムである。SOFAスコアリングシステム(Vincentら、Crit Care Med.1998年11月;26(11):1793-800)は、呼吸器系(すなわち、PaO/FiO(mmHg))、神経系(すなわち、Glasgow昏睡スケール)、心臓血管系(すなわち、平均動脈圧または必要な昇圧剤の投与)、肝機能(すなわち、ビリルビン(mg/dLまたはμmol/L))、凝固(すなわち、血小板数)、腎機能(すなわち、クレアチニン(mg/dLまたはμmol/L)または尿量(mL/d))の評価に依存する。
【0319】
ベースラインSOFAスコアは、感染の発症前に既存の(急性または慢性)臓器機能不全を有することがわかっていない患者ではゼロであると見なすことができる。少なくとも2ポイントのSOFAスコアは、感染が疑われる一般病院の集団における約10%の全体的な死亡リスクを反映している(Singerら、JAMA.2016年2月23日;315(8):801-10)。
【0320】
一実施形態では、ヒト対象は、少なくとも2ポイントのSOFAスコアに関連するSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している。
【0321】
一実施形態では、ヒト対象は、少なくとも2ポイントのSOFAスコアの急性変化として定義される臓器機能不全に関連するSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している。
【0322】
敗血症または敗血症性ショックに関連する臓器機能不全の存在は、クイックSOFAスコア(quickSOFAまたはqSOFAとも呼ばれる)を使用して評価することもできる。qSOFAスコアリングシステムは、次の3つの基準:呼吸数≧22呼吸/分、意識障害(Glasgow昏睡スケール<15)、および収縮期血圧≧100mmHgに依存する(Seymourら、JAMA.2016年2月23日;315(8):762-74)。
【0323】
一実施形態では、ヒト対象は、少なくとも2ポイントのqSOFAスコアに関連するSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している。
【0324】
一実施形態では、ヒト対象は、少なくとも2ポイントのqSOFAスコアの急性変化として定義される臓器機能不全に関連するSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している。
【0325】
一実施形態によれば、ヒト対象は、敗血症性ショックに罹患している。
【0326】
一実施形態によれば、ヒト対象は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患しており、標準治療を受けている。標準治療、特に敗血症性ショックの標準治療としては、これらに限定されないが、輸液療法、上記の昇圧剤療法、心血管サポート、呼吸サポート(人工呼吸など)、腎サポートおよび/または鎮静を挙げることができる。したがって、一実施形態では、ヒト対象は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患しており、輸液療法、上記に記載の昇圧剤療法、心血管サポート、呼吸サポート(人工呼吸など)、腎サポートおよび/または鎮静を受けている。
【0327】
本発明によれば、上記の方法で特定された炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象は、上記のとおり、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい。
【0328】
一実施形態によれば、上記の方法の目的は、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定することであり、ヒト対象は、「応答者」であり、すなわち、上記のような治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答するかまたは応答しやすい。
【0329】
逆に、本発明において、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患し、「非応答者」であるヒト対象は、治療法、特に、上記のTREM-1阻害剤の投与に応答しないか、または応答しにくいヒト対象である。
【0330】
一実施形態によれば、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象について、上記のような治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に対する応答は、TREM-1阻害剤の投与後に発生する以下のうちの少なくとも1つによって特徴付けられる:
-好ましくは治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与期間内または投与期間後、例えば、投与終了後6時間、12時間、18時間または24時間にわたる、低血圧ショックが逆転することであって、ショックが逆転することは、24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないこととして定義される(すなわち、昇圧剤療法の終了後24時間以内に昇圧剤療法を再開する必要がない)、
-ICUまたは救急室への入院時に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の疾患の重症度および/または予後を評価するために使用される重症度スコア(APACHEIIスコア、APACHEIIIスコア、APACHEIVスコア、SAPSスコア、SAPSIIスコア、またはSAPS3スコアなど)が低下すること、
-ICUまたは救急室への入院時に、炎症性障害、好ましくはSIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の臓器機能不全の存在を評価するために使用される臓器機能不全スコア(SOFAスコア、qSOFAスコア、MODS(多臓器不全スコア)、P-MODS(小児多臓器不全スコア)、またはLODS(ロジスティック臓器不全システム)など)が低下すること、
-好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアを参照して、特に治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、SOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアが低下することであって、一実施形態では、SOFAスコアが低下することは、好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアおよび/またはqSOFAスコアを参照して、特に治療法の投与開始後3日目または5日目に、少なくとも1ポイント(デルタ-1ポイントまたはΔSOFA-1ポイントとも呼ばれる)、好ましくは少なくとも1.5ポイント低下すること、
-心血管サポートの必要性が減少することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の心血管サポートの必要性を参照して、特に治療法(好ましくは、TREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって昇圧剤療法の使用が減少すること、
-呼吸サポートの必要性が減少することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の呼吸サポートの必要性を参照して、特に治療法、好ましくはTREM-1阻害剤の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって侵襲的人工呼吸(IMV)の使用が減少すること、
-腎サポートの必要性が低下することであって、例えば、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前の腎サポートの必要性を参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたってRRT(透析など)とも呼ばれる持続的または非持続的腎代替療法の使用が減少すること、
-再感染のリスクが減少することであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後における再感染のリスクが減少すること、
-再感染がないことであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後に再感染がないこと、
-再入院のリスクが減少することであって、特に最初の炎症性障害、特に炎症性障害の原因となる最初の感染から28日、90日または365日後における再感染のリスクが減少すること、
-再入院がないことであって、特に最初の入院から28日、90日または365日後の再入院がないこと、
-生存機会が増長することであって、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与の開始後、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年生存することであって、一実施形態では、特に複数の併存疾患を有する対象における生存機会は、好ましくは、ICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたCCIを参照して、Charlson併存疾患指数(CCI)で評価され、10年生存機会の増長が、Charlson併存疾患指数の減少に対応する、増長すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目に敗血症関連死のリスクが低下すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目にすべての死因のリスクが低下すること、
-特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後5日目、28日目、90日目または365日目に敗血症後またはショック後の罹患率のリスクが低下すること、
-特に敗血症後またはショック後の生活の質において生活の質が向上することであって、これは、例えば、EQ5Dから推定される生存および質調整生存年(QALY)の評価により評価され得る。例えば、EQ 5D 5Lの健康関連生活の質(HRQoL)スコアが計算され、治療法の投与開始後、特に3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月または36ヶ月のユーティリティスコアに変換され得る。
-好ましくはICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたレベルを参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、例えばCRPまたはIL6、IL-8、IL-10、MCP-1およびTNF-αなどの炎症マーカーのレベルが低下すること、または
-好ましくはICUまたは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたレベルを参照して、特に治療法(好ましくはTREM-1阻害剤)の投与開始後1日、2日、3日、4日、5日、6日または7日にわたって、例えば、Ang-2、VCAM-1、VGEFR-1およびE-セレクチンなどの内皮損傷マーカーのレベルが低下すること。
【0331】
一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患し、治療法、特にTREM-1阻害剤の投与に応答しやすい、上記のようなヒト対象、すなわち応答者は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患し、好ましくは治療法(特にTREM-1阻害剤)の投与期間内または例えば投与終了後6時間、12時間、18時間または24時間にわたる投与期間後、低血圧ショックを逆転させやすいヒト対象であり、低血圧ショック逆転は、24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないものとして定義される(すなわち、昇圧剤療法の終了後24時間で昇圧剤療法を再開する必要がない)。
【0332】
逆に、一実施形態では、SIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患し、治療法、特に上記のTREM-1阻害剤の投与に応答しにくいヒト対象、すなわち非応答者は、SIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患し、好ましくは治療法(特にTREM-1阻害剤)の投与期間内または例えば、投与終了後6、12、18または24時間投与期間後、低血圧ショックの逆転が生じ得ないヒト対象であって、低血圧ショック逆転は、24時間の間にいかなる昇圧剤療法もないものとして定義されるヒト対象か、またはSIRS、敗血症または敗血症性ショック、好ましくは敗血症性ショックに罹患しているヒト対象であって、治療法(特にTREM-1阻害剤)の中止後、6、12、18、または24時間以内に昇圧剤療法を再開する必要があるヒト対象である。
【0333】
一実施形態では、応答者は、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象であり、上記のようにTREM-1阻害剤の投与後、逐次臓器不全評価(SOFA)スコアが低下しやすい。
【0334】
一実施形態では、応答者は、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象であり、ICUまたは救急室への入院時または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアを参照して、上記のようにTREM-1阻害剤の投与後、逐次臓器不全評価(SOFA)スコアが低下しやすい。
【0335】
本明細書で使用される場合、特にICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアを参照して、TREM-1阻害剤の投与後のSOFAスコアの差はまた、デルタSOFAスコアまたはΔSOFAスコアと呼ばれる場合がある。
【0336】
一実施形態では、応答者は、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象であり、特にICUもしくは救急室への入院時、または治療法の投与開始前に評価されたSOFAスコアを参照して、上記のようなTREM-1阻害剤の投与後、SOFAスコアが少なくとも1ポイント、好ましくは少なくとも1.5ポイント減少しやすい。
【0337】
したがって、一実施形態では、応答者は、SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患しているヒト対象であり、上記のようなTREM-1阻害剤の投与後、少なくとも-1ポイント(マイナス1ポイント)、好ましくは少なくとも-1.5ポイント(マイナス1.5ポイント)のデルタSOFAスコア(ΔSOFAスコア)を有しやすい。
【0338】
一実施形態では、SOFAスコアの減少、特に少なくとも1ポイント、好ましくは少なくとも1.5ポイントの減少は、治療法の投与開始後1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目または7日目、好ましくは治療法の投与開始後3日目または5日目に評価された減少である。
【0339】
したがって、一実施形態では、デルタSOFAスコア(ΔSOFAスコア)は、治療法の投与開始後1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目または7日目、好ましくは治療法の投与開始後3日目または5日目に評価されるデルタSOFAスコアである。
【0340】
本明細書では、出願人は、敗血症性ショックに罹患しているヒト対象からの生物学的サンプル中の可溶性TREM-1(sTREM-1)のレベルを測定し、それらの測定されたsTREM-1レベルを所定のsTREM-1値と比較することにより、TREM-1阻害剤に応答しやすい敗血症性ショックに罹患しているヒト対象を特定できることを示している。特に、出願人は、敗血症性ショックに罹患しているヒト対象の参照集団において所定の中央値sTREM-1レベルよりも高い循環レベルのsTREM-1を有する敗血症性ショックに罹患しているヒト対象が、TREM-1活性を阻害するTLT-1ペプチドの投与に応答し、したがってそれらから利益を得る可能性が高いことを示している。
【0341】
SIRS、敗血症または敗血症性ショックに罹患している対象の予後については、迅速な患者ケアが必須である。
【0342】
sTREM-1のレベル、特にsTREM-1タンパク質のレベルの測定は、特にポイントオブケア検査(POCT)またはベッドサイド検査、または中央検査室アッセイ(患者の近くで行う検査)で極めて迅速に実施され得る。したがって、sTREM-1のレベルは、SIRS、敗血症、もしくは敗血症性ショックの発症直後、ヒト対象のSIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックの診断後、SIRS、敗血症もしくは敗血症性ショックのためのヒト対象の入院、特にICUもしくは救急室への入院後、または昇圧剤療法の開始後に測定され得る。したがって、結果は、最初の2時間、3時間、6時間、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、または24時間以内に利用可能になり得、治療プランはその直後に決定され得る。
【図面の簡単な説明】
【0343】
図1】sTREM-1の放出がTREM-1の二量体化に依存することを示す図である。(図1A)アイソタイプ対照(淡灰色)と比較した、U937(灰色)およびU937-vitD細胞(濃灰色)でのフローサイトメトリーによるTREM-1発現を示すグラフである。(図1B)共焦点顕微鏡によるTREM-1の発現および細胞核の染色を示す一連の写真である。白い矢印は、LPSとのインキュベーション後のU937-vitD細胞の膜でのTREM-1のクラスター化および二量体化を示している。(図1C)休止状態またはAPMA、Pro-MMP9、Act-MMP9、またはLPS(示したとおり100ng/mL)で30分間インキュベート後の、U937およびU937-vitD細胞の上清中のsTREM-1濃度を示すグラフである。LOQ:定量化限界。
図2】ベースラインでのTREM-1が28日死亡率と相関していることを示す一連のグラフである。28日死亡率の四分位数によるROCプロット(図2A)およびKaplan-Meierプロット(図2B)を示す図である。四分位数あたりの死亡率(28日目)は、Q1からQ4でそれぞれ12%、30%、37%、および49%である。全体の死亡率は32%である。最適なカットポイントは、408pg/mLにあると判断した。
図3】(A)28日死亡率および(B)90日死亡率について、ベースライン(1日目)でのsTREM-1の一連の箱ひげ図である。Kruskal-Wallis検定のカイ2乗は、それぞれ28.8および29.5である(両方ともp<0.0001)。
図4】(A)28日死亡率および(B)90日死亡率について、2日目でのsTREM-1の一連の箱ひげ図である。Kruskal-Wallis検定のカイ2乗は、それぞれ30.2および30.8である(両方ともp<0.0001)。
図5】(A)28日死亡率および(B)90日死亡率について、3日目でのsTREM-1の一連の箱ひげ図である。Kruskal-Wallis検定のカイ2乗は、16.9(p=0.0001)および19.1(p=0.0002)である。
図6】入院時(RRT adm)およびICU滞在中(RRT後)の腎代替療法(RRT)の(A)1日目(B)2日目(C)3日目のsTREM-1の一連の箱ひげ図である。Kruskal-Wallis検定のカイ2乗は、それぞれ54.7(p<0.0001)、68.7(p<0.0001)および44(p<0.0001)である。
図7】敗血症性ショック患者(NCT03158948)へのナンギボチド(モトレムとしても公知である)の投与を評価する第IIa相臨床試験の2つの段階を示すスキームである。
図8】各治療群における患者の無作為化を示すスキームである。
図9】ナンギボチドの薬物動態を示す一連のグラフである。(A)注入の開始(0日目)から注入の終了(5日目)まで各群(すなわち、0.3mg/kg/hを投与された患者、1.0mg/kg/hを投与された患者、および3.0mg/kg/hを投与された患者)におけるナンギボチド動態および(B)注入終了後の各群(すなわち、0.3mg/kg/hを投与された患者、1.0mg/kg/hを投与された患者、および3.0mg/kg/hを投与された患者)におけるナンギボチド動態。丸:0.3mg/kg/h;四角:1mg/kg/h;三角形:3mg/kg/h。
図10】(A)全集団、(B)ベースラインにおいてsTREM-1が低い患者(中央値433pg/mL未満)、(C)ベースラインにおいてsTREM-1が高い患者(中央値433pg/mL以上)において、ベースライン(LOCF)に対する時間変化に伴うSOFA評価の変化を示す一連のグラフである。
図11】ベースラインにおいて高レベルのsTREM-1(中央値433pg/mLを超える)の患者の臓器サポートのない日数を示す一連のグラフである:(A)昇圧剤を使用せずに生存している日数、(B)侵襲的人工呼吸器(IMV)を使用せずに生存している日数、(C)腎不全なくおよび持続的腎代替療法(CRRT)を使用せずに生存している日数。
図12】「すべて」(全集団に対応)、「G1」サブグループ(ベースラインにおいてsTREM-1が低い、すなわち中央値433pg/mL未満の患者に対応)および「G2」サブグループ(ベースラインにおいてsTREM-1が高い、すなわち中央値433pg/mLを超える患者に対応)における、3日目(A)および5日目(B)のベースラインからのAng-2濃度の変化を示す一連のグラフである。
図13】「すべて」(全集団に対応)、「G1」サブグループ(ベースラインにおいてsTREM-1が低い、すなわち中央値433pg/mL未満の患者に対応)および「G2」サブグループ(ベースラインにおいてsTREM-1が高い、すなわち中央値433pg/mLを超える患者に対応)における、3日目(A)および5日目(B)のベースラインからのIL-6濃度の変化を示す一連のグラフである。
図14】(A)サブグループG1(sTREM-1ベースラインが中央値を下回る患者)およびサブグループG2(中央値を超えるsTREM-1ベースラインの患者)でのすべての集団におけるベースラインからの5日目/EOI(注入の終了)でのsTREM-1の変化、(B)5日目のデルタSOFA間の関連(5日目/EOIとベースラインとの間のデルタ)を示す一連のグラフである。
【0344】
実施例
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
実施例1:
材料および方法
細胞培養および刺激
【0345】
ヒト骨髄単球性細胞株U937(Culture Collections、Public Health England No.85011440)は、10%ウシ胎児血清、25mM Hepes、100U/mlペニシリンおよびストレプトマイシン(すべてThermo Fisher Scientific、USAより)を補充したRPMI 1640 Glutamaxで培養した。いくつかの実験については、U937細胞を100nMの1,25-ジヒドロキシビタミンD3(Sigma-Aldrich、USA)を補充した同条件下で培養し、TREM-1の上方制御を誘導した(U937-vitD細胞)。放出実験では、Pro-MMP-9は、1mM APMAと37℃で24時間プレインキュベーションすることにより活性化させた。細胞を0.5x10細胞/mLで播種し、大腸菌0127:B8のLPS(10μg/mL;Sigma-Aldrich)、Pro-MMP-9(1μg/mL;R&D systems、Abingdon、UK)、ρ-アミノフェニル水銀アセテート(APMA;1mM;Sigma-Aldrich)、およびAPMAで活性化されたMMP-9(1μg/mL)で、37℃で30分間刺激した。細胞上清を収集し、ヒトTREM-1 Quantikine ELISA Kit(Biotechne、R&D Systems)を製造業者の指示に従って使用して、sTREM-1を測定した。
FACS分析
【0346】
TREM-1の発現は、5μL アロフィコシアニン(APC)結合マウスモノクローナル抗ヒトTREM-1または対応するアイソタイプAPC抗体(Miltenyi Biotec、German)で4℃、暗所で30分間染色した後、FACSによって検出した。PBSで2回洗浄後、細胞を再懸濁し、4%パラホルムアルデヒドで固定した。分析には、Accuri C6フローサイトメーター(Becton Dickinson、San Jose、CA、USA)を使用した。
共焦点顕微鏡
【0347】
細胞を0.3x10細胞/ウェルで播種し、LabTekチャンバー(Thermo Fisher Scientific)で大腸菌0127:B8のLPS(1μg/mL;Sigma-Aldrich)で1時間刺激した。刺激後、細胞を洗浄し、パラホルムアルデヒド(4%)で20分間固定し、Triton 0.1%で30分間透過処理した後、一次抗体(抗hTREM-1-AF488;Bioss、USA)と4℃で一晩インキュベートした。核をTO-PRO-3(1μg/mL;Invitrogen、USA)で37℃で1時間染色した。洗浄後、Vectashield(Vector Laboratories、USA)の溶液を使用してカバースリップを取り付けた。共焦点画像は、適切なフィルターセットを備えたLeica SP5共焦点レーザー走査顕微鏡システム(Leica、Germany)を使用して得て、シーケンシャルスキャンモードで得られた。
結果
sTREM-1は、TREM-1の活性化のマーカーである。
【0348】
TREM-1の二量体化は、自然免疫細胞での活性化に必須であることは、すでに説明している(Carrascoら、Cell Mol Immunol.2018年3月22日)。これは、TLRの最初の関与によってトリガーされる。確かに、ヒト初代単球および好中球の刺激は、膜でのTREM-1の動員およびクラスター化を誘導することができた。したがって、TREM-1の二量体構成は、受容体の活性コンフォメーションであり、その内因性リガンドに結合することができ、かつ下流の細胞内経路の活性化を誘導できることが確認された。メタロプロテイナーゼが、その長い膜近傍リンカーのタンパク質分解による切断を介してTREM-1外部ドメインの放出に関与することがこれまでに実証されている(Gomez-Pinaら、J Immunol.2007年9月15日;179(6):4065-73)。本出願人らは、本明細書でこの放出がTREM-1の二量体化を必要とすることを示し、受容体がその活性コンフォメーションにある場合にのみ、sTREM-1の放出が可能であることを示唆した。TREM-1は、休止状態のU937細胞では非常に低レベルで発現し、ビタミンDを培養培地に添加する場合に上方制御される(図1A)。TREM-1のタンパク質分解による切断およびその後のsTREM-1の放出が、TREM-1の活性なコンフォメーションに関連しているかを調べるために、U937およびU937-vitD細胞の上清中のsTREM-1をLPSおよび/またはAct-MMP9と共に15分間インキュベーションした後に測定した。TREM-1の発現は、休止中のU937-vitD細胞の膜で拡散され、LPSは膜においてTREM-1のクラスター化および二量体化を誘導できた(図1B、白い矢印)。LPS刺激後、および活性化MMP9(Act-MMP9)の添加後のいずれも、U937細胞の上清中にはsTREM-1は検出できなかった。U937-vitD細胞とLPSまたはAct-MMP9のみとのインキュベーションは、sTREM-1の放出との関連はなかった。興味深いことに、sTREM-1は、U937-vitDがLPSおよびAct-MMP9と共刺激された状態でのみU937-vitD細胞によって放出された(図1C)。これらの結果から、TREM-1のMMP9誘導性タンパク質分解による切断が、TREM-1が受容体の活性コンフォメーションである二量体状態にある場合にのみ可能であることが確認される。したがって、sTREM-1は、TREM-1受容体活性化の信頼できるバイオマーカーであり得る。
実施例2:
材料および方法
sTREM-1測定:ヒトK-EDTA血漿中のsTREM-1の定量測定のための検証済みELISA法
【0349】
ルーチンアッセイのために、sTREM-1の定量測定を、市販のキット(ヒトTREM-1 Quantikine ELISA、BioTechne、R&D Systems)、および3つの濃度レベル(QC Low(101pg/mL)、QC Mid(532pg/mL)およびQC High(1080pg/mL))の品質管理(QC)サンプルを使用して実施した。
【0350】
アッセイの実行中の精度および正確性を判定するために、研究前のアッセイ認定を実施した。研究前のアッセイ認定の実行は、キャリブレーション標準および5つの濃度レベル(LLOQ(41.3pg/mL)、低、中、高、およびULOQ(1440pg/mL)のQCサンプルで構成され、各QCサンプルは、各アッセイにおいて6つのプレートで処理する必要がある。各濃度レベルについて、実行中の精度の低さおよび不正確さの最終計算では、6つの値のうち5つ未満を使用してはならない。実行中の精度の低さは20%以下(LLOQおよびULOQで25%)である必要があり、実行中の不正確さは±20%(LLOQおよびULOQで25%)以内である必要がある。研究前のアッセイは、ルーチンアッセイを開始する前に3回検証する必要がある。
【0351】
標準(STD)サンプルは、キャリブレーター希釈液RD5-18およびキットのヒトTREM-1標準を使用して、分析日ごとに新たに調製した。STDサンプルは、検量線の10ポイント(3000、2000、1000、750、500、250、125、62.5、31.3、および15.6pg/mL)を得るように調整した。3000pg/mLおよび15.6pg/mLのキャリブレーション標準をアンカーポイントとして使用した(検量線の最低キャリブレーション標準(LCS)および最高キャリブレーション標準(HCS))。
【0352】
100μLのAssay Diluent RD1-27を各ウェルに添加した。次に、ウェルごとに50μLの標準、QC、またはサンプルを添加した。プレートをマイクロプレートシェーカー上で450rpm、室温で2時間インキュベートする。2時間インキュベーションした後、プレートを洗浄バッファーで3回手動で洗浄し、200μLのヒトTREM-1コンジュゲートを各ウェルに添加した。プレートを、マイクロプレートシェーカー上で450rpm、室温で2時間補足的にインキュベートした。洗浄後、200μLの基質溶液を各ウェルに添加した。プレートを暗所で室温で30分間インキュベートした。光学密度(OD)を650nmで読み取り(事前読み取り)、HCSのOD(650nm)が約1.0のときに、50μLの停止溶液を各ウェルに添加した。次に、30分以内の各ウェルのOD(450nm)を測定した。
【0353】
検量線は、ロジスティック曲線(4-PL)および1/y2重み係数を使用して、光学密度およびキャリブレーション標準の濃度をプロットすることによって得た。
【0354】
2000~31.3pg/mLのキャリブレーション標準は、逆算された不正確さが±20%(LCSおよびHCSで±25%)の範囲外である場合、または機器の故障の理由で、または調製中もしくはアッセイ中の問題が文書化されている場合、または反復測定時の濃度の変動係数(CV%)(キャリブレーション標準あたりn=2ウェル)が20%を超えた場合のみ、最終検量線から除外した。これらのキャリブレーション標準の30%以下は、各シリーズのキャリブレーション標準から除外し得、最終的な検量線には、LCSおよびHCSなど、少なくとも6つのゼロ以外のキャリブレーション濃度レベルが含まれている必要がある。Calibrator Diluent RD5-18で構成されたブランク(0.00pg/mL)は、検量線の計算には使用しなかった。
【0355】
各ルーチンの実行には、6つのQCサンプルを含めた(3つの濃度レベルで反復してn=2)。6つのQCサンプルのうちの少なくとも4つが許容基準内にある必要がある(各濃度レベルの許容基準内に少なくとも1つの値がある)。許容基準は、次のように定義した。反復測定の濃度で計算された個々の不正確さ(サンプルあたりn=2ウェル)は、公称値と比較して±20%以内であるものとする。反復測定の濃度の変動係数(CV%)は、20%以下であるものとする。
【0356】
検査サンプルの反復測定の濃度(検査サンプルあたりn=2ウェル)の変動係数(CV%)も20%以下であるものとする。
AdrenOSSコホート(NCT02393781)におけるsTREM-1の評価
【0357】
この研究は、5カ国(フランス、ベルギー、オランダ、イタリア、およびドイツ)の24のセンターで行われた欧州の前向き観察多国籍研究であるAdrenOSS研究(NCT02393781)からの敗血症性ショック患者の補助的調査であった。患者は2015年6月から2016年5月まで募集した。研究プロトコルは、地域の倫理委員会によって承認され、指令2001/20/EC、Good Clinical Practices(1996年5月1日のI.C.H.バージョン4および2006年11月24日の決定)およびヘルシンキ宣言に従って実施した。登録された患者は18歳以上であり、(i)敗血症または敗血症性ショックのためにICUに入院したか、または(ii)一次入院後24時間未満で敗血症および敗血症性ショックの状態で別のICUから転院した。患者が昇圧剤で治療された場合、ICU入院前の一次入院から最大24時間以内に治療が開始された場合にのみ、患者は適格と見なした。患者は、適格となると、2001年以降の敗血症および臓器不全の定義に基づいて、重症敗血症および敗血症性ショックによって層別化した。除外基準は、妊娠、植物状態昏睡、および前月の介入試験への参加とした。本研究に登録する前に、すべての患者またはその法律上の代表者からインフォームドコンセントを得た。患者は現在のガイドラインに従って治療され、すべての治療および手順が登録された。sTREM-1は、ベースライン(1日目またはd1とも呼ばれる)、2日目(d2)、および3日目(d3)に採取された血液サンプルで測定した。
AdrenOSSコホートの統計分析
【0358】
293名の敗血症性ショック患者に対して分析を行った。人口統計およびベースラインの特性は、各集団内で説明的な方法で要約し、カテゴリ変数は、分割表(頻度および割合(パーセンテージ))によって要約した。連続変数は、平均、標準偏差、標準誤差、中央値、四分位数および範囲、最小値および最大値によって要約した。1日目のsTREM-1レベル(ベースライン、またはICUへの入院を個別に参照)も記述され(平均、標準偏差、標準誤差、中央値、四分位数および範囲、最小値および最大値)、ならびに定義された集団およびサブグループ内で個別に記述した。28日死亡率は、1日目のsTREM-1レベルの分布の各四分位数内で推定した。死亡までの時間は、比例ハザードCOX回帰モデルで分析した。sTREM-1の1日目レベルから28日死亡率を予測するための95%CIのROC曲線下面積(AUC)を計算した。最適なsTREM-1カットオフは、i)ROC空間の左上隅のポイント(0,1)およびROC曲線上の任意のポイントとの間の距離の最小化、およびii)Youden指数に基づいて推定した。生存者/非生存者およびRRT(腎代替療法)によるsTREM-1の箱ひげ図をプロットした。必要に応じて、sTREM-1データは対数変換した。1日目および28日の死亡率でのsTREM-1レベルの関連性は、ベースライン(1日目)でsTREM-1を調整し、他の予後因子(年齢、性別、心臓併存疾患、非心臓併存疾患および乳酸塩(1日目の最大または最小)、D1でのSOFA、D1でのAPACHEII、およびD1でのSAPSII)を調整した単変量および多変量ロジスティック回帰モデルで評価した。


結果
sTREM-1は、敗血症性ショック患者の予後マーカーである:AdrenOSSコホートの結果
【0359】
全集団および各sTREM-1四分位数における患者の人口統計および一般的なベースライン特性を以下の表1に示す。ベースライン特性、年齢、性別、BMI(ボディマス指数)、ICU入院の種類、敗血症の発症源、病歴、および入院時の生理学的値について、4つのsTREM-1四分位群(Q1、Q2、Q3、およびQ4)間で患者に有意差は観察されなかった。第1の四分位群、すなわちQ1は、第1の四分位値(299pg/mL)よりも低いsTREM-1レベルを有する患者、すなわち42~299pg/mLのsTREM-1レベルを有する患者を含む。第2の四分位群、すなわちQ2は、第1の四分位値(299pg/mL)と第2の四分位値(497pg/mL)との間にsTREM-1レベルを有する患者、すなわち299pg/mL~497pg/mLのsTREM-1レベルを有する患者を含む。第3の四分位群、すなわちQ3は、第2の四分位値(497pg/mL)と第3の四分位値(809pg/mL)との間にsTREM-1レベルを有する患者、すなわち497pg/mL~809pg/mLのsTREM-1レベルを有する患者を含む。第4の四分位群、すなわちQ4は、第3の四分位値(809pg/mL)よりも高いsTREM-1レベルを有する患者、すなわち809pg/mL~5540pg/mLのsTREM-1レベルを有する患者を含む。ベースラインでは、sTREM-1値と乳酸値、動脈pH、クレアチニンレベル、尿素レベル、およびPCTレベルとの間に有意な相関関係があった。またsTREM-1レベルは、腎代替療法(RRT)、ベースラインでのSOFA、SAPSII、およびAPACHEIIのスコア、ならびに28日および90日の死亡率とも相関していた。28日死亡率は、四分位数Q1、Q2、Q3、およびQ4においてそれぞれ12.2%、30.1%、37%、および49.3%であった。全体の死亡率は32%であった。これらの結果から、血漿sTREM-1の測定により評価された、ICUへの入院時のTREM-1経路活性化のレベルが、敗血症性ショック患者のより複雑な結果と関連していることが確認される。
【表1】
【0360】
図2Aは、ROCプロットを示す。図2Bは、Kaplan-Meier曲線の形態で患者の経時的な生存を示している。最低sTREM-1値を有する患者(Q1四分位群)は、最も高いsTREM-1値を有する患者(Q2~Q4四分位群)よりも高い28日生存率を有していた。sTREM-1四分位群内の生存率は、Q1からQ4まで、それぞれ87.8%、69.9%、63%、および50.7%であった。以下の表2に提示するデータから死亡率を予測するために、最適なカットオフ値は408pg/mLで計算した。
【表2】
【0361】
sTREM-1レベルと年齢、性別、乳酸塩、心臓併存疾患、非心臓併存疾患、SOFA、SOFA.4、APACHE2、またはSAPS2の間に相互作用は観察されなかった(すべての相互作用p>0.1)。sTREM-1は、28日死亡率の独立した予測因子であり、検査されたすべての共変量に追加情報を提供した(すべてp<0.001)。
【0362】
28日および90日の非生存者は、28日および90日の生存者のベースラインでのsTREM-1レベルと比較した場合、ベースラインで有意に上昇したsTREM-1レベルを示した(図3A~B)。興味深いことに、1日目のsTREM-1値は2日目および3日目のsTREM-1値と相関し(Spearmanの順位相関r=0.91(CI:0.88、0.93;p<0.001;n=260)、およびSpearmanの順位相関r=0.86(CI:0.81、0.9);p<0.001;n=219))、および2日目のsTREM-1値は3日目のsTREM-1値と相関していた(Spearman r=0.96(CI:0.95、0.97;p<0.001、n=213))。2日目および3日目のsTREM-1値は、28日および90日の生存者の2日目および3日目のsTREM-1値と比較して、28日および90日の非生存者において依然として上昇していることが見い出された(図4A~Bおよび図5A~B)。1日目、2日目および3日目のsTREM-1値は、入院時および滞在期間中の腎代替療法(RRT)とも関連していた(図6A~C)。
【0363】
検査されたすべてのパラメーターの中で、sTREM-1はSOFAスコアとよりよく相関することが示された(Spearmanの順位相関r=0.42、p<0.001;n=254)。
【0364】
これらすべての結果は、sTREM-1レベルが重症度、腎代替療法、および死亡率に関連していることを示す傾向がある。したがって、これらの結果から、sTREM-1レベルが複雑な転帰のリスクがある患者を特定するための信頼できるバイオマーカーとして使用され得ることが確認される。
実施例3:
材料および方法
sTREM-1測定:ヒトK-EDTA血漿中のsTREM-1の定量測定のための検証済みELISA法
【0365】
sTREM-1の定量測定は、実施例2に記載の方法を用いて行った。
敗血症性ショック患者を対象としたナンギボチドを用いた第IIa相臨床試験におけるsTREM-1の評価(NCT03158948)
【0366】
これは、4カ国(フランス、ベルギー、オランダ、およびスペイン)の14のセンターを対象とした欧州の前向き観察多国籍研究であった。患者は、2017年7月から2018年6月まで募集した。この研究は、ヘルシンキ宣言およびその後の改訂、GCPに関する調和国際会議のガイドライン、および国内の薬物およびデータ保護法の要件、および他の該当する規制要件に記載されている原則に従って実施した。
【0367】
これは、無作為化、二重盲検、2段階、プラセボ対照試験であった。図7に記載されているように、この研究は、同様の治療レジメンによる2段階で構成し、0.3mg/kg/h、1.0mg/kg/h、または3.0mg/kg/hのナンギボチド(ペプチドLR12に対応、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有する、モトレムとしても公知である)をプラセボと比較して試験した。敗血症性ショックと診断されたすべての患者は、研究への参加が検討された。すべての潜在的な研究患者は、標準的なケア管理手順を受けた。敗血症-3の定義(Singerら、JAMA 2016)による敗血症性ショックのエビデンスを有する患者(すなわち、敗血症に罹患しており、(i)平均動脈圧≧65mmHgを維持するために昇圧剤を必要とする持続性低血圧を有する、および(ii)十分な量の蘇生にもかかわらず、2mmol/L(18mg/dL)を超える血清乳酸値を有する患者)は、対象であるとみなされた。
【0368】
除外基準は、現在の入院期間中に以前に敗血症性ショック(昇圧剤投与)のエピソードがある、基礎疾患として同時免疫抑制、免疫抑制療法を必要とする固形臓器移植、既知の妊娠、QT延長症候群(QTc≧440ms)、任意の他の原因によるショック、例えば、胃腸出血に関連する低血圧、進行中の記録された、または疑われる心内膜炎、人工心臓弁歴、末期神経疾患、末期肝硬変(チャイルドピュークラスC)、急性生理学および慢性健康評価(APACHE)IIスコア≧34、慢性透析を必要とする末期慢性腎疾患、定期的に6時間/日を超える在宅酸素療法、重度の肥満(ボディマス指数[BMI]≧40)、近年の心肺蘇生法(現在の入院期間内)、瀕死の患者、およびインフォームドコンセントを得る前にとられる完全なケアを制限する決定であった。
【0369】
適格性をスクリーニングした後、患者は治療群のうちの1つに無作為化させた。次に、患者は、15分間にわたって5mg/kgの負荷用量のナンギボチドを受けた後、標準治療に加えて、ナンギボチドの持続静脈内(i.v.)注入されるかまたは対応するプラセボを受けた。治験薬による治療は、可能な限り早期であるが、敗血症性ショックの発症後24時間以内に開始され、これは、昇圧剤療法の開始によって定義された。患者は、敗血症性ショック(昇圧剤の中止として定義)の解消後12(±2)時間まで治療され、最長治療期間は5日(120時間)であった。
【0370】
段階1は、4名の患者のコホート(3:1のランダム化)で順次設計でナンギボチドまたはプラセボの漸増用量を調査するために実施した。コホート完了後、安全性およびPKデータは、独立したデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)によって検討され、本研究は次のコホート/段階に進むことができた。段階2では、最大3用量のナンギボチドおよびプラセボアームを伴うランダム化されたバランスの取れた並行群間デザインで3用量のナンギボチドを調査した。段階1の間、安全かつ十分に忍容性が高いとみなされたナンギボチドの用量群のみが段階2で投与された。
ナンギボチドを使用した第IIa相のPK分析メソッド
【0371】
ナンギボチド血中濃度は、欧州医薬品庁(EMA)の生体試料中薬物濃度分析法バリデーションに関するガイドラインEMEA/CHMP/EWP/192217/2009、バージョンEMA/275542/2014に従って検証済みのLC-MS/MS法によって決定した。ペプチドは、分析前に上清を収集して凍結するために、10%トリクロロ酢酸溶液(1500mg/mL、4℃)および遠心分離(3500g、10分、4℃)で処理することにより、血液サンプル中で安定化させた。定量下限(LLOQ)および定量上限(ULOQ)は、それぞれ5ng/mLおよび1000ng/mLであった。標準曲線は、5ng/mL~1000ng/mLの範囲で直線であり、相関係数は0.995を超えていた。ナンギボチドの品質管理(QC)の3回の検証中に、+/-20%LLOQおよび+/-15%(ULOQまでの他のレベル)の実行内および実行間の精度および正確性が達成された。
免疫原性の評価
【0372】
血清中の抗ナンギボチド抗体は、ベースライン、8日目および28日目に、Shankarらによって記載された方法に従って検証された間接ELISA法(J Pharm Biomed Anal.2008年12月15日;48(5):1267-81)およびバイオテクノロジー由来の治療用タンパク質の免疫原性評価に関するEMAガイダンス(2008年4月に発行されたEMEA/CHMP/BMWP/14327/2006)によって評価した。陽性と判断されたスクリーニングサンプルは、0.1%の偽陽性サンプルを有するようにカットポイントが確立された確認アッセイを使用してさらに評価した(Shankarら、J Pharm Biomed Anal.2008年12月15日;48(5):1267-81)。方法の検証では、薬物の干渉は示されなかった。アッセイの感度は0.3125μg/mLであることが確立された。
ナンギボチドによる第IIa相の統計分析
【0373】
有害事象(AE)は、MedDRA辞書バージョン18.1を使用してコード化した。治療下で発現した有害事象(TEAE)を要約し、列挙した。49名の敗血症性ショック患者に対して分析を行った。人口統計およびベースラインの特性は、各集団内で説明的な方法で要約した。カテゴリ変数は、分割表(頻度および割合(パーセンテージ))によって要約した。1日目のsTREM-1レベルも記載した(平均、標準偏差、標準誤差、中央値、四分位数および範囲、最小値および最大値)。死亡率は、頻度および割合(パーセンテージ)で報告した。継続的なエンドポイント、すなわち逐次臓器不全評価(SOFA)の場合、欠測データは最終観察値をそれ以降の値に外挿する方法(LOCF、Last Observation Carry-Forward)を使用して代入した。イベントまでの時間分析、すなわち、侵襲的人工呼吸(IMV)の期間、持続的腎代替療法(CRRT)の期間、生存、打ち切りデータ技術を利用した。さらに、イベントデータ(生存を除く)までの時間の感度分析は、対応する観察期間(すなわち、28日目または90日目)の上限での打ち切りを使用して実施した。生存し、いかなる昇圧剤、IMV(侵襲的人工呼吸)またはCRRT(持続的腎代替療法)の使用もない日数は、対象が生存し、いかなる昇圧剤、IMVまたはCRRT治療も必要としない場合、治療開始(0日目)から通院28日目までの総暦日数として計算した。以下の比較:プラセボに対する各ナンギボチド用量群、プラセボに対するすべてのナンギボチド用量の組み合わせ、および順序傾向試験を使用した用量反応を行った。探索的複合エンドポイント:28日目に生存し、昇圧剤を使用しない、IMVを使用しない、CRRTを使用しない患者の発生率(数および割合)を治療ごとに要約し、Fisherの直接確率検定を使用して治療間で比較した。薬力学的マーカーの場合、対数変換データは、5日目のベースラインからの変化率または5日目より前に注入の終了が停止された場合は注入の終了(EOI)として表わした。高sTREM-1および低sTREM-1患者は、ICUへの入院時(ベースラインまたは0日目)に集団の中央値(すなわち、それぞれ433pg/mL)の上および下にsTREM-1血中濃度を示した患者として定義した。「すべてのナンギボチド」とは、0.3mg/kg/h、1mg/kg/h、および3mg/kg/hのナンギボチド治療群のデータをプールすることによって得られた分析を指す。
結果
患者の内訳およびベースライン特性
【0374】
50名の患者を無作為化し、49名が治療された(1名の患者は投薬前に死亡した)。図8に示すとおり、各群12名の患者が無作為化され、0.3mg/kg/h群に1名の患者を追加した。すべての中止は、死によるものであった。36名の患者が90日目まで生存した。いずれの群も、ベースライン特性(年齢、性別、人種、体重、身長、BMIは示していない)に関してバランスが取れていた。平均年齢は64歳(±13歳)であった。平均して、患者は治療を開始する前に15時間(3時間~24時間の範囲)昇圧剤下にあり、群間で有意差はなく、49名中15名の患者が、3~12時間の間に昇圧剤を投与された後に治療された(30.6%)。患者の人口統計および一般的なベースライン特性を以下の表3に示す。
【表3】
安全性
【0375】
いずれの有害事象(AE)も、治療中止とならなかった。重篤な有害事象/有害事象(SAE/AE)の数およびSAE/AEの患者数は、ナンギボチド群とプラセボ群とにおいて同等であった。比例して、SAEの数およびSAEの患者の数は、プラセボ群において多かった。AEの数および高い重度のAEを有する患者の数は、治療群間で同等であったが、プラセボ群では比例して多かった。システム臓器クラス別のAEの数は、治療群間で同等であった。感染症および心臓障害に関連するAEは、ナンギボチド群で比例して高かった。最も頻度の高い(>10%)AEは、心房細動、貧血、胸水、および血小板減少であった。心房細動および血小板減少の発生率は、ナンギボチド群で比例して高かった。明白な説明のない2つの疑わしい予期しない重篤な有害反応(SUSAR)が報告され、それらは両方ともナンギボチド治療群内であった。ナンギボチド治療との関係を示す明確な説明はなかった。以下の表4に示すように、ナンギボチドは、最大3mg/kg/hまで安全で、かつ十分に許容された。
【表4】
薬物動態
【0376】
すべての群のすべての対象について、投与前サンプル(ナンギボチド注入の開始前に採取された血液サンプル、すなわちベースラインサンプル)には、定量化可能なナンギボチドは含まれていなかった。静脈内注入の開始から各群(すなわち、0.3mg/kg/hを投与された患者、1.0mg/kg/hを投与された患者、および3.0mg/kg/hを投与された患者)から得られた経時的な平均ナンギボチド血中濃度は、図9Aに示す。ナンギボチドは、静脈内注入の開始から終了まで直線的な挙動を示した。ナンギボチド血中濃度は、用量に比例することがわかった。注入の終了後、本生成物はすぐに除去され(図9B)、健康なボランティアで以前に観察されたものと同様の薬物動態のパターンが示された。注入の終了後2時間で血中に薬物は検出されなかったため、この期間後の持続的な薬理効果は予測されない。
死亡率
【0377】
プラセボと比較して、ナンギボチド治療群を支持する死亡患者の割合には一貫した傾向があった。実際に、28日目のすべての原因による死亡率は、プールされたナンギボチド群で14%(5/37)、プラセボ群で25%(3/12)であった(以下の表5を参照)。
【表5】
【0378】
ベースラインが中央値を超える、すなわち433pg/mLを超えるsTREM-1レベルのサブグループでは、すべての死亡が敗血症に関連していた。このグループでは、すべての死亡は本研究の最初の週に発生した。5日目の死亡率は、プラセボ群およびナンギボチド群でそれぞれ40%(2/5)および20%(4/20)として計算した(以下の表6を参照)。
【表6】
臓器不全パラメータ
【0379】
プラセボ群と比較して、ナンギボチド治療群間で臨床パラメーターに統計的に有意な差は見られなかったが、ナンギボチドを支持する一貫した数値傾向が、最初の5日間のSOFAスコアの減少で観察された(プラセボ群と比較した治療群のさらなる減少)。例えば、以下の表7に示すように、「プラセボ」群と比較した「すべてのナンギボチド」群のSOFAスコアの差は、-0.70(95%CI:-2.41、1.01)であり、0.3~3mg/kg/hの用量では、-1.66(95%CI:-3.73、0.40)~0.34(95%CI:-1.76、2.44)の範囲であった。
【表7】
【0380】
興味深いことに、これらの差は、ベースラインの高sTREM-1サブグループ(中央値を超える、すなわち433pg/mLを超えるベースラインのsTREM-1レベルの患者)でより重要であった。実際に、以下の表8に示すように、「プラセボ」群と比較した「すべてのナンギボチド」群のSOFAスコアの差は、-1.5(95%CI:-3.83、0.84)であり、0.3~3mg/kg/hの用量では、-2.85(95%CI:-5.68、-0.02;p=0.0487)~-0.16(95%CI:-2.80、2.48)の範囲であった。
【表8】
【0381】
逆に、これらの差は、ベースラインの低sTREM-1サブグループ(ベースラインで中央値未満、すなわち433pg/mL未満のsTREM-1レベルの患者)では重要性は低かった。実際に、以下の表9に示すように、5日目の「プラセボ」群と比較した「すべてのナンギボチド」群のSOFAスコアの差は、-0.18(95%CI:-2.95、2.59)であり、0.3~3mg/kg/hの用量では、-0.71(95%CI:-3.97、2.54)~0.12(95%CI:-3.70、3.94)の範囲であった。
【表9】
【0382】
予期せぬことに、図10に示すとおり、逆用量反応が観察され、高用量群3mg/kg/h(-0.16、p=0.9007)と比較して低用量群0.3mg/kg/h(-2.85、p=0.0487)においてより顕著な差が見られた。
【0383】
これらの結果は、全集団で観察されたSOFAスコアの全体的な治療関連の減少は、最も高いsTREM-1ベースライン値(中央値を超える、すなわち433pg/mLを超える)を有する患者のSOFAスコアの減少によって引き起こされ、群間差は、低いベースラインsTREM-1値(中央値未満、すなわち433pg/mL未満)を有する患者の群では観察されなかったことを示している。
【0384】
同様に、プラセボ群と比較して、ナンギボチド治療群間で臨床パラメーターに統計的有意差は見られなかったが、昇圧剤の使用、侵襲的人工呼吸(IMV)の使用、および腎代替療法(RRT)の使用で、ナンギボチドを支持する一貫した数値傾向が観察された。
【0385】
ベースラインの低sTREM-1サブグループでは、「プラセボ」群と比較して、「すべてのナンギボチド」群での昇圧剤を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で0.64(95%CI:-5.78、7.07;p=0.8368)であり、2.29(95%CI:-5.30、9.87;p=0.5369)~0.07(95%CI:-8.83、8.97;p=0.9868)の範囲であった。ベースラインの高sTREM-1サブグループでは、「プラセボ」群と比較して、「すべてのナンギボチド」群での昇圧剤を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で2.94(95%CI:-9.36、15.25;p=0.6243)であり、4.07(95%CI:-10.81、18.94;p=0.5757)~-0.48(95%CI:-14.48、13.53;p=0.9444)の範囲であった。
【0386】
全集団において、「プラセボ」群と比較して「すべてのナンギボチド」群のIMV(侵襲的人工呼吸)を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で1.33(95%CI:-6.20、8.89;p=0.7240)であり、2.32(95%CI:-6.75、11.40;p=0.6091)~-2.08(95%CI:-11.34、7.17;p=0.6524)の範囲であった。ベースラインの低sTREM-1サブグループでは、「プラセボ」群と比較して、「すべてのナンギボチド」群でのIMV(侵襲的人工呼吸)を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で-1.30(95%CI:-9.92、7.32;p=0.7568)であり、3(95%CI:-7.18、13.18;p=0.5455)~-6.32(95%CI:-18.25、5.61;p=0.2823)の範囲であった。ベースラインの高sTREM-1サブグループでは、「プラセボ」群と比較して、「すべてのナンギボチド」群でのIMV(侵襲的人工呼吸)を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で5.63(95%CI:-7.24、18.51;p=0.3732)であり、2.63(95%CI:-12.93、18.20;p=0.7285)~4.30(95%CI:-10.35、18.95;p=0.5483)の範囲であった。
【0387】
全集団において、「プラセボ」群と比較して「すべてのナンギボチド」群のCRRT(持続的腎代替療法)を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で2.70(95%CI:-4.46、9.86;p=0.4516)であり、4.10(95%CI:-4.53、12.73;p=0.3435)~1.50(95%CI:-7.30、10.30;p=0.7330)の範囲であった。ベースラインの低sTREM-1サブグループでは、「プラセボ」群と比較して、「すべてのナンギボチド」群でのCRRT(持続的腎代替療法)を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で0.77(95%CI:-4.72、6.25;p=0.7738)であり、1.43(95%CI:-5.04、7.90;p=0.6502)~0.89(95%CI:-6.70、8.48;p=0.8086)の範囲であった。ベースラインの高sTREM-1サブグループでは、「プラセボ」群と比較して、「すべてのナンギボチド」群でのCRRT(持続的腎代替療法)を使用せずに生存している日数の差は、0.3~3mg/kg/hの用量で7.85(95%CI:-5.22、20.91;p=0.2254)であり、8.67(95%CI:-7.13、24.46;p=0.2666)~7.37(95%CI:-7.49、22.24;p=0.3140)の範囲であった。
【0388】
図11に示すとおり、これらの傾向は、ベースラインで循環sTREM-1のレベルが高い(中央値を超える、すなわち433pg/mLを超える)患者で拡大された。さらに、「すべてのナンギボチド」群では、28日目に生存しており、いかなる医療サポートも受けていない患者の割合は、「プラセボ」群での40%に対して70%であった。
マーカー
【0389】
内皮損傷マーカー(Ang-2、VCAM-1、VGEFR-1およびE-セレクチン)、炎症マーカー(IL-8、IL-10、MCP-1、TNF-αおよびIL-10)およびsTREM-1の循環レベルが治療中に減少する傾向は、ナンギボチド治療を受けた患者で観察され、これは、Ang-2、IL-6、およびsTREM-1に関して、ベースラインにおいてsTREM-1レベルが高い患者でより顕著であった。例えば、全集団においてAng-2レベルに明らかな治療効果が観察されなかった場合、全集団の「すべて」および「G1」サブグループ(すなわち、ベースラインsTREM-1が中央値433pg/mL未満の患者)と比較した場合、「G2」サブグループ(すなわち、ベースラインsTREM-1が中央値433pg/mLを超える患者)でより顕著な減少の傾向が観察された(図12を参照されたい)。図13に示すとおり、IL-6レベルでも同じ傾向が観察された。
有効性マーカーとしてのsTREM-1
【0390】
適格バイオマーカーとしての価値に加えて、sTREM-1はこの第IIa相試験においてナンギボチドの有効性のマーカーとしても評価した。経時的なsTREM-1の動態に対するナンギボチド治療の影響を評価した。図14Aに示すとおり、全集団において経時的な明らかな変化は観察されなかったが、ベースラインのsTREM-1値が高い患者のサブグループではsTREM-1が減少する傾向が観察された。興味深いことに、sTREM-1の変化が最も大きかった患者は、5日目/EOI(注入の終了)においてSOFAの減少が最も大きかった(図14B)。
結論
【0391】
ナンギボチドは、敗血症性ショック患者において安全かつ忍容性が高いことが示された。この小規模探索的研究では、ナンギボチド群で有意ではない低い死亡率が観察された。驚くべきことに、臨床パラメーターおよび死亡率は、ベースラインにおいてsTREM-1の循環レベルが高い患者においてナンギボチドの有益な効果に向かう明確な傾向を示した。
【0392】
敗血症性ショック患者の予後マーカーとしてのsTREM-1の使用について、非常に多様で論議を引き起こす結果が公表されている。これは、部分的に、検証済みで再現性のある定量アッセイが不足していることが一因であり得る。欧州医薬品庁のガイドライン:ヒト用医薬品委員会(CHMP)(2011)、生体試料中薬物濃度分析法バリデーションに関するガイドラインEMEA/CHMP/EWP/192217/2009Rev.1 Corr.2に従って、そのような方法を検証した。検証済みの方法は上記に記載されており(材料および方法を参照されたい)、2つの独立した臨床コホート(AdrenOSSコホートおよびナンギボチドを使用した第IIa相臨床試験のコホート)におけるsTREM-1レベルの遡及的測定に使用した。
【0393】
興味深いことに、以下の0に示すとおり、293名および49名の患者のこれら2つの独立した欧州のコホートにおいて同等のデータが得られた。
【表10】
【0394】
ベースラインでのsTREM-1値は28日死亡率と関連していた:sTREM-1四分位Q1サブグループでは死亡率12%および8%が観察され、sTREM-1四分位Q4サブグループでは死亡率49%および42%が観察された。中央値は、AdrenOSSコホートでは497pg/mLであり、ナンギボチドを使用した第IIa相では433pg/mLであり、最小値/最大値(pg/mL)は、それぞれ42/5540pg/mLおよび154/1960pg/mLであった。これは、2つのコホート間で同様の分布であることを示唆している。
【0395】
これらの結果から、異なるコホート間で信頼できるデータを収集するための検証済みの方法が必要であることが確認される。また、そのような方法で、参照集団からの参照値を、さらなる研究で使用できる所定のsTREM-1値の導出に使用できることが確認される。
【0396】
全体として、この研究は、ナンギボチド投与前の患者選択のためのsTREM-1レベル評価の価値を評価することを目的とした。実際、ベースラインでの高いsTREM-1値が複雑な結果に関連していることを示した文献(Charlesら、BMC Infect Dis.2016年10月12日;16(1):559)のデータは、ベースラインでの低いsTREM-1値が複雑な結果に関連していた以前の臨床データ(Gibotら、Crit Care Med.2005年4月;33(4):792-6)と一致していない。したがって、sTREM-1値が重症度および臨床転帰に関連していたかは不明なままであった。sTREM-1の放出のメカニズムも不明であった。
【0397】
この研究では、sTREM-1の放出がTREM-1の活性化に依存することを初めて実証した。したがって、sTREM-1は、TREM-1経路の活性化の信頼できる代理として使用できる。したがって、これにより、ナンギボチド(配列番号9に記載のアミノ酸配列を有するペプチドLR12に対応する)などの抗TREM-1治療アプローチから利益を得る可能性が最も高い患者を特定することが可能になり得る。
【0398】
また、ガイドラインに従った検証済みの方法を使用して、2つの独立したコホートを使用して、高いsTREM-1値が敗血症性ショック患者の重症度および死亡率と相関していることを示した。したがって、sTREM-1が重症度の信頼できるバイオマーカーであり、複雑な転帰のリスクがある患者の特定が可能になり得ることが確認された。実際、ベースラインのsTREM-1血中濃度、すなわち敗血症性ショックの診断後24時間以内は、重症度と相関していることがわかった。
【0399】
また、敗血症性ショック患者におけるナンギボチドの安全性および忍容性を評価する第IIa相臨床試験でサブグループ分析を実施した。この試験では、中央値として本明細書において定義された、ベースラインのsTREM-1値が所定のsTREM-1値を下回る患者と、ベースラインsTREM-1値がこの所定のsTREM-1値を超える患者との間で、ナンギボチドの有効性を比較した。ナンギボチドの有効性は、ベースラインsTREM-1が所定のsTREM-1値を超える、すなわち中央値を超える(433pg/mLを超える)患者でより顕著であることが確認された。これは、薬力学的パラメーター(内皮および炎症性バイオマーカー)、医療サポートの使用(IMV、CRRT、昇圧剤)、およびSOFAスコアで観察された。
【0400】
ベースラインのsTREM-1レベルが所定のsTREM-1値を下回る患者におけるナンギボチドの低い薬理活性は、ナンギボチドが試験対象のすべての用量において十分に許容され、ナンギボチド治療に関連する有害事象が最高用量において観察されないため、毒性および副作用によって説明することはできない。抗ナンギボチド抗体は患者の血清中に見られず、これはまた、これらの患者におけるこの明らかに低い薬理活性が、ナンギボチドを阻害することができたであろう抗ナンギボチド中和抗体の存在に関連できないことを示している。ナンギボチドの血中濃度は用量に比例し、健康なボランティアで以前に観察されたのと同じ範囲内であり、すなわち、群間差を説明することもできる、患者のナンギボチドの異常な薬物動態プロファイルはなかった。本生成物は注入の終了後、迅速に除去され、これはまた、いずれの持続的薬理活性によってもこれらの差を説明できないことを意味する。
【0401】
全体として、これらの結果から、sTREM-1が患者の適格性およびTREM-1阻害剤(例えば、ナンギボチド)投与のための信頼できるコンパニオン診断マーカーであることが確認される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
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