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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056756
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電極配線付き布材
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/533 20210101AFI20240416BHJP
   D03D 15/20 20210101ALI20240416BHJP
   D03D 15/56 20210101ALI20240416BHJP
   D04B 1/14 20060101ALI20240416BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20240416BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20240416BHJP
   D04B 21/18 20060101ALI20240416BHJP
   A61B 5/27 20210101ALI20240416BHJP
【FI】
D03D15/533
D03D15/20 100
D03D15/56
D04B1/14
D04B21/00 B
D04B21/16
D04B21/18
A61B5/27
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024013188
(22)【出願日】2024-01-31
(62)【分割の表示】P 2020522216の分割
【原出願日】2019-05-28
(31)【優先権主張番号】P 2018103874
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 佳明
(72)【発明者】
【氏名】奥地 茂人
(57)【要約】
【課題】布材としての柔軟性を有しつつ、繰り返しの変形による電極部と配線部との接続不良を抑制する電極配線付き布材を提供すること。
【解決手段】布材本体と、前記布材本体の表面又は内部に設けられ、導電性線状体を含む電極部と、前記布材本体の表面又は内部に、前記電極部に隣接して設けられ、導電性線状体を含む配線部と、を有し、前記電極部に含む少なくとも1本の導電性線状体と前記配線部に含む少なくとも1本の導電性線状体とが、同じ1本の導電性線状体である電極配線付き布材。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
布材本体と、
前記布材本体の表面又は内部に設けられ、導電性線状体を含む電極部と、
前記布材本体の表面又は内部に、前記電極部に隣接して設けられ、導電性線状体を含む配線部と、
を有し、
前記電極部に含む少なくとも1本の導電性線状体と前記配線部に含む少なくとも1本の導電性線状体とが、同じ1本の導電性線状体である電極配線付き布材。
【請求項2】
伸縮性を有する請求項1に記載の電極配線付き布材。
【請求項3】
電極配線付き布材の伸長前における前記配線部の抵抗に対する、最大伸長の50%で電極配線付き布材を伸長したときにおける前記配線部の抵抗変化率が10%以下である請求項2に記載の電極配線付き布材。
【請求項4】
前記電極部において、前記導電性線状体の一部が前記布材本体の糸で拘束されている請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
【請求項5】
前記電極部において、前記導電性線状体が前記布材本体に、織り込まれている、編み込まれている、若しくは刺繍されている、又は前記電極部が前記導電性線状体により縫い付けられている請求項4に記載の電極配線付き布材。
【請求項6】
前記電極部が、前記布材本体の表面に設けられている請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
【請求項7】
前記電極部が、生体接触用電極部である請求項6に記載の電極配線付き布材。
【請求項8】
前記配線部において、前記導電性線状体の一部が前記布材本体の糸で拘束されている請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
【請求項9】
前記配線部において、前記導電性線状体が前記布材本体に、織り込まれている、編み込まれている、若しくは刺繍されている、又は前記配線部が前記導電性線状体により縫い付けられている請求項8に記載の電極配線付き布材。
【請求項10】
前記配線部が、前記布材本体の内部に設けられている請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
【請求項11】
前記電極部および前記配線部に含む導電性線状体が、カーボンナノチューブ糸を含む導電性線状体である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極配線付き布材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体信号計測器等のウェアラブルデバイスに利用する布材としては、例えば、生体接触用又はセンサー接続用の電極部と、それに接続する配線部とを備えた布材が利用される(例えば、特許文献1参照等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-70599号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電極部および配線部を備える布材においては、電極部と配線部とを別個に設け、接続材料(ハンダ、導電性ペースト等)又は接続部材(かしめ、コネクタ等)により接続している。
【0005】
特に、布材に生体接触用電極部を設ける場合、生体接触用電極部は露出する必要がある一方で、配線部は絶縁のため絶縁材で被覆する必要があるため、電極部と配線部を個別に作製し、接続材料又は接続部材で接続する構成を採用する傾向がある。
【0006】
そのため、布材の繰り返しの変形(例えば、捩れ、折り曲げ、伸長等)により、電極部と配線部との接続部が劣化することがある。具体的には、例えば、接続材料又は接続部材により電極部と配線部とを接続すると、繰り返しの布材の変形により、接続材料又は接続部材の割れが生じる。そして、接続部の劣化が進行すると、電極部と配線部との接続不良が生じる。
【0007】
加えて、電極部に含む導電性線状体と配線部に含む導電性線状体とを、接続部材により接続した構造は、接続材料により接続した構造に比べ、繰り返しの布材の変形に対する耐久性は高いが、接続部の柔軟性に劣り、柔軟性を有する布材としての利用価値が低下する。
【0008】
そこで、本開示の課題は、布材としての柔軟性を有しつつ、繰り返しの変形による電極部と配線部との接続不良を抑制する電極配線付き布材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
<1>
布材本体と、
前記布材本体の表面又は内部に設けられ、導電性線状体を含む電極部と、
前記布材本体の表面又は内部に、前記電極部に隣接して設けられ、導電性線状体を含む配線部と、
を有し、
前記電極部に含む少なくとも1本の導電性線状体と前記配線部に含む少なくとも1本の導電性線状体とが、同じ1本の導電性線状体である電極配線付き布材。
<2>
伸縮性を有する<1>に記載の電極配線付き布材。
<3>
電極配線付き布材の伸長前における前記配線部の抵抗に対する、最大伸長の50%で電極配線付き布材を伸長したときにおける前記配線部の抵抗変化率が10%以下である<2>に記載の電極配線付き布材。
<4>
前記電極部において、前記導電性線状体の一部が前記布材本体の糸で拘束されている<1>~<3>のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
<5>
前記電極部において、前記導電性線状体が前記布材本体に、織り込まれている、編み込まれている、若しくは刺繍されている、又は前記電極部が前記導電性線状体により縫い付けられている<4>に記載の電極配線付き布材。
<6>
前記電極部が、前記布材本体の表面に設けられている<1>~<5>のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
<7>
前記電極部が、生体接触用電極部である<6>に記載の電極配線付き布材。
<8>
前記配線部において、前記導電性線状体の一部が前記布材本体の糸で拘束されている<1>~<7>のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
<9>
前記配線部において、前記導電性線状体が前記布材本体に、織り込まれている、編み込まれている、若しくは刺繍されている、又は前記配線部が前記導電性線状体により縫い付けられている<8>に記載の電極配線付き布材。
<10>
前記配線部が、前記布材本体の内部に設けられている<1>~<9>のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
<11>
前記電極部および前記配線部に含む導電性線状体が、カーボンナノチューブ糸を含む導電性線状体である<1>~<10>のいずれか1項に記載の電極配線付き布材。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、布材としての柔軟性を有しつつ、繰り返しの変形による電極部と配線部との接続不良を抑制する電極配線付き布材が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る電極配線付き布材を示す概略平面図である。
図2】本実施形態に係る電極配線付き布材を示す概略断面図である。
図3】本実施形態に係る電極配線付き布材において、導電性線状体を織り込んだ一例を示す概略平面図である。
図4】本実施形態に係る電極配線付き布材において、導電性線状体を編み込んだ一例を示す概略平面図である。
図5】本実施形態に係る電極配線付き布材において、導電性線状体を刺繍した一例を示す概略平面図である。
図6】本実施形態に係る電極配線付き布材の第1の変形例を示す概略断面図である。
図7】本実施形態に係る電極配線付き布材の第2の変形例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例である実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書において、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
「~」を用いた数値範囲は、「~」の前後で示された数値が各々最小値及び最大値として含まれる数値範囲を意味する。
段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本実施形態に係る電極配線付き布材は、布材本体と、布材本体の表面又は内部に設けられ、導電性線状体を含む電極部と、布材本体の表面又は内部に、前記電極部に隣接して設けられ、導電性線状体を含む配線部と、を有する。
そして、電極部に含む少なくとも1本の導電性線状体と配線部に含む少なくとも1本の導電性線状体とは、同じ1本の導電性線状体である。
なお、同じ1本の導電性線状体とは、導電性線状体の端部同士を、線状体以外の他の接続材料(ハンダ、導電性ペースト等)又は接続部材(かしめ、コネクタ等)を利用することなく、結び又は撚り継ぎ等により結合した線状体も含む。
【0015】
本実施形態に係る電極配線付き布材では、電極部に含む少なくとも1本の導電性線状体と配線部に含む少なくとも1本の導電性線状体とを、同じ1本の導電性線状体としている。つまり、電極部と配線部とは、同じ1本の導電性線状体で連結されていることから、布材の繰り返しの変形〔例えば、捩れ、折り曲げ、伸長等)により、電極部と配線部との接続部が劣化することが抑制される。その結果、電極部と配線部との接続不良が抑制される。そして、布材としての柔軟性も保たれる。
【0016】
ここで、「布材本体」とは、導電性線状体が設けられる対象となる布材を示す。
【0017】
「電極部又は配線部が布材本体の表面に設けられる」とは、布材本体の表裏面を構成する布材層(部分的に表裏面を構成する布材層も含む)に、電極部又は配線部(つまり、導電性線状体)が設けられていることを示す。言い換えれば、「電極部又は配線部が布材本体の表面に設けられる」とは、布材本体から電極部および配線部を構成する導電性線状体の少なくとも一部が露出した状態で、電極部又は配線部(つまり、導電性線状体)が設けられていることを示す。
【0018】
「電極部又は配線部が布材本体の内部に設けられる」とは、布材本体の内層に、例えば、布材本体の内層となる布材層中又は布材層間に、電極部又は配線部(つまり、導電性線状体)が設けられていることを示す。
【0019】
「電極部に含む少なくとも1本の導電性線状体と配線部に含む少なくとも1本の導電性線状体とが、同じ1本の導電性線状体である」とは、配線部が、電極部に含まれる少なくとも1本の導電性線状体が延在した導電性線状体を含むこと(言い換えれば、電極部が、配線部に含まれる少なくとも1本の導電性線状体が延在した導電性線状体を含むこと)を意味する。
【0020】
以下、本実施形態に係る電極配線付き布材の一例について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態に係る電極配線付き布材100は、図1図2に示すように、例えば、布材本体10と、電極部20と、配線部30と、を有している。
【0022】
(布材本体)
布材本体10は、例えば、表面を構成する表面布材層10Aと、裏面を構成する裏面布材層10Bと、表面布材層10A及び裏面布材層10Bの間に有する中間布材層10Cと、の3重の布材層で構成されている。
布材本体10は、3重の布材層以外に、例えば、1重、2重、又は4重以上の布材層で構成されていてもよい。
なお、2層以上の布材層で構成された多重の布材本体10は、例えば、各布材層を作製した後、縫い合わせる手法で作製してもよいし、織編機により一括して多重の布材本体10を作製してもよい。
【0023】
布材本体10としては、例えば、織編物が代表的に挙げられる。布材本体10は不織布であってもよい。
織編物としては、平織り、綾織り、朱子織り、周知の応用織り等の織物;緯編み、経編み、レース編み、周知の応用編み等の編物が挙げられる。
【0024】
布材本体10を構成する糸(線状体)は、絶縁性の糸とする。絶縁性の糸とは、線抵抗が1.0×10Ω/cm以上の糸を示す。絶縁性の糸の線抵抗は、後述する導電性線状体の線抵抗と同じ方法で測定される線抵抗である。
【0025】
布材本体10を構成する糸(線状体)としては、例えば、周知の繊維の糸が挙げられる。
周知の繊維の糸は、合成繊維の糸であってもよいし、天然繊維の糸であってもよい。
合成繊維の糸としては、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維(ポリアルキレンテレフタレート繊維、ポリアリレート繊維等)、ポリアミド繊維(ナイロン6繊維、ナイロン66繊維、ナイロン46繊維等)、芳香族ポリアミド繊維(パラフェニレンテレフタルアミドと芳香族エーテルとの共重合体等)、ビニロン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリオレフイン繊維(レーヨン繊維、超高分子量ポリエチレン等)、ポリオキシメチレン繊維;サルフォン系繊維(パラフェニレンサルフォン繊維、ポリサルフォン繊維等)、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリイミド繊維等の糸が挙げられる。
天然繊維の糸としては、綿、絹、麻、羊毛等の繊維の糸が挙げられる。
【0026】
ここで、布材本体10は、伸縮性を有する布材であることがよい。つまり、電極配線付き布材100は、伸縮性を有することがよい。特に、電極配線付き布材100が伸縮性を有すると、繰り返しの伸縮により、電極部20と配線部30との接続部が劣化し、接続不良が生じやすい。しかし、本実施形態に係る電極配線付き布材100の構成を採用することで、電極部20と配線部30との接続不良が抑制される。
【0027】
伸縮性を有する布材本体10は、弾性糸を利用した織編物を適用することで実現できる。
弾性糸としては、例えば、弾性糸の外周に非弾性糸をコイル状に巻き付けたカバードヤーン(シングルカバードヤーン又はダブルカバードヤーン)、弾性糸と非弾性糸とを精紡交撚したコアースパンヤーン、圧空ノズルを用いて弾性糸の外周に非弾性糸を巻き付けたエアー交絡カバードヤーン、弾性糸と非弾性糸とを撚糸してなるツイステッドヤーン等が挙げられる。
弾性糸としては、ポリウレタン弾性繊維、ポリエステル弾性繊維、ポリアミド弾性繊維等、いわゆるゴム状弾性を示す繊維の糸が挙げられる。
非弾性糸としては、合成繊維(ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維)、天然繊維(綿、絹、麻、羊毛等の繊維)の糸が挙げられる。
【0028】
(電極部および導電部)
電極部20は、第一電極部20Aと、第二電極部20Bと、を有する。電極部20は、目的に応じて、一つ又は3つ以上設けてもよい。
【0029】
ここで、例えば、電極配線付き布材100を、生体信号計測器等のウェアラブルデバイスに利用する場合、電極部20の少なくとも一つは、生体接触用電極部とすることがよい。具体的には、例えば、電極部20のうち、第一電極部20Aを生体接触用電極部とし、第二電極部20Bをその他の機器接続用(送信機器接続用、外部機器接続用等)電極部とする。第一電極部20Aは、生体接触用電極部に限られず、センサー接続用電極部としてもよい。また、3つ以上の電極部20を設けて、3つ以上の電極部20のうち、2つ以上の電極部を生体接触用電極部およびセンサー接続用電極部の双方としてもよい。
【0030】
電極部20は、布材本体10の表面布材層10Aに設けられている。つまり、電極部20は、布材本体10の表面に設けられている。
なお、電極部20は、布材本体10の中間布材層10Cに設けられていてもよい。つまり、電極部20は、布材本体10の内部に設けられていてもよい。
【0031】
ここで、例えば、生体接触用電極部(つまり、生体接触用電極部を構成する導電性線状体40)は電極配線付き布材100から露出している必要がある。一方で、センサー接続用電極部およびその他の機器接続用(送信機器接続用、外部機器接続用等)電極部(つまり、センサー接続用電極部およびその他の機器接続用電極部を構成する導電性線状体40)は電極配線付き布材100から露出する必要はない。布材本体10の内部にセンサー接続用電極部およびその他の機器接続用電極部が設けられていても、ピン状の電極等により接続が可能なためである。
【0032】
一方、配線部30は、第一電極部20Aと第二電極部20Bと隣接して、一つ設けられている。つまり、配線部30は、第一電極部20Aと第二電極部20Bとを連結するように、一つ設けられている。配線部30は、電極部20の数に応じて、2つ以上設けてもよい。
【0033】
配線部30は、布材本体10の内部に設けられている。具体的には、例えば、3層の布材層で構成された布材本体10の内層の布材層(部分的に内層となる布材層も含む)である中間布材層10Cに、配線部30が設けられていることにより、配線部30を布材本体10の内部に設けることができる。また、例えば、2層の布材層で構成された布材本体10の布材層の間に、配線部30となる導電性線状体40を設けてもよい。
なお、配線部30は、布材本体10の表面に設けられていてもよい。例えば、配線部30は、3層の布材層で構成された布材本体10の表面布材層10A又は裏面布材層10Bに設けられていてもよい。ただし、配線部30は、布材本体10による外部との絶縁化を図る観点から、布材本体10の内部に設けることがよい。
【0034】
電極部20および/又は配線部30において、導電性線状体40の少なくとも一部は、布材本体10の糸で拘束されている。このような形態は、電極部20又は配線部30の導電材料として機能する導電性線状体40を、電極部20又は配線部30を布材本体10に固定する手段としても用いることができるという観点から好ましい。布材本体10に拘束されている導電性線状体40は、電極部20および配線部30の両方に含まれる同じ1本の導電性線状体40であってもよいし、電極部20又は配線部30のいずれか一方のみに含まれる別の導電性線状体40であってもよい。なお、電極部20または配線部30において、導電性線状体40は布材本体10の糸で拘束されていなくてもよい。例えば、電極部20又は配線部30が接着剤により布材本体10に固定されている場合、又は、電極部20又は配線部30が絶縁性の糸により布材本体10に縫い付けられている場合には、導電性線状体40が布材本体10の糸で拘束されていなくても、電極部20又は配線部30を布材本体10に固定可能である。
【0035】
例えば、導電性線状体40を180°に繰り返し屈曲又は湾曲して配置した矩形の領域を形成する。この矩形の領域は、布材本体10の表面布材層10Aの糸に導電性線状体40の一部を拘束させて形成する。そして、この矩形の領域を面状の電極部20とする。
なお、導電性線状体40を渦巻状に配置した領域を、電極部20とてもよい。また、導電性線状体40を屈曲又は湾曲して配置した任意の面形状(多角形、円形等)を、電極部20としてもよい。
【0036】
一方、電極部20(第一電極部20Aおよび第二電極部20B)の導電性線状体40を、電極部20間に波線形状に延在させ、波線形状の領域を形成する。波線形状の領域は、布材本体10の中間布材層10Cの糸に導電性線状体40の一部を拘束させて形成する。そして、波線形状の領域を配線部30とする。
なお、導電性線状体40を直線形状に配置した直線形状の領域を、配線部30としてもよい。ただし、電極配線付き布材100の伸長による電極部20と配線部30との接続不良を抑制する観点から、配線部30は波線形状の領域(つまり、波線形状に導電性線状体40を配置した領域)とすることがよい。
【0037】
具体的には、布材本体10が織物の場合、図3に示すように、経糸及び緯糸で織られた織物の織組織に、導電性線状体40を織り込んで電極部20および/又は配線部30を構成することが、布材本体10を織布により形成する際に、電極部20および/又は配線部30を同時に形成可能であるという観点、布材本体10電極部20および/又は配線部30の一体性の向上という観点から好ましい。
【0038】
布材本体10が編物の場合、図4に示すように、ループ状の糸が編み込まれた編物の編組織に、上記形状で導電性線状体40を編み込んで電極部20および/又は配線部30を構成することが、布材本体10を編むことにより形成する際に、電極部20および/又は配線部30を同時に形成可能であるという観点、布材本体10電極部20および/又は配線部30の一体性の向上という観点から好ましい。編物の網組織に導電性線状体40を編み込む場合、例えば、引き揃え編み、プレーティング編み、インレイ編みなどを採用できる。図4は、インレイ編みを採用して導電性線状体40を編み込んだ例を示している。
【0039】
また、図5に示すように、布材本体10に対して、上記形状で導電性線状体40を刺繍して、電極部20および/又は配線部30を構成することが、電極部20および/又は配線部30を形成する際に、同時に電極部20および/又は配線部30の布材本体10への固定も行うことが可能であるという観点から好ましい。刺繍の手法は、例えば、ランニングステッチ、コーチングステッチ、バックステッチ、チェーンステッチ、アウトラインステッチ等の周知のステッチを採用できる。図5は、チェーンステッチを採用して導電性線状体40を刺繍した例を示している。
【0040】
また、布材本体10に対して、電極部20および/又は配線部30を導電性線状体40で縫い付けて固定することが、電極部20および/又は配線部30を構成する導電性線状体40と、電極部20および/又は配線部30を固定する導電性線状体40を共通するものにすることができるという観点から好ましい。
例えば、電極部20および/又は配線部30を導電性線状体40で縫い付けて固定されている態様としては、導電性線状体40を織り込んだ織物又は導電性線状体を編み込んだ編物から電極部20および配線部30を連続的に形成し、その電極部20および配線部30を導電性線状体40で布材本体10に縫い付けた態様が挙げられる。
【0041】
図3中、12は布材本体10(織物)を構成する経糸、14は布材本体10(織物)を構成する緯糸を示す。図4中、16は、布材本体10(織物)を構成する糸を示す。
【0042】
電極部20および配線部30は、同じ1本の導電性線状体40で構成した形態以外に、同じ2本以上の導電性線状体で構成されていてもよい。
また、電極部20および配線部30は、各々、複数本の導電性線状体40で構成されていてもよい。ただし、複数本の導電性線状体40のうち、少なくとも1本の導電性線状体40は、電極部20および配線部30を共に構成する導電性線状体40とする。
【0043】
また、電極部20を複数有する場合、少なくとも一つの電極部20に含む少なくとも1本の導電性線状体と、それに隣接して設けられる配線部30に含む少なくとも1本の導電性線状体とを、同じ1本の導電性線状体40とする。
【0044】
なお、布材本体10を構成する糸として弾性糸を採用する場合、弾性糸を伸長した状態で、織編物を形成しつつ、導電性線状体を布材本体10に、織り込む又は編み込むことがよい。
【0045】
(導電性線状体)
電極部20および配線部30を構成する導電性線状体は、導電性を有するものであれば、特に制限はないが、金属ワイヤーを含む線状体、導電性糸を含む線状体等が挙げられる。導電性線状体40は、金属ワイヤー及び導電性糸を含む線状体(金属ワイヤーと導電性糸を撚った線状体等)であってもよい。
【0046】
金属ワイヤーを含む線状体、及び導電性糸を含む線状体は、共に、高い伝導性及び高い電気伝導性を有するため、導電性線状体40として適用すると、電極部20および配線部30の抵抗を低減することが容易となる。
【0047】
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、レニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料やポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。
【0048】
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属腐食が抑制される。
【0049】
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンファイバー等の非晶質炭素;グラファイト;フラーレン;グラフェン;カーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0050】
一方、導電性糸を含む線状体は、1本の導電性糸からなる線状体であってもよいし、複数本の導電性糸を撚った線状体であってもよい。また、導電性糸と絶縁性の糸を撚ったものであってもよい。導電性糸を含む線状体は、金属ワイヤーを含む線状体に比べ、柔軟性が高く、布材本体10への織り込み、編み込み若しくは刺繍又は布材本体10への縫い付けによる断線が生じ難いといる利点がある。
導電性糸としては、導電性繊維(金属繊維、炭素繊維、イオン導電性ポリマーの繊維等)を含む糸、導電性微粒子(カーボンナノ粒子等)を含む糸、表面に金属(銅、銀、ニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、金属酸化物を含浸させた糸等が挙げられる。
【0051】
導電性糸を含む線状体としては、特に、カーボンナノ粒子として、カーボンナノチューブを含む糸(カーボンナノチューブ糸)を含む線状体(以下「カーボンナノチューブ線状体」とも称する)が好適に挙げられる。
【0052】
カーボンナノチューブ線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、複数のカーボンナノチューブの集合が捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国公開公報US 2013/0251619(日本国特開2011-253140号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が撚られた線状体であってもよい。
【0053】
カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと金属や導電性高分子、グラフェン等のカーボンナノチューブ以外の導電性材料とを含む線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。複合線状体は、カーボンナノチューブ線状体の上述した特徴を維持しつつ、線状体の導電性が向上しやすくなる。
【0054】
複合線状体としては、例えば、カーボンナノチューブと金属とを含む線状体を例とすると、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを撚った複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛等の金属単体、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
【0055】
これら、導電性線状体40の中でも、カーボンナノチューブ糸を含む導電性線状体(特に、カーボンナノチューブ糸のみを含む導電性線状体や、カーボンナノチューブ糸と非金属系導電性材料とを含む導電性線状体)が好ましい。
例えば、表面に金属(銅、銀、ニッケル等)をめっき又は蒸着した糸、金属酸化物を含浸させた糸は、伸縮が繰り返されると金属又は金属酸化物に割れが生じ易く、耐久性が低い。この点、カーボンナノチューブ線状体は、屈曲への耐性が強く、電極配線付き布材100が伸縮を繰り返しても、配線部の抵抗値が変化しにくい。また、カーボンナノチューブ線状体は、耐食性も高いという利点もある。
【0056】
ここで、導電性線状体40の線抵抗は、5.0×10-3Ω/cm~1.0×10Ω/cmが好ましく、1.0×10-2Ω/cm~5.0×10Ω/cmがより好ましい。
【0057】
導電性線状体40の線抵抗の測定は、次の通りである。まず、導電性線状体40の両端に銀ペーストを塗布し、銀ペースト間の部分の抵抗を測定し、導電性線状体40の抵抗値(単位:Ω)を求める。そして、得られた抵抗値を、銀ペースト間の距離(cm)で除して、導電性線状体40の線抵抗を算出する。
【0058】
(その他特性)
電極配線付き布材100の伸長前における配線部30の抵抗に対する、最大伸長の50%で電極配線付き布材100を伸長したときにおける配線部30の抵抗変化率は、10%以下(好ましくは5%以下)がよい。
【0059】
なお、配線部30の抵抗とは、測定対象となる配線部30の一端に、同じ1本の導電性線状体40を共通化して配置した一つの電極部20のみを有する場合、電極部20と配線部30の他端(配線部30における電極部20と隣接しない側の端部)との間の抵抗を意味する。この場合、電極配線付き布材100の伸長方向は、一つの電極部20の中心と配線部30の他端とを結んだ仮想線が延びる方向とする。
また、配線部30の抵抗とは、測定対象となる配線部30の両端に、同じ1本の導電性線状体40を共通化して配置した2つ電極部20(例えば第一電極部20Aおよび第二電極部20B)を有する場合、2つの電極部20間の抵抗を意味する。この場合、電極配線付き布材100の伸長方向は、二つの電極部20の中心を結んだ仮想線が延びる方向とする。
【0060】
配線部30の抵抗変化率が少ないと、布材の伸長に対する、ウェアラブルデバイス(生体信号計測器等)等の伸縮性のデバイスの動作の安定性が高まる。電極配線付き布材100を伸長する度合いが大きい用途においてもデバイスの動作の安定性を高める観点から、最大伸長まで電極配線付き布材100を伸長したときにおける配線部30の抵抗変化率は、10%以下(好ましくは5%以下)がよい。
最大伸長の50%伸長時または最大伸長時の配線部30の抵抗変化率を10%以下とするには、例えば、前述した、布材本体10を構成する糸として弾性糸を採用し、弾性糸を伸長した状態で、織編物を形成しつつ、導電性線状体を布材本体10に、織り込む又は編み込む方法を用いることにより実現することができる。
【0061】
配線部30の抵抗変化率は、次の通り測定される。
配線部30の抵抗を連続測定しながら、速度1mm/sで、電極配線付き布材100の配線部に該当する部分を最大伸長まで伸長させた後、同じ速度で元に戻るまで収縮させる。このとき、電極配線付き布材100の伸長前における配線部30の抵抗値RA(Ω)、および所定の伸長度合い(例えば、最大伸長の50%や、最大伸長(100%))で電極配線付き布材100を伸長したときにおける配線部30の抵抗値RB(Ω)を測定する。
そして、式;配線部30の抵抗変化率=(RB-RA)/RA×100により、配線部30の抵抗変化率を算出する。なお、配線部30の抵抗変化率は絶対値である。
【0062】
ここで、電極配線付き布材100の最大伸長とは、次の通り定義されるものである。
電極配線付き布材100の最大伸長は、電極配線付き布材100を適切な張力で伸長した際に、それ以上伸びなくなる時の長さである。つまり、電極配線付き布材100を伸長が停止する張力で伸長させたときの長さを、電極配線付き布材100の最大伸長とする。
【0063】
(変形例)
本実施形態に係る電極配線付き布材100は、上記形態に限定されず、変形、又は改良してもよい。以下、本実施形態に係る電極配線付き布材100の変形例について説明する。以下の説明では、本実施形態に係る電極配線付き布材100は、上記形態について説明した部材と同一であれば、図中に、同一符号を付してその説明を省略または簡略する。
【0064】
-第1の変形例-
本実施形態に係る電極配線付き布材100は、例えば、図6に示す電極配線付き布材101であってもよい。具体的には、図6に示すように、電極配線付き布材101は、表面布材層10A、中間布材層10Cおよび裏面布材層10Bを有する3重の布材本体10を有する。中間布材層10Cには、導電性線状体40を含む電極部20(第一電極部20Aおよび第二電極部20B)と、電極部20に含む導電性線状体40が延在した導電性線状体40を含む配線部30と、が共に設けられている。そして、中間布材層10Cに設けた配線部30のみを表面布材層10Aで覆われている。
【0065】
-第2の変形例-
本実施形態に係る電極配線付き布材100は、例えば、図7に示す電極配線付き布材102であってもよい。具体的には、図7に示すように、電極配線付き布材100は、電極部20のうち、第一電極部20Aを複数有している。なお、図7中、第一電極部20Aとして、第一電極部20A-1、第一電極部20A-2の2つの電極部を有する態様を示している。
本態様の場合、例えば、第一電極部20A-1、配線部30および第二電極部20Bに同じ1本の導電性線状体40Aを共通化して配置し、第一電極部20A-2、配線部30および第二電極部20Bに同じ1本の導電性線状体40Bを共通化して配置している。
【0066】
(用途)
電極配線付き布材100は、生体信号計測器等のウェアラブルデバイスに利用できる。例えば、所定の機器を取り付けた電極配線付き布材100を裁断および加工して、ウェアラブルデバイス付きの衣類としてもよい。また、所定の大きさに裁断した電極配線付き布材100を、衣類に取り付けてもよい。
また、電極配線付き布材100は、被服に適用するものではない非ウェアラブルの生体用デバイス(センサー等)、カーペット、カーテン、クッションカバー、寝具用テキスタイル、テントやタープの布地等にも利用できる。
【実施例0067】
以下、本開示を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本開示を制限するものではない。
【0068】
[実施例1]
シリコンウエハ上に形成されたマルチウォールカーボンナノチューブフォレストを準備した。カーボンナノチューブフォレストの側面からカーボンナノチューブのリボンを引き出しつつ、リボンに撚りを加えることにより、直径30μmのカーボンナノチューブ糸を得た。このカーボンナノチューブ糸を8本撚り合わせて、一本の撚り合わせカーボンナノチューブ糸を得た。
【0069】
一方、ポリエステルでカバーリングされたポリウレタン繊維の弾性糸(伸縮性を有する糸)を引き伸ばしながら、編む手法により2重の布材に加工した。この布材を編む工程において、撚り合わせカーボンナノチューブ糸を、2層の布材層の間に、布の編みの方向に進行して略直線状に編み込んだ。この波形のカーボンナノチューブ糸が編み込まれた領域を配線部とした。
また、布材の編みの方向における、略直線状に編み込むカーボンナノチューブ糸の両端部においては、布材の同じ表面(表面布材層)に、編み込むカーボンナノチューブ糸と同じカーボンナノチューブ糸を、四角形状となるように繰り返し屈曲させて編み込んだ。この四角形状のカーボンナノチューブ糸が編み込まれた領域を、各々、生体接触用電極部(第一電極部)および機器接続用電極部(第二電極部)とした。
【0070】
以上の工程を経て、電極配線付き布材(図1参照)を得た。得られた布材の特性は次の通りである、
【0071】
-電極配線付き布材の特性-
・電極配線付き布材のサイズ:幅20mm×長さ110mm
・電極配線付き布材の厚さ:約500μm
・機器接続用電極部のサイズ:8mm×8mm
・生体接触用電極部のサイズ:8mm×8mm
・配線部でつながれた両電極間の距離:70mm
【0072】
[実施例2]
カーボンナノチューブ糸に代えて、銀をめっきしたポリエステル糸(大阪電気工業株式会社が販売するODEX40/2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、電極配線付き布材(図1参照)を得た。
【0073】
[配線部の抵抗変化率]
既述の方法に従って、伸長前および最大伸長の50%で電極配線付き布材を伸長したときにおける配線部の抵抗変化率を測定した。なお、伸長は配線部でつながれた両電極間の部分について行った。実施例1および2で作製した電極配線付き布材の最大伸長は、いずれも56mmであり、最大伸長の50%である28mm伸長した場合と、最大伸長での抵抗を測定し、抵抗変化率を計算した。
【0074】
[繰り返し伸縮操作後の耐久性評価]
電極配線付き布材に対して、最大伸長まで、往復周期1Hzの状態で、10万回の繰り返し伸縮操作を行い、伸縮操作前後の配線部の抵抗値を測定した。なお、配線部の抵抗値としては、繰り返し伸縮操作前については、非伸長時の抵抗値を求め、繰り返し伸縮操作後については、最大伸長で電極配線付き布材100を伸長したときにおける配線部の抵抗値を求めた。この配線部の抵抗値は、配線部30の抵抗変化率と同様の手法により求めた。そして、伸縮操作前の配線部の抵抗に対する伸縮操作後の配線部の抵抗変化率を求め、下記基準で評価した。
OK:配線部の抵抗変化率が±10%以下
NG:配線部の抵抗変化率が±10%超え
【0075】
【表1】


【0076】
ただし、実施例2では、繰り返し伸縮操作後の耐久性評価について、50回の繰り返し伸縮操作までは、OK評価であった。
上記結果から、本実施例の電極配線付き布材は、繰り返しの変形による電極部と配線部との接続不良を抑制できることがわかる。
【0077】
符号の説明は、次の通りである。
10 布材本体
10A 表面布材層
10B 裏面布材層
10C 中間布材層
20 電極部
30 配線部
40 導電性線状体
100 電極配線付き布材
101 電極配線付き布材
102 電極配線付き布材
【0078】
なお、日本国特許出願第2018-103874号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7