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特開2024-56769ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池
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  • 特開-ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池 図1
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  • 特開-ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池 図6B
  • 特開-ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056769
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/52 20100101AFI20240416BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240416BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240416BHJP
   H01M 6/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/52
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M6/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014993
(22)【出願日】2024-02-02
(62)【分割の表示】P 2022111373の分割
【原出願日】2018-05-08
(31)【優先権主張番号】62/503,829
(32)【優先日】2017-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】315014051
【氏名又は名称】デュラセル、ユーエス、オペレーションズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー、エイ.ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ポール、アルバート、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン、エイ.ハックニー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電池用の電気化学的に活性なカソード材料を提供する。
【解決手段】電気化学的に活性なカソード材料は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは化学式を有する。化学式は、LixNi1+a-z・nHOであり、式中、xは約0.02から約0.20までであり、yは約0.03から約0.20までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までである。化学式中、Aはアルカリ金属である。アルカリ金属は、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびこれらの任意の組み合わせを含む。化学式中、Mはアルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード材料を調製する方法であって、
ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、およびそれらの組み合わせの群から選択される酸化剤を用いて、一般式Li1-aNi1+a-zMzO2を構成する非化学量論的なニッケル酸リチウムを酸化することであって、当該式中、0.02≦a<0.2および0≦z<0.2であり、一般式LixHwNi1+a-zMzO2を構成する非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを提供し、この式中、0.02≦x≦0.2、0≦w≦0.2、および0.02≦a≦0.2、0≦z<0.2である、こと、を含む、方法。
【請求項2】
前記非化学量論的なニッケル酸リチウムが式LixHwNi1+aO2を構成するように、zが0であり、この式中、0.02≦x≦0.2、0≦w≦0.2、および0.02≦a≦0.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤が、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、およびそれらの組み合わせの群から選択される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
aが0.03から0.15までである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
xが0.05から0.12までである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを水酸化物水溶液で処理することをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記水酸化物水溶液が、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水酸化物水溶液の濃度が約0.5Mから約10Mである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
アルカリ一次電池を製造する方法であって、
ペルオキシ二硫酸塩、一過硫酸塩、または、それらの組み合わせを含む酸化剤を用いて、一般式LixHwNi1+a-zMzO2を構成する非化学量論的なニッケル酸リチウムを酸化することを含む処理によってカソード活物質を調製することであって、この式中、0.02≦a<0.2および0≦z<0.2であり、一般式LixHwNi1+a-zMzO2を構成するアルカリ金属欠陥酸化ニッケル電気化学的に活性なカソード材料を提供し、この式中、0.02≦x≦0.2、0≦w≦0.2、および0.02≦a≦0.2、0≦z<0.2である、ことと、
前記カソード材料をカソードに組み込むことと、
前記カソードを前記電池に組み込むことと、
アノードを前記電池に組み込むことと、
水系アルカリ電解質を前記電池に組み込むことと、を含む方法。
【請求項10】
前記非化学量論的なニッケル酸リチウムが式LixHwNi1+aO2を構成するように、zが0であり、この式中、0.02≦x≦0.2、0≦w≦0.2、および0.02≦a≦0.2である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、およびそれらの組み合わせの群から選択される、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
aが0.03から0.15までである、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項13】
xが0.05から0.12までである、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
前記非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを水酸化物水溶液で処理することをさらに含む、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記水酸化物水溶液が、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水酸化物水溶液の濃度が約0.5Mから約10Mである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる、2017年5月9日に出願された米国仮特許出願第62/503,829号の米国特許法119条(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
本発明は、電気化学的に活性なカソード材料に関し、より具体的には、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料およびこれを含む電池に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学セル、すなわち電池は、電気エネルギー源として一般に使用されている。電池は、通常アノードと呼ばれる負極と、通常カソードと呼ばれる正極とを含む。アノードは、酸化され得る電気化学的に活性なアノード材料を含む。カソードは、還元され得る電気化学的に活性なカソード材料を含む。電気化学的に活性なアノード材料は、電気化学的に活性なカソード材料を還元することができる。アノードとカソードの間には、セパレータが配置されている。イオン伝導性電解質溶液が、カソード、アノード、およびセパレータと密接な接触状態にある。電池の構成要素は、典型的には金属で作られた缶、すなわちハウジング内に配置される。
【0004】
電池が、電子装置において電気エネルギー源として使用される場合、アノードおよびカソードに電気的に接続されて、装置に電子を流し、各極の酸化反応および還元反応を発生させて電子装置に電力を提供する。電解質が、アノード、カソードおよびセパレータと接触している。電解質は、放電中に電池全体の荷電平衡を維持するように、アノードとカソードとの間でセパレータを通って流れるイオンを含む。
【0005】
電池を、玩具、リモコン、オーディオ装置、懐中電灯、デジタルカメラおよび写真撮影の周辺装置、電子ゲーム、歯ブラシ、ラジオ、時計などの最新の電子装置への電力供給により適した電池を製造することがますます必要とされている。この必要を満たすために、電池は、容量および耐用寿命を増加させるように、高充填量の電気化学的に活性なアノードおよび/またはカソード材料を含み得る。しかしながら、電池はまた、決まった外形寸法および制約された内容積を有する、単3、単4、単6、単2および単1の電池サイズなどの、共通のサイズで提供される。よって、より性能の良好な電池を達成するために電気化学的活物質の充填量のみを増加させる能力は限られている。
【0006】
電池の電気化学的に活性なカソード材料は、性能を高めるために調整され得るもう1つの設計上の特徴である。例えば、より大きい体積容量および重量容量を有する電気化学的活物質は、より性能の良好な電池をもたらし得る。同様に、より高い酸化状態を有する電気化学的活物質もまた、より性能の良好な電池をもたらし得る。しかしながら、選択される電気化学的活物質は、電池が電力供給し得る装置に許容される閉路電圧、すなわち動作電圧の範囲を提供しなければならない。電池の開路電圧(OCV)または動作電圧が高すぎる場合、装置が損傷する可能性がある。反対に、電池の動作電圧が低すぎる場合、装置が全く機能しない可能性がある。
【0007】
加えて、高酸化状態の遷移金属酸化物などの電気化学的に活性なカソード材料は、反応性が高い場合がある。そのような電気化学的に活性なカソード材料の高い反応性は、電気化学的に活性なカソード材料が電池内に組み込まれ、電解質溶液と接触したときにガス発生の原因となり得る。発生したガスは、カソード内の導通などの構造的完全性の問題、および/または電池からの電解質の漏出をもたらす電池内の圧力の増加につながり得る。高酸化状態の遷移金属酸化物は、他の電池構成要素、導電性炭素添加剤、例えばグラファイト、他の添加剤、例えば(1つまたは複数の)界面活性剤、および/またはセパレータなどとの有害な反応も引き起こし得る。高酸化状態の遷移金属酸化物はまた、電解質と反応する傾向を有する場合もあり、これは、カソード膨張などの電池内の他の構造的な問題や、電池内の好ましくない水分バランスをもたらす水の消費につながり得る。また、電気化学的に活性なカソード材料として高酸化状態の遷移金属酸化物を含む電池は、例えば、電池が長期間にわたって保管されると熱力学的不安定性を呈し、高い自己放電率を呈する場合がある。加えて、電池の電気化学的活物質の含有量に対する含水量と水酸化カリウム含有量の両方の比率を、電気化学的に活性な電極材料の両方の利用を最大化するために適切にバランスさせる必要がある。さらに、電気化学的活物質の含有量に対する含水量と水酸化カリウム含有量の両方の適切な比率を選択することによって、複数の放電率レジームにわたって電池性能が向上し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した必要に対処する電池用の電気化学的に活性なカソード材料を提供する必要がある。本発明の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料は、とりわけ、これらの必要に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態において、本発明は電池を対象とする。電池は、カソードと、アノードと、カソードとアノード間のセパレータと、電解質とを含む。カソードは、導電性添加剤と電気化学的に活性なカソード材料とを含む。電気化学的に活性なカソード材料は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは化学式を有する。化学式は、LiNi1+a-z・nHOであり、式中、xは約0.02から約0.20までであり、yは約0.03から約0.20までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までである。化学式中、Aはアルカリ金属である。アルカリ金属は、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびこれらの任意の組み合わせを含む。化学式中、Mはアルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含む。アルカリ土類金属は、マグネシウム、カルシウム、およびそれらの組み合わせを含むことができる。遷移金属は、コバルト、マンガン、チタン、イットリウム、およびこれらの組み合わせを含むことができる。非遷移金属は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、およびこれらの任意の組み合わせを含むことができる。アノードは、電気化学的に活性なアノード材料を含む。電気化学的に活性なアノード材料は、亜鉛、亜鉛合金、およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、層状結晶構造を有する非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む電気化学的に活性なカソード材料を対象とし、層状結晶構造は複数のNiO層を含む格子を特徴とし、NiO格子は、秩序化O1型層積層構成と、少なくとも1つのO3型層積層欠陥と、少なくとも1つのガンマオキシ水酸化ニッケル(γ-NiOOH)様の層積層欠陥とを含む。
【0011】
本明細書は、本発明を形成すると見なされる主題を特定し、明確に特許請求する特許請求の範囲で締めくくられるが、本発明は以下の説明を添付の図面と併せて読めばよりよく理解されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む一次アルカリ電池の一実施形態の断面図である。
図2】化学量論的なニッケル酸リチウムの粉末X線回折パターン(下)および過剰なニッケルを含有する非化学量論的なニッケル酸リチウムの粉末X線回折パターン(上)を含む図である。
図3】化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの粉末X線回折パターン(下)および過剰なニッケルを含む非化学量論的なアルファ脱リチウム化酸化ニッケルの粉末X線回折パターン(上)を含む図である。
図4】非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの一実施形態の粉末X線回折パターン(上)およびP3型層積層のガンマNiOOH型構造を有するガンマ脱リチウム化層状酸化ニッケルの粉末X線回折パターン(下)を含む図である。
図5】(A)O3型層積層構成を有する結晶格子、(B)O1型層積層構成を有する結晶格子、および(C)O3型積層欠陥が格子全体に統計的に分布するO1型積層構成を有する結晶格子、のレンダリングの図である。
図6A】非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの秩序化O1型層積層構成におけるO3型層積層欠陥の存在を示す高分解能走査型透過電子顕微鏡写真を含む図である。
図6B】非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの一実施形態の秩序化O1型積層構成(7.2Å)におけるO3型層積層欠陥(4.7Å)の存在を示す収束電子線回折パターンの図である。
図7】(A)に、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの一実施形態の粉末X線回折パターンを、(B)に、秩序化O1型層積層構成を有する格子におけるO3型とP3型(すなわちγ-NiOOH型)の積層欠陥の組み合わせの統計的分布を想定してDIFFaXソフトウェアによって計算された対応するシミュレートされたX線回折パターンを含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電気化学セル、すなわち電池は、一次または二次であり得る。一次電池とは、例えば消耗するまで、1回だけ放電して廃棄されることを意味する。一次電池については、例えば、David Linden,Handbook of Batteries(4th ed.2011)に記載されている。二次電池は、充電することを意図されている。二次電池は、何回も、例えば、50回、100回、またはそれ以上、放電および再充電され得る。二次電池については、例えば、David Linden,Handbook of Batteries(4th ed.2011)に記載されている。したがって、電池は、様々な電気化学対および電解質の組み合わせを含み得る。本明細書で提供される説明および例は一般に一次アルカリ電気化学セル、すなわち電池を対象としているが、本発明は、水系、非水系、イオン液体、および固体の電解質系を有する一次電池と二次電池の両方に適用されることを理解されたい。よって、前述の電解質を含む一次電池および二次電池は本出願の範囲内であり、本発明はいかなる特定の実施形態にも限定されない。
【0014】
図1を参照すると、カソード12と、アノード14と、セパレータ16と、ハウジング18とを含む、一次アルカリ電気化学セル、すなわち電池10が示されている。電池10はまた、集電体20と、シール22と、エンドキャップ24も含む。エンドキャップ24は、電池10の負極端子として機能する。正の小突起26は、エンドキャップ24から見て電池10の反対端にある。正の小突起26は、電池10の正極端子として機能し得る。電池10全体に電解液が分散している。カソード12、アノード14、セパレータ16、電解質、集電体20、およびシール22は、ハウジング18内に収容されている。電池10は、例えば、単3、単4、単6、単2、または単1形のアルカリ電池とすることができる。
【0015】
ハウジング18は、一次アルカリ電池で一般に使用される任意の従来型のハウジングのものとすることができ、任意の適切な基材、例えば冷間圧延鋼やニッケルめっきした冷間圧延鋼などで製造することができる。ハウジング18は、円筒形状を有していてもよい。ハウジング18は、任意の他の適切な非円筒形状のものであってもよい。ハウジング18は、例えば、長方形、正方形、または角柱形状など、少なくとも2枚の平行板を含む形状を有していてもよい。ハウジング18は、例えば冷間圧延鋼やニッケルめっき鋼などの基材のシートから深絞りされてもよい。ハウジング18は、例えば、円筒形状に絞り加工されてもよい。ハウジング18は、少なくとも1つの開口端を有し得る。ハウジング18は、その間に側壁を備えた閉口端と開口端とを有し得る。ハウジング18の側壁の内面は、ハウジング18の側壁の内面とカソード12などの電極との間に低い電気接触抵抗を提供する材料で処理され得る。ハウジング18の側壁の内面は、例えば、ハウジング18の側壁の内面とカソード12との間の接触抵抗を減らすために、例えば、ニッケル、コバルトでめっきされ、かつ/またはカーボン入り塗料で塗装されてもよい。
【0016】
カソード12は、少なくとも1つの電気化学的に活性なカソード材料を含む。電気化学的に活性なカソード材料は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであり得る。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、一般化学式LiNi1+a-z・nHOを有していてもよく、式中、xは約0.02から約0.20までであり、yは約0.03から約0.20までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までであり、Aは、アルカリ金属を含み、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含む。aは、酸素原子の電荷をバランスするために必要な非化学量論的な量のニッケル(および/または他の金属M)(すなわちニッケル(および/または他の金属)の量に対する過剰なニッケル)が、材料中に必ず存在するように、正であるので、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは非化学量論的であると見なされる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、一般化学式LiNi1+a-z・nHOを有していてもよく、式中、xは約0.03から約0.12までであり、yは約0.03から約0.20であり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までであり、Aは、アルカリ金属を含み、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含む。
【0017】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの実施形態において、xは、0.02から0.2の範囲内、例えば、0.02から0.18、0.02から0.16、0.02から0.15、0.03から0.20、0.03から0.19、0.03から0.15、0.03から0.12、0.05から0.19、または0.05から0.15であり得る。実施形態において、yは、0.03から0.20内、例えば、0.03から0.17、0.03から0.15、0.03から0.13、0.06から0.20、0.06から0.17、0.06から0.15、0.06から0.13、0.08から0.17、0.08から0.15、または0.08から0.13であり得る。実施形態において、aは、0.02から0.20の範囲内、例えば、0.02から0.18、0.02から0.16、0.03から0.20、0.03から0.17、0.03から0.15、0.04から0.20、0.04から0.17、0.04から0.15、0.04から0.13、または0.04から0.11であり得る。aが0.02未満の場合、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの安定性が低いことがわかる。実施形態において、zは、0から0.20の範囲内、例えば、0.03から0.20、または0.04から0.20であり得る。実施形態において、zは0であり得る。zが0である実施形態では、aは、0.02から0.20の範囲内、例えば、0.02から0.16、0.03から0.15、または0.02から0.15であり得る。実施形態において、差(a-z)は、0.02から0.20の範囲内、例えば、0.02から0.16、0.04から0.20、0.04から0.16、0.06から0.16、または0.08から0.18であり得る。実施形態において、Aはカリウムとすることができ、yは、0.06から0.14の範囲内、例えば0.08から0.13であり得る。実施形態において、zは0であり、1+(a-z)は1より大きいので、Ni自体が非化学量論的な量で存在し、例えば、1+(a-z)は約1.02から約1.20の範囲内であり得る。
【0018】
電気化学的に活性なカソード材料は、重量容量を有し得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料は、約340mAh/gより大きいか、または約350mAh/gより大きい重量容量を有し得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料は、約340mAh/gから約400mAh/gまで、約350mAh/gから約400mAh/gまで、約340mAh/gから約380mAh/gまで、または約360mAh/gから400mAh/gまでの重量容量を有し得る。
【0019】
元素周期表の1A族の元素は、一般にアルカリ金属と呼ばれる。アルカリ金属は、元素周期表の1A族からの元素、または元素の任意の組み合わせを含み得る。アルカリ金属は、例えば、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、およびこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0020】
元素周期表のIIA族の元素は、通常、アルカリ土類金属と呼ばれる。アルカリ土類金属は、元素周期表のIIA族からの元素、または元素の任意の組み合わせを含み得る。アルカリ土類金属は、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0021】
元素周期表のIB~VIIIB族の元素は、通常、遷移金属と呼ばれる。遷移金属は、元素周期表のIB~VIIIB族からの元素、または元素の任意の組み合わせを含み得る。遷移金属は、例えば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、およびこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0022】
非遷移金属は、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、インジウム(In)、スズ(Sn)、およびこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0023】
アルカリ金属は、例えばカリウム(K)であり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LiNi1+a-z・nHOであってもよく、式中、xは約0.02から約0.20までであり、yは約0.03から約0.20までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までである。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LiNi1+a-z・nHOであってもよく、式中、xは約0.02から約0.20までであり、yは約0.08から約0.13までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までであり、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含む。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.130.13Ni1.16・0.26HOやLi0.070.13Ni1.11・0.53HOであってもよい。
【0024】
アルカリ土類金属は、例えば、マグネシウム(Mg)であり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LiNi1+a-zMg・nHOであってもよく、式中、xは約0.02から約0.2までであり、yは約0.03から約0.2までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までである。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.150.10Ni1.05Mg0.04・0.24HOであってもよい。
【0025】
遷移金属は、例えば、コバルト(Co)であり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LiNi1+a-zCo・nHOであってもよく、式中、xは約0.02から約0.2までであり、yは約0.03から約0.2までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までである。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.040.011Ni1.03Co0.03・nHOであってもよい。
【0026】
非遷移金属は、例えば、アルミニウム(Al)であり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、LiNi1+a-zAl・nHOであってもよく、式中、xは約0.02から約0.2までであり、yは約0.03から約0.2までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までである。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの化学式は、例えば、Li0.120.09Ni1.08Al0.02・0.18HOであってもよい。
【0027】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中の(1つもしくは複数の)アルカリ金属、(1つもしくは複数の)アルカリ土類金属、(1つもしくは複数の)遷移金属、および/または(1つもしくは複数の)非遷移金属の含有量は、当技術分野で公知の任意の許容される方法によって決定され得る。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中の(1つもしくは複数の)アルカリ金属および(1つもしくは複数の)遷移金属の含有量は、誘導結合プラズマ原子発光分光法(ICP-AES)および/または原子吸収(AA)分光法によって決定され得る。ICP-AES分析および/またはAA分析については、例えば、J.R.Dean,Practical Inductively Coupled Plasma Spectroscopy,pp.65~87(2005)およびB.Welz and M.B.Sperling,Atomic Absorption Spectrometry,pp.221~294(3rd ed.1999)に記載されている標準的な方法を使用して完了され得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどのサンプル材料に対するICP-AES分析を完了するために、HORIBA Scientific(京都、日本)から入手可能なUltima 2 ICP分光計が使用され得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのICP-AES分析を、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルに含有される元素に応じて、様々な波長で行うことができる。ICP-AESによって決定される非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のカリウム含有量は、約7重量パーセント未満であり得る。ICP-AESによって決定される非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のカリウムの含有量は、約2重量パーセントから約7重量パーセントまで、または約3重量パーセントから約7重量パーセントまでであってもよい。
【0028】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中の含水量は、当技術分野で公知の任意の許容される方法によって決定され得る。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中の含水量は、熱重量分析(TGA)によって決定され得る。TGAは、例えば、サンプル材料の吸収水および吸着水、サンプル材料の結晶格子中の含水量、ならびにサンプル材料中の総含水量を、サンプルの重量の変化を温度上昇の関数として測定することによって決定する。TGAについては、例えば、R.F.Speyer,Thermal Analysis of Materials(1994)に記載されている。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどのサンプル材料に対するTGAを完了するために、TA Instruments(ニューカッスル、米国デラウェア州)から入手可能なQ5000分析装置が使用され得る。
【0029】
粉末X線回折(pXRD)は、結晶性粉末などのサンプル材料の結晶格子構造を特徴付けるために使用される分析技術である。結晶サンプル材料のXRD分析により、サンプル材料の結晶構造の回折面に対応する様々な強度、幅、および回折角(ピーク位置)のピークからなる特徴的な回折パターンが得られることになる。XRDパターンを、例えば、B.D.Cullity and S.R.Stock,Elements of X-ray Diffraction(3rd ed.2001)に記載されているような標準的な方法によるCu-Kα放射を使用してX線回折計で測定することができる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどのサンプル材料に対する粉末XRD分析を完了するために、Bruker Corporation(マディソン、米国ウィスコンシン州)D-8 Advance X線回折計が使用され得る。サンプル材料の単位胞の長さや角度などの単位胞パラメータを、例えばXRDパターンのリートベルト解析(Rietveld refinement)によって決定することができる。リートベルト解析については、例えば、H.M.Rietveld,“A Profile Refinement Method for Nuclear and Magnetic Structures”,Journal of Applied Crystallography,pp.65~71(1969)に記載されている。
【0030】
サンプル材料の結晶子サイズを、シリコン(Si)標準を含むサンプル材料のXRDパターンのピーク広がりによって決定することができる。ピーク広がり解析は、例えば、単ピークシェラー法(single-peak Scherrer method)やWarren-Averbach法によって完了されてもよく、これらについては、例えば、H.P.Klug and L.E.Alexander,“X-ray Diffraction Procedures for Polycrystalline and Amorphous Materials”,Wiley,pp.618~694(1974)で論じられている。Warren-Averbach法はまた、サンプル材料の残留ひずみおよび応力を決定するためにも使用され得る。
【0031】
半値全幅(FWHM)を使用して、サンプル材料の回折パターン内の線の相対的な鋭さ、すなわち幅広さを特徴付けることができる。FWHMは、ピークの強度を測定し、測定された強度を2で除算して、半分の強度(半分の高さ)を計算し、計算された半分の高さでのピークの幅を測定することによって決定することができる。
【0032】
正規化された強度を、ピーク位置と共に使用して、サンプル材料の結晶格子内の特定の回折面と関連付けられる回折の相対的効率を比較することができる。正規化された強度は、同じXRDパターン内のピークに対して計算され得る。XRDパターンのすべてのピークが、最高強度を有するピーク(基準ピーク)に正規化され得る。正規化は、パーセントで報告され、正規化される数で表したピークを数で表した基準ピークの強度で除算し、100で乗算することによって行われる。例えば、基準ピークは425の強度を有し、正規化されるピークは106の強度を有し得る。ピークの正規化された強度は25%、例えば、[(106/425)*100]である。基準ピークは100%の正規化された強度を有する。
【0033】
得られたXRDパターンは、既知のXRDパターンと比較され得る。比較XRDパターンは、既知のサンプル材料から生成され得る。加えて、得られたXRDパターンは、例えば、International Centre for Diffraction Data(ニュートンスクエア、米国ペンシルベニア州)から入手可能な、Powder Diffraction File(PDF)データベースや、FIZ Karlsruhe(Eggenstein-Leopoldshafen、独国)から入手可能な、Inorganic Crystal Structure Database(ICSD)内の既知のXRDパターンと比較され得る。既知のサンプル材料またはPDF(International center for Diffraction Data、ニュートンスクエア、ペンシルベニア州)と比較することにより得られたサンプル材料のXRDパターンが材料の既知のXRDパターンと異なるか、類似しているか、それとも等しいかが判定される。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルと比較するためのPDFデータベース内の既知のXRDパターンには、ベータオキシ水酸化ニッケルのPDF #00-06-0141、ガンマオキシ水酸化ニッケルのPDF #00-00675、酸化ニッケルのPDF #00-006-0075、ベータ水酸化ニッケルのPDF #00-059-0463が含まれる。
【0034】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、特徴的な粉末X線回折パターンを有し得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの一例が図4(上)に示されている。測定されたXRDパターンは、例えばPDFデータベースで報告されているどんなX線回折パターンにも対応しない。XRDパターンは、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを示す数個のピーク、またはピークの組み合わせを含み得る。XRDパターンは、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの数個のピークの特徴的なFWHM値を含み得る。XRDパターンはまた、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの数個のピークの特徴的な正規化された強度も含み得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第1のピークを含み得る。第1のピークは、約14.9°2θから約16.9°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第1のピークは、例えば、約15.4°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第2のピークを含み得る。第2のピークは、約21.3°2θから約22.7°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第2のピークは、例えば、約22.1°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第3のピークを含み得る。第3のピークは、約37.1°2θから約37.4°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第3のピークは、例えば、約37.3°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第4のピークを含み得る。第4のピークは、約43.2°2θから約44.0°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第4のピークは、例えば、約43.6°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第5のピークを含み得る。第5のピークは、約59.6°2θから約60.6°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第5のピークは、例えば、約60.1°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第6のピークを含み得る。第6のピークは、約65.4°2θから約65.9°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第6のピークは、例えば、約65.7°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第7のピークを含み得る。第7のピークは、約10.8°2θから約12.0°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第7のピークは、例えば、約11.2°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、第8のピークを含み得る。第8のピークは、約48.1°2θから約48.6°2θまでのXRDパターン上のピーク位置を有し得る。第8のピークは、例えば、約48.3°2θであり得る。
【0035】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第1のピークは、FWHM(FWHM)を有し得る。第1のピークのFWHMは、約1.01°2θから約2.09°2θまでであり得る。第1のピークのFWHMは、例えば、約1.37°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第2のピークは、FWHMを有し得る。第2のピークのFWHMは、約0.86°2θから約1.95°2θまでであり得る。第2のピークのFWHMは、例えば、約1.37°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第3のピークは、FWHMを有し得る。第3のピークのFWHMは、約0.23°2θから約0.41°2θまでであり得る。第3のピークのFWHMは、例えば、約0.28°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第4のピークは、FWHMを有し得る。第4のピークのFWHMは、約0.40°2θから約0.75°2θまでであり得る。第4のピークのFWHMは、例えば約0.60°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第5のピークは、FWHMを有し得る。第5のピークのFWHMは、約0.57°2θから約1.45°2θまでであり得る。第5のピークのFWHMは、例えば、約0.92°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第6のピークは、FWHMを有し得る。第6のピークのFWHMは、約0.27°2θから約0.53°2θまでであり得る。第6のピークのFWHMは、例えば、約0.36°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第7のピークは、FWHMを有し得る。第7のピークのFWHMは、約0.56°2θから約1.73°2θまでであり得る。第7のピークのFWHMは、例えば、約1.13°2θであり得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンの第8のピークは、FWHMを有し得る。第8のピークのFWHMは、約0.33°2θから約0.58°2θまでであり得る。第8のピークのFWHMは、例えば、約0.45°2θであり得る。
【0036】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのX線回折パターンのピークのいくつかは、回折パターン内の他のピーク、例えば、第1、第2、第5、および第7のピークと比較して大幅に大きいFWHM値を有する。理論に束縛されることを意図するものではないが、X線回折パターン内の特定の回折ピークの広がりは、酸化ニッケルリチウム前駆物質のNiO層の長距離層積層構成を乱す層状格子構造内の様々な変形欠陥、例えば、積層欠陥などの面欠陥の形成の結果であると考えられる。
【0037】
公称化学量論的な酸化ニッケル(III)リチウムLiNiO(すなわちニッケル酸リチウム)の場合、格子対称性は菱面体晶であり、結晶構造はR-3m空間群に属する。一般式LiNiOを有する公称化学量論的な酸化ニッケル(III)リチウム(ニッケル酸リチウム)を、Arai et al.(Solid State Ionics 80(1995)261~269)に記載されている手順によって調製することができる。あるいは、化学量論的なニッケル酸リチウムは、商業的供給源(例えば、American Elements、カリフォルニア州ロサンゼルス)から購入することもできる。公称化学量論的なニッケル酸リチウムの粉末X線回折パターンは、Araiによって製造されたものにせよ、商業的に確保されたものにせよ、図2に示されている。ニッケル酸リチウムの格子構造は、三角対称性および酸素副格子に立方最密充填を有するNiO層の積層で構成されている。NiO層の基本構成要素は、同じ層に位置する他のNiO八面体と辺を共有して拡張辺共有ネットワークを形成するNiO八面体である。リチウムイオンは、NiO層間の層間領域の酸素原子によって定義される八面体サイトに位置する。NiO層は、長距離秩序を有するNiO層とリチウム含有層とが交互に重なる積層を形成するように、互いに対して系統的に整列している。この型の長距離秩序を、図5Aに示されるように、反復単位が、AB CA BC酸素充填を有する3つのNiO層を含むO3型層積層構成として分類することができる。
【0038】
化学量論的なニッケル酸リチウムのニッケル(III)が酸化されてニッケル(IV)になる際に、結晶格子から酸素を除去することなく全体的な電荷の電気的中性を維持するためにリチウムイオンが脱離する。化学量論的なニッケル酸リチウムは、Arai et al.(Electrochimica Acta 50(2005)1821~1828)に記載されている一般的な手順で脱リチウム化することができる。得られたNi(IV)含有脱リチウム化層状酸化ニッケルを、本明細書ではアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルと呼び、リチウムイオンのほぼすべてが層間領域から除去され、通常、(ニッケル酸リチウム前駆物質中の総リチウムに基づく)リチウムの約5から10%のみが残留する。ニッケル酸リチウムの中間層からリチウムイオンが除去される際に、NiO層は、互いに対してより容易に滑動し、対向するNiO層内のニッケルイオンと酸素イオンとの間の静電反発力を最小限に抑えるためによりエネルギーの低い異なる積層構成を形成することができる。2つの隣接するNiO層の変位は、リチウムイオンの一部がそれらの間の層間空間から脱離するとすぐに発生することができ、大部分のO3層積層構成内にO1型積層の局所領域が生じる。さらなるリチウムイオンが層間領域の残りの部分から脱離する際に、さらなる層の滑動が発生する。リチウムイオンがほぼ完全に脱離すると、格子の残りの部分は秩序化O1型層積層構成を有する秩序化六方格子に変形することができ、反復単位は図5Bに示されるようにAB酸素充填を有する単一のNiO層である。化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの典型的なXRDパターンが図3(下)に示されている。化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンは、対応する化学量論的なニッケル酸リチウム前駆物質のXRDパターンと同様であり、リチウムイオンの大部分の除去および結果としてNiO層間の静電反発力の増加から生じる層間間隔のわずかな拡大に対応した予想されるピークのシフトを伴う。
【0039】
一般式Li1-aNi1+a、式中、0.02≦a≦0.2を有する非化学量論的なニッケル酸リチウムの場合、過剰なニッケルが中間層のリチウムサイトを占有し得る。過剰なニッケルの存在は、ICP元素分析によって判断することができる。中間層のリチウムサイト内のニッケルの存在はまた、非化学量論的なニッケル酸リチウムのXRDパターンのリートベルト解析によっても検出することができる。化学量論的なニッケル酸リチウムのXRDパターンと比較した非化学量論的なニッケル酸リチウムのXRDパターンが図2に示されている。
【0040】
非化学量論的なニッケル酸リチウム前駆物質の中間層に存在するニッケルイオンは、一般に、誘導アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの中間層に、最終的には非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの中間層に存在する。ニッケル酸リチウムの中間層のニッケルイオンの酸化状態は、八面体リチウムサイトのイオン半径制約に基づいてNi(II)であると考えられる。理論に束縛されることを意図するものではないが、中間層にニッケルが存在すると、リチウムイオンのほぼすべてが脱離した後でさえも、隣接するNiO層間のNi-O結合が強いので、NiO層の互いに対する滑動を局所的に抑制することによりO3型層積層構成が安定すると考えられる。O3型積層欠陥を有するO1型格子の一例が図5Cに示されている。アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの中間層に存在するNi(II)イオンの原子分率は約0.03から約0.15までの範囲であり、中間層に存在する残留リチウムイオンの原子分率は約0.05から0.12までの範囲である。
【0041】
アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、電気化学的電位値が高く、アルカリ電解質水溶液と反応して酸素発生反応(OER)を介して酸素ガスを発生することがわかっている。加えて、そのようなアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを電気化学的に活性なカソード材料として含む電池の放電容量は、通常、OERによる自己放電によって減少する。閉じた電池の保管中に酸素ガスが発生すると、内圧が上昇し、圧力が十分に高い場合には電解質の漏出または放出を生じさせ得る。加えて、OERが水を消費することにより、水を消費して陽子と水酸化物イオンを発生する電気化学的放電反応に利用可能なセル内に存在する水分量が減少し、それによって理論容量と比較した電池のアクセス可能な放電容量が制限される。アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを水酸化アルカリ液で処理することにより、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを安定化して、OERの速度を実質的に低下させて、保管後の容量保持を高めることができる。アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを水酸化アルカリ水溶液で処理すると、アルファ脱リチウム化酸化ニッケル構造の中間層にアルカリカチオンと水分子が導入される。
【0042】
総ニッケル含有量に対して、中間層に約0.03から約0.15のNi(II)の原子分率を有する(すなわち非化学量論的な)アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを水酸化アルカリ液で処理すると、アルカリ金属と水分子の中間層への挿入により、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの構造に追加の積層欠陥が導入されることになる。アルカリ金属および水、ならびに他の積層欠陥を含む材料は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルと呼ばれる。理論に束縛されることを意図するものではないが、水酸化アルカリ液での処理中に、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルのO3型積層構成は、バルク秩序化O1型格子内にO3型層積層欠陥が存在する秩序化O1型積層構成に変換されると考えられる。加えて、水酸化アルカリ液での処理中には、水分子を伴ったアルカリ金属イオンも秩序化O1型格子に挿入され、O3型層およびO1型層の間隔(それぞれ、約4.7オングストロームおよび7.2オングストローム)に対して、NiO層間により大きい間隔(例えば、11~12オングストローム)を有するガンマオキシ水酸化ニッケル様の層(γ-NiOOH様の)を含む別の型の面積層欠陥を形成し得る。γ-NiOOH様の積層欠陥は、P3型層積層構成を有し、反復単位は、AB BC CAの積層順で酸素を有する3つのNiO層を含む。さらに、γ-NiOOH様の層の核形成がO3型層積層欠陥の近くで発生して、O3型層積層欠陥と秩序化O1型格子との間の界面でのひずみエネルギーを最小化することにより構造の安定化をもたらし得ると考えられる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの特徴的なXRDパターンが図4に示されている。γ-NiOOH様の層積層欠陥の存在は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのXRDパターンにおける約11°から12°2θで現れる幅広い第7のピークによって証明されている。ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの典型的な格子定数を、XRDパターンの精密化によって次のように決定した。a=2.839Å、c=14.324Å(空間群:R-3m)。
【0043】
対照的に、総ニッケル含有量に対して、中間層に約0.03未満、または約0.02未満のNi(II)の原子分率を有する公称化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを、水酸化アルカリ液で処理すると、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルにではなく、ほぼ完全に高結晶形のガンマオキシ水酸化ニッケル(γ-NiOOH)に変換される。図4(下)に示されるように、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの粉末XRDパターンを、ガンマオキシ水酸化ニッケルの粉末XRDパターンと容易に区別することができる。図4に示される下のXRDパターンは、Arai et al.(Electrochimica Acta 50(2005)1821~1828;Solid State Ionics,80(1995)261~269)に記載されている合成方法に従って調製したガンマオキシ水酸化ニッケルから得た。このXRDパターンは、Araiによって調製された(Araiの図1eに示されている)ガンマオキシ水酸化ニッケル材料のXRDパターンに対応しており、化学量論的な酸化ニッケルリチウムから調製された脱リチウム化酸化ニッケルリチウムのKOH処理の生成物が、Araiらによって調製された同じガンマオキシ水酸化ニッケル材料(Electrochimica Acta 50(2005)1821~1828)であることを裏付けている。
【0044】
驚くべきことに、非化学量論的なニッケル酸リチウムから調製された非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、化学量論的または非化学量論的なニッケル酸リチウムから調製されたアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル活物質に対して、酸素発生率の低下、自己放電の減少、およびアルカリ電池で電気化学的に活性なカソード材料として提供された場合の容量保持の増加を含むがこれに限定されない1つまたは複数の優位点を提供することがわかった。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、表3に示されるように、アルカリ性KOH電解質溶液に浸漬したときの対応するアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル前駆物質の酸素発生率の約50%以下の酸素発生率を有する。対照的に、非化学量論的なニッケル酸リチウムおよびこれから調製されたアルファおよびベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、一般に、非水系リチウムイオン充電式電池のカソード活物質としての使用に適さない。特に、非化学量論的なニッケル酸リチウムおよびこれから調製されたアルファおよびベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの層間領域におけるNi(II)イオンの存在は、NiO層間の距離の減少を引き起こす。そのような間隔の減少は、リチウムの脱離と再挿入の速度と範囲の両方を妨げ、それによって非水系リチウムイオン二次電池の総放電容量と速度能力が制限される可能性がある。
【0045】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの実験的に測定されたXRDパターンを、DIFFaXコンピュータプログラムを使用してシミュレートすることができる。秩序化O1型層積層構成に存在するO3型層積層欠陥およびガンマNiOOH様の層積層欠陥の量を、実験的に測定されたXRDパターンのピークごとの相対強度、ピーク形状、およびFWHM値を達成するために存在しなければならない各積層型の相対量を推定するために統計的に変化させることができる。DIFFaXプログラムは、仮想積層構造モデルを想定して、所与の型の層積層構成の回折強度対2θを計算する。O3型層積層欠陥とガンマオキシ水酸化ニッケル様の層の両方のレベル増加を、秩序化O1型酸素充填モデルに導入することによってXRDパターンをシミュレートすることができる。シミュレートされた回折パターンを、リートベルト解析を使用して精密化して、実験的回折パターンと最も近い一致を提供する欠陥構造モデルを特定することができる。実験的回折パターンに最もよく一致するシミュレートされた回折パターンを生成するために使用されたO3型およびガンマオキシ水酸化ニッケル様の欠陥の遷移確率を、積層分率に変換することができる。
【0046】
例えば図6Aに示されるような走査型透過電子顕微鏡(STEM)イメージング、および例えば図6Bに示されるような個々の結晶子の収束ビーム電子回折(CBED)を使用して、特徴的な層積層構成を有するバルク相における局所的な積層欠陥の存在を簡単に検出することができる。具体的には、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル粒子の個々の結晶子のCBED測定およびSTEM格子イメージングにより、低レベルの第2(および第3)の層積層構成の存在がバルク相の層状構造の大多数の積層構成中の積層欠陥として明らかになり得る。積層欠陥は、STEM格子画像において、格子縞の周期性の急激な変化として、また電子回折パターンのスポットの対応する列間隔の変化として明らかになる。非化学量論的なニッケル酸リチウムの場合、c軸方向に沿った(公称化学量論的なニッケル酸リチウムと比較して)余分なスポットの存在が、c軸に沿って異なる秩序を持つ層間領域のNiイオンの存在と一致する。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの場合、7.2オングストロームの列間隔を有する秩序化O1型積層構成の存在と、O3型層積層欠陥に対応する4.7オングストロームの列間隔を有する領域の存在の証拠がある。さらに、O3型欠陥は、O1型格子において分散されているか、または集団で存在し得る。
【0047】
DIFFaXプログラムによって生成された非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのシミュレートされたXRDパターンが図7Bに示されており、図7Aの対応する実験的に測定されたXRDパターンと比較することができる。上述したように、シミュレートされたXRDパターンを使用して、積層分率を決定することができる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、複数のNiO層を含む格子を特徴とする層状構造を有し、NiO格子は、秩序化O1型層積層構成と、少なくとも1つのO3型層積層欠陥と、少なくとも1つのガンマオキシ水酸化ニッケル様の層積層欠陥とを含む。アルカリ電気化学セルにおいて高い放電容量を提供する非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの格子構造における秩序化O1型、O3型、およびガンマオキシ水酸化ニッケル型の積層の層分率の値は、特徴的な範囲を有し得る。特に、NiO格子は、DIFFaXプログラムを使用して決定された、全層に基づく、約60%から約95%の秩序化O1型層積層、例えば、約65%から約95%、約60%から約85%、約70%から約90%、約85%から約95%、約75%から約90%、約80%から約90%、または約84%から約88%の秩序化O1型層積層を含むことができる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのNiO格子は、DIFFaXプログラムを使用して決定された、全層に基づく、約2%から約40%のO3型層積層欠陥、例えば、約2%から約35%、約2%から約15%、約2%から約10%、約4%から約30%、約4%から約25%、約6%から約20%、約6%から約15%、約7%から約12%、約7%から約11%、約15%から約40%、約25%から約40%、または約35%から約40%のO3型層積層欠陥を含むことができる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのNiO格子は、DIFFaXプログラムを使用して決定された、全層に基づく、約2%から約5%のγ-NiOOH様の層積層欠陥、例えば、約2%、約3%、約4%、または約5%のγ-NiOOH様の層積層欠陥を含むことができる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの特徴的な欠陥構造は、リチウム層中のNi(II)イオンの量と、結晶格子に統計的に分布するO1型層積層構成、O3型層積層欠陥、およびガンマオキシ水酸化ニッケル様の層の積層欠陥分率の範囲とによって実質的に定義することができる。
【0048】
よって、一次アルカリ電池のカソードに含まれた場合に高い放電容量を提供することができる非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを特定し、特徴付けるための方法は、構造モデルを用いた実験的回折パターンをシミュレートするためのDIFFaXプログラムを使用したX線回折および電子回折データの分析を含む。例えば、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルが、約60から95%の秩序化O1型層積層構成、約2から40%のO3型層積層欠陥、および約2から約5%のガンマオキシ水酸化ニッケル様の層からの、秩序化O1型層積層構成、少なくとも1つのO3型層積層欠陥、および少なくとも1つのガンマオキシ水酸化ニッケル様の層を含むかどうかを判定するために、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルに存在する1つまたは複数の秩序化層積層構成および面欠陥を特徴付ける構造モデルを開発することができる。
【0049】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、非化学量論的なニッケル酸リチウムから調製された非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルから調製することができる。
【0050】
非化学量論的なニッケル酸リチウム前駆物質は、式Li1-aNi1+aを持つことができ、式中、0.02≦a<0.2である。ニッケル酸リチウムを、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせの中から選択された、金属Mでドープすることができる。金属ドープニッケル酸リチウムは、式Li1-aNi1+a-zを持つことができ、式中、0.02≦a<0.2および0≦z<0.2である。理論に束縛されることを意図するものではないが、ニッケルの量の20%以上の量のMを有する非化学量論的なニッケル酸リチウムが非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの出発物質として使用される場合、得られた非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルをアルカリ溶液で処理すると、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを形成せず、代わりにガンマオキシ水酸化ニッケルを形成することになると考えられる。さらに、ニッケル酸リチウムが化学量論的なニッケル酸リチウム(すなわちLi1-aNi1+a、0≦a<0.02)である場合、これから調製されたアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルをアルカリ溶液で処理すると、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルではなくガンマオキシ水酸化ニッケルを形成することになると考えられる。
【0051】
非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、化学式LiNi1-aを構成し、式中、0.02≦x≦0.2、0≦w≦0.2、および0.02≦a≦0.2である。非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを形成する方法は、当技術分野で周知である。非化学量論的なニッケル酸リチウムを化学的に酸化させて、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを形成することができる。ニッケル酸リチウムからアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを形成するのに適した化学酸化剤には、次亜塩素酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、オゾンガス、塩素ガス、臭素ガス、硫酸、塩酸、および硝酸が含まれるが、これに限定されない。アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせの中から選択された、金属Mをさらに含むことができる。金属ドーパントMを含む非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを、金属ドープ非化学量論的なニッケル酸リチウム前駆物質から調製することができる。加えて、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの層間領域は、ニッケル酸リチウム前駆物質の層間領域内とほぼ同じ原子分率のNi(II)イオンを含有する。
【0052】
ニッケル酸リチウムを強鉱酸で処理する場合、Ni(III)イオンは酸促進不均化反応を受けて、等分の可溶性Ni(II)と不溶性Ni(IV)が形成される。この不均化反応を、次のように式1として要約することができる。
LiNiO+2yHSO→(1-y)Li(1-2y)/(1-y)NiO+yNiSO+yLiSO+2yHO(0≦y≦1/2) (1) Ni(II)化学種は可溶性であり、酸性水溶液に溶解するが、Ni(IV)化学種は不溶性であり、残留して層状結晶格子構造を維持する。
【0053】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは化学式LiNi1+a-z・nHOを構成し、式中、xは約0.02から約0.20までであり、yは約0.03から約0.20であり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までであり、Aは、カリウム、ルビジウム、セシウム、およびこれらの任意の組み合わせを含むアルカリ金属を含み、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含む。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルをアルカリ金属塩を含むアルカリ溶液で処理することによって調製される。アルカリ溶液は特に限定されず、カリウム塩溶液、ルビジウム塩溶液、セシウム塩溶液、またはこれらの任意の組み合わせの中から選択することができる。アルカリ溶液は、アルカリ塩と水、例えば、水酸化アルカリ液から調製することができる。アルカリ溶液中のアルカリ塩の濃度は、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルへの完全な変換を達成するのに十分でなければならない。いくつかの実施形態では、溶液中のアルカリ塩の濃度を、約0.5Mから約10Mの範囲内とすることができる。いくつかの実施形態では、アルカリ溶液は、約0.5Mから約10Mの濃度で提供される水酸化カリウム、水酸化セシウムおよび水酸化ルビジウムのうちの少なくとも1つを含む。非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、自由流動性粉末として提供することができる。非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル粉末とアルカリ溶液は、約5:1から約1:2、または約4:1から約1:2、または約3:1から約1:1、例えば、約3:1、約2:1、または約1:1の重量比で組み合わせることができる。
【0054】
非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルが非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルに完全に変換されるようにするのに十分な期間にわたってアルカリ溶液で処理することができる。非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルとアルカリ溶液は、適切な混合および湿潤を確実にするために、最初に周囲温度で5から15分間攪拌することができる。非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルとアルカリ溶液の混合後、混合物を周囲温度で2から24時間保持する。任意選択で、混合物を2から24時間にわたってかき混ぜることもできる。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルへの完全な変換を、粉末X線回折パターンを分析することによって判断することができる。例えば、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルが非化学量論的なベータ脱離酸化ニッケルに変換する際に、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルのX線回折パターン内の約18°から20°2θのピークパターンの強度が低下し、非常に幅広いピークが、約14.9°から約16.0°2θ、および約21.3°から約22.7°2θで非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルX線回折パターン内で成長する。よって、非化学量論的なベータ脱リチウム化酸化ニッケルへの完全な変換時には、粉末X線回折パターンは、約10.8°から約12.0°2θ、約14.9°から約16.0°2θ、および約31.3°から約22.7°2θで、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル前駆物質の粉末X線回折パターン内よりも大きな強度を有する幅広いピークを有することになり、約18°から20°2θの範囲内には有意な強度を有するピークはなくなる。得られた非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを、洗浄からの濾液のpHが約10になるまで脱イオン水で繰り返し洗浄することができる。固体粉末を集め、約70℃の空気中で約12から20時間にわたって乾燥することができる。
【0055】
アルカリ電池では、放電中に電気化学的に活性なカソード材料が減少し、電池内のアルカリ電解質からの水が同時に消費される。これにより、水酸化物イオンが形成され、電気化学的に活性なカソード材料の構造に陽子が挿入される。例えば、従来型のアルカリ電池は、電気化学的に活性なカソード材料として電解二酸化マンガン(EMD)を含み得る。そのような従来型のアルカリ電池では、1電子還元過程によって3+酸化状態のマンガンに還元され得る4+酸化状態で存在するマンガン1モルごとに1モルの水が消費され得る。例えば、非従来型のアルカリ電池は、電気化学的に活性なカソード材料として非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含み得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、例えば、化学式Li0.070.13Ni1.11・0.63HOを有し得る。そのような非従来型のアルカリ電池では、2電子還元過程によって2+酸化状態のニッケルに還元され得る4+酸化状態で存在するニッケル1モルごとに最大2モルの水が消費され得る。加えて、1電子還元過程によって2+酸化状態のニッケルに還元され得る3+酸化状態で存在するニッケル1モルごとに1モルの水が消費され得る。よって、ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含有する電池の電気化学放電は、完全な放電を達成するために、ニッケル1モル当たり1モルを超える水を必要とし得る。加えて、放電中のアノードの分極を最小限に抑え、電池の保管中に自己放電によって消費される水を補うために、過剰な水分量が必要とされ得る。必要とされ得る過剰な水分量は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの特定の化学組成と、4+酸化状態および3+酸化状態のニッケルの相対量に依存する。水は、アルカリ電解質水溶液を介して、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの水分として電池に導入され得る。アルカリ電解質は、電池全体に分布し得る。電池に存在する総水分量は、様々な方法で増やすことができる。例えば、水分量は、電池に添加されるアルカリ電解質の総量を増やすことによって増やされてもよい。さらに、電池内の水分量は、電解質溶液の水酸化カリウム濃度を下げることによって増やされてもよい。対照的に、従来型のアルカリ電池では、電気化学的に活性な電極材料に利用可能な内容積を最大化するために、電池に最小限の総電解質量を添加することが望ましい。
【0056】
カソード12は、電気化学的に活性なカソード材料として非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含むことができる。本明細書で使用される場合、「非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル」とは、「ベータ」型で単離される非化学量論的な脱リチウム化層状酸化ニッケルを指す。したがって、例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルが電気化学的に活性なカソード材料として提供される場合、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルは、脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料の総重量に基づく、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満の残留非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む。同様に、本明細書に記載される、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含むセルには、最初から、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルが提供される。
【0057】
カソード12はまた、少なくとも1つ以上の追加の電気化学的に活性なカソード材料も含み得る。追加の電気化学的に活性なカソード材料には、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、高性能電解二酸化マンガン(HP EMD)、ラムダ二酸化マンガン、ガンマ二酸化マンガン、およびこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。他の電気化学的に活性なカソード材料には、酸化銀、酸化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、酸化銅、銀銅酸化物、銀ニッケル酸化物、酸化ビスマス、酸素、およびこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これに限定されない。オキシ水酸化ニッケルには、ベータオキシ水酸化ニッケル、ガンマオキシ水酸化ニッケル、ベータオキシ水酸化ニッケルおよび/またはガンマオキシ水酸化ニッケルのインターグロース(intergrowth)、ならびにオキシ水酸化コバルト被覆オキシ水酸化ニッケルを含めることができる。オキシ水酸化コバルト被覆オキシ水酸化ニッケルには、オキシ水酸化コバルト被覆ベータオキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルト被覆ガンマオキシ水酸化ニッケル、および/またはオキシ水酸化ベータニッケルとオキシ水酸化ニッケルのオキシ水酸化コバルト被覆インターグロースを含めることができる。
【0058】
実施形態において、カソード12の電気化学的活物質は、電気化学的に活性なカソード材料の総重量に基づく、一般化学式LiNi1+a-z・nHOを有する少なくとも10重量%の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含み、式中、xは約0.03から約0.12までであり、yは約0.03から約0.20までであり、aは約0.02から約0.2までであり、zは約0から約0.2までであり、nは約0から約1までであり、Aは、アルカリ金属を含み、Mは、アルカリ土類金属、遷移金属、非遷移金属、およびこれらの任意の組み合わせを含み、電気化学的に活性なカソード材料の残りの部分は、酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、高性能電解二酸化マンガン(HP EMD)、ラムダ二酸化マンガン、またはガンマ二酸化マンガンのうちの1つまたは複数を含む。実施形態において、カソード12の電気化学的活物質は、電気化学的に活性なカソード材料の総重量に基づく、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも約70重量%、または少なくとも約75重量%の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含み、例えば、電気化学的に活性なカソード材料の総重量に基づく、約10重量%から約90重量%、約10重量%から約80重量%、約20重量%から約70重量%、約30重量%から約60重量%、約40重量%から約60重量%、または約50重量%の範囲内である。実施形態において、カソード12の電気化学的活物質は、電気化学的に活性なカソード材料の総重量に基づく、約40重量%から約60重量%の非化学量論的なベータ脱リチウム化酸化ニッケルと、電気化学的に活性なカソード材料の総重量に基づく、約60重量%から約40重量%の酸化マンガン、二酸化マンガン、電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、高性能電解二酸化マンガン(HP EMD)、ラムダ二酸化マンガン、またはガンマ二酸化マンガンのうちの1つまたは複数とを含む。約10重量%から約60重量%までの、例えば、20重量%や50重量%の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルと、電解二酸化マンガン(EMD)を含む電気化学的に活性なカソード材料の残りの部分との組み合わせが、高放電率用途と低放電率用途の両方で、予想外に有利な電池性能を提供することがわかっている。
【0059】
カソード12は、炭素などの導電性添加剤、および任意選択で結合剤を含み得る。カソード12は、他の添加剤も含み得る。炭素は、カソード12のソリッド構造内での電子輸送を円滑化することによってカソード12の導電性を増加させ得る。炭素は、天然グラファイト、合成グラファイト、耐酸化性グラファイト、グラフェン、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、カーボンナノファイバ、カーボンナノリボン、カーボンナノプレートレット、およびこれらの混合物などのグラファイトであり得る。カソード中の炭素量は比較的低いこと、例えば、約12%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約6%未満、約5%未満、約3.75%未満、または約3.5%未満、例えば、約3.0重量%から約5重量%または約2.0重量%から約3.5重量%であることが好ましい。炭素レベルが低いと、カソード12の体積を増加させることも、電池10内の(セル内でガスが発生する際に内圧が上昇しすぎるのを防ぐためにあるレベル以上に維持されなければならない)空隙容量を減少させることもなく、カソード12中により多くの充填量の電気化学的に活性なカソード材料を含めることが可能になる。電池内、例えばカソード内での使用に適したグラファイトは、例えば、Timrex MX-15、SFG-15、MX-25であり、これらはすべてImerys Graphite and Carbon(Bodio、スイス)から入手可能である。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルなどの反応性の高いカソード活物質の場合、耐酸化性グラファイト、例えばSFG-15、SFG-10、およびSFG-6を使用することができる。
【0060】
カソード12は、任意選択の結合剤を含むことができる。本明細書で使用される場合、「結合剤」とは、カソードの凝集性を提供し、グラファイトを含まないポリマー材料を指す。カソード12で使用され得る任意選択の結合剤の例には、ポリエチレン、ポリアクリル酸、またはPVDFやPTFEなどのフルオロカーボン樹脂が含まれる。カソード12中で使用するための任意選択の結合剤は、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(ウィルミントン、米国デラウェア州)から入手可能な、COATHYLENE HA-1681であってもよい。他のカソード添加剤の例は、例えば、米国特許第5,698,315号、第5,919,598号、第5,997,775号および第7,351,499号に記載されている。いくつかの実施形態では、カソード12は実質的に結合剤を含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に結合剤を含まない」とは、カソードが約5重量%未満、約3重量%未満、または約1重量%未満の結合剤を含むことを意味する。
【0061】
カソード12中の電気化学的に活性なカソード材料の含有量は、カソード充填量と呼ばれ得る。カソード12の充填量は、電池10内で使用される電気化学的に活性なカソード材料、および電池10のサイズに応じて変化し得る。例えば、電気化学的に活性なカソード材料としてベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを備えた単3電池は、少なくとも約6グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのカソード充填量を有し得る。カソード充填量は、例えば、少なくとも約7グラムの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、例えば、約7.2グラムから約11.5グラムの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、約8グラムから約10グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、約8.5グラムから約9.5グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、約9.5グラムから約11.5グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、約10.4グラムから約11.5グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。単4電池では、カソード充填量は、少なくとも約3グラムの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料であり得る。カソード充填量は、約3グラムから約5グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、約3.5グラムから約4.5グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。カソード充填量は、約3.9グラムから約4.3グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルであってもよい。単6電池では、カソード充填量は、約1.5グラムから約2.5グラムまでの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料であり得る。単2電池では、カソード充填量は、約27.0グラムから約40.0グラムまで、例えば約33.5グラムの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料であり得る。単1電池では、カソード充填量は、約60.0グラムから約84.0グラム、例えば約72.0グラムの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル電気化学的に活性なカソード材料であり得る。
【0062】
(1つまたは複数の)活性なカソード材料、炭素粒子、結合剤、および任意の他の添加剤などのカソード構成要素は、水系水酸化カリウム電解質などの液体と組み合わされ、混合され、プレスされて電池10の組み立てに使用するためのペレットとされ得る。最適なカソードペレット処理のために、カソードペレットは、約2重量%から約5重量%、または約2.8重量%から約4.6重量%の範囲内の水分レベルを有することが一般的に好ましい。ペレットは、電池10の組み立て時にハウジング18内に配置され、通常、ハウジング18内に均一なカソードアセンブリを形成するために再プレスされる。カソードペレットは、中央穴を含む円筒形状を有し得る。ペレットのサイズは、ペレットが内部で使用される電池のサイズ、例えば単3形、単4形、単6形、単2形、単1形によって異なり得る。中央穴は、ペレットの内径(ID)を規定し得る。単3電池用のペレットの内径は、例えば、約9.1mmから約9.9mmまでであってもよい。単3電池用のペレットの内径は、例えば、約9.3mmから約9.7mmまでであってもよい。単4電池用のペレットの内径は、例えば、約6.6mmから約7.2mmまでであってもよい。単4電池用のペレットの内径は、例えば、約6.7mmから約7.1mmまでであってもよい。単6電池用のペレットの内径は、例えば、約5mmから約5.5mmまでであってもよい。単2電池用のペレットの内径は、例えば、約16mmから約19mmまでであってもよい。単1電池用のペレットの内径は、例えば、約21mmから約25mmまでであってもよい。
【0063】
カソード12は、カソード製造時に計算され得る多孔度を有することになる。カソード12の多孔度は、約20%から約40%まで、約22%から約35%、例えば約26%であり得る。電池10内のカソード12の多孔度は、とりわけ、カソードの電解質の湿潤と関連付けられるカソード膨張と電池10の放電が原因で経時的に変化し得るので、カソード12の多孔度は、製造時に、例えばカソードペレットの処理後に計算され得る。カソード12の多孔度は、以下のように計算され得る。各固体カソード構成要素の真密度は、参考文献、例えばLange’s Handbook of Chemistry(16th ed.2005)から取得され得る。各カソード構成要素の固形分重量は、電池の設計によって規定される。各カソード構成要素の固形分重量を各カソード構成要素の真密度で除算して、カソード固形分体積が決定され得る。電池10内でカソード12が占める体積は、やはり電池の設計によって規定される。カソード12が占める体積は、コンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって計算され得る。多孔度は、次式で決定され得る。
カソード多孔度=[1-(カソード固形分体積÷カソード体積)]×100
【0064】
例えば、単3電池のカソード12は、カソード12中の固形分として約9.0グラムの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルおよび約0.90グラムのグラファイト(BNC-30)を含み得る。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルおよびグラファイトの真密度は、それぞれ約4.9g/cmおよび約2.15g/cmであり得る。固形分の重量をそれぞれの真密度で除算すると、約1.8cmの非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルが占める体積および約0.42cmのグラファイトが占める体積が得られる。全固形分体積は約2.2cmである。電池設計者は、カソード12が占める体積を約3.06cmになるように選択し得る。上記の方程式[1-(2.2cm÷3.06cm)]に従ってカソード多孔度を計算すると、約0.28、すなわち28%のカソード多孔度が得られる。
【0065】
アノード14は、少なくとも1つの電気化学的に活性なアノード材料と、ゲル化剤と、有機および/または無機ガス発生抑制剤などの少量の添加剤と形成することができる。電気化学的に活性なアノード材料は、亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、AB(H)、AB(H)、A(H)などの金属水素化物、これらの合金、およびこれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0066】
アノード14中の電気化学的に活性なアノード材料の含有量は、アノード充填量と呼ばれ得る。アノード14の充填量は、電池内で使用される電気化学的に活性なアノード材料、および電池のサイズに応じて変化し得る。例えば、亜鉛の電気化学的に活性なアノード材料を備えた単3電池は、少なくとも約3.3グラムの亜鉛のアノード充填量を有し得る。アノード充填量は、例えば、少なくとも約3.5グラム、約3.7グラム、約3.9グラム、約4.1グラム、約4.3グラム、または約4.5グラムの亜鉛であり得る。アノード充填量は、約4.0グラムから約5.5グラムまでの亜鉛であってもよい。アノード充填量は、約4.2グラムから約5.3グラムまでの亜鉛であってもよい。例えば、亜鉛の電気化学的に活性なアノード材料を備えた単4電池は、少なくとも約1.8グラムの亜鉛のアノード充填量を有し得る。例えば、アノード充填量は、約1.8グラムから約2.5グラムまでの亜鉛であってもよい。アノード充填量は、例えば、約1.9グラムから約2.4グラムまでの亜鉛であってもよい。例えば、亜鉛の電気化学的に活性なアノード材料を備えた単6電池は、少なくとも約0.6グラムの亜鉛のアノード充填量を有し得る。例えば、アノード充填量は、約0.7グラムから約1.3グラムまでの亜鉛であってもよい。例えば、亜鉛の電気化学的に活性なアノード材料を備えた単2電池は、少なくとも約9.3グラムの亜鉛のアノード充填量を有し得る。例えば、アノード充填量は、約10.0グラムから約19.0グラムまでの亜鉛であってもよい。例えば、亜鉛の電気化学的に活性なアノード材料を備えた単1電池は、少なくとも約30.0グラムの亜鉛のアノード充填量を有し得る。例えば、アノード充填量は、約30.0グラムから約45.0グラムまでの亜鉛であってもよい。アノード充填量は、例えば、約33.0グラムから約39.5グラムまでの亜鉛であってもよい。
【0067】
アノード14内で使用され得るゲル化剤の例には、ポリアクリル酸、ジビニルグリコールのポリアルケニルエーテルで架橋されたポリアクリル酸、グラフト化澱粉材料、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、またはこれらの組み合わせが含まれる。アノード14は、ビスマス、スズ、またはインジウムなどの無機材料を含み得るガス発生抑制剤を含み得る。あるいは、ガス発生抑制剤は、リン酸エステル、イオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤などの有機化合物を含み得る。電解質は、カソード12、アノード14、およびセパレータ16全体に分散し得る。電解質は水溶液中にイオン伝導性成分を含む。イオン伝導性成分は水酸化アルカリであり得る。水酸化物は、例えば、水酸化カリウム、水酸化セシウム、およびこれらの任意の組み合わせであり得る。イオン伝導性成分の濃度は、電池の設計とその望ましい性能に応じて選択され得る。水系アルカリ電解質は、水を含む溶液中にイオン伝導性成分として水酸化物を含み得る。電解質中の水酸化アルカリの濃度は、電池10内の全電解質の重量ベースで、約0.20から約0.40まで、または約20%から約40%までであり得る。例えば、電解質の水酸化物濃度は、電池10内の全電解質の重量ベースで、約0.25から約0.32まで、または約25%から約32%までであり得る。水系アルカリ電解質はまた、酸化亜鉛(ZnO)も含み得る。ZnOは、アノード中の亜鉛腐食を抑制するのに役立ち得る。電解質中に含まれるZnOの濃度は、電池10内の全電解質の約5重量%未満であり得る。ZnO濃度は、例えば、電池10内の全電解質の約1重量%から約3重量%であり得る。
【0068】
例えば、単3アルカリ電池内の水系アルカリ電解質の総重量は、約3.0グラムから約4.4グラムまでであり得る。単3電池内のアルカリ電解質の総重量は、例えば、約3.3グラムから約3.8グラムまでであってもよい。単3電池内のアルカリ電解質の総重量は、例えば、約3.4グラムから約3.65グラムまでであってもよい。単4アルカリ電池内の水系アルカリ電解質の総重量は、例えば、約1.0グラムから約2.0グラムまでであり得る。単4電池内の電解質の総重量は、例えば、約1.2グラムから約1.8グラムまでであってもよい。単4電池内の電解質の総重量は、例えば、約1.4グラムから約1.8グラムまでであってもよい。単6電池内の電解質の総重量は、約0.68グラムから約1グラム、例えば、約0.85グラムから約0.95グラムまでであり得る。単2電池内の電解質の総重量は、約11グラムから約14グラム、例えば、約12.6グラムから約13.6グラムまでであり得る。単1電池内の電解質の総重量は、約22グラムから約30グラム、例えば、約24グラムから約29グラムまでであり得る。
【0069】
セパレータ16は、湿潤性の、または電解質で湿った材料を含む。材料は、液体と材料の表面との接触角が90°未満である場合に、または液体が材料の表面全体に自然発生的に広がる傾向にある場合に液体で湿っているといい、両条件は通常共存する。セパレータ16は、単層または複数層の織布または不織布の紙または布を含み得る。セパレータ16は、例えば、不織布材料の層と組み合わされたセロファンの層を含み得る。セパレータ16はまた、不織布材料の追加層を含むこともできる。セパレータ16はまた、電池10内にインサイチュでも形成され得る。例えば、米国特許第6,514,637号には、そのようなセパレータ材料、およびそれらの適用の潜在的に適切な方法が開示されている。セパレータ材料は薄くてもよい。セパレータ16は、例えば、250マイクロメートル(ミクロン)未満の乾燥材料厚を有し得る。セパレータ16は、約50ミクロンから約175ミクロンまでの乾燥材料厚を有していてもよい。セパレータ16は、約70ミクロンから約160ミクロンまでの乾燥材料厚を有していてもよい。セパレータ16は、約40g/mまたは20未満の坪量を有し得る。セパレータ16は、約15g/mから約40g/mの坪量を有していてもよい。セパレータ16は、約20g/mから約30g/mの坪量を有していてもよい。セパレータ16は、透気度値を有し得る。セパレータ16は、国際標準化機構(ISO)規格2965で規定されている透気度値を有し得る。セパレータ16の透気度値は、1kPaで約2000cm/cm/分から1kPaで約5000cm/cm/分までであり得る。セパレータ16の透気度値は、1kPaで約3000cm/cm/分から1kPaで約4000cm/cm/分までであってもよい。セパレータ16の透気度値は、1kPaで約3500cm/cm/分から1kPaで約3800cm/cm/分までであってもよい。
【0070】
集電体20は、当技術分野内の任意の公知の方法により、特定の電池設計に適した任意の形状に製造され得る。集電体20は、例えば、釘状の形状を有し得る。集電体20は、円柱状本体と、円柱状本体の一端に位置する頭部とを有し得る。集電体20は、金属、例えば、亜鉛、銅、真鍮、銀、または他の適切な材料で製造され得る。集電体20は、任意選択で、スズ、亜鉛、ビスマス、インジウム、または集電体20と例えばアノード14との間で低い電気接触抵抗を示す別の適切な材料でめっきされてもよい。めっき材料はまた、集電体20がアノード14と接触したときにガス形成を抑制する能力も呈し得る。
【0071】
シール22は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタンなどのポリマー、ポリマーコンポジット、およびこれらの任意の組み合わせを射出成形して所定の寸法の形状にすることによって調製され得る。シール22は、例えば、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ポリプロピレン、ポリエーテルウレタン、コポリマー、コンポジット、およびこれらの任意の組み合わせから製造され得る。例示的な射出成形法には、コールドランナー法とホットランナー法の両方が含まれる。シール22は、可塑剤、結晶核形成剤、酸化防止剤、離型剤、潤滑剤、および帯電防止剤などの他の公知の機能性材料を含み得る。シール22はまた、封止剤で被覆され得る。シール22は、電池10内で使用する前に加湿され得る。シール22は、例えば、シール材料に応じて、約1.0重量パーセントから約9.0重量パーセントまでの水分を有し得る。集電体20は、シール22中にシール22を貫通して挿入され得る。
【0072】
エンドキャップ24は、電池を閉じるのに十分な任意の形状で形成され得る。エンドキャップ24は、例えば、円筒形状または角柱形状を有し得る。エンドキャップ24は、材料をプレスして適切な寸法の所望の形状にすることによって形成され得る。エンドキャップ24は、電池10の放電中に電子を伝導する任意の適切な材料から製造され得る。エンドキャップ24は、例えば、ニッケルめっき鋼やスズめっき鋼から製造され得る。エンドキャップ24は、集電体20に電気的に接続され得る。エンドキャップ24は、例えば、集電体20に溶接されることにより、集電体20に電気的に接続し得る。エンドキャップ24はまた、過剰な内圧の増加に起因する電池の電解質漏出または放出による任意のガス圧を逃がすための、穴などの1つまたは複数の開口も含み得る。集電体20、シール22、およびエンドキャップ24は、まとめてエンドキャップアセンブリと呼ばれ得る。
【0073】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含むカソード12を含む電池10は、ボルト単位で測定される開路電圧(OCV)を有し得る。電池10は、約1.7Vから約1.8VまでのOCVを有し得る。電池10は、例えば、約1.76VのOCVを有し得る。
【0074】
本発明の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池は、例えば、従来型のアルカリ電池と比べて低、中、および高ドレイン放電率に対して改善された放電性能を有し得る。本発明の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的に活性なカソード材料を含む電池は、例えば、従来のアルカリ電池よりも高い開路電圧を有し得る。
【0075】
実験的試験
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質のICP-AESによる元素分析
ICP-AESによる元素分析を、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質のサンプルに対して完了して、サンプル材料の元素組成を決定する。HORIBA Scientific Ultima 2 ICP分光計を使用して、ICP-AES分析を完了する。ICP-AES分析を、分光計内にサンプル溶液を配置することによって完了する。分析することが求められる(1つまたは複数の)元素に依存する方法でサンプル溶液を調製する。
【0076】
元素分析では、0.15gのサンプル材料を2mlの脱イオン水(DI)と5mlの濃塩酸(HCl)に添加して、第1の溶液を形成する。サンプルを静かに旋回させて内容物を混合し、次いでCEM Discover SP-D自動マイクロ波分解システムに配置する。サンプルをかき混ぜている間、マイクロ波システムは3分間で180℃まで傾斜上昇し、次いで180℃で4分間保持する。システムを300Wの最大出力および225PSIの圧力設定点に設定する。第1の溶液を100mlのメスフラスコに加え、DI水で印まで希釈することにより、第2の溶液を形成する。第2の溶液を、ICP-AES分光計を使用したリチウム(Li)、カリウム(K)、およびルビジウム(Rb)の元素分析に使用する。1mLの第2の溶液を50mLの遠心分離管に移し、遠心分離管に約2.5mLの濃塩酸を加え、第6の溶液の総重量が50グラムになるように遠心分離管に蒸留水を加え、遠心分離管の成分を混合することによって第3の溶液を形成する。第3の溶液を、ICP-AES分光計を使用したニッケル(Ni)の元素分析に使用する。
【0077】
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質のICP-AES分析を、カリウム(K)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、およびルビジウム(Rb)に固有の様々な波長で行う。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のカリウム(K)の分析の波長(λ)は、約766nmに設定し得る。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のリチウム(Li)の分析の波長(λ)は、約610nmに設定し得る。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のニッケル(Ni)の分析の波長(λ)は、約231nmに設定し得る。例えば、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル中のルビジウム(Rb)の分析の波長(λ)は、約780nmに設定し得る。
【0078】
以下の表1は、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質と、Arai et al.(Electrochimica Acta 50(2005)1821~1828;Solid State Ionics,80(1995)261~269)に記載されている合成方法に従って調製したガンマオキシ水酸化ニッケル材料の様々なサンプルについてのICP-AES結果による元素分析を含む。サンプル材料中のリチウム(Li)、ニッケル(Ni)、およびカリウム(K)の重量パーセントが報告されている。ICP-AESデータによる元素分析を使用して、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルサンプルと、Arai et al.(Electrochimica Acta 50(2005)1821~1828;Solid State Ionics,80(1995)261~269)に記載されている合成方法に従って調製したガンマオキシ水酸化ニッケル材料の化学組成を決定する。また、ICP-AESによる元素分析を使用して、非化学量論および非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル組成物中の過剰なニッケルの存在を確認する。
【0079】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質の熱重量分析(TGA)による含水量
TGAによる含水量を、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質のサンプルに対して完了して、サンプル材料中の吸収/吸着水、結晶水、および総含水量を決定する。TGA分析を、TA InstrumentsのQ5000分析装置を使用して完了する。
【0080】
TGA分析を、TGAサンプルホルダ上に約34mgのサンプルを配置することにより行う。サンプル材料を5℃/分の速度で約800℃の温度まで加熱する。サンプルの加熱を、例えば約25mL/分の速度で流れる窒素の存在下で行う。サンプル重量を、時間と温度の関数として測定する。
【0081】
表1はまた、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのサンプルについて、TGAにより測定した含水量も含む。TGAにより測定した含水量を使用して、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの電気化学的活物質の化学組成中に存在する構造格子水を決定する。TGAにより測定した含水量を使用して、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル粒子の表面に物理的に吸着した水を決定することができる。
【表1】
【0082】
粉末X線回折分析
Bruker D-8 Advance X線回折計を使用して結晶性粉末サンプルに対して粉末X線回折(XRD)分析を行って、結晶性粉末サンプルの特徴的なXRD回折パターンを決定する。Cu-Kα放射とSol-X検出器(Baltic Scientific Instruments、リガ、ラトビア)を使用して、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの様々なサンプルといくつかの比較サンプルのXRD回折パターンを得た。約1グラムから約2グラムのサンプル材料をBrukerのサンプルホルダに配置した。次いでサンプル材料を含むサンプルホルダをX線回折計の回転サンプル台に配置し、次いでサンプル材料を回折計のCu-KαX線源で照射した。Bruker Corporationが供給するDiffrac-plusソフトウェアを使用して、10°2θから80°2θまで2秒/ステップで0.02°ステップサイズを使用して次いでXRDパターンを収集した。EVAおよびTopasデータ分析ソフトウェアパッケージ(Bruker AXS Inc.)を使用して、回折パターンの分析と精密化を行った。サンプルのXRDパターンを、PDF-4+データベース(International Centre for Diffraction Data、ICDD)の参照XRDパターンと比較した。
【0083】
ベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの構造モデル
非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの高度欠陥層状構造の性質を解明するために、DIFFaXコンピュータシミュレーションを使用して、実験的に測定されたX線回折パターンを再現した。DIFFaXプログラムは、原子(イオン)の平面の層を積層することによって結晶性固体を構築できるという形式を想定し、所与の積層構成について層ごとに回折強度対2θ回折角を積分することによってX線回折パターンを計算する。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの場合には、理想的な層状R-3m構造をシミュレートするために使用されるものと同じ原子位置を使用してNiO層を構築した。次いで、特定の型の積層欠陥の存在、例えば、O3、O1、P3を導入するために並進(すなわち積層)ベクトルを適用してNiO層をc軸方向に沿って積層した。シミュレーションにより、積層欠陥のランダムな分布を導入した。特定の積層欠陥を導入するために、異なる積層ベクトルを用いた。各積層ベクトルが適用される確率は、計算されたX線回折パターンと実験的X線回折パターンとの十分な一致が達成されるまで変更することができる。シミュレーションの適合性を、シミュレーションパターン対実験的パターンのリートベルト解析によって評価した。
【0084】
X線回折パターン、走査型透過電子顕微鏡(STEM)による格子イメージング、および電子回折(CBED)パターンの分析を通じて、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの特徴的な欠陥構造を記述する詳細な構造モデルを開発した。実験的X線回折パターンの特徴的な回折ピーク強度、ピーク位置、およびピーク幅を、DIFFaXソフトウェアを使用して、秩序化O1型格子にO3型層積層欠陥のレベル増加を導入することによってシミュレートした。ごく一部のO3型層積層欠陥の存在は、特定の構造(すなわち成長)欠陥の存在、ならびに中間層内のリチウムイオンサイトに位置するニッケル(II)イオンにも関係し得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの形成中に、非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル中で前にリチウムイオンが占めていた層間サイトへのNi2+イオンの移行によって、c軸に沿ってNi含有層が集団化するようにO1型積層構成内の金属含有層の秩序化が生じ得ると考えられる。これにより、酸素原子が立方最密充填されており、c軸に沿った秩序が、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの場合の金属含有層秩序である-O-Li-O-Ni-Li-O-Ni-O-ではなく、例えば、-O-Li-O-Ni-O-Ni-O-Li-O-になるように、2つのNi含有層が各Li含有層を分離している金属含有層の重ね合わされた秩序を含む秩序化O1型格子を得ることができる。隣接するNi含有層の形成は、系統的かつ周期的である。さらに、別の型の面欠陥がKOH処理中のアルカリイオンと水分子の挿入によって生じ得ると考えられ、欠陥はガンマオキシ水酸化ニッケルの層構造と密接に関連した層構造を有する。ガンマオキシ水酸化ニッケルは、AB BC CAの酸素積層構成(すなわちP3型積層)を有すると報告されている。このP3型積層欠陥の秩序化O1格子への導入を、実験的X線回折パターンにおける対応するピークと厳密に一致したシミュレートされたX線回折パターンにおける約10.8°から約12.0°2θのところの幅広い低強度の回折ピークの出現によって確認した。
【0085】
DIFFaXプログラムによってシミュレートされたX線回折パターンと、上記の構造モデルの様々な非化学量論的なニッケル酸リチウム前駆物質から調製された非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルサンプルの実験的X線回折パターンとについて得られた最適な適合を表2に要約する。
【表2】
【0086】
O3型層積層欠陥の層分率は約0.02から約0.40までの範囲であり、γ-NiOOH様の欠陥の層分率は約0.02から約0.05までの範囲であり、支配的な秩序化O1積層構成の層分率は約0.60から約0.95までの範囲であった。この構造モデルは、水酸化カリウム溶液での処理により非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルから調製したベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルサンプルの特徴的なX線粉末回折パターン内の不均一で異常な回折ピーク広がりをうまく説明できた。
【0087】
アルファおよびベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルによるガス発生
アルカリ電解質溶液と接触している非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルによる酸素発生の速度を、ガス発生速度分析装置を使用して決定し、対応する非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル前駆物質のガス発生速度と比較した。40℃での保管時間の関数としての総ガス圧を表3に示す。非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの酸素発生速度は、アルファ脱リチウム化層状酸化ニッケルの酸素発生速度よりも大幅に低い。具体的には、40℃で80時間保管した後の非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルのサンプルの総酸素圧は、対応する非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル前駆物質の総酸素圧の50%未満であった。
【表3】
【0088】
よって、表3は、対応する非化学量論的なアルファ脱リチウム化層状酸化ニッケル前駆物質と比較した、本発明による非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルの酸素ガス発生の有利な減少を示している。
【0089】
単3アルカリ一次電池の組み立て
以下の表5で電池Aと呼ぶ従来型の単3アルカリ電池を組み立てる。電池Aは、円筒形ハウジング内にアノードと、カソードと、セパレータと、水系アルカリ電解質とを含む。アノードは、4.27グラムの金属亜鉛粉末、約31重量%のKOHと2.0重量%のZnOとが水に溶解した1.78グラムのアルカリ性KOH電解質と、0.026グラムのポリアクリル酸ゲル化剤と、0.023グラムの腐食抑制剤とを含有するアノードスラリーを含む。カソードは、電解二酸化マンガン(EMD)と、グラファイトと、水酸化カリウム電解質水溶液の混合を含む。カソードは、10.87グラムのEMD、0.46グラムのTimrex MX-15グラファイト、0.12グラムのTimrex BNB-90膨張グラファイト(Imerys Graphite and Carbon、Bodio、スイス)、および0.52グラムのアルカリ性KOH電解質溶液の充填物を含む。アノードとカソードの間にセパレータを介在させる。セパレータを、約31重量%のKOHが脱イオン水に溶解した1.33グラムのアルカリ性KOH電解質溶液のプレショットで湿らせる。アノード、カソード、およびセパレータを、円筒形ハウジングに挿入する。次いでハウジングを密閉して、電池の組み立て工程を完了する。次いで電池Aを20℃で4日間エージングし、後述するように性能試験を行う。
【0090】
以下の表4で電池Bと呼ぶ実験的な単3電池を組み立てる。電池Bは、円筒形ハウジング内にアノードと、カソードと、セパレータと、電解質とを含む。アノードは、5.17グラムの金属亜鉛粉末、約27重量%のKOHと1.7重量%のZnOとが脱イオン水に溶解した2.17グラムのアルカリ性KOH電解質と、0.038グラムのポリアクリル酸ゲル化剤と、0.01グラムの腐食抑制剤とを含有するアノードスラリーを含む。カソードは、非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルと、グラファイトと、水酸化カリウム電解質水溶液の混合を含む。カソードは、9.54グラムのベータ脱リチウム化層状酸化ニッケル、0.78グラムのTimrex MX-15グラファイト(Imerys Graphite and Carbon、Bodio、スイス)、および0.52グラムのKOH電解質溶液の充填物を含む。アノードとカソードの間にセパレータを介在させる。セパレータを、約5.5重量%のKOHが脱イオン水に溶解した約1.00グラムのアルカリ性KOH電解質溶液のプレショットで湿らせる。アノード、カソード、およびセパレータを、円筒形ハウジングに挿入する。次いでハウジングを密閉して、電池の組み立て工程を完了する。
【0091】
次いで電池Bを20℃で4日間エージングし、後述するように性能試験を行う。
【表4】
【0092】
組み立てられた単3アルカリ一次電池の性能試験
性能試験の前に、電池を約20℃で4日間エージングする。4日間のエージングの後、電池の開路電圧(OCV)を測定する。電池のOCVを、例えば、電池の正極端子と負極端子に電圧計を配置することによって測定する。測定した電池の開路電圧(V)を報告する。OCV試験は、電池の容量を消費しない。
【0093】
4日間のエージングの後、電池の短絡電流(SCC)を測定する。SCC試験のプロトコルは、電池から0.1秒間にわたって6アンペア(A)の定電流を流すことを含む。電池の電圧を、6Aのドレインの下で測定し、報告する。電池が完全に短絡している場合、電池の測定電圧はゼロ(0)ボルトになるはずである。電池が短絡状態になるはずの電流を、測定OCVとドレイン下の測定電圧の座標を、電流対電圧のx,yプロット上のx軸の切片に連結する線を外挿することによって計算する。測定OCVは、(0A,測定OCV)の(x,y)座標を有する。ドレイン下の測定電圧は、(6A,測定負荷電圧)の(x,y)座標を有する。SSC試験は、試験の持続時間が非常に短いため、電池の総容量の大きな部分を消費しない。SSCを次式計算する。
SSC(A)=[(OCV・6A)/(OCV-負荷電圧)]
【0094】
性能試験は、30ミリアンペア(30mA)連続放電試験と呼ばれ得る放電性能試験を含む。30mA連続放電試験のプロトコルは、0.9ボルトのカットオフ電圧に達するまで30mAの定電流ドレインで電池を放電させることを含む。カットオフ電圧まで放電された電池の測定容量を電池の総容量と呼ぶ。電池の総容量は通常、アンペア時(Ah)とワット時(Wh)の両方で報告する。30mA連続放電試験を、従来型のアルカリ単3電池の低ドレイン連続放電試験と見なす。
【0095】
性能試験は、1ワット(1W)連続放電試験と呼ばれる高速連続放電レジームでの放電性能試験を含む。1W連続放電試験のプロトコルは、0.9ボルトのカットオフ電圧に達するまで1ワットの定電流ドレインで電池を放電させることを含む。カットオフ電圧まで放電した電池の測定容量は通常、アンペア時(Ah)とワット時(Wh)の両方で報告する。1W連続放電試験を、従来型のアルカリ単3電池の高ドレイン放電試験と見なす。
【0096】
性能試験は、250ミリワット(250mW)間欠放電試験と呼ばれる中速間欠放電レジームでの放電性能試験を含む。250mW間欠放電試験のプロトコルは、250mWの定電流ドレインで1時間にわたって電池を放電させることを含む。次いで放電を停止し、7時間にわたって電池を休止させる。次いで、0.9ボルトのカットオフ電圧に達するまで、電池に放電と休止のさらなるサイクルを施す。電池の測定容量は通常、アンペア時(Ah)とワット時(Wh)の両方で報告する。250mW間欠放電試験を、従来型のアルカリ単3電池の中ドレイン放電試験と見なす。
【0097】
性能試験は、デジタルカメラ試験(Digicam)と呼ばれ得るデジタルカメラでの使用をシミュレートするように設計された放電性能試験を含む。デジタルカメラ試験は、高および中出力パルス放電サイクルで電池を放電させることを含むパルス試験プロトコルである。各放電サイクルは、2秒間にわたる1.5ワットの高出力パルスと直後の28秒間にわたる650mWの中出力パルスを含む2つの放電レジームの組み合わせからなる。この放電レジームの組み合わせを10回(すなわち合計5分間)繰り返し、次いで電池を55分間にわたって休止させる。1.05ボルトのカットオフ電圧に達するまで、高および中出力放電パルスと休止期間(すなわち1時間/サイクル)の組み合わせを繰り返す。カットオフ電圧に達するのに必要なサイクル数を、「パルス」または「画像」として報告する。報告されるパルスの数は、放電サイクルの総数に対応する1.5ワットの高出力パルスの総数からなる。Digicam放電試験を、従来型の単3電池の高速間欠放電試験と見なす。
【0098】
性能試験結果
電池Aと電池Bの両方に、OCV、SSC、30mA連続、1W連続、250mW間欠、およびDigicamの性能試験を行った。次の表5に性能試験結果を要約する。表5の%差の列は、電池Aに対する電池Bの性能のパーセンテージの差を含む。電気化学的に活性なカソード材料として非化学量論的なベータ脱リチウム化層状酸化ニッケルを含む電池Bは、電池A、すなわち典型的な市販の従来型のアルカリ単3電池と比較した場合、全般的な性能向上をもたらす。電池BのOCVは、電池AのOCVと比較した場合より高い。電池BのOCVがより高いことは、電池Aと比較して総エネルギーがより高いことを示している。電池BのOCVはさほど高くはないので、電池Bが電気装置に組み込まれた場合の損傷の可能性は比較的低い。電池BのSSCは電池AのSSCより大幅に高い。電池BのSSCがより高いことは、電池Aよりも高い放電電流を供給するより高い能力を示している。1W連続試験を別として、すべての放電試験下で電池Bによって供給されるAh単位の電流量は、電池Aより大きい。すべての放電試験下で電池Bによって供給されるWh単位のエネルギー量は、電池Aより大きい。加えて、Digicam試験下で電池Bによって供給されるパルス数も、電池Aよりはるかに大きい。結果は、低速、中速、および高速の放電試験レジームについて、電池Bが、全般的に、電池Aよりも良好な性能を有することを示している。
【表5】
【0099】
本明細書に開示される寸法および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されると理解されるべきではない。そうではなく、特に指定しない限り、そのような各寸法は、記載された値とその値を囲む機能的に同等の範囲の両方を意味することを意図されている。例えば、「40mm」として開示されている寸法は、「約40mm」を意味することを意図されている。
【0100】
相互参照される、または関連する特許または出願、および本出願が優先権または利益を主張する任意の特許出願または特許を含む、本明細書に引用されるすべての文献は、明示的に除外されるかまたは特に制限されない限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。文献の引用は、それが本明細書で開示または特許請求される発明に関する先行技術であることも、それが単独で、または任意の他の1つもしくは複数の参照文献との組み合わせで、そのような発明を教示、示唆または開示することも承認するものではない。さらに、本明細書内の用語の意味または定義が参照により組み込まれた文献内の同じ用語の意味または定義と矛盾する限りでは、本明細書でその用語に与えられた意味または定義が適用される。
【0101】
本発明の特定の実施形態が例示および説明されているが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく他の様々な変更および改変を行うことができることが当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更および改変を網羅することが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7