IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図1
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図2
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図3
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図4
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図5
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図6
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図7
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図8
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図9
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図10
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図11
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図12
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図13
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図14
  • 特開-光学測定装置および光学測定方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056780
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光学測定装置および光学測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20240416BHJP
   G02B 27/48 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B27/48
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015933
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2019081243の分割
【原出願日】2019-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100120385
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 健之
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 一敏
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スペックルコントラストまたはスパークルコントラストの被測定面の撮像条件の自由度を向上させることができる光学測定装置および光学測定方法を提供する。
【解決手段】光学測定装置1は、測定対象となる発光型の電子ディスプレイないし発光面の、被測定面7からの出射光を結像させる光学系3と、出射光が結像される2次元センサアレイ面41を有し、出射光を撮像する2次元センサアレイ4と、2次元センサアレイ面41上への出射光の回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件で撮像された出射光に基づいて、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する算出部6と、を備え、発光領域の大きさは、回折限界スポットの大きさと、光学系3の焦点距離および被測定面7から光学系3までの撮像距離から求まる光学系3の倍率と、に基づいて定まる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパークルコントラストを測定する対象となる発光型の電子ディスプレイないし発光面の、被測定面からの出射光を結像させる光学系と、
前記出射光が結像される2次元センサアレイ面を有し、前記出射光を撮像する2次元センサアレイと、
前記2次元センサアレイ面上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記被測定面上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件で撮像された前記出射光に基づいて、前記スパークルコントラストを算出する算出部と、を備え、
前記発光領域の大きさは、前記回折限界スポットの大きさと、前記光学系の焦点距離および前記被測定面から前記光学系までの撮像距離から求まる前記光学系の倍率と、に基づいて定まる、光学測定装置。
【請求項2】
前記算出部は、第1の撮像条件に対して前記発光領域の大きさが同一となる第2の撮像条件で撮像された前記出射光に基づいて、前記第1の撮像条件で撮像される出射光に基づくスパークルコントラストと同等のスパークルコントラストを算出する、請求項1に記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記第2の撮像条件は、前記第1の撮像条件に対して前記撮像距離が異なる、請求項2に記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記第2の撮像条件は、前記第1の撮像条件に対して前記光学系の焦点距離が異なる、請求項2または3に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記第2の撮像条件は、前記第1の撮像条件に対して前記光学系のFナンバーが異なる、請求項2~4のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項6】
以下の数式を満足する前記発光領域の大きさが一定となるように前記撮像距離および前記光学系の焦点距離の少なくとも一方を調整する機構を備える、請求項1または2に記載の光学測定装置。
【数1】
但し、
S:前記発光領域の大きさ
R:前記回折限界スポットの大きさ
m:前記光学系の倍率
F#image:像側の前記光学系のFナンバー
d:前記撮像距離
f:前記光学系の焦点距離
F#surface:前記被測定面側の前記光学系のFナンバー
【請求項7】
以下の数式を満足する前記発光領域の大きさが一定となるように前記撮像距離、前記光学系の焦点距離および前記光学系のFナンバーの少なくとも1つを調整する機構を備える、請求項1または2に記載の光学測定装置。
【数2】
【数3】
但し、
M:統合パラメータ
S:前記発光領域の大きさ
R:前記回折限界スポットの大きさ
m:前記光学系の倍率
F#image:像側の前記光学系のFナンバー
d:前記撮像距離
f:前記光学系の焦点距離
F#surface:前記被測定面側の前記光学系のFナンバー
:前記2次元センサアレイ面上のコヒーレント領域の大きさ
:前記2次元センサアレイ面上の正方形の均一な検出素子の大きさ
erf:標準誤差関数
【請求項8】
前記被測定面を有する対象物を支持する支持部材を更に備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記撮像距離の可動範囲を超える前記第1の撮像条件を代替した前記撮像距離の可動範囲内の前記第2の撮像条件の下で撮像された前記出射光に基づいて、前記第1の撮像条件の場合と同等のスパークルコントラストを算出する、請求項2に記載の光学測定装置。
【請求項10】
前記光学系は、前記第1の撮像条件に対応する第1レンズと、前記第2の撮像条件に対応する第2レンズとを有する、請求項2~5および9のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項11】
前記第1の撮像条件および前記第2の撮像条件のそれぞれを設定するように前記光学系を移動させる機構を備える、請求項2~5、9および10のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項12】
前記出射光は、インコヒーレント光またはコヒーレント光を拡散させた光である、請求項1~11のいずれか1項に記載の光学測定装置。
【請求項13】
スパークルコントラストを測定する対象となる発光型の電子ディスプレイないし発光面の、被測定面からの出射光を光学系で2次元センサアレイ面上に結像させて前記出射光を撮像する工程と、
前記撮像された出射光に基づいて前記スパークルコントラストを算出する工程と、を備え、
前記スパークルコントラストの算出は、前記2次元センサアレイ面上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記被測定面上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件で撮像された前記出射光に基づいて行い、
前記発光領域の大きさは、前記回折限界スポットの大きさと、前記光学系の焦点距離および前記被測定面から前記光学系までの撮像距離から求まる前記光学系の倍率と、に基づいて定まる、光学測定方法。
【請求項14】
前記出射光を撮像する工程は、
前記被測定面上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件を決定する工程と、
前記決定された撮像条件を実現するために前記光学系を調整する工程と、を有する、請求項13に記載の光学測定方法。
【請求項15】
前記被測定面は、防眩層を有する表示装置における前記防眩層の出射面である、請求項13または14に記載の光学測定方法。
【請求項16】
前記被測定面は、バックライト装置の出射面である、請求項13または14に記載の光学測定方法。
【請求項17】
前記被測定面は、プロジェクタから出射された光を投射するスクリーンの出射面である、請求項13または14に記載の光学測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学測定装置および光学測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、レーザ光の干渉性によって生じるスペックルを測定することが行われている。特許文献1に記載されたスペックルコントラスト測定器は、移動拡散板で拡散されてスクリーン上に投影されたレーザ光を撮像し、撮像結果に基づいてスペックルコントラストを測定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-32371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスペックルコントラスト測定器においては、撮像条件が異なる他の測定器との間でのスペックルコントラストの互換性を確保することで撮像条件の自由度を向上させることについて何ら有効な提案がなされていない。
【0005】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストの被測定面の撮像条件の自由度を向上させることができる光学測定装置および光学測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による光学測定装置は、
スペックルコントラストまたはスパークルコントラストを測定する対象となる発光型の電子ディスプレイないし発光面の、被測定面からの出射光を結像させる光学系と、
前記出射光が結像される2次元センサアレイ面を有し、前記出射光を撮像するセンサと、
前記2次元センサアレイ面上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記被測定面上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件で撮像された前記出射光に基づいて、前記スペックルコントラストまたは前記スパークルコントラストを算出する算出部と、を備え、
前記発光領域の大きさは、前記回折限界スポットの大きさと、前記光学系の焦点距離および前記被測定面から前記光学系までの撮像距離から求まる前記光学系の倍率と、に基づいて定まる。
【0007】
本開示による光学測定装置において、
前記算出部は、第1の撮像条件に対して前記発光領域の大きさが同一となる第2の撮像条件で撮像された前記出射光に基づいて、前記第1の撮像条件で撮像される出射光に基づくスペックルコントラストまたはスパークルコントラストと同等のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出してもよい。
【0008】
本開示による光学測定装置において、
前記第2の撮像条件は、前記第1の撮像条件に対して前記撮像距離が異なってもよい。
【0009】
本開示による光学測定装置において、
前記第2の撮像条件は、前記第1の撮像条件に対して前記光学系の焦点距離が異なってもよい。
【0010】
本開示による光学測定装置において、
前記第2の撮像条件は、前記第1の撮像条件に対して前記光学系のFナンバーが異なってもよい。
【0011】
本開示による光学測定装置において、
以下の数式を満足する前記発光領域の大きさが一定となるように前記撮像距離および前記光学系の焦点距離の少なくとも一方を調整する機構を備えてもよい。
【数1】
但し、
S:前記発光領域の大きさ
R:前記回折限界スポットの大きさ
m:前記光学系の倍率
F#image:像側の前記光学系のFナンバー
d:前記撮像距離
f:前記光学系の焦点距離
F#surface:前記被測定面側の前記光学系のFナンバー
【0012】
本開示による光学測定装置において、
以下の数式を満足する前記発光領域の大きさが一定となるように前記撮像距離、前記光学系の焦点距離および前記光学系のFナンバーの少なくとも1つを調整する機構を備えてもよい。
【数2】
【数3】
但し、
M:統合パラメータ
S:前記発光領域の大きさ
R:前記回折限界スポットの大きさ
m:前記光学系の倍率
F#image:像側の前記光学系のFナンバー
d:前記撮像距離
f:前記光学系の焦点距離
F#surface:前記被測定面側の前記光学系のFナンバー
:前記2次元センサアレイ面上のコヒーレント領域の大きさ
:前記2次元センサアレイ面上の正方形の均一な検出素子の大きさ
efr:標準誤差関数
【0013】
本開示による光学測定装置において、
前記被測定面を有する対象物を支持する支持部材を更に備えてもよい。
【0014】
本開示による光学測定装置において、
前記算出部は、前記撮像距離の可動範囲を超える前記第1の撮像条件を代替した前記撮像距離の可動範囲内の前記第2の撮像条件の下で撮像された前記出射光に基づいて、前記第1の撮像条件の場合と同等のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出してもよい。
【0015】
本開示による光学測定装置において、
前記光学系は、前記第1の撮像条件に対応する第1レンズと、前記第2の撮像条件に対応する第2レンズとを有してもよい。
【0016】
本開示による光学測定装置は、
前記第1の撮像条件および前記第2の撮像条件のそれぞれを設定するように前記光学系を移動させる機構を更に備えてもよい。
【0017】
本開示による光学測定装置において、
前記出射光は、インコヒーレント光またはコヒーレント光を拡散させた光であってもよい。
【0018】
本開示による光学測定方法は、
スペックルコントラストまたはスパークルコントラストを測定する対象となる発光型の電子ディスプレイないし発光面の、被測定面からの出射光を光学系で2次元センサアレイ面上に結像させて前記出射光を撮像する工程と、
前記撮像された出射光に基づいて前記スペックルコントラストまたは前記スパークルコントラストを算出する工程と、を備え、
前記スペックルコントラストまたは前記スパークルコントラストの算出は、前記2次元センサアレイ面上への前記出射光の回折限界スポットの結像に寄与する前記被測定面上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件で撮像された前記出射光に基づいて行い、
前記発光領域の大きさは、前記回折限界スポットの大きさと、前記光学系の焦点距離および前記被測定面から前記光学系までの撮像距離から求まる前記光学系の倍率と、に基づいて定まる。
【0019】
本開示による光学測定方法において、
前記出射光を撮像する工程は、
前記被測定面上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件を決定する工程と、
前記決定された撮像条件を実現するために前記光学系を調整する工程と、を有してもよい。
【0020】
本開示による光学測定方法において、
前記被測定面は、防眩層を有する表示装置における前記防眩層の出射面であってもよい。
【0021】
本開示による光学測定方法において、
前記被測定面は、バックライト装置の出射面であってもよい。
【0022】
本開示による光学測定方法において、
前記被測定面は、プロジェクタから出射された光を投射するスクリーンの出射面であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストの被測定面の撮像条件の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、光学測定装置の一例を示す図である。
図2図2は、図1の光学測定装置の撮像条件を説明するための説明図である。
図3図3は、図1の光学測定装置の一具体例を示す図である。
図4図4は、図1の光学測定装置の他の具体例を示す図である。
図5図5は、図1の光学測定装置のさらに他の具体例を示す図である。
図6図6は、図1の光学測定装置のさらに他の具体例を示す図である。
図7図7は、図1の光学測定装置の参考例として、コヒーレント光を用いたスペックルコントラストの測定系を示す図である。
図8図8は、図7の測定系によるスペックルコントラストの測定結果を示す図である。
図9図9は、図1の光学測定装置の実験例として、コヒーレント光の拡散光を用いたスペックルコントラストの測定系を示す図である。
図10図10は、図9の測定系による測定条件として、実効Fナンバーおよび撮像距離を示す図である。
図11図11は、図10の測定条件の下での図9の測定系によるスペックルコントラストの測定結果を示す図である。
図12図12は、図10と異なる測定条件の下での図9の測定系によるスペックルコントラストの測定結果を示す図である。
図13図13は、図1の光学測定装置の変形例を示す図である。
図14図14は、光学測定方法の変形例を示す図である。
図15図15は、光学測定方法の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0026】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「同等」、「同一」等の用語や、長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0027】
図1は、光学測定装置1の一例を示す図である。図2は、図1の光学測定装置1の撮像条件を説明するための説明図である。図3は、図1の光学測定装置1の一具体例を示す図である。図4は、図1の光学測定装置1の他の具体例を示す図である。図5は、図1の光学測定装置1のさらに他の具体例を示す図である。図6は、図1の光学測定装置1のさらに他の具体例を示す図である。
【0028】
図1に示される光学測定装置1は、発光型の電子ディスプレイないし発光面の、被測定面7上に形成される光学像に含まれるスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを測定するために用いることができる。以下、発光型の電子ディスプレイないし発光面の被測定面7のことを、単に被測定面7と略称することもある。
【0029】
一般に、スペックルとは、観察者の視覚系のセンサ面上でのコヒーレント光の干渉の結果生じる不規則な空間変調イメージをいう。スペックルコントラストとは、単色スペックルの代表的評価指数であり、次式で定義される。
【0030】
【数4】
数式(4)において、σは、単色スペックルパターンの測定用2次元センサ面上の放射照度分布の標準偏差である。また、数式(4)において、
は、単色スペックルパターンの放射照度の平均値である。人間が観察することを前提とした分野、例えば電子ディスプレイ分野等では、放射照度ではなく輝度を数式(4)の分母分子の測定単位としてもよい。いずれにせよ、スペックルコントラストはスペックルパターン、すなわちランダムノイズ画像のS/N比の逆数として定義される無次元量である。
【0031】
これに対して、本開示で測定対象とするスペックルは、拡散によって干渉性を低減させたコヒーレント光に基づく空間変調イメージであり、このスペックルのスペックルコントラストは、数式(4)と同様にスペックルパターンの標準偏差と平均値との比として定義できる。
【0032】
また、スパークルとは、直視型ディスプレイの画素マトリクスと当該ディスプレイの表面の近くに配置された拡散層との組合せによる観察者の視覚系のセンサ面上への結像の結果生じる不規則な空間変調イメージをいう。スパークルコントラストとは、スパークルの代表的評価指数であり、数式(4)と同様にスパークルパターンの標準偏差と平均値との比として定義できる。
【0033】
なお、図1に示される例において、被測定面7は、画素マトリクス81とブラックマトリクス82とを有する表示装置8に積層された防眩層9すなわち拡散層の表面である。したがって、図1に示される例において、光学測定装置1は、被測定面7のスパークルコントラストを測定することができる。なお、表示装置8は、典型的には画素マトリクス81およびブラックマトリクス82を有する液晶パネルと、液晶パネルの背面に設置された図示しないバックライト装置とを備えた液晶表示装置である。バックライト装置は、導光板の側部に配置された光源から出射された光を導光板内で内部反射させて液晶パネル側に導くエッジライト方式であってもよく、または、液晶パネルの直下に複数の光源を均等に配置した直下型方式であってもよい。エッジライト方式の光源としては、例えば、インコヒーレント光を出射する冷陰極管や発光ダイオード(LED)を用いることができる。直下型方式の光源としては、例えば、発光ダイオードを用いることができる。
【0034】
ただし、表示装置は、液晶表示装置に限定されず、例えば、有機ELディスプレイや量子ドット(QD)ディスプレイなどであってもよい。また、後述するスクリーン15とプロジェクタ16とによって表示装置を構成してもよい。
【0035】
スパークルコントラストを測定するための具体的な構成として、図1に示される例において、光学測定装置1は、光学系3と、2次元センサアレイ4と、撮像条件設定部5と、算出部6とを備える。以下、これらの光学測定装置1の構成部について詳しく説明する。
【0036】
(光学系3)
光学系3は、レンズ31と、開口321が設けられた絞り32とを有する。
【0037】
光学系3は、スパークルコントラストの被測定面7からの出射光Lを屈折させて2次元センサアレイ4の2次元センサアレイ面41上に結像させる。
【0038】
光学系3のパラメータは、スパークルコントラストの大きさに影響する。
【0039】
例えば、絞り32の開口321が小さい、すなわち、レンズ31のFナンバーが大きいほど、絞り32の開口321での出射光Lが受ける回折の影響が顕著になる。出射光Lの回折が顕著になることで、2次元センサアレイ面41上に結像する出射光Lの回折限界スポットすなわちエアリーディスクの広がりが大きくなる。これにより、2次元センサアレイ4の1つの画素42にとどまらず、隣接する他の画素42に至るまで回折限界スポットが広がる。
【0040】
このような回折限界スポットの広がりが2次元センサアレイ4の各画素42上に結像する各回折限界スポットで生じることで、特定の画素42に着目した場合、防眩層9の異なる箇所を通過した射出光L同士が特定の画素42上で重なり合うことによるスパークルパターンの平均化が生じる。また、上記スパークルの場合と同様、回転拡散板等により時間的干渉性が低減された状態で測定されるスペックルコントラストにおいても、同様の平均化が生ずる。
【0041】
このような画素42上でのスペックルおよびスパークルパターンの平均化の度合いが大きいほど、スペックルコントラストおよびスパークルコントラストは低下する。すなわち、レンズ31のFナンバーが大きいほど、画素42上での平均化効果によってスペックルコントラストおよびスパークルコントラストは低下する。
【0042】
一方、Fナンバーが小さくなり過ぎることで、2次元センサアレイ面41上に形成されるスペックルないしスパークルパターンを構成する平均粒径、が画素42よりも小さくなる場合にも、スペックルコントラストおよびスパークルコントラストが低下する。これは、回折限界スポットの広がりが画素42に対して狭すぎることによって1つの画素42内で受光量の分布が生じ、この分布によって1つの画素42内でのスペックルまたはスパークルパターンの平均化が生じることによるものである。すなわち、レンズ31のFナンバーが小さくなり過ぎると、画素42内での平均化効果によってスペックルコントラストおよびスパークルコントラストが低下する。
【0043】
以上のように、レンズ31のFナンバーはスペックルコントラストおよびスパークルコントラストに影響し、Fナンバーの増加にともなう画素42上での異なるパターンが重なることによる平均化効果によってコントラストの低下が生じ、またFナンバーの減少にともなう画素42内での平均化効果によってもスペックルないしスパークルコントラストの低下が生じる。
【0044】
なお、図1に示される例において、光学系3は1枚のレンズ31を有しているが、光学系3は、複数枚のレンズを有していてもよい。この場合、複数枚のレンズは、出射光Lの収差を低減するのに好適な組み合わせのパワーを有していてもよい。また、光学系3は光学フィルター33を含んでいてもよい。具体的には、Yフィルター、あるいはXYZフィルター、RGBフィルター、直線偏光フィルター、円偏光フィルター、NDフィルター等である。例えば、図1には、絞り32とレンズ31との間に光学フィルター33を配置する例が示されているが、光学フィルター33の枚数や位置は、図1の例に限定されない。
【0045】
(2次元センサアレイ4)
2次元センサアレイ4は、被測定面7からの出射光Lが結像される2次元センサアレイ面41を有し、出射光Lを撮像する。
【0046】
2次元センサアレイ4は、互いに隣接する複数の画素42を有し、画素42の表面が2次元センサアレイ面41を構成している。画素42で受光された出射光Lは、光電変換によって電気信号へと変換され、変換された電気信号は、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストの算出に用いられる。
【0047】
2次元センサアレイ4は、固体撮像素子を有するイメージセンサであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOSセンサであってもよい。
【0048】
(撮像条件設定部5)
撮像条件設定部5は、被測定面7の撮像条件すなわち出射光Lの撮像条件を光学測定装置1に設定する。撮像条件設定部5は、被測定面7の撮像条件を設定するために光学系3を移動すなわち調整する機構を有していてもよい。
【0049】
例えば、図3に示すように、撮像条件設定部5は、互いに焦点距離が異なる複数のレンズ31A、31Bを選択的に光軸OA上に移動させるレンズ交換機構51と、レンズ交換機構51の動作を制御する制御部50とを有していてもよい。図3に示される例において、レンズは2枚であるが、レンズ交換機構51は、3枚以上のレンズを交換してもよい。レンズ交換機構51の具体的な態様は特に限定されず、例えば、モータ等の動力源を有するアクチュエータによってレンズ交換機構51を構成してもよい。図3に示される例によれば、撮像条件設定部5は、撮像条件として、光学系3の倍率を設定または変更することができる。
【0050】
また、例えば、図4に示すように、撮像条件設定部5は、光学系3を光軸方向D1に移動することで撮像距離dを調整する撮像距離調整機構52と、撮像距離調整機構52の動作を制御する制御部50とを有していてもよい。撮像距離調整機構52の具体的な態様は特に限定されず、例えば、モータ等の動力源を有するアクチュエータによって撮像距離調整機構52を構成してもよい。図4に示される例によれば、撮像条件設定部5は、撮像条件として、被測定面7から光学系3までの撮像距離dを設定または変更することができる。
【0051】
また、例えば、図5に示すように、撮像条件設定部5は、絞り3の開口321の大きさを調整する絞り調整機構53を有していてもよい。絞り調整機構53は、例えば、モータ等のアクチュエータによって構成することができる。図5に示される例によれば、撮像条件設定部5は、撮像条件として、光学系3のFナンバーを設定または変更することができる。
【0052】
また、図6に示すように、撮像条件設定部5は、図3図5に示した光学系3を移動する複数の機構51、52、53の全てを有していてもよい。
【0053】
また、撮像条件設定部5は、撮像条件として2次元センサアレイ4の画素42のサイズを変更可能であってもよい。
【0054】
以上の構成を備えたうえで、撮像条件設定部5は、異なる撮像条件で撮像された出射光Lに基づくスペックルコントラストまたはスパークルコントラストの互換性を確保するため、2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件を設定する。
【0055】
例えば、制御部50は、第1の撮像条件に対して2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定すなわち同一となる第2の撮像条件を予め記憶すなわち決定しておき、記憶されている第2の撮像条件を設定するように機構51、52、53の動作を制御すなわち光学系3を調整してもよい。このような制御部50は、例えばCPUやメモリなどのハードウェアで構成することができる。制御部50の一部をソフトウェアで構成してもよい。
【0056】
2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件の詳細な意義については後述する。
【0057】
(算出部6)
算出部6は、2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件で撮像された出射光Lに基づいて、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する。より詳しくは、算出部6は、第1の撮像条件に対して2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定となる第2の撮像条件で撮像された出射光Lに基づいて、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する。算出部6は、算出されたスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを出力する。算出されたスペックルコントラストまたはスパークルコントラストの出力先は、算出結果を記憶するメモリであってもよく、または、算出結果を表示するディスプレイであってもよい。算出部6は、例えばCPUやメモリなどのハードウェアで構成されている。算出部6の一部をソフトウェアで構成してもよい。
【0058】
以下、2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさが一定となる撮像条件の詳細な意義について説明する。
【0059】
2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさは、回折限界スポットの大きさと、光学系3の焦点距離および被測定面7から光学系3までの撮像距離dから求まる光学系3の倍率と、に基づいて次式のように定まる。
【0060】
【数5】
数式(1)において、Sは、2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさである。Rは、2次元センサアレイ面41上に結像される出射光Lの回折限界スポットの大きさ、すなわち、エアリーディスクの大きさである。mは、光学系3すなわちレンズ31の倍率である。F#imageは、像側の光学系3のFナンバーである。dは、既述した撮像距離である。fは、光学系3の焦点距離である。F#surfaceは、被測定面7側(物体側)の光学系3のFナンバーである。これらのパラメータの意義は、後述する数式(2)においても同様である。なお、数式(1)において、F#image/mすなわちF#surface・d/fは、R/mに比例するため、F#image/mもしくはF#surface・d/fを一定にするということは、Sを一定にすることと等価である。
【0061】
ここで、図2に示すように、2次元センサアレイ面41上には、被測定面7からの出射光Lが、PSF(点像強度分布関数)にしたがって複数の画素42に跨る回折限界スポットPSすなわち点像として結像する。なお、図2では、PSFにしたがった回折限界スポットPSの広がりを説明する便宜上、2次元センサアレイ4を図1よりも拡大して図示している。
【0062】
このように、1つの画素42を中心とする回折限界スポットPSは、その画素42だけでなく隣接する他の画素42でも受光されることから、1つの画素42への回折限界スポットPSの結像には、被測定面7上の複数の発光点Pからの出射光Lが寄与していると考えることができる。
【0063】
そして、2次元センサアレイ面41上への出射光Lの回折限界スポットPSの結像に寄与する被測定面7上の発光領域は、複数の発光点Pの集合と考えることができる。したがって、発光領域の大きさは、図2に示すように、光学系3を通して2次元センサアレイ4側の回折限界スポットPSを被測定面7上に投射した像の大きさSと考えることができる。なお、図2においては、被測定面7上への回折限界スポットPSの投射像を、PSFの投射像として表現している。図2に示される例において、被測定面7上への回折限界スポットPSの投射像は、回折限界スポットPSよりも大きいが、これは光学系3の倍率が関与していることによるものである。
【0064】
本開示においては、このような回折限界スポットPSの結像に寄与する被測定面7上の発光領域の大きさSが一定であれば、異なる撮像条件で撮像された出射光Lに基づくスペックルコントラストまたはスパークルコントラストの互換性を確保できることを見出した。当該互換性を確保できる理由は以下のとおりである。
【0065】
画素42上に入射する被測定面7上の各発光点Pからの出射光Lが、インコヒーレントまたはコヒーレントであっても拡散によって干渉性が低減されている場合、画素42上において、被測定面7の各発光点Pからの出射光Lは殆ど干渉せず、単純な光の波面の重ね合わせが生じる。
【0066】
この結果、画素42に対応する被測定面7上の発光点Pの個数に応じて、スペックルまたはスパークルが平均化された回折限界スポット群が形成される。このスペックルまたはスパークルの平均化の度合いは、画素42に対応する被測定面7上の発光点Pの個数、すなわち被測定面7上の発光領域の大きさSに依存する。
【0067】
したがって、被測定面7上の発光領域の大きさSを一定にすれば、撮像条件が異なっていても、スペックルまたはスパークルの平均化の度合いが共通する殆ど同一のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを得ることができる。
【0068】
以上の理由によってスペックルコントラストまたはスパークルコントラストの互換性を確保できるため、撮像条件設定部5は、Sが一定となる撮像条件を設定し、算出部6は、Sが一定となる撮像条件で撮像された出射光Lに基づいてスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する。すなわち、撮像条件設定部5は、Sが一定となるように撮像距離dおよび光学系3の焦点距離fの少なくとも一方を調整し、算出部6は、当該調整によって設定された撮像条件で撮像された出射光Lに基づいてスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する。
【0069】
このような構成によれば、異なる撮像条件で撮像された出射光Lに基づいて互換性を有するスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを得ることができるため、撮像条件の自由度を向上させることができる。
【0070】
より詳しくは、算出部6は、第1の撮像条件に対して発光領域の大きさSが同一となる第2の撮像条件で撮像された出射光Lに基づいて、第1の撮像条件で撮像される出射光Lに基づくスペックルコントラストまたはスパークルコントラストと同等のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出することができる。
【0071】
第1の撮像条件は、光学測定装置1の撮像距離の可動範囲内の撮像条件であってもよく、または、光学測定装置1の撮像距離の可動範囲を超える撮像条件であってもよい。
【0072】
第1の撮像条件が光学測定装置1の撮像距離の可動範囲を超える撮像条件である場合には、光学測定装置1の撮像距離の可動範囲内の第2の撮像条件で撮像された出射光Lに基づいて、第1の撮像条件を設定した場合に代替するスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出することができる。これにより、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストの測定に対する光学測定装置1の構造上の制約を緩和することができる。
【0073】
第1の撮像条件が光学測定装置1の撮像距離の可動範囲内の撮像条件である場合には、第1の撮像条件および第2の撮像条件の双方を選択的に設定することで、第1の撮像条件の下で測定されたスペックルコントラストまたはスパークルコントラストと、第2の撮像条件の下で測定されたスペックルコントラストまたはスパークルコントラストとを、1台の光学測定装置1のみで適切に比較することができる。
【0074】
なお、第2の撮像条件は、第1の撮像条件に対して撮像距離dが異なってもよい。この場合、撮像条件設定部5は、図4に示したように、撮像距離調整機構52によって光学系3を光軸OA方向に移動させて撮像距離dを調整することで、第2の撮像条件または第2の撮像条件と第1の撮像条件との双方を設定することができる。
【0075】
また、第2の撮像条件は、第1の撮像条件に対して光学系3の焦点距離が異なってもよい。この場合、撮像条件設定部5は、図3に示したように、レンズ交換機構51によって撮像に用いるレンズ31A、31Bを交換することで、第2の撮像条件または第2の撮像条件と第1の撮像条件との双方を設定することができる。この場合、レンズ31Aは、第1の撮像条件に対応する第1レンズとして機能し、レンズ31Bは、第2の撮像条件に対応する第2レンズとして機能してもよい。
【0076】
また、第2の撮像条件は、第1の撮像条件に対して光学系3のFナンバーが異なってもよい。この場合、撮像条件設定部5は、図5に示したように、絞り調整機構53によって絞り53の開口321の大きさを調整することで、第2の撮像条件または第2の撮像条件と第1の撮像条件との双方を設定することができる。
【0077】
ただし、第1の撮像条件と第2の撮像条件との間でFナンバーを異ならせる場合、算出部6は、次式を満足する発光領域の大きさSが一定となる撮像条件で撮像された出射光Lに基づいて、スペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する。すなわち、撮像条件設定部5は、次式のSが一定となるように光学系3のFナンバーおよび必要に応じて更に撮像距離d、光学系3の焦点距離fを調整し、算出部6は、当該調整によって設定された撮像条件で撮像された出射光Lに基づいてスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出する。
【0078】
【数6】
【数7】
数式(3)において、Mは、統合パラメータである。Aは、2次元センサアレイ面41上のコヒーレント領域の大きさである。Aは、2次元センサアレイ面41上に結像される出射光Lの回折限界スポットの大きさ、すなわち、数式(2)のRと等価である。Aは、2次元センサアレイ面41の正方形の均一な検出素子の大きさである。Aは、図1に示した1つの画素42の大きさに相当する。efrは、標準誤差関数である。これらのパラメータの意義は、後述する数式(6)においても同様である。
【0079】
数式(2)に示されるSが一定となる撮像条件で撮像された出射光Lに基づいてスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを算出すれば、撮像条件として光学系3のFナンバーが異なる場合でも、同等のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを取得できる。
【0080】
次に、上述のように構成された光学測定装置1の効果を実証するための実験例について説明する。実験例の説明に先立ち、先ず、参考例として、拡散されない完全なコヒーレント光を用いたスペックルコントラストの測定例について説明する。
【0081】
(参考例)
図7は、きわめて高い時間的・空間的干渉性を有するコヒーレント光を用いたスペックルコントラストの測定系を示す図である。
【0082】
図7の測定系は、コヒーレント光として波長543.7nmのレーザ光を出射するHe-Neレーザ11と、レンズおよびピンホールを有するスペイシャルフィルタ12と、スクリーン80と、撮像カメラ10とで構成されている。
【0083】
スクリーン80としては、ラブスフェア社製の拡散反射ターゲット:SRT-99-050を用いた。図7に示すように、スクリーン80は、レーザ光の入射角が30°になるようにHe-Neレーザ11から1.2m離れた位置に配置した。撮像カメラ10としては、撮像カメラCCD画素サイズが6.45μm、焦点距離が50mmのレンズを選定した。また、スクリーン80から撮像カメラ10までの撮像距離dは、0.4mに固定した。
【0084】
図7の測定系において、He-Neレーザ11から出射されたレーザ光は、スペイシャルフィルタ12において理想に近い球面波となるよう調整されたうえでスクリーン80に照射され、スクリーン80で拡散反射される。拡散反射されたレーザ光は、撮像カメラ10で受光されてスペックルコントラストが測定される。
【0085】
図7の測定例においては、撮像カメラ10の光学系の実効Fナンバーを3.2から42の範囲で変化させながら実効Fナンバー毎にスペックルコントラストを測定し、測定によって得られたスペックルコントラストの測定値を、以下に述べるスペックルコントラストの計算値と比較した。
【0086】
スペックルコントラストの計算値は、以下の理論に基づいて計算された値である。図7のように、拡散されない完全なコヒーレント光を用いる場合、スペックルコントラストは、撮像カメラ10の実効Fナンバーへの依存性が低い。これは、きわめて高い時間的・空間的干渉性を有するコヒーレント光を用いる場合には、撮像カメラ10上のコヒーレント領域が非常に大きくなることによる。一方、既述した回折限界スポットの大きさRとほぼ等価である平均スペックルサイズRは、次式で示されるように、撮像カメラ10の実効Fナンバーに依存する。
【0087】
【数8】
数式(5)において、λは、コヒーレント光の波長である。
【0088】
スペックルは、撮像カメラ10のセンサの複数の有限エリアにおいて統合される。この統合されたスペックルのスペックルコントラストは、次式で定義される。
【0089】
【数9】
なお、数式(6)の統合パタメータMの詳細については、数式(3)で既に説明した。
【0090】
図8は、数式(6)にしたがって計算されたスペックルコントラストの計算値と、図7の測定系によるスペックルコントラストの測定値とを比較した図である。図8において、測定値および計算値は、実効Fナンバーが42の値を1として正規化した値である。
【0091】
図8に示すように、スペックルコントラストの測定値は、計算値に整合することが分かる。
【0092】
図8によれば、スペックルコントラストの実効Fナンバーへの依存性が低い(スペックルパターン強度の空間的な重ね合わせが成立しない)きわめて高い時間的・空間的干渉性を有するコヒーレント光を用いる場合においても、実効Fナンバーの変化に対してスペックルコントラストは一定とはならず、実効Fナンバーが小さくなるとスペックルコントラストが低下することが確認された。すなわち、図8によれば、画素内での平均化効果によってスペックルコントラストが低下することが実証された。
【0093】
(実験例)
次に、図1の光学測定装置1の実験例として、拡散されたコヒーレント光を用いたスペックルコントラストの測定例について説明する。図9は、時間的に拡散状態を変化されたコヒーレント光を用いたスペックルコントラストの測定系を示す図である。
【0094】
図9の測定系は、コヒーレント光として波長533nmのレーザ光を出射するSHGレーザ111と、回転ディフューザ13と、スクリーン80と、撮像カメラ10とで構成されている。
【0095】
回転ディフューザ13は、SHGレーザ111から出射されたレーザ光を拡散させて干渉性を低減させる。直径約1cmのスポット光として回転ディフューザ13で拡散されたレーザ光は、回転ディフューザ13から1.2m離れたスクリーン80上に照射される。スクリーン80は、回転ディフューザ13から照射された拡散光を撮像カメラ10に向けて拡散反射させる。拡散反射された拡散光は、撮像カメラ10で受光されてスペックルコントラストが測定される。
【0096】
このように回転ディフューザ13を用いる場合、センサ上での、異なるスペックルパターン強度の重ね合わせによる平均化効果が生じる。この場合、スペックルコントラストは次式で定義される。
【0097】
【数10】
数式(7)において、Kは、空間多重度の係数である。NAimage、NAilluminationは、それぞれスクリーン80に対する撮像カメラ10側およびSHGレーザ111側の開口数である。
【0098】
このようなスペックルコントラストの実測値を得るため、実験例では、先ず、上述した数式(1)にしたがった撮像条件の下での第1の測定として、図10にしたがってSが一定となるように実効FナンバーF#imageと撮像距離dとの組合せを変化させ、組合せ毎の撮像条件で撮像されたレーザ光に基づくスペックルコントラストの測定を行った。なお、第1の測定では、撮像カメラ10のレンズの焦点距離fは一定とした。
【0099】
図11は、第1の測定によるスペックルコントラストの測定結果を示す図である。具体的には、図11において四角形のプロットで示された測定値が、第1の測定による測定値である。第1の測定による測定値の他にも、図11には、図8に示したきわめて高い時間的・空間的干渉性を有するコヒーレント光を用いる場合の測定値および計算値が示されている。
【0100】
図11によれば、Sが一定となる撮像条件の下で、拡散されたコヒーレント光を用いてスペックルコントラストを測定する場合に、きわめて高い時間的・空間的干渉性を有するコヒーレント光を用いる場合と同様の測定結果が得られることが確認された。このことは、画素内の平均化効果によるスペックルコントラストの低下を除いたと仮定すれば、Sが一定の場合にスペックルコントラストが一定となることが実証されたことに相当する。
【0101】
次に、実験例では、数式(1)にしたがった撮像条件の下での第2の測定として、焦点距離が異なる2つのレンズをそれぞれ用いてスペックルコントラストを測定した。2つのレンズの焦点距離fは、それぞれ35mm、50mmである。また、焦点距離f=35mmのレンズに対応する撮像距離dは0.42mm、焦点距離f=50mmのレンズに対応する撮像距離dは0.62mとした。すなわち、第2の測定では、数式(1)のd/fを一定にすることでSを一定にする。なお、第2の測定において、撮像カメラ10のCCD画素サイズは9μmとした。
【0102】
図12は、第2の測定の結果を示す図である。図12に示すように、撮像条件が異なっていても、Sが一定であればスペックルコントラストが殆ど一致することが確認された。
【0103】
以上の実験例により、Sを一定にすることによって同等のスペックルコントラストを得ることができるという光学測定装置1の効果が実証された。
【0104】
一実施の形態をいくつかの具体例により説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の構成の省略、置き換え、変更、或いは、更なる構成の追加を行うことができる。
【0105】
以下、図面を参照しながら、他の具体例を説明していくことで上述した実施の形態を更に説明していく。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0106】
(第1の変形例)
図13は、第1の変形例として、図1の光学測定装置1の変形例を示す図である。図13に示される例において、光学系3、2次元センサアレイ4、撮像条件設定部5、算出部6から構成される光学測定装置1の本体部分は、筐体101内に収容されている。光学測定装置1は、更に、筐体101から表示装置8側に延びる支持部材102を有する。支持部材102は、防眩層9の表面である被測定面7と光学系3との間に一定の撮像距離を確保した状態で、被測定面7を有する対象物である防眩層9および表示装置8を支持している。図13に示される例において、支持部材102は、表示装置8および防眩層9の一部に嵌合することで表示装置8および防眩層9を支持しているが、支持部材102の態様は図13に限定されない。
【0107】
図13に示すように、支持部材102で表示装置8および防眩層9を支持する場合、被測定面7と光学系3との撮像距離dが自ずと制約される。
【0108】
しかるに、数式(1)のSが一定となるように撮像距離d以外の撮像条件を設定することで、図13の光学測定装置1で実現できない撮像距離d(例えば支持部材102の寸法を上回る撮像距離)で撮像した出射光Lに基づくスペックルコントラストまたはスパークルコントラストと同等のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを測定することができる。
【0109】
(第2の変形例)
これまでは、被測定面7が表示装置8に積層された防眩層9の表面である例について説明した。これに対して、図14に示すように、被測定面7は、バックライト装置14の出射面であってもよい。図14に示される例において、バックライト装置14は、光源141と、光源141から出射された光を導光する導光板142と、導光板142の背面に積層された反射板143と、導光板142の前面に積層された拡散板144とで構成されている。被測定面7は、拡散板144の表面である。図14に示される例において、バックライト装置はエッジライト方式であるが、光学測定装置1は、直下型方式のバックライト装置のスペックルコントラストまたはスパークルコントラストを測定してもよい。
【0110】
(第3の変形例)
また、図15に示すように、被測定面7は、スクリーン15の出射面であってもよい。図15に示される例において、スクリーン15は、プロジェクタ16から投射されたコヒーレント光を画像として透過表示する装置である。なお、このようなプロジェクション光の測定時には、スペックルは発生するがスパークルは発生しない。スパークルコントラストの測定対象は、上述したように防眩層を有する直視型のディスプレイに限られる。
【0111】
なお、以上において上述した実施の形態に対して適用可能な多数の変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 光学測定装置
7 被測定面
4 2次元センサアレイ
41 2次元センサアレイ面
6 算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15