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特開2024-56789光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法
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  • 特開-光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法 図1
  • 特開-光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法 図2
  • 特開-光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法 図3
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  • 特開-光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056789
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学ガラスを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/062 20060101AFI20240416BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20240416BHJP
   C03C 3/066 20060101ALI20240416BHJP
   C03C 3/068 20060101ALI20240416BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C03C3/062
C03C3/064
C03C3/066
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016358
(22)【出願日】2024-02-06
(62)【分割の表示】P 2019182097の分割
【原出願日】2019-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】500267712
【氏名又は名称】光ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井口 徳晃
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高分散で異常分散ΔPg,Fが小さい光学ガラスを提供する。
【解決手段】質量%で、SiO成分:17~35%、B成分:0~13%、ZrO成分:0~10%、Nb成分:34~52%、NaO成分:0~10%、MgO成分:0超~10%、LiO成分:0超~10%、WO成分:0~3%、であり、質量%基準で、MgOに対するSiOの比(SiO/MgO)が、5~27.5である、光学ガラスを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
SiO成分:17~35%、
成分:0~13%、
ZrO成分:0~10%、
Nb成分:34~52%、
NaO成分:0~10%、
MgO成分:0超~10%、
LiO成分:0超~10%、
WO成分:0~3%、
であり、
質量%基準で、
MgOに対するSiOの比(SiO/MgO)が、5~27.5である、
光学ガラス。
【請求項2】
質量%で、
Ta成分:0~6%、
ZnO成分:0~8%、
BaO成分:0~3%、
Al成分:0~2%、
O成分:0~7%、
TiO成分:0~10%、
Sb成分:0~1%、
である、
請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
Ta成分を実質的に含有しない、
請求項1又は2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
d線に対する屈折率(n)が、1.71~1.90である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
アッベ数(ν)が、24~34である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項6】
異常分散性を示す値(ΔPg,F)が、0.0100以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
部分分散比(Pg,F)が、0.613以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項8】
比重(S)が、3.75以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
ガラス転移温度(T)が、560℃以下である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
前記光学ガラスの原料50gを1340~1400℃の温度で加熱したときの前記原料が融解するまでの時間が、15分未満である、
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
前記光学ガラスの原料50mgを700℃から昇温速度20℃/分で1300℃まで加熱したときの1000~1300℃の間の揮発減量が、0.51mg以下である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
前記光学ガラスの原料50mgを700℃から昇温速度20℃/分で1300℃まで加熱したときの1200~1300℃の間の揮発減量が、0.43mg以下である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
質量%基準で、
MgOに対するBの比(B/MgO)が、0~5である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
質量%基準で、
MgOに対するSiOとBとの和の比((SiO+B)/MgO)が、8~39である、
請求項1~13のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項15】
質量%基準で、
MgOに対するLiOの比(LiO/MgO)が、0.1~3.7である、
請求項1~14のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項16】
質量%基準で、
MgOとBaOとSrOとCaOとの和に対するMgOの比(MgO/(MgO+BaO+SrO+CaO))が、0.35~1.0である、
請求項1~15のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項17】
質量%基準で、
MgOに対するNbとTiOとの和の比((Nb+TiO)/MgO)が、5~60である、
請求項1~16のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項18】
質量%で、
LaとGdとYとLuとの和(La+Gd+Y+Lu)が、0~3%である、
請求項1~17のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項19】
質量%で、
CaOとSrOとBaOとの和から、MgOを引いた値((CaO+SrO+BaO)-MgO)が、1%以下である、
請求項1~18のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた光学素子。
【請求項21】
請求項20に記載の光学素子を含む光学系。
【請求項22】
請求項21に記載の光学系を備える交換レンズ。
【請求項23】
請求項21に記載の光学系を備える光学装置。
【請求項24】
前記光学ガラスの原料を1340~1400℃で加熱する工程を少なくとも含み、かつ、
前記光学ガラスの原料50gを1340~1400℃の温度で加熱したときの前記原料50gが融解するまでの時間が、15分未満である、
請求項1~19のいずれか一項に記載の光学ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、これを用いた光学素子、光学系、交換レンズ、光学装置、及び光学ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ等の光学装置に用いられる光学素子に使用可能な光学ガラスとして、例えば、特許文献1には、SiO-B-Nb系の光学ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-169157号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様は、質量%で、SiO成分:17~35%、B成分:0~13%、ZrO成分:0~10%、Nb成分:34~52%、NaO成分:0~10%、MgO成分:0超~10%、LiO成分:0超~10%、WO成分:0~3%、であり、質量%基準で、MgOに対するSiOの比(SiO/MgO)が、5~27.5である、光学ガラスである。
【0005】
本発明の第二の態様は、上述した光学ガラスを用いた光学素子である。
【0006】
本発明の第三の態様は、上述した光学素子を含む光学系である。
【0007】
本発明の第四の態様は、上述した光学系を備える交換レンズである。
【0008】
本発明の第五の態様は、上述した光学系を備える光学装置である。
【0009】
本発明の第六の態様は、上述した光学ガラスの原料を1340~1400℃で加熱する工程を少なくとも含み、かつ、光学ガラスの原料50gを1340~1400℃の温度で加熱したときの原料50gが融解するまでの時間が、15分未満である、光学ガラスの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の正面図である。
図3図3は、図2の撮像装置の背面図である。
図4図4は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。
図5図5は、本実施例の光学ガラスの部分分散比(Pg,F)とアッベ数(ν)の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0012】
本明細書中において、特に断りがない場合は、各成分の含有量は全て酸化物換算組成のガラス全重量に対する質量%であるものとする。なお、ここでいう酸化物換算組成とは、本実施形態のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が溶融時に全て分解されて酸化物に変化すると仮定し、当該酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0013】
本実施形態に係る光学ガラスは、質量%で、SiO成分:17~35%、B成分:0~13%、ZrO成分:0~10%、Nb成分:34~52%、NaO成分:0~10%、MgO成分:0超~10%、LiO成分:0超~10%、WO成分:0~3%、であり、質量%基準で、MgOに対するSiOの比(SiO/MgO)が、5~27.5である。
【0014】
光学装置等の光学系について設計の自由度を高めるべく、高分散でありながら異常分散性を示す値であるΔPg,Fが小さい光学ガラスが求められているところ、従来の光学ガラスは、例えば、高分散になるほど(アッベ数(ν)が小さくなるほど)、ΔPg,Fが大きくなる傾向にあり、小さなΔPg,Fと高分散の両立が難しいという問題がある。この点、本実施形態に係る光学ガラスは、高分散でありながら小さなΔPg,Fの値を有し、かかる問題を解消することができる。また、本実施形態に係る光学ガラスは、耐失透性にも優れる。
【0015】
また、本実施形態に係る光学ガラスは、溶融時に発生する揮発減量が少ない組成とすることもできる。これにより、生産時に溶解炉への揮発成分の付着が少ないため、優れた生産性を実現できる。また、ガラス転移温度が低いため、プレス成型性やモールド成型性に優れ、低比重な光学ガラスとすることもできる。
【0016】
以下、本実施形態に係る光学ガラスの成分を説明する。
【0017】
SiOは、ガラス骨格を形成し、ΔPg,Fを低下させる成分である。この含有量が少なすぎると、ガラスの耐失透性が不十分となる。また、この含有量が多すぎると、ガラスを高屈折率とすることが困難となり、また、ガラス自体の粘性が増大して成型が困難となる。かかる観点から、SiOの含有量は、17~35%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは18%であり、より好ましくは19%である。また、この含有量の上限は、好ましくは34%であり、より好ましくは33%である。
【0018】
は、ガラス骨格を形成し、ΔPg,Fを低下させる成分である。この含有量が多すぎると、ガラスを高屈折率とすることが困難となり、粘性が低下することによって耐失透性も悪化する。かかる観点から、Bの含有量は、0~13%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは3%であり、更に好ましくは5%である。また、この含有量の上限は、好ましくは12%であり、より好ましくは10%であり、更に好ましくは9%である。
【0019】
ZrOは、ガラスの屈折率を高め、高分散とする成分であるとともに、ΔPg,Fを低下させる効果を有する。この含有量が多すぎると、ガラス原料の溶融性や耐失透性が低下する。かかる観点から、ZrOの含有量は、0~10%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは2%であり、更に好ましくは3%である。また、この含有量の上限は、好ましくは9%であり、より好ましくは8.5%であり、更に好ましくは8%である。
【0020】
Nbは、屈折率を高め、ガラスを高分散化させる成分である。この含有量が少なすぎると、高屈折率、高分散とすることが困難となる。また、この含有量が多すぎると、耐失透性が低下する。かかる観点から、Nbの含有量は、34~52%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは35%であり、より好ましくは36%であり、更に好ましくは37%である。また、この含有量の上限は、好ましくは51%であり、より好ましくは50%であり、更に好ましくは49%である。
【0021】
NaOは、原料の溶融性を高め、ΔPg,Fを低下させる成分である。この含有量が多すぎると、高屈折率とすることが困難となり、耐失透性も低下する。かかる観点から、NaOの含有量は、0~10%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは4%であり、より好ましくは4.5%であり、更に好ましくは5.5%である。また、この含有量の上限は、好ましくは8%であり、より好ましくは7%であり、更に好ましくは6.5%である。
【0022】
MgOは、ΔPg,Fを増大させずにガラスの耐失透性を高める効果を有する成分である。MgOを含まない場合、ガラスの耐失透性が低下し、高屈折率とすることが困難となる。また、この含有量が多すぎると、ガラスを高分散とすることが困難となる。かかる観点から、MgOの含有量は、0超~10%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは1.5%であり、より好ましくは2.5%である。また、この含有量の上限は、好ましくは6%であり、より好ましくは4%である。
【0023】
LiOは、ガラスの屈折率を高め、ガラス原料の溶融性を向上させる成分である。この含有量が多すぎると、耐失透性が低下する。かかる観点から、LiOの含有量は、0超~10%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、更に好ましくは1.5%である。また、この含有量の上限は、好ましくは8%であり、より好ましくは7%であり、更に好ましくは6%である。
【0024】
WOは、ガラスの屈折率を高め、高分散化させるとともに、耐失透性を一層向上させる成分である。かかる観点から、WOの含有量は、0~3%である。そして、この含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.5%である。また、この含有量の上限は、好ましくは2.5%である。
【0025】
そして、ガラス原料の溶融性と耐失透性を向上させ、高分散とする観点から、MgOに対するSiOの質量比(SiO/MgO)は、5~27.5である。そして、この比の下限は、好ましくは6であり、より好ましくは6.5であり、更に好ましくは7である。また、この比の上限は、好ましくは27であり、より好ましくは26であり、更に好ましくは25である。
【0026】
また、本実施形態に係る光学ガラスは、任意成分として、La成分、Ta成分、ZnO成分、BaO成分、Al成分、KO成分、TiO成分、及びSb成分からなる群より選ばれる1種以上を更に含有することが好ましい。
【0027】
さらに、上述した各成分について、より好ましい組み合わせとしては、Ta成分:0~6%、ZnO成分:0~8%、BaO成分:0~3%、Al成分:0~2%、KO成分:0~7%、TiO成分:0~10%、Sb成分:0~1%である。
【0028】
Laは、ガラスの恒数調整に有効な成分であり、耐失透性を向上させる成分である。かかる観点から、好ましい態様として、Laの含有量は0~3%としてもよい。そして、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%である。また、この含有量の上限は、より好ましくは1%である。
【0029】
Taは、ガラスの屈折率を高め、高分散化し、ΔPg,Fを低下させる成分である。耐失透性を一層向上させる観点と、原料コストの観点から、Taの含有量は、好ましくは0~6%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは3%であり、更に好ましくは1.5%であり、より更に好ましくは1%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%である。
【0030】
その一方で、本実施形態に係る光学ガラスは、Ta等の高価な成分の含有率を高くしなくても、高屈折率、高分散であり、小さなΔPg,Fを実現できる。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスについてコストを一層軽減したい場合等には、Taは実質的に含有しないことが好ましい。
【0031】
なお、本明細書中において「実質的に含有しない」とは、当該成分が、不純物として不可避的に含有される濃度を越えて、ガラス組成物の特性に影響する構成成分として含有されないことを意味する。例えば、100ppm程度の含有量であれば、実質的に含有しないとみなす。
【0032】
ZnOは、ガラスの屈折率を高め、耐失透性を一層向上させる成分である。かかる観点から、ZnOの含有量は、好ましくは0~8%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは7%であり、更に好ましくは6%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.3%であり、より更に好ましくは0.4%である。
【0033】
BaOは、ガラスの屈折率を高める成分であるが、その含有量が多すぎるとΔPg,Fを大きく増加させる。かかる観点から、BaOの含有量は、好ましくは0~3%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは1%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%である。
【0034】
Alは、ガラスを高分散化し、化学的耐久性を向上させる成分であるが、その含有量が多すぎるとΔPg,Fを大きく増加させる。かかる観点から、Alの含有量は、好ましくは0~2%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは1.5%であり、更に好ましくは1%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%である。
【0035】
Oは、ガラスの屈折率を高め、ガラス原料の溶融性を向上させる成分であるが、その含有量が多すぎるとΔPg,Fを大きく増加させる。かかる観点から、KOの含有量は、好ましくは0~7%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは6%であり、更に好ましくは5%であり、より更に好ましくは4.5%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%であり、より更に好ましくは1%である。
【0036】
TiOは、ガラスの屈折率を高め、高分散化させる成分であるが、その含有量が多すぎるとΔPg,Fを大きく増加させ、透過率も悪化させる成分である。かかる観点から、TiOの含有量は、好ましくは0~10%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは9%であり、更に好ましくは8%であり、より更に好ましくは7%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.5%であり、より更に好ましくは3%である。
【0037】
Sbは、ガラスを清澄する脱泡剤として機能する成分であるが、その含有量が多すぎると透過率を低下させる。かかる観点から、Sbの含有量は、好ましくは0~1%である。そして、この含有量の上限は、より好ましくは0.5%である。また、この含有量の下限は、より好ましくは0%超であり、更に好ましくは0.03%である。
【0038】
またさらに、本実施形態に係る光学ガラスは、上述した成分に加え、以下の条件を満たすよう更なる任意成分を添加してもよい。
【0039】
ガラス原料の溶融性と耐失透性を一層向上させ、高分散とする観点から、MgOに対するBの質量比(B/MgO)は、好ましくは0~5である。そして、この比の上限は、より好ましくは4.5であり、更に好ましくは4であり、より更に好ましくは3.5である。また、この比の下限は、より好ましくは0超であり、更に好ましくは1.0であり、より更に好ましくは1.5である。
【0040】
ガラス原料の溶融性と耐失透性を一層向上させ、高分散とする観点から、MgOに対するSiOとBとの和の質量比((SiO+B)/MgO)は、好ましくは8~39である。そして、この比の上限は、より好ましくは30であり、更に好ましくは25であり、より更に好ましくは20である。また、この比の下限は、より好ましくは9であり、更に好ましくは10であり、より更に好ましくは11である。
【0041】
耐失透性を一層向上させ、高分散とする観点から、MgOに対するLiOの質量比(LiO/MgO)は、好ましくは0.1~3.7である。そして、この比の上限は、より好ましくは3であり、更に好ましくは2.5であり、より更に好ましくは2.2である。また、この比の下限は、より好ましくは0.2であり、更に好ましくは0.4であり、より更に好ましくは0.8である。
【0042】
耐失透性を向上させ、ΔPg,Fを小さくする観点から、MgOとBaOとSrOとCaOとの和に対するMgOの質量比(MgO/(MgO+BaO+SrO+CaO))は、好ましくは0.35~1.0である。そして、この比の下限は、より好ましくは0.4であり、更に好ましくは0.5であり、より更に好ましくは0.8である。
【0043】
耐失透性を向上させる観点から、MgOに対するNbとTiOとの和の質量比((Nb+TiO)/MgO)は、好ましくは5~60である。そして、この比の上限は、より好ましくは40であり、更に好ましくは35であり、より更に好ましくは30である。また、この比の下限は、より好ましくは6であり、更に好ましくは8であり、より更に好ましくは9である。
【0044】
耐失透性を向上させ、ΔPg,Fを小さくする観点から、LaとGdとYとLuとの和(La+Gd+Y+Lu)は、好ましくは0~3%である。そして、この和の上限は、より好ましくは3%未満であり、更に好ましくは2%であり、より更に好ましくは1%である。
【0045】
ΔPg,Fを小さくし、高分散化する観点から、CaOとSrOとBaOとの和から、MgOを引いた値((CaO+SrO+BaO)-MgO)は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは1%未満であり、更に好ましくは0.6%以下であり、より更に好ましくは0.3%以下である。なお、この値((CaO+SrO+BaO)-MgO)が負の値となる場合も、上述した「1%以下」等に該当する。
【0046】
なお、本実施形態に係る光学ガラスは、その他必要に応じて清澄、着色、消色、光学恒数の調整等の目的で、上述した成分以外のもので、公知の清澄剤や着色剤、脱泡剤、フッ素化合物、リン酸等の成分をガラス組成に適量添加することができる。また、上述した成分に限らず、本実施形態の効果が得られる範囲でその他の成分を添加することもできる。
【0047】
上述した各成分については、不純物の含有量が少ない高純度品を原料として使用することが好ましい。例えば、SiO原料、B原料のうち1又は2以上について高純度品を使用することが好ましい。高純度品とは、当該成分を99.85質量%以上含むものである。高純度品の使用によって、不純物量が少なくなる結果、例えば、波長400nm以下の光の内部透過率をより高くできる傾向がある。
【0048】
次に、本実施形態に係る光学ガラスの物性等について説明する。
【0049】
本実施形態に係る光学ガラスのd線に対する屈折率(n)については、好適例として、1.71を下限、1.90を上限とした、1.71~1.90の範囲であるものが挙げられる。屈折率の上限は、より好ましくは1.89であり、更に好ましくは1.88である。また、屈折率の下限は、より好ましくは1.72であり、更に好ましくは1.73である。
【0050】
また、本実施形態に係る光学ガラスのアッベ数(ν)については、好適例として、24を下限、34を上限とした、24~34の範囲であるものが挙げられる。アッベ数の上限は、より好ましくは33.5であり、更に好ましくは33である。また、アッベ数の下限は、より好ましくは24.5であり、更に好ましくは25である。
【0051】
さらに、本実施形態に係る光学ガラスの異常分散性を示す値(ΔPg,F)は、好ましくは0.0100以下であり、より好ましくは0.0090以下であり、更に好ましくは0.0080以下であり、より更に好ましくは0以下である。
【0052】
さらに、本実施形態に係る光学ガラスとしては、屈折率(n)が、1.71~1.90であり、アッベ数(ν)が、24~34であり、異常分散性を示す値(ΔPg,F)が、0.0100以下である、という各物性を併せ持つことが好ましい。
【0053】
またさらに、本実施形態に係る光学ガラスの部分分散比(Pg,F)は、好ましくは0.613以下であり、より好ましくは0.610以下であり、更に好ましくは0.590以下である。
【0054】
なお、屈折率、アッベ数、異常分散性を示す値、及び部分分散比は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0055】
上述したように、本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率(屈折率(n)が大きいこと)、高分散(アッベ数(ν)が小さいこと)でありながら、異常分散性を示す値(ΔPg,F)を小さくすることができる。またさらに、部分分散比を小さくすることができる。このような光学ガラスを用いると、例えば、光学レンズ等の光学素子を薄型化することができ、色収差や他の収差が良好に補正された光学系を設計することができる。
【0056】
本実施形態に係る光学ガラスの比重(S)は、好ましくは3.75以下であり、より好ましくは3.5以下であり、更に好ましくは3.4以下であり、より更に好ましくは3.35以下である。本実施形態に係る光学ガラスはこのような低比重とすることもできるため、軽量な光学素子等の材料として好適に使用できる。
【0057】
本実施形態に係る光学ガラスのガラス転移温度(T)は、好ましくは560℃以下であり、より好ましくは555℃以下である。本実施形態に係る光学ガラスは低いガラス転移温度とできるため、リヒートプレス時の成型性を一層向上させることができる。また、モールド成型性も向上させることができる。ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定することができる。
【0058】
そして、光学ガラスの原料(ガラス原料)50mgを700℃から昇温速度20℃/分で1300℃まで加熱したときの1000~1300℃の間の揮発減量は、好ましくは0.51mg以下であり、より好ましくは0.46mg以下であり、更に好ましくは0.40mg以下である。また、光学ガラスの原料(ガラス原料)50mgを700℃から昇温速度20℃/分で1300℃まで加熱したときの1200~1300℃の間の揮発減量は、好ましくは0.43mg以下であり、より好ましくは0.38mg以下であり、更に好ましくは0.32mg以下である。このような少量の揮発減量であるガラス原料であれば、ガラス溶融時における溶解炉への揮発成分の付着が抑制されるため、溶融ガラスへの揮発の落下に伴う泡や異物の混入を防止することができ、高品質のガラスを歩留まり良く製造することができる。
【0059】
本実施形態に係る光学ガラスの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、製造条件は、適宜好適な条件を選択することができる。例えば、上述した各原料に対応する酸化物、水酸化物、リン酸化合物(リン酸塩、正リン酸等)、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、及びフッ化物等を目標組成となるように調合し、好ましくは1100~1500℃、より好ましくは1340~1400℃にて溶融し、攪拌することで均一化し、泡切れを行った後、金型に流し成型する製造方法等を採用できる。このようにして得られた光学ガラスは、必要に応じてリヒートプレス等を行って所望の形状に加工し、研磨等を施すことで、所望の光学素子とすることができる。
【0060】
そして、光学ガラスの原料(ガラス原料)50gを1340~1400℃の温度で加熱したときの、当該原料が融解するまでの時間(融解時間)は、15分未満であることが好ましい。1340~1400℃の温度範囲において短時間でガラス原料が融解しない場合、残存するガラス原料がガラス中へ混入する原因となる。また、残存するガラス原料を融解しようとして、更に高温での加熱や長時間の加熱保持を行うと、ガラスの生産効率の低下や透過率悪化の原因となる。かかる観点から、光学ガラスの原料(ガラス原料)の融解時間は15分未満であれば、残存するガラス原料がガラス中へ混入することや、ガラスの生産効率の低下や透過率の低下を効果的に抑制することができる。
【0061】
そして、同様の観点から、本実施形態に係る光学ガラスの製造方法は、光学ガラスの原料を1340~1400℃で加熱する工程を少なくとも含み、かつ、光学ガラスの原料50gを1340~1400℃の温度で加熱したときの原料50gが融解するまでの時間が、15分未満であるが好ましい。このような融解時間の原料を用いて、1340~1400℃で加熱することで、加熱工程の際に残存するガラス原料がガラス中に混入することもなく、高品質な光学ガラスを歩留まり良く製造することができる。
【0062】
本実施形態に係る光学ガラスは、カメラや顕微鏡等の光学装置の備えるレンズ等の光学素子として好適である。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれる。これら光学素子を含む光学系としては、例えば、対物レンズ、集光レンズ、結像レンズ、カメラ用交換レンズ等が挙げられる。そして、これらは、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、多光子顕微鏡等の顕微鏡に用いることができる。なお、光学装置としては、上述した撮像装置や顕微鏡に限られず、ビデオカメラ、テレコンバーター、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、レーザ距離計、プロジェクタ等も含まれる。以下にこれらの一例を説明する。
【0063】
<撮像装置>
図1は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の斜視図である。
【0064】
撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして、当該レンズ鏡筒102のレンズ103を通した光がカメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
【0065】
図2は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える撮像装置の他の例の正面図であり、図3は、図2の撮像装置の背面図である。
【0066】
この撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
【0067】
撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLのシャッタ(不図示)が開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニタLMに表示される。撮影者は、液晶モニタLMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、メモリ(不図示)に記録保存する。
【0068】
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
【0069】
このようなデジタルカメラ等に用いられる光学系には、より高い解像度、軽量化、小型化が求められる。これらを実現するには光学系に高屈折率なガラスを用いることが有効である。特に、高屈折率でありながらより低い比重(S)を有し、プレス成型性やモールド成型性に優れたガラスの需要は多い。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる光学機器の部材として好適である。なお、本実施形態において適用可能な光学機器としては、上述した撮像装置に限らず、例えばプロジェクタ等も挙げられる。光学素子についても、レンズに限らず、例えばプリズム等も挙げられる。
【0070】
<多光子顕微鏡>
図4は、本実施形態に係る光学ガラスを用いた光学素子を備える多光子顕微鏡2の構成の例を示すブロック図である。
【0071】
多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
【0072】
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
【0073】
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
【0074】
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
【0075】
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラー205の方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
【0076】
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
【0077】
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
【0078】
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0079】
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
【0080】
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0081】
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
【0082】
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0083】
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
【実施例0084】
本発明の実施例及び比較例について説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0085】
各表に、各実施例及び各比較例に係る光学ガラスについて、各成分の酸化物基準の質量%基準による化学組成、屈折率(n)、アッベ数(ν)、ガラス転移温度(T)、比重(S)、部分分散比(Pg,F)、異常分散性を示す値(ΔPg,F)、作製したガラスの耐失透性の観察状況、及び作製したガラスの揮発減量について実施結果とともに示したものである。
【0086】
<光学ガラスの作製>
各実施例及び各比較例に係る光学ガラスは、以下の手順で作製した。まず、各表に記載の化学組成(質量%)となるよう、酸化物、炭酸塩、及び硝酸塩等のガラス原料を合計の重量が100gとなるよう秤量した。次に、秤量した原料を混合して内容量100mL程度の白金坩堝に投入し、1340~1400℃の温度で70分程度溶融させて攪拌均質化した。清澄を行った後、金型等に鋳込んで徐冷し、成型することで各サンプルを得た。
【0087】
<光学ガラスの測定>
・屈折率(n)とアッベ数(ν
各サンプルの屈折率(n)及びアッベ数(ν)は、屈折率測定器(株式会社島津デバイス製造製:KPR-2000)を用いて測定及び算出した。アッベ数(ν)は下記式(1)に基づき算出した。屈折率の値は、小数点以下第6位までとした。

ν=(n-1)/(n-n)・・・・(1)
:波長587.562nmの光に対するガラスの屈折率
:波長486.133nmの光に対するガラスの屈折率
:波長656.273nmの光に対するガラスの屈折率
【0088】
・ガラス転移温度(T
各サンプルのガラス転移温度(T)は、昇温速度4℃/分で測定した示差熱分析(DTA)曲線から求めた。
【0089】
・比重(S
各サンプルの比重(S)は、4℃における同体積の純水に対する質量比をアルキメデス法によって測定した。
【0090】
・揮発減量
各サンプルの揮発減量として、700℃から昇温速度20℃/分で1300℃まで昇温したときの、熱重量測定(TG)の1000~1300℃の間の重量変化量と、1200~1300℃の間の重量変化量を求めた。なお、サンプル重量は50mgとし、開口部直径5mm、高さ5mmの円筒形の蓋の無い白金セルを用いて測定した。なお、測定後の白金セルからのガラスの溢れが無いこと、及び白金セル内のガラスに失透が無いことを目視で確認した。
【0091】
・ガラス原料の融解時間
ガラス原料の融解時間は、ガラス原料50gをよく混合した上で白金坩堝に入れ、1340~1400℃の温度で加熱保持したときの、ガラス原料が融解するまでの時間を意味する。本実施例においては、白金坩堝中に目視でガラス原料の溶け残りが確認できなくなったことにより、ガラス原料が融解したと判断した。
【0092】
・耐失透性
各サンプルの耐失透性は、作製したガラスを研磨加工し、失透の有無を目視で確認した。各表の「失透有り」とは、サンプル中に失透部分が観察されたことを意味し、「失透無し」とは、サンプル中に失透部分が観察されなかったことを意味する。
【0093】
・部分分散比(Pg,F
各サンプルの部分分散比(Pg,F)は下記式(2)に基づき算出した。なお、部分分散比の値は、小数点以下第4位までとした。

g,F=(n-n)/(n-n)・・・・(2)
:波長486.133nmの光に対するガラスの屈折率
:波長656.273nmの光に対するガラスの屈折率
:波長435.835nmの光に対するガラスの屈折率
【0094】
・異常分散性を示す値(ΔPg,F
各サンプルの異常分散性を示す値(ΔPg,F)を以下に示す方法に準拠して求めた。
【0095】
(1)基準線の作成
まず、正常部分分散ガラスとして、以下に示すアッベ数(ν)と部分分散比(Pg,F)を有する2つのガラス「F2」、「K7」を基準材として選んだ。そして、各ガラスについて、横軸にアッベ数をとり、縦軸に部分分散比(Pg,F)をとり、2つの基準材に対応する2点を結ぶ直線を基準線とした。

光学ガラスF2の特性:ν=36.33、Pg,F=0.5834
光学ガラスK7の特性:ν=60.47、Pg,F=0.5429
【0096】
(2)ΔPg,Fの算出
次に、図5に示すように、横軸をアッベ数(ν)、縦軸を部分分散比(Pg,F)としたグラフ上に各実施例の光学ガラスに対応する値をプロットし、上述した硝種のアッベ数(ν)に対応する基準線(実線)上の点と、その縦軸の値(Pg,F)との差分を、異常分散性を示す値(ΔPg,F)として算出した。なお、部分分散比(Pg,F)が基準線の上側にある場合、ΔPg,Fは正の値を有し、部分分散比(Pg,F)が基準線の下側にある場合、ΔPg,Fは負の値を有する。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
比較例1~4は、作製したガラス中に失透が確認されたため、光学恒数の測定と揮発減量の測定は実施しなかった。
【0101】
以上、本実施例の光学ガラスは、高い屈折率(n)、小さいアッベ数(ν)、小さいΔPg,F値を有し、耐失透性に優れることが確認された。また、本実施例の光学ガラスは、揮発減量が少ないため、生産効率に優れることが確認された。またさらに、ガラス転移温度(T)が低く、比重も小さいことが確認された。そして、ガラス作製時におけるガラス原料の融解時間も短く、このことは生産効率の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0102】
1…撮像装置、101…カメラボディ、102…レンズ鏡筒、103…レンズ、104…センサチップ、105…ガラス基板、106…マルチチップモジュール、2…多光子顕微鏡、201…パルスレーザ装置、202…パルス分割装置、203…ビーム調整部、204,205,212…ダイクロイックミラー、206…対物レンズ、207,211,213…蛍光検出部、208…集光レンズ、209…ピンホール、210…結像レンズ、S…試料、CAM…撮像装置、WL…撮影レンズ、EF…補助光発光部、LM…液晶モニタ、B1…レリーズボタン、B2…ファンクションボタン
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-03-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
SiO含有率:17%以上35%以下
含有率:0%以上13%以下
ZrO含有率:0%以上10%以下
Nb含有率:34%以上52%以下
LiO含有率:0%より大きく10%以下
NaO含有率:0%以上10%以下
O含有率:0%以上7%以下であり、
部分分散比(P g,F )が、0.613以下である、光学ガラス。