(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056801
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】空調ドレン用管
(51)【国際特許分類】
F24F 13/22 20060101AFI20240416BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240416BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240416BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F24F13/22 227
B32B1/08 Z
B32B5/18
B32B27/30 101
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017439
(22)【出願日】2024-02-07
(62)【分割の表示】P 2022084129の分割
【原出願日】2017-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2016195204
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉山 慶
(72)【発明者】
【氏名】大迫 憲史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】発泡層への水の浸透を容易に防止できる空調ドレン用管を提供すること。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂(B)を含む筒状の発泡層2と、前記発泡層の内面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(A)を含む非発泡内層3と、前記発泡層の外面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(C)を含む非発泡外層3と、を備える空調ドレン用管10’であって、前記発泡層の発泡倍率が3.5倍以上10倍以下であり、前記発泡層の独立気泡率が45%以上であり、前記発泡層と前記非発泡内層との融着強度が1.5MPa以上であり、前記発泡層の平均気泡径が30μm以上400μm以下である、空調ドレン用管。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂(B)を含む筒状の発泡層と、
前記発泡層の内面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(A)を含む非発泡内層と、
前記発泡層の外面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(C)を含む非発泡外層と、を備える空調ドレン用管であって、
前記発泡層の発泡倍率が3.5倍以上10倍以下であり、
前記発泡層の独立気泡率が45%以上であり、
前記発泡層と前記非発泡内層との融着強度が1.5MPa以上であり、
前記発泡層の平均気泡径が30μm以上400μm以下である、空調ドレン用管。
【請求項2】
前記塩化ビニル系樹脂(B)が平均重合度600以上800以下のポリ塩化ビニルである、請求項1に記載の空調ドレン用管。
【請求項3】
前記発泡層がアクリル系高分子化合物を含む、請求項1又は2に記載の空調ドレン用管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ドレン用管に関する。
【背景技術】
【0002】
空調ドレン用管として、断熱性に優れたものが要求されている。このような空調ドレン用管としては、ポリ塩化ビニルを含み、発泡層とその内面に積層された非発泡内層を有する管が好ましく用いられる。
しかしながら、従来の空調ドレン用管では、管継手部分において発泡層の端部が露出しているため、端部から水が浸透しやすいという問題があった。発泡層に水が浸透することにより熱交換率が上がり、断熱効果が低下する。
【0003】
特許文献1では、発泡層の端部に接着剤を塗布して発泡層の端部を被覆することにより、発泡層への水の浸透を防止する方法が提案されている。
特許文献2では、環状弾性体を用いて発泡層への水の浸透を防止する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-68674号公報
【特許文献2】特開平9-184583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、接着剤を均一に塗布する必要があり作業が煩雑である。また、特許文献2の方法では、特殊な部材を使用する必要があり作業が煩雑である。
【0006】
本発明の目的は、発泡層への水の浸透を容易に防止できる空調ドレン用管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、発泡層の発泡倍率、独立気泡率、平均気泡径、融着強度を特定の数値範囲にすることにより、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は以下の態様を有する。
[1]塩化ビニル系樹脂(B)を含む筒状の発泡層と、
前記発泡層の内面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(A)を含む非発泡内層と、
前記発泡層の外面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(C)を含む非発泡外層と、を備える空調ドレン用管であって、
前記発泡層の発泡倍率が3.5倍以上10倍以下であり、
前記発泡層の独立気泡率が45%以上であり、
前記発泡層と前記非発泡内層との融着強度が1.5MPa以上であり、
前記発泡層の平均気泡径が30μm以上400μm以下である、空調ドレン用管。
[2]前記塩化ビニル系樹脂(B)が平均重合度600以上800以下のポリ塩化ビニルである、[1]に記載の空調ドレン用管。
[3]前記発泡層がアクリル系高分子化合物を含む、[1]又は[2]に記載の空調ドレン用管。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発泡層への水の浸透を容易に防止できる空調ドレン用管を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の空調ドレン用管の一例を示す断面図である。
【
図2】融着強度を測定するための装置を示す正面図である。
【
図3】空調ドレン用管を製造するための製造装置の平面図である。
【
図4】空調ドレン用管を製造するための製造装置の正面図である。
【
図5】空調ドレン用管の製造装置に用いる金型と管外面成形用チューブを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪空調ドレン用管≫
本発明の空調ドレン用管は、塩化ビニル系樹脂(B)を含む筒状の発泡層と、前記発泡層の内面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(A)を含む非発泡内層と、前記発泡層の外面に設けられ、塩化ビニル系樹脂(C)を含む非発泡外層と、を備える。
図1は、本発明の空調ドレン用管の一例を示す断面図である。
図1に示すように、空調ドレン用管10’は、筒状の発泡層2と、発泡層2の内面に積層された非発泡内層1と、発泡層2の外面に積層された非発泡外層3と、を備える。
【0011】
空調ドレン用管10’は、施工現場において任意の長さに切断され、ソケットやエルボ、チーズ等の管継手(不図示)の受口に空調ドレン用管10’の端部を挿入することで接続される。空調ドレン用管10’と管継手とは、空調ドレン配管を構成する。そのため、管継手の受口内部において、空調ドレン用管10’の端面(切断面)には非発泡内層1、発泡層2、非発泡外層3がそれぞれ露出している。
空調ドレン用管10’は、発泡層2の独立気泡率が高く、管内部を流下するドレン排水が浸透しにくいため、従来の様に空調ドレン用管の端部に接着剤を均一に塗布したり、管継手の内部に環状弾性体を設けたりしなくともよい。
【0012】
空調ドレン用管10’の外径は、例えば、32mm以上100mm以下が好ましい。空調ドレン用管10’の内径は、例えば、19mm以上80mm以下が好ましい。非発泡内層1、発泡層2、非発泡外層3を合わせた空調ドレン用管10’の厚さは、例えば、6mm以上10mm以下が好ましい。
【0013】
空調ドレン用管10’の縦弾性係数は、400MPa以上1500MPa以下が好ましく、500MPa以上1300MPa以下がより好ましく、600MPa以上1000MPa以下がさらに好ましい。
縦弾性係数を上記数値範囲内とすることにより、空調ドレン用管10’が外力を受けた際、曲げや伸びの変形を抑えつつ、これらの外力に柔軟に追従して空調ドレン用管10’が破壊されるのを防ぐことができる。
縦弾性係数は、縦弾性率、ヤング率とも呼ばれ、JIS K 7161-1:2014に従い、引張試験により得られる引張応力と引張ひずみから求められる。
縦弾性係数は、塩化ビニル系樹脂の重合度や発泡層の発泡倍率、非発泡内層1、発泡層2、非発泡外層3のそれぞれの厚さ等により調節することができる。
【0014】
<非発泡内層>
非発泡内層1は、塩化ビニル系樹脂(A)を含む。塩化ビニル系樹脂(A)としては、塩化ビニル単量体の単独重合体(ポリ塩化ビニル)でもよいし、塩化ビニル単量体と、該塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化アリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の単量体が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
塩化ビニル系樹脂(A)は単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
非発泡内層1は塩化ビニル系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
非発泡内層1において、樹脂の総質量に対する塩化ビニル系樹脂(A)の含有量は、80質量%以上95質量%以下が好ましく、85質量%以上90質量%以下がより好ましい。
【0015】
非発泡内層1の厚さは、1.0mm以上5.0mm以下が好ましく、1.5mm以上3.5mm以下がより好ましい。非発泡内層1の厚さを上記数値範囲内とすることにより、内部を流れるドレン排水が発泡層2へと浸透する恐れが無く、断熱性に優れた空調ドレン用管10’にできる。
一方、発泡層2の独立気泡率が高い場合、発泡層2自身がドレン排水の浸透を防ぐため、非発泡内層1としては厚さを0.6mm以上1.5mm以下としてもよく、空調ドレン用管10’を軽量にできる。また、発泡層2の厚さを厚くできるため、空調ドレン用管10’を断熱性に優れたものにできる。
【0016】
<発泡層>
発泡層2は、塩化ビニル系樹脂(B)を含む樹脂と発泡剤とを含む発泡層用熱可塑性樹脂組成物を発泡させて形成される。塩化ビニル系樹脂(B)としては、塩化ビニル単量体の単独重合体(ポリ塩化ビニル)でもよいし、塩化ビニル単量体と、該塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化アリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の単量体が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
塩化ビニル系樹脂(B)は単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
発泡層2は塩化ビニル系樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
発泡層2において、樹脂の総質量に対する塩化ビニル系樹脂(B)の含有量は、70質量%以上80質量%以下が好ましく、70質量%以上75質量%以下がより好ましい。
【0017】
塩化ビニル系樹脂(B)の質量平均分子量は、37500以上70000以下が好ましく、37500以上44000以下がより好ましい。
質量平均分子量は、ポリエチレングリコールを標準物質とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定値である。
塩化ビニル系樹脂(B)がポリ塩化ビニルの場合、ポリ塩化ビニルの平均重合度は600以上800以下が好ましく、600以上700以下がより好ましい。
なお、平均重合度は、質量平均分子量をクロロエチレンの分子量で除することにより算出できる。
塩化ビニル系樹脂(B)は、塩化ビニル系樹脂(A)と同じでもよいし異なっていてもよい。
【0018】
発泡層2には塩化ビニル系樹脂(B)以外の熱可塑性樹脂として、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステル(総称して、アクリル系高分子化合物という)が含まれていることが好ましい。アクリル系高分子が含まれていることにより、独立気泡率を向上し、さらに気泡径を微細にすることができる。
アクリル系高分子化合物の質量平均分子量は、300万以上600万以下が好ましく、400万以上500万以下がより好ましい。
発泡層2がアクリル系高分子化合物を含む場合、アクリル系高分子化合物の含有量は、塩化ビニル系樹脂(B)100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましく、12質量部以上36質量部以下がより好ましく、18質量部以上24質量部以下がさらに好ましい。
発泡層2の厚さは、4.0mm以上10mm以下が好ましい。
【0019】
発泡剤としては、揮発性発泡剤、分解型発泡剤のいずれを使用してもよい。
揮発性発泡剤としては、例えば脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン等が挙げられる。このうち脂肪族炭化水素としては、例えばプロパン、ブタン(ノルマルブタン、イソブタン)、ペンタン(ノルマルペンタン、イソペンタンなど)等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、例えばシクロペンタン、シクロへキサン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素としては、例えばトリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素等の1種又は2種以上が挙げられる。さらにエーテルとしては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられ、ケトンとしては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
また分解型発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウムなどの無機系発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどの有機系発泡剤が挙げられる。
また、上記炭化水素が熱可塑性樹脂内に内包された熱膨張性カプセルを用いてもよい。
その他、炭酸ガス、窒素、空気等のガスを発泡剤として用いてもよい。
これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
発泡剤の使用量は、塩化ビニル系樹脂(B)100質量部に対して、1質量部以上8質量部以下が好ましく、2質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0020】
発泡層2には、安定剤として鉛化合物(鉛系安定剤)、CaZn化合物(CaZn系安定剤)、錫化合物(錫系安定剤)等公知の安定剤が含まれていてもよい。特に、錫化合物を含む安定剤が含まれていることにより、樹脂の熱安定性を高めやすくなる。錫化合物としては、メルカプト系、ラウレート系、マレート系が好ましい。
これらの化合物の存在、及びその含有量は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES)、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC-MS)等により確認することができる。ICP-AESの場合、EN ISO17353:2004に準拠して測定できる。
発泡層2には、滑剤が含まれていてもよい。滑剤が含まれていることにより、金属面との滑り性や樹脂間の滑り性を保持しやすくなる。滑剤としては、エステル系、ポリエチレン系、酸化ポリエチレン系が好ましい。
【0021】
発泡層2の発泡倍率は、3.5倍以上10倍以下であり、4.5倍以上6.0倍以下が好ましい。
発泡倍率を上記数値範囲内とすることにより、高い断熱性を付与することができる。また、発泡倍率を上記数値範囲内とすることにより、空調ドレン用管10’を軽量にできる。
発泡倍率は、樹脂の種類又は量、発泡剤の種類又は量、製造条件等により調節することができる。
なお、発泡倍率は以下の方法で測定することができる。
[発泡倍率の測定方法]
空調ドレン用管10’から円周方向10mm以上、軸方向50mmを切り出し、非発泡内層1及び非発泡外層3をフライスで切削し、発泡層2だけを長さ約50mm程度の板状に加工したものを試験片とする。なお、試験片は内周方向に均等に4分割した点を中心に4個作成するものとする。
試験片をJIS K 7112:1999に従い、23℃±2℃で水置換式比重測定機で見かけ密度を小数点以下3桁まで求め、下記式(1)により発泡倍率を算出する。
m=γc/γ ・・・(1)
[式(1)中、mは発泡倍率であり、γは発泡層2の見かけ密度(g/cm3)であり、γcは発泡層2の未発泡時の密度(g/cm3)である。]
【0022】
発泡層2の独立気泡率は、45%以上であり、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。独立気泡率の上限値は特に限定されず、実用的には95%以下とされ、100%であっても、90%以下であってもよい。
独立気泡率を上記数値範囲内とすることにより、コストを抑えつつ断熱性を向上させ、発泡層2への水の浸透を防止できる。また、発泡層2の独立気泡率が上記数値範囲内であると、後述する非発泡外層3の厚さを薄くしても外部から水が浸透しにくく、断熱性が低下するおそれが低い。
独立気泡率は、JIS K 7138:2006に準拠して測定される。
独立気泡率は、樹脂の種類又は量、発泡剤の種類又は量、製造条件等により調節することができる。
【0023】
発泡層2と非発泡内層1との融着強度は1.5MPa以上であり、2.0MPa以上が好ましい。
融着強度を上記範囲内とすることにより、発泡層2と非発泡内層1とが剥離することを防止できる。
融着強度は、樹脂の種類又は量、発泡剤の種類又は量、製造条件等により調節することができる。
【0024】
発泡層2の平均気泡径は、30μm以上400μm以下であり、50μm以上400μm以下が好ましく、50μm以上250μm以下がより好ましく、60μm以上200μm以下がさらに好ましい。
平均気泡径を上記数値範囲内とすることにより、断熱性を向上させ、発泡層2への水の浸透を防止できる。気泡が完全な独立気泡(独立気泡率が100%)でなく、気泡壁が一部連通していて水の浸透が可能であっても、平均気泡径を上記数値範囲とし、かつ、独立気泡率が上記数値範囲内であれば、水が発泡層2の内部深くまで浸透することは無く、実用において断熱性能が問題となることは無い。
平均気泡径の測定方法は、後述する。
平均気泡径は、樹脂の種類又は量、発泡剤の種類又は量、製造条件等により調節することができる。
【0025】
<非発泡外層>
非発泡外層3は、塩化ビニル系樹脂(C)を含む。塩化ビニル系樹脂(C)としては、塩化ビニル単量体の単独重合体(ポリ塩化ビニル)でもよいし、塩化ビニル単量体と、該塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
上記塩化ビニル単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、塩化アリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の単量体が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
塩化ビニル系樹脂(C)は単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
非発泡外層3は塩化ビニル系樹脂(C)以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。該熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブテン、塩素化ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種類以上が併用されてもよい。
非発泡外層3において、樹脂の総質量に対する塩化ビニル系樹脂(C)の含有量は、80質量%以上95質量%以下が好ましく、85質量%以上90質量%以下がより好ましい。
塩化ビニル系樹脂(C)は、塩化ビニル系樹脂(A)と同じでもよいし異なっていてもよい。
塩化ビニル系樹脂(C)は、塩化ビニル系樹脂(B)と同じでもよいし異なっていてもよい。
非発泡外層3の厚さは、0.6mm以上1.5mm以下が好ましく、1.0mm以上1.3mm以下がより好ましい。非発泡外層3の厚さを上記下限値以上とすることにより、外部からの衝撃に強い空調ドレン用管10’にできる。非発泡外層3の厚さを上記上限値以下とすることにより、空調ドレン用管10’を軽量にできる。また、発泡層2の厚さを厚くできるため、空調ドレン用管10’を断熱性に優れたものにできる。
外部からの衝撃により強くする場合には、非発泡外層3の厚さは、1.0mm以上5.0mm以下が好ましく、1.5mm以上3.5mm以下がより好ましい。
非発泡外層3には顔料が含まれていてもよい。顔料が含まれていることにより、外観を良好にできる。
【0026】
≪空調ドレン用管の製造方法≫
図3及び
図4は、三層構造の空調ドレン用管10’を製造するための製造装置20の全体構成図である。製造装置20は、内外層押出機11、発泡層押出機12、金型13、冷却水槽15、引取機16、及び切断機17を備える。内外層押出機11、及び発泡層押出機12には金型13が接続されており、金型13には冷却水槽15が接続されている。冷却水槽15に引取機16が接続されており、引取機16には切断機17が接続されている。さらに、
図3及び
図4に示すように、ガスボンベ18と定量ポンプ19が発泡層押出機12に接続されていてもよい。
ガスボンベ18と定量ポンプ19は、発泡層押出機12のベント孔から、気体の発泡剤を供給するものである。
内外層押出機11は、非発泡内層1及び非発泡外層3を形成する非発泡層用熱可塑性樹脂組成物を溶融混練し、金型13に押し出すものである。
発泡層押出機12は、発泡層2を形成する発泡層用熱可塑性樹脂組成物を溶融混練し、金型13に押し出すものである。
金型13は、内外層押出機11から注入された非発泡層用熱可塑性樹脂組成物と、発泡層押出機12から注入された発泡層用熱可塑性樹脂組成物から、三層構造の未硬化の空調ドレン用管100’を成形するものである。
冷却水槽15には、未硬化の空調ドレン用管100’を所定寸法に成形するための管外面成形用チューブ14が取り付けられており、金型13で成形された未硬化の空調ドレン用管100’の外面を管外面成形用チューブ14に接触させた状態で冷却するものである。
引取機16は、冷却水槽15で冷却された空調ドレン用管10’を受け取るものである。
切断機17は、引取機16から送られてきた空調ドレン用管10’を所定の長さに切断するものである。
【0027】
まず、非発泡層用熱可塑性樹脂組成物を内外層押出機11に供給し、溶融混練する。これとは別に、発泡層用熱可塑性樹脂組成物を発泡層押出機12に供給し、溶融混練する。
このときガスを発泡剤として使用する場合には、発泡層用熱可塑性樹脂組成物を溶融混練しているところに、ガスボンベ18内のガスを定量ポンプ19のポンプ動作によりベント孔から供給する。固体又は液体の発泡剤を使用する場合には、発泡層用熱可塑性樹脂組成物に発泡剤をあらかじめ配合しておいてもよい。
【0028】
そして、
図5に示すように、内外層押出機11により溶融混練された非発泡層用熱可塑性樹脂組成物21と、発泡層押出機12により溶融混練された発泡層用熱可塑性樹脂組成物22を、金型13に注入し、金型13内部で合流させて、三層構造の未硬化の空調ドレン用管100’を成形する。未硬化の空調ドレン用管100’は、非発泡層用熱可塑性樹脂組成物21から形成される非発泡熱可塑性樹脂層31と、非発泡内層1及び非発泡外層3の間の、発泡層用熱可塑性樹脂組成物22から形成される発泡熱可塑性樹脂層32とから構成される。
【0029】
さらに、三層構造の未硬化の空調ドレン用管100’を金型13より吐出すると、発泡熱可塑性樹脂層32の樹脂が発泡する。未硬化の空調ドレン用管100’を管外面成形用チューブ14内に挿入し、未硬化の空調ドレン用管100’は所定寸法に型成形されながら冷却水槽15内で冷却されて空調ドレン用管10’となる。さらに、冷却成形された空調ドレン用管10’を引取機16に引き渡して切断機17に送り、切断機17において所定の長さに切断する。
【0030】
金型13で成形するときの温度は、140℃以上200℃以下が好ましく、160℃以上190℃以下がより好ましい。
金型で成形するときの時間は、10分以上30分以下が好ましく、10分以上20分以下がより好ましい。
【実施例0031】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
以下に表中の成分を説明する。
なお、表中の各成分の含有量は、発泡層のポリ塩化ビニルを100質量部としたときの質量部を表す。
<塩化ビニル系樹脂(B)>
・A-1:ポリ塩化ビニル(重合度640、徳山積水工業社製、商品名「TS-640M」)。
・A-2:ポリ塩化ビニル(重合度800、徳山積水工業社製、商品名「TS-800E」)。
・A-3:ポリ塩化ビニル(重合度500、大洋塩ビ社製、商品名「TH-500」)。
・A-4:ポリ塩化ビニル(重合度1000、徳山積水工業社製、商品名「TS-1000R」)。
<アクリル系高分子化合物>
・B-1:アクリル系高分子化合物(質量平均分子量300万、三菱レイヨン社製、商品名「P-530A」)。
・B-2:アクリル系高分子化合物(質量平均分子量:400万、三菱レイヨン社製、商品名「P-531A」)。
・B-3:アクリル系高分子化合物(質量平均分子量:500万、カネカ社製、商品名「PA-40」)。
・B-4:アクリル系高分子化合物(質量平均分子量:100万、カネカ社製、商品名「PA-20」)。
・B-5:アクリル系高分子化合物(質量平均分子量:800万、カネカ社製、商品名「PA-60」)。
<発泡剤>
・C-1:重曹(永和化成工業社製、商品名「セルボンSC-855」)。
・C-2:熱膨張性カプセル(徳山積水工業社製、商品名「アドバンセル EM501」)。
・C-3:アゾジカルボンアミド(永和化成工業社製、商品名「ビニホールAC」)。
<塩化ビニル系樹脂(A)、及び(C)>
・ポリ塩化ビニル(重合度1000、徳山積水工業社製、商品名「TS-1000R」)。
【0033】
(実施例1)
塩化ビニル系樹脂(B)A-1を100質量部と、錫系安定剤(大協化成工業社製、商品名「STX-80」)を2質量部と、アクリル系高分子化合物B-1を24質量部と、重曹C-1を2.2質量部とを混合して発泡層用熱可塑性樹脂組成物を調製した。
内・外層用の非発泡層用熱可塑性樹脂組成物として塩化ビニル系樹脂(A)、(C)100質量部に、錫系安定剤(大協化成工業社製、商品名「STX-80」)を2質量部混合した樹脂組成物を使用した。
これらの組成物を、
図3~5に示す内外層押出機11、発泡層押出機12、金型13、管外面成形用チューブ14が取り付けられた冷却水槽15、引取機16、切断機17とから構成されている製造装置を用いて押出成形を行った。
具体的には、非発泡層用熱可塑性樹脂組成物を190℃で内外層押出機11にて混練し、押出量40kg/hで金型13に注入した。また、発泡層用熱可塑性樹脂組成物を発泡層押出機12にて190℃で混練し、60kg/hにて金型13に注入した。金型13として、製品外径89mm、内径77mmの金型を用いた。金型13から吐出した組成物を、管外面成形用チューブ14内に挿入し、冷却水槽15内で冷却し、引取機16で引き取った後、切断機17で所定の長さに切断して三層構造の空調ドレン用管を得た。
【0034】
(実施例2~8、比較例1~6)
表1及び2に記載の成分に変更した以外は、実施例1と同様にして三層構造の空調ドレン用管を得た。
【0035】
得られた各例の空調ドレン用管について、独立気泡率、平均気泡径、偏平試験、融着強度、発泡倍率、縦弾性係数、満水試験をそれぞれ以下の手順で測定した。
【0036】
[独立気泡率の測定]
空調ドレン用管を約30mmの長さに切断し、周長約20mmとなるように周方向に切断し、NTカッターにて非発泡内層と非発泡外層を除去したものを試験片とした。
JIS K 7138:2006に従い、23℃±2℃で空気比較式比重計で体積を測定し、JIS K 7112:1999に従い、23℃±2℃で水置換式比重計で求めた体積を測定し、下記式(2)により独立気泡率を測定した。
Cc=(Va/Vaq)×100 ・・・(2)
[式(2)中、Ccは独立気泡率(%)であり、Vaは空気比較式体積(cm3)であり、Vaqは水置換法体積(cm3)である。]
得られた結果を表1、2に示す。
【0037】
[平均気泡径の測定]
JIS K 6400-1に従い、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した空調ドレン用管の円周方向断面画像上に1800μm直線を引き、直線上の気泡数で割った値を気泡径とし1画像につき8本の直線、8データの平均値を平均気泡径とした。
【0038】
[偏平試験]
空調ドレン用管を長さ50mmに切断し、これを試験片とした。
試験片を23℃±2℃で1時間以上状態を調節した後、偏平試験機の2枚の圧縮板間にはさみ、管軸に直角の方向に偏平荷重が784N(80kgf)以上になるまで10mm/minの圧縮速度で圧縮し、試験片の割れ、ヒビの有無を確認し、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
○:割れ、ヒビがない。
×:割れ、ヒビがある。
得られた結果を表1、2に示す。
【0039】
[融着強度の測定]
空調ドレン用管を管軸に沿って20mmの管状に切り取ったものを試験片とした。
温度が23℃±2℃、湿度が常湿(45~85%)の条件下、試験片43を
図2に示す万能試験機40の抜き打ち治具41にセットして圧縮板間42にはさみ、管軸に直角の方向に毎分10mm/min±2mm/minの速さで圧縮し、非発泡内層と発泡層との融着面が剥離する際の最大荷重を求め、下記式(3)及び(4)で融着強度を算出した。
F=W/S ・・・(3)
S=3.14×d×L・・・(4)
[式(3)及び(4)中、Fは融着強度(MPa)であり、Wは最大荷重(N)であり、Sは融着面積(cm
2)であり、dは非発泡内層平均外径(cm)であり、Lは試験片長さ(cm)である。]
得られた結果を表1、2に示す。
【0040】
[発泡倍率の測定]
空調ドレン用管から円周方向10mm以上、軸方向50mmを切り出し、非発泡内層及び非発泡外層をフライスで切削し、発泡層だけを長さ約50mm程度の板状に加工したものを試験片とした。なお、試験片は内周方向に均等に4分割した点を中心に4個作成した。
試験片をJIS K 7112:1999に従い、23℃±2℃で水置換式比重測定機で見かけ密度を小数点以下3桁まで求め、下記式(1)により発泡倍率を算出した。
m=γc/γ ・・・(1)
[式(1)中、mは発泡倍率であり、γは発泡層の見かけ密度(g/cm3)であり、γcは発泡層の未発泡時の密度(g/cm3)である。]
得られた結果の平均値を表1、2に示す。
【0041】
[縦弾性係数]
JIS K 7161-1:2014に従い、温度15℃の条件下において縦弾性係数を測定した。得られた結果を表1、2に示す。
【0042】
[満水試験]
図6に満水試験装置の概略図を示す。
空調ドレン用管10’を長さL1(L1=2000mm)に切断し、これを試験片とした。
試験片の下端に他方が閉塞された管継手50を接続し、試験片の上端にも管継手51を接続し、管継手51の上部に水位を確認するための目盛がついた長さL2(L2=2000mm)のシリンダー60を接続し、満水試験装置70とする。なお、試験片の空調ドレン用管10’の両端の端面(切断面)には接着剤を塗布しなかった。
この満水試験装置70を、管継手50を下側にし、試験片の管軸が垂直になるように固定した後、試験片の下端の端面からの水位高さがL1+L2(L1+L2=4000mm)となるよう水を加え、試験片の下端の端面にL1+L2(L1+L2=4000mm)の水頭圧をかけた。
この状態で120分間保持した後の水位の低下量(水位の減少高さ)を測定し、以下の評価基準で評価した。
<評価基準>
○:水位の減少高さが0mm以上10mm未満。
△:水位の減少高さが10mm以上20mm未満。
×:水位の減少高さが20mm以上。
得られた結果を表1、2に示す。
【0043】
【0044】
【0045】
表1、2に示すように、実施例1~8の空調ドレン用管は独立気泡率が45%以上であり、平均気泡径も小さいため、水を浸透しにくいものであった。
比較例1の空調ドレン用管は、独立気泡率が45%以上であるが、平均気泡径が500μmと大きいものであるため、水を浸透しやすいものであった。
比較例2~5の空調ドレン用管は、独立気泡率が45%未満であり、連続気泡率が高く、水を浸透しやすいものであった。
比較例6の空調ドレン用管は、発泡層のアクリル系高分子化合物の含有量が多いため、外力に柔軟に追従できず、偏平試験でひびが生じた。
以上の結果から、本発明を適用した空調ドレン用管は、発泡層への水の浸透を容易に防止できることが判った。