(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056803
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】癌の治療のためのクローディン18.2に対する抗体を含む治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240416BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240416BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240416BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240416BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240416BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240416BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00 ZNA
A61K45/00
A61P35/04
A61P1/00
A61K39/395 D
C12N15/12
C07K16/30
G01N33/574 A
G01N33/574 E
G01N33/574 B
G01N33/53 Y
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017596
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2022109564の分割
【原出願日】2014-03-17
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2013/000817
(32)【優先日】2013-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515123258
【氏名又は名称】トロン- トランスラショナル オンコロジー アン デア ウニヴェリジテーツメディツィン デア ヨハネス グーテンベルク-ウニヴェルシテート マインツ ゲマインニューツィゲ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】TRON- Translationale Onkologie an der Universitaetsmedizin der Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz gemeinnuetzige GmbH
【住所又は居所原語表記】Freiligrathstr. 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】テューレヒ, エズレム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患、特に胃食道癌などの癌疾患を有効に治療および/または予防するための治療法を提供する。
【解決手段】CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を少なくとも40μg/mlの血清レベルを提供するように投与することを含む方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法であって、前記抗体を少なくとも40μg/mlの血清レベルを提供するように投与する方法。
【請求項2】
提供される前記血清レベルが40μg/mlから700μg/mlの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血清レベルが少なくとも7日間提供される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、少なくとも300mg/m2の抗体の用量を投与することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法であって、前記抗体を少なくとも300mg/m2の用量で投与する方法。
【請求項6】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法であって、前記患者の癌細胞の少なくとも50%がCLDN18.2陽性であり、および/または前記患者の癌細胞の少なくとも40%がCLDN18.2の表面発現に関して陽性である、癌疾患を治療または予防する方法。
【請求項7】
前記癌疾患の治療が安定な疾患の達成をもたらす、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
癌患者において安定な疾患を達成する方法であって、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項9】
安定な疾患が少なくとも2ヶ月間達成される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体を単回投与または複数回投与で投与する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法であって、前記抗体を複数回投与で投与する方法。
【請求項12】
前記抗体を少なくとも3回投与で投与する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体の前記投与を少なくとも7日間の時間間隔をおいて行う、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
制吐薬、鎮痙薬、副交感神経遮断薬および胃粘膜を保護する作用物質から成る群より選択される1つまたはそれ以上を投与することをさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体、ならびに制吐薬、鎮痙薬、副交感神経遮断薬および胃粘膜を保護する作用物質から成る群より選択される1つまたはそれ以上を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法。
【請求項16】
前記方法が、アプレピタント(例えばEmend)などのニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニスト、オンダンセトロン(例えばZofran)、グラニセトロン(例えばKytril、Sancuso)もしくはパロノセトロン(例えばAloxi)などの5-HT3受容体アンタゴニストまたはこれらの2もしくはそれ以上の組合せ、ブチルスコポラミン(例えばBuscopan)などの鎮痙薬、およびパントプラゾール(例えばPantozol)などのプロトンポンプ阻害剤を前記患者に投与することを含む、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体をi.v.注入によって投与する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記i.v.注入が1から4時間にわたる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与することを含む癌疾患の治療または予防に対する癌患者の応答性を判定する方法であって、前記患者において1またはそれ以上のマーカーの血中レベルを測定する工程を含み、前記1またはそれ以上のマーカーが、CA 125、CA 15-3、CA 19-9、CEA、IL-2、IL-15、IL-6、IFNγおよびTNFαから成る群より選択される、癌患者の応答性を判定する方法。
【請求項20】
前記レベルを血液、血漿または血清中で測定する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記1またはそれ以上のマーカーが、CA 125、CA 15-3、CA 19-9、CEA、IL-2、IL-15、IFNγおよびTNFαから成る群より選択され、前記抗体の投与後の前記マーカーの少なくとも1つのレベルの低下が、前記患者が癌疾患の治療または予防に対して応答性であることを示す、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記マーカーがIL-6であり、前記抗体の投与後の前記マーカーのレベルの上昇が、前記患者が癌疾患の治療または予防に対して応答性であることを示す、請求項19または20に記載の方法。
【請求項23】
癌患者が、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与することを含む癌疾患の治療または予防に適しているかどうかを判定する方法であって、CLDN18.2陽性癌細胞のパーセンテージを測定する工程を含む方法。
【請求項24】
少なくとも50%のCLDN18.2陽性癌細胞のレベルが、前記患者が癌疾患の治療または予防に適していることを示す、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
CLDN18.2の表面発現に関して陽性である少なくとも50%の癌細胞のレベルが、前記患者が癌疾患の治療または予防に適していることを示す、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体が、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシスの誘導および増殖の阻害の1つまたはそれ以上による細胞死を媒介する、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、(i)アクセッション番号DSM ACC2737、DSM ACC2738、DSM ACC2739、DSM ACC2740、DSM ACC2741、DSM ACC2742、DSM ACC2743、DSM ACC2745、DSM ACC2746、DSM ACC2747、DSM ACC2748、DSM ACC2808、DSM ACC2809またはDSM ACC2810の下で寄託されたクローンによって産生されるおよび/または前記クローンから入手可能な抗体、(ii)(i)に含まれる前記抗体のキメラ化またはヒト化形態である抗体、(iii)(i)に含まれる前記抗体の特異性を有する抗体、ならびに(iv)(i)に含まれる前記抗体の抗原結合部分または抗原結合部位、特に可変領域を含有し、および好ましくは(i)に含まれる前記抗体の特異性を有する抗体から成る群より選択される抗体である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記癌が胃食道癌である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記癌が、転移性、抗療性または再発性の進行した胃食道癌である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記患者が、ピリミジン類似体、白金化合物、エピルビシン、ドセタキセルおよび抗腫瘍薬治療のための解毒剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤による事前治療を受けたことがある、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が、0から1の間のECOGパフォーマンスステータスおよび/または70から100%の間のカルノフスキー指数を有する、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記患者がヒト患者である、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
CLDN18.2が配列番号:1に従うアミノ酸配列を有する、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
胃および食道(胃食道:GE)の癌は、いまだ満たされていない最大の医学的必要性を有する悪性疾患の1つである。胃癌は世界全体で癌による死亡の原因の第2位である。食道癌の発生率はこの数十年間増加しており、組織学的なタイプおよび原発腫瘍部位の変化と合致する。食道の腺癌は、現在米国および西ヨーロッパでは扁平上皮癌よりも高頻度であり、大部分の腫瘍が遠位食道に位置する。GE癌についての全体的な5年生存率は、実質的な副作用に結び付く確立された標準治療が積極的に実施されているにもかかわらず、20~25%である。
【0002】
患者の大部分は局所的に進行した疾患または転移性疾患を示し、初回化学療法を受けなければならない。治療レジメンは、ほとんどが第三の化合物(例えばタキサンまたはアントラサイクリン)と組み合わせた白金またはフルオロピリミジン誘導体の骨格に基づく。それでもなお、進行のない平均生存期間は5~7ヶ月、全体的な平均生存期間は9~11ヶ月というのが期待できる最良値である。
【0003】
これらの癌のための様々な新世代併用化学療法レジメンから大きな利益が得られないことが、研究を標的薬の使用へと促してきた。最近、Her2/neu陽性胃食道癌に関してトラスツズマブが承認された。しかし、患者の約20%しか標的を発現せず、この治療に適格ではないので、医学的必要性は今もなお高い。
【背景技術】
【0004】
密着結合分子クローディン18のスプライス変異体2(クローディン18.2(CLDN18.2)は、密着結合タンパク質のクローディンファミリーの成員である。CLDN18.2は、膜を貫通する4つのドメインと2つの小さな細胞外ループを含む27.8kDaの膜貫通タンパク質である。
【0005】
正常組織では、胃を除いて、RT-PCRによるCLDN18.2の検出可能な発現は存在しない。CLDN18.2特異的抗体を用いた免疫組織化学は、胃が唯一の陽性組織であることを明らかにする。
【0006】
CLDN18.2は、短命の分化した胃上皮細胞上で排他的に発現される高度に選択的な胃系統抗原である。CLDN18.2は悪性形質転換の過程で維持され、したがってしばしばヒト胃癌細胞の表面で提示される。さらに、この汎腫瘍抗原は、食道腺癌、膵腺癌および肺腺癌において有意のレベルで異所性に活性化される。CLDN18.2タンパク質はまた、胃腺癌のリンパ節転移および、特に卵巣への、遠隔転移(いわゆるクルーケンベルク腫瘍)においても局在する。
【0007】
CLDN18.2に対するキメラIgG1抗体、IMAB362はGanymed Pharmaceuticals AG.によって開発された。IMAB362は高い親和性および特異性でCLDN18.2の1番目の細胞外ドメイン(ECD1)を認識する。IMAB362は、クローディン18の密接に関連するスプライス変異体1(CLDN18.1)を含むいかなる他のクローディンファミリー成員にも結合しない。IMAB362は正確な腫瘍細胞特異性を示し、4つの独立した極めて強力な作用機構を束ねる。標的結合後、IMAB362は、ADCC、CDCおよび腫瘍細胞表面での標的の架橋結合によって誘導されるアポトーシスの誘導による細胞死ならびに増殖の直接阻害を媒介する。したがって、IMAB362は、インビトロおよびインビボでヒト胃癌細胞株を含むCLDN18.2陽性細胞を効率的に溶解する。IMAB362で処置した場合、CLDN18.2陽性癌細胞株を担持するマウスは生存上の恩恵を受け、マウスの40%までが腫瘍の後退を示す。
【0008】
IMAB362の毒性およびPK/TKプロフィールはマウスおよびカニクイザルにおいて十分に検討されており、これには用量設定試験、カニクイザルにおける28日間反復投与毒性試験およびマウスにおける3ヶ月間反復投与毒性試験が含まれる。マウス(最長処置期間は週1回投与で3ヶ月間、最高用量レベルは400mg/kg)およびカニクイザル(週1回適用で最大5週間、最大100mg/kgまで)の両方で、IMAB362 i.v.の反復投与は良好に耐容される。全身または局所毒性の徴候は誘導されない。特に、胃毒性はいずれの毒性試験においても認められていない。IMAB362は免疫の活性化およびサイトカイン放出を誘導しない。雄性または雌性生殖器官への有害作用は記録されなかった。IMAB362は、標的を欠く組織には結合しない。マウスにおける生体内分布は、胃毒性が存在しない理由が、IMAB362エピトープのアクセス可能性を大きく低下させると考えられる、健常胃上皮の管腔部位における密着結合のコンパートメント化である可能性が高いことを指示する。このコンパートメント化は悪性形質転換の際に失われ、このエピトープをIMAB362によってドラッガブルなものになす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書で本発明者らは、胃食道癌を有するヒト患者へのIMAB362などの抗CLDN18.2抗体の投与が、少なくとも1000mg/m2の用量まで安全であり、良好に耐容されることを明らかにするデータを提示する。さらに、本明細書で提示するデータは、前記抗体がこれらの患者において抗腫瘍細胞作用を及ぼすために完全に機能性であることおよび抗腫瘍活性についての証拠が得られたことを明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は一般に、癌疾患、例えば胃癌、食道癌、膵癌、肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌、結腸癌、肝癌、頭頸部癌および胆嚢の癌ならびにこれらの転移、特に胃癌転移、例えばクルーケンベルク腫瘍、腹膜転移およびリンパ節転移を含む、CLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患を有効に治療および/または予防するための治療法を提供する。特に好ましい癌疾患は、胃、食道、膵管、胆管、肺および卵巣の腺癌である。
【0011】
1番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで前記抗体は、少なくとも40μg/mlの血清レベルを提供するように投与する。異なる実施形態では、前記抗体を少なくとも50μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも400μg/mlまたは少なくとも500μg/mlの血清レベルを提供するように投与する。異なる実施形態では、前記抗体を800μg/ml、700μg/ml、600μg/ml、550μg/mlまたは500μg/ml以下の血清レベルを提供するように投与する。1つの実施形態では、提供される血清レベルは、40μg/mlから700μg/mlの間、好ましくは40μg/mlから600μg/mlの間、好ましくは50μg/mlから500μg/mlの間、例えば150μg/mlから500μg/mlの間または300μg/mlから500μg/mlの間である。本明細書で使用される場合、「血清レベル」という用語により、血清中の当該物質の濃度が意味される。1つの実施形態では、血清レベルは少なくとも7日間または少なくとも14日間提供される。1つの実施形態では、前記方法は、少なくとも300mg/m2、例えば少なくとも600mg/m2、好ましくは1500mg/m2まで、1200mg/m2までまたは1000mg/m2までの抗体の用量を投与することを含む。
【0012】
2番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで前記抗体は、少なくとも300mg/m2、例えば少なくとも600mg/m2、好ましくは1500mg/m2まで、1200mg/m2までまたは1000mg/m2までの用量で投与する。
【0013】
3番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで患者の癌細胞の少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%または90%はCLDN18.2陽性であり、および/または患者の癌細胞の少なくとも40%、好ましくは50%または60%はCLDN18.2の表面発現に関して陽性である。この態様では、本発明はまた、癌疾患を治療または予防する方法であって、a.少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%または90%のCLDN18.2陽性癌細胞を示す、および/またはCLDN18.2の表面発現に関して陽性である少なくとも40%、好ましくは50%または60%の癌細胞を示す患者を同定すること、ならびにb.CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を前記患者に投与すること、を含む方法を提供する。1つの実施形態では、患者の癌細胞の少なくとも95%または少なくとも98%はCLDN18.2陽性である。1つの実施形態では、患者の癌細胞の少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%はCLDN18.2の表面発現に関して陽性である。
【0014】
本明細書で述べる態様のいずれかの方法の1つの実施形態では、癌疾患の治療は安定な疾患の達成をもたらす。1つの実施形態では、安定な疾患は、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間または少なくとも6ヶ月間達成される。
【0015】
4番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌患者において安定な疾患を達成する方法を提供する。1つの実施形態では、安定な疾患は、少なくとも2ヶ月間、少なくとも3ヶ月間または少なくとも6ヶ月間達成される。
【0016】
本明細書で述べる態様のいずれかの方法の1つの実施形態では、抗体を単回投与または複数回投与で投与する。
【0017】
5番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法を提供し、ここで前記抗体は複数回投与で投与する。
【0018】
本発明によれば、抗体を複数回投与で投与する場合、抗体は、好ましくは少なくとも3回投与、少なくとも4回投与、少なくとも5回投与、少なくとも6回投与、少なくとも7回投与、少なくとも8回投与、少なくとも9回投与または少なくとも10回投与、好ましくは30、25、20、15または10回投与で投与する。抗体の投与は、好ましくは少なくとも7日間、少なくとも10日間、少なくとも14日間または少なくとも20日間の時間間隔をおいて行う。抗体の投与は、好ましくは7から30日間、10から20日間、好ましくは約14日間の時間間隔をおいて行う。
【0019】
3番目、4番目または5番目の態様の方法の1つの実施形態では、抗体を少なくとも40μg/mlの血清レベルを提供するように投与する。異なる実施形態では、抗体を少なくとも50μg/ml、少なくとも150μg/ml、少なくとも300μg/ml、少なくとも400μg/mlまたは少なくとも500μg/mlの血清レベルを提供するように投与する。異なる実施形態では、抗体を800μg/ml、700μg/ml、600μg/ml、550μg/mlまたは500μg/ml以下の血清レベルを提供するように投与する。1つの実施形態では、提供される血清レベルは、40μg/mlから700μg/mlの間、好ましくは40μg/mlから600μg/mlの間、好ましくは50μg/mlから500μg/mlの間、例えば150μg/mlから500μg/mlの間または300μg/mlから500μg/mlの間である。1つの実施形態では、血清レベルは少なくとも7日間または少なくとも14日間提供される。1つの実施形態では、前記方法は、少なくとも300mg/m2、例えば少なくとも600mg/m2、好ましくは1500mg/m2まで、1200mg/m2までまたは1000mg/m2までの抗体の用量を投与することを含む。
【0020】
前記態様のいずれかの方法の1つの実施形態では、前記方法は、制吐薬、鎮痙薬、副交感神経遮断薬および胃粘膜を保護する作用物質から成る群より選択される1つまたはそれ以上を投与することをさらに含む。
【0021】
6番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体ならびに制吐薬、鎮痙薬、副交感神経遮断薬および胃粘膜を保護する作用物質から成る群より選択される1つまたはそれ以上を患者に投与することを含む、癌疾患を治療または予防する方法を提供する。
【0022】
本発明の方法が、制吐薬、鎮痙薬、副交感神経遮断薬および胃粘膜を保護する作用物質から成る群より選択される1つまたはそれ以上を投与することを含む場合、種々の実施形態における前記方法は、(i)制吐薬と鎮痙薬、(ii)鎮痙薬と胃粘膜を保護する作用物質、(iii)制吐薬と胃粘膜を保護する作用物質または(iv)制吐薬、鎮痙薬および胃粘膜を保護する作用物質、を投与することを含む。
【0023】
1つの実施形態では、制吐薬は、抗体の投与の前に嘔吐予防薬として投与される。1つの実施形態では、制吐薬は、抗体の投与と同時にまたは抗体の投与後に制吐処置として投与される。1つの実施形態では、制吐薬としては、5-HT3受容体アンタゴニストおよび/またはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストが挙げられる。好ましくは、NK1受容体アンタゴニストにはアプレピタント(例えばEmend)が挙げられ、5-HT3受容体アンタゴニストにはオンダンセトロン(例えばZofran)、グラニセトロン(例えばKytril、Sancuso)もしくはパロノセトロン(例えばAloxi)またはこれらの2もしくはそれ以上の組合せが挙げられる。
【0024】
1つの実施形態では、鎮痙薬としてはブチルスコポラミン(Buscopan)が挙げられる。
【0025】
1つの実施形態では、胃粘膜を保護する作用物質としては、胃酸の産生を低減する作用物質が挙げられる。1つの実施形態では、胃粘膜を保護する作用物質としては、プロトンポンプ阻害剤、ミソプロストールおよびオメプラゾールから成る群より選択される作用物質が挙げられる。1つの実施形態では、胃粘膜を保護する作用物質としては、プロトンポンプ阻害剤とミソプロストールの組合せが挙げられる。1つの実施形態では、プロトンポンプ阻害剤としてはパントプラゾール(例えばPantozol)が挙げられる。
【0026】
1つの実施形態では、本発明の方法は、アプレピタント(例えばEmend)などのNK1受容体アンタゴニスト、オンダンセトロン(例えばZofran)、グラニセトロン(例えばKytril、Sancuso)もしくはパロノセトロン(例えばAloxi)またはこれらの2またはそれ以上の組合せなどの5-HT3受容体アンタゴニスト、ブチルスコポラミン(Buscopan)などの鎮痙薬、およびパントプラゾール(例えばPantozol)などのプロトンポンプ阻害剤を患者に投与することを含む。
【0027】
前記態様のいずれかの方法の1つの実施形態では、抗体はi.v.注入によって投与される。1つの実施形態では、i.v.注入は1から4時間にわたり、好ましくは約2時間にわたる。
【0028】
6番目の態様では、本発明は、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与することを含む癌疾患の治療または予防に対する癌患者の応答性を判定する方法を提供し、前記方法は、患者において1またはそれ以上のマーカーの血中レベルを測定する工程を含み、1またはそれ以上のマーカーは、CA 125、CA 15-3、CA 19-9、CEA、IL-2、IL-15、IL-6、IFNγおよびTNFαから成る群より選択される。この態様では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体の投与の前後、例えば抗体の単回用量の投与後に、血液などの生物学的試料を患者から採取し、1またはそれ以上のマーカーのレベルを確立し得る。複数の試料を同じ組織から採取し、平均レベルを決定して、それらのレベルの起こり得る変動を説明し得る。抗体の投与後の1またはそれ以上のマーカーのレベルを投与前に測定したレベルと比較する。それゆえ患者への抗体の作用を、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与した後のマーカーのレベルの望ましい変化によって同定することができる。患者がCLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与した後にマーカーのレベルの望ましい変化を示す場合、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体による治療を開始し得る。
【0029】
1つの実施形態では、レベルを血液、血漿または血清中で測定する。
【0030】
1つの実施形態では、1またはそれ以上のマーカーは、CA 125、CA 15-3、CA 19-9、CEA、IL-2、IL-15、IFNγおよびTNFαから成る群より選択され、抗体の投与後のマーカーの少なくとも1つのレベルの低下は、患者が癌疾患の治療または予防に対して応答性であることを示す。
【0031】
1つの実施形態では、マーカーはIL-6であり、抗体の投与後のマーカーのレベルの上昇は、患者が癌疾患の治療または予防に対して応答性であることを示す。
【0032】
8番目の態様では、本発明は、癌患者が、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与することを含む癌疾患の治療または予防に適しているかどうかを判定する方法を提供し、前記方法は、CLDN18.2陽性癌細胞のパーセンテージを測定する工程を含む。
【0033】
この実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体の投与前に、腫瘍試料(例えば腫瘍生検)などの生物学的試料を患者から採取し、CLDN18.2陽性癌細胞のレベルを確立し得る。複数の試料を採取し、平均レベルを決定して、それらのレベルの起こり得る変動を説明し得る。患者がCLDN18.2陽性癌細胞の望ましいレベルを有する場合、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を投与し得る。
【0034】
1つの実施形態では、少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%または90%、少なくとも95%または少なくとも98%のCLDN18.2陽性癌細胞のレベルは、患者が癌疾患の治療または予防に適していることを示す。1つの実施形態では、CLDN18.2の表面発現に関して陽性である少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%の癌細胞のレベルは、患者が癌疾患の治療または予防に適していることを示す。
【0035】
CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、生細胞の表面上に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合し得る。1つの実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2の第一細胞外ループに結合する。1つの実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシスの誘導および増殖の阻害の1つまたはそれ以上による細胞死を媒介する。1つの実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、モノクローナル、キメラもしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである。1つの実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、(i)アクセッション番号DSM ACC2737、DSM ACC2738、DSM ACC2739、DSM ACC2740、DSM ACC2741、DSM ACC2742、DSM ACC2743、DSM ACC2745、DSM ACC2746、DSM ACC2747、DSM ACC2748、DSM ACC2808、DSM ACC2809またはDSM ACC2810の下で寄託されたクローンによって産生されるおよび/または前記クローンから入手可能な抗体、(ii)(i)に含まれる抗体のキメラ化またはヒト化形態である抗体、(iii)(i)に含まれる抗体の特異性を有する抗体、ならびに(iv)(i)に含まれる抗体の抗原結合部分または抗原結合部位、特に可変領域を含有し、および好ましくは(i)に含まれる抗体の特異性を有する抗体、から成る群より選択される抗体である。1つの実施形態では、抗体は、治療薬、例えば毒素、放射性同位体、薬物または細胞傷害性薬剤に連結される。
【0036】
1つの実施形態では、癌はCLDN18.2陽性である。1つの実施形態では、癌の細胞はCLDN18.2を発現する。1つの実施形態では、CLDN18.2の発現は細胞の表面においてである。1つの実施形態では、癌細胞の少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%または90%はCLDN18.2陽性であり、および/または癌細胞の少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%はCLDN18.2の表面発現に関して陽性である。1つの実施形態では、癌細胞の少なくとも95%または少なくとも98%はCLDN18.2陽性である。1つの実施形態では、癌細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%はCLDN18.2の表面発現に関して陽性である。
【0037】
1つの実施形態では、癌疾患は、胃癌、食道癌、膵癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、肝癌、頭頸部癌、胆嚢の癌およびこれらの転移から成る群より選択される。癌疾患は、クルーケンベルク腫瘍、腹膜転移および/またはリンパ節転移であり得る。1つの実施形態では、癌は腺癌、特に進行した腺癌である。1つの実施形態では、癌は、胃の癌、食道、特に下部食道の癌、食道胃接合部の癌および胃食道癌から成る群より選択される。特に好ましい実施形態では、癌は胃食道癌、例えば転移性、抗療性または再発性の進行した胃食道癌である。患者は、HER2/neu陰性患者であるかまたはHER2/neu陽性状態を有するがトラスツズマブ治療に適格でない患者であり得る。1つの実施形態では、患者は、ピリミジン類似体(例えばフルオロウラシルおよび/またはカペシタビン)、白金化合物(例えばシスプラチンおよび/またはオキサリプラチン)、エピルビシン、ドセタキセルならびに抗腫瘍薬治療のための解毒剤(例えばフォリン酸カルシウムおよび/またはフォリン酸)から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤による治療を以前に受けたことがある。1つの実施形態では、患者は、0から1の間のECOGパフォーマンスステータスおよび/または70から100%の間のカルノフスキー指数を有する。特に好ましい実施形態では、患者はヒト患者である。
【0038】
本発明によれば、CLDN18.2は、好ましくは配列番号:1に従うアミノ酸配列を有する。
【0039】
本発明はまた、本明細書で述べる方法における使用のための、本明細書で述べる作用物質、例えばCLDN18.2に結合する能力を有する抗体も提供する。
【0040】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2A】(
図2)患者のPBMCのADCC活性。(
図2A)IMAB362投与後7日目(白い四角)または14日目(黒い四角)にPBMCを6名の患者の血液試料から精製した。IMAB362 31.63μg/mlおよび健常ドナーからのPBMCまたは患者のPBMC(E:T=20:1)の24時間の添加後に得られた、CLDN18.2を発現するNUGC-4胃癌標的細胞の特異的溶解率。
【
図2B】種々の患者のPBMCの添加の24時間後に得られたNUGC-4細胞のIMAB362濃度依存性特異的溶解(グラフは平均±標準偏差を示す、p値は対応のないt検定を用いて計算した)。
【
図2C】漸増濃度のIMAB362の添加後の健常対照PBMCのADCC反応曲線。アッセイは、患者のPBMCに関する各々のADCC分析と並行して実施した。
【
図2D】漸増濃度のIMAB362の添加後の患者PBMCのADCC反応曲線(患者0202については曲線を作成するのに十分なPBMCが得られなかった。
【
図2E】全患者および健常ドナーに関する半最大死滅率を、内蔵されている非線形回帰解析ツールを用いてGraphPad Prismソフトウェアで計算した。
【
図3】IMAB362媒介性CDCを誘導する患者補体成分の能力。CLDN18.2およびルシフェラーゼ陽性CHO-K1標的細胞を用いてCDCアッセイを実施した。細胞、血清(20%v/v)および抗体を37℃で80分間インキュベートした。患者試料を、新鮮0.5μg/ml IMAB362を注入前血清試料(灰色のバー)に添加することによって調製した。HSC:0.3~10μg/ml IMAB362でスパイクした健常ヒト血清プール対照(陽性対照)。Hi:10μg/ml IMAB362でスパイクした熱不活性化ヒト血清プール(陰性対照)。患者数を示す。誤差バー:±標準偏差。
【
図4A】(
図4)時間をかけてi.v.投与したIMAB362と相互作用する患者補体成分の能力。各患者の注入前血清を使用して各試料中のIMAB362濃度を0.5μg/mlに調整する(希釈係数10~680倍)ことにより、基準化したCDCアッセイを実施した。(
図4A)
図3に示すようにCDCアッセイを実施した。
【
図4B】
図3に示すようにCDCアッセイを実施した。
【
図4C】各ドットは1名の患者の測定結果を表す。白い四角:ヒト血清中0.5μg/ml IMAB362。p値は対応のあるt検定で得た。誤差バー:±標準偏差。
【
図5A】i.v.投与した循環IMAB362によって誘導される細胞傷害の動態。抗体および補体供給源としてNUGC-4標的細胞、健常ドナーのPBMC(E:T=40:1)および患者血清試料(25%v/v)を全細胞傷害アッセイにおいて使用し、総合的な細胞傷害活性を測定した。各患者について、IMAB362投与の1、7、14および28~32日後に血清試料を採取した。患者を漸増用量のIMAB362(33~1000mg/m
2)で処置した。アッセイにおいて存在する抗体濃度を各バーの下に示す。HSC:200.0μg/mlの新鮮IMAB362でスパイクしたヒト血清プール対照(EC
80~100)。PSC:200.0μg/mlの新鮮IMAB362でスパイクした患者の注入前血清対照。n.a.:入手できず。
【
図5B】i.v.投与した循環IMAB362によって誘導される細胞傷害の動態。抗体および補体供給源としてNUGC-4標的細胞、健常ドナーのPBMC(E:T=40:1)および患者血清試料(25%v/v)を全細胞傷害アッセイにおいて使用し、総合的な細胞傷害活性を測定した。各患者について、IMAB362投与の1、7、14および28~32日後に血清試料を採取した。患者を漸増用量のIMAB362(33~1000mg/m
2)で処置した。アッセイにおいて存在する抗体濃度を各バーの下に示す。HSC:200.0μg/mlの新鮮IMAB362でスパイクしたヒト血清プール対照(EC
80~100)。PSC:200.0μg/mlの新鮮IMAB362でスパイクした患者の注入前血清対照。n.a.:入手できず。
【
図6A】熱不活性化患者血清におけるIMAB362のADCC活性の動態。患者の補体を熱不活性化し(56℃、30分間)、ADCC活性を検出して(黒色および灰色バー部分)、血清成分の付加的な作用(白色バー部分)を計算したことを除き、先の図面で述べたようにアッセイを実施した。
【
図6B】熱不活性化患者血清におけるIMAB362のADCC活性の動態。患者の補体を熱不活性化し(56℃、30分間)、ADCC活性を検出して(黒色および灰色バー部分)、血清成分の付加的な作用(白色バー部分)を計算したことを除き、先の図面で述べたようにアッセイを実施した。
【
図7A】患者血清中に存在するIMAB362によって誘導されるCDC活性。CLDN18.2およびルシフェラーゼ陽性CHO-K1標的細胞を用いてCDCアッセイを実施した。これらを、抗体注入の1、7、14および28~32日後に得た20%v/v患者血清と共に80分間インキュベートした。患者を33~1000mg/m
2のIMAB362用量で処置した。各アッセイにおいて存在する抗体濃度を各バーの下に示す。HSC:示されている漸減濃度のIMAB362でスパイクした健常ヒト血清プール対照。PC:陽性対照(10μg/ml IMAB362でスパイクした患者の注入前血清)。
【
図7B】患者血清中に存在するIMAB362によって誘導されるCDC活性。CLDN18.2およびルシフェラーゼ陽性CHO-K1標的細胞を用いてCDCアッセイを実施した。これらを、抗体注入の1、7、14および28~32日後に得た20%v/v患者血清と共に80分間インキュベートした。患者を33~1000mg/m
2のIMAB362用量で処置した。各アッセイにおいて存在する抗体濃度を各バーの下に示す。HSC:示されている漸減濃度のIMAB362でスパイクした健常ヒト血清プール対照。PC:陽性対照(10μg/ml IMAB362でスパイクした患者の注入前血清)。
【
図8】患者におけるIMAB362の反復注入の薬物動態結果。300mg/m
2の反復投与で処置した4名の患者(コホート1、左の図)および600mg/m
2の反復投与で処置した30名までの患者(1回目の注入は30名の患者、5回目の注入は12名の患者)(コホート2およびコホート3を一緒に、右の図)の血清中のIMAB362の平均±sd濃度(μg/ml)。矢印はIMAB362注入を示す。1回目の注入は0日目に行った。
【
図9】完全な解析セット(FAS)における患者の進行のない生存期間。
【
図10】プロトコルごと(PP)のセットにおける患者の進行のない生存期間(n=20)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は本明細書で述べる特定の方法、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することだけを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図されず、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および学術用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0043】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、これらは、付加的な実施形態を創製するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本発明を明白に記述される実施形態だけに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明白に記述される実施形態と多くの開示される要素および/または好ましい要素とを組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されるとみなされるべきである。
【0044】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0045】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当分野の文献(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)中で説明される化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0046】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に要求されない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解され、しかし一部の実施形態においては、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題が記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存する。本発明の説明に関連して(特に特許請求の範囲に関連して)使用される「1つの」および「その」という用語および同様の言及は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略化した方法であることが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書で述べるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限りまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、本発明あるいは特許請求されるものの範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、特許請求されない要素が本発明の実施に必須であることを指示すると解釈されるべきではない。
【0047】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、学術出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0048】
「CLDN18」という用語はクローディン18に関し、クローディン18スプライス変異体1(クローディン18.1(CLDN18.1))およびクローディン18スプライス変異体2(クローディン18.2(CLDN18.2))を含む任意の変異体を包含する。
【0049】
「CLDN18.2」という用語は、好ましくはヒトCLDN18.2に関し、特に配列表の配列番号:1に従うアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む、好ましくはそれから成るタンパク質に関する。
【0050】
「CLDN18.1」という用語は、好ましくはヒトCLDN18.1に関し、特に配列表の配列番号:2に従うアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む、好ましくはそれから成るタンパク質に関する。
【0051】
本発明による「変異体」という用語は、特に、突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを指す。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列中の変化に関するが、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列決定は、しばしば所与の遺伝子について数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸配列またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸配列またはアミノ酸配列である。「変異体」という用語は、任意の翻訳後修飾変異体および立体配座変異体を包含する。
【0052】
本発明によれば、「CLDN18.2陽性癌」という用語は、CLDN18.2を発現する癌細胞、好ましくは前記癌細胞の表面にCLDN18.2を発現する癌細胞を含む癌を意味する。
【0053】
「細胞表面」は、当分野におけるその通常の意味に従って使用され、したがってタンパク質および他の分子による結合にアクセス可能である細胞の外側を含む。
【0054】
CLDN18.2は、これが細胞の表面に位置し、前記細胞に添加されたCLDN18.2特異的抗体による結合にアクセス可能である場合、前記細胞の表面に発現されている。
【0055】
本発明によれば、CLDN18.2は、発現のレベルが胃細胞または胃組織における発現と比較してより低い場合、細胞において実質的に発現されていない。好ましくは、発現のレベルは、胃細胞または胃組織における発現の10%未満、好ましくは5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%もしくは0.05%未満であるかまたはさらに一層低い。好ましくは、CLDN18.2は、発現のレベルが胃以外の非癌組織における発現のレベルを2倍しか、好ましくは1.5倍しか上回らない場合、および好ましくは前記非癌組織における発現のレベルを上回らない場合、細胞において実質的に発現されていない。好ましくは、CLDN18.2は、発現のレベルが検出限界より低い場合および/または発現のレベルが細胞に添加されたCLDN18.2特異的抗体による結合を許容しないほど低い場合、細胞において実質的に発現されていない。
【0056】
本発明によれば、CLDN18.2は、発現のレベルが胃以外の非癌組織における発現のレベルを2倍以上、好ましくは10倍、100倍、1000倍または10000倍上回る場合、細胞において発現されている。好ましくは、CLDN18.2は、発現のレベルが検出限界より高い場合および/または発現のレベルが細胞に添加されたCLDN18.2特異的抗体による結合を許容するのに十分なほど高い場合、細胞において発現されている。好ましくは、細胞において発現されるCLDN18.2は、前記細胞の表面に発現されるまたは露出される。
【0057】
本発明によれば、「疾患」という用語は、癌、特に本明細書で述べる癌の形態を含む、任意の病的状態を指す。癌または癌の特定の形態への本明細書での言及は、その癌転移も包含する。好ましい実施形態では、本出願に従って治療されるべき疾患は、CLDN18.2を発現する細胞を含む。
【0058】
「CLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患」または同様の表現は、本発明によればCLDN18.2が疾患組織または器官の細胞において発現されることを意味する。1つの実施形態では、疾患組織または器官の細胞におけるCLDN18.2の発現は、健常組織または器官における状態と比較して増大している。増大とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはさらにそれ以上の増大を指す。1つの実施形態では、発現は疾患組織においてのみ認められ、健常組織における発現は抑制されている。本発明によれば、CLDN18.2を発現する細胞に関連する疾患としては癌疾患が挙げられる。さらに、本発明によれば、癌疾患は、好ましくは癌細胞がCLDN18.2を発現するものである。
【0059】
本明細書で使用される場合、「癌疾患」または「癌」は、異常調節された細胞成長、増殖、分化、接着および/または移動を特徴とする疾患を包含する。癌の3つの悪性特性(制御されない増殖(正常限界を超えた分裂)、浸潤(隣接組織への侵入および隣接組織の破壊)および時として転移(リンパ節または血液を介した体内の他の場所への拡大))は、自己限定性で、浸潤または転移しない良性腫瘍から癌を区別する。大部分の癌は腫瘍を形成するが、一部は、白血病のように、腫瘍を形成しない。「癌細胞」とは、急速で制御不能の細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。好ましくは、「癌疾患」はCLDN18.2を発現する細胞を特徴とし、癌細胞はCLDN18.2を発現する。CLDN18.2を発現する細胞は、好ましくは癌細胞、好ましくは本明細書で述べる癌の癌細胞である。
【0060】
本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍疾患」という用語は、好ましくは腫脹または病変を形成する細胞(新生細胞、腫瘍形成性細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常増殖を指す。「腫瘍細胞」により、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞が意味される。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、ならびに通常は明確な組織塊を形成し、これは良性、前悪性または悪性のいずれかであり得る。
【0061】
本発明によれば、腫瘍は、好ましくは悪性腫瘍である。「悪性腫瘍」は癌と同義に使用される。
【0062】
「腺癌」は、腺組織から発生する癌である。この組織は、上皮組織として知られるより大きな組織カテゴリーの一部でもある。上皮組織としては、皮膚、腺ならびに身体の腔および器官を裏打ちする様々な他の組織が挙げられる。上皮は発生学的に外胚葉、内胚葉および中胚葉に由来する。腺癌として分類されるために、細胞は、分泌特性を有する限り、必ずしも腺の一部である必要はない。この形態の癌腫は、ヒトを含む一部の高等哺乳動物において発生し得る。高分化型腺癌は、それらが由来する腺組織に類似する傾向があるが、低分化型はその傾向がない場合もある。生検からの細胞を染色することにより、病理学者は腫瘍が腺癌であるかまたは何らかの他の種類の癌であるかを決定する。腺癌は、体内での腺の遍在性のために身体の多くの組織で発生し得る。各々の腺が同じ物質を分泌しているとは限らないが、細胞への外分泌機能が存在する限り、腺とみなされ、それゆえその悪性形態は腺癌と命名される。悪性腺癌は他の組織に浸潤し、転移するのに十分な時間があればしばしば転移する。卵巣腺癌は最も一般的な種類の卵巣癌である。卵巣腺癌としては、漿液性および粘液性腺癌、明細胞腺癌および類内膜腺癌が挙げられる。
【0063】
「転移」とは、そのもとの部位から身体の別の部分への癌細胞の拡大を意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に侵入するための内皮基底膜の貫入、ならびに次に、血液によって運ばれた後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位での新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移はしばしば原発性腫瘍の除去後でも起こり、これは、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から遠く離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語はリンパ節転移に関する。本発明の治療法を用いて治療可能な転移の1つの特定の形態は、原発部位として胃癌から生じる転移である。好ましい実施形態では、そのような胃癌転移は、クルーケンベルク腫瘍、腹膜転移および/またはリンパ節転移である。
【0064】
クルーケンベルク腫瘍は、すべての卵巣腫瘍の1%~2%を占める卵巣のまれな転移性腫瘍である。クルーケンベルク腫瘍の予後はまだ非常に不良であり、クルーケンベルク腫瘍のための確立された治療は存在しない。クルーケンベルク腫瘍は卵巣の転移性印環細胞腺癌である。胃は大部分のクルーケンベルク腫瘍症例(70%)における原発部位である。結腸、虫垂および乳房(主として浸潤性小葉癌)の癌がその次に最も多い原発部位である。胆嚢、胆管、膵臓、小腸、ファーター膨大部、子宮頸および膀胱/尿膜管の癌に由来するクルーケンベルク腫瘍のまれな症例が報告されている。
【0065】
クルーケンベルク腫瘍を有する女性は、典型的には50代であり、平均年齢は45歳であるので、転移癌を有する患者としては非常に若い傾向がある。この若年分布は、一部には若齢女性における胃の印環細胞腺癌の発生率が高いことに関連づけることができる。一般的に呈する症状は、通常は卵巣障害に関連し、そのうち最も多いのが腹痛および腹部膨満(主として、通常は両側性でしばしば大きな卵巣腫瘤による)である。残りの患者は非特異的な胃腸症状を有するかまたは無症候性である。加えて、クルーケンベルク腫瘍は、報告によれば卵巣支質によるホルモン産生から生じる男性化に結びつく。腹水は症例の50%で存在し、通常は悪性細胞を明らかにする。
【0066】
クルーケンベルク腫瘍は、報告された症例の80%より多くで両側性である。卵巣は通常非対称に腫脹し、隆起した輪郭を有する。切片の表面は黄色または白色である;それらは通常固体であるが、時として嚢胞性である。重要な点として、クルーケンベルク腫瘍を有する卵巣の被膜表面は、典型的にはなめらかで、癒着または腹膜沈着物がない。注意すべき点として、卵巣への他の転移性腫瘍は表面インプラントに関連する傾向がある。これは、クルーケンベルク腫瘍の肉眼形態が一見原発卵巣腫瘍のように見えることがある理由を説明し得る。しかし、クルーケンベルク腫瘍の両側性はその転移性と一致する。
【0067】
クルーケンベルク腫瘍を有する患者は有意に高い全体的死亡率を有する。大部分の患者は2年以内に死亡する(平均生存期間、14ヶ月)。いくつかの試験は、卵巣への転移が発見された後に原発性腫瘍が同定された場合は予後が不良であり、原発性腫瘍が明らかにされないままである場合は予後がさらに悪化することを示す。
【0068】
「治療する」とは、被験体において腫瘍の大きさもしくは腫瘍の数を低減することを含む、疾患を予防するもしくは排除する;被験体において疾患を停止させるもしくは疾患の進行を遅らせる;被験体において新たな疾患の発症を阻止するもしくは遅らせる;現在疾患を有しているもしくは以前に疾患を有していたことがある被験体において症状および/もしくは再発の頻度もしくは重症度を低下させる;ならびに/または被験体の生存期間を延長する、すなわち増大させるために、化合物または組成物または化合物もしくは組成物の組合せを被験体に投与することを意味する。
【0069】
特に、「疾患の治療」という用語は、疾患またはその症状を治癒する、期間を短縮する、改善する、予防する、進行もしくは悪化を減速させるもしくは阻止する、または発症を予防するもしくは遅延させることを包含する。
【0070】
「患者」という用語は、本発明によれば、ヒト、非ヒト霊長動物または別の動物、特に哺乳動物、例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたはげっ歯動物、例えばマウスおよびラットを含む、治療のための被験体、特に疾患被験体を意味する。特に好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0071】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を、CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質と組み合わせて、すなわち前記作用物質と同時に、作用物質の前におよび/または作用物質の後に投与し得る。
【0072】
「CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質」という用語は、作用物質または作用物質の組合せを細胞に提供することが、細胞に前記作用物質または作用物質の組合せが提供されない状況と比較して、CLDN18.2のRNAおよび/またはタンパク質レベルの増大、好ましくは細胞表面上のCLDN18.2タンパク質レベルの増大を生じさせる作用物質または作用物質の組合せを指す。好ましくは、細胞は癌細胞、特にCLDN18.2を発現する癌細胞、例えば本明細書で述べる癌型の細胞である。「CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質」という用語は、特に、作用物質または作用物質の組合せを細胞に提供することが、細胞に前記作用物質または作用物質の組合せが提供されない状況と比較して、前記細胞の表面により高い密度のCLDN18.2を生じさせる作用物質または作用物質の組合せを指す。「CLDN18.2の発現を安定化すること」は、特に、作用物質または作用物質の組合せがCLDN18.2の発現の低下を防ぐかまたは低下を低減する、例えば作用物質または作用物質の組合せが提供されない場合はCLDN18.2の発現が低下すると考えられ、前記作用物質または作用物質の組合せの提供がCLDN18.2発現の前記低下を防ぐかまたは前記低下を低減する状況を含む。「CLDN18.2の発現を増大させること」は、特に、作用物質または作用物質の組合せがCLDN18.2の発現を増大させる、例えば作用物質または作用物質の組合せが提供されない場合はCLDN18.2の発現が低下するか、基本的に一定なままであるかまたは増大すると考えられ、前記作用物質または作用物質の組合せの提供が、作用物質または作用物質の組合せが提供されない状況と比較してCLDN18.2発現を増大させ、そのため生じる発現が、作用物質または作用物質の組合せが提供されない場合にCLDN18.2の発現が低下するか、基本的に一定なままであるかまたは増大させるであろう状況と比較してより高い状況を含む。
【0073】
本発明によれば、「CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質」という用語は、化学療法剤または化学療法剤の組合せ、例えば細胞増殖抑制剤を含む。化学療法剤は、以下の方法:(1)細胞のDNAを損傷し、そのため細胞はもはや複製することができない、(2)細胞複製が不可能であるように新たなDNA鎖の合成を阻害する、(3)細胞が2個の細胞に分裂することができないように細胞の有糸分裂過程を停止させる、の1つで細胞に影響を及ぼし得る。
【0074】
本発明によれば、「CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質」という用語は、好ましくは、作用物質または作用物質の組合せ、例えば細胞増殖抑制性化合物または細胞増殖抑制性化合物の組合せを細胞、特に癌細胞に提供することが、細胞が細胞周期の1またはそれ以上の期で、好ましくはG1期およびG0期以外、好ましくはG1期以外の細胞周期の1またはそれ以上の期で、好ましくは細胞周期のG2期またはS期、例えば細胞周期のG1/G2期、S/G2期、G2期またはS期の1またはそれ以上で停止するまたは蓄積することを生じさせる、作用物質または作用物質の組合せに関する。「細胞が細胞周期の1またはそれ以上の期で停止するまたは蓄積すること」という用語は、細胞周期の前記1またはそれ以上の期にある細胞のパーセンテージが増大することを意味する。各々の細胞は、自らを複製するために4つの期を含む周期を通過する。G1と呼ばれる最初の期は、細胞がその染色体を複製する準備をする段階である。2番目の段階はSと呼ばれ、この期にDNA合成が起こり、DNAが複製される。次の期はG2期であり、ここでRNAおよびタンパク質が複製する。最終段階はM期であり、これが実際の細胞分裂の段階である。この最終段階では、複製したDNAおよびRNAが分離し、細胞の別々の末端へと移動して、細胞が実際に2個の同一の機能性細胞に分裂する。DNA損傷剤である化学療法剤は、通常G1および/またはG2期の細胞の蓄積を生じさせる。代謝拮抗物質などのDNA合成を妨げることによって細胞増殖をブロックする化学療法剤は、通常S期の細胞の蓄積を生じさせる。これらの薬剤の例は、6-メルカプトプリンおよび5-フルオロウラシルである。
【0075】
本発明によれば、「CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質」という用語には、エピルビシンなどのアントラサイクリン、オキサリプラチンおよびシスプラチンなどの白金化合物、5-フルオロウラシルまたはそのプロドラッグなどのヌクレオシド類似体、ドセタキセルなどのタキサン類、ならびにイリノテカンおよびトポテカンなどのカンプトテシン類似体、ならびに薬剤の組合せ、例えばエピルビシンなどのアントラサイクリン、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルの1つまたはそれ以上を含む薬剤の組合せ、例えばオキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルを含む薬剤の組合せ、または本明細書で述べる他の薬剤の組合せが含まれる。
【0076】
1つの好ましい実施形態では、「CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質」は、「免疫原性細胞死を誘導する作用物質」である。
【0077】
特定の状況では、癌細胞は、腫瘍特異的免疫応答を活性化するために免疫系によって解読される時空的に規定されたシグナルの組合せの放出に結び付く致死的ストレス経路に入り得る(Zitvogel L.et al.(2010)Cell 140:798-804)。そのような状況では、癌細胞は、樹状細胞などの先天性免疫エフェクターによって感知されて、腫瘍細胞死が有効な抗癌免疫応答を誘発し得るようにCD8+ T細胞およびIFN-γシグナル伝達を含むコグネイト免疫応答を引き起こすシグナルの放出を始動させる。これらのシグナルとしては、細胞表面における小胞体(ER)シャペロンであるカルレティキュリン(CRT)のアポトーシス前露出、ATPのアポトーシス前分泌、および核タンパク質HMGB1のアポトーシス後放出が挙げられる。合わせて考慮すると、これらの工程は免疫原性細胞死(ICD)の分子決定基を構成する。アントラサイクリン、オキサリプラチンおよびγ線照射はICDを規定するすべてのシグナルを誘導することができるが、例えばシスプラチンは、ERストレスを必要とする工程である、ERから死細胞の表面へのCRT転位を誘導する能力を欠き、ERストレス誘導物質であるタプシガルギンによる補完を必要とする。
【0078】
本発明によれば、「免疫原性細胞死を誘導する作用物質」という用語は、細胞、特に癌細胞に提供された場合、細胞が、最終的に腫瘍特異的免疫応答を生じさせる致死的ストレス経路に入るのを誘導することができる作用物質または作用物質の組合せを指す。特に、細胞に提供された場合免疫原性細胞死を誘導する作用物質は、細胞が、特に細胞表面における小胞体(ER)シャペロンであるカルレティキュリン(CRT)のアポトーシス前暴露、ATPのアポトーシス前分泌、および核タンパク質HMGB1のアポトーシス後放出を含む、時空的に規定されたシグナルの組合せを放出することを誘導する。
【0079】
本発明によれば、「免疫原性細胞死を誘導する作用物質」という用語は、アントラサイクリンおよびオキサリプラチンを包含する。
【0080】
アントラサイクリンは、抗生物質でもある、癌化学療法において一般的に使用される薬剤のクラスである。構造的に、すべてのアントラサイクリンは共通の4環性7,8,9,10-テトラヒドロテトラセン-5,12-キノン構造を共有し、通常は特定部位でのグリコシル化を必要とする。
【0081】
アントラサイクリンは、好ましくは以下の作用機構の1またはそれ以上を生じさせる:1.DNA/RNA鎖の塩基対の間にインターカレートすることによってDNAおよびRNA合成を阻害し、したがって急速に増殖する癌細胞の複製を妨げる。2.トポイソメラーゼII酵素を阻害し、超コイルDNAの弛緩を妨げ、したがってDNAの転写および複製をブロックする。3.DNAおよび細胞膜を損傷する鉄媒介性遊離酸素ラジカルを生成する。
【0082】
本発明によれば、「アントラサイクリン」という用語は、好ましくはトポイソメラーゼIIのDNAの再結合を阻害することによって、好ましくはアポトーシスを誘導するための作用物質、好ましくは抗癌剤に関する。
【0083】
好ましくは、本発明によれば、「アントラサイクリン」という用語は、一般に、以下の環構造:
【化1】
を有し、その類似体および誘導体、医薬的塩、水和物、エステル、コンジュゲートならびにプロドラッグを含む化合物のクラスを指す。
【0084】
アントラサイクリンおよびアントラサイクリン類似体の例としては、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、イダルビシン、ロドマイシン、ピラルビシン、バルルビシン、N-トリフルオロ-アセチルドキソルビシン-14-バレレート、アクラシノマイシン、モルホリノドキソルビシン(モルホリノ-DOX)、シアノモルホリノ-ドキソルビシン(シアノモルホリノ-DOX)、2-ピロリノ-ドキソルビシン(2-PDOX)、5-イミノダウノマイシン、ミトキサントロンおよびアクラシノマイシンA(アクラルビシン)が挙げられるが、これらに限定されない。ミトキサントロンはアントラセンジオンクラスの化合物の成員であり、前記クラスの化合物は、アントラサイクリンの糖部分を欠くが、DNAへのインターカレーションを許容する平面多環式芳香族環構造を保持するアントラサイクリン類似体である。
【0085】
本発明によるアントラサイクリンとして特に好ましいのは、以下の式の化合物である:
【化2】
式中、R
1は、HおよびOHから成る群より選択され、R
2は、HおよびOMeから成る群より選択され、R
3は、HおよびOHから成る群より選択され、ならびにR
4は、HおよびOHから成る群より選択される。
【0086】
1つの実施形態では、R1はHであり、R2はOMeであり、R3はHであり、およびR4はOHである。別の実施形態では、R1はOHであり、R2はOMeであり、R3はHであり、およびR4はOHである。別の実施形態では、R1はOHであり、R2はOMeであり、R3はOHであり、およびR4はHである。別の実施形態では、R1はHであり、R2はHであり、R3はHであり、およびR4はOHである。
【0087】
本発明に関連してアントラサイクリンとして特に企図されるのはエピルビシンである。エピルビシンは、以下の式:
【化3】
を有するアントラサイクリン薬剤であり、米国ではEllenceの商品名で、および他のところではPharmorubicinまたはEpirubicin Ebeweの商品名で市販されている。特に、「エピルビシン」という用語は、化合物(8R,10S)-10-[(2S,4S,5R,6S)-4-アミノ-5-ヒドロキシ-6-メチル-オキサン-2-イル]オキシ-6,11-ジヒドロキシ-8-(2-ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-8-メチル-9,10-ジヒドロ-7H-テトラセン-5,12-ジオンを指す。エピルビシンは、副作用を引き起こすことがより少ないと考えられるので、一部の化学療法レジメンでは、最も一般的なアントラサイクリンであるドキソルビシンよりも好ましい。
【0088】
本発明によれば、「白金化合物」という用語は、白金錯体などのその構造中に白金を含有する化合物を指し、シスプラチン、カルボプラチンおよびオキサリプラチンなどの化合物を包含する。
【0089】
「シスプラチン」または「シスプラチナム」という用語は、以下の式:
【化4】
の化合物シス-ジアンミンジクロロ白金(II)(CDDP)を指す。
【0090】
「カルボプラチン」という用語は、以下の式:
【化5】
の化合物シス-ジアンミン(1,1-シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)を指す。
【0091】
「オキサリプラチン」という用語は、以下の式:
【化6】
のジアミノシクロヘキサン担体配位子に錯化した白金化合物である化合物を指す。
【0092】
特に、「オキサリプラチン」という用語は、化合物[(1R,2R)-シクロヘキサン-1,2-ジアミン](エタンジオアト-O,O')白金(II)を指す。注射用のオキサリプラチンも、Eloxatineの商品名で市販されている。
【0093】
「ヌクレオシド類似体」という用語は、プリン類似体およびピリミジン類似体の両方を包含するカテゴリーである、ヌクレオシドの構造類似体を指す。特に、「ヌクレオシド類似体」という用語は、フルオロウラシルおよびそのプロドラッグを含むフルオロピリミジン誘導体を指す。
【0094】
「フルオロウラシル」または「5-フルオロウラシル」(5-FUまたはf5U)(Adrucil、Carac、Efudix、EfudexおよびFluoroplexの商標名で市販されている)という用語は、以下の式:
【化7】
のピリミジン類似体である化合物である。
【0095】
特に、この用語は、化合物5-フルオロ-1H-ピリミジン-2,4-ジオンを指す。
【0096】
「カペシタビン」(Xeloda、Roche)という用語は、組織中で5-FUに変換されるプロドラッグである化学療法剤を指す。経口的に投与し得るカペシタビンは、以下の式:
【化8】
を有する。
【0097】
特に、この用語は、化合物ペンチル[1-(3,4-ジヒドロキシ-5-メチルテトラヒドロフラン-2-イル)-5-フルオロ-2-オキソ-1H-ピリミジン-4-イル]カルバメートを指す。
【0098】
タキサン類は、最初にイチイ属の植物などの天然源から誘導されたジテルペン化合物のクラスであるが、一部は人工的に合成されている。タキサンクラスの薬剤の主たる作用機構は微小管機能の破壊であり、それにより細胞分裂の過程を阻害する。タキサン類としては、ドセタキセル(Taxotere)およびパクリタキセル(Taxol)が挙げられる。
【0099】
本発明によれば、「ドセタキセル」という用語は、以下の式:
【化9】
を有する化合物を指す。
【0100】
本発明によれば、「パクリタキセル」という用語は、以下の式:
【化10】
を有する化合物を指す。
【0101】
本発明によれば、「カンプトテシン類似体」という用語は、化合物カンプトテシン(CPT;(S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-1H-ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14-(4H,12H)-ジオン)の誘導体を指す。好ましくは、「カンプトテシン類似体」という用語は、以下の構造:
【化11】
を含む化合物を指す。
【0102】
本発明によれば、好ましいカンプトテシン類似体は、DNA酵素トポイソメラーゼI(トポI)の阻害剤である。本発明による好ましいカンプトテシン類似体は、イリノテカンおよびトポテカンである。
【0103】
イリノテカンは、トポイソメラーゼIの阻害によってDNAの巻戻しを防ぐ薬剤である。化学用語では、これは、以下の式:
【化12】
を有する天然アルカロイドカンプトテシンの半合成類似体である。
【0104】
特に、「イリノテカン」という用語は、化合物(S)-4,11-ジエチル-3,4,12,14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ1H-ピラノ[3',4':6,7]-インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル-[1,4'-ビピペリジン]-1'-カルボキシレートを指す。
【0105】
トポテカンは、式:
【化13】
のトポイソメラーゼ阻害剤である。
【0106】
特に、「トポテカン」という用語は、化合物(S)-10-[(ジメチルアミノ)メチル]-4-エチル-4,9-ジヒドロキシ-1H-ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-3,14(4H,12H)-ジオン一塩酸塩を指す。
【0107】
本発明によれば、CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質は、化学療法剤、特に癌治療において確立された化学療法剤であってよく、薬剤の組合せ、例えば癌治療における使用に関して確立された薬剤の組合せの一部であってよい。そのような薬剤の組合せは、化学療法において使用される薬剤の組合せであってよく、EOX化学療法、ECF化学療法、ECX化学療法、EOF化学療法、FLO化学療法、FOLFOX化学療法、FOLFIRI化学療法、DCF化学療法およびFLOT化学療法から成る群より選択される化学療法レジメンにおいて使用される薬剤の組合せであってよい。
【0108】
EOX化学療法において使用される薬剤の組合せは、エピルビシン、オキサリプラチンおよびカペシタビンを含む。ECF化学療法において使用される薬剤の組合せは、エピルビシン、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルを含む。ECX化学療法において使用される薬剤の組合せは、エピルビシン、シスプラチンおよびカペシタビンを含む。EOF化学療法において使用される薬剤の組合せは、エピルビシン、オキサリプラチンおよび5-フルオロウラシルを含む。
【0109】
エピルビシンは通常50mg/m2、シスプラチンは60mg/m2、オキサリプラチンは130mg/m2の用量で投与され、5-フルオロウラシルは200mg/m2/日の持続静注でおよび経口カペシタビンは625mg/m2で1日2回、3週間のサイクルで合計8回投与される。
【0110】
FLO化学療法において使用される薬剤の組合せは、5-フルオロウラシル、フォリン酸およびオキサリプラチン(通常5-フルオロウラシル2,600mg/m2を24時間注入、フォリン酸200mg/m2およびオキサリプラチン85mg/m2を2週間ごと)を含む。
【0111】
FOLFOXは、フォリン酸(ロイコボリン)、5-フルオロウラシルおよびオキサリプラチンで構成される化学療法レジメンである。2週間ごとに投与される推奨用量スケジュールは次のとおりである:1日目:オキサリプラチン85mg/m2のIV注入およびロイコボリン200mg/m2のIV注入、次いで5-FU 400mg/m2のIVボーラス、次いで5-FU 600mg/m2の22時間持続注入としてのIV注入;2日目:ロイコボリン200mg/m2の120分間にわたるIV注入、次いで5-FU 400mg/m2の2~4分間にわたって投与されるIVボーラス、次いで5-FU 600mg/m2の22時間持続注入としてのIV注入。
【0112】
FOLFIRI化学療法において使用される薬剤の組合せは、5-フルオロウラシル、ロイコボリンおよびイリノテカンを含む。
【0113】
DCF化学療法において使用される薬剤の組合せは、ドセタキセル、シスプラチンおよび5-フルオロウラシルを含む。
【0114】
FLOT化学療法において使用される薬剤の組合せは、ドセタキセル、オキサリプラチン、5-フルオロウラシルおよびフォリン酸を含む。
【0115】
「フォリン酸」または「ロイコボリン」という用語は、化学療法剤5-フルオロウラシルとの相乗作用的組合せにおいて有用な化合物を指す。フォリン酸は、以下の式:
【化14】
を有する。
【0116】
特に、この用語は、化合物(2S)-2-{[4-[(2-アミノ-5-ホルミル-4-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-プテリジン-6-イル)メチルアミノ]ベンゾイル]アミノ}ペンタン二酸を指す。
【0117】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体を、γδ T細胞を刺激する作用物質と組み合わせて、すなわち前記作用物質と同時に、作用物質の前におよび/または作用物質の後に投与し得る。
【0118】
γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に独特のT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットである。T細胞の大部分は、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2本の糖タンパク鎖から成るTCRを有する。これに対し、γδ T細胞では、TCRは1本のγ鎖と1本のδ鎖で構成される。この群のT細胞は、通常、αβ T細胞よりもはるかにまれである。ヒトγδ T細胞は、感染症および自己免疫のようなストレス監視応答において重要な役割を果たす。腫瘍における形質転換誘導性変化も、γδ T細胞によって媒介されるストレス監視応答を生じさせ、抗腫瘍免疫を増強することが示唆されている。重要な点として、抗原係合後、病変部位の活性化されたγδ T細胞は、サイトカイン(例えばINFγ、TNFα)および/または他のエフェクター細胞の動員を媒介するケモカインを提供し、細胞傷害(細胞死受容体および細胞溶解性顆粒経路を介して)およびADCCなどの即時エフェクター機能を示す。
【0119】
末梢血中のγδ T細胞の大部分はVγ9Vδ2 T細胞受容体(TCRγδ)を発現する。Vγ9Vδ2 T細胞はヒトおよび霊長動物に特有であり、これらは多くの急性感染において劇的に増大し、例えば結核症、サルモネラ症、エールリヒア症、ブルセラ症、野兎病、リステリア症、トキソプラスマ症およびマラリアでは、数日以内に他のすべてのリンパ球を上回り得るので、侵入病原体による「危険」を感知する際に早期で必須の役割を果たすと推測される。
【0120】
γδ T細胞は、小さな非ペプチドリン酸化抗原(ホスホ抗原)、例えば細菌において合成されるピロリン酸塩およびメバロン酸経路を介して哺乳動物細胞において産生されるイソペンテニルピロリン酸塩(IPP)に応答する。正常細胞中のIPP産生はγδ T細胞の活性化には十分でないが、腫瘍細胞におけるメバロン酸経路の調節不全はIPPの蓄積およびγδ T細胞の活性化をもたらす。IPPはまた、メバロン酸経路の酵素であるファルネシルピロリン酸シンターゼ(FPPS)を阻害する、アミノビスホスホネートによって治療的に増大させることもできる。数ある中でも、ゾレドロン酸(ZA、ゾレドロネート、Zometa(商標)、Novartis)はそのようなアミノビスホスホネートの代表であり、既に骨粗しょう症および転移性骨疾患の治療のために臨床的に患者に投与されている。インビトロでのPBMCの処置後、ZAは特に単球によって取り込まれる。IPPは単球中に蓄積し、γδ T細胞の発現を刺激する抗原提示細胞へと分化する。この状況では、活性化γδ T細胞のための増殖および生存因子としてインターロイキン2(IL-2)の添加が好ましい。最後に、特定のアルキル化アミンはインビトロでVγ9Vδ2 T細胞を活性化すると記述されているが、わずかにミリモル濃度である。
【0121】
本発明によれば、「γδ T細胞を刺激する作用物質」という用語は、インビトロおよび/またはインビボで、特にγδ T細胞の活性化と増殖を誘導することによって、γδ T細胞、特にVγ9Vδ2 T細胞の発現を刺激する化合物に関する。好ましくは、この用語は、哺乳動物細胞において産生されるイソペンテニルピロリン酸塩(IPP)を、好ましくはメバロン酸経路の酵素、ファルネシルピロリン酸シンターゼ(FPPS)を阻害することによって、インビトロおよび/またはインビボで増大させる化合物に関する。
【0122】
γδ T細胞を刺激する1つの特定の群の化合物は、ビスホスホネート、特に窒素含有ビスホスホネート(N-ビスホスホネート;アミノビスホスホネート)である。
【0123】
例えば、本発明における使用のための適切なビスホスホネートは、その類似体および誘導体、医薬的塩、水和物、エステル、コンジュゲートならびにプロドラッグを含む、以下の化合物の1またはそれ以上を包含し得る:
[1-ヒドロキシ-2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタン-1,1-ジイル]ビス(ホスホン酸)、ゾレドロン酸、例えばゾレドロネート;
(ジクロロ-ホスホノ-メチル)ホスホン酸、例えばクロドロネート;
{1-ヒドロキシ-3-[メチル(ペンチル)アミノ]プロパン-1,1-ジイル}ビス(ホスホン酸)、イバンドロン酸、例えばイバンドロネート;
(3-アミノ-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジイル)ビス(ホスホン酸)、パミドロン酸、例えばパミドロネート;
(1-ヒドロキシ-1-ホスホノ-2-ピリジン-3-イル-エチル)ホスホン酸、リセドロン酸、例えばリセドロネート;
(1-ヒドロキシ-2-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-1-ホスホノエチル)ホスホン酸、ミノドロン酸;
[3-(ジメチルアミノ)-1-ヒドロキシプロパン-1,1-ジイル]ビス(ホスホン酸)、オルパドロン酸;
[4-アミノ-1-ヒドロキシ-1-(ヒドロキシ-オキシド-ホスホリル)-ブチル]ホスホン酸、アレンドロン酸、例えばアレンドロネート;
[(シクロヘプチルアミノ)メチレン]ビス(ホスホン酸)、インカドロン酸;
(1-ヒドロキシエタン-1,1-ジイル)ビス(ホスホン酸)、エチドロン酸、例えばエチドロネート;および
{[(4-クロロフェニル)チオ]メチレン}ビス(ホスホン酸)、チルドロン酸。
【0124】
本発明によれば、ゾレドロン酸(INN)またはゾレドロネート(Zometa、Zomera、AclastaおよびReclastの商品名でNovartisによって市販されている)は特に好ましいビスホスホネートである。Zometaは、多発性骨髄腫および前立腺癌などの癌を有する患者において骨折を予防するため、ならびに骨粗しょう症を治療するために使用される。また、悪性の高カルシウム血症を治療するためにも使用でき、骨転移からの疼痛を治療するのにも役立ち得る。
【0125】
1つの特に好ましい実施形態では、本発明によるγδ T細胞を刺激する作用物質はIL-2と併用して投与される。そのような組合せは、γ9δ2 T細胞の増殖および活性化を媒介するのに特に有効であることが示されている。
【0126】
インターロイキン2(IL-2)は、免疫系におけるサイトカインシグナル伝達分子の一種であるインターロイキンである。リンパ球を誘引するタンパク質であり、微生物感染に対する、および異物(非自己)と自己を識別するうえでの身体の天然応答の一部である。IL-2は、リンパ球によって発現されるIL-2受容体に結合することによってその作用を媒介する。
【0127】
本発明に従って使用されるIL-2は、γδ T細胞の刺激を支持するまたは可能にする任意のIL-2であってよく、任意の種、好ましくはヒトに由来し得る。Il-2は、単離され得るか、組換え生産され得るかまたは合成IL-2であってよく、天然に存在するIL-2または修飾IL-2であってよい。
【0128】
本発明によれば、「制吐薬」という用語は、嘔吐および/または悪心に対して有効な化合物、組成物または薬剤に関する。1つの実施形態では、制吐薬としては、5-HT3受容体アンタゴニストおよび/またはニューロキニン1(NK1)受容体アンタゴニストが挙げられる。
【0129】
5-HT3受容体アンタゴニストは、中枢神経系および胃腸管においてセロトニン受容体をブロックする。その例としては、経口錠剤形態、口腔溶解錠形態でもしくは注射剤中で投与することができるオンダンセトロン(Zofran)、錠剤形態でもしくは注射剤中で投与できるドラセトロン(Anzemet)、錠剤(Kytril)、経口溶液(Kytril)、注射剤(Kytril)もしくは上腕への単一経皮パッチ(Sancuso)中で投与できるグラニセトロン(Kytril,Sancuso)、経口カプセルもしくは注射剤形態で投与できるトロピセトロン(Navoban)、注射剤または経口カプセル中で投与できるパロノセトロン(Aloxi)およびミルタザピン(Remeron)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
NK1受容体アンタゴニストとしては、アプレピタント(Emend)が挙げられるが、これに限定されない。
【0131】
5-HT3受容体アンタゴニストとNK1受容体アンタゴニストの好ましい組合せは、オンダンセトロン(Zofran)とアプレピタント(Emend)の組合せである。
【0132】
特に5-HT3受容体アンタゴニストおよび/またはNK1受容体アンタゴニストと組み合わせて、本発明に従って使用できるさらなる制吐薬としては、運動促進剤としてGI管に作用するメトクロプラミド(Reglan)、ロラゼパム、アトロピン、アリザプリド(Litican、Plitican、Superan、Vergentan)およびジメンヒドリナート(Dramamine、Driminate、Gravol、Gravamin、Vomex、Vertirosan)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
本発明によれば、鎮痙薬(同義語:抗痙攣薬)を投与することができる。本発明によれば、「鎮痙薬」という用語は、筋痙攣を抑制する化合物、組成物または薬剤に関する。好ましくは、鎮痙薬は平滑筋収縮のために有用である。消化器系における痙性作用を治療するうえで有効な鎮痙薬が、本発明によれば好ましい。したがって、好ましい鎮痙薬は胃腸痙攣の軽減において有効である。
【0134】
鎮痙薬としては、ブチルスコポラミン臭化物、ブチルヒヨスチンおよび臭化ブチルヒヨスチンとしても知られる、ブチルスコポラミンが挙げられるが、これに限定されない。これは、Boehringer Ingelheim GmbH,GermanyによってBuscopanの商品名で市販されている。
【0135】
本発明によれば、副交感神経遮断薬を投与することができる。本発明によれば、「副交感神経遮断薬」という用語は、副交感神経系の活性を低減する化合物、組成物または薬剤に関する。副交感神経遮断薬としてはアトロピンが挙げられるが、これに限定されない。
【0136】
本発明によれば、「プロトンポンプ阻害剤」という用語は、主たる作用が胃酸産生の顕著で長期的な低減である化合物、組成物または薬剤に関する。
【0137】
プロトンポンプ阻害剤としては、ベンゾイミダゾール誘導体およびイミダゾピリジン誘導体が挙げられる。プロトンポンプ阻害剤の例としては、オメプラゾール(商標名:Gasec、Losec、Prilosec、Zegerid、ocid、Lomac、Omepral、Omez,)、ランソプラゾール(商標名:Prevacid、Zoton、Monolitum、Inhibitol、Levant、Lupizole)、デクスランソプラゾール(商標名:Kapidex、Dexilant)、エソメプラゾール(商標名:Nexium、Esotrex、esso)、パントプラゾール(商標名:Protonix、Somac、Pantoloc、Pantozol、Zurcal、Zentro、Pan、Controloc、Tecta)、ラベプラゾール(商標名:AcipHex、Pariet、Erraz、Zechin、Rabecid、Nzole-D、Rabeloc、Razo)およびイラプラゾール(商標名:Ilapro、Lupilla、Adiza)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
本発明によれば、特に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を投与する場合、胃粘膜への保護作用を有する他の化合物、組成物または薬剤を投与することができる。
【0139】
例えば、NSAIDの胃潰瘍形成の一般的な有害作用を予防するため、特にNSAID誘導性胃潰瘍を予防するために他の化合物、組成物または薬剤を投与することができる。1つの実施形態では、NSAID誘導性胃潰瘍の予防のために使用される合成プロスタグランジンE1(PGE1)類似体である、ミソプロストールを投与することができる。ミソプロストールは胃壁細胞に作用して、アデニル酸シクラーゼのGタンパク質共役受容体媒介性阻害によって胃酸の分泌を阻害し、これは細胞内サイクリックAMPレベルの低下および胃壁細胞の頂端表面におけるプロトンポンプ活性の低下をもたらす。
【0140】
さらに、オメプラゾールは、NSAID誘導性潰瘍の治療において少なくともミソプロストールと同程度に有効であるが、有意により良好に耐容されることが証明された。
【0141】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、鎮痛および解熱(熱を下げる)作用を提供し、より高用量では、抗炎症作用を与える薬剤のクラスである。「非ステロイド系」という用語は、これらの薬剤をステロイドから区別する。この群の薬剤の最も著名な成員はアスピリン、イブプロフェンおよびナプロキセンである。
【0142】
NSAIDに関連する主たる有害薬剤反応(ADR)の1つは、NSAIDの胃腸(GI)作用に関する。これらの作用は、多くの症例において潰瘍穿孔および上部胃腸出血の危険性をもたらすのに十分なほど重篤である。NSAID患者は、消化不良、NSAID関連上部胃腸有害事象、胃腸(GI)管の刺激およびGI潰瘍形成を経験する。NSAIDはGI管への二重の攻撃を引き起こす:酸性分子は胃粘膜を直接刺激し、COX-1およびCOX-2の阻害は保護的プロスタグランジンのレベルを低下させる。GI管におけるプロスタグランジン合成の阻害は、胃酸分泌の増加、重炭酸分泌の減少、粘液分泌の減少および上皮粘膜への栄養作用の減少を生じさせる。したがって、NSAIDは、本発明によれば好ましくは投与しない。弱い抗炎症作用しか及ぼさないためNSAIDとしては分類されないプラセタモールまたは「アセトアミノフェン」は、本発明に従う鎮痛薬として投与することができるが、疼痛管理のためには効率的でないことがあり、したがって、特にオピオド(opiod)の投与を避けるために、NSAIDの投与が必要となり得る。
【0143】
一般に、胃(しかし必ずしも腸は該当しない)の有害作用は、プロトンポンプ阻害剤、例えばオメプラゾール、エソメプラゾール、またはプロスタグランジン類似体ミソプロストールの併用によって、酸の産生を抑制することを通して低減することができる。
【0144】
「抗原」という用語は、免疫応答が向けられるおよび/または向けられるべきであるエピトープを含有するタンパク質またはペプチドなどの作用物質に関する。好ましい実施形態では、抗原は、CLDN18.2などの腫瘍関連抗原、すなわち細胞質、細胞表面および細胞核に由来し得る癌細胞の成分、特に細胞内でまたは癌細胞上の表面抗原として、好ましくは大量に、産生される抗原である。
【0145】
本発明に関連して、「腫瘍関連抗原」という用語は、好ましくは、正常条件下では限られた数の組織および/もしくは器官においてまたは特定の発生段階で特異的に発現され、1またはそれ以上の腫瘍または癌組織中で発現されるまたは異常発現されるタンパク質に関する。本発明に関連して、腫瘍関連抗原は、好ましくは癌細胞の細胞表面に関連し、好ましくは正常組織中では全く発現されないかまたはまれにしか発現されない。
【0146】
「エピトープ」という用語は、分子中の抗原決定基、すなわち免疫系によって認識される、例えば抗体によって認識される分子中の部分を指す。例えば、エピトープは、免疫系によって認識される、抗原上の別々の三次元部位である。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基群から成り、通常は特定の三次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合は失われるが後者への結合は失われないことによって区別される。CLDN18.2などのタンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続部分または不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25アミノ酸長であり得る。
【0147】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質を指し、その抗原結合部分を含む任意の分子を包含する。「抗体」という用語は、限定されることなく、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、例えばscFv、ならびにFabおよびFab'フラグメントなどの抗原結合抗体フラグメントを含む、モノクローナル抗体および抗体のフラグメントまたは誘導体を包含し、またすべての組換え形態の抗体、例えば原核生物において発現される抗体、非グリコシル化抗体、ならびに本明細書で述べる任意の抗原結合抗体フラグメントおよび誘導体も包含する。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域を含む。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)と軽鎖定常領域を含む。VHおよびVL領域は、より保存された、フレームワーク領域(FR)と称される領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができる。各々のVHとVLは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された、3つのCDRと4つのFRから成る:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0148】
本明細書で述べる抗体はヒト抗体であり得る。「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を包含することが意図されている。本明細書で述べるヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでランダムまたは部位特異的突然変異誘発によってまたはインビボで体細胞突然変異によって導入された突然変異)を含み得る。
【0149】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種からの免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位を有する分子を指し、ここで分子の残りの免疫グロブリン構造は、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく。抗原結合部位は、定常ドメインに融合した完全な可変ドメインを含み得るか、または可変ドメイン内の適切なフレームワーク領域に移植された相補性決定領域(CDR)だけを含み得る。抗原結合部位は、野生型であり得るかまたは1もしくはそれ以上のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい、例えばヒト免疫グロブリンにより密接に類似するように修飾されていてもよい。ヒト化抗体の一部の形態は、すべてのCDR配列を保存する(例えばマウス抗体からの6つのCDR全部を含むヒト化マウス抗体)。他の形態は、もとの抗体に比べて変化した1またはそれ以上のCDRを有する。
【0150】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および軽鎖のアミノ酸配列の各々の一部分が、特定の種に由来するまたは特定のクラスに属する抗体中の対応する配列に相同であり、鎖の残りのセグメントは別の抗体中の対応する配列に相同である抗体を指す。典型的には、軽鎖と重鎖の両方の可変領域が哺乳動物の1つの種に由来する抗体の可変領域を模倣し、定常部分は別の種に由来する抗体の配列に相同である。そのようなキメラ形態の1つの明らかな利点は、可変領域を、例えばヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて、容易に入手可能な非ヒト宿主生物からのB細胞またはハイブリドーマを用いて現在公知の供給源から好都合に誘導できることである。可変領域は調製の容易さという利点を有し、その特異性は供給源に影響されないが、ヒトである定常領域は、抗体を注射した場合、非ヒト供給源からの定常領域よりもヒト被験体からの免疫応答を惹起する可能性が低い。しかし、その定義はこの特定の例に限定されない。
【0151】
抗体の「抗原結合部分」(もしくは単に「結合部分」)または抗体の「抗原結合フラグメント」(もしくは単に「結合フラグメント」)という用語または同様の用語は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1またはそれ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は完全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例としては、(i)VL、VH、CLおよびCHドメインから成る一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab')2フラグメント;(iii)VHおよびCHドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の1本の腕のVLおよびVHドメインから成るFvフラグメント;(v)VHドメインから成る、dAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(vii)場合により合成リンカーによって連結されていてもよい2またはそれ以上の単離されたCDRの組合せ、が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらを、VL領域とVH領域が対合して一価分子を形成する一本鎖タンパク質(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えばBird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)として作製することを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いてそれらを連結することができる。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に包含されることが意図されている。さらなる例は、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドに融合した結合ドメインポリペプチド、(ii)ヒンジ領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、および(iii)CH2定常領域に融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域、を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である。結合ドメインポリペプチドは、重鎖可変領域または軽鎖可変領域であり得る。結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、さらに、米国特許出願第2003/0118592号および同第2003/0133939号に開示されている。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来技術を用いて得られ、フラグメントは、無傷抗体と同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。
【0152】
「二重特異性分子」という用語は、2つの異なる結合特異性を有する任意の作用物質、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質複合体もしくはペプチド複合体を包含することが意図されている。例えば、前記分子は、(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体、に結合し得るまたはこれらと相互作用し得る。「多重特異性分子」または「ヘテロ特異性分子」という用語は、3つ以上の異なる結合特異性を有する任意の作用物質、例えばタンパク質、ペプチド、またはタンパク質複合体もしくはペプチド複合体を包含することが意図されている。例えば、前記分子は、(a)細胞表面抗原、(b)エフェクター細胞の表面上のFc受容体および(c)少なくとも1つの他の成分、に結合し得るまたはこれらと相互作用し得る。したがって、本発明は、CLDN18.2および他の標的、例えばエフェクター細胞上のFc受容体に対する二重特異性、三重特異性、四重特異性および他の多重特異性分子を包含するが、これらに限定されない。「二重特異性抗体」という用語はダイアボディも包含する。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが1本のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合を許容するには短すぎるリンカーを使用し、それによりそれらのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させて、2つの抗原結合部位を創製する、二価の二重特異性抗体である(例えばHolliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123参照)。
【0153】
抗体は、細胞毒、薬剤(例えば免疫抑制剤)または放射性同位体などの治療成分または作用物質に結合し得る。細胞毒または細胞傷害性薬剤は、細胞に有害であり、特に細胞を死滅させる任意の作用物質を包含する。例としては、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、糖質コルチコイド類、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロールおよびピューロマイシンならびにそれらの類似体またはホモログが挙げられる。抗体コンジュゲートを形成するための適切な治療薬としては、代謝拮抗物質(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンCおよびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)(シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前のダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびアントラマイシン(AMC))、ならびに抗有糸分裂薬(例えばビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、治療薬は細胞傷害性物質または放射性毒性物質である。別の実施形態では、治療薬は免疫抑制剤である。さらに別の実施形態では、治療薬はGM-CSFである。好ましい実施形態では、治療薬は、ドキソルビシン、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミドまたはリシンAである。
【0154】
抗体はまた、放射性同位体、例えばヨウ素131、イットリウム90またはインジウム111に結合して、細胞傷害性放射性医薬品を生成することもできる。
【0155】
本発明の抗体コンジュゲートは、所与の生物学的応答を調節するために使用することができ、薬剤成分は古典的化学療法剤に限定されると解釈されるべきではない。例えば薬剤成分は、所望の生物学的活性を有するタンパク質またはポリペプチドであり得る。そのようなタンパク質としては、例えば酵素活性毒素もしくはその活性フラグメント、例えばアブリン、リシンA、シュードモナス外毒素もしくはジフテリア毒素;腫瘍壊死因子もしくはインターフェロンγなどのタンパク質;または生物学的応答調節剤、例えばリンホカイン、インターロイキン1(「IL-1」)、インターロイキン2(「IL-2」)、インターロイキン6(「IL-6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、顆粒球コロニー刺激因子(「G-CSF」)もしくは他の増殖因子などが挙げられ得る。
【0156】
そのような治療成分を抗体に結合するための技術は周知であり、例えばArnon et al.,"Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy",in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Reisfeld et al.(eds.),pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstrom et al.,"Antibodies For Drug Delivery",in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.),Robinson et al.(eds.),pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe,"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review",in Monoclonal Antibodies '84:Biological And Clinical Applications,Pinchera et al.(eds.),pp.475-506(1985);"Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy",in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy,Baldwin et al.(eds.),pp.303-16(Academic Press 1985)、およびThorpe et al.,"The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates",Immunol.Rev.,62:119-58(1982)参照。
【0157】
本明細書で使用される場合、抗体は、その抗体が動物を免疫することによってまたは免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることによって得られる場合、特定の生殖細胞系配列に「由来」し、前記スクリーニングにおいて選択される抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列とアミノ酸配列において少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに一層好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%同一である。典型的には、特定の生殖細胞系配列に由来する抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と10個以下のアミノ酸相違、より好ましくは5、またはさらに一層好ましくは4、3、2または1個以下のアミノ酸相違を示す。
【0158】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ抗体」という用語は、そのうちの少なくとも2つが異なる特異性を有する、共に連結された2またはそれ以上の抗体、その誘導体または抗原結合領域を指す。これらの異なる特異性としては、エフェクター細胞上のFc受容体に対する結合特異性、および標的細胞、例えば腫瘍細胞上の抗原またはエピトープに対する結合特異性が挙げられる。
【0159】
本明細書で述べる抗体はモノクローナル抗体であり得る。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体は単一結合特異性および親和性を示す。1つの実施形態では、モノクローナル抗体は、不死化細胞に融合した、非ヒト動物、例えばマウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。
【0160】
本明細書で述べる抗体は組換え抗体であり得る。「組換え抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、組換え手段によって作製される、発現される、創製されるまたは単離されるすべての抗体、例えば(a)免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックもしくはトランスクロモソーマルである動物(例えばマウス)またはそれから作製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアル抗体ライブラリから単離された抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって作製された、発現された、創製されたまたは単離された抗体、を包含する。
【0161】
本明細書で述べる抗体は、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトを含むがこれらに限定されない、様々な種に由来し得る。
【0162】
本明細書で述べる抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を包含し、IgA1またはIgA2などのIgA、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgMおよびIgD抗体を含む。様々な実施形態において、抗体は、IgG1抗体、より特定するとIgG1、カッパまたはIgG1、ラムダアイソタイプ(すなわちIgG1、κ、λ)、IgG2a抗体(例えばIgG2a、κ、λ)、IgG2b抗体(例えばIgG2b、κ、λ)、IgG3抗体(例えばIgG3、κ、λ)またはIgG4抗体(例えばIgG4、κ、λ)である。
【0163】
「トランスフェクトーマ」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体を発現する組換え真核生物宿主細胞、例えばCHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、植物細胞、または酵母細胞を含む真菌細胞を包含する。
【0164】
本明細書で使用される場合、「異種抗体」は、そのような抗体を産生するトランスジェニック生物に関して定義される。この用語は、トランスジェニック生物から構成されず、および一般にトランスジェニック生物以外の種に由来する生物において認められるものに対応するアミノ酸配列またはコード核酸配列を有する抗体を指す。
【0165】
本明細書で使用される場合、「ヘテロハイブリッド抗体」は、異なる生物起源の軽鎖と重鎖を有する抗体を指す。例えば、マウス軽鎖と結合したヒト重鎖を有する抗体はヘテロハイブリッド抗体である。
【0166】
本発明は、本発明の目的上「抗体」という用語に包含される、本明細書で述べるすべての抗体および抗体の誘導体を包含する。「抗体誘導体」という用語は、抗体の任意の修飾形態、例えば抗体と別の作用物質もしくは抗体とのコンジュゲート、または抗体フラグメントを指す。
【0167】
本明細書で述べる抗体は、好ましくは単離されている。本明細書で使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図されている(例えば、CLDN18.2に特異的に結合する単離された抗体は、CLDN18.2以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。ヒトCLDN18.2のエピトープ、アイソフォームまたは変異体に特異的に結合する単離された抗体は、しかし、他の関連抗原、例えば他の種からの関連抗原(例えばCLDN18.2種ホモログ)に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は、実質的に他の細胞物質および/または化学物質不含であり得る。本発明の1つの実施形態では、「単離された」モノクローナル抗体の組合せは、異なる特異性を有し、十分に定義された組成物または混合物中で組み合わされている抗体に関する。
【0168】
本発明による「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。
【0169】
本発明によれば、抗体が標準的なアッセイにおいて所定の標的に有意の親和性を有し、および前記所定の標的に結合する場合、前記抗体は前記所定の標的に結合することができる。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(KD)によって測定される。好ましくは、「有意の親和性」という用語は、10-5Mもしくはそれ以下、10-6Mもしくはそれ以下、10-7Mもしくはそれ以下、10-8Mもしくはそれ以下、10-9Mもしくはそれ以下、10-10Mもしくはそれ以下、10-11Mもしくはそれ以下、または10-12Mもしくはそれ以下の解離定数(KD)で所定の標的に結合することを指す。
【0170】
抗体が標準的なアッセイにおいて標的に有意の親和性を有さず、および前記標的に有意に結合しない、特に検出可能に結合しない場合、前記抗体は前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、抗体が、最大2μg/mlまで、好ましくは10μg/mlまで、より好ましくは20μg/mlまで、特に50μg/mlまたは100μg/ml以上までの濃度で存在する場合、前記抗体は前記標的に検出可能に結合していない。好ましくは、抗体が、その抗体が結合することができる所定の標的への結合に関するKDよりも少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍または106倍高いKDで前記標的に結合する場合、前記抗体は前記標的に有意の親和性を有さない。例えば、抗体が結合することができる標的への結合に関するKDが10-7Mである場合、前記抗体が有意の親和性を有さない標的への結合に関するKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2Mまたは10-1Mである。
【0171】
抗体が、所定の標的に結合することができるが、他の標的には結合することができない、すなわち標準的なアッセイにおいて他の標的には有意の親和性を有さず、および他の標的に有意に結合しない場合、前記抗体は前記所定の標的に特異的である。本発明によれば、抗体が、CLDN18.2に結合することができるが、他の標的には(実質的に)結合することができない場合、前記抗体はCLDN18.2に特異的である。好ましくは、そのような他の標的に対する親和性および結合が、CLDN18.2に無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)、または非クローディン膜貫通タンパク質、例えばMHC分子もしくはトランスフェリン受容体、または何らかの他の特定のポリペプチドに対する親和性または結合を有意に上回らない場合、前記抗体はCLDN18.2に特異的である。好ましくは、抗体が、その抗体が特異的でない標的への結合に関するKDよりも少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍または106倍低いKDで所定の標的に結合する場合、前記抗体は前記所定の標的に特異的である。例えば、抗体が特異的である標的への結合に関するKDが10-7Mである場合、前記抗体が特異的でない標的への結合に関するKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2Mまたは10-1Mである。
【0172】
標的への抗体の結合は、任意の適切な方法:例えばBerzofsky et al.,"Antibody-Antigen Interactions"In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company New York,NY(1992)参照、および本明細書で述べる方法を用いて実験的に決定することができる。親和性は、従来の技術を用いて、例えば平衡透析によって;製造者によって概説される一般的手順を用いて、BIAcore 2000装置を使用することによって;放射性標識標的抗原を用いた放射性免疫検定法によって;または当業者に公知の別の方法によって、容易に決定し得る。親和性データは、例えばScatchard et al.,Ann N.Y.Acad.ScL,51:660(1949)の方法によって解析し得る。特定の抗体抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件下で、例えば異なる塩濃度、pHの下で測定された場合、異なり得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えばKD、IC50の測定は、好ましくは抗体および抗原の標準溶液および標準緩衝液を使用して行われる。
【0173】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えばIgMまたはIgG1)を指す。
【0174】
本明細書で使用される場合、「アイソタイプスイッチ」は、抗体のクラスまたはアイソタイプがある1つのIgクラスからその他のIgクラスの1つに変化する現象を指す。
【0175】
物体に適用される場合の本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体を自然界で見出すことができるという事実を指す。例えば、自然界の供給源から単離することができる生物(ウイルスを含む)中に存在し、実験室においてヒトによって意図的に改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0176】
本明細書で使用される「再編成された」という用語は、基本的にそれぞれ完全なVHまたはVLドメインをコードする立体配座においてVセグメントがD-JまたはJセグメントに直接隣接して位置する、重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座の立体配置を指す。再編成された免疫グロブリン(抗体)遺伝子座は、生殖細胞系DNAとの比較によって同定することができ、再編成された遺伝子座は、少なくとも1つの組み換えられた7量体/9量体相同性エレメントを有する。
【0177】
Vセグメントに関して本明細書で使用される「再編成されていない」または「生殖細胞系立体配置」という用語は、Vセグメントが、DまたはJセグメントに直接隣接するように組み換えられていない立体配置を指す。
【0178】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、CLDN18.2中に存在するエピトープ、好ましくはCLDN18.2の細胞外ドメイン内、特に第一細胞外ドメイン内、好ましくはCLDN18.2のアミノ酸位置29~78内に位置するエピトープに結合することができる抗体である。特定の実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、(i)CLDN18.1上には存在しないCLDN18.2上のエピトープ、好ましくは配列番号:3、4および5、(ii)CLDN18.2-ループ1上に局在するエピトープ、好ましくは配列番号:8、(iii)CLDN18.2-ループ2上に局在するエピトープ、好ましくは配列番号:10、(iv)CLDN18.2-ループD3上に局在するエピトープ、好ましくは配列番号:11、(v)CLDN18.2-ループ1およびCLDN18.2-ループD3を包含するエピトープ、または(vi)CLDN18.2-ループD3上に局在する非グリコシル化エピトープ、好ましくは配列番号:9、に結合することができる抗体である。
【0179】
本発明によれば、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有するが、CLDN18.1に結合する能力は有さない抗体である。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体はCLDN18.2に特異的である。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは細胞表面に発現されたCLDN18.2に結合する能力を有する抗体である。特定の好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、生細胞の表面に存在するCLDN18.2の天然エピトープに結合する。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号:1、3~11、44、46および48~50から成る群より選択される1またはそれ以上のペプチドに結合する。好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、前述したタンパク質、ペプチドまたはその免疫原性フラグメントもしくは誘導体に特異的である。CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号:1、3~11、44、46および48~50から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質もしくはペプチド、または前記タンパク質もしくはペプチドを発現する核酸もしくは宿主細胞で動物を免疫する工程を含む方法によって入手し得る。好ましくは、抗体は、癌細胞、特に前述した癌型の細胞に結合し、および好ましくは、非癌性細胞には実質的に結合しない。
【0180】
好ましくは、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体の、CLDN18.2を発現する細胞への結合は、CLDN18.2を発現する細胞の死滅を誘導または媒介する。CLDN18.2を発現する細胞は、好ましくは癌細胞であり、特に腫瘍形成性胃癌、食道癌、膵癌、肺癌、卵巣癌、結腸癌、肝癌、頭頸部癌および胆嚢癌細胞から成る群より選択される。好ましくは、抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシスおよびCLDN18.2を発現する細胞の増殖の阻害の1またはそれ以上を誘導することによって細胞の死滅を誘導または媒介する。好ましくは、細胞のADCC媒介性溶解はエフェクター細胞の存在下で起こり、エフェクター細胞は、特定の実施形態では単球、単核細胞、NK細胞およびPMNから成る群より選択される。細胞の増殖の阻害は、ブロモデオキシウリジン(5-ブロモ-2-デオキシウリジン、BrdU)を使用したアッセイにおいて細胞の増殖を定量することによってインビトロで測定できる。BrdUは、チミジンの類似体である合成ヌクレオシドであり、複製中の細胞の新たに合成されたDNAに組み込まれることができ(細胞周期のS期の間に)、DNA複製の間にチミジンと置き換わる。例えばBrdUに特異的な抗体を使用して、組み込まれた化学物質を検出することにより、そのDNAを活発に複製していた細胞が示される。
【0181】
好ましい実施形態では、本明細書で述べる抗体は、以下の特性:
a)CLDN18.2に対する特異性;
b)約100nMまたはそれ以下、好ましくは約5~10nMまたはそれ以下、より好ましくは約1~3nMまたはそれ以下のCLDN18.2に対する結合親和性;
c)CLDN18.2陽性細胞上でCDCを誘導または媒介する能力;
d)CLDN18.2陽性細胞上でADCCを誘導または媒介する能力;
e)CLDN18.2陽性細胞の増殖を阻害する能力;
f)CLDN18.2陽性細胞のアポトーシスを誘導する能力
の1つまたはそれ以上を特徴とし得る。
【0182】
特に好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、DSMZ(Mascheroder Weg 1b,31824 Braunschweig,Germany;新住所:Inhoffenstr.7B,31824 Braunschweig,Germany)に寄託された、以下の名称およびアクセッション番号を有するハイブリドーマによって産生される:
a.182-D1106-055、アクセッション番号DSM ACC2737、2005年10月19日寄託
b.182-D1106-056、アクセッション番号DSM ACC2738、2005年10月19日寄託
c.182-D1106-057、アクセッション番号DSM ACC2739、2005年10月19日寄託
d.182-D1106-058、アクセッション番号DSM ACC2740、2005年10月19日寄託
e.182-D1106-059、アクセッション番号DSM ACC2741、2005年10月19日寄託
f.182-D1106-062、アクセッション番号DSM ACC2742、2005年10月19日寄託
g.182-D1106-067、アクセッション番号DSM ACC2743、2005年10月19日寄託
h.182-D758-035、アクセッション番号DSM ACC2745、2005年11月17日寄託
i.182-D758-036、アクセッション番号DSM ACC2746、2005年11月17日寄託
j.182-D758-040、アクセッション番号DSM ACC2747、2005年11月17日寄託
k.182-D1106-061、アクセッション番号DSM ACC2748、2005年11月17日寄託
l.182-D1106-279、アクセッション番号DSM ACC2808、2006年10月26日寄託
m.182-D1106-294、アクセッション番号DSM ACC2809、2006年10月26日寄託
n.182-D1106-362、アクセッション番号DSM ACC2810、2006年10月26日寄託。
【0183】
本発明による好ましい抗体は、上述したハイブリドーマによって産生されるおよび上述したハイブリドーマから得られるもの、すなわち182-D1106-055の場合は37G11、182-D1106-056の場合は37H8、182-D1106-057の場合は38G5、182-D1106-058の場合は38H3、182-D1106-059の場合は39F11、182-D1106-062の場合は43A11、182-D1106-067の場合は61C2、182-D758-035の場合は26B5、182-D758-036の場合は26D12、182-D758-040の場合は28D10、182-D1106-061の場合は42E12、182-D1106-279の場合は125E1、182-D1106-294の場合は163E12、および182-D1106-362の場合は175D10;ならびにそのキメラおよびヒト化形態である。
【0184】
好ましいキメラ抗体およびそれらの配列を以下の表に示す。
【表1-1】
【0185】
好ましい実施形態では、抗体、特に本発明によるキメラ形態の抗体は、配列番号:13によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントなどのヒト重鎖定常領域に由来するアミノ酸配列を有する重鎖定常領域(CH)を含む抗体を包含する。さらなる好ましい実施形態では、抗体、特に本発明によるキメラ形態の抗体は、配列番号:12によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントなどのヒト軽鎖定常領域に由来するアミノ酸配列を有する軽鎖定常領域(CL)を含む抗体を包含する。特定の好ましい実施形態では、抗体、特に本発明によるキメラ形態の抗体は、配列番号:13によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントなどのヒトCHに由来するアミノ酸配列を有するCHを含み、および配列番号:12によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントなどのヒトCLに由来するアミノ酸配列を有するCLを含む抗体を包含する。
【0186】
1つの実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、マウスκ可変軽鎖、ヒトκ軽鎖定常領域アロタイプKm(3)、マウス重鎖可変領域、ヒトIgG1定常領域、アロタイプG1m(3)を含むキメラマウス/ヒトIgG1モノクローナル抗体である。
【0187】
特定の好ましい実施形態では、キメラ形態の抗体は、配列番号:14、15、16、17、18、19およびそのフラグメントから成る群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖を含み、ならびに/または配列番号:20、21、22、23、24、25、26、27、28およびそのフラグメントから成る群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗体を包含する。
【0188】
特定の好ましい実施形態では、キメラ形態の抗体は、以下の可能性(i)~(ix)から選択される重鎖と軽鎖の組合せを含む抗体を包含する:
(i)重鎖は配列番号:14によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:21によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(ii)重鎖は配列番号:15によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:20によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(iii)重鎖は配列番号:16によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:22によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(iv)重鎖は配列番号:18によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:25によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(v)重鎖は配列番号:17によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:24によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(vi)重鎖は配列番号:19によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:23によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(vii)重鎖は配列番号:19によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:26によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(viii)重鎖は配列番号:19によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:27によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、ならびに
(ix)重鎖は配列番号:19によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、および軽鎖は配列番号:28によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。
【0189】
(v)に従う抗体が特に好ましい。
【0190】
上記で使用される「フラグメント」または「アミノ酸配列のフラグメント」は、抗体配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮された抗体配列であり、抗体中で前記抗体配列に置き換わった場合、前記抗体のCLDN18.2への結合および好ましくは本明細書で述べる前記抗体の機能、例えばCDC媒介性溶解またはADCC媒介性溶解を保持する配列に関する。好ましくは、アミノ酸配列のフラグメントは、前記アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%を含む。配列番号:14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27および28から成る群より選択されるアミノ酸配列のフラグメントは、好ましくはN末端の17、18、19、20、21、22または23個のアミノ酸が除去されている前記配列に関する。
【0191】
好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号:29、30、31、32、33、34およびそのフラグメントから成る群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)を含む。
【0192】
好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、配列番号:35、36、37、38、39、40、41、42、43およびそのフラグメントから成る群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0193】
特定の好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の可能性(i)~(ix)から選択される重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)の組合せを含む:
(i)VHは配列番号:29によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:36によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(ii)VHは配列番号:30によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:35によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(iii)VHは配列番号:31によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:37によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(iv)VHは配列番号:33によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:40によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(v)VHは配列番号:32によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:39によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(vi)VHは配列番号:34によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:38によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(vii)VHは配列番号:34によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:41によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(viii)VHは配列番号:34によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:42によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む、
(ix)VHは配列番号:34によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含み、およびVLは配列番号:43によって表されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを含む。
【0194】
(v)に従う抗体が特に好ましい。
【0195】
好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の実施形態(i)~(vi)から選択される相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3のセットを含有するVHを含む:
(i)CDR1:配列番号:14の45~52位、CDR2:配列番号:14の70~77位、CDR3:配列番号:14の116~125位、
(ii)CDR1:配列番号:15の45~52位、CDR2:配列番号:15の70~77位、CDR3:配列番号:15の116~126位、
(iii)CDR1:配列番号:16の45~52位、CDR2:配列番号:16の70~77位、CDR3:配列番号:16の116~124位、
(iv)CDR1:配列番号:17の45~52位、CDR2:配列番号:17の70~77位、CDR3:配列番号:17の116~126位、
(v)CDR1:配列番号:18の44~51位、CDR2:配列番号:18の69~76位、CDR3:配列番号:18の115~125位、および
(vi)CDR1:配列番号:19の45~53位、CDR2:配列番号:19の71~78位、CDR3:配列番号:19の117~128位。
【0196】
好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の実施形態(i)~(ix)から選択される相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3のセットを含有するVLを含む:
(i)CDR1:配列番号:20の47~58位、CDR2:配列番号:20の76~78位、CDR3:配列番号:20の115~123位、
(ii)CDR1:配列番号:21の49~53位、CDR2:配列番号:21の71~73位、CDR3:配列番号:21の110~118位、
(iii)CDR1:配列番号:22の47~52位、CDR2:配列番号:22の70~72位、CDR3:配列番号:22の109~117位、
(iv)CDR1:配列番号:23の47~58位、CDR2:配列番号:23の76~78位、CDR3:配列番号:23の115~123位、
(v)CDR1:配列番号:24の47~58位、CDR2:配列番号:24の76~78位、CDR3:配列番号:24の115~123位、
(vi)CDR1:配列番号:25の47~58位、CDR2:配列番号:25の76~78位、CDR3:配列番号:25の115~122位、
(vii)CDR1:配列番号:26の47~58位、CDR2:配列番号:26の76~78位、CDR3:配列番号:26の115~123位、
(viii)CDR1:配列番号:27の47~58位、CDR2:配列番号:27の76~78位、CDR3:配列番号:27の115~123位、および
(ix)CDR1:配列番号:28の47~52位、CDR2:配列番号:28の70~72位、CDR3:配列番号:28の109~117位。
【0197】
好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、以下の実施形態(i)~(ix)から選択される相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3のセットをそれぞれ含有するVHとVLの組合せを含む:
(i)VH:CDR1:配列番号:14の45~52位、CDR2:配列番号:14の70~77位、CDR3:配列番号:14の116~125位、VL:CDR1:配列番号:21の49~53位、CDR2:配列番号:21の71~73位、CDR3:配列番号:21の110~118位、
(ii)VH:CDR1:配列番号:15の45~52位、CDR2:配列番号:15の70~77位、CDR3:配列番号:15の116~126位、VL:CDR1:配列番号:20の47~58位、CDR2:配列番号:20の76~78位、CDR3:配列番号:20の115~123位、
(iii)VH:CDR1:配列番号:16の45~52位、CDR2:配列番号:16の70~77位、CDR3:配列番号:16の116~124位、VL:CDR1:配列番号:22の47~52位、CDR2:配列番号:22の70~72位、CDR3:配列番号:22の109~117位、
(iv)VH:CDR1:配列番号:18の44~51位、CDR2:配列番号:18の69~76位、CDR3:配列番号:18の115~125位、VL:CDR1:配列番号:25の47~58位、CDR2:配列番号:25の76~78位、CDR3:配列番号:25の115~122位、
(v)VH:CDR1:配列番号:17の45~52位、CDR2:配列番号:17の70~77位、CDR3:配列番号:17の116~126位、VL:CDR1:配列番号:24の47~58位、CDR2:配列番号:24の76~78位、CDR3:配列番号:24の115~123位、
(vi)VH:CDR1:配列番号:19の45~53位、CDR2:配列番号:19の71~78位、CDR3:配列番号:19の117~128位、VL:CDR1:配列番号:23の47~58位、CDR2:配列番号:23の76~78位、CDR3:配列番号:23の115~123位、
(vii)VH:CDR1:配列番号:19の45~53位、CDR2:配列番号:19の71~78位、CDR3:配列番号:19の117~128位、VL:CDR1:配列番号:26の47~58位、CDR2:配列番号:26の76~78位、CDR3:配列番号:26の115~123位、
(viii)VH:CDR1:配列番号:19の45~53位、CDR2:配列番号:19の71~78位、CDR3:配列番号:19の117~128位、VL:CDR1:配列番号:27の47~58位、CDR2:配列番号:27の76~78位、CDR3:配列番号:27の115~123位、および
(ix)VH:CDR1:配列番号:19の45~53位、CDR2:配列番号:19の71~78位、CDR3:配列番号:19の117~128位、VL:CDR1:配列番号:28の47~52位、CDR2:配列番号:28の70~72位、CDR3:配列番号:28の109~117位。
【0198】
さらなる好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは、CLDN18.2に対するモノクローナル抗体、好ましくは本明細書で述べるCLDN18.2に対するモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の1またはそれ以上、好ましくは少なくともCDR3可変領域を含み、ならびに好ましくは、本明細書で述べる重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域(CDR)の1またはそれ以上、好ましくは少なくともCDR3可変領域を含む。1つの実施形態では、前記相補性決定領域(CDR)の1またはそれ以上は、本明細書で述べる相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3のセットから選択される。特に好ましい実施形態では、CLDN18.2に結合する能力を有する抗体は、好ましくは、CLDN18.2に対するモノクローナル抗体、好ましくは本明細書で述べるCLDN18.2に対するモノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3を含み、ならびに好ましくは、本明細書で述べる重鎖可変領域(VH)および/または軽鎖可変領域(VL)の相補性決定領域CDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0199】
1つの実施形態では、本明細書で述べる1またはそれ以上のCDR、CDRのセットまたはCDRのセットの組合せを含む抗体は、それらの介在フレームワーク領域と共に前記CDRを含む。好ましくは、その部分は、1番目と4番目のフレームワーク領域のいずれかまたは両方の少なくとも約50%を含み、前記50%は、1番目のフレームワーク領域のC末端の50%および4番目のフレームワーク領域のN末端の50%である。組換えDNA技術によって行われる抗体の構築は、本発明の可変領域を免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えばダイアボディの作製において)またはタンパク質標識を含むさらなるタンパク質配列に連結するためのリンカーの導入を含む、クローニングまたは他の操作工程を容易にするために導入されるリンカーによってコードされる可変領域のN末端またはC末端側に残基の導入を生じさせ得る。
【0200】
1つの実施形態では、本明細書で述べる1またはそれ以上のCDR、CDRのセットまたはCDRのセットの組合せを含む抗体は、ヒト抗体フレームワーク内に前記CDRを含む。
【0201】
抗体の重鎖に関して特定の鎖または特定の領域もしくは配列を含む抗体への本明細書における言及は、好ましくは前記抗体のすべての重鎖が前記特定の鎖、領域または配列を含む状況に関する。これは抗体の軽鎖にも対応して適用される。
【0202】
「核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、DNAおよびRNAを包含することが意図されている。核酸は一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0203】
本発明によれば、「発現」という用語はその最も一般的な意味で使用され、RNAの産生またはRNAとタンパク質/ペプチドの産生を包含する。この用語は核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性にまたは安定に実施され得る。
【0204】
特定のアミノ酸配列、例えば配列表に示すものに関して本明細書で与えられる教示は、前記特定配列と機能的に等価である配列、例えば特定のアミノ酸配列の特性と同一または類似の特性を示すアミノ酸配列を生じさせる前記特定配列の変異体にも関するように解釈されるべきである。1つの重要な特性は、抗体のその標的への結合を保持することまたは抗体のエフェクター機能を維持することである。好ましくは、特定の配列に関して変異体である配列は、それが抗体中で前記特定配列に置き換わる場合、前記抗体のCLDN18.2への結合および好ましくは本明細書で述べる前記抗体の機能、例えばCDC媒介性溶解またはADCC媒介性溶解を保持する。
【0205】
特にCDR、超可変領域および可変領域の配列は、CLDN18.2に結合する能力を失わずに修飾され得ることが当業者に認識される。例えば、CDR領域は、本明細書で特定される抗体の領域に同一または高度に相同である。「高度に相同」により、1~5、好ましくは1~4、例えば1~3または1もしくは2個の置換がCDR内で為されていてもよいことが企図される。加えて、超可変領域および可変領域は、本明細書で特定して開示される抗体の領域と実質的な相同性を示すように修飾され得る。
【0206】
本発明の目的上、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を包含する。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0207】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列内に1または2またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1またはそれ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定の部位に挿入されているが、生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。
【0208】
アミノ酸付加変異体は、1またはそれ以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。
【0209】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1またはそれ以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失はタンパク質の任意の位置であり得る。
【0210】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチドの間で保存されていないアミノ酸配列内の位置に修飾が存在することおよび/またはアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換されることが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体内のアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち類似の荷電または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を包含する。天然に存在するアミノ酸は、一般に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、時として芳香族アミノ酸として一緒に分類される。
【0211】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性の程度、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%であるアミノ酸領域に関して与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸から成る場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸に関して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は参照アミノ酸配列の全長に関して与えられる。配列類似性、好ましく配列同一性を決定するためのアラインメントは、当分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、キャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を用いて実施することができる。
【0212】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換であるアミノ酸のパーセントを示す。2つのアミノ酸配列の間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸のパーセントを示す。
【0213】
「同一性パーセント」という用語は、最良のアラインメント後に得られる、比較しようとする2つの配列の間で同一であるアミノ酸残基のパーセントを表すことが意図されており、このパーセントは純粋に統計的であって、2つの配列間の相違はランダムにおよびそれらの全長にわたって分布している。2つのアミノ酸配列の間の配列比較は、従来これらの配列を最適に整列した後で比較することによって実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに実施される。比較のための配列の最適アラインメントは、手作業による以外に、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0214】
同一性パーセントは、比較する2つの配列の間で同一の位置の数を決定し、これら2つの配列間の同一性パーセントを得るためにこの数を比較する位置の数で除して、得られた結果に100を乗じることによって計算される。
【0215】
「トランスジェニック動物」という用語は、1またはそれ以上の導入遺伝子、好ましくは重鎖および/もしくは軽鎖導入遺伝子、または導入染色体(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれているかもしくは組み込まれていない)を含むゲノムを有し、好ましくは導入遺伝子を発現することができる動物を指す。例えばトランスジェニックマウスは、マウスが、CLDN18.2抗原および/またはCLDN18.2を発現する細胞で免疫化された場合、ヒト抗CLDN18.2抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子と、ヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、HCo7もしくはHCol2マウスなどのトランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウスの場合のように、マウスの染色体DNAに組み込まれ得るか、またはヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号に記載されているトランスクロモソーマル(例えばKM)マウスの場合のように、染色体外に維持され得る。そのようなトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスは、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによってCLDN18.2に対するヒトモノクローナル抗体の多数のアイソタイプ(例えばIgG、IgAおよび/またはIgE)を産生し得る。
【0216】
本明細書で使用される「低減する」または「阻害する」は、レベル、例えば細胞の発現のレベルまたは増殖のレベルの、好ましくは5%またはそれ以上、10%またはそれ以上、20%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、最も好ましくは75%またはそれ以上の全体的な低下または全体的な低下を引き起こす能力を意味する。
【0217】
「増大させる」または「増強する」などの用語は、好ましくは少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに一層好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはさらにそれ以上の増大または増強に関する。
【0218】
mAbの作用機構
以下は、本発明の抗体の治療効果の基礎となる機構についての考察を提供するが、これはいかなる意味においても本発明への限定とみなされるべきではない。
【0219】
本明細書で述べる抗体は、好ましくはADCCまたはCDCを介して、好ましくは免疫系の成分と相互作用する。本明細書で述べる抗体は、ペイロード(例えば放射性同位体、薬剤もしくは毒素)を標的して腫瘍細胞を直接死滅させるためにも使用でき、または伝統的な化学療法剤と相乗作用的に使用して、Tリンパ球への化学療法剤の細胞傷害性副作用のために損なわれた可能性がある抗腫瘍免疫応答を含み得る補完的な作用機構を介して腫瘍を攻撃することもできる。しかし、本明細書で述べる抗体はまた、単に細胞表面上のCLDN18.2に結合することによって、したがって、例えば細胞の増殖をブロックすることによっても作用を及ぼし得る。
【0220】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
ADCCは、本明細書で述べるエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能力を表し、これは、好ましくは標的細胞が抗体によって印づけられることを必要とする。
【0221】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcR)と係合した場合に起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、規定されたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、抗原提示および腫瘍に対するT細胞応答の誘導をもたらす様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構とみなすことができる。好ましくは、ADCCのインビボ誘導は、腫瘍に対するT細胞応答および宿主由来の抗体応答をもたらす。
【0222】
補体依存性細胞傷害
CDCは、抗体によって指令され得るもう1つの細胞死滅方法である。IgMは補体活性化のために最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、どちらも古典的補体活性化経路によってCDCを指令するのに非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与する抗体分子のCH2ドメイン上のごく近接する多数のC1q結合部位の露出を生じさせる(C1qは補体C1の3つのサブ成分の1つである)。好ましくは、これらの露出されたC1q結合部位は、それまでの低親和性C1q-IgG相互作用を高いアビディティの相互作用へと変換し、それが、一連の他の補体タンパク質を含む事象のカスケードを開始させ、エフェクター細胞化学走性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出を導く。好ましくは、補体カスケードは、細胞内へのおよび細胞から外への水と溶質の自由な通過を促進する細胞膜の細孔を作り出す、膜傷害性複合体の形成で終了する。
【0223】
本明細書で述べる抗体は、従来のモノクローナル抗体法、例えばKohler and Milstein,Nature 256:495(1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む、様々な技術によって作製することができる。体細胞ハイブリダイゼーション手順が原則として好ましいが、モノクローナル抗体を作製するための他の技術、例えばBリンパ球のウイルス形質転換もしくは発癌性形質転換または抗体遺伝子のライブラリを用いたファージディスプレイ技術も使用することができる。
【0224】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための好ましい動物系はマウスの系である。マウスにおけるハイブリドーマの作製は極めて広く確立された手順である。免疫プロトコルおよび融合のために免疫脾細胞を単離する技術は当分野で公知である。融合パートナー(例えばマウス骨髄腫細胞)および融合手順も公知である。
【0225】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するための他の好ましい動物系は、ラットおよびウサギの系である(例えばSpieker-Polet et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:9348(1995)に記載されている;またRossi et al.,Am.J.Clin.Pathol.124:295(2005)も参照のこと)。
【0226】
さらに別の好ましい実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、マウスの系ではなくヒト免疫系の一部分を担持するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマルマウスを使用して作製できる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソーマルマウスは、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスとして公知のマウスを含み、本明細書では集合的に「トランスジェニックマウス」と称する。そのようなトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体の生産は、国際公開第2004/035607号の中でCD20に関して詳述されているように実施することができる。
【0227】
モノクローナル抗体を作製するためのさらに別の方策は、定義された特異性を有する抗体を産生するリンパ球から抗体をコードする遺伝子を直接単離することであり、例えばBabcock et al.,1996;A novel strategy for generating monoclonal antibodies from single,isolated lymphocytes producing antibodies of defined specificities参照。組換え抗体工学の詳細については、Welschof and Kraus,Recombinant antibodes for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8およびBenny K.C.Lo Antibody Engineering ISBN 1-58829-092-1も参照のこと。
【0228】
抗体を作製するため、上述したように、抗原配列、すなわちそれに対して抗体が向けられるべき配列に由来する担体結合ペプチド、組換え発現された抗原もしくはそのフラグメントの富化調製物および/または抗原を発現する細胞でマウスを免疫することができる。あるいは、抗原またはそのフラグメントをコードするDNAでマウスを免疫することができる。抗原の精製または富化調製物を使用した免疫が抗体を生じない場合は、免疫応答を促進するために抗原を発現する細胞、例えば細胞株でマウスを免疫することもできる。
【0229】
免疫プロトコルの経過中、尾静脈または眼窩後採血によって得られる血漿および血清試料に関して免疫応答を観測することができる。免疫グロブリンの十分な力価を有するマウスを融合のために使用できる。特異的抗体を分泌するハイブリドーマの割合を高めるため、犠死および脾切除の3日前に抗原発現細胞を用いてマウスを腹腔内または静脈内経路で追加免疫することができる。
【0230】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを作製するため、免疫マウスからの脾細胞およびリンパ節細胞を単離し、マウス骨髄腫細胞株などの適切な不死化細胞株に融合することができる。生じたハイブリドーマを、次に、抗原特異的抗体の産生に関してスクリーニングすることができる。その後個々のウェルを、ELISAによって抗体を分泌するハイブリドーマに関してスクリーニングすることができる。抗原発現細胞を使用した免疫蛍光法およびFACS分析により、抗原に対して特異性を有する抗体を同定できる。抗体を分泌するハイブリドーマを再度プレートし、再びスクリーニングして、モノクローナル抗体に関してまだ陽性である場合は限界希釈によってサブクローニングすることができる。その後、安定なサブクローンをインビトロで培養し、特徴づけのために組織培養培地中で抗体を作製することができる。
【0231】
抗体はまた、例えば当分野で周知の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組合せを用いて(Morrison,S.(1985)Science 229:1202)、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生させることもできる。
【0232】
例えば、1つの実施形態では、関心対象の遺伝子、例えば抗体遺伝子を、国際公開第87/04462号、同第WO89/01036号および欧州特許第338 841号に開示されているGS遺伝子発現系または当分野で周知の他の発現系によって使用されるような真核生物発現プラスミドなどの発現ベクターに連結することができる。クローニングした抗体遺伝子を含む精製プラスミドを、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞またはHEK293細胞などの真核生物宿主細胞、あるいは植物由来細胞、真菌または酵母細胞のような他の真核細胞に導入することができる。これらの遺伝子を導入するのに使用される方法は、電気穿孔、リポフェクチン、リポフェクタミンその他のような当分野で記述されている方法であり得る。宿主細胞へのこれらの抗体遺伝子の導入後、抗体を発現する細胞を同定し、選択することができる。これらの細胞はトランスフェクトーマであり、その後これらを発現レベルに関して増幅し、抗体を生産するためにスケールアップすることができる。これらの培養上清および/または細胞から組換え抗体を単離し、精製することができる。
【0233】
あるいは、クローニングした抗体遺伝子を、微生物、例えば大腸菌などの原核細胞を含む、他の発現系において発現させることができる。さらに、抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えばヒツジおよびウサギからの乳もしくは雌鶏からの卵において、またはトランスジェニック植物において生産することができる;例えばVerma,R.,et al.(1998)J.Immunol.Meth.216:165-181;Pollock,et al.(1999)J.Immunol.Meth.231:147-157;およびFischer,R.,et al.(1999)Biol.Chem.380:825-839参照。
【0234】
キメラ化
マウスモノクローナル抗体は、毒素または放射性同位体で標識した場合、ヒトにおいて治療用抗体として使用することができる。非標識マウス抗体は、反復適用した場合ヒトにおいて高度に免疫原性であり、治療効果の低下をもたらす。主たる免疫原性は重鎖定常領域によって媒介される。ヒトにおけるマウス抗体の免疫原性は、それぞれの抗体をキメラ化またはヒト化した場合、低減するまたは完全に回避することができる。キメラ抗体は、その異なる部分が異なる動物種に由来する抗体、例えばマウス抗体に由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するものである。抗体のキメラ化は、マウス抗体の重鎖および軽鎖の可変領域をヒト重鎖および軽鎖の定常領域と連結することによって達成される(例えばKraus et al.,in Methods in Molecular Biology series,Recombinant antibodies for cancer therapy ISBN-0-89603-918-8によって記述されている)。好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトκ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって作製される。同じく好ましい実施形態では、キメラ抗体は、ヒトλ軽鎖定常領域をマウス軽鎖可変領域に連結することによって作製できる。キメラ抗体の作製のための好ましい重鎖定常領域は、IgG1、IgG3およびIgG4である。キメラ抗体の作製のための他の好ましい重鎖定常領域は、IgG2、IgA、IgDおよびIgMである。
【0235】
ヒト化
抗体は、主として、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間でCDRの外側の配列よりも多様である。CDR配列は大部分の抗体-抗原相互作用に関与するので、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された、特定の天然に存在する抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然に存在する抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現することが可能である(例えばRiechmann,L.et al.(1998)Nature 332:323-327;Jones,P.et al.(1986)Nature 321:522-525;およびQueen,C.et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029-10033参照)。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列を含む公的DNAデータベースから入手することができる。これらの生殖細胞系配列は、B細胞の成熟の間にV(D)J連結によって形成される、完全に構築された可変遺伝子を含まないので、成熟抗体遺伝子配列とは異なる。生殖細胞系遺伝子配列はまた、高親和性二次レパートリー抗体の配列とも、可変領域全体にわたって均一に個別に異なる。
【0236】
抗原に結合する抗体の能力は、標準的な結合アッセイ(例えばELISA、ウェスタンブロット法、免疫蛍光法およびフローサイトメトリ分析)を用いて決定することができる。
【0237】
抗体を精製するため、選択したハイブリドーマをモノクローナル抗体精製用の2リットルスピナーフラスコ中で増殖させることができる。あるいは、透析に基づくバイオリアクターにおいて抗体を生産することができる。上清をろ過し、必要に応じて濃縮した後、プロテインG-セファロースまたはプロテインA-セファロースによるアフィニティクロマトグラフィに供することができる。溶出したIgGを、純度を保証するためにゲル電気泳動および高性能液体クロマトグラフィによって検査できる。緩衝液をPBSに交換し、1.43の吸光係数を使用してOD280によって濃度を決定することができる。モノクローナル抗体をアリコートに分け、-80℃で保存することができる。
【0238】
選択したモノクローナル抗体がユニークなエピトープに結合するかどうかを判定するため、部位指定または多部位指定突然変異誘発が使用できる。
【0239】
抗体のアイソタイプを決定するため、様々な市販のキット(例えばZymed、Roche Diagnostics)によるアイソタイプELISAを実施できる。マイクロタイタープレートのウェルを抗マウスIgで被覆することができる。ブロックした後、プレートを周囲温度で2時間、モノクローナル抗体または精製アイソタイプ対照と反応させる。次に、ウェルをマウスIgG1、IgG2a、IgG2bもしくはIgG3、IgAまたはマウスIgM特異的ペルオキシダーゼ結合プローブのいずれかと反応させることができる。洗浄後、プレートをABTS基質(1mg/ml)で展開し、405~650のODで分析することができる。あるいは、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(Roche、カタログ番号1493027)を、製造者によって述べられているように使用し得る。
【0240】
免疫したマウスの血清中の抗体の存在または抗原を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を明らかにするために、フローサイトメトリを用いることができる。天然にまたはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株と抗原発現を欠く陰性対照(標準的な増殖条件下で増殖させた)を、ハイブリドーマ上清中または1%FBSを含有するPBS中で様々な濃度のモノクローナル抗体と混合し、4℃で30分間インキュベートすることができる。洗浄後、APC標識またはAlexa647標識抗IgG抗体を、一次抗体染色と同じ条件下で抗原結合モノクローナル抗体に結合することができる。単一生細胞をゲートする側方光散乱特性を利用したFACS装置でのフローサイトメトリによって試料を分析することができる。単一測定において抗原特異的モノクローナル抗体を非特異的結合体から区別するために、同時トランスフェクションの方法が使用できる。抗原と蛍光マーカーをコードするプラスミドを一過性にトランスフェクトした細胞を上述したように染色することができる。トランスフェクトされた細胞は、抗体染色細胞とは異なる蛍光チャネルで検出できる。トランスフェクト細胞の大部分は両方の導入遺伝子を発現するので、抗原特異的モノクローナル抗体は蛍光マーカー発現細胞に選択的に結合し、一方非特異的抗体は同等の割合で非トランスフェクト細胞に結合する。蛍光顕微鏡検査を用いた選択的なアッセイをフローサイトメトリアッセイに加えてまたはその代わりに使用し得る。細胞を上述したように正確に染色し、蛍光顕微鏡法によって検査することができる。
【0241】
免疫したマウスの血清中の抗体の存在または抗原を発現する生細胞へのモノクローナル抗体の結合を明らかにするために、免疫蛍光顕微鏡分析を用いることができる。例えば、自然にまたはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株と抗原発現を欠く陰性対照を、10%ウシ胎仔血清(FCS)、2mM L-グルタミン、100IU/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを添加したDMEM/F12培地中、標準的な増殖条件下にチャンバースライド中で増殖させる。次に細胞をメタノールまたはパラホルムアルデヒドで固定するかまたは未処理のまま放置することができる。その後細胞を、25℃で30分間、抗原に対するモノクローナル抗体と反応させることができる。洗浄後、同じ条件下で細胞をAlexa555標識抗マウスIgG二次抗体(Molecular Probes)と反応させることができる。その後蛍光顕微鏡法によって細胞を検査することができる。
【0242】
抗原を発現する細胞からの細胞抽出物および適切な陰性対照を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に移し、ブロックして、試験するモノクローナル抗体でプローブする。抗マウスIgGペルオキシダーゼを使用してIgG結合を検出し、ECL基質で展開することができる。
【0243】
抗体を、当業者に周知の方法で免疫組織化学によって、例えば通常の外科手術の間に患者から得た、または自然にもしくはトランスフェクション後に抗原を発現する細胞株を接種した異種移植腫瘍を担持するマウスから得た、非癌組織試料または癌組織試料からの、パラホルムアルデヒドもしくはアセトンで固定した凍結切片またはパラホルムアルデヒドで固定したパラフィン包埋組織切片を使用して、抗原との反応性をさらに試験することができる。免疫染色のために、抗原に対して反応性の抗体をインキュベートし、次いで供給者の指示に従ってホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスまたはヤギ抗ウサギ抗体(DAKO)と共にインキュベートすることができる。
【0244】
抗体を、CLDN18.2を発現する細胞の食作用および死滅を媒介するその能力に関して試験することができる。インビトロでのモノクローナル抗体活性の試験は、インビボモデルにおける試験に先立つ初期スクリーニングを提供する。
【0245】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)
簡単に述べると、健常ドナーからの多形核細胞(PMN)、NK細胞、単球、単核細胞または他のエフェクター細胞を、Ficoll Hypaque密度勾配遠心分離、次いで混入赤血球の溶解によって精製することができる。洗浄したエフェクター細胞を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清または5%熱不活性化ヒト血清を添加したRPMIに懸濁し、CLDN18.2を発現する51Cr標識標的細胞と、エフェクター細胞対標的細胞の様々な比率で混合することができる。あるいは、標的細胞を蛍光増強リガンド(BATDA)で標識してもよい。死細胞から放出される増強リガンドを有するユウロピウムの高度蛍光キレートを蛍光光度計によって測定することができる。もう1つの選択的な技術は、ルシフェラーゼによる標的細胞のトランスフェクションを利用し得る。添加したルシファーイエローは、その後、生細胞によってのみ酸化され得る。次に精製抗CLDN18.2 IgGを様々な濃度で添加することができる。無関係なヒトIgGを陰性対照として使用できる。アッセイは、使用するエフェクター細胞型に依存して37℃で4~20時間実施できる。培養上清中の51Cr放出またはEuTDAキレートの存在を測定することによって試料を細胞溶解に関して検定することができる。あるいは、ルシファーイエローの酸化から生じるルミネセンスは生細胞の評価尺度であり得る。
【0246】
抗CLDN18.2モノクローナル抗体はまた、細胞溶解が複数のモノクローナル抗体で増強されるかどうかを判定するために様々な組合せで試験することもできる。
【0247】
補体依存性細胞傷害(CDC)
モノクローナル抗CLDN18.2抗体を、様々な公知の技術を用いてCDCを媒介するその能力に関して試験することができる。例えば、補体のための血清は、当業者に公知の方法で血液から入手できる。mAbのCDC活性を測定するために、種々の方法が使用できる。例えば51Cr放出を測定することができ、またはヨウ化プロピジウム(PI)排除アッセイを用いて膜透過性上昇を評価することができる。簡単に述べると、標的細胞を洗浄し、5×105/mlを様々な濃度のmAbと共に室温または37℃で10~30分間インキュベートすることができる。次に血清または血漿を20%(v/v)の最終濃度まで添加し、細胞を37℃で20~30分間インキュベートすることができる。各々の試料からのすべての細胞をFACSチューブ内のPI溶液に添加することができる。その後FACSArrayを使用してフローサイトメトリ分析によって直ちに混合物を分析することができる。
【0248】
選択的なアッセイでは、CDCの誘導を接着細胞で測定することができる。このアッセイの1つの実施形態では、細胞を、アッセイの24時間前に組織培養平底マイクロタイタープレートに3×104/ウェルの密度で接種する。その翌日、増殖培地を取り出し、細胞を抗体と共に三つ組みでインキュベートする。対照細胞を、それぞれバックグラウンド溶解および最大溶解の測定のために増殖培地または0.2%サポニンを含有する増殖培地と共にインキュベートする。室温で20分間インキュベートした後、上清を取り、DMEM中の20%(v/v)ヒト血漿または血清(あらかじめ37℃に温めておく)を細胞に添加して、37℃でさらに20分間インキュベートする。各々の試料からのすべての細胞をヨウ化プロピジウム溶液(10μg/ml)に添加する。次に、上清を、2.5μg/ml臭化エチジウムを含有するPBSに交換し、Tecan Safireを使用して520nm励起での蛍光放出を600nmで測定する。特異的溶解のパーセントを以下のように計算する:特異的溶解%=(試料蛍光-バックグラウンド蛍光)/(最大溶解蛍光-バックグラウンド蛍光)×100。
【0249】
モノクローナル抗体によるアポトーシスの誘導および細胞増殖の阻害
アポトーシスを開始させる能力に関して試験するため、モノクローナル抗CLDN18.2抗体を、例えばCLDN18.2陽性腫瘍細胞、例えばSNU-16、DAN-G、KATO-IIIまたはCLDN18.2トランスフェクト腫瘍細胞と共に37℃で約20時間インキュベートすることができる。細胞を採取し、Annexin-V結合緩衝液(BD biosciences)中で洗浄して、FITCまたはAPCと結合したAnnexin-V(BD biosciences)と共に暗所で15分間インキュベートすることができる。各々の試料からのすべての細胞をFACSチューブ内のPI溶液(PBS中10μg/ml)に添加し、直ちにフローサイトメトリによって評価することができる(上記のように)。あるいは、モノクローナル抗体による細胞増殖の一般的な阻害は市販のキットで検出できる。DELFIA Cell Proliferation Kit(Perkin-Elmer、カタログ番号AD0200)は、マイクロプレートにおける増殖中の細胞のDNA合成の間の5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)の組込みの測定に基づく非同位体免疫検定法である。組み込まれたBrdUは、ユウロピウム標識モノクローナル抗体を用いて検出される。抗体検出を可能にするため、Fix液を用いて細胞を固定し、DNA変性する。非結合抗体を洗い流し、DELFIA誘導剤を添加して標識抗体からユウロピウムイオンを溶液中に解離し、溶液中で前記イオンはDELFIA誘導剤の成分と高度蛍光キレートを形成する。検出において時間分解蛍光光度法を利用して、測定された蛍光は、各々のウェルの細胞におけるDNA合成に比例する。
【0250】
前臨床試験
CLDN18.2に結合するモノクローナル抗体はまた、CLDN18.2を発現する腫瘍細胞の増殖を制御するうえでのそれらの効果を測定するためにインビボモデルにおいて(例えばCLDN18.2を発現する細胞株、DAN-G、SNU-16もしくはKATO-III、またはトランスフェクション後にCLDN18.2を発現する細胞株、例えばHEK293を接種した異種移植腫瘍を担持する免疫不全マウスにおいて)試験することもできる。
【0251】
CLDN18.2を発現する腫瘍細胞を免疫無防備状態マウスまたは他の動物に異種移植した後のインビボ試験を、本明細書で述べる抗体を使用して実施することができる。腫瘍を有さないマウスに抗体を投与し、次いで腫瘍細胞を注射して、腫瘍の形成または腫瘍関連症状を予防する抗体の作用を測定することができる。腫瘍担持マウスに抗体を投与し、腫瘍の成長、転移または腫瘍関連症状を低減するそれぞれの抗体の治療効果を測定することができる。抗体の適用は、併用の相乗効果および潜在的毒性を測定するために他の物質、例えば細胞増殖抑制剤、増殖因子阻害剤、細胞周期ブロッカー、血管新生阻害剤または他の抗体の適用と組み合わせることができる。抗体によって媒介される毒性副作用を分析するため、動物に抗体または対照試薬を接種し、CLDN18.2抗体治療に関連する可能性がある症状に関して十分に検討することができる。CLDN18.2抗体のインビボ適用の起こり得る副作用には、特に、胃を含むCLDN18.2発現組織における毒性が含まれる。ヒトおよび他の種、例えばマウスにおいてCLDN18.2を認識する抗体は、ヒトにおけるモノクローナルCLDN18.2抗体の適用によって媒介される潜在的副作用を予測するために特に有用である。
【0252】
抗体によって認識されるエピトープのマッピングは、Glenn E.Morris ISBN-089603-375-9による"Epitope Mapping Protocols(Methods in Molecular Biology)"およびOlwyn M.R.Westwood,Frank C.Hayによる"Epitope Mapping:A Practical Approach"Practical Approach Series,248において詳述されているように実施することができる。
【0253】
本明細書で述べる化合物および作用物質は、任意の適切な医薬組成物の形態で投与し得る。
【0254】
医薬組成物は、通常単位投与形態で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。医薬組成物は、例えば溶液または懸濁液の形態であり得る。
【0255】
医薬組成物は、塩、緩衝物質、防腐剤、担体、希釈剤および/または賦形剤を含有してよく、それらすべてが、好ましくは医薬的に許容される。「医薬的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の無毒性を指す。
【0256】
医薬的に許容されない塩は、医薬的に許容される塩を調製するために使用することができ、本発明に包含される。この種の医薬的に許容される塩は、非限定的に、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等から調製されるものを含む。医薬的に許容される塩はまた、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩としても調製され得る。
【0257】
医薬組成物における使用のための適切な緩衝物質としては、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸が挙げられる。
【0258】
医薬組成物における使用のための適切な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが挙げられる。
【0259】
注射用製剤は、乳酸リンガー液などの医薬的に許容される賦形剤を含有し得る。
【0260】
「担体」という用語は、適用を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明によれば、「担体」という用語はまた、患者への投与に適する、1またはそれ以上の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤または被包物質も包含する。
【0261】
非経口投与のために可能な担体物質は、例えば滅菌水、リンガー液、乳酸リンガー液、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0262】
本明細書で使用される場合の「賦形剤」という用語は、医薬組成物中に存在してよく、および活性成分ではないすべての物質、例えば担体、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤、着香剤または着色剤を指示することが意図されている。
【0263】
本明細書で述べる作用物質および組成物は、任意の従来の経路によって、例えば注射または注入を含む非経口投与によって投与し得る。投与は、好ましくは非経口的であり、例えば静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内経路である。
【0264】
非経口投与に適する組成物は、通常、好ましくは受容者の血液と等張である、活性化合物の滅菌水性または非水性調製物を含む。適合性担体および溶媒の例は、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌の、固定油が溶液または懸濁液の媒質として使用される。
【0265】
本明細書で述べる作用物質および組成物は有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる投与物と共に所望の反応または所望の作用を達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の進行の阻止に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。
【0266】
本明細書で述べる作用物質または組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、生理的状態、大きさおよび体重を含む患者の個別のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路および同様の因子に依存する。したがって、本明細書で述べる作用物質の投与される用量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量で不十分である場合は、より高用量(または異なる、より限局された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0267】
本明細書で述べる作用物質および組成物は、本明細書で述べるような様々な障害を治療または予防するために、例えばインビボで、患者に投与することができる。好ましい患者としては、本明細書で述べる作用物質および組成物を投与することによって矯正または改善することができる障害を有するヒト患者が挙げられる。これには、CLDN18.2の変化した発現パターンを特徴とする細胞に関わる障害が含まれる。
【0268】
例えば、1つの実施形態では、本明細書で述べる抗体は、癌疾患、例えばCLDN18.2を発現する癌細胞の存在を特徴とする本明細書で述べるような癌疾患を有する患者を治療するために使用できる。
【0269】
本発明に従う、前述した医薬組成物および治療の方法は、本明細書で述べる疾患を予防するための免疫またはワクチン接種にも使用し得る。
【0270】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、それらは本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例0271】
(実施例1)
進行した胃食道癌を有する入院患者におけるIMAB362の安全性および忍容性を評価する臨床ファーストインヒューマン単回投与多施設第I相オープンラベルi.v.注入用量漸増試験
IMAB362の最大耐量または最大適用可能単回用量(MTD)を決定し、IMAB362の安全性、忍容性および有害事象プロフィールを検討し、IMAB362の単回漸増用量の薬物動態プロフィールを決定し、IMAB362の単回投与適用の免疫原性を決定し、および進行した胃食道(GE)癌を有する患者におけるIMAB362の潜在的抗腫瘍活性を決定するために、IMAB362に関するヒトでの臨床ファーストインヒューマン単回投与多施設第I相オープンラベルi.v.注入用量漸増試験を実施した。
【0272】
この試験は、IMAB362の単回静脈内注入および4週間の治療なしフォローアップ期間に関するファーストインヒューマン第I相、多施設、非無作為化、患者間単回用量漸増、オープンラベル臨床試験として設計された。
【0273】
試験に含めるために、患者は以下の選択基準をすべて満たさなければならなかった:
・組織学検査によって証明された進行胃食道癌の転移性、抗療性または再発性疾患
・免疫組織化学によって確認されたCLDN18.2発現またはCLDN18.2発現の判定に適した腫瘍の組織試料が入手できること
・フルオロピリミジン、白金化合物および/またはエピルビシン、および-臨床的に適切な場合は-ドセタキセルを含む事前の標準化学療法
・RECIST基準(治験登録前6週間以内のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンまたは磁気共鳴断層撮影(MRT))による疾患の少なくとも1つの測定可能な部位
・年齢18歳以上
・試験の通知後の書面によるインフォームドコンセント
・ECOGパフォーマンスステータス(PS)0~1またはカルノフスキー指数70~100%
・平均余命>3ヶ月
・血小板数≧100,000/mm3
・ヘモグロビン≧10g/dl
・INR<1.5
・ビリルビン正常
・ASTおよびALT<正常値の上限(ULN)の2.5倍(肝転移が存在する場合はULNの5倍)
・クレアチニン<1.5×ULN
・妊娠の潜在的可能性を有する女性(登録前2年未満に最終月経)に関して:基線時に妊娠検査(β-HCG)陰性および試験薬の注入後8週間、2つの極めて有効な避妊方法を使用すること
・男性患者は試験薬の注入後8週間、一般に認められている避妊方法を使用しなければならない。
【0274】
以下の基準の1つまたはそれ以上を示す患者は試験に含めなかった:
・妊娠または母乳栄養
・ヒト化およびキメラ抗体を含む、モノクローナル抗体に対する事前のアレルギー反応または不耐性
・本試験への事前の登録
・事前の抗腫瘍化学療法または放射線療法から3週間未満
・本試験と同時または本試験前4週間以内の他の試験薬または装置
・他の併用抗癌剤または療法
・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体についての陽性検査歴
・既知の肝炎
・以下のいずれかを含むがこれらに限定されない、制御されていないまたは重篤な疾病:
-非経口抗生物質を必要とする進行中または活動性の感染
-症候性うっ血性心不全
-不安定狭心症
-制御されていない高血圧
-臨床的に重要な不整脈
-過去6ヶ月以内の心筋梗塞
-過去4週間以内の胃出血
-症候性消化性潰瘍
-脳転移の臨床症状または確認された転移
-試験へのコンプライアンスを不可能にする精神疾病または社会的状況
・ビタミンKアンタゴニスト(例えばクマジン)と抗凝固薬の同時投与
・治療用量のヘパリン(予防用量は許容される)の同時投与。
【0275】
合計29名の患者から、15名の患者に試験薬を投与し、用量コホート(33、100、300、600または1000mg IMAB362/m2)の1つに割り当てた。これらの患者は安全性母集団(SP)を形成した。潜在的な用量制限毒性は用量群のいずれにおいても発生しなかったので、潜在的用量制限毒性を確認するために追加患者を試験する必要はなかった。それゆえ、各用量コホート中3名だけの患者、すなわち全体で15名の患者が試験薬を摂取した。
【0276】
種々のIMAB362用量コホートへの患者割り当てを以下の表1に示す。
【0277】
【0278】
試験を早期に終了した患者はなかった、すなわちすべての患者がプロトコルに従って試験を完了した。
【0279】
A.安全性評価
IMAB362は安全であり、良好に耐容されることが認められた。
【0280】
患者のうち8名で発生した25のAE(有害事象)だけが治療関連と評価された。治療関連AEは用量群間で同様であった。これらのAEのうち半数以上が胃腸障害(主として悪心、嘔吐)であった。これらの関連AEのうち1つだけが重度(嘔吐)と評価され、他はすべて軽度または中等度であった。転帰不明の味覚異常(CTCグレード1(軽度))の1例および回復しなかったGGT上昇(CTCグレード2(中等度))の1例を除き、すべての関連AEが回復した。
【0281】
試験薬注入期間中または注入後4週間以内に発生し、グレード3の毒性(悪心、嘔吐および脱毛を除く)またはグレード4もしくは5の毒性(CTCバージョン3.0による)のいずれかであった、治療関連AEと定義された用量制限毒性(DLT)は、いずれの用量群においても観察されなかった。したがって、本試験において決定されたIMAB362の最大耐量または最大適用可能単回用量(MTD)は1000mg/m2である。
【0282】
関連SAEおよび疑わしい予期せぬ重篤な有害反応(SUSAR)は、本試験では発生しなかった。
【0283】
7名の患者だけが、グレード3(重度)と評価された基準範囲外の少なくとも1つの臨床検査値を有していた。用量作用関係および試験薬との明らかな関連性は認められなかった。CTCグレード4(生命を脅かす)または5(死亡)の臨床検査値は報告されなかった。
【0284】
結論として、用量群の間でAEプロフィールおよび他の安全性パラメータに関連する差異は見られなかった。一般的に言って、単回投与で与えられるIMAB362は安全であり、良好に耐容され、悪心および嘔吐が最も一般的な関連有害事象であることが認められた。
【0285】
B.薬物動態および免疫原性の評価
薬剤濃度の測定のために、すべての患者のIMAB362血清レベルを試験薬の注入の直前、注入の終了時、注入の終了後3、8、12および24時間目ならびに3日目(V3)、5日目(V4)、8日目(V5)、15日目(V6)および29日目(V7)に測定した。
【0286】
各患者についての試験経過中のIMAB362血清レベルの概略を表2に示す。300 mg/m2用量群の1名の患者(番号1201)に関して、理由不明で、試験薬の注入前(V2、0日目)に既に低いIMAB362血清レベル(12.633μg/ml)が測定された。
【0287】
【0288】
用量群ごとの観察された平均ピーク濃度(Cmax)を表3に示す。Cmaxについての漸増平均値はIMAB362の漸増注入用量に対応する。
【0289】
【0290】
試験期間中のIMAB362の平均血中濃度のグラフ表示を
図1に示す。
【0291】
最も高いIMAB362レベルは、注入の終了直後から注入の終了後8時間目まで測定された。注入の終了後3時間目に、平均IMAB362濃度は、33mg/m2群において14.1μg/mL、100mg/m2群では50.7μg/mL、300mg/m2群では164.2μg/mL、600mg/m2群では307.8μg/mL、および1000mg/m2群では502.6μg/mLであった。
【0292】
IMAB362の薬物動態は用量依存性である。最高用量レベルは2時間の注入後最初の8時間以内に観察された。IMAB362の平均半減期は、全体では8.5日であり、種々の用量コホートにおいて約5日から約12日の範囲であった。
【0293】
本発明者らは、インビトロ作用機構試験から、50μg/mlのIMAB362濃度でADCC、CDCおよび増殖の阻害による抗腫瘍細胞作用の堅固な遂行が期待できること、ならびに主たる作用機構と考えられる、ADCCおよびCDCのEC50値がこの濃度レベルの半分によってでさえもカバーされると決定した。この知識に基づき、300mg/m2および600mg/m2の用量レベルを、IMAB362に関する複数回投与試験におけるより綿密な評価のために同定した。300mg/m2および600mg/m2のIMAB362を摂取していた患者は、8日目(V5)にこれらのレベルを明らかに上回り、15日目(V6)には50μg/mlに近かった。
【0294】
IMAB362のこの単回投与後に患者における抗薬剤抗体の証拠は存在しなかった。
【0295】
C.抗腫瘍活性の評価
潜在的抗腫瘍活性の評価のための主要測定項目は、IMAB362注入後2~5週間目(V6/V7)のRECIST(バージョン1.0)分類による腫瘍状態であった。すべての患者がプロトコルに従って試験を完了したので、評価はもっぱらV7、すなわち薬剤注入後4~5週間目に実施した。すべての患者をCTによって評価した。
【0296】
3名の患者は測定可能な疾患を有していなかった(患者1101および1201は標的病変を有さず、患者0302については個別のデータが入手できなかった)が、これは正式な効果評価ではなかったので、これらの患者を抗腫瘍活性の分析のための母集団に含めた。
【0297】
全体として、いずれの患者についても完全なまたは部分的応答は評価できなかった。安定な疾患は、600mg/m2用量群の15名の患者のうち1名について観察された。治療した患者においてCLDN18.2について陽性に染まる腫瘍細胞の割合は1%~80%(50%までの腫瘍細胞が膜染色を有する)の範囲であり、この患者の腫瘍細胞の90%またはそれ以上がCLDN18.2について陽性に染まり、大きな割合の腫瘍細胞が膜染色を示した。300mg/m2群の2名の患者も進行せず、これらの患者は標的病変を有していなかったので、客観的腫瘍応答に関しては評価不能であり、非CR、非PDと分類した。SDの期間は約2ヶ月であった。非CR、非PDの期間は、それぞれ約2ヶ月および6週間であった。
【0298】
患者による全体的応答の概略を表4に示す。
【0299】
【0300】
腫瘍状態(全体的応答)の評価に寄与する種々のパラメータを以下で述べる。
【0301】
最長径(標的病変)の合計の変化、IMAB362治療後の非標的病変の状態、新たな病変の発生に関して、IMAB362治療後の評価結果(V7に評価した)の概略を表5に示す。
【0302】
【0303】
V1からV7までの標的病変の最長径の合計のパーセンテージ変化は、異なる治療用量に関して明らかな差を示さなかった。
【0304】
非標的病変に関して、明確な進行(V1からV7まで)は、低い用量レベルの患者においてより頻繁に報告されたが、600mg/m2および1000mg/m2用量レベルでは報告されなかった。
【0305】
300mg/m2群の1名の患者(0403)では、非標的病変において明確な進行が観察され、1つの標的病変リンパ節では最長径の減少が認められた。
【0306】
新たな病変に関しては、用量群の1つに対する優先傾向は認められなかった。
【0307】
患者0302(600mg/m2用量群)および0205(1000mg/m2用量群)の場合は、新たな病変の発生が進行性疾患としての全体的応答の評価の理由であった。
【0308】
RECISTによる非標的病変の状態の評価のために、血清腫瘍抗原CA 125、CA 15-3、CA 19-9およびCEAのレベルをV2(1日目、注入前)、V6およびV7に中央検査室で測定した。
【0309】
少なくとも安定な疾患の全体的応答を有する3名の患者についての血清腫瘍マーカーの概略を表6に示す。
【0310】
【0311】
イメージングによる安定な疾患または非CR/非PDを有する3名の患者のうちで、2名の患者は観察期間中安定な腫瘍マーカーを有していた。1名の患者(0204)は、治療後4つすべての腫瘍マーカーの大きな減少を示した。進行性疾患を有する患者の大部分は、これに対し、腫瘍マーカーレベルの上昇を経験した。
【0312】
IMAB362注入後4~5週間目(V6/V7)の腫瘍状態(RECIST分類による)を基線と比較した。全体として、いずれの患者についても完全なまたは部分的応答は評価できなかった。15名の患者のうち1名(600mg/m2用量群)は、試験終了時に安定な疾患を示した。非測定可能疾患を有する300mg/m2用量群の2名の患者は非CR/非PDを示した。これと一致して、これら3名の患者の腫瘍マーカーレベルは、安定なまま(2名の患者)であるかまたはなお一増大きく低下した(1名の患者)。進行性疾患を有する患者の大部分は、経時的に腫瘍マーカーレベルの上昇を示した。
【0313】
腫瘍状態(全体的応答)の評価に寄与するパラメータに関して、1つの病変の減少が300mg/m2用量群において観察された。スクリーニング時(V1)に、15名の患者のうち13名は合計32の非標的病変を有していた。IMAB362治療後(V7に評価した)、非標的病変の明確な進行が合計5名の患者について報告され、33mg/m2用量群の3名、100mg/m2用量群の1名および300mg/m2用量群の1名であった。これら5名の患者のいずれについても、全体的応答は、その非標的病変の進行だけに起因して進行性疾患と評価されなかった。合計17の新たな病変が試験の経過中に観察され、用量群全体に均一に分布していた。2名の患者(600mg/m2および1000mg/m2用量群)の場合は、新たな病変の発生が進行性疾患としての全体的応答の評価の理由であった。
【0314】
さらに、選択した患者において補助的なデータを収集し、これらのデータは、患者の血清成分および患者のPBMCが、IMAB362の主要な作用機構であるCDCおよびADCCをそれぞれ媒介するうえで完全に機能性であり、強力であることを示した。
【0315】
結論として、抗腫瘍活性の示唆(安定な疾患、腫瘍マーカーの減少)が300mg/m2および600mg/m2用量群において認められた。用量群の小さな標本サイズのために、効果の傾向に関して結論を下すことは難しい。
【0316】
C.全体的結論
この治験は、IMAB362の単回静脈内注入および4週間の治療なしフォローアップ期間に関するファーストインヒューマン第I相、多施設、非無作為化、患者間単回用量漸増、オープンラベル臨床試験として設計された。
【0317】
合計15名の患者に試験薬を投与し、用量コホート(33、100、300、600または1000mg IMAB362/m2)の1つに割り当てた。用量群は比較可能とみなすことができる。患者統計データおよび基線特性についての関連する不均衡は認められなかった。
【0318】
試験の主要目的に関して、用量制限毒性(DLT)はいずれの用量群においても観察されなかった。それゆえ、本試験におけるIMAB362の適用可能な単回用量は1000mg/m2であった。IMAB362は安全であり、良好に耐容され、悪心および嘔吐が最も一般的な関連有害事象であった。
【0319】
AEプロフィールおよびAE発生率は種々の用量群において同様であることが認められた。何らかの血液学、生化学または凝固パラメータの臨床的に有意の悪化を有する個別患者の数において用量群の間で明らかな差は認められなかった。
【0320】
RECIST基準によるIMAB362の潜在的抗腫瘍活性に関して、完全なまたは部分的応答はいずれの患者についても認められなかった。15名の患者のうち1名(600mg/m2用量群)は、試験終了時に安定な疾患を示した。非測定可能疾患を有する300mg/m2用量群の2名の患者は非CR/非PDを示した。イメージングによる安定な疾患を有するこれら3名の患者のうちで、2名は観察期間中安定な腫瘍マーカーレベルを有していた。1名の患者は、治療後4つすべての腫瘍マーカーの大きな減少を示した。
【0321】
この試験および、IMAB362の標的血清レベルが600mg/m2用量レベルで達成されることを示す薬物動態試験は、この用量をさらに評価すべきであることを裏付ける。
【0322】
さらに、補助データは、患者の免疫エフェクターが、IMAB362の主要作用機構であるCDCおよびADCCをそれぞれ媒介するうえで完全に機能性であり、強力であることを確認する。
【0323】
(実施例2)
薬剤の効力
この第I相臨床試験のために実施したインビトロ分析の目的には、(i)患者の血液中に存在するエフェクター細胞がIMAB362依存性ADCCを誘導することができるかどうか、(ii)患者の補体系がIMAB362依存性CDCを誘導することができるかどうか、ならびに(iii)ADCCおよびCDCを誘導するIMAB362の能力が患者における投与後に変化するかどうかの分析が含まれた。
【0324】
患者における投与後にIMAB362によって誘導される細胞溶解活性を詳細に検討するために種々の種類のアッセイを実施した。アッセイは、患者血清または血液試料から単離した患者PBMCのいずれかを用いて実施した(表7)。比較のためならびにCDCおよび血清ADCCアッセイの機能性を検証するために、新鮮IMAB362を段階希釈したヒト血清プール(健常ヒト被験者から作製した)を各アッセイに並行して含めた。PBMCに関するADCCアッセイの機能性を試験するため、健常ドナーから単離した血液細胞を、各患者について同じアッセイにおいて陽性対照として使用した。
【0325】
A.試験材料および方法
種々のインビトロアッセイのために、IMAB362の注入前ならびにIMAB362抗体投与の1、7、14および28~32日後に患者血清試料を採取した(表7)。これらを、CDCにおけるIMAB362抗体および補体の供給源としてまたは血清ADCCアッセイにおける抗体源として使用した。患者の注入前血清を「IMAB362なし」の陰性対照として使用し、およびIMAB362濃度を0.5μg/mlに調整する患者血清試料の希釈のために使用した。新鮮血液試料を注入の14日後(患者0203については7日後)に採取し、ADCCアッセイのためのエフェクター細胞の供給源として使用した。
【0326】
【0327】
血液試料を患者から収集し(表7)、血清を採取して、血清アリコートを調製し、直ちに-80℃で保存した。これらの試料すべての分析を、全24血清試料の収集後に単一実験において実施した。
【0328】
ADCCに関しては、新鮮血液試料(Na2EDTA 15ml)を使用してPBMCを単離し、その翌日にADCCアッセイを実施した。
【0329】
IMAB362と連動したADCCを誘導する患者のPBMCの能力を、IMAB362の投与の14日後(患者0203については7日後)に患者から得た、新鮮Na2EDTA 15mlで抗凝固処理した血液試料を使用することによってエクスヒボで試験した。血液試料のPBMCを、到着時にフィコール密度勾配遠心分離を用いて単離した。PBMCを24時間培養し、その翌日、様々な濃度の外因的に添加したIMAB362と共に、ルシフェラーゼをトランスフェクトしたCLDN18.2陽性NUGC4ヒト胃癌細胞を標的としてADCCアッセイを実施した。PBMCを20:1のE:T比で添加し、アッセイ物を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。健常ドナーから得たPBMCを同じ設定で並行して試験し、アッセイの有効性を分析した(陽性アッセイ対照)。このPBMC原液を液体N2中で保存し、患者のPBMCを用いた各々のADCCアッセイのために、このPBMC原液からのアリコートを解凍して、並行して分析した。
【0330】
使用した特性付けられた材料は以下のとおりであった:
・CLDN18.2陽性標的細胞:一過性にルシフェラーゼをトランスフェクトしたNUGC4-10cH11E10胃癌細胞
・陽性対照エフェクター細胞:健常ドナーから得たPBMC(凍結N2ストックロットID:276-SMS-09-00706、4e7c/バイアル、MNZ、08.07.07.SJA)
・機能的対照抗体:段階希釈液中のIMAB362(0.4ng/ml~126.5μg/ml)
・アッセイ陰性対照抗体:アイソタイプ対照(リツキシマブ、126.5μg/ml)。
【0331】
IMAB362と連動して補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導する患者血清成分の能力を経時的にエクスビボで分析した。血清試料を採取し、-80℃で保存して、すべての患者試料を同じ実験において並行して検定した。
【0332】
固定量の0.5μg/ml IMAB362(インビトロEC50濃度に相当する)を外因的に添加した注入前血清に加えて、IMAB362投与の1、7、14および28~32日後に採取した試料も試験し、この試料では循環IMAB362を0.5μg/mlに調整しなければならなかった(基準化したCDC)。各アッセイにおける最終血清中濃度を20%に調整した。CLDN18.2を安定にトランスフェクトしたルシフェラーゼトランスフェクトCHO-K1細胞を標的として使用した。比較のためにIMAB362でスパイクした健常ヒトドナーの血清プールを試験した。
【0333】
使用した特性付けられた材料は以下のとおりであった:
・CLDN18.2陽性標的細胞:安定にトランスフェクトしたCHO-K1 p740 luci #2A5細胞。
・アッセイ陽性対照:健常ドナーからのヒト血清プール中で調製し、31.6ng/ml~10.0μg/mlの範囲の最終濃度にしたIMAB362段階希釈液(1:3.16)。
・機能的対照抗体:各患者の注入前血清試料中で0.5μg/mlの最終アッセイ濃度に調整したIMAB362。
・アッセイ陰性対照抗体:ヒト血清プール中で希釈したアイソタイプ対照抗体(リツキシマブ)。
【0334】
ADCCおよびCDCを誘導するその能力を統合した、ヒト循環中のIMAB362によって媒介される全体的細胞傷害性の動態を「ワンチューブ」アッセイにおいて分析した。
【0335】
IMAB362のi.v.投与の7、14および28~32日後に採取した、したがって患者の補体因子プラス循環IMAB362を含有する各患者の血清をこのアッセイで試験した。各アッセイにおいて25%(v/v)の最終血清中濃度まで血清を適用した。健常対照のPBMCをエフェクター細胞として添加し、NUGC-4細胞を標的細胞として使用して、E:T比は40:1であった。
【0336】
付加的な設定では、血清を熱不活性化し、補体活性を破壊した。この2番目のアッセイは、したがってもっぱら患者血清中に存在するIMAB362によって誘導されるADCC活性を反映する。
【0337】
第I相試験期間中、血清試料を採取し、-80℃で保存した。すべての患者試料を同じ実験において並行して検定した。
【0338】
使用した特性付けられた材料は以下のとおりであった:
・CLDN18.2陽性標的細胞:安定にルシフェラーゼをトランスフェクトしたNUGC-4 10CH11 luci eGFP#2胃癌細胞。
・エフェクター細胞:健常ドナーからのPBMC(新鮮軟膜)。
・機能的対照抗体:ヒト血清プール中でスパイクしたIMAB362段階希釈液(0.26ng/ml~200.0μg/ml)。
・試料陽性対照:IMAB362(200.0μg/ml)(この設定でのIMAB362についてのEC80~100である)でスパイクした患者の注入前血清試料。
・アッセイ陰性対照抗体:ヒト血清プール中のアイソタイプ対照抗体(リツキシマブ)。
【0339】
患者の血液中での長期間の循環後に患者血清中に存在する補体と相互作用してこれを活性化し、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導するIMAB362の能力を、IMAB362投与の1、7、14および28~32日後にエクスビボで分析した。アッセイ中で患者血清試料を直接使用することによってアッセイを実施した(基準化していないCDC)。陽性対照として、固定量の10μg/ml IMAB362(インビトロEC90~100濃度に相当する)を外因的に添加した注入前血清。各アッセイにおける最終血清中濃度を20%に調整した。CLDN18.2を安定にトランスフェクトしたルシフェラーゼトランスフェクトCHO-K1細胞を標的として使用した。比較のためにIMAB362でスパイクした健常ヒトドナーの血清プールを試験した。
【0340】
第I相試験期間中、血清試料を採取し、-80℃で保存した。すべての患者試料を同じ実験において並行して検定した。
【0341】
使用した特性付けられた材料は以下のとおりであった:
・CLDN18.2陽性標的細胞:安定にトランスフェクトしたCHO-K1 p740 luci #2A5細胞。
・機能的対照抗体:健常ドナーからのヒト血清プール中で調製し、31.6ng/ml~10.0μg/mlの範囲の最終濃度にしたIMAB362段階希釈液(1:3.16)。
・試料陽性対照:IMAB362(10.0μg/ml)(インビトロCDC-EC90~100濃度)でそれぞれスパイクした注入前患者血清試料。
・アッセイ陰性対照抗体:ヒト血清プール中で希釈したアイソタイプ対照抗体。
【0342】
B.結果
ADCCを媒介する患者のPBMCの能力
CLDN18.2を発現する腫瘍細胞を溶解する患者免疫細胞の能力を分析するために、内因性にCLDN18.2を発現するNUGC-4胃癌細胞を漸増濃度のIMAB362と共におよび患者のPBMCと共にインキュベートした。健常ドナーからのPBMCに関するアッセイを機能的対照として含めた。
【0343】
患者のPBMCは、IMAB362用量依存的溶解率を示し、約30μg/mlの濃度で最大27~77%であった。これは、同じアッセイにおいて試験した健常対照PBMCで得た14~56%の最大溶解率と有意に異ならない(対応のないt検定)(
図2)。ADCC活性は患者0204に関して最も大きかった。
【0344】
これらのデータは、胃癌患者のPBMCが、健常ドナーから得たPBMCと比較して、IMAB362と連動してヒトCLDN18.2陽性胃癌細胞のADCCを誘導するうえで劣らないことを示す。
【0345】
CDCを誘導する患者の補体系の能力
血清中に存在するIMAB362と相互作用して、CDCを誘導する患者補体の能力を試験した。注入前血清試料を新鮮0.5μg/ml IMAB362でスパイクし、CDC活性を、ヒト血清プール中でスパイクした同じ抗体濃度と比較した。血清/抗体試料をCHO-K1 p740 luci #2A5細胞と共にインキュベートし、80分後にルシフェラーゼ活性を測定することによって溶解を判定した。
【0346】
すべての患者が80分以内に有意のCDCを誘導することができた(
図3)。6名の患者のうち5名に関して、50~71%の範囲の最大溶解率を認めた。これは、本発明者らが健常対照からのプール血清を用いた並行試験によって得たデータと同等である(64.5%)。注目すべき点として、患者0204は新鮮IMAB362に関する最も高いCDC活性を示した(93.9%)。
【0347】
静脈内循環IMAB362による細胞死を誘導する患者血清中の可溶性エフェクターの能力
次に、患者においてその循環期間中を通して、i.v.投与したIMAB362と相互作用する患者血清の能力を、CDCアッセイにおけるIMAB362投与後種々の時点で採取した血清試料をCLDN18.2陽性CHO-K1標的細胞に関して試験することによって検討した。血清試料は、補体を含む患者特異的可溶性エフェクターならびにIMAB362のための供給源であった。血清試料中のIMAB362濃度をELISAによって測定し(vivoScience)(表8)、各患者の対応する注入前血清を希釈剤として使用して、0.5μg/ml(IMAB362の平均EC50)の最終IMAB362濃度に調整した。IMAB362濃度は治療用量および採血の時点に依存して異なるので、試料についての希釈係数は患者間で大きく異なり、4.6倍から688倍の範囲であった。健常ドナー(HSC)からの血清プールを対照として使用した(
図4)。
【0348】
陽性対照(それぞれの患者の注入前血清+新鮮IMAB362)と比較して死滅活性は最初の24時間以内は保持されるが、1週間後に採取した血清試料の細胞溶解活性は低下しており、これがその後の週にはさらに進行している(
図4)。そうであっても、IMAB362の投与の2週間後でさえもかなりの細胞傷害が患者血清によって遂行された。28~32日後のCDC活性の喪失は有意であり、低用量のIMAB362で処置した患者において最も顕著である(
図4)。高用量(0204;600mg/m
2および0205;1000mg/m
2)で処置した患者では、CDC活性は検討した期間を通じてより良好に保存されると思われた。現在入手可能なデータに基づき、この低下の基礎となる機構はこれまでのところ理解されていない。
【0349】
【0350】
IMAB362誘導性細胞傷害への血清成分の影響
mABのADCC活性はヒト血清の存在下で損なわれ得る。ADCC活性への患者血清の影響を検討した。このために、IMAB362投与の7、14および28~32日後に採取した、したがって患者の補体因子プラス循環中のi.v.投与したIMAB362に相当する、各患者の血清を使用した。すべての患者血清試料を25%(v/v)の最終血清中濃度に希釈し、各患者のアッセイ試料中の残存するIMAB362濃度を計算した(表8)。このADCCアッセイでは、1名の健常ドナーからのPBMCをエフェクターとして使用し、NUGC-4細胞を標的細胞として使用した(E:T比=40:1)。比較可能性を確保するために、全患者に関するすべてのアッセイを同じ条件、標的細胞およびドナーPBMCを使用して単一実験で並行して実施した。機能的アッセイ対照として、健常ヒト血清プールをIMAB362(200.0μg/ml)でスパイクした。付加的な陽性対照として、個々の患者の注入前血清試料を200.0μg/ml IMAB362(この系におけるIMAB362についてのインビトロEC80~100に相当する)でスパイクした。
【0351】
本発明者らは、すべてのアッセイにおいて、投与後の患者血清中に存在するIMAB362抗体が高度に活性であり、細胞傷害を誘導することを認めた(
図5)。IMAB362の生物活性は投与後28~32日間にわたって保持され、特異的死滅は全用量群においてまだ48%を上回った。用量群間の全体的な差は意外にも小さく、飽和効果を示唆した。より低用量(33~300mg/m
2)で治療された患者では、特異的死滅の77.7~87.4%から48.3~66.8%への中等度の低下が、血清中の抗体濃度の低下と相関して経時的に認められた(
図5の上のパネル)。長期間にわたって安定に維持された最も高い活性は、600または1000mg/m
2 IMAB362で治療された患者で認められた(
図5の下のパネル)。
【0352】
血清試料を用いてこのアッセイを反復し、この場合は補体因子を56℃で30分間インキュベートすることによって不活性化した。熱不活性化患者血清試料による細胞傷害は、すべての症例において未処理血清で得られたものと比較してより低かった。同様の低下は、健常ドナー(HSC、
図6)からの熱不活性化プールに関しても認められた。
【0353】
要約すると、これらのデータは、患者血清は可溶性血清成分のADCC能力を阻害するのではなく、IMAB362が誘導する総細胞溶解活性を増大させることを示す。
【0354】
患者血清におけるIMAB362媒介性CDCの動態
種々の用量群の患者からの血清におけるIMAB362のCDC能力の動態を測定するために、IMAB362投与の1、7、14および28日後に血清試料を採取した。
【0355】
やはり、この血清は補体ならびにIMAB362のための供給源としての役割を果たした。最終血清中濃度を20%(v/v)最終容量に調整した。各CDCアッセイ試料中の最終IMAB362濃度を表7に記載する。陽性対照として、患者の注入前試料を新鮮IMAB362抗体でスパイクし、10μg/ml(このCDCアッセイ系におけるIMAB362のインビトロEC95)の最終濃度にした。さらに、CDCアッセイの機能的対照のために、IMAB362の段階希釈液(0.032~10μg/ml)をヒト血清プール中で調製した。CLDN18.2およびルシフェラーゼを安定にトランスフェクトしたCHO-K1細胞に関する標準化アッセイを標的細胞として使用した。すべての血清試料を解凍し、同じ実験において並行して試験した。
【0356】
CDC活性は各血清試料中の抗体濃度と良好に相関する(
図7)。最も重要な点として、データは、CDC媒介性細胞傷害活性が4週間にわたって維持されることを示唆する。特に、高用量群の患者はこの期間を通じてCDC活性の低下を示さない。
【0357】
要約および結論
GECを有する患者は、IMAB362と連動してCLDN18.2を発現する標的細胞のADCCおよびCDCの両方を誘導するその能力を損なわれないと思われる。注目すべき点として、ADCCおよびCDCにおいて見られた最大特異的溶解ならびにADCCに関して測定されたEC50は患者0204に関して最も高く、この患者は最も著明な臨床および血清腫瘍抗原応答を有していた。
【0358】
IMAB362の投与後種々の時点での循環IMAB362に関するCDCのエクスビボ分析は、投与の2週間後もまだ、強力なADCCおよびCDCを誘導するのに十分な活性IMAB362が患者の循環中に存在することを示した。
【0359】
循環IMAB362と連動した患者のCDC活性は、現在までのところ不明の理由で経時的に減少する。
【0360】
(実施例3)
サイトカイン
サイトカインの血清レベルは患者の免疫状態の指標としての役割を果たし得る。この臨床試験において、サイトカインを分析することの目的は、主として安全性モニタリングを支持するためであった。本発明者らは、潜在的なバイオマーカー候補物を定義するという見地からこの補助分析の範囲内でサイトカインを検討した。
【0361】
サイトカインレベルを、IMAB362注入の1日前および治療サイクルの3日目と5日目に測定した。検討したサイトカインには、プロ炎症性(IL-1、IL-6、IL-12、IFNγ、TNFα)および抗炎症性(IL-4、IL-10)サイトカインならびにT細胞の増殖と機能に必要なサイトカイン(IL-2)およびNK細胞の増殖に必要なサイトカイン(IL-2、IL-15)が含まれた。
【0362】
サイトカインをELISAおよびフローサイトメトリによって分析した(Interlab)。サイトカインを、InterlabのSOP-MU-IMM.M.0144.05"Flow Cytomix Cytokin-Check IL4,IL6,IL13,TNF-alpha,IFN-gamma,MCP-1,IL10 IL2,IL1-β,IL12p70,IL8,IL17A,IL23"およびSOP-MU-IMM.M.0151.02"Humanes Interleukin 15"に従って分析した。
【0363】
IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、IL-12、IL-15、IFNγおよびTNFαのサイトカイン血清レベルを15名の患者のうち14名に関して分析した(表9)。患者0403(300mg/m2)についてはサイトカインレベルを測定しなかった。基準範囲を上回る血清サイトカインレベル値だけを時間的変化に関して分析した。基準範囲値はInterlabによって定義された(CSR GM-IMAB-001参照)。
【0364】
表9:1日目、3日目および5日目のサイトカイン血清レベル
全患者のサイトカイン血清レベルを1日目、3日目および5日目に測定した。各サイトカインについての基準範囲を示す。検出限界より下または上の値を、計算のためにそれぞれの検出限界に設定した。
【表9】
【0365】
プロ炎症性サイトカインレベル(IL-1、IL-6、IL-12、IFNγ、TNFα)は、14名の患者のうち9名(0104、0105、0201、0203、0204、0112、1202、0112、0205)においてそれぞれの基準範囲を上回った。IFNγレベルは2名の患者(0201、1202)で高く、TNFαレベルはこれら2名の患者のうち1名(0201)で高かった。両患者においてIFNγおよびTNFαレベルはIMAB362の投与前に高く、その後の日には低下していた。IL-6レベルは8名の患者(0104、0105、0203、1101、0204、0112、1202、0205)において高かった。IMAB362投与および用量-作用関係に関してIL-6レベルの変化の明確なパターンは明らかにならなかった。患者0204(600mg/m2 IMAB362)のIL-6レベルは、投与前には高くなかったが、注入の2日後にかなり上昇し、他のいずれの患者も示さないパターンであった。すべての患者に関してIL-1およびIL-12レベルはそれぞれの基準範囲内にとどまった。
【0366】
抗炎症性サイトカインレベル(IL-4、IL-10)は、14名の患者のうち6名(0103、0104、0201、0202、0203、1101)においてそれぞれの基準範囲を上回った。IL-10レベルは6名の患者(0103、0104、0201、0202、0203、1101)で高く、IL-4レベルはこれらの患者のうち2名(0201、0202)で高かった。抗炎症性サイトカインレベルの変動は、IMAB362の投与および用量-作用関係に関して明らかなパターンを示さない。
【0367】
T細胞およびNK細胞の機能と増殖のためのサイトカイン、IL-2およびIL-15レベルは、14名の患者のうち9名(0104、0201、0202、0203、1101、1201、0204、1202、0205)においてそれぞれの基準範囲を上回った。IL-2レベルは6名の患者(0201、0202、0203、1101、1202、0205)で基準範囲を上回り、IL-15レベルは5名の患者(0104、0202、1201、0204、1202)で基準範囲を上回った。投与前に高いIL-2/IL-15レベルを有していた9名の患者のうち7名(0104、0201、0202、0203、1201、1202、0205)は、その後の日にはサイトカインレベルの低下を示した:IL-2/IL-15レベルは、IMAB362投与前にはそれぞれの基準範囲を上回り、IMAB362投与後2日目および4日目には低下した。この群における最も顕著な低下はIL-2血清中濃度に関して認められた。IL-2の高い注入前レベルを有する5名の患者(0201、0202、0203、1202、0205)全員において、それぞれの注入前レベルの50%未満への低下が投与後4日目に認められた。この低下は、33mg/m2 IMAB362の投与前にかなり高いIL-2レベル(354pg/mL)を有していた1名の患者(0201)でも観察することができた。
【0368】
異なるIL-2濃度プロフィールが患者1101(300mg/m2 IMAB362)によって示され、注入前および注入後2日目には基準範囲内のIL-2レベルであったが、注入後4日目には高いIL-2濃度を有していた。
【0369】
IL-15レベルは、高いIL-15注入前レベルを有していた4名の患者(0104、0202、1201、1202)全員において投与後4日目に低下した。この濃度プロフィールは、観察されたIL-2濃度プロフィールと非常に類似するが、相対的なレベル低下はそれほど顕著ではない。
【0370】
用量-作用関係は、分析したサイトカインのいずれに関しても認められない。
【0371】
上記を要約すると、患者の治療前レベルの分析は、IL-6、IL-10、IL-2、IL-15が胃食道疾患を有する後期患者の実質的な割合において高いことを示した。これに対し、いずれの患者もIL-1、IL-12、IL-4、IFNγおよびTNFαの高レベルを有していないかまたは1名の患者だけが高レベルを有していた。
【0372】
IMAB362治療後最初の5日以内のサイトカインレベルの変化の分析は以下の観察をもたらした。高いIL-2レベルを有する5名の患者全員において、これらのレベルが大きく低下することが認められ、5名の患者のうち4名は正常基準値に達した。同様に、高いIL-15レベルを有する4名の患者全員において、IMAB362投与後に中等度の低下が観察された。治療後の高レベルの低下も、それぞれIFNγおよびTNFαの高レベルを有する1名の患者について認められた。IL-6は、これに対し、IMAB362投与後に上昇し、4名の患者は治療前におよび14名の患者のうち7名は治療後5日目に基準レベルを上回るIL-6を示した。
【0373】
(実施例4)
胃または下部食道の進行した腺癌を有する患者におけるIMAB362の複数回投与の効果と安全性を評価する国際的多施設オープンラベル第IIa相複数回投与試験
胃または下部食道の進行した腺癌を有する患者におけるIMAB362の複数回投与の効果と安全性を検討するために、国際的多施設オープンラベル第IIa相複数回投与試験を実施した。この試験の主要目的は、RECISTによる寛解率(CR、PR)を検討することであった。この試験の副次的目的は次のとおりであった:IMAB362の複数回投与のCTCAE v3.0による有害事象の頻度および重症度ならびに耐用性、進行のない生存期間(PFS):1回目の注入の開始から最初に観察された疾患進行の日または何らかの原因による死亡の日(いずれか最初に発生した方)までの時間、ヒト抗キメラ抗体の分析による免疫原性、生活の質、臨床的利益(RECISTによるCR、PRおよびSD)、ならびに血清レベルによるIMAB362の薬物動態。
【0374】
患者は、自らの腫瘍中のIMAB362標的、CLDN18.2の存在の測定のためのスクリーニングを受けた。CLDN18.2の状態を、標準化プロトコルに従って実施される、抗クローディン18抗体を用いた免疫組織化学によって決定した。細胞の少なくとも50%が少なくとも2+(2倍強度)の染色強度で染色される腫瘍を有する患者をこの治験に登録した。選択基準および除外基準をスクリーニング来院(V1)の間に検査した。患者は、胃食道癌の治療を専門とする大学病院から募集した。
【0375】
患者は以下の選択基準をすべて満たさなければならなかった:
・組織学検査によって証明された胃または下部食道の進行した腺癌の転移性、抗療性または再発性疾患
・腫瘍細胞の少なくとも50%が少なくとも2+(スケールで0から3+)の染色強度を有するパラフィン包埋腫瘍組織試料における免疫組織化学によって確認されたCLDN18.2発現
・RECIST基準(2回目の来院前2週間以内のCTスキャンまたはMRI)による疾患の少なくとも1つの測定可能な部位
・年齢≧18歳
・書面によるインフォームドコンセント
・ECOGパフォーマンスステータス(PS)0~1またはカルノフスキー指数70~100%
・平均余命>3ヶ月
・血小板数≧100,000/mm3
・ヘモグロビン≧10g/dl
・ビリルビン正常
・ASTおよびALT<正常値の上限(ULN)の2.5倍(肝転移が存在する場合はULNの5倍)
・クレアチニン<1.5×ULN
・妊娠の潜在的可能性を有する女性(登録前2年未満に最終月経)に関して:基線時に妊娠検査(β-HCG)陰性および治療期間中と試験薬の最後の注入後8週間、2つの極めて有効な避妊方法を使用すること
・性的パートナーが妊娠の可能性がある女性である男性患者は、治療期間中と試験薬の最後の注入後8週間、一般に認められている避妊方法を使用しなければならない。
【0376】
以下の除外基準のいずれか1つまたはそれ以上に合致する患者は試験登録に適格ではなかった:
・妊娠または母乳栄養
・ヒト化またはキメラ抗体を含む、モノクローナル抗体に対する事前の重篤なアレルギー反応または不耐性
・事前の抗腫瘍化学療法または放射線療法から3週間未満
・本試験と同時または本試験前4週間以内の他の試験薬または装置
・他の併用抗癌療法(試験治療下の適応症のためではない)
・既知のHIV感染または既知の活動性肝炎(A型、B型、C型)
・ビタミンKアンタゴニスト(例えばクマジン、マルクマール)と抗凝固薬の併用
・治療用量のヘパリン(予防用量は許容される)
・以下のいずれかを含むがこれらに限定されない、制御されていない疾病:
-非経口抗生物質を必要とする進行中または活動性の感染
-症候性うっ血性心不全
-不安定狭心症
-制御されていない高血圧
-臨床的に重要な不整脈
-過去6ヶ月以内の心筋梗塞
-過去4週間以内の胃出血
-症候性消化性潰瘍
-脳転移の臨床症状
・試験へのコンプライアンスを不可能にする精神疾病または社会的状況。
【0377】
すべてのコホートの全患者が、2週間ごとに2、5、6、7および8回目の来院時にIMAB362の反復投与を受けた(5回の適用)。用量漸増手順は、IMAB362の2つの異なる用量(抗体/体表面積)の以下のコホートを包含した:
コホート1:300mg/m2
コホート2:600mg/m2
コホート3:600mg/m2
【0378】
抗体溶液を2週間ごとに2時間の静脈内注入として投与した。注入時間が2時間以上であることが重要であった。注入にあたっては、注入時間を制御するために注入システム(例えばInfusomat(登録商標)fmS)を使用しなければならなかった。製造者によって適合性に関して検査された、試験薬が送達される注入セットを薬剤適用のために使用しなければならなかった。試験薬の注入の時間は午前中でなければならなかった。適格な医師が注入の間およびその後24時間対応可能でなければならなかった。
【0379】
37名の患者が少なくとも1つの治療を受けた。残念ながら前記患者のうち3名についてはデータベースにおいて文書化が完全ではなく、そのため34名の患者を全患者治療セット(APTセット)に含め、安全性分析に使用する。4、6および24名の患者をそれぞれ300mg/m2 IMAB362のコホート1、600mg/m2 IMAB362のコホート2および600mg/m2 IMAB362のコホート3に割り当てた。
【0380】
治療期間中、コホート1の1名の患者、コホート2の3名の患者およびコホート3の12名の患者は、IMAB362の5回の注入を受ける前に試験を中止し、5回目の注入の2週間後に9回目の来院(2回目の腫瘍イメージングを含む)を完了した。これらの患者は置き換えられた。
【0381】
コホート2の2名の患者は基線時に測定可能な疾患を有さず、効果分析から除外された。小さなプロトコルからの逸脱、例えば2回目の来院より>14日前の基線腫瘍評価(n=3;8.8%)、ヘモグロビン<10g/dl(n=5;14.7%)、ビリルビンの異常値(n=3;8.8%)、ALTまたはAST>2.5ULN(肝転移の症例では>5ULN)(n=2;5.9%)、クレアチニンの値>1.5ULN(n=1;2.9%)およびスクリーニング期間と治療の開始との間の長い時間ウィンドウ(>15日)(n=2;5.9%)が発生したが、分析からの除外には至らなかった。1名の患者は過去6ヶ月以内に心筋梗塞を有していた。放棄が認められた。
【0382】
コホート2と3において患者は600mg/m2の同用量を摂取したので、これらの患者を1つの群として分析することに決定した。APTセットの全患者(n=34)がコーカサス人であった。平均年齢は、300mg/m2用量群では62歳(45~65歳の範囲)および600mg/m2用量群では61歳(42~77歳の範囲)であった。
【0383】
癌の局在および組織病理学的悪性度分類の結果の概略を表10に示す。最初の診断からこの試験のためのスクリーニング来院までの平均期間は16ヶ月(最短2.7ヶ月/最長56ヶ月)であった。HER2/neu発現状態は、600mg/m2で治療された5名の患者を除く患者に関して大部分が不明であった。これら5名の患者のうち1名はHER2/neu陽性であった。
【0384】
TNM分類を胃(n=16)および食道または胃食道接合部(n=19)の癌に関して特定した。APTセットにおいて患者の25%はT1または2と分類される胃の原発腫瘍を示し、31%はT3、25%はT4の原発腫瘍を示し、19%については不明であった。診断の時点で、APTセット中の患者の69%はN1分類によって示される少なくとも1または2の浸潤されたリンパ節を有し、患者の56%は腹膜転移(M1)を有していた。食道または胃食道接合部の癌を有する患者の69%は≧T3と診断された。少なくとも1または2の浸潤されたリンパ節(N1)が患者の84%に関して報告された。加えて患者の84%は腹膜転移を示した。
【0385】
表10:最初の診断時の腫瘍の位置および種類の概略
(1名の患者は食道癌と胃癌を有していた;数名の患者は胃の異なる部分を侵す胃癌を有していた)
【表10】
【0386】
MedDRA SOCベースで、最も頻度の高い臨床的に関連する既往症は、25名の患者(73.5%)では外科手術、30名の患者(88.2%)では化学療法および7名の患者(79.4%)では放射線であった。大部分の症例において、手術は器官の外科的切除(胃切除(72%)、食道切除(16%)、リンパ節切除(32%)胆嚢切除(20%)など)から成った。
【0387】
4名を除くすべての患者が、その試験疾患のために少なくとも1つの事前治療を受けていた。WHO DD ATCベースで、最も頻繁に使用された薬剤は、ピリミジン類似体(フルオロウラシルおよび/またはカペシタビン)、白金化合物(シスプラチンおよび/またはオキサリプラチン)、ならびに抗腫瘍薬治療のための解毒剤(フォリン酸カルシウムおよび/またはフォリン酸)であった。他の過去の薬物治療(遅くとも注入の日に終了)も記録した。
【0388】
34名の患者のうち合計30名(88.2%)は、少なくとも1つの合併症、すなわち試験薬の注入の日に進行中である疾患を有していた。MedDRA SOCベースで、最も一般的な診断は、19名の患者(56%)で「胃腸障害」、12名の患者(35%)で「一般・全身障害」、10名の患者(29%)で「代謝および栄養障害」、ならびに8名の患者(23.5%)で「筋骨格および結合組織障害」であった。併用療法は、主として酸関連障害のための薬剤(17名の患者;50%)、鎮痛薬(12名の患者;35.3%)およびGI障害のための薬剤(10名の患者;29.4%)であった。
【0389】
A.安全性評価
試験薬の注入は試験施設において試験者によって投与され、患者は少なくとも24時間および最長72時間まで観察のために病院に留まらなければならなかったため、試験プロトコルへの全体的コンプライアンスは確保された。適格被験者の用量コホートへの割り当ては、試験プロトコルによって規定されたように正確に実施された(DSMBによって管理された)。スクリーニング来院の1回目の日から最後の試験日までの時間と定義された試験期間は、最短18日から最長355日までの範囲であった。平均試験期間は106日であった。16名の患者は、9回目の標的来院前に早期に試験を終了した。
【0390】
すべての用量群の患者は、平均4.5~5回のIMAB362の注入を受けた。APTセットにおける1回のIMAB362注入の平均期間は125分であった。プロトコルで規定された120分未満の期間を有する患者が1名存在した。この患者は嘔吐のために注入を停止し、試験を早期に中止した。
【0391】
300mg/m2(n=4)または600mg/m2(n=30)の少なくとも1回の投与を受けた34名の患者全員を含むAPTセットに関して安全性分析を実施した。医師の記述による241の有害事象をMedDRA辞書に従ってコード化し、基本語に置き換えた。基本語による有害事象は、各患者について1回のみ計数した(同じ有害事象が試験期間中にその患者に関して2回以上発生した場合も)。各患者において発生した最も高いNCI-CTCグレードを記録した。32名(94%)の患者は、試験期間中に少なくとも1つの有害事象を有していた(関係性に関わらず)。2名の患者に関しては有害事象が記録されなかった。全体で6名の患者(18%)は、薬剤に関連する可能性がある有害事象を経験しなかった。基本語による104の薬剤関連有害事象が28名の患者について報告された。8件の薬剤に関連する可能性がある重篤な有害事象が4名の患者について報告された。低用量群(300mg/m2)の患者数が少ないため、両用量群間の詳細な比較はできなかった。300mg/m2コホートと600mg/m2群(コホート2および3)における関連有害事象を有する患者の発生率は、それぞれ75%と83%である。
【0392】
全体で、SOCからのAE、「胃腸障害」(27/34名の患者、79.4%)、「一般・全身障害および投与部位の状態」(26/34 名の患者、76.5%)が最も多く報告された。MedDRA PTベースで、最も頻繁に記録されたAEは、「悪心」(18名の患者における57事象)、「嘔吐」(16名の患者における52事象)および「疲労」(14名の患者における20事象)であった。全体で、記録されたAEのうち192だけが試験者によって試験薬に関連すると評価された。これらの治療関連AEは104の異なる基本語に分類され、28/34名の患者において認められた。
【0393】
大部分の関連有害事象は軽度から中等度であった。中等度の薬剤関連の治療下で発現した事象を有する8名(23.5%)の患者および重篤な薬剤関連の治療下で発現した事象を有する12名(35.3%)の患者が存在した。
【0394】
重度の薬剤関連AEは、嘔吐が300mg/m2用量群の2名の患者について報告され、1名の患者では悪心を合併した。600mg/m2用量群では10名の患者が重篤な薬剤関連有害事象を経験し、嘔吐があった6名の患者のうち3名は付加的に悪心を経験し、1名の患者は過敏症(アレルギー反応)、1名の患者は唾液分泌過多、1名の患者は脱水症、および1名の患者は低アルブミン血症を経験した。最後の2名の患者は嘔吐と悪心も報告した。2名の患者は、試験薬注入の間に関連する過敏症(アレルギー反応)を患い、そのうち1名は中等度、1名は重度と分類された。どちらの患者も注入を中止した後は回復した。
【0395】
報告されたすべての治療下で発現した事象において、AEのために12/34名の患者に試験薬の作用が必要であった。7(21%)例では、AEは永続的な試験の中止をもたらした。基礎となる有害事象は、3名の患者(過敏症(アレルギー反応)(n=2)、嘔吐および腹痛)では薬剤関連であり、その他の4名の患者(全般的な健康状態の悪化(n=3)、肺炎)では非薬剤関連であった。1名の患者では用量を低減し、別の1名の患者では悪心を伴う重症の嘔吐により4日間薬剤投与を先延ばしにした。3名の患者では注入を中断/延長した。27名の患者(79%)はAEのために併用治療を受けた。11名の患者は入院した。
【0396】
13名の患者が記録された31件のSAEを有していた。1名の患者は試験の2回目のスクリーニング期間中に死亡した。12名の患者は他の重篤な有害事象を有しており、前記有害事象は4名の患者において試験薬関連であった。嘔吐、悪心ならびにGI出血および脱水症のような関連有害事象は、試験者によって試験薬に関連すると判定された。本試験では4件のSARおよび2件のSUSAR(嘔吐およびGI出血を伴う嘔吐)が存在した。最終的な転帰は、7例において死亡であった。いずれの死亡例も、試験者によって試験薬に関連すると分類されなかった。
【0397】
1名の患者は、痩身の食事状況で(BMI 19.3)、良好な全身状態(ECOGパフォーマンスステータスグレード1、カルノフスキー指数80%)の45歳のコーカサス人男性であった。
【0398】
患者は、2週間ごとに2011年11月4日、11月22日および3回目として12月6日に300mg/m2 IMAB362の注入を受けた。試験前に患者は既にグレード1の悪心および嘔吐を患っていた。2010年11月7日にグレード3の嘔吐が診断された。これは重症と評価されたので、患者は入院しなければならなかった。嘔吐が2010年11月17日にグレード1になり、最終的に完全に停止したので、患者は同日に退院することができた。2回目と3回目のIMAB362注入の前に、患者は悪心および嘔吐の予防として強力な前投薬(アリザプリド、アプレピタント、メトクロプラミド、ジメヒドリナート)で治療され、そのため再び悪心または嘔吐を患うことはなかった。試験者は、嘔吐を試験薬に関連すると評価した。報告は2011年1月19日に主催者によって受理され、SAEは、予期されないが試験薬に関連すると判定され、そのためSUSARとして報告された。
【0399】
1名の患者は77歳のコーカサス人男性であった。この患者は、スクリーニング時に正常な食事状況で(BMI 24)、非常に良好な全身状態(ECOGパフォーマンスステータス:グレード0、カルノフスキー指数:100%)であった。試験前に、患者は既に悪心を患っており、そのため必要に応じてメトクロプラミドで治療された。患者は、死亡により試験を早期に中止しなければならなかったため、2011年11月9日に600mg/m2 IMAB362の1回の適用だけを受けた。左肺の胸水が注入前にX線によって診断され、SAEと報告された。翌朝、吐血が発生した。パントプラゾールおよびオンダンセトロンi.v.8mgの投与後、同日に嘔吐は減少し、吐血は回復した。嘔吐はグレード3からグレード2に減少し、最終的に2011年11月12日に停止したため、患者は2011年11月13日に退院することができた。試験者はこの事象を試験薬関連と評価した。報告は2011年11月10日に主催者によって受理され、この事象は、予期されないが試験薬に関連すると判定し、そのためSUSARとして報告された。患者の全身状態は悪化し、腎不全を発症して、残念ながら2011年12月6日に死亡した。
【0400】
1名の患者は、栄養状態良好な食事状況で(BMI 26)、非常に良好な全身状態(ECOGパフォーマンスステータスグレード0;カルノフスキー指数:100%)の42歳のコーカサス人男性であった。この患者は600mg/m2 IMAB362の2回の注入を受けた。2012年3月20日に患者は1回目の試験薬適用を受けた。悪心と重症の嘔吐を発症したので、注入の35分後に注入速度を低減しなければならなかった。症状は、パントプラゾール40mgおよびグラニセトロン3mgならびにブチルスコポラミンi.v.2バイアルおよびアプレピタントi.v.80mgで治療された。この重篤な有害事象は長期間の入院をもたらした。試験者はこの事象を試験薬に関連すると評価した。SAE報告は2012年3月21日に主催者によって受理され、この事象は、予期されるものであり、試験薬に関連すると判定された。数日後、2012年3月24日に患者は、悪心および嘔吐によって引き起こされた重度の脱水症のために再び入院しなければならなかった。さらに、患者は上胃部の疼痛に苦しんでいた。患者はメタミゾールi.v.1g、ブプレノルフィンのパッチおよび水分補給のための注入を受けた。2012年3月30日に症状は軽減し、患者は脱水症状から回復した。試験者はこの事象を試験薬に関連しないと評価した。SAE報告は2012年3月26日に主催者によって受理され、この事象は予期されず、試験薬に関連しないと判定された。2012年4月3日に患者は2回目の注入を受け、これは再び悪心および嘔吐のAEをもたらした。患者はメトクロプラミドp.o.30滴およびジメンヒドリナートi.v.1バイアルで治療された。2012年4月5日に症状が悪化したので、症状は重症と評価された。加えて患者は嚥下障害に悩まされ、したがって食物摂取が大きく減少した。2012年4月15日に症状が消失した。試験者はこの事象を試験薬に関連すると評価した。SAE報告は2012年4月19日に主催者によって受理され、この事象は、予期され、試験薬に関連すると判定された。
【0401】
1名の患者は、栄養状態良好な食事状況で(BMI 26)、良好な全身状態(ECOGパフォーマンスステータスグレード1;カルノフスキー指数:90%)の73歳のコーカサス人男性であった。2011年11月8日から2012年1月3日まで、患者は2週間ごとに600mg/m2 IMAB362の5回の予定された試験薬適用を受けた。2011年11月8日に患者はIMAB362の1回目の適用を受けた。この注入中および注入後に、患者は悪心および嘔吐を発症した。症状は2011年11月9日に深刻になった。メトクロプラミドでの治療後、症状は1日後に消散した。試験者はこの事象を試験薬に関連すると評価した。SAE報告は2011年11月10日に主催者によって受理され、この事象は、予期され、試験薬に関連すると判定された。2011年12月6日に3回目の注入が行われた。患者は中等度の嘔吐および軽度の悪心を患い、クレマスチン、ラニチジンおよびオンダンセトロンで治療された。嘔吐は1日続いた。悪心は7日間持続した。試験は、疾患の進行のため2012年1月16日に打ち切られた。フォローアップ来院は実施されなかった。
【0402】
結論として、IMAB362は、胃、食道または胃食道接合部の進行した腺癌を有する、多くの事前治療を受けた患者集団において安全であり、良好に耐容されることが認められた。全体で、SOCからのAE、「胃腸障害」(27/34名の患者、79.4%)、「一般・全身障害および投与部位の状態」(26/34 名の患者、76.5%)が最も頻繁に報告された。
【0403】
MedDRA PTベースで、最も頻繁に記録されたAEは、「悪心」(18名の患者における57事象)、「嘔吐」(16名の患者における52事象)および「疲労」(14名の患者における20事象)であった。
【0404】
全体では、記録されたAEのうち192だけが試験者によって試験薬に関連すると評価された。これらの治療関連AEは34名の患者のうち28名で認められた。これらの関連AEの83%は、25名の患者で記録された胃腸障害(68%、130AE)および16名の患者で記録された一般・全身障害(15%、29AE)であった。
【0405】
MedDRA PTベースで、大部分の関連有害事象は軽度から中等度であり、悪心(50%)、嘔吐(47%)、疲労(27%)、腹痛(15%)、末梢浮腫(15%)、食欲不振(12%)および下痢(12%)が患者の10%より多くで発生した。
【0406】
2名の患者は試験薬注入の間に関連する過敏症(アレルギー反応)を発現し、そのうち1名は中等度、1名は重度と分類された。どちらの患者も注入を停止した後は回復した。
【0407】
CTCグレード4(生命を脅かす)または5(死亡)の異常な試験薬関連臨床検査値は報告されていない。
【0408】
重度の関連する治療下で発現した事象を有する患者は12名(35.3%)であった。重症の薬剤関連AEは、嘔吐が300mg/m2用量群の2名の患者について報告され、1名の患者では悪心を合併した。600mg/m2用量群では10名の患者が重度の薬剤関連有害事象を経験し、嘔吐があった6名の患者のうち3名は付加的に悪心を経験し、1名の患者は過敏症(アレルギー反応)、1名の患者は唾液分泌過多、1名の患者は脱水症、および1名の患者は低アルブミン血症を経験した。最後の2名の患者は嘔吐と悪心も報告した。
【0409】
分析の時点で13名の患者はすべての薬剤関連有害事象から回復しており、2名の患者は回復が進行中であり、11名の患者は少なくとも1つのAEから回復せず、2名については状況が不明であった。少なくとも1つの薬剤関連有害事象が回復しなかった11名の患者のうちで、9名は胃腸障害(悪心4名、嘔吐2名)を有していた。
【0410】
13名の患者が、7名の死亡を含む、記録された31件のSAEを有していた。1名の患者はスクリーニング期間中、すなわち試験薬注入の開始前に死亡し、そのためスクリーニング事象と分類された。4名の患者では、嘔吐(n=4)、悪心(n=2)、脱水症(n=1)およびGI出血(n=1)のような治療下で発現した胃腸SAEが治療関連と判定された。嘔吐があったこれらの患者のうちの1名は300mg/m2で治療され、その他の3名は600mg/m2 IMAB362で治療された。関連のない腎不全のために死亡した1名を除き、これら4名の患者のうち3名は回復した。
【0411】
薬剤関連有害事象の発生率は300mg/m2用量群と600mg/m2用量群の間で同等であり、それぞれ患者の75%と83%であった。悪心、嘔吐および疲労の頻度および重症度も両用量群間で同等であった。用量と有害事象の頻度/重症度の間に明らかな関係は存在しなかった。
【0412】
胃腸管に関して報告された大部分のAEに関する有害事象プロフィールは、基礎となる疾患と一致し、またCLDN18.2発現プロフィールとも一致する。CLDN18.2は胃上皮細胞(密着結合中)でも発現されるので、悪心および嘔吐はオンターゲット作用であることが示唆される。
【0413】
一般的に言って、300mg/m2および600mg/m2の複数回投与で与えられるIMAB362は、安全であり、良好に耐容され、嘔吐および悪心が最も一般的な関連有害事象であることが認められた。
【0414】
B.薬物動態および免疫原性の評価
IMAB362の反復投与適用のための予備薬剤濃度データは、それぞれ300mg/m2および600mg/m2 IMAB362を投与された、1番目のコホートの4名の患者および2番目と3番目のコホートの34名の患者に関して入手可能である。
【0415】
【0416】
血液試料を毎回注入前に採取した。1回目の注入後、さらなる試料を注入の終了時ならびに注入の終了後1、1.5、2、3、4、6、12、24時間目、3および6日目に採取した。最後の注入後、試料を注入の終了時ならびに最後の注入の終了後1、1.5、2時間目および14日目ならびに4~8週目に採取した。コホート1~3に割り当てた個々の患者からの投与前試料中ではいかなる分析物も検出できなかった。
【0417】
1回目のIMAB362注入後、cmax値は、1番目のコホートについては208.9μg/mLから349.6μg/mLの間にわたった。2番目と3番目のコホートについては、合わせると、cmax値は1回目の適用後269.1μg/mLから575.1μg/mLまでの範囲であった。
【0418】
その後の時点で(V3からV5まで)採取した血清試料中では、IMAB362の濃度の時間依存的な低下が認められた(
図8)。5回目の来院時に2回目の注入前に、11.3μg/mLから36.8μg/mLの間(平均値22.5±10.5μg/mL)の最小血清レベルがコホート1に関して測定され、コホート2と3を合わせて17.0μg/mLから100.2μg/mLまで(平均値54.5±29.0μg/mL)が測定された。
【0419】
8回目の来院時(57日目)に5回目の注入前に、32.4μg/mLから67.1μg/mLの間(平均値46.1±18.5μg/mL)の最小血清レベルがコホート1に関して測定され、28.3μg/mLから301.6μg/mLまで(平均値147.2±93.1μg/mL)がコホート2および3に関して測定された(表12)。
【0420】
8回目の来院時の注入後、cmax値は、1番目のコホートについては259.1μg/mLから326.5μg/mLまでにわたり、コホート2および3に関しては278.1μg/mLから642.6μg/mLまでの範囲であった(表11)、
【0421】
コホート1については、平均Cmax値を1回目のIMAB362注入の90分後(270.6±63.9μg/mL)および5回目の注入の90分後(279.2±27.7)に測定した。合わせたコホート2および3については、平均Cmax値を1回目のIMAB362注入の終了時(340.8±80.2μg/mL)および5回目の注入の60分後(443.3±97.7)に測定した(表12)。
【0422】
要約すると、IMAB362の測定された血清レベルは、300mg/m2で治療された患者ではIMAB362の血清中濃度が2週間ごとのサイクルの間に50~100μg/mlの所望レベルより下に低下することを示した。600mg/m2の用量では、これに対し、患者の大部分においてIMAB362の血清レベルは最初の適用から2週間後でも50μg/mlを上回った。5回目の投与の7~29日(平均値15日)後に、用量レベルは50μg/mlを上回った(平均値151.3±90.1μg/mL)。
【0423】
表12:300および600mg/m
2 IMAB362の反復投与の記述薬物動態データ
300mg/m
2の反復投与で治療された4名の患者(コホート1)および600mg/m
2の反復投与で治療された30名までの患者(1回目の注入30名、5回目の注入12名)(コホート2と3を合わせて)の血清中のIMAB362の平均±sd濃度(μg/ml)
【表12】
【0424】
IMAB362の軽度の蓄積がサイクルとサイクルの間で認められた。蓄積率は、1回目の投与前値に基づき2回目の注入前に1.03倍から3.52倍にわたった(平均値2.04)。
【0425】
表13:反復注入後のIMAB362の蓄積
蓄積率を決定するために、6、7、8および9.x(応答者治療)回目の来院前と2回目の注入(5回目の来院)前のIMAB362濃度比を計算した。
【表13】
【0426】
結論として、IMAB362の薬物動態は用量依存的であることが認められた。
【0427】
1回目のIMAB362注入後、cmax値は、1番目のコホートについては208.9μg/mLから349.6μg/mLの間にわたった。2番目と3番目のコホートについては、合わせると、cmax値は1回目の適用後269.1μg/mLから575.1μg/mLまでの範囲であった。
【0428】
その後の時点で(V3からV5まで)採取した血清試料中では、IMAB362の濃度の時間依存的な低下が認められた。5回目の来院時に2回目の注入前に、11.3μg/mLから36.8μg/mLの間(平均値22.5±10.5μg/mL)の最小血清レベルがコホート1に関して測定され、コホート2と3を合わせて17.0μg/mLから100.2μg/mLまで(平均値54.5±29.0μg/mL)が測定された。
【0429】
8回目の来院時(57日目)に5回目の注入前に、32.4μg/mLから67.1μg/mLの間(平均値46.1±18.5μg/mL)の最小血清レベルがコホート1に関して測定され、28.3μg/mLから301.6μg/mLまで(平均値147.2±93.1μg/mL)がコホート2および3に関して測定された。
【0430】
8回目の来院時の5回目の注入後、cmax値は、1番目のコホートについては259.1μg/mLから326.5μg/mLまでにわたり、コホート2および3に関しては278.1μg/mLから642.6μg/mLまでの範囲であった。
【0431】
コホート1については、平均Cmax値を1回目のIMAB362注入の90分後(270.6±63.9μg/mL)および5回目の注入の90分後(279.2±27.7)に測定した。合わせたコホート2および3については、平均Cmax値を1回目のIMAB362注入の終了時(340.8±80.2μg/mL)および5回目の注入の60分後(443.3±97.7)に測定した。
【0432】
要約すると、IMAB362の測定された血清レベルは、300mg/m2で治療された患者ではIMAB362の血清中濃度が2週間ごとのサイクルの間に50~100μg/mlの所望レベルより下に低下することを示した。600mg/m2の用量では、これに対し、患者の大部分においてIMAB362の血清レベルは最初の適用から2週間後でも50μg/mlを上回った。5回目の投与の7~29日(平均値15日)後に、用量レベルは50μg/mlを上回った(平均値151.3±90.1μg/mL)。
【0433】
C.抗腫瘍活性の評価
完全分析セット(FAS):
試験薬を少なくとも1回摂取し、治療後の効果データが入手可能であったすべての被験者が含まれた。
【0434】
分析の時点で50名の患者は600mg/m2の用量で登録された。このうち9名は最近になって含められ、最近の登録のため現時点ではさらなるデータは入手不能である。10名の患者については2回目の腫瘍イメージングが実施されておらず、そのためこれらの患者はFASセットに含まれていない。FASセットは31名の患者を含む。
【0435】
平均年齢は57歳で、35歳から77歳の範囲にわたった。FASセットの患者は90%の平均カルノフスキー指数を有していた(70~100%の範囲)。患者の大部分(81%)は、少なくとも1つの化学療法レジメンで事前治療されていた。6名の患者は事前の化学療法レジメンを受けていなかった。
【0436】
【0437】
事前化学療法レジメンの平均数は2.0(0~5の範囲)であった。胃食道癌のための化学療法レジメンは、主として5-FU誘導体、白金化合物、タキサン類、エピルビシン、イリノテカン、HER2/neu陽性患者に対するトラスツズマブおよび他の治験薬の様々な組合せから成る。FASセット中、患者の81%は5-FUまたはカペシタビンを少なくとも1回摂取し、74%は登録前に少なくとも1回白金化合物で治療された。6名(19%)の患者は、トラスツズマブまたは他の治験薬で事前治療されていた。6名(19%)の患者は、試験開始前に放射線療法も受けていた。
【0438】
疾患の末期であるため、患者は平均2.0の転移部位(1.0~4.0の範囲)を有していた。最も顕著なのは、リンパ節(19名の患者、61%);肝臓(13名の患者、42%);腹水(8名の患者、26%)および腹膜(7名の患者、23%)であった。
【0439】
全体的な疾患制御率は39%であった(表15)。4名の患者は確認された部分応答を有し、8名の患者は疾患の安定化を有していた。これらの患者についての1回目の再評価は、2名の患者を除き、1回目の注入の8~11週間後に行われ、前記2名については1回目の腫瘍再評価はそれぞれ6週間後に行われた。
【0440】
【0441】
臨床疾患制御があった12名の患者のうち6名では、基線時に高かった少なくとも1つの腫瘍マーカー(CEA;CA19-9;CA125;CA15-3)が、試験期間中を通じて35~76%減少した。3名の患者ではすべての腫瘍マーカーがカットオフ値を下回り、1名の患者については腫瘍マーカー結果が入手できなかった。
【0442】
興味深いことに、最良効果として進行性疾患を有する4名の患者も、試験期間中に29から54%の間の腫瘍マーカーの減少があった。
【0443】
部分応答は、それぞれ2.3ヶ月の治療後(2名の患者)、6.5ヶ月(1名の患者)および4.8ヶ月(1名の患者)の治療後に達成された。PRは1名の患者について確認され、さらに4.4ヶ月間持続し、これはこの患者について9.2ヶ月のPFSをもたらす。その他の3名の患者については、それぞれ6週間後(1名の患者)および12週間後(2名の患者)に確認が行われた。さらなる詳細は表16に見出すことができる。
【0444】
表16:各患者ベースのFASセットの詳細な評価
n.a.-データがまだ入手可能でない;n.d.検出不能。
*-事象が2012年11月まで起こらなかったため検査したかまたは現時点で正確な日付が不明である。フォローアップの最後の日付を各症例において使用した。#-腫瘍マーカーはカットオフ値を下回る。そのため本文中では計数されていない。
【表16-1】
【表16-2】
【0445】
FASセットの患者に関する進行のない生存期間の平均は10週間(最短4週間;最長40週間)であった。事象の入手可能性が限られているため、
図9に示す臨床的利益を有する患者(PR+SD)についての進行のない生存期間の平均は価値が限られる。臨床的利益を有さない患者(PD)は、平均で9週間(最短4週間;最長11週間)の進行のない生存期間を有していた(
図9)。
【0446】
臨床的利益を有する患者(最良効果としてPRまたはSD)または進行性疾患を有する患者(最良効果としてPD)の間で年齢(平均56歳対59歳)、事前の化学療法レジメンなし(平均1.9対2.1)、カルノフスキー指数(平均89対88%)に関して差はなかった。転移部位の数だけが応答者群においてより低く、非応答者群の平均2.3と比較して平均1.9であった。その差は統計的に有意ではない。
【0447】
IHC染色の強度(平均および最大)は、臨床的利益を有する患者と進行性疾患を有する患者の間で同様であった。染色された細胞の数は両群間で異なっていた。染色細胞の最大数および染色細胞の平均数は臨床的利益を有する患者においてより高く、それぞれ77%対67%および71%対60%であった。
【0448】
転移の位置に関しても差が認められた。臨床的利益を有する患者では、胸水(25%対5%)、腹膜癌腫症(42%対11%)および腹水(42%対16%)の頻度が最良効果として進行性疾患を有する患者と比較してより高かった。肝転移の存在は臨床的利益を有する患者においてはるかに少なかった(17%対58%)。
【0449】
プロトコルごと(PP)のセット:
PP集団は、重要なプロトコルの逸脱なしに治療期間(9回目の来院まで)を完了したすべての患者を包含した。
【0450】
FASセットの31名の患者のうちで、2名は重要なプロトコルの違反(標的病変なし)があり、9名の患者は9回目の来院まで試験プロトコルを完了せず、そのためIMAB362の必要な注入を5回未満しか受けなかった。PPセットは20名の患者を含む。
【0451】
平均年齢は60歳で、35歳から77歳までの範囲であった。PPセットの患者は90%の平均カルノフスキー指数を有していた(70~100%の範囲)。患者の大部分(80%)は、少なくとも1つの化学療法レジメンで事前治療されていた。4名の患者は事前の化学療法レジメンを受けていなかった。
【0452】
【0453】
事前化学療法レジメンの平均数は2.0(0~5の範囲)であった。胃食道癌のための化学療法レジメンは、主として5-FU誘導体、白金化合物、タキサン類、エピルビシン、イリノテカン、HER2/neu陽性患者に対するトラスツズマブおよび他の治験薬の様々な組合せから成る。PPセット中、患者の80%は5-FUまたはカペシタビンを少なくとも1回摂取し、75%は登録前に少なくとも1回白金化合物で治療された。5名(25%)の患者は、トラスツズマブまたは他の治験薬で事前治療されていた。さらなる詳細は表17に見出すことができる。5名(25%)の患者は、試験開始前に放射線療法も受けていた。
【0454】
疾患の末期であるため、患者は平均3.0の転移部位(1.0~4.0の範囲)を有していた。最も顕著なのは、リンパ節(13名の患者、65%);肝臓(9名の患者、45%);腹水(6名の患者、30%)および肺(5名の患者、25%)であった。
【0455】
全体的な疾患制御率は50%であった。4名の患者は確認された部分応答を有し、6名の患者は疾患の安定化を有していた。これらの患者についての1回目の再評価は、1名の患者を除き、1回目の注入の8~11週間後に行われ、前記1名については1回目の腫瘍再評価はそれぞれ6週間後に行われた(表18)。
【0456】
【0457】
臨床疾患制御があった10名の患者のうち6名では、基線時に高かった少なくとも1つの腫瘍マーカー(CEA;CA19-9;CA125;CA15-3)が、試験期間中を通じて35~76%減少した。2名の患者ではすべての腫瘍マーカーがカットオフ値を下回り、1名の患者については腫瘍マーカーの結果が入手できなかった。
【0458】
興味深いことに、最良効果として進行性疾患を有する3名の患者も、試験期間中に29から54%の腫瘍マーカーの減少があった。
【0459】
部分応答は、それぞれ2.3ヶ月の治療後(2名の患者)、6.5ヶ月(1名の患者)および4.8ヶ月(1名の患者)の治療後に達成された。PRは1名の患者について確認され、さらに4.4ヶ月間持続し、これはこの患者に9.2ヶ月間のPFSをもたらす。その他の3名の患者については、それぞれ6週間後(1名の患者)および12週間後(2名の患者)に確認が行われた。さらなる詳細は表19に見出すことができる。
【0460】
表19:各患者ベースのPPセットの詳細な評価
n.a.-データがまだ入手可能でない;n.d.検出不能。
*-事象が2012年11月まで起こらなかったため打ち切られかまたは現時点で正確な日付が不明である。フォローアップの最後の日を各症例において使用した。#-腫瘍マーカーはカットオフ値を下回る。そのため本文中では計数されていない。
【表19-1】
【表19-2】
【0461】
PPセットの患者に関する進行のない生存期間の平均は18週間(最短9週間;最長40週間)であった。事象の入手可能性が限られているため、
図10に示す臨床的利益を有する患者(PR+SD)についての進行のない生存期間の平均は有用性が限られる。臨床的利益を有さない患者(PD)は、平均で10週間(最短9週間;最長10週間)の進行のない生存期間を有していた(
図10)。
【0462】
臨床的利益を有する患者(最良効果としてPRまたはSD)または進行性疾患を有する患者(最良効果としてPD)の間で年齢(平均57歳対62歳)、事前の化学療法レジメンなし(平均2.1対2.0)、カルノフスキー指数(平均88対88%)に関して差はなかった。転移部位の数だけが、臨床的利益を有さない患者の平均2.2と比較して臨床的利益を有する患者では平均3.0でより高かった。その差は統計的に有意ではない。
【0463】
IHC染色の強度(平均および最大)は、臨床的利益を有する患者と進行性疾患を有する患者の間で同様であった。染色された細胞の数は両群間で差があった。染色細胞の最大数および染色細胞の平均数は臨床的利益を有する患者においてより高く、それぞれ76%対66%および70%対66%であった。
【0464】
転移の位置に関しても差が認められた。臨床的利益を有する患者では、胸水(30%対10%)、腹膜癌腫症(40%対0%)および腹水(40%対20%)の頻度が最良効果として進行性疾患を有する患者と比較してより高かった。肝転移の存在は臨床的利益を有する患者においてはるかに少なかった(20%対70%)。
【0465】
結論として、5回目のIMAB362注入後2週間目(V9)に腫瘍の状態(RECISTによる)を基線と比較した。31名の患者(FAS)については基線後に少なくとも1回の病期分類が入手可能であった。患者を、平均2.0の事前化学療法および平均2.0の転移部位で、疾患の末期に登録した。
【0466】
確認された部分応答は4名の患者で評価され、13%の全体的応答率をもたらした。このうち3名は現在進行中であり、期間は計算することができなかった。加えて、8名の患者は疾患の安定化を有し、39%の疾患制御率をもたらした。分析の時点で、臨床的利益を有するこれら12名の患者の進行のない生存期間は6週間から40週間の範囲であった。これらの患者のうち7名について事象が現在まで記録されていないので、平均値を計算することができなかった。臨床的利益を有する患者のうち9名では、少なくとも1つの腫瘍マーカーが基線時に高く、このうち6名では同時に-35から-76%減少した。興味深いことに、最良効果として進行性疾患を有する4名の患者も、試験の経過中に高い腫瘍マーカーの少なくとも1つの-29から-54%の減少があった。全体的な進行のない生存期間の平均は10週間で、4~40週間の範囲であった。
【0467】
臨床的利益を有する患者(4PR+8SD=39%)では、腹膜癌腫症、胸水および腹水の発生率がより高く、肝転移の発生率は臨床的利益を有さない患者におけるよりも低かった。他方で、確認された部分応答を有する1名の患者は高頻度の肝転移を有していた。
【0468】
現在のデータセットに関して、臨床的利益を有する患者は陽性IHC染色のより高い数の細胞を有していたと思われる。
【0469】
さらに、選択した患者において補助データを収集し、これらのデータは、患者の血清成分および患者のPBMCが、IMAB362の主要な作用機構であるCDCおよびADCCをそれぞれ媒介するうえで完全に機能性であり、強力であることを示した。
【0470】
結論として、抗腫瘍活性(部分応答、安定な疾患、腫瘍マーカーの減少)が認められ、IMAB362はさらなる検討に値する。
【0471】
D.全体的結論
この治験は、3つのコホートによる第IIa相、多施設、非無作為化、患者間複数回投与用量漸増、オープンラベル臨床試験として設計された。この臨床試験に適格な患者は、標準的な治療に抗療性であるかまたは広く認められている療法を受けていないことが要求された。
【0472】
この中間報告のために、34名の患者が安全性分析(APTセット)に関して評価可能であり、そのうち4名がコホート1(300mg/m2)、6名がコホート2(600mg/m2)および20名がコホート3(600mg/m2)に登録された。複数回投与スケジュールで与えられたIMAB362は、胃食道癌を有する多くの事前治療を受けた患者において安全であり、良好に耐容され、悪心と嘔吐が最も一般的な関連有害事象であった。大部分の関連有害事象は軽度から中等度であった。2名の患者だけがアレルギー反応を呈し、そのうち1名は中等度、1名は重度であった。この第IIa相試験および先の第I相試験においてグレード4およびグレード5の有害事象(臨床検査パラメータを含む)は存在しなかった。登録されているモノクローナル抗体の大部分が生命を脅かすグレード4および5の副作用と関連するので、IMAB352が現在までグレード4の関連AEを引き起こさなかったことは注目に値する。ベバシズマブについての転移性乳癌の適応症は、2008年の最初の予備承認後、2011年11月にFDAによって取り消された。ベバシズマブは寿命を延長させず、腸穿孔および鼻中隔穿孔を伴う、重篤な高血圧と出血を引き起こした。セツキシマブは、?瘡様の発疹ならびにグレード3~4の注入反応、治療前に抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミンによる予防を必要とする、アナフィラキシーおよび心停止を引き起こす。トラスツズマブはまだ広く使用されているが、患者の2~7%において症候性心機能不全を引き起こし、これは10年以上にわたって公知である。
【0473】
潜在的抗腫瘍活性の評価のための主要測定項目はRECISTによる腫瘍状態であった。基線後に少なくともこの1つの評価を受けた患者は31名で、そのためこれらの患者はFASに含まれた。多くの事前治療を受けた31名(RR13 %、39%のDCR)の患者中4例のPRおよび8例のSDは、二次治療または末期治療として承認された標的化単独療法に関する他の第II相試験における応答結果と非常に良好に匹敵する。
【0474】
EGFRアンタゴニストであるセツキシマブは、30名の患者に関する第II相試験において8週間後に測定された末期(大部分は2またはそれ以上の転移部位および事前治療を有していた)GECにおいて3%のRR(さらに7%SD)を達成した。55名の末期患者に関する2番目の試験では、セツキシマブは、8週間後に測定された5%RRおよびさらなる11%のSDをもたらした。同様の応答率がEGFR陽性の抗療性mCRC患者において達成され、セツキシマブは後ほどこの適応症で承認された。
【0475】
スニチニブおよびエルロチニブは、合計約150名の患者に関する種々の第II相試験で末期GEC患者において試験された。6~8週間後のDCRは16~39%の間で変動があり、応答率は3~7%とそれぞれ報告された。
【0476】
乳癌における二次療法としてのトラスツズマブに関する第II相の客観的応答率は11%で、さらに≧6ヶ月のSDは9%であった。事前治療された肺癌におけるエルロチニブに関しては9%の応答率が報告された。ソラフェニブは腎癌での2つの第II相試験で2%~18%のRRを達成し、テムシロリムスについては7%のRRが腎癌治験において報告された。その後これらの標的化療法化合物は化学療法と併用してさらに開発され、これらの適応症において登録された。
【0477】
IMAB362は安全で有効な抗体である。標的表面分子の優れた組織特異性および抗体の高精度の結合から予想されるように、治験薬は他の市販の標的化療法と比較して良好に耐容される。さらに、数名の患者において、他の既に市販されている標的化療法の第II相結果と同等またはより良好な臨床活性の証拠が認められている。
【0478】
(実施例5)
IMAB362誘発性悪心/嘔吐
IMAB362はNCI-CTCグレード3までの悪心/嘔吐を誘発することが認められた。その症候学は以下のように説明することができる:(i)非用量依存性、(ii)主として注入から5分以内の、急性発症が注入の終了後も持続することがある、(iii)上胃部痙攣、過流涎から始まる、(iv)嘔吐は前徴なしに始まり得る、(v)全胃切除術を受けた患者ではまれである、(vi)反応は最初の注入時に発現し、一方症状はサイクルごとに増大する。
【0479】
これらの有害反応が全胃切除術を受けた患者ではまれにしか起こらないという事実は、基礎となる機構がオンターゲット作用であることを示唆する。IMAB362に関しては嘔吐が悪心よりも頻繁であり、前徴の悪心を伴わずに起こることがしばしば報告されている。発症は急性ならびに遅発性の両方であり得る。本発明者らは、少量のIMAB362が限定的にアクセス可能な密着結合エピトープに結合すると仮定する。これは、密着結合の限局性の破壊および粘膜下組織中への胃酸の漏出をもたらす。生じた組織反応と痙攣が悪心/嘔吐のカスケードを開始させる。
【0480】
したがって、推奨される対策は、有効な制吐薬による予防および胃粘膜の保護である。
【0481】
例えば、患者は、投薬を開始する前に制吐薬による予防を受けるべきである。予防と治癒的介入の両方のために、NK-1受容体(例えばアプレピタント/Emend)と5-HT3受容体遮断薬(例えばオンダンセトロン/Zofran)の組合せが推奨され、さらなる化合物に拡大され得る。制吐薬の投与は、好ましくは少なくとも各サイクルの最初の3日間行う。各々のIMAB362注入の直前のブチルスコポラミン/ブスコパンの予防的投与が考慮され得る。
【0482】
粘膜保護のためのどのような手段も胃症状を低減し得る。これに関して、プロトンポンプ阻害剤および/またはミソプロストールを使用してよく、例えば各サイクルの1~2日目または3日目に投与し得る。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は使用すべきでないが、アセトアミノフェンは許容される。アセトアミノフェンが疼痛管理に有効でない場合は、オピオイド治療を避けるため、疼痛管理に必要であればNSAIDを使用することができる。NSAIDを摂取している患者は、好ましくはプロトンポンプ阻害剤および/またはミソプロストールで治療される。
【0483】
したがって、制吐薬による予防および胃粘膜の保護はIMAB362注入の直前に開始し得る。例えば、以下の組合せを投与してよく、静脈内適用が好ましい:
・NK-1 RA:例えばアプレピタント/Emend(150mg IV)
・5-HT3 RA:例えばパロノセトロン(0.25mg IV)、オンダンセトロン/Zofran(8mg IV)、グラニセトロン(3mg IV)
・ブチルスコポラミン/buscopan
・プロトンポンプ阻害剤:パントプラゾール/Pantozol
【0484】
場合により、メトクロプラミド/MCP、ロラゼパムおよび/またはアトロピンも投与し得る。
【0485】
IMAB362は、免疫学的作用機構に顕著に依存する抗体であり、この作用機構は免疫抑制性化合物によって障害され得る。この理由から、ステロイド類は制吐薬による予防において回避されるべきであり、他の化合物がうまくいかなかった場合にのみ使用されるべきである。
【0486】
さらに、IMAB362への暴露は慎重であるべきである。例えば、最初の15~30分間の綿密なモニタリングが推奨される。必要に応じて、注入速度を遅くするべきであり(例えば2時間ではなく4時間まで)、注入の中断を含めるべきである。
【0487】
制吐薬による予防ならびに胃粘膜の保護は、例えば各サイクルの3日目まで継続することができる。
ヒト患者の癌疾患を治療または予防するための医薬の調製のための、クローディン-18スプライス変異体2(CLDN18.2)に結合する能力を有する抗体の使用であって、
前記癌疾患は、CLDN18.2を発現する癌細胞により特徴付けられ、
前記治療は、前記抗体を、少なくとも300mg/m2の用量で、少なくとも3回投与で少なくとも7日間の時間間隔をおいて、前記ヒト患者に非経口投与することを含み、
前記抗体は、配列番号:32のHCDR1、HCDR2およびHCDR3のセットを含む抗体重鎖と、配列番号:39で表されるアミノ酸配列のLCDR1,LCDR2およびLCDR3のセットを含む抗体軽鎖とを含む、使用。
前記ヒト患者の癌細胞の少なくとも50%がCLDN18.2陽性であり、および/または前記ヒト患者の癌細胞の少なくとも40%がCLDN18.2の表面発現に関して陽性である、請求項1または2に記載の使用。
制吐薬、鎮痙薬、副交感神経遮断薬および胃粘膜を保護する作用物質から成る群より選択される1つまたはそれ以上を投与することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
前記治療が、CLDN18.2の発現を安定化するまたは増大させる作用物質との組み合わせ療法であり、前記作用物質が、エピルビシン、オキサリプランチン、シスプラチン、5-フルオロウラシル、カペシタビン、ドセタキセル、イリノテカン、トポテカン、およびこれらの作用物質の組み合わせから成る群より選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
前記抗体が、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシスの誘導および増殖の阻害の1つまたはそれ以上による細胞死を媒介する、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
前記抗体が、(i)アクセッション番号DSM ACC2810の下で寄託されたクローンによって産生されるおよび/または前記クローンから入手可能な抗体、(ii)(i)に含まれる前記抗体のキメラ化またはヒト化形態である抗体、(iii)(i)に含まれる前記抗体の特異性を有する抗体、ならびに(iv)(i)に含まれる前記抗体の可変領域を含有し、かつ(i)に含まれる前記抗体の特異性を有する抗体、から成る群より選択される抗体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
前記ヒト患者が、ピリミジン類似体、白金化合物、エピルビシン、ドセタキセルおよび抗腫瘍薬治療のための解毒剤から成る群より選択される少なくとも1つの薬剤による事前治療を受けたことがある、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用。
前記ヒト患者が、0から1の間のECOGパフォーマンスステータスおよび/または70から100%の間のカルノフスキー指数を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用。