(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056828
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】生体情報モニタ、生体情報表示方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240416BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B5/00 101P
A61B8/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019078
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2020056709の分割
【原出願日】2020-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170911
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大浦 光宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体波形から時間経過に伴う被験者の状態変化を把握することが容易な生体情報モニタを提供する。
【解決手段】入出力インターフェイス11は、被験者に取り付けられたセンサから生体信号を第1時刻及び第2時刻において取得する。制御部14は、第1時刻の生体信号に基づく第1生体波形の特徴点と、第2時刻の前記生体信号に基づく第2生体波形の特徴点と、を検出する。そして制御部14は、第1生体波形の特徴点と、第2生体波形の特徴点と、を対応位置に配置して第1生体波形と第2波形を共に表示する。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に取り付けられたセンサから生体信号を第1時刻及び第2時刻において取得する取得部と、
前記第1時刻の前記生体信号に基づく第1生体波形の特徴点と、前記第2時刻の前記生体信号に基づく第2生体波形の特徴点と、を検出し、前記第1生体波形の特徴点と、前記第2生体波形の特徴点と、を対応位置に配置して前記第1生体波形と前記第2波形を共に表示する制御部と、
を備える生体情報モニタ。
【請求項2】
前記制御部は、前記対応位置を示す情報を表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の生体情報モニタ。
【請求項3】
被験者に取り付けられたセンサから生体信号を第1時刻及び第2時刻において取得する取得部と、
前記第1時刻の前記生体信号に基づく第1生体波形を拍に分割するとともに、前記第2時刻の前記生体信号に基づく前記第第2生体波形を拍に分割し、
前記第1波形の拍の時間間隔と前記第2波形の拍の時間間隔を比較し、前記第1波形と前記第2波形のうち時間間隔が長い方を長周期波形とし、短い方を短周期波形として検出し、
前記長周期波形の拍の時間間隔内に前記短周期波形から分割した拍が入るように前記第1波形と前記第2波形を表示する制御部と、
を備える生体情報モニタ。
【請求項4】
前記制御部は、前記長周期波形から分割した拍と前記短周期波形から分割した拍の類似度に基づいて、前記長周期波形の拍の時間間隔内における前記短周期波形から分割した拍の表示位置を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の生体情報モニタ。
【請求項5】
前記制御部は、前記長周期波形の拍の特徴点と前記短周期波形の拍の特徴点をそれぞれ検出し、前記特徴点同士が対応位置に配置されるように前記長周期波形の拍の時間間隔内における前記短周期波形から分割した拍の表示位置を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の生体情報モニタ。
【請求項6】
被験者に取り付けられたセンサから生体信号を第1時刻及び第2時刻において取得する取得ステップと、
前記第1時刻の前記生体信号に基づく第1生体波形の特徴点と、前記第2時刻の前記生体信号に基づく第2生体波形の特徴点と、を検出し、前記第1生体波形の特徴点と、前記第2生体波形の特徴点と、を対応位置に配置して前記第1生体波形と前記第2波形を共に表示する制御ステップと、
を備える生体情報表示方法。
【請求項7】
コンピュータに、
被験者に取り付けられたセンサから生体信号を第1時刻及び第2時刻において取得する取得ステップと、
前記第1時刻の前記生体信号に基づく第1生体波形の特徴点と、前記第2時刻の前記生体信号に基づく第2生体波形の特徴点と、を検出し、前記第1生体波形の特徴点と、前記第2生体波形の特徴点と、を対応位置に配置して前記第1生体波形と前記第2波形を共に表示する制御ステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報モニタ、生体情報表示方法、及びプログラム
に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床現場において、被験者の状態を把握するためにセンサを介して取得した生体波形を表示する各種技術が用いられている。
【0003】
特許文献1には、超音波トランスデューサを介して取得した信号を基に、脳組織脈動に関する生体波形を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-523889号公報号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで生体波形から時間経過に伴う被験者の状態変化を把握する際に、両者を比較したい場合がある。しかしながら、当該比較に関しては、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、当該改善の余地に鑑みてなされたものであり、生体波形から時間経過に伴う被験者の状態変化を把握する際に、第一時刻の生体波形と第二時刻の生体波形の比較を容易にする生体情報モニタ、生体情報処理方法、及びプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る生体情報モニタの一態様は、
被験者に取り付けられたセンサから生体信号を第1時刻及び第2時刻において取得する取得部と、
前記第1時刻の前記生体信号に基づく第1生体波形の特徴点と、前記第2時刻の前記生体信号に基づく第2生体波形の特徴点と、を検出し、前記第1生体波形の特徴点と、前記第2生体波形の特徴点と、を対応位置に配置して前記第1生体波形と前記第2波形を共に表示する制御部と、
を備える、ものである。
【0008】
本発明では、第1時刻の生体波形(第1生体波形)の特徴点と第2時刻の生体波形(第2生体波形)の特徴点を対応位置に配置して第1生体波形と第2生体波形をともに表示する。これにより、ユーザは特徴点を基にした量は軽の比較を容易に行うことが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生体波形から時間経過に伴う被験者の状態変化を把握する際に、第一時刻の生体波形と第二時刻の生体波形の比較を容易にする生体情報モニタ、生体情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】ある頭蓋内位置における脳組織(脳の横脈動及び脳幹)の動きを波形として示した概念図である。
【
図3】生体情報処理システム1の構成を示す概念図である。
【
図4】生体情報処理システム1の構成を示すブロック図である。
【
図5】超音波トランスデューサ100による測定の概念を示す図である。
【
図6】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図7】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図8】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図9】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図10】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図11】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図12】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図13】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図14】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図15】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図16】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図17】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図18】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図19】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図20】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図21】実施の形態1にかかる生体情報処理システム1の構成の変形例を示す概念図である。
【
図22】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図23】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図24】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【
図25】生体情報モニタ10による表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。はじめに本実施の形態の生体情報モニタ10を含む生体情報処理システム1が扱う超音波測定や脳組織についての説明を行う。
【0012】
まず脳の仕組みや脳組織の脈動について説明する。
図1に示すように人の頭部では、頭蓋骨201に覆われた内部空間に脳202(固体)及び血液及び髄液が収容されている。頭蓋骨の内の圧力である頭蓋内圧(ICP)は、これら(脳、血液、髄液)の影響によって生じる。頭蓋内圧(ICP)は、様々な疾患の疑いのある際に測定される。当該疾患の例としては、脳卒中、浸透圧代謝性けいれん、原因不明の昏睡、水頭症、頭部外傷などが挙げられる。また激しい頭痛、歩行障害、尿失禁、認知症の評価に関してICPの測定が有用であることが明らかとなっている。
【0013】
図2は、ある頭蓋内位置における脳組織(脳の横脈動及び脳幹)の動きを波形として示したしたものである。
図2(A)に示すように、心臓拍動に起因した動きによって振幅が生じる。正常な脳組織の場合、心拍に起因する血液の循環によって脈動が生じる。この脈動波形は、頭蓋内の各深度において取得可能なものである。脈動波形は、被験者の脳の状態(脳組織全体の膨張、脳組織の一部分の膨張、等)及び頭蓋内の深度によって波形形状が変化する。
【0014】
ICPは様々な要因によって亢進しうる。例えば、水頭症の原因となる脳脊髄液(CSF)の流出異常や固体組織の膨張(脳浮腫、頭蓋内血種、腫瘍、等)により、ICPは亢進しうる。ICPの監視は、患者の頭蓋骨201に挿入された圧力計を使用して測定することが一般的である。しかしながら出願人は、超音波トランスデューサを用いた非侵襲的なICP監視の代替手法を提案した。詳細は、特許文献1を参照されたい。
【0015】
脳脊髄液(CSF)、頭蓋内血液量、または脳組織の増大は、ICPの亢進を引き起こす。脳および脳脊髄液(CSF)の双方が頭蓋骨に収容されている状態をグリーンステータスと称する。脳の一部が頭蓋骨に当接し、脳を包囲する脳脊髄液(CSF)が一時的に存在しなくなる程度に脳が膨張した状態をオレンジステータスと称する。脳が膨張して頭蓋冠内をほぼ満たし、脳内に位置する脳室を充填している液体が虚脱した状態をブルーステータスと称する。更に脳幹が正常位置から延び始めてICPが顕著に亢進する状態をレッドステータスと称する。詳細は特許文献1の
図2a~2c及び段落0033、0034を参照されたい。
【0016】
これらの各ステータスは、経頭蓋脳組織ドプラ法(TCBTD)を用いた複数深さにおける脳の横脈動及び脳幹の動きにより特定されうる。経頭蓋脳組織ドプラ法では、固体脳組織のエコー輝度が血液のエコー輝度よりも約30dB(1000倍)高い。そのため、超音波トランスデューサで超音波パルスを発信し、頭蓋骨の厚い領域を通じて反射波(エコー)を受信できる。
【0017】
何らかの症状の影響により脳の一部において膨張が生じると、固体組織(脳)がゆがむことにより頭蓋内において圧力の異なる領域が生じる。例えば、腫瘍等の影響により固体組織が膨張した箇所と、それ以外の箇所と、では脳組織(脳の横脈動及び脳幹)の動き、ひいてはICPの値やICPの経時変化を示す波形が異なるものとなることがある。よって、単一箇所の脈動(ひいてはICP)を把握できるだけでなく、体表からの距離を変えた様々な深度での脈動(ひいてはICP)を把握できた方が被験者に対する適切な診断や処置が実現しやすい。下記の生体情報モニタ10は、この深度毎の脈動の情報を非侵襲的に把握するための技術を提供する。
【0018】
続いて、本実施の形態に係る生体情報モニタ10の構成について説明する。本実施の形態に係る生体情報モニタ10は、超音波トランスデューサ100から取得した超音波の反射波を基にした生体波形を画面に表示するものである。
【0019】
図3は、本実施の形態に係る生体情報処理システム1の構成を示す図である。生体情報処理システム1は、生体情報モニタ10と、生体情報モニタ10と接続可能な各種センサ(超音波トランスデューサ100、カフ110、心電図電極120)と、を含む構成である。図示するように被験者が各種のセンサ(超音波トランスデューサ100、カフ110、心電図電極120)を取り付ける。生体情報モニタ10は、各種のセンサから取得した信号を処理することにより各種のバイタルサインの測定波形や測定値を表示する。
【0020】
図示する生体情報モニタ10は、超音波トランスデューサ100が被験者の体内の複数深度に照射する超音波により生じた各深度の動き(脳組織脈動)を示す反射波を取得する。そして生体情報モニタ10は、各深度に対応する反射波を基に、被検者の各深度の動きの指標値の経時変化を表示する。ここで生体情報モニタ10は、この指標値の経時変化を(A)各深度に対応する複数の波形、及び(B)深度と前記指標値の大きさの関連を色及び模様の少なくとも一方にマッピングしたマップ情報、の少なくとも一方の表現で表示する。この表示制御については後述する。
【0021】
生体情報モニタ10は、脳組織脈動に加えて患者(被験者)の様々な生体情報(心電図、非観血血圧、呼吸、等)を表示するように構成されたベッドサイドモニタであることが好ましい。また生体情報モニタ10は、除細動機能を備えた生体情報モニタであっても良く、タブレットPCタイプの装置や医療従事者の身体(例えば腕や頭部)に装着されたウェアラブル型のデバイス(例えばARグラス等)であってもよい。本実施の形態において、生体情報モニタ10は脳組織脈動(反射波から算出される指標値を示す情報)を表示するように構成されたベッドサイドモニタであるものとする。
【0022】
図4は、本実施の形態にかかる生体情報処理システム1の内部構成を示すブロック図である。生体情報モニタ10は、図示するように入出力インターフェイス11、制御部14、記憶部17、通信部12、表示部16、及び操作部13を備える。生体情報モニタ10は、超音波トランスデューサ100と接続するように構成される。生体情報モニタ10は、生体情報を取得する種々のセンサと接続可能であっても良く、本例では血圧を測定するカフ110、及び心電図を測定するための電極120と接続している。
【0023】
なお超音波トランスデューサ100は、生体情報モニタ10とデータの送受信が可能に構成されれば、必ずしも有線で接続する必要はなく、任意の無線通信規格(Bluetooth(登録商標)、WiFi(登録商標)等)を介して無線接続する形態であっても良い。その他のセンサと生体情報モニタ10との接続についても同様である。
【0024】
超音波トランスデューサ100は、被験者の脳組織の動き(脈動)を取得可能な頭部体表の位置、例えば被験者の額やこめかみに接触するようにして固定される。超音波トランスデューサ100は、被験者の生体内(脳周辺)に超音波を送受信できるものであればどのようなものであっても良い。例えば超音波トランスデューサ100は、ディスポーザブルタイプの貼付式のシート形状のセンサであって、超音波を生体に送受信できるものであっても良い。または超音波トランスデューサ100は、生体適合性のあるメッシュテープによって固定されるリユーザブルのプローブであって、生体に超音波を送受信するものであっても良い。また超音波トランスデューサ100は、被験者に複数装着されても良く、例えば左右のこめかみに固定されても良い。
【0025】
超音波トランスデューサ100は、頭蓋内外の各深度に対して超音波を送信し、各深度で反射した超音波(反射波)を受信する。すなわち超音波トランスデューサ100は、深度と反射波を関連付けた情報を取得する。当該反射波は、各深度における脳組織の動き(脈動)を示している。当該脈動は、脳内の細動脈や動脈、静脈の動きにより変化しうるものであり、脳組織の膨張が生じている部位等では動きが変化し得るものである。この脈動を経時的(連続的)に取得することにより、ある深度での頭蓋内の動きを経時的に示す生体波形となる。この生体波形は、頭蓋内圧と関連が高いものである。以下、反射波との記載は、生データ(アナログデータ)の状態や後述する制御部14等がA/D変換等を行った後のデジタルデータの状態を含む(区別しない)ものとして説明を行う。
【0026】
超音波トランスデューサ100による測定の概念を
図5を参照して説明する。超音波トランスデューサ100は、頭蓋の各点に超音波を照射する。本例では超音波トランスデューサ100は、頭蓋内の点A及び点Bに超音波を照射する。そして超音波トランスデューサ100は、各点(点A、点B)からの反射波を受信する。そして超音波トランスデューサAは、体表からの深度の情報と反射波を関連付けて生体情報モニタ10に送信する。なお本例では説明の明確化のために超音波トランスデューサ100は点A及び点Bに超音波を照射することとしたが、任意の箇所の反射波を取得することが可能である。また超音波トランスデューサ100は、実際には体表0mmから体内の任意の距離(例えば50mm)まで隙間なく超音波を照射し、その反射波を体表からの深度と関連付けて取得することも勿論可能である。
【0027】
再び
図4を参照する。入出力インターフェイス11(超音波の反射波をはじめとする各種生体パラメータの生体信号を取得する取得部の一態様)は、超音波トランスデューサ100が取得した各深度の反射波を取得する。すなわち入出力インターフェイス11は、超音波トランスデューサ100が取得した脳周辺の各深度における反射波を取得する。なお超音波トランスデューサ100が反射波に対してA/D変換等を行ったデジタルデータにした後に入出力インターフェイス11にデータ送信をしてもかまわない。入出力インターフェイス11は、制御部14の制御に応じて超音波トランスデューサ100に対する各種の制御信号(ゲイン等の制御)等を送信しても良い。
【0028】
制御部14は、メモリとプロセッサを備えている。メモリは、コンピュータ可読命令(プログラム)を記憶するように構成されている。例えばメモリは、各種プログラム等が格納されたROM(Read Only Memory)及びプロセッサにより実行される各種プログラム等が格納される複数ワークエリアを有するRAM(Random Access Memory)等から構成されてもよい。またメモリは、フラッシュメモリ等によって構成されても良い。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)の少なくとも一つを含む。またプロセッサは、FGPA(Field-Programmable Gate Array)及び/又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んでも良い。CPUは、複数のCPUコアによって構成されても良い。GPUは、複数のGPUコアによって構成されても良い。プロセッサは、記憶部17又はROMに組み込まれた各種プログラムから指定された生体情報プログラムをRAM上に展開し、RAMとの協働で各種処理を実行するように構成されても良い。
【0029】
記憶部17は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶装置(ストレージ)であって、プログラムや各種データを格納するように構成されている。
【0030】
制御部14は、入出力インターフェイス11を介して取得した各種信号に対し、適切な信号処理を行ったうえで記憶部17に書き込む。例えば制御部14は、超音波トランスデューサ100が取得した脳周辺の各深度における反射波に必要な処理(例えばA/D変換等)を行ったうえで記憶部17に適宜書きこむとともに適宜読み出す。制御部14は、その他の生体情報(例えば血圧信号、呼吸信号)等についても一般的な生体情報モニタと同様の手法で記憶部17に対して書き込み及び読み出しを行う。
【0031】
通信部12は、生体情報モニタ10を通信ネットワークに接続するように構成されている。通信部12は、通信ネットワーク(例えばLAN、WAN又はインターネット)を介して外部サーバ、セントラルモニタ等と通信するための各種の有線接続端子を含んでも良い。また通信部12は、アクセスポイント(例えば無線LANルータや無線基地局)と無線通信をするためのRF回路等の通信処理回路及び送受信アンテナ等を含んでいても良い。アクセスポイントと生体情報モニタ10との間の無線通信規格は、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、LPWA又は第5世代移動通信システム(5G)などである。
【0032】
表示部16は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置であればよい。また表示部16は、生体情報モニタ10とは別筐体として設けられ、操作者の頭に装着される透過型又は非透過型のヘッドマウントディスプレイやAR(Augumented Reality)ディスプレイ等の表示装置であっても良い。さらに表示部16は、画像をスクリーン上等に投影するプロジェクター装置であっても良い。また生体情報モニタ10が表示部16を備えていない構成であっても良い。この場合、生体情報モニタ10が画像データを外部表示装置に無線又は有線で送信した後に、当該画像表示装置は生体情報モニタ10から送信された画像データを表示してもよい。
【0033】
操作部13は、生体情報モニタ10を操作する医療従事者の入力操作を受け付けると共に、当該入力操作に応じた指示信号を生成するように構成されている。操作部13は、例えば表示部16上に重ねて配置されたタッチパネル、生体情報モニタ10に接続したマウス/キーボード、及び/又は生体情報モニタ10の筐体に配置された物理的な操作ボタン等である。操作部13によって生成された指示信号が制御部14に送信された後、制御部14は指示信号に応じて所定の動作を実行する。
【0034】
制御部14は、通常の生体情報モニタと同様にカフ110の圧力制御等を行い、被験者の非観血血圧の測定を行う。具体的には制御部14は、カフ110からの血圧信号の取得、血圧信号の解析、及び血圧値及び血圧波形の表示部16への表示等を制御する。
【0035】
制御部14は、同様に通常の生体情報モニタと同様に心電図電極120から心電図信号を取得し、各種の解析を行って心電図波形の表示部16に表示等を制御する。図示しないものの制御部14は、一般的な生体情報モニタと同様に呼吸やSpO2等の測定を行っても良い。
【0036】
制御部14は、一般的な生体情報モニタと同様の手法でアラーム制御を行い、必要に応じてアラーム音(上下限アラーム、テクニカルアラーム、等)をスピーカ15を介して鳴動させる。
【0037】
続いて制御部14による画像データの生成と表示制御の詳細について説明する。入出力インターフェイス11は、超音波トランスデューサ100が被験者の体内の複数深度に照射する超音波により生じた各深度の位置や動き(脳組織脈動)を示す反射波を取得する。なお、入出力インターフェイス11や超音波トランスデューサ100は、反射波に各種の信号処理を行ってもよい。
【0038】
制御部14は、各深度に対応する反射波を基に、被検者の各深度の動きの指標値を算出し、算出した指標値の経時変化を表示する。ここで生体情報モニタ10は、この指標値の経時変化を(A)各深度に対応する複数の波形、及び(B)深度と指標値の大きさの関連を色及び模様の少なくとも一方にマッピングしたマップ情報、の少なくとも一方の表現で表示する。制御部14による表示制御は、生体情報モニタ10の筐体上に設けられた表示部16(または生体情報モニタ10に着脱可能に設けられた表示部16)に画像データを表示することだけではなく、外部装置に画像データを送信して当該外部装置で表示を行う事も含む概念である。
【0039】
ここで各深度の動きの指標値とは、例えば反射波の強度、反射波の周波数、反射波を基に算出する変位量、変位量から算出する変位速度または変位加速度、変位量から算出する振幅の大きさ、周波数等である。
【0040】
指標値として反射波の強度を用いる場合、制御部14は反射波の信号強度を周知の信号処理手法で算出すればよい。指標値として反射波の周波数を用いる場合、制御部14は反射波に対して周波数変換を行って周波数を算出すればよい。
【0041】
指標値として変位量を用いる場合、制御部14は反射波にIQ復調を行ってI信号成分とQ信号成分を抽出してIQ平面状にプロットし、その偏角を用いて変位量を算出すればよい。なお制御部14は、反射波に対して別の信号処理(例えば信号強度の特徴点位置の変化から変位量を算出する信号処理)を用いて偏角を算出したのちに変位量を算出しても良い。
【0042】
指標値として変位速度や変位加速度を用いる場合、制御部14は上述のように算出した変位量に対して微分や二階微分等の一般的な処理を行って変位速度や変位加速度を算出すればよい。
【0043】
指標値として振幅の大きさを用いる場合、制御部14は算出した変位量から拍を切り出す。例えば制御部14は、通常の心電図解析と同様に変位量の変化を示す波形からピーク点を検出し、ピーク点からピーク点までを1拍(心臓の前の拍動から現在の拍動までの波形)として切り出せばよい。そして制御部14は、1拍内の波形の最高値と最低値を減算することによって振幅の大きさを算出してもよい。
【0044】
制御部14は、上記の各深度に対応する指標値の経時変化を上記(A)、(B)の少なくとも一方の表現で表示する。まず、上記(A)“各深度に対応する複数の波形”の形式について
図6を参照して説明する。
図6は、上記(A)の表現で表示された画像データの一例を示す図であり、変位量(指標値の一種)の経時変化を示している。
【0045】
制御部14は、各深度の反射波を基に各深度の変位量を指標値として算出し、各深度の変位量の経時変化を2次元座標上に描写した画像データを表示部16に表示する。2次元座標(2次元グラフ)は、縦軸(第1軸)に被験者の体内の深度(体表からの深さ)を示し、横軸(第2軸)に時刻を示すものである。なお横軸は、例えば測定開始からの経過時間であっても良い。すなわち横軸は、時間経過を把握できる任意の情報であればよい。
【0046】
図6の例では、体表からの5mmの距離から5mm間隔で波形(変位量の変化を示す波形)が表示されている。すなわち、体表から5mm/10mm/15mm/20mm/25mm/30mm/35mm/40mm/45mm/50mmの深さの波形がそれぞれ表示されている。すなわち制御部14は、体表から5mm/10mm/15mm/20mm/25mm/30mm/35mm/40mm/45mm/50mmの深さの反射波から変位量(当該深さでの動きの量)を指標値として算出し、各深度の変位量の変化を複数の波形として表示している。
【0047】
なおユーザは、生体情報モニタ10に設けられた操作部13や図示しないリモートコントローラの操作によって、他の生体パラメータ(血圧等)の表示の有無を指定できても良い。制御部14は、当該指定情報に応じて画像データを生成する。
【0048】
またユーザは、二次元グラフ上に表示する波形数を明示的に指定しても良い。ユーザは、操作部13(例えば生体情報モニタ10上のタッチパネル、ボタン、つまみ)等を操作して波形数を指定する。制御部14は、指定された波形数に応じて表示対象となる深度を決定する。例えば深度0mm~40mmまでの測定を行っており、波形数が5つと指定された場合、制御部14は深度0mm、10mm、20mm、30mm、40mmの波形を表示対象と判断する。なお制御部14は、深度が等間隔になるように表示対象を決定することが望ましいが、指標値の状態(例えば振幅の大きさなど)等の他の要因も加味して表示対象の深度を決定してもかまわない。そして制御部14は、表示対象と判断した各深度の波形を
図6と同様の手法で表示する。このように表示波形数を指定できることにより、ユーザが画面上で見やすいと感じる波形表示を実現することができる。
【0049】
また制御部14は、深度によって波形の表示態様を変更しても良い。表示態様(書式)とは、太さ、線種(点線、一点破線、二点破線、実線、等)、色、端点の形状、等である。例えば制御部14は、深度0~20mmの波形の色を赤、深度21mm~40mmの波形の色を緑、41mm~60の波形の色を青、といったように深度に応じて色を変更する。太さ、線種、端点の形状についても同様の方式で深度に応じて変更すればよい。なお、深度に応じて波形の太さと色の双方を変更すること等も勿論可能である。深度に応じて表示態様を変更した波形を表示することにより、ユーザは参照している波形の深度を把握しながら脈動状態を把握しやすくなる。
【0050】
また制御部14は、各波形の指標値の大きさを基に波形の表示態様を変更しても良い。例えば制御部14は、変位量を示す波形の振幅の大きさを基に波形の表示態様(書式)を変更しても良い。以下、処理例を示す。
【0051】
制御部14は、各深度の振幅の大きさを算出する。例えば制御部14は、変位量の波形から直近の10拍切り出し、当該10拍の振幅の大きさの平均を算出すればよい。そして制御部14は、その大きさに応じて波形の表示態様(太さ、線種、色、端点の形状、等)を変更して表示する。例えば制御部14は、振幅の大きさが所定閾値以上である場合には対象波形を点線で示し、所定閾値未満である場合には対象波形を実線で示せばよい。また制御部14は、振幅の大きさにレベルを設定し(例えば振幅が値A~値Bはレベル1、値B~値Cはレベル2等)、レベルに応じて線の色を変化させるなどしても良い。このように振幅の大きさによって波形の表示態様(書式)が変わることにより、ユーザは各深度における客観的な脈動(振幅)の大きさを把握することができる。このように振幅の大きさに応じて表示態様を変更することにより、ユーザは振幅の大きい深度/小さい深度、振幅の変化箇所等を一目で把握することができる。
【0052】
なお制御部14は、この振幅の大きさ以外の指標値を用いて波形の表示態様を変更しても良い。例えば制御部14は、各深度の直近10拍の変位加速度の平均値を算出し、深度毎に変位加速度の大きさのレベル分けを行う。そして制御部14は、変位加速度のレベルに応じて各深度の波形の表示態様を変化させればよい。
【0053】
続いて、上記(B)“体内位置と指標値の大きさの関連を色及び模様の少なくとも一方にマッピングしたマップ情報”の形式について説明する。
【0054】
マップ情報とは、上記(A)と同様に縦軸(第1軸)に被験者の体内深度(体表からの深さ)を示し、横軸(第2軸)に時刻を示すものである。制御部14はこの2次元座標上に、各深度の反射波の指標値の大きさを色相/明度/彩度/模様の少なくとも一つを変化させることにより表現した画像データを表示する。制御部14は、指標値を色相/明度/再度/模様に変換し、変換した結果を用いた描画を行う。なお横軸は測定開始からの経過時間等であってももちろん構わない。
【0055】
制御部14は、指標値の大きさを色または模様を変更することにより表現する。色の変更とは、色相、明度、彩度の少なくとも一つを変化させることにより実現すればよい。これらを変更することによって輝度を変更することも実現し得る。例えば、制御部14は、指標値がv1~v2の場合には色を赤、指標値がv2~v3の場合には色を黄色、といったように指標値と色をマッピングする。しかしながら制御部14は、指標値の変化に伴って色が段階的に変化する(すなわちグラデーションにより変化する)ように換算することがより好ましい。模様のマッピングについてもほぼ同様の手法で行うが、詳細は
図8及び
図9を参照して後述する。
【0056】
なお、色(色相、明度、彩度、の少なくとも一つ)及び模様の双方を変更することによって値の大きさを表現することも勿論可能である。
【0057】
図7は、指標値の大きさを色の変化により示したマップ情報の一例である。本例では制御部14は、体表0mm~50mm付近までの各深度の指標値を連続的に色にマッピングして表示している。制御部14は、各深度の波形を色に変換して記載したエリア300に加えて、値の大きさのスケールを示すバー301を合わせて描画している。ユーザ(医療従事者)は
図7に示すマップ情報を参照することにより、各深度での脈動の大きさや振幅の傾向が変位している深度等を把握することができる。深度及び色の変化を連続的に扱うことにより、ユーザは脈動状態の変化の大きな深度箇所を容易に把握することや全体的な脈動の状態を把握ができる。
【0058】
図8及び
図9は、各深度の指標値の大きさを模様の変化により示す概念を説明する図である。本例では、値v1~値v2の範囲は左上から右下への斜線のハッチング、値v2~v3の範囲は右上から左下への斜線のハッチング、値v3~値v4の範囲はドットのハッチング、値v4~値v5の範囲は格子模様のハッチング、値V5~は無模様のハッチング、にそれぞれマッピングされている。
【0059】
図8は、1拍での指標値の変化が大きい波形をマッピングした例である。この結果、波形が急峻に立ち上がっている箇所では模様が頻繁に変更されており、値が大きいことを表す無模様のハッチングが存在する。これを参照することにより、ユーザは1拍内での指標値の変化が大きいこと等を把握することができる。
【0060】
一方、
図9は1拍での指標値の変化が小さい波形をマッピングした例である。この結果、波形が急峻に立ち上がっている箇所であっても模様の変化が頻繁ではなく、値が大きいことを表す無模様のハッチングは存在しない。これを参照することにより、ユーザは1拍内での指標値の変化が小さいこと等を把握することができる。
【0061】
図10は、
図8及び
図9の概念を用いて制御部14が作成したマップ情報の一例である。本例では体表から10mmの箇所から10mmの間隔で指標値の変化を模様にマッピングしたバーが描画されている。本例では体表から40mmの位置のバーは模様が頻繁に変わり、かつ値が大きいことを示す無模様のハッチングが存在する。一方で体表から10mmの深度のバーや30mmの深度のバーは模様の変化が少なく、値が大きいことを示す無模様のハッチングが存在しない。そのためユーザは、体表から40mmの深度の動きが大きく、体表から10mmの位置や30mmの深度の動きが小さいことを視覚的に把握することができる。
【0062】
ユーザは、生体情報モニタ10に設けられた操作部13や図示しないリモートコントローラの操作によって、描画対象の時間の範囲を指定できても良い。例えばユーザは、生体情報モニタ10上のタッチパネル(操作部13の一態様)を操作して時刻の範囲を指定すればよい。制御部14は、指定された時間範囲(指定時間)を取得し、当該指定時間に対応した各深度の反射波を読み出して当該反射波を基に指標値を算出する。そして制御部14は、算出した指標値の経時変化を複数波形の表示やマップ情報の表示を
図6や
図7、
図10と同様の手法で表示する。ここで長時間の時刻の範囲(例えば2020年2月4日14:00~16:00)を指定した場合、ユーザは“どの時刻に脈動の悪化が生じてきたのか”、“脈動の悪化スピード”、等を把握することができる。
【0063】
ユーザは、表示対象とする深度の範囲を明示的に指定できるようにしても良い。ユーザは、操作部13(例えば生体情報モニタ10上のタッチパネル、ボタン、つまみ)等を操作して深度の範囲を指定する。例えばユーザは、頭蓋内と思われる深度である20mm~60mmを指定する。なおユーザは、中心深度(例えば体表から30mm)と深度幅(例えば浅い方向及び深い方向にそれぞれ5mm)を指定する方式で深度範囲を指定してももちろん構わない。制御部14は、指定された深度(指定深度)を取得する。制御部14は、指定された深度の反射波を記憶部17や入出力インターフェイス11から取得して上述の手法で指標値を算出する。そして制御部14は、算出した指標値の経時変化を
図6、
図7、
図10と同様の手法で表示する。このように表示対象の深度を指定できることにより、ユーザは着目したい深度の波形のみを正確に把握することができる。
【0064】
なおユーザは、時刻範囲、深度範囲、及び波形数の2つ以上を同時に指定することも勿論可能である。制御部14は、ユーザの指定に従って必要な反射波を特定し、各反射波を基に指標値を算出した上で波形の表示を行えばよい。
【0065】
また制御部14は、上記(A)及び上記(B)の表現の双方を用いた画像データを表示しても良い。すなわち制御部14は、各深度の指標値の経時変化を示すマップ情報に各深度の波形をオーバーラップさせた画像データを表示しても良い。当該例を
図11に示す。
【0066】
本例では制御部14は、体表0mm~50mm付近までの各深度の指標値を連続的に色にマッピングして表示している。これに加えて制御部14は、体表0mmから5mm間隔の深度の指標値を示す波形をオーバーラップさせて表示する。なお制御部14は、波形を認識しやすくするために波形の色をマップ情報と区別しやすい色にするとともに、波形の線を太くする等の調整をすることが望ましい。ユーザはこのマップ情報と複数の波形がオーバーラップした表示を参照することにより、各深度の脈動変化を総合的に把握することができる。
【0067】
続いて本実施の形態に係る生体情報モニタ10の効果について説明する。本実施の形態に係る生体情報モニタ10は、複数深度に超音波を照射することによって生じた各深度の動きを示す反射波をそれぞれ取得する。そして制御部14は、各深度の反射波から各深度の動きを示す指標値を算出する。制御部14は、各深度の指標値の変化を(A)各深度に対応する複数の波形(例えば
図6)、(B)深度と指標値の関連を色及び模様の少なくとも一方にマッピングしたマップ情報(例えば
図7)、の少なくとも一方の表現で表示する。当該表示では深度と動きの関連が示されているため、ユーザは深度と当該深度での動きの関連性を容易に把握することができる。これによりユーザは異常箇所の把握や異常箇所と正常箇所の違いの把握等を容易に行うことができる。
【0068】
以上が基本的な表示制御の構成である。なお、上述の表示例(
図6、
図7、
図10)では、深度の軸(縦軸)の上方向から下方向に向かって深度が大きくなる例を示したが、上方向から下方向に深度が浅くなるように表示しても勿論構わない。以下に種々の変形例を説明する。以下の表示例においても、上方向から下方向に深度が浅くなるように表示しても勿論構わない。
【0069】
<時間経過に伴う脈動の変化検出>
脳に対する外傷が生じた場合などでは、時間経過に伴って脈動が徐々に小さくなるケースや必要以上に脈動が大きくなるケースがあり得る。制御部14は、この時間経過に伴う脈動の変化が大きい場合にはその状態を検出して報知してもよい。すなわち制御部14は、ある時刻(第1時刻)の各深度の指標値(例えば変位量から算出する振幅の大きさ)と、別の時刻(第2時刻)の各深度の指標値(例えば変位量から算出する振幅の大きさ)と、を用いた比較を行う。そして制御部14は、当該比較によって時間経過に伴う指標値の変化が大きいと判定した場合に報知を行う。詳細な処理例は以下の通りである。
【0070】
制御部14は、ある時刻(第1時刻、好適には現在時刻。)の反射波に基づく指標値の経時変化を(A)複数波形及び(B)マップ情報の少なくとも一方を表現で表示するものとする。この際に、制御部14は当該時刻(第1時刻)から一定時間前の時刻(第2時刻)の各深度の反射波を記憶部17から読み出す。なお制御部14は、一定時間前の反射波ではなく任意の選択基準で比較対象の反射波を記憶部17から読み出してもかまわない。
【0071】
具体例としては、制御部14は、現在時刻(第1時刻)の20~40mmの深度の反射波から各深度の指標値を算出する。これと併せて制御部14は、現在時刻から1時間前(第2時刻)の20~40mmの深度の反射波を取得して各深度の指標値を算出する。なお制御部14は、一定時間前(第2時刻)の指標値を記憶部17にキャッシュしておいてもかまわない。
【0072】
そして制御部14は、現在時刻の指標値と1時間前の指標値を用いた比較を行い、当該比較によって時間経過に伴う指標値の変化が大きいか否かを判定する。以下、指標値を用いた比較の一例を示す。当該例において指標値は変位量から算出される振幅の大きさであるものとする。例えば制御部14は、現在時刻の20mm/30mm/40mmの変位量を示す波形から1拍を切り出し、1拍の最大値と最小値の差分から振幅の大きさをそれぞれ算出する。ここで振幅の大きさは、複数拍の平均値や代表値を用いても勿論よい。制御部14は、同様に1時間前の各深度の変位量から振幅の大きさをそれぞれ算出する。
【0073】
制御部14は、現在時刻の各深度の振幅の大きさと1時間前の各深度の振幅の大きさの差分をそれぞれ算出する。例えば制御部14は、現在時刻の深度20mm/30/40mmの深度の振幅の大きさと1時間前の深度20mm/30/40mmの深度の振幅の大きさの差分を以下のように算出する。
(A)20mmの振幅の大きさの差分 = 現在時刻の深度20mmの振幅の大きさ - 1時間前の深度20mmの振幅の高さ
(B)30mmの振幅の大きさの差分 = 現在時刻の深度30mmの振幅の大きさ - 1時間前の深度30mmの振幅の大きさ
(C)40mmの振幅の大きさの差分 = 現在時刻の深度40mmの振幅の大きさ - 1時間前の深度40mmの振幅の大きさ
【0074】
制御部14は、算出した振幅の差分を閾値と比較する。例えば制御部14は、上述の(A)~(C)の平均が閾値以上であるかを判定する。振幅の差分が大きい場合(閾値以上である場合)、制御部14は時間経過に伴う脈動の変化が大きいものと判定する。脈動変化が大きいと判定された場合、制御部14は脈動の変化が大きいことを報知する。なお制御部14は、算出した振幅の差分がどの程度大きいのかを把握するために複数の閾値と比較してもよい。例えば制御部14は、閾値Th1よりも振幅の差分の平均が大きければ指標値の変化が“大きい”ものし、閾値Th2(Th1<Th2)よりも振幅の差分が大きければ指標値の変化が“とても大きい”ものと判定すればよい。
【0075】
なお制御部14は各深度の差分を深度毎の閾値と比較したうえで、その比較結果(例えば閾値を超えた差分の個数、差分と閾値の差の合計)を用いて、時間変化に伴う指標値の変化が大きいかを判定してもかまわない。例えば制御部14は、深度20mmの振幅の差分と深度20mm用の閾値を比較し、深度30mmの振幅の差分と深度30mm用の閾値を比較し、深度40mmの振幅の差分と深度40mm用の閾値を比較する。そして制御部14は、各比較の結果(例えば閾値を超えた個数が2個以上か、等)を基に時間変化に伴う指標値の変化が大きいかを判定してもよい。
【0076】
制御部14は指標値の変化が大きいと判定した場合には音や表示によって報知を行うが、報知の方法例を
図12~
図14を参照して列挙する。例えば制御部14は、指標値の変化が大きいと検出した場合、スピーカ15を介してアラーム音を出力してもよい。ここでアラーム音の種類(緊急度を示す音色等)や音量は、変化の大きさの度合い(例えば閾値を超えた値の大きさ)によって変化させても良い。例えば制御部14は、脈動の変化がとても大きいと判定した場合には緊急アラームを鳴動し、脈動の変化が大きいと判定した場合には通常アラームを鳴動する。
【0077】
制御部14は、複数波形(上記(A))及びマップ情報(上記(B))の少なくとも一方とともに、指標値の変化が大きいことを喚起するメッセージを表示してもよい。例えば制御部14は、
図12に示すように複数深度の各波形の表示画面上にメッセージm1“1時間前と比較して脈動が大きくなっています”、といったメッセージを表示すればよい。さらに制御部14は、メッセージm1と同時に過去の指標値の経時変化との比較を可能な画面表示を指定可能なインターフェイス(本例では“比較”ボタンb1)を表示してもよい。
【0078】
<時間経過に伴う比較表示>
ボタンb1が操作された場合、制御部14は過去の指標値の経時変化(複数波形(上記(A))及びマップ情報(上記(B)の少なくとも一方)と現在の指標値の経時変化(複数波形(上記(A))及びマップ情報(上記(B)の少なくとも一方)を合わせて表示すればよい。制御部14は、過去の反射波または算出済みの指標値を用いて上述の方法と同様に過去の脈動を表示すればよい。
【0079】
例えば制御部14は、
図13に示すように過去の複数波形(14:00:00付近)を表示するエリアa1と現在の複数波形(15:00:00)を表示するエリアa2を表示する。なお本例では上下に並べて表示しているが、左右に並べて表示してもよい。制御部14は、マップ情報を表示する場合であっても、左右や上下に複数のマップ情報を並列表示すればよい。
【0080】
また制御部14は、
図14に示すように過去の複数波形(14:00:00付近)と現在の複数波(15:00:00)を同じ位置に重ね合わせて表示しても構わない。
図14では、制御部14は各深度の表示位置を合わせたうえで、14:00:00の波形と15:00:00の波形を重ね合わせて表示している。なお図示するように、制御部14は時間帯の違いによって波形の線種、太さ、色、端点の模様等を変化させることが好ましく、本例では線種(実線と点線)を変えている。さらに制御部14は、時間帯の違いを示す凡例B2を表示することがさらに好ましい。
【0081】
なお制御部14は、上述の比較を行い、指標値の変化が閾値と比較して大きい(過去の脈動と比べて変化が大きい)と判定した場合、自動的に過去の指標値と現在の指標値を比較可能な表示(
図13、
図14)に切り替えてもよい。例えば制御部14は、指標値の変化が閾値と比較して大きい(過去の脈動と比べて変化が大きい)と判定した場合、
図6に示す波形表示から
図13に示す波形の並列表示に自動的に切り替えても良い。
【0082】
このように制御部14は、ある時刻の指標値と別の時刻の指標値を比較し、指標値の変化が大きい場合には報知を行う。これによりユーザは、時間経過に伴い指標値の変化が大きいことを明確に把握することができる。また把握する際に、複数波形やマップ情報の比較が可能な表示を行うことにより、どの程度の変化が生じているのかを視覚的に容易に把握することができる。
【0083】
なお制御部14は、時間経過に伴う指標値の変化が小さいと判断されている場合であっても、過去の複数深度の波形またはマップ情報を表示するための操作インターフェイス(例えば
図12の比較ボタンB1)を常時表示してもよい。すなわち制御部14は、例えば
図6のような複数深度の波形の表示画面に、
図12の“比較”ボタンb1を常時表示するようにしても良い。また制御部14は、上述の比較処理を行うことなく、ユーザの設定(“常時比較モード”の選択)に応じて現在の複数波形/マップ情報と過去の複数波形/マップ情報を常に比較可能な表示を行ってもよい。
【0084】
すなわち制御部14は、時間経過に伴う異常が検出された場合のみならずユーザの操作や設定が行われた場合にも、第1時刻の各深度の指標値の経時変化と、第2時刻の各深度の指標値の経時変化と、の双方を表示しても良い。例えば制御部14は、ユーザのボタン操作に応じて
図13のように2つの波形エリアの表示をしてもよく、2つのマップ情報を表示してもかまわない。またユーザは現在時刻の指標値のみならず比較対象となる2つ以上の時間帯(例えば1時間前と2時間前の比較)を指定し、制御部14は指定された時間帯の指標値の経時変化を比較可能な表示(並列表示、重畳表示、等)を行っても良い。
【0085】
制御部14は、2つの波形エリア(またはマップ情報)を並べて表示する(例えば
図13のように2つのグラフの時間軸の開始点のX座標と終了点のX座標が一致する)ことが好ましいが、任意の位置に2つの波形エリアを表示しても良い。例えば制御部14は、ユーザのマウス操作に応じて波形エリアを自由に動かせる構成であっても良い。換言すると制御部14は、縦方向または横方向に2つの波形エリア(またはマップ情報)を並べて表示するのではなく、斜め方向に並べて表示しても良く、また一部のエリアが重なるように表示してもかまわない。
【0086】
また制御部14は、
図14に示すような重畳表示を常時行っても良い。この際に制御部14は、第1時刻を示す波形の表示態様(例えば、線の太さ、線種、色、端点の模様等)と、第2時刻を示す波形の表示態様と、を異なるものにすることが望ましい。
【0087】
<特徴点の整列>
制御部14は、第1時刻の波形群(第1波形群)の特徴点の一種であるエッジタイミングと、第2時刻の波形群(第2波形群)の特徴点の一種であるエッジタイミングと、を対応する位置に配置して第1時刻の波形群と第2時刻の波形群を表示する制御を行っても良い。当該表示制御の概念を以下に説明する。
【0088】
図2等に示すように脈動波形は心臓の拍動に起因して生じる為、いわゆる脈動波形(ピーク点が定期的に生じる波形)となる。そのため、2つの波形のピーク点の位置を合わせて表示すると、ユーザは両波形の形状の違い(振幅の大きさ等)を正確に把握しやすい。例えば、
図15は、ある時点(15:10:00)の複数波形と当該時点の1時間前(14:10:00)の複数波形を単純に縦方向に並べた例である。換言すると、15:10:00のX座標と14:10:00のX座標を同じにした例である。図示するように波形が大きく立ち上がる/立ち下がるタイミング(以下、エッジタイミングとも記載する。)には横軸方向においてずれがある。詳細には、波形エリアa3のエッジタイミングe1と、波形エリアa4のエッジタイミングe2と、の横軸上の位置にずれがある。このずれは、主に心臓拍動のスピードに起因するものである。このようなずれがあると、波形振幅の比較をしづらいと感じるユーザも存在する。
【0089】
なお、経時変化の指標値は心臓脈動に起因するものであるため、同時刻では深度が違ったとしてもエッジタイミングにはずれが無い(またはとても小さい)ことが一般的である。以下の説明では、同時刻での各深度のエッジタイミングにはずれが無いものとして説明する。
【0090】
制御部14は、指定された2つの時刻の波形群のエッジタイミングを合わせる処理をしたうえで表示を行っても良い。例えば制御部14は、一般的な心電図波形のR波の検出と同様の手法により、第1時刻/第2時刻の指標値の経時変化を示す波形群のエッジタイミングを検出する。そして制御部14は、第1時刻の指標値の経時変化を示す波形群のエッジタイミングと、第2時刻の指標値の経時変化を示す波形群のエッジタイミングと、が対応位置に配置されるように表示を行う。
【0091】
図16が当該例である。制御部14は、第1時刻の波形群のエッジタイミングを検出するとともに、第2時刻の波形群のエッジタイミングを検出する。そして制御部14は、検出したエッジタイミングの位置が対応位置となるようにそろえて2つの波形エリアa5、a6の表示を行う。例えば制御部14は、エッジタイミングの横軸での位置(X座標)を同じものとした上で、当該エッジタイミングから所定時間前後(例えば1秒前から4秒後まで)の波形群を表示する。これにより、エッジタイミングe3の位置(X座標)が揃ったうえで波形エリアa5と波形エリアa6が表示される。なお、波形エリアa6は波形エリアa5の1時間前の波形群を表示することを意図したものであるが、エッジタイミングの位置合わせを行ったため、時刻は厳密に1時間前ではなくなっている(換言すると15:10:00の横軸位置と14:10:00の横軸位置にはずれがある)。
【0092】
なお制御部14は、表示位置を合わせるために検出したエッジタイミングe3を
図16に示すように明示してももちろん構わない。すなわち制御部14は、エッジタイミング(特徴点)を示す情報(
図16の例ではエッジタイミングe3を示す一点鎖線)を表示してかまわない。
【0093】
また制御部14は、第1時刻の波形群のエッジタイミングと第2時刻の波形群のエッジタイミングを検出するものとしたが必ずしもこれに限られない。エッジタイミング(ピーク点)は波形の特徴点の一例であり、例えば波形群の任意の極小値/極大値/変曲点を特徴点としてもよい。制御部14は、任意の極小値等を特徴点として検出した場合にも、上述のR波を用いた表示制御と同様の処理を行えばよい。
【0094】
<拍の分割表示>
制御部14は、両波形群の1拍毎の違いを比較しやすいような加工を行っても良い。例えば制御部14は、第1時刻の指標値の経時変化を示す波形群(第1波形群)を拍に分割する(切り出す)とともに、第2時刻の指標値の経時変化を示す波形群(第2波形群)を拍に分割する。そして制御部14は、第1時刻の波形群の拍の時間間隔と第2時刻の波形群の拍の時間間隔を比較する。制御部14は、当該比較によって他方と比べて時間間隔が長い長周期波形群と、他方と比べて時間間隔が短い短周期波形群を検出する。そして制御部14は、長周期波形群の1拍の時間間隔内に短周期波形群の1拍を入れるように両波形群を合わせて表示する。
【0095】
図17は当該表示の一例である。制御部14は、波形エリアa7の波形群を拍に分割し、波形エリアa8の波形群も拍に分割する。そして制御部14は、波形エリアa7の波形群から分割した拍の時間間隔と波形エリアa7の波形群から分割した拍の時間間隔を比較する。制御部14は、波形エリアa8の拍の時間間隔が長いと判断する。すなわち制御部14は、波形エリアa8の波形群を長周期波形群とし、波形エリアa7の波形群を短周期波形群として検出する。制御部14は、長周期波形群a8の1拍の時間間隔t1/t2/t3内に短周期波形群a7から分割した1拍が入るように2つの波形エリアa7とa8を合わせて表示する。これにより、拍の時間間隔に違いがある場合には、
図17に示すように拍の時間間隔が短い方の波形エリアa7の波形は断続的なものとなる。ユーザはこの表示を参照することにより、時間経過に伴う1拍の長さの違いや振幅の高さの違い等をより明確に把握することができる。
【0096】
また制御部14は、長周期波形群の拍の時間間隔に合わせて、短周期波形群の拍を引き延ばして表示しても良い。
図18に例を示す。制御部14は、
図17と同様に波形群から拍を分割し、分割した拍の時間間隔の比較し、拍の表示を行う。それに加えて制御部14は、拍の時間間隔が短いと判定された波形エリアa9(短周期波形群)の拍を、拍の時間間隔が長い波形エリアa10(長周期波形群)の時間間隔t7、t8、t9に合わせて引き延ばした拍の波形を合わせて表示する。例えば制御部14は、波形エリアa9において分割した波形のw1に加えて、引き延ばした波形w2を合わせて表示している。なお制御部14は、波形エリアa9において引き延ばした波形のみ(すなわち波形w2相当の波形のみ)を表示してももちろん構わない。当該表示は、時間経過に伴う波形の振幅の比較をしたい場合に有用である可能性がある。
【0097】
図17及び
図18の表示例ではエッジタイミング(波形の立下りタイミング)を拍の分割点として用いているが、必ずしもこれに限られない。例えば1拍の長さが1~1.5秒程度である場合、制御部14は波形の立下りタイミングから0.3~0.5秒前を拍の開始点として波形を拍に分割する。このように分割すると、拍同士を表示した際に拍の立下りタイミングの比較が容易となる。
【0098】
なお
図16~
図18の波形表示の概念は、
図14のように異なる時間帯の波形を重ね合わせて表示する際にも応用可能である。例えば制御部14は、上記と同様に第1時刻の指標値の経時変化を示す波形群、及び第2時刻の指標値の経時変化を示す波形群、の双方からエッジタイミングを検出する。そして制御部14は、エッジタイミングの位置が同じになるように第1時刻の波形と第2時刻の波形を重ねて表示する。例えば制御部14は、14:00:00の波形と15:00:00の波形を重ね合わせて表示する場合、14:00:00に一番近いエッジタイミングの位置(X座標)と、15:00:00に一番近いエッジタイミングの位置(X座標)と、を同じ位置(X座標が同じ値)にして各時間の波形群を重ね合わせて表示すればよい。
【0099】
また制御部14は、2つの時刻の波形群を重ね合わせて表示する際にも、
図17相当の拍の分割表示を行っても良い。
図19は、当該表示の一例である。
図19の例では制御部14は、14:00:00付近で測定した波形群を拍に分割するとともに、15:00:00付近で測定した波形群を拍に分割する。そして制御部14は、拍の時間間隔の長さを比較し、15:00:00付近で測定した波形群の拍の時間間隔の方が長いと判断する。すなわち制御部14は、15:00:00付近で測定した波形群を長周期波形群とし、14:00:00付近で測定した波形を短周期波形群として検出する。制御部14は、長周期波形群(15:00:00付近で測定した波形)の1拍の時間間隔t7~t11内に短周期波形群(14:00:00付近で測定した波形)から分割した1拍が入るように長周期波形群と短周期波形群を重ね合わせて表示する。
【0100】
なお制御部14は、エッジタイミングe9~e13を
図19に示すように明示しても良く、波形の種別を示す凡例b3を表示しても良い。また図示しないものの制御部14は、
図18に示す方法と同様に2つの時刻の波形群を重ね合わせて表示する際にも、波形を時間軸方向に引き延ばす加工を行っても良い。
【0101】
<深度変化に伴う脈動の変化検出>
脳に対する外傷が生じた場合などでは、損傷時に力がかかった箇所や力の大きさによって、脳内における箇所毎の損傷程度が異なってくるケースがあり得る。例えば外傷によって圧力がかかった箇所や圧力の大きさによって、一部の深度の脈動が極端に大きいまたは小さいといったケースが生じ得る。制御部14は、同じ時刻における各深度の指標値の相互比較を行う事によって周囲との指標値の差異が大きい深度があるかを判定する。そして制御部14は、周囲と比べて指標値が異常な深度が存在する場合には報知(アラーム鳴動、メッセージ表示等)を行ってもよい。詳細な処理例を以下に説明する。
【0102】
例えば制御部14は、複数の波形(上記(A))及びマップ情報(上記(B))の少なくとも一方を表示する前に、各深度の指標値を用いた比較を行う。以下、指標値が変位量から算出する振幅の大きさであるものとする。例えば制御部14は、深度0mmの変位量のピーク点からピーク点までを1拍とし、1拍内の振幅の大きさ(1拍内の最高値と最低値の差)を算出する。同様に制御部14は、深度10mmの1拍内の振幅の大きさ(1拍内の最高値と最低値の差)を算出する。そして制御部14は、深度0mmの振幅の大きさと深度10mmの振幅の大きさの差分と所定の閾値を比較し、当該差分が閾値よりも大きければ深度の変化による指標値の変化が大きいと判定する。制御部14は、この判定によって深度による指標値の変化が大きい箇所を特定する。
【0103】
制御部14は、同様の手法で深度10mmと深度20mmの比較、深度20mmと深度30mmの比較、等を行う。そして制御部14は、深度による指標値の差異の大きな箇所を特定する。例えば制御部14は、深度30mmの箇所が周囲の箇所と比べて指標値の変化が大きな箇所であると判定する。
【0104】
ここで制御部14は、ある特定深度(第1深度)の指標値の変化が大きいかを判定する際に、当該深度の指標値と当該深度から浅い方向の箇所(第2深度)の指標値を用いた比較を行うとともに、当該箇所(第1深度)の指標値と当該箇所から深い方向の箇所(第3深度)の指標値を用いた比較を行う事が好ましい。これにより制御部14は、当該深度の指標値が周囲との差異が大きい深度であるかを判定する。例えば制御部14は、深度30mmの振幅の大きさと深度20mmの振幅の大きさの差分と閾値を比較するとともに、深度30mmの振幅の大きさと深度40mmの振幅の大きさの差分と閾値を比較する。そして制御部14は、双方の比較において振幅の差が閾値より大きいと判断した場合に、深度30mmの振幅が周辺箇所と比べて異常であると判断してもよい。また制御部14は、深度30mmの振幅と深度20mmの振幅の差分と、深度30mmの振幅と深度40mmの振幅の差分と、の合計と閾値を比較して深度30mmの振幅が異常であるかを判定してもよい。なお制御部14は、ある深度の指標値が周囲と比べて異常であることを判定する際に、3点以上の深度との比較をしてもよいことは勿論である。このようにある深度の指標値の異常の判定において当該深度よりも浅い位置と深い位置の双方との比較を行う事により、局所的な異常箇所を正確に特定することが可能となる。
【0105】
なお頭蓋骨の外側や頭蓋骨付近については、骨の強度の影響により心拍に起因する脈動が微小であることが一般的である。そのため制御部14は、体表から所定深度(例えば15mm)までの振幅を比較対象から除外してもよい。
【0106】
制御部14は、ある深度の指標値が周辺深度の指標値と比べて差が大きい状態が一定時間以上継続した時点で、当該深度の指標値が異常であると判定してもよい。また制御部14は、複数の閾値と振幅の差分を比較することによって、ある深度の振幅の異常度合いのレベル(例えばレベル1:少し異常、レベル2:異常、レベル3:大幅に異常)を検出してもよい。
【0107】
制御部14は、他の深度と比べて指標値が異常である箇所を検出した場合、ある深度で指標値の異常が生じていることを音や表示により報知する。例えば制御部14は、スピーカ15を介してアラーム音を出力する。ここでアラーム音の種類(緊急度を示す音色等)や音量は、ある深度と他の深度との差の大きさのレベル(例えば閾値を超えた値の大きさ)によって変化させても良い。
【0108】
また制御部14は、複数波形(上記(A))及びマップ情報(上記(B))の少なくとも一方の表示の際に、ある深度の指標値の異常を喚起するメッセージを表示してもよい。以下、
図20を参照して表示例の説明を行う。
【0109】
図20では、20mm~50mmの深度が表示対象と指定されているものとする。制御部14は、
図20に示すように複数深度の各波形の表示画面上にメッセージm2“深度30mmの脈動が周囲の箇所と比べて小さくなっています”、といったメッセージを表示すればよい。さらに制御部14は、異常な深度を知らせるために、当該深度の波形の線種、色、太さ、端点の模様を他の深度の波形と異なるものとしてもよい。
図20の例では脈動が異常となっている深度30mmの波形を点線で示しており、他の深度の波形を実線で示している。また
図20に示すように異常な脈動となっている深度の縦軸位置にドットd1を表示することや、深度30mmの位置を実線b4で囲って他の深度と区別可能に表示してもよく、当該深度付近の背景色を変えても良い。すなわち制御部14は、周辺深度と比べて指標値が異常となっている深度を区別可能に表示することが好ましい。
【0110】
マップ情報の表示の際にも、制御部14は同様の処理を行って、周辺深度と比べて指標値が異常となっている深度を他の深度を区別可能に表示すればよい。例えば制御部14は、指標値が異常となっている深度の縦軸位置にドットを表示することや、指標値が異常となっている深度の表示箇所を点線等で囲って他の深度と区別可能に表示すればよい。また制御部14は、メッセージ(例えば“深度30mmの脈動が周囲の箇所と比べて小さくなっています”)を表示することによって指標値の異常となっている深度を報知しても良い。
【0111】
<2点比較の観点>
なお、基準としたい深度と比較したい深度が明確である場合、生体情報モニタ10は2つの深度を対象として上述のマップ情報や複数波形を表示する動作を行うものと解釈することも可能である。
【0112】
超音波トランスデューサ100は、基準となる第1深度に超音波を照射して反射波を取得し、反射波(第1反射波)と第1深度を関連付けて入出力インターフェイス11に供給する。また超音波トランスデューサ100は、比較対象となる第2深度に超音波を照射して反射波を取得し、反射波(第2反射波)と第2深度を関連付けて入出力インターフェイス11に供給する。
【0113】
入出力インターフェイス11は、第1深度の動きに関連する第1反射波と第2深度に関連する第2反射波を取得する。制御部14は、第1反射波を用いて上述の手法によって変位量等の指標値(第1指標値)を算出し、第2反射波を用いて上述の手法によって変位量等の指標値(第2指標値)を算出する。
【0114】
制御部14は、第1指標値と第2指標値の経時変化を上記と同様に(A)複数の波形、及び(B)マップ情報、の少なくとも一方の表現を用いて表示する。これによりユーザは、基準の脈動に対する比較対象の脈動の違いを明示的に把握することができる。
【0115】
波形表示する場合、制御部14は
図6等と同様に波形が重ならないように並列表示しても良いが、深度の区別ができるようにした上で同じ高さ位置に重ねて表示しても良い。例えば制御部14は、第1深度の波形を赤、第2深度の波形を青で同じ高さに重ねて表示したうえで、波形表示に関する凡例(例えば赤線波形が第1深度、青線波形が第2深度であることを示すラベル)を合わせて表示すればよい。同じ高さに2つの波形を重ねて表示することによって、ユーザは基準の脈動に対して比較対象の脈動がどのようなものなのか(振幅がどの程度大きいのか/小さいのか、波形の形状がどうようのものであるか、等)をより明確に把握することが出来る。
【0116】
なお比較対象が複数ある構成(例えば第3深度も比較対象とする構成)であっても勿論構わない。
【0117】
<生体情報処理システム1の変形例>
生体情報処理システム1は、入力ユニットを介して生体信号を取得する構成であっても良い。当該変形例を
図21に示す。生体情報処理システム1は、生体情報モニタ10及び入力ユニット20を有する。入力ユニット20は、各センサ(超音波トランスデューサ100、カフ110、心電図電極120)と生体情報モニタ10との間の各種信号の中継を行う。
【0118】
なお入力ユニット20は、生体情報モニタが行う信号処理や表示画像の生成等の処理の一部または全部を行う構成であっても良い。すなわち入力ユニット20は、上述の超音波トランスデューサ100から取得した反射波を基にした表示制御等を行い、表示用の画像データを生体情報モニタ10に送信する構成であっても良い。この場合、入力ユニット20は、上述の処理を行う制御部14、入出力インターフェイス11、等を備えた生体情報モニタの一態様として動作する。
【0119】
<他のバイタルサイン波形の表示への応用>
なお
図16~19の表示概念は、複数の深度に対応する各指標値の波形を表示する場合のみならず、一般的なバイタルサインの波形(例えば血圧波形、心電図波形、呼吸波形)を表示する際にも応用可能である。すなわち第1時刻のあるバイタルサインの波形(第1生体波形)と、第2時刻の同一種類のバイタルサインの波形(第2生体情報)と、を合わせて表示する際にも応用可能である。以下、詳細を説明する。
【0120】
生体情報モニタ10は、
図3に示すようにカフ110や心電図電極120と接続可能である。なお生体情報モニタ10は、呼吸波形を取得可能な図示しない呼吸センサや呼吸マスク、SpO2プローブ等と接続してももちろん構わない。
【0121】
入出力インターフェイス11は、各種のセンサ(カフ110、心電図電極120、等)から生体信号を取得する。なお心電図や呼吸の測定は、被験者の病状等に依存するが、ある程度の長時間(例えば30分以上)連続的に行うものと想定する。つまり入出力インターフェイス11は、連続的な測定によって、第1時刻の生体信号を取得するとともに第2時刻の生体信号も取得する。
【0122】
入出力インターフェイス11は、各種のセンサから取得した生体信号を制御部14に供給する。制御部14は、取得した生体信号に各種の処理(例えばデジタル化処理、フィルタリング処理、等)を行い、各バイタルサインの生体波形及び測定値を検出する。本例では制御部14は、心電図電極120から取得した心電図信号から心電図波形を検出するものとする。心電図波形の検出は、一般的な生体情報モニタと同様の手法で行えばよい。なお制御部14は、データの長期保存の為に適宜記憶部17にデータを書き込むとともに、表示等に必要なデータを適宜記憶部17から読み出す。
【0123】
制御部14は、一般的な生体情報モニタと同様に生体波形及び測定値をリアルタイムで表示する。またユーザが操作部13を操作して2つの時間帯の波形を比較するモードを選択した場合、下記の動作を行う。なおユーザは、比較対象の時間帯(第1時刻、第2時刻)を明示的に指定しても良い。下記の説明では現在(第1時刻)の心電図波形と1時間前(第2時刻)の心電図波形を比較することが指定されたものとする。
【0124】
制御部14は、各種のセンサから取得した生体信号を基に第1時刻における生体波形と、第2時刻における生体波形と、を検出する。第1時刻における生体波形と第2時刻における生体波形は、同じ生体信号に基づくものであり、同一種類(本例では心電図波形)の生体波形となる。
【0125】
制御部14は、現在時刻の心電図波形(第1生体波形)を解析し、心電図波形の特徴点を検出する。本例で特徴点とは、R波であるものとする。同様に制御部14は、1時間前の心電図波形(第2生体波形)を解析し、心電図波形のR波を検出する。そして制御部14は、R波のタイミングが対応位置に配置されるように現在の心電図波形と1時間前の心電図波形を表示する。
図22は、当該表示の一例である。
【0126】
図22(A)は、現在の心電図波形と1時間前の心電図波形をそのまま上下に並べた参考図である。一方、
図22(B)は、制御部14によって生成された表示例であって、現在の心電図波形と1時間前の心電図波形のR波のタイミングが時間軸上の同じ位置になるように揃えて表示した例である。制御部14は、検出したR波のタイミングを対応位置(本例ではX軸座標が同じ値となるような位置)に配置して現在の心電図波形と1時間前の心電図波形を表示する(
図22(B))。また制御部14は、対応位置の情報(R波のタイミングを示す一点鎖線e14)を合わせて表示する。このように異なる時間帯(第1時刻、第2時刻)の同一種類の2つの生体波形を合わせて表示する際に、両波形の特徴点(例えばR波のタイミング)を対応位置に配置して2種類の波形を表示することにより、ユーザは波形の形状の違いを正確に把握することが出来る(
図22(B))。
【0127】
なお特徴点は、R波でなくても良く、S波やT波であっても良く、R波から所定時間前(または所定時間後)のタイミングであっても良い。すなわち特徴点とは、波形解析によって抽出可能なポイントを指す概念である。
【0128】
図22(B)の例では、両波形のR波(特徴点の一種)を対応位置(同じX座標)に配置して2種類の波形を並べて表示したが、両波形のR波(特徴点の一種)を対応位置(同じX座標)に配置した上で重ねて表示してももちろん構わない。
【0129】
また制御部14は、1拍毎の違いを比較しやすいような加工を行ったうえで表示を行っても良い。制御部14は、現在の心電図波形を拍に分割するとともに、1時間前の心電図波形を拍に分割する。制御部14は、現在の心電図波形の拍の時間間隔と過去の心電図波形の拍の時間間隔を比較する。制御部14は、当該比較によって他方と比べて時間間隔が長い長周期波形と、他方と比べて時間間隔が短い短周期波形を検出する。そして制御部14は、長周期波形の1拍の時間間隔内に短周期波形の1拍を入れるように両波形を合わせて表示する。
【0130】
図23(A)は、当該表示の一例である。制御部14は、現在(15:00:00付近)の心電図波形を拍に分割し、1時間前(14:00:00付近)の心電図波形を拍に分割する。拍の分割は、一般的な心電図解析において用いられる任意の手法を用いて行えばよい。そして制御部14は、現在の心電図波形から分割した拍の時間間隔と、1時間前の心電図波形から分割した拍の時間間隔を比較する。制御部14は、本例では1時間前の心電図波形を長周期波形とし、現在の心電図波形を短周期波形として検出する。制御部14は、1時間前の心電図波形の拍の時間間隔t12/t13/t14に現在の心電図波形から分割した拍を入れるように、現在の心電図波形と1時間前の心電図波形を上下に並べて表示する。本例では1時間の心電図波形の拍の周期が長い為、現在の心電図波形が断続的に表示される。
【0131】
また制御部14は、図示するように拍の開始を示す情報(図示する例では一点鎖線e15~e17)を表示しても良い。ユーザは当該表示を参照することによって、時間経過に伴う拍の形状の違い、1拍にかかる時間、等をより明確に把握することができる。
【0132】
なお図示しないものの、
図18と同様に、長周期波形から分割した拍の時間間隔に合わせて、短周期波形から分割した拍を引き延ばして表示してもよい。
【0133】
図23(B)は、2つの波形を重ね合わせて表示する例を示している。制御部14は、
図23(A)の例と同様に現在(15:00:00付近)および1時間前(14:00:00付近)の心電図波形からの拍の分割、拍の時間間隔の比較、長周期波形/短周期波形の検出を行う。制御部14は、1時間前の心電図波形(長周期波形)の拍の時間間隔t15/t16/t17に現在の心電図波形(短周期波形)から分割した拍を入れるように現在の心電図波形と1時間前の心電図波形を重ねて表示する。本例では1時間前の心電図波形の拍の周期が長い為、現在の心電図波形が断続的に表示される。本表示によっても、ユーザは時間経過に伴う拍の形状の違い、1拍にかかる時間、等をより明確に把握することができる。また重ね合わせることにより、両拍のズレの大きさを明確に把握することが可能となる。
【0134】
なお
図23(A)及び
図23(B)の例では両波形から分割した1拍の開始するX座標が同じとなる表示例を示したが、制御部14は長周期波形の拍の時間間隔内における短周期波形の拍の配置位置を調整しても良い。以下に詳細例を示す。
【0135】
制御部14は、
図23(A)や
図23(B)に示す表示と同様の手法で、2つの波形からの拍の分割、長周期波形/短周期波形の検出を行う。そして制御部14は、長周期波形から分割した拍と短周期波形から分割した拍の類似度が最も高くなる位置に、長周期波形から分割した拍の時間間隔内において短周期波形の拍を配置する。当該動作概念を
図24を参照して説明する。
【0136】
図24の例では、点線で示す波形が短周期波形から分割した拍であり、実線で示す波形が長周期波形から分割した拍とする。制御部14は、長周期波形から分割した拍の位置を固定し、短周期波形から分割した拍の横軸位置をずらしていく。なお制御部14は、両拍の縦軸位置は基線が重なるように固定する。
【0137】
図24(A)の例は、両拍の波形の開始位置(X座標位置)が同じである。制御部14は、この状態において2つの拍の類似度を検出する。当該類似度の計算は、例えば一般的な画像処理において用いられる任意の類似度比較の手法(例えば幾何学的なパターンマッチング)を用いればよい。
【0138】
制御部14は、類似度の算出後に、短周期波形から分割した拍の横軸位置をずらす。
図24(B)は、短周期波形から切り出した拍を右方向にずらした例を示している。そして制御部14は、
図24(A)と同様に、当該配置における2つの拍の類似度(例えば相関係数)を算出する。
【0139】
制御部14は、短周期波形から分割した拍の終点位置と長周期波形から切り出した拍の終点位置が同じになるまで、短周期波形から分割した拍をずらしていきながら類似度の算出を繰り返す。
図24(C)は、短周期波形から切り出した拍の終点位置と長周期波形から切り出した拍の終点位置が同じとなっている例を示す図である。
【0140】
制御部14は、すべての位置で類似度を算出し、類似度が最も高い位置を決定する。そして制御部14は、類似度が最も高い位置を短周期波形から分割した拍の表示位置として定め、2つの拍の表示を行う。すなわち制御部14は、長周期波形の拍と短周期波形から分割した拍の類似度に基づいて、短周期波形から分割した拍の表示位置を調整する。
図24(A)~(C)の例では、制御部14は重なり度合いの最も多い
図24(B)の配置位置が類似度の最も高い位置であると判定する。
【0141】
なお
図24の例では、3つの配置位置の類似度の説明をしたが、実際には最小単位(例えば1ピクセル)または所定単位だけずらした各位置での類似度を算出することが好ましい。
【0142】
図25(A)は、当該表示の例である。制御部14は、
図23等と同じように、2つの時間帯の波形からの拍の分割や長周期波形/短周期波形の検出を行う。そして制御部14は、短周期波形から分割した拍の位置をずらして類似度を算出することによって、短周期波形から分割した拍の配置位置を決定する。
図25(A)の例では、制御部14はお互いのQ波(もっとも急峻なエッジの立下り点)に若干だけずれがある位置が最も類似度が高いものとして表示を行っている。そのため短周期波形から分割した拍(実線の拍)の開始点と、長周期波形から分割した拍(点線の拍)の開始点と、にはずれがある。換言すると短周期波形から分割した拍の開始点は、長周期波形から分割した拍の開始点であるe22~e24とは別の位置となる。ユーザは、当該表示を参照することにより、2つの拍の形状のずれがどの程度なのかをより明確に把握することができる。
【0143】
なお短周期波形から分割した拍の配置位置の調整は、類似度を用いた手法に限られない。例えば制御部14は、長周期波形から分割した拍のQ波の横軸位置と、短周期波形から分割した拍のQ波の横軸位置と、が同じとなる位置に短周期波形から分割した拍を配置しても良い。当該例を
図25(B)に示す。
【0144】
制御部14は、拍の分割と長周期波形/短周期波形の検出の後に、各拍からQ波を検出する。Q波の検出は、一般的な心電図解析で用いられる手法を用いればよい。制御部14は、両拍のQ波の横軸位置が同じとなるように、短周期波形から分割した拍を配置して表示を行う。
図25(B)の例では、両波形から分割された拍のQ波のタイミングe30、e31、e32が重なるような表示となっている。これにより、短周期波形から分割した拍の開始点は、長周期波形から分割した拍の開始点であるe26~e28とは別の位置となる。
【0145】
なおQ波の位置を揃える処理はあくまでも両拍の特徴点を対応位置に配置する一例であり、例えばT波のような他の特徴点を基準として拍の配置を調整してもよい。すなわち制御部14は、長周期波形から分割した拍の特徴点と短周期波形から分割した拍の特徴点をそれぞれ検出する。そして制御部14は、両拍の特徴点同士が対応位置に配置されるように両拍を表示する。
【0146】
図24や
図25では両拍を重ねて表示する例について説明したが、両拍を縦方向に並べて表示する際にも応用可能な概念である。
【0147】
また
図24及び
図25に示す表示概念は、上述の脳組織の脈動に関する表示にも勿論応用可能である。すなわち制御部14は、
図17や
図18に示す表示の際に、長周期波形群から分割した拍と短周期波形分から分割した拍の類似度に基づいて短周期波形群から分割した拍の表示位置を調整しても良い。また制御部14は、
図17や
図18に示す表示の際に、長周期波形群から分割した拍の特徴点と短周期波形群から分割した拍の特徴点が対応位置に配置されるように、長周期波形群の拍の時間間隔内における短周期波形群から分割した拍の表示位置を調整してもよい。
【0148】
なお上記の表示例は、他のバイタルサインの表示(第1時刻の呼吸波形と第2時刻の呼吸波形の表示、第1時刻の血圧波形と第2時刻の血圧波形の表示、第1時刻の動脈血酸素飽和度波形と第2時刻の動脈血酸素飽和度波形の表示等)にも勿論応用可能である。
【0149】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0150】
例えば上述の例では、縦軸に体内位置(深度)を示し、横軸に経過時間に関する情報(時刻、測定開始からの時間、等)を示したが、縦軸に経過時間に関する情報を示して横軸に体内位置(深度)を示してもよい。
【符号の説明】
【0151】
1 生体情報処理システム
10 生体情報モニタ
11 入出力インターフェイス
12 通信部
13 操作部
14 制御部
15 スピーカ
16 表示部
17 記憶部
100 超音波トランスデューサ
110 カフ
120 心電図電極