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特開2024-56845神経芽細胞腫及びその他のがん治療のための治療ナノ粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056845
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】神経芽細胞腫及びその他のがん治療のための治療ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240416BHJP
   A61K 31/549 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240416BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240416BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240416BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61K45/00 101
A61K31/549
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/475
A61K31/706
A61K9/16
A61K47/34
A61K47/10
A61K38/17
A61K39/395 N
A61K39/395 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019330
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2018555439の分割
【原出願日】2017-01-11
(31)【優先権主張番号】62/277,243
(32)【優先日】2016-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518057435
【氏名又は名称】コーメディクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ディルッチオ,ロバート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腫瘍学的薬物に対するタウロリジンの相乗効果を利用して、より大きい効率と腫瘍学的薬物に随伴する毒性の低減を可能にする、腫瘍学的薬物とタウロリジンとを含む治療ナノ粒子を提供する。
【解決手段】治療ナノ粒子であって、少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;タウロリジンとを含み、それにより、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する、前記治療ナノ粒子とする。前記少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を含む、前記治療ナノ粒子であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療ナノ粒子であって、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;
タウロリジンと
を含み、それにより、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する、前記治療ナノ粒子。
【請求項2】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項3】
軟部組織肉腫、食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項2に記載の治療ナノ粒子。
【請求項4】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、組換えヒトTNF関連アポトーシス誘導リガンド(rhTRAIL)を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項5】
食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項4に記載の治療ナノ粒子。
【請求項6】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物がFasリガンドを含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項7】
脳腫瘍細胞を標的とするように構成されている、請求項6に記載の治療ナノ粒子。
【請求項8】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が腫瘍壊死因子(TNF)を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項9】
固形腫瘍がんを標的とするように構成されている、請求項8に記載の治療ナノ粒子。
【請求項10】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が抗新生物薬を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項11】
神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項10に記載の治療ナノ粒子。
【請求項12】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が細胞毒性薬を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項13】
細胞毒性薬が、ビンクリスチン及びドキソルビシンからなる群からの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の治療ナノ粒子。
【請求項14】
神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項12に記載の治療ナノ粒子。
【請求項15】
少なくとも一つの賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項16】
少なくとも一つの賦形剤が、タウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液を含む、請求項15に記載の治療ナノ粒子。
【請求項17】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位に局所放出するように構成されたコーティングをさらに含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
【請求項18】
がんの部位が腫瘍である、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
【請求項19】
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位に送達される前に身体に早期暴露されるのを防止するように構成されている、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
【請求項20】
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物に由来する望ましくない副作用、及びタウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの早期加水分解からなる群からの少なくとも一つを防止するように構成されている、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
【請求項21】
コーティングが、吸収性ポリマー及び吸収性脂質からなる群からの少なくとも一つを含む、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
【請求項22】
コーティングが、l-ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群からの少なくとも一つから構築されるポリマーから誘導されたコポリマー及びマルチマーの組合せから創製される、請求項21に記載の治療ナノ粒子。
【請求項23】
コーティングがグリコールをさらに含む、請求項22に記載の治療ナノ粒子。
【請求項24】
グリコールがポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項23に記載の治療ナノ粒子。
【請求項25】
グリコールが直鎖構造又は多分岐構造を含む、請求項24に記載の治療ナノ粒子。
【請求項26】
コーティングが、がんの治療のためのなくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子をがんの部位に標的化させるように構成されている、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
【請求項27】
コーティングが、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む、請求項26に記載の治療ナノ粒子。
【請求項28】
結合分子が、モノクローナル抗体のフラグメント抗原結合(Fab)フラグメントを含む、請求項27に記載の治療ナノ粒子。
【請求項29】
結合分子が神経組織を標的とするように構成されている、請求項27に記載の治療ナノ粒子。
【請求項30】
結合分子が、神経芽細胞腫のN型カルシウムチャネル、グリシン受容体チャネル及び電位依存性カリウムチャネルからなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項29に記載の治療ナノ粒子。
【請求項31】
標的神経組織が神経外胚葉性腫瘍を含む、請求項29に記載の治療ナノ粒子。
【請求項32】
結合分子が、N型カルシウムチャネルを発現している神経外胚葉性腫瘍に結合する、請求項31に記載の治療ナノ粒子。
【請求項33】
結合分子が、抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントを含む、請求項32
に記載の治療ナノ粒子。
【請求項34】
抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントが、Ca2.2、又はその結合等価物を含む、請求項33に記載の治療ナノ粒子。
【請求項35】
結合分子が、ナノ粒子の表面に包埋されているか又は共有結合されている、請求項27に記載の治療ナノ粒子。
【請求項36】
がんの治療法であって、該方法は、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;
タウロリジンと
を含む治療ナノ粒子を提供し;そして
前記治療ナノ粒子を身体に送達して、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する
ことを含む方法。
【請求項37】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
治療ナノ粒子が、軟部組織肉腫、食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、組換えヒトTNF関連アポトーシス誘導リガンド(rhTRAIL)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
治療ナノ粒子が、食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物がFasリガンドを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
治療ナノ粒子が、脳腫瘍細胞を標的とするように構成されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が腫瘍壊死因子(TNF)を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
治療ナノ粒子が、固形腫瘍がんを標的とするように構成されている、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が抗新生物薬を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
治療ナノ粒子が神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が細胞毒性薬を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
細胞毒性薬が、ビンクリスチン及びドキソルビシンからなる群からの少なくとも一つを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
治療ナノ粒子が神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
治療ナノ粒子が少なくとも一つの賦形剤をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
少なくとも一つの賦形剤が、タウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
治療ナノ粒子が、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位に局所放出するように構成されたコーティングをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項53】
がんの部位が腫瘍である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位に送達される前に身体に早期暴露されるのを防止するように構成されている、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物に由来する望ましくない副作用、及びタウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの早期加水分解からなる群からの少なくとも一つを防止するように構成されている、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
コーティングが、吸収性ポリマー及び吸収性脂質からなる群からの少なくとも一つを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
コーティングが、l-ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群からの少なくとも一つから構築されるポリマーから誘導されたコポリマー及びマルチマーの組合せから創製される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
コーティングがグリコールをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
グリコールがポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
グリコールが直鎖構造又は多分岐構造を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
コーティングが、がんの治療のための少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子をがんの部位に標的化させるように構成されている、請求項52に記載の方法。
【請求項62】
コーティングが、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
結合分子が、モノクローナル抗体のフラグメント抗原結合(Fab)フラグメントを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
結合分子が神経組織を標的とするように構成されている、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
結合分子が、神経芽細胞腫のN型カルシウムチャネル、グリシン受容体チャネル及び電
位依存性カリウムチャネルからなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
標的神経組織が神経外胚葉性腫瘍を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
結合分子が、N型カルシウムチャネルを発現している神経外胚葉性腫瘍に結合する、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
結合分子が、抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントが、Ca2.2、又はその結合等価物を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
結合分子が、ナノ粒子の表面に包埋されているか又は共有結合されている、請求項62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
係属中の先行特許出願への参照
本特許出願は、CorMedix Inc.社及びRobert DiLuccioにより2016年1月11日に出願された、係属中の先行米国仮特許出願第62/277,243号「神経芽細胞腫の治療のためのナノ粒子系(NANOPARTICLE SYSTEM FOR THE TREATMENT OF NEUROBLASTOMA)」(代理人整理番号CORMEDIX-14 PROV)に基づく利益を主張し、上記特許出願は引用によって本明細書に援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、治療組成物に関し、さらに詳しくは、神経芽細胞腫及びその他のがん治療のための治療組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
神経芽細胞腫(NB)は、小児期の最も一般的な頭蓋外固形がんであり、乳幼児期の最も一般的ながんである。発生率は、米国で年間約650例、英国で年間100例である。全神経芽細胞腫例のほぼ半数が2歳未満の子供に発生している。神経芽細胞腫は、交感神経系(SNS)のいずれかの神経堤要素(neural crest element)から生じる神経内分泌腫瘍を引き起こす。神経内分泌腫瘍は、副腎の一つに発生するのが最も高頻度であるが、頸部、胸部、腹部、又は骨盤の神経組織でも発生しうる。
【0004】
神経芽細胞腫は、未分化状態から完全に良性の細胞外観に自然退縮を示すことが知られている数少ないヒト悪性腫瘍の一つである。神経芽細胞腫は極度の異質性を示す疾患で、3つのリスクカテゴリー、すなわち、低、中、高リスクに分類(階層化)される。低リスク神経芽細胞腫疾患は、乳幼児期に最も多く、観察だけ又は手術で“良好な転帰”が一般的であるが、高リスク神経芽細胞腫疾患は、利用できる最も集中的・多モード的(multi-modal)な腫瘍学療法を用いても治療に成功することは困難である。
【0005】
鼻腔神経芽細胞腫は、嗅神経芽細胞腫としても知られるが、嗅上皮から発生すると考えられ、その分類にはまだ議論の余地がある。しかしながら、交感神経系の悪性腫瘍ではないので、鼻腔神経芽細胞腫は異なる臨床単位(clinical entity)であり、神経芽細胞腫と
混同されてはならない。
【0006】
徴候及び症状
神経芽細胞腫の初期症状は曖昧なことが多く、診断を難しくしている。倦怠感、食欲不振、発熱及び関節痛が一般的である。症状は、原発腫瘍部位及び転移があればそれに依存する。
【0007】
・腹部の場合、腫瘍は腹部腫脹及び便秘を引き起こしうる。
・胸部の腫瘍は、呼吸障害を引き起こしうる。
・脊髄を圧迫している腫瘍は、衰弱と、起立、匍匐、又は歩行不能を引き起こしうる。
【0008】
・脚部及び腰部の骨病変は、疼痛及び跛行を引き起こしうる。
・眼又は眼窩周辺の骨の腫瘍は、明白な紫斑及び腫脹を引き起こしうる。
・骨髄浸潤は、貧血による蒼白を引き起こしうる。
【0009】
神経芽細胞腫は、何らかの症状が明らかになる前に身体の他の部位に広がっていることが多く、全神経芽細胞腫例の50~60%に転移がみられる。
神経芽細胞腫が発生する最も一般的な部位(すなわち原発腫瘍部位)は副腎である。これは、限局性腫瘍の40%及び広汎性神経芽細胞腫疾患の症例の60%にみられる。神経芽細胞腫は、交感神経系の連鎖に沿って頸部から骨盤までのどこにでも発生しうる。異なる部位における頻度は、頸部(1%)、胸部(19%)、腹部(30%、非副腎)、又は骨盤(1%)などである。稀な例では、原発腫瘍が認められないこともある。
【0010】
稀ではあるが特徴的な症状としては、横断性脊髄症(腫瘍による脊髄圧迫、症例の5%)、治療抵抗性下痢(腫瘍による血管作動性腸ペプチド分泌、症例の4%)、Homer症候群(頸部腫瘍、症例の2.4%)、オプソクローヌス・ミオクローヌス(opsocinus myoclonus)症候群及び運動失調(腫瘍随伴原因疑い、症例の1.3%)、及び高血圧(
カテコールアミン分泌又は腎動脈圧迫、症例の1.3%)などが挙げられる。
【0011】
原因
神経芽細胞腫の病因はよく理解されていない。症例の大部分は散発的であり非家族性である。症例の約1~2%は家系に遺伝し、特定の遺伝子突然変異に関連している。一部の症例における家族性神経芽細胞腫は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子における稀な生殖細胞系突然変異によって引き起こされる。PHOX2A又はKIF1B遺伝子における生殖細胞系突然変異も家族性神経芽細胞腫に関与している。神経芽細胞腫は、フォン・レックリングハウゼン病とも呼ばれる神経線維腫症1型(NF1)及びベックウィズ・ヴィーデマン症候群の特徴でもある。
【0012】
腫瘍内のMYCNがん遺伝子増幅は神経芽細胞腫の一般的所見である。増幅の程度は二峰性の分布を示し、3~10倍又は100~300倍のいずれかである。この突然変異の存在は疾患の進行段階に高度に相関している(参考文献1)。
【0013】
神経芽細胞腫の腫瘍細胞内のLMO1遺伝子の重複セグメントは、攻撃的ながんの形態の発生リスクを高めることが示されている(参考文献2)。
神経芽細胞腫は、NBPF10遺伝子内のコピー数の多様性に関連している結果、1q21.1枯渇症候群又は1q21.1重複症候群をもたらす(参考文献3)。
【0014】
神経芽細胞腫のいくつかのリスク因子が提案されており、継続中の研究の主題である。神経芽細胞腫は早期発症を特徴とするため、多くの研究は受胎及び妊娠に関する親の因子に焦点を当てている。調査された因子は、職業(すなわち特定産業における化学物質への暴露)、喫煙、飲酒、妊娠中の医薬品の使用及び出生因子などであるが、結果は結論に至っていない(参考文献4)。
【0015】
他の研究では、アトピー及び乳幼児期における感染への暴露(参考文献5)、ホルモン及び排卵誘発剤の使用(参考文献6)、及び母親の染毛剤使用(参考文献7)との関連の可能性が調査されている。
【0016】
生化学
神経芽細胞腫例の約90%で、尿中又は血液中に高レベルのカテコールアミン又はそれらの代謝産物が見出されている。カテコールアミン及びそれらの代謝産物は、ドパミン、ホモバニリン酸(HVA)及び/又はバニリルマンデル酸(VMA)などである(参考文献8)。
【0017】
治療
神経芽細胞腫病変が限局性の場合、一般的に治癒可能である。しかしながら、進行疾患を有する生後18ヶ月以上の子供の長期生存は、積極的多モード的腫瘍学療法、例えば、強化化学療法、手術、放射線療法、幹細胞移植、分化薬イソトレチノイン(13-シス-
レチノイン酸とも呼ばれる)の使用、抗GD2を用いた免疫療法、抗GD2モノクローナル抗体療法を用いた免疫療法などにも関わらず、芳しくない。
【0018】
生物学的及び遺伝的特徴は同定されているので、これを古典的な臨床病期分類に加えると、治療強度の計画を立てるために患者をリスク群に振り分けることが可能となる。これらの基準は、患者の年齢、疾患拡大の程度、顕微鏡像、ならびにDNA倍数性及びN-mycがん遺伝子増幅(N-mycはマイクロRNAを調節する)を含む遺伝的特徴などで、患者を、低、中、及び高リスクの病状に分類するために使用されている。最近の生物学的研究(COG ANBL00B1)で2687人の神経芽細胞腫患者が分析され、リスク割り当ての分布(スペクトル)が決定された。すなわち、神経芽細胞腫例の37%が低リスク、18%が中リスク、及び45%が高リスクである。高リスク型と低リスク型は異なる機序によって引き起こされ、単に同じ機序の二つの異なる発現程度ではないという一定の証拠がある(参考文献9)。
【0019】
これらの異なるリスクカテゴリーに対する治療法は非常に異なる。
・低リスク疾患は、しばしば全く何の治療もせずに観察、又は手術だけで治癒できる。
・中リスク疾患は、手術及び化学療法で治療される。
【0020】
・高リスク神経芽細胞腫は、強化化学療法、手術、放射線療法、骨髄/造血幹細胞移植、13-シス-レチノイン酸(イソトレチノイン又はアキュテイン(Accutane))を用いた生物学的療法ならびに通常サイトカインGM-CSF及びIL-2サイトカインを投与する抗体療法で治療される。
【0021】
現在の治療法で、低及び中リスク神経芽細胞腫疾患の患者は優れた予後を示す。治癒率は、低リスクの場合90%超、中リスクの場合70~90%である。これに対し、過去20年間にわたり、高リスク神経芽細胞腫の治療は、わずか約30%の治癒率しかもたらしていない。抗体療法を加えることで、高リスク神経芽細胞腫疾患の生存率は著しく上昇した。2009年3月、226人の高リスク患者を用いた小児腫瘍学グループ(Children's
Oncology Group,COG)研究の早期分析で、幹細胞移植の2年後、無作為化によりc
h14.18抗体(GM-CSF及びIL-2と共に)を受けたグループでは66%が生存し、無病であったのに対し、抗体を受けなかったグループではわずか46%であったことが示された。治験に参加した全患者が抗体療法を受けられるよう無作為化は中止された(参考文献10)。
【0022】
併用される化学療法薬は神経芽細胞腫に対して有効であることが見出されている。導入及び幹細胞移植コンディショニングに一般的に使用される薬剤は、白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)、アルキル化薬(シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、トポイソメラーゼII阻害薬)及びビンカアルカロイド(ビンクリスチン)である。いくつかのより新しいレジメンには、導入にトポイソメラーゼI阻害薬(トポテカン及びイリノテカン)が含まれ、再発疾患に対して有効であることが見出されている。
【0023】
最近の焦点は、低及び中リスクの神経芽細胞腫患者に対する治療を、生存率を90%に維持しながら縮小することであった。1997年から2005年にかけてのNIH研究NCT00499616の小児腫瘍学グループ部門による臨床試験A3961に参加した467人の中リスク患者の研究で、このリスク群に対しては治療がうまく縮小できるという仮定が確認された。好ましい特徴(腫瘍悪性度及び応答)を有する者は4サイクル、好ましくない特徴を有する者は8サイクルの化学療法を受け、3年間の無イベント(無症候)生存率及び全生存率はグループ全体で90%で安定していた。将来の計画は、1p36又は11q23染色体の異常を有する患者ならびに治療に対する早期応答を欠く患者に対して治療を強化することである(参考文献11、12)。
【0024】
一方、過去20年以上の焦点は、高リスク神経芽細胞腫患者に対する治療を強化することであった。化学療法導入のバリエーション、手術の時期、幹細胞移植レジメン、様々な放射線照射スキーム、及び最小限の残存疾患を治療するためのモノクローナル抗体及びレチノイドの使用について研究は継続している。最近、高リスク疾患の生存率を改良するために無作為化第三相臨床試験が実施された。すなわち、
・1982~1985:欧州神経芽細胞腫研究グループ(European Neuroblastoma Study Group,ENSG1)は、167人の子供を登録し、メルファラン自家骨髄移植又はそれ以上の治療なしに無作為化した(どの子供にも放射線療法なし)。移植及び非移植群の患者数はそれぞれ65人であった。最近の長期追跡報告によれば、メルファラン移植群では、それ以上の治療なしに対して、1歳を超える子供のステージ4の神経芽細胞腫の著しく良好な5年間の無イベント生存率、すなわち、それぞれ33%対17%が明らかとなった(参考文献13)。
【0025】
・1990~1999:欧州研究(EU-20592又はCCLGNB-1990-11)では、1歳を超える262人の高リスクの子供を無作為化し、同じ合計用量で、迅速導入(10日間サイクル)の方が標準導入(21日間サイクル)よりも高い生存率であったことが明らかになった。10年間の無イベント生存率はそれぞれ27%及び18%であった。両群とも、穏やかな外科的手法、放射線療法なし、及びメルファランのみの自家骨髄又は幹細胞移植であった(参考文献14)。
【0026】
・1991~1996:379人の高リスク神経芽細胞腫患者に対して2回の連続無作為化を行う第三相試験が小児がんグループ(Children's Cancer Group,CCG-389
1)により実施され、4つの各試験群の50人の患者で、骨髄機能廃絶療法(全身照射)と13-シス-レチノイン酸(アキュテイン)による改良された生存率が示された(参考文献15)。
【0027】
・1996~2003:ドイツ(GPOH)試験NB97は、幹細胞移植又は地固め(consolidation)化学療法に無作為化された295人の高リスク神経芽細胞腫患者の転帰を
比較した。結果は幹細胞移植で生存率の増大が示された(参考文献16)。
【0028】
・2000~2006:最近の研究(COG-A3937)で、CEM-LI(カルボプラチン、エトポシド、メルファラン、局所照射)移植のための幹細胞浄化の必要性に疑問が投げかけられた。この研究では486人の患者が集められた。幹細胞浄化で生存率が改良されることは見出されなかった(参考文献17)。
【0029】
・2000~2012:同時研究(COG-ANBL0032)における早期検討で、インターロイキン2及びGMCSFと共に抗体ch14.18を用いると(ドイツGPOH NB90及びNB97で低用量及びサイトカインなしで後ろ向きに研究された)、生存率を改良することが決定された。患者は合計423人であった。後続の第三相試験COG-ANBL0931は、FDA認可に向けて更なる安全性及び有効性データを収集するために、105人の患者を集めて2010年1月に開始された(参考文献18)。
【0030】
・2002~2008:SIOP(International Society of Paediatric Oncology,国際小児がん学会)は、1994年に欧州SIOP神経芽細胞腫グループ(SIOPEN)を結成し、2002年の第三相高リスク神経芽細胞腫プロトコル(SIOP-EUROPE-HR-NBL-1)を、“迅速”COJEC(10日間の間隔で投与される8サイクルの化学療法)とその後のCEM(カルボプラチン、エトポシド、メルファラン)又はBuMel(ブスルファン、メルファラン)への移植無作為化を用いて活性化した。そして、皮下IL2を投与する又は投与しないch14.18抗体治療(COGでのようなG
M-CSF投与なし)に子供を無作為に割り付けるために研究を補正した。この研究で成長因子(GCSF)の利益が報告され、全患者にレチノイン酸が投与された。この試験には1000人の患者が参加した(年175人)(参考文献18)。
【0031】
・2005~2010:ドイツのNB2004の無作為化は、MIBG療法と最前線療法(up-front therapy)におけるトポテカンの使用を含み、全リスク群の合計642人の患者が参加した(ほぼ半数は高リスク)。移植後、高リスクプロトコルは、6ヶ月のシス-レチノイン酸、3ヶ月の休止、そしてさらに3ヶ月のレチノイン酸を含むものであった(参考文献19)。
【0032】
・2007:COG第三相ANBL0532試験が495人の患者を対象に2007年12月に開始され、単回対複数回(タンデム)移植の比較がなされた。導入は2サイクルのトポテカンで開始された(参考文献20)。
【0033】
これらの第三相試験に加え、いくつかの研究機関がパイロット的な治療プロトコルを提供している。例えば、セントジュード(小児研究病院)は、23人の子供に対して新たな最前線化学療法レジメンの試験を終えた(2007)。これは、イリノテカン及びゲフィチニブと、幹細胞移植後、13-シス-レチノイン酸とトポテカンを交互に経口投与する16ヶ月の維持化学療法を含むものであった。ニューヨークのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターは、1980年代半ばからプロトコルに使用されているマウス由来モノクローナル抗体3F8を含む治療を提供している。この抗体は、最小限の残存疾患の治療又は幹細胞移植の代わりの地固めに使用されている。いくつかの小児腫瘍学グループ(COG)センターで新たに診断された(高リスクの)子供が利用できる新規パイロットプロトコルCOG-ANBL09P1は、移植レジメンとしてMIBG放射線療法及び化学療法を提供している(参考文献21)。
【0034】
一部の子供(特に高リスク症例の)は、最前線の治療(完全応答又は非常に良好な部分応答を有する)に完全には応答せず、難治性と見なされる。これら“難治性”の子供は、最前線療法(臨床試験)から除外されるので、新規療法を用いた臨床試験に適格である。多くの高リスク小児は最前線療法に良好な応答を有し、寛解を達成するが、後に疾患は繰り返す(再発する)。これらの子供も臨床試験で試験されている新規療法に適格である。
【0035】
トポテカンとシクロホスファミドを用いた化学療法は、難治性の状況及び再発後にしばしば使用される。119人の患者を用いた無作為化試験(トポテカン単独と、トポテカンとシクロホスファミドを比較する)(2004)により、トポテカンとシクロホスファミド群で、31%の完全又は部分応答率と2年間の無進行生存率36%が明らかになった。イリノテカン(静脈内又は経口)と経口テモゾロミドも、難治性及び再発神経芽細胞腫に使用されている(参考文献22)。
【0036】
多くの第一相及び第二相試験で現在、再発又は初期療法に抵抗性の子供の神経芽細胞腫に対する新薬が試験されている。研究者は、現在、新薬を、単独で又は新たな組合せで、小分子標的療法、131-I MIBG放射線療法、血管新生薬、新規モノクローナル抗体、ワクチン、腫瘍溶解性ウィルス、ならびに新しい骨髄機能廃絶レジメンを用いて研究中である。
【0037】
New Advances in Neuroblastoma Therapy(NANT)コンソーシアムとして知られる米国の16の小児病院のグループは、I-131
MIBG放射線療法試験を調整(coordinate)している。NANTコンソーシアムは、フェンレチニドの経口粉末製剤、静脈内フェンレチニド、ビスホスホネート(ゾメタ)と他の薬剤を用いる試験、及びI-131 MIBGと阻害薬ボリノスタットとを組み合わせ
る試験も提供している(参考文献23)。
【0038】
Neuroblastoma and Medulloblastoma Translational Research Consortium(NMTRC)などのその他の研究調査グループも、再発神経芽細胞腫を治療するための臨床試験を実施している。欧州の機関は、再発を治療するための、ハプロタイプ一致(haploidentical)幹細胞移植を含む新規療法を研究中である。多くの病院は独自の機関研究も実施している。
【0039】
タンパク質p53は、化学療法に対する耐性発現に役割を果たしていると考えられている。2009年11月のマウスを用いた研究で、腫瘍抑制因子p53を新薬nutlin-3で活性化すると腫瘍増殖を緩徐化できることが示されている。この研究で、ベルギーのGhent大学病院のTom Van Maerken医師と彼の同僚は、nutlin-3を使用して、p53に結合してp53のプログラム細胞死誘発能力を妨害するタンパク質であるMDM2を中和した。以前の研究で、nutlin-3は、MDM2がp53を無能化するのを特異的に防止できることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
発明の目的
薬物のタウロリジンは、いくつかの腫瘍学的薬物の活性を増強する能力を有することが観察されている。
【0041】
その結果、本発明の一つの目的は、これらの腫瘍学的薬物に対するタウロリジンの相乗効果を利用して、より大きい効率と腫瘍学的薬物に随伴する毒性の低減を可能にすることである。
【0042】
本発明の別の目的は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含むナノ粒子を創製することにより、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンのこれらの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用することである。
【0043】
本発明のさらに別の目的は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含み、そしてさらに一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位、例えば腫瘍に局所放出するように構成されたコーティングも含むナノ粒子を創製することである。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位、例えば腫瘍に送達される前に身体に早期暴露(premature exposure)されるのを防止するように構成される。これは、一つ又は複数の腫瘍学的薬物に由来する望まざる副作用、タウロリジンの早期加水分解などを防止するために重要でありうる。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは吸収性のポリマー又は脂質を含む。
【0044】
本発明のさらに別の目的は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含み、そしてさらにコーティングも含むナノ粒子を提供することであり、前記コーティングは、がんの治療のための腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子ががん(例えば腫瘍)の部位を標的とするように構成されている。本発明の一つの好適な形態に
おいて、コーティングは、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む。
【0045】
本発明の別の目的は、神経芽細胞腫及び/又はその他の特定がんの治療のために特別に構成されたナノ粒子を提供することである。
【0046】
タウロリジン総論
タウロリジン(ビス(1,1-ジオキソペルヒドロ-1,2,4-チアジアジニル-4)-メタン)は、抗菌性及び抗リポ多糖性を有している。タウロリジンはアミノ酸のタウリンから誘導される。その免疫調節作用は、マクロファージ及び多形核白血球のプライミング及び活性化によって媒介されると報告されている。
【0047】
タウロリジンは、腹膜炎患者の治療及び全身性炎症反応症候群患者への抗内毒素剤(antiendoxic agent)として使用されている。タウロリジンは、重症の腹部敗血症及び腹膜炎
のための救命抗菌剤である。タウロリジンは、グラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、マイコバクテリウムのほか、様々な抗生物質に対して耐性を有するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン中間耐性黄色ブドウ球菌(VISA)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、オキサシリン耐性黄色ブドウ球菌(ORSA)及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの細菌も含む広範囲の微生物に対して活性である。さらに、タウロリジンは、多少の抗腫瘍性も示し、胃腸悪性腫瘍及び中枢神経系の腫瘍を治療するための薬物を用いた初期臨床試験で肯定的な結果が得られている。
【0048】
タウロリジンは、カテーテル関連血流感染(CRBSIs)の予防及び治療のための抗菌性カテーテルロック溶液の活性成分であり、あらゆるカテーテルベースの血管アクセス器具への使用に適している。タウロリジンに対する細菌耐性は各種試験で観察されたことがない。
【0049】
タウロリジンは、非選択的化学的反応によって作用する。水溶液中では、親分子のタウロリジンは、タウルルタム及びN-ヒドロキシメチルタウルルタムと平衡を形成し、タウリンアミドは下流誘導体である。タウロリジンの活性基はタウルルタム及びタウリンアミドのN-メチロール誘導体で、これが細菌の細胞壁、細胞膜、及びタンパク質と反応するほか、内毒素及び外毒素の第一アミノ基とも反応する。微生物は殺滅され、結果として生ずる毒素は不活化される。インビトロにおける破壊時間は30分である。炎症性サイトカイン及び増強された腫瘍壊死因子(TNF)レベルは、タウロリジンがカテーテルロック溶液として使用されると低減する。タウロリジンは、線毛及び鞭毛を破壊することによって細菌及び真菌が宿主細胞に接着するのを低減するので、バイオフィルムの形成が防止される。
【0050】
2時間かけ、4時間毎、少なくとも48時間にわたる5g用量のタウロリジンが様々な敗血症状態の治療のために静脈内投与されている。
【0051】
腫瘍学的薬物の使用を伴う下記用途においてタウロリジンの相乗活性が観察されている
Karlischら(参考文献24)は、ヒトの横紋筋肉腫、平滑筋肉腫及び類上皮細胞肉腫で、アポトーシス及び増殖に対するTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)及びタウロリジンの効果を観察した。軟部組織肉腫(STS)は、悪性腫瘍の異質のグループで、成人の全悪性腫瘍の1%を占める。STSの治療は個別的かつ多モード的であるべきであるが、断端にがん細胞がない(clear margin)完全外科的切除が相変わらず治療の中心である。播種性の軟部組織肉腫は依然として治療上のジレンマである。ドキソルビシン及びイホスファミドなどの一般的に使用される化学療法薬は、これらの症例では30%未満しか有効でないことが分かっている。そこで、Karlischらは、TNF
関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)及びタウロリジンの、横紋筋肉腫(A-204)、平滑筋肉腫(SK-LMS-1)及び類上皮細胞肉腫(VA-ES-BJ)細胞株に対するインビトロのアポトーシス効果及び抗増殖効果を試験した。生存性、アポトーシス及び壊死は、FACS分析で定量化した(ヨウ化プロピジウム/アネキシンV染色)。遺伝子発現はDNAマイクロアレイで分析し、結果は、選択遺伝子についてrtPCRにより検証した。タンパク質レベルの変化はウェスタンブロット分析により記録した。細胞増殖はブロモデオキシウリジン(BrdU)ELISAアッセイにより分析した。単一物質のTRAIL及びタウロリジンは、横紋筋肉腫及び類上皮細胞肉腫の細胞でアポトーシス細胞死及び増殖低下を有意に誘導した。TRAILとタウロリジンの併用は、全3つの細胞株で相乗的なアポトーシス効果をもたらした。特に横紋筋肉腫細胞では48時間のインキュベーション後、18%の生存細胞を残すのみであった(p<0.05)。差別的に調節された(differentially regulated)遺伝子の分析から、タウロリジンとTRAILは、TNF受容体関連ミトコンドリア経路を含むアポトーシス経路に影響を及ぼしていることが明らかになった。マイクロアレイ分析からは、異なるアポトーシス経路及び他の経路との複数レベルでのクロストークに関与している様々な遺伝子の顕著な発現変化が明らかになった。このインビトロ研究は、TRAILとタウロリジンが、異なるヒトSTS細胞株でアポトーシスの誘導と増殖の阻害に相乗作用していることを示している。遺伝子発現に対する効果は、肉腫の型(sarcoma entities)で関連的に異なる。これらの結果は、TRAIL及びタウロリジンのSTSにおける効果を評価するインビボ試験の実験的支持を提供するものであり、個別療法の手法を支持するものである。
【0052】
Haratiら(参考文献25)は、TRAILとタウロリジンが、HT1080ヒト線維肉腫細胞で、ドキソルビシン、トラベクテジン及びマホスファミドの抗がん活性を増強することを観察した。播種性の線維肉腫は、有効な細胞増殖抑制剤がないために依然として治療上のジレンマである。そこで、ヒト線維肉腫(HT1080)に対して、確立された及び新規の化学療法薬に、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)及びタウロリジンを組み合わせると、アポトーシスを改良することが観察された。
材料及び方法:ヒト線維肉腫細胞(HT1080)を、ドキソルビシン、マホスファミド及びトラベクテジンと、単独で及びタウロリジンとTRAILと組み合わせて、インキュベートした。生存細胞、アポトーシス細胞及び壊死細胞はフローサイトメトリー分析を用いて定量化した。細胞増殖はブロモデオキシウリジン(BrdU)ELISAアッセイを用いて分析した。
結果:ドキソルビシン及びトラベクテジンの単独適用は、HT1080細胞のアポトーシス細胞死を誘導し、増殖を著しく減少させた。併用療法では、タウロリジンとTRAILの添加が、単独療法と比べて細胞生存性の程度により強い低下をもたらした。トラベクテジンとタウロリジンは、ドキソルビシン単独の場合より増殖の阻害により大きい可能性を示した。
結論:TRAIL及びタウロリジンと組み合わせた場合、ドキソルビシン及びトラベクテジンによる治療は、より強いアポトーシス誘導効果及び抗増殖効果を示した。
【0053】
Martinottiら(参考文献26)は、悪性中皮腫の治療のためのアスコルビン酸-薬物の相乗的組合せのインビトロスクリーニングを研究した。悪性中皮腫(MMe)は、アスベストへの暴露の結果、漿膜腔の中皮から生じる致死性腫瘍である。現在の臨床研究は併用療法からなるが、有効な療法はまだ確立されておらず、新たな根治療法に対する差し迫ったニーズがある。アスコルビン酸は、がん治療の治療薬としても知られる栄養素である。この研究で、Martinottiらは、MMe療法で使用される薬物、例えばシスプラチン、エトポシド、ゲムシタビン、イマチニブ、パクリタキセル、及びラルチトレキセド、ならびに有望な抗腫瘍化合物、例えばタウロリジン、a-トコフェロールスクシネート、及びエピガロカテキン-3-ガラート(EGCG)と組み合わせたアスコル
ビン酸のMMe細胞に対する細胞毒性を試験した。インビトロで増殖しているMMe細胞にニュートラルレッド取込み(NRU)アッセイを適用することによって各化合物について得られた用量反応曲線から、単独で使用された各化合物についてIC50値を測定することができた。その後、各アスコルビン酸/薬物の組合せから得られたNRUデータをIC50濃度でTallaridaのアイソボログラム(isobologram)を通じて分析したと
ころ(Tallarida、2000)、アスコルビン酸/ゲムシタビン及びアスコルビン酸/EGCGの相乗的相互作用が明らかになった。これらの結果は、理論的相加IC50と固定比用量反応曲線から観察されたIC50との間の比較を、広範囲のICレベルにわたり、Chou及びTalalayの併用係数(Chou及びTalalay、1984)を使用して行うことにより、さらに確認された。相乗的相互作用は、アポトーシス及び壊死の割合をカスパーゼ3及び乳酸デヒドロゲナーゼアッセイをそれぞれ用いて調べることによっても示された。従って、データから、アスコルビン酸/ゲムシタビン及びアスコルビン酸/EGCGはMMe細胞の生存性に相乗効果を示し、この問題の多いがんの臨床治療におけるそれらの使用の可能性を示唆していることが示された。
【0054】
Daigelerら(参考文献27)は、食道の扁平上皮がん細胞に対するタウロリジンとTRAILの相乗的アポトーシス効果を観察した。食道がんの治療選択肢は外科的切除と考えられているが、治療後20ヶ月時点のメジアン生存率は残念なものである。アジュバント又はネオアジュバントの放射線療法又は化学療法の利益は限定的で、現在のところ、利益は一定の腫瘍病期でしか確認されていない。従って、新しい治療選択肢が求められている。代替化学療法として、Daigelerらは、抗生物質タウロリジンを、KYSE270ヒト食道がん細胞に対して、単独で及びrhTRAIL(組換えヒトTNF関連アポトーシス誘導リガンド)と組み合わせて試験した。生存性、アポトーシス及び壊死は,TUNELアッセイによって視覚化され、FACS分析によって定量化された。遺伝子発現はRNAマイクロアレイによって分析された。単一物質としてのタウロリジンの最有効濃度(250mmol/l)は、投与12時間後に最大40%のアポトーシスを誘導し、48時間後に4%の生存細胞を残すのみであった。これと比較して、rhTRAILは有意な効果を示さなかった。両物質の組合せはタウロリジン単独の効果を倍増した。遺伝子発現プロファイリングから、タウロリジンは、内因性のTRAIL、TNFRSF1A、TRADD、TNFRSF1B、TNFRSF21及びFADD、ならびにMAP2K4、JAK2及びBcl2、Bcl211、APAFl及びカスパーゼ-3をダウンレギュレートすることが明らかとなった。TNFRSF25、シトクロム-c、カスパーゼ-1、-8、-9、JUN、GADD45A及びNFKBIAはアップレギュレートされていた。TRAILは、内因性のTRAIL、Bcl211及びカスパーゼ-1の発現を減少させた。BIRC2、BIRC3、TNFAIP3、及びNFKBIAはアップレギュレートされていた。組合せ物質は、内因性のTRAIL、NFKBIA及びJUNをアップレギュレートしたが、DFFA及びTRAF3は、単独物質としてのタウロリジンと比較した場合、ダウンレギュレートされていた。Daigelerらは、タウロリジンは、KYSE270細胞におけるTRAIL耐性を克服すると結論付けた。相乗効果は、同じ及び別個のアポトーシス経路に依存し、共同して誘発されると増幅された応答をもたらす。TNF受容体関連及びミトコンドリア経路を含むいくつかのアポトーシス経路は、遺伝子発現レベルで物質により差別的に調節されていた。さらに転写因子、特にNFKBも影響を受けるようである。内因性TRAILの発現は物質の組合せによって増大するが、各物質単独では減少する。非毒性のタウロリジンがrhTRAILの毒性及び用量を低減できたことを考えると、タウロリジンとrhTRAILの併用療法は食道がん治療の新しい選択肢を提供しうる。
【0055】
Chromikら(参考文献28)は、HCT15結腸がん細胞におけるアポトーシス誘導に対するタウロリジンとrhTRAILの相乗効果を観察した。TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)による腫瘍細胞のアポトーシス誘導は腫瘍学における有
望な治療選択肢であるが、毒性とTRAILに対する耐性が制限因子である。タウロリジンは低毒性の抗新生物薬なので、TRAILとの併用療法の潜在的候補である。Chromikらの研究目的は、HCT15ヒト結腸がん細胞株におけるTRAILとタウロリジンの併用療法を評価することであった。HCT15細胞を培養し、組換えヒトTRAIL(50~500ng/mL)又はタウロリジン(50~1000mmol/l)の濃度を増加させながらインキュベートして、アポトーシス及び壊死に関する両物質の用量依存効果を評価した。その後、第二の実験で細胞を単独のTRAIL(50及び250ng/mL)又はタウロリジン(100及び1000mmol/l)とインキュベートするとともに、異なる濃度の両薬剤の組合せともインキュベートした。様々な時点(3~36時間)で、細胞生存性、アポトーシス、及び壊死を、ヨウ化プロピジウム及びアネキシンV染色を用いてFACS分析により定量化した。結果は、平均として表され、統計分析は、ANOVA、チューキー検定による一対比較によって実施された。P値の<0.05は統計的に有意と見なされた。タウロリジンとのインキュベーションにより、24時間及び36時間後に100mmol/l及び1000mmol/lの最大効果を有する用量依存性の細胞死が誘導された結果、生存細胞が60%から17~33%へと減少した。250ng/mL及び500ng/mLのTRAILは、早くも6時間で生存細胞を70%から6~7%へと減少させたが、生存細胞は36時間後に13%に部分的に回復した。タウロリジン(100mmol/l)とTRAIL(50ng/mL)の併用療法は24時間及び36時間後にアポトーシスの持続誘導をもたらし、両物質の、単なる相加効果を明らかに超える有意の相乗効果を示した。タウロリジン(100mmol/l)及びTRAIL(50ng/mL)との24時間のインキュベーション後、細胞は、単独のタウロリジン100mmol/lの43.9%及びTRAIL50ng/mLの17.7%と比べて、わずか2.1%しか生存していなかった。同様の結果は36時間後にも観察された。Chromikらは、インビトロにおけるヒト結腸がん細胞のアポトーシス誘導に対する組換えヒトTRAILとタウロリジンの相乗効果を初めて示した。TRAILとタウロリジンの併用療法は、単一薬剤適用より優れた持続細胞死をもたらした。TRAILと非毒性のタウロリジンとの組合せは、腫瘍学療法に新しい治療的根拠を提供する。
【0056】
Braumannら(参考文献29)は、開腹術を受けている結腸がんラットでタウロリジン及びタウロリジン/ヘパリンによる局所及び全身化学療法を観察した。腹部悪性腫瘍の療法の実験的研究により、様々な細胞毒性薬が腹腔内(i.p.)の腫瘍増殖を抑制することが示されている。それでも、腫瘍再発を防止するための一般に認められた方法は存在しない。104の結腸腺がん細胞(DHD/K12/TRb)の皮下(s.c.)及びi.p.注射後、タウロリジン又はタウロリジン/ヘパリンの両方がi.p.及びs.c.腫瘍増殖に及ぼす影響を、正中開腹術を受けている105匹のラットで調べた。動物を7群に無作為に割り付け、30分間の間に手術した。タウロリジン又はヘパリンのいずれかが腫瘍増殖に及ぼすi.p.(局所)影響を調べるために、物質を適用した。i.p.全身及びi.p.効果を、物質のi.v.注射後に評価した。両方の適用形態も組み合わせて相乗効果を分析した。腫瘍重量のほか腹部創傷転移発生率を介入の4週間後に調べた。薬剤の効果を評価するために、血液を採取して末梢白血球数を測定した。タウロリジン(メジアン7.0mg、P=0.05)及びタウロリジン/ヘパリン(メジアン0mg、P=0.02)のi.p.適用を受けたラットのi.p.腫瘍増殖は、対照群(メジアン185mg)と比べて有意に低下した。両薬剤の同時点滴もi.p.腫瘍増殖を低減したが(メジアン4mg、P=0.04)、物質のi.v.注射は局所効果をもたらさなかった。これに対し、s.c.腫瘍増殖は全群で違いはなかった。全群で、腹部創傷再発は稀で、違いはなかった。薬剤及び適用形態とは無関係に、手術そのものが手術直後にわずかな白血球減少とその後の経過における白血球増加を引き起こしていた。タウロリジン又はヘパリンとの併用のいずれかのi.p.療法は、正中開腹術を受けているラットの局所腫瘍増殖及び腹部創傷再発を阻害する。i.p.もi.v.適用も、又は二つの薬剤の組合せも、s.c.腫瘍増殖に影響を及ぼさなかった。物質は末梢白血球の変化を変更しなかった。
【0057】
Stendelら(参考文献30)は、タウロリジンによるFasリガンド媒介プログラム細胞死の増強を観察した。タウロリジンは、脳腫瘍細胞に対して直接的及び選択的な抗新生物効果を有することが見出された。様々な悪性神経膠腫細胞株においてFas媒介アポトーシスの増強により抗新生物作用を発揮するタウロリジンの能力を調べた。
材料及び方法:ヒト由来U373細胞を培養し、タウロリジンとインキュベートして、メジアン阻害濃度(IC50)を計算した。フローサイトメトリー分析を実施してDNA含量の変化を評価した。細胞を光学顕微鏡検査及び電子顕微鏡検査を用いて定性的及び定量的に調べた。LN-18及びLN-229細胞を、Fasリガンド、タウロリジン又はそのそれぞれの組合せのいずれかの不在下又は存在下でインキュベートした。細胞生存性は、2倍濃縮WST-1試薬の添加によって決定した。ミトコンドリアのコハク酸レダクターゼの能力をELISAリーダーで測定した。
結果:0373細胞のタウロリジンへの暴露は、濃度依存性の(IC50 35.8±2.2mg/mL)の細胞生存性喪失をもたらした。フローサイトメトリー分析により、sub-G0/G1領域にDNAデブリの濃度依存性出現が示された。6.25vol.%のFasリガンドの存在下で、LN-18細胞は90%を超える細胞生存性の喪失を示したが、LN-299細胞は、より高濃度のFasリガンドで減少しただけであった。タウロリジン単独では試験濃度範囲でLN-18細胞の生存性に認められるほどの影響を及ぼさなかったが、LN-18細胞に対するFasリガンドの効果を増強できた。LN-229細胞のタウロリジン単独への暴露は、試験された最高濃度で約70%という相当な細胞生存性の喪失を引き起こした。Fasリガンド(10vol.%)による細胞破壊はタウロリジンの存在下で増強された。
結論:タウロリジンの抗新生物活性は、一部はFasリガンド誘導アポトーシスの増強に基づいているようである。さらに、タウロリジンは、Fasリガンドとは無関係に抗新生物効果を持つことも示された。おそらく、タウロリジンは様々な機序に基づいて抗新生物活性を発揮するのであろう。
【0058】
別の研究で、Braumannら(参考文献31)は、ラットの腹腔内(i.p.)及び皮下(s.c.)腫瘍増殖に対する腹腔鏡検査中のタウロリジン及びタウロリジン/ヘパリンの腹腔内及び全身適用の影響を評価した。研究者らは、悪性腫瘍の腹腔鏡下切除後のポート部位転移の問題及び可能性ある病理的機序について調べた。これらの腫瘍の生着を防止するための一般に認められた方法はこれまでのところ存在しない。104個の結腸腺がん細胞(DHD/K12/TRb)のs.c.及びi.p.注射後、タウロリジン又はタウロリジン/ヘパリンのいずれかがi.p.及びs.c.腫瘍増殖に及ぼす影響を、二酸化炭素を用いて腹腔鏡検査を受けている105匹のラットで調べた。次に、動物を無作為に7つの群に割り付けた。二酸化炭素を用いて気腹を30分間確立した(8mmHg)。3つの切開が使用された。すなわち、中央に気腹針用、左右の下腹部にトロカール用。腫瘍増殖に対するタウロリジン及びヘパリンのi.p.(局所)影響を調べるために、物質をi.p.点滴した。全身効果は、物質をi.v.適用した場合に期待された。両適用形態を組み合わせた場合の相乗的影響を分析した。腫瘍の数及び重量、ならびに腹壁及びポート部位転移の発生率を介入の4週間後に調べた。血液を採取し、全身免疫反応に対するタウロリジン及びヘパリンの影響を、腹腔鏡検査の7日前、術後2時間、2日、7日、及び4週間に評価し、末梢リンパ球を測定した。タウロリジン(メジアン7mg)及びタウロリジン/ヘパリン(0mg)をi.p.投与されたラットのi.p.腫瘍重量は、対照群(52mg)と比べて有意に減少していた(P=0.001)。群間でs.c.腫瘍増殖には違いはなかった(P=0.4)。トロカール再発は、タウロリジンをi.p.(3/15)、i.p.i.v.(4/15)、及びヘパリンと組み合わせてi.p.(4/15)適用した場合、対照群(10/15)と比較して減少した。介入直後、処置及び非処置群とも末梢リンパ球減少を示した。タウロリジン及びヘパリンとの併用によるi.p.療法は、i.p.腫瘍増殖及びトロカール再発を阻害する。i.p.も全身適用も、又はタウロリジンとヘパリンの併用も、s.c.腫瘍増殖を低減しなかった。介入はリ
ンパ球減少を引き起こしたが、2日目に埋め合わされた。
【0059】
Monsonら(参考文献32)は、タウロリジンが腫瘍壊死因子(TNF)の毒性を阻害することを、TNFと内毒素の相乗作用の証拠とともに観察した。固形腫瘍の治療における組換え腫瘍壊死因子(TNF)の使用は、生命を脅かす毒性のために制限されてきた。さらに、TNFは、内毒素の作用の主たるメディエーターでありうる。最近の証拠によれば、内毒素(ピコグラムレベル)とTNF間の相乗作用がこの毒性に寄与している可能性が示唆されている。抗内毒素タウロリジンの使用は、この相乗作用を妨害することによりTNF毒性を低減できる。C57/BL6マウス(n=140)に有毒用量(12マイクログラム/マウス IV)のTNFを投与した。4群について研究した。A群はタウロリジン(200mg/kg IV)をTNFの30分前に投与し、B群はTNFの30分後にタウロリジン(200mg/kg IV)を投与し、C群は同一量(0.5ml)の生理食塩水をTNFの30分前に投与し、D群はタウロリジン(200mg/kg IP)をTNFの45分前に投与した。TNFの30分前に静脈内タウロリジンを投与されたマウスの死亡率は8.8%であった。これは、B、C及びD群で達成された死亡率(33%対39.4%対50%)より有意に低かった(P<0.005)。MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド, 3-(4,5-dimethylthinzol-2-microliters)-2,5-diphenyl tetrazolinm bromide))アッセ
イを用いた更なる実験で、これはタウロリジンとTNFの直接相互作用によるものではなく、おそらくは内毒素とTNFの相乗作用を妨害することによるものであることが示された。マウスモデルにおける併用療法の研究で、タウロリジンはTNF感受性マウス線維肉腫細胞株Meth-A肉腫に対するTNFの抗腫瘍効果を低減しないことも示された。
【0060】
神経芽細胞腫の治療のためのタウロリジンと薬物との相乗活性
Eschenburgら(参考文献33)は、タウロリジンが神経芽細胞腫細胞で抗新生物薬と協力することを観察した。神経芽細胞腫では、ステージ4の疾患の転帰は不良に留まっているので、新たな治療アプローチの開発が急務である。カテーテル感染を阻害することが知られているタウロリジンは、様々ながんで抗新生物活性を示している。神経芽細胞腫の細胞株の増殖はタウロリジンによって阻害されることが最近示された。更なる分析で、4種類の神経芽細胞腫細胞株、SH-EP TET21N、SK-N-AS、SK-N-BE(2)-M17及びSK-N-SHに対するタウロリジンの有意な負の増殖効果が開示された。検出されたIC50(51~274mM;48時間)は有望で、臨床的に達成可能な血漿濃度に相当する。アポトーシスは、内因性及び外因性経路の同時活性化によって媒介される時間依存性の様式で誘導された(76~86%;48時間)。これは、カスパーゼ-3、-8及び-9の切断ならびに汎カスパーゼ阻害によるアポトーシスの阻止によって確認された。タウロリジンの適用は、細胞毒性薬ビンクリスチン/ドキソルビシンの顕著な増強をもたらし(4細胞株の2/3)、タウロリジンを将来の神経芽細胞腫治療レジメンに含めるべき有望な候補にしている。
【0061】
Eschenburgら(参考文献33)はまた、タウロリジンがインビトロで神経芽細胞腫細胞株の増殖を特異的に阻害することも観察した。タウロリジンの抗新生物特性は様々なヒトがん細胞で示されている。しかしながら、神経芽細胞腫に関するデータは不足している。そこで、Eschenburgらは、神経芽細胞腫細胞株の増殖に対するタウロリジンの効果を評価しようとした。
材料及び方法:神経芽細胞腫SK-N-BE(2)-M17及びSK-NSH細胞と悪性でないヒト臍帯静脈内皮細胞(対照として)を、タウロリジンの濃度を増加させながら(100、250、500mM)インキュベートした。細胞増殖を暴露の12、24、及び48時間後に調べた。
結果:タウロリジンによる細胞増殖の阻害は両方の悪性細胞株で見られた。ヒト臍帯静脈内皮細胞と比較した場合、神経芽細胞腫の細胞株はタウロリジンに対して有意に良く応答
した。
結論:SK-N-BE(2)-M17及びSK-N-SHで非常に際立った細胞増殖に対する観察された負の影響は、タウロリジン特異的作用様式を暗示しているが、それは細胞レベル及び分子レベルでの差異に依存するようである。その機序と臨床使用の可能性を評価するためには更なる研究が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0062】
本発明は、タウロリジンと様々な腫瘍学的薬物との相乗特性を利用する。さらに詳しくは、本発明は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含むナノ粒子を提供及び使用することにより、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンのこれらの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用することを含む。
【0063】
本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含み、そしてさらに一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位、例えば腫瘍に局所放出するように構成されたコーティングも含む。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位、例えば腫瘍に送達される前に身体に早期暴露されるのを防止するように構成される。これは、一つ又は複数の腫瘍学的薬物に由来する望まざる副作用、タウロリジンの早期加水分解などを防止するために重要でありうる。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは吸収性のポリマー又は脂質を含む。
【0064】
また、本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含み、そしてさらにコーティングも含み、前記コーティングは、がんの治療のための一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子ががん(例えば腫瘍)の部位を標的とするように構成されている。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む。
【0065】
また、本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子は、神経芽細胞腫及び/又はその他の特定がんの治療のために特別に構成されている。
本発明の一つの好適な形態において、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;そして
タウロリジンと
を含む治療ナノ粒子を提供することにより、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する。
【0066】
本発明の別の好適な形態において、がんの治療法を提供し、該方法は、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;そして
タウロリジンと
を含む治療ナノ粒子を提供し;そして
前記治療ナノ粒子を身体に送達して、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供することによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する
相乗効果を利用する
ことを含む。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明は、タウロリジンと様々な腫瘍学的薬物との相乗特性を利用する。さらに詳しくは、本発明は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含むナノ粒子を提供及び使用することにより、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンのこれらの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用することを含む。
【0068】
本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含み、そしてさらに一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位、例えば腫瘍に局所放出するように構成されたコーティングも含む。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位、例えば腫瘍に送達される前に身体に早期暴露されるのを防止するように構成される。これは、一つ又は複数の腫瘍学的薬物に由来する望まざる副作用、タウロリジンの早期加水分解などを防止するために重要でありうる。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは吸収性のポリマー又は脂質を含む。
【0069】
また、本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子は、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンとを、追加の賦形剤(例えば、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液)と共に又は追加の賦形剤なしに含み、そしてさらにコーティングも含み、前記コーティングは、がんの治療のための一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子ががん(例えば腫瘍)の部位を標的とするように構成されている。本発明の一つの好適な形態において、コーティングは、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む。
【0070】
また、本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子は、神経芽細胞腫及び/又はその他の特定がんの治療のために特別に構成されている。
さらに詳しくは、本発明は、タウロリジンと様々な腫瘍学的薬物を、その腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位、例えば腫瘍に局所放出するように設計された特定のナノ粒子系に被包することにより、タウロリジンと様々な腫瘍学的薬物との相乗特性を利用する。
【0071】
腫瘍学的薬物(一つ又は複数)とタウロリジンの放出特性を最適化するために、いくつかの吸収性ポリマー系が使用できる。特に、l-ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートから構築されるポリマーから誘導されたコポリマー及びマルチマーの組合せから創製されるものである。これらは、直鎖構造又は多分岐(multi-arm)構造のいずれかでありうるポリエチレングリコール(PEG
)などのグリコールと結合していてもよい。
【0072】
ナノ粒子中にタウロリジン、腫瘍学的薬物(一つ又は複数)及びポリマーを含有する系の最適化により、一般にがん、特に神経芽細胞腫の改良された治療がもたらされる。
さらに、研究により、神経芽細胞腫のN型カルシウムチャネル、グリシン受容体チャネル及び電位依存性カリウムチャネルに対するカンナビノイド活性が示されている。これら
のそれぞれは、神経組織に特異的であると考えられ、細網内皮系(RES)細胞には存在しないと考えられている。従って、ナノ粒子に、神経組織(例えば、神経芽細胞腫のN型カルシウムチャネル、グリシン受容体チャネル及び電位依存性カリウムチャネル)を標的とする結合分子を提供すると、神経組織へのナノ粒子の標的送達が増強されるので、腫瘍学的薬物(一つ又は複数)の有効性も増強される(これは相乗的タウロリジンの存在によってさらに増強される)。
【0073】
ナノ粒子の結合分子は他の重要な生物活性を持たないことが一般に重要である。他の重要な生物活性を持たない特異的結合を達成するために、モノクローナル抗体のフラグメント抗原結合(Fab)フラグメント(抗原に結合する抗体上の領域)が利用される。しかしながら、抗電位依存性カリウムチャネル抗体に由来する重症の自己免疫性脳炎症候群が最近報告されているので、抗電位依存性カリウムチャネル抗体(例えばKvR)は標的として使用しないのが好ましい。その他の標的も、腫瘍随伴症候群の病因として自己免疫性脳炎の症例を報告している。これまでのところ、これらの標的のいずれもKvR病ほど重篤ではないが、これは偶然によるものかもしれない。従って、神経組織を標的にするために使用される結合分子の選択には留意せねばならない。
【0074】
本発明の一つの好適な形態において、ナノ粒子のコーティングは、神経組織(例えば神経芽細胞腫の腫瘍)にナノ粒子を結合させるために、N型カルシウムチャネルに対するモノクローナル抗体(例えば、抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメント)を含む。そうすることにより、一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンは神経組織に同時に送達され(標的ナノ粒子を介して)、タウロリジンが一つ又は複数の腫瘍学的薬物に対する相乗効果を提供することにより、標的神経組織に対する一つ又は複数の腫瘍学的薬物の増強された効果が提供される。
【0075】
本発明の一つの特に好適な形態において、ナノ粒子のコーティングに組み込まれる抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントは、Ca2.2、又はその結合等価物を含む。
【0076】
従って、本発明の一形態において、細胞毒性化学療法薬(一つ又は複数)と相乗的タウロリジンを、タウロリジン及び/又は一つ又は複数の腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための適切な緩衝液中に含有するナノ粒子を提供する。ナノ粒子の表面は、化学療法薬(一つ又は複数)と相乗的タウロリジンの放出特性を調節する脂質エンベロープ又はポリマーである。ナノ粒子の表面は、好ましくは、神経組織を標的とする結合分子を含む。
【0077】
本発明は、患者の神経芽細胞腫を治療するために使用できるナノ粒子を提供し、前記ナノ粒子は、化学療法薬(一つ又は複数)と相乗量のタウロリジンとを含み、前記化学療法薬(一つ又は複数)とタウロリジンは、化学療法薬とタウロリジンの放出特性を調節するポリマーに被包されていることは理解されるであろう。
【0078】
好適な態様の変更
本発明の性質を説明するために本明細書中に記載及び例示されている詳細、材料、工程及び部品の配列には、多数の追加の変更が当業者によって可能であるが、それらもなお本発明の原理及び範囲に含まれることは理解されるはずである。
【0079】
参考文献
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療ナノ粒子であって、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;
タウロリジンと
を含み、それにより、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する、前記治療ナノ粒子。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
好適な態様の変更
本発明の性質を説明するために本明細書中に記載及び例示されている詳細、材料、工程及び部品の配列には、多数の追加の変更が当業者によって可能であるが、それらもなお本発明の原理及び範囲に含まれることは理解されるはずである。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
治療ナノ粒子であって、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;
タウロリジンと
を含み、それにより、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する、前記治療ナノ粒子。
[請求項2]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
[請求項3]
軟部組織肉腫、食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項2に記載の治療ナノ粒子。
[請求項4]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、組換えヒトTNF関連アポトーシス誘導リガンド(rhTRAIL)を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
[請求項5]
食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項4に記載の治療ナノ粒子。
[請求項6]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物がFasリガンドを含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
[請求項7]
脳腫瘍細胞を標的とするように構成されている、請求項6に記載の治療ナノ粒子。
[請求項8]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が腫瘍壊死因子(TNF)を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
[請求項9]
固形腫瘍がんを標的とするように構成されている、請求項8に記載の治療ナノ粒子。
[請求項10]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が抗新生物薬を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。[請求項11]
神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項10に記載の治療ナノ粒子。[請求項12]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が細胞毒性薬を含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。[請求項13]
細胞毒性薬が、ビンクリスチン及びドキソルビシンからなる群からの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の治療ナノ粒子。
[請求項14]
神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項12に記載の治療ナノ粒子。[請求項15]
少なくとも一つの賦形剤をさらに含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
[請求項16]
少なくとも一つの賦形剤が、タウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液を含む、請求項15に記載の治療ナノ粒子。
[請求項17]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位に局所放出するように構成されたコーティングをさらに含む、請求項1に記載の治療ナノ粒子。
[請求項18]
がんの部位が腫瘍である、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
[請求項19]
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位に送達される前に身体に早期暴露されるのを防止するように構成されている、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
[請求項20]
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物に由来する望ましくない副作用、及びタウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの早期加水分解からなる群からの少なくとも一つを防止するように構成されている、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
[請求項21]
コーティングが、吸収性ポリマー及び吸収性脂質からなる群からの少なくとも一つを含む、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
[請求項22]
コーティングが、l-ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群からの少なくとも一つから構築されるポリマーから誘導されたコポリマー及びマルチマーの組合せから創製される、請求項21に記載の治療ナノ粒子。
[請求項23]
コーティングがグリコールをさらに含む、請求項22に記載の治療ナノ粒子。
[請求項24]
グリコールがポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項23に記載の治療ナノ粒子。
[請求項25]
グリコールが直鎖構造又は多分岐構造を含む、請求項24に記載の治療ナノ粒子。
[請求項26]
コーティングが、がんの治療のためのなくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子をがんの部位に標的化させるように構成されている、請求項17に記載の治療ナノ粒子。
[請求項27]
コーティングが、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む、請求項26に記載の治療ナノ粒子。
[請求項28]
結合分子が、モノクローナル抗体のフラグメント抗原結合(Fab)フラグメントを含む、請求項27に記載の治療ナノ粒子。
[請求項29]
結合分子が神経組織を標的とするように構成されている、請求項27に記載の治療ナノ粒子。
[請求項30]
結合分子が、神経芽細胞腫のN型カルシウムチャネル、グリシン受容体チャネル及び電位依存性カリウムチャネルからなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項29に記載の治療ナノ粒子。
[請求項31]
標的神経組織が神経外胚葉性腫瘍を含む、請求項29に記載の治療ナノ粒子。
[請求項32]
結合分子が、N型カルシウムチャネルを発現している神経外胚葉性腫瘍に結合する、請求項31に記載の治療ナノ粒子。
[請求項33]
結合分子が、抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントを含む、請求項32に記載の治療ナノ粒子。
[請求項34]
抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントが、Ca2.2、又はその結合等価物を含む、請求項33に記載の治療ナノ粒子。
[請求項35]
結合分子が、ナノ粒子の表面に包埋されているか又は共有結合されている、請求項27に記載の治療ナノ粒子。
[請求項36]
がんの治療法であって、該方法は、
少なくとも一つの腫瘍学的薬物と;
タウロリジンと
を含む治療ナノ粒子を提供し;そして
前記治療ナノ粒子を身体に送達して、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの同時送達を提供し、それによってタウロリジンの少なくとも一つの腫瘍学的薬物に対する相乗効果を利用する
ことを含む方法。
[請求項37]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)を含む、請求項36に記載の方法。
[請求項38]
治療ナノ粒子が、軟部組織肉腫、食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項37に記載の方法。
[請求項39]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が、組換えヒトTNF関連アポトーシス誘導リガンド(
rhTRAIL)を含む、請求項36に記載の方法。
[請求項40]
治療ナノ粒子が、食道がん及び結腸がんの細胞からなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項39に記載の方法。
[請求項41]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物がFasリガンドを含む、請求項36に記載の方法。
[請求項42]
治療ナノ粒子が、脳腫瘍細胞を標的とするように構成されている、請求項41に記載の方法。
[請求項43]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が腫瘍壊死因子(TNF)を含む、請求項36に記載の方法。
[請求項44]
治療ナノ粒子が、固形腫瘍がんを標的とするように構成されている、請求項43に記載の方法。
[請求項45]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が抗新生物薬を含む、請求項36に記載の方法。
[請求項46]
治療ナノ粒子が神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項45に記載の方法。
[請求項47]
少なくとも一つの腫瘍学的薬物が細胞毒性薬を含む、請求項36に記載の方法。
[請求項48]
細胞毒性薬が、ビンクリスチン及びドキソルビシンからなる群からの少なくとも一つを含む、請求項47に記載の方法。
[請求項49]
治療ナノ粒子が神経芽細胞腫を標的とするように構成されている、請求項47に記載の方法。
[請求項50]
治療ナノ粒子が少なくとも一つの賦形剤をさらに含む、請求項36に記載の方法。
[請求項51]
少なくとも一つの賦形剤が、タウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの加水分解安定性の増強を提供するための緩衝液を含む、請求項50に記載の方法。
[請求項52]
治療ナノ粒子が、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンをがんの部位に局所放出するように構成されたコーティングをさらに含む、請求項36に記載の方法。
[請求項53]
がんの部位が腫瘍である、請求項52に記載の方法。
[請求項54]
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンが、がんの部位に送達される前に身体に早期暴露されるのを防止するように構成されている、請求項52に記載の方法。
[請求項55]
コーティングが、少なくとも一つの腫瘍学的薬物に由来する望ましくない副作用、及びタウロリジン及び/又は少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの早期加水分解からなる群からの少なくとも一つを防止するように構成されている、請求項52に記載の方法。
[請求項56]
コーティングが、吸収性ポリマー及び吸収性脂質からなる群からの少なくとも一つを含
む、請求項52に記載の方法。
[請求項57]
コーティングが、l-ラクチド、グリコリド、e-カプロラクトン、p-ジオキサノン、及びトリメチレンカーボネートからなる群からの少なくとも一つから構築されるポリマーから誘導されたコポリマー及びマルチマーの組合せから創製される、請求項56に記載の方法。
[請求項58]
コーティングがグリコールをさらに含む、請求項57に記載の方法。
[請求項59]
グリコールがポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項58に記載の方法。
[請求項60]
グリコールが直鎖構造又は多分岐構造を含む、請求項59に記載の方法。
[請求項61]
コーティングが、がんの治療のための少なくとも一つの腫瘍学的薬物とタウロリジンの効果を改良するために、ナノ粒子をがんの部位に標的化させるように構成されている、請求項52に記載の方法。
[請求項62]
コーティングが、ナノ粒子を特定組織に標的送達するように構成された結合分子を含む、請求項61に記載の方法。
[請求項63]
結合分子が、モノクローナル抗体のフラグメント抗原結合(Fab)フラグメントを含む、請求項62に記載の方法。
[請求項64]
結合分子が神経組織を標的とするように構成されている、請求項62に記載の方法。
[請求項65]
結合分子が、神経芽細胞腫のN型カルシウムチャネル、グリシン受容体チャネル及び電位依存性カリウムチャネルからなる群からの少なくとも一つを標的とするように構成されている、請求項64に記載の方法。
[請求項66]
標的神経組織が神経外胚葉性腫瘍を含む、請求項64に記載の方法。
[請求項67]
結合分子が、N型カルシウムチャネルを発現している神経外胚葉性腫瘍に結合する、請求項66に記載の方法。
[請求項68]
結合分子が、抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントを含む、請求項67に記載の方法。
[請求項69]
抗N型カルシウムチャネル外表面Fabフラグメントが、Ca2.2、又はその結合等価物を含む、請求項68に記載の方法。
[請求項70]
結合分子が、ナノ粒子の表面に包埋されているか又は共有結合されている、請求項62に記載の方法。
【外国語明細書】