(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056858
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】光学フィルム及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240416BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20240416BHJP
G02F 1/1333 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02F1/1335
G02F1/1333
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019728
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2022149268の分割
【原出願日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020154785
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】武島 隆宏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軸対称性のある光学特性を表示画像において望ましくは確保しつつ、モアレによる表示画像の視認性の低下を抑制できる光学フィルム及びそれを備えた光学フィルム付きの表示装置を提供する。
【解決手段】光学フィルムは複数の光学要素を備える。複数の光学要素のうちの第1の光学要素から水平方向にフィルム面に平行な第1基準線を延ばした場合に、前記第1の光学要素と隣り合う第2の光学要素は、前記第1基準線に対して第1の角度をなす方向に所定の間隔を空けて配置される。前記第1の光学要素と隣り合う第3の光学要素は、前記第1基準線と直交し前記フィルム面に平行な第2基準線に対して第2の角度をなす方向に所定の間隔を空けて配置される。複数の光学要素のうちの他の光学要素も、前記第1の角度をなす方向で隣り合う光学要素と所定の間隔を空けて配置され、前記第2の角度をなす方向で隣り合う光学要素と所定の間隔を空けて配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学要素を備える光学フィルムであって、
前記複数の光学要素のうちの第1の光学要素から水平方向にフィルム面に平行な第1基準線を延ばした場合に、前記第1の光学要素と隣り合う第2の光学要素は、前記第1基準線に対して第1の角度をなす方向に所定の間隔を空けて配置され、前記第1の光学要素と隣り合う第3の光学要素は、前記第1基準線と直交し前記フィルム面に平行な第2基準線に対して第2の角度をなす方向に所定の間隔を空けて配置され、
前記複数の光学要素のうちの他の光学要素も、前記第1の角度をなす方向で隣り合う光学要素と所定の間隔を空けて配置され、前記第2の角度をなす方向で隣り合う光学要素と所定の間隔を空けて配置され、
各前記光学要素は、前記フィルム面の法線方向の一方側又は他方側に先細りに突出する四角錐台形状であって、先端と基端との間に側面を有するか、又は、前記フィルム面の法線方向の一方側又は他方側に先細りに凹む四角錐台上であって、凹み開始縁と底端との間に側面を有しており、
前記光学要素の先端面は前記フィルム面と平行であり、
前記側面は、互いに対向する一対の第1要素側面と、前記一対の第1要素側面が対向する方向と直交する方向で互いに対向する一対の第2要素側面と、を有し、
前記第1の角度をなす方向で隣り合う前記光学要素は、前記一対の第1要素側面が対向する方向又は前記一対の第2要素側面が対向する方向のうちのいずれかの方向に第1隙間を空けて隣り合っており、
前記第1隙間に面する前記一対の第1要素側面又は前記一対の第2要素側面の間の前記フィルム面の法線方向での中点における寸法を、前記第1の角度をなす方向における前記光学要素のピッチで割ることにより規定される第1デューティが、0.5以上0.8以下であり、
前記第2の角度をなす方向で隣り合う前記光学要素は、前記一対の第1要素側面が対向する方向又は前記一対の第2要素側面が対向する方向のうちのいずれかの方向に第2隙間を空けて隣り合っており、
前記第2隙間に面する前記一対の第1要素側面又は前記一対の第2要素側面の間の前記フィルム面の法線方向での中点における寸法を、前記第2の角度をなす方向における前記光学要素のピッチで割ることにより規定される第2デューティが、0.5以上0.8以下である、光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示画像形成用の光に光学的作用を及ぼす光学フィルムに関する。また、本開示は、当該光学フィルムを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例である液晶表示装置は、種々の分野で用いられている。また昨今、有機LED(Organic Light Emitting Diode)表示装置も普及しつつある。
【0003】
液晶表示装置では、視認角度に応じた光の強度変化、斜め方向への光の漏れ等に起因して視野角内での表示画像の色味が大きく変化する場合がある。なお、以下においては、表示画像のことを単に画像と呼ぶ場合がある。
【0004】
一方で、有機LED表示装置では、斜めから視認された画像においてブルーシフトが生じ易い。ブルーシフトとは、斜め方向で視認される画像が正面視で視認される画像よりも青くなる現象のことである。すなわち、有機LED表示装置が表示する画像でも、例えばこのようなブルーシフトに起因して視野角内での色味が大きく変化することがある。
【0005】
上述のような視野角内における色変化は、画像の表示品質を低下させ得る。そこで、本件出願人は、このような色変化を抑制するための技術をJP6447654Bにおいて以前提案している。この技術では、液晶パネルから出射される光を拡散させることで、互いに色が異なる複数種の光を視野角内で混ぜ合わせる。これにより、視野角内における色味のばらつきを抑制する。
【0006】
JP6447654Bの光学フィルムでは、高屈折率層と低屈折率層との界面に形成される複数の光学要素が柱状をなしている。そして、この光学要素が、光学フィルムの互い対向する端縁間にわたって長尺状に延びている。なお、上記光学要素は、光学機能部、光学構造体、光学界面部等とも呼ばれ得る部分である。
【0007】
一方で、US9507059B2には二次元的に配列される複数の光学要素を有する光学フィルムが提案されている。US9507059B2には円錐台状の光学要素が開示されており、これによれば、全方位に光を均一的に拡散し得る。ここで、このような光学要素の形状としては、例えば四角錐台状が用いられてもよい。このような四角錐台状の光学要素を用いた場合には、例えば見栄えが重視される左右方向及び上下方向の二方向における表示品質を好適に改善することが可能となる。
【発明の概要】
【0008】
上記二次元的に光学要素を配列する光学フィルムは、表示装置上で画素と重なることでモアレを発生させ得る。すなわち、二次元的に光学要素を配列する光学フィルムでは、光学要素の光学的機能により、特定の方向から観察したときの面内の輝度ムラ、もしくは透過率ムラが生じ、それが格子パターンを形成し得る。例えば、光学要素が四角錘台状の場合は正面から観察したとき側面部での透過率が先端に対して減少し得る。また、四角錐台状の場合、側面の稜線やつなぎ目でも透過率が変化し得る。こうした透過率変化によって、格子パターンが形成され得る。また、光学要素が回折格子の場合は、そのつなぎ目で光学機能が変化し得ることにより、透過率が変化して格子パターンが形成され得る。一方で、複数の画素の間にも格子パターンが形成される。このような格子パターンの重なりによってモアレが発生し得る。なお、一般のモアレは比較的荒い縞模様を意味するが、本明細書では、重なりによって発生するパターンの総称を、モアレと呼ぶことにする。例えば細かい粒子状の明暗パターンもモアレと呼ぶ。
【0009】
ここで、2つの格子パターンの重なりによって生じるモアレは、一方の格子パターンを他方の格子パターンに対して傾けることで低減できる。すなわち、いわゆるバイアスのことである。しかしながら、この手法では、例えば光学フィルムの光学要素が四角錐台状である場合において光学フィルム全体を画素に対して単純に傾けると、視認者の視覚に不快感を生じさせることがある。
【0010】
具体的には、上下左右方向が定められた表示装置に四角錐台状の光学要素を有する光学フィルムが組み込まれる場合、通常、光学要素の4つの側面のうちの2つの側面を上下方向に平行にし、他の2つの側面を左右方向に平行にする。すなわち、通常、表示装置は、表示画像の光学特性が上下方向軸及び左右方向軸に関して軸対称となるように設計されているため、光学フィルムは上記のように配置される。ここで、モアレを低減させるべく光学フィルムを単純に傾けた場合には、光学要素の側面が上下方向又は左右方向に対して傾く。この際、光学要素が奏する光学的機能のピークの方向は、上下及び左右方向に対して傾くことになり、その結果、視認者の視覚に不快感を与える虞がある。
【0011】
一方で、四角錐台状の光学要素に代えて円錐台状の光学要素を用いる場合には、画素に対する光学要素の向きによって、光学要素の光学的機能が変化することはない。しかしながら、例えば上下方向及び左右方向等の特定の二方向における表示品質の改善が特に望まれる場合には、必ずしも良好な結果が得られるとは言えない。また、複製用の原版又はロール型は、一般的には金属板又は金属層をバイトで切削して作製されるが、四角錘台は直線切削が使えるのに対し、円錐台は回転切削が必要となるので、作製時間・費用が増加する。
【0012】
本開示は上記実情を考慮してなされたものであり、表示画像の形成のために画素から出射する光を透過させる光学フィルムであって、画素から出射される光を透過させて表示画像を表示する際に、画素配列の基準となる互いに直交する2つの軸に関し軸対称性のある光学特性を表示画像において望ましくは確保しつつ、モアレによる表示画像の視認性の低下を抑制できる光学フィルム及びそれを備えた光学フィルム付きの表示装置を提供することを目的とする。
【0013】
一実施の形態にかかる光学フィルムは、複数の光学要素を備える光学フィルムであって、前記複数の光学要素のうちの第1の光学要素から水平方向にフィルム面に平行な第1基準線を延ばした場合に、前記第1の光学要素と隣り合う第2の光学要素は、前記第1基準線に対して第1の角度をなす方向に所定の間隔を空けて配置され、前記第1の光学要素と隣り合う第3の光学要素は、前記第1基準線と直交し前記フィルム面に平行な第2基準線に対して第2の角度をなす方向に所定の間隔を空けて配置され、前記複数の光学要素のうちの他の光学要素も、前記第1の角度をなす方向で隣り合う光学要素と所定の間隔を空けて配置され、前記第2の角度をなす方向で隣り合う光学要素と所定の間隔を空けて配置される。
【0014】
前記第1基準線の方向で隣り合う前記光学要素の中心は、前記第1基準線上で並ばず、前記第2基準線の方向で隣り合う前記光学要素の中心は、前記第2基準線上で並ばず、前記光学要素は前記第1基準線または前記第2基準線に平行な辺を有してもよい。
【0015】
前記第1の角度をなす方向で隣り合う前記光学要素の中心は、前記第1の角度をなす方向で並び、前記第2の角度をなす方向で隣り合う前記光学要素の中心は、前記第2の角度をなす方向で並んでもよい。
【0016】
前記光学要素は、前記第1の角度をなす方向に一定のピッチで配列されるとともに、前記第2の角度をなす方向に一定のピッチで配列されてもよい。
【0017】
前記第1の角度をなす方向での前記ピッチ及び前記第2の角度をなす方向での前記ピッチはそれぞれ、2μm以上50μm以下でもよい。
【0018】
前記フィルム面の法線方向で見たとき、前記第1の角度をなす方向で隣り合う前記光学要素の互いに対向する辺が、互いに平行であり、前記フィルム面の法線方向で見たとき、前記第2の角度をなす方向で隣り合う前記光学要素の互いに対向する辺が、互いに平行でもよい。
【0019】
前記第1の角度は、5度以上40度以下でもよい。
【0020】
前記第2の角度は、5度以上40度以下でもよい。
【0021】
前記光学要素の側面は、前記第1の角度をなす方向及び前記第2の角度をなす方向に対して非平行な要素側面を有してもよい。
【0022】
前記フィルム面に平行な方向に前記要素側面の両端を通過する方向は、前記第1の角度をなす方向及び前記第2の角度をなす方向に対して45度とは異なる角度で非平行でもよい。
【0023】
一実施の形態にかかる光学フィルムは、複数の光学要素を備える光学フィルムであって、前記複数の光学要素は、フィルム面に平行で且つ互いに交差する第1方向及び第2方向のそれぞれに配列され、前記フィルム面の法線方向で見たとき、前記光学要素の互いに対向する一対の辺の接線が、前記第1方向及び前記第2方向と非平行である。
【0024】
一実施の形態にかかる光学フィルムは、複数の光学要素を備える光学フィルムであって、前記複数の光学要素は、フィルム面に平行で且つ互いに交差する第1方向及び第2方向のそれぞれに、各前記光学要素の中心が位置するように配列され、前記フィルム面の法線方向で見たとき、前記光学要素の互いに対向する一対の辺の接線が、前記第1方向及び前記第2方向と非平行である。
【0025】
一実施の形態にかかる光学フィルムは、複数の光学要素を備える光学フィルムであって、前記複数の光学要素は、フィルム面に平行で且つ互いに交差する第1方向及び第2方向に配列され、各前記光学要素は、前記フィルム面の法線方向の一方側又は他方側に突出して先端と基端との間に側面を有するか、又は、前記フィルム面の法線方向の一方側又は他方側に凹んで凹み開始縁と底端との間に側面を有しており、前記側面は、互いに対向する一対の第1要素側面と、前記一対の第1要素側面が対向する方向と直交する方向で互いに対向する一対の第2要素側面と、を有し、前記一対の第1要素側面それぞれの法線方向が、前記第1方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面及び前記第2方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面と非平行であるか、及び/又は、前記一対の第2要素側面それぞれの法線方向が、前記第1方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面及び前記第2方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。
【0026】
前記光学要素は、前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれにおいて一定のピッチで配列されてもよい。
【0027】
前記フィルム面の法線方向で見たとき、隣り合う前記光学要素は、前記一対の第1要素側面それぞれの法線方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面に沿って並ばず、且つ、前記一対の第2要素側面それぞれの法線方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面に沿って並ばなくてもよい。
【0028】
前記フィルム面の法線方向で見たとき、前記一対の第1要素側面それぞれの法線方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面と平行な方向が、前記第1方向と、5度以上40度以下又は50度以上85度以下の角度をなしてもよい。
また、前記一対の第2要素側面それぞれの法線方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面と平行な方向が、前記第1方向と、5度以上40度以下又は50度以上85度以下の角度をなしてもよい。
【0029】
前記フィルム面の法線方向で見たとき、当該光学フィルムは矩形状であり、前記第1方向及び前記第2方向はそれぞれ、矩形状の当該光学フィルムの四辺と非平行であり、前記四辺は、互いに対向する一対の第1辺と、前記一対の第1辺が対向する方向と直交する方向で互いに対向する一対の第2辺とを有し、前記フィルム面の法線方向で見たとき、前記一対の第1要素側面は、前記第2辺が延びる方向で向き合い、前記一対の第2要素側面は、前記第1辺が延びる方向で向き合ってもよい。
【0030】
前記第1方向で隣り合う前記光学要素は、前記一対の第1辺が対向する方向又は前記一対の第2辺が対向する方向のうちのいずれかの方向に隙間を空けて隣り合っており、前記一対の第1要素側面又は前記一対の第2要素側面の間の前記フィルム面の法線方向での中点における寸法を、前記第1方向における前記光学要素のピッチで割ることにより規定される第1デューティは、0.5以上0.8以下でもよい。
【0031】
前記第2方向で隣り合う前記光学要素は、前記一対の第1辺が対向する方向又は前記一対の第2辺が対向する方向のうちのいずれかの方向に隙間を空けて隣り合っており、前記一対の第1要素側面又は前記一対の第2要素側面の間の前記フィルム面の法線方向での中点における寸法を、前記第2方向における前記光学要素のピッチで割ることにより規定される第2デューティは、0.5以上0.8以下でもよい。
【0032】
前記光学要素は四角錐台状であり、その先端面は前記フィルム面と平行でもよい。
【0033】
前記光学要素の側面における稜線に丸みがつけられてもよい。
【0034】
前記光学要素は、前記フィルム面の法線方向の一方側又は他方側に凹み且つ前記第1辺と平行な方向に長尺となる複数の溝を有する回折格子であって、各前記溝に形成される前記第1要素側面それぞれの法線方向が、前記第1方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面及び前記第2方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面と非平行となる回折格子を含む第1要素と、前記フィルム面の法線方向の一方側又は他方側に凹み且つ前記第2辺と平行な方向に長尺となる複数の溝を有する回折格子であって、各前記溝に形成される前記第2要素側面それぞれの法線方向が、前記第1方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面及び前記第2方向と前記フィルム面の法線方向とを含む面と非平行となる回折格子を含む第2要素と、を有し、前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれで、前記第1要素と前記第2要素とが混在して配列されてもよい。
【0035】
また、一実施の形態にかかる表示装置は、第1画素配列方向及び前記第1画素配列方向に直交する第2画素配列方向のそれぞれに複数の画素が配列される表示パネルと、前記の光学フィルムと、を備え、前記光学フィルムは、前記光学要素の配列方向である前記第1方向及び前記第2方向がそれぞれ、前記第1画素配列方向及び前記第2画素配列方向と非平行になるように前記複数の画素上に配置され、前記光学フィルムのフィルム面の法線方向で見たとき、前記一対の第1要素側面それぞれの法線方向は、前記第1画素配列方向と平行となり、前記一対の第2要素側面それぞれの法線方向は、前記第2画素配列方向と平行となる。
【0036】
前記表示パネルは、有機LEDパネル又は液晶パネルでもよい。
【0037】
前記画素におけるサブピクセルの配列がペンタイル配列でもよい。
【0038】
前記光学要素のピッチは、前記サブピクセルの幅の半分以下でもよい。
【0039】
本開示によれば、画素から出射される光を透過させて表示画像を表示する際に、画素配列の基準となる互いに直交する2つの軸に関し軸対称性のある光学特性を表示画像において望ましくは確保しつつ、モアレによる表示画像の視認性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本開示の一実施の形態にかかる光学フィルムを備える表示装置の正面図である。
【
図2】一実施の形態にかかる表示装置の厚み方向における概略的な断面図である。
【
図3】一実施の形態にかかる光学フィルムの一部の部分的な斜視図である。
【
図4】一実施の形態にかかる光学フィルムのレンズ部(光学要素)の配列を概略的に示す図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿う方向で光学フィルムを切断した場合の断面図である。
【
図6A】一実施の形態にかかる表示装置を構成する有機LEDパネルの画素配列を示す図である。
【
図7】一実施の形態にかかる表示装置の一変形例を示す図である。
【
図11】実施例及び比較例1、2のそれぞれにおける画素と光学フィルムのレンズ部との位置関係を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら本開示の一実施の形態について説明する。
【0042】
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」は、フィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。また、本明細書において「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状の部材の平面方向(面方向)と一致する面のことを指す。さらに、本明細書において、シート状の部材の法線方向とは、対象となるシート状の部材のシート面への法線方向のことを指す。
【0043】
<表示装置>
図1は、光学フィルム100を備える光学フィルム付き表示装置10(以下、単に表示装置10)の正面図である。
図2は、表示装置10の厚み方向Zにおける表示装置10の一部の概略的な断面図である。本実施の形態では、光学フィルム100が表示装置10の最表面を形成する。表示装置10の表示画像は、光学フィルム100を通して視認者側に映し出される。
【0044】
図1、
図2を含む以下の説明で用いる図において、符号Xは、表示装置10の左右方向を示す。符号Yは、左右方向Xに直交する表示装置10の上下方向を示す。厚み方向Zは、左右方向X及び上下方向Yの両方に直交する方向である。
【0045】
図1に示すように、図示例の光学フィルム100は、上下方向Yに長手方向を有する矩形状である。光学フィルム100は、上下方向Yに延び且つ左右方向Xで互いに対向する一対の第1辺100A,100Aと、左右方向Xに延び且つ第1辺100Aが対向する方向と直交する方向、つまり上下方向Yで互いに対向する一対の第2辺100B,100Bと、を有する。
【0046】
図2に示すように、表示装置10は、有機LED(Organic Light Emitting Diode)パネル15と、円偏光板20と、タッチパネル30と、カバーガラス40と、光学フィルム100と、をこの順に積層して構成されている。有機LEDパネル15、円偏光板20、タッチパネル30及びカバーガラス40も、上下方向Yに長手方向を有する矩形状になっている。なお、本実施の形態では、光学フィルム100が表示装置10の最表面を形成するが、その他の層が最表面を形成してもよい。
【0047】
表示装置10は一例としてスマートフォンとして構成される。ただし、表示装置10は、タブレット端末、テレビ、コンピュータ用ディスプレイ、カーナビゲーションシステム等でもよい。
【0048】
有機LEDパネル15の表示面(表面)15Aと円偏光板20の裏面は第1粘着層51で貼り合わされている。円偏光板20の表面とタッチパネル30の裏面は第2粘着層52で貼り合わされている。タッチパネル30の表面とカバーガラス40の裏面は第3粘着層53で貼り合わされている。各粘着層51~53は、いわゆるOCA(Optical Clear Adhesive)であり、高い光透過率を有する。また、光学フィルム100はカバーガラス40の表面上に配置されている。本例では、光学フィルム100とカバーガラス40とが粘着層で貼り合わされていない。ただし、光学フィルム100とカバーガラス40は、粘着層で貼り合わされてもよい。
【0049】
有機LEDパネル15はマイクロキャビティ構造を採用する有機LEDパネルである。ただし、有機LEDパネル15は、カラーフィルター方式等の他の形式でもよい。一般に有機LEDパネルでは、斜めから視認された画像においてブルーシフトが生じ易く、ブルーシフトに起因して視野角内における色変化が大きくなる場合がある。そこで、表示装置10では、光学フィルム100によって視野角内における色変化の抑制を図っている。
【0050】
円偏光板20は、偏光子と、位相差板とを有する。位相差板は有機LEDパネル15側に配置される。偏光子は、位相差板の有機LEDパネル15側とは反対側の面に接合されている。具体的には、偏光子は直線偏光子であり、位相差板は、λ/4位相差板である。タッチパネル30は透明のガラス板を含むものであり、静電容量方式を採用することが望ましい。カバーガラス40は保護機能を有するものであるが、反射防止機能等のその他の機能を有してもよい。
【0051】
<光学フィルム>
以下、光学フィルム100について詳しく説明する。光学フィルム100は、基材101と、低屈折率層102と、高屈折率層103とを有している。基材101、低屈折率層102及び高屈折率層103は、表示装置10に対して視認者が位置する側から有機LEDパネル15側に向けてこの順で積層されている。言い換えると、基材101、低屈折率層102及び高屈折率層103は、厚み方向Zで視認者側から装置内部に向けてこの順で積層されている。
【0052】
基材101はフィルム状であり、表面及び裏面のうちの裏面で低屈折率層102と接合している。基材101は、樹脂やガラス等からなる光透過性を有する透明基材である。
【0053】
基材101は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリオリフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、トリアセチルセルロースを主成分とするフィルム、ガラス等から構成される。
【0054】
基材101の厚みは、例えば10μm以上200μm以下である。また基材101の屈折率は例えば1.46以上1.67以下である。なお、主成分とは、ある物質を構成する複数の成分のうちの物質全体に対して50%以上の割合で含まれる成分又は最も多く含まれる成分のことを意味する。また、本実施の形態における光学フィルム100は基材101を含むが、光学フィルム100は基材101を有さなくてもよい。
【0055】
図3は、光学フィルム100の部分的な斜視図であり、詳しくは低屈折率層102の部分的な斜視図である。
図4は、低屈折率層102をその法線方向で見た図、言い換えると、厚み方向Zで見た図である。
図4は、低屈折率層102が備える後述のレンズ部110の配列を概略的に示す。
図5は、
図4のV-V線に沿う方向で光学フィルム100を切断した場合の断面図である。
【0056】
図2及び
図3に示すように、低屈折率層102は、表面及び裏面を有するフィルム状の層本体102Aと、層本体102Aの裏面上に第1方向D
1及び第2方向D
2に沿って二次元的に配列された光学要素の一例である複数のレンズ部110と、を一体に有している。
図3に示すようにレンズ部110は、左右方向X及び上下方向Yの両方に斜めに交差する第1方向D
1及び第2方向D
2に沿って配列される。
図2は概略の断面図であり、説明の便宜のために、レンズ部110が左右方向Xに並ぶように示されている。しかし、実際上は、本実施の形態におけるレンズ部110は、第1方向D
1及び第2方向D
2に沿って並ぶ。
【0057】
第1方向D1及び第2方向D2は、光学フィルム100のフィルム面に平行で且つ互いに交差する方向である。また、第1方向D1及び第2方向D2はそれぞれ、光学フィルム100の四辺と非平行な方向である。複数のレンズ部110は、第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれに延びる複数の格子線によって形成される格子パターンの各格子線上に間隔を空けて配列されている。ここで言う格子線は、仮想的な線である。
【0058】
高屈折率層103は、レンズ部110を覆い且つ複数のレンズ部110の間まで充填されるように、低屈折率層102に接合されている。これにより、本実施の形態では、低屈折率層102と高屈折率層103との界面が凹凸形状をなす。この際、高屈折率層103は、複数のレンズ部110を収容する複数の穴を有するフィルム状をなし、少なくとも部分的に格子状となる。
【0059】
なお、低屈折率層102は層本体102Aを有さずに、複数のレンズ部110の集合により構成されてもよい。また、光学フィルム100に高屈折率層103が含まれなくもよい。また、低屈折率層102がなくてもよい。つまり、低屈折率層102が空気層で形成されてもよい。この場合には、高屈折率層103の格子状部分によって囲まれる空間が光学要素を形成する。
【0060】
低屈折率層102の屈折率は、例えば1.40以上1.55以下である。高屈折率層103の屈折率は、例えば1.55以上1.90以下であって、低屈折率層102の屈折率よりも大きい。本実施の形態においては、一例として、低屈折率層102の屈折率と高屈折率層103の屈折率との差が、0.05以上0.50以下の範囲となるように、低屈折率層102及び高屈折率層103が選択されている。
【0061】
また、本実施の形態では、低屈折率層102及び高屈折率層103のうちの高屈折率層103が、低屈折率層102よりも有機LEDパネル15側に配置されるが、この配置順は逆でもよい。
【0062】
低屈折率層102は例えば紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱硬化樹脂を硬化させることで形成されてもよい。低屈折率層102が紫外線硬化樹脂を硬化して形成される場合、紫外線硬化樹脂はアクリル系樹脂を含むものでもよいし、エポキシ系樹脂を含むものでもよい。
【0063】
高屈折率層103も同様に、例えば紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱硬化樹脂を硬化させることで形成されてもよい。高屈折率層103が紫外線硬化樹脂を硬化して形成される場合、紫外線硬化樹脂はアクリル系樹脂を含むものでもよいし、エポキシ系樹脂を含むものでもよい。また、高屈折率層103が粘着層として形成される場合、高屈折率層103は、アクリル系樹脂粘着剤から形成されてもよい。
【0064】
また、低屈折率層102における層本体102Aの厚み方向Zにおける寸法(厚み)は、例えば0.5μm以上30μm以下である。また、レンズ部110の高さは、例えば1.0μm以上30μm以下である。一方、高屈折率層103の厚みは、例えば5μm以上100μm以下である。
【0065】
以下、光学要素であるレンズ部110の構成について詳述する。
【0066】
図3及び
図5に示すように、レンズ部110は、一例として四角錐台状である。レンズ部110は、フィルム面と平行な先端面110Tと、先端面110Tとその反対側の基端との間に位置する側面110Sと、を有する。側面110Sは、光学フィルム100のフィルム面の法線方向の一方側である有機LEDパネル15側に向けて先細りの形状をなしている。
【0067】
図4に示すように、側面110Sは、互いに対向する一対の第1要素側面111,111と、一対の第1要素側面111,111が対向する方向と直交する方向で互いに対向する一対の第2要素側面112,112と、を有している。一対の第1要素側面111,111及び一対の第2要素側面112,112はそれぞれ、平坦面である。ただし、一対の第1要素側面111,111及び一対の第2要素側面112,112のうちの少なくともいずれかは、曲面や階段状でもよい。また、レンズ部110は、例えば、四角錐状、八角錐状、八角錐台状等でもよい。
【0068】
図4において、符号N1,N1はそれぞれ、一対の第1要素側面111,111の法線方向を示す。
図4から明らかなように、これら法線方向N1,N1はそれぞれ、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。一方で、法線方向N1,N1はそれぞれ、光学フィルム100の第2辺100Bと平行になる。言い換えると、法線方向N1,N1はそれぞれ、左右方向Xに平行となる。また、平坦面である第1要素側面111,111は、第1辺100A及び上下方向Yと平行になる。また、第1要素側面111,111は、第2辺100Bが延びる方向で、つまり左右方向Xで向き合っている。
【0069】
また、符号N2,N2はそれぞれ、一対の第2要素側面112,112の法線方向を示す。これら法線方向N2,N2もそれぞれ、第1方向D1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。一方で、法線方向N2,N2はそれぞれ、光学フィルム100の第1辺100Aと平行になる。言い換えると、法線N2,N2はそれぞれ、上下方向Yに平行となる。また、平坦面である第2要素側面112,112は、第2辺100B及び左右方向Xと平行になる。また、第2要素側面112,112は、第1辺100Aが延びる方向で、つまり上下方向Yで向き合っている。本実施の形態では、フィルム面の法線方向で見たとき、法線方向N1,N1と法線方向N2,N2とが互いに直交する関係になる。
【0070】
つまり、本実施の形態では、複数のレンズ部110が、左右方向X及び上下方向Yの両方に斜めに交差する第1方向D1及び第2方向D2に延びる複数の格子線によって形成される格子パターンに沿って配列される。一方で、第1要素側面111,111及び第2要素側面112,112は、左右方向X及び上下方向Yのいずれかを向いている。レンズ部110は、有機LEDパネル15が出射した光の大部分を、第1要素側面111,111から法線方向N1,N1とフィルム面の法線方向とを含む面に沿って拡散及び偏向するとともに、第2要素側面112,112から法線方向N2,N2とフィルム面の法線方向とを含む面に沿って拡散及び偏向する。すなわち、レンズ部110は、光学的機能が効果的に発揮される面(111,112)を左右方向X又は上下方向Yに向ける一方で、その配列方向である第1方向D1及び第2方向D2を、左右方向X及び上下方向Yに対して傾けている。
【0071】
また、本実施の形態では、
図4に示すように、複数のレンズ部110のうちの隣り合うレンズ部110は、一対の第1要素側面111,111それぞれの法線方向N1,N1とフィルム面の法線方向とを含む面に沿って並んでいない、言い換えると、当該面に平行な方向に直線状に並んでいない。また、複数のレンズ部110のうちの隣り合うレンズ部110は、一対の第2要素側面112,112それぞれの法線方向N2,N2とフィルム面の法線方向とを含む面に沿って並んでいない、言い換えると、当該面に平行な方向に直線状に並んでいない。
【0072】
なお、第1方向D1に配列されるレンズ部110のピッチP1及び第2方向D2に配列されるレンズ部110のピッチP2はそれぞれ、本実施の形態では等ピッチ、すなわち一定のピッチであり、且つ互いに同じ値である。ただし、各ピッチは、等ピッチに限られるものではない。また、上述したように一対の第1要素側面111,111及び一対の第2要素側面112,112の少なくともいずれかは、曲面や階段状でもよい。ここで、第1要素側面111及び/又は第2要素側面112が曲面である場合、曲面の少なくとも幅方向中央で定まる法線方向が、第1方向D1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行になればよい。また、第1要素側面111及び/又は第2要素側面112が階段状である場合、先端側の辺と基端側の辺とを含む平面の法線方向が、第1方向D1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行になればよい。
【0073】
また、本実施の形態における光学要素としてのレンズ部110の構成を、
図4を参照しつつ別の言い方で説明すると、以下となる。
複数のレンズ部110のうちの第1のレンズ部110(符号110-1)から水平方向にフィルム面に平行な第1基準線SL1を延ばした場合に、第1のレンズ部110(符号110-1)と隣り合う第2のレンズ部110(符号110-2)は、第1基準線SL1に対して第1の角度θaをなす方向(つまり、第1方向D
1)に所定の間隔を空けて配置される。第1のレンズ部110(符号110-1)と隣り合う第3のレンズ部110(符号110-3)は、第1基準線SL1と直交しフィルム面に平行な第2基準線SL2に対して第2の角度θbをなす方向(つまり、第2方向D
2)に所定の間隔を空けて配置される。そして、複数のレンズ部110のうちの他のレンズ部110も、第1の角度θaをなす方向で隣り合うレンズ部110と所定の間隔を空けて配置され、第2の角度θbをなす方向で隣り合うレンズ部110と所定の間隔を空けて配置される。
なお、本実施の形態では、第1基準線SL1が光学フィルム100の第2辺100Bと平行になる。第2基準線SL2が光学フィルム100の第1辺100Aと平行になる。
【0074】
そして、第1基準SL1線の方向で隣り合うレンズ部110それぞれの中心Cは、第1基準線SL1上で並ばない。また、第2基準線SL2の方向で隣り合うレンズ部110それぞれの中心Cは、第2基準線SL2上で並ばない。一方で、第1の角度θaをなす方向で隣り合うレンズ部110それぞれの中心Cは、第1の角度θaをなす方向で並ぶ、正確には第1の角度θaをなす方向に延びる直線上に並ぶ。また、第2の角度θbをなす方向で隣り合うレンズ部110の中心Cは、第2の角度θbをなす方向で並ぶ、正確には第2の角度θbをなす方向に延びる直線上に並ぶ。なお、レンズ部110の中心は、フィルム面の法線方向で見たときのレンズ部110の中央のことである。
【0075】
また、レンズ部110は、第1基準線SL1又は第2基準線SL2に平行な辺を有する。より具体的に説明すると、レンズ部110の側面110Sにおける第1要素側面111の基端側の辺111p及び先端側の辺111dは、第2基準線SL2に平行になる。第2要素側面112の基端側の辺112p及び先端側の辺112dは、第1基準線SL1に平行になる。
そして、フィルム面の法線方向で見たとき、第1の角度θaをなす方向で隣り合うレンズ部110の互いに対向する辺は、互いに平行である。つまり、互いに対向する、隣り合うレンズ部110のうちの一方のレンズ部110の辺111p,111dと、他方のレンズ部110の辺111p,111dとが、互いに平行である。また、フィルム面の法線方向で見たとき、第2の角度θbをなす方向で隣り合うレンズ部110の互いに対向する辺が、互いに平行である。つまり、互いに対向する、隣り合うレンズ部110のうちの一方のレンズ部110の辺112p,112dと、他方のレンズ部110の辺112p,112dとが、互いに平行である。
【0076】
さらには、レンズ部110の側面110Sにおける第1要素側面111の基端側の辺111pの接線及び先端側の辺111dの接線は、第1の角度θaをなす方向(つまり、第1方向D1)及び第2の角度θbをなす方向(つまり、第2方向D2)と非平行であり、第2基準線SL2に平行になる。第2要素側面112の基端側の辺112pの接線及び先端側の辺112dの接線は、第1の角度θaをなす方向(つまり、第1方向D1)及び第2の角度θbをなす方向(つまり、第2方向D2)と非平行であり、第1基準線SL1に平行になる。以上の関係は、第1要素側面111及び第2要素側面112が曲面であるときにも成立する。
【0077】
また、フィルム面に平行な方向に第1要素側面111の両端を通過する方向(本例では、第2方向D2と一致する。)は、第1の角度θaをなす方向及び第2の角度θbをなす方向に対して非平行となり、本実施の形態では45度とは異なる角度で非平行となる。また、フィルム面に平行な方向に第2要素側面112の両端を通過する方向(本例では、第1方向D1と一致する。)は、第1の角度θaをなす方向及び第2の角度θbをなす方向に対して非平行となり、本実施の形態では45度とは異なる角度で非平行となる。なお、第1の角度θaは、5度以上40度以下であることが好ましい。第2の角度θbは、5度以上40度以下であることが好ましい。
【0078】
図6Aは、有機LEDパネル15の画素配列を示す図である。有機LEDパネル15は、互いに色の異なる複数のサブピクセルを含む複数の画素150を有する。複数の画素1
50は、第1画素配列方向PD
1及び第1画素配列方向PD
1に直交する第2画素配列方向PD
2のそれぞれに延びる格子線によって形成される格子パターンの各格子線上に等ピッチ、すなわち一定のピッチで配列されている。
【0079】
本実施の形態における画素150では、サブピクセルの配列が、一例としてペンタイル配列のうちのダイヤモンドペンタイル配列になっている。すなわち、画素150は、赤色を発光するサブピクセル150Rと緑色を発光するサブピクセル150Gとの組、又は、青色を発光するサブピクセル150Bと緑色を発光するサブピクセル150Gとの組で構成される。そして、1つの画素150における複数のサブピクセルは、第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2と斜めに交差する方向に並ぶ。この斜めに交差する方向は、具体的には、第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2のそれぞれと45度をなす方向である。そして、赤色を発光するサブピクセル150Rと緑色を発光するサブピクセル150Gとの組の画素150と、青色を発光するサブピクセル150Bと緑色を発光するサブピクセル150Gとの組の画素150は、交互に配列される。なお、Rのサブピクセルが2個、Bのサブピクセルが2個、Gのサブピクセルが4個で一画素と呼ぶ場合もあるが、本実施の形態では、Rのサブピクセルが1個とGのサブピクセルが1個との組、もしくはBのサブピクセルが1個とGのサブピクセルが1個との組を、画素と呼ぶことにしている。
【0080】
本実施の形態では、第1画素配列方向PD1が、左右方向Xと一致し、第2画素配列方向PD2が、上下方向Yと一致する。よって、レンズ部110の配列方向である第1方向D1及び第2方向D2はそれぞれ、第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2と非平行になる。さらに、本実施の形態では、第1方向D1及び第2方向D2がそれぞれ、画素150において複数のサブピクセルが並ぶ方向に対しても非平行となる。そして、光学フィルム100のフィルム面の法線方向で見たとき、一対の第1要素側面111,111それぞれの法線方向N1,N1は、第1画素配列方向PD1と平行となり、一対の第2要素側面112,112それぞれの法線方向N2,N2は、第2画素配列方向PD2と平行となる。
【0081】
つまり、レンズ部110は、光学的機能が効果的に発揮される面(111,112)を第1画素配列方向PD
1又は第2画素配列方向PD
2に向ける一方で、その配列方向を第1画素配列方向PD
1及び第2画素配列方向PD
2に対して傾けている。さらに本実施の形態では、第1画素配列方向PD
1及び第2画素配列方向PD
2と斜めに交差するサブピクセルが並ぶ方向に対しても、レンズ部110の配列方向が傾く。本実施の形態では、これらの構成が採用されることにより、第1画素配列方向PD
1及び第2画素配列方向PD
2においてレンズ部110による光学的機能が効果的に発揮される。これと同時に、複数のレンズ部110の配列によって形成される格子パターンが、画素150によって形成される格子パターン及びサブピクセル150R,G,Bによって形成される格子パターンに対して傾くことで、モアレが低減される又は目立たなくなる。なお、画素150におけるサブピクセルの配列は特に限られるものではなく、
図6Bに示すようなストライプ配列でもよい。
【0082】
以下においては、レンズ部110の向き及び寸法条件について説明する。
図4において、符号θ1は、一対の第1要素側面111,111それぞれの法線方向N1,N1とフィルム面の法線方向とを含む面と平行な方向が、第1方向D
1と、なす角度を示している。符号θ2は、一対の第2要素側面112,112それぞれの法線方向N2,N2とフィルム面の法線方向とを含む面と平行な方向が、第1方向D
1と、なす角度を示している。
【0083】
角度θ1及び角度θ2はそれぞれ、5度以上40度以下、とりわけ10度以上40度以下であるか、又は、50度以上85度以下、とりわけ50度以上80度以下であることが好ましい。より具体的には、角度θ1が5度以上40度以下であり、且つ、角度θ2が50度以上85度以下であるか、又は、角度θ1が50度以上85度以下であり、且つ、角度θ2が5度以上40度以下であることが好ましい。より好ましくは、角度θ1が10度以上40度以下であり、且つ、角度θ2が50度以上80度以下であるか、又は、角度θ1が50度以上80度以下であり、且つ、角度θ2が10度以上40度以下である。
【0084】
上述の角度θ1及び角度θ2の好ましい範囲は、本実施の形態では、以下を意味する。
第1方向D1が、左右方向X及び第1画素配列方向PD1と、5度以上40度以下をなすか、又は、50度以上85度以下をなすことが好ましく、10度以上40度以下をなすか、又は、50度以上80度以下をなすことがより好ましい。
第2方向D2が、左右方向X及び第1画素配列方向PD1と、5度以上40度以下をなすか、又は、50度以上85度以下をなすことが好ましく、10度以上40度以下をなすか、又は、50度以上80度以下をなすことがより好ましい。
【0085】
第1方向D1が左右方向X及び第1画素配列方向PD1となす角度、及び、第2方向D2が左右方向X及び第1画素配列方向PD1となす角度が、上述の条件である場合、モアレが効果的に低減される又は目立たなくなる。なお、第1方向D1が左右方向X及び第1画素配列方向PD1となす角度が0度又は45度に近い程、モアレ低減効果は低下する傾向がある。つまり、この場合、隣接するサブピクセル間で、画素配列と光学要素配列の重なり具合がほとんど変わらなくなるため、モアレが増加する傾向がある。かかる観点から上述の角度範囲は好ましい範囲と言える。
【0086】
なお、第1方向D1が左右方向X及び第1画素配列方向PD1となす角度及び第2方向D2が左右方向X及び第1画素配列方向PD1となす角度の総称を、以下、バイアス角と呼ぶ。ここで、モアレ低減効果が好適に得られるバイアス角は、例えばモアレが最小となる値を計算して選択できる。このような選択は、例えば、以下の手順(第1~第7工程)で行うことができる。
【0087】
(第1工程)
まず、有機LEDパネル15と光学フィルム100とをあるバイアス角で重ねる。
(第2工程)
次に、複数の画素150のうちのいずれかの画素150におけるいずれかのサブピクセルの輝度減少量を計算する。このとき、レンズ部110の先端面110Tは、透明(光透過状態)として取り扱い、側面110Sは遮蔽(光非透過状態)として取り扱う。つまり、側面110Sによって遮蔽されたサブピクセル内の面積の割合に基づいて、輝度減少量が計算される。
(第3工程)
次に、第2工程で輝度減少量を計算されたサブピクセルを含む画素150における残りのサブピクセルの輝度減少量を第2工程と同じ手法で計算する。本実施の形態では、画素150における残りのサブピクセルは1つであるので、これについての輝度減少量が計算された後、第3工程が終了する。一方で、例えばストライプ配列であるときには、上記画素150における残りのサブピクセルが2つになる。この場合には、残りのサブピクセルのうちの一方の輝度減少量を計算した後、他方の輝度減少量を計算する。
(第4工程)
次に、複数の画素150のうちの他の全ての画素150について、第2工程と第3工程を行い、全画素150における各サブピクセルの輝度減少量を特定する。そして、このような全画素150における輝度減少量の情報を基に、各色のサブピクセルに関する輝度ムラを示すモアレ画像を形成する。
(第5工程)
次に、各サブピクセルに関するモアレ画像における最大輝度と最小輝度とを輝度減少量に基づいて特定し、各サブピクセルにおける輝度ムラ(単色輝度ムラと呼ぶ。)を、例えば以下の式により計算する。
単色輝度ムラ=(最大輝度-最小輝度)/(最大輝度+最小輝度)
(第6工程)
次に、各サブピクセルの単色輝度ムラの平均値を計算し、輝度ムラの代表値として特定する。
(第7工程)
そして、バイアス角を順次変更し、第2~第6工程を行うことで、複数のバイアス角についての輝度ムラの代表値を特定する。そして、複数の輝度ムラの代表値に基づいてモアレ低減効果が好適に得られるバイアス角を選択する。
【0088】
その他の寸法の説明のために
図4に戻る。符号P1は、第1方向D
1におけるレンズ部110のピッチを示す。符号P2は、第2方向D
2におけるレンズ部110のピッチを示す。ピッチP1は、例えば2μm以上50μm以下である。ピッチP2は、例えば2μm以上50μm以下である。本実施の形態では、ピッチP1及びピッチP2が一定の値であり、互いに同じ値である。ただし、ピッチP1とピッチP2は同じ値でなくもよい。
【0089】
図5において、符号Hは、レンズ部110の厚み方向Zにおける高さを示す。レンズ部110の高さは、例えば1μm以上30μm以下である。符号Wexは、左右方向Xにおけるレンズ部110の両端間の幅である外枠幅を示す。外枠幅Wexは、例えば2μm以上40μm以下である。符号Witは、レンズ部110の高さ方向の中央における一対の第1要素側面111,111間の寸法である中間幅を示す。中間幅Witは、外枠幅Wexよりも小さい寸法であって、例えば2μm以上40μm以下である。符号Wsiは、1つの第1要素側面111の左右方向Xにおける寸法である側面幅である。側面幅Wsi、例えば0.2μm以上4μm以下である。符号θ
Rは、第1要素側面111の傾斜角を示す。傾斜角θ
Rは、例えば2度以上30度以下である。なお、本実施の形態におけるレンズ部110は、正四角錐台状である。そのため、上下方向Yにおける外枠幅、中間幅、側面幅及び傾斜角は、左右方向Xにおけるそれらと同じとなる。
【0090】
本実施の形態では、第1方向D1で隣り合う光学要素110は、一対の第1辺100A,100Aが対向する方向で隙間、言い換えると所定の間隔を空けて隣り合っている。そして、一対の第1要素側面111,111はそれぞれ別に、一対の第1辺100A,100Aが対向する方向の隙間に面している。そして、一対の第1要素側面111,111の中間幅Witを、第1方向D1におけるレンズ部110のピッチP1で割ることにより、第1デューティD1が規定される。また、第2方向D2で隣り合う光学要素110は、一対の第2辺100B,100Bが対向する方向で隙間、言い換えると所定の間隔を空けて隣り合っている。そして、一対の第2要素側面112,112はそれぞれ別に、一対の第2辺100B,100Bが対向する方向の隙間に面している。そして、一対の第2要素側面112,112の中間幅を第2方向D2におけるレンズ部110のピッチP2で割ることにより、第2デューティD2が規定されている。ここで、これら第1デューティD1及び第2デューティD2はそれぞれ、0.5以上0.8以下であることが好ましい。
【0091】
なお、例えば第1方向D1で隣り合う光学要素110は、一対の第1辺100A,100Aが対向する方向及び一対の第2辺100B,100Bが対向する方向のそれぞれで隙間を空ける場合がある。この際には、第1デューティD1は、一対の第1要素側面111,111の中間幅をピッチP1で割ったもの、及び、一対の第2要素側面112,112の中間幅をピッチP1で割ったものの2種になる。この場合、いずれも、0.5以上0.8以下であることが好ましい。これは、第2デューティD2においても同様である。
【0092】
第1デューティD1及び第2デューティD2が0.5未満になると、格子パターンをずらす、つまりバイアスすることによるモアレ低減効果があらわれ難くなる傾向がある。また、第1デューティD1及び第2デューティD2が0.8より大きくなると、隣り合うレンズ部110が互いに過剰に近接することに起因してモアレが増加する傾向がある。隣り合うレンズ部110が互いに過剰に近接すると、サブピクセルにおいてレンズ部110の側面110Sによって遮蔽される部分の面内ムラが増える傾向になり、これに起因してモアレが増加する傾向があると推認される。
【0093】
また、
図6Aにおける符号Wpは、画素150中のサブピクセルの平面視における最小の幅を示す。本例では、緑色のサブピクセル150Gが他のサブピクセルよりも小さくなっている。したがって、幅Wpは、サブピクセル150Gの最小の幅である。ここで、第1方向D
1におけるレンズ部110のピッチP1及び第2方向D
2におけるレンズ部110のピッチP2はそれぞれ、サブピクセルの幅Wpの半分以下であることが好ましい。1つのサブピクセル中に位置するレンズ部110が1つ程度だと、バイアスによるモアレ低減効果があらわれ難くなる傾向があるからである。
【0094】
<作用>
次に、本実施の形態にかかる表示装置10の作用について説明する。
【0095】
図2を参照し、有機LEDパネル15から画像形成のための光が出射されると、当該光は円偏光板20、タッチパネル30及びカバーガラス40を透過して光学フィルム100に入射する。光学フィルム100に入射した光のうち正面視方向に沿ってレンズ部110の先端面110T又は隣り合うレンズ部110の間の層本体102Aの平坦部分に向かう光は、進行方向の角度を変えずに又はほとんど変えずに低屈折率層102から出射され、光学特性に影響は与えない。
【0096】
一方で、光学フィルム100に入射した光のうちレンズ部110の側面110Sに向かう光は広い範囲に拡散される。この際、本例では、高角度側の光と低角度側の光が交換される。これにより、ブルーシフトが低減される。また、別の設計では、拡散された光のうちの一部は高角度側に移動する。これにより、多くの光が正面視方向に集中することが回避され、斜め方向視においても高輝度の表示画像が視認可能となる。
【0097】
ここで、レンズ部110は、光学的機能が効果的に発揮される面として一対の第1要素側面111,111と、一対の第2要素側面112,112と、を有する。そして、第1要素側面111,111は、第1画素配列方向PD1を向き、第2要素側面112,112は、第2画素配列方向PD2を向く。これにより、レンズ部110による光学的機能は、第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2において効果的に生じる。その結果、表示画像における第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2における表示品質が良好となり、特に第1画素配列方向PD1とフィルム面の法線方向を含む面及び第2画素配列方向PD2とフィルム面の法線方向を含む面における斜め方向視での色味が良好となる。
【0098】
そして、一対の第1要素側面111,111は、第2画素配列方向PD2に沿う軸線を挟んで対称となる。また、一対の第2要素側面112,112は、第1画素配列方向PD1に沿う軸線を挟んで対称となる。そのため、表示画像の光学特性においては、第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2の各軸に関し軸対称性が確保される。
【0099】
また、レンズ部110の配列方向である第1方向D1及び第2方向D2は、第1画素配列方向PD1又は第2画素配列方向PD2に対して傾いている。さらに、本実施の形態では、第1方向D1及び第2方向D2が、第1画素配列方向PD1及び第2画素配列方向PD2と斜めに交差するサブピクセルが並ぶ方向に対しても傾く。これにより、複数のレンズ部110の配列によって形成される格子パターンが、画素150によって形成される格子パターン及びサブピクセル150R,G,Bによって形成される格子パターンに対して傾く。これにより、モアレが効果的に低減される又は目立たなくなる。
【0100】
以上のようにして本実施の形態では、画素150から出射される光を透過させて表示画像を表示する際に、画素配列の基準となる互いに直交する2つの軸のうちの少なくともいずれか(本実施の形態では両方)に関し軸対称性のある光学特性を表示画像において確保しつつ、モアレによる表示画像の視認性の低下を抑制できる。
【0101】
以下、上述の実施の形態の変形例について説明する。
図7乃至
図10には上述実施の形態の変形例が示されている。各変形例における構成要素のうちの上述の実施の形態で説明した構成要素と同一のものには同一の符号が示され、相違点以外の説明は省略する。
【0102】
<変形例>
図7に示す変形例にかかる光学フィルム付き表示装置10’は、有機LEDパネル15と、光学フィルム100と、円偏光板20と、タッチパネル30と、カバーガラス40と、をこの順に積層して構成されている。すなわち、この変形例では、光学フィルム100の位置が上述の実施の形態に対して異なる。なお、上述の実施の形態及び
図7の変形例では、表示パネルが有機LEDパネルであるが、表示パネルは液晶パネルでもよい。なお、
図7に示すレンズ部110は、上述の実施の形態と同様に、左右方向X及び上下方向Yの両方に斜めに交差する第1方向D
1及び第2方向D
2に沿って配列される。
図7は概略の断面図であり、説明の便宜のために、レンズ部110が左右方向Xに並ぶように示されている。しかし、実際上は、本実施の形態におけるレンズ部110は、第1方向D
1及び第2方向D
2に沿って並ぶ。
【0103】
図8に示す変形例では、四角錐台状のレンズ部110の第1要素側面111と第2要素側面112とが形成する四隅に丸みRが付けられている。言い換えると、レンズ部110の側面110Sの稜線に丸みRが付けられている。
図4等で示した実施の形態の変形例として
図8のような形態でも良い。
図8の構成では、第1要素側面111における両端の丸みR間に位置する部分は、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。第2要素側面112における両端の丸みR間に位置する部分は、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。
一方で、
図4及び
図8を参照し、第1要素側面111における両端の丸みR間に位置する部分の法線方向N1,N1はそれぞれ、光学フィルム100の第2辺100Bと平行になる。言い換えると、法線方向N1,N1はそれぞれ、左右方向Xに平行となる。また、平坦面である第1要素側面111における両端の丸みR間に位置する部分は、第1辺100A及び上下方向Yと平行になる。また、第1要素側面111,111は、第2辺100Bが延びる方向で、つまり左右方向Xで向き合っている。さらに、第2要素側面112における両端の丸みR間に位置する部分の法線方向N2,N2はそれぞれ、光学フィルム100の第1辺100Aと平行になる。言い換えると、法線方向N2,N2はそれぞれ、上下方向Yに平行となる。また、平坦面である第2要素側面112における両端の丸みR間に位置する部分は、第2辺100B及び左右方向Xと平行になる。また、第2要素側面112,112は、第1辺100Aが延びる方向で、つまり上下方向Yで向き合っている。
【0104】
図9に示す変形例では、上述の実施の形態におけるレンズ部110に代えて、回折格子からなる光学要素120が採用されている。光学要素120は、第1要素121と、第2要素122とを有する。
図1も参照し、第1要素121は、光学フィルム100のフィルム面の法線方向の一方側又は他方側に凹み且つ光学フィルム100の第1辺100Aと平行な方向に長尺となる複数の溝121gを有する回折格子であって、各溝121gに形成される第1要素側面111,111それぞれの法線方向が、第1方向D
1とフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行となる回折格子を含んでいる。各溝121gにおいては、凹み開始縁と底端との間に側面110Sが形成される。凹み開始縁とは、溝121gが低屈折率層102又は高屈折率層103の最表面に対して凹み始める部分のことを意味する。各溝121gに形成される第1要素側面111,111は、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。
図4及び
図9を参照し、各溝121gに形成される第1要素側面111,111それぞれの法線方向は、光学フィルム100の第2辺100Bと平行になる。言い換えると、これら法線方向はそれぞれ、左右方向Xに平行となる。また、平坦面である第1要素側面111は、第1辺100A及び上下方向Yと平行になる。また、第1要素側面111,111は、第2辺100Bが延びる方向で、つまり左右方向Xで向き合っている。
また、第2要素122は、光学フィルム100のフィルム面の法線方向の一方側又は他方側に凹み且つ第2辺100Bと平行な方向に長尺となる複数の溝122gを有する回折格子であって、各溝122gに形成される第2要素側面112,112それぞれの法線方向が、第1方向D
1とフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行となる回折格子を含んでいる。各溝122gにおいては、凹み開始縁と底端との間に側面110Sが形成される。各溝122gに形成される第2要素側面112,112は、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。
図4及び
図9を参照し、各溝122gに形成される第2要素側面112,112それぞれの法線方向は、光学フィルム100の第1辺100Aと平行になる。言い換えると、これら法線方向はそれぞれ、上下方向Yに平行となる。また、平坦面である第2要素側面112は、第2辺100B及び左右方向Xと平行になる。また、第2要素側面112,112は、第1辺100Aが延びる方向で、つまり上下方向Yで向き合っている。
そして、第1方向D
1及び第2方向D
2のそれぞれで、第1要素121と第2要素122とが混在して配列されている。ここで、第1要素121と第2要素122とは、好ましくは交互に配列される。なお、
図9の変形例においては、第1要素121における第2要素側面112,112それぞれの法線方向は、第1方向D
1とフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行でもよいし、そうでなくもよい。また、第2要素122における第1要素側面111,111それぞれの法線方向も、第1方向D
1とフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行でもよいし、そうでなくもよい。
【0105】
図10の変形例では、レンズ部110に代えて、低屈折率層102に形成される凹部が光学要素110’を形成している。
図10において、(A)は光学要素110’を厚み方向Zで見た図であり、(B)は、
図10(A)のXB-XB線に沿う断面図である。
図10(C)は、高屈折率層103を俯瞰した斜視図である。
図10に示す変形例では、光学要素110’が、変則的なピラミッド形状にて凹んだ凹部で形成されている。当該凹部の凹み開始縁と底端との間に光学要素110’の側面110Sが形成される。側面110Sのうちの第1要素側面111,111は左右方向Xを向き、その法線方向N1,N1は、左右方向Xに平行である。側面110Sのうちの第2要素側面112,112は上下方向Yを向き、その法線方向N2,N2は、上下方向Yに平行である。
第1要素側面111は、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。第2要素側面112は、第1方向D
1と光学フィルム100のフィルム面の法線方向とを含む面及び第2方向D
2とフィルム面の法線方向とを含む面と非平行である。
一方で、
図4及び
図10(A)を参照し、第1要素側面111の法線方向N1,N1はそれぞれ、光学フィルム100の第2辺100Bと平行になる。言い換えると、法線方向N1,N1はそれぞれ、左右方向Xに平行となる。また、平坦面である第1要素側面111は、第1辺100A及び上下方向Yと平行になる。また、第1要素側面111,111は、第2辺100Bが延びる方向で、つまり左右方向Xで向き合っている。さらに、第2要素側面112の法線方向N2,N2はそれぞれ、光学フィルム100の第1辺100Aと平行になる。言い換えると、法線方向N2,N2はそれぞれ、上下方向Yに平行となる。また、平坦面である第2要素側面112は、第2辺100B及び左右方向Xと平行になる。また、第2要素側面112,112は、第1辺100Aが延びる方向で、つまり上下方向Yで向き合っている。
図10(C)に示すように、高屈折率層103には、凹状となる光学要素110’に埋め込まれるピラミッド形状の複数の凸部が設けられる。四角錐となる凸部の4面は、法線N1と一致する法線を有する2つの面と、法線N2と一致する法線を有する2つの面とを有する。
図10(C)には、説明の便宜のために、法線N1,N2をフィルム面に投影させる状態で示している。高屈折率層103の凸部は、第1方向D
1に所定のピッチで配置されるとともに、第2方向D
2に所定のピッチで配置される。図示から明らかなように、高屈折率層103の凸部の法線N1と一致する法線及び法線N2と一致する法線は、第1方向D
1及び第2方向D
2と非平行になる。
この例では、高屈折率層103の凸部における法線N1と一致する法線を有する2つの面のそれぞれの基端側の辺の両端が、法線N1をフィルム面に投影させた場合の法線N1の方向でずれる。そして、隣り合う高屈折率層103の凸部は、互いに向き合わせる基端側の辺を平行にした状態で位置する。これにより、高屈折率層103の凸部は、法線N1をフィルム面に投影させた場合の法線N1の方向とは異なる第1方向D
1に並ぶ。第2方向D
2に並ぶ高屈折率層103の凸部も、方向は異なるが、第1方向D
1に並ぶ凸部と同様の配置態様で並ぶ。
したがって、光学要素110’の第1要素側面111,111は、凹み開始縁側の辺の両端が、法線N1をフィルム面に投影させた場合の法線N1の方向、つまり左右方向Xでずれる。そして、隣り合う光学要素110’は、互いに向き合わせる基端側の辺を平行にした状態で位置する。これにより、光学要素110’は、法線N1をフィルム面に投影させた場合の法線N1の方向、つまり左右方向Xとは異なる第1方向D
1に並ぶ。第2方向D
2に並ぶ光学要素110’も、方向は異なるが、第1方向D
1に並ぶ光学要素110’と同様の配置態様で並ぶ。
【実施例0106】
次に、本開示の実施例1~3及びその比較例1―1~1-3、2-1~2-3について説明する。
【0107】
(寸法・配置等の条件)
本開示の実施例1~3では、以下の表1に示す寸法に従った形状のレンズ部110を有する光学フィルム100を作成した(
図4及び
図5も参照のこと)。そして、表1に示すバイアス角θ1で、各光学フィルム100を有機LEDパネル15の画素150上に重ねた表示装置10を構成した。
【0108】
【0109】
比較例1-1~1-3はそれぞれ、実施例1~3にかかるレンズ部110と同じ寸法のレンズ部を有する光学フィルムを備えるが、レンズ部は、左右方向X及び上下方向Yに平行な格子線からなる格子パターンに沿って配列されている。すなわち、比較例1-1~1-3には、バイアス角が存在しない。
また、比較例2-1~2-3はそれぞれ、実施例1~3にかかるレンズ部110と同じ寸法のレンズ部を有する光学フィルムを備えており、レンズ部は、実施例1~3のレンズ部110の配列方向と同じ方向に配列されるが、4つの側面が左右方向X及び上下方向Yに対して傾いている(バイアス角の方向に平行である)。
また、比較例における有機LEDパネルは、実施例と有機LEDパネル15と同じものである。
【0110】
図11は、実施例と比較例とのレンズ部の配列とサブピクセルの配列とを示した図である。
図11(A)は、実施例1~3のレンズ部110の配列とサブピクセルの配列とを示している。
図11(B)は、比較例1-1~1-3のレンズ部の配列とサブピクセルとの配列とを示している。
図11(C)は、比較例2-1~2-3のレンズ部の配列とサブピクセルの配列とを示している。
【0111】
実施例1~3におけるレンズ部110(低屈折率層102)の材料は、アクリル系紫外線硬化樹脂であり、その屈折率は、1.48である。比較例にかかるレンズ部(低屈折率層)は、実施例と同じ材料で形成されている。
図6Aを参照し、実施例における有機LEDパネル15における第1画素配列方向PD
1における画素150のピッチPP1は、55.5μmであり、第2画素配列方向PD
2における画素150のピッチPP2は、55.5μmである。緑色のサブピクセル150Gの幅Wpは、15.8μmである。なお、この図のようなダイヤモンドペンタイル配列においては、Rのサブピクセルが2個、Bのサブピクセルが2個、Gのサブピクセルが4個で一ユニットとなるが、ここでは、Rのサブピクセルが1個とGのサブピクセルが1個との組、もしくはBのサブピクセルが1個とGのサブピクセルが1個との組を合わせて画素と呼ぶことにしている。
【0112】
(評価方法)
実施例及び比較例の評価を行うにあたり、実施例及び比較例のそれぞれで白画像を表示し、全方位における色座標x、yを測定した。色座標x、yは、CIE1931色空間(CIE xyY色空間)で規定される色座標x,yである。色座標x、yの測定は、トプコン社製・色彩輝度系BM-7を用いて行った。
【0113】
また、正面視と斜め方向から見た場合の色の変化を評価するために、正面視(0度)の色座標x,yと、正面視に対して左右方向Xで右側に45度傾いた方向で見た場合の色座標x,yを特定した。そして、特定した各色座標x,yを、均等色空間の色座標u’、v’に変換した。色座標u’、v’は、それぞれ次の式(1-1),(1-2)から計算した。
【0114】
【0115】
また、正面視方向に出射される光の色に対する45度をなす方向に出射される光の色変化Δu’v’を、各色座標u’、v’から算出した。色変化Δu’v’は色の差を示し、その値が小さい程、正面視方向に出射される光の色と45度における光の色との差が小さいことを示す。視野角中の角度θにおけるΔu’v’の値は、次の式(2)で表わされる
。式(2)におけるθに、0度、45度の値を代入することで、視認角度が45度での色変化を求めることができる。
【0116】
【0117】
また、モアレの強さを評価するために、実施例及び比較例のそれぞれにおいて輝度ムラの数値を計算した。輝度ムラの計算は、上述した第2工程~第6工程に従って計算した。輝度ムラは、その値が小さい程、モアレの低減レベルが大きいことを意味する。
【0118】
また、実施例及び比較例のそれぞれにおいては、全方位で特定した色座標x、yの角度分布に基づいて、上下方向軸及び左右方向軸に関する表示画像の軸対称性を目視で評価した。実施例1~3及び比較例1-1~1-3では、レンズ部の4つの側面が左右方向又は上下方向を向くため、上下方向軸及び左右方向軸に関する表示画像の軸対称性が確保される。一方で、実施例2-1~2-3では、レンズ部の4つの側面が左右方向又は上下方向を向かないため、実施例1~3よりは上下方向軸及び左右方向軸に関する表示画像の軸対称性が確保されない。以下の表2~4における軸対称性の評価結果では、上下方向軸及び左右方向軸に関する表示画像の軸対称性が確保されている場合に「○」が表記され、そうでない場合に「×」が表記されている。
【0119】
実施例1、比較例1-1、及び比較例2-1それぞれの0度・45度での色座標x、y、0度・45度での色座標u’、v’、色変化Δu’v’、及び輝度ムラの値、並びに、光学特性の軸対称性の評価結果が、以下の表2に示されている。
【0120】
【0121】
実施例2、比較例1-2、及び比較例2-2それぞれの0度・45度での色座標x、y、0度・45度での色座標u’、v’、色変化Δu’v’、及び輝度ムラの値、並びに、光学特性の軸対称性の評価結果が、以下の表3に示されている。
【0122】
【0123】
実施例3、比較例1-3、及び比較例2-3それぞれの0度・45度での色座標x、y、0度・45度での色座標u’、v’、色変化Δu’v’、及び輝度ムラの値、並びに、光学特性の軸対称性の評価結果が、以下の表4に示されている。
【0124】
【0125】
実施例1、比較例1-1、及び比較例2-1を対比すると、実施例1の色変化Δu’v’は、比較例1-1及び比較例2-1の色変化Δu’v’と同等で、いずれも光学フィルムのない場合の値0.01617よりも低く抑えられている。実施例1の輝度ムラは、比較例1-1の輝度ムラよりも抑えられている。また、実施例1の輝度ムラは、比較例2-1の輝度ムラと同等である。一方で、実施例1では表示画像の光学特性の軸対称性を確保できるが、比較例2-1では確保できていない。したがって、実施例1は、光学特性の軸対称性を確保しつつ、色変化及びモアレを抑制する場合において、比較例1-1及び比較例2-1よりも有利である。実施例2、比較例1-2、及び比較例2-2の比較、ならびに、実施例3、比較例1-3、及び比較例2-3の比較においても、同様のことが言える。
【0126】
以上のような実施例の評価結果からも、本実施の形態の有効性が確認された。なお、比較例は従来技術を意味するものではなく、必ずしも発明から除外されるものではない。