IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェルディナント-ブラウン-インスティチュート ゲーゲーエムベーハー,ライブニツ-インスティチュート フュル ヘッヒシュトフレーケンツテヒニクの特許一覧

特開2024-56865高周波パワートランジスタと高周波電力増幅器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056865
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】高周波パワートランジスタと高周波電力増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/21 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
H03F3/21
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020005
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2021532411の分割
【原出願日】2019-11-12
(31)【優先権主張番号】102018131040.4
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521246149
【氏名又は名称】フェルディナント-ブラウン-インスティチュート ゲーゲーエムベーハー,ライブニツ-インスティチュート フュル ヘッヒシュトフレーケンツテヒニク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベントソン,オロフ
(72)【発明者】
【氏名】ポール,ゾフィ
(72)【発明者】
【氏名】クレマイヤー,トビアス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より良好に規定可能な挙動を有する高周波パワートランジスタを提供する。
【解決手段】高周波パワートランジスタ1は、トランジスタ2と、少なくとも1つのキャパシタ3と、トランジスタ及びキャパシタを少なくとも部分的に囲むハウジングとを備え、高周波入力用の第1ポート4及びゲートDC電圧供給が、トランジスタのゲート接点5に接続され、第2ポート6が、高周波出力及びドレインDC電圧供給用のトランジスタのドレイン接点に接続し第3ポート9及び第4ポート10を、トランジスタのソース接点8に接続する。第1~第4ポートはすべて同じハウジングから引き出されている。第3ポートはキャパシタを介してソース接点接続され、第4ポートは少なくとも1つの誘導素子11、36を介してソース接点に接続され、その結果、第3ポートは高周波グラウンドを提供し、第4ポートはフローティング低周波グラウンド及びソースDC電圧供給を提供する。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波パワートランジスタ(1)であって、
・トランジスタ(2、18)、
・少なくとも1つのキャパシタ(3、18)、
・前記トランジスタ(2、18)と前記キャパシタ(3、18)を少なくとも部分的に囲むハウジング(12)、
を備え、
高周波入力およびゲートDC電源のための第1ポート(4)が、前記トランジスタ(2、18)のゲート接点(5)と接続され、
第2ポート(6)が、高周波出力およびドレインDC電源のためのトランジスタ(2、18)のドレイン接点(7)に接続され、
第3ポート(9)および第4ポート(10)が、前記トランジスタ(2、18)のソース接点(8)に接続され、
前記第1、第2、第3および第4ポート(4、6、9、10)がすべて、ハウジング(12)から引き出され、
前記第3ポート(9)は前記キャパシタ(3、18)を介して前記ソース接点(8)に接続され、前記第4ポート(10)は少なくとも1つの誘導素子(36、11)を介して前記ソース接点(8)に接続され、これにより、前記第3ポート(9)は高周波グラウンドを提供することができるように構成されるとともに、前記第4ポート(10)はフローティング低周波グラウンドおよびソースDC電源を提供することができるように構成され、
前記誘導素子(36、11)は、1つのボンドワイヤまたは並列に接続された複数のボンドワイヤを含み、
前記ボンドワイヤまたは前記並列に接続された複数のボンドワイヤは、ローパスネットワーク(3.2)を形成し、
前記ボンドワイヤの長さおよび数は、前記ローパスネットワーク(3.2)のインダクタンスを形成するように構成されており、
前記第3ポート(9)における電位と前記第4ポート(10)における電位は互いに異なる、
高周波パワートランジスタ。
【請求項2】
前記キャパシタ(3)が1層キャパシタである、
請求項1記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項3】
前記高周波パワートランジスタ(1)は、前記第3ポート(9)と前記ソース接点(8)との間に、並列に接続された少なくとも2つのキャパシタ(3)を備える、
請求項1または2記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項4】
集積電力回路(18)をさらに備え、
前記トランジスタ(2)と前記キャパシタ(3)は、前記集積電力回路(18)と組み合わされている、
請求項1から3のいずれか1項記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項5】
前記集積電力回路(18)がMMICである、
請求項4記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項6】
前記第3ポート(9)は、互いに対向して配置されている2つの導電性フランジ(16)と接続されている、
請求項1から5のいずれか1項記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項7】
前記第4ポート(10)は、ローパスネットワーク(3.2)を介して前記ソース接点(8)に接続されている、
請求項1から6のいずれか1項記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項8】
前記高周波パワートランジスタ(1)は、少なくとも1つの誘導素子(36、11)を介して前記ソース接点(8)に接続された第5ポート(17)を備え、これにより前記第3ポート(9)は高周波グラウンドを提供し、前記第4ポート(10)および前記第5ポート(17)はともに、フローティングDC&LFグラウンドおよびソースDC電源を提供する、
請求項1から7のいずれか1項記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項9】
互いに対向する2つの対向面を備え、
前記高周波パワートランジスタ(1)の前記2つの対向面の一方の側に第1プリント回路基板(20)が配置されており、
前記高周波パワートランジスタ(1)の前記2つの対向面の他方の側に第2プリント回路基板(21)が配置されている、
請求項1から8のいずれか1項記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項10】
前記第1ポート(4)は、前記第1プリント回路基板(20)の導体パス(22)に接続され、
前記第2ポート(6)および前記第4ポート(10)は、前記第2プリント回路基板(21)の導体パス(23、24)に接続される、
請求項9記載の高周波パワートランジスタ。
【請求項11】
請求項9または10記載の高周波パワートランジスタ(1)を備えた高周波電力増幅器であって、
前記第3ポート(9)は、前記高周波電力増幅器のためのシステムグラウンドを規定する前記高周波電力増幅器のヒートシンク(25)に接続されている、
高周波電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波パワートランジスタに関し、特に本発明は、パワートランジスタハウジング内部の高周波と直流または低周波グラウンドとの分離に関する。浮遊グラウンドを持つ高周波(HF)パワートランジスタの動作は、HFバイパスキャパシタをトランジスタハウジングに挿入することにより可能となる。このキャパシタは、直流(英語ではdirect current、ドイツ語ではGleichstrom)および低周波(LF)グラウンドからのHFグラウンドの分離を生じさせる。HFバイパスキャパシタをハウジング内に配置し、トランジスタにできるだけ近づけることにより、トランジスタのソースコンタクトとシステムグラウンドとの間のHFパスの誘導性を低減できる。これにより、効率、DC&LF/HF絶縁を改善し、したがってLF帯域幅と安定性も改善される。ハウジング上の分離したDCおよびLFポートは高LF帯域幅(英語ではvideo bandwidth)でのフローティング動作を可能にし、約10MHzの達成可能な帯域幅は、数百MHzに増加される。
【背景技術】
【0002】
高周波(HF)電力増幅器は、無線通信システムにおいて重要な構成要素であることが知られている。この電力増幅器は、HF信号を特定の距離にわたる伝送において必要な電力レベルに増幅する。高いデータレートまたは大きな帯域幅のデータ伝送を可能にするために、複雑な変調方式がHF信号に対して適用され、これが信号電力の変化をもたらす。
【0003】
HF電力増幅器に関しては、エネルギー消費とエネルギー節約が重要な側面であるという事実を踏まえれば、HF電力増幅器をエネルギー効率の良いモードで動作させることが重要である。線形HF電力増幅器においては、効率は最大電力範囲で最も高く、低減した出力電力、すなわち電力バックオフの間、では次第に減少する。
【0004】
電力バックオフ中にHF電力増幅器効率を増加させる1つのアプローチとしては、包絡線追跡技術(英語:envelope tracking technique、ET technique)が挙げられる。同技術においては、HF電力増幅器の供給電圧は変調HF信号の瞬時電力に応じて調整される。結果として、ET技術は、HF電力増幅器の電力消費を低減し、したがって電力損失を低減する。
【0005】
現代の通信信号の多大な帯域幅は、非常に高速な包絡線増幅器を必要とする。すなわち、DCコンバータは、HF信号における電力の瞬間的変化に対応する電圧をHF電力増幅器に供給することができる。このような高速DCコンバータはすべて、1種のスイッチングステージを有する。
【0006】
最も単純な形式においては、DCコンバータは負荷に給電するダウンコンバータとすることができ、ET技術を使用するETシステムにおいてはHF電力増幅器である。このトポロジーにおいては、HF電力増幅器はグラウンドに接続されている。つまり、ダウンコンバータはETシステムの電源電圧の方向に動作し、HF電力増幅器はフローティングダウンコンバータ出力から電力を供給される。これには、p-チャンネル電界効果トランジスタまたは絶縁されたスイッチドライバを備えたn-チャンネル電界効果トランジスタのいずれかが必要である。
【0007】
新規な超高速化合物半導体は、寄生容量が低いので、スイッチング用途に非常に適しているが、n型材料のみが、高出力およびスイッチング速度で入手可能である。このようなnチャネル電界効果トランジスタを持つダウンコンバータは、スイッチング周波数と負荷容量に関して非常に有望なトポロジである。しかし、前述の絶縁ゲートスイッチは実装が複雑であり、スイッチング挙動に影響する寄生容量をもたらし、全体のETシステム特性に大きな影響を及ぼす。
【0008】
これを防止するために、WO2014/170710 A1は反転ダウンコンバータによる包絡線追跡システムを提案している。提案しているトポロジーは、HF電力増幅器トランジスタの低周波(LF)ソース電位を変化させることにより、HF電力増幅器の供給電圧を、システムグラウンドとHFグラウンドをともに保ちながら修正するという意味で、通常のものとは異なっている。結果として、HF電力増幅器は、DC電圧供給に関して、またはこの場合はLFソース電位に関して、フローティングである。反転ダウンコンバータを利用するこのようなETシステムにおいては、HF電力増幅器はダウンコンバータの負荷を有するが、ETシステムの供給電圧とダウンコンバータの出力との間の電圧降下からフローティンググラウンドが供給される。
【0009】
その他の従来のパワートランジスタは、US6,593,797B1、US6,734,728B1、US2018/0262170A2、およびUS5,841,184Aに開示されている。
【0010】
図1A図1Bおよび図1Cに示すように、10W以上の電力を供給し、そのような電力増幅器のコア要素を構成するHFパワートランジスタは、典型的にはそれぞれのハウジングに組み込まれた別個の構成要素として使用される。図1Aおよび図1Cに示す高周波パワートランジスタハウジングは、高い電気伝導率および熱伝導率を有するフランジと、その上に配置される電気絶縁フレームとを備え、これらのフレームはその上に配置される2つの電気接続部をフランジから絶縁し、さらにハウジングの内容物を保護する電気絶縁カバーを備える。ハウジングに収容されるトランジスタ(追加で必要な部品とともに)は、電気絶縁フレーム内側のフランジ上に配置される。図1Cに示す収容トランジスタ(電界効果(FET)トランジスタまたはバイポーラ(BJT)トランジスタのいずれかとすることができる)においては、入力ポートをFETのゲート接点(またはBJTのベース接点)に、FETのドレイン接点(またはBJTのエミッタ接点)を出力ポートに、ならびにFETのソース接点(またはBJTのコレクタ接点)をシステムグラウンドに接続するために、ボンドワイヤが使用される。図示のトランジスタチップはビアを有さないトランジスタを含むので、導電性ボンドベースはトランジスタの近くに配置され、それらはパワートランジスタハウジングのフランジを介して、システムグラウンドと直接接続される。図1Dに示すように、図1A図1B、および図1Cの収納型トランジスタは、入力ポートをFETのゲート接点(またはBJTのベース接点)に接続する入力整合ネットワーク、および/またはFETのドレイン接点(またはBJTのエミッタ接点)を出力ポートに接続する出力ネットワークを備えることができる。
【0011】
図2Aに示すように、収納型トランジスタは、通常、プリント回路基板に内蔵される。また、このプリント基板上には整合回路網とDC&LF/HFダイプレクサがあり、トランジスタの出力ポートとHF出力を接続している。DC&LF電源は、DC&LF電源ラインを介して、上記ダイプレクサと接続され、したがって、出力整合回路網とトランジスタの出力ポートと接続される。プリント回路基板上の回路のこの2重機能は、キャリア周波数において目標とするインピーダンス整合を生じさせ、同時に、トランジスタに対してDC供給電圧を供給するための経路を提供する。また、回路はDC&LF電源とHF 出力を分離し、供給経路におけるHF信号の結合を抑制する必要がある。
【0012】
一般的なHFパワートランジスタのフローティング動作を有効にするためには、HFグラウンドをトランジスタハウジング外部のDC&LFグラウンドから分離する必要がある。これは、図2Bに示すように、プリント基板上の回路にDC&LF/HFダイプレクサを追加導入することによって行うことができる。次に、トランジスタのグラウンド接続すなわちフランジは、HFバイパスネットワークを介してシステムグラウンドに接続され、DC&LFローパスネットワークを介してフローティングDC&LFポートに接続される。トランジスタのゲートはフローティング動作の目的のために、ガルバニック分離された電源を介して作動させなければならない。
【0013】
グラウンド分離に関連するトランジスタとスイッチング部品との間の距離は、追加のライン長が追加のインダクタンスおよび電気的遅延を発生させるので、この可能な構成に対する欠点である。このように、HFバイパス用のプリント基板に必要なキャパシタと組み合わせると、LF帯域幅が制限される。
【0014】
あるいは、ビアをもたずハウジングをもたない単なる高周波パワートランジスタのフローティング動作は、ハイブリッド構造で実現することができる。このハイブリッド構造においては、HFまたはDC&LF間のグラウンド分離がフランジ上のトランジスタチップのすぐ隣に配置されたボンディング可能なバイパスキャパシタによって生成され、その上部電極はトランジスタのソース接点とボンドワイヤによって接続され、その下部電極はフランジに直接接触される。さらに、トランジスタのソース接点は、ボンドワイヤを介して、DC&LF低域通過ネットワークと、それに伴う周囲のプリント回路基板上のフローティンググラウンドとに接続される。トランジスタのゲートおよびドレイン接点は、周囲のプリント回路基板上の入力および出力ネットワークとボンドワイヤを介して同様に接続され、これは典型的なHFパワートランジスタハウジング内の入力ポートおよび出力ポートへのボンディングに対応する。
【0015】
公知の解決策は、以下の問題を有する:
【0016】
(1)フローティングトランジスタと周囲のネットワークとの間には、正確に規定されたインターフェースは存在しない。これは以下を意味する:
a.フローティングトランジスタの電力と安定性をボンディング可能なキャパシタとともに正しく特性測定することは不可能である。
b.シミュレーションのために、トランジスタの個々のセルについて以外のHFモデルを抽出することはできない。
c.HF電力増幅器の挙動、すなわち全体的なETシステムの予測可能性は良くない。
【0017】
(2)単なるトランジスタチップとボンディング可能なキャパシタを持つ回路の機械的構造は非常に複雑であり、組み立てられた回路は機械的損傷から保護されていない。これは以下を意味する:
a.単純かつ迅速な設計は、機械的な観点からは不可能である。
b.トランジスタチップとキャパシタを接着した高周波電力増幅器は機械的損傷を受けやすい。同時に、トランジスタに与えられた機械的または電気的損傷の修理を行うことは難しく、ほんの少しの修理しかできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
目的は、上述した短所の少なくとも一部を克服した高周波パワートランジスタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明によれば、高周波パワートランジスタであって、
・キャパシタ、
・少なくとも1つのキャパシタ、
・前記トランジスタおよび前記キャパシタを少なくとも部分的に取り囲むハウジングであって、高周波入力用の第1ポートと、ゲートDC電源とが前記トランジスタのゲート接点に接続される、ハウジング、
を備え、
第2ポートが高周波出力用の前記トランジスタのドレイン接点とドレインDC電源に接続され、
第3ポートおよび第4ポートが前記トランジスタのソース接点に接続され、
前記第1、第2、第3および第4ポートが前記ハウジングの外に引き出されており、
前記第3ポートが前記キャパシタを介して前記ソース接点に接続され、前記第4ポートが少なくとも1つの誘導素子を介して前記ソース接点に接続されることにより、前記第3ポートが高周波グラウンドを提供し、前記第4ポートがフローティングDC&LFグラウンドおよびソース電源を提供する、
高周波パワートランジスタが導入される。
【0020】
低周波(LF)は通常、30kHzから300kHzの長波放射として理解される。LFは、ここではDC(0Hz)~数百メガヘルツ、より好ましくは400MHzまでの周波数範囲の変調周波数(MF)またはベースバンドの放射を含む一般的な名称として理解されるべきである。高周波(HF)は通常、3MHz~30MHzの短波放射として理解される。ここで、HFは、500MHz~数GHz、より好ましくは5GHz、さらにより好ましくは10GHzの範囲の放射線を含む一般的な名称として理解されるべきである。LF上限はHF搬送波周波数に依存し、提案された解決策ではHF搬送波周波数の20%までに達することができ、より好ましくはHF搬送波周波数の40%までに達することができる。LFとHFとの間の上記比率を考慮すると、好ましくは4GHzのLFが、10GHzの好ましいHFで達成され得る。
【0021】
トランジスタのソース接点とキャパシタとの間の抵抗は、好ましくは1オーム未満であり、より好ましくは0.5オーム未満であり、さらに好ましくは10mオーム未満である。
【0022】
トランジスタのソース接点とシステムグラウンドとの間のインダクタンスは、好ましくは0.8nH未満、より好ましくは0.1nH未満、さらにより好ましくは10pH未満である。
【0023】
浮遊グラウンドは、好ましくは接地電位を基準としない、装置内部のグラウンドである。
【0024】
ガルバニック分離(また、ガルバニックデカップリング)は、好ましくは、電力または信号が交換される2つの電力回路間の電気ラインを回避するものとして理解される。電気ラインは、ここでは電気的に非導電性の結合要素を介して切断される。ガルバニック分離では、電気ポテンシャルは互いに分離され、これにより、電力回路は互いに浮いている。
【0025】
バイパス回路網は、好ましくは1つまたはいくつかのバイパスキャパシタとして理解される。バイパスキャパシタは、リードキャパシタ、短絡キャパシタ、またはバイパスキャパシタとも呼ばれる。一般的には、特定の信号または干渉信号のためのバイパスまたは転用ルートを提供することを目的としたキャパシタが含まれる。
【0026】
デュプレクサは、好ましくは3つのゲートを有する高周波技術の領域における電気的パッシブ部品である。これは、周波数の関数として、2つのゲート間でガイドされた電磁波を分離するか、逆動作方向に1つのゲート上でそれらを組み合わせる役割を果たす。ダイプレクサは、クロスオーバのための特別な設計を構成する。
【0027】
ローパスネットワークは、好ましくは1つまたはいくつかのローパスフィルタとして理解される。ローパスフィルタとは、特定の周波数レベルまでの周波数のみを通過許可するフィルタである。許可周波数よりも高い周波数においては、ブロッキングフィルタとなる。
【0028】
整合ネットワークは、好ましくは高周波信号用のソースと消費部品との間のインピーダンスを調整するための回路として理解される。これは、電源と消費部品との間の電力伝達を最適化する。
【0029】
λ/4ラインは、好ましくは共面ラインまたはマイクロストリップラインの形態の電磁波をガイドするための伝送線路であり、その長さは、伝送される電磁波の波長の4分の1であり、したがって、HF短絡のHF開路への変換を誘起し、その逆も同様である。
【0030】
高周波パワートランジスタハウジングは、好ましくは高い電気および熱コンダクタンスを有するフランジと、その上に配置され、フランジから順番に配置される2つの電気ポートを絶縁する電気絶縁フレームと、ハウジングの内容物を保護する電気絶縁カバーとを備える。
【0031】
したがって提案するHFパワートランジスタは、低周波と高周波のグラウンドを分離し、これにより、フローティング低周波グラウンドを持つ容易に予測可能なHF電力増幅器設計を可能にする。従来において収容されているHFパワートランジスタは3つのポート、すなわち、(1)HF入力信号およびDCゲート電源用のポート、(2)HF出力信号およびDCドレイン電源用のポート、またはETシステムにおけるNF列電源用のポート、(3)共有グラウンド用のポート、を有する。
【0032】
本発明によるフローティンググラウンドを有するパワートランジスタは、4つ以上のポートを有する。HF入力信号およびDC電圧ゲート供給、ならびに、HF出力信号およびDC電流ドレイン電源のためのポートは、従来の収容されているHFパワートランジスタの場合と同じである。
【0033】
本発明によるHFパワートランジスタの違いは、HFおよびDC&LFの従来の共用グラウンドのためのポートが現在ではHFグラウンドとしてのみ機能するという事実にある。フローティングDC&LFグラウンドのためのポートは、少なくとも1つの追加のポート(少なくとも第4ポート)によって実現される。このため、ハウジングから引き出される少なくとも4つのポートが必要である。
【0034】
例えば、本発明によるフローティングLFグラウンドを有するHFパワートランジスタにおいては、LFおよびHFグラウンドは十分な直列共振周波数を有するキャパシタを介してHF信号をシステムグラウンドに結合することによって分離され、これにより好ましくはHF短絡回路およびDC&LF開回路を提供する。HF短絡回路の帯域幅は、主にキャパシタの品質係数に依存する
【0035】
トランジスタは、(ボンディング可能である)単一または複数のキャパシタと並列にハウジング内に設置される。この解決策は、ハウジングがトランジスタとキャパシタの両方を収容するのに十分な大きさであり、例えば誘導素子に相当する接続ボンドワイヤの寄生インダクタンスのような境界を構成するほど大きすぎない限り、実行可能である。特に、トランジスタのソース接点とキャパシタとの間の任意の使用されるボンドワイヤは、HF短絡回路に対して重大な影響を及ぼす。
【0036】
本発明によるパワートランジスタは以下を可能にする:
(1)固定インターフェース、すなわちハウジングから引き出した少なくとも4つのポート上の、収容され(すなわちハウジングで囲まれた)グラウンド分離されたHFパワートランジスタの個別の特性識別およびモデル化;
(2)本発明によるHFパワートランジスタを、LFグラウンドのための少なくとも1つの追加ポートのみを有する従来の収納型HFパワートランジスタとして使用することによる、単純かつ迅速なHF電力器設計。これは組み立てに必要とされる特別な装置および知識を必要としない;
(3)ハウジングの一部としてのカバーによる機械的損傷に対する保護;
(4)ハウジングされた損傷トランジスタを新しいトランジスタに簡単に置き換えることにより、損傷トランジスタを有するHF電力増幅器を簡単かつ迅速に修理すること。
【0037】
パワートランジスタハウジングは、好ましくは高い電気的および熱的コンダクタンスを有するフランジ、好ましくはその上に配置される電気的絶縁フレーム(好ましくはその上に配置される2つの電気ポートをフランジから絶縁する)、および好ましくはハウジングの内容物を保護する電気的絶縁カバーを備える。
【0038】
ポートに関する「ハウジングから引き出す」という特徴は、少なくとも4つのポートのそれぞれについて、外部ポートまたはグラウンドとの電気的接続が可能であることを意味すると解釈されなければならない。
【0039】
本出願の枠組み内においては、トランジスタという用語それ自体は、本発明に係るパワートランジスタにおける単一のスイッチング素子としてのトランジスタのみに関するものである。後者は例えば、キャパシタおよびハウジングをも含む。本出願の枠組みの中で、用語「キャパシタ」は、広く解釈され、その機能性を想定する別のスイッチング素子を表すこともできる。
【0040】
好ましい実施形態において、誘導素子は、並列に接続された単一または複数のボンドワイヤを含む。誘導素子は、好ましくは複数のボンドワイヤを含む。ボンドワイヤの長さおよび数は、トランジスタと、接続される素子またはポートとの間でブリッジされる距離および必要な通電容量に依存し、誘導性素子の所望のインダクタンスに応じて変化させることもできる。
【0041】
別の好ましい実施形態において、キャパシタは単層キャパシタである。トランジスタのソース接点上のDC&LF/HF周波数分離は、対応するキャパシタンスおよび直列共振周波数を有する少なくとも1つの、好ましくは接合可能な単層キャパシタによって達成される。キャパシタは好ましくはトランジスタのソース接点にできるだけ近接して接着され、これにより、システムグラウンドに対してHF短絡回路が提供される。
【0042】
高周波パワートランジスタは、第3ポートとソース接点との間に並列に接続された少なくとも2つのキャパシタを含むことが好ましい。
【0043】
トランジスタとキャパシタは、集積電力回路に結合されることが好ましく、より好ましくはMMIC(英語:モノリシックマイクロ波集積回路、ドイツ語:モノリシック集積Mikrowellenschaltung)に結合されることが好ましい。MMICは、高周波技術における集積電力回路の特別なクラスである。ここで、全ての能動および受動素子は、半導体基板(好ましくは50μm~350μmの厚さ)上に実現される。小型化により、ミリ波の範囲まで回路が可能になる。そして、トランジスタとキャパシタは、HFグランド(特にシステムグランド)へ接続され、両方とも同じ集積電力回路(MMIC)の内部で実現される。したがって、MMICは機能的にはトランジスタとキャパシタとを含み、少なくとも部分的には、ハウジングによって囲まれている。この場合、誘導素子(特にボンドワイヤ)もMMICを少なくとも第4ポートと接続するために使用されるが、HF短絡回路の特性はMMIC構造(キャパシタの機能を想定するか、または含む)によって決定され、したがって、ハウジング内のアセンブリには依存しない。
【0044】
別の好ましい実施形態において、第3ポートが少なくとも1つの導電性フランジと接続され、好ましくは対向して配置された2つの導電性フランジと接続される。これにより、システムグラウンドとの接続が容易になる(たとえば、接触式熱交換器を介して)。
【0045】
高周波パワートランジスタは、少なくとも1つの誘導素子によってソース接点と接続される第5ポートを備えることが好ましく、これにより第3ポートが高周波グラウンドを提供し、第4ポートと第5ポートが一緒になってフローティング低周波グラウンドおよびソースDC電源を提供する。
【0046】
上述のタスクは、上記実施形態のうちの1つに係る高周波パワートランジスタと、高周波パワートランジスタの対向する側面に配置された2枚のプリント回路基板とによっても解決される。
【0047】
第1ポートは好ましくは第1プリント回路基板の導体パスに接続され、第2ポート、第4ポート、および場合によっては第5ポートは第2プリント回路基板の導体パスに接続される。プリント回路基板の導体パスは、第1、第2、第4、および場合によっては第5ポート(またはそれ以上)のための外部接続を提供する。プリント回路基板は好ましくは入力整合ネットワークを提供し、第2回路基板は出力整合ネットワークを提供する。
【0048】
別の実施形態において、共通のプリント回路基板は、好ましくは入力整合ネットワークおよび出力整合ネットワークを備える。
【0049】
第3ポートは、好ましくは少なくとも1つのフランジによって、高周波電力増幅器のヒートシンクに接続されることが好ましく、これは高周波電力増幅器のためのシステムグランドを規定する。これにより、システムグラウンドを介してHFグラウンドを定義することと、パワートランジスタの機械的および熱的接続をシステムに提供することの両方が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
上述の本発明の特性、特徴、および利点は、それらが達成される方法とともに、図面に関連してより詳細に説明される例示的な実施形態の以下の説明によって、より明確かつ明確に理解可能になるであろう。
【0051】
図1A】従来のカバー付き収納型高周波パワートランジスタの上面図である。
図1B】従来技術で知られている収納型HFパワートランジスタのブロック図である。
図1C】トランジスタチップ、導電性ボンドベース、およびボンドワイヤを収容した、カバーなしの従来の収容型HFパワートランジスタの上面図である。
図1D】ハウジング内部に入出力整合回路網を備えた従来の収納型HFパワートランジスタのブロック図である。
図2A】従来技術による、図1Bの収納型HFパワートランジスタのブロック図であり、プリント回路板と接続されている。整合回路ネットワーク、ならびに接続された電源回路網を有するDC&NF/HFダイプレクサを含む。
図2B】従来技術による、1BからのハウジングされたHFパワートランジスタのブロック図であり、プリント基板と接続されている。整合回路ネットワーク、トランジスタドレイン供給のための接続された電源回路網を有するDC&NF/HFダイプレクサ、ならびにフローティング動作に必要な他の回路部品を含む。
図3A】システムグラウンドへの内部HFバイパスネットワークを備えた本発明に係る収納型HFパワートランジスタの1実施形態のブロック図である。
図3B】本発明に係るHFパワートランジスタの別の実施形態のブロック図である。システムグラウンドへの内部HFバイパスネットワーク、ならびに集積入出力整合ネットワークを備える。
図4A】本発明による収納型HFパワートランジスタの他の実施形態のブロック図である。システムグラウンドへの内部HFバイパスネットワークおよびDC&LFグラウンドポートへの内部DC&LF低域通過ネットワークを備える。
図4B】本発明に係る収容型HFパワートランジスタの別の実施形態のブロック図である。システムグラウンドへの内部HFバイパス回路網およびDC&LFグラウンドポートへの内部DC&LF低域通過回路網、ならびに集積型入出力整合回路網を有する。
図5A】本発明に係るHFパワートランジスタの1実施形態の物理的等価回路図である。
図5B図5Aの発明に係るHFパワートランジスタの実施形態の電気的等価回路図である。
図5C】1つのDC&LFグランドポートを備えた本発明に係る収納型HFパワートランジスタの実現例である。
図5D】2つのDC&LFグランドポートを備えた本発明に係る収納型HFパワートランジスタの実現例である。
図6A】内部入出力整合回路網を備えた本発明による高周波パワートランジスタの別実施形態の物理的等価回路図である。
図6B図6Aの内部入出力整合回路網を備えた本発明による高周波パワートランジスタの別実施形態の電気的等価回路図である。
図7A】システムグランドへのHFバイパスネットワークをトランジスタと同じチップ上に実現した本発明のHFパワートランジスタの別実施形態の物理的等価回路図である。
図7B図7AのシステムグランドへのHFバイパスネットワークをトランジスタと同じチップ上に実現した本発明のHFパワートランジスタの別実施形態の電気的等価回路図である。
図7C】DC&LFグランドポートを備えた本発明に係る収納型HFパワートランジスタの実現例である。
図8図5Cに係る本発明のHFパワートランジスタの1実施形態である。周囲のプリント回路基板を備える。
図8A】本発明に係るHFパワートランジスタの別実施形態の物理的等価回路図である。内部入出力整合回路網を備える。システムグラウンドへのHFバイパスネットワークは、トランジスタと同じチップ上に実装されている。
図8B図8Aの、システムグラウンドへのHFバイパスネットワークがトランジスタと同じチップ上に実現された、内部入出力整合ネットワークを備えた本発明によるHFパワートランジスタの別実施形態の電気的等価回路図である。
図9A】システムグランドへのHFバイパスネットワークとDC&LFポートへのDC&LFローパスネットワークをトランジスタと同じチップ上に実現した、本発明のHFパワートランジスタの別実施形態の物理的等価回路図である。
図9B図9Aの、システムグラウンドへのHFバイパスネットワークとDC&LFポートへのDC&LFローパスネットワークとがトランジスタと同じチップ上に実現される、本発明のHFパワートランジスタの別実施形態の電気的等価回路図である。
図9C】システムグラウンドへのHFバイパスネットワークとDC&LFポートへの短絡λ/4ラインとがトランジスタと同じチップ上に実現された、本発明によるHFパワートランジスタの別実施形態の電気的等価回路図である。
図10図4Aの本発明によるフローティング収納型HFパワートランジスタの1実施形態のブロック図である。プリント回路基板と接続され、このプリント回路基板は、整合回路網、ならびに接続された電源ネットワークを有するトランジスタドレイン電源用のDC&LF/HFダイプレクサ、ならびにフローティング動作に必要なトランジスタのガルバニック分離されたゲート電源用の追加の外部回路を含む。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図3Aおよび図3Bは、整合ネットワーク27、28を有しまたは有さず、システムグラウンドへのHFバイパスネットワーク3.1を有しまたは有さない、HFパワートランジスタ1の2つの発明実施形態のブロック図を示す。両方の図において同じ符号を有する機能ブロックは同様である。HFパワートランジスタ1は、図3Aおよび3B上のハウジング12内に取り付けられている。電界効果トランジスタ2(FET)が両方の図に描かれている。しかし、すでに述べたように、代わりにバイポーラトランジスタ(BJT)を使用することもできる。さらに、1つのトランジスタ2ではなく、幾つかのトランジスタをハウジング12内に取り付けて並列に接続することができる。従来技術によれば、FETのゲート接点5は直接に、または入力整合回路網27を介して、入力ポート4に接続される。同様に、従来技術によれば、FET2のドレイン接点7は直接に、または出力整合回路網28を介して、出力ポート6に接続される。先行技術とは反対に、FET2のソース接点8は、システムグラウンド26と直接接続されない。代わりに、HFバイパスネットワーク3.1を介して、HFグラウンド9、26を表すシステムグラウンド26に接続され、追加の接続を介してDC&LFグラウンドポート10と接続される。両方の実施例において、高周波バイパスネットワーク3.1は、システムグランド26に接続されたキャパシタ3によって実現される。DC&LFグラウンドポート10との接続は、ワイヤボンドによって実現される。DC&LF/HFダイプレクサ30の機能は、プリント回路基板上に配置されたDC&LFローパスネットワーク3.2によって実現される。従来技術に対応する図2B上のフローティング動作のための回路においては、HFバイパスネットワーク3.1がトランジスタハウジング12の外部のプリント回路基板29上に配置され、その結果、実際のトランジスタ2との一定の距離が生じる。すでに述べたように、ハウジング12内部のHFグラウンド接続9、26はHFパワートランジスタ1の設計を容易にし、HFバイパスネットワーク3.1の帯域幅を増加させ、したがって、広帯域信号のためのトランジスタ回路の線形性も増加させる。
【0053】
図4Aおよび図4Bのブロック図は、トランジスタ2のHF絶縁およびLF帯域幅を改善するためにFET2のソース接点8とDC&LFグラウンドポート10、26.1との間に挿入される追加のDCおよびLF低域通過回路網3.2を除いて、図3Aおよび図3Bのブロック図と同様である。その結果、DC&LF/HFダイプレクサ30の機能性は、トランジスタハウジング12の完全に内部で実現される。
【0054】
図5Aおよび図5Bは、図3Aに示されたHFパワートランジスタ1の実施形態の物理的および電気的等価回路図であり、電気的接続は、図5Aに示されたボンドワイヤ36、13、14、15によって確立され、図5Bに示されたインダクタンスをさらに含む。図3Aに示されているHFバイパスネットワーク3.1は、5Aおよび5Bに示されているキャパシタ3によって形成されており、このキャパシタは、ディスクリートで接合可能な1層または積層キャパシタを表している。キャパシタ3の代わりに、ハウジング12内に隣り合って配置され並列接続された数個のキャパシタを使用することもできる。図5Aに示されるHFバイパスネットワーク3.1の発明の実施形態は、システムグラウンド26への短絡キャパシタ3によって形成され、HFキャリア周波数で最適な特性を有し、トランジスタ2およびDC&LFグラウンドポート10とボンドワイヤ15、11によって接続される。結果として導入されるインダクタンス15、11のサイズは、ダイプレクサ30のHF絶縁およびLF帯域幅に寄与する。小さなインダクタンス15、11と短絡キャパシタ3は、システムグラウンド26への最適なHFバイパス3.1を構成する。本発明によるHFパワートランジスタの別実施形態は図4Aに示されるように、DC&LF/HFダイプレクサ30の全機能がトランジスタハウジング12内に組み込まれ、HFバイパスネットワーク3.1は変わらないが、ソース接点8と接続されるキャパシタ3の上部電極との間に付加的なインダクタンス36、11が残り、DC&LFグラウンド接続10がハウジング12内に挿入される。このインダクタンス36、11は、インダクタンス15、11とともに良好なHF絶縁およびLF帯域幅を実現するために、対応するサイズを有していなければならない。本発明によれば、この付加的なインダクタンス36、11は、ボンドワイヤの数を増やすか、離散コイルを挿入するかのいずれかによって実現することができる。
【0055】
図5Cは、本発明によるHFパワートランジスタ1の第1実施形態を示す。HFパワートランジスタハウジング12は図1A-Cに示されたものと同様であり、高い電気伝導率および熱伝導率を有するフランジ16と、その上に取り付けられたハウジング12のセラミックフレームとを備え、このセラミックフレームは、フランジ16から順番に取り付けられた3つの電気ポート4、6、10を絶縁する。ハウジング12内に収容されたトランジスタ2は、ハウジング12のセラミックフレーム内側のフランジ16上の接合可能な1層キャパシタ3とともに配置される。ボンドワイヤ13は、入力ポート4をFET2のゲート接点5(またはBJTのベース接点)に、FET2のドレイン接点7(またはBJTのエミッタ接点)をキャパシタ3の上部電極に、さらにDCおよびLFグラウンドポート10に接続するために使用される。図示されているトランジスタチップはビアのないトランジスタを含み、その結果、DC&LF/HFグラウンドからの分離を達成することができる。ハウジング12の内容物を保護するために、図1Aに示す種類のセラミックカバー12.1を任意に使用することができる。
【0056】
図5Dは、本発明によるHFパワートランジスタ1の第2実施形態を示しており、これは図5Cのものと同様であり、その違いは図5Cに示される1つのDC&LFグラウンドポート10の代わりに2つのDC&LFグラウンドポート10を含み、したがって、キャパシタ3の上側電極を第2DC&LFグラウンドポート10と接続する、追加のボンドワイヤ36も含んでいることである。
【0057】
図6Aおよび図6Bは、集積整合回路網27、28を有する図3Bに示される本発明によるHFパワートランジスタ1の実施形態の物理的または電気的等価回路図である。ボンドワイヤ36、13、14、15は誘導素子として使用され、個別の1つまたは多層キャパシタ3は容量素子として使用される。HFパワートランジスタ1に関して、整合ネットワーク27、28は、入力側および/または出力側に実装することができる。図3Bに示す入力整合回路網27は、図6Aでは個別の1層または多層短絡キャパシタ3で実現されており、このキャパシタは、ワイヤボンドによって、入力ポート4とトランジスタ2のゲート接点5との両方に接続されている。1つのキャパシタ3の代わりに、並列に接続された複数のキャパシタ3を用いることもできる。図6Aに示す入力整合回路網27は、誘導性および/または容量性素子の形態の追加の段によって拡張することができる。図3Bに示す出力整合回路網28は、図6Aではトランジスタ2のドレイン接点7と出力ポート6との両方にワイヤボンドによって接続された個別の1層または多層短絡キャパシタ3によって実現されている。1つのキャパシタ3の代わりに、並列に接続された複数のキャパシタ3を用いることもできる。図6Aに示されている出力整合ネットワーク28は、誘導性および/または容量性要素の形態で数段階拡大することができる。図3Bに示すHFバイパスネットワーク3.1は、図6A上において、HFキャリア周波数で最適な特性を有する1層または積層キャパシタ3で実現されている。キャパシタ3の上部電極は、ボンドワイヤ15によってトランジスタ2のソース接点8と接続される。キャパシタ3の下部電極はトランジスタハウジング12のフランジ16に直接接続されており、これはシステムまたはHFグランド9、26を構成している。典型的な実施形態では、インダクタンス36および15は、電気接続に使用されるボンドワイヤ36、15のインダクタンスを構成する。同時に、それらのサイズは、ダイプレクサ30のHF絶縁およびLF帯域幅に寄与する。小さなインダクタンス15と短絡キャパシタ3は、システムグラウンド26への最適なHFバイパス3.1を構成する。本発明によるHFパワートランジスタの別実施形態において、図4Bに示されるように、DC&LF/HFダイプレクサ30の全機能がトランジスタハウジング12内に組み込まれ、HFバイパスネットワーク3.1は変わらないが、ソース接点8と接続されるキャパシタ2の上部電極との間に付加的なインダクタンス36、11が残り、DC&LFグラウンド接続10がハウジング12内に挿入される。このインダクタンス36、11はインダクタンス15、11とともに良好なHF絶縁およびLF帯域幅を実現するために、対応するサイズを有していなければならない。本発明によれば、この付加的なインダクタンス36、11は、ボンドワイヤの数を増やすか、離散コイルを挿入するかのいずれかによって実現することができる。
【0058】
図7Aおよび7Bは、図3Aに基づく本発明によるHFパワートランジスタ1のさらなる実施形態の物理的または電気的等価回路図である。図5Aおよび5Bのものと同様であるが、HFバイパスキャパシタ3.1がトランジスタ2と同じチップ18上の金属絶縁体金属(MIM)キャパシタ3として実現される。これにより、HFバイパスネットワーク3.1の誘導成分が最小化され、HF絶縁とLF帯域幅がさらに改善される。
【0059】
図7Cは、図7Aおよび図7Bに係る発明による高周波パワートランジスタ1の第3実施形態を示しており、図5Cと同様である。その違いは、図7Aおよび図7Bに係るMIMキャパシタを集積したトランジスタが、別個のキャパシタ3を有するトランジスタチップの代わりに、ハウジング12内に配置されていることである。結果として、必要なボンドワイヤの数は、図5Cに比べて減少する。
【0060】
図8は、図5Cの実施形態に係るHFパワートランジスタ1の実施形態と、高周波パワートランジスタ1の対向する側面に配置された2枚のプリント基板20,21とを示す。第1ポート4は、第1プリント回路基板20の導体パス22に接続されている。第2ポート6および第4ポート10(および場合によっては第5ポート17、ここでは図示せず)は、第2プリント回路基板21の対応する導体パス23、24に接続される。プリント回路基板20、21の導体パス22、23、24は、第1、第2、第4、および場合によっては第5(または追加)ポート4、6、10、17のための外部接続を提供する。
【0061】
第3ポート9は、少なくとも1つのフランジ16を介して、高周波電力増幅器用のシステムグラウンドを規定する高周波パワートランジスタ1のヒートシンク25に接続される。パワートランジスタ1はここでは図5Cのパワートランジスタ1の例に基づいて描かれているが、専門家は図5Dおよび図7Cのパワートランジスタ1の対応する実施形態を容易にまとめることができる。
【0062】
図8Aおよび図8Bは、図3Bが示す発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態の物理的および電気的等価回路図である。図6Aおよび図6Bと同様であるが、HFバイパスキャパシタ3はトランジスタ2と同じチップ18上に金属絶縁体金属(MIM)キャパシタとして実現されている。これにより、HFバイパスネットワーク3.1の誘導成分が最小化され、HF絶縁およびLF帯域幅がさらに改善される。
【0063】
図3Bに示す入力整合回路網27は、図8Aにおいては個別の1層または多層短絡キャパシタ3で実現されており、このキャパシタは、ワイヤボンドによって、入力ポート4とトランジスタ2のゲート接点5との両方に接続されている。1つのキャパシタ3の代わりに、並列に接続されたいくつかのキャパシタを用いることもできる。図8Aに示す入力整合回路網27は、誘導性および/または容量性素子の形態の追加の段によって拡張することができる。図3Bに示す出力整合回路網28は、図8Aにおいてはトランジスタ2のドレイン接点7と出力ポート6との両方にワイヤボンドによって接続された個別の1層または多層短絡キャパシタ3によって実現されている。1つのキャパシタ3の代わりに、並列に接続されたいくつかのキャパシタを用いることもできる。図8Aに示される出力整合ネットワーク28は、誘導性要素および/または容量性要素の形態の付加的な段によって拡大することができる。本発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態においては、入力27および/または出力整合回路網28は、チップ18上のMIMキャパシタ3をゲート5またはドレイン接点7に接続することによって、およびトランジスタハウジング12の入力4または出力ポート6とワイヤボンドすることによって、トランジスタ2と同じチップ18上に実現される。
【0064】
図9Aは、図4Aに示す発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態の物理的等価回路図である。これは図7Aおよび7B上の実施形態と同様であるが、DC&LFローパスフィルタ3.2の機能はソース接点8とDC&LFグラウンドポート10との間の使用済みボンドワイヤの数および長さによっては実現されず、代わりに、適切なフィルタ構造3.2をトランジスタチップ18上に挿入することによって実現される。
【0065】
図9B図9Cは、図9Aの本発明によるHFパワートランジスタ1の2つの実施形態の電気的等価回路図である。図9B上においては、フィルタ構造3.2がトランジスタチップ18上の誘導容量フィルタによって実現される。チップ18とDC&LFグラウンドポート10との間のDC&LF接続は、ワイヤボンドによって実現される。本発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態において、LCフィルタ3.2が別個のチップ上に実現され、このチップはトランジスタ2のソース接点8とDC&LFグラウンドポート10との両方へワイヤボンドによって接続される。図9C上において、フィルタ構造3.2のHF絶縁およびLF帯域幅は、トランジスタ2と同じチップ18上のDC&LFラインとしてキャパシタで短絡されたλ/4ライン35をフィルタとして実装することによって改善され、これはDC&LFグラウンドポート10とワイヤボンド36、11によって接続される。本発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態において、短絡されたλ/4ライン35が別個のチップ上に実現され、これはトランジスタ2のソース接点8とDC&LFグラウンドポート10の両方へワイヤボンドによって接続される。本発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態において、入力27および/または出力整合回路網28は、集積DC&LF/HFダイプレクサ30を有するトランジスタチップ18に加えて、トランジスタハウジング12内に取り付けられる。入力整合回路網27は、入力ポート4およびトランジスタ2のゲート接点5の両方とワイヤボンドによって接続される個別の1つまたは多層短絡キャパシタ3で実現され、出力整合回路網28はトランジスタのドレイン接点7および出力ポート6の両方とワイヤボンドによって接続される個別の1つまたは多層短絡キャパシタ3で実現される。並列に接続されたいくつかのキャパシタを、1つのキャパシタ3の代わりに、両方の整合ネットワーク27、28のために使用することができる。整合ネットワーク27、28ともに、誘導性要素および/または容量性要素の形で数段階拡張することができる。本発明によるHFパワートランジスタ1の別実施形態において、入力27および/または出力整合回路網28は、チップ18上のMIMキャパシタをゲート5またはドレイン接点7に接続することによって、およびワイヤボンドを介してトランジスタハウジング12の入力4または出力ポート6に接続することによって、トランジスタ2と同じチップ18上に実現される。
【0066】
図10は、プリント回路基板29によって囲まれた図4Aの本発明によるフローティング収容型HFパワートランジスタ1の1実施形態のブロック図である。整合ネットワーク28、ならびに接続された電源ネットワーク31を有するトランジスタ1のドレイン供給のためのDC&LFダイプレクサ30、ならびにフローティング動作に必要な、トランジスタ1のガルバニック分離したゲート電源34のための追加の外部回路を含む。図10は、従来技術と比較して本発明の利点を示す。
【0067】
本発明は好ましい例示的な実施形態によってより詳細に例示され、説明されたが、本発明は開示された実施例によって限定されず、本発明の保護範囲から逸脱することなく、当業者によって、他の変形形態を導出することができる。
【0068】
全ての誘導素子11は、好ましくはボンドワイヤとして設計される。
【符号の説明】
【0069】
1:高周波パワートランジスタ
2:トランジスタ
3:キャパシタ
3.1:バイパスネットワーク
3.2:ローパスネットワーク
4:第1ポート(入力ポート)
5:ゲート接点
6:第2ポート(出力ポート)
7:ドレイン接点
8:ソース接点
9:第3ポート(HFグラウンド接続)
10:第4ポート(DC&LFグラウンドポート)
11:誘導素子
12:ハウジング
12.1:カバー
13:ボンドワイヤ
14:ボンドワイヤ
15:ボンドワイヤ
16:フランジ
16.1:ボンドベース
17:第5ポート
18:集積電力回路
19:高周波電力増幅器のカットアウト:周囲に基板を持つ高周波パワートランジスタ
20:プリント基板
21:プリント基板
22:導体パス
23:導体パス
24:導体パス
25:ヒートシンク
26:アース
26.1:DC&LFグランド
27:入力整合ネットワーク
28:出力整合ネットワーク
29:ボード
30:ダイプレクサ
31:DC&LF電源網
32:DC&LF電源
33:HF出力
34:ガルバニック分離ゲート電源
35:λ/4ライン
36:ボンドワイヤ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10