(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056867
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】改善された性能を有するエネルギー貯蔵装置についての組成および方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240416BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240416BHJP
H01G 11/26 20130101ALI20240416BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240416BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01G11/26
H01G11/86
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020028
(22)【出願日】2024-02-14
(62)【分割の表示】P 2020522945の分割
【原出願日】2018-11-13
(31)【優先権主張番号】62/590,110
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/184,892
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509316442
【氏名又は名称】テスラ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シン ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ヅオン ヒエウミン
(72)【発明者】
【氏名】ファイゲンバウム ハイム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動作電力およびエネルギーを高めるエネルギー貯蔵装置の相補的な属性を結合する電極薄膜を提供する。
【解決手段】エネルギー貯蔵装置の単一のドライ電極薄膜であって、乾燥した活物質と、乾燥した結着剤と、を備え、前記単一のドライ電極薄膜は、自己支持形であり、前記単一のドライ電極薄膜は、厚さが少なくとも110μmである、ドライ電極薄膜とする。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置の単一のドライ電極薄膜であって、
乾燥した活物質と、
乾燥した結着剤と、
を備え
前記ドライ電極薄膜は、自己支持形であり、
前記ドライ電極薄膜は、厚さが約110μmよりも大きい、ドライ電極薄膜。
【請求項2】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、
前記ドライ電極薄膜の電極薄膜多孔性は、約20%かそれ以下である、ドライ電極薄膜。
【請求項3】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、前記電極薄膜は、電極薄膜密度が少なくとも0.8g/cm3である、ドライ電極薄膜。
【請求項4】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であり、前記電極薄膜の電極材料ロード量は少なくとも約20mg/cm2である、ドライ電極薄膜。
【請求項5】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であり、前記ドライ電極薄膜には、少なくとも約90重量%の前記乾燥した活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項6】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した活物質には、アノード活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項7】
請求項6に記載のドライ電極薄膜であって、前記アノード活物質には、カーボン活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項8】
請求項7に記載のドライ電極薄膜であって、前記カーボン活物質には、黒鉛が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項9】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した活物質には、カソード活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項10】
請求項9に記載のドライ電極薄膜であって、前記カソード活物質には、リチウムニッケルマンガンコバルトオキシド(NMC)が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項11】
請求項9に記載のドライ電極薄膜であって、前記カソード活物質には、硫黄系材料が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項12】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した結着剤には、線維化可能な結着剤が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項13】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびフッ化プロビニリデン(PVDF)のうちの少なくとも1つが含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項14】
請求項13に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびフッ化プロビニリデン(PVDF)が、重量において2:1:1の比率で含まれる、ドライ電極薄
膜。
【請求項15】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜には約20重量%かそれ以下の前記乾燥した結着剤が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項16】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、導電性の添加剤をさらに備える、ドライ電極薄膜。
【請求項17】
請求項16に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜には、約5重量%かそれ以下の前記導電性の添加剤が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項18】
請求項1に記載のドライ電極薄膜であって、多孔質材料をさらに備える、ドライ電極薄膜。
【請求項19】
請求項18に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜には、約10重量%またはそれ以下の前記多孔質材料が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項20】
請求項1に記載の前記ドライ電極薄膜を備える電極であって、集電材と接触される、電極。
【請求項21】
請求項20に記載の電極であって、前記電極の容積エネルギー密度は少なくとも約550Whである、電極。
【請求項22】
請求項20に記載の電極であって、前記電極の比エネルギー密度は少なくとも約200Wh/kgである、電極。
【請求項23】
請求項20に記載の電極であって、前記電極の比容量は少なくとも約150mAh/gである、電極。
【請求項24】
請求項20に記載の電極であって、前記電極の比容量は少なくとも約3.5mAh/cm2である、電極。
【請求項25】
請求項24に記載の電極であって、前記比容量は放電容量である、電極。
【請求項26】
請求項20に記載の電極であって、放電率が1.5Cのときの充電容量保持率は、少なくとも約20%である、電極。
【請求項27】
請求項20に記載の電極であって、充電率が2Cのときの充電容量生産率は、少なくとも約10%である、電極。
【請求項28】
請求項20に記載の電極であって、クーロン効率が少なくとも約85%である、電極。
【請求項29】
請求項20に記載の前記電極を備えるリチウムイオン電池。
【請求項30】
請求項20に記載の前記電極を備える、固体状態のリチウムイオン電池。
【請求項31】
エネルギー貯蔵装置のドライ電極薄膜であって、
乾燥した活物質と、
乾燥した結着剤と、
を備え、
前記ドライ電極薄膜は、自己支持形であり、
前記ドライ電極薄膜は、電極薄膜密度が少なくとも1.4g/cm3である、ドライ電極薄膜。
【請求項32】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜は、厚さが約110μmまたはそれ以上である、ドライ電極薄膜。
【請求項33】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜は厚さが約155μmまたはそれ以上である、ドライ電極薄膜。
【請求項34】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記電極薄膜における電極材料のロード量は少なくとも約20mg/cm2である、ドライ電極薄膜。
【請求項35】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜は、前記乾燥した活物質のうちの少なくとも約90重量%を含む、ドライ電極薄膜。
【請求項36】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した活物質にはアノード活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項37】
請求項36に記載のドライ電極薄膜であって、前記アノード活物質にはカーボン活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項38】
請求項37に記載のドライ電極薄膜であって、前記カーボン活物質には黒鉛が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項39】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した活物質にはカソード活物質が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項40】
請求項39に記載のドライ電極薄膜であって、前記カソード活物質には、リチウムニッケルマンガンコバルトオキシド(NMC)が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項41】
請求項39に記載のドライ電極薄膜であって、前記カソード活物質には硫黄系材料が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項42】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した結着剤には線維化可能な結着剤が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項43】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびフッ化ポリビニリデン(PVDF)のうちの少なくとも1つが含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項44】
請求項43に記載のドライ電極薄膜であって、前記乾燥した結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、およびフッ化プロビニリデン(PVDF)が、重量において2:1:1の比率で含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項45】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜には、約20重量%またはそれ以下の前記乾燥した結着剤が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項46】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、導電性の添加剤をさらに備える、ドライ
電極薄膜。
【請求項47】
請求項46に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜には、約5重量%またはそれ以下の、前記導電性の添加剤が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項48】
請求項31に記載のドライ電極薄膜であって、多孔質材料をさらに備える、ドライ電極薄膜。
【請求項49】
請求項48に記載のドライ電極薄膜であって、前記ドライ電極薄膜には、約10重量%またはそれ以下の前記多孔質材料が含まれる、ドライ電極薄膜。
【請求項50】
請求項31に記載の前記ドライ電極薄膜を備える電極であって、前記ドライ電極薄膜には集電材が接触される、電極。
【請求項51】
請求項50に記載の電極であって、前記電極の容積エネルギー密度は、少なくとも約550Wh/Lである、電極。
【請求項52】
請求項50に記載の電極であって、前記電極の比エネルギー密度は、少なくとも約200Wh/kgである、電極。
【請求項53】
請求項50に記載の電極であって、前記電極の比容量は、少なくとも約150mAh/gである、電極。
【請求項54】
請求項50に記載の電極であって、前記電極の比容量は、少なくとも約3.5mAh/cm2である、電極。
【請求項55】
請求項54に記載の電極であって、前記比容量は放電容量である、電極。
【請求項56】
請求項50に記載の電極であって、放電率が1.5Cのときの充電容量保持率は、少なくとも約20%である、電極。
【請求項57】
請求項50に記載の電極であって、充電率が2Cのときの充電容量生産率は、少なくとも約10%である、電極。
【請求項58】
請求項50に記載の電極であって、クーロン効率が少なくとも約85%である、電極。
【請求項59】
請求項50に記載の前記電極を備える、リチウムイオン電池。
【請求項60】
請求項50に記載の前記電極を備える、固体状態のリチウムイオン電池。
【請求項61】
エネルギー貯蔵装置の単一のドライ電極薄膜を製造する方法であって、
乾燥した活物質を提供し、
乾燥した結着剤を提供し、
電極薄膜混合物を供給するために、前記乾燥した活物質と、前記乾燥した結着剤とを、結合させ、
前記電極薄膜混合物により、厚さが約110μmまたはそれ以上の、または、電極薄膜密度が少なくとも1.4g/cm3の、自己支持形のドライ電極薄膜を形成する、
方法。
【請求項62】
請求項61に記載の方法であって、前記ドライ電極薄膜の形成は、約20℃から約20
0℃の温度の下で開始される、方法。
【請求項63】
請求項61に記載の方法であって、前記ドライ電極薄膜を形成することには、前記電極薄膜混合物を圧縮することが含まれる、方法。
【請求項64】
請求項63に記載の方法であって、前記ドライ電極薄膜を圧縮することは、圧延することを含む、方法。
【請求項65】
請求項61に記載の方法であって、前記乾燥した活物質は、処理後の乾燥した活物質を形成するように、さらに処理される、方法。
【請求項66】
請求項65に記載の方法であって、前記処理後の乾燥した活物質は、穏やかな粉体処理法により処理されたものである、方法。
【請求項67】
請求項65に記載の方法であって、前記処理後の乾燥した活物質は、激しい粉体処理法により処理されたものである、方法。
【請求項68】
請求項61に記載の方法であって、前記乾燥した結着剤は、処理後の乾燥した結着剤を形成するように、さらに処理される、方法。
【請求項69】
請求項68に記載の方法であって、前記処理後の乾燥した結着剤は、穏やかな粉体処理法により処理されたものである、方法。
【請求項70】
請求項68に記載の方法であって、前記処理後の乾燥した結着剤は、激しい粉体処理法により処理されたものである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[分野]
本発明は、概してエネルギー貯蔵装置に関し、より具体的には、改善した性能を有する乾電極エネルギー貯蔵装置のための材料および方法に関する。
【0002】
[優先出願を参照することによる援用]
この出願は、2017年11月22日に出願された米国仮出願62/590110に基づいて優先権を主張し、この仮出願における開示は全て、ここで参照することにより援用される。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の記載]
電気エネルギー貯蔵電池は、電気工学の、電気機械の、電気化学の、およびその他の有用な装置に電力を供給するために、広く利用されている。このような電池には、一次化学電池、二次(再充電可能な)電池、燃料電池、ウルトラキャパシタを含む様々な種類のキャパシタ、が含まれる。キャパシタおよび電池を含むエネルギー貯蔵装置の動作電力およびエネルギーを高めることは、エネルギー貯蔵量を増加させ、電力能力を増加させ、そして現実世界での使用の機会を広げる上で、望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
相補的な属性を結合する電極薄膜を含むエネルギー貯蔵装置は、現実世界での適用において、エネルギー貯蔵装置の性能の向上をもたらす。さらに、存在する製造方法によれば、様々な構造の電極特性の実用限界が課されることになる。そのため、新しい電極薄膜の形成および製造方法により、性能の向上が見込まれる。加えて、電極薄膜の新しい組み合わせにより、エネルギー貯蔵装置の性能を向上させることが可能な組み合わせが明らかになるであろう。
【0005】
本開示と、先行技術に対して達成できる利点とを、要約する目的で、本開示のいくつかの目的と利点をここに記載する。このような目的および利点の全てが、いずれかの特定の実施形態において達成できるとは限らない。このように、例えば、ここで教示されたように1つの利点または複数の利点を達成しまたは最適化し得るような態様で本発明を具体化しまたは実行することができ、この際、ここで教示または提案されたように他の目的または利点は必ずしも達成されなくてもよいと、当業者は理解するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、少なくとも1つの自己支持形のドライ電極薄膜を含み、改善された性能を有するリチウムイオン電池が、提供される。改善された性能とは、改善された電極材料のロード、活物質のロード、比容量、比容量、面積エネルギー密度、エネルギー密度、比エネルギー密度、またはクーロン効率などとしてもよい。いくつかの実施形態では、このような電池は、少なくとも250Wh/kgの比エネルギー密度を有し、または少なくとも600Wh/Lのエネルギー密度を有するとしてもよい。
【0007】
1つの態様では、エネルギー貯蔵装置の単一のドライ電極薄膜が提供される。ドライ電極薄膜には、乾燥した活物質が含まれる。ドライ電極薄膜は、乾燥した結着剤をさらに含む。ドライ電極薄膜は、さらに、ドライ電極薄膜が自己支持形であることと、ドライ電極薄膜の厚さが約110μmかそれよりも大きいこととを、含む。
【0008】
他の1つの態様では、エネルギー貯蔵装置のドライ電極薄膜が提供される。ドライ電極薄膜には、乾燥した活物質が含まれる。ドライ電極薄膜には、乾燥した結着剤がさらに含まれる。ドライ電極薄膜は、さらに、ドライ電極薄膜が自己支持形であることと、ドライ電極薄膜の電極薄膜密度が少なくとも1.4g/cm3であることとを、含む。
【0009】
他の1つの態様では、エネルギー貯蔵装置の単一のドライ電極薄膜を製造するための方法が提供される。方法には、乾燥した活物質を提供する過程が含まれる。方法にはさらに、乾燥した結着剤を提供する過程が含まれる。方法には、さらに、乾燥した活物質と乾燥した結着剤とを結合させて電極薄膜混合物を供給する過程が含まれる。方法には、さらに、電極薄膜混合物により、厚さが約110μmまたはそれ以上の自己支持形のドライ電極薄膜を形成する過程が、含まれる。
【0010】
他の1つの態様では、エネルギー貯蔵装置のドライ電極薄膜を製造するための方法が提供される。方法には、乾燥した活物質を提供する過程が含まれる。方法にはさらに、乾燥した結着剤を提供する過程が含まれる。方法にはさらに、乾燥した活物質と乾燥した結着剤とを結合させ、電極薄膜混合物を供給する過程が、含まれる。方法には、さらに、電極薄膜混合物により、電極薄膜密度が少なくとも1.4g/cm3の自己支持形のドライ電極薄膜を形成する過程が、含まれる。
【0011】
これらの実施形態の全ては、ここに開示される発明の範囲内に包含されることを意図している。これらの実施形態および他の実施形態は、添付の図面を参照しながら説明する以降の好適な実施形態の詳細な説明に基づいて、当業者によって容易に理解されるであろう。本発明は、開示された好適な実施形態のいずれによっても、制限されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、エネルギー貯蔵装置の1つの実施形態を示している。
【
図2】
図2の(A)~(D)は、乾燥したまたは湿式の、アノードおよびカソードを結合する、エネルギー貯蔵装置の様々な構成を示している。
【
図3】
図3の(A)は、アノードとカソードとが集電材により結合される、二極の電極を示している。
図3の(B)~(E)は、集電材により結合される湿式のおよび/またはドライ電極薄膜を含む、二極の電極の様々な構成を示している。
【
図4】
図4の(A)~(E)は、様々なエネルギー貯蔵装置のセルの構成を示している。
【
図5A】
図5Aは、乾燥したまたは湿式の電極の様々な組み合わせを含むリチウムイオン電池における、容量のデータを提供している。タイプ1は、乾燥カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ2は乾燥カソードと湿式アノードとを含み、タイプ3は湿式カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ4は湿式カソードと湿式アノードとを含む。
【
図5B】
図5Bは、乾燥したまたは湿式の電極の様々な組み合わせを含むリチウムイオン電池における、効率のデータを提供している。タイプ1は、乾燥カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ2は乾燥カソードと湿式アノードとを含み、タイプ3は湿式カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ4は湿式カソードと湿式アノードとを含む。
【
図6】
図6は、乾燥したまたは湿式の電極の様々な組み合わせを有するリチウムイオン電池における、電圧と容量との関係を表すデータを提供している。タイプ1は乾燥カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ2は乾燥カソードと湿式アノードとを含み、タイプ3は湿式カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ4は湿式カソードと湿式アノードとを含む。
【
図7】
図7は、乾燥したまたは湿式の電極の様々な組み合わせを有するリチウムイオン電池における、容積エネルギー密度(Wh/L)および重量エネルギー密度(Wh/kg)のデータを提供している。タイプ1は乾燥カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ2は乾燥カソードと湿式アノードとを含み、タイプ3は湿式カソードと乾燥アノードとを含み、タイプ4は湿式カソードと湿式アノードとを含む。
【
図8A】
図8Aは、複数の順次のステップ(「混合A」)により処理された、または、1つのステップ(「混合B」)により処理された、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、容量のデータを提供している。
【
図8B】
図8Bは、複数の順次のステップ(「混合A」)により処理された、または、1つのステップ(「混合B」)により処理された、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、効率のデータを提供している。
【
図9A】
図9Aは、ブレード混合器(「ミキサーA」)により処理された、または音響ミキサー(「ミキサーB」)により処理された、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、容量のデータを提供している。
【
図9B】
図9Bは、ブレード混合器(「ミキサーA」)により処理された、または音響ミキサー(「ミキサーB」)により処理された、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、効率のデータを提供している。
【
図10A】
図10Aは、予め粉砕されていない(「処理A」)ポリマー結着剤を用いて処理された、または、残りの電極製造成分を導入する前にジェットミルを用いて処理された(「処理B」)予め粉砕されたポリマー結着剤を用いて処理された、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、容量のデータを提供している。
【
図10B】
図10Bは、予め粉砕されていない(「処理A」)ポリマー結着剤を用いて処理された、または、残りの電極製造成分を導入する前にジェットミルを用いて処理された(「処理B」)予め粉砕されたポリマー結着剤を用いて処理された、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、効率のデータを提供している。
【
図11A】
図11Aは、ジェットミルによるステップを利用して処理された活物質と、同じくジェットミルによるステップを利用して処理された結着剤と、を用いて処理された(「製法1」)、または、穏やかな粉体処理を利用して処理された活物質と、ジェットミルによるステップを利用して処理された結着剤と、を用いて処理された(「製法4」)、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、容量のデータを提供している。
【
図11B】
図11Bは、ジェットミルによるステップを利用して処理された活物質と、同じくジェットミルによるステップを利用して処理された結着剤と、を用いて処理された(「製法1」)、または、穏やかな粉体処理を利用して処理された活物質と、ジェットミルによるステップを利用して処理された結着剤と、を用いて処理された(「製法4」)、乾燥したリチウムイオン電池のアノードにおける、効率のデータを提供している。
【
図12】
図12は、ドライコーティングされた厚いNMC622カソードハーフセルにおける、電圧と容量との関係を表すデータである。
【
図13】
図13は、ドライコーティングされた厚い黒鉛アノードハーフセルにおける、電圧と容量との関係を表すデータである。
【
図14】
図14は、電極材料のロード重量を様々に変えたときの、ドライコーティングされた厚いNMC622カソードハーフセルにおける第1サイクルの電気化学的な結果を提供している。
【
図15A】
図15Aは、ドライコーティングされた厚い電極における、フルセル放電率電圧プロファイルを提供している。
【
図15B】
図15Bは、ウェットコーティングされた厚い電極における、フルセル放電率電圧プロファイルを提供している。
【
図16】
図16は、電流率を様々に異ならせたときの、
図15Aおよび
図15Bに示されたフルセルにおける乾燥したおよびウェットコーティングされた厚い電極についての、放電容量を提供している。
【
図17A】
図17Aは、ドライコーティングされた厚い電極における、フルセル充電率電圧プロファイルを提供している。
【
図17B】
図17Bは、ウェットコーティングされた厚い電極における、フルセル充電率電圧プロファイルを提供している。
【
図18】
図18は、電流率を様々に異ならせたときの、
図17Aおよび
図17Bに示されたフルセルにおける乾燥したおよびウェットコーティングされた厚い電極についての、充電容量を提供している。
【
図19A】
図19Aは、劣化前の、袋状のフルセルにおけるドライコーティングされた厚い電極の、電気化学的なインピーダンス分光データを提供している。
【
図19B】
図19Bは、劣化後の、袋状のフルセルにおけるドライコーティングされた厚い電極の、電気化学的なインピーダンス分光データを提供している。
【
図19C】
図19Cは、劣化前の、袋状のフルセルにおけるウェットコーティングされた厚い電極の、電気化学的なインピーダンス分光データを提供している。
【
図19D】
図19Dは、劣化後の、袋状のフルセルにおけるウェットコーティングされた厚い電極の、電気化学的なインピーダンス分光データを提供している。
【
図20】
図20は、劣化前および劣化後の、袋状のフルセルにおける乾燥したおよびウェットコーティングされた厚い電極の、セル電圧を提供している。
【
図21】
図21は、劣化後の袋状のフルセルにおける乾燥したおよびウェットコーティングされた厚い電極の、セル容量の保存を提供している。
【
図22】
図22は、伝統的な乾燥処理された電極における、電極薄膜密度とロード量との関係を示している。
【
図23】
図23は、先行技術のウェットコート処理と対比して、今回開示した乾燥処理によって生産される、それぞれ異なる製法による電極において、電極薄膜密度とロード量との関係を示している。
【
図24A】
図24Aは、本開示に従って作製された黒鉛アノードのロード量に対する、重量エネルギー密度を示している。
【
図24B】
図24Bは、本開示に従って作製された黒鉛アノードのロード量に対する、容積エネルギー密度を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここに、改善された性能を有するエネルギー貯蔵装置の様々な実施形態を提供する。とりわけ、いくつかの所定の実施形態においては、ここに開示されるエネルギー貯蔵装置は、高いエネルギー密度を有する電極薄膜を含んでいる。エネルギー貯蔵装置には、改善された技術を利用して製造され、そして様々な過程の組み合わせにより製造された電極薄膜が組み込まれている。エネルギー貯蔵装置は、リチウムイオン系電池としてもよい。
【0014】
リチウムイオン電池は、例えば、消費者の装置、生産性装置、および電池式車両などの、数多くの商業的および産業的な用途において、電力源として利用されている。しかしながら、エネルギー貯蔵装置に寄せられている需要は、連続的に、そして急速に、成長している。例えば、自動車産業においては、小型で効率的なエネルギーストレージを利用した車両、具体的にはプラグインハイブリッド車や完全な電気自動車などが開発されている。リチウムイオン電池は、未来の需要を満たすのに適しているが、1回の充電でより遠くまで進めるようにするために、電池寿命をより長くするべく、エネルギー密度を向上することが求められている。このように、一般的にエネルギー貯蔵装置において、特にリチウムイオン電池において、例えば装置の質量および/または体積に比しての大きさごとに、より高いエネルギー貯蔵量やエネルギー密度を提供可能にすることが、求められている。
【0015】
エネルギー貯蔵装置において潜在的な、ストレージの鍵となる構成要素は、電極、より具体的には各電極を構成する電極薄膜である。電極の電気化学的な性能、例えば電池電極の容量および効率は、様々な因子の影響を受ける。例えば、活物質、結着剤、および添加物の配分、例えば活物質の粒子サイズや表面領域などの材料の物理的特性、活物質の表面特性、電極薄膜の粘着性などの物理的特性、ならびに導電素子の粘着性などである。
【0016】
原理的には、電極薄膜がより厚い方が有利である。なぜならば、電極薄膜が厚くなるに
つれて、エネルギー貯蔵成分でない他の物質と比して、装置の活物質がより多く存在することとなるためである。より厚い電極薄膜は、集電材のユニットエリアごとに電極材料をロードすることにより、あるいは電極薄膜のユニットエリアごとの容量またはエネルギー密度により、実現できる。しかしながら、電極薄膜をより厚くすることは、電極薄膜の製造技術の実用限界の試金石となる。
【0017】
一般的に、電極薄膜は、薄膜の成分の機械的特性、およびそれらの相互作用に起因して、性能が低下することがある。例えば、機械的制限は、活動層と集電材との間の接着性が低いことに起因したり、あるいは電極薄膜における活物質と結着剤との間の結合が弱いことに起因したりすると考えられる。このような過程は、電力供給およびエネルギー貯蔵容量の両面において、性能の低下を招くこととなる。性能の低下は、例えば、イオン導電率の低下、電気伝導率の低下、またはこれらの組み合わせに起因する、活物質の不活性化によると考えられる。例えば、活動層と集電材との間の粘着性が低下するにつれて、電池抵抗は増加する。また、活物質間の結合が減少すると、電池抵抗の増加も招き、場合によっては電気的接触が損なわれ、電池のイオン的および電気的な移動サイクルからいくらかの活物質が除去されることとなる。理論により制限されることなく、活物質の体積的な変化は、このような過程に影響を与えると考えられる。例えば、シリコン系材料のような所定の活物質が組み込まれている電極において、付加的な低下が見られる場合がある。これは、電池サイクルにおいて著しく体積が変化する。いくつかのシステムにおいては、リチウムのインターカレーションおよびデインターカレーションの過程は、このような体積の変化に対応している。一般的に、このような機械的低下の過程は、あらゆる電極、例えば、カソード、アノード、正極、負極、電池電極、キャパシタ電極、ハイブリッド電極、その他のエネルギー貯蔵装置の電極において観察される。
【0018】
スラリーでコーティングされた古典的な湿式電池の電極は、クラッキング、剥離、柔軟性の乏しさなどの、望ましくない問題点を抱えることがある。これらの問題点は、電極薄膜が厚くなるほど、悪化する。電極薄膜が厚くなるにつれて、一般的にそれに対応してロードされる電極材料も多くなり、ウェット処理した電極において、電気化学的性能および信頼性の低下が見られることとなる。ウェット処理においては、材料の選択肢が制限されることが問題となる場合がある。そして、結果として生じるウェット処理された電極薄膜においては、例えば活物質などの構成物質が不均一に散布されてしまうことが問題となる場合がある。薄膜の厚さおよび/または密度が増加するにつれて、不均一であることによる悪影響も大きくなる。その場合、イオン導電率および/または電気伝導率が低くなる結果となる。また、ウェット処理には一般的に、高価でかつ時間を消費する乾燥処理を要することとなり、この乾燥処理は薄膜が厚くなるほど困難となる。このように、ウェット処理により生産される電極薄膜の厚さも、制限される。さらに、例えば噴霧、化学浴析出、スロットダイ、噴出、および焼き付けなどの、湿式の、例えばスラリー系の薄膜形成処理においては、電極薄膜の取り得る構成が制限されている。
【0019】
実施形態には、比エネルギー密度が少なくとも250Wh/kg、またはエネルギー密度が少なくとも600Wh/Lとされる乾燥処理により製造される電極を含む電池が、含まれている。実施形態には、より高密度の活物質を含み、電極薄膜の厚みがより大きく、電極薄膜の密度がより高く、かつ/または電子密度(例えば、エネルギー密度、比エネルギー密度、面積エネルギー密度、比容量、および/または比容量)がより高い、電極薄膜を実現することのできる、湿式電極の形成および製造過程が、含まれている。電極薄膜の密度がより高い、電極薄膜においては、一般的に、より小さな体積の電極薄膜に対しより多くの活物質が含まれているであろう。具体的には、乾燥電極処理においては、より小さい粒子サイズを実現することができ、また、活物質、結着剤、および添加物のより密着した接触を実現することができる。乾燥電極処理の方法においては、伝統的には、電極薄膜の材料を分散させ混合するために、高剪断力および/または高圧での処理のステップを利
用していた。このステップにより、構造的に有利となる。いくつかの実施形態においては、このような乾燥電極処理によれば、従来のウェットスラリー鋳型、圧縮電極処理密度(約1.3g/cm
3またはそれ以下)および多孔性(約37%またはそれ以上)に比べて、より高いロード量でありながら、十分に高い電極密度(約1.55g/cm
3)、およびより低い電極多孔性(約26%)を達成可能な電極薄膜を実現可能となる。しかしながら、
図22に示されるように、伝統的な湿式電極処理により製造される電極は、ロードされる電極材料が増えるほど密度が低くなる電極薄膜を有する。このため、高いロード量の電極電池においてエネルギーおよび電力密度が制限される。本開示のいくつかの実施形態は、電極のロードとは無関係に電極薄膜密度(約1.79g/cm
3)および多孔性(約16%)を制御するための乾燥製造方法および形成を提供する。例えば活物質やポリマー接着剤や添加物を変更することにより、電極材料の組成を変えることで、形成は修正される。製造方法は、例えば圧延温度、圧延圧力、圧延ロールギャップ、パスの数などの乾燥コーティング処理のパラメータに応じて、修正される。このような処理および組成を利用した実施形態は、高ロードにおいて、大幅に向上した電極薄膜密度を示す。いくつかの実施形態においは、圧延加工はおよそ環境温度の下で行われてもよい。いくつかの実施形態においては、電極の分解および/または剥離のような欠点が無い状態で、高ロードおよび高い電極薄膜密度を実現する。
【0020】
ここで提供される湿式のまたは自己支持形の電極薄膜によれば、典型的な電極薄膜と比して、向上された特性が提供される。例えば、ここで提供される湿式のまたは自己支持形の電極薄膜によれば、1つまたはそれ以上の向上された材料のロードまたは電極材料のロード(電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの電極薄膜の量として表現される)、向上された活物質のロード(電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの活物質の量として表現される)、向上された面積の容積(電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの容積として表現される)、向上された面積集熱器(電極薄膜または集電材のユニットエリアごとのエネルギーとして表現される)、向上された比エネルギー密度(電極薄膜のユニット面積ごとのエネルギーとして表現される)、または向上されたエネルギー密度(電極薄膜のユニット体積ごとのエネルギーとして表現される)が提供される。さらに他の例では、ここで提供される湿式のまたは自己支持形の電極薄膜は、向上されたクーロン効率を提供するものとしてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態においては、典型的な材料および製造過程を用いて構築されたエネルギー貯蔵装置と比べて、向上されたクーロン効率を発揮するエネルギー貯蔵装置が提供される。とりわけ、ここで提供された少なくとも1つの乾燥過程および/または自己支持形の電極を含む、リチウムイオン電池の第1サイクル効率を、向上させることができる。例えば、電気化学的サイクルを行っているときの第1サイクルのクーロン効率を、向上させることができる。
【0022】
ここで示されるエネルギー貯蔵装置は、有利には、装置の寿命を通じて等価直列抵抗の上昇が低減されるという特徴を有する。これによれば、装置の寿命を通じて、電力密度を増加させることが可能である。いくつかの実施形態においては、ここで示されるエネルギー貯蔵装置は、装置の寿命を通じて容量の損失が低減されていることで特徴づけられる。様々な実施形態において実現されるさらなる改善には、サイクリング時における貯蔵安定性の向上を含むサイクリング性能の向上、および、容量の損失の低減が、含まれる。
【0023】
いくつかの実施形態においては、乾燥過程の電池電極は、従来からのスラリーでコーティングされた湿式電池電極に接続され、それにより、乾電極を含む電池の改善された性能が提供される。とりわけ、いくつかの実施形態においては、自己支持形の乾燥カソードおよび湿式アノードの対の、改善された性能が実現される。
【0024】
いくつかの実施形態においては、リチウムイオン電池のようなエネルギー貯蔵装置は、自己支持形の乾燥電極薄膜を備えるカソードと、自己支持形の乾燥電極薄膜を備えるアノードと、を含む。このエネルギー貯蔵装置は、ここで提供される1つまたはそれ以上の付加的な特徴を有する。さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置は、自己支持形の乾燥電極薄膜を備えるカソードを含み、このエネルギー貯蔵装置はここで提供される1つまたはそれ以上の他の性能特性を有する。さらに他の実施形態においては、リチウムイオン電池のようなエネルギー貯蔵装置は、自己支持形の乾燥電極薄膜を備えるカソードと、ウェット処理した電極薄膜を備えるアノードと、を含む。このエネルギー貯蔵装置は、ここに提供される1つまたはそれ以上の付加的な性能特性を有する。表1に示すように、湿式のまたはドライ電極のいくつかの組み合わせが想定される。
【0025】
【0026】
表1において、「乾燥」は、乾燥過程により用意された自己支持形の電極薄膜(示されているようにアノードまたはカソードの組成を有する)を指す。また、「湿式」は、スラリー過程により用意された電極薄膜(示されているようにアノードまたはカソードの組成を有する)を指す。
【0027】
いくつかの実施形態は、乾燥電極処理技術に関する。1つの実施形態では、乾燥粉体混合条件(すなわち、順番、強度、および時間)、グリンディングおよびミリングのような混合方法、および形成の発達(すなわち、活物質、添加物、結着剤)によって、結果物としての乾燥電池電極の電気化学的性能が改善した。この改善は、米国特許出願公開第2006/0114643号明細書、米国特許出願公開第2006/0133013、米国特許第9,525,168または米国特許第7,935,155のうちの1つまたはそれ以上に開示されているような、従来からある乾燥電極製造過程と比して、実現される。上記公報の内容は全て、ここで参照することによって援用される。
【0028】
様々な実施形態においては、乾燥粉体は、例えば対流式の、圧縮空気式の、または拡散式の、以下に示すようなミキサーを用いて、穏やかな過程で混合することができる。すなわち、例えば、混合媒体(例えば、ガラス玉、セラミックボール)を伴うまたは伴わないタンブラー、櫂型ミキサー、ブレード混合器、または超音波ミキサーなどである。穏やかな混合過程は、混合物の中の活物質を破壊しないものであってもよい。これに限定するものではないが、黒鉛粒子は、穏やかな混合過程を経てもサイズが保たれる。さらなる実施形態においては、活物質、結着剤、および付加的な添加物の均一な分布を促進するために、粉体の混合の順序や条件を変更することができる。
【0029】
実施形態は、電極薄膜の処理方法の様々な組み合わせにより製造される電極薄膜を含む。処理された活物質および結着剤からなる電極の形成のいくつかの例を、表2にリスト化してある。過程Aは、例えば、タンブリング、ブレンディング、または超音波ミキシングなどのような穏やかな粉体処理を含む。過程Bは、例えばジェットミリングやグリンディングによる、ワーリングブレンダー内における混合のような、激しい粉体処理を含む。
【0030】
【0031】
ここに提供される材料および方法は、様々なエネルギー貯蔵装置において実施することができる。ここに提供されるように、エネルギー貯蔵装置は、キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ(LIC)、ウルトラキャパシタ、電池、または上述のうちの2つまたはそれ
以上の態様を結合したハイブリッドエネルギー貯蔵装置とすることができる。好適な実施形態においては、その装置はバッテリーである。
【0032】
ここに提供されるエネルギー貯蔵装置は、いかなる好適な構成としてもよく、例えば、平面状としても、らせん状に捩れているとしても、ボタン型としても、小袋型としてもよい。ここに提供されるエネギー貯蔵装置は、例えば産業機械および/または運輸の用途に用いられる、例えば、発電システム、無停電電源システム(UPS)、太陽光発電システム
、エネルギー回収システムなどの、システムの構成要素としてもよい。ここに提供されるエネギー貯蔵装置は、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、お
よび/または電気自動車(HV)を含む様々な電気的装置および/または動力車に、電力を供給するために用いられる。
【0033】
図1は、電極薄膜密度が高く、かつ/または、高電子密度の、電極薄膜を有する、エネルギー貯蔵装置100の例を示している。エネルギー貯蔵装置100は、例えば、キャパシタ、電池、キャパシタ-電池のハイブリッド、または燃料電池に分類されるものとすることができる。いくつかの実施形態においては、装置100はリチウムイオン電池である。
【0034】
装置は、第1電極102と、第2電極104と、第1電極102および第2電極104
の間に位置するセパレータ106と、を有する。第1電極102および第2電極104は、それぞれ、セパレータ106の対向する表面に隣接している。エネルギー貯蔵装置100は、当該エネルギー貯蔵装置100の電極102,104の間のイオン交換を促進する
ための電解物118を含む。例えば、電解物118は、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106と接触していてもよい。電解物118、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106は、エネルギー貯蔵装置ハウジング120の中に収容される。
【0035】
第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106のうちの1つもしくはそれ以上、またはそれらの組成物は、多孔性の材料を含んでいてもよい。多孔性の材料の複数の孔は、電解物118をハウジング120内に封じ込めることができ、および/または、電解物118と接触する表面領域を増大させることができる。エネルギー貯蔵装置ハウジング120においては、第1電極102、第2電極104、およびセパレータ106の周りが、それぞれシールされ、そして、シールされることにより物理的に外部環境から隔離されているとしてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態においては、第1電極102はアノード(「負極」)とすることができ、また第2電極104はカソード(「正極」)とすることができる。セパレータ106は、例えば第1電極102および第2電極104のようなセパレータ106の対向する側面に対して隣接する2つの電極を電気的に隔離しながら、2つの隣接する電極の間でのイオン交換は許容するように、構成することができる。セパレータ106は、多孔性で、電気的に絶縁することが可能な、好適な材料からなるとすることができる。例えば、セパレータ106は、セルロース系材料(例えば、紙)、ポリエチレン(PE)系材料、ポリプロピレン(PP)系材料、および/または、ポリエチレン系およびポリプロピレン系の材料により、構成されているとしてもよい。
【0037】
一般的に、第1電極102および第2電極104はそれぞれ、集電材と電極薄膜とからなる。電極102,104は、それぞれ、電極薄膜の密度が高い、かつ/または、電子密
度が高い、高密度電極薄膜112,114からなる。電極102,104はそれぞれ、示されるように単一の電極薄膜112,114を有するが、各電極102,104が2つまたはそれ以上の電極薄膜の他の組み合わせを有していてもよい。装置100は単一の電極102と単一の電極104とを有するように示されているが、他の組み合わせも可能である。高密度の電極薄膜112,114はそれぞれ、いかなる好適な形状、大きさ、および厚さ
であってもよい。例えば、電極薄膜はそれぞれ、約30ミクロン(μm)から約250ミ
クロン、例えば、約または少なくとも約50ミクロン、約100ミクロン、約150ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約300ミクロン、約400ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1000ミクロン、約2000ミクロン、あるいはこれらの間の値の範囲の厚さを有しているとしてもよい。本開示を通して、さらに単一の電極薄膜についての電極薄膜の厚さについて示している。電極薄膜は、一般的に1つまたはそれ以上の活物質からなる。すなわち、例えばここで提供されるように、アノード活物質またはカソード活物質を含む。電極薄膜112および/または電極薄膜114は、ここで提供されるように、乾燥した、かつ/または自己支持形の電極薄膜であり、またここで提供されるように、例えば厚さ、増大した電極薄膜密度、エネルギー密度、具体的エネルギー密度、面積ごとのエネルギー密度、面積ごとのキャパシティまたは具体的キャパシティなどの、有利な特性を有する。第1電極薄膜112および/または第2電極薄膜114は、ここで提供されるように、1つまたはそれ以上の結着剤を含んでいてもよい。第1電極薄膜112および/または第2電極薄膜114は、ここで示される処理によって用意される。第1電極薄膜112および/または第2電極薄膜114は、ここで示されるように、湿式のまたは自己形成形のドライ電極としてもよい。
【0038】
図1に示すように、第1電極102および第2電極104は、第1の高密度の電極薄膜112と接触する第1集電材108と、第2の高密度の電極薄膜114と接触する第2集電材110と、をそれぞれ含む。第1集電材108および第2集電材110は、それぞれの対応する電極薄膜と、外部の電気回路(不図示)との、電気的結合を促進する。第1集電材108および/または第2集電材110は、1つまたはそれ以上の導電性材料からなり、また、対応する電極と外部回路との間の電荷の移動を促進するために選択されたあらゆる好適な形状および大きさを取り得る。例えば、集電材は、アルミニウム、ニッケル、銅、レニウム、ニオブ、タンタルのような金属材料を含んでいてもよく、また、銀、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、合金、および上述のものの組み合わせのような貴金属を含んでいてもよい。例えば、第1集電材108および/または第2集電材110は、アルミ泊や銅泊等からなっていてもよい。第1集電材108および/または第2集電材110は、対応する電極と外部回路との間の電荷の移動を可能とするようなサイズに設定された、長方形状の、または概ね長方形状の形状を有するとしてもよい。
【0039】
例えばエネルギー貯蔵装置100の電極の構成の様々な実施形態が、
図2A~
図2Dに示されている。
図2Aには、乾燥アノードと乾燥カソードとを含むエネルギー貯蔵装置が描かれている。
図2Bには、湿式アノードと乾燥カソードとを含むエネルギー貯蔵装置が描かれている。
図2Cには、乾燥アノードと湿式カソードとを含むエネルギー貯蔵装置が描かれている。
図2Dには、湿式アノードと湿式カソードとを含む、比較対象となるエネルギー貯蔵装置が描かれている。
図3Aには、汎用的な二極式の電極が描かれている。
図3B~
図3Eには、エネルギー貯蔵装置に用いられる乾燥したおよび/または湿式の電極薄膜を含む二極式の電極の様々な構成が描かれている。
図3Bには、乾燥アノードが乾燥カソードと結合されたセルが描かれている。
図3Cには、湿式アノードが乾燥カソードと結合されたセルが描かれている。
図3Dには、乾燥アノードが湿式カソードと結合されたセルが描かれている。
図3Eには、湿式アノードが湿式カソードに結合された、比較対象となるセルの構成が描かれている。
【0040】
図4A~
図4Eには、様々な電池の構成が描かれている。例えば、
図4Aには、カソードとアノードとが単一の接触領域を共有しているセルが、描かれている。
図4Bには、カソードが単一のアノードと2つの接触領域を共有しているセルの構成が、描かれている。
図4Bでは、カソードは両面カソードであり、また、カソードは、対向する表面において、集電材またはセパレータに好適な材料でコーティングされている。
図4Cでは、単一のアノードが2つの別々のカソードのそれぞれと2つの接触領域を共有しているセルの構成が描かれている。
図4Cでは、2つのカソードのそれぞれは両面カソードであり、各カソードは、対向する表面において、例えば集電材またはセパレータに好適な材料でコーティングされている。
図4Dでは、2つのアノードが2つの別々のカソードのそれぞれと2つの接触領域を共有しており、3つ目の別のカソードが上述の2つのアノードのそれぞれと接触領域を供給している。
図4Eでは、単一のアノードが単一のカソードと、単一の接触領域を共有しているが、電極対それ自体が折り曲げられているセルの構成が描かれている。いくつかの実施形態においては、エネルギー貯蔵装置は、
図4A~
図4Eのいずれか1つに描かれた構成を有するとしてもよい。さらなる実施形態においては、エネルギー貯蔵装置は、
図4A~
図4Eに描かれた態様をあらゆる組み合わせで組み合わせた構成を有するものとしてもよい。例えば、エネルギー貯蔵装置は、セルのうちの少なくとも1つが
図4A~
図4Eのいずれか1つに描かれた構成を有し、他のセルのうちの少なくとも1つが
図4A~
図4Eのうちのもう1つに描かれた構成を有しているものとしてもよい。さらに、エネルギー貯蔵装置は、
図4A~
図4Eのもうひとつの構成を有する電極との間でイオン的接触(例えば、ここで示された好適な電解質を染み込ませたセパレータにより分離される)または電気的接触(例えば、集電材により結合される)をする、
図4A~
図4Eのいずれか1つの電極を有しているとしてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの活物質が、処理された炭素材料を含む。ここで、処理された炭素材料は、米国特許出願公開第2014/0098464に記載されているように、水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基の、数の減少を含む。例えば、処理された炭素粒子は、処理された炭素の1つまたはそれ以上の表面について1つまたはそれ以上の官能基の数の減少を含むものとしてもよい。ここで、減少とは、非処理の炭素表面では約20%~約50%が含まれるのに対し、1つまたはそれ以上の官能基において約10%から約60%にのぼる減少である。処理された炭素は、数が減少された水素含有官能基、窒素含有官能基、および/または酸素含有官能基を含むものとすることができる。いくつかの実施形態においては、処理された炭素材料は、そのうちの約1%未満(約0.5%未満を含む)だけ水素を含むような官能基からなる。いくつかの実施形態においては、処理された炭素材料は、そのうちの約5%未満(約3%未満を含む)だけ酸素を含むような官能基からなる。さらなる実施形態では、処理された炭素材料は、非処理の炭素材料と比して、水素含有官能基が約30%少ない。
【0042】
いくつかの実施形態においては、エネルギー貯蔵装置100はリチウムイオン電池であるとすることができる。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池の電極の電極薄膜は、1つまたはそれ以上の活物質と、ここに提供された線維化された結着剤マトリックスと、を含む。
【0043】
さらなる実施形態においては、エネルギー貯蔵装置100には好適なリチウム含有電解物が詰められている。例えば、装置100には、リチウム塩と、例えば非水系のまたは有機溶媒などの溶媒と、が含まれるとすることができる。一般的に、リチウム塩は、酸化還元安定のアニオンを含む。いくつかの実施形態においては、アニオンは一価である。いくつかの実施形態においては、リチウム塩は、ヘキサフルオロりん酸塩(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(SO2CF3)2)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、およびこれらの組み合わせの中から選択される。いくつかの実施形態においては、電解物には、四級アンモニウムカチオンと、ヘキサフルオロりん酸、テトラフルオロホウ酸塩、およびヨウ化物からなるグループから選択されるアニオンと、が含まれるものとしてもよい。いくつかの実施形態においては、塩濃度は、約0.1mol/L(M)~約5M、約0.2M~約3M、または約0.3M~約2Mとしてもよい。さらなる実施形態においては、電解物の塩濃度は、約0.7M~約1Mである。ある実施形態においては、電解物の塩濃度は、約0.2M、約0.3M、約0.4M、約0.5M、約0.6M、約0.7M、約0.8mm、約0.9M、約1M、約1.1M、約1.2Mまたは、これらの値の間のあらゆる範囲とすることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、ここで提供されるエネルギー貯蔵装置の電解質には、液体溶媒が含まれていてもよい。ここで提供されるように、溶媒は全ての成分を溶解する必要はなく、電解物の成分のいずれについても完全に溶解する必要はない。さらなる実施形態では、溶媒は有機溶媒とすることができる。いくつかの実施形態では、溶媒には、炭酸塩、エーテル、および/またはエステルから選択される1つまたはそれ以上の官能基が含まれるとすることができる。いくつかの実施形態では、溶媒は炭酸塩により構成される。さらなる実施形態では、炭酸塩は、例えば炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、炭酸ビニレン(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、およびこれらの組み合わせのような環状炭酸エステルか、あるいは、例えばジメチル炭酸塩(DMC)、ジエチル炭酸塩(DEC)、エチルメチル炭酸塩(EMC)、およびこれらの組み合わせのような非環式炭酸塩の中から選択することができる。ある実施形態では、電解物には、LiPF6と、1つまたはそれ以上の炭酸塩とが、
含まれているとすることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池は、2.5V~4.5V、または3.0V~4.2Vで操作されるように構成される。さらなる実施形態では、リチウムイオン電池は、最小作動電圧として約2.5V~約3Vを、それぞれ有するように構成される。さらなる実施形態では、リチウムイオン電池は、最大作動電圧として約4.1V~約4.4Vを、それぞれ有するように構成される。
【0046】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置を製造する方法が提供される。さらなる実施形態では、方法には、アノードおよびカソードを選択する過程が含まれる。いくつかの実施形態では、アノードを選択する過程には、乾燥した自己支持形のアノード、または湿式のアノードを、選択する過程が含まれる。乾燥したアノードを選択する過程には、活物質を処理する方法を選択する過程と、結着剤を処理する方法を選択する過程と、が含まれていてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、ここで提供される電極薄膜は、少なくとも1つの活物質と、少なくとも1つの結着剤とを含む。少なくとも1つの活物質は、当該技術分野において知られるいかなる活物質であってもよい。少なくとも1つの活物質は、バッテリーのアノードまたはカソードに用いるのに好適な材料としてもよい。アノード活物質には、例えば、挿入材料(例えば、炭素、黒鉛、および/またはグラフェン)、合金材料または脱合金材料(例えば、ケイ素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ)、金属合金または合成物(例えば、Si-Al、および/またはSi-Sn)、および/または変換材料(例えば、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化ニッケル、および/または酸化銅)を含んでいてもよい。アノード活物質は、単独で用いられてもよいし、あるいは多相性材料(例えば、Si-C、Sn-C、SiOx-C、SnOx-C、Si-Sn、Si-SiOx、Sn-SnOx、Si-SiOx-C、Sn-SnOx-C、Si-Sn-C、SiOx-SnOx-C
、Si-SiOx-Sn、またはSn-SiOx-SnOx)を形成するために混合されて用いられてもよい。
【0048】
カソード活物質には、例えば、金属酸化物、金属硫化物、またはリチウム金属酸化物が含まれるとすることができる。リチウム金属酸化物は、例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムマンガン酸化物(LMO)、リチウム鉄りん酸(LFP)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、チタン酸リチウム(LTO)、および/またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)とすることができる。いくつかの実施形態では、カソード活物質には、例えば、積層遷移金属酸化物(例えば、LiCoO2(LCO)、Li(NiMnCo)O2(MNC)、および/またはLiNi0.8Co0.15Al0.05O2(NCA))、スピネルマンガン酸化物(例えば、LiMn
2O4(LMO)および/またはLiMn1.5Ni0.5O4(LMNO))、または、かんらん石(例えばLiFePO4)が含まれる。カソード活物質には、硫黄、または、硫酸リチウム(Li2S)や他の硫黄系材料またはこれらの混合物などの硫黄含有材料が、含まれるとすることができる。いくつかの実施形態では、カソード薄膜は、少なくとも50wt%の濃度で、硫黄または硫黄活物質を含む材料を含んでいる。いくつかの実施形態においては、硫黄または硫黄活物質含有材料を含むカソード薄膜は、少なくとも6mAh/cm2の比容量を有する。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活物質含有材料を含むカソード薄膜は、1g/cm3の電極薄膜密度を有する。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活物質含有材料を含むカソード薄膜は、結着剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、硫黄または硫黄活物質含有材料を含むカソード薄膜の結着剤は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ボリビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、他の熱可塑性プラスチック、またはこれらのいずれかの組み合わせの中から選択される。
【0049】
少なくとも1つの活物質は、1つまたはそれ以上の炭素材料を含んでいてもよい。炭素材料は、例えば、黒鉛化材料、黒鉛、グラフェン含有材料、硬質炭素、軟質炭素、カーボンナノチューブ、多孔質炭素、導電性カーボン、またはこれらの組み合わせの中から選択してもよい。活性化された炭素は、スチーム処理または酸/エッチング処理に由来するものとすることができる。いくつかの実施形態では、黒鉛化材料は、表面が処理された材料とすることができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は活性化炭素を含むものとすることができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は階層的構造の炭素を含むものとすることができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は、構造化されたカーボンナノチューブ、構造化されたカーボンナノワイヤ、および/または構造化されたカーボンナノシートを含むものとすることができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素はグラフェンシートを含むものとすることができる。いくつかの実施形態では、多孔質炭素は表面が処理された炭素であるとすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極薄膜には、約70重量%~約98重量%の少なくとも1つの活物質が含まれるとすることができる。この範囲には、約70重量%~約92重量%が含まれ、または、約70重量%~約96重量%が含まれる。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜は、約70重量%またはそれ以上の、約90重量%またはそれ以上の、約92重量%またはそれ以上の、約94重量%のまたはそれ以上の、約95重量%またはそれ以上の、約96重量%またはそれ以上の、または約98重量%またはそれ以上の、少なくとも1つの活物質を含み、あるいは上述のいずれかの値の間の範囲の少なくとも1つの活物質を含む。いくつかの実施形態では、リチウムイオン電池またはハイブリッドエネルギー貯蔵装置のカソード電極薄膜は、約40重量%~約60重量%の、少なくとも1つの活物質を含むものとすることができる。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜には、約10重量%までの多孔質炭素材料が含まれる。この範囲には、約5重量%まで、または約1重量%~約5重量%までも、含まれる。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜には、約10重量%またはそれ以上の、約5重量%またはそれ以上の、約1重量%またはそれ以上の、約0.5重量%またはそれ以上の多孔質炭素材料が含まれ、または上述のいずれかの値の間の範囲の多孔質炭素材料が含まれる。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜は、約5重量%(約1重量%~約3重量%を含む)の導電性添加物を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜には、約10重量%またはそれ以上の、5重量%の、約3重量%またはそれ以上の、または約1重量%またはそれ以上の、または上述のいずれかの値の間の範囲の、導電性添加物を含む。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜には、約20重量%まで(例えば、約1.5重量%~10重量%、約1.5重量%~5重量%、または約1.5重量%~3重量%)の結着剤が含まれる。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜には、約1.5重量%~約3重量%の結着剤が含まれる。いくつかの実施形態では、カソード電極薄膜には、約20重量%までの、約15重量%までの、約10重量%までの、約5重量%までの、約3重量%までの、約1.5重量%までの、約1重量%まで
の、または上述のいずれかの値の間の範囲の、結着剤が含まれる。
【0051】
いくつかの実施形態においては、アノード電極薄膜は、少なくとも1つの活物質と、結着剤とを含み、そして付加的に導電性添加物を含む。いくつかの実施形態では、導電性添加物には、カーボンブラックのような、導電性炭素添加物が含まれていてもよい。いくつかの実施形態においては、アノードの少なくとも1つの活物質には、合成黒鉛、天然黒鉛、硬質炭素、軟質炭素、グラフェン、メソ多孔質炭素、ケイ素、酸化ケイ素、スズ、酸化スズ、ゲルマニウム、リチウム、チタン酸塩、混合物、または上述の材料の混合物が含まれるとしてもよい。いくつかの実施形態においては、アノード電極薄膜には、約80重量%~約98重量%の少なくとも1つの活物質が含まれていてもよい。この範囲には、約80重量%~約98%、または約94重量%~約97重量%が含まれる。いくつかの実施形
態においては、アノード電極薄膜には、約80重量%、約85重量%、約90重量%、約92重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、または約99重量%の、または上述のいずれかの値の間の範囲の、少なくとも1つの活物質が含まれていてもよい。いくつかの実施形態においては、アノード電極薄膜には、約5重量%まで(約1重量%~約3重量%を含む)の導電性添加物が含まれる。いくつかの実施形態においては、アノード電極薄膜には、約5重量%またはそれ以上の、約3重量%またはそれ以上の、約1重量%またはそれ以上の、約0.5重量%またはそれ以上の、または上述のいずれかの値の間の範囲の、導電性添加物が含まれる。いくつかの実施形態においては、アノード電極薄膜には、約20重量%までの結着剤が含まれる。この範囲には、約1.5重量%~10重量%、約1.5重量%~5重量%、または約3重量%~5重量%が含まれる。いくつかの実施形態では、アノード電極薄膜には、約20重量%またはそれ以上の、約15重量%またはそれ以上の、約10重量%またはそれ以上の、約5重量%またはそれ以上の、約3重量%またはそれ以上の、約1.5重量%またはそれ以上の、約1重量%またはそれ以上の、または上述のいずれかの値の間の範囲の、結着剤が含まれる。いくつかの実施形態では、アノード薄膜には導電性添加物が含まれていなくてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態は、アノードおよび/またはカソードのような電極薄膜を含み、この電極薄膜は、高分子結着剤材料を含む1つまたはそれ以上の活性層を有する。結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリアルキレン、ポリエーテル、スチレン・ブタジエン、ポリシロキサンとポリシロキサンとの共重合体、分岐型ポリエーテル、ポリビニルエーテル、これらの共重合体、および/またはこれらの混合物が含まれるとすることができる。結着剤には、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)のようなセルロースが含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、ポリオレフィンには、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、これらの共重合体、および/またはこれらの混合物が含まれていてもよい。例えば、結着剤には、ポリビニレン塩化物、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(フェニレンオキシド)(PPO)、ポリエチレン-ブロック-ポリ(エチレングリコール)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリジメチルシロキサン-コアルキルメチルシロキサン、これらの共重合体、および/またはこれらの混合物が含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、結着剤は熱可塑性のものであってもよい。いくつかの実施形態では、結着剤には、線維化可能なポリマーが含まれていてもよい。ある実施形態では、結着剤はPTFEを含み、または本質的にはPTFEからなり、またはPTFEからなる。
【0053】
いくつかの実施形態では、結着剤には、PTFEと、付加的な1つまたはそれ以上の追加の結着剤成分と、が含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、結着剤には、1つまたはそれ以上のポリオレフィンおよび/またはこれらの共重合体と、PTFEと、が含まれていてもよい。いくつかの実施形態では、結着剤には、PTFEおよび1つまたはそれ以上のセルロース、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリエーテルの前駆体、ポリシロキサン、これらの重合体、および/またはこれらの混合物が含まれていてもよい。ポリマーの混合物は、上述のポリマーまたは共重合体の相互貫通網目構造を含んでいてもよい。
【0054】
結着剤は、様々な好適な比率からなる高分子成分を含んでいてもよい。例えば、PTFEは、結着剤の約98重量%まで、例えば約20重量%~約95重量%、約20重量%~約90重量%とすることができる。この範囲には、約20重量%~約80重量%、約30重量%~約70重量%、約30重量%~約50重量%、または約50重量%~約90重量%が含まれる。いくつかの実施形態では、PTFEは、結着剤の約99重量%またはそれ以上、約98重量%またはそれ以上、約95重量%またはそれ以上、約90重量%またはそれ以上、約80重量%またはそれ以上、約70重量%またはそれ以上、約60重量%ま
たはそれ以上、約50重量%またはそれ以上、約40重量%またはそれ以上、約30重量%またはそれ以上、約20重量%またはそれ以上、または上述のいずれかの値の間の範囲を、占めるものとすることができる。いくつかの実施形態では、結着剤は、本質的にPTFEからなり、または、PTFEからなるものとすることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、電極薄膜の混合物は、選択されたサイズを有する結着剤粒子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、結着剤粒子は、約50nm、約100nm、約150nm、約200nm、約250nm、約300nm、約350nm、約400nm、約450nm、約500nm、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約10μm、約50μm、約100μm、または上述のいずれかの値の間の範囲の、大きさである。
【0056】
ここで用いられるように、乾燥製造処理は、電極薄膜の形成において、溶媒が全く用いられていないか、または実質的に溶媒が用いられていないような処理を、指している。例えば、炭素材料や結着剤を含む、活性層または電極薄膜の構成成分には、乾燥粒子が含まれていてもよい。活性層または電極薄膜を形成するための乾燥粒子は、乾燥粒子活性層混合物を提供するために結合される。いくつかの実施形態では、活性層または電極薄膜の成分の重量パーセントと、乾燥粒子活性層混合物の成分の重量パーセントとが、実質的に同じとなるように、活性層または電極薄膜が乾燥粒子活性層混合物から形成されているとしてもよい。いくつかの実施形態では、乾燥製造処理を用いて乾燥粒子活性層混合物から形成された活性層または電極薄膜には、例えば溶媒や、溶媒から生じた残留物などの、処理添加物が全く含まれないか、あるいは実質的に含まれない。いくつかの実施形態では、結果として生じる活性層または電極薄膜は、乾燥処理を用いて乾燥粒子混合物から形成された自己形成形の薄膜である。いくつかの実施形態では、結果として生じる活性層または電極薄膜は、自立形の薄膜であり、乾燥処理を用いて乾燥粒子混合物から形成される。活性層または電極薄膜を形成するための処理には、線維化可能な結着剤成分を線維化することで、薄膜が線維化された結着剤を含むようにする過程が、含まれていてもよい。さらなる実施形態においては、自立形の活性層または薄膜は、集電材がない環境下で形成される。さらなる実施形態においては、活性層または電極薄膜は、線維化されたポリマーマトリックスを含んでいるとしてもよく、それにより薄膜が自己支持形をなしているとしてもよい。電極薄膜に機械的構造を提供するために、原繊維のマトリックス、格子、またはクモの巣状のものを形成することができると考えられる。
【0057】
いくつかの実施形態において、電極薄膜が乾燥しており、かつ/または自己形成形であるような、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜では、約12mg/cm2、約13mg/cm2、約14mg/cm2、約15mg/cm2、約16mg/cm2、約17mg/cm2、約18mg/cm2、約19mg/cm2、約20mg/cm2、約21mg/cm2、約22mg/cm2、約23mg/cm2、約24mg/cm2、約25mg/cm2、約26mg/cm2、約27mg/cm2、約28mg/cm2、約29mg/cm2、約30mg/cm2、約40mg/cm2、約50mg/cm2、約60mg/cm2、約70mg/cm2、約80mg/cm2、約90mg/cm2、約100mg/cm2、または上述のいずれかの値の間の範囲に含まれる程度の、高い電極材料のロード量、または高い活物質のロード量(これは、電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの電極薄膜の量として表現される)が、提供されるものとしてもよい。いくつかの実施形態において、電極薄膜が乾燥しており、かつ/または自己形成形であるような、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜では、少なくとも約12mg/cm2の、少なくとも約13mg/cm2の、少なくとも約14mg/cm2の、少なくとも約15mg/cm2の、少なくとも約16mg/cm2の、少なくとも約17mg/cm2の、少なくとも約18mg/cm2の、少なくとも約19mg/cm2の、少なくとも約20mg/cm2の、少なくとも約21mg/cm2の、少なくとも約22mg/cm2の、少なくとも約23mg/c
m2の、少なくとも約24mg/cm2の、少なくとも約25mg/cm2の、少なくとも約26mg/cm2の、少なくとも約27mg/cm2の、少なくとも約28mg/cm2の、少なくとも約29mg/cm2の、少なくとも約30mg/cm2の、少なくとも約40mg/cm2の、少なくとも約50mg/cm2の、少なくとも約60mg/cm2の、少なくとも約70mg/cm2の、少なくとも約80mg/cm2の、少なくとも約90mg/cm2の、少なくとも約100mg/cm2の、または上述のいずれかの値の間の範囲に含まれる程度の、高い電極材料のロード量、または高い活物質のロード量(これは、電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの電極薄膜の量として表現される)が、提供されるものとしてもよい。
【0058】
電極薄膜は、所定の適用において適した、選択された厚みを有するものとしてもよい。ここに提供された電極薄膜の厚みは、従来からある過程により用意された電極薄膜の厚みよりも、大きいとしてもよい。いくつかの実施形態では、電極薄膜は、約110ミクロン、約115ミクロン、約120ミクロン、約130ミクロン、約135ミクロン、約150ミクロン、約155ミクロン、約160ミクロン、約170ミクロン、約200ミクロン、約250ミクロン、約260ミクロン、約265ミクロン、約270ミクロン、約280ミクロン、約290ミクロン、約300ミクロン、約350ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン、約500ミクロン、約750ミクロン、約1mm、または約2mmかそれよりも大きい厚みを有するものとすることができ、あるいは上述の値の間のいずれかの範囲内となる厚みを有するものとすることができる。電極薄膜の厚みは、所望の比容量、比容量、面積エネルギー密度、エネルギー密度、または比エネルギー密度に対応するように選択することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ここに提供された電極薄膜の電極薄膜多孔性は、従来からある過程により用意された電極薄膜の多孔性よりも、大きいとしてもよい。いくつかの実施形態では、ここに提供された電極薄膜の電極薄膜多孔性は、従来からある過程により用意された電極薄膜の多孔性よりも、小さいとしてもよい。いくつかの実施形態においては、電極薄膜は、約10%、約12%、約14%、約16%、約18%、約20%、または上述の値の間のいずれかの範囲内の、電極薄膜多孔性(電極薄膜の体積のうち孔が占める体積のパーセンテージとして表現される)を有するものとすることができる。いくつかの実施形態では、電極薄膜は、約10%まで、約12%まで、約14%まで、約16%まで、約18%まで、約20%まで、または上述の値の間のいずれかの範囲内の電極薄膜多孔性(電極薄膜の体積のうち孔が占める体積のパーセンテージとして表現される)を有するものとすることができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、ここで提供される電極薄膜の電極薄膜密度は、従来からある過程により用意された電極薄膜の密度よりも、小さいとしてもよい。いくつかの実施形態では、ここで提供される電極薄膜の電極薄膜密度は、従来からある過程により用意された電極薄膜の密度よりも、大きいとしてもよい。いくつかの実施形態では、電極薄膜は、約0.8g/cm3、1.0g/cm3、1.4g/cm3、約1.5g/cm3、約1.6g/cm3、約1.7g/cm3、約1.8g/cm3、約1.9g/cm3、約2.0g/cm3、約2.5g/cm3、約3.0g/cm3、約3.3g/cm3、約3.4g/cm3、約3.5g/cm3、約3.6g/cm3、約3.7g/cm3、約3.8g/cm3、または上述の値の間のいずれかの範囲内の、電極薄膜密度を有するとすることができる。いくつかの実施形態では、電極薄膜は、約0.8g/cm3までの、1.0g/cm3の、1.4g/cm3の、約1.5g/cm3までの、約1.6g/cm3までの、約1.7g/cm3までの、約1.8g/cm3までの、約1.9g/cm3までの、約2.0g/cm3までの、または上述の値の間のいずれかの範囲内の、電極薄膜密度を有するとすることができる。いくつかの実施形態では、電極薄膜は、少なくとも約0.8g/cm3の、1.0g/cm3の、1.4g/cm3の、少なくとも約1.5g
/cm3の、少なくとも約1.6g/cm3の、少なくとも約1.7g/cm3の、少な
くとも約1.8g/cm3の、少なくとも約1.9g/cm3の、少なくとも約2.0g/cm3の、少なくとも約2.5g/cm3の、少なくとも約3.0g/cm3の、少なくとも約3.3g/cm3の、少なくとも約3.4g/cm3の、少なくとも約3.5g/cm3の、または上述の値の間のいずれかの範囲内の、電極薄膜密度を有するとすることができる。
【0061】
形成された電極は、従来からある過程における温度よりも低い温度の下で、ここで提供される電極薄膜に貼り合わされる。いくつかの実施形態では、形成された電極は、約20℃、約23℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約50℃、約60℃、約65℃、約90℃、約120℃、約150℃、約170℃、約200℃、または上述の値の間のいずれかの範囲内の温度の下で、貼り合わされる。いくつかの実施形態では、形成された電極は、およそ周囲の温度、または室内温度の下で、貼り合わされる。
【0062】
いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜であって、乾燥した状態の、かつ/または自己支持形の、電極薄膜は、約3.5mAh/cm2またはそれ以上の、約3.8mAh/cm2の、約4mAh/cm2の、約4.3mAh/cm2の、約4.5mAh/cm2の、約4.8mAh/cm2の、約5mAh/cm2の、約5.5mAh/cm2の、約6mAh/cm2の、約8mAh/cm2の、約10mAh/cm2の、または上述の値の間のいずれかの範囲内の比容量(電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの容量として表現される)を提供してもよい。さらなる実施形態では、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜であって、乾燥した状態の、かつ/または自己支持形の、電極薄膜は、少なくとも約8mAh/cm2の、例えば約8mAh/cm2の、約10mAh/cm2の、約12mAh/cm2の、約14mAh/cm2の、約16mAh/cm2の、約18mAh/cm2の、約20mAh/cm2の、または上述の値の間のいずれかの範囲内の比容量(電極薄膜または集電材のユニットエリアごとの容量として表現される)を提供してもよい。いくつかの実施形態においては、比容量は充電容量である。さらなる実施形態では、比容量は放電容量である。
【0063】
いくつかの実施形態においては、乾燥した状態の、かつ/または自己支持形の、黒鉛電池アノード電極薄膜は、約3.5mAh/cm2の、約4mAh/cm2の、約4.5mAh/cm2の、約5mAh/cm2の、約5.5mAh/cm2の、約6mAh/cm2の、約6.5mAh/cm2の、約7mAh/cm2の、約7.5mAh/cm2の、約8mAh/cm2の、約8.5mAh/cm2の、約9mAh/cm2の、約10mAh/cm2の、または上述の値の間のいずれかの範囲内の比容量を提供してもよい。いくつかの実施形態では、比容量は充電容量である。さらなる実施形態では、比容量は放電容量である。
【0064】
いくつかの実施形態においては、乾燥した状態の、かつ/または自己形成形の、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜は、約150mAh/g、約160mAh/g、約170mAh/g、約175mAh/g、約176mAh/g、約177mAh/g、約179mAh/g、約180mAh/g、約185mAh/g、約190mAh/g、約196mAh/g、約200mAh/g、約250mAh/g、約300mAh/g、約350mAh/g、約354mAh/g、約400mAh/g、または上述の値の間のいずれかの範囲内の、比容量(電極薄膜または集電材の量ごとの容量として表現される)を提供してもよい。さらなる実施形態においては、乾燥した状態の、かつ/または自己形成形の、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜は、少なくとも約170mAh/gの、少なくとも約250mAh/gの、または上述の値のいずれかの範囲内の、比容量(電極薄膜または集電材の量ごとの容量として表現される)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、比容量は充電容量である。さらなる実施形態では、比容量は放電容量である。いくつかの実施形態では
、電極はアノードおよび/またはカソードであるとしてもよい。いくつかの実施形態では、比容量は、最初の充電の、および/または、放電の容量である。さらなる実施形態では、比容量は、第1の充電および/または放電の後に測定された充電容量および/または放電容量である。
【0065】
いくつかの実施形態では、ここで示された自己支持形のドライ電極薄膜は、有利には、典型的な電極薄膜と比して改善された性能を発揮する。性能は、例えば、引張強度、弾性(伸張)、曲げ性、クーロン効率、容量、または導電性としてもよい。いくつかの実施形態では、乾燥した状態の、かつ/または自己形成形の、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜は、およそ、少なくとも約85%の、86%の、87%の、約88%の、約90%の、約91%の、約92%の、約93%の、約94%の、約95%の、クーロン効率(放電容量を充電容量で割ったもののパーセントとして表現される)を提供するとしてもよい。あるいは、クーロン効率は、例えば90.1%、90.5%、および91.9%のように、上述の値のいずれかの間の範囲内にあるとしてもよく、または上述の値のいずれかの間の範囲にあるとしてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、電極薄膜または電極が、乾燥した状態のおよび/または自己支持形の薄膜からなるような、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜または電極において、約10%または少なくとも約10%の、約20%または少なくとも約20%の、約30%のまたは少なくとも約30%の、約40%または少なくとも約40%の、約50%または少なくとも約50%の、約60%または少なくとも約60%の、約70%または少なくとも約70%の、約80%または少なくとも約80%の、約90%または少なくとも約90%の、約98%または少なくとも約98%の、約99%または少なくとも約99%の、約99.9%または少なくとも約99.9%の、約100%または少なくとも約100%の、または上述の値のいずれかの間の範囲に含まれる、充電容量保持率(与えられた比率における放電容量を、C/10で測定された放電容量で割ったものとして表現される)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、充電容量保持率の放電率は、約C/10または少なくとも約C/10、約C/5または少なくとも約C/5、約C/3または少なくとも約C/3、約C/2または少なくとも約C/2、約1Cまたは少なくとも約1C、約1.5Cまたは少なくとも約1.5C、約2Cまたは少なくとも約2C、またはこれらの値のいずれか間の範囲内にある。
【0067】
いくつかの実施形態では、電極薄膜または電極が、乾燥した状態のおよび/または自己支持形の薄膜からなるような、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜または電極において、約10%または少なくとも約10%の、約20%または少なくとも約20%の、約30%のまたは少なくとも約30%の、約40%または少なくとも約40%の、約50%または少なくとも約50%の、約60%または少なくとも約60%の、約70%または少なくとも約70%の、約80%または少なくとも約80%の、約90%または少なくとも約90%の、約98%または少なくとも約98%の、約99%または少なくとも約99%の、約99.9%または少なくとも約99.9%の、約100%または少なくとも約100%の、または上述の値のいずれかの間の範囲に含まれる、充電容量生産率(与えられた一定電流率において測定された充電容量を、C/10で測定された放電容量で割ったものとして表現される)を提供してもよい。いくつかの実施形態では、充電容量生産率の充電率は、約C/10または少なくとも約C/10、約C/5または少なくとも約C/5、約C/3または少なくとも約C/3、約C/2または少なくとも約C/2、約1Cまたは少なくとも約1C、約1.5Cまたは少なくとも約1.5C、約2Cまたは少なくとも約2C、またはこれらの値のいずれか間の範囲内にある。
【0068】
いくつかの実施形態では、乾燥した状態の、および/または自己形成形の、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜は、約200Wh/kgの、約210Wh/kgの、約220Wh/
kgの、約230Wh/kgの、約240Wh/kgの、約250Wh/kgの、約260Wh/kgの、約270Wh/kgの、約280Wh/kgの、約290Wh/kgの、約300Wh/kgの、約400Wh/kgの、約500Wh/kgの、約600Wh/kgの、約650Wh/kgの、約700Wh/kgの、約750Wh/kgの、約800Wh/kgの、約825Wh/kgの、約850Wh/kgの、約900Wh/kgの、またはこれらの値のいずれかの間の範囲に含まれる、比エネルギー密度または重量エネルギー密度(電極薄膜の量ごとのエネルギーとして表現される)を提供してもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、乾燥した状態の、および/または自己形成形の、エネルギー貯蔵装置の電極薄膜は、約550Wh/Lの、約600Wh/Lの、約630Wh/Lの、約650Wh/Lの、約680Wh/Lの、約700Wh/Lの、約750Wh/Lの、約850Wh/Lの、約950Wh/Lの、約1100Wh/Lの、約1400Wh/Lの、約1425Wh/Lの、約1450Wh/Lの、約1475Wh/Lの、約1500Wh/Lの、約1525Wh/Lの、約1550Wh/Lの、またはこれらの値のいずれかの間の範囲に含まれる、エネルギー密度または容量エネルギー密度(最終的な状態のまたはあるがままの状態の電極薄膜のユニット容量ごとのエネルギーとして表現される)。
【0070】
いくつかの実施形態では、自己支持形の乾燥した電池カソードは、湿式電池カソードと比して、オーム抵抗の低減、および/または、分極電圧特性の改善を、実現することができる。さらなる実施形態では、自己支持形の乾燥したカソードが組み込まれるリチウムイオン電池は、有利には、湿式カソードと湿式アノードとを有するリチウムイオン電池と比して、オーム抵抗の低減、および/または、分極電圧特性の改善を、実現することができる。さらなる実施形態では、自己支持形の乾燥したカソードが組み込まれるリチウムイオン電池によれば、湿式カソードを有するリチウムイオン電池と比して、改善されたエネルギー密度および/または比エネルギー密度を、実証することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、劣化した自己支持形の乾燥した電池電極は、劣化した湿式電池電極と比して、オーム抵抗の低減、分圧電圧特性の改善、および/または容量の改善を、実現することができる。いくつかの実施形態では、劣化後の乾燥した電池電極は、同様に劣化した湿式電池電極におけるオーム抵抗の低減の度合いに比べて、約5倍、約10倍、約15倍、または約20倍の、またはこれらの値のいずれかの間の範囲に含まれる倍率の、オーム抵抗の低減を、発揮する。いくつかの実施形態では、劣化後の乾燥した電池電極は、同様に劣化した湿式電池電極における電圧の低減の度合いに比べて、約1.5倍、約2倍、約3倍、または約5倍小さくなるまでの、またはこれらの値のいずれかの間の範囲に含まれる倍率だけ小さくなるまでの、電圧の低減を発揮する。いくつかの実施形態では、劣化した乾燥した電池電極は、同様に劣化した湿式電池電極における容量の低減の度合いに比べて、約1.5倍、約2倍、約3倍、または約5倍小さくなるまでの、またはこれらの値の間のいずれかの範囲に含まれる倍率だけ小さくなるまでの、容量の低減を発揮する。
【0072】
以下の具体的な例では、エネルギー密度が高く、比エネルギー密度が高く、厚さが大きく、および/または電極薄膜密度が高い、電池電極が製造された。
【0073】
[定義]
ここで用いられるように、「電池」および「キャパシタ」という用語は、当該技術分野の当業者にとって通常のおよび習慣的な意味が与えられるようにしている。「電池」および「キャパシタ」という用語は、互いに対して非排他的である。キャパシタまたは電池は、単独で作動される単一の電気化学的なセルを意味するとしてもよいし、マルチセルシステムの構成要素として作動されるとしてもよい。
【0074】
ここで用いられるように、エネルギー貯蔵装置の電圧は、単一の電池またはキャパシタセルの作動電圧である。電圧は、定格電圧を超えるとしてもよいし、ロードされる定格電圧以下であるとしてもよく、あるいは製作公差によるとしてもよい。
【0075】
ここで提供されるように、「自己支持形の」電極薄膜とは、薄膜または層を支持しつつ形状を維持するのに十分な結着剤マトリックス構造が組み込まれている電極薄膜であり、それにより、電極薄膜または層は自立することができる。エネルギー貯蔵装置に組み込まれたとき、自己支持形の電極薄膜または活性層は、上述のような結着剤マトリックス構造を含んでいるものである。一般的には、そして採用される方法によれば、このような電極薄膜または活性層は、いかなる外側の支持要素(例えば、集電材やその他の薄膜)を要することもなく、エネルギー貯蔵装置の製造処理に用いられる上で必要な強度を有している。例えば、「自己支持形の」電極は、電極の製造処理において、他の支持要素を要することなく、巻かれて、ハンドリングされて、そして展開されるのに必要な十分な強度を有するとしてもよい。カソード電極薄膜またはアノード電極薄膜のような、ドライ電極薄膜は、自己支持形であるものとしてもよい。
【0076】
ここで提供されるように、「溶媒フリーの」電極薄膜は、検出可能な処理溶媒か、処理溶媒の残留物か、または処理溶媒の不純物が、含まれていない、電極薄膜を指す。例えばカソード電極薄膜やアノード電極薄膜などの、ドライ電極薄膜は、溶媒フリーであるとしてもよい。
【0077】
「湿式」電極、「ウェット処理した」電極、またはスラリー電極は、活物質、結着剤、および付加的な添加物のスラリーの過程を少なくとも1つ含んで用意される電極を指す。湿式電極には、処理溶媒、処理溶媒の残留物、および/または処理溶媒の不純物が、含まれていてもよい。
【0078】
[例1:厚い電極]
乾燥した電池のアノードは、96重量%の黒鉛と、4重量%の結着剤とを含んで製造された。結着剤には、2重量%のPTFEと、1重量%のCMCと、1重量%のPVDFとが含まれ、合計で結着剤が4重量%を占めていた。カソードも、乾燥処理により製造された。カソードは94重量%のNMC622と、3重量%の導電性電荷物と、3重量%のポリマー結着剤とを含んでいた。加えて、ウェット処理による電極が、以下の組成を有するように製造された。すなわち、ウェット処理によるアノードには、95.7重量%の黒鉛と、1重量%の導電性添加物と、3.3重量%のポリマー結着剤とが含まれていた。また、ウェット処理によるカソードには、91.5重量%の活性成分と、4.4重量%の導電性添加物と、4.1重量%のポリマー結着剤とが含まれていた。電極薄膜の他の組成を創作し用意することも可能であり、ここでの開示は、開示した具体的な組成に限定されるものではない。
【0079】
4つのリチウムイオン電池が、表1のスキームに従って組み合わされた。表1の各々のリチウムイオン電池は、比容量(
図5Aを参照)、クーロン効率(
図5Bを参照)、充電時および放電時における分極(
図6を参照)、およびエネルギー密度/比エネルギー密度(
図7を参照)に関して試験された。
【0080】
図5Aおよび
図5Bに示されているように、ドライ電極が組み込まれている電池の性能は、湿式カソードと湿式アノードとが含まれる電池と比べて、良好であった。
図5Aにおいては、乾燥したカソードを有する電池(「タイプ1」および「タイプ2」)で測定された比容量が、最も良好であった。
図5Bにおいては、乾燥したカソードを有する電池(ここでも、「タイプ1」および「タイプ2」)で測定されたクーロン効率が、最も良好であ
った。
図5Aおよび
図5Bで試験された電池に関し、電極材料のロード量は、タイプ1で20.9mg/cm
2、タイプ2で24.3mg/cm
2、タイプ3で22.8mg/c
m
2、タイプ4で24.1mg/cm
2であった。
【0081】
図6は、表1に従って組み合わされた電極対の全リチウムイオン電池セルの分極挙動を示している。湿式アノードと湿式カソードの対(「湿式-湿式」、表1のタイプ4)を含むリチウムイオン電池は、乾燥アノードと乾燥カソードの対(「乾燥-乾燥」、表1のタイプ1)を含む場合と比べて、充電時には急激な電圧分極を発揮し、放電時には迅速な電圧降下を発揮した。これは、湿式-湿式の対を有するセルにおいて、より高いオーム抵抗の支えとな
る。理論により制限されることなく、電流が同様に付与されている状況下では、リチウムイオンの拡散が低速である方が、湿式-湿式のセルにおいて抵抗が増加すると考えられる。示された例では、湿式カソードを乾燥カソードに置き換えると(「乾燥-湿式」、表1のタイプ2に対応)、電圧プロファイルが著しく向上していた。このことから、乾燥電極を組み込むことにより、湿式-湿式セルにおいて検出されるオームインピーダンスが低減されることが示唆される。
図6で試験された電池においては、電極材料のロード量は、タイプ1で20.9mg/cm
2、タイプ2で23.9mg/cm
2、タイプ3で23.0mg/cm
2、タイプ4で23.8mg/cm
2であった。
【0082】
図7に示されるように、自己支持形の乾燥カソードが組み込まれるリチウムイオン電池は、湿式-湿式電池セルと比して、著しく改善されたエネルギー密度および比エネルギー密度を示した。
図7の実施形態では、乾燥カソードが組み込まれるセル(「タイプ1」および「タイプ2」)のエネルギー密度および具体的なエネルギーは、湿式カソードを有する場合(「タイプ3」および「タイプ4」)よりも、著しく高かった。
【0083】
示されるように、乾燥電池電極は、いくつかの実施形態においては、エネルギー貯蔵装置の電気化学的性能を向上させることができる。例えば、乾燥電池電極は、ウェット処理による電極のみが組み込まれるエネルギー貯蔵装置と比して、1つのウェット処理による電極が組み込まれるエネルギー貯蔵装置の性能を、向上させることができることが明らかとなった。とりわけ、自己支持形の乾燥カソードを用いると、リチウムイオン電池の性能を向上させることができることが、明らかとなった。
【0084】
図8Aと
図8Bは、同一のアノード製造方法を用いた2つの異なる乾燥混合処理によりそれぞれ用意される黒鉛アノードにおける、比容量とクーロン効率との結果を、示している。1つ目の、黒鉛、結着剤、および添加剤を含むアノード薄膜は、複数の連続的なステップにより混合して作製され(「混合A」)2つ目のアノード薄膜は、全ての材料が1ステップで混合される態様で製造された(「混合B」)。混合Aは、以下の手順により行われた。すなわち、黒鉛と第1の結着剤(CMC)とが結合されて第1の混合物が形成され、第1の混合物が第2の結着剤(PVDF)と結合されて第2の混合物が形成され、第2の混合物が第3の結着剤(PTFE)と結合されて第3の混合物が形成された。各ステップにおける混合の条件は、同一であった。混合Aによるアノードの方が、より高い具体的な充電容量および放電容量を示した。混合Aによるアノードも、混合Bによるアノードも、同様のクーロン効率を示した。理論によって制限されることなく、クーロン効率は、活物質の表面積の量に応じてある程度は決まると考えられる。このように、混合Aにおける向上された電気化学的性能は、混合Aの電極における粉体成分の均一な拡散によってもたらされると仮定することができる。電極材料のロード量は、混合Aの電極では23.1mg/cm
2、混合Bの電極では23.4mg/cm
2であった。
【0085】
図9Aと
図9Bは、同一のアノードの製造を処理するために用いられる2つの異なる混合器の技術を用いて用意される黒鉛アノードにおける、比容量とクーロン効率との結果を
、提供している。黒鉛、結着剤、および添加剤を含む1つ目のアノードは、ブレードブレンダにより結合され(「ミキサーA」)、2つ目のアノードは、材料が音響共鳴ミキサーで結合されることにより製造された(「ミキサーB」)。具体的な充電容量/放電容量およびクーロン効率の両方において、ミキサーBにより生産されるアノードの電気化学的な性能の方が、高かった。粉体成分はミキサーBの電極においてより良好に拡散されており、また、活物質の粒子は逆にあまり損傷を受けていないと仮定できる。電極材料のロード量は、ミキサーAの電極では16mg/cm
2、ミキサーBの電極では17.8mg/cm
2であった。
【0086】
図10Aおよび
図10Bは、予め粉砕されていないポリマー結着剤(相対的な「処理A」)と、残りの電極製造成分を導入する前にジェットミルを用いて処理された予め粉砕されたポリマー結着剤と、をそれぞれ用いて用意された、同一の材料組成からなる黒鉛アノードにおける、比容量とクーロン効率との結果を、提供している。残りの電極製造成分を導入した後、次の処理ステップ(「処理B」)の実行が行われる。具体的な充電容量/放電容量およびクーロン効率のいずれにおいても、処理Bの電極は、処理Aのものよりも優れていた。電極材料のロード量は、処理Aの電極では17.8mg/cm
2、処理Bの電極では19.5mg/cm
2であった。
【0087】
2つの付加的なアノードが製造され、試験された。ジェットミルによるステップを利用して処理された活物質と、同じくジェットミルによるステップを利用して処理された結着剤と、を用いて、第1の乾燥した電池の黒鉛アノードが用意された(「製法1」)。タンブルブレンダーのような穏やかなパウダー処理を利用して処理され、ジェットミルによる処理は行われなかった活物質と、ジェットミルによるステップを利用して処理された結着剤と、を用いて、第2の乾燥した電池の黒鉛アノードが用意された(「製法4」)。比容量およびクーロン効率の結果が、
図11Aおよび
図11Bに示されている。非破壊的に処理された活物質と、ジェットミルで処理された結着剤と、を有している製法4による電極は、製法1によるものよりも、良好な比容量と効率性能とを発揮した。電極材料のロード量は、製法1の電極では20.2mg/cm
2、製法4の電極では19.5mg/cm
2であった。
【0088】
[厚くドライ電極における比容量]
表3は、厚いNMC622カソードと、厚い黒鉛アノードと、における電極の詳細を提供している。NMC622カソードは、94重量%のNMC622と、2重量%の多孔質炭素と、1重量%の導電性炭素と、3重量%のPTFEと、からなる。黒鉛アノードは、96重量%の黒鉛と、1.5重量%のCMCと、0.5重量%のPVDFと、2重量%のPTFEと、からなる。乾燥NMC622電極および黒鉛電極のそれぞれについての、ハーフセル第1サイクルの結果が、
図12および
図13に示されている。
図12のハーフセルは、室温においてC/20の定電流で4.3Vでの遮断まで充電され、その後、定電圧がC/40での遮断まで維持され、その後、室温においてC/20の定電流で2.7Vでの遮断まで放電された。
図13のハーフセルは、室温においてC/20の定電流で5mVでの遮断まで充電され、その後、定電圧がC/40での遮断まで維持され、その後、室温においてC/20の定電流で2Vでの遮断まで放電された。両方の極性における、第1サイクルに特有の放電容量は、製造業者の特有の目標容量(NMC622については175mAh/g、また、表4に記録されるように350mAh/g)を超えている。これらのハーフセルの電気化学的な結果は、分厚く、乾燥し、コーティングされたリチウムイオン電池の電極が、改善された機能性を有することを示唆している。
【0089】
【0090】
【0091】
図14は、電極材料のロード量が約29mg/cm
2、約38mg/cm
2、および約46mg/cm
2、のドライコーティングされたNMC電極の第1のサイクルにおける電気化学的なハーフセルの結果を提供している。対応する電極の厚さは、これら3つのロード量と比例し、すなわちそれぞれ、117μm、137μm、および169μmである。3つのカソードの全てについて、具体的な充電容量は196mAh/gである。3つのカソードの全てについての具体的な放電容量は、NMC622における製造業者の目標値である175mAh/gを上回っている。そのため、これらの効率は90%(放電容量を充電容量で除算したもの)を超えている。比較例として、約80μmの厚さのウェットコーティングされたNMC622カソードは、約87.5%の効率を提供し、同様の具体的な
充電容量を提供する。より厚さを大きくすると、ウェットコーティングされた電極は、典型的には、エネルギー密度、第1の充電容量、サイクル寿命、および高温保管において、退歩することとなる(これを支持するデータが以下に提供される)。これらの結果は、ドライコーティングされた分厚いNMC622カソードによれば、伝統的なウェットコーティングされた電極の場合と比して、より急速の充電、および、より高いエネルギー密度を提供できることを示唆している。
【0092】
[例3:厚い電極における充電および放電の性能]
図15Aおよび
図15Bは、乾燥したおよびウェットコーティングされた電極における、放電率電圧プロファイルを、それぞれ提供している。両方のコーティング技術に用いられる活物質は、カソードに関してはNMC622、アノードに関しては黒鉛である。湿式のNMC622カソードは、約92重量%のNMC622と、4重量%の導電性炭素と、
4重量%のPVDFとにより構成されている。湿式のNMC622カソードは、41.0mg/cm
2のロード量にて形成され、それにより、155μmの膜厚、36%の多孔性、および2.66g/cm
3の電極薄膜密度が得られる。湿式の黒鉛アノードは、約96重量%の黒鉛と、1重量%の導電性炭素と、3重量%のCMC/スチレン-ブタジエン結着剤とにより構成されている。湿式の黒鉛アノードは、24.5mg/cm
2のロード量にて形成され、それにより、182μmの膜厚、37.5%の多孔性、および1.35g/cm
3の電極薄膜密度が得られる。
【0093】
乾燥したNMC622カソードは、約95重量%のNMC622と、2重量%の多孔性炭素と、1重量%の伝導性炭素と、2重量%のPTFEにより構成されている。乾燥した黒鉛アノードは、約96重量%の黒鉛と、1重量%のCMCと、1重量%のPVDFと、2重量%のPTFEにより構成される。乾燥したNMC622カソードおよび乾燥した黒鉛アノードのさらなる特性は、以下において表5に示されている。
【0094】
【0095】
設計された電極の比容量は、約6.6mAh/cm
2であり、両方のコーティング技術を比較するために用いられたセルのフォーマットは、同一である。セル容量を確立するために用いられた充電速度は、C/10速度の下で測定され、その結果、乾燥した、および湿式の、両方のコーティングされた電極において、約0.14Ahとなった。
図16に見られるように、与えられた速度における充電容量をC/10で測定した放電容量で除算したものとして定義される充電容量保持率は、放電率がC/10から1.5Cへと増加することに伴い、ウェットコーティングされた電極においてより急速に低下した。これらの結果より、1.5Cの放電率で操作される与えられた電池において、ウェットコーティングされた電極が、3倍以上のランタイムを提供することが、示唆される。
【0096】
図17Aおよび
図17Bは、乾燥したおよびウェットコーティングされた電極における、充電速度電圧プロファイルを、それぞれ提供している。
図17Aおよび
図17Bに示された両方の電極は、定電流の下で充電された。両方のコーティング技術において用いられた活物質は、カソードではNMC622であり、アノードでは黒鉛であった。設計された電極の比容量は6.6mAh/cm
2であり、両方のコーティング技術を比較するために用いられたセルのフォーマットは同一である。セル容量を確立するために用いられた充電速度は、C/10の速度で測定され、その結果、乾燥したおよび湿式の、両方のコーティングされた電極において、約0.16Ahとなった。
図18に示されるように、与えられた定電流速度の下で測定された充電容量をC/10で測定した放電容量で除算したものとして定義される、充電容量生産率は、充電速度がC/5から2Cへと増加するのに伴って、ウェットコーティングされた電極において、乾燥しコーティングされた分厚い電極と比して、より一層急速に減少する。これらの結果は、急速充電の条件下(例えば、2Cの速
度)での与えられた電池においては、ドライコーティングされた厚い電極は、ウェットコーティングされた電極と比して、5倍以上大きい容量を提供することを示唆している。
【0097】
[例4:厚い電極の高温での保存]
表6は、乾燥処理により生産される厚いNMC622カソードと、厚い黒鉛アノードとの、電極の詳細を提供している。乾燥したNMC622カソードは、約95重量%のNMC622と、2重量%の多孔質炭素と、1重量%の導電性炭素と、2重量%のPTFEとから構成される。乾燥した黒鉛アノードは、約96重量%の黒鉛と、1重量%のCMCと、1重量%のPVDFと、2重量%のPTFEとから構成される。
【0098】
【0099】
表7は、ウェット処理により生産される厚いNMC622カソードと、厚い黒鉛アノードとの、電極の詳細を提供している。湿式のNMC622カソードは、約92重量%のNMC622と、4重量%の導電性炭素と、4重量%のPVDFとにより、構成される。湿式の黒鉛アノードは、約96重量%の黒鉛と、1重量%の導電性炭素と、3重量%のCMC/スチレン-ブタジエン結着剤とにより、構成される。表5および表6のコーティング技術を比較するために用いられるセルのフォーマットは、同一である。
【0100】
【0101】
図19Aおよび
図19Bは、表6に示されるドライコーティングされた厚い電極における、劣化前と劣化後のそれぞれにおける、電気化学的なインピーダンス分光データを、提供している。
図19Cおよび
図19Dは、表7に示されるウェットコーティングされた厚い電極における、劣化前と劣化後のそれぞれにおける、電気化学的なインピーダンス分光データを、提供している。測定の記録は、劣化前と劣化後の両方において、100%充電状態(SOC)の下で行われた。両方のコーティング技術において用いられた活物質は、カソードについてはNMC622、アノードについては黒鉛である。
図19Aと
図19Cとを比較すれば分かるように、高温での保存の前における、ドライコーティングされた電極セルの抵抗は、ウェットコーティングされた電極セルのそれよりも、一貫して低い。
図19Bおよび
図19Dを比較すれば分かるように、セ氏65度、100%SOCの状況下で6週間、セルを保存した後、ウェットコーティングされた電極セルの抵抗は、ドライコーティングされた電極セルで観察された最小の変化と比して、約10倍に増加した。
【0102】
図20に見られるように、セ氏65度、100%SOCの状況下で6週間保存した後においては、ウェットコーティングされた電極のセル電圧は、ドライコーティングされた電極よりも、深刻な影響を受けた。ウェットコーティングされた電極において降下した電圧は、ドライコーティングされた電極のそれよりも約3倍高く、それぞれ、255ミリボルトと、約108ミリボルトであった。
【0103】
図21に示されるように、6週間の劣化の後、高温の保存条件は、ウェットコーティン
グされた電極セルの容量を、ドライコーティングされた電極セルのそれよりも、著しく悪化させた。セ氏65度、100%SOCの状況下で6週間を経た後、ウェットコーティングされた電極セルは、ドライコーティングされた電極セルよりも、約2倍多くの容量を失った(37%:17.7%)。
【0104】
図19Aから
図21に示される比較テストの集合は、例えば電気自動車のバッテリーのような多数の適用において、ドライコーティングされた電極は、ウェットコーティングされた厚い電極と比して、高性能運転条件下で、より早い充電時間で、そして、より長い寿命の下、より広範囲を提供することを示唆している。
【0105】
[例5:高密度な電極および電極薄膜]
電極の物理的特性および電気化学的性能を維持しながら、電極薄膜の密度を向上させ、それにより、上記のような湿式キャスティングによる電極材料の高ロードという問題を克服できるような、電極の形成、および、薄膜の圧延処理が開発されてきた。2つの電極製造法には、94重量%の黒鉛活物質と、6重量%のポリマー結着剤と、が含まれ、これらが37℃~約150℃までの範囲の温度の下で圧延される。製法1は、94重量%の黒鉛と、3重量%のCMCと、3重量%のPTFEとからなり、製法2は、94重量%の黒鉛と、2重量%のCMCと、1重量%のPVDFと、3重量%のPTFEとからなる。製法を最適化することにより、そして、黒鉛電極を低温で圧延することにより、電極薄膜の密度を大幅に向上することができると、示唆される。様々な温度で圧延した製法1及び2における電極薄膜の密度を、以下の表8に示してある。
【0106】
【0107】
さらに、94%活物質の製造において、黒鉛アノードおよびカソードのそれぞれの電極材料ロード量を40mg/cm
2~50mg/cm
2程度まで著しく高くすると、35℃ぐらいの低い温度での乾燥電極処理により、6%結着剤が製造されることが示唆され、そして広範囲の電極薄膜密度にわたって、従来の低い薄膜密度の湿式の電極(Benchmarkを参照)と比して、リバーシブルな容量の受け渡しが示唆される。加えて、
図24Aおよび
図24Bは、このような高い電極材料のロードと高い電極薄膜の密度とにより用意される電極のエネルギー密度は、電極レベルにおいて、電極材料ロード量が24.7mg/cm
2のウェットコーティングされた黒鉛アノードと比して、重量分析の密度については52%の向上が、体積的な密度については198%の向上が、それぞれ見られた。加えて、電極密度については、従来型の湿式のスラリー電極の場合と比して、36%の増加
が見られた。
【0108】
[固体の状態]
いくつかの例では、ここに示された電極薄膜を含む固体状態のエネルギー貯蔵装置が、開示される。いくつかの実施形態では、固体状態のエネルギー貯蔵装置は、固体状態の電池である。固体状態の電池は、非可燃性の要素を採用することにより、安全性を向上している。加えて、固体状態の電池は、典型的な液体系のリチウムイオン電池と比して、突起形成の問題がそれほど深刻ではないため、リチウム元素金属を安全に利用することができる。リチウム金属は、黒鉛と比べて、著しく高い理論上の比容量を提供する。そのため、リチウム金属は、典型的なリチウムイオン電池に対して、エネルギー密度を向上できる。さらに、乾燥電極処理法は、従来型の方法に比べて安価で、より安全であることが期待される。典型的には、固体状のリチウム電池は、イオン伝導性のおよび/または電気伝導性のカソードと、固体状の電解物と、リチウム金属アノードとを備える。いくつかの実施形態では、電解物のうちの少なくとも1つは、固体電解質塩を含む。いくつかの実施形態では、固体状の電解粒は、イオン伝導性の無機性の固体電解物である。いくつかの実施形態では、乾燥処理された混合式の固体ポリマー電解物(SPE)である。
【0109】
いくつかの実施形態では、固体状の電解質塩はリチウム塩である。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、リチウムヘキサフルオロりん酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムテトラフルオロホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、リチウムビス(グルオロスルフォニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩、およびリチウム過塩素酸塩の中から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、電極塩は、例えば、Li6.5La3Zn1.5Ta0.5O12、Li6La3SnMO12(M=Sb,Nb,Ta,Zr)、Li5La3Ta2O12、およびLi3Nのような、ガーネット型構造を有する。いくつかの実施形態では、電極塩は、硫黄系の電極塩であり、例えば、Li2S-P2S5およびLi2S-P2S5-Li3PO4などである。いくつかの実施形態では、電極塩は、Li0.5La0.5TiO3(LLTO)および/またはLi7La3Zr2O12(LLZO)である。いくつかの実施形態では、電極塩はLISCON(Lithium Super Ionic Conductor)である。LISCONは、例えばLi(2+2X)Zn(1-X)GeO4の分子式を有していてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、混合物である固体状のポリマー電解物(SPE)は、少なくとも1つのイオン伝導性のポリマーを含む。いくつかの実施形態では、SPEには少なくとも1つのリチウムイオン塩が含まれる。いくつかの実施形態では、SPEには少なくとも1つの支持ポリマー結着剤が含まれる。いくつかの実施形態では、SPEは少なくとも1つの充填剤を備える。いくつかの実施形態では、SPEには、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーと、少なくとも1つのリチウムイオン塩とが、含まれる。いくつかの実施形態では、SPEには、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーと、少なくとも1つのリチウムイオン塩と、少なくとも1つの支持ポリマーとが、含まれる。いくつかの実施形態では、SPEには、少なくとも1つのイオン伝導性ポリマーと、少なくとも1つのリチウムイオン塩と、少なくとも1つの支持ポリマーと、少なくとも1つの充填剤とが、含まれる。
【0111】
いくつかの実施形態においては、イオン伝導性ポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)、ポリ(メチレンオキシド)、ポリオキシメチレン、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(メチルメタクリル酸塩)、ポリ(ビニル酢酸塩)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニル酢酸塩)、ポリ(オキシエチレン)9メタクリル酸塩、ポリ(エチレンオキシド)メチル
エーテルメタクリル酸塩、およびポリ(プロピレンイミン)の中から少なくとも1つ選択される。
【0112】
いくつかの実施形態においては、リチウム塩は、リチウムヘキサフルオロりん酸塩、リチウム(テトラフルオロホウ酸塩)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウム過塩素酸塩(LiClO4
)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)(Li(C2F5
SO2)2N)、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩(LiB(C2O4)2)、リチウムトリフルオロメタンスルホン酸塩(LiCF3SO3)、Li6.4La3Zn4Ta0.6O12、Li7La3Zr2O12、Li10SnP2S12、Li3XLa2/3-XTiO3、Li0.8La0.6Zr2(PO4)3、Li1+XTi2-XA
lX(PO4)3、Li1+X+yTi2―XAlXSiy(PO4)3-y、およびLiTiXZr2-X(PO4)3の中から少なくとも1つ選択される。いくつかの実施形態では、リチウム塩は、ここで前述されたリチウム塩としてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態を示したが、これらの実施形態は例としてのみ示しているのであり、本開示の範囲を制限することを意図したものではない。実際に、ここに示した新しい方法およびシステムは、他の様々な形式においても具体化することができる。さらに、本開示の精神から逸脱することなく、ここに示されたシステムおよび方法に対して、様々な省略、置換、および変化を加えることができる。添付されたクレームおよびその均等物は、このような形式または修飾が、本開示の範囲および精神に包含されることを意図している。
【0114】
矛盾が生じない限り、特定の態様、実施形態、または例と合わせて、ここに示された特徴、材料、特性、またはグループは、この明細書のこのセクションまたは他の箇所に示された他のあらゆる態様、実施形態、または例にも、適用可能であると理解されるべきである。この明細書に開示される全ての特徴(添付のクレーム、要約書、および図面のいずれをも含む)、および/または、開示される全ての方法または処理のどのステップにおいても、あらゆる組み合わせをなすように結合することができる。ただし、このような特徴および/または方法の少なくともいくつかが相互排他的であるような組み合わせは、含まれない。保護は、前述のいずれの実施形態の詳細によっても、制限されることはない。保護は、この明細書(添付されたクレーム、要約書、および図面のいずれをも含む)に開示される特徴のうち、新しい1つ、または新しい組み合わせのいずれにも、及ぶ。あるいは、保護は、開示される全ての方法または処理のあらゆるステップのうち、新しい1つ、または新しい組み合わせのいずれにも、及ぶ。
【0115】
さらに、文脈において個別の実施として、この開示中に示された特徴は、単一の実施において組み合わされて実施されてもよい。反対に、文脈において単一の実施として示された様々な特徴は、個別にまたはあらゆる適宜のサブコンビネーションとして、複数の実施において実施されることとしてもよい。さらに、ある特徴がある組み合わせにおいて動作するように、上述のように示されていたとしても、場合によっては、クレームされた組み合わせの中から1つまたはそれ以上の特徴を切り出し、切り出した特徴を、サブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変位形として、クレームしてもよい。
【0116】
さらに、ある操作が、特定の順番となるように、図面に示されまたは明細書に記載されていたとしても、望ましい結果を達成するためには、このような操作は、必ずしも、示された特定の順序または順番に実施されなくてもよく、あるいは必ずしもすべての操作が実施されなくてもよい。例としての方法および処理に、記載または示されていない操作を組
み込んでもよい。例えば、1つまたはそれ以上の付加的な操作が、上述された操作の前に、後に、同時に、または示された操作の間に、実行されてもよい。さらに、操作は、他の実施において再配列され、または再び順番付けられてもよい。いくつかの実施形態において、図示されたおよび/または開示された処理において実行される実際のステップは、図に示されたものとは異なっていてもよいと、当業者は認識するであろう。実施形態に応じて、上述のうちのあるステップを削除してもよいし、他のステップを付加してもよい。さらに、上に開示された具体的な実施形態の特徴および属性は、付加的な実施形態を形成するように、他の態様で結合されてもよく、このような全ての実施形態は、本開示の範囲に包含される。また、上述の実施における様々なシステムの要素の分離は、全ての実施においてこのような分離を要求するものと理解されるべきではなく、記載された要素およびシステムは、通常、単一の生産物を形成するように結合されてもよいし、あるいは複数の生産物にパッケージ化されてもよいと理解されるべきである。例えば、ここで示されるエネルギー貯蔵装置の要素は、いずれについても、単独で提供されてもよいし、あるはエネルギー貯蔵システムを形成するように一緒に統合(例えば、一緒にパッケージ化したり、あるいは結合したり)されてもよい。
【0117】
本開示の目的として、いくつかの態様、利点、および新規な特徴が、ここに記載される。いずれの特定の実施形態においても、このような利点が全て達成されることが必須とされる訳ではない。このように、例えば、ここで教示されたように、1つの利点を達成するような態様で、または複数の利点のグループを達成するような態様で、本開示を具体化しまたは実行することが可能であると、当業者は認識するであろう。その際、ここに教示されまたは示唆されるように、他の利点は必ずしも達成されなくてもよい。
【0118】
「できる」、「し得る」、「であろう」、または「してもよい」のような条件付きの言語は、他の意味をなすように具体的に言及していない限りにおいて、また、用いられる文脈において他の意味をなすように理解されない限りにおいて、ある特徴、要素、および/またはステップが、特定の実施形態には含まれ、他の実施形態には含まれないことを伝えることを、通常は意図している。このように、このような条件付きの言語は通常、ある特徴、要素、および/またはステップがいずれにしても1つまたはそれ以上の実施形態において必須とされることを暗示することを意図するものではない。また、これらの特徴、要素、および/またはステップがいずれかの具体的な実施形態に含まれるかあるいは実行されるかについての、ユーザによるインプットまたは誘発を伴うまたは伴わない決定のための論理を、1つまたはそれ以上の実施形態が必須とすることを暗示することを意図するものでもない。
【0119】
「X、Y、およびZのうちの少なくとも1つ」という句などの、結合言語は、他の意味をなすように具体的に言及していない限り、通常用いられる文脈において理解され、すなわち、ある事項、用語などが、X、YまたはZのいずれかであることを伝えるものである。このように、このような結合言語は通常、ある実施形態において、少なくとも1つのXと、少なくとも1つのYと、少なくとも1つのZと、の存在が必須であることを暗示することを意図したものではない。
【0120】
例えば、ここで用いられる「およそ」、「約」、「通常は」、「実質的に」のような、程度を示す言語は、言及された値、量、または特性に近似した値、量、または特性であって、その値、量、または特性をとるとしても所望の機能を果たし、または所望の結果を達成し得るような、値、量、または特性を表す。例えば、「およそ」、「約」、「通常は」、「実質的に」のような用語は、言及された量と比して、10%の差の範囲内の、5%の差の範囲内の、1%の差の範囲内の、0.1%の差の範囲内の、および0.01%の差の範囲内の量を指し、この範囲は、所望の機能または所望の結果に応じて異なる。
【0121】
ここに提供される見出しは、もし存在するとしても、単に便宜上のものであり、ここに開示される装置および方法の範囲または意味に必ずしも影響するものではない。
【0122】
本開示の範囲は、この箇所のまたはこの明細書のどこかの箇所の好適な実施形態における具体的な開示によって制限されることを意図したものではなく、この箇所においてまたはこの明細書のどこかの箇所においてクレームにより定義されるものであり、あるいは将来において示されるものである。クレームの言語は、クレームにおいて採用される言語に基づいて広く解釈され、現在の明細書または出願の審査経過において示される例により制限されるものではない。例示は非限定的に解釈されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー貯蔵装置の単一のドライ電極薄膜であって、
乾燥した活物質と、
乾燥した結着剤と、
を備え
前記単一のドライ電極薄膜は、自己支持形であり、
前記単一のドライ電極薄膜は、厚さが少なくとも110μmである、ドライ電極薄膜。