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特開2024-56928心臓の血流と組織の4D超高速ドップラー撮像及び定量化パラメータの取得を同時に行う方法並びに装置。
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  • 特開-心臓の血流と組織の4D超高速ドップラー撮像及び定量化パラメータの取得を同時に行う方法並びに装置。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056928
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】心臓の血流と組織の4D超高速ドップラー撮像及び定量化パラメータの取得を同時に行う方法並びに装置。
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20240416BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B8/08
A61B8/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024022183
(22)【出願日】2024-02-16
(62)【分割の表示】P 2020566320の分割
【原出願日】2019-02-18
(31)【優先権主張番号】18305173.9
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】515232158
【氏名又は名称】エコール・スーペリウール・ドゥ・フィジック・エ・ドゥ・シミ・アンデュストリエル・ドゥ・ラ・ビル・ドゥ・パリ
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(71)【出願人】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ペルノット,マテュー
(72)【発明者】
【氏名】パパダッチ,クレマン
(72)【発明者】
【氏名】タンテル,ミカエル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】心臓の超音波撮像のための改良された方法及び装置を提供する。
【解決手段】心臓の4D超高速超音波撮像を実行し、心臓の血流と組織との4D超高速ドップラー撮像及び定量化パラメータの取得を同時に行う。これは、主要な心臓超音波検査フロー及び組織ドップラー指数を、オペレーターの経験とは無関係に、1回の取得で非常に短時間(例えば、1心拍数内)に且つ再現可能な方法で計算するために用いられうる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の心臓の4D撮像のための方法であって、少なくとも以下のステップ:
(a)非集束超音波が2Dアレイ超音波プローブ(2)によって前記心臓に送信され、後方散乱超音波からの生データが前記2Dアレイ超音波プローブ(2)によって取得される取得ステップ;
(b)前記生データから3D画像のシーケンス(一連の組画像)が生成され、前記3D画像のシーケンスは、前記心臓の少なくとも一部分を含む撮像領域の動きを示すアニメーション(動画)を形成する撮像ステップ;
(c)血流速度及び組織速度に関係する少なくとも1つのパラメータの3D地図作成が、前記3D画像のシーケンスに基づいて、前記撮像された領域及び時間において自動的に計算される速度計算ステップ;
(d)所定の特性を有する少なくとも1つの関心のある点が、前記3D画像のシーケンス内に自動的に配置される配置ステップ;
(e)血流速度と組織速度との間で選択された少なくとも1つの速度が、少なくとも1つの関心のある点で自動的に決定され、且つ所定の定量化パラメータが、前記少なくとも1つの速度を含むように自動的に計算される、定量化ステップ;
を包含し、
前記定量化パラメータは、
- 或る解剖学的領域におけるピーク血流速度、並びに前記配置定ステップ(d)は、前記関心のある点(13)を、前記解剖学的領域における且つ前記3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置することを含む、
- 又は、或る解剖学的領域におけるピーク組織速度、並びに前記配置ステップ(d)は、前記解剖学的領域を前記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び前記関心のある点を、前記解剖学的領域における最大組織速度の点として、前記3D画像のシーケンス内に自動的に配置することを含む、
のどちらかを含んでいる、
上記方法。
【請求項2】
前記定量化パラメータは、或る解剖学的領域における前記速度に関連した前記パラメータの時間的変動を含み、並びに前記配置ステップ(d)は、前記関心のある点(13)を、前記解剖学的領域における及び前記3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置することを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記定量化パラメータは、或る解剖学的領域における速度に関連したパラメータの時間積分を含み、並びに前記配置ステップ(d)は、前記関心のある点(13)を、前記解剖学的領域における及び前記3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置することを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記定量化パラメータは、或る解剖学的領域における速度に関連したパラメータの空間積分を含み、並びに前記配置ステップ(d)は、前記関心のある点(13)を、前記解剖学的領域における及び3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置することを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記定量化ステップで決定された前記定量化パラメータは、E、A、E'、A'、S、D、Vp、S'、E/A、E/E'、E/E'、E'/A'、S、S/D、VTI、Gmean及びGmaxから選択され、
- Eは初期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- E’は初期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Aは後期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- A’は後期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Sはピーク肺静脈収縮期速度であり、
- Dはピーク肺静脈初期拡張期速度であり、
- Vpは流れの進行速度であり、
- GmeanとGmaxは平均弁横断圧力勾配及び最大弁横断圧力勾配であり、
- VTIは速度時間積分であり、
- S’は、ピーク収縮期環状速度である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記取得ステップ(a)の間、前記非集束超音波が連続する非集束超音波のいくつかのシリーズ(一連の続きもの)で送信され、各シリーズの連続する非集束超音波はそれぞれ異なる伝搬方向を有し、且つ、前記撮像ステップ(b)の間、各シリーズの前記連続する非集束超音波に対応するそれぞれの生データから超音波合成撮像によって3D画像を合成することを含んでいる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
- ステップ(d)で、前記少なくとも1つの関心のある点は、前記3D地図作成法とその時間プロファイルのみに基づいて自動的に配置され、
- 且つステップ(e)で、前記少なくとも1つの速度は、前記3D地図作成法及びその時間プロファイルのみに基づいて、前記少なくとも1つの関心のある点で自動的に決定される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
生物の心臓の4D撮像のための装置であって、少なくとも2Dアレイ超音波プローブ(2)と、
(a)前記2Dアレイ超音波プローブ(2)によって前記心臓に非集束超音波を送信し、且つ前記2Dアレイ超音波プローブ(2)によって後方散乱超音波から生データを取得するように、
(b)前記生データから3D画像のシーケンスを生成し、前記3D画像のシーケンスは、前記心臓の少なくとも一部分を含む撮像された領域の動きを示すアニメーション(動画)を形成するように、
(c)前記3D画像のシーケンスに基づいて、前記撮像された領域内の血流速度及び組織速度に関する少なくとも1つのパラメータの3D地図作成を自動的に計算するように、
(d)前記3D画像のシーケンスにおいて所定の特性を有する関心のある点(13、14)の少なくとも1つを自動的に配置するように、
(e)前記関心のある点(13、14)の少なくとも1つでの血流速度と組織速度の間で選択された少なくとも1つの速度を自動的に決定し、前記速度の少なくとも1つを含む所定の定量化パラメータを自動的に計算するように、
構成された制御システム(3、4)とを含み、
前記定量化パラメータは、
- 或る解剖学的領域におけるピーク血流速度、並びに前記関心のある点(13)を、前記解剖学的領域における及び前記3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置するように構成された前記制御システム(3、4)、
- 又は、或る解剖学的領域におけるピーク組織速度、並びに前記解剖学的領域を前記3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように構成され、且つ前記関心のある点を前記解剖学的領域における最大組織速度の点として、前記3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように構成された前記制御システム(3、4)、
のいずれかを包含する、
上記装置。
【請求項9】
前記定量化パラメータは、E、A、E'、A'、S、D、Vp、S'、E/A、E/E'、E/E'、E'/A'、S、S/D、VTI、Gmean及びGmaxから選択される、ここで、
- Eは初期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- E’は初期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Aは後期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- A’は後期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Sはピーク肺静脈収縮期速度であり、
- Dはピーク肺静脈初期拡張期速度であり、
- Vpは流れの進行速度であり、
- GmeanとGmaxは平均弁横断圧力勾配及び最大弁横断圧力勾配であり、
- VTIは速度時間積分であり、
- S’は、ピーク収縮期環状速度である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御システム(3、4)は、前記非集束超音波を連続する非集束超音波のいくつかのシリーズで送信するように構成され、前記連続する非集束超音波の各シリーズはそれぞれ異なる伝搬方向を有し、且つ前記制御システム(3、4)は、前記連続する非集束超音波の各シリーズに対応するそれぞれの生データから超音波合成撮像によって3D画像を合成するように構成されている、請求項8~9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記制御システム(3、4)は、前記非集束超音波を発散超音波として送信するように構成されている、請求項8~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記制御システム(3、4)は、心周期の少なくとも一部分の且つ10心周期未満の持続時間の間、前記非集束超音波を送信するように構成されている、請求項8~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記制御システム(3、4)は、前記非集束超音波を1秒~10秒の間、送信するように構成されている、請求項8~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記制御システム(3、4)は、
(d)前記少なくとも1つの関心のある点を、前記3D地図作成法及びその時間プロファイルのみに基づいて自動的に配置するように、
(e)前記少なくとも1つの関心のある点での前記少なくとも1つの速度を、前記3D地図作成法及びその時間プロファイルのみに基づいて自動的に決定するように、
構成されている、請求項8~13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心臓の血流と組織との4D超高速ドップラー撮像及び定量化パラメータの取得を同時に行うための方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波エコー検査の診断用撮像は、心臓のリアルタイムの撮像を実行できるので、心臓病学において日常的に使用される、ポータブルで高速、かつ低コストの技術である。腔容積のような形態学的パラメータ及び動的機能的検出(例えば左心室流出路)は、それぞれ2次元(2D)及び1次元(1D)における診断のために測定されうる。心臓の状態を特徴付けるために使用されるさらに多くの指標が、1次元又は2次元でリアルタイムに日常的に測定されている。1Dと2Dの撮像のいずれを選択するかは、生理学的現象を測定するのに必要とされるフレームレートによって決められる。たとえば、腔容積を測定するためには、心臓の全体的な動きを取得するために必要なフレームレートがリアルタイムを超えないときは、2D撮像がより適している。ただし、高速な生理学的現象(例えば、小さな組織の動き(E'/A'因子)、血流速度(E/A'因子)、又はその両方(E/E'))を定量化するためには、フレームレートの増加を可能にするために送信超音波の数を減らすように1D撮像が実行される。このような定期的な検査は、関心のある領域を手動で選択するためにかなりの時間がかかる。さらに、そのような手動の選択は、オペレータによるばらつきを引き起こす。
【0003】
超音波撮像の1つの高度な型である超高速超音波撮像が、主として研究されてきた(M.Tanter and M.Fink、「Ultrafast imaging in biomedical ultrasound(生医学超音波における超高速撮像)」、IEEE Trans. Ultrason. Ferroelectr. Freq. Control,in press, Jan. 2014)。これは毎秒数千画像に達するまでフレームレートを増加させることができる。この方法は、少ない送信において全ての媒体を不均一化するために、非集束波の放射に依存している。最近、超高速撮像は、4D超音波撮像、即ちアニメーション化(動画化)された3D超音波撮像へ拡張された。特に、4D超音波超高速撮像が実行され、心周期中の人間の心臓の左心室の血流と、心周期中の頸動脈の血流と組織の動きを撮像した(J. Provost et al.、「3D ultrafast ultrasound imaging in vivo(体内の3D超高速超音波撮像)」、Phys. Med. Biol., vol. 59, no. 19, p. L1, Oct. 2014)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に記載された実施形態は、心臓の超音波撮像のための改良された方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、生物の心臓の4D撮像のための方法が提供され、上記方法は少なくとも以下のステップ:
(a)非集束超音波が2Dアレイ超音波プローブによって上記心臓に送信され、後方散乱超音波からの生データが上記2Dアレイ超音波プローブによって取得される取得ステップ;
(b)上記生データから3D画像のシーケンス(一連の組画像)が生成され、上記3D画像のシーケンスは、上記心臓の少なくとも一部分を含む撮像領域の動きを示すアニメーション(動画)を形成する撮像ステップ;
(c)血流速度及び組織速度に関係する少なくとも1つのパラメータの3D地図作成が、上記3D画像のシーケンスに基づいて、上記撮像された領域おいて自動的に計算される速度計算ステップ;
(d)所定の特性を有する少なくとも1つの関心のある点が、上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置される配置ステップ;
(e)血流速度と組織速度との間で選択された少なくとも1つの速度が、少なくとも1つの関心のある点で自動的に決定され、且つ所定の定量化パラメータが、上記少なくとも1つの速度を含むように自動的に計算される、定量化ステップ;
を包含し、
上記定量化パラメータは、
- 或る解剖学的領域におけるピーク血流速度、並びに上記配置定ステップ(d)は、上記関心のある点(13)を、上記解剖学的領域における且つ上記3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置することを含む、
- 又は、或る解剖学的領域におけるピーク組織速度、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び上記関心のある点を、上記解剖学的領域における最大組織速度の点として、上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置することを含む、
のどちらかを含んでいる。
【0006】
これらの性質のおかげで、定量化パラメータは、オペレーターの経験によるばらつきなしに、反復的な方法で瞬時に正確に計算される。
【0007】
本方法は、以下の特徴:
- 上記取得ステップ(a)の間、上記非集束超音波は、連続する非集束超音波のいくつかのシリーズ(一連の続きもの)で送信され、上記連続する非集束超音波の各シリーズはそれぞれ異なる伝播方向を有し、且つ上記撮像ステップ(b)は、上記連続する非集束超音波の各シリーズに対応するそれぞれの生データからの超音波合成撮像によって3D画像を合成することを含む;
- 連続する非集束超音波の各シリーズは、1~100の連続する非集束超音波、例えば1~20の連続する非集束超音波、を含む;
- 上記取得ステップ(a)の間に送信された上記非集束超音波は、発散性である;
- 上記取得ステップ(a)の間、上記発散する超音波は、2Dアレイプローブの背後(即ち、上記波の送信方向と反対方向)に仮想音波源を有する;
- 上記取得ステップの間、上記非集束超音波は、毎秒10000を超える非集束超音波のレートで送信される;
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域でのピーク血流速度を含み、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び上記関心のある点を最大血流速度の点として3D画像のシーケンス内に自動的に配置することを含む;
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域における血流速度の時間的変動(例えば、加速時間又は減速時間又は時間積分)を含み、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び上記関心のある点を最大血流速度の点として上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置することを含む;
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域における血流速度の時間及び空間積分によって得られた血流量又は心拍出量(CO)(例えば、心拍サイクル時間に従って心臓に出入りする総血流量)を含み、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に特定すること、及び上記関心のある点を最大血流速度の点として、上記3D画像のシーケンス内に自動的に特定することを含む;
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域におけるピーク組織速度を含み、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び上記関心のある点を上記解剖学的領域の最大組織速度の点として上記3D画像のシーケンス内に自動的に特定することを含む;
- 上記定量化パラメータは、心臓の或る解剖学的位置での組織速度を含み、且つ上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的位置を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置することを含む;
- 上記定量化パラメータは、E、A、E'、A'、S、D、Vp、S'、E/A、E/E'、E/E'、E'/A'、S、S/D、Q、Qsystolic、Qdiastolic、DT、IVRT、PVAT、VTI、Gmean及びGmaxから選択され、
- Eは初期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- E’は初期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Aは後期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- A’は後期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Sはピーク肺静脈収縮期速度であり、
- Dはピーク肺静脈初期拡張期速度であり、
- Vpは流れの進行速度であり、
- Qは流量又は心拍出量であり、Qsystolicは大動脈通過流量の総出力であり、Qdiastolicは僧房弁通過流量の総入力であり、
- DTはe波減速時間であり、
- PVATは肺加速時間であり、
- IVRTは等容緩和時間の長さであり、
- GmeanとGmaxは平均弁横断圧力勾配及び最大弁横断圧力勾配であり、
- VTIは速度時間積分であり、
- S’は、ピーク収縮期環状速度である;
- 上記取得ステップの間、上記非集束超音波は、毎秒10000を超える非集束超音波レートで送信される;
- 上記取得ステップ(a)の間、上記非集束超音波は、心周期の少なくとも一部分と10心周期未満(例えば5心周期未満)の持続時間の間、心臓に送信される;
- 上記取得ステップ(a)の間、上記非集束超音波は、1秒~10秒の間、例えば1秒~5秒の間、に含まれる持続時間の間、心臓に送信される;
- ステップ(d)では、上記関心のある少なくとも1つの点が、上記3D地図作成法とその時間プロファイルのみに基づいて自動的に配置され、ステップ(e)では、上記少なくとも1つの速度が、上記3D地図作成法とその時間プロファイルのみに基づいて、上記関心のある少なくとも1つの点で自動的に決定される。
【0008】
さらに、本開示は、生物の心臓の4D撮像のための装置を提案し、上記装置は、少なくとも2Dアレイ超音波プローブ、及び
(a)上記2Dアレイ超音波プローブによって上記心臓に非集束超音波を送信し、且つ上記2Dアレイ超音波プローブによって後方散乱超音波から生データを取得するように、
(b)上記生データから3D画像のシーケンスを生成し、上記3D画像のシーケンスは、上記心臓の少なくとも一部分を含む撮像された領域の動きを示すアニメーションを形成するように、
(c)上記3D画像のシーケンスに基づいて、上記撮像された領域内の血流速度及び組織速度に関する少なくとも1つのパラメータの3D地図作成を自動的に計算するように、
(d)上記3D画像のシーケンスにおいて所定の特性を有する関心のある点の少なくとも1つを自動的に配置するように、
(e)上記関心のある点の少なくとも1つでの血流速度と組織速度の間で選択された少なくとも1つの速度を自動的に決定し、上記速度の少なくとも1つを含む所定の定量化パラメータを自動的に計算するように、
構成された制御システムを含み、
上記定量化パラメータは、
- 或る解剖学的領域におけるピーク血流速度、及び上記関心のある点(13)を、上記解剖学的領域における及び3D画像のシーケンスの少なくとも一部分における最大血流速度の点として、自動的に配置するように構成された上記制御システム(3、4)、
- 又は、或る解剖学的領域におけるピーク組織速度、及び上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように構成され、且つ上記関心のある点を、上記解剖学的領域における最大組織速度の点として、上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように構成された上記制御システム(3、4)、
のいずれかを包含する。
【0009】
本装置はさらに、以下の特徴の内の1つ、及び/又は、その以外を含みうる:
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域におけるピーク血流速度を含み、上記制御システムは、上記解剖学的領域を3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように、且つ上記関心のある点を最大血流速度の点として上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように構成されている;
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域におけるピーク組織速度を含み、上記制御システムは、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置し、且つ上記関心のある点を上記解剖学的領域内の最大組織速度の点として上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置するように構成されている;
- 上記定量化パラメータは、時間的変動、例えば、或る解剖学的領域における血流速度の加速時間又は減速時間又は時間積分、を含み、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び上記関心のある点を最大血流速度の点として上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置することを含む;
- 上記定量化パラメータは、或る解剖学的領域における血流速度の時間空間積分によって得られる血流量(例えば、心周期の時間に応じて心臓に出入りする総血流量)を含み、並びに上記配置ステップ(d)は、上記解剖学的領域を上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、及び上記関心のある点を最大血流速度の点として上記3D画像のシーケンス内に自動的に配置すること、を含む;
- 上記定量化パラメータは、心臓の或る解剖学的位置での組織速度を含み、並びに上記制御システムは、上記関心のある点を3D画像のシーケンス内の上記解剖学的位置に自動的に配置するように構成されている;
- 上記定量化パラメータは、E、A、E'、A'、S、D、Vp、S'、E/A、E/E'、E/E'、E'/A'、S、S/D、Q、Qsystolic、Qdiastolic、DT、IVRT、PVAT、VTI、Gmean及びGmaxから選択され、
- Eは初期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- E’は初期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Aは後期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- A’は後期拡張期僧帽弁環状速度であり、
- Sはピーク肺静脈収縮期速度であり、
- Dはピーク肺静脈初期拡張期速度であり、
- Vpは流れの進行速度であり、
- Qは流量又は心拍出量であり、
- Qsystolicは大動脈通過流量の総出力であり、
- Qdiastolicは僧房弁通過流量の総入力であり、
- DTはe波減速時間であり、
- PVATは肺加速時間であり、
- IVRTは等容緩和時間の長さであり、
- GmeanとGmaxは平均弁横断圧力勾配及び最大弁横断圧力勾配であり、
- VTIは速度時間積分であり、
- S’は、ピーク収縮期環状速度である;
- 上記制御システムは、上記非集束超音波を連続する非集束超音波のいくつかのシリーズで送信するように構成され、各シリーズの連続する非集束超音波はそれぞれ異なる伝搬方向を有し、上記制御システムは、各シリーズの上記連続する非集束超音波に対応するそれぞれの生データから超音波合成撮像によって3D画像を合成するように構成されている;
- 連続する非集束超音波の各シリーズは、1~100の連続する非集束超音波、例えば1~20の連続する非集束超音波を含む;
- 上記制御システム(3、4)は、上記非集束超音波を発散超音波として送信するように構成されている;
- 上記発散超音波は、2Dアレイプローブの背後(即ち、波の伝送方向の反対側)に仮想音波源を有している。
- 上記制御システムは、上記非集束超音波を毎秒10000を超える非集束超音波のレートで送信するように構成されている;
- 上記制御システムは、1心周期の少なくとも一部分且つ10心周期未満、例えば5心周期未満の間、上記非集束超音波を送信するように構成されている;
- 上記制御システムは、1秒~10秒、例えば1秒~5秒、の持続時間の間、上記非集束超音波を送信するように構成されている;
- 上記制御システムは、
(d)上記少なくとも1つの関心のある点を、上記3D地図作成法及びその時間プロファイルのみに基づいて自動的に配置するように;
(e)上記少なくとも1つの関心のある点における上記少なくとも1つの速度を、上記3D地図作成法及びその時間プロファイルのみに基づいて自動的に決定するように;
構成されている。
【0010】
本開示のその他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、以下の非限定的な一つの実施例の詳細な記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】心臓の4D撮像のための装置を示す概略図である。
図2図1の装置の1部分を示すブロック図である。
図3図1~2の装置によって生成された、発散超音波の仮想音波源を示す図である。
図4図1~2の装置による、生物の心臓への発散超音波の送信を示す図である。
図5】2つの仮想音波源からの、それぞれ異なる伝播方向を有する2つの連続する発散超音波の送信を示す図である。
図6】健康なボランティアの人の左心室の単一心拍での4D超高速血流と4D組織速度とを同時に取得した結果を示した図である。 - 本図(a)は、本装置によって生成された3D画像のシーケンスから抽出された左心室の5つの断面をそれぞれ示しており、それられ、本図の(a)~(d)内の点線により分離されているところの心位相(急速流入期、心拍静止期、心房収縮期、前駆出期、駆出期)の視覚化を可能にしている。 - 本図(b)は、僧帽弁での血流のドップラースペクトルである。 - 本図(c)は、基底中隔の位置での組織速度曲線であり、そして - 本図(d)は、対応する心電図(ECG)である。
図7】訓練されたオペレーターにより古典的2D臨床超音波システムを用いて作成された、図6と同じボランティアの左心室の画像と測定値を示した図であり、図6と同様の心位相を示す。 - 本図(a)は、僧帽弁での血流のドップラースペクトルを示し、 - 本図(b)は、健康なボランティアについて臨床超音波システムで得られた基底中隔での組織速度を示している。
図8】肥大性心筋症の患者についての、図6に対応する図である。
図9】肥大性心筋症の患者についての、図7に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
これらの図において、同じ参照符号は同一又は類似の要素を示す。
【0013】
図1及び図2に示された本装置は、生物(例えば、哺乳動物、特にヒト)の心臓1の超高速4D超音波撮像に適合している。
【0014】
本装置は、例えば、少なくとも2Dアレイ超音波プローブ2及び制御システムを含みうる。
【0015】
2Dアレイ超音波プローブ2は、例えば、数百から数千個の、1mm未満のピッチを持つトランスデューサ素子Tijを有しうる。2Dアレイ超音波プローブ2は、2つの垂直軸X、Yに沿うマトリクスとして配設されたn*nトランスデューサ素子を有し得て、XY平面に垂直な軸Zに沿って超音波を送信する。1の具体例において、2Dアレイ超音波プローブ2は、0.3mmピッチを持つ1024個のトランスデューサ素子Tij(32*32)を有しうる。トランスデューサ素子は、1~10MHzの間の中心周波数(例えば3MHz)で送信しうる。
【0016】
制御システムは、例えば、具体的な制御ユニット3及びコンピュータ4を含みうる。本例において、制御ユニット3は、2Dアレイ超音波プローブ2を制御し且つこれから信号を取得するために使用され、一方コンピュータ4は、この制御ユニット3を制御し、この制御ユニット3によって取得された信号から3D画像シーケンスを生成し、且つそれら3D画像シーケンスから定量化パラメータを決定するために用いられる。変形例において、単一の電子デバイスが、制御ユニット3及びコンピュータ4の全ての機能を満たすこともできる。
【0017】
図2に示されたように、制御ユニット3は、例えば以下のもの:
- 2Dアレイ超音波プローブ2のn個のトランスデューサTijに個々に接続されたn*nアナログ/デジタル変換器5(ADij);
- n*nアナログ/デジタル変換器5に個々に接続されたn*nバッファメモリ6(Bij);
- バッファメモリ6及びコンピュータ4と通信する中央処理装置7(CPU);
- 中央処理装置7に接続されたメモリ8(MEM);
- 中央処理装置7に接続されたデジタル信号プロセッサ9(DSP);
を含みうる。
【0018】
本装置は、以下のように動作しうる。
【0019】
(a)取得
2Dアレイ超音波プローブ2は、患者1の胸部10上に(通常は、図4に示されるように、患者の心臓12の前の2つの肋骨の間に)置かれる。
【0020】
撮像されるべき心臓12のサイズと比較して肋骨11間の肋間スペースは限定されているので、2Dアレイ超音波プローブ2は、胸部10に発散超音波、例えば球面超音波(即ち、球面状波面O1を有する)を送信するように制御される。制御システムは、超音波が毎秒数千の超音波(例えば毎秒10000を超える非集束超音波)レートで送信されるようにプログラムされうる。
【0021】
球面波は、単一のトランスデューサ素子により(小振幅で)生成され得、又はより有利には、図3~4に示されるように、2Dアレイ超音波プローブ2の正面の後側に置かれた仮想アレイ2’を形成する、1以上の仮想点源T’ijを用いるマトリックスアレイの大部分によって、より大振幅で生成されうる。位置
【数2】

に配置された仮想音波源vに関連付けられた位置
【数1】

に置かれたトランスデューサ素子eに、制御システムによって付加された送信遅延TDは、
【数3】

である。ここで、cは音速である。
【0022】
用いられる各仮想音波源T’ijに対して、制御システムは、発散する超音波の開口角αを決定するサブ開口部Lを有する2Dアレイ超音波プローブ2のサブセット2aのみを活性化することが可能である。開口角αは、例えば90°でありうる。Z軸に沿った撮像深度は、約12cm~15cmでありうる。
【0023】
仮想音波源T’ijを1つだけ用いること、ひいては後で説明するように、心臓の各3D画像ごとに1つの超音波を用いることが可能である。
【0024】
しかし、画像の解像度及びコントラストを向上させるために、複数の非集束超音波を連続した非集束超音波のシリーズで送信することは有用である。各シリーズの連続した非集束超音波は、それぞれ伝播方向が異なる。この場合、各3D画像は後述するように、上記連続した非集束超音波のシリーズの1つから取得された信号から合成される。各シリーズの連続超音波は、1つの波から別の波へと仮想音波源Tijを変えることにより、即ち、図5に示されたように波面O1、O2などを変えることにより取得されうる。各シリーズは、例えば5~20の異なる方向の連続超音波(例えば10~20の異なる方向の連続超音波)を含みうる。
【0025】
すべての場合において、各超音波が送信された後、後方散乱エコーは、(例えば、12MHzのサンプリングレートでサンプリングされた)上記2Dアレイ超音波プローブによって取得され、記憶される。この生データ(通常はRFデータ又は無線周波数データとも呼ばれる)は、3D画像のシーケンスを生成するために用いられる。
【0026】
取得期間は、10msから数心周期、例えば心周期の少なくとも部分(例えば、拡張期又は収縮期、又は1心周期)及び10未満の心周期(例えば5心周期)を含みうる。そのような期間は、例えば1秒~10秒(例えば5秒未満)を含みうる。具体例においては、そのような期間は約1.5秒である。
【0027】
心電図(ECG)が、取得中に同時に記録されてもよい。
【0028】
(b)撮像
後方散乱エコーを受信した後、各単一超音波から3D画像を再構成するように、平行ビーム形成が制御システムによって直接に適用される。遅延及びビーム形成の総和は、時間領域又はフーリエ領域において用いられうる。時間領域において、
【数4】

に置かれたボクセルを再構築するために、各トランスデューサ素子eにより受信された信号に適用される遅延は、仮想音波源vからボクセルまでの順方向伝播時間とトランスデューサ素子eへの後方散乱伝播時間の総和である。即ち、
遅延=順方向遅延+後方散乱遅延、
【数5】

である。
【0029】
上述されたように、超音波が、それぞれ異なる伝搬方向を有する超音波のシリーズによって送信される場合、各画像は、公知の合成撮像の方法を用いて制御システムによって取得されうる。ボクセルは、各仮想音波源に対して遅延総和アルゴリズムを用いてビーム形成され、続いてコヒーレントに合成されて、最終の高品質3D画像を形成する。このような合成撮像の詳細は、例えば以下の文献に記載されている。
【0030】
【表1】

フレームレート、即ち、最終的に取得されるアニメーション化(動画化)された3D画像のシーケンスのレート、は、1秒当たり数千の3D画像(例えば、1秒当たり3000~5000の3D画像)でありうる。
【0031】
(c)血液及び組織の速度計算
血流及び組織の動きの推定は、公知の方法を用いて本制御システムによって実行されうる。
【0032】
例えば、Kasaiアルゴリズムが、半波長空間サンプリングを用いて、血液及び組織の動きを推定するために使用されうる(Kasai、C.、Namekawa、K., Koyano、A., Omoto、R., 1985. Real Time Two Dimensional Blood Flow Imaging Using an Autocorrelation Technique(自己相関技術を用いたリアルタイム2次元血流撮像). IEEE Trans. Sonics Ultrason. 32, 458-464. doi:10.1109/T-SU. 1985. 31615)。血流は、最初に基底帯域データに高域通過フィルターを適用することにより推定されうる。次に、個々のボクセルごとに、パワードップラーは、パワースペクトル密度を積分することにより取得されうる。パルスドップラーは、短時間フーリエ変換を計算することにより取得されうる。そしてカラードップラーマップは、ボクセル固有のパルスドップラースペクトログラムの最初の瞬間を推定することにより取得されうる。パワー速度積分マップは、流量に関連するパラメータの画像を得るために、パワー×速度の時間積分を計算することによって取得されうる。高度なフィルタリング(例えば、特異値分解に基づく時空間フィルター)はまた、クラッター信号をより適切に除去するために用いられうる(Demene、C. et al. Spatiotemporal Clutter Filtering of Ultrafast Ultrasound Data Highly Increases Doppler and Ultrasound Sensitivity(超高速超音波データの時空間クラッターフィルタリングは、ドップラー及び超音波の感度を大幅に向上させる). IEEE transactions on medical imaging 34, 2271-2285, doi:10.1109/tmi.2015.2428634 (2015))。
【0033】
具体例において、
- 4D組織速度は、1D相互相関を実行することによって計算され得て、その結果、組織の領域間の軸方向変位の領域を得る。次に、カットオフ周波数60Hzのバターワース型低域通過フィルタリングを上記変位に適用した。筋肉の外部からの信号を削除するために、心筋の3Dマスク(心筋の組織に固有の)が適用された。4D組織速度を表示するために、Amira(商標)ソフトウェアを使用してもよい。各ボクセルにおいて、1つの組織速度曲線が導出できる。
- 4Dカラードップラーは、例えば、Demene達による上記刊行物において為されたように、組織から信号を削除し、血流からの信号のみを保持するために、SVDフィルター処理を実行することにより計算されうる。SVDフィルター処理されたボクセル上のピクセルごとの1D軸方向相互相関は、カラードップラー領域を取得するために実行されうる。4Dカラードップラーを表示するために、腔3Dマスク(血液を受け取る腔、例えば左心室の腔に固有の)が、腔の外側の信号を削除するために適用されうる。ボリュームレンダリングは、Amira(商標)ソフトウェアを用いて実行されてもよい。
【0034】
上記の左心室腔及び心筋の3Dマスクは、以下のように計算されうる。腔は、3D画像の心周期全体にわたり積分されたパワードップラーフローを用いてセグメント化されうる。心筋は、心周期にわたり積分された組織速度と2つの垂直な2Dスライス上の輪郭の手動選択とを用いてセグメント化されうる。楕円補間が、3次元表現を得るために使用されうる。
【0035】
より一般的には、ステップ(c)は、上記3D画像のシーケンスに基づいて、上記撮像領域における血流速度、及び/又は、組織速度に関連する少なくとも1つのパラメータの3D地図作成を自動的に計算することを含む。上記3D地図作成は、計算されたパラメータの3D画像のアニメーション化(動画化)されたシーケンスから構成されうる。パラメータは、血液、及び/又は、組織の速度、又はその速度の成分であってもよい。
【0036】
(d)関心のある点の配置
求められる定量化パラメータに応じて、所定の特性を有する少なくとも1つの関心のある点が、制御システムによって3D画像のシーケンス内に自動的に配置される。
【0037】
定量化パラメータが或る解剖学的領域におけるピーク血流速度を含む場合、制御システムは、上記関心のある点を、上記解剖学的領域における最大血流速度の点として、3D画像のシーケンスの少なくとも一部分内に自動的に配置しうる。例えば、初期拡張期経僧帽弁横断流速E、即ち、心周期のE波(拡張期初期の波)の間に僧帽弁を通過するピーク血流速度、が計算される必要がある場合、制御システム(特にコンピュータ4)は、僧帽弁内部のピーク血流速度の点13(図6の(a))に自動的に目印を付けうる。具体例において、時間軸上のフーリエ変換が、領域内のあらゆる場所でのスペクトログラムを取得するために、60サンプルの移動窓を用いて各ボクセルで実行される。自動エリアシング消去が、上記のDemene達に従って実行されうる。次いで、点13の位置は、血流最大値を検出することによって自動的に検出されうる。
【0038】
定量化パラメータが心臓の或る解剖学的位置での組織の速度を含む場合、制御システムは、上記解剖学的位置を3D画像のシーケンス内に自動的に配置しうる。例えば、初期拡張期僧帽弁環状速度E’(即ち、心周期のE波中の僧帽弁の速度)を計算する必要がある場合、制御システム(より具体的にはコンピュータ4)は、僧帽弁の点14(図6の(a))に自動的に目印を付けうる。そのような自動的配置は、コンピュータ4に記憶された心臓の解剖学的モデルに従って、又は最大血流速度の上記の点14に対応する組織の点を選択することによって為されうる。
【0039】
定量化パラメータが或る解剖学的領域におけるピーク組織速度を含む場合、制御システムは、上記解剖学的領域を3D画像のシーケンス内に自動的に配置し、且つ上記関心のある点を上記解剖学的領域における最大組織速度の点として3D画像のシーケンス内に自動的に配置しうる。例えば、左心室のピーク収縮期環状速度S’が計算される必要がある場合、制御システムは、画像シーケンスの心筋における最大速度を有する、心室を囲む組織の点(図示せず)を決定する。
【0040】
(e)定量化
次に、1又は複数の所望の定量化パラメータは、以前に決定された関心のある1又は複数の点に基づいて、且つ関心のあるそのような点のピーク血流速度又は組織速度に基づいて、制御システム(特にコンピュータ4)によって計算されうる。
【0041】
そのような定量化パラメータの特に有用な例は、E、A、E'、A’、S、D、Vp、S'、E/A、E/E'、E/E'、E'/A'、S、S/D、Q、Qsystolic、Qdiastolic、DT、IVRT、PVAT、VTI、Gmean、及びGmax である。ここで、
- Eは上で定義された初期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- E’は上で定義された初期拡張期僧帽弁環状速度であり(Eに対応するピーク血液速度の瞬間に計算される)、
- Aは後期拡張期経僧帽弁通過流速であり、
- A’は後期拡張期僧帽弁環状速度であり(Aに対応するピーク血液速度の瞬間に計算される)、
- Sはピーク肺静脈収縮期速度であり、
- Dはピーク肺静脈初期拡張期速度であり、
- Vpは流れの進行速度であり、
- Qは流量又は心拍出量であり、
- Qsystolicは、大動脈通過流量の総出力であり、
- Qdiastolicは、僧房弁通過流量の総入力であり、
- DTはe波減速時間であり、
- PVATは肺加速時間であり、
- IVRTは等容緩和時間の長さであり、
- GmeanとGmaxは平均弁横断圧力勾配及び最大弁横断圧力勾配であり、
- VTIは速度時間積分であり、
- S’は、上記で定義したピーク収縮期環状速度である。
【0042】
- ステップ(d)で、関心のある上記少なくとも1つの点は、上記3D地図作成法とその時間プロファイルのみに基づいて自動的に配置されること、
- 及び、ステップ(e)で、上記少なくとも1つの速度は、上記3D地図作成法及びその時間プロファイルのみに基づいて、関心のある上記少なくとも1つの点で自動的に決定されること、
に注意すべきである。
【0043】
より一般的には、本明細書において、弁横断血流は、追加の解剖学的情報なしに、空間的及び時間的速度情報のみを用いて局所化されうる。流速の時間的プロファイル(又はスペクトルドップラープロファイル)は、実際には弁位置の強力な特性であり、弁の型に非常に特有である。
- 大動脈通過血流は、収縮期全体にわたって強い流出が続き、その後、拡張期には流れがない(又は大動脈弁逆流の場合には逆方向の流れが少ない)ことが特徴である。大動脈通過流は、流出血液速度の空間的ピークを決定することにより、正確に局所化されうる。
- 対照的に、僧帽弁通過血流は、収縮期の血流がないか又はほとんどないこと、及び拡張期初期及び後期における2つの流入ピークによって特徴付けられる。次に、僧帽弁通過流は、流入血流速度の空間的ピークを見つけることにより正確に局所化されうる。
【0044】
このことは、時間的プロファイルが画像の全ボクセルで同時に取得されるので特に可能になる。
【0045】
このようにして、関心のある点及びこの関心のある点における速度は、本方法が撮像された全体領域における速度の3D地図形成を決定することを含んでいるという事実によって、解剖学的画像なしに(特にBモード解剖学的画像なしに)決定される。したがって、本開示の方法全体は、Bモード撮像を必要とせず、より一般的には解剖学的撮像を必要とせず、これにより、本方法のより迅速な結果が可能になる。
【0046】
実施例
健康なボランティアの人と肥大型心筋症の若い患者の左心室が、それぞれ撮像され(それぞれ図6及び図8)、且つ指標E/E’が、両場合について自動的に計算された。
【0047】
その後、この健康なボランティアの人とこの若い患者は、心臓専門医によって心尖部4室ビューに関する古典的臨床超音波システムを用いてスキャンされた(図7及び図9)。ドップラースペクトルと組織速度は、パルスドップラーモードと組織ドップラーモードを使用して評価され、両場合の指標E/E’は自動的に計算された。これらの手動測定は、自動測定の精度を確認したが、自動測定は、はるかに速く(1心拍で行われる)、且つオペレーターに特別な訓練を必要としない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】