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特開2024-56929面発光レーザ、電子機器及び面発光レーザの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056929
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】面発光レーザ、電子機器及び面発光レーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20240416BHJP
   H01S 5/343 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/343
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022190
(22)【出願日】2024-02-16
(62)【分割の表示】P 2022576595の分割
【原出願日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2021007040
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 孝博
(72)【発明者】
【氏名】我妻 新一
(72)【発明者】
【氏名】幸田 倫太郎
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 康貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 修
(72)【発明者】
【氏名】徳田 耕太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本技術は、発光効率の低下を抑制することができる面発光レーザを提供する。
【解決手段】本技術は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112と、前記第1及び第2多層膜反射鏡の間に互いに積層された複数の活性層104-1、104-2と、前記複数の活性層のうち積層方向に隣り合う2つの活性層の間に配置されたトンネルジャンクション108と、前記隣り合う2つの活性層の一方の活性層と前記トンネルジャンクションとの間に配置された酸化狭窄層106と、を備える、面発光レーザ100を提供する。本技術によれば、発光効率の低下を抑制可能な面発光レーザを提供できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1多層膜反射鏡と、第1活性層と、第1酸化狭窄層と、第1トンネルジャンクション層と、第2活性層と、第2酸化狭窄層と、第2多層膜反射鏡の少なくとも一部とがこの順に積層され、
前記第1酸化狭窄層及び前記第2酸化狭窄層は、光学厚さが互いに異なる、面発光レーザ。
【請求項2】
前記第1酸化狭窄膜及び前記第2酸化狭窄層は、Al組成が互いに異なる、請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項3】
前記第2酸化狭窄層の、前記面発光レーザの出射面側には活性層が設けられていない、請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項4】
前記第2酸化狭窄層は、前記第2多層膜反射鏡の内部に配置されている、請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項5】
前記第1酸化狭窄層は、多層反射鏡内に設けられていない、請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項6】
前記第1酸化狭窄層と前記第1トンネルジャンク層との間にスペーサ層が設けられている、請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項7】
前記第1多層反射鏡及び前記第2多層反射鏡の各々は、屈折率が互いに異なる複数種類の半導体層が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項8】
前記第1活性層及び前記第2活性層の各々は、活性領域とガイド・バリア領域とが交互に積層された構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項9】
前記第1酸化狭窄層及び前記第2酸化狭窄層の各々は、非酸化領域と、前記非酸化領域を囲む酸化領域とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項10】
前記第1トンネルジャンクション層は、p型半導体層とn型半導体層とが積層された構造を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項11】
前記第1酸化狭窄層の酸化狭窄径及び前記第2酸化狭窄層の酸化狭窄径は、互いに異なる、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項12】
前記第2活性層と前記第2多層反射鏡との間に、第3酸化狭窄層と、第2トンネルジャンクション層と、第3活性層とがこの順に更に積層されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項13】
第1多層膜反射鏡と、第1活性層と、第1酸化狭窄層と、第1トンネルジャンクション層と、第2活性層と、第2酸化狭窄層と、第2多層膜反射鏡の少なくとも一部とがこの順に積層され、
前記第1酸化狭窄層及び前記第2酸化狭窄層は、光学厚さが互いに異なる、面発光レーザを備える、測距装置。
【請求項14】
前記第1酸化狭窄膜及び前記第2酸化狭窄層は、Al組成が互いに異なる、請求項13に記載の測距装置。
【請求項15】
前記第2酸化狭窄層の、前記面発光レーザの出射面側には活性層が設けられていない、請求項13に記載の測距装置。
【請求項16】
前記第2酸化狭窄層は、前記第2多層膜反射鏡の内部に配置されている、請求項13に記載の測距装置。
【請求項17】
前記第1酸化狭窄層は、多層反射鏡内に設けられていない、請求項13に記載の測距装置。
【請求項18】
前記第1酸化狭窄層と前記第1トンネルジャンク層との間にスペーサ層が設けられている、請求項13に記載の測距装置。
【請求項19】
前記第1多層反射鏡及び前記第2多層反射鏡の各々は、屈折率が互いに異なる複数種類の半導体層が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する、請求項13~18のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項20】
前記第1活性層及び前記第2活性層の各々は、活性領域とガイド・バリア領域とが交互に積層された構造を有する、請求項13~18のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項21】
前記第1酸化狭窄層及び前記第2酸化狭窄層の各々は、非酸化領域と、前記非酸化領域を囲む酸化領域とを有する、請求項13~18のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項22】
前記第1トンネルジャンクション層は、p型半導体層とn型半導体層とが積層された構造を有する、請求項13~18のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項23】
前記第1酸化狭窄層の酸化狭窄径及び前記第2酸化狭窄層の酸化狭窄径は、互いに異なる、請求項13~18のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項24】
前記第2活性層と前記第2多層反射鏡との間に、第3酸化狭窄層と、第2トンネルジャンクション層と、第3活性層とがこの順に更に積層されている、請求項13~18のいずれか一項に記載の測距装置。
【請求項25】
第1多層膜反射鏡と、第1活性層と、第1被選択酸化層と、第1トンネルジャンクション層と、第2活性層と、第2被選択酸化層と、第2多層膜反射鏡の少なくとも一部とをこの順に積層する工程と、
前記第1被選択酸化層及び前記第2被選択酸化層の各々を側面側から酸化する工程と、
を含み、
前記第1被選択酸化層及び前記第2被選択酸化層は、酸化レートが互いに異なる、面発光レーザの製造方法。
【請求項26】
前記第2酸化狭窄層は、前記第2多層膜反射鏡の内部に配置されている、請求項25に記載の面発光レーザの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る技術(以下「本技術」とも呼ぶ)は、面発光レーザ、電子機器及び面発光レーザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1及び第2多層膜反射鏡の間に活性層が配置された面発光レーザが知られている。この面発光レーザの中には、第1及び第2多層膜反射鏡の間にトンネルジャンクション、活性層及び電流狭窄層がこの順に積層されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-351798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の面発光レーザでは、発光効率の低下を抑制することに関して改善の余地があった。
【0005】
そこで、本技術は、発光効率の低下を抑制することができる面発光レーザを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、第1及び第2多層膜反射鏡と、
前記第1及び第2多層膜反射鏡の間に互いに積層された複数の活性層と、
前記複数の活性層のうち積層方向に隣り合う2つの活性層の間に配置されたトンネルジャンクションと、
前記隣り合う2つの活性層の一方の活性層と前記トンネルジャンクションとの間に配置された酸化狭窄層と、
を備える、面発光レーザを提供する。
前記一方の活性層は、前記隣り合う2つの活性層の他方の活性層よりも前記面発光レーザの出射面から遠い位置に配置されていてもよい。
前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記出射面から近い一方よりも前記出射面から遠い他方に近い位置に配置されていてもよい。
前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記出射面から遠い一方よりも前記出射面から近い他方に近い位置に配置されてもよい。
前記一方の活性層は、前記隣り合う2つの活性層の他方の活性層よりも前記面発光レーザの出射面から近い位置に配置されていてもよい。
前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記出射面から近い一方よりも前記出射面から遠い他方に近い位置に配置されていてもよい。
前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記出射面から遠い一方よりも前記出射面から近い他方に近い位置に配置されていてもよい。
前記複数の活性層は、少なくとも3つの活性層であり、前記複数の活性層のうち少なくとも2組の隣り合う2つの活性層の各組の隣り合う2つの活性層の間に前記トンネルジャンクションが配置され、前記少なくとも2組の隣り合う2つの活性層のうち少なくとも1組の隣り合う2つの活性層の一方の活性層と、該隣り合う2つの活性層の間に配置された前記トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層が配置されていてもよい。
前記少なくとも3つの活性層は、第1、第2及び第3活性層を含み、前記第1、第2及び第3活性層は、この順に積層され、前記第1及び第2活性層の間に前記トンネルジャンクションである第1トンネルジャンクションが配置され、前記第2及び第3活性層の間に前記トンネルジャンクションである第2トンネルジャンクションが配置され、前記第1活性層と前記第1トンネルジャンクションとの間及び/又は前記第2活性層と前記第2トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層が配置されていてもよい。
前記第1活性層は、前記複数の活性層の中で前記面発光レーザの出射面から最も遠い位置に配置された活性層であってもよい。
前記第1活性層と前記第1トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層である第1酸化狭窄層が配置されていてもよい。
前記第2活性層と前記第2トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層である第2酸化狭窄層が配置されていてもよい。
前記第2活性層と前記第2トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層が配置されていなくてもよい。
前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記面発光レーザの出射面に近い方の内部に別の酸化狭窄層が配置されていてもよい。
前記酸化狭窄層及び前記別の酸化狭窄層は、いずれもAlGaAs系化合物半導体からなる層を選択酸化して形成されていてもよい。
前記酸化狭窄層及び前記別の酸化狭窄層は、Al組成及び/又は光学厚さが互いに異なっていてもよい。
前記トンネルジャンクションは、p型半導体層及びn型半導体層が互いに積層された層構造を有し、前記酸化狭窄層は、前記p型半導体層側に配置されていてもよい。
前記面発光レーザの発振波長をλとすると、前記一方の活性層と前記トンネルジャンクションと前記酸化狭窄層とが光学厚さ3λ/4内に配置されていてもよい。
本技術は、前記面発光レーザを備える電子機器も提供する。
本技術は、第1多層膜反射鏡上に第1活性層、被選択酸化層、トンネルジャンクション及び第2活性層がこの順に積層された積層構造を含む構造体を積層し、該構造体上に少なくとも第2多層膜反射鏡を積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記被選択酸化層の側面が露出するまでエッチングしてメサを形成する工程と、
前記被選択酸化層を側面側から選択的に酸化して酸化狭窄層を形成する工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本技術の第1実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図2】本技術の第1実施形態に係る面発光レーザの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3図2の第1工程(積層体生成処理1)を説明するためのフローチャートである。
図4図3の第1工程図である。
図5図3の第2工程(共振器基材生成工程1)を説明するためのフローチャートである。
図6図5の第1積層工程図である。
図7図5の第2積層工程図である。
図8図5の第3積層工程図である。
図9図5の第4積層工程図である。
図10図5の第5積層工程図である。
図11図3の第3工程図である。
図12図2の第2工程図である。
図13図2の第3工程図である。
図14図2の第4工程図である。
図15図2の第5工程図である。
図16図2の第6工程図である。
図17図2の第7工程図である。
図18】本技術の第1実施形態の変形例1に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図19】本技術の第1実施形態の変形例2に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図20】本技術の第1実施形態の変形例3に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図21】本技術の第1実施形態の変形例4に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図22】本技術の第1実施形態の変形例5に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図23】本技術の第2実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図24】本技術の第2実施形態に係る面発光レーザの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図25図24の第1工程(積層体生成処理2)を説明するためのフローチャートである。
図26図25の第2工程(共振器基材生成工程2)を説明するためのフローチャートである。
図27図26の第3積層工程図である。
図28図26の第4積層工程図である。
図29図26の第5積層工程図である。
図30図26の第6積層工程図である。
図31図26の第7積層工程図である。
図32図25の第3工程図である。
図33図24の第2工程図である。
図34図24の第3工程図である。
図35図24の第4工程図である。
図36図24の第5工程図である。
図37図24の第6工程図である。
図38図24の第7工程図である。
図39】本技術の第2実施形態の変形例1に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図40】本技術の第2実施形態の変形例2に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図41】本技術の第2実施形態の変形例3に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図42】本技術の第2実施形態の変形例4に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図43】本技術を適用し得る面発光レーザの構成例を示す平面図である。
図44図44Aは、図43のX-X線断面図である。図44Bは、図43のY-Y線断面図である。
図45】本技術の各実施形態及びその変形例に係る面発光レーザの距離測定装置への適用例を示す図である。
図46】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図47】距離測定装置の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照しながら、本技術の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。本明細書において、本技術に係る面発光レーザ、電子機器及び面発光レーザの製造方法が複数の効果を奏することが記載される場合でも、本技術に係る面発光レーザ、電子機器及び面発光レーザの製造方法は、少なくとも1つの効果を奏すればよい。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0009】
また、以下の順序で説明を行う。
1.本技術の第1実施形態に係る面発光レーザ
(1)面発光レーザの構成
(2)面発光レーザの動作
(3)面発光レーザの製造方法
(4)面発光レーザ及びその製造方法の効果
2.本技術の第1実施形態の変形例1~5に係る面発光レーザ
3.本技術の第2実施形態に係る面発光レーザ
(1)面発光レーザの構成
(2)面発光レーザの動作
(3)面発光レーザの製造方法
(4)面発光レーザの効果
4.本技術の第2実施形態の変形例1~4に係る面発光レーザ
5.本技術を適用し得る面発光レーザの構成例
6.本技術の変形例
7.電子機器への応用例
8.面発光レーザを距離測定装置に適用した例
9.距離測定装置を移動体に搭載した例
【0010】
1.本技術の第1実施形態に係る面発光レーザ
(1)面発光レーザの構成
図1は、本技術の第1実施形態に係る面発光レーザ100の構成を示す断面図である。以下では、便宜上、図1等の断面図における上方を上、下方を下として説明する。
【0011】
面発光レーザ100は、一例として、図1に示すように、第1及び第2多層膜反射鏡102、112と、複数(例えば2つ)の活性層(例えば第1及び第2活性層104-1、104-2)と、トンネルジャンクション108と、酸化狭窄層106とを備える。
【0012】
面発光レーザ100の各構成要素は、一例として、基板101(半導体基板)上に形成されている。
【0013】
第1及び第2多層膜反射鏡102、112は、一例として、基板101上に互いに積層されている。ここでは、第2多層膜反射鏡112が第1多層膜反射鏡102の上方に配置されている。
第1及び第2活性層104-1、104-2は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に互いに積層されている。
トンネルジャンクション108は、複数の活性層のうち積層方向(上下方向)に隣り合う2つの活性層である第1及び第2活性層104-1、104-2の間に配置されている。
酸化狭窄層106は、一例として、積層方向に隣り合う2つの活性層である第1及び第2活性層104-1、104-2の一方の活性層である第1活性層104-1とトンネルジャンクション108との間に配置されている。
【0014】
面発光レーザ100では、一例として、基板101上に、第1多層膜反射鏡102、第1活性層104-1、酸化狭窄層106、トンネルジャンクション108、第2活性層104-2及び第2多層膜反射鏡112が基板101側(下側)からこの順に積層されている。
【0015】
ここでは、第1及び第2活性層104-1、104-2と、トンネルジャンクション108と、酸化狭窄層106とを含んで、共振器Rが構成される。すなわち、面発光レーザ100は、共振器Rが第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に配置された共振器構造体を有する。
【0016】
基板101上には、一例として、第1多層膜反射鏡102の一部(上部)と、第1及び第2活性層104-1、104-2と、トンネルジャンクション108と、酸化狭窄層106と、第2多層膜反射鏡112とを含むメサM1が形成されている。メサM1は、共振器構造体(但し、第1多層膜反射鏡102の他部(下部)を除く)を構成している。メサM1の高さ方向は、積層方向に略一致する。メサM1は、例えば略円柱形状であるが、例えば略楕円柱形状、略角柱形状、略角錐台形状、略円錐台形状、略楕円錐台形状等の他の形状であってもよい。
【0017】
面発光レーザ100は、一例として、メサM1の頂部の出射面ESから光を出射する。すなわち、面発光レーザ100は、一例として、表面出射型の面発光レーザである。
【0018】
第1活性層104-1は、隣り合う2つの活性層の他方の活性層104-2よりも面発光レーザ100の出射面ESから遠い位置に配置されている。
【0019】
第1活性層104-1は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち出射面ESから近い一方である第2多層膜反射鏡112よりも出射面ESから遠い他方である第1多層膜反射鏡102に近い位置に配置されている。第1活性層104-1は、例えば共振器Rの下半部に配置されている。より詳細には、第1活性層104-1は、例えば共振器R内の電流経路の下流端近傍に配置されている。
【0020】
第2活性層104-2は、第1多層膜反射鏡102よりも第2多層膜反射鏡112に近い位置に配置されている。第2活性層104-2は、例えば共振器Rの上半部に配置されている。より詳細には、第2活性層104-2は、例えば共振器R内の電流経路の上流端近傍に配置されている。
【0021】
酸化狭窄層106は、第2多層膜反射鏡112よりも第1多層膜反射鏡102に近い位置に配置されている。すなわち、酸化狭窄層106は、例えば共振器Rの下半部に配置されている。
【0022】
[基板]
基板101は、一例として、第1導電型(例えばn型)の半導体基板(例えばGaAs基板)である。基板101の裏面(下面)には、n側電極であるカソード電極117が設けられている。
【0023】
カソード電極117は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
カソード電極117は、例えばAuGe/Ni/Auからなる。
【0024】
[第1多層膜反射鏡]
第1多層膜反射鏡102は、一例として、基板101上に配置されている。
第1多層膜反射鏡102は、一例として、半導体多層膜反射鏡である。多層膜反射鏡は、分布型ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector)とも呼ばれる。多層膜反射鏡(分布型ブラッグ反射鏡)の一種である半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、高反射率及び導電性を有する。
詳述すると、第1多層膜反射鏡102は、一例として、第1導電型(例えばn型)の半導体多層膜反射鏡であり、屈折率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の半導体層が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する。第1多層膜反射鏡102の各屈折率層は、第1導電型(例えばn型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。
【0025】
[第1活性層]
第1活性層104-1は、一例として、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体からなる第1クラッド層103を介して第1多層膜反射鏡102上に配置されている。なお、「クラッド層」は「スペーサ層」とも呼ばれる。
第1活性層104-1は、一例として、ノンドープのInGaAs系化合物半導体(例えばIn0.10GaAs)からなる活性領域と、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体(例えばAl0.10GaAs)からなるガイド・バリア領域(但し、積層方向の両端がガイド領域、積層方向の中間がバリア領域)とが交互に積層された積層構造を有している。ここでは、第1活性層104は、例えば2層のガイド領域、2層のバリア領域及び3層の活性領域を有している。
各活性領域の厚さは、例えば7nmとされている。積層方向の両端のガイド領域の厚さは、例えば10nmとされている。積層方向の中間のバリア領域の厚さは、例えば8nmとされている。
面発光レーザ100は、第1活性層104-1が当該積層構造を有することにより、例えば900nm帯を発振波長としたレーザ発振を行うことが可能である。
【0026】
[酸化狭窄層]
酸化狭窄層106は、一例として、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体からなるスペーサ層105を介して第1活性層104-1上に配置されている。なお、スペーサ層は「クラッド層」とも呼ばれる。
酸化狭窄層106は、一例として、AlGaAs系化合物半導体(例えばAlGaAs、AlAs等)からなる非酸化領域106aと、その周囲を取り囲むAlGaAs系化合物半導体の酸化物(例えばAl)からなる酸化領域106bとを有する。酸化狭窄層106の基材(後述する被選択酸化層106S)としては、Al組成が90%以上のAlGaAs膜を用いることが好ましい。
面発光レーザ100の発振波長をλとすると、第1活性層104-1とトンネルジャンクション108と酸化狭窄層106とが光学厚さ3λ/4内に配置されている。
酸化狭窄層は「電流狭窄層」とも呼ばれる。
【0027】
[トンネルジャンクション]
トンネルジャンクション108は、一例として、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体からなるスペーサ層107を介して酸化狭窄層106上に配置されている。
トンネルジャンクション108は、互いに積層されたp型半導体層108a及びn型半導体層108bを含む。p型半導体層108aは、一例として、n型半導体層108bの基板101側(下側)に配置されている。より詳細には、p型半導体層108aは、一例として、酸化狭窄層106とn型半導体層108bとの間にn型半導体層108bと接するように配置されている。
【0028】
(p型半導体層)
p型半導体層108aは、一例として、キャリア濃度が高いGaAs系化合物半導体、AlGaAs系化合物半導体、InGaAs系化合物半導体又はAlGaInP系化合物半導体からなる。p型半導体層108aのドーパント材料としては、例えばC、Zn、Mg等を用いることができる。p型半導体層108aとして、例えばC(炭素)が高濃度(例えば1x1020cm-3)にドープされた厚さ10nmのGaAs層を用いることができる。
【0029】
(n型半導体層)
n型半導体層107bは、一例として、キャリア濃度が高いn型のGaAs系化合物半導体、AlGaAs系化合物半導体、InGaAs系化合物半導体又はAlGaInP系化合物半導体からなる。n型半導体層108bのドーパント材料としては、Si、Te、Se等を用いることができる。n型半導体層108bとして、例えばSi(シリコン)が高濃度(例えば5x1019cm-3)にドープされた厚さ20nmのGaAs層を用いることができる。
【0030】
[第2活性層]
第2活性層104-2は、一例として、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体からなるスペーサ層109を介してトンネルジャンクション108上に配置されている。
第2活性層104-2は、一例として、第1活性層104-1と同様の層構成を有する。すなわち、第2活性層104-2は、一例として、ノンドープのInGaAs系化合物半導体(例えばIn0.10GaAs)からなる活性領域と、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体(例えばAl0.10GaAs)からなるガイド・バリア領域(但し、積層方向の両端がガイド領域、積層方向の中間がバリア領域)とが交互に積層された積層構造を有している。ここでは、第2活性層104-2は、例えば2層のガイド領域、2層のバリア領域及び3層の活性領域を有している。
各活性領域の膜厚は、例えば7nmとされている。積層方向の両端のガイド領域の膜厚は、例えば10nmとされている。積層方向の中間のバリア領域の膜厚は、例えば8nmとされている。
面発光レーザ100は、第2活性層104-2が当該積層構造を有することにより、例えば900nm帯を発振波長としたレーザ発振を行うことが可能である。
【0031】
[第2多層膜反射鏡]
第2多層膜反射鏡112は、一例として、ノンドープのAlGaAs系化合物半導体からなる第2クラッド層111を介して第2活性層104-2上に配置されている。
第2多層膜反射鏡112は、一例として、半導体多層膜反射鏡である。多層膜反射鏡は、分布型ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector)とも呼ばれる。多層膜反射鏡(分布型ブラッグ反射鏡)の一種である半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、高反射率及び導電性を有する。
詳述すると、第2多層膜反射鏡112は、一例として、第2導電型(例えばp型)の半導体多層膜反射鏡であり、屈折率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の半導体層が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する。第2多層膜反射鏡112の各屈折率層は、第2導電型(例えばp型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。第2多層膜反射鏡112は、一例として、第1多層膜反射鏡102よりも反射率が僅かに低く設定されている。
【0032】
第2多層膜反射鏡112の内部には、別の酸化狭窄層である酸化狭窄層113が配置されている。第2多層膜反射鏡112は、一例として、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち面発光レーザ100の出射面ESに近い方である。酸化狭窄層113は、一例として、第2導電型(例えばn型)のAlGaAs系化合物半導体(例えばAlGaAs、AlAs等)からなる非酸化領域113aと、その周囲を取り囲むAlGaAs系化合物半導体の酸化物(例えばAl)からなる酸化領域113bとを有する。酸化狭窄層113の基材(後述する被選択酸化層113S)としては、Al組成が90%以上のAlGaAs膜を用いることが好ましい。
【0033】
酸化狭窄層106、113は、上述したように、一例として、いずれもAlGaAs系化合物半導体からなる被選択酸化層を選択酸化して形成されている。酸化狭窄層106、113は、Al組成及び/又は光学厚さが互いに異なることが好ましい。酸化狭窄層106を含む共振器R内と酸化狭窄層113を含む第2多層膜反射鏡112内とでは、同一の酸化雰囲気中において基材(被選択酸化層)の酸化状況が異なるため、各酸化狭窄層において所望の酸化狭窄径を得るためには酸化レートを個別に設定する必要があるからである。酸化狭窄層106、113の酸化狭窄径は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、被選択酸化層は、Al組成が大きいほど酸化レートが高くなる傾向にあり、光学厚さが厚いほど酸化レートが高くなる傾向にある。
【0034】
第2多層膜反射鏡112上には、一例として、第2導電型(例えばp型)のGaAs層からなるコンタクト層114が配置されている。ここでは、一例として、コンタクト層114がメサM1の頂部を構成し、コンタクト層114の上面の中央部(周辺部を除く部分)が出射面ESを構成している。
【0035】
メサM1は、コンタクト層114の上面の中央部を除いて絶縁膜115で覆われている。絶縁膜115は、例えばSiO、SiN、SiON等の誘電体からなる。
すなわち、メサM1の頂部(例えばコンタクト層114)上の絶縁膜115にはコンタクトホール115aが形成されており、該コンタクトホール115a内にp側電極である環状のアノード電極116がメサM1の頂部(例えばコンタクト層114)に接触するように設けられている。アノード電極116は、一例として、積層方向から見て中心が酸化狭窄層113の中心に略一致するようにコンタクトホール115a内に配置されている。アノード電極116の内側がレーザ光の出射口となっている。
アノード電極116は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
アノード電極116は、例えばTi/Pt/Auからなる。
【0036】
(2)面発光レーザの動作
図1に示す面発光レーザ100では、アノード電極116とカソード電極117との間に電圧が印加されアノード電極116からメサM1を含む共振器構造体に電流が流入されると、該電流が酸化狭窄層113で狭窄されて第2活性層104-2に注入されるとともに、トンネルジャンクション108によるトンネル効果によりその注入された電流と略同一の電流値の電流が酸化狭窄層106で狭窄されて第1活性層104-1に注入される。これにより、第1及び第2活性層104-1、104-2が略同一の発光強度で発光し、それらの光が第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間において各活性層で増幅されながら往復して発振条件を満たしたときに、メサM1の頂部からレーザ光として出射される。
【0037】
(3)面発光レーザの製造方法
以下、面発光レーザ100の製造方法について、図2のフローチャート(ステップS1~S7)を参照して説明する。図2は、面発光レーザ100のみならず面発光レーザ100の派生系も製造可能な手順を示す。ここでは、一例として、半導体製造装置を用いた半導体製造方法により、基板101の基材である1枚のウェハ上に、複数の面発光レーザ100が2次元配置された面発光レーザアレイを複数同時に生成する。次いで、一連一体の複数の面発光レーザアレイをダイシングにより分離して、チップ状の複数の面発光レーザアレイ(面発光レーザアレイチップ)を得る。なお、以下に説明する製造方法により、基板101の基材である1枚のウェハ上に複数の面発光レーザ100を複数同時に生成し、一連一体の複数の面発光レーザ100をダイシングにより分離して、チップ状の面発光レーザ(面発光レーザチップ)を得ることも可能である。以下の一連の工程は、半導体製造装置のCPUにより実行される。
【0038】
<ステップS1:積層体生成処理1>
最初のステップS1では、積層体生成処理1を実施する。積層体生成処理1では、一例として、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法により、成長室において面発光レーザ100を構成する各層を順次積層して積層体L1(図11参照)を生成する。具体的には、以下に詳述するように、例えば、第1多層膜反射鏡102上に第1活性層104-1、被選択酸化層106S、トンネルジャンクション108及び第2活性層104-2がこの順に積層された積層構造を含む構造体を積層し、該構造体上に被選択酸化層113Sを内部に含む第2多層膜反射鏡112を積層して積層体L1を生成する。
【0039】
以下、積層体生成処理1(図2のステップS1)について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
(ステップS1-1)
ステップS1-1では、基板101上に第1多層膜反射鏡102を積層する(図4参照)。
【0041】
(ステップS1-2:共振器基材生成工程1)
ステップS1-2では、共振器基材生成工程1を実施する。共振器基材生成工程1は、以下に詳述するように、第1多層膜反射鏡102上に共振器Rとなる共振器基材を生成する工程である。
以下、共振器基材生成工程1について、図5のフローチャート、図6図10(第1積層工程図~第5積層工程図)を参照して説明する。
【0042】
ステップS1-2-1では、第1多層膜反射鏡102上に第1活性層104-1を積層する(図6参照)。より詳細には、第1多層膜反射鏡102上に第1クラッド層103を介して第1活性層104-1を積層する。
【0043】
ステップS1-2-2では、nに1をセットする。
【0044】
ステップS1-2-3では、第n活性層104-n上に第n被選択酸化層106S-nを積層する(図7参照)。より詳細には、第1活性層104-1上にスペーサ層105を介して第n被選択酸化層106S-nを積層する。ここで、第1被選択酸化層106S-1は、図7に示す被選択酸化層106Sである。
【0045】
ステップS1-2-4では、第n被選択酸化層106S-n上に第nトンネルジャンクション108-nを積層する(図8参照)。より詳細には、第n被選択酸化層106S上にスペーサ層107を介して、第nトンネルジャンクション108-nを構成するp型半導体層108a及びn型半導体層108bをこの順に積層する。
【0046】
ステップS1-2-5では、第nトンネルジャンクション108-n上に第n+1活性層104-(n+1)を積層する(図9参照)。より詳細には、第nトンネルジャンクション108-n上にスペーサ層109を介して第n+1活性層104-(n+1)を積層する。
【0047】
ステップS1-2-6では、n<Nであるか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS1-2-7に移行し、否定されるとステップS1-2-8に移行する。ここで、Nは、共振器内の酸化狭窄層の数を意味する。面発光レーザ100の場合は、共振器内の酸化狭窄層の数が1つでありN=1であるため、n=1のときにステップS1-2-6での判断が否定されステップS1-2-8に移行する。
【0048】
ステップS1-2-7では、nをインクリメントする。ステップS1-2-7が実行されると、ステップS1-2-3に戻り、S1-2-3~S1-2-5の一連の処理が再び実行される。これにより、第2活性層104-2上にさらに被選択酸化層、トンネルジャンクション及び活性層をこの順に積層して、面発光レーザ100の派生系を製造するための共振器基材を生成することができる。
【0049】
ステップS1-2-8では、第n+1活性層104-(n+1)上に第2クラッド層111を積層する(図10参照)。この結果、共振器となる共振器基材が生成される。
【0050】
(ステップS1-3)
ステップS1-3では、共振器基材上に第2多層膜反射鏡112を積層する(図11参照)。より詳細には、共振器基材の第2クラッド層111上に、被選択酸化層113Sを内部に含む第2多層膜反射鏡112及びコンタクト層114をこの順に積層する。この結果、積層体(例えば積層体L1)が生成される。ステップS1-3が実行されると、積層体生成処理1が終了する。
【0051】
<ステップS2>
ステップS2では、積層体(例えば積層体L1)をエッチングしてメサ(例えばメサM1)を形成する(図12参照)。
具体的には、例えば、成長室から取り出した積層体L1上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、例えばRIEエッチング(反応性イオンエッチング)により、積層体L1を少なくとも被選択酸化層106Sの側面が露出するまでエッチングして、メサM1を形成する。ここでのエッチングは、一例として、第1クラッド層103の側面が完全に露出するまで(例えばエッチング底面が第1多層膜反射鏡102内に位置するまで)行う。その後、該レジストパターンを除去する。
【0052】
<ステップS3>
ステップS3では、被選択酸化層106S、113S(図12参照)の周囲部を酸化して酸化狭窄層106、113を生成する(図13参照)。
具体的には、例えば、メサM1を水蒸気雰囲気中にさらし、被選択酸化層106S、113Sを側面から酸化(選択酸化)して、非酸化領域106aの周りが酸化領域106bで取り囲まれた酸化狭窄層106を形成するとともに、被酸化領域113aの周りが酸化領域113bで取り囲まれた酸化狭窄層113を形成する。
【0053】
<ステップS4>
ステップS4では、絶縁膜115を形成する(図14参照)。具体的には、例えば、メサM1が形成された積層体の略全域に絶縁膜115を成膜する。
【0054】
<ステップS5>
ステップS5では、コンタクトホール115aを形成する(図15参照)。具体的には、例えば、メサM1の頂部上に形成された絶縁膜115以外の絶縁膜115上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、メサM1の頂部上に形成された絶縁膜115を例えばフッ酸系のエッチャントを用いてエッチングにより除去する。その後、該レジストパターンを除去する。この結果、コンタクトホール115aが形成され、コンタクト層114が露出する。
【0055】
<ステップS6>
ステップS6では、アノード電極116を形成する(図16参照)。具体的には、例えば、EB蒸着法により、コンタクトホール115aを介してコンタクト層114上に例えばTi/Pt/Au膜を成膜し、レジスト及びレジスト上の例えばTi/Pt/Auをリフトオフすることにより、コンタクトホール115a内に環状のアノード電極116を形成する。
【0056】
<ステップS7>
ステップS7では、カソード電極117を形成する(図17参照)。具体的には、基板101の裏面(下面)を研磨した後、該裏面に例えばAuGe/Ni/Au膜を成膜する。ステップS7が実行されると、図2のフローは終了する。
【0057】
(4)面発光レーザ及びその製造方法の効果
本技術の第1実施形態に係る面発光レーザ100は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112と、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に互いに積層された複数の活性層(例えば第1及び第2活性層104-1、104-2)と、該複数の活性層のうち積層方向に隣り合う2つの活性層である第1及び第2活性層104-1、104-2の間に配置されたトンネルジャンクション108と、隣り合う2つの活性層の一方の活性層である第1活性層104-1とトンネルジャンクション108との間に配置された酸化狭窄層106と、を備える、面発光レーザである。
この場合、例えば、第2活性層104-2に注入されトンネルジャンクション108を介した電流は、酸化狭窄層106で狭窄されて第1活性層104-1に注入される。これにより、第1活性層104-1に効率良く電流を注入することができ、第1活性層104-1での発光効率の低下を抑制できる。
結果として、第1実施形態の面発光レーザ100によれば、発光効率の低下を抑制できる面発光レーザを提供できる。
【0058】
さらに、面発光レーザ100によれば、第1及び第2活性層104-1、104-2の各々で発生した光が第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間を往復するときに酸化狭窄層106により光閉じ込め効果が増大するので、レーザ光(出射光)の出射角の制御範囲を拡大することもできる。
【0059】
上記一方の活性層(トンネルジャンクション108とで酸化狭窄層106を挟む活性層)である第1活性層104-1は、隣り合う2つの活性層の他方の活性層である第2活性層104-2よりも面発光レーザ100の出射面ESから遠い位置に配置されている。これにより、酸化狭窄層106を出射面ESからより遠い位置(少なくともトンネルジャンクション108よりも出射面ESから遠い位置)に配置することができ、該位置での電流狭窄効果を得ることができる。すなわち、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に設けられた共振器Rにおいて出射面ESからより遠い位置(少なくとも酸化狭窄層106よりも出射面ESから遠い位置)に配置された第1活性層104-1に注入される電流を狭窄することができ、第1活性層104-1への電流注入効率を向上することができる。
なお、仮に共振器内に酸化狭窄層106が設けられていない場合には、例えば出射面ES側から共振器に供給された電流は、共振器内において広がりながら、第2活性層104-2、第1活性層104-1にこの順に注入されることになる。この場合、第1活性層104-1は第2活性層104-2よりも共振器内における電流経路の下流端側に位置するため、より広がった電流が注入されることになる。すなわち、第1活性層104-1の方が第2活性層104-2よりも電流注入効率に関して不利な位置にある。このため、第1活性層104-1に注入される電流を狭窄できることの意義は大きい。
【0060】
上記一方の活性層(トンネルジャンクション108とで酸化狭窄層106を挟む活性層)である第1活性層104-1は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち出射面ESから近い一方である第2多層膜反射鏡112よりも出射面ESから遠い他方である第1多層膜反射鏡102に近い位置(例えば共振器Rの下半部)に配置されている。これにより、酸化狭窄層106により、例えば共振器Rの下半部に配置される第1活性層104-1に注入される電流を効果的に狭窄することができる。
なお、上記一方の活性層(トンネルジャンクション108とで酸化狭窄層106を挟む活性層)である第1活性層104-1は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち出射面ESから遠い一方である第1多層膜反射鏡102よりも出射面ESから近い他方である第2多層膜反射鏡112に近い位置(例えば共振器Rの上半部)に配置されていてもよい。この場合、酸化狭窄層106、トンネルジャンクション108及び第2活性層104-2も、第1多層膜反射鏡102よりも第2多層膜反射鏡112に近い位置(例えば共振器Rの上半部)に配置されてもよい。
【0061】
第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち面発光レーザ100の出射面ESに近い方の内部に酸化狭窄層113(別の酸化狭窄層)が配置されている。これにより、第1及び第2活性層104-1、104-2のうち出射面ESにより近い位置(例えば共振器Rの上半部(詳しくは例えば共振器R内の電流経路の上流端近傍))に配置された第2活性層104-2に注入される電流を効果的に狭窄することができる。
【0062】
酸化狭窄層106、113は、いずれもAlGaAs系化合物半導体からなる層を選択酸化して形成されていることが好ましい。
【0063】
酸化狭窄層106、113は、Al組成及び/又は光学厚さが互いに異なる。これにより、同一酸化雰囲気中(例えば同一水蒸気雰囲気中)で選択酸化処理を行う場合に酸化狭窄層106、113の各々の酸化狭窄径を所望の大きさに設定することができる。
【0064】
トンネルジャンクション108は、p型半導体層108a及びn型半導体層108bが互いに積層された層構造を有し、酸化狭窄層106は、p型半導体層108a側に配置されている。これにより、酸化狭窄層106を、n型の多層膜反射鏡である第1多層膜反射鏡102により近い位置(より出射面ESから遠い位置)に配置することができる。
【0065】
面発光レーザ100の発振波長をλとすると、第1活性層104-1とトンネルジャンクション108と酸化狭窄層106とが光学厚さ3λ/4内に配置されている。この場合に、例えば共振器内において、第1活性層104-1を波長λの定在波の腹又はその近傍に配置し、且つ、トンネルジャンクション108及び酸化狭窄層106の各々を該定在波の節又はその近傍に配置することができる。これにより、該定在波の減衰を極力抑制することができ、ひいては面発光レーザ100の出射光の出力低下を抑制できる。
【0066】
面発光レーザ100の製造方法は、第1多層膜反射鏡102上に第1活性層104-1、被選択酸化層106S、トンネルジャンクション108及び第2活性層104-2がこの順に積層された積層構造を含む構造体を積層し、該構造体上に少なくとも第2多層膜反射鏡112を積層して積層体L1を生成する工程と、積層体L1を少なくとも被選択酸化層106Sの側面が露出するまでエッチングしてメサM1を形成する工程と、被選択酸化層106Sを側面側から選択的に酸化して酸化狭窄層106を形成する工程と、を含む、面発光レーザの製造方法である。
これにより、発光効率の低下を抑制可能な屈折率ガイド型の面発光レーザ100を製造することができる。
【0067】
2.本技術の第1実施形態の変形例1~5に係る面発光レーザ
以下、本技術の第1実施形態の変形例1~5に係る面発光レーザについて説明する。
【0068】
(変形例1)
【0069】
変形例1の面発光レーザ100-1は、図18に示すように、酸化狭窄層106(第2酸化狭窄層106-2とする)が第2活性層104-2とトンネルジャンクション108との間に設けられている点、酸化狭窄層113に代えてもう1つの酸化狭窄層106(第1酸化狭窄層106-1とする)が第1多層膜反射鏡102と第1活性層104-1との間に設けられている点及び導電型が逆な点を除いて、第1実施形態の面発光レーザ100(図1参照)と同様の構成を有する。面発光レーザ100-4では、第1多層膜反射鏡102の導電型がp型であり、且つ、第2多層膜反射鏡112の導電型がn型であり、且つ、アノード電極116が基板101の裏面側に配置され、且つ、カソード電極117がメサの頂部に配置され、且つ、トンネルジャンクション108においてn型半導体層108bがp型半導体層108aの基板101側に配置されている。
面発光レーザ100-1では、トンネルジャンクション108とで第2酸化狭窄層106-2を挟む活性層である第2活性層104-2は、第1活性層104-1よりも面発光レーザ100の出射面ESから近い位置に配置されている。これにより、第2酸化狭窄層106-2を出射面ESからより近い位置(少なくともトンネルジャンクション108よりも出射面ESから近い位置)に配置することができ、該位置での電流狭窄効果を得ることができる。すなわち、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に設けられた共振器において出射面ESからより近い位置(少なくとも酸化狭窄層106よりも出射面ESから近い位置、例えば共振器の上半部)での電流狭窄効果を得ることができ、第2活性層104-2への電流注入効率を向上することができる。
【0070】
面発光レーザ100-1では、トンネルジャンクション108とで第2酸化狭窄層106-2を挟む活性層である第2活性層104-2は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち出射面ESから遠い一方の多層膜反射鏡である第1多層膜反射鏡102よりも出射面ESから近い他方の多層膜反射鏡である第2多層膜反射鏡112に近い位置に配置されている。
面発光レーザ100-1では、アノード電極116から流入された電流は、基板101及び第1多層膜反射鏡102を経て第1酸化狭窄層106-1で狭窄され第1活性層104-2に注入される。第1活性層104-1を介した電流は、トンネルジャンクション108を経て酸化狭窄層106-2により狭窄され第2活性層104-2に注入される。これにより、各活性層に効率良く電流を注入することができる。
なお、トンネルジャンクション108とで酸化狭窄層106-2を挟む活性層である第2活性層104-2は、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のうち出射面ESから近い一方である第2多層膜反射鏡112よりも出射面ESから遠い他方である第1多層膜反射鏡102に近い位置(例えば共振器の下半部)に配置されていてもよい。この場合、酸化狭窄層106、トンネルジャンクション108及び第1活性層104-1も、第2多層膜反射鏡112よりも第1多層膜反射鏡102に近い位置(例えば共振器の下半部)に配置されてもよい。
変形例1の面発光レーザ100-1は、積層体生成処理において、酸化狭窄層113に代えてもう1つの酸化狭窄層106が形成される点及び積層順が一部異なる点を除いて、第1実施形態の面発光レーザ100(図1参照)の製造方法と同様の製造方法により製造できる。
【0071】
(変形例2)
変形例2の面発光レーザ100-3は、図19に示すように、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に、第1多層膜反射鏡102側から活性層、酸化狭窄層及びトンネルジャンクションがこの順に積層された積層構造を複数(例えば2つ)有する点を除いて、第1実施形態の面発光レーザ100(図1参照)と同様の構成を有する。
詳述すると、面発光レーザ100-3は、第1多層膜反射鏡102側から第1活性層104-1、第1酸化狭窄層106-1及び第1トンネルジャンクション108-1がこの順に積層された第1積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-3は、該第1積層構造上に、第1多層膜反射鏡102側から第2活性層104-2、第2酸化狭窄層106-2及び第2トンネルジャンクション108-2がこの順に積層された第2積層構造を有する。第1及び第2トンネルジャンクション108-1、108-2は、トンネルジャンクション108と実質的に同一の構成及び機能を有する。さらに、面発光レーザ100-3は、該第2積層構造上に第3活性層104-3を有する。
【0072】
すなわち、面発光レーザ100-3では、複数の活性層は3つの活性層(第1~第3活性層104-1~104-3)であり、複数(例えば3つ)の活性層のうち少なくとも2組の隣り合う2つの活性層(第1及び第2活性層104-1、104-2、第2及び第3活性層104-2、104-3)の1組目の隣り合う2つの活性層である第1及び第2活性層104-1、104-2の間に第1トンネルジャンクション108-1が配置され、且つ、2組目の隣り合う2つの活性層である第2及び第3活性層104-2、104-3の間に第2トンネルジャンクション108-2が配置されている。さらに、1組目の隣り合う2つの活性層である第1及び第2活性層104-1、104-2の一方の活性層である第1活性層104-1と、該隣り合う2つの活性層である第1及び第2活性層104-1、104-2の間に配置された第1トンネルジャンクション108-1との間に第1酸化狭窄層106-1が配置されている。さらに、2組目の隣り合う2つの活性層である第2及び第3活性層104-2、104-3の一方の活性層である第2活性層104-2と、該隣り合う2つの活性層である第2及び第3活性層104-2、104-3の間に配置された第2トンネルジャンクション108-2との間に第2酸化狭窄層106-2が配置されている。
【0073】
面発光レーザ100-3は、第1、第2及び第3活性層104-1~104-3を含み、第1、第2及び第3活性層104-1~104-3は、この順に積層され、第1及び第2活性層104-1、104-2の間に第1トンネルジャンクション108-1が配置され、第2及び第3活性層104-2、104-3の間に第2トンネルジャンクション108-2が配置されている。さらに、第1活性層104-1と第1トンネルジャンクション108-1との間に第1酸化狭窄層106-1が配置され、第2活性層104-2と第2トンネルジャンクション108-2との間に第2酸化狭窄層106-2が配置されている。
【0074】
面発光レーザ100-3では、第1活性層104-1は、3つの活性層104-1~104-3の中で面発光レーザ100-3の出射面ESから最も遠い位置(例えば共振器内の電流経路の下流端近傍)に配置された活性層である。
【0075】
面発光レーザ100-3によれば、活性層の数が3つのマルチ活性層の場合でも、各活性層に効率良く電流を注入でき、該活性層の発光効率の低下を抑制できる。
面発光レーザ100-3は、面発光レーザ100の派生系であり、図5のフローチャートの手順(但し、ステップS1-2-6においてN=2とする)で製造することができる。
【0076】
(変形例3)
変形例3の面発光レーザ100-4は、図20に示すように、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に、第1多層膜反射鏡102側からトンネルジャンクション、酸化狭窄層及び活性層がこの順に積層された積層構造を複数(例えば2つ)有する点、酸化狭窄層113に代えてもう1つの酸化狭窄層106が第1多層膜反射鏡102と第1活性層104-1との間に設けられている点及び導電型が逆な点を除いて、変形例2の面発光レーザ100-3(図19参照)と同様の構成を有する。
すなわち、面発光レーザ100-4は、面発光レーザ100-3を上下逆さにしたような構成を有する。面発光レーザ100-4では、第1多層膜反射鏡102の導電型がp型であり、且つ、第2多層膜反射鏡112の導電型がn型であり、且つ、アノード電極116が基板101の裏面側に配置され、且つ、カソード電極117がメサの頂部に配置され、且つ、各トンネルジャンクションにおいてn型半導体層108b(図20において灰色の層)がp型半導体層108aの基板101側に配置されている。
詳述すると、面発光レーザ100-4は、第1多層膜反射鏡102側から第1トンネルジャンクション108-1、第1酸化狭窄層106-1及び第2活性層104-2がこの順に積層された第1積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-4は、該第1積層構造上に、第1多層膜反射鏡102側から第2トンネルジャンクション108-2、第2酸化狭窄層106-2及び第3活性層104-3がこの順に積層された第2積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-4は、該第1積層構造下に第1活性層104-1を有する。
面発光レーザ100-4によれば、活性層の数が3つのマルチ活性層の場合でも、各活性層に効率良く電流を注入でき、該活性層の発光効率の低下を抑制できる。
面発光レーザ100-4は、積層体生成処理において、酸化狭窄層113に代えて酸化狭窄層106が形成される点及び積層順が異なる点を除いて、変形例2の面発光レーザ100-3(図19参照)の製造方法と同様の製造方法により製造できる。
【0077】
(変形例4)
変形例4の面発光レーザ100-5は、図21に示すように、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に、活性層、酸化狭窄層及びトンネルジャンクションが第1多層膜反射鏡102側からこの順に積層された積層構造を複数(例えば3つ)有する点を除いて、第1実施形態の面発光レーザ100(図1参照)と同様の構成を有する。
詳述すると、面発光レーザ100-5は、第1多層膜反射鏡102側から第1活性層104-1、第1酸化狭窄層106-1及び第1トンネルジャンクション108-1がこの順に積層された第1積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-5は、該第1積層構造上に、第1多層膜反射鏡102側から第2活性層104-2、第2酸化狭窄層106-2及び第2トンネルジャンクション108-2がこの順に積層された第2積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-5は、該第2積層構造上に、第1多層膜反射鏡102側から第3活性層104-3、第3酸化狭窄層106-3及び第3トンネルジャンクション108-3がこの順に積層された第3積層構造を有する。第3トンネルジャンクション108-3は、トンネルジャンクション108と実質的に同一の構成及び機能を有する。さらに、面発光レーザ100-5は、該第3積層構造上に第4活性層104-4を有する。
面発光レーザ100-5によれば、活性層の数が4つのマルチ活性層の場合でも、各活性層に効率良く電流を注入でき、該活性層の発光効率の低下を抑制できる。なお、上記積層構造を4つ以上有し、且つ、酸化狭窄層113を有する面発光レーザ(面発光レーザ100の派生系)によれば、活性層の数が5つ以上のマルチ活性層の場合でも、各活性層に効率良く電流を注入でき、該活性層の発光効率の低下を抑制できる。
面発光レーザ100-5は、面発光レーザ100の派生系であり、面発光レーザ図5のフローチャートの手順(但し、ステップS1-2-6においてN=3とする)で製造することができる。なお、同様の製法(但し、図5のステップS1-2-6においてN≧4とする)により、上記積層構造を4つ以上有する面発光レーザを製造することができる。
【0078】
(変形例5)
変形例5の面発光レーザ100-6は、図22に示すように、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の間に、トンネルジャンクション、酸化狭窄層及び活性層が第1多層膜反射鏡102側からこの順に積層された積層構造を複数(例えば3つ)有する点、酸化狭窄層113に代えてもう1つの酸化狭窄層106が第1多層膜反射鏡102と第1活性層104-1との間に設けられている点及び導電型が逆な点を除いて、変形例4の面発光レーザ100-5(図21参照)と同様の構成を有する。すなわち、面発光レーザ100-6は、面発光レーザ100-5を上下逆さにしたような構成を有する。面発光レーザ100-6では、第1多層膜反射鏡102の導電型がp型であり、且つ、第2多層膜反射鏡112の導電型がn型であり、且つ、アノード電極116が基板101の裏面側に配置され、且つ、カソード電極117がメサの頂部に配置され、且つ、各トンネルジャンクションにおいてn型半導体層108b(図22において灰色の層)がp型半導体層108aの基板101側に配置されている。
詳述すると、面発光レーザ100-6は、第1多層膜反射鏡102側から第1トンネルジャンクション108-1、第1酸化狭窄層106-1及び第2活性層104-2がこの順に積層された第1積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-6は、該第1積層構造上に、第1多層膜反射鏡102側から第2トンネルジャンクション108-2、第2酸化狭窄層106-2及び第3活性層104-3がこの順に積層された第2積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-6は、該第2積層構造上に、第1多層膜反射鏡102側から第3トンネルジャンクション108-3、第3酸化狭窄層106-3及び第4活性層104-4がこの順に積層された第3積層構造を有する。さらに、面発光レーザ100-6は、該第1積層構造下に第1活性層104-1を有する。
面発光レーザ100-6によれば、活性層の数が4つのマルチ活性層の場合でも、各活性層に効率良く電流を注入でき、該活性層の発光効率の低下を抑制できる。なお、上記積層構造を4つ以上有し、且つ、酸化狭窄層113を有する面発光レーザによれば、活性層の数が5つ以上のマルチ活性層の場合でも、各活性層に効率良く電流を注入でき、該活性層の発光効率の低下を抑制できる。
面発光レーザ100-6は、積層体生成処理において、酸化狭窄層113に代えてもう1つの酸化狭窄層106が形成される点及び積層工数が増える点を除いて、変形例3の面発光レーザ100-4(図20参照)の製造方法と同様の製造方法により製造できる。なお、同様の製法により、上記積層構造を4つ以上有する面発光レーザを製造することができる。
【0079】
3.本技術の第2実施形態に係る面発光レーザ
以下、本技術の第2実施形態に係る面発光レーザ200について説明する。
(1)面発光レーザの構成
第2実施形態に係る面発光レーザ200は、図23に示すように、第2活性層104-2上に第2トンネルジャンクション108-2及び第3活性層104-3がこの順に積層されている点を除いて、第1実施形態の面発光レーザ100(図1参照)と同様の構成を有する。すなわち、面発光レーザ200は、第2活性層104-2上にトンネルジャンクションと活性層のペアを1つ有する。
別の観点からすると、面発光レーザ200は、第2活性層104-2と第2トンネルジャンクション108-2との間に酸化狭窄層が配置されていない点が変形例2の面発光レーザ100-3(図19参照)と異なる。
【0080】
(2)面発光レーザの動作
図23に示す面発光レーザ200では、アノード電極116とカソード電極117との間に電圧が印加されアノード電極116からメサM2を含む共振器構造体に電流が流入されると、該電流が酸化狭窄層113で狭窄されて第3活性層104-3に注入され、第2トンネルジャンクション108-2によるトンネル効果によりその注入された電流と略同一の電流値の電流が第2活性層104-2に注入され、第1トンネルジャンクション108-1によるトンネル効果によりその注入された電流と略同一の電流値の電流が酸化狭窄層106で狭窄されて第1活性層104-1に注入される。これにより、第1~第3活性層104-1、104-2、104-3が略同一の発光強度で発光し、それらの光が第1及び第2多層膜反射鏡102、112間において各活性層で増幅されながら往復して発振条件を満たしたときに、メサM2の頂部からレーザ光として出射される。
【0081】
(3)面発光レーザの製造方法
以下、面発光レーザ200の製造方法について、図24のフローチャート(ステップS11~S17)を参照して説明する。図24は、面発光レーザ200のみならず面発光レーザ200の派生系の面発光レーザも製造可能な手順を示す。ここでは、一例として、半導体製造装置を用いた半導体製造方法により、基板101の基材である1枚のウェハ上に、複数の面発光レーザ200が2次元配置された面発光レーザアレイを複数同時に生成する。次いで、一連一体の複数の面発光レーザアレイをダイシングにより分離して、チップ状の複数の面発光レーザアレイ(面発光レーザアレイチップ)を得る。なお、以下に説明する製造方法により、基板101の基材である1枚のウェハ上に複数の面発光レーザ200を複数同時に生成し、一連一体の複数の面発光レーザ200をダイシングにより分離して、チップ状の面発光レーザ(面発光レーザチップ)を得ることも可能である。以下の一連の工程は、半導体製造装置のCPUにより実行される。
【0082】
<ステップS11:積層体生成処理2>
最初のステップS11では、積層体生成処理2を実施する。積層体生成処理2では、一例として、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法により、成長室において面発光レーザ200を構成する各層を順次積層して積層体L2(図32参照)を生成する。具体的には、面発光レーザ200を製造する場合には、以下に詳述するように、第1多層膜反射鏡102上に活性層104-1、被選択酸化層106S、第1トンネルジャンクション108-1、第2活性層104-2、第2トンネルジャンクション108-2及び第3活性層104-3が第1多層膜反射鏡102側からこの順に積層された積層構造を含む構造体を積層し、該構造体上に被選択酸化層113Sを内部に含む第2多層膜反射鏡112を積層して積層体L2(図32参照)を生成する。
【0083】
以下、積層体生成処理2(図24のステップS11)について、図25のフローチャートを参照して説明する。
【0084】
(ステップS11-1)
ステップS11-1では、基板101上に第1多層膜反射鏡102を積層する(図4参照)。
【0085】
(ステップS11-2:共振器基材生成工程2)
ステップS11-2では、共振器基材生成工程2を実施する。共振器基材生成工程2は、以下に詳述するように、第1多層膜反射鏡102上に共振器を構成する各層を積層して共振器となる共振器基材を生成する工程である。
以下、共振器基材生成工程2について、図26のフローチャート、図6図7図27図31(第1積層工程図~第7積層工程図)を参照して説明する。
【0086】
最初のステップS11-2-1では、第1多層膜反射鏡102上に第1活性層104-1を積層する(図6参照)。より詳細には、第1多層膜反射鏡102上に第1クラッド層103を介して第1活性層104-1を積層する。
【0087】
次のステップS11-2-2では、nに1をセットする。
【0088】
次のステップS11-2-3では、第n活性層104-n上に第n被選択酸化層106S-nを積層する(図7参照)。より詳細には、第1活性層104-1上にスペーサ層105を介して第n被選択酸化層106S-nを積層する。ここでは、第1被選択酸化層106S-1は、被選択酸化層106Sである。
【0089】
次のステップS11-2-4では、第n被選択酸化層106S-n上に第nトンネルジャンクション108-nを積層する(図27参照)。ここでは、より詳細には、第n被選択酸化層106S上にスペーサ層107を介して、第nトンネルジャンクション108-nを構成するp型半導体層108a及びn型半導体層108bをこの順に積層する。
【0090】
次のステップS11-2-5では、第nトンネルジャンクション108-n上に第n+1活性層104-(n+1)を積層する(図28参照)。より詳細には、第nトンネルジャンクション108-n上にスペーサ層109を介して第n+1活性層104-(n+1)を積層する。
【0091】
次のステップS11-2-6では、n<Nであるか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS11-2-7に移行し、否定されるとステップS11-2-8に移行する。ここで、Nは、共振器内の酸化狭窄層の数を意味する。面発光レーザ200の場合は、共振器内の酸化狭窄層の数が1つであるからN=1であり、n=1のときにステップS11-2-6での判断が否定され、ステップS11-2-8に移行する。
【0092】
ステップS11-2-7では、nをインクリメントする。ステップS11-2-7が実行されると、ステップS11-2-3に戻り、S11-2-3~S11-2-5の一連の処理が再び実行される。これにより、第2活性層104-2上にさらに被選択酸化層、トンネルジャンクション及び活性層をこの順に積層して、面発光レーザ200の派生系を製造するための共振器基材を生成することができる。
【0093】
ステップS11-2-8では、mに1をセットする。
【0094】
次のステップS11-2-9では、第n+m活性層104-(n+m)上に第n+mトンネルジャンクション108-(n+m)を積層する(図29参照)。より詳細には、第n+m活性層104-(n+m)上にスペーサ層109を介して第n+mトンネルジャンクション108-(n+m)を積層する。
【0095】
ステップS11-2-10では、第n+mトンネルジャンクション108-(n+m)上に第n+m+1活性層104-(n+m+1)を積層する(図30参照)。より詳細には、第n+mトンネルジャンクション108-(n+m)上にスペーサ層109を介して第n+m+1活性層104-(n+m+1)を積層する。
【0096】
次のステップS11-2-11では、m<Mであるか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS11-2-12に移行し、否定されるとステップS11-2-13に移行する。ここで、Mは、第2活性層104-2上におけるトンネルジャンクションと活性層のペアの数を意味する。面発光レーザ200では、該ペア数が1つであるからM=1となり、m=1のときにステップS11-2-11での判断が否定され、ステップS11-2-13に移行する。
【0097】
ステップS11-2-12では、mをインクリメントする。ステップS11-2-12が実行されると、ステップS11-2-9に戻り、S11-2-9及びS11-2-10の一連の処理が再び実行される。これにより、第2活性層104-2上にさらにトンネルジャンクションと活性層のペアを積層して、面発光レーザ200の派生系を製造するための共振器基材を生成することができる。
【0098】
ステップS11-2-13では、第n+m+1活性層104-(n+m+1)上に第2クラッド層111を積層する(図31参照)。これにより、共振器基材が生成される。ステップS11-2-13が実行されると、図26に示す共振器基材生成工程2のフローが終了する。
(ステップS11-3)
ステップS11-3では、共振器上に第2多層膜反射鏡112を積層する(図32参照)。より詳細には、共振器のクラッド層111上に、被選択酸化層113Sを内部に含む第2多層膜反射鏡112及びコンタクト層114をこの順に積層する。この結果、積層体(例えば積層体L2)が生成される。ステップS11-3が実行されると、図25に示す積層体生成処理2のフローが終了する。
【0099】
<ステップS12>
ステップS12では、積層体(例えば積層体L2)をエッチングしてメサ(例えばメサM1)を形成する(図33--参照)。
具体的には、例えば、成長室から取り出した積層体L2上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、例えばRIEエッチング(反応性イオンエッチング)により、積層体L2(図32参照)を少なくとも被選択酸化層106Sの側面が露出するまでエッチングして、メサM2を形成する。ここでのエッチングは、一例として、第1クラッド層103の側面が完全に露出するまで(例えばエッチング底面が第1多層膜反射鏡102内に位置するまで)行う。その後、該レジストパターンを除去する。
【0100】
<ステップS13>
ステップS13では、例えば、被選択酸化層106S、113S(図33参照)の周囲部を酸化して酸化狭窄層106、113を生成する(図34参照)。
具体的には、例えば、メサM2を水蒸気雰囲気中にさらし、被選択酸化層106S、113Sを側面から酸化(選択酸化)して、非酸化領域106aの周りが酸化領域106bで取り囲まれた酸化狭窄層106を形成するとともに、被酸化領域113aの周りが酸化領域113bで取り囲まれた酸化狭窄層113を形成する。
【0101】
<ステップS14>
ステップS14では、絶縁膜115を形成する(図35参照)。具体的には、例えば、メサM2が形成された積層体の略全域に絶縁膜115を成膜する。
【0102】
<ステップS15>
ステップS15では、コンタクトホール115aを形成する(図36参照)。具体的には、例えば、メサM2の頂部上に形成された絶縁膜115以外の絶縁膜115上にフォトリソグラフィによりレジストパターンを形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして、メサM2の頂部上に形成された絶縁膜115を例えばフッ酸系のエッチャントを用いてエッチングにより除去する。その後、該レジストパターンを除去する。この結果、コンタクトホール115aが形成され、コンタクト層114が露出する。
【0103】
<ステップS16>
ステップS16では、アノード電極116を形成する(図37参照)。具体的には、例えば、EB蒸着法により、コンタクトホール115aを介してコンタクト層114上に例えばTi/Pt/Au膜を成膜し、レジスト及びレジスト上の例えばTi/Pt/Auをリフトオフすることにより、コンタクトホール115a内に環状のアノード電極116を形成する。
【0104】
<ステップS17>
ステップS17では、カソード電極117を形成する(図38参照)。具体的には、基板101の裏面(下面)を研磨した後、該裏面に例えばAuGe/Ni/Au膜を成膜する。ステップS17が実行されると、図24のフローは終了する。
【0105】
(4)面発光レーザの効果
第2実施形態の面発光レーザ200は、例えば活性層が3つのマルチ活性層を有し共振器長が長い場合でも、酸化狭窄層106により、共振器内の電流経路の下流端近傍に位置する活性層(例えば出射面ESから最も遠い活性層)である第1活性層104-1に効率良く電流を注入することができる。
【0106】
4.本技術の第2実施形態の変形例1~4に係る面発光レーザ
以下、本技術の第2実施形態の変形例1~4に係る面発光レーザについて説明する。
【0107】
(変形例1)
変形例1の面発光レーザ200-1は、図39に示すように、第2活性層104-2上にトンネルジャンクションと活性層のペアを2つ有している点を除いて、第2実施形態の面発光レーザ200(図23)と同様の構成を有する。
面発光レーザ200-1は、面発光レーザ200の共振器において第3活性層104-3上に第3トンネルジャンクション108-3及び第4活性層104-4がこの順に積層された構成を有している。
詳述すると、面発光レーザ200-1では、第3活性層104-3上にスペーサ層109を介して第3トンネルジャンクション108-3が積層され、該第3トンネルジャンクション108-3上にスペーサ層109を介して第4活性層104-4が積層されている。
変形例1の面発光レーザ200-1は、例えば活性層が4つのマルチ活性層を有し共振器長が長い場合でも、酸化狭窄層106により、共振器内の電流経路の下流端近傍に位置する活性層(例えば出射面ESから最も遠い活性層)である第1活性層104-1にも効率良く電流を注入することができる。
面発光レーザ200-1は、面発光レーザ200の派生系であり、図26のフローチャートの手順で(但し、N=1、M=2とする)で製造することができる。
【0108】
(変形例2)
変形例2の面発光レーザ200-2は、図40に示すように、第1活性層104-1と第1トンネルジャンクション108-1との間に第1酸化狭窄層106-1が設けられ、且つ、第2活性層104-2と第2トンネルジャンクション108-2との間に第2酸化狭窄層106-2が設けられている点を除いて、変形例1の面発光レーザ200-1(図39参照)と同様の構成を有する。
変形例2の面発光レーザ200-2は、例えば活性層が4つのマルチ活性層を有し共振器長が長い場合でも、第1及び第2酸化狭窄層106-1、106-2により共振器内の電流経路の下流端近傍に位置する活性層(例えば出射面ESから最も遠い活性層)である第1活性層104-1にも効率良く電流を注入することができ、且つ、第2酸化狭窄層106-2により第2活性層104-2にも効率良く電流を注入することができる。例えば共振器長が長い面発光レーザ200-2のように、共振器の上下方向(高さ方向)の中間部付近に酸化狭窄層が設けられることは、該中間部付近での電流の広がりを抑えることができる点で有効である。
面発光レーザ200-2は、面発光レーザ200の派生系であり、図26のフローチャートの手順で(但し、N=2、M=1とする)で製造することができる。
【0109】
(変形例3)
変形例3の面発光レーザ200-3は、図41に示すように、第1活性層104-1と第1トンネルジャンクション108-1との間に第1酸化狭窄層106-1が設けられ、且つ、第2トンネルジャンクション108-1と第3活性層104-3との間に第2酸化狭窄層106-2が設けられている点を除いて、変形例1の面発光レーザ200-1(図39参照)と同様の構成を有する。
変形例3の面発光レーザ200-3は、例えば活性層が4つのマルチ活性層を有し共振器長が長い場合でも、第1及び第2酸化狭窄層106-1、106-2により共振器内の電流経路の下流端近傍に位置する活性層(例えば出射面ESから最も遠い活性層)である第1活性層104-1にも効率良く電流を注入することができ、且つ、第2酸化狭窄層106-2により第2活性層104-2にも効率良く電流を注入することができる。例えば共振器長が長い面発光レーザ200-3のように、共振器の上下方向(高さ方向)の中間部付近に酸化狭窄層が設けられることは、該中間部付近での電流の広がりを抑えることができる点で有効である。
面発光レーザ200-3は、第2酸化狭窄層106-2を設ける必要があるため、その分積層工数は増えるが、変形例1の面発光レーザ200-1(図39参照)の製法に準じた製法により製造することができる。
【0110】
(変形例4)
変形例4の面発光レーザ200-4は、図42に示すように、第1活性層104-1と第1トンネルジャンクション108-1との間に第1酸化狭窄層106-1が設けられ、且つ、第2トンネルジャンクション108-1と第3活性層104-3との間に第2酸化狭窄層106-2が設けられている点を除いて、第2実施形態の面発光レーザ200(図23参照)と同様の構成を有する。
変形例4の面発光レーザ200-4は、例えば活性層が3つのマルチ活性層を有する場合でも、第1及び第2酸化狭窄層106-1、106-2により共振器内の電流経路の下流端近傍に位置する活性層(例えば出射面ESから最も遠い活性層)である第1活性層104-1にも効率良く電流を注入することができ、且つ、第2酸化狭窄層106-2により第2活性層104-2にも効率良く電流を注入することができる。
面発光レーザ200-4は、第2酸化狭窄層106-2を設ける必要があるため、その分積層工数は増えるが、第2実施形態の面発光レーザ200の製法に準じた製法により製造することができる。
【0111】
5.本技術を適用し得る面発光レーザの構成例
図43は、本技術を適用し得る面発光レーザの構成例である面発光レーザ2000を示す平面図である。図44Aは、図43のX-X線断面図である。図44Bは、図43のY-Y線断面図である。
【0112】
面発光レーザ2000の各構成要素は、基板2001に積層されている。基板2001は例えばGaAs、InGaAs、InP、InAsP等の半導体を含んで構成することができる。
【0113】
面発光レーザ2000は、保護領域2002(図44A及び図44Bの透過性灰色領域)を含む。図43に示すように、保護領域2002は、平面視において円形状であるが、例えば楕円形状、多角形状等の別の形状であってもよく、特定の形状に限定されない。保護領域2002は電気的な分離をもたらす材料を含み、例えばイオン注入された領域である。
【0114】
更に、面発光レーザ2000は、図44A及び図44Bに示すように、第1電極2003と第2電極2004とを含む。図43に示すように、第1電極2003は、平面視において、不連続箇所(断続箇所)を有するリング形状、すなわちスプリットリング形状であるが、特定の形状に限定されない。図44A又は図44Bに示すように、第2電極2004は、基板2001に接触している。第1電極2003及び第2電極2004は、例えばTi、Pt、Au、AuGeNi、PdGeAu等の導電材料を含んで構成される。第1電極2003及び第2電極2004は、単層構造を有していてもよいし、積層構造を有していてもよい。
【0115】
更に、面発光レーザ2000は、保護領域2002の周囲に設けられたトレンチ2005を含む。図43は、一例として平面視矩形のトレンチ2005が6箇所に設けられた構造を示すが、その数や、平面視における形状は特定のものに限定されない。トレンチ2005は酸化狭窄層2006(酸化領域2006a及び非酸化領域2006bを含む)を形成するための開口である。面発光レーザ2000の製造工程において、トレンチ2005を介して高温水蒸気が供給されることで酸化狭窄層2006の酸化領域2006aが形成される。例えば、酸化領域2006aはAlAs又はAlGaAs層の酸化の結果として形成されるAlである。トレンチ2005には酸化狭窄層2006を形成する工程の後において、任意の誘電体が埋め込まれる場合もある。また、誘電体膜による表面被膜を行う場合もある。
【0116】
更に、面発光レーザ2000は、第1電極2003上の誘電体層2007に設けられた誘電体開口2008(コンタクトホール)を含む。誘電体層2007は、図44A及び図44Bに示すような積層構造を有していてもよいし、単層構造を有していてもよい。誘電体層2007は、一例として酸化シリコンや窒化シリコンなどを含む。図43に示すように、誘電体開口2008は、第1電極2003と同じ形状に形成されている。ただし、誘電体開口2008の形状は第1電極2003の形状には限定されず、第1電極2003上に部分的に形成されていてもよい。誘電体開口2008には不図示の導電材料が充填され、該導電材料が第1電極2003と接触する。
【0117】
更に、図44A及び図44Bに示すように、面発光レーザ2000は第1電極2003の内側に光学開口2009を含む。面発光レーザ2000は、光学開口2009を介して光線を出射する。更に、面発光レーザ2000は、酸化狭窄層2006の酸化領域2006aが、電流及び光を閉じ込める電流・光閉じ込め領域として機能する。酸化狭窄層2006の非酸化領域2006bは、光学開口2009の下方に位置し、電流及び光を通過させる電流・光通過領域として機能する。
【0118】
更に、面発光レーザ2000は、第1多層反射鏡2011及び第2多層反射鏡2012を含む。多層反射鏡は一例として半導体多層反射鏡であり、分布型ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector)とも呼ばれる。
【0119】
更に、面発光レーザ2000は、活性層2013を含む。活性層2013は、第1多層反射鏡2011と第2多層反射鏡2012との間に配置され、注入キャリアを閉じ込め、面発光レーザ2000の発光波長を規定する。
【0120】
本構成例では、一例として、面発光レーザ2000が表面出射型面発光レーザである場合を例にとって説明したが、面発光レーザ2000は裏面出射型面発光レーザを構成することもできる。
【0121】
図43及び図44Aに示すように、本構成例の面発光レーザ2000の実質的な径はトレンチ2005によって規定される仮想的な円の直径dである。
【0122】
本構成例の面発光レーザ2000は、一例として、以下の工程1~8の手順で製造される。
(工程1)基板2001の表面に第1多層反射鏡2011、活性層2013、酸化狭窄層2006となる被選択酸化層、及び第2多層反射鏡2012をエピタキシャル成長させる。
(工程2)例えばリフトオフ法を用いて、第1電極2003を第2多層反射鏡2012上に形成する。
(工程3)例えばフォトリソグラフィによりトレンチ2005を形成する。
(工程4)被選択酸化層の側面を露出させ、該被選択酸化層を側面から選択酸化することにより酸化狭窄層2006を形成する。
(工程5)保護領域2002をイオン注入などによって形成する。
(工程6)誘電体層2007を例えば蒸着、スパッタ等により成膜する。
(工程7)例えばフォトリソグラフィにより誘電体層2007に誘電体開口2008を形成して第1電極2003の接点を露出させる。
(工程8)基板2001の裏面を研磨して薄膜化した後、第2電極2004を基板2001の裏面に形成する。
【0123】
以上説明した面発光レーザ2000を構成する層の層数、配置、厚さ、配置順、対称性等は一例であって適宜変更可能である。すなわち、面発光レーザ2000は、図43図44A及び図44Bに示すものより多数の層、少数の層、異なる層、異なる構造の層、又は異なる配置の層を含んでもよい。
【0124】
本技術は、以上説明した面発光レーザ2000及びその変形例に適用することができる。
【0125】
6.本技術の変形例
本技術は、上記各実施形態及び各変形例に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【0126】
例えば、トンネルジャンクションのn型半導体層を、GaAs系化合物半導体、例えばSiが高濃度(1x19cm-3)でドープされた例えば厚さ20nmのGaAs層としてもよい。
【0127】
例えば、活性層のガイド・バリア領域を、GaAsP系化合物半導体(例えばGaAsP0.10)で構成してもよい。
【0128】
上記各実施形態及び各変形例の面発光レーザにおいて、酸化狭窄層113は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0129】
上記各実施形態及び各変形例の面発光レーザにおいて、コンタクト層114は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0130】
上記各実施形態及び各変形例の面発光レーザにおいて、各スペーサ層及び各クラッド層は、必要に応じて、適宜省略してもよい。
【0131】
上記各実施形態及び各変形例の面発光レーザにおいて、活性層は、単層構造であってもよい。
【0132】
上記各実施形態及び各変形例の面発光レーザにおいて、導電型(第1及び第2導電型)を入れ替えてもよい。
【0133】
上記各実施形態及び各変形例では、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のいずれも半導体多層膜反射鏡であるが、これに限らない。
例えば、第1多層膜反射鏡102が半導体多層膜反射鏡であり、且つ、第2多層膜反射鏡112が誘電体多層膜反射鏡であってもよい。誘電体多層膜反射鏡も、分布ブラッグ反射鏡の一種である。
例えば、第1多層膜反射鏡102が誘電体多層膜反射鏡であり、且つ、第2多層膜反射鏡112が半導体多層膜反射鏡であってもよい。
例えば、第1及び第2多層膜反射鏡102、112のいずれも誘電体多層膜反射鏡であってもよい。
半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、且つ、導電性を有する。この観点からは、半導体多層膜反射鏡は、出射側(表面側)にあり、且つ、アノード電極116から各活性層までの電流経路上にある第2多層膜反射鏡112に好適である。
一方、誘電体多層膜反射鏡は、光吸収が極めて少ない。この観点からは、誘電体多層膜反射鏡は、出射側(表面側)にある第2多層膜反射鏡112に好適である。
【0134】
上記各実施形態及び各変形例では、メサ頂部からレーザ光を出射する表面出射型の面発光レーザを例にとって説明したが、本技術は、基板の裏面からレーザ光を出射する(基板の裏面を出射面とする)裏面出射型の面発光レーザにも適用可能である。
この場合には、基板として発振波長に対して透明なものを用いるか、基板に出射口となる開口部を設けることが好ましい。
【0135】
上記各実施形態及び各変形例では、AlGaAs系化合物半導体を用いた面発光レーザ10を例にとって説明したが、本技術は、例えば、GaN系化合物半導体を用いた面発光レーザにも適用可能である。
具体的には、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の少なくとも一方にGaN系半導体多層膜反射鏡を用いてもよいし、第1及び第2多層膜反射鏡102、112の少なくとも一方にGaN系誘電体多層膜反射鏡を用いてもよい。
第1及び第2多層膜反射鏡102、112の少なくとも一方に用いられるGaN系化合物半導体としては、例えばGaN/AlGaN等が挙げられる。
【0136】
上記各実施形態及び各変形例の面発光レーザの構成の一部を相互に矛盾しない範囲内で組み合わせてもよい。
【0137】
7.電子機器への応用例
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品(電子機器)へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0138】
本技術に係る面発光レーザは、例えば、レーザ光により画像を形成又は表示する機器(例えばレーザプリンタ、レーザ複写機、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等)の光源としても応用可能である。
【0139】
8.<面発光レーザを距離測定装置に適用した例>
以下に、上記各実施形態及び各変形例に係る面発光レーザの適用例について説明する。
【0140】
図45は、本技術に係る電子機器の一例としての、面発光レーザ100を備えた距離測定装置1000の概略構成の一例を表したものである。距離測定装置1000は、TOF(Time Of Flight)方式により被検体Sまでの距離を測定するものである。距離測定装置1000は、光源として面発光レーザ100を備えている。距離測定装置1000は、例えば、面発光レーザ100、受光装置120、レンズ119、130、信号処理部140、制御部150、表示部160および記憶部170を備えている。
【0141】
受光装置120は、被検体Sで反射された光を検出する。レンズ119は、面発光レーザ100から出射された光を平行光化するためのレンズであり、コリメートレンズである。レンズ130は、被検体Sで反射された光を集光し、受光装置120に導くためのレンズであり、集光レンズである。
【0142】
信号処理部140は、受光装置120から入力された信号と、制御部150から入力された参照信号との差分に対応する信号を生成するための回路である。制御部150は、例えば、Time to Digital Converter (TDC)を含んで構成されている。参照信号は、制御部150から入力される信号であってもよいし、面発光レーザ100の出力を直接検出する検出部の出力信号であってもよい。制御部150は、例えば、面発光レーザ100、受光装置120、信号処理部140、表示部160および記憶部170を制御するプロセッサである。制御部150は、信号処理部140で生成された信号に基づいて、被検体Sまでの距離を計測する回路である。制御部150は、被検体Sまでの距離についての情報を表示するための映像信号を生成し、表示部160に出力する。表示部160は、制御部150から入力された映像信号に基づいて、被検体Sまでの距離についての情報を表示する。制御部150は、被検体Sまでの距離についての情報を記憶部170に格納する。
【0143】
本適用例において、面発光レーザ100に代えて、上記面発光レーザ100-1~100-6、200、200-1~4のいずれかを距離測定装置1000に適用することもできる。
9.<距離測定装置を移動体に搭載した例>
【0144】
図46は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0145】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図46に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0146】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0147】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0148】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、距離測定装置12031が接続される。距離測定装置12031には、上述の距離測定装置1000が含まれる。車外情報検出ユニット12030は、距離測定装置12031に車外の物体(被検体S)との距離を計測させ、それにより得られた距離データを取得する。車外情報検出ユニット12030は、取得した距離データに基づいて、人、車、障害物、標識等の物体検出処理を行ってもよい。
【0149】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0150】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0151】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0152】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0153】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図46の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0154】
図47は、距離測定装置12031の設置位置の例を示す図である。
【0155】
図47では、車両12100は、距離測定装置12031として、距離測定装置12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0156】
距離測定装置12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる距離測定装置12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる距離測定装置12105は、主として車両12100の前方のデータを取得する。サイドミラーに備えられる距離測定装置12102,12103は、主として車両12100の側方のデータを取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる距離測定装置12104は、主として車両12100の後方のデータを取得する。距離測定装置12101及び12105で取得される前方のデータは、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識等の検出に用いられる。
【0157】
なお、図47には、距離測定装置12101ないし12104の検出範囲の一例が示されている。検出範囲12111は、フロントノーズに設けられた距離測定装置12101の検出範囲を示し、検出範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた距離測定装置12102,12103の検出範囲を示し、検出範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた距離測定装置12104の検出範囲を示す。
【0158】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、距離測定装置12101ないし12104から得られた距離データを基に、検出範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0159】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、距離測定装置12101ないし12104から得られた距離データを元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0160】
以上、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、距離測定装置12031に適用され得る。
【0161】
本明細書中に記載した具体的な数値、形状、材料(組成を含む)等は、一例であって、これらに限定されるものではない。
【0162】
また、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)第1及び第2多層膜反射鏡と、
前記第1及び第2多層膜反射鏡の間に互いに積層された複数の活性層と、
前記複数の活性層のうち積層方向に隣り合う2つの活性層の間に配置されたトンネルジャンクションと、
前記隣り合う2つの活性層の一方の活性層と前記トンネルジャンクションとの間に配置された酸化狭窄層と、
を備える、面発光レーザ。
(2)前記一方の活性層は、前記隣り合う2つの活性層の他方の活性層よりも前記面発光レーザの出射面から遠い位置に配置されている、(1)に記載の面発光レーザ。
(3)前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記面発光レーザの出射面から近い一方よりも前記出射面から遠い他方に近い位置に配置されている、(1)又は(2)に記載の面発光レーザ。
(4)前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記面発光レーザの出射面から遠い一方よりも前記出射面から近い他方に近い位置に配置されている、(1)又は(2)に記載の面発光レーザ。
(5)前記一方の活性層は、前記隣り合う2つの活性層の他方の活性層よりも前記面発光レーザの出射面から近い位置に配置されている、(1)に記載の面発光レーザ。
(6)前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記面発光レーザの出射面から近い一方よりも前記出射面から遠い他方に近い位置に配置されている、(1)又は(5)に記載の面発光レーザ。
(7)前記一方の活性層は、前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記出射面から遠い一方よりも前記出射面から近い他方に近い位置に配置されている、(1)又は(5)に記載の面発光レーザ。
(8)前記複数の活性層は、少なくとも3つの活性層であり、
前記複数の活性層のうち少なくとも2組の隣り合う2つの活性層の各組の隣り合う2つの活性層の間に前記トンネルジャンクションが配置され、
前記少なくとも2組の隣り合う2つの活性層のうち少なくとも1組の隣り合う2つの活性層の一方の活性層と、該隣り合う2つの活性層の間に配置された前記トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層が配置されている、(1)~(7)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(9)前記少なくとも3つの活性層は、第1、第2及び第3活性層を含み、前記第1、第2及び第3活性層は、この順に積層され、前記第1及び第2活性層の間に前記トンネルジャンクションである第1トンネルジャンクションが配置され、前記第2及び第3活性層の間に前記トンネルジャンクションである第2トンネルジャンクションが配置され、前記第1活性層と前記第1トンネルジャンクションとの間及び/又は前記第2活性層と前記第2トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層が配置されている、(8)に記載の面発光レーザ。
(10)前記第1活性層は、前記複数の活性層の中で前記面発光レーザの出射面から最も遠い位置に配置された活性層である、(9)に記載の面発光レーザ。
(11)前記第1活性層と前記第1トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層である第1酸化狭窄層が配置されている、(9)又は(10)に記載の面発光レーザ。
(12)前記第2活性層と前記第2トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層である第2酸化狭窄層が配置されている、(9)~(11)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(13)前記第2活性層と前記第2トンネルジャンクションとの間に前記酸化狭窄層が配置されていない、(9)~(11)に記載の面発光レーザ。
(14)前記第1及び第2多層膜反射鏡のうち前記面発光レーザの出射面に近い方の内部に別の酸化狭窄層が配置されている、(1)~(13)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(15)前記酸化狭窄層及び前記別の酸化狭窄層は、いずれもAlGaAs系化合物半導体からなる層を選択酸化して形成されている、(14)に記載の面発光レーザ。
(16)前記酸化狭窄層及び前記別の酸化狭窄層は、Al組成及び/又は光学厚さが互いに異なる、(14)又は(15)に記載の面発光レーザ。
(17)前記トンネルジャンクションは、p型半導体層及びn型半導体層が互いに積層された層構造を有し、前記酸化狭窄層は、前記p型半導体層側に配置されている、(1)~(16)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(18)前記面発光レーザの発振波長をλとすると、前記一方の活性層と前記トンネルジャンクションと前記酸化狭窄層とが光学厚さ3λ/4内に配置されている、(1)~(17)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(19)(1)~(18)のいずれか1つに記載の面発光レーザを備える電子機器。
(20)第1多層膜反射鏡上に第1活性層、被選択酸化層、トンネルジャンクション及び第2活性層がこの順に積層された積層構造を含む構造体を積層し、該構造体上に第2多層膜反射鏡を積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体を少なくとも前記被選択酸化層の側面が露出するまでエッチングしてメサを形成する工程と、
前記被選択酸化層を側面側から選択的に酸化して酸化狭窄層を形成する工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法。
(21)(1)~(20)のいずれか1つに記載の面発光レーザを複数備える面発光レーザアレイ。
(22)(1)~(20)のいずれか1つに記載の面発光レーザを備える電子機器。
(23)(21)に記載の面発光レーザアレイを備える電子機器。
【符号の説明】
【0163】
100、100-1~100-6、200、200-1~200-4:面発光レーザ、101:基板、102:第1多層膜反射鏡、104-1:第1活性層、104-2:第2活性層、104-3:第3活性層、106:酸化狭窄層、106-1:第1酸化狭窄層、106-2:第2酸化狭窄層、108:トンネルジャンクション、108-1:第1トンネルジャンクション、108-2:第2トンネルジャンクション、108a:p型半導体層、108b:n型半導体層、112:第2多層膜反射鏡、113:酸化狭窄層(別の酸化狭窄層)。

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