(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056946
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】多層自動車温度制御チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20240416BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20240416BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240416BHJP
F28D 7/10 20060101ALI20240416BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F16L11/04
B32B1/08 B
B32B27/32 E
F28D7/10 A
F28F21/06
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023075
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2021509732の分割
【原出願日】2019-08-20
(31)【優先権主張番号】18190072.1
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518073158
【氏名又は名称】テーイー オートモーティブ(フルダブリュック) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘッケル,アンドレ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バリア特性、熱絶縁特性、機械的特性が良好であり、かつ低コストで製造可能なチューブを提供する。
【解決手段】流体温度制御媒体用の多層自動車温度制御チューブ1であって、本チューブは、少なくとも3つの層を有する。この層構造は、外側から内側に向かって、ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる外層2と、ポリプロピレン(PP)からなる中間層4と、ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる内層6とを有する。本チューブの全層厚は、0.7~2.5mmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層自動車チューブであり、特に流体温度制御媒体用及び冷却媒体用の自動車温度制御チューブ(1)であって、
前記チューブ(1)は、層構造を備え、該層構造の外側から内側に向かって
-ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる外層(2)と、
-ポリプロピレン(PP)からなる中間層(4)と、
-ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる内層(6)と
を有する少なくとも3つの層(2、4、6)を有し、
前記チューブ(1)の全層厚又は全壁厚は、0.5~0.3mm、好ましくは0.7~2.5mm、より好ましくは0.8~2mm、より一層好ましくは0.85~1.8mmである
多層自動車チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載の多層自動車チューブであって、
高密度ポリエチレン(HDPE)からなる外層、又は、HDPEからなる内層、又はその両方が存在する
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項3】
請求項1に記載の多層自動車チューブであって、
前記外層又は前記内層又はその両方に用いられる前記熱可塑性加硫物(TPV)は、エラストマとポリオレフィンの混合物又は合金であり、特にエラストマとポリプロピレン(PP)の混合物又は合金である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項4】
請求項3に記載の多層自動車チューブであって、
前記エラストマは、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記外層(2)の厚さは、前記チューブ(1)の全壁厚の10~50%であり、好ましくは10~45%であり、より好ましくは15~40%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記中間層(4)の厚さは、前記チューブ(1)の全壁厚の10~45%であり、、好ましくは15~40%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記内層(6)の厚さは、前記チューブ(1)の全壁厚の10~50%であり、好ましくは10~45%であり、より好ましくは15~40%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記チューブは、「外層-中間層-内層」よりなる層集合体を備え、且つ、
選択肢として、さらに、前記外層(2)に隣接した最外層を少なくとも1つのみ備えるか、又は、前記内層(6)に隣接した最内層を少なくとも1つ備えるか、又は、その両方を備える
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
少なくとも1つの第1の接着促進層(3)、好ましくは1つの第1の接着促進層(3)は、前記外層(2)と前記中間層(4)との間に挿入される
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項10】
請求項9に記載の多層自動車チューブであって、
前記第1の接着促進層(3)の厚さは、前記チューブ(1)の全壁厚の2~25%であり、好ましくは5~20%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項11】
請求項9又は10のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記第1の接着促進層(3)の厚さは、前記外層(2)の厚さの25~70%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
少なくとも1つの第2の接着促進層(5)、好ましくは1つの第2の接着促進層(5)は、前記中間層(4)と前記内層(6)との間に挿入される
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項13】
請求項12に記載の多層自動車チューブであって、
前記第2の接着促進層(5)の厚さは、前記チューブ(1)の全壁厚の2~25%であり、好ましくは5~20%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項14】
請求項12又は13のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記第2の接着促進層(5)の厚さは、前記中間層(4)の厚さの20~60%であり、好ましくは25~55%である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項15】
請求項9~14のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記第1の接着促進層(3)又は前記第2の接着促進層(5)又はその両方は、ポリオレフィンを主とした接着促進層(3、5)であり、特にポリエチレンを主とした接着促進層(3、5)である
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項16】
請求項15に記載の多層自動車チューブであって、
前記第1の接着促進層(3)又は前記第2の接着促進層(5)又はその両方は、ポリオレフィンを主とした接着促進層(3、5)であり、特に変性ポリエチレンを主とした接着促進層(3、5)であり、
前記変性ポリエチレンは、少なくとも1つのカルボン酸誘導体で変性されたものであり、特にマレイン酸誘導体で変性されたものである
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項17】
請求項1~7又は9~16のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
前記チューブ(1)は、「外層-第1の接着促進層-中間層-第2の接着促進層-内層」よりなる層集合体を備え、且つ、
選択肢として、さらに、前記外層(2)に隣接した最外層を少なくとも1つのみ備えるか、又は、前記内層(6)に隣接した最内層を少なくとも1つ備えるか、又は、その両方を備える
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の多層自動車チューブであって、
ポリオレフィン製の、特にポリプロピレン製のさらなる層が少なくとも1つ、前記外層の外側に隣接する
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【請求項19】
請求項18に記載の多層自動車チューブであって、
ポリオレフィン層の集合体が、特にポリプロピレンとHDPEとの交互に層を並べたものを有する層集合体が、前記外層の外側に隣接する
ことを特徴とする多層自動車チューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許文献は、2018年8月21日に出願された「多層自動車温度制御チューブ」と題する欧州特許出願第18190072.1号の利益及びその優先権を主張するものであり、ここに参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本開示は、多層自動車チューブ又は多層自動車パイプに関し、特に流体温度制御媒体用及び冷却媒体用の自動車温度制御チューブに関する。よって、本開示におけるチューブは、温度制御媒体を通過させる温度制御チューブとして用いられることが好ましく、特に自動車における冷却チューブとして用いられることが好ましい。このような温度制御チューブは、特に自動車の温度制御回路で用いられる。この場合には、温度制御媒体は、特に液体の温度制御媒体は、温度制御チューブ中を通過する。温度制御チューブは、冷却チューブとして構成されることが特に好ましく、それによって自動車の冷却剤循環システムの冷却剤が冷却チューブ中を通過する。本開示における温度制御チューブの応用分野の一つは、電気モータ及び内燃エンジンを有する、電気自動車又はハイブリッド自動車の温度制御システムにおける使用である。本開示における温度制御チューブ、特に冷却チューブは、自動車の電池システムの温度を制御すること又はこの電池システムを冷却することに用いられるのがさらに好ましい。
【背景技術】
【0003】
様々な実施形態の温度制御チューブ又は冷却チューブが実施により既知であり、特に自動車部品の温度制御用又は自動車部品の冷却用に実施されている。しかしながら、これまでに知られているチューブには、温度制御媒体に関するバリア特性やその熱絶縁について、不十分な点がしばしば見られる。このようなチューブが充分なバリア特性と適切な熱絶縁を有するように製造されると、通常は手間がかかり材料費が高くなり、コストが高くなる。さらに、実施により既知である多層温度制御チューブの多くは、特に自動車チューブでは機械的な耐久性が重要且つ必要であるにも関わらず、機械的な耐久性が不十分である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
これに対して、本開示は、自動車温度制御チューブ又は自動車温度制御パイプ又は自動車温度制御パイプラインを開示する技術的課題に基づいている。このチューブ又はパイプ又はパイプラインは、バリア特性に関しても熱絶縁の点においても要件をすべて満たし、また、機械的特性に関してもすべての要件を満たしており、それにもかかわらず、あまり労力を要さずに低コストで製造可能である。
【0005】
この技術的課題を解決するために、本開示は、流体温度制御媒体用の多層自動車温度制御チューブ、特に流体冷却媒体用の多層自動車温度制御チューブを開示する。本チューブは、層構造を備え、該層構造の外側から内側に向かって
-ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(thermoplastic vulcanizate:TPV)からなる外層と、
-ポリプロピレン(polypropylene:PP)からなる中間層と、
-ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる内層と
を有する少なくとも3つの層を有し、
本チューブの全層厚は、0.5~3.0mm、特に0.7~2.5mm、好ましくは0.75~2.2mm、より好ましくは0.8~2mm、非常に好ましくは0.85~1.8mm、特に好ましくは0.85~1.6mmである。前記技術的課題の解決に関して、特に様々な利点の達成に関して、本チューブのこの全層厚が特に有利であることが分かっている。
【0006】
本開示は、自動車において、温度制御チューブとして、特に冷却ラインとして、自動車チューブを使用することに関する。これは、流体温度制御媒体を当該チューブに通過させること、特に流体冷却媒体、好ましくは液体温度制御媒体であって特に液体冷却媒体を当該チューブに通過させることを伴う。本開示による自動車温度制御チューブは、内燃エンジンをもつ従来の自動車の温度制御に使用可能である。本開示の特定の実施形態の一つによれば、本開示の自動車温度制御チューブは、電気自動車の温度制御システムにおいて、又は、電気モータ及び内燃エンジンをもつハイブリッド自動車の温度制御システムにおいて使用される。本開示の推奨される実施形態の一つによれば、本開示の自動車温度制御チューブは、温度制御システムを介して、自動車の電池の温度を制御するため又は冷却するために使用される。本開示による自動車温度制御チューブが、自動車の空調システムにおける温度制御チューブ又は冷却チューブとして使用されることも、本開示の範囲内である。本チューブを、とりわけ、電気自動車又はハイブリッド自動車において、自動車電池を冷却することにも使用可能である。
【0007】
本開示の特に推奨される実施形態の一つによれば、温度制御媒体として又は冷却媒体として、液体媒体が用いられる。液体の混合物、特にアルコールと水の混合物、好ましくはグリコールと水の混合物を、この目的のために使用することができる。しかしながら、原理的には、他の温度制御媒体又は他の冷却媒体も本開示の範囲に入り得る。
【0008】
本開示によれば、ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる外層が用いられる。外層が本質的にポリエチレンからなる、又は、外層が実質的に熱可塑性加硫物(TPV)からなることは、本開示の範囲内である。外層は、前述のプラスチックに加えて、特に添加物又は従来の添加物を有することができる。好適には、外層は、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも93wt%、より好ましくは少なくとも96wt%、非常に好ましくは少なくとも98wt%が、ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる。
【0009】
本開示の大いに推奨される実施形態の一つは、外層用のポリエチレンとして、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が用いられることを特徴とする。ポリエチレンとHDPEを用いること、特にこれらを外層用に用いることは、本開示の範囲において特に重要である。これにより、技術的課題を解決する点において多大な優位性が得られる。推奨される別の実施形態によれば、外層用の熱可塑性加硫物(TPV)として、エラストマとポリオレフィンの混合物や合金、特にエラストマとポリプロピレン(PP)の混合物や合金が用いられる。エラストマは、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(ethylene-propylene-diene rubber、EPDM)であることが好ましい。
【0010】
外層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の10~50%であることに優位性があり、好ましくは10~45%、より好ましくは10~40%、非常に好ましくは15~40%である。原理的には、本開示による温度制御チューブが、外層に隣接した最外層を少なくとも1つさらに有することは、本開示の範囲内である。
【0011】
本開示によれば、ポリプロピレン(PP)の中間層が、外層と内層との間に設けられている。中間層が本質的にポリプロピレン(PP)からなることは、本開示の範囲内である。中間層は、PPに加えて、添加物又は特定の添加物を有してもよい。中間層は、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも92wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、非常に好ましくは少なくとも98wt%が、ポリプロピレン(PP)からなることが推奨される。中間層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の10~45%であることに優位性があり、好ましくは10~40%、より好ましくは15~40%、非常に好ましくは15~35%である。
【0012】
本開示によれば、多層自動車温度制御チューブは、ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる内層を有する。内層が本質的にポリエチレンからなる、又は、主として熱可塑性加硫物からなることは、本開示の範囲内である。内層は、前述のプラスチックに加えて、特に添加物又は従来の添加物を有してもよい。好適には、内層は、少なくとも90wt%、好ましくは少なくとも92wt%、より好ましくは少なくとも95wt%、非常に好ましくは少なくとも98wt%が、ポリエチレン又は熱可塑性加硫物(TPV)からなる。ポリエチレンHDPEが内層に用いられることが好ましい。ポリエチレン又はHDPE又はその両方が本開示によるチューブの内層に特に有用であることが分かっており、これにより、前述の技術的課題の解決に関して多大な優位性が達成される。本開示の推奨される別の実施形態によれば、熱可塑性加硫物(TPV)よりなる内層が、本開示による自動車温度制御チューブに用いられる。内層の熱可塑性加硫物は、エラストマとポリオレフィンの混合物又は合金であることが好ましく、特にエラストマとポリプロピレン(PP)の混合物又は合金であることが好ましい。エラストマは、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)であることが好適である。
【0013】
本開示の推奨される実施形態の一つは、内層の厚さが本チューブの全壁厚又は全層厚の10~50%であり、好ましくは10~45%、より好ましくは10~40%、特に好ましくは15~40%であることを特徴とする。本開示の実施形態の一つによれば、内層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の10~35%、特に10~30%である。
【0014】
本開示によるチューブが「外層-中間層-内層」よりなる層集合体を備えることは本開示の範囲内であり、さもなければ、本開示によるチューブが、選択肢として、外層に隣接した最外層を少なくとも1つのみ、好ましくは1つ備えるか、又は、内層に隣接した最内層を少なくとも1つ、特に1つ備えるか、又は、その両方を備えることは、本開示の範囲内である。本開示の実施形態の一つによれば、本開示による自動車温度制御チューブは「外層-中間層-内層」よりなる集合体のみを備え、特に間に挿入されたさらなる層がなく、外側や内側に隣接した層がないことを特徴とする。
【0015】
本開示の推奨される実施形態によれば、第1の接着促進層が少なくとも1つ、好ましくは1つ、外層と中間層との間に挿入される。第1の接着促進層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の2~25%であることが有利であり、好ましくは3~20%であり、より好ましくは5~20%であり、非常に好ましくは5~15%である。本開示のある実施形態は、第1の接着促進層の厚さが、外層の厚さの20~70%であり、好ましくは25~70%であり、特に好ましくは25~65%であることを特徴とする。
【0016】
第2の接着促進層が少なくとも1つ、好ましくは1つ、中間層と内層との間に挿入されることは、本開示の範囲内である。本開示の好ましい実施形態によれば、第2の接着促進層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の2~25%であり、有利には3~20%であり、好ましくは5~15%である。代替となる実施形態によれば、第2の接着促進層の厚さが、中間層の厚さの20~60%、有利には20~55%であり、好ましくは25~55%であることを特徴とする。本開示の立証された実施形態によれば、第2の接着促進層の厚さは、外層の厚さの25~70%であり、好ましくは25~65%である
【0017】
本開示の大いに推奨される実施形態は、第1の接着促進層又は第2の接着促進層又はその両方が、少なくとも1つのポリオレフィンを主とした接着促進層であり、特にポリエチレンを主とした接着促進層であることを特徴とする。第1の接着促進層又は第2の接着促進層又はその両方は、立証可能に、ポリオレフィンを主とした接着促進層であり、特にポリエチレンを主とした接着促進層であり、少なくとも1つのカルボン酸誘導体で変性されたもの、好ましくはマレイン酸誘導体で変性されたものである。
【0018】
本チューブが、さらなる層が間に挿入されていない「外層-第1の接着促進層-中間層-第2の接着促進層-内層」よりなる集合体を備えることは、本開示の範囲内であり、選択肢として、外層に隣接した最外層を少なくとも1つ、又は、内層に隣接した最内層を少なくとも1つ、又は、その両方を備えることは、本開示の範囲内である。
本開示の実施形態の一つによれば、本開示によるチューブは、「外層-第1のプライマ層-中間層-第2のプライマ層-内層」よりなる集合体のみからなり、特に、さらなる層が挿入されることなく、隣接した最外層や最内層をさらに有しない。
【0019】
本開示の好ましい実施形態によれば、内層は、第1の接着促進層より厚いか、又は、第2の接着促進層より厚いか、又は、その両方を満たす。内層は、第1の接着促進層又は第2の接着促進層又はその両方よりも、有利には少なくとも1.2倍厚く、好ましくは少なくとも1.5倍厚く、非常に好ましくは少なくとも2倍厚い。さらに、中間層が、第1の接着促進層より厚いか、又は、第2の接着促進層より厚いか、又は、その両方を満たすことは、本開示の範囲内である。中間層は、第1の接着促進層又は第2の接着促進層又はその両方よりも、有利には少なくとも1.2倍厚く、好ましくは少なくとも1.5倍厚く、非常に好ましくは少なくとも2倍厚い。外層は、第1の接着促進層又は第2の接着促進層又はその両方よりも厚いことが好ましい。外層が、第1の接着促進層又は第2の接着促進層又はその両方よりも、少なくとも1.2倍厚く、好ましくは少なくとも1.5倍厚く、非常に好ましくは少なくとも2倍厚いことは、本開示の範囲内である。本開示の代替となる実施形態の一つによれば、第1の接着促進層及び第2の接着促進層は、同じ厚さ又はほぼ同じ厚さを有する。第1の接着促進層の厚さは、第2の接着促進層の厚さと異なることが好ましく、最大で20%異なるか、又は、有利には最大で15%異なり、好ましくは最大で10%異なる。
【0020】
本開示による自動車温度制御チューブが層の押出し成形又は共押出し成形によって製造されることは、本開示の範囲内である。本開示は、個々の層に用いられる材料とこの個々の層の好ましい層厚により、非常に簡易で且つエネルギー消費の少ない共押出し成形を可能となることが実現されることに基づく。特に有利なのは、本開示によるチューブの押出し成形を適度な温度で実行できることである。
【0021】
例示的な実施形態を参照して本開示を以下により詳細に説明する。好ましい実施形態によれば、多層自動車温度制御チューブは、HDPEからなる外層と、ポリプロピレンからなる中間層と、HDPEからなる内層とを有する。接着促進層は、外層と中間層との間、及び、中間層と内層との間に、それぞれ挿入される好ましい。この例示的な実施形態において、外層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の15~45%であることが好適であり、中間層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の10~40%であることが好ましい。さらに、内層の厚さは本チューブの全層厚又は全壁厚の15~45%であることが推奨され、これは、この例示的な実施形態の特徴である。例示的な実施形態における第1の接着促進層の厚さ及び第2の接着促進層の厚さは、本チューブの全層厚又は全壁厚の2~20%であることが好ましい。この場合、第1の接着促進層及び第2の接着促進層の厚さは、外層の厚さの20~65%であることが好適である。本開示の好ましい実施形態によれば、例示的な実施形態では、第1の接着促進層及び第2の接着促進層は、ポリオレフィンを主とした接着促進層であり、特にポリエチレンを主とした接着促進層である。
【0022】
本開示の実施形態の一つによれば、ポリオレフィン製の、特にポリプロピレン製の最外層が少なくとも1つ、本チューブの外側層に、外側から接する。特に好ましい実施形態は、ポリオレフィン製の層を有する層集合体、好ましくはポリオレフィン製の層のみを有する層集合体が、外層の外側に隣接することを特徴とする。この場合は、この層集合体は、好ましくは、ポリプロピレンからなる層とHDPEからなる層とが交互になっている、交互層並び(sequence)を有する。よって、この層集合体は、PP/HDPE/PP交互層並びを有する。
【0023】
本開示は、本開示による多層自動車温度制御チューブが、温度制御媒体に対して優れたバリア特性を有すること、特にアルコールと水の混合物に対して、特に、グリコールと水の混合物に対して優れたバリア特性を有することを特徴とすることが実現されることに基づく。本開示による温度制御チューブは、優れた熱絶縁特性もさらに有する。さらに、機械的特性がまた満足いくものであるか、又は、機械的な耐久性がすべての要件を満たすか、又は、その両方を満たす。とりわけ、本開示による温度制御チューブは、その層複合体によって、最適な機械的強度を呈する。本開示による温度制御チューブのさらなる利点は、本開示による層複合体におけるHDPEの望ましくないクリープ特性を回避できることである。本開示によるチューブの驚くほど強固でしっかりした接続をコネクタ及び他の部品において実現可能である。これは、本開示による層複合体によって実現可能である。同様に強調されるべきは、本開示による温度制御チューブは、比較的簡易で且つ費用のかからない作業によって実装できることである。層複合体の共押出し成形は、問題がなく、効果的で且つエネルギー消費が少ない態様で行うことができ、本開示による層複合体は、簡易且つ変更可能な熱加工性及び機械加工性を有することを特徴とする。本チューブの製造に必要な材料は、得られる利点と比べても、比較的少量である。このように、本開示による温度制御チューブの製造コストは、比較的低い。本開示によるチューブは、とりわけ、ポリアミドの層又はポリアミド12の層を有する比較可能なチューブよりも安価である。
【0024】
1つのみの例示的な実施形態を示す図面を参照して本開示が以下により詳細に説明される。概略図が示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示による自動車温度制御チューブの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図は、本開示による自動車温度制御チューブ1を示す。このチューブ1の場合には、例示的な実施形態として、自動車用の冷却チューブ1が挙げられる。このチューブ1に冷却媒体(不図示)を通す。冷却媒体は、アルコールと水の混合物であること、特にグリコールと水の混合物であることが好ましい。チューブ1は、例示的な実施形態では、5層を有することが好適である。これらは、外側から内側に向かって、外層2と、第1の接着促進層3と、中間層4と、第2の接着促進層5と、内層6とを備える。実施形態の一つによれば、内層6は、電気伝導性を有するよう設計されるように、導電性添加物を有してよい。
【0027】
ポリエチレンからなる、好ましくはHDPEからなる外層2は、特に好ましい実施形態に従って、例示的な実施形態において用いられる。例示的な実施形態における第1の接着促進層3は、有利には、ポリオレフィンを主とした接着促進層であり、特にポリエチレンを主とした接着促進層である。これには、変性ポリオレフィンが好ましく、変性ポリエチレンが最も好ましい。
【0028】
本開示によれば、ポリプロピレン(PP)からなる中間層4が存在する。この中間層4は、実質的にポリプロピレンのみからなることに優位性があるが、さらに添加物を含んでもよい。例示的な実施形態における中間層は、少なくとも95wt%のポリプロピレンからなることが好ましい。ポリエチレンからなる、好ましくはHDPE製の中間層6が、さらに設けられる。例示的な実施形態におけるこの第2の接着促進層5は、ポリオレフィンを主とする、特にポリエチレンを主とすることが推奨される。これは、変性ポリオレフィン、特に変性ポリエチレンであることが好ましい。
【0029】
本チューブ1の全層厚又は全壁厚は、0.8~2mmが好適であり、0.9~1.6mmであることが好ましい。この実施形態における外層2及び中間層4ならびに内層6はそれぞれ、第1の接着促進層3より厚く、第2の接着促進層5より厚いことが推奨される。外層2又は中間層4又は内層6又はこれらの組み合わせは、第1の接着促進層3又は第2の接着促進層5又はその両方の、少なくとも1.2倍厚いことが有利であり、少なくとも1.5倍厚いことが好ましく、少なくとも1.8倍厚いことが非常に好ましい。
【0030】
熱可塑性加硫物(TPV)の、外層2又は内層6又はその両方が、本開示のさらなる実施形態に従って用いられる。この熱可塑性加硫物は、好ましくは、エラストマとポリオレフィンの合金又は混合物であり、好ましくは、エラストマとポリプロピレン(PP)と合金又は混合物である。この場合は、エラストマは、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)であることが好ましい。