IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-燃料電池システム 図1
  • 特開-燃料電池システム 図2
  • 特開-燃料電池システム 図3
  • 特開-燃料電池システム 図4
  • 特開-燃料電池システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056957
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20240416BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/04225 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/04302 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240416BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240416BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 A
H01M8/04225
H01M8/04228
H01M8/04302
H01M8/04303
H01M8/04664
H01M8/04746
H01M8/10 101
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023356
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2022055053の分割
【原出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 渉
(72)【発明者】
【氏名】中川 拓人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ユーザの利便性を向上させること。
【解決手段】燃料電池システム10は、電力供給対象物52の動力源として使用される燃料電池12及び二次電池56と、電力供給対象物の駆動を制御する制御装置64とを備える。制御装置は、燃料電池の起動に要する所定条件が満たされるか否かを判定し、所定条件が満たされる場合に、二次電池のみを用いて電力供給対象物を駆動可能とする電池駆動モードを許可し、所定条件が満たされない場合に、電池駆動モードを許可しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給対象物の動力源として使用される燃料電池及び二次電池と、
前記電力供給対象物の駆動を制御する制御装置と、
を備える燃料電池システムであって、
前記制御装置は、
前記燃料電池の起動に要する所定条件が満たされるか否かを判定し、
前記所定条件が満たされる場合に、前記二次電池のみを用いて前記電力供給対象物を駆動可能とする電池駆動モードを許可し、
前記所定条件が満たされない場合に、前記電池駆動モードを許可せず、
前記電力供給対象物が動作していない状況で前記燃料電池のメンテナンス制御を実行するとともに、制御履歴を記録し、
前記電力供給対象物が動作していない状況で前記燃料電池の動作停止から起動する場合であって、且つ、前記制御履歴に失敗履歴がある場合に、前記所定条件が満たされないと判定する、
燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するガス容器と、
前記ガス容器と前記燃料電池との間に位置する流路の開閉状態を調整する電磁弁と、を備え、
前記制御装置は、前記所定条件が満たされる場合に、前記電磁弁に開弁を指示し、前記電磁弁の開弁が完了する前に、前記電池駆動モードを許可する、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記燃料電池の起動時間が所定時間以下となる場合に、前記所定条件が満たされると判定する、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記電池駆動モードを許可した後に、前記燃料電池の発電要求を取得した場合に、前記電池駆動モードを解除するとともに、前記燃料電池の発電を制御する、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体等の電力供給対象物に搭載される燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能且つ先進的なエネルギへのアクセスを確保するために、エネルギの効率化に貢献する燃料電池(燃料電池スタック)に関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1には、移動体に搭載される燃料電池システムが開示される。この燃料電池システムは、燃料電池とバッテリとを有する。燃料電池システムの制御装置は、バッテリの起動が完了したこと、及び、走行機能の起動が完了したことの双方が満たされた場合に、移動体の走行を許可するように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-271655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、移動体の走行を許可するか否かの判定に関して、燃料電池の状態は考慮されていない。
【0006】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、電力供給対象物の動力源として使用される燃料電池及び二次電池と、前記電力供給対象物の駆動を制御する制御装置と、を備える燃料電池システムであって、前記制御装置は、前記燃料電池の起動に要する所定条件が満たされるか否かを判定し、前記所定条件が満たされる場合に、前記二次電池のみを用いて前記電力供給対象物を駆動可能とする電池駆動モードを許可し、前記所定条件が満たされない場合に、前記電池駆動モードを許可せず、前記電力供給対象物が動作していない状況で前記燃料電池のメンテナンス制御を実行するとともに、制御履歴を記録し、前記電力供給対象物が動作していない状況で前記燃料電池の動作停止から起動する場合であって、且つ、前記制御履歴に失敗履歴がある場合に、前記所定条件が満たされないと判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、必要時に燃料電池を起動することができる。このため、電力供給対象物が駆動した後のユーザの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る燃料電池システムの概略構成図である。
図2図2は、起動処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、条件確認処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、冷媒温度が高い場合に行われる処理の一例を示すタイムチャートである。
図5図5は、冷媒温度が低い場合に行われる処理の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1 燃料電池システム10の構成]
図1は、本発明に係る燃料電池システム10の概略構成図である。燃料電池システム10は、車両に設けられる。なお、燃料電池システム10は、車両以外の移動体(船舶、航空機等)、産業機械等にも使用可能である。燃料電池システム10は、エネルギの効率化に寄与する。
【0011】
燃料電池システム10は、燃料電池12と、燃料ガス給排システム14と、酸化剤ガス給排システム16と、冷却システム18と、電力システム20と、1以上のECU22とを有する。
【0012】
燃料電池12は、複数の発電セルを積層した燃料電池スタックである。各々の発電セルは、固体高分子電解質膜とアノード電極とカソード電極とを有する。発電セルには、カソード電極に酸化剤ガスを供給するカソード流路が形成される。発電セルには、アノード電極に燃料ガスを供給するアノード流路が形成される。燃料電池12は、燃料ガス(水素ガス)と酸化剤ガス(エア)との反応により発電する。
【0013】
燃料ガス給排システム14は、燃料電池12のアノード電極に燃料ガスを供給するための各構成と、燃料電池12のアノード電極から燃料オフガスを排出するための各構成とを有する。燃料ガス給排システム14は、ガスタンク(ガス容器)24を有する。また、燃料ガス給排システム14は、供給流路(流路)26と、排出流路28と、循環流路30と、第1ドレイン流路32と、第2ドレイン流路34とを有する。また、燃料ガス給排システム14は、タンク弁36と、インジェクタ38と、エジェクタ40と、気液分離器42と、第1ドレイン弁44と、第2ドレイン弁46とを有する。
【0014】
供給流路26は、ガスタンク24の排出口と燃料電池12のアノード流路の入口とを接続する。供給流路26には、上流(ガスタンク24)から下流(燃料電池12)に向かって、タンク弁36とインジェクタ38とエジェクタ40とが、その順番で設けられる。ガスタンク24は、高圧の燃料ガスを貯蔵する。ガスタンク24には、圧力センサ48が設けられる。圧力センサ48は、タンクの内圧を検出する。圧力センサ48は、検出値をECU22の制御装置64に送信する。圧力センサ48の検出値は、ガスタンク24内の燃料ガスの残量と相関がある。なお、タンク弁36は、電磁弁である。
【0015】
排出流路28は、燃料電池12のアノード流路の出口と気液分離器42の吸気口とを接続する。循環流路30は、気液分離器42の排気口とエジェクタ40とを接続する。第1ドレイン流路32は、気液分離器42の排水口と希釈器(不図示)とを接続する。第1ドレイン流路32には、第1ドレイン弁44が設けられる。第1ドレイン弁44は、電磁弁である。第2ドレイン流路34は、燃料電池12の排水口と希釈器(不図示)とを接続する。第2ドレイン流路34には、第2ドレイン弁46が設けられる。第2ドレイン弁46は、電磁弁である。
【0016】
酸化剤ガス給排システム16は、燃料電池12のカソード電極に酸化剤ガスを供給するための各構成と、燃料電池12のカソード電極から酸化剤オフガスを排出するための各構成とを有する。
【0017】
冷却システム18は、燃料電池12に冷媒を供給するための各構成と、燃料電池12から冷媒を排出するための各構成とを有する。冷却システム18には、温度センサ(温度取得装置)50が設けられる。温度センサ50は、燃料電池12から排出される冷媒の温度を検出する。温度センサ50は、検出値をECU22の制御装置64に送信する。温度センサ50の検出値は、燃料電池12の内部温度と相関がある。
【0018】
電力システム20は、車両が備える1以上の負荷に電力を供給するための各構成を有する。電力システム20は、モータ(電力供給対象物)52と、インバータ54と、バッテリ(二次電池)56と、コンタクタ58と、バッテリコンバータ60と、FCコンバータ62とを有する。
【0019】
モータ52は、車両を走行させるための走行用モータである。モータ52は、FCコンバータ62及びインバータ54を介して燃料電池12から供給される電力によって動作し得る。また、モータ52は、コンタクタ58、バッテリコンバータ60及びインバータ54を介してバッテリ56から供給される電力によって動作し得る。
【0020】
バッテリ56は、高電圧の二次電池である。バッテリ56は、燃料電池12と同様に、モータ52の動力源である。バッテリ56は、モータ52に電力を供給し得る。また、バッテリ56は、モータ52の発電電力又は燃料電池12の発電電力によって充電し得る。
【0021】
FCコンバータ62は、昇圧用のDC/DCコンバータである。バッテリコンバータ60は、昇降圧用のDC/DCコンバータである。
【0022】
1以上のECU22は、制御装置64と記憶装置66とを有する。制御装置64は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであってもよい。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であってもよい。プロセッサは、記憶装置66に記憶されるプログラムを実行することによって各種の処理を実行可能である。制御装置64は、FC制御部68と、車両制御部70として機能する。複数の処理のうちの少なくとも一部が、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実行されてもよい。
【0023】
FC制御部68は、燃料電池12の動作に関する制御を行う。例えば、FC制御部68は、燃料ガス給排システム14、酸化剤ガス給排システム16、及び冷却システム18のそれぞれを制御する。例えば、FC制御部68は、タンク弁36、第1ドレイン弁44、第2ドレイン弁46、インジェクタ38の各々に制御信号を出力し、各々の動作を制御する。
【0024】
車両制御部70は、車両の走行に関する制御を行う。例えば、車両制御部70は、電力システム20を制御する。例えば、車両制御部70は、インバータ54の各スイッチ素子、コンタクタ58、バッテリコンバータ60の各スイッチ素子、FCコンバータ62の各スイッチ素子の各々に制御信号を出力し、各々の動作を制御する。
【0025】
記憶装置66は、揮発性メモリと不揮発性メモリとを有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用される。揮発性メモリは、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用される。不揮発性メモリは、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。記憶装置66の少なくとも一部が、上述したようなプロセッサ、集積回路等に備えられてもよい。
【0026】
[2 起動処理]
図2は、起動処理の手順を示すフローチャートである。制御装置64は、車両の起動時に、図2で示される起動処理を行う。ユーザは、例えば、ブレーキペダルの踏み込み操作とスタート/ストップボタンの操作とを同時に行うことによって、車両を起動させる。制御装置64は、車両が停止している状態で、ブレーキペダルの踏み込み操作とスタート/ストップボタンの操作とを検出する場合に、図2で示される起動処理を開始する。
【0027】
車両制御部70は、ブレーキペダルの踏み込み操作とスタート/ストップボタンの操作とを検出する場合に、走行のための準備を行う。例えば、車両制御部70は、コンタクタ58を接続する。また、車両制御部70は、バッテリコンバータ60とFCコンバータ62が起動したことを確認する。車両制御部70は、コンタクタ58の接続後に、バッテリ走行モード(電池駆動モード)の要求を、FC制御部68に出力する。
【0028】
バッテリ走行モードとは、少なくとも燃料電池12の電力が使用可能となるまでに、バッテリ56の電力のみを使用して車両を走行可能にする走行モードである。車両の起動時等、燃料電池12の状態を停止状態から運転状態に変化させる場合、燃料電池12の電力が使用可能となるまでには時間を要する。このため、車両の起動直後に、車両は燃料電池12の電力を使用して走行することができない。一方、バッテリ走行モードが許可されることによって、車両はより早く走行を始めることができる。
【0029】
ステップS1において、FC制御部68は、バッテリ走行モードの要求の有無を判定する。バッテリ走行モードの要求がある場合(ステップS1:YES)、処理はステップS2に移行する。一方、バッテリ走行モードの要求がない場合(ステップS1:NO)、処理はステップS10に移行する。
【0030】
ステップS1からステップS2に移行すると、FC制御部68は、条件確認処理を行う。FC制御部68は、条件確認処理において、バッテリ56を使用して車両を走行させてもよい1以上の条件(所定条件)を確認する。条件確認処理については、下記[3]にて説明する。ステップS2の実行後、処理はステップS3に移行する。
【0031】
ステップS3において、FC制御部68は、ステップS2の結果に基づいて、1以上の所定条件が満たされているかを判定する。1以上の所定条件が満たされている場合(ステップS3:YES)、処理はステップS4に移行する。一方、1以上の所定条件が満たされていない場合(ステップS3:NO)、処理はステップS7に移行する。
【0032】
ステップS3からステップS4に移行すると、FC制御部68は、タンク弁36に開弁信号を出力する。タンク弁36は、開弁信号に従い開弁動作を開始する。タンク弁36が開弁動作を開始してから開弁が完了するまでには若干の時間を要する。タンク弁36の開弁が完了すると、ガスタンク24内の燃料ガスは、インジェクタ38に向けて流れる。このため、インジェクタ38から燃料電池12に向けて燃料ガスの噴射が可能になる。
【0033】
ステップS5において、FC制御部68は、バッテリ走行モードを許可する。つまり、FC制御部68は、バッテリ56を使用した車両の走行を許可する。FC制御部68は、例えば、車両制御部70に、バッテリ56を使用した走行が許可されたことを示す情報を出力する。また、FC制御部68は、例えば、車両の運転室内に設けられる表示装置に、ユーザに対するメッセージ(準備完了等)を表示させる。なお、図2で示されるフローチャートでは、ステップS4の後にステップS5が行われるように示されるが、ステップS4とステップS5とは同時に行われる。つまり、FC制御部68は、開弁信号の出力と、バッテリ走行モードの許可とを同時機に行う。ステップS4及びステップS5の実行後、処理はステップS6に移行する。
【0034】
ステップS6において、FC制御部68は、FC発電(燃料電池12による発電)の要求の有無を判定する。車両制御部70は、例えば、バッテリ56のSOCが所定値以下に低下した場合に、FC制御部68にFC発電を要求する。また、車両制御部70は、例えば、大きな電力が必要な場合(ユーザがアクセルペダルを大きく踏み込む場合等)に、FC制御部68にFC発電を要求する。FC発電の要求がある場合(ステップS6:YES)、処理はステップS10に移行する。一方、FC発電の要求がない場合(ステップS6:NO)、ステップS6の処理が繰り返し実行される。つまり、FC制御部68は、FC発電が必要になるまで、バッテリ走行モードを継続する。
【0035】
ステップS3からステップS7に移行すると、FC制御部68は、燃料電池12を起動する準備をする。ステップS4と同様に、FC制御部68は、タンク弁36に開弁信号を出力する。また、FC制御部68は、圧力センサ48の検出値に基づいて、ガスタンク24内の燃料ガスの残量を確認する。ステップS7の実行後、処理はステップS8に移行する。
【0036】
ステップS8において、FC制御部68は、燃料電池12の起動準備が完了したかを判定する。FC制御部68は、燃料電池12を起動することができる状態、又は、燃料電池12の電力を使用して車両を走行させてもよい状態を確認した場合に、起動準備が完了したと判定する。FC制御部68は、例えば、タンク弁36の開弁を確認した場合に、燃料電池12を起動することができる状態と判定する。FC制御部68は、例えば、ガス欠でないことを確認した場合に、燃料電池12の電力を使用して車両を走行させてもよい状態と判定する。このような場合(ステップS8:YES)、処理はステップS9に移行する。一方、FC制御部68は、燃料電池12を起動することができない状態、又は、燃料電池12の電力を使用して車両を走行させることが好ましくない状態を確認した場合に、起動準備が完了していない判定する。このような場合(ステップS8:NO)、処理はステップS11に移行する。
【0037】
ステップS8からステップS9に移行すると、FC制御部68は、車両の走行を許可する。FC制御部68は、例えば、車両制御部70に、燃料電池12を使用した走行が許可されたことを示す情報を出力する。また、FC制御部68は、例えば、車両の運転室内に設けられる表示装置に、ユーザに対するメッセージ(準備完了等)を表示させる。ステップS9の実行後、処理はステップS10に移行する。
【0038】
ステップS6又はステップS9からステップS10に移行すると、FC制御部68は、燃料電池12による発電を開始する。FC制御部68は、燃料ガス給排システム14の各装置を制御して、燃料電池12への燃料ガスの供給と、燃料電池12からの燃料オフガスの排出とを制御する。FC制御部68は、酸化剤ガス給排システム16の各装置を制御して、燃料電池12への酸化剤ガスの供給と、燃料電池12からの酸化剤オフガスの排出とを制御する。FC制御部68は、冷却システム18の各装置を制御して、燃料電池12への冷媒の供給と、燃料電池12からの冷媒の排出とを制御する。ステップS10が実行されると、起動処理は終了する。
【0039】
ステップS8からステップS11に移行すると、FC制御部68は、車両の走行を禁止(不許可)する。FC制御部68は、例えば、車両制御部70に、燃料電池12を使用した走行が禁止されたことを示す情報を出力する。また、FC制御部68は、例えば、車両の運転室内に設けられる表示装置に、ユーザに対するメッセージ(走行不可等)を表示させる。ステップS11が実行されると、起動処理は終了する。
【0040】
[3 条件確認処理]
図3は、条件確認処理の手順を示すフローチャートである。FC制御部68は、図2で示される起動処理のステップS2において、図3で示される条件確認処理を実行する。図3では、FC制御部68が確認する所定条件として、3つの条件(ステップS22、ステップS23、ステップS24)が示される。FC制御部68は、このうちの1つのみを確認してもよい。また、FC制御部68は、所定条件として、他の条件を確認してもよい。
【0041】
ステップS21において、FC制御部68は、各種情報を取得する。FC制御部68は、温度センサ50から冷媒温度の検出値を取得する。FC制御部68は、記憶装置66からメンテナンス制御の履歴を取得する。FC制御部68は、圧力センサ48からガスタンク24の内圧の検出値を取得する。ステップS21が実行されると、処理はステップS22に移行する。
【0042】
ステップS22において、FC制御部68は、冷媒温度と所定値とを比較する。所定値は、記憶装置66に記憶された冷媒温度の閾値である。冷媒温度が所定値以下である場合、燃料電池12の暖気に時間を要する。つまり、燃料電池12が使用可能になるまで(発電が安定するまで)時間を要する。この場合(ステップS22:YES)、処理はステップS26に移行する。一方、冷媒温度が所定値を上回る場合、燃料電池12の暖気は短時間で終了する。つまり、燃料電池12が使用可能になるまで時間がかからない。この場合(ステップS22:NO)、処理はステップS23に移行する。
【0043】
ステップS22からステップS23に移行すると、FC制御部68は、メンテナンス制御の失敗履歴があるかを判定する。メンテナンス制御とは、燃料電池12の停止中に行われる制御である。メンテナンス制御として、例えば、排水制御が挙げられる。FC制御部68は、燃料電池12の停止中に、燃料電池12の温度を監視する。例えば、FC制御部68は、温度センサ50の検出値に基づいて、冷媒温度を監視する。FC制御部68は、冷媒温度が所定の排水温度以下に低下した場合に、第2ドレイン弁46を開ける。すると、燃料電池12の内部に溜まった水は、第2ドレイン流路34を流れて、燃料電池12の外部に排水される。これにより、燃料電池12内での水の凍結を防止する。FC制御部68は、この排水制御の実行履歴及び実行結果(成功、失敗)を記憶装置66に記憶させる。
【0044】
排水制御の履歴に失敗履歴がある場合、燃料電池システム10に何らかの異常がある可能性がある。この場合(ステップS23:YES)、処理はステップS26に移行する。一方、排水制御の履歴に失敗履歴がない場合(ステップS23:NO)、処理はステップS24に移行する。
【0045】
ステップS23からステップS24に移行すると、FC制御部68は、圧力センサ48の検出値に基づいて、ガスタンク24内の燃料ガスの残量を確認する。FC制御部68は、圧力センサ48の検出値が所定圧以下である場合に、ガス欠と判定する。ガス欠の場合(ステップS24:YES)、処理はステップS26に移行する。一方、ガス欠でない場合(ステップS24:NO)、処理はステップS25に移行する。
【0046】
ステップS24からステップS25に移行すると、FC制御部68は、所定条件が満たされると判定する。一方、ステップS22、ステップS23又はステップS24のいずれか1つからステップS26に移行すると、FC制御部68は、所定条件が満たされないと判定する。ステップS25又はステップS26の実行後、処理は図2のステップS3に移行する。
【0047】
なお、上述したように、FC制御部68は、所定条件として、他の条件を確認してもよい。例えば、燃料電池12の起動時間を予測し、起動時間が所定時間以下となる場合に、所定条件が満たされると判定してもよい。
【0048】
[4 処理例]
[4-1 処理例1]
図4は、冷媒温度が高い場合に行われる処理の一例を示すタイムチャートである。図2及び図4を用いて、車両の起動時に行われる一部処理を時間経過とともに説明する。具体的には、図2のステップS1~ステップS6、ステップS10の処理を時間経過とともに説明する。
【0049】
時点t0において、車両制御部70は、ブレーキペダルの踏み込み操作とスタート/ストップボタンの操作とを検出する。車両制御部70は、時点t0から時点t1の間に、走行のための準備を行う。
【0050】
時点t1において、車両制御部70は、コンタクタ58の接続を確認し、バッテリ走行モードの要求を、FC制御部68に出力する(ステップS1)。FC制御部68は、条件確認処理を行う(ステップS2)。この時点で、冷媒温度は所定値以上である。また、図示しないが、排水制御の失敗履歴はなく、また、ガス欠でもないとする。この場合、FC制御部68は、所定条件が満たされると判定する(ステップS3:YES)。このため、バッテリ走行モードを許可するための処理が行われる。
【0051】
時点t2において、FC制御部68は、バッテリコンバータ60及びFCコンバータ62の起動を確認する。この時点で、FC制御部68は、タンク弁36に開弁信号を出力する(ステップS4)。タンク弁36は、開弁信号に従い開弁動作を開始する。また、FC制御部68は、バッテリ走行モードを許可する(ステップS5)。時点t2から時点t3まで、車両は、バッテリ56の電力によって走行可能である。
【0052】
時点t3において、タンク弁36は開弁する。この時点で、車両は、燃料電池12の電力によって走行可能である。
【0053】
時点t4において、例えば、ユーザがアクセルペダルを大きく踏み込む。すると、車両制御部70は、FC制御部68にFC発電を要求する(ステップS6:YES)。FC制御部68は、バッテリ走行モードを解除し、燃料電池12の発電制御を行う(ステップS10)。
【0054】
[4-2 処理例2]
図5は、冷媒温度が低い場合に行われる処理の一例を示すタイムチャートである。図2及び図5を用いて、車両の起動時に行われる一部処理を時間経過とともに説明する。具体的には、図2のステップS1~ステップS3、ステップS7~ステップS9の処理を時間経過とともに説明する。
【0055】
時点t0において、車両制御部70は、ブレーキペダルの踏み込み操作とスタート/ストップボタンの操作とを検出する。車両制御部70は、時点t0から時点t1の間に、走行のための準備を行う。
【0056】
時点t1において、車両制御部70は、コンタクタ58の接続を確認し、バッテリ走行モードの要求を、FC制御部68に出力する(ステップS1)。FC制御部68は、条件確認処理を行う(ステップS2)。この時点で、冷媒温度は所定値を下回る。この場合、FC制御部68は、所定条件が満たされないと判定する(ステップS3:NO)。FC制御部68は、バッテリ走行モードを禁止する。車両制御部70は、FC制御部68にFC発電を要求する。
【0057】
時点t2において、FC制御部68は、バッテリコンバータ60及びFCコンバータ62の起動を確認する。この時点で、FC制御部68は、タンク弁36に開弁信号を出力する(ステップS7)。タンク弁36は、開弁信号に従い開弁動作を開始する。
【0058】
時点t3において、タンク弁36は開弁する。この時点で、車両は、燃料電池12の電力によって走行可能である。FC制御部68は、車両の走行を許可する(ステップS8:YES、ステップS9)。
【0059】
[5 その他]
燃料電池12の温度の低下に伴い、冷媒温度は低下する。図4の時点t4で示されるように、冷媒温度が閾値以下に低下した場合に、FC制御部68は、バッテリ走行モードを解除し、燃料電池12の発電制御を行ってもよい。
【0060】
[6 実施形態から得られる発明]
上記実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0061】
本発明の態様は、電力供給対象物(52)の動力源として使用される燃料電池(12)及び二次電池(56)と、前記電力供給対象物の駆動を制御する制御装置(64)と、を備える燃料電池システム(10)であって、前記制御装置は、前記燃料電池の起動に要する所定条件が満たされるか否かを判定し、前記所定条件が満たされる場合に、前記二次電池のみを用いて前記電力供給対象物を駆動可能とする電池駆動モードを許可し、前記所定条件が満たされない場合に、前記電池駆動モードを許可しない。
【0062】
上記構成において、燃料電池の起動に要する所定条件が満たされるか否かを判定し、所定条件が満たされる場合に電池駆動モードが許可される。上記構成によれば、必要時に燃料電池を起動することができる。このため、電力供給対象物が駆動した後のユーザの利便性を向上させることができる。
【0063】
本発明の態様の燃料電池システムは、前記燃料電池に供給される燃料ガスを貯蔵するガス容器(24)と、前記ガス容器と前記燃料電池との間に位置する流路(26)の開閉状態を調整する電磁弁(36)と、を備え、前記制御装置は、前記所定条件が満たされる場合に、前記電磁弁に開弁を指示し、前記電磁弁の開弁が完了する前に、前記電池駆動モードを許可してもよい。
【0064】
上記構成によれば、電池駆動モードが電磁弁の開弁完了前に設定可能となる。その結果、ユーザはより早く電力供給対象物を使用することが可能となる。このため、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0065】
本発明の態様において、前記制御装置は、前記燃料電池の起動時間が所定時間以下となる場合に、前記所定条件が満たされると判定してもよい。
【0066】
燃料電池が起動していない状態で、二次電池が使用され続けると、二次電池のSOCが大きく低下する虞がある。上記構成によれば、二次電池のSOCが大きく低下することを抑制することができる。
【0067】
本発明の態様の燃料電池システムは、前記燃料電池の温度を取得する温度取得装置(50)を備え、前記制御装置は、前記温度が所定値以下である場合に、前記所定条件が満たされないと判定してもよい。
【0068】
起動時の燃料電池の温度は、燃料電池の暖気時間に関係する。上記構成によれば、ユーザの違和感を低減することができる。
【0069】
本発明の態様において、前記制御装置は、前記電力供給対象物が動作していない状況で前記燃料電池のメンテナンス制御を実行するとともに、制御履歴を記録し、前記電力供給対象物が動作していない状況で前記燃料電池の動作停止から起動する場合であって、且つ、前記制御履歴に失敗履歴がある場合に、前記所定条件が満たされないと判定してもよい。
【0070】
本発明の態様において、前記制御装置は、前記電池駆動モードを許可した後に、前記燃料電池の発電要求を取得した場合に、前記電池駆動モードを解除するとともに、前記燃料電池の発電を制御してもよい。
【0071】
電池駆動モードが長時間継続されると、二次電池のSOCが大きく低下する虞がある。上記構成によれば、二次電池のSOCが大きく低下することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…燃料電池システム 12…燃料電池
24…ガスタンク(ガス容器) 26…供給流路(流路)
36…タンク弁(電磁弁)
50…温度センサ(温度取得装置) 52…モータ(電力供給対象物)
56…バッテリ(二次電池) 64…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5