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特開2024-57017粉末薬剤をカプセルから放出するためにカプセルに穴を開けるための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057017
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】粉末薬剤をカプセルから放出するためにカプセルに穴を開けるための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20240416BHJP
   A61J 3/07 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61J3/07 E
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026136
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2022110143の分割
【原出願日】2013-12-03
(31)【優先権主張番号】61/733,117
(32)【優先日】2012-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/719,598
(32)【優先日】2012-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512154943
【氏名又は名称】シビタス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】エルワンガー,コリーン
(72)【発明者】
【氏名】ノーブル,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】コーカー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】プランケット,シーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】粉末薬剤をカプセルから放出するためにカプセルに穴を開けるための装置を提供する。
【解決手段】装置100は、カプセル219を受容するためのチャンバ210を含む。カプセルは、対向するドーム及びカプセルの壁の半径rにより画定された円筒形壁部分を含む。装置は、少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けるための機構230を更に含む。各穴の中心は、0.4r未満でない所に位置する環状穴開け領域内に位置し、全ての穿刺孔の総表面積が、カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある。例えば、環状穴開け領域は、約0.4rから約0.8rまでの間、又は約0.4rから約0.6rまでの間に位置することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末薬剤をカプセルから放出するために前記カプセルに穴を開けるための、前記カプセルと装置の組み合わせであって、その組み合わせは、
(a)前記カプセルであって、そのカプセルは、
対向するドームと、
前記対向するドームの中心軸から測定された半径rの壁により画定された円筒形壁部分であって、その壁が、0.08mm~0.12mmの厚さからなる、円筒形壁部分と、
少なくとも0.68cmの体積と、
前記体積内に収容された0.10g/cm未満の密度を有する粉末薬剤とを含む、カプセルと、
(b)前記装置であって、その装置は、
前記カプセルを受容するためのチャンバと、
前記カプセルの単一のドームのみに少なくとも1つの穴を開けるための機構とを含み、各穴の中心が、前記単一のドームにおいて0.5rと0.8rによって境されて画定された環状穴開け領域内に位置し、全ての穴の総表面積が、(i)前記カプセルの総表面積の0.5%から2.2%までの間にあり、且つ(ii)前記単一のドームの総表面積の3%から15%までの間にある、装置と、を含む組み合わせ。
【請求項2】
前記粉末薬剤が、活性薬物としてレボドパを含む、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記対向するドーム及び前記円筒形壁部分がそれぞれ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びゼラチンからなるグループから選択された材料からなる、請求項1又は2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記装置は、前記チャンバに結合された吸入部分を更に含み、前記吸入部分が、前記粉末薬剤を放出するための少なくとも1つのアパーチャを画定する、請求項1~3の何れかに記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記チャンバが、前記カプセルから放出された前記粉末薬剤を散乱させるための空気を前記チャンバ内へ導入するための複数のベントを画定する壁を含む、請求項1~4の何れかに記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記単一のドームに前記少なくとも1つの穴を開けるための前記機構が、複数の突起物を含む、請求項1~5の何れかに記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記単一のドームに前記少なくとも1つの穴を開けるための前記機構が、穴開けしない位置と穴開け位置との間で移動可能である、請求項1~6の何れかに記載の組み合わせ。
【請求項8】
粉末薬剤をカプセルから放出するために前記カプセルに穴を開けるための方法であって、
(i)対向するドーム、(ii)前記対向するドームの中心軸から測定された半径rの壁により画定された円筒形壁部分であって、その壁が、0.08mm~0.12mmの厚さからなる、円筒形壁部分、(iii)少なくとも0.68cmの体積、及び(iv)前記体積内に収容された0.10g/cm未満の密度を有する粉末薬剤を含む前記カプセルを、チャンバ内に受容し、
前記カプセルの単一のドームのみに少なくとも1つの穴を開けることを含み、各穴の中心が、前記単一のドームにおいて0.5rと0.8rによって境されて画定された環状穴開け領域内に位置し、
全ての穴の総表面積が、(i)前記カプセルの総表面積の0.5%から2.2%までの間にあり、且つ(ii)前記単一のドームの総表面積の3%から15%までの間にある、方法。
【請求項9】
前記単一のドームに少なくとも1つの穴を開けることにより、前記粉末薬剤が前記カプセルから放出される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記粉末薬剤が、活性薬物としてレボドパを含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記対向するドーム及び前記円筒形壁部分がそれぞれ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びゼラチンからなるグループから選択された材料からなる、請求項8~10の何れかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な実施形態において、本発明は、粉末薬剤をカプセルから放出するために、カプセルに穴を開けるための装置および方法に関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2012年12月19日に出願された米国同時継続特許出願第13/719,598号、及び2012年12月4日に出願された米国同時継続仮特許出願第61/733,117号の優先権および恩典を主張しており、それらの開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
医療分野において、様々な形態の薬物を患者に投与することが望ましいことが多い。人体に薬物を注入することに関するよく知られた方法には、例えば、カプセル及び錠剤の経口摂取、皮下注射針を介した静脈注射が含まれる。別の例示的な方法によれば、薬物は、鼻または口を介して患者の気道および肺へ吸入される。ぜんそく及び/又は他の呼吸性異常の治療用の薬物のような、これら薬物の特定の物(例えば、気管支拡張剤、コルチコステロイドなど)は、直接的に気道に向けられ得る。他の物は全身治療、即ち気道から肺組織を介して深肺へ及び血流への吸収作用を通じた人体の任意の領域の治療のために吸入され得る。これら薬物のそれぞれは、エアロゾル蒸気または霧、並びに固形物として一般に投与される、流体を含む様々な形態で供給される。吸入可能固形物は一般に、微細な乾燥粉末の形態をとる。これら微細な粉末薬物を気道へ注入する際に患者を助けるために、吸入具のような特殊装置が提供され得る。
【0004】
乾燥粉末薬剤を投与するための様々なタイプの吸入具が知られている。一般に、乾燥粉末薬剤は最初にカプセルに入れられている。粉末をカプセルから放出するために、吸入具は最初に、カプセルの薄膜(フィルム)を貫通する通路を形成しなければならない。これは一般に、カプセルに穴を開ける先のとがった針またはステープルを用いて行われる。特に、カプセルの薄膜は一般に、薄く、比較的低強度の特性を有する材料から作成され、それ故にカプセルに穴を開けることを容易にする。
【0005】
一般に、活性製剤原料をラクトース輸送体粒子と乾式混合することにより作成された20mg~30mgの従来の吸入粉末は、カプセル内に包含される。しかしながら、この粉末の体積(量)は、一般に約1g/cmである粉末の密度に起因して、一般に小さい。体積が小さいので、必要なカプセルのサイズも小さい。例えば、ラクトース混合製品は、サイズ3(即ち、0.30cm)又はより低い(即ち、より小さい)カプセルに容易に収容され得る。しかしながら、実際には、カプセルのサイズについての最終決定は、小さすぎるカプセルが患者の取り扱いを困難にする可能性があるので、体積要件というよりも患者の利便性に大抵関係している。
【0006】
小さい体積の粉末が送達されるべきである場合、カプセルに形成された1つ又は複数の開口を介した粉末の必要な体積流量(即ち、単位時間あたりに送達される粉末の必要な体積)も、非常に少量である。例えば、約1g/cmの粉末密度の場合、総量0.20mgの活性薬物との、25mgの一杯分のラクトース混合物は、約0.025cmの体積を有する。この例において、5秒の吸入に関して、必要な体積流量はほんの0.005cm/秒である。
【0007】
しかしながら、最近、高性能の吸入粉末が、従来のラクトース混合物の代替品として発表された。これら新たな粉末は、薬物の肺に対する極めて効率的な送達により特徴付けられ、それは低密度(即ち、一般的に0.10g/cm未満)を有する粉末を製造することによって一般に達成される。これらのより低い密度の高性能粉末は、患者によって使用される送達装置の新たな需要を生み出す。
【0008】
1つの検討事項は、より大きなカプセルが必要とされる点である。例えば、0.04g/cmの密度を有する25mgの粉末は、0.625cmの体積を有する。この粉末の体積は、少なくともサイズ0(即ち、0.68cm)のカプセルを必要とし、場合によっては、妥当な商業的充填プロセスを可能にするためにサイズ00(即ち、0.95cm)のカプセルまでも必要とする。
【0009】
別の検討事項は、総量の放出が一般的な成人患者の1回呼吸で達成可能とするべき点である。上述したように、従来の乾燥粉末混合物に必要な体積流量は、非常に少量である。これに対して、0.04g/cmの25mgの一杯分の粉末(即ち、0.625cmの粉末)を有するサイズ00(即ち、0.95cm)のカプセルは、5秒の吸入の間に完全に放出されるために0.125cm/秒の体積流量を必要とし、これはラクトース混合物の上述された例に必要なものより25倍大きい。
【0010】
小さい直径の針またはステープルは、カプセルの壁またはドームの崩壊のような過度の材料変形を引き起こさずにカプセルに容易に穴を開けることができる。より高い密度のラクトース混合物に関して、小さい直径の針またはステープルの使用は、問題をもたらさない。特に、これら製品に必要な低い体積流量は、穴の総面積が小さくなることを可能にする。例えば、1mmの直径の丸針により作成された穴は、約0.008cmの面積を有する。上記の第1(即ち、高い密度の粉末)の例において、このサイズの穴から5秒で放出される1g/cmの25mgのラクトース混合物粉末は、約0.625cm/[cms]の体積流束を有する。このレベルの流束は、カプセルベースの吸入具において容易に得られる。しかし、上記の第2(即ち、低い密度の粉末)の例において、1mmの直径の穴から5秒で放出される0.04g/cmの25mgの粉末は、約15.625cm/[cms]の体積流束を必要とする。実際には、この大きさの体積流束は達成できない。これは、穴の面積を増大することにより改善され得るけれども、カプセルを貫通する大きな穴を開けることが、穴が形成される前にカプセルをこれ以上崩壊させない高い力の荷重を必要とする。穴開け機構の鋭さを改善することもいくらか軽減することができるが、これは、使用される金属および形成プロセスの特性により制限される。
【0011】
従って、粉末薬剤をカプセルから放出するために、カプセルに穴を開けるための改善された装置および方法が必要とされている。特に、カプセルが崩壊せずに(つぶれずに)低密度の粉末の総量放出を可能にするための十分な面積の穴をカプセルに作成するための改善された手法が、必要とされている。
【0012】
発明の概要
本明細書に記載された吸入装置の様々な実施形態は、高容量の低密度の吸入粉末が送達されることを可能にする。一実施形態において、吸入装置は、カプセルの最も高い強度の領域(即ち、ドーム)に、最大限の効果が得られるように穴を開けることにより及びドーム状領域の周辺部の方へ穴開け要素を配置することにより、これを達成する。言い換えれば、穴開け要素(例えば、個々の突起物または鋭く尖った先)が、遠く離れて及びそれらの力の大部分がカプセルの円筒形壁に伝達される点に配置され、それ故にドームにできる限り少ない力が印加される。係る設計により、比較的大きな針又はステープルの鋭く尖った先が、カプセルをつぶさずにカプセルのドームに大きな開口作成することを可能にする。特に、吸入装置は、大きな断面積を有する針又はステープルを組み込むことができ、それは、カプセルから1回分の放出に利用可能な総穴面積の大幅な増大という結果になる。
【0013】
一実施形態において、各穿刺孔の中心に関する好適な位置は、ドームの中心軸から離れてドームの半径の40%未満でない所(例えば、約40%から約80%までの間、又は約40%から約60%までの間)に位置するドームの表面上の環状領域内である。更に、1つの係る実施形態において、全ての穿刺孔の好適な総表面積は、カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間、又は単一のドームの総表面積の約3%から約15%までの間である。穿刺孔の位置および穿刺孔の表面積のこれら特定の組み合わせは、穴開けされる際にカプセルがカプセル自体に崩れ落ちることを有利に防ぐことが見出された。更に、係る穿刺孔の表面積により、低密度(即ち、0.10g/cm未満)の粉末の総量が、一般的な成人患者による1回呼吸で摂取されるように、十分な体積流量および達成可能な大きさの体積流束でカプセルから放出されることが可能になることが見出された。
【0014】
一般に、一態様において、本発明の実施形態は、粉末薬剤をカプセルから放出するためにカプセルに穴を開けるための装置を特徴とする。装置は、カプセルを受容するためのチャンバを含む。カプセルは、対向するドーム及びカプセルの壁の半径rにより画定された円筒形壁部分を含む。装置は更に、少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けるための機構を含む。各穴の中心は、0.4r未満でない所に位置する環状穴開け領域内に位置し、全ての穿刺孔の総表面積が、カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある。環状穴開け領域は例えば、約0.4rから約0.8rまでの間、又は約0.4rから約0.6rまでの間に位置することができる。
【0015】
一般に、別の態様において、本発明の実施形態は、粉末薬剤をカプセルから放出するためにカプセルに穴を開けるための方法を特徴とする。方法は、対向するドーム及びカプセルの壁の半径rにより画定された円筒形壁部分をそれ自体が含むカプセルを、チャンバ内に受容することを含む。また、方法は、少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けることも含む。各穴の中心は、0.4r未満でない所に位置する環状穴開け領域内に位置し、全ての穿刺孔の総表面積が、カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある。環状穴開け領域は例えば、約0.4rから約0.8rまでの間、又は約0.4rから約0.6rまでの間に位置することができる。
【0016】
様々な実施形態において、穴開け機構(複数の突出部を含むことができ、穴開けしない位置と穴開け位置との間で移動可能とすることができる)は、単一のドームのみに穴を開けるように構成されている。係る例において、全ての穿刺孔の総表面積は、単一のドームの総表面積の約3%から約15%までの間にある。一実施形態において、カプセルは少なくとも0.50cmの体積を有する。カプセルは、0.10g/cm未満の密度を有する及び/又は活性薬物としてレボドパを含むことができる粉末薬剤を収容することができる。カプセルのドームに穴を開けることにより、粉末薬剤がカプセルから放出される。
【0017】
特定の実施形態において、カプセルの壁は、約0.08mm~約0.12mmの厚さである。カプセル(即ち、対向するドーム及びその円筒形壁部分)は例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はゼラチンのような材料から作成され得る。
【0018】
一実施形態において、装置は更に、チャンバに結合された吸入部分を含む。吸入部分は例えば、粉末薬剤を放出するための少なくとも1つのアパーチャを画定することができる。その部分に関して、チャンバは、カプセルから放出された粉末薬剤を散乱させるための空気をチャンバ内へ導入するための複数のベントを画定する壁を含むことができる。
【0019】
一般に、更に別の態様において、本発明の実施形態は、穴を開けられるカプセルを特徴とする。穴を開けられるカプセルは、対向するドーム(それらの少なくとも1つが少なくとも1つの穴を有するように穴を開けられる)及び半径rにより画定された円筒形壁部分を含む。各穴の中心は0.4r未満でない所に位置する環状領域内に位置し、全ての穿刺孔の総表面積は、カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある。環状領域は例えば、約0.4rから約0.8rまでの間、又は約0.4rから約0.6rまでの間に位置することができる。
【0020】
様々な実施形態において、カプセルの単一のドームのみが穴を開けられる。係る例において、全ての穿刺孔の総表面積は、単一のドームの総表面積の約3%から約15%までの間にある。一実施形態において、穴を開けられるカプセルは、少なくとも0.50cmの体積を有する。穴を開けられるカプセルは、0.10g/cm未満の密度を有する及び/又は活性薬物としてレボドパを含むことができる粉末薬剤を内部に含むことができる。更に、穴を開けられるカプセルの壁は、約0.08mm~約0.12mmの厚さとすることができる。穴を開けられるカプセルの対向するドーム及び円筒形壁部分はそれぞれ、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はゼラチンのような材料から作成され得る。
【0021】
本明細書に開示された本発明の実施形態の利点および特徴と共に、これら及び他の目的は、以下の説明、添付図面および特許請求の範囲の参照を通じて、より明らかになるであろう。更に、理解されるべきは、本明細書に開示された様々な実施形態の特徴は、互いに排他的でなく、様々な組み合わせ及び置換したもので存在することができる。
【0022】
図面において、同様の参照符号は一般に、異なる図面の全体にわたって同じ部品を参照する。また、図面は、必ずしも一律の縮尺に従っておらず、むしろ概して本発明の原理を例示することに重点が置かれている。以下の説明において、本発明の様々な実施形態が、以下の図面に関連して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態による、吸入装置の正面図である。
図2】線2-2に沿った、図1に示された吸入装置の断面図である。
図3】標準的なカプセルサイズの表である。
図4】本発明の一実施形態による、カプセルの側面図である。
図5】本発明の一実施形態による、カプセルのドームの平面図である。
図6】カプセルの穿刺孔の様々な表面積に関して、放出された粉末の割合を示す表である。
図7】カプセルの穿刺孔の様々な表面積に関して、放出された粉末の割合を示すグラフである。
図8】カプセルのドームにおける穿刺孔の中心の様々な位置に関する、カプセルのドームのたわみ(変形)量を示す表である。
図9】カプセルのドームにおける穿刺孔の中心の様々な位置に関する、カプセルのドームのたわみ(変形)量を示すグラフである。
【0024】
説明
様々な実施形態において、本発明は、粉末薬剤をカプセルから放出するために、カプセルに穴を開けるための装置および方法を特徴にしている。特に、カプセルは、低密度(即ち、0.10g/cm未満)の粉末の総量がカプセルから放出され且つ一般的な成人患者により1回呼吸で摂取される(即ち、十分な体積流量および達成可能な大きさの体積流束で放出される)ことを可能にするように、十分なサイズの穿刺孔を有するように特定領域に穴を開けられると共に、同時にカプセルがカプセル自体に崩れ落ちない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による、吸入装置100の正面図を示す。装置100の背面図は実質的に正面図と同じである。図示されたように、装置100は、第1又は下側ケーシング部分120、及び第1のケーシング部分120に着脱可能に結合された第2又は上側ケーシング部分130を含む。上側ケーシング部分130及び下側ケーシング部分120はそれぞれ、患者により当該ケーシングを把持することを容易にするために扁平な領域132及び122をそれぞれ含む。一実施形態において、下側ケーシング部分120は、外側ケーシング126、及びその外側ケーシング126内に移動可能に受容された内側ケーシング124を含む。着脱可能キャップ110が、装置100のユーザ側または吸入端部に設けられる。
【0026】
装置100の好適な材料は、食品医薬品局(「FDA」)が認可したプラスチック、及びアメリカ薬局方(「USP」)が試験したプラスチックを含む。一実施形態において、装置100は、射出成形プロセスを用いて製造され、そのプロセスの詳細は当業者には容易に明らかであろう。
【0027】
図2は、線2-2に沿った図1に示された装置100の断面図である。図2に示されるように、装置100は、吸入部分または放出部分220を含む。吸入部分220は、複数のアパーチャ224を画定する半球領域222を含む。しかしながら、理解されるべきは、本発明は、特定数のアパーチャ224に制限されず、少なくとも1つのアパーチャ224が設けられるように構成され得る。ユーザによる薬剤の吸入を可能にするための吸入部片226が、設けられる。吸入部片226は、ユーザの口を介した吸入のためにマウスピースとして構成され得る。代案として、吸入部片226は、ユーザの鼻を介した吸入のためにノーズピースとして構成され得る。
【0028】
また、装置100は、円形断面の真っ直ぐな壁212により画定された円筒形チャンバ210も含む。チャンバ210は、吸入部分220に結合される近接端部214、及び対向する遠位端部216を有する。特に、チャンバ210の近接端部214は、吸入部分220と流体連絡する。図2に示されるように、チャンバ210は、その内部にカプセル219を受容することができる。複数のベント(通気孔)218が、壁212により画定され、カプセル219から放出される粉末薬剤を散乱させるためにチャンバ210内へ空気を導入するように構成される。理解されるべきは、本発明は特定数のベント218に制限されず、少なくとも1つのベント218が設けられるように構成され得る。カプセル219から放出された粉末は、チャンバ210内で散乱(分散)し、アパーチャ224及び吸入部片226を介して、ユーザにより吸入される。
【0029】
図3は、標準的なカプセルサイズの表300を示す。本発明の一実施形態において、吸入装置100と接続して利用されるカプセル219は、少なくとも0.50cmの体積を有する。言い換えれば、図3の表300に関連して、サイズ1のカプセルが、利用される最小限度のカプセルサイズである。代案として、カプセル219は、少なくともサイズ0(即ち、0.68cm)、サイズ0E(即ち、0.70cm)、サイズ00(即ち、0.95cm)又はサイズ000(即ち、1.37cm)とすることができる。適切なカプセル219が、例えば、ニュージャージー州フォーハム・パークのShionogi, Inc. から入手され得る。
【0030】
一実施形態において、カプセル219は、本明細書において粉末とも呼ばれる粒子を格納または収容する。カプセル219は、当業者に知られた任意の方法で、粉末で充填され得る。例えば、真空充填またはタンピング技術が使用され得る。一実施形態において、カプセル219は、0.10g/cm未満の密度を有する粉末薬剤で充填される。また、カプセル219により収容された粉末薬剤は、例えばレボドパを含む、任意の様々な活性薬物も含むことができる。一実施形態において、カプセル219内に収容された粉末は、少なくとも20mgの質量を有する。別の実施形態において、粉末の質量は少なくとも25mgであり、最大で約30mgまでである。
【0031】
再度、図2を参照すると、吸入装置100は、内部に収容された粉末薬剤をチャンバ内へ放出するために、カプセル219の少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けるために使用される穴開け機構230も含む。図2に示された実施形態において、穴開け機構230は、2つの突起物232を有する実質的にU字形のステープルとして構成される。係る一実施形態において、突起物232のそれぞれは、正方形断面234を有するように構成され、それにより鋭くとがった先と2つの刃先を提供する。代案として、1つ又は複数の直線の針状の器具が、穴開け機構230として使用され得る。吸入装置100に接続して使用するのに適した更なる例示的な穴開け機構は例えば、米国特許第6,732,732号、及び米国特許出願公開第2009/0025721号に詳細に説明されており、それらの開示は、参照により本明細書に全体として組み込まれる。穴開け機構230は、カプセル219に1つ又は代案として複数の穴を(単一又は代案として複数の貫通点を貫いて)開けるように構成され得る。しかしながら、後述されるように、全ての穿刺孔の総表面積は、穿刺孔の実際の数よりも非常に重要である。
【0032】
穴開け機構230は好適には、穴を開けない位置(図2に示されたような)と穴を開ける位置との間で移動可能であるように構成される。穴を開ける位置において、突起物232がカプセル219を突き通す又はそれに穴を開けて、その場所に穴を作成する。一実施形態において、穴を開けない位置において穴開け機構230を付勢する付勢機構が設けられる。図2に示された実施形態において、付勢機構は、穴を開けない位置において実質的にU字形のステープル230を付勢する第1のスプリング242として構成される。
【0033】
図1に関連して上述されたように、装置100の下側ケーシング部分120は、内側ケーシング124及び外側ケーシング126を含む。図2に示されるように、第2のスプリング244が下側ケーシング部分120に配置される。第2のスプリング244は、外側位置において内側ケーシング124を付勢する。第2のスプリング244の圧縮時に、内側ケーシング124は、外側位置から内側位置に移動し、それにより下側ケーシング部分120は上側ケーシング部分130の方へ引き寄せられる。また、第2のスプリング244の圧縮は、第1のスプリング242の圧縮も引き起こし、それにより穴開け機構230が穴開け位置へと上方に移動し、カプセル219を突き通し又はそれに穴を開けてその場所に穴を作成する。圧縮の解放時に、第1及び第2のスプリング242、244はそれらの付勢された状態に戻り、それにより穴開け機構230が穴を開けないその位置に戻され、内側ケーシング124がその外側位置に戻される。特に、圧縮の解放時に、カプセル219は、第1のスプリング242がその付勢状態に戻る際に穴開け機構230の突起物232から剥ぎ取られる。第2のスプリング244は、第1のスプリング242がそのようにしそこなう場合には、穴開け機構230の突起物232からカプセル219を剥ぎ取るためのバックアップとしての役割を果たすことができる。
【0034】
図2に示された吸入装置100の穴開け機構230がカプセル219の単一のドームのみに穴を開けるように構成されているが、他の設計も本発明の範囲内にある。例えば、当業者により理解されるように、穴開け機構230は、カプセル219の双方のドームに穴を開けるようにも設計され得る(又はそのために第2の穴開け機構が利用され得る)。
【0035】
また、図2に示されたように、一対のフランジ252が下側ケーシング部分120に配置される。一対の溝254が上側ケーシング部分130に配置され、フランジ252が溝254内で受容されることにより下側ケーシング部分120及び上側ケーシング部分130が結合され得るようになっている。一実施形態において、下側ケーシング部分120及び上側ケーシング部分130は、摩擦嵌合係合で結合される。摩擦嵌合係合は、図2に示された溝254及びフランジ252の構成を用いて達成され得る。摩擦嵌合係合に関する他の代替の構成が、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0036】
図4は、上述した例示的な吸入装置100を用いて穴を開けられ得るカプセル219の側面図を示す。図示されたように、カプセル219は、第1のドーム404、対向する第2のドーム408、及び半径rにより画定された円筒形壁部分412を含む。円筒形壁部分412は、第1の端部416と第2の端部420との間に延在し、第1のドーム404と第2のドーム408のそれぞれに接触する。
【0037】
図5は、第1のドーム404の平面図(即ち、矢印424の方向において観察された際のドーム404の図)を示す。図示されたように、第1のドーム404は、環状領域428内の2つの穿刺孔504、508を特徴とする。更に後述されるように、環状穴開け領域428は、穴(穿刺孔)504、508が開けられる第1のドーム404の外面432上の好適な領域を表す。特に、一実施形態において、吸入装置100の穴開け機構230は、環状穴開け領域428内の各穴504、508の中心に穴を開けるように構成される。
【0038】
一実施形態において、カプセル219の壁は、約0.08mm~約0.12mmの厚さである。例えば、第1のドーム404、第2のドーム408、及び円筒形壁部分412のそれぞれの壁は、約0.10mmの厚さとすることができる。その壁内では、上述したように、カプセル219は中空とすることができ、粉末薬剤を少なくとも部分的に充填され得る。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はゼラチンのような材料が、カプセル219の比較的薄い壁(即ち、対向するドーム404と408、及び円筒形壁部分412)を形成することができる。
【0039】
図4及び図5に示されるように、環状穴開け領域428は、約0.4rと約0.8rと間の第1のドーム404の外面432に位置している。言い換えれば、各穿刺孔504、508の中心の好適な場所は、ドーム404の中心軸436から離れてドームの半径の約40%と約80%との間に配置されたドーム404の環状領域内にある。一例として、サイズ00(即ち、0.95cm)のカプセル219の場合、環状穴開け領域428は、ドーム404の中心軸436から離れた約0.16cmと約0.32cmとの間に位置する。看取されるように、この領域428においてドーム404に穴を開ける際に、力の大部分は、カプセル219の円筒形壁412に伝達され、それ故にドーム404にできる限り少ない力がかけられる。係る手法は、カプセル219をつぶさずにドーム404に大きな穴504、508を作成するように、穴開け機構230に比較的大きな突起物232を使用することを可能にする。
【0040】
特に、穴開け機構230が、カプセル219の単一のドーム404のみに穴を開けるように構成されている場合(例えば、図2に示された例示的な吸入装置100における場合のように)、全ての穿刺孔504、508の合わせた総表面積は、ドーム404の総表面積の最大で約15%までとすることができる。一例として、各穿刺孔504、508は、ドーム404の総表面積の約7.5%に相当することができ、ひいては合わせた穿刺孔504、508は、ドーム404の総表面積の約15%に相当することができる。これは、カプセル219から1回分の放出に役立つ穴の実質的な総面積である。
【0041】
実際には、テストにおいて、低密度(即ち、0.10g/cm未満)の粉末の総量が、一般的な成人患者によって1回の呼吸でカプセル219から放出されて摂取された(即ち、十分な体積流量および達成可能な大きさの体積流束で放出された)ことが確認され、この場合、全ての穿刺孔の合わせた総表面積は、単一のドーム404の総表面積の約3%~約15%であり、又は換言すれば、全ての穿刺孔の合わせた総表面積は、カプセル219全体の総表面積の約0.5%~約2.2%である。一例として、サイズ00(即ち、0.95cm)のカプセル219に関して、全ての穿刺孔504、508の好適な総表面積は、約0.03cm~約0.14cmである。
【0042】
実験結果およびシミュレーション
1回分の送達の効率に関して全ての穿刺孔の合わせた総表面積の影響は、代表的な低密度の高性能乾燥粉末製剤を用いて試験された。特に、サイズ00(即ち、0.95cm)のカプセルが等量の粉末を充填されて、0.027cm~約0.066cm(即ち、0.0042in~約0.0102in)の範囲にわたる合わせた総表面積を有する穴を形成するように穴を開けられた。約30個のカプセルが、各目標の穴面積の値に関してテストされた。シミュレートされた一呼吸の間に放出された充填粉末の質量の割合が、各穴の面積の形態に関して測定された。特に、この1回分の放出の調査は、一般的な小児患者に関連するシミュレートされた吸入流量および体積性能で実施された。従って、当該調査は、成人集団の最悪の場合を表す(即ち、当該調査は、成人の下の方の5%~10%の標本である)。当該調査の結果は、図6の表600及び図7の対応するグラフ700に示される。
【0043】
図6及び図7に示された結果から、1回呼吸で放出された粉末の平均的な割合は、穿刺孔の面積の増大と共に漸近的に100%に向かって増大すると結論を下された。更に、1回分の放出の変動性は、穿刺孔面積の増大と共に標準偏差(1回分の送達の変動性の尺度)が減少するように、全ての穿刺孔の合わせた総表面積と反比例関係に従う。
【0044】
特に、図6に示された表600で看取され得るように、全ての穿刺孔の合わせた総表面積が、全カプセルの総表面積の約0.5%である場合、平均してカプセルの粉末の48%が、小児患者の1回呼吸で放出された。これは、小児患者の1回呼吸で放出されるべき粉末の許容可能な割合の下界を表す。一般的な成人においては、全ての穿刺孔の合わせた総表面積が全カプセルの総表面積の約0.5%である場合に、更に多くの割合(例えば、本質的に総量)の粉末が放出される。それ故に、穿刺孔の表面積のこの最小値は、成人患者の1回呼吸で放出されるべき粉末の許容可能な割合の下界も表す。
【0045】
1回の患者呼吸で放出される粉末の割合は穿刺孔の面積の増大と共に増加するが、それは、非常に全般的に漸近的にふるまう。看取されるように、全ての穿刺孔の合わせた総表面積が、全カプセルの総表面積の約2.2%より大きくなることは望ましくない。その理由は、そのサイズより大きい穿刺孔を作成することに起因する穴開けの力が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びゼラチンのような典型的なカプセル材料の荷重制限に近づく又は当該荷重制限を超える可能性があるからである。更に、全ての穿刺孔の合わせた総表面積が、全カプセルの総表面積の約2.2%より大きくなることは一般に必要ない。その理由は、図6の表600及び図7のグラフ700から看取され得るように、カプセルから放出される粉末の割合は、100%に全般的に漸近的に近づき、そのサイズを超える穿刺孔面積に関して認められるほどの利益(カプセルから放出される粉末の割合の観点から)は、ほとんどもしくは全くないからである。
【0046】
全カプセルの総表面積の約0.5%~約2.2%のより狭い範囲の合わせた総表面積(例えば、全カプセルの総表面積の約1.6%、約1.8%、約2.0%及び/又は約2.2%の最大値と任意に組み合わせて、全カプセルの総表面積の約0.5%、約0.8%、約1.1%及び/又は約1.3%の最小値を用いる)を有する穿刺孔を使用することも企図され、それは本発明の範囲内にある。
【0047】
カプセルのドームに穿刺孔を配置するための制限要因は、カプセル材料の強度および荷重を受けてたわむ傾向である。カプセル材料を貫通するために、カプセル材料は、穴開けの先端部がカプセルの表面に穴を開ける前に、本質的にその位置を維持する必要がある。カプセル材料が、穴開けを行う前にあまりに大きい度合いでたわむ(例えば、内側に曲がる)場合、カプセルのドームは、先端部がカプセル材料を完全に貫通して穴を形成する前に、つぶれる傾向がある。カプセル材料の有限要素解析(FEA)及び力学的(機械的)性質を用いて、カプセルのドームの半径に沿った異なる位置で荷重する一定の力に対するカプセル材料の反応(応答)が、シミュレートされた。その分析の結果は、図8の表800に示され、図9の対応するグラフに示される。
【0048】
図8及び図9から看取され得るように、当該分析は、穴開け中にカプセル材料に印加されるものと同様の一定の荷重の力に応答して、たわむ程度の変化が、ドームの半径の40%から50%までの間に生じることを予想する。ドーム半径の50%に中心がある穿刺孔からドーム半径の40%に中心がある穿刺孔の方へ移動する場合に、その変化は、小さい曲げ(回復できる又は弾性変形)から塑性変形または回復不能変形への変わり目である。この変わり目は、カプセル材料が荷重をかけられてつぶれ始める際に生じる。ひとたびこの変わり目の点に到達すると、穿刺孔の作成の効率は、カプセルのドームが増大する荷重の下で貫通する代わりにつぶれ続けるので、大幅に下がる。
【0049】
2つの穴開け先端部の様々な幾何学的位置に対する穿刺孔作成の効率を測定する独立した実験室調査が、これらのシミュレーション結果を確認するために行われた。当該調査は、ひとたび穿刺孔の中心が0.4r未満の値に到達すると、ドームの崩壊(つぶれること)のレートが急激に増大したことを示した。ドームの崩壊の特性は、信頼できる1回分の放出が0.4r未満にある貫通位置で生じる見込みがないようであった。
【0050】
従って、上述したように、各穿刺孔の中心の好適な位置は、0.4r未満でない所(幾つかの実施形態では、0.5r未満でない所)に位置するカプセルのドームの環状領域にある。例えば、環状穴開け領域は、約0.4rから約0.6rまでの間、又は約0.4rから約0.8rまでの間に位置することができる。実のところ、実際には、環状穴開け領域は、約0.6r、約0.7r、及び/又は約0.8rの最大値との任意の組み合わせで約0.4r、約0.5r、及び/又は約0.6rの最小値を有するカプセルのドーム上の任意の領域に位置することができる。0.8rより大きい領域においてカプセルのドームに穴を開けるようとすることは、幾つかの理由で望ましくない。例えば、0.8rを超える場合、穴開け機構の突起物がカプセルのドームから滑り落ちる及び/又はカプセルの円筒形壁部分を壊す可能性がある。カプセルの円筒形壁部分を壊すことは、カプセルの穴をあまりにも大きいままにし、及び/又はカプセルの一部がバラバラになって、(場合によっては)患者により吸引される可能性がある。0.8rより大きい領域においてカプセルのドームに穴を開けるようとすることは、カプセルに側面荷重も生成し、それにより吸入具のチャンバ内でカプセルを有害に片寄らせる可能性もある。
【0051】
例示的な使用方法
吸入装置100の例示的な使用方法において、ユーザ(例えば、患者)は、粉末薬剤を包含するカプセル219を円筒形チャンバ210内に配置する。ユーザが吸入装置100を押し縮める場合、穴開け機構230がカプセル219の方へ移動し、それによりカプセル219に穴を開け、粉末薬剤のチャンバ210への放出をもたらす。チャンバ210への放出後、粉末薬剤が、アパーチャ224及び吸入部片226を介して、ユーザにより吸入される。留意すべきは、吸入部片226は、マウスピース又はノーズピースとして構成され得る。その後の使用に関して、ユーザは、粉末薬剤の新たな供給物を包含する別のカプセル219と空のカプセル219を単に交換するだけである。
【0052】
本発明の特定の実施形態が説明された。当業者には明らかなように、本明細書に開示された概念を組み込む他の実施形態が、本発明の思想および範囲から逸脱せずに使用され得る。従って、説明された実施形態は、あらゆる点で、制限ではなくて単なる例示と考えられるべきである。
【0053】
以下においては、本発明の種々の構成要件の組み合わせからなる例示的な実施形態を示す。
1.粉末薬剤をカプセルから放出するために前記カプセルに穴を開けるための装置であって、
対向するドーム、及び前記カプセルの壁の半径rにより画定された円筒形壁部分およびを含む前記カプセルを受容するためのチャンバと、
少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けるための機構であって、各穴の中心が、0.4r未満でない所に位置する環状穴開け領域内に位置する、機構とを含み、
全ての穿刺孔の総表面積が、前記カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある、装置。
2.前記環状穴開け領域が、約0.4rから約0.8rまでの間に位置する、上記1に記載の装置。
3.前記機構が、単一のドームのみに穴を開けるように構成されている、上記1に記載の装置。
4.前記全ての穿刺孔の総表面積が、前記単一のドームの総表面積の約3%から約15%までの間にある、上記3に記載の装置。
5.前記カプセルが少なくとも0.50cmの体積を有する、上記1に記載の装置。
6.前記カプセルが、活性薬物としてレボドパを含む粉末薬剤を収容する、上記1に記載の装置。
7.前記カプセルが、0.10g/cm未満の密度を有する粉末薬剤を収容する、上記1に記載の装置。
8.前記カプセルの外面が、約0.08mm~約0.12mmの厚さからなる、上記1に記載の装置。
9.前記対向するドーム及び前記円筒形壁部分がそれぞれ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びゼラチンからなるグループから選択された材料からなる、上記1に記載の装置。
10.前記チャンバに結合された吸入部分を更に含み、前記吸入部分が、前記粉末薬剤を放出するための少なくとも1つのアパーチャを画定する、上記1に記載の装置。
11.前記チャンバが、前記カプセルから放出された前記粉末薬剤を散乱させるための空気を前記チャンバ内へ導入するための複数のベントを画定する壁を含む、上記1に記載の装置。
12.前記少なくとも1つのドームに前記少なくとも1つの穴を開けるための前記機構が、複数の突出部を含む、上記1に記載の装置。
13.前記少なくとも1つのドームに前記少なくとも1つの穴を開けるための前記機構が、穴開けしない位置と穴開け位置との間で移動可能である、上記1に記載の装置。
14.穴を開けられるカプセルであって、
対向するドーム及び半径rにより画定された円筒形壁部分を含み、少なくとも1つのドームが少なくとも1つの穴を有するように穴を開けられ、各穴の中心が0.4r未満でない所に位置する環状領域内に位置し、
全ての穿刺孔の総表面積が、前記カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある、穴を開けられるカプセル。
15.単一のドームのみが穴を開けられる、上記14に記載の穴を開けられるカプセル。
16.前記全ての穿刺孔の総表面積が、前記単一のドームの総表面積の約3%から約15%までの間にある、上記15に記載の穴を開けられるカプセル。
17.前記カプセルが少なくとも0.50cmの体積を有する、上記14に記載の穴を開けられるカプセル。
18.活性薬物としてレボドパを含む粉末薬剤を内部に更に含む、上記14に記載の穴を開けられるカプセル。
19.0.10g/cm未満の密度を有する粉末薬剤を内部に更に含む、上記14に記載の穴を開けられるカプセル。
20.前記カプセルの外面が、約0.08mm~約0.12mmの厚さからなる、上記14に記載の穴を開けられるカプセル。
21.前記対向するドーム及び前記円筒形壁部分がそれぞれ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びゼラチンからなるグループから選択された材料からなる、上記14に記載の穴を開けられるカプセル。
22.粉末薬剤をカプセルから放出するために前記カプセルに穴を開けるための方法であって、
対向するドーム、及び前記カプセルの壁の半径rにより画定された円筒形壁部分を含む前記カプセルを、チャンバ内に受容し、
少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開け、各穴の中心が、0.4r未満でない所に位置する環状穴開け領域内に位置し、
全ての穿刺孔の総表面積が、前記カプセルの総表面積の約0.5%から約2.2%までの間にある、方法。
23.前記少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けることが、単一のドームのみに穴を開けることを含む、請求項22に記載の方法。
24.前記全ての穿刺孔の総表面積が、前記単一のドームの総表面積の約3%から約15%までの間にある、上記23に記載の方法。
25.前記カプセルが少なくとも0.50cmの体積を有する、上記22に記載の方法。
26.前記少なくとも1つのドームに少なくとも1つの穴を開けることにより、前記粉末薬剤が前記カプセルから放出される、上記22に記載の方法。
27.前記粉末薬剤が、活性薬物としてレボドパを含む、上記22に記載の方法。
28.前記粉末薬剤が、0.10g/cm未満の密度からなる、上記22に記載の方法。
29.前記カプセルの外面が、約0.08mm~約0.12mmの厚さからなる、上記22に記載の方法。
30.前記対向するドーム及び前記円筒形壁部分がそれぞれ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びゼラチンからなるグループから選択された材料からなる、上記22に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9