(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005703
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/12 20060101AFI20240110BHJP
A01D 57/22 20060101ALI20240110BHJP
A01D 63/02 20060101ALI20240110BHJP
A01D 63/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A01D69/12 Z
A01D57/22 Z
A01D63/02
A01D63/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106008
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】種市 遥香
(72)【発明者】
【氏名】折坂 康介
【テーマコード(参考)】
2B076
2B081
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076FA04
2B076FB02
2B081AA01
2B081BB01
2B081CC01
2B081DB11
2B081DC02
2B081DC32
2B081DC45
(57)【要約】
【課題】第二引起し装置に潤滑油を容易に注油することが可能なコンバインが要望されている。
【解決手段】コンバインは、植立穀稈を刈り取る刈取部2を備えている。刈取部2は、機体左右方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第一引起し爪を有する複数の第一引起し装置10と、第一引起し装置10よりも前側に設けられ、機体前後方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第二引起し爪29を有する第二引起し装置11と、を有している。コンバインは、第二引起し装置11に自動的に潤滑油を注油する注油装置Aを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立穀稈を刈り取る刈取部を備えているコンバインであって、
前記刈取部は、
機体左右方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第一引起し爪を有する複数の第一引起し装置と、
前記第一引起し装置よりも前側に設けられ、機体前後方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第二引起し爪を有する第二引起し装置と、を有し、
前記第二引起し装置に自動的に潤滑油を注油する注油装置を備えているコンバイン。
【請求項2】
前記第二引起し装置は、
機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な上回転体と、
機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な下回転体と、
前記上回転体及び前記下回転体に巻き付けられる引起しチェーンと、
前記引起しチェーンに起伏可能に取り付けられる多数の前記第二引起し爪と、
機体左右方向に沿って延びる揺動軸心周りで揺動可能なように、前記引起しチェーンにおける引起し経路側部分の内周部に沿って設けられ、前記第二引起し爪を前記引起しチェーンに対して起立する起立姿勢に維持するレール部材と、
左右の側板を有し、前記上回転体、前記下回転体、前記引起しチェーン及び前記レール部材を収容する引起しケースと、を有し、
前記注油装置は、前記第二引起し装置に潤滑油を送るための注油ホースを有し、
前記側板に、前記注油ホースが差し込まれる差し込み孔が形成され、
前記差し込み孔は、前記側板における前記引起しチェーンに対して内周側であって前記レール部材の揺動範囲を避けた位置に形成されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記引起しケースは、左側の前記側板と右側の前記側板との間に設けられる軸部材を有し、
前記差し込み孔は、前記側板における前記軸部材を避けた位置に形成されている請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記レール部材は、前記引起しチェーンにおける引起し経路側部分とは反対側に向かって開口し、前記レール部材の延び方向に沿って延びる溝部を有し、
前記注油ホースは、前記溝部の内部を通されている請求項2又は3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記レール部材は、前記溝部の両側壁に亘って設けられる補強部材を有し、
前記補強部材は、前記注油ホースを案内する部材を兼ねている請求項4に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記第二引起し装置は、前記レール部材を揺動操作するためのカム部材を有し、
前記レール部材は、前記揺動軸心方向に沿って並ぶように設けられる複数の前記溝部を有し、
前記カム部材は、複数の前記溝部のうち一の溝部に入り込んでおり、
前記注油ホースは、複数の前記溝部のうち前記カム部材が入り込んでいる溝部とは別の溝部の内部を通されている請求項4に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記注油装置は、前記第二引起し装置に潤滑油を送るための注油ホースを有し、
前記注油ホースは、前記第一引起し装置から前方に向かって延びるように配策され、
前記第一引起し装置の前方に、前記注油ホースを案内する案内部材が設けられている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記第一引起し装置の動力を前記第二引起し装置に伝達する伝動機構を有し、前記第一引起し装置と前記第二引起し装置とに亘って設けられる伝動ケースを備え、
前記注油ホースは、前記伝動ケースに沿って配策されている請求項7に記載のコンバイン。
【請求項9】
前記伝動ケースは、前記第一引起し装置の前面部と、前記第二引起し装置における前記第一引起し装置の引起し経路側の横側面部とに亘って設けられ、
前記注油ホースは、前記伝動ケースにおける前記第一引起し装置の引起し経路とは反対側の部分に沿って配策されている請求項8に記載のコンバイン。
【請求項10】
前記第一引起し装置の前面部に、前記注油ホースを通すための開口が形成されている請求項8又は9に記載のコンバイン。
【請求項11】
前記伝動ケースにおける前記第一引起し装置側の端部は、前記開口内に差し込まれ、
前記開口における前記注油ホースが通る部分は、前記伝動ケースに対して前記第一引起し装置の引起し経路とは反対側に位置している請求項10に記載のコンバイン。
【請求項12】
前記注油ホースにおける前記第一引起し装置の内部に位置する部分に、金属製の中継管が設けられている請求項7から9の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項13】
前記第二引起し装置は、
機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な上回転体と、
機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な下回転体と、
前記上回転体及び前記下回転体に巻き付けられる引起しチェーンと、
前記引起しチェーンに起伏可能に取り付けられる多数の前記第二引起し爪と、
機体左右方向に沿って延びる揺動軸心周りで揺動可能なように、前記引起しチェーンにおける引起し経路側部分の内周部に沿って設けられ、前記第二引起し爪を前記引起しチェーンに対して起立する起立姿勢に維持するレール部材と、
前記上回転体、前記下回転体、前記引起しチェーン及び前記レール部材を収容する引起しケースと、を有し、
前記注油装置は、
前記第二引起し装置に潤滑油を送るための注油ホースと、
前記引起しケースの内部に設けられ、前記注油ホースからの潤滑油を注油するノズルと、を有し、
前記ノズルは、前記引起しチェーンに対して内周側であって前記レール部材の揺動範囲を避けた位置に配置されている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項14】
前記ノズルは、前記レール部材とは反対側の方向に潤滑油を注油するように構成されている請求項13に記載のコンバイン。
【請求項15】
前記ノズルは、前記引起しチェーンに潤滑油を直接注油するように構成されている請求項13又は14に記載のコンバイン。
【請求項16】
前記ノズルは、前記引起しチェーンの内周部に潤滑油を直接注油するように構成されている請求項15に記載のコンバイン。
【請求項17】
前記ノズルは、前記引起しチェーンにおける戻り経路側部分の内周部に、潤滑油を直接注油するように構成されている請求項16に記載のコンバイン。
【請求項18】
前記第二引起し装置は、戻り経路において、前記第二引起し爪が前記引起しチェーンに対して倒伏する倒伏姿勢となるように構成され、
前記引起しケースの内部に、前記ノズルを支持するステーが設けられ、
前記ステーは、前記引起しチェーンにおける戻り経路側部分の内周部と前記ノズルとの間に位置し、前記倒伏姿勢の前記第二引起し爪が接触する接触部を有し、
前記引起しチェーンにおける戻り経路において、前記倒伏姿勢の前記第二引起し爪が前記接触部に接触することにより、前記第二引起し爪が一時的に前記起立姿勢に姿勢変更される請求項17に記載のコンバイン。
【請求項19】
前記注油装置は、前記第二引起し装置とは別の他の装置にも自動的に潤滑油を注油するように構成され、
前記注油装置は、
前記第二引起し装置に潤滑油を供給する第一供給油路と、
前記他の装置に潤滑油を供給する第二供給油路と、を有している請求項1に記載のコンバイン。
【請求項20】
前記刈取部は、複数の前記第二引起し装置を有し、
前記第一供給油路は、
潤滑油の流れを分岐させる分岐部と、
前記分岐部に接続され、前記分岐部によって分岐された潤滑油を前記第二引起し装置に供給する複数の分岐油路と、を有し、
複数の前記分岐油路の容積は、同一又は略同一である請求項19に記載のコンバイン。
【請求項21】
前記刈取部は、植立穀稈を切断する刈刃を有し、
前記注油装置は、前記他の装置としての前記刈刃に自動的に潤滑油を注油するように構成され、
前記第二供給油路は、前記他の装置としての前記刈刃に潤滑油を供給するように構成され、
前記第一供給油路は、前記第二供給油路から分岐している請求項19又は20に記載のコンバイン。
【請求項22】
前記刈取部は、刈取穀稈を搬送する搬送装置を有し、
前記注油装置は、前記他の装置としての前記搬送装置に自動的に潤滑油を注油するように構成され、
前記第二供給油路は、前記他の装置としての前記搬送装置に潤滑油を供給するように構成され、
前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、
前記第二供給油路は、前記搬送装置に向けて潤滑油を圧送する第二油圧ポンプを有し、
前記第一油圧ポンプと前記第二油圧ポンプとは、同時に駆動するように構成されている請求項19又は20に記載のコンバイン。
【請求項23】
前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、
前記第一油圧ポンプを駆動操作するための操作部を備え、
前記操作部は、シーソースイッチである請求項19又は20に記載のコンバイン。
【請求項24】
前記注油装置は、潤滑油を貯留する注油タンクを有し、
前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて前記注油タンク内の潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、
前記第二供給油路は、前記他の装置に向けて前記注油タンク内の潤滑油を圧送する第二油圧ポンプを有し、
前記第一供給油路及び前記第二供給油路は、夫々、前記注油タンクに直接的に接続されている請求項19又は20に記載のコンバイン。
【請求項25】
前記刈取部は、
植立穀稈を切断する刈刃と、
刈取穀稈を搬送する搬送装置と、を有し、
前記注油装置は、前記他の装置としての前記刈刃及び前記搬送装置に自動的に潤滑油を注油するように構成され、
前記第二供給油路は、前記他の装置としての前記刈刃及び前記搬送装置に潤滑油を供給するように構成され、
前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、
前記第二供給油路は、前記刈刃及び前記搬送装置に向けて潤滑油を圧送する第二油圧ポンプを有し、
前記第一油圧ポンプを駆動操作するための操作部を備えている請求項19又は20に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインとして、例えば、特許文献1に記載のコンバインが知られている。従来のコンバインは、植立穀稈を刈り取る刈取部(文献では「刈取部〔3〕」)を備えている。刈取部は、機体左右方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第一引起し爪(文献では「横引起爪〔25〕」)を有する複数の第一引起し装置(文献では「横引起装置〔16〕」)と、第一引起し装置よりも前側に設けられ、機体前後方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第二引起し爪(文献では「縦引起爪〔32〕」)を有する第二引起し装置(文献では「縦引起装置〔17〕」)と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のコンバインでは、第二引起し装置への潤滑油の注油は、作業者が手差しで行う必要がある。このため、第二引起し装置への潤滑油の注油に手間がかかる。
【0005】
上記状況に鑑み、第二引起し装置に潤滑油を容易に注油することが可能なコンバインが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、植立穀稈を刈り取る刈取部を備えているコンバインであって、前記刈取部は、機体左右方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第一引起し爪を有する複数の第一引起し装置と、前記第一引起し装置よりも前側に設けられ、機体前後方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する多数の第二引起し爪を有する第二引起し装置と、を有し、前記第二引起し装置に自動的に潤滑油を注油する注油装置を備えていることにある。
【0007】
本特徴構成によれば、第二引起し装置への潤滑油の注油が注油装置によって自動的に行われることになる。これにより、第二引起し装置に潤滑油を容易に注油することができる。
【0008】
さらに、本発明において、前記第二引起し装置は、機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な上回転体と、機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な下回転体と、前記上回転体及び前記下回転体に巻き付けられる引起しチェーンと、前記引起しチェーンに起伏可能に取り付けられる多数の前記第二引起し爪と、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心周りで揺動可能なように、前記引起しチェーンにおける引起し経路側部分の内周部に沿って設けられ、前記第二引起し爪を前記引起しチェーンに対して起立する起立姿勢に維持するレール部材と、左右の側板を有し、前記上回転体、前記下回転体、前記引起しチェーン及び前記レール部材を収容する引起しケースと、を有し、前記注油装置は、前記第二引起し装置に潤滑油を送るための注油ホースを有し、前記側板に、前記注油ホースが差し込まれる差し込み孔が形成され、前記差し込み孔は、前記側板における前記引起しチェーンに対して内周側であって前記レール部材の揺動範囲を避けた位置に形成されていると好適である。
【0009】
ここで、仮に、差し込み孔が側板における引起しチェーンに対して内周側であってレール部材の揺動範囲内に形成されていると、レール部材が揺動した際に、レール部材と注油ホースにおける差し込み孔に差し込まれている部分とが、互いに接触して損傷する虞がある。しかし、本特徴構成によれば、差し込み孔が側板における引起しチェーンに対して内周側であってレール部材の揺動範囲を避けた位置に形成されているため、このような不都合を回避することができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記引起しケースは、左側の前記側板と右側の前記側板との間に設けられる軸部材を有し、前記差し込み孔は、前記側板における前記軸部材を避けた位置に形成されていると好適である。
【0011】
本特徴構成によれば、差し込み孔を側板に形成する際に、軸部材が邪魔になることがない。
【0012】
さらに、本発明において、前記レール部材は、前記引起しチェーンにおける引起し経路側部分とは反対側に向かって開口し、前記レール部材の延び方向に沿って延びる溝部を有し、前記注油ホースは、前記溝部の内部を通されていると好適である。
【0013】
本特徴構成によれば、注油ホースを通すためのスペースとして、溝部の内部を利用することができる。
【0014】
さらに、本発明において、前記レール部材は、前記溝部の両側壁に亘って設けられる補強部材を有し、前記補強部材は、前記注油ホースを案内する部材を兼ねていると好適である。
【0015】
本特徴構成によれば、注油ホースを案内する部材として、補強部材を利用することができる。
【0016】
さらに、本発明において、前記第二引起し装置は、前記レール部材を揺動操作するためのカム部材を有し、前記レール部材は、前記揺動軸心方向に沿って並ぶように設けられる複数の前記溝部を有し、前記カム部材は、複数の前記溝部のうち一の溝部に入り込んでおり、前記注油ホースは、複数の前記溝部のうち前記カム部材が入り込んでいる溝部とは別の溝部の内部を通されていると好適である。
【0017】
本特徴構成によれば、カム部材の邪魔にならないように、注油ホースを溝部の内部に通すことができる。
【0018】
さらに、本発明において、前記注油装置は、前記第二引起し装置に潤滑油を送るための注油ホースを有し、前記注油ホースは、前記第一引起し装置から前方に向かって延びるように配策され、前記第一引起し装置の前方に、前記注油ホースを案内する案内部材が設けられていると好適である。
【0019】
本特徴構成によれば、注油ホースが第一引起し装置から前方に向かって延びるように配策された状態で、案内部材によって案内されていることになる。これにより、注油ホースを安定した状態で配策することができる。
【0020】
さらに、本発明において、前記第一引起し装置の動力を前記第二引起し装置に伝達する伝動機構を有し、前記第一引起し装置と前記第二引起し装置とに亘って設けられる伝動ケースを備え、前記注油ホースは、前記伝動ケースに沿って配策されていると好適である。
【0021】
本特徴構成によれば、注油ホースを伝動ケースに支持させ易くなる。また、注油ホースを、比較的剛性の高い部材である伝動ケースに支持させることにより、注油ホースをしっかりと支持することができる。
【0022】
さらに、本発明において、前記伝動ケースは、前記第一引起し装置の前面部と、前記第二引起し装置における前記第一引起し装置の引起し経路側の横側面部とに亘って設けられ、前記注油ホースは、前記伝動ケースにおける前記第一引起し装置の引起し経路とは反対側の部分に沿って配策されていると好適である。
【0023】
本特徴構成によれば、注油ホースが伝動ケースに対して第一引起し装置の引起し経路側に位置していないことになる。これにより、第一引起し装置の引起し経路を移動する植立穀稈が、注油ホースに接触しないようにすることができる。
【0024】
さらに、本発明において、前記第一引起し装置の前面部に、前記注油ホースを通すための開口が形成されていると好適である。
【0025】
本特徴構成によれば、注油ホースを開口に通すことにより、第一引起し装置を迂回しなくても、注油ホースを第一引起し装置から前方に向かって延びるように配策することができる。
【0026】
さらに、本発明において、前記伝動ケースにおける前記第一引起し装置側の端部は、前記開口内に差し込まれ、前記開口における前記注油ホースが通る部分は、前記伝動ケースに対して前記第一引起し装置の引起し経路とは反対側に位置していると好適である。
【0027】
本特徴構成によれば、伝動ケースにおける第一引起し装置側の端部を差し込むための開口と、注油ホースを通すための開口とが、一つの開口によって構成されていることになる。これにより、第一引起し装置の前面部に、二つの開口を別々に形成する構成よりも、構成の簡素化を図ることができる。また、注油ホースが伝動ケースに対して第一引起し装置の引起し経路側に位置していないことになる。これにより、第一引起し装置の引起し経路を移動する植立穀稈が、注油ホースに接触しないようにすることができる。
【0028】
さらに、本発明において、前記注油ホースにおける前記第一引起し装置の内部に位置する部分に、金属製の中継管が設けられていると好適である。
【0029】
本特徴構成によれば、金属製の中継管によって、注油ホースの組み付け誤差や注油ホースのぶれを低減することができる。
【0030】
さらに、本発明において、前記第二引起し装置は、機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な上回転体と、機体左右方向に沿って延びる回転軸心周りで回転可能な下回転体と、前記上回転体及び前記下回転体に巻き付けられる引起しチェーンと、前記引起しチェーンに起伏可能に取り付けられる多数の前記第二引起し爪と、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心周りで揺動可能なように、前記引起しチェーンにおける引起し経路側部分の内周部に沿って設けられ、前記第二引起し爪を前記引起しチェーンに対して起立する起立姿勢に維持するレール部材と、前記上回転体、前記下回転体、前記引起しチェーン及び前記レール部材を収容する引起しケースと、を有し、前記注油装置は、前記第二引起し装置に潤滑油を送るための注油ホースと、前記引起しケースの内部に設けられ、前記注油ホースからの潤滑油を注油するノズルと、を有し、前記ノズルは、前記引起しチェーンに対して内周側であって前記レール部材の揺動範囲を避けた位置に配置されていると好適である。
【0031】
ここで、仮に、ノズルが引起しチェーンに対して内周側であってレール部材の揺動範囲内に配置されていると、レール部材が揺動した際に、レール部材とノズルとが、互いに接触して損傷する虞がある。しかし、本特徴構成によれば、ノズルが引起しチェーンに対して内周側であってレール部材の揺動範囲を避けた位置に配置されているため、このような不都合を回避することができる。
【0032】
さらに、本発明において、前記ノズルは、前記レール部材とは反対側の方向に潤滑油を注油するように構成されていると好適である。
【0033】
本特徴構成によれば、ノズルから注油された潤滑油がレール部材にかからないようにすることができる。
【0034】
さらに、本発明において、前記ノズルは、前記引起しチェーンに潤滑油を直接注油するように構成されていると好適である。
【0035】
本特徴構成によれば、ノズルから注油された潤滑油が引起しチェーンに直接注油されることになる。これにより、引起しチェーンを良好に潤滑することができる。
【0036】
さらに、本発明において、前記ノズルは、前記引起しチェーンの内周部に潤滑油を直接注油するように構成されていると好適である。
【0037】
本特徴構成によれば、ノズルから注油された潤滑油が引起しチェーンの内周部に直接注油されることになる。これにより、第二引起し爪が注油の邪魔になり難いと共に、ノズルから注油された潤滑油が、引起しチェーンの遠心力によって、引起しチェーンの内周部から外周部まで浸透し易くなる。
【0038】
さらに、本発明において、前記ノズルは、前記引起しチェーンにおける戻り経路側部分の内周部に、潤滑油を直接注油するように構成されていると好適である。
【0039】
本特徴構成によれば、ノズルから注油された潤滑油が引起しチェーンにおける戻り経路側部分の内周部に直接注油されることになる。これにより、第二引起し爪が注油の邪魔になり難いと共に、ノズルから注油された潤滑油が、引起しチェーンの遠心力によって、引起しチェーンの内周部から外周部に向けて浸透し易くなる。さらに、ノズルから注油された潤滑油がレール部材にかからないようにすることができる。
【0040】
さらに、本発明において、前記第二引起し装置は、戻り経路において、前記第二引起し爪が前記引起しチェーンに対して倒伏する倒伏姿勢となるように構成され、前記引起しケースの内部に、前記ノズルを支持するステーが設けられ、前記ステーは、前記引起しチェーンにおける戻り経路側部分の内周部と前記ノズルとの間に位置し、前記倒伏姿勢の前記第二引起し爪が接触する接触部を有し、前記引起しチェーンにおける戻り経路において、前記倒伏姿勢の前記第二引起し爪が前記接触部に接触することにより、前記第二引起し爪が一時的に前記起立姿勢に姿勢変更されると好適である。
【0041】
ここで、引起しチェーンにおける戻り経路において、倒伏姿勢の第二引起し爪がノズルの近傍を移動する際、第二引起し爪がノズルに衝突する虞がある。しかし、本特徴構成によれば、引起しチェーンにおける戻り経路において、倒伏姿勢の第二引起し爪が接触部に接触することにより、第二引起し爪が一時的に起立姿勢に姿勢変更されるため、このような不都合を回避することができる。
【0042】
さらに、本発明において、前記注油装置は、前記第二引起し装置とは別の他の装置にも自動的に潤滑油を注油するように構成され、前記注油装置は、前記第二引起し装置に潤滑油を供給する第一供給油路と、前記他の装置に潤滑油を供給する第二供給油路と、を有していると好適である。
【0043】
本特徴構成によれば、他の装置への潤滑油の注油が注油装置によって自動的に行われることになる。これにより、他の装置に潤滑油を容易に注油することができる。また、本特徴構成によれば、第一供給油路及び第二供給油路が別々に構成されていることになる。これにより、第一供給油路及び第二供給油路において、一方に不具合が発生した場合に、他方がその影響を受け難い。また、第一供給油路と第二供給油路とで異なる仕様を採用することが容易である。
【0044】
さらに、本発明において、前記刈取部は、複数の前記第二引起し装置を有し、前記第一供給油路は、潤滑油の流れを分岐させる分岐部と、前記分岐部に接続され、前記分岐部によって分岐された潤滑油を前記第二引起し装置に供給する複数の分岐油路と、を有し、複数の前記分岐油路の容積は、同一又は略同一であると好適である。
【0045】
本特徴構成によれば、複数の分岐油路を流れる潤滑油の量が同一又は略同一になる。これにより、複数の第二引起し装置に対する潤滑油の供給量を揃えることができる。
【0046】
さらに、本発明において、前記刈取部は、植立穀稈を切断する刈刃を有し、前記注油装置は、前記他の装置としての前記刈刃に自動的に潤滑油を注油するように構成され、前記第二供給油路は、前記他の装置としての前記刈刃に潤滑油を供給するように構成され、前記第一供給油路は、前記第二供給油路から分岐していると好適である。
【0047】
本特徴構成によれば、刈刃への潤滑油の注油が注油装置によって自動的に行われることになる。これにより、刈刃に潤滑油を容易に注油することができる。また、第一供給油路を第二供給油路から分岐させることにより、第一供給油路と第二供給油路とを部分的に共通化することができる。
【0048】
さらに、本発明において、前記刈取部は、刈取穀稈を搬送する搬送装置を有し、前記注油装置は、前記他の装置としての前記搬送装置に自動的に潤滑油を注油するように構成され、前記第二供給油路は、前記他の装置としての前記搬送装置に潤滑油を供給するように構成され、前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、前記第二供給油路は、前記搬送装置に向けて潤滑油を圧送する第二油圧ポンプを有し、前記第一油圧ポンプと前記第二油圧ポンプとは、同時に駆動するように構成されていると好適である。
【0049】
本特徴構成によれば、搬送装置への潤滑油の注油が注油装置によって自動的に行われることになる。これにより、搬送装置に潤滑油を容易に注油することができる。また、第一油圧ポンプと第二油圧ポンプとが同時に駆動されることにより、第二引起し装置への潤滑油の注油と搬送装置への潤滑油の注油とが同時に行われることになる。これにより、第二引起し装置への潤滑油の注油及び搬送装置への潤滑油の注油を効率良く行うことができる。
【0050】
さらに、本発明において、前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、前記第一油圧ポンプを駆動操作するための操作部を備え、前記操作部は、シーソースイッチであると好適である。
【0051】
本特徴構成によれば、操作部を簡易に構成することができる。
【0052】
さらに、本発明において、前記注油装置は、潤滑油を貯留する注油タンクを有し、前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて前記注油タンク内の潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、前記第二供給油路は、前記他の装置に向けて前記注油タンク内の潤滑油を圧送する第二油圧ポンプを有し、前記第一供給油路及び前記第二供給油路は、夫々、前記注油タンクに直接的に接続されていると好適である。
【0053】
本特徴構成によれば、第一供給油路及び第二供給油路を、夫々、注油タンクに直接的に接続することにより、第二供給油路及び第二供給油路を互いに独立して構成することができる。
【0054】
さらに、本発明において、前記刈取部は、植立穀稈を切断する刈刃と、刈取穀稈を搬送する搬送装置と、を有し、前記注油装置は、前記他の装置としての前記刈刃及び前記搬送装置に自動的に潤滑油を注油するように構成され、前記第二供給油路は、前記他の装置としての前記刈刃及び前記搬送装置に潤滑油を供給するように構成され、前記第一供給油路は、前記第二引起し装置に向けて潤滑油を圧送する第一油圧ポンプを有し、前記第二供給油路は、前記刈刃及び前記搬送装置に向けて潤滑油を圧送する第二油圧ポンプを有し、前記第一油圧ポンプを駆動操作するための操作部を備えていると好適である。
【0055】
本特徴構成によれば、第二供給油路によって刈刃及び搬送装置に潤滑油が供給されることになる。これにより、刈刃と搬送装置とで第二供給油路を共通化することができる。また、第一供給油路によって第二引起し装置に潤滑油が供給されることになる。これにより、刈刃及び搬送装置とは独立して、第二引起し装置に潤滑油を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図4】縦引起し装置の内部構造を示す左側面図である。
【
図5】レール部材及び注油ホースを示す背面図である。
【
図7】縦引起し装置の内部構造を示す左側面図であって、レール部材が引起しチェーンにおける引起し経路側部分の内周部から離間した状態を示す左側面図である。
【
図8】縦引起し装置に潤滑油を注油する構成を示す図である。
【
図9】第一の横引起し装置及び第一の縦引起し装置を示す平面図である。
【
図10】第一の横引起し装置及び第一の縦引起し装置を示す正面図である。
【
図14】第一の別実施形態に係る注油装置を示す図である。
【
図15】第二の別実施形態に係る注油装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、矢印Fの方向を「機体前側」、矢印Bの方向を「機体後側」、矢印Lの方向を「機体左側」、矢印Rの方向を「機体右側」とする。
【0058】
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、コンバイン(自脱型コンバイン)は、走行機体1と、植立穀稈を刈り取る刈取部2と、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置3と、穀粒を貯留する穀粒貯留タンク4と、穀粒貯留タンク4内の穀粒を排出する穀粒排出装置5と、運転者が搭乗する運転キャビン6と、を備えている。走行機体1は、左右のクローラ走行装置7と、機体フレーム8と、を備えている。機体フレーム8は、左右のクローラ走行装置7に支持されている。刈取部2は、走行機体1の前方に配置されている。穀粒貯留タンク4は、脱穀装置3の横隣りに配置されている。
【0059】
〔刈取部〕
図1から
図3に示すように、刈取部2は、植立穀稈を分草する複数(本実施形態では、八つ)の分草具9と、植立穀稈を引き起こす複数(本実施形態では、七つ)の横引起し装置10(本発明に係る「第一引起し装置」に相当)と、横引起し装置10よりも前側に設けられ、植立穀稈を引き起こす複数(本実施形態では、五つ)の縦引起し装置11(本発明に係る「第二引起し装置」に相当)と、植立穀稈を切断する刈刃12と、刈取穀稈を搬送する搬送装置13と、を備えている。本実施形態では、刈取部2は、七条刈りである。刈取部2は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心X1周りで揺動可能に構成されている。刈取部2が揺動軸心X1周りで揺動することにより、刈取部2が刈り取り作業を行なわない非作業位置(上昇位置)と刈り取り作業を行う作業位置(下降位置)とに亘って昇降することになる。
【0060】
図2に示すように、刈取部2は、引起し駆動軸15と、複数(本実施形態では、七つ)の第一伝動ケース16と、複数(本実施形態では、四つ)の穀稈通過部17と、複数(本実施形態では、五つ)の第二伝動ケース18(本発明に係る「伝動ケース」に相当)と、を備えている。
【0061】
ここで、七つの横引起し装置10を、左側から順に、第一から第七の横引起し装置10と称する。五つの縦引起し装置11を、左側から順に、第一から第五の縦引起し装置11と称する。四つの穀稈通過部17を、左側から順に、第一から第四の穀稈通過部17と称する。
【0062】
引起し駆動軸15は、横引起し装置10を駆動するための駆動力が伝達される。引起し駆動軸15は、機体左右方向に沿って延びるように、七つ横引起し装置10(第一伝動ケース16)の上部に亘って設けられている。
【0063】
第一伝動ケース16は、引起し駆動軸15と横引起し装置10とに亘って設けられている。第一伝動ケース16は、引起し駆動軸15の動力を横引起し装置10に伝達する伝動機構(図示省略)を備えている。引起し駆動軸15の動力は、第一伝動ケース16を介して横引起し装置10に伝達されることになる。
【0064】
横引起し装置10は、駆動スプロケット19と、従動ローラ20と、テンションンスプロケット21と、引起しチェーン22と、多数の引起し爪23(本発明に係る「第一引起し爪」に相当)と、引起しケース24と、を備えている。
【0065】
駆動スプロケット19は、第一伝動ケース16の動力が伝達可能なように、第一伝動ケース16に接続されている。テンションンスプロケット21は、引起しチェーン22に張力を付与するように構成されている。引起しチェーン22は、駆動スプロケット19、従動ローラ20及びテンションンスプロケット21に巻き付けられている。引起し爪23は、機体左右方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する。引起し爪23は、引起しチェーン22に起伏可能に取り付けられている。
【0066】
図2には、横引起し装置10における植立穀稈を引き起こす経路(引起し経路)をR1で示し、横引起し装置10における植立穀稈を引き起こさない経路(戻り経路)をR2で示している。横引起し装置10は、引起し経路R1において、引起し爪23が引起しチェーン22に対して起立する起立姿勢となり、戻り経路R2において、引起し爪23が引起しチェーン22に対して倒伏する倒伏姿勢となるように構成されている。
【0067】
引起しケース24は、駆動スプロケット19、従動ローラ20、テンションンスプロケット21及び引起しチェーン22を収容している。引起しケース24は、前カバー25を備えている。
【0068】
第一の穀稈通過部17は、第一の横引起し装置10の引起し経路R1側部分と第二の横引起し装置10の引起し経路R1側部分との間に形成されている。第一の穀稈通過部17を、第一の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈と、第二の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈とが通過することになる。
【0069】
第二の穀稈通過部17は、第二の横引起し装置10の戻り経路R2側部分と第三の横引起し装置10の引起し経路R1側部分との間に形成されている。第二の穀稈通過部17を、第三の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈が通過することになる。
【0070】
第三の穀稈通過部17は、第四の横引起し装置10の引起し経路R1側部分と第五の横引起し装置10の引起し経路R1側部分との間に形成されている。第三の穀稈通過部17を、第四の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈と、第五の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈とが通過することになる。
【0071】
第四の穀稈通過部17は、第六の横引起し装置10の引起し経路R1側部分と第七の横引起し装置10の引起し経路R1側部分との間に形成されている。第四の穀稈通過部17を、第六の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈と、第七の横引起し装置10によって引き起こされる植立穀稈とが通過することになる。
【0072】
第二伝動ケース18は、横引起し装置10と縦引起し装置11とに亘って設けられている。具体的には、第二伝動ケース18は、横引起し装置10の前面部と、縦引起し装置11における横引起し装置10の引起し経路R1側に位置する横側面部とに亘って設けられている。第二伝動ケース18は、横引起し装置10の動力を縦引起し装置11に伝達する伝動機構(図示省略)を備えている。横引起し装置10の動力は、第二伝動ケース18を介して縦引起し装置11に伝達されることになる。前カバー25には、開口25aが形成されている。第二伝動ケース18における横引起し装置10側の端部は、開口25a内に差し込まれている。
【0073】
〔縦引起し装置〕
図4に示すように、縦引起し装置11は、駆動スプロケット26(本発明に係る「上回転体」に相当)と、テンションンローラ27(本発明に係る「下回転体」に相当)と、引起しチェーン28と、多数の引起し爪29(本発明に係る「第二引起し爪」に相当)と、レール部材30と、引起しケース31と、カム部材32と、を備えている。
【0074】
駆動スプロケット26は、機体左右方向に沿って延びる回転軸心X2周りで回転可能なように、引起しケース31の上部に支持されている。駆動スプロケット26は、第二伝動ケース18の動力が伝達可能なように、第二伝動ケース18に接続されている。駆動スプロケット26には、駆動スプロケット19の動力が第二伝動ケース18を介して伝達されることになる。テンションンローラ27は、機体左右方向に沿って延びる回転軸心X3周りで回転可能なように、引起しケース31の下部に支持されている。テンションンローラ27は、引起しチェーン28に張力を付与するように構成されている。
【0075】
引起しチェーン28は、駆動スプロケット26及びテンションンローラ27に巻き付けられている。引起し爪29は、機体前後方向に沿う姿勢で上昇して植立穀稈に引起し作用する。引起し爪29は、引起しチェーン28に起伏可能に取り付けられている。
【0076】
図4には、縦引起し装置11における植立穀稈を引き起こす経路(引起し経路)をR3で示し、縦引起し装置11における植立穀稈を引き起こさない経路(戻り経路)をR4で示している。縦引起し装置11は、引起し経路R3において、引起し爪29が引起しチェーン28に対して起立する起立姿勢となり、戻り経路R4において、引起し爪29が引起しチェーン28に対して倒伏する倒伏姿勢となるように構成されている。
【0077】
引起しケース31は、駆動スプロケット26、テンションンローラ27、引起しチェーン28及びレール部材30を収容している。引起しケース31は、左右の側板33を備えている。左側の側板33の上部と右側の側板33の上部との間には、軸部材34が設けられている。
【0078】
レール部材30は、引起しチェーン28における引起し経路R3側部分の内周部に沿って設けられている。レール部材30は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心X4周りで揺動可能なように、左右の側板33に支持されている。引起し爪29がレール部材30に沿って上昇することにより、引起し爪29が引起しチェーン28に対して起立する起立姿勢に維持されることになる。
【0079】
図4から
図6に示すように、レール部材30は、複数(本実施形態では、二つ)の溝部35と、複数(本実施形態では、四つ)の補強部材36と、を備えている。二つの溝部35は、揺動軸心X4方向に沿って並ぶように設けられている。溝部35は、引起しチェーン28における引起し経路R3側部分とは反対側に向かって開口し、レール部材30の延び方向に沿って延びている。
【0080】
補強部材36は、溝部35の両側壁に亘って設けられている。四つの補強部材36は、レール部材30の延び方向に間隔をあけて配置されている。
【0081】
カム部材32は、レール部材30を揺動操作する。カム部材32は、機体左右方向に沿って延びる揺動軸心X5周りで揺動可能なように、左右の側板33に支持されている。カム部材32は、二つの溝部35のうち一の溝部35に入り込んでいる。
【0082】
カム部材32は、突出位置(
図4参照)と引退位置(
図7参照)とに切り替え可能に構成されている。カム部材32には、カム部材32を突出位置と引退位置とに切り替え操作するためのハンドル37が連結されている。
図4に示すように、カム部材32を突出位置に切り替えることにより、レール部材30が揺動軸心X4周りで前側に揺動して、レール部材30が引起しチェーン28における引起し経路R3側部分の内周部に沿うことになる。
図7に示すように、カム部材32を引退位置に切り替えることにより、レール部材30が揺動軸心X4周りで後側に揺動して、レール部材30が引起しチェーン28における引起し経路R3側部分の内周部から離間することになる。
【0083】
〔注油装置〕
図8に示すように、コンバインは、縦引起し装置11に自動的に潤滑油を注油する注油装置Aを備えている。詳しくは、後述するが、注油装置Aは、縦引起し装置11とは別の他の装置(本実施形態では、刈刃12及び搬送装置13)にも自動的に潤滑油を注油するように構成されている。注油装置Aは、潤滑油を貯留する注油タンクTと、縦引起し装置11に向けて潤滑油を圧送する油圧ポンプP1(本発明に係る「第一油圧ポンプ」に相当)と、縦引起し装置11に潤滑油を送るための注油ホース38と、注油ホース38からの潤滑油を注油(噴出)するノズル39と、を備えている。油圧ポンプP1は、注油ホース38の途中部に設けられている。注油ホース38は、注油タンクTから各縦引起し装置11に向けて延びるように配策されている。
【0084】
図9及び
図10に示すように、注油ホース38は、開口25aを通されて、横引起し装置10から前方に向かって延びるように配策されている。すなわち、横引起し装置10の前面部(前カバー25)に、注油ホース38を通すための開口25aが形成されている。開口25aにおける注油ホース38が通る部分は、第二伝動ケース18に対して横引起し装置10の引起し経路R1とは反対側に位置している。注油ホース38における引起しケース24の内部に位置する部分に、金属製の中継管40が設けられている。中継管40は、略L字形状の管状部材である。
【0085】
注油ホース38は、第二伝動ケース18に沿って配策されている。具体的には、注油ホース38は、第二伝動ケース18における横引起し装置10の引起し経路R1とは反対側の部分に沿って配策されている。横引起し装置10前方には、注油ホース38を案内するクランプ46(本発明に係る「案内部材」に相当)が設けられている。注油ホース38は、クランプ46を介して第二伝動ケース18に支持されている。
【0086】
図4に示すように、ノズル39は、引起しケース31の内部に設けられている。ノズル39には、注油ホース38が接続されている。ノズル39は、引起しチェーン28における戻り経路R4側部分の内周部に、潤滑油を直接注油するように構成されている。すなわち、ノズル39は、レール部材30とは反対側の方向に潤滑油を注油(噴出)するように構成されている。引起しケース31の内部には、ノズル39を支持するステー41が設けられている。ノズル39は、ステー41を介して引起しケース31に支持されている。
【0087】
側板33(本実施形態では、左右の側板33のうち第二伝動ケース18側の側板33)には、注油ホース38が差し込まれる差し込み孔33aが形成されている。差し込み孔33aは、側板33の上部に形成されている。
【0088】
図5及び
図6に示すように、注油ホース38は、溝部35の内部を通されている。具体的には、注油ホース38は、二つの溝部35のうちカム部材32が入り込んでいる溝部35とは別の溝部35の内部を通されている。四つの補強部材36のうち上側二つの補強部材36は、注油ホース38が溝部35の内部から抜け出ないように、注油ホース38を案内する部材を兼ねている。
【0089】
図7に示すように、ノズル39は、引起しチェーン28に対して内周側であってレール部材30の揺動範囲を避けた位置に配置されている。すなわち、ノズル39は、側面視でレール部材30と重複していない。差し込み孔33aは、側板33における引起しチェーン28に対して内周側であってレール部材30の揺動範囲及び軸部材34を避けた位置に形成されている。すなわち、差し込み孔33aは、側面視でレール部材30及び軸部材34と重複していない。
【0090】
図11及び
図12に示すように、ステー41は、取付け部41aと、被取付け部41bと、接触部41cと、を備えている。取付け部41aには、ノズル39が取り付けられている。被取付け部41bは、引起しケース31(側板33)に取り付けられている。接触部41cは、引起しチェーン28における戻り経路R4側部分の内周部とノズル39との間に位置している。接触部41cは、倒伏姿勢の引起し爪29が接触するように構成されている。引起しチェーン28における戻り経路R4において、倒伏姿勢の引起し爪29が接触部41cに接触することにより、引起し爪29が一時的に起立姿勢に姿勢変更されることになる。
【0091】
図13に示すように、注油装置Aは、縦引起し装置11、刈刃12及び搬送装置13に自動的に潤滑油を注油するように構成されている。すなわち、注油装置Aは、縦引起し装置11とは別の他の装置(本実施形態では、刈刃12及び搬送装置13)にも自動的に潤滑油を注油するように構成されている。注油装置Aは、縦引起し装置11に潤滑油を供給する供給油路42(本発明に係る「第一供給油路」に相当)と、刈刃12に潤滑油を供給する供給油路43(本発明に係る「第二供給油路」に相当)と、搬送装置13に潤滑油を供給する供給油路44(本発明に係る「第二供給油路」に相当)と、潤滑油を貯留する注油タンクTと、を備えている。
【0092】
供給油路42は、縦引起し装置11に向けて注油タンクT内の潤滑油を圧送する油圧ポンプP1を備えている。供給油路42は、供給油路43から分岐している。
【0093】
供給油路43は、縦引起し装置11とは別の他の装置としての刈刃12に潤滑油を供給するように構成されている。供給油路43は、刈刃12に向けて注油タンクT内の潤滑油を圧送する油圧ポンプP2(本発明に係る「第二油圧ポンプ」に相当)を備えている。
【0094】
供給油路44は縦引起し装置11とは別の他の装置としての搬送装置13に潤滑油を供給するように構成されている。供給油路44は、搬送装置13に向けて注油タンクT内の潤滑油を圧送する油圧ポンプP3(本発明に係る「第二油圧ポンプ」に相当)を備えている。
【0095】
運転キャビン6内には、油圧ポンプP1、油圧ポンプP2及び油圧ポンプP3を駆動操作するための操作部45が設けられている。操作部45は、本実施形態では、シーソースイッチである。操作部45は、ボタン45aと、ボタン45bと、を備えている。
【0096】
運転者がボタン45aを押すと、油圧ポンプP1及び油圧ポンプP3が駆動されることになる。すなわち、油圧ポンプP1と油圧ポンプP3とは、同時に駆動するように構成されている。油圧ポンプP1及び油圧ポンプP3が駆動されることにより、注油タンクT内の潤滑油が矢印S1のように、縦引起し装置11及び搬送装置13に向けて流れることになる。
【0097】
運転者がボタン45bを押すと、油圧ポンプP2が駆動されることになる。油圧ポンプP2が駆動されることにより、注油タンクT内の潤滑油が矢印S2のように、刈刃12に向けて流れることになる。
【0098】
図8に示すように、供給油路42は、縦引起し装置11に潤滑油を送るための注油ホース38を備えている。注油ホース38は、潤滑油の流れを分岐させる複数(本実施形態では、四つ)の分岐部D1、D2、D3、D4と、複数(本実施形態では、五つ)の第一分岐ホース38a(本発明に係る「分岐油路」に相当)、第二分岐ホース38b(本発明に係る「分岐油路」に相当)、第三分岐ホース38c(本発明に係る「分岐油路」に相当)、第四分岐ホース38d(本発明に係る「分岐油路」に相当)及び第五分岐ホース38e(本発明に係る「分岐油路」に相当)と、を備えている。
【0099】
第一分岐ホース38aは、分岐部D4に接続されている。第一分岐ホース38aは、分岐部D4によって分岐された潤滑油を第一の縦引起し装置11に供給する。
【0100】
第二分岐ホース38bは、分岐部D4に接続されている。第二分岐ホース38bは、分岐部D4によって分岐された潤滑油を第二の縦引起し装置11に供給する。
【0101】
第三分岐ホース38cは、分岐部D3に接続されている。第三分岐ホース38cは、分岐部D3によって分岐された潤滑油を第三の縦引起し装置11に供給する。
【0102】
第四分岐ホース38dは、分岐部D3に接続されている。第四分岐ホース38dは、分岐部D3によって分岐された潤滑油を第四の縦引起し装置11に供給する。
【0103】
第五分岐ホース38eは、分岐部D1に接続されている。第五分岐ホース38eは、分岐部D1によって分岐された潤滑油を第五の縦引起し装置11に供給する。
【0104】
ここで、第一分岐ホース38aの容積と第二分岐ホース38bの容積とは、互いに同一又は略同一である。第三分岐ホース38cの容積と第四分岐ホース38dの容積とは、互いに同一又は略同一である。
【0105】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、差し込み孔33aは、側板33における引起しチェーン28に対して内周側であってレール部材30の揺動範囲を避けた位置に形成されている。しかし、差し込み孔33aは、側板33における引起しチェーン28に対して外周側の位置に形成されていてもよい。
【0106】
(2)上記実施形態では、注油ホース38は、溝部35の内部を通されている。しかし、注油ホース38は、溝部35の内部を通されていなくてもよい。
【0107】
(3)上記実施形態では、注油ホース38は、第二伝動ケース18における横引起し装置10の引起し経路R1とは反対側の部分に沿って配策されている。しかし、注油ホース38は、第二伝動ケース18の上側又は下側の部分に沿って配策されていてもよい。
【0108】
(4)上記実施形態では、注油ホース38は、第二伝動ケース18に沿って配策されている。しかし、注油ホース38は、第二伝動ケース18に沿って配策されていなくてもよい。
【0109】
(5)上記実施形態では、ノズル39は、引起しチェーン28に対して内周側であってレール部材30の揺動範囲を避けた位置に配置されている。しかし、ノズル39は、側板33における引起しチェーン28に対して外周側の位置に配置されていてもよい。
【0110】
(6)上記実施形態では、ノズル39は、引起しチェーン28における戻り経路R4側部分の内周部に、潤滑油を直接注油するように構成されている。しかし、ノズル39は、引起しチェーン28における戻り経路R4側部分の外周部に、潤滑油を直接注油するように構成されていてもよい。また、ノズル39は、引起しチェーン28における引起し経路R3側部分の内周部に、潤滑油を直接注油するように構成されていてもよい。また、ノズル39は、引起しチェーン28における引起し経路R3側部分の外周部に、潤滑油を直接注油するように構成されていてもよい。
【0111】
(7)上記実施形態では、ノズル39は、引起しチェーン28に潤滑油を直接注油するように構成されている。しかし、ノズル39は、引起しチェーン28に潤滑油を間接的に注油するように構成されていてもよい。
【0112】
(8)上記実施形態では、ノズル39は、レール部材30とは反対側の方向に潤滑油を注油するように構成されている。しかし、ノズル39は、レール部材30側の方向に潤滑油を注油するように構成されていてもよい。
【0113】
(9)上記実施形態では、第一分岐ホース38aの容積と第二分岐ホース38bの容積とは、互いに同一又は略同一であり、かつ、第三分岐ホース38cの容積と第四分岐ホース38dの容積とは、互いに同一又は略同一である。しかし、本願発明は、上記実施形態に係る構成に限定されるものではない。例えば、第一分岐ホース38a、第二分岐ホース38b、第三分岐ホース38c、第四分岐ホース38d及び第五分岐ホース38eの各容積は、全て同一又は略同一であってもよい。また、第一分岐ホース38a、第二分岐ホース38b、第三分岐ホース38c、第四分岐ホース38d及び第五分岐ホース38eの各容積は、全て異なっていてもよい。
【0114】
(10)上記実施形態では、注油装置Aは、縦引起し装置11とは別の他の装置(上記実施形態では、刈刃12及び搬送装置13)にも自動的に潤滑油を注油するように構成されている。しかし、本願発明は、上記実施形態に係る構成に限定されるものではない。例えば、縦引起し装置11とは別の他の装置は、刈刃12及び搬送装置13以外の装置であってもよい。また、注油装置Aは、縦引起し装置11のみに自動的に潤滑油を注油するように構成されていてもよい。
【0115】
(11)上記実施形態では、油圧ポンプP1と油圧ポンプP3とは、同時に駆動するように構成されている。しかし、油圧ポンプP1と油圧ポンプP3とは、同時に駆動するように構成されていなくてもよい。
【0116】
(12)上記実施形態では、操作部45は、シーソースイッチである。しかし、操作部45は、シーソースイッチ以外の操作部であってもよい。
【0117】
(13)上記実施形態では、供給油路42は、供給油路43から分岐している。しかし、
図14に示すように、供給油路42は、注油タンクTに直接的に接続されていてもよい。すなわち、供給油路42、供給油路43及び供給油路44は、夫々、注油タンクTに直接的に接続されていてもよい。
【0118】
また、
図15に示すように、注油装置Aは、縦引起し装置11に潤滑油を供給する供給油路42と、刈刃12及び搬送装置13に潤滑油を供給する供給油路43と、を備えていてもよい。供給油路43は、刈刃12及び搬送装置13に向けて潤滑油を圧送する油圧ポンプP2を備えている。
図15に示す例でも、
図14に示す例と同様に、供給油路42は、注油タンクTに直接的に接続されている。操作部45は、油圧ポンプP1及び油圧ポンプP2を駆動操作するための操作部である。運転者がボタン45aを押すと、油圧ポンプP1が駆動されることになる。油圧ポンプP1が駆動されることにより、注油タンクT内の潤滑油が矢印S1のように、縦引起し装置11に向けて流れることになる。運転者がボタン45bを押すと、油圧ポンプP2が駆動されることになる。油圧ポンプP2が駆動されることにより、注油タンクT内の潤滑油が矢印S2のように、刈刃12及び搬送装置13に向けて流れることになる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、コンバインに利用可能である。
【符号の説明】
【0120】
2 刈取部
10 横引起し装置(第一引起し装置)
11 縦引起し装置(第二引起し装置)
12 刈刃
13 搬送装置
18 第二伝動ケース(伝動ケース)
23 引起し爪(第一引起し爪)
25a 開口
26 駆動スプロケット(上回転体)
27 テンションンローラ(下回転体)
28 引起しチェーン
29 引起し爪(第二引起し爪)
30 レール部材
31 引起しケース
32 カム部材
33 側板
33a 差し込み孔
34 軸部材
35 溝部
36 補強部材
38 注油ホース
38a 第一分岐ホース(分岐油路)
38b 第二分岐ホース(分岐油路)
38c 第三分岐ホース(分岐油路)
38d 第四分岐ホース(分岐油路)
38e 第五分岐ホース(分岐油路)
39 ノズル
40 中継管
41 ステー
41c 接触部
42 供給油路(第一供給油路)
43 供給油路(第二供給油路)
44 供給油路(第二供給油路)
45 操作部
46 クランプ(案内部材)
A 注油装置
D1 分岐部
D2 分岐部
D3 分岐部
D4 分岐部
P1 油圧ポンプ(第一油圧ポンプ)
P2 油圧ポンプ(第二油圧ポンプ)
P3 油圧ポンプ(第二油圧ポンプ)
R1 引起し経路
R3 引起し経路
R4 戻り経路
T 注油タンク
X2 回転軸心
X3 回転軸心
X4 揺動軸心