(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005704
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】貯留装置および排水システム
(51)【国際特許分類】
E03F 3/04 20060101AFI20240110BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E03F3/04 Z
E03C1/122 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106009
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【弁理士】
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃
(72)【発明者】
【氏名】水野 宏俊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 俊希
【テーマコード(参考)】
2D061
2D063
【Fターム(参考)】
2D061AA05
2D063BA00
2D063BA14
(57)【要約】
【課題】既設の管路を活用して容易に設置可能であるとともに、簡易な操作によって勢いよく水を管路に対して排出可能な貯留装置、及び当該貯留装置を備えた排水システムの提供を目的とした。
【解決手段】貯留装置10は、地中に埋設され、汚水が流れる主管110、及び主管110に対して連通するように立設された立管120を備えた既設の管路100に対して接続される貯留装置10であって、水を貯留可能な貯留部20と、貯留部20に貯留された水を排出する排出部40と、排出部40を開閉可能な栓部50と、を有し、排出部40が、立管120の上端部に設けられた開口部122に対して接続可能とされたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設され、汚水が流れる主管、及び前記主管に対して連通するように立設された立管を備えた既設の管路に対して接続される貯留装置であって、
水を貯留可能な貯留部と、
前記貯留部に貯留された水を排出する排出部と、
前記排出部を開閉可能な栓部と、
を有し、
前記排出部が、前記立管の上端部に設けられた開口部に対して接続可能であること、を特徴とする貯留装置。
【請求項2】
前記貯留部から外側に張り出すように形成された張出部を有し、
前記貯留部を設置した状態において、前記貯留部が設置される設置面に対して前記張出部が接触すること、を特徴とする請求項1に記載の貯留装置。
【請求項3】
前記栓部が、前記貯留部の内側に配され、所定の方向に移動することにより前記排出部を開閉可能なものであり、
前記栓部に接続され、前記貯留部の外側に取り出された操作部を有し、
前記貯留部の外側から前記操作部を操作することにより前記栓部を前記所定の方向に移動させ、前記排出部を開閉できること、を特徴とする請求項1又は2に記載の貯留装置。
【請求項4】
前記貯留部の底部に前記排出部が設けられていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の貯留装置。
【請求項5】
前記貯留部の底部が、前記排出部に向けて下り勾配となるように形成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の貯留装置。
【請求項6】
前記排出部が、前記貯留部の内側において開口した排出口を備えた筒状の排出筒を有し、
前記栓部が、
前記排出口から前記排出筒の内側への進入が可能な第一栓構成部と、
前記第一栓構成部に対して前記排出口から前記排出筒の内側への進入方向手前側において前記排出口から前記排出筒への進入が不能とされた第二栓構成部と、を有し、
前記第一栓構成部を前記排出筒に対して進入及び離脱させることにより、前記排出部を開閉可能であること、を特徴とする請求項1又は2に記載の貯留装置。
【請求項7】
水を貯留可能な貯留部、前記貯留部に貯留された水を排出する排出部、及び前記排出部を開閉可能な栓部を備えた貯留装置と、
地中において汚水が流れる主管、及び前記主管に対して連通するように立設されされ上方に向けて開口した開口部を有する立管を備えた管路と、を備え、
前記貯留装置を地上に設置し、前記排出部を前記立管の前記開口部に接続することにより、前記貯留部に貯留された水を前記立管を介して前記主管に排出可能であること、を特徴とする排水システム。
【請求項8】
前記開口部に対して装着される蓋体を有し、
前記蓋体が、
前記立管の前記開口部に設けられた蓋枠と、
前記蓋枠に嵌合し、上下に貫通した嵌合孔が形成された親蓋本体、及び前記親蓋本体から下方に向かって延びた親蓋排出筒を有する親蓋と、
前記嵌合孔に嵌合する子蓋と、
を備えたものであり、
前記子蓋を取り外して前記嵌合孔に前記排出部を連通させることにより、前記排出部が前記開口部に接続されること、を特徴とする請求項7に記載の排水システム。
【請求項9】
前記立管内に配置され、前記貯留装置の前記排出部から排出された水を前記主管に導入する導水装置を有し、
前記導水装置が、
前記排出部から排出される水を受け入れる流入部と、
前記流入部から流入した水が流れる管路部と、
前記管路部から水を流出させる流出部と、
を有し、
前記流出部の管軸が前記流入部の管軸よりも前記主管側に傾くように配されていること、を特徴とする請求項7に記載の排水システム。
【請求項10】
前記立管の前記開口部には、仮設排水設備が接続可能であり、
前記仮設排水設備が接続された前記立管に対して上流側に隣接する前記立管の前記開口部に、前記貯留装置が接続されていること、を特徴とする請求項7に記載の排水システム。
【請求項11】
前記立管が複数設けられており、
複数の前記立管のうち一部の前記立管の前記開口部には、前記仮設排水設備が接続され、
複数の前記立管のうち、前記仮設排水設備が接続されたものに対して前記主管の上流側に隣接する位置に接続された前記立管の前記開口部には、前記仮設排水設備と対をなすように設けられた前記貯留装置が接続されていること、を特徴とする請求項10に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留装置および排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されている防災トイレ設備のようなものが提供されている。特許文献1の防災トイレ設備は、排水管と、排水管に接続された縦管と、縦管の上端部に設けられた基礎ブロックと、基礎ブロックの上面に常設されたトイレスツールとを備えたものとされている。また、基礎ブロックは、底面に縦管の上端部が挿入される縦管挿入凹部が形成され、上面と縦管挿入凹部とを連通する汚物投入孔が形成されたものとされている。特許文献1の防災トイレ設備は、地中に埋設された排水管の上流端を給水桝に接続し、他端を下水本管に接続された既設のマンホールに接続した構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の防災トイレ設備は、水平に対して所定の勾配をなすように配された排水管に加えて、排水管に対して洗浄用の水を供給するための給水枡も地中に埋設した構成とされている。そのため、特許文献1の防災トイレ設備は、給水枡を設置するための施工に手間がかかるという問題がある。また、特許文献1の防災トイレ設備は、排水管とともに給水枡を地中に埋設したものであるため、給水枡から排水管に向けて勢いよく水を供給しにくいという問題がある。特許文献1のような構成とした場合、給水枡から供給された水を排水管において勢いよく流れるようにするためには、例えば地中における排水管の勾配を大きくする等の方策を講じなければならない。そのため、特許文献1の防災トイレ設備は、既設の管路を活用して設置しようとすると、排水管等の管路に向けて勢いよく水を排出させるのが難しいという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、既設の管路を活用して容易に設置可能であるとともに、水を勢いよく管路に向けて排出可能な貯留装置、及び当該貯留装置を備えた排水システムの提供を目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の貯留装置は、地中に埋設され、汚水が流れる主管、及び主管に対して連通するように立設された立管を備えた既設の管路に対して接続される貯留装置であって、水を貯留可能な貯留部と、貯留部に貯留された水を排出する排出部と、排出部を開閉可能な栓部と、を有し、排出部が、立管の上端部に設けられた開口部に対して接続可能であること、を特徴とするものである。
【0007】
本発明の貯留装置は、既設の管路が備える立管の上端部に設けられた開口部に対して排出部を接続することによって設置することができる。そのため、本発明の貯留装置は、既設の管路を活用して容易に設置できる。また、本発明の貯留装置は、管路よりも上方において貯留部に水を貯留しておき、必要に応じて排出部を開くことにより、貯留しておいた水を立管を介して主管に向けて排出することができる。そのため、本発明の貯留装置は、栓部により排出部を開閉する操作によって勢いよく水を管路に対して排出させることができる。
【0008】
(2)本発明の貯留装置は、貯留部から外側に張り出すように形成された張出部を有し、貯留部を設置した状態において、貯留部が設置される設置面に対して張出部が接触すること、を特徴とするものであると良い。
【0009】
本発明の貯留装置は、かかる構成とすることにより、貯留部を設置面に対して安定的に設置することができる。
【0010】
(3)本発明の貯留装置は、栓部が、貯留部の内側に配され、所定の方向に移動することにより排出部を開閉可能なものであり、栓部に接続され、貯留部の外側に取り出された操作部を有し、貯留部の外側から操作部を操作することにより栓部を所定の方向に移動させ、排出部を開閉できること、を特徴とするものであると良い。
【0011】
本発明の貯留装置は、かかる構成とすることにより、貯留部の外側における操作部の操作により、貯留部の内部に配された栓部を容易に操作し、排出部を開閉させることができる。
【0012】
(4)本発明の貯留装置は、貯留部の底部に排出部が設けられていること、を特徴とするものであると良い。
【0013】
本発明の貯留装置は、かかる構成とすることにより、水頭圧を利用して水を勢いよく管路に向けて排出させることができる。
【0014】
(5)本発明の貯留装置は、貯留部の底部が、排出部に向けて下り勾配となるように形成されていること、を特徴とするものであると良い。
【0015】
本発明の貯留装置は、かかる構成とすることにより、排出部を開状態としたときに、貯留部に貯留された水が排出部に向けて流れやすくなる。これにより、本発明の貯留装置は、管路に向けてより一層スムーズかつ勢いよく水を排出である。
【0016】
(6)本発明の貯留装置は、排出部が、貯留部の内側において開口した排出口を備えた筒状の排出筒を有し、栓部が、排出口から排出筒の内側への進入が可能な第一栓構成部と、第一栓構成部に対して排出口から排出筒の内側への進入方向手前側において排出口から排出筒への進入が不能とされた第二栓構成部と、を有し、第一栓構成部を排出筒に対して進入及び離脱させることにより、排出部を開閉可能であること、を特徴とするものであると良い。
【0017】
本発明の貯留装置は、排出部を閉状態とするときに、栓部をなす第一栓構成部が排出筒に対して進入する一方で、第一栓構成部に対して進入方向手前側にある第二栓構成部は排出筒に進入しない。そのため、本発明の貯留装置は、排出部を閉状態とするときに、栓部材が排出筒に対して過度に進入してしまうのを抑制できる。これにより、本発明の貯留装置は、栓部が排出部を突き抜けて脱落してしまったり、次に排出部を開状態とする際に栓部を排出部から離脱させにくい状態になってしまったりするのを抑制できる。
【0018】
(7)本発明の排水システムは、水を貯留可能な貯留部、貯留部に貯留された水を排出する排出部、及び排出部を開閉可能な栓部を備えた貯留装置と、地中において汚水が流れる主管、及び主管に対して連通するように立設されされ上方に向けて開口した開口部を有する立管を備えた管路と、を備え、貯留装置を地上に設置し、排出部を立管の開口部に接続することにより、貯留部に貯留された水を立管を介して主管に排出可能であること、を特徴とするものである。
【0019】
本発明の排水システムは、既設の管路が備える立管の上端部に設けられた開口部に対し、貯留装置の排出部を接続することによって設置することができる。また、本発明の排水システムは、既設の管路に対して設置した状態において、栓部によって排出部を閉じた状態において貯留部に水を貯留しておき、必要に応じて排出部を開くことにより、管路よりも上方に貯留しておいた水を立管を介して主管に向けて排出することができる。そのため、本発明の排水システムは、既設の管路を活用して容易に設置可能でありつつ、栓部により排出部を開閉する簡易な操作によって勢いよく水を管路に対して排出させることができる。
【0020】
(8)本発明の排水システムは、開口部に対して装着される蓋体を有し、蓋体が、立管の開口部に設けられた蓋枠と、蓋枠に嵌合し、上下に貫通した嵌合孔が形成された親蓋本体、及び親蓋本体から下方に向かって延びた親蓋排出筒を有する親蓋と、嵌合孔に嵌合する子蓋と、を備えたものであり、子蓋を取り外して嵌合孔に排出部を連通させることにより、排出部が開口部に接続されること、を特徴とするものであると良い。
【0021】
本発明の排水システムは、親蓋及び子蓋を備えた、いわゆる親子蓋形式の蓋体を活用し、子蓋を取り外して形成される嵌合孔に排出部を連通させることにより設置できる。これにより、本発明の排水システムは、安定的に設置できる。また、本発明の排水システムは、親子蓋形式の蓋体に対して貯留装置の排出部を接続して設置するものであるため、臭気が漏れるのを抑制できる。
【0022】
(9)本発明の排水システムは、前記立管内に配置され、前記貯留装置の前記排出部から排出された水を前記主管に導入する導水装置を有し、前記導水装置が、前記排出部から排出される水を受け入れる流入部と、前記流入部から流入した水が流れる管路部と、前記管路部から水を流出させる流出部と、を有し、前記流出部の管軸が前記流入部の管軸よりも前記主管側に傾くように配されていること、を特徴とするものであると良い。
【0023】
本発明の排水システムは、立管の内部に上述したような導水装置を設けることにより、貯留装置の排出部から排出された水を流入部で受け入れ、管路部及び流出部を介して主管に向けて排出させることができる。また、本発明の排水システムは、流出部の管軸が流入部の管軸よりも主管側に傾くように配されているため、貯留装置から導水装置に入った水の流れを主管に沿う方向に向けた状態でスムーズに主管に導入することができる。従って、本発明の排水システムは、貯留装置から排出された水を導水装置を介して勢いよく主管に流すことができ、主管の洗浄能力をより一層向上させることができる。
【0024】
(10)本発明の排水システムは、前記立管の前記開口部には、仮設排水設備が接続可能であり、前記仮設排水設備が接続された前記立管に対して上流側に隣接する前記立管の前記開口部に、前記貯留装置が接続されていること、を特徴とするものであると良い。
【0025】
本発明の排水システムは、かかる構成とすることにより、仮設排水設備に対して上流側に位置する貯留装置から水を排出させることにより、主管において仮設排水設備に対応する位置まで勢いよく水を到達させることができる。従って、本発明の排水システムによれば、仮設排水設備から主管に排出された汚水や排出物を、当該仮設排水設備に対して上流側に位置する貯留装置から排出されて主管の下流側に向けて勢い良く流れる水によって洗浄できる。
【0026】
(11)本発明の排水システムは、前記立管が複数設けられており、複数の前記立管のうち一部の前記立管の前記開口部には、前記仮設排水設備が接続され、複数の前記立管のうち、前記仮設排水設備が接続されたものに対して前記主管の上流側に隣接する位置に接続された前記立管の前記開口部には、前記仮設排水設備と対をなすように設けられた前記貯留装置が接続されていること、を特徴とするものであると良い。
【0027】
本発明の排水システムは、上述したように仮設排水設備と対をなす貯留装置を主管の上流側に隣接する位置にある立管に設けることにより、より一層確実に、主管において仮設排水設備に対応する位置まで勢いよく水を到達させることができる。従って、本発明の排水システムによれば、仮設排水設備から主管に排出された汚水や排出物をより一層確実に主管の下流側に向けて勢い良く押し流して洗浄することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、既設の管路を活用して容易に設置可能であるとともに、管路に対して水を勢いよく排出可能な貯留装置、及び当該貯留装置を備えた排水システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排水システムを示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る貯留装置を設置した状態を示す断面図である。
【
図4】
図2に示した貯留装置の設置方法を順を追って示した斜視図である。
【
図5】変形例に係る排水システムを示す模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る貯留装置の設置形態の変形例を示した断面図である。
【
図7】導水装置を備えた第一の変形例に係る排水システムの要部を拡大した断面図である。
【
図8】導水装置を備えた第二の変形例に係る排水システムの要部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施形態に係る貯留装置10および排水システムSについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、先ず排水システムSを構成する管路100について概略説明を行った後、管路100に対して接続される貯留装置10の構成について詳細に説明する。また、以下の説明においては、特に断りのない限り、上下左右等の位置関係について、貯留装置10および排水システムSを通常の使用形態で使用可能なように設置した状態を基準として説明する。
【0031】
≪排水システムSの概要について≫
【0032】
図1に示した排水システムSは、排水設備3から排出される汚水を、下水本管4等の下流側に向けて排出させるものである。具体的には、排水システムSは、排水設備3への水の供給が機能している場合(給水機能時)であって、かつ下水本管4への排水が機能している場合(排水機能時)には、排水設備3から排出される汚水を、下水本管4等の下流側に向けて排出させることができる。また、排水システムSは、地震などの災害により水の供給が停止して(断水)排水設備3への給水が機能しなくなっている場合や、給水設備が十分ではない屋外等の場所で仮設トイレなどを設置するため給水機能が不足している場合(給水不能時)には、後述する管路100に貯留水を供給して汚水を下流側へ排出することができる。さらに、排水システムSは、下水本管4や管路100の一部に破損が発生して下水本管4への汚水の排水が困難な場合(排水不能時)には、汚水を汚水貯留槽190に排出することができる。すなわち、排水システムSは、給水不能、かつ排水不能の場合(給排水不能時)には、管路100に汚水を排出させるために貯留水を供給しつつ、排水設備3から排出される汚水を汚水貯留槽190に向けて排出させることができる。
【0033】
ここで、下水本管4は、汚水を汚水処理場(図示せず)に導く管である。建物1の排水設備3から流出する汚水は、通常時においては下水本管4に排出される。また、上述した排水設備は、汚水を排出する設備である。排水設備には、例えば、トイレ、風呂または台所の流し台などが挙げられる。また、排水システムSに設置される排水設備には、建物1に既設で設けられたトイレ、風呂などの既設の排水設備(既設排水設備3a)の他に、仮設トイレなどの仮設の排水設備(仮設排水設備3b)がある。また、建物1には、住宅、商業施設、工場、校舎、倉庫などが含まれる。
【0034】
≪管路100について≫
【0035】
図1に示すように、管路100は、主管110および立管120を有し、地中において水を流通させる通路を構成している。本実施形態では、管路100は、複数の管材や継手などが連結されて、汚水の流路となる排水流路Cを形成している。
【0036】
管路100において、主管110は、上流側から下流側(下水本管4側)に向けて延びる流路を構成するものである。主管110は、単一の管路によって構成されても良いが、本実施形態では第一管路110a、及び第二管路110bを備えたものとされている。また、管路100においては、立管120が複数設けられている。管路100には、後に詳述する貯留装置10が接続されるとともに、切替式排水マス150や逆流抑止マス170等が配置されている。
【0037】
第一管路110aは、貯留装置10から下水本管4に至るように設けられている。また、第二管路110bは、切替式排水マス150から汚水貯留槽190に至るように設けられている。主管110は、第一管路110a及び第二管路110bにより、汚水の排水流路Cとして、二つの系統を形成可能としている。具体的には、主管110は、第一管路110aを介して汚水を下水本管4に排水させる第一流路c1と、第二管路110bを介して汚水を汚水貯留槽190に排出させる第二流路c2とを形成可能としている。
【0038】
言い換えれば、主管110は、汚水を第一流路c1により下水本管4に排出させる通常時用の排水流路Cとして、第一流路c1を形成できる。また、主管110は、下水本管4や、第二管路110bとの分岐部分よりも下流側の第一管路110a等の破損など、汚水が上流側へ逆流するおそれがある排出不能時用の排水流路Cとして、汚水貯留槽190に汚水を排出させる第二流路c2を形成できる。
【0039】
立管120は、主管110と同様に管路100を構成するものである。立管120は、主管110を構成する配管に対して連通するように立設されている。例えば、立管120は、管路100に設けられた排水マス147を介して主管110に対して連結され、地面に向けて立設されている。なお、立管120は、排水マスに設けられるもののほか、管路100と継手を介して連結されるものであってもよい。また、立管120が設けられる排水マスは、汚水マス、雨水マス等、種々選択可能である。
【0040】
立管120は、地中に埋設された管である。立管120は、下端部が第一管路110aに連結され、地面に向かうように立設されている。立管120は、上端部に開口部122を有する。開口部122は、地表側から管路100の内部を点検するための点検口として機能する。開口部122は、災害時以外の通常時などにおいては蓋体130によって閉塞される。災害時など仮設排水設備3bが設置される状況では、
図1に示すように蓋体130を取り外すことにより、立管120の上端部に仮設排水設備3bを取り付けることができる。
【0041】
なお、
図1では、既設排水設備3aよりも下流側に設けられた立管120に仮設排水設備3bを設けた例を示したが、仮設排水設備3bは、既設排水設備3aよりも上流側の立管120に設けてもよい。例えば、既設排水設備3aよりも上流側であって、貯留装置10よりも下流側に立管120が設けられている場合には、当該立管120に仮設排水設備3bが設けられてもよい。
【0042】
蓋体130は、立管120の開口部122に嵌め込まれることにより、立管120の上端部を閉塞するものである。蓋体130は、開口部122を閉塞可能なものであれば、その形態や素材は適宜選択可能である。本実施形態では、蓋体130は、いわゆる親子蓋とされている。具体的には、
図2や
図3に示すように、蓋体130は、蓋枠132、親蓋134、及び子蓋136を備えたものとされている。
【0043】
親蓋134は、親蓋本体138と、筒状部142とを有している。親蓋本体138は、蓋枠132に嵌合する部分である。親蓋本体138には、上下方向に貫通した嵌合孔140が形成されている。親蓋本体138には、親蓋134が蓋枠132に嵌合しているときに、蓋枠132と接触する環状の親蓋シール部材138aが取り付けられており、親蓋134を蓋枠132に嵌合させたときのシール性が向上する構成とされている。
【0044】
筒状部142は、親蓋本体138から下方に向かって延びる筒状の部分である。筒状部142は、底面視において嵌合孔140を囲むように親蓋本体138に設けられている。本実施形態では、筒状部142は、親蓋本体138における嵌合孔140の縁から下方に向かって延びている。なお、筒状部142には、1つまたは複数のスリットが形成されていてもよい。また、本実施形態では、親蓋本体138と筒状部142は、一体成形されているが、別体であってもよい。
【0045】
子蓋136は、親蓋134の親蓋本体138に形成された嵌合孔140に嵌合する蓋部材である。子蓋136は、嵌合孔140に対応した形状を有している。本実施形態では、嵌合孔140が円形に開口したものとされているため、子蓋136は円盤状のものとされている。子蓋136には、子蓋136が親蓋134に嵌合しているときに、親蓋本体138と接触する環状の子蓋シール部材(図示せず)が取り付けられており、子蓋136を親蓋134に嵌合させたときのシール性が向上する構成とされている。
【0046】
≪貯留装置10について≫
【0047】
図1に示すように、貯留装置10は、汚水が流れる排水流路を構成する管路100に対して接続されるものである。上述した管路100が地中に埋設されているのに対し、貯留装置10は地上に設置される。
図2や
図3に示すように、貯留装置10は、貯留部20,張出部30、排出部40、栓部50、及び操作部60を有する。
【0048】
貯留部20は、水を貯留可能な貯留空間を内部に有するものである。貯留部20は、その大きさや形状、素材等として適宜のものを選択して構成できる。貯留部20は、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、繊維強化プラスチックなどの樹脂素材を成形したものとすると良い。また、貯留部20を塩化ビニル樹脂によって構成する場合には、硬質塩化ビニル樹脂を好適に用いることができる。
【0049】
貯留部20は、上端側が開放され、下端側に底部22を有する有底筒状のものとされている。貯留部20の底部22には、後に詳述する排出部40の排出口42が開口している。貯留部20は、排出口42を底部22のいずれの位置に設けたものであっても良いが、本実施形態では底部22の略中央部(貯留部20の略軸心位置)において開口するように設けている。底部22は、排出口42に向けて下り勾配になるように形成されている。そのため、貯留部20は、底部22がすり鉢状(テーパー状)に形成されている。
【0050】
張出部30は、貯留部20の外周面から外側に向けて張り出すように延出した部分である。張出部30は、貯留部20を設置した状態において、貯留部20が設置される設置面(本実施形態では地面)に対して接触するように延出されている。これにより、貯留装置10は、張出部30によって貯留部20を設置面の上に安定的に設置可能とされている。張出部30は、例えば貯留部20の周方向に所定の間隔毎に設けられた脚状のもの等としても良いが、本実施形態では貯留部20の略全周に亘って設けられたフランジ状のものとされている。これにより、張出部30は、貯留部20を全周に亘って安定的に支持可能なものとされている。
【0051】
排出部40は、貯留部20に貯留された水を排出するものである。排出部40は、立管120の上端部に設けられた開口部122に対して接続される部分である。排出部40は、貯留部20の底部22に設けられている。排出部40は、貯留部20の内側において開口した排出口42を備えた排出筒44を有する。排出口42は、上述したように、貯留部20の底部22において開口するように形成されている。
【0052】
排出筒44は、貯留部20の排出口42からさらに下方に向けて突出するように形成された筒状の部分である。排出筒44(排出部40)は、上述した貯留部20とは別部材として形成し、貯留部20に対して取り付けるものとしても良いが、本実施形態では貯留部20とともに一体的に形成されている。排出筒44は、貯留部20の底部22や、張出部30の下端部よりもさらに下方に向けて突出するように形成されている。そのため、貯留部20を設置面(地面)の上に設置した状態において、排出筒44は設置面よりも下方に到達するように形成されている。
【0053】
排出部40は、上述した立管120の開口部122に対して差し込み可能な大きさの筒体によって形成されている。本実施形態では、立管120の開口部122に設けられた蓋体130の子蓋136を取り外すことにより開口する嵌合孔140の大きさにあわせて、排出部40の大きさ(外径)が設定されている。そのため、貯留装置10は、立管120の開口部122に設けられた蓋体130の子蓋136を取り外し、嵌合孔140に対して排出部40をなす筒体を差し込んで連通させることにより、開口部122に対して接続することができる。
【0054】
栓部50は、排出部40を開閉するためのものである。栓部50は、貯留部20の内側に配されている。栓部50は、所定の方向(貯留部20の軸線方向、上下方向)に移動することにより排出部40を開閉可能とされている。栓部50は、第一栓構成部52と、第二栓構成部54とを有する。
【0055】
第一栓構成部52は、排出口42から排出筒44の内側への進入が可能とされた部分である。第一栓構成部52は、排出筒44に対して進入及び離脱することにより、排出部40を開閉可能とされている。また、第二栓構成部54は、第一栓構成部52に対して排出口42から排出筒44の内側への進入方向手前側にある。第二栓構成部54は、排出口42から排出筒44への進入が不能とされた部分である。第二栓構成部54は、栓部50が排出筒44に対して過度に進入するのを抑制するためのものである。第二栓構成部54は、例えば、第一栓構成部52よりも膨出した膨出部を設けることにより形成できる。
【0056】
本実施形態では、栓部50は、有底筒状の栓構成部材56に対して、後に詳述する操作部60を接続するための接続部材68を設けることにより、第一栓構成部52に加えて、第二栓構成部54を設けたものとされている。
【0057】
具体的には、栓部50は、栓構成部材56のうち閉塞されている底部側の部分を先頭にして排出筒44に対して進入可能とされている。栓構成部材56は、その外径が排出筒44の内径と略一致するように形成されている。第一栓構成部52は、栓構成部材56のうち、排出筒44への進入方向先頭側の部分(底側の部分)によって構成されている。栓部50において第一栓構成部52に相当する部分には、栓部シール部材58が全周に亘って設けられている。これにより、栓部50は、排出筒44に対して栓部50の第一栓構成部52を進入させたときのシール性が高く、排出部40を介して水が排出されるのを確実に抑制できる。
【0058】
第二栓構成部54は、第一栓構成部52に対して栓部50の進入方向手前側(図示例では上方側)に設けられている。第二栓構成部54は、栓構成部材56に対して操作部60を接続するための接続部材68を設けることにより、栓構成部材56の外側に膨出した部分を有する。具体的には、第二栓構成部54には、接続部材68として設けられたボルト68aが栓構成部材56を径方向に貫通するように設けられている。そのため、栓構成部材56の径方向一方側において、ボルト68aの頭部が栓構成部材56の外側に向けて膨出するように設けられている。また、栓構成部材56の径方向他方側において、ボルト68aの軸部にナット68bが取り付けられている。これにより、ナット68bが、栓構成部材56の径方向他方側において膨出するように設けられている。第二栓構成部54は、ボルト68aの頭部やナット68bによって構成された膨出部を有するため、排出口42から排出筒44への進入が不能とされている。そのため、栓部50は、第一栓構成部52に相当する部分は排出口42を介して排出筒44に進入可能であるが、第二栓構成部54に相当する部分において引っかかり、排出筒44に対して過度に進入しない。
【0059】
操作部60は、貯留部20の外側からの操作によって栓部50を移動させ、排出部40の開閉状態を切り替える切替操作を可能とするために設けられたものである。本実施形態では、栓部50が上下方向への移動により排出部40の開閉可能なものであることから、操作部60は栓部50を上下方向に変位させる操作を行えるものとされている。操作部60は、栓部50に接続され、貯留部20の外側に取り出されている。操作部60は、貯留部20の外側からの操作により栓部50を所定の方向に移動させ、排出部40を開閉できる。具体的には、操作部60は、操作杆62、把持部64、及び接続部66を有する。
【0060】
操作杆62は、棒状や筒状の部材によって構成された部材である。操作杆62は、貯留部20の内部に栓部50を配した状態において、貯留部20の上端部よりも上方に突出する長さを有するものとされている。
【0061】
把持部64は、操作杆62の上端側に設けられている。把持部64は、使用者が操作部60による栓部50の操作を行う際に把持しやすいように設けられたものである。把持部64は、使用者が把持しやすい形態となるように、形状や大きさ等の形態を適宜設定することが可能である。本実施形態では、把持部64は、操作杆62の軸線方向に対して交差する方向(図示例では略直交する方向)に延びる棒状あるいは筒状の部材によって構成されている。
【0062】
接続部66は、栓部50に対して接続される部分である。接続部66は、操作杆62の下端側に設けられている。接続部66は、操作杆62の軸線方向に対して交差する方向(図示例では略直交する方向)に延びる筒状の部材によって構成されている。また、接続部66は、接続部66は、栓部50をなす栓構成部材56の内側に収容可能な長さを有する。接続部66は、操作部60と栓部50とを接続する接続部材68をなすボルト68aを挿通可能とされている。操作部60は、栓部50を構成する栓構成部材56の内側に配された接続部66を介して栓部50に対して連結されている。具体的には、ボルト68aは、栓構成部材56の内側に配された接続部66内部を通過しつつ、栓部50の栓構成部材56を横断するように装着される。また、ボルト68aの軸部には、栓構成部材56の外部においてナット68bが取り付けられる。このようにして、操作部60は、栓部50に対して連結されている。
【0063】
≪排水システムSについて≫
【0064】
排水システムSは、既設の管路100に対して、上述した貯留装置10を設置することにより構成される。具体的には、排水システムSは、貯留装置10を地上に設置し、排出部40を立管120の開口部122に接続することにより、貯留部20に貯留された水を立管120を介して主管110に排出可能としたものである。
【0065】
貯留装置10を管路100に対して設置して排水システムSを構築する際には、先ず
図4(a)に示すように立管120の上端側にある開口部122を閉塞している蓋体130から子蓋136を取り外す。これにより、
図4(b)に示すように、立管120の上端部において嵌合孔140が開口した状態とする。その後、嵌合孔140に対して排出部40の排出筒44を差し込むことによりにより、
図4(c)に示すように貯留部20が設置面(地面)の上に配置された状態とする。張出部30が設置面に対して接触するように貯留部20を設置することにより、貯留部20を安定的に設置できる。
【0066】
排水システムSは、上述したようにして貯留部20を設置した状態において、
図4(c)に示すように栓部50を排出部40の排出口42から排出筒44に進入させた状態とすることにより、排出口42が閉状態となり、貯留部20に水を貯留可能な状態になる。また、管路100の洗浄のために貯留装置10から管路100に水を排出させるときには、
図4(d)に示すように、操作部60を上方に移動させることにより栓部50を排出筒44から退出させる。これにより、貯留装置10は、排出口42が開状態となり、貯留部20に貯留されている水が、立管120を介して主管110に排出される。また、貯留部20の底部22が排出筒44に向けて下り勾配とされているため、貯留部20に貯留された水が略全量、スムーズに排出される。
【0067】
≪貯留装置10及び排水システムSによる効果について≫
【0068】
上述した貯留装置10及びこれを備えた排水システムSは、以下の(1)~(8)のような特徴的構成を備えているため、以下に記載するような従来技術では達し得ない特有の効果を奏することができる。
【0069】
(1)上述した貯留装置10は、地中に埋設され、汚水が流れる主管110、及び主管110に対して連通するように立設された立管120を備えた既設の管路100に対して接続される貯留装置10であって、水を貯留可能な貯留部20と、貯留部20に貯留された水を排出する排出部40と、排出部40を開閉可能な栓部50と、を有し、排出部40が、立管120の上端部に設けられた開口部122に対して接続可能とされたものである。
【0070】
貯留装置10は、上記(1)のような構成とされているため、既設の管路100が備える立管120の上端部に設けられた開口部122に対して排出部40を接続することによって設置することができる。従って、貯留装置10は、既設の管路100を活用して容易に設置できる。また、貯留装置10は、既設の管路100に対して設置した状態において、栓部50によって排出部40を閉じた状態において、管路100よりも上方に設けられた貯留部20に水を貯留しておき、必要に応じて排出部40を開くことにより、貯留しておいた水を立管120を介して主管110に向けて排出することができる。そのため、貯留装置10は、栓部50により排出部40を開閉する簡易な操作によって勢いよく水を管路100に対して排出させることができる。
【0071】
(2)上述した貯留装置10は、貯留部20から外側に張り出すように形成された張出部30を有し、貯留部20を設置した状態において、貯留部20が設置される設置面に対して張出部30が接触するものとされている。
【0072】
貯留装置10は、上記(2)のような構成とされているため、貯留部20を設置面に対して安定的に設置することができる。
【0073】
(3)上述した貯留装置10は、栓部50が、貯留部20の内側に配され、所定の方向に移動することにより排出部40を開閉可能なものであり、栓部50に接続され、貯留部20の外側に取り出された操作部60を有し、貯留部20の外側から操作部60を操作することにより栓部50を所定の方向に移動させ、排出部40を開閉できるものとされている。
【0074】
貯留装置10は、上記(3)のような構成とされているため、貯留部20の外側における操作部60の操作により、貯留部20の内部に配された栓部50を容易に操作し、排出部40を開閉させることができる。
【0075】
(4)上述した貯留装置10は、貯留部20の底部22に排出部40が設けられたものとされている。
【0076】
貯留装置10は、上記(4)のような構成とされているため、水頭圧を利用して水を勢いよく管路100に向けて排出させることができる。
【0077】
(5)上述した貯留装置10は、貯留部20の底部22が、排出部40に向けて下り勾配となるように形成されたものである。
【0078】
貯留装置10は、上記(5)のような構成とされているため、排出部40を開状態としたときに、貯留部20に貯留された水が排出部40に向けて流れやすくなる。これにより、上述した貯留装置10は、管路100に向けてより一層スムーズかつ勢いよく水を排出できる。
【0079】
(6)上述した貯留装置10は、排出部40が、貯留部20の内側において開口した排出口42を備えた筒状の排出筒44を有し、栓部50が、排出口42から排出筒44の内側への進入が可能な第一栓構成部52と、第一栓構成部52に対して排出口42から排出筒44の内側への進入方向手前側において排出口42から排出筒44への進入が不能とされた第二栓構成部54と、を有し、第一栓構成部52を排出筒44に対して進入及び離脱させることにより、排出部40を開閉可能なものとされている。
【0080】
貯留装置10は、上記(6)のような構成とされているため、排出部40を閉状態とするときに、栓部50をなす第一栓構成部52が排出筒44に対して進入する一方で、第一栓構成部52に対して進入方向手前側にある第二栓構成部54は排出筒44に進入しない。そのため、本発明の貯留装置10は、排出部40を閉状態とするときに、栓部50が排出筒44に対して過度に進入してしまうのを抑制できる。これにより、本発明の貯留装置10は、栓部50が排出部40を突き抜けて脱落してしまったり、次に排出部40を開状態とする際に栓部50を排出部40から離脱させにくい状態になってしまったりするのを抑制できる。
【0081】
(7)上述した排水システムSは、水を貯留可能な貯留部20、貯留部20に貯留された水を排出する排出部40、及び排出部40を開閉可能な栓部50を備えた貯留装置10と、地中において汚水が流れる主管110、及び主管110に対して連通するように立設されされ上方に向けて開口した開口部122を有する立管120を備えた管路100と、を備え、貯留装置10を地上に設置し、排出部40を立管120の開口部122に接続することにより、貯留部20に貯留された水を立管120を介して主管110に排出可能なものである。
【0082】
本実施形態の排水システムSは、上記(7)のような構成とされているため、既設の管路100が備える立管120の上端部に設けられた開口部122に対し、貯留装置10の排出部40を接続することによって設置することができる。また、排水システムSは、既設の管路100に対して設置した状態において、栓部50によって排出部40を閉じた状態において貯留部20に水を貯留しておき、必要に応じて排出部40を開くことにより、管路100よりも上方に貯留しておいた水を立管120を介して主管110に向けて排出することができる。そのため、排水システムSは、既設の管路100を活用して容易に設置可能でありつつ、栓部50により排出部40を開閉する簡易な操作によって勢いよく水を管路100に対して排出させることができる。
【0083】
(8)上述した排水システムSは、開口部122に対して装着される蓋体130を有し、蓋体130が、立管120の開口部122に設けられた蓋枠132と、蓋枠132に嵌合し、上下に貫通した嵌合孔140が形成された親蓋本体138、及び親蓋本体138から下方に向かって延びた筒状部142を有する親蓋134と、嵌合孔140に嵌合する子蓋136と、を備えたものであり、子蓋136を取り外して嵌合孔140に排出部40を連通させることにより、排出部40が開口部122に接続されるものである。
【0084】
排水システムSは、上記(8)のような構成とされているため、親蓋134及び子蓋136を備えた、いわゆる親子蓋形式の蓋体130を活用し、子蓋136を取り外して形成される嵌合孔140に排出部40を連通させることにより設置できる。これにより、排水システムSは、安定的に設置できる。また、排水システムSは、親子蓋形式の蓋体130に対して貯留装置10の排出部40を接続して設置するものであるため、臭気が漏れるのを抑制できる。
【0085】
≪変形例≫
【0086】
なお、上述した貯留装置10や排水システムSは、本発明の一実施形態を示したものに過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜構成を変更することが可能である。例えば、貯留装置10や排水システムSは、上述した(1)~(8)に係る全ての構成を備えたものに限らず、これらの構成のいずれかを省略したり、他の構成に置換したりしたものとすることも可能である。
【0087】
例えば、本発明の貯留装置は、上述した貯留装置10に限定されるものではなく、例えば、
図5に示す貯留装置210のようなものとすることが可能である。貯留装置210は、貯留部220の側面において底部222側の位置に排出部240を設けたものとされている。貯留装置210は、排出部240を開閉可能な栓部250を設けたものとされている。
【0088】
貯留装置210は、貯留装置10と同様に、上述した(1)の特徴を備えたものである。すなわち、貯留装置210は、地中に埋設され、汚水が流れる主管110、及び主管110に対して連通するように立設された立管120を備えた既設の管路100に対して接続されるものであり、水を貯留可能な貯留部220と、貯留部220に貯留された水を排出する排出部240と、排出部240を開閉可能な栓部250と、を有し、排出部240が、立管120の上端部に設けられた開口部122に対して接続可能とされたものである。このような構成とした場合には、
図5に示すように、排出部240と立管120の開口部122とを配管212によって接続することにより、貯留装置10と同様に、栓部250による簡易な操作により、地上において貯留部220に貯留した水を地中に埋設された管路100に向けて勢いよく排出できる。
【0089】
なお、貯留装置210は、上述した貯留装置10と同様の構成を備えたものとすると良い。例えば、
図5において上述した貯留装置10と同一の符号を付して図示したように、貯留装置210は、貯留装置10と同様に張出部30を設けた構成、底部222を排出部240に向けて下り勾配となるように設けた構成、第二栓構成部54のように排出部240に対して栓部250が過度に進入するのを抑制するための膨出部を設けた構成等とすると良い。
【0090】
また、上記実施形態の貯留装置10は、上述した(2)のように張出部30を設けたものであるが、本発明はこれに限定されない。貯留装置10は、張出部30を備えていないものとすることも可能である。これにより、貯留装置10の構成を簡素化できる。また、貯留装置10は、張出部30に代えて、あるいは張出部30に加えて、貯留部20の安定性を向上させるための他の構成を設けたものとすることも可能である。
【0091】
上記実施形態の貯留装置10は、上述した(3)のように、貯留部20の内側に配された栓部50を、貯留部20の外側に取り出された操作部60によって操作可能な構成とする代わりに、他の構成を採用したものとすることも可能である。例えば、貯留装置10は、貯留部20の外側に、水の排出を制御できる弁等からなる開閉部を設け、当該開閉部の操作を行うことにより貯留部20から管路100に対する水の排出制御を行える構成とすることも可能である。
【0092】
上記実施形態の貯留装置10は、上述した(4)のように貯留部20の底部22に排出部40を設けたものであるが、上述した
図5に係る貯留装置210のように底部22以外の部分に排出部40を設けた構成とすることも可能である。なお、貯留装置10は、底部22以外から水を排出可能とする場合についても、水頭圧を利用して水を勢いよく管路100に向けて排出可能とすべく、貯留部20において底部22に近い位置から水を排出可能な構成とすると良い。
【0093】
上記実施形態の貯留装置10は、上述した(5)のように、貯留部20の底部22を排出部40に向けて下り勾配となるように形成したものであるが、本発明はこれに限定されず、底部22を略水平に設けられたもの等とすることが可能である。
【0094】
上記実施形態の貯留装置10は、上述した(6)のように、第一栓構成部52、及び第二栓構成部54を備えた栓部50を採用したものであるが、本発明はこれに限定されず、例えば第二栓構成部54のような排出筒44に進入できない部分を備えていないものとすることも可能である。すなわち、貯留装置10においては、栓部50に対して排出筒44への進入方向に大きな圧力が作用するものの、例えば
図5に示した変形例に係る貯留装置210では、栓部50に作用するほど大きな圧力は作用せず、栓部250に作用する圧力の影響で栓部250が排出部240に対して過度に進入する可能性が低いものと想定される。そのため、このような場合には、第二栓構成部54を省略した構成としても良い。
【0095】
上記実施形態の排水システムSは、上述した(7)のように、貯留装置10を地上に設置し、排出部40を立管120の開口部122に接続することにより、貯留部20に貯留された水を立管120を介して主管110に排出可能なものであるが、本発明はこれに限定されない。例えば、排水システムSは、貯留装置10に代えて、上述した変形例に係る貯留装置210を備えたものとしても良い。
【0096】
上記実施形態の排水システムSは、上述した(8)のように、親蓋134及び子蓋136を備えた、いわゆる親子蓋形式の蓋体130を活用し、子蓋136を取り外して貯留装置10を設置可能としたものであるが、本発明はこれに限定されない。排水システムSは、親蓋134を取り外した部分に排出筒44を接続して設置するものとしても良い。また、開口部122に取り付けられる蓋体130は、親子蓋形式のものに限定されない。蓋体130として親子蓋形式以外のものを用いる場合には、蓋体130を取り外して形成される開口に対して排出筒44を接続することによって排水システムSを構築できる。
【0097】
また、
図6に示すように、排水システムSは、防護蓋180を設けるなどして、地面よりも下方側に配された蓋体130に対して貯留装置10を取り付けた構成とすることが可能である。
図6のような構成とする場合には、開状態とされた防護蓋180の上方側に貯留装置10を設けるとともに、蓋体130の子蓋136を取り外し、嵌合孔140と排出筒44とを別途設けた接続筒46で接続する等して設置することが可能である。また、接続筒46を設ける代わりに、防護蓋180の下方側に設けられた蓋体130の嵌合孔140に到達できるように、排出筒44を当初から長く形成しておくことにより、接続筒46を介さず排出筒44を嵌合孔140に対して直接接続するようにしても良い。
【0098】
また、上記実施形態の排水システムSは、
図7に示すように導水装置300を備えたものとすることが可能である。具体的には、
図7に示した導水装置300は、貯留装置10、210の排出部40、240から排出された水を主管110に導入するものである。導水装置300は、立管120の内部に配置可能な筒状の部材である。導水装置300は、流入部310、管路部320、及び流出部330を備えている。
【0099】
流入部310は、導水装置300の一端側において開口している。流入部310は、貯留装置10、210の排出部40、240から排出される水を受け入れる部分である。流入部310は、立管120の内部において、排出部40、240の下流側に配されている。導水装置300の外周面には、シール部312が設けられている。シール部312は、例えばOリング等によって構成されている。また、流入部310の外径は、立管120の内径と略一致している。そのため、流入部310は、シール部312を介して立管120に対して密接している。
【0100】
管路部320は、導水装置300において流入部310に対して下流側(主管110側)に位置する部分である。管路部320において、流入部310に続く部分は縮径部322とされている。縮径部322は、図示例のようにテーパー状の形状等とすることにより、下流側に向かうに連れて縮径するように形成されている。管路部320は、全長に亘って縮径部322によって構成されていても良いが、図示例では縮径部322に続く部分に開口径が変化せず一定の筒状部324を有する。筒状部324の内径は、流入部310や立管120の内径よりも小さい。そのため、管路部320は、流入部310から流入した水の勢いを増幅することができる。
【0101】
流出部330は、管路部320から水を流出可能なように開口した部分である。流出部330は、その管軸が流入部310の管軸よりも主管110側に傾くように配されている。流出部330は、管軸方向が主管110の下流側に向くように配置される。流出部330の内径や開口径は、管路部320の内径と同一あるいは大きなものすることが可能であるが、管路部320の内径よりも小さくすると良い。流出部330の内径や開口径を管路部320の内径よりも小さくすると、流出部330から排出される水の勢い一層高めることができる。
【0102】
なお、上述した導水装置300を設けた排水システムSは、本発明の一例を示したものに過ぎず、例えば導水装置300に代えて
図8に示した導水装置350を備えたものとすることが可能である。導水装置350は、
図8において
図7と同一の符号を付して示すように、流入部310、及び流出部330の構成が同一であるが、管路部320が縮径部322のみで構成され、筒状部324を備えていない点において相違している。このような構成とした場合、貯留装置10、210を接続するための立管120として従来公知の排水マスや切替式排水マス150のようなものを用いた場合等において好適に利用できる。
【0103】
上述した導水装置300や導水装置350を用いて構築した排水システムSは、以下の(9)のような特徴的構成を備えているため、以下のような従来技術では達し得ない特有の効果を奏することができる。
【0104】
(9)
図7や
図8に例示した排水システムSは、立管120内に配置され、貯留装置10、210の排出部40、240から排出された水を主管110に導入する導水装置300、350を有し、導水装置300、350、排出部40、240から排出される水を受け入れる流入部310と、流入部310から流入した水が流れる管路部320と、管路部320から水を流出させる流出部330と、を有し、流出部330の管軸が流入部310の管軸よりも主管110側に傾くように配されていること、を特徴とするものである。
【0105】
図7や
図8に例示した排水システムSは、立管120の内部に上述したような導水装置300、350を設けることにより、貯留装置10、210の排出部40、240から排出された水を流入部で受け入れ、管路部320及び流出部330を介して主管110に向けて排出させることができる。また、この排水システムSは、流出部330の管軸が流入部310の管軸よりも主管110側に傾くように配されているため、貯留装置10、210から導水装置300、350に入った水の流れを主管110に沿う方向に向けた状態でスムーズに主管110に導入することができる。従って、この排水システムSは、貯留装置10、210から排出された水を導水装置300、350を介して勢いよく主管110に流すことができ、主管110の洗浄能力をより一層向上させることができる。
【0106】
排水システムSは、
図1や
図5に示すように、主管110に対して複数設けられた立管120のうち、開口部122に仮設排水設備3bが接続されるものよりも主管110における上流側(下水本管4とは反対側)にある立管120に貯留装置10、210を設けると良い。また、仮設排水設備3bを複数設ける場合、排水システムSは、主管110に向けて排水等を排出した仮設排水設備3bに対して上流側にある貯留装置10、210から水を排出可能なように、仮設排水設備3bに対応する貯留装置10、210を上流側(下水本管4とは反対側)に設けた構成とすると良い。また、
図1や
図5に示す例では一つの貯留装置10、210に対して複数の仮設排水設備3bを設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、仮設排水設備3bと貯留装置10、210とを対をなすように設け、仮設排水設備3bが接続されたものに対して主管110の上流側に隣接する位置に接続された立管120の開口部122に、仮設排水設備3bと対をなす貯留装置10、210が接続された構成とすると良い。すなわち、仮設排水設備3bと同数の貯留装置10、210を設け、仮設排水設備3bのそれぞれに対して上流側に隣接する位置にある立管120の開口部122に貯留装置10、210を接続した構成とすると良い。
【0107】
上記実施形態において例示した排水システムSや、変形例として例示した排水システムSは、以下の(10)あるいは(11)のような特徴的構成を備えているため、以下のような従来技術では達し得ない特有の効果を奏することができる。
【0108】
(10)上述した排水システムSは、立管120の開口部122に、仮設排水設備3bが接続可能であり、仮設排水設備が3b接続された立管120に対して上流側に隣接する立管120の開口部122に、貯留装置10、210が接続されていること、を特徴とするものである。
【0109】
排水システムSは、かかる構成とすることにより、仮設排水設備に対して上流側に位置する貯留装置10、210から水を排出させることにより、主管110において仮設排水設備に対応する位置まで勢いよく水を到達させることができる。従って、上記(10)に係る構成の排水システムSによれば、仮設排水設備3bから主管110に排出された汚水や排出物を、当該仮設排水設備3bに対して上流側に位置する貯留装置10、210から排出されて主管110の下流側に向けて勢い良く流れる水によって洗浄できる。
【0110】
(11)上述した排水システムSは、立管120が複数設けられており、複数の立管120のうち一部の立管120の開口部122に仮設排水設備3bが接続され、複数の立管120のうち、仮設排水設備3bが接続されたものに対して主管110の上流側に隣接する位置に接続された立管120の開口部122には、仮設排水設備3bと対をなすように設けられた貯留装置10、210が接続されていること、を特徴とするものである。
【0111】
排水システムSは、上記(11)のように仮設排水設備と対をなす貯留装置10、210を主管110の上流側に隣接する位置にある立管120に設けることにより、より一層確実に、主管110において仮設排水設備に対応する位置まで勢いよく水を到達させることができる。従って、本発明の排水システムSによれば、仮設排水設備から主管110に排出された汚水や排出物をより一層確実に主管110の下流側に向けて勢い良く押し流して洗浄することができる。
【0112】
本発明は、上述した実施形態や変形例等として示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得る。上述した実施形態の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また実施形態の任意の構成要素と、課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素又は課題を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成してもよい。これらについても本願の補正又は分割出願等において権利取得する意思を有する。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、汚水を排水する排水システムや、これを構成する貯留装置において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0114】
10 貯留装置
20 貯留部
22 底部
30 張出部
40 排出部
42 排出口
44 排出筒
50 栓部
52 第一栓構成部
54 第二栓構成部
60 操作部
100 管路
110 主管
120 立管
122 開口部
130 蓋体
132 蓋枠
134 親蓋
136 子蓋
138 親蓋本体
140 嵌合孔
142 筒状部
210 貯留装置
220 貯留部
222 底部
240 排出部
250 栓部
S 排水システム