(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057074
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】組織後退装置及び送達システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/02 20060101AFI20240416BHJP
A61B 17/29 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B17/02
A61B17/29
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029979
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2022132526の分割
【原出願日】2019-04-30
(31)【優先権主張番号】62/665,441
(32)【優先日】2018-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アンガー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オト、クリストファー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ダニー シュー-フアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェールズ、ライアン
(72)【発明者】
【氏名】バーナム、アレクサンダー ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレオッティ、トレイシー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連結アセンブリによって弾性部材に連結された第1の組織係合部材を含む組織後退装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る組織後退装置(22)は、組織に係合するように構成された第1端(54a)および第2端(56a)を有する第1の組織係合部材(52a)と、連結アセンブリと、連結アセンブリによって第1の組織係合部材(52a)の第2端(56a)に連結されるテザー(62)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に係合するように構成された第1端および第2端を有する第1の組織係合部材と、
連結アセンブリと、
前記連結アセンブリによって前記第1の組織係合部材の前記第2端に連結されるテザーと、を備える、組織後退装置。
【請求項2】
前記連結アセンブリは、カプラー本体および接続部材を備え、
前記テザーは、前記カプラー本体に連結されており、
前記接続部材は、前記第1の組織係合部材の前記第2端に連結されている、請求項1に記載の組織後退装置。
【請求項3】
前記第1の組織係合部材は、ばねによって付勢された第1のジョー部材及び第2のジョー部材を含んでおり、前記接続部材は、前記ばねに連結されている、請求項2に記載の組織後退装置。
【請求項4】
前記カプラー本体および前記接続部材は相対回転可能である、請求項2に記載の組織後退装置。
【請求項5】
前記カプラー本体は、前記接続部材の長手軸線を中心として回転可能である、請求項4に記載の組織後退装置。
【請求項6】
前記第1の組織係合部材の前記第1端は、第1の姿勢および第2の姿勢の間で移動可能であり、
前記第1の組織係合部材の前記第2端は、前記第1の組織係合部材の前記第1端から離間する方向に長手方向に延びる、請求項1に記載の組織後退装置。
【請求項7】
前記テザーは、前記第1の組織係合部材に対して長手方向に回転可能である、請求項6に記載の組織後退装置。
【請求項8】
前記テザーは、前記第1の組織係合部材に対して長手方向に回転可能である、請求項1に記載の組織後退装置。
【請求項9】
前記テザーは、弾性を有する、請求項1に記載の組織後退装置。
【請求項10】
第1の姿勢および第2の姿勢の間で移動可能な第1端と、前記第1端から離間する方向に延びる第2端とを有する第1の組織係合部材と、
前記第1の組織係合部材の前記第2端に連結される弾性部材と
を備える、組織後退装置。
【請求項11】
接続部材およびカプラー本体を備える連結アセンブリをさらに備え、前記弾性部材は、前記カプラー本体に連結されており、前記接続部材は、前記第1の組織係合部材に連結されている、請求項10に記載の組織後退装置。
【請求項12】
前記カプラー本体および前記接続部材は、相対回転可能である、請求項11に記載の組織後退装置。
【請求項13】
前記第1の組織係合部材および前記弾性部材は、長手方向に相対回転可能である、請求項10に記載の組織後退装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置及び医療装置を製造するための方法に関する。より詳細には、本発明は、組織後退装置及び関連する送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な体内医療装置が、医療用途、例えば血管内用途のために開発されてきている。そのような装置の一部には、ガイドワイヤー、カテーテルなどが含まれる。そのような装置は、様々な異なる製造方法で製造され、且つ様々な方法に従って使用される。公知の医療機器及び方法にはそれぞれ、利点と欠点がある。したがって、これに代わる代替的な医療装置、並びに医療装置を製造及び使用するための代替的な方法を提供することが依然必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、医療機器の設計、材料、製造方法、及び代替的用途を提供する。例示的な組織後退装置は、連結アセンブリによって弾性部材に連結された第1の組織係合部材を含む。連結アセンブリは、第1の端部領域と第1の圧縮部材とを有する第1のカプラー本体を含む。第1のカプラー本体の第1の端部領域は、弾性部材のルーメンの一部の中に延びるように構成され、圧縮部材は、弾性部材がカプラー本体に固定的に係合されるように弾性部材を第1のカプラー本体に対して圧縮するように構成される。
【0004】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、第1のカプラー本体の第1の端部領域は、その外周面に延びるチャンネルを含む。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、第1の圧縮部材は、弾性部材を第1のカプラー本体のチャンネルの少なくとも一部の中に圧縮するように構成される。
【0005】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、圧縮部材は、圧縮リングを含む。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、圧縮部材は、縫合糸を含む。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、連結アセンブリは接続部材をさらに含み、接続部材は、カプラー本体を第1の組織係合部材に連結するように構成される。
【0006】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、接続部材は、ポスト部材及び取り付け部材を含み、ポスト部材の第1の端部領域は、取り付け部材に連結され、ポスト部材は、カプラー本体の開口部内を貫通して延びるように構成される。
【0007】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、ポスト部材は、第1の端部領域の反対側の第2の端部領域をさらに含み、ポスト部材の第1の端部領域は、第1の直径を備え、ポスト部材の第2の端部領域は、第1の直径よりも大きな第2の直径を備える。
【0008】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、開口部は第1の内径を含み、ポスト部材の第2の直径は、開口部の第1の内径よりも大きい。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、第1の組織係合部材は、第1の組織係合部分及び第1のばねを含み、取り付け部材は、第1のばねに係合するように構成される。
【0009】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、取り付け部材は、ほぼC字形である。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、取り付け部材は、第1の継手及び第2の継手を含み、第1の継手及び第2の継手は、互いに嵌合するように構成される。
【0010】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、第1の継手及び第2の継手は、第1のばねをポスト部材の第1の端部領域に連結するように構成される。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、第2の組織係合部材をさらに備え、弾性部材は、第1の組織係合部材と第2の組織係合部材との間に延びる。
【0011】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、内部に延びるルーメンを含む管状の支持部材をさらに含み、弾性部材の少なくとも一部は支持部材のルーメン内に延びる。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、支持部材は、第1の組織係合部材と第2の組織係合部材との間に配置される。
【0012】
別の組織後退装置は、第1の連結アセンブリによって弾性部材に連結された第1の組織クリップと、第2の連結アセンブリによって弾性部材に連結された第2の組織クリップとを備え、第1,第2の連結アセンブリはそれぞれ、第1の端部領域を有するカプラー本体と、圧縮部材とを含み、カプラー本体の第1の端部領域はそれぞれ、弾性部材のルーメンの一部の中に延び、圧縮部材はそれぞれ、弾性部材がカプラー本体に固定的に係合されるように弾性部材をカプラー本体上に圧縮するように構成される。
【0013】
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、カプラー本体の第1の端部領域はそれぞれ、その外周面に延びるチャンネルを含む。
上記実施形態の任意の1つに代替的に又は追加的に、圧縮部材はそれぞれ、カプラー本体のチャンネルの少なくとも一部内で弾性部材を圧縮するように構成される。
【0014】
組織を切断する方法は、組織後退装置を標的部位に前進させる工程と、組織後退装置は、連結アセンブリによって弾性部材に連結された第1の組織係合部材を含み、連結アセンブリは、第1の端部領域を有する第1のカプラー本体と第1の圧縮部材とを備え、第1のカプラー本体の第1の端部領域は、弾性部材のルーメンの一部の中に延び、圧縮部材は、弾性部材が第1のカプラー本体に固定的に係合されるように弾性部材を第1のカプラーに圧縮するように構成され、第1の組織係合部材を第1の姿勢と第2の開放姿勢との間で操作する工程と、第1の組織係合部材を標的部位に取り付ける工程とを備える。
【0015】
いくつかの実施形態の上記の概要は、本発明の開示された各実施形態又はすべての実装を説明することを意図していない。以下の図面及び詳細な説明が上記実施形態をより具体的に例示する。
【0016】
本開示は、添付の図面と合わせて以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】体管腔内に配置された例示的な組織後退装置を示す部分側断面図。
【
図10】例示的な組織後退装置を配備し且つ取り付けるための方法を示す図。
【
図11】例示的な組織後退装置を配備し且つ取り付けるための方法を示す図。
【
図12】例示的な組織後退装置を配備し且つ取り付けるための方法を示す図。
【
図13】例示的な組織後退装置を配備し且つ取り付けるための方法を示す図。
【
図14】例示的な組織後退装置を配備し且つ取り付けるための方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、様々な変更形態及び代替形態が可能であるが、そのうちの特別なものが例示することを目的として図面に示され、且つ詳細に説明されている。しかし、それは、本発明を説明する特定の実施形態限定することを意図したものではないことを理解されたい。むしろその意図は、本発明の趣旨及び範囲に含まれるすべての変更物、均等物、及び代替物を網羅することにある。
【0019】
以下の定義された用語については、請求項又は本明細書の別の場所で異なる定義が与えられない限り以下の定義が適用されるものとする。
本明細書では、すべての数値は、明示されているか否かにかかわらず、「約」という用語で修飾されることが想定されている。「約」という用語は、一般に当業者が列挙された値と同等であると考える(例えば、同じ機能又は結果を有する)数値の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語には、最も近い有効数字に四捨五入される複数の数値が含まれる。
【0020】
終点による数値範囲の列挙には、その範囲内の全ての数値が含まれる(例えば1~5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5が含まれる)。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用するように、単数形「ひとつ(a)」、「ひとつ(an)」、及び「その(the)」には、内容が明らかに別のことを指示しない限り、複数の指示対象が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合には、「又は(or)」という用語は、内容が明確に別のことを指示しない限り、「及び/又は(and/or)」を含む意味で一般に使用される。
【0021】
本明細書における「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「別の実施形態」などについての記載には、記載された実施形態が1つ以上の特定の要素、構造及び/又は特性を含むことを示す。しかしながら、そのような列挙は、すべての実施形態が特定の要素、構造及び/又は特性を含むことを必ずしも意味しない。さらに特定の要素、構造及び/又は特性が一実施形態に関連して説明される場合には、そのような要素、構造及び/又は特性は、明示的に記載されているか否かにかかわらず、反対のことが明確に述べられていない限り別の実施形態に関連して使用されてもよいことを理解されたい。
【0022】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれたい。図面の類似する要素には、同一番号が付されている。必ずしも縮尺通りではない図面は、例示的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0023】
血管内処置、消化管及び/又は胆道に沿った処置、胸部処置などを含む多くの医療処置では、医療機器を用いて体内で除去しようとする組織(例えば、「標的組織」)にアクセスすることが行われる。例えば、現在の医療処置(例えば、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、経口内視鏡的筋層切開術(POEM)、胆嚢摘出術、ビデオ補助胸腔鏡下手術(VATS))では、医師が内視鏡又は同様の医療機器を用いて癌性病変にアクセスして同癌性病変を除去する。さらに、処置の一部として、医師は、標的組織部位にアクセスするとともに、内視鏡内を貫通して切断装置を配備して標的組織を切除できる内視鏡を使用する。また、いくつかの例では、内視鏡は、医師が組織切除処置を視覚化して実行することを支援する要素を含む。例えば、一部の内視鏡は、スコープを進行させて標的組織部位に隣接して配置させた際に、体管腔を照明する照明及び/又はカメラを含む。加えて、いくつかの内視鏡は、その内部を貫通して切断部材又は別の付属の医療装置が配備され且つ使用されるルーメン(例えば作業チャンネル)を備える。
【0024】
医師は体内(例えば消化管、腹腔、胸腔内など)から癌性病変を摘出することに熟練してきてはいるが、摘出方法は、依然として非効率的で時間を要するものである。例えば、組織切除工程の可視化が不十分であることにより、組織切除処置が長時間化する場合がある。別例では、医師が切除しようとする組織自体が、処置中に医師が使用する器具の経路を妨害する場合がある。したがって、いくつかの例では、医師が使用する切除具の妨害を軽減しながら、標的組織の可視化を改善することを支援する医療機器を利用することが望ましい場合がある。よって、いくつかの例では、医師によって切除された組織領域を持ち上げて後退させる組織後退装置を使用することが望ましい場合がある。本明細書では、標的組織を持ち上げて後退するように設計された組織後退装置などの医療装置及び送達システムについて記載する。
【0025】
図1は、遠位部分12及び近位部分14を含む例示的な組織後退送達システム10を示す部分側断面図である。
図1は、例示的な体管腔16内に配置された組織後退システム10の遠位部分12を示す。さらに、
図1は、組織後退システム10の近位部分14が、体管腔16から出て体外の部位に延びることを示す。
図1に示すように、組織後退システムは、組織後退装置22を含む。加えて、組織後退システム10は、送達カテーテル26を含む。送達カテーテル26は、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ラテックス、又は類似する材料などの半剛性又は柔軟な材料から製造される。送達カテーテル26は、遠位端領域28及び近位端領域30を有する。さらに、ルーメン32は、近位端領域30から遠位端領域28まで送達カテーテル26内を貫通して延びる。図に示すように、組織後退装置22は、遠位端領域28に沿って送達カテーテル26のルーメン32内に配置される。
【0026】
加えて、
図1は、送達カテーテル26(組織後退装置22を含む)が、例示的な医療装置18内を貫通して延びることを示す。上記のように、
図1では、医療装置18は、内視鏡、腹腔鏡、針、カテーテル、ガイドチューブなどの形態をとることができる。医療装置18は、遠位部分23及び近位部分25を含む。さらに、
図1は、医療機器18の遠位部分23は、病変などの標的組織50に隣接する部位まで体管腔16の一部の内部で前進されるが、医療機器18の近位部分25は体管腔16から出て体外の部位に延びることを示す。
【0027】
医療装置18は、医療装置18の近位部分25から遠位部分23まで延びるルーメン21を含む。いくつかの例では、ルーメン21は、医療装置18の「作業チャンネル」と呼ばれる。ルーメン21は、様々な医療器具が内部を通過できるように設計される。例えば、医師は、所与の医療処置の過程で作業チャンネル21を介して様々な医療装置を通過又は交換することができる。例えば、
図1に示すように、送達カテーテル26(組織後退装置22を含む)は、医療装置18のルーメン21内を貫通して延びる。換言すれば、
図1は、医師が送達カテーテル26の遠位端28を医療器具18の近位部分25(体外)に挿入して、ルーメン21内を介して送達カテーテル26を前進させることによって、送達カテーテルの遠位端28は、医療装置18の遠位部分23から外方に退出して標的組織50に隣接する部位まで延びることを示す。
【0028】
送達カテーテル26の近位端30は、制御部材42を含む。制御部材42は、送達カテーテル26の移動を制御するためのグリップとして使用される。制御部材42はまた、使用者が送達カテーテル26を回転できるようにする。以下でさらに詳細に説明するが、制御部材42は、送達カテーテル26の遠位端28から組織後退装置22を配備するのに先立ち、送達カテーテル26の遠位端28を標的組織50に隣接する部位まで前進させるために医師により使用される。
【0029】
いくつかの例では、医療装置18は、更なる要素を含む。例えば、
図1に示す医療装置18は、医療装置18の遠位部分23に配置された付属の要素20(例えば、照明、カメラなど)を含む。また、更なる要素を有する別の医療装置18が組織後退システム10と併せて使用されてもよい。
【0030】
図1に示すように、いくつかの例では、組織後退システム10は、組織後退装置22を送達カテーテル26の遠位端28から出て前進させる(例えば押す、配備するなど)ように設計された操作装置34(「マニピュレータ」)を含む。以下でさらに詳細に説明するが、マニピュレータ34は、組織後退装置22を送達カテーテル26から外に押し出した後、体管腔16内で組織後退装置22を配置したり操作したりするためにも使用される。
【0031】
図1に示すように、マニピュレータ34は、送達カテーテル26のルーメン32内に延びる。換言すれば、
図1は、マニピュレータ34の遠位端38は、送達カテーテル26の近位端30(体外にある)から送達カテーテル26のルーメン32内を貫通して延び、マニピュレータ34の遠位端38は、組織後退装置22の近位端に隣接して配置されることを示す。
【0032】
マニピュレータ34の近位端40は、ハンドル部材44を含む。使用者はハンドル部材44を把持して、送達カテーテル26のルーメン32内でマニピュレータの遠位端38を前進させる(例えば移動させる)ことを可能にする1つ以上のフィンガーグリップ45を含む。言い換えると、装置使用者は、ハンドル44を把持して操作することにより、マニピュレータ34を送達カテーテル26の長手方向軸に沿って移動させることができる。
図1に示すハンドルのデザインは概略である。別のハンドルのデザインも考えられる。例えば、本明細書で説明する組織後退システム10(及びその構成要素)とともに使用することができる異なるグリップ構成、人間工学的要素などを含むハンドルのデザインが考えられる。
【0033】
マニピュレータ34の遠位端38は、把持部材39(例えば鉗子、ジョーなど)を含む。送達カテーテル26のルーメン32内に配置されたとき、把持部材39は、閉鎖姿勢にある(例えば、把持部材39のジョーは閉鎖されて互いに接触する)。また、ハンドル部材44は、把持部材39の開閉を制御するように構成される。換言すれば、把持部材39を送達カテーテル26のルーメン32の外側の部位まで前進させた時、使用者は、ハンドル部材44を操作して把持部材39を開閉することができる。
【0034】
上記のように、マニピュレータ34は、組織後退装置22を送達カテーテル26の遠位端28の外に配備するために使用される。具体的には、組織後退装置22が標的組織50に隣接して配置されると、把持部材39が、組織後退装置22の近位端に接触して組織後退装置22の近位端を送達カテーテル26の遠位端28の外に押すことができるように、使用者は、送達カテーテル26のルーメン32内で近位から遠位方向にマニピュレータ34を前進させ得る。
【0035】
本明細書で考える少なくともいくつかの例では、マニピュレータ34及び組織後退装置22は、
図1に示すように、送達カテーテル26が医療装置18のルーメン21内を通って前進される前に、送達カテーテル26内に配置される。言い換えると、いくつかの例では、マニピュレータ34及び組織後退装置22の双方は、医療装置18の作業チャンネル21内に挿入されて組織50に隣接する部位に前進される前に、送達カテーテル26内に「予め装填される」。しかしながら、別例では、組織後退装置22のみが送達カテーテル26の中に予め装填され、医療装置18のルーメン21内で標的組織50に隣接する部位まで前進され、その後、マニピュレータ34は、医療装置18のルーメン21の中に別個に挿入されて把持部材39が組織後退装置22の近位端に隣接及び/又は接触する部位まで前進されてもよい。
【0036】
上記説明から、組織後退システム10は、送達カテーテル26及びマニピュレータ34が互いに相対して移動(例えば移動、回転など)し得るように設計されることが理解できる。例えば、送達カテーテル26の遠位端28が標的組織50に隣接して配置されると(マニピュレータ34は組織後退装置22の遠位端に隣接して配置される)、装置使用者は、制御部材42とハンドル部材44の双方を把持する。これにより、装置使用者は、把持部材39が送達カテーテル26の遠位端28に対して遠位方向に移動するように、送達カテーテル26の遠位端28を固定位置に維持しながらマニピュレータ34を遠位方向に前進させることができる。この相対移動により、組織後退装置22は、送達カテーテル26の遠位端28から外に押し出される。
【0037】
別例では、使用者がマニピュレータ34を遠位方向に前進させて組織後退装置22を配備する代わりに、使用者がマニピュレータ34を固定位置に維持しながら送達カテーテル26を後退させてもよい。送達カテーテル26の後退させることにより、組織後退装置22を「露出」させて、組織後退装置を送達カテーテル26のルーメン32から離脱させることができる。
【0038】
図2は、例示的な組織後退装置22を示す。組織後退装置22は、1つ以上の係合部材51(例えば、クリップ、クラスプ、ファスナー、クランプなど)を含む。例えば、
図2は、組織後退装置22が第1の係合部材52a及び第2の係合部材52bを含むことを示す。第1の係合部材52aは、第1の端部54a及び第2の端部56aを含む。第1の端部54aは、1つ以上のジョー61a(例えばエンドエフェクタ)を含む。複数のジョー61aは、互いに対して相対移動するように設計される。
図2は、第1の係合部材52aの第2の端部56aがばね60aを含むことをさらに示す。ばね60aは、第1の係合部材52aの本体からジョー61aに伝達される圧縮力を形成するように設計され、ジョー61aを閉鎖姿勢(例えば、ジョー61aが互いに接触する姿勢)に付勢する。
【0039】
いくつかの例では、ジョー61aの端部は、閉鎖姿勢にある間、必ずしも互いに接触しなくてもよい。ジョー61aは、閉鎖姿勢にある間、互いに離間されていてもよい。閉鎖姿勢にある間、ジョー61aを互いに離間させることにより、組織と接触したときに追加の圧縮力を生成することができる。この追加の圧縮力は、「予め加えられた負荷(preload)」と呼ぶことができる。この予め加えられた負荷の力の範囲は、約5グラム~約200グラムの力まで、又は約15グラム~約40グラムの力までの範囲で変化し得る。
【0040】
本明細書で説明する例に示す係合部材51は、概略的であることが理解できる。言い換えれば、本明細書で説明する係合部材51は、本明細書で考える例の範囲から逸脱することなく代替的な設計構成、要素、幾何学形状などを含み得ると考えられる。例えば、第1の係合部材52aの第1の端部54aと第2の端部56aとの間に、第1の係合部材52aのばね60aが配置されることが考えられる。さらに、本明細書で考える例の範囲から逸脱することなく、ジョー(例えばエンドエフェクタ)は、様々な異なる形状及び/又は幾何学形状を有し得ることが考えられる。別の変更形態も考えられる。
【0041】
図2は、第1の係合部材52aが1つ以上の掴持部材58aを含むことをさらに示す。例えば、
図2は、掴持部材58aがジョー61aと同じ材料から形成されることを示す。言い換えると、ジョー61a及び掴持部材58aは、モノリシック構成要素として形成される。例えば、ジョー61a(例えば、エンドエフェクタ)及び把持部材は、金属射出成形(MIM)、従来の機械加工、型打ち、付加製造などで形成される。しかし、これは限定を意図していない。ジョー61a及び掴持部材58aは、
図2に示す構造を形成するためにともに取り付けられる(例えば溶接、接着、圧入など)2つの別個の構成要素として形成されてもよい。さらに、
図2は、いくつかの例では、掴持部材58aの一部は、ばね60aに係合、嵌合、相互接続、取り付け等されるように設計されることを示す。例えば、
図2は、ばね60aの一部は、掴持部材58aのチャンネル内に延びることを示す。ばね60aは、掴持部材58aにしっかりと取り付けられ得る(例えば溶接、固定など)。
【0042】
上記のように、組織後退装置22は、送達カテーテル26の遠位端28から外に配備された後、マニピュレータ34を用いて体管腔16内の標的組織50に配置され及び/又は取り付けられる。掴持部材58aは、(マニピュレータ34の遠位端38に配置された)把持部材39に係合するように設計されることが理解できる。言い換えれば、掴持部材58aは、把持部材39が第1の係合部材52aに係合、取り付け、把持、掴持、捕捉などするためのインターフェースを提供する。
【0043】
さらに、掴持部材58aは、マニピュレータ34が第1の係合部材52aのジョー61aを効率的に取得、位置決め(及び/又は再位置決め)、及び開閉することを可能にするように設計される。
図2は、第1の係合部材52aの第1の端部54a及び/又は第2の端部56aの間に配置された掴持部材58aを示すが、掴持部材58aは、第1の係合部材52aの別の部分に沿って配置されてもよいと考えられる。例えば、掴持部材58aは、第1の係合部材52aの第1の端部54a及び/又は第2の端部56aに配置されてもよい。
【0044】
上記のように、組織後退装置22は、1つ以上の組織係合部材(例えば、上記の第1の組織係合部材52aに加えて別の係合部材)を含んでもよい。例えば、
図2は、組織後退装置22が第2の組織係合部材52bを含むことを示す。第2の組織係合部材52bは、形態及び機能の点で第1の組織係合部材52aに類似する。例えば、第2の組織係合部材52bは、第1の端部54b及び第2の端部56bを含む。第1の端部54bは、1つ以上のジョー61bを含む。ジョー61bは、互いに対して移動するように設計される。
図2は、第2の組織係合部材52bの第2の端部56bがばね60bを含むことをさらに示す。ばね60bは、第2の係合部材52bの本体を通ってジョー61bに伝達される圧縮力を形成するように設計され、ジョー61bを閉鎖姿勢(例えば、ジョーが互いに接触する姿勢)に付勢する。本明細書で説明する例に示す第2の係合部材52bは、概略的であることが理解できる。言い換えれば、本明細書で説明する第2の係合部材52bは、本明細書で考える例の範囲から逸脱することなく代替的設計構成、要素、幾何学形状などを含んでもよいと考えられる。例えば、第2の係合部材52bのばね60bは、第2の係合部材52bの第1の端部54bと第2の端部56bとの間に配置される。別のバリエーションも考えられる。
【0045】
図2は、第1の係合部材52aが1つ以上の掴持部材58bを含むことをさらに示す。例えば、
図2は、掴持部材58bがジョー61bと同一材料から形成されることを示す。換言すると、ジョー61b及び掴持部材58bは、モノリシック構成要素として形成される。例えば、ジョー61a(例えばエンドエフェクタ)及び掴持部材は、金属射出成形(MIM)、従来の機械加工、型打ち、付加製造などで形成される。しかしながら、これは限定を意図していない。ジョー61a及び掴持部材58aは、
図2に示す構造を形成するためにともに取り付けられる(例えば溶接、接着、圧入など)2つの別個の構成要素として形成されてもよい。さらに、
図2は、いくつかの例では、掴持部材58bの一部は、ばね60bに係合、嵌合、相互接続、取り付け等されるように設計されることを示す。例えば、
図2は、ばね60bの一部が、掴持部材58bのチャンネル内に延びることを示す。ばね60bは、掴持部材58bにしっかりと取り付けられ得る(例えば溶接、固定など)。
【0046】
図2は、組織後退装置22が、第1の係合部材52a、第2の係合部材52b又は第1の係合部材52a及び第2の係合部材52bの双方に連結されたテザー62(
図2に破線で示す)を含むことをさらに示す。テザー62は、内部に延びるルーメンを有する管状部材である。テザー62は、弾性部材、バンド、ロープ、コード、綱、ストラップ、ストランドなどと呼ばれてもよい。テザー62は、様々な断面形状を含み得る。例えば、テザーは、円形、長方形、三角形などであり得る。さらに、テザー62は生体吸収性であり得る。
【0047】
少なくともいくつかの例では、テザー62はエラストマーである。いくつかの例では、テザー62は、ラテックス、ニトリル(登録商標)ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコーンゴム、クロロプレン、ポリクロロプレン(例えば、ネオプレン(登録商標))、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー、ポリイソプレンなどのエラストマー材料から形成される。
【0048】
テザー部材62は、第1の引き伸ばされた(例えば弛緩)姿勢から第2の引き伸ばされていない姿勢まで延伸可能である。組織後退装置22が延伸姿勢にあるとき、組織後退装置22は張力状態にあるため、組織後退装置22の長手方向軸線に沿って第1の係合部材52aを第2の係合部材52bに向かって引っ張る後退力を備える。
【0049】
上記のように、送達カテーテル26から配備される前には、組織後退装置22は、送達カテーテルの遠位端28内に、延伸されていない弛緩状態で配置される。確実に組織後退装置22が体管腔16内に効率的に配備されるために、組織後退装置22は、送達カテーテル26内に適切に配置(配備前に)されていなければならない。例えば、組織後退装置22が送達カテーテル26の遠位端28内で前進及び/又は操作される間に、組織後退装置22が折りたたまれたり自身に巻かれたりする(例えば、自身に折り返える)ことを防止することが重要である。
【0050】
図2は、いくつかの例では、組織後退装置22は、支持部材64を含むことを示す。いくつかの場合には、支持部材64は、内部に延びるルーメン53を有する管状部材である。例えば、
図2に示す組織後退装置22は、支持部材64のルーメン53内に延びるテザー部材62を示す。さらに、
図2は、支持部材64が第1の組織係合部材52aと第2の組織係合部材52bとの間に延びる(例えば、それらの間に配置される)ことを示す。
図2は、支持部材64を管状部材として示すが、支持部材64の別の断面形状も考えられる。例えば、支持部材64の断面形状は長方形、三角形、楕円形、正方形などであってもよい。さらに、組織後退装置22は、1つ以上の支持部材64を含んでもよいと考えられる。例えば、組織後退装置22は、1、2、3、4、又はそれ以上の支持部材を含んでもよい。
【0051】
上記のように、
図2は、支持部材64がテザー部材62に沿って配置されることを示す。例えば、いくつかの例では、テザー部材62は、支持部材64のルーメン53内を貫通して延びる。少なくともいくつかの例では、支持部材64は、テザー62が支持部材64のルーメン53の中に圧縮することを許容する。したがって、支持部材64のルーメン53の直径は、テザー62が自身に丸まって支持部材64のルーメン内に「格納」されることを許容にするために十分な幅である。テザー62を支持部材64のルーメン内に格納可能にすることにより、テザー62が第1の係合部材52aに絡まることを防止し得る。
【0052】
さらに、本明細書で説明する少なくともいくつかの例では、支持部材64は、装置送達前のパッケージング及び保管中の圧縮に耐えるのに十分な剛性及びカラム強度を備え得る。可能な材料には、ポリプロピレン、PET、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチレン(PE)、又はCelanese GUR HOSTALLOY 731などの高密度ポリエチレン(HDPE)が含まれる。
【0053】
図2は、テザー62が、カプラー本体36a及び接続部材46aを介して組織係合部材52aに連結されることをさらに示す。以下でさらに詳細に説明するが、接続部材46aは、ポスト部材48a及び取り付け部材47aを含む。
図2は、カプラー本体36aの近位端が、テザー部材62のルーメン53内に延びることをさらに示す。圧縮部材49aは、カプラー本体36aの近位端及びテザー62の双方の上に配置され、圧縮部材49aは、カプラー本体36aの近位端上にテザー62を径方向に圧縮して、テザー62をカプラー本体36aに固着するのに十分な力を加える。言い換えると、テザー62は、テザー62をカプラー本体36aと圧縮部49aとの間に「挟む」ことにより、カプラー本体36aに取り付けられる。圧縮部材49aは、本明細書で考える例の範囲から逸脱することなく、様々な異なる構造を含み得る。例えば、圧縮部材49aは、圧縮リング、縫合糸、クランプ、紐、結び目、圧着された超音波溶接、ループなどを含み得る。
【0054】
以下で更に詳細に説明するが、ポスト部材48aは、カプラー本体36aに形成された開口部57a内を貫通して延び、ポスト部材48aの近位端が開口部57a内を通過して引っ張られることが防止される。換言すれば、以下の
図3に示すように、ポスト部材48aは、ポスト部材48aを回転可能にしつつポスト部材48aがカプラー本体36aから分離するのを防止する近位端を含む。
【0055】
さらに、
図2は、ポスト部材48aの遠位端が取り付け部材47aに取り付けられることを示す。例えば、
図2は、取り付け部材47aが、部分リングに類似する湾曲部分(例えば、実質的にC字形状の部分)を含むことを示す。
図2は、取り付け部材47aは、ばね60aのループ部分内を貫通して延びることにより、ばね60aを介して取り付け部材47aを組織係合部材52aに連結することをさらに示す。さらに、
図2は、取り付け部材47aがポスト部材48aの遠位端に取り付けられることにより、ポスト部材48aを介して取り付け部材47aをカプラー本体36aに連結することを示す。したがって、接続部材46a(取り付け部材47a及びポスト部材48aを含む)は、カプラー本体36a及び圧縮リング49aとともに、組織係合部材52aをテザー部材62に連結する。
【0056】
上記説明は、第2の組織係合部材52bをテザー62に連結する場合にも当てはまることに留意されたい。例えば、第2の組織係合部材52bは、接続部材46bを介してカプラー本体36bに連結される。上記したものと同様に、接続部材46bは、取り付け部材47b及びポスト部材48bを含む。取り付け部材47bは、ばね60bに連結される。加えて、取り付け部材47bは、ポスト部材48bに取り付けられる。上記のように、ポスト部材48bは、カプラー本体36bの開口部57b内を貫通して延びる(
図2では見えない)。さらに、テザー62は、圧縮リング49bのカプラー本体36bへの径方向の圧縮によりカプラー本体36bに取り付けられる。
【0057】
図3は、上記組織後退装置22の一端を示す分解図である。
図3は、上記のように、テザー部材62を組織係合部材52aに連結するために使用される個々の構成要素を示す。例えば、
図3は、ばね60aを含む組織係合部材52aを示す。
図3に示すように、ばね60aは、取り付け部材47aがその内部を貫通して延びるコイル状部分を含む。上記及び
図3に示すように、取り付け部材47aは、部分リングに類似する湾曲部分75aを含む。加えて、取り付け部材47aは、アセンブリを目的として開口部67aを含み、開口部は、取り付け部材をばね60aのコイル状部分内に挿入可能にする。
【0058】
図3はさらに、圧縮部材49aとカプラー本体36aの両方を示す。いくつかの例では、カプラー本体36aは、カプラー本体36aの周囲に周方向に延びるチャンネル55aを含む。チャンネル55aは、圧縮部材49aと嵌合するように設計される。例えば、チャンネル55aの幅、深さ及び/又は外形は、圧縮部材49aの幅、厚さ及び/又は外形に一致し得る。上記のように、テザー62をカプラー本体36aに固着するために、テザー62は、カプラー本体36aと圧縮部材49aとの間で径方向に圧縮される。
【0059】
加えて、
図3は、カプラー本体36aが、ポスト部材48aがその内部を貫通して延びることのできる開口部57aを含むことをさらに示す。開口部57aの直径は、
図3に「X
1」で示す。加えて、
図3は、ポスト部材48aが第1の端部領域59a及び第2の端部領域63aを含むことを示す。ポスト部材48aの第2の端部領域63aは、テーパ部を含む。テーパ部は、開口部57aの直径X
1よりも大きな直径「Y
1」を備える。ポスト部材48aは、ポスト部材48aが開口部57a内を貫通して延びることを許容する長さを備えることにより、第1の端部領域59aは、取り付け部材47aに固着されることが理解できる。例えば、ポスト部材48aの第1の端部領域59aは、取り付け部材47aに溶接される。ポスト部材48aがカプラー本体36a内を貫通して延びて取り付け部材47aに取り付けられると、カプラー本体36aは、取り付け部材47aとポスト部材48aの取り付けられた組み合わせに連結される。
【0060】
図3は、テザー62のルーメン53が、カプラー本体36aの一部を覆って配置されるような寸法にされることをさらに示す。例えば、テザー62は、テザー62の一部がチャンネル55aに沿って配置されるようにカプラー本体36aの近位部の上を覆って配置される。上記のように、圧縮部材49aは、テザー62をカプラー本体36aに径方向に圧縮することによりテザー62をカプラー本体36aに取り付けるように、テザー62の上を覆って配置される。
【0061】
図4は、例示的な組織係合部材52aを示す。上記のように、組織係合部材52aはジョー61a、掴持部材58a、及びコイルばね60aを含む。
図4は、ばね部分60aが、掴持部材58aに配置された溝69aに係合する(例えば、嵌合する)1つ以上のステム68aを含むことをさらに示す。ステム68aは、様々な技術を用いて溝69aの内部に取り付けられると考えられる。例えば、ステム68aは、溝69aの内部に溶接、圧入、接着等される。
【0062】
さらに、
図4は、ジョー61aがそれぞれ、1つ以上の歯65を含むことを示す。歯65は、様々な異なる構成で配向された様々な異なる形状を含むことが理解できる。
図4に示すジョー61aはそれぞれ、2つの歯65を含み、一方のジョー61aの歯65は、他方のジョー61aの歯65と鏡映の関係にある。言い換えれば、「上部」ジョーの歯65は、「下部」ジョーの歯65に整合する。また、
図4は、歯の特定の配置が歯65の中央領域に位置する隙間66を生じることを示す。さらに、ジョー61aは、第1の係合部材52aのコイル状部分60aに面する傾斜を呈するように設計されることが理解できる。例えば、
図4は、各歯65を規定する各ジョー61aの「顔」が、
図4に「θ」で示す角度で内方に傾斜されることを示す。
図4は、角度が組織をより積極的に係合する鋭利な点を作り出すことを示す。傾斜の方向は、捕捉された組織が外れないようにすることにより組織の噛み合わせを強化する。
【0063】
図5は、別例の組織後退装置122を示す。組織後退装置122は、上記の組織後退装置22と形態及び機能の点で類似する。例えば、組織後退装置は、第1の組織係合部材52a(ジョー61a、掴持部材58a、及びばね60aを含む)及び第2の組織係合部材52b(ジョー61b、掴持部材58b、及びばね60bを含む)を含む。さらに、第1の組織係合部材52aは、接続部材146a及びカプラー本体136aを介してテザー62に連結される。同様に、第2の組織係合部材52bは、接続部材146b及びカプラー本体136bを介してテザー62に連結される。上記のように、組織後退装置122は、テザー62に沿って配置された支持部材64を含む。
【0064】
図6は、上記の組織後退装置122の一端を示す分解図である。
図3について上記したものと同様に、
図6は、テザー62を
図5に示す組織係合部材52aに連結するために使用される個々の構成要素を示す。例えば、
図6は、掴持部材58a及びばね60aを含む組織係合部材52aを示す。加えて、
図6は、内部に延びるルーメン53を含むテザー62を示す。しかしながら、
図6は、接続部材146a(
図5で説明)の個々の構成要素であって、カプラー本体136aとともに組織係合部材52aをテザー62に連結する接続部材の構成要素を示す。
【0065】
その目的を達成する為に、接続部材146a(
図5で説明)は、ポスト部材148a、第1の継手167a、及び第2の継手168aを含む。ポスト部材は、第1の端部159a及び第2の端部163aを含む。第1の継手167a及び第2の継手168aは、互いに嵌合するように設計されることが理解できる。言い換えると、第1の継手167a及び第2の継手168aは、「スナップ」して単一の構成要素を形成する2つの別個の構成要素である。さらに、第1の継手167a及び第2の継手168aは、ポスト部材148aの第1の端部159aに配置されたばね60aのコイル状部分及び突起170aの双方を捕捉するように設計された1つ以上の「ボイド」又は「突起」を含むことがさらに理解できる。
【0066】
例えば、突出部170aは、ボイド171aに係合するように設計され、ボイドの半分は第1の継手167aに形成され、ボイドの半分は第2の継手168aに形成される(第1の継手167aに形成されたボイド171aのうちの半分は、
図6では見ることができない)。加えて、
図6は、第1の継手167aから外方に延びる第2の突起173aと嵌合するように設計された第2の継手168aから外方に延びる第1の突起172aを示す。上記のように、第1の突起172a及び第2の突起173aは、ばね部60aに形成された開口174aを貫通して互いに噛み合うことにより、第1の継手167aと第2の継手168aとの間でばね部分60aを捕捉するように設計されている。
【0067】
加えて、
図6は、カプラー本体36aが、ポスト部材148aがその内部を貫通して延びる開口部157aを含むことを示す。開口部157aの直径は、
図6に「X
2」として示す。加えて、
図6は、ポスト部材148aが第1の端部領域159a及び第2の端部領域163aを含むことを示す。ポスト部材148aの第2の端部領域163aは、拡大部分を含む。拡大部分は、開口部157aの直径X
2より大きな直径「Y
2」を含む。ポスト部材148aは、ポスト部材148aが開口部157a内を貫通して延びること許容する長さを含み、第1の端部領域159aの突出部170aは、第1の継手167aと第2の継手168aとを介して形成されるボイド171aに固着される。さらに、ポスト部材148aがカプラー本体136a内を貫通して延びて、第1の継手167a及び第2の継手168aに取り付けられると、カプラー本体136aは、第1の継手167a、第2の継手168a、及びポスト部材148aの取り付けられた組み合わせに連結される。
【0068】
図6は、テザー62のルーメン53が、カプラー本体136aの一部を覆って配置されるような寸法に形成されることをさらに示す。例えば、テザー62は、テザー62の一部がチャンネル155a(カプラー本体136aの周りで周方向に延びる)に沿って配置されるように、カプラー本体136aの近位部の上を覆って配置される。上記のように、圧縮部材(例えば、圧縮リング、縫合糸、バンド、クランプなど)は、カプラー本体136a上にテザー62を径方向に圧縮することにより、テザー62をカプラー本体136aに取り付けるようにテザー62の上を覆って配置される。
【0069】
図7~9は、組織係合部材の別例を示す。
図7~9に示す組織係合部材は、本明細書で考える範囲から逸脱することなく、寸法、形状、及びジオメトリなどが異なり得る。例えば、本明細書で説明するエンドエフェクタ(例えば、ジョー、歯、掴持部材など)の特定の形状及びジオメトリが異なる。しかしながら、例示的な組織係合部材に関して説明した要素はいずれも、本明細書で説明した任意の別の組織係合部材に適合し得ると考えられる。
【0070】
図7は、別の例示的な組織係合部材251を示す。組織係合部材251は、上記組織係合部材51と形態及び機能の点で類似する。例えば、組織係合部材251は、ジョー261、掴持部材258、及びばね260を含む。さらに、
図7は、ジョー261がそれぞれ、1個の平坦な歯265を含み、一方の歯265は、他方の歯に対面することを示す。
図4に示す組織係合部材52aについて説明したように、歯265はそれぞれ、コイル状部分260に向かって角度が付くように傾斜を有する。傾斜の方向は、捕捉された組織が外れないようにすることにより組織の噛み合わせを強化する。
【0071】
図8は、組織係合部材351の別例を示す。組織係合部材351は、上記の別の組織係合部材と形態及び機能の点で類似する。例えば、組織係合部材351は、ジョー361、掴持部材358、及びばね360を含む。さらに、
図8は、
図8の「上部」ジョー361が第1の歯365及び第2の歯375を含み、第1の歯365は、第2の歯375よりも広いことを示す。さらに、第1の歯365は、第2の歯375から間隔をあけて配置され、第1の歯365と第2の歯375との間にギャップ366を生成する。同様に、
図8の「下部」ジョー361は、第1の歯365及び第2の歯375を含み、第1の歯365は、第2の歯375よりも広い。さらに、第1の歯365は、第2の歯375から間隔をあけて配置され、第1の歯365と第2の歯375との間にギャップ366を生成する。さらに、歯は、上列の第1の歯365が下列のギャップ366に整合し、下列の第1の歯365が上列のギャップ366に整合するように構成される。つまり、上列の歯は下列の歯に噛み合うように設計される。
【0072】
さらに、各第1の歯365及び各第2の歯375は、(別の組織係合部材について説明したように)コイル状部分360に向かって角度が付くように傾斜されることが理解され得る。傾斜の方向は、捕捉された組織が外れないようにすることにより組織の噛み合わせを強化する。
【0073】
図9は、組織係合部材451の別例を示す。組織係合部材451は、上記の別の組織係合部材に形状及び機能の点で類似する。例えば、組織係合部材451はジョー461、掴持部材458、及びばね460を含む。さらに、
図9は、ジョー461がそれぞれ1つ以上の歯465を含むことを示す。歯465は、様々な異なる構成で配向された様々な異なる形状を含むことが理解できる。
図9に示す各ジョー461は、2つの歯465を含み、一方のジョー461の歯465は、他方のジョー461の歯465と鏡映の関係にある。言い換えると、「上部」ジョーの歯465は、「下部」ジョーの歯465に整合する。また、
図9は、歯465の特定の配置が、歯465の中央領域に位置する隙間466を生じることを示す。
【0074】
さらに、別の組織係合部材に関して上記したように、歯465はそれぞれ、コイル状部分460に向かって角度が付くように傾斜される。傾斜の方向は、捕捉された組織が外れないようにすることにより組織の噛み合わせを強化する。
【0075】
図10~14は、上記の組織後退システム10を配備して使用するための一連の工程を示す。組織後退装置22は、臨床医によって切断された標的組織を持ち上げて再配置するために使用される。以下の図で明らかになるように、臨床医が標的組織を切り取るにつれて、組織後退装置がそれを持ち上げて再配置することにより、進行中の処置の妨げのない視野を臨床医に提供する。
【0076】
図10は、切断処置において組織後退システム10を使用する際の第1の工程を示す。上記及び
図10に示すように、臨床医は、最初に近位から遠位方向に(送達カテーテル26の遠位端28に対して)マニピュレータ34を前進させる。マニピュレータの前方への移動により、マニピュレータの把持部材39は、組織後退装置22を前方であって且つ送達カテーテル26の遠位端28から外に押し出す。
図10は、組織後退装置22を送達カテーテル26の遠位端28から外側に前進させて、組織後退装置22を組織標的50(例えば癌性病変)に隣接して配置することを示す。
【0077】
図11は、切断処置において組織後退システム10を使用する際の例示的な第2の工程を示す。
図11は、臨床医がマニピュレータ34の遠位端38を操作して第1の係合部材52aを把持することを示す(明確化のために、
図11では、把持部材39を閉鎖姿勢で示す。把持部材39は、開いて第1の係合部材52aを把持することが理解できる)。例えば、臨床医は、組織後退システム10のハンドル44を操作して把持部材39のジョーを開く。開かれると、把持部材のジョーは、第1の係合部材52aの掴持部材58aに係合できる。掴持部材58aを係合した後、臨床医は、把持部材39のジョーを閉じることにより第1の係合部材52aのジョー61aを開く。次に、臨床医は、把持部材39を使用してジョー61aを標的組織50の表面に配置する。掴持部材58bから把持部材39を離脱させることにより、第1の係合部材52aのジョー61aは、閉じて、ジョー61a(ひいては第1の係合部材52a)を標的組織50の表面に取り付けることができる。
【0078】
図12は、切断処置において組織後退システム10を利用する際の例示的な第3の工程を示す。
図12は、臨床医がマニピュレータ34の遠位端38を操作して第2の係合部材52bを把持することができることを示す(明確化のために、把持器39は
図12では閉鎖姿勢で示す)。把持部39は、開いて第2の係合部材52bを把持できることが理解できる。例えば、臨床医は、組織後退システム10のハンドル44(上記)を操作して、把持部39のジョーを開くことができる。開かれると、把持部のジョーは、第2の係合部材52bの掴持部材58bに係合できる。掴持部材58bに係合した後、臨床医は、把持器39のジョーを閉じることにより、第2の係合部材52bのジョー61bを開く。その後、臨床医は、第2の係合部材52bを引っ張ることにより組織後退装置22を延伸する(
図2,3について説明したように)。組織後退装置が所望の長さ(上記のように参照マーカー66を介して視覚的に確認できる)に延伸されると、臨床医は、第2の係合部材52bのジョー61bを標的組織部位50の表面に配置する。把持部材39を掴持部材58bから離脱させることにより、第2の係合部材52bのジョー61bを閉じて、ジョー61b(ひいては第2の係合部材52b)を体管腔16の内面に取り付けることができる。
【0079】
図13は、切断処置において組織後退システム10を使用する際の例示的な第4の工程を示す。
図13は、標的組織50及び標的組織部位から間隔を置いた部位における体管腔16の内面(これにより組織後退装置22を緊張状態に置く)の双方に組織後退装置22を取り付けた後、臨床医は、マニピュレータ34を切断具74に交換することを示す。切断具74は、標的組織50に配置された切断部材76を含む。さらに、切断具74は、上記のように医療装置18の作業チャンネル21内で前進される。
【0080】
図14は、切断処置において組織後退システム10を使用する際の例示な第5の工程を示す。
図14は、臨床医は、切断具74を使用して標的組織50の一部を切断することにより組織の切除を行うことを示す。
図14から理解できるように、切断具74が標的組織50の一部を切断すると、組織後退装置22が後退することにより(テザー部材62a/62bの後退を介して)、標的組織50の切開部分78を上方であり且つ臨床医によって切断された組織面から離間する方向に持ち上げる。標的組織50の切断された部分78を持ち上げて後退させることにより、臨床医の為に明確で遮るもののない術野が維持される。必要に応じて、組織後退システム10の係合部材52a/52bは、再配置することができることに留意されたい。言い換えると、必要に応じて組織後退システム10には、張力及び/又は方向の調整が付与できる。
【0081】
特定の図及び/又は実施形態について説明した任意の組織後退システムの要素は、その特定の例に限定されないことに留意されたい。むしろ、単一の例に関して説明した要素又は例の全ては、本明細書で説明した任意の別例に組み込まれてもよいと考えられる。
【0082】
本明細書で説明した組織後退システム10の様々な構成要素及び様々な装置に使用することができる材料には、医療装置に一般的に対応するものが含まれる。簡潔化のために、以下の説明は、組織後退システム10を参照して行うが、説明は、本明細書で説明した別の類似する装置にも適用することができるため、それは、本明細書で説明した装置及び方法を組織後退システム10のみに限定することを意図していない。
【0083】
組織後退システム10及び/又は組織後退システム10の別の構成要素は金属、金属合金、ポリマー(そのいくつかの例は以下で説明する)、金属-ポリマー複合材、セラミック、それらの組み合わせなど、又は別の適した材料で製造される。適したポリマーの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えばデュポン社から入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(DSM Engineering Plastics社から入手可能なARNITEL(登録商標)など)、エーテル又はエステルベースのコポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート、及び/又は他のポリエステルエラストマー(デュポン社から入手可能なHYTREL(登録商標)など)、ポリアミド(例えば、バイエル社から入手可能なDURETHAN(登録商標)、又はElfAtochem社から入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX(登録商標)などの商品名で入手可能なPEBA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex高密度ポリエチレン、Marlex低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標)など)、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMS American Grilon社から入手可能なGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBS及び/又はSIBS50A)、スチレンエチレンブチレンスチレン(SEBS)、熱可塑性エラストマー(TPE)(TeknorApex社から入手可能なMedalist(登録商標)、及び/又はHexpolTPE社から入手可能なmediprene(登録商標)など)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマー、他の適切な材料、又はそれらの混合物、組み合わせ、コポリマー、ポリマー/金属複合体などが含まれる。いくつかの実施形態では、シースは、液晶ポリマー(LCP)とブレンドすることができる。
【0084】
適した金属及び金属合金の例には、304V、304L、316LVステンレス鋼などのステンレス鋼;軟鋼;線形弾性及び/又は超弾性ニチノールなどのニッケルチタン合金;ニッケルクロムモリブデン合金(例えばINCONEL(登録商標)などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)などのUNS:N10276、別のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル銅合金(例えばMONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400などのUNS:N04400)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えばMP35-N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニッケルモリブデン合金(HASTELLOY(登録商標)ALLOYB2(登録商標)などのUNS:N10665)、その他のニッケルクロム合金、その他のニッケルモリブデン合金、その他のニッケルコバルト合金、その他のニッケル鉄合金、その他のニッケル銅合金、その他のニッケルタングステン又はタングステン合金などの別のニッケル合金;コバルトクロム合金;コバルトクロムモリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003);プラチナ強化ステンレス鋼;チタン;それらの組み合わせ;及び類似物;又は任意の別の適した材料などが含まれる。
【0085】
少なくともいくつかの実施形態では、組織後退システム10の一部又は全部、及び/又は組織後退システム10の他の構成要素も、放射線不透過性材料でドープされ、放射線不透過性材料で作られ、又は放射線不透過性材料を含有する。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーン又は別の画像化技術で比較的明るい画像を生成することができる材料であると理解できる。この比較的明るい画像は、組織後退システム10及び/又は組織後退システム10の他の構成要素の使用者がその位置を特定するのを支援する。放射線不透過性材料の例には、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤が充填されたポリマー材料などが含まれるが、これらに限定されない。さらに、他の放射線不透過性マーカーバンド及び/又はコイルもまた、組織後退システム10及び/又は組織後退システム10の他の構成要素の設計に組み込まれて、同一の結果を達成し得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、ある程度の磁気共鳴画像法(MRI)の適合性が、組織後退システム10及び/又は組織後退システム10の他の構成要素に付与される。例えば、組織後退システム10及び/又は組織後退システム10の他の構成要素、又はそれらの一部は、画像を実質的に歪ませず、実質的なアーチファクト(例えば、画像内のギャップ)を生成しない材料で製造される。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像にアーチファクトを生成する可能性があるため、適さない。組織後退システム10及び/又は組織後退システム10の他の構成要素、又はその一部は、MRI機械が画像化できる材料で製造されてもよい。これらの特性を示すいくつかの材料には、たとえば、タングステン、コバルトクロムモリブデン合金(例えばELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、ニッケルコバルトクロムモリブデン合金(例えばMP35-N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニチノールなどが含まれる。
(付記)
(付記1)
第1の組織係合部材と、連結アセンブリと、弾性部材とを備えた組織後退装置であって、
前記第1の組織係合部材は、前記連結アセンブリによって前記弾性部材に連結され、且つ可動性のジョーを含み、
前記連結アセンブリは、
第1の端部領域を有する第1のカプラー本体と、第1の圧縮部材とを含み、
前記弾性部材は、この弾性部材の中を貫通して長手方向に延びるルーメンを有し、
前記第1のカプラー本体の第1の端部領域は、前記弾性部材のルーメンの一部の中に延び、
前記第1の圧縮部材は、前記弾性部材が前記第1のカプラー本体に対して固定的に係合されるように、前記弾性部材を前記第1のカプラー本体上に圧縮し、
前記連結アセンブリは、接続部材をさらに備え、前記接続部材は、前記第1のカプラー本体を前記第1の組織係合部材に連結するように構成されており、前記接続部材は、ポスト部材と取り付け部材とを含み、前記ポスト部材の第1の端部領域は、前記取り付け部材に連結され、前記ポスト部材は、前記第1のカプラー本体の開口部内を貫通して延びている、組織後退装置。
(付記2)
前記第1のカプラー本体の第1の端部領域は、前記第1のカプラー本体の第1の端部領域の外周面に延びるチャンネルを含む、付記1に記載の組織後退装置。
(付記3)
前記第1の圧縮部材は、前記弾性部材を前記第1のカプラー本体の前記チャンネルの少なくとも一部内に圧縮する、付記2に記載の組織後退装置。
(付記4)
前記第1の圧縮部材は、圧縮リングを含む、付記1~3のいずれか一項に記載の組織後退装置。
(付記5)
前記第1の圧縮部材は、縫合糸を含む、付記1~4のいずれか一項に記載の組織後退装置。
(付記6)
前記ポスト部材は、前記第1の端部領域に対向する第2の端部領域をさらに含み、前記ポスト部材の前記第1の端部領域は、第1の直径を含み、前記ポスト部材の前記第2の端部領域は、第1の直径より大きな第2の直径を含む、付記1に記載の組織後退装置。
(付記7)
前記第1のカプラー本体の開口部は、第1の内径を含み、前記ポスト部材の第2の直径は、前記開口部の第1の内径よりも大きい、付記6に記載の組織後退装置。
(付記8)
前記第1の組織係合部材は、第1の組織係合部と第1のばねとを含み、前記取り付け部材は、前記第1のばねに係合する、付記1に記載の組織後退装置。
(付記9)
前記取り付け部材はC字形状をなす、付記8に記載の組織後退装置。
(付記10)
前記取り付け部材は、第1の継手及び第2の継手を含み、前記第1の継手及び前記第2の継手は、互いに嵌合する、付記1に記載の組織後退装置。
(付記11)
前記第1の継手及び前記第2の継手は、第1のばねを前記ポスト部材の前記第1の端部領域に連結する、付記10に記載の組織後退装置。
(付記12)
前記第1の組織係合部材と同一の構成を有する第2の組織係合部材をさらに備え、前記弾性部材は、前記第1の組織係合部材と前記第2の組織係合部材との間に延びる、付記1~11のいずれか一項に記載の組織後退装置。
(付記13)
内部に延びるルーメンを含む管状の支持部材をさらに含み、前記弾性部材の少なくとも一部は、前記支持部材のルーメン内に延びる、付記12に記載の組織後退装置。
【0087】
本開示は、多くの点で単なる例示であることを理解されたい。本開示の範囲を超えることなく、詳細において、特に形状、寸法、及び工程の構成に関して変更を行うことができる。これには、適切な範囲で、1つの例示的な実施形態の任意の要素を別の実施形態で使用することが含まれる。言うまでもないが、本発明の範囲は、添付の請求項で表現される文言で定義される。