(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057078
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】ユニバーサルドナー細胞及び関連方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240416BHJP
A61P 5/50 20060101ALI20240416BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240416BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240416BHJP
A61K 35/39 20150101ALI20240416BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N5/10
A61P5/50
A61P37/06
A61P1/18
A61K35/39
C12N15/09 100
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030673
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2022085618の分割
【原出願日】2018-07-11
(31)【優先権主張番号】15/648,337
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503431792
【氏名又は名称】ヴィアサイト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボウミク,アニンディタ
(72)【発明者】
【氏名】アグルニック,アラン,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ダムール,ケビン,アレン
(57)【要約】
【課題】ユニバーサルドナー幹細胞及びそれに由来する細胞、並びにそれらの関連する使用及び生産方法が開示される。開示されるユニバーサルドナー幹細胞は、細胞ベースの移植療法における同種免疫拒絶を克服するのに有用である。
【解決手段】特定の実施形態では、開示されるユニバーサルドナー細胞は、1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質を発現せず、少なくとも1つのNK活性化リガンドの発現が破壊又は阻害されている膵臓内胚葉細胞である。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膵臓系統細胞を含むインビトロ細胞集団であって、少なくとも1つの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI遺伝子及び少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンドの機能が、前記膵臓系統細胞において破壊又は阻害されている、インビトロ細胞集団。
【請求項2】
前記MHCクラスI遺伝子が、β-2マイクログロブリン(B2M)又はヒト白血球抗原(HLA)-ABC細胞表面タンパク質をコードする、請求項1に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項3】
前記NK細胞活性化リガンドが、細胞間接着分子(ICAM)1、分化抗原群(CD)58、CD155、ポリオウイルス受容体(PVR)、癌胎児性抗原関連細胞接着分子(CEACAM)1、細胞接着分子(CADM)1、主要組織適合性クラスI関連鎖タンパク質(MIC)A、MICB、又はそれらの組み合わせである、請求項1又は2に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項4】
NK細胞活性化リガンドの組み合わせが、前記膵臓系統細胞において破壊又は阻害され、前記NK細胞活性化リガンドの組み合わせが、a)CD58及びICAM1、b)CD58、ICAM1、及びCD155、c)CD58及びCADM1、d)CD58及びCD155、e)CD58、ICAM1、CD155、及びCADM1、又はf)ICAM1、CADM1、及びCD155である、請求項1又は2に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項5】
前記膵臓系統細胞が、胚体内胚葉、前腸内胚葉、膵臓内胚葉、内分泌前駆体、又はインスリン産生細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項6】
前記膵臓系統細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに前記剤が膵臓系統細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項7】
前記タンパク質が、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼであり、前記細胞死誘導剤が、ガンシクロビルである、請求項6に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項8】
前記MHCクラスI遺伝子が、ゲノム編集を使用して破壊又は阻害されるか、又は前記NK細胞活性化リガンドが、ゲノム編集を使用して破壊及び/又は阻害される、請求項1~7のいずれか一項に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項9】
前記ゲノム編集が、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼ、クラスター化され規則的に間隔を空けた短いパリンドローム反復(CRISPR)/cas)システム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システム、又は相同組換えの使用を含む、請求項8に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項10】
前記NK細胞活性化リガンドが、抗NK細胞活性化リガンド剤を使用して破壊又は阻害される、請求項1~7のいずれか一項に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項11】
前記抗NK細胞活性化リガンド剤が、抗体又は抗体断片である、請求項10に記載のインビトロ細胞集団。
【請求項12】
哺乳動物対象におけるヒト膵臓系統細胞の細胞移植片拒絶を低減する方法であって、治
療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載のインビトロ細胞集団を前記哺乳動物対象に移植することを含み、前記MHCクラスI遺伝子及びNK細胞活性化リガンドの機能の破壊又は阻害によって、前記MHCクラスI遺伝子及びNK細胞活性化リガンドの機能が破壊又は阻害されていないヒト膵臓系統細胞と比較して、細胞移植片拒絶が低減される、方法。
【請求項13】
哺乳動物対象においてインスリンを産生する方法であって、治療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載のインビトロ細胞集団を前記哺乳動物対象に移植することを含み、前記細胞集団が、前記哺乳動物対象において、グルコース刺激に応答してインスリンを産生する細胞へと成熟する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる2107年7月12日に出願された「ユニバーサルドナー(UNIVERSAL DONOR)細胞及び関連方法」と題する米国実用
出願第15/648,337号に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、遺伝子発現、ゲノム工学、及び遺伝子/細胞療法の分野に関連する。
【背景技術】
【0003】
ヒト多能性幹細胞(hPSC)は、患者への移植のための任意の成人細胞種を生成するための有用なツールである。原則として、hPSCベースの細胞療法は、全てではないにしても大部分の変性疾患を処置する可能性を有するが、そのような療法の成功は対象の免疫応答によって制限され得る。免疫系は、高い特異性の層状防御により感染から生物を保護する。簡単に言えば、物理的な障壁は、細菌及びウイルスなどの病原体が生物に侵入するのを防ぐ。病原体がこれらの障壁を突破した場合、自然免疫系は即座であるが非特異的な反応を提供する。病原体が自然応答をうまく回避できた場合、脊椎動物は、自然応答によって活性化される適応免疫系という第2の保護層を有する。適応免疫系は、さらにより特異的な応答を生じさせる。ここで、免疫系は、病原体の認識を改善するように感染中の応答を適応させる。次いで、この改善された応答は、病原体が排除された後に免疫記憶の形で保持され、この病原体に遭遇するたびに適応免疫系はより速く開始し、より強力に攻撃することができる。適応免疫応答は、抗原特異的であり、抗原提示と呼ばれるプロセス中の特定の「非自己」抗原の認識を必要とする。抗原特異性は、特定の病原体又は病原体感染細胞に合わせた応答を生じさせることを可能にする。インターフェロンγ(IFN-γ)は、感染性及び非感染性疾患に対抗するのに重要な役割を果たす。ヒト免疫応答におけるIFN-γの主な供給源はT細胞である。NK細胞、マクロファージ、IFN-γは、自然免疫及び獲得免疫の両方で重要な役割を果たす。
【0004】
主要組織適合性複合体(MHC)は、免疫系の調節に不可欠な一連の細胞表面タンパク質である。MHC分子の主な機能は、病原体に由来する抗原に結合し、適切なT細胞による認識のために細胞表面にそれらを提示することである。MHC遺伝子ファミリーは、クラスI、クラスII、クラスIIIの3つのサブグループに分けられる。ヒトMHCは、HLA(ヒト白血球抗原)複合体(しばしば単にHLA)とも呼ばれる。ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫及び適応免疫の間の境界面で機能するリンパ球である。NK細胞は、細胞傷害性及びサイトカイン分泌などのエフェクター機能を介して、また自然免疫及び適応免疫応答を調節することにより、免疫防御に直接寄与する。標的細胞又は宿主細胞がNK細胞に遭遇したとき、いくつかの結果があり得る。NK応答の程度は、NK細胞上の活性化及び阻害性受容体の量及び種類、並びに標的細胞上の活性化及び阻害性リガンドの量及び種類によって決まる。
図1を参照のこと。シナリオAでは、標的細胞がヒト白血球抗原(HLA)クラスI及びNK活性化リガンドを有さない場合、MHCクラスI阻害性受容体及び活性化リガンド受容体を発現するNK細胞は標的細胞を攻撃しない(応答なし又は許可なし)。シナリオBでは、標的細胞がHLAクラスIを発現するが、活性化リガンドを有さない場合、阻害性受容体及び活性化受容体を発現するNK細胞は標的を攻撃することができない。シナリオCでは、標的細胞がHLAクラスIをダウンレギュレートするか又はHLAクラスIを有さず、NK活性化リガンドを発現する場合、阻害性受容体及び活性化受容体を発現するNK細胞は標的細胞を攻撃する。シナリオDでは、標的細胞が自己HLAクラスI及びNK活性化リガンドの両方を発現する場合、阻害性受容体及び活性化受容体を発現するNK細胞による応答のレベルは、NK細胞に対する阻害性及
び活性化シグナルのバランスによって決まる。Haynes et al., THE IMMUNE SYSTEM IN HEALTH AND DISEASE, PART 15: Immune-Mediated, Inflammatory, and Rheumatologic Disorders, 372e Introduction to the Immune System。
【0005】
歴史的に、同種細胞に対する宿主の免疫応答を克服するための努力は、適応免疫応答、すなわち、T細胞と異物細胞上に提示されるMHCクラスI抗原との間の付着を妨げることに焦点を当てていた。そのため、CRISPR及びTALENシステムは、機能喪失遺伝的修飾を生じさせるために使用され、したがって1つ以上の古典的なMHC/HLA遺伝子を発現しない幹細胞を作り出す。しかしながら、これらの細胞及びそれらに由来する細胞は、宿主の自然免疫応答(NK細胞)に対して依然として脆弱である。例えば、Parham et al. (2005) Nat Rev Immunol. 5(3):201-214を参照のこと。宿主の自然免疫応答を克服するために、他の人々は免疫寛容原性因子を標的細胞に再導入することを試みた。焦点は「自己性の喪失(missing self)」にあった。国際公開第2016183041A2号(その開示は参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。本出願人は、驚くべきことに、宿主のNK媒介免疫応答を回避する鍵は、「自己性の喪失」ではなく、標的細胞上のNK細胞活性化リガンドの発現及び大きさであることを発見した。
【0006】
したがって、一部又は全ての古典的なHLA発現を欠くが、溶解のためのNK細胞によって攻撃されない細胞を開発するための組成物及び方法に対する必要性が存在している。
【発明の概要】
【0007】
本明細書では、ユニバーサルドナー細胞株を提供することにより、移植片拒絶、特に、細胞ベースの移植療法における同種免疫移植片拒絶を克服する戦略が開示される。一実施形態では、古典的なHLAクラスI細胞表面タンパク質発現及びNK活性化リガンド発現の一部又は全てを欠く、ヒト多能性幹細胞が提供される。一実施形態では、古典的なHLAクラスI細胞表面タンパク質発現及びNK活性化リガンド発現の一部又は全てを欠く、膵臓細胞などのヒト多能性幹細胞に由来する細胞が提供される。一実施形態では、β-2-マイクログロブリン(B2M)などの少なくとも1つのMHC遺伝子及び細胞間接着分子1(ICAM-1)などの少なくとも1つのNK活性化リガンド遺伝子が破壊、欠失、改変、又は阻害された移植膵臓細胞を提供することにより、細胞移植片拒絶を防止する方法が提供される。別の実施形態では、B2Mなどの少なくとも1つのMHCタンパク質及びICAM-1などの少なくとも1つのNK活性化リガンドタンパク質の発現が破壊、欠失、改変、又は阻害された移植膵臓細胞を提供することにより、細胞移植片拒絶を予防する方法が提供される。B2Mの破壊、欠失、改変、又は阻害により、HLAクラスIの表面発現及び機能の全てが欠損する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、(標的細胞に対するNK媒介性応答の)異なるシナリオを示す、上記のHaynesらの
図372e-4(これはその全体が本明細書に組み込まれる)の複写物である。標的細胞上にMHCクラスIが存在せず、NK活性化リガンドが存在しない場合、NK細胞上の阻害性受容体及び活性化受容体は関与せず、NK細胞は応答しないままである(シナリオA)。標的細胞上にMHCクラスIが存在するが、NK活性化リガンドが存在しない場合、NK細胞上の阻害性受容体は関与するが、NK細胞上の活性化受容体は関与せず、NK細胞は応答しないままである(シナリオB)。標的細胞上に自己MHCクラスIが存在しないが、NK活性化リガンドが存在する場合、NK細胞上の阻害性受容体は関与しないが、NK細胞上の活性化受容体は関与し、NK細胞は攻撃する(シナリオC)。標的細胞上にMHCクラスI及びNK活性化リガンドが存在する場合、NK細胞上の阻害性受容体及び活性化受容体が関与し、シグナルのバランスによって結果が決まる(シナリオD)。
【
図2A】
図2Aは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)の野生型(WT)hES細胞上のB2M細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、WT hES細胞におけるB2M細胞表面タンパク質発現を増加させる。
【
図2B】
図2Bは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のB2Mノックアウト(B2M-/-)hES細胞上のB2M細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。B2M-/-hES細胞は、B2M細胞表面タンパク質の発現がほとんどなく、該発現はIFN-γへの曝露後に有意に変化しない。
【
図3A】
図3Aは、汎HLAクラスI抗体を使用した、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT hES細胞でのHLA-ABC細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。
【
図3B】
図3Bは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のB2MノックアウトhES細胞上のHLA-ABC細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。B2M-/-hES細胞では、検出可能なHLA-ABC細胞表面タンパク質発現がない。
【
図4A】
図4Aは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT膵臓内胚葉細胞(PEC)上のB2M細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、WT PECにおけるB2M細胞表面タンパク質発現を増加させる。
【
図4B】
図4Bは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のB2MノックアウトPEC上のB2M細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。B2M-/-PECでは、検出可能なB2M細胞表面タンパク質発現がない。
【
図5A】
図5Aは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のHLA-ABC細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、WT PECにおけるHLA-ABC細胞表面タンパク質発現を増加させる。
【
図5B】
図5Bは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のB2MノックアウトPEC上のHLA-ABC細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。B2M-/-PECでは、検出可能なHLA-ABC細胞表面タンパク質発現がない。
【
図6A】
図6Aは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT hES細胞上のICAM-1細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、WT hES細胞におけるICAM-1細胞表面タンパク質発現を増加させる。
【
図6B】
図6Bは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のB2MノックアウトhES細胞上のICAM-1細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。B2M-/-hES細胞は、IFN-γ曝露の前後においてWT hES細胞と同様のICAM-1細胞表面タンパク質発現を有する。
【
図7A】
図7Aは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のICAM-1細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。網掛け部分は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、WT PECにおけるICAM-1細胞表面タンパク質発現を増加させる。
【
図7B】
図7Bは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のB2MノックアウトPEC上のICAM-1細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。IFN-γへの曝露後に、B2M-/-PECは、バックグラウンド(網掛け領域)の発現より大きいWT PECと同様のICAM-1細胞表面タンパク質発現を有する。
【
図8】
図8は、各々がIFN-γに曝露されていない(対照)又はIFN-γに曝露されたWT hES細胞、B2M(-/-)hES細胞、WT PEC、及びB2M(-/-)PECにおけるICAM-1のmRNA発現データ(Affymetrix発現アレイ)を示す棒グラフである。ICAM-1発現が、低いICAM細胞表面タンパク質発現を有することが既知である細胞:癌細胞(K562及びSKBR3)、インビボでインスリン産生細胞に成熟することが可能であった移植されたPEC、ヒト膵島細胞、及び末梢血単核細胞(PBMC)の2つの異なる試料(IFN-γへの曝露なし)においても評価されている。ICAM-1 mRNA発現は、hES細胞(WT又はB2M-/-)又はPEC(WT又はB2M-/-)のIFN-γへの曝露後に増加する。
【
図9】
図9は、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のCD58(別名:LFA-3)細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。C線は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、未処理の対照と比較して、WT PECにおけるCD58細胞表面タンパク質の発現を僅かだけ増加させる。BioLegendから得た抗体、カタログ番号#330909。
【
図10】
図10は、IFN-γなし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のCD155細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。C線は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露後に、WT PECは、WT未処理PEC対照と同様のCD155細胞表面タンパク質発現を有する。遺伝子記号PVR(別名:CD155、NECL-5、HVED)。Milteneyi Biotech Inc.から得た抗体、カタログ番号#130-105-905。
【
図11】
図11は、IFN-γへの曝露なし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のCEACAM1(別名:CD66a、BGP、BGP1)細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。C線は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露は、未処理の対照と比較して、WT PECにおけるCEACAM1細胞表面タンパク質の発現を僅かに増加させる。Milteneyi Biotech Inc.から得た抗体、カタログ番号#130-098-858。
【
図12】
図12は、IFN-γへの曝露なし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のBAT3細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。C線は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。未処理対照のWT PECは、IFN-γに曝露されたWT PECと同様のBAT3細胞表面タンパク質発現を有する。遺伝子記号BAG6(別名:BAT3、HLA-B関連転写物3)。Abcam,Inc.から得た抗体、カタログ番号#ab210838。
【
図13】
図13は、IFN-γへの曝露なし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のCADM1(別名:NECL2、TSLC1、IGSF4、RA175)細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。C線は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露後、WT PECは、未処理対照と同様のCADM1細胞表面タンパク質発現を有する。MBL International Corp.から得た抗体、カタログ番号#CM004-4。
【
図14】
図14は、IFN-γへの曝露なし(B線)及びIFN-γへの曝露後(A線)のWT PEC上のCD112細胞表面タンパク質発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す。C線は、抗体染色のないバックグラウンド発現である。IFN-γへの曝露後、WT PECは、未処理の対照と同様のCD112細胞表面タンパク質発現を有する。遺伝子記号PVRL2(別名;CD112、ネクチン-2、PVRR2、HVEB)。Milteneyi Biotech Inc.から得た抗体、カタログ番号#130-109-056。
【
図15】
図15は、標的細胞におけるICAM-1発現を抗ICAM1抗体で遮断した後の標的細胞のNK細胞溶解の減少を示す棒グラフである(左から右へ、NK細胞傷害性アッセイのためのWT hESC、IFN-γに曝露したWT hESC、B2M-/-hESC、IFN-γに曝露したB2M-/-hES、WT PEC、IFN-γに曝露したWT PEC、B2M-/-PEC、IFN-γに曝露したB2M-/-PEC、K562対照細胞株)。左から右へ、各組の3つのバーは、NK-062216;NK-062216+ICAM1AB(5μg/ml);NK-062216+ICAM1AB(10μg/ml)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
配列表
添付の配列表に列挙されている核酸及びアミノ酸配列は、37C.F.R.1.822で定義されている核酸塩基についての標準的な文字略語及びアミノ酸についての3文字コードを使用して示される。各核酸配列の1つの鎖のみが示されているが、示された鎖についての任意の参照により、相補鎖が含まれているものと理解される。配列表は、ASCIIテキストファイルSequence_Listing、2018年7月3日、11KBとして提出され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
MHCクラスI分子は、主要組織適合性複合体(MHC)分子の2つの主なクラスのうちの1つである(他方はMHCクラスIIである)。その機能は、細胞内からの非自己タンパク質のペプチド断片を細胞傷害性T細胞に提示することである。これにより、MHCクラスIタンパク質の助けを伴って提示される特定の非自己抗原に対する免疫系からの即時応答が引き起こされる。ヒトでは、MHCクラスIに対応するHLAは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gである。ヒトHLA-E、HLA-F、及びHLA-Gは、限られた多型及び古典的なパラログ(HLA-A、HLA-B、及びHLA-C)よりも低い細胞表面発現を特徴とする、非古典的なMHCクラスI分子である。全てのMHCクラスIタンパク質は、細胞表面上の機能的発現の前に、機能的ヘテロダイマーMHCクラスIタンパク質複合体を生成するためにβ2-マイクログロブリン(B2M)と結合する必要がある。MHCクラスI分子は、NK細胞の阻害リガンドとしても機能する。細胞表面MHCクラスIの正常レベルの低下により、NK細胞による死滅が活性化される。
【0011】
歴史的に、MHCクラスI阻害リガンドを有する標的細胞は、MHCクラスIの阻害シグナルの推測された支配的性質に起因して、NK細胞に曝露された場合に攻撃を回避すると考えられていた(Harrison’s Principles of Internal Medicine 19 E (Vol. 1 and Vol. 2) A Major Histocompatibility Complexのパート15の
図372e-4から複写し
た
図1のシナリオBを参照のこと)。しかし、本出願人は、驚くべきことに事実と反対であることを発見した。
【0012】
細胞がIFN-γに曝露されることにより、MHCクラスI分子のmRNA発現が増加し、細胞表面上のMHCクラスIタンパク質複合体の発現も増加することが示されている。このMHCクラスI発現の増加によってNK細胞が阻害されると予想される。本出願人は、野生型(WT)hES細胞が、IFN-γ(hES細胞の細胞表面上のMHCクラスI分子を増加させることが示されている、
図2A及び3A)に曝露されたときにNK細胞媒介細胞傷害性を増加させることを発見した。
図15を参照のこと、NK細胞媒介傷害(溶解)が58%から79%に増加することを示している(
図15の条件1及び2の最初のバーを比較)。WT PEC細胞がIFN-γに曝露されたときにも同じことが言え、細胞はB2M及びHLA-ABC発現も増加した。
図4A及び5Aを参照のこと。NK媒介傷害(溶解)は33%から53%に増加している(
図15の条件5及び6の最初のバーを比較)。このデータにより、宿主のNK細胞免疫応答を克服する鍵は、阻害MHCクラス
Iシグナルの過剰発現ではなく、NK活性化リガンドシグナルの遮断であることが示唆された。
【0013】
増強された(accentuated)NK細胞媒介細胞傷害性に関連してこの仮説をさらに試験
するために、本出願人は、B2M-/-(ノックアウト)hES細胞を作成した(
図1のシナリオCと同様)。予想通り、B2M-/-は、hES細胞上(
図2B及び3B)及びPEC上(
図4B及び5B)のMHCクラスI分子の細胞表面発現を排除した。また、予想通り、B2M-/-細胞は、WT細胞と比較してNK細胞媒介性溶解の増加を示し、hES細胞では58%から71%への増加、PECでは33%から54%への増加を示した(
図15の条件1対3又は条件5対7の最初のバーを比較)。本出願人は、B2M-/-hES細胞又はPECをIFN-γに曝露することにより、NK細胞媒介傷害(溶解)の割合がさらに増加することを発見した(
図15の条件2対4及び条件6対8の最初のバーを比較)。それに対応して、本出願人は、NK細胞活性化リガンドの細胞表面発現(
図6B及び7B)及びmRNA発現(
図8)がIFN-γへの曝露下で増加することを発見した。このデータにより、標的細胞上のNK細胞活性化リガンドがNK細胞の細胞傷害において重要な役割を果たすことが示唆され、NK細胞活性化リガンド発現を阻害することにより、MCHクラスI発現の低減との関連で、例えばB2M-/-との関連で、NK細胞媒介細胞傷害から保護し得るという仮説が導かれた。
【0014】
標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減され得るかどうかを決定するために、本出願人は、標的細胞表面上のICAM1タンパク質を遮断するためのICAM1遮断抗体などを使用して、WT及びB2M-/-hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を遮断した。本出願人は、驚くべきことに標的細胞の細胞溶解が低減することを発見した(
図15の条件2、4、6、及び8の最初のバーを2番目及び3番目のバーと比較)。したがって、本出願人は、NK活性化リガンドを遮断することにより、NK細胞による細胞溶解を低減させることができることを発見した。NK活性化リガンドに対する抗体を使用してB2M-/-細胞においてICAM1発現を遮断することは、二重ノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、本出願人は、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)を
図1のシナリオCからシナリオAに移行させることができる。具体的には、本発明の細胞、組織、及び臓器は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、ICAM1-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することにより達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げるための他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(Transdominant negative protein)(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。二重又は多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現されるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんど又は全くないためである。さらに、NK活性化を完全に排除するために、本出願人は、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来細胞療法)によるか、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用するかにより、複数のNK活性化リガンドの発現を排除/減少する必要があると想定する。
【0015】
NK細胞活性化リガンド遮断剤
本発明の一態様によれば、NK細胞機能を抑制するための処置方法が提供される。本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの免疫応答を抑制するための処置法が提供される。各方法は、処置を必要とする対象にNK細胞機能を阻害する剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、剤は抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、標的細胞上のNK細胞活性化リガンドに選択的に結合する。
【0016】
NK細胞と標的細胞のNK活性化リガンドとの間の付着を妨げるために、抗体及び遮断タンパク質を含む様々な種類の試薬を使用することができることが企図される。
【0017】
特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは表1から選択される。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
NK活性化リガンドは、Pegram et al., Activating and inhibitory receptors of NK
cells Immunology and Cell Biology (2011) 89, 216-224にさらに記載されており、こ
れはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
低免疫原性(Hypoimmunogenic)hES細胞及びそれに由来する細胞
【0023】
HLAは、大きな遺伝子ファミリーによってコードされる細胞表面分子であり、クラスI及びクラスII分子に分類することができる。HLAクラスI分子は、全ての有核細胞の表面上に見出され、本明細書に記載される本発明の焦点である。移植中のドナー(標的)細胞とレシピエントの免疫細胞(例えばT細胞)との間のHLA不適合は、しばしば免疫拒絶又は移植片拒絶を引き起こす。HLAクラスI複合体は、構造的には、HLAクラスIペプチドからなる多型(polymorphic)重鎖(例えば、HLA-A、HLA-B、及
びHLA-C)及び軽鎖β2-マイクログロブリン(β2m又はB2M)からなる。B2Mがないと、クラスIHLAは適切に組み立てられず、細胞表面又は細胞膜にも発現しない。本明細書に記載の発明において、本出願人は、B2M遺伝子を破壊する(いくつかの塩基対を付加又は欠失し、mRNA/タンパク質のフレームシフト及び機能喪失変異を生じさせる)ことにより、hES細胞株及びそれに由来する細胞を産生し、それにより、hESCの細胞表面からHLAクラス1発現を枯渇させた。
【0024】
上記の方法論は、ICAM1などのNK活性化リガンドをコードする遺伝子をさらに破
壊することにより、hES細胞株及びそれに由来する細胞を産生又は生成するために使用することもできる。したがって、本発明の一実施形態では、少なくとも1つのHLAクラスI抗原及び少なくとも1つのNK活性化リガンドを欠失した標的細胞を作成し、それにより、低免疫原性細胞を作成するための組成物及び方法が提供される。そのような低免疫原性細胞は、そのような細胞が移植される対象による免疫拒絶がより少ないと予想される。移植されたときに、この低免疫原性細胞は生着する(拒絶されない)はずである。一実施形態では、そのような標的細胞は、レシピエントの免疫抑制をほとんど又は全く必要とせずに生着及び生存することができる。
【0025】
一実施形態では、hESC細胞及びそれに由来する細胞におけるHLAクラスI発現及びNK活性化リガンド発現の両方の阻害、低減、及び/又は欠失(あるいはHLAクラスI欠損及びNK活性化リガンド欠損)は、移植療法のためのユニバーサルドナー細胞供給源として役立つことができる。これらの二重ノックアウト(HLAクラスI欠損及びNK活性化リガンド欠損)は、マイナー組織適合性複合体(minor histocompatibility complex)(MiHC)の適合、ヒト白血球抗原(HLA)の適合、又は免疫抑制なしで汎用的に移植できる。
【0026】
新規なインビトロ由来の低免疫原性組成物及び細胞が本明細書に開示される。具体的には、特定の実施形態では、本明細書に開示される発明は、MHCクラスI遺伝子及びNK活性化リガンド遺伝子の両方の重要な成分を低減又は欠失するために、ゲノムが改変(修飾)された幹細胞に関する。特定の実施形態では、本明細書に開示される発明は、膵臓内胚葉細胞、膵臓上皮細胞、膵臓前駆細胞、膵臓前駆体内分泌細胞、膵臓内分泌細胞、膵臓プレβ細胞、又は膵臓β細胞などの膵臓系統細胞に関し、そのゲノムがMHCクラスI遺伝子及びNK活性化リガンド遺伝子の両方の重要な成分を低減又は欠失するように改変(修飾)され、それにより、低免疫原性膵臓系統種の細胞が生成される。ナチュラルキラー活性化リガンドには、表1において分類1、2、3に列挙されたリガンド又はそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ナチュラルキラー活性化リガンドには、例えば、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBが含まれる。MHCクラスI遺伝子には、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、及びB2Mが含まれる。特定の態様では、MHCクラスI遺伝子及び/又はMHCクラスII遺伝子のそのような発現の低減又はノックアウトは、NLRC5、B2M、及びCIITA遺伝子、並びにMHCエンハンセオソームの他の成分(エンハンソソームは、エンハンサーにおいて組み立てられた高次タンパク質複合体であり、標的遺伝子、例えばMHCクラスI又はMHCクラスIIの転写調節因子の発現を調節する)を直接的及び/又は間接的に標的化することにより達成される。
【0027】
低免疫原性細胞を調製する方法であって、細胞によって発現される1つ以上のNK活性化リガンドの発現を調節し、細胞による1つ以上のMHCクラスI及び/又はMHCクラスIIの発現を調節し、それにより、低免疫原性細胞を調製することを含む方法も、本明細書に開示される。特定の態様では、1つ以上のMHCクラスI及び/又はMHCクラスII複合体の細胞表面タンパク質発現の調節には、1つ以上のMHCクラスI及び/又はMHCクラスII遺伝子又はタンパク質の発現を低減、阻害、及び/又は妨害することが含まれる。特定の実施形態では、1つ以上のMHCクラスI及び/又はMHCクラスII複合体の発現の調節には、細胞の少なくとも1つの対立遺伝子からMHCクラスI又はMHCクラスIIの1つ以上の転写調節因子をコードする1つ以上の遺伝子を欠失させることが含まれる。例えば、特定の実施形態では、そのような方法には、LRC5、CIITA、B2M及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるMHCクラスI又はMHCクラスII遺伝子の転写調節因子のうちの1つ以上をコードする1つ以上の遺伝子を欠失させることが含まれる。特定の態様では、1つ以上のNK活性化リガンドの発現の調節には、NK活性化リガンドをコードする1つ以上の遺伝子の発現を欠失、阻害、又は低減さ
せることが含まれる。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、表1から選択される。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、表1の分類1、2、3又はそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、表1の分類1、2、及び3から選択される。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、表1の分類1及び3から選択される。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、表1の分類1及び2から選択される。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、表1の分類2及び3から選択される。特定の実施形態では、そのようなNK活性化リガンドは、ICAM-1、CEACAM1、CADM1 MICA、MICB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0028】
特定の実施形態では、移植される低免疫原性細胞は、動物源生成物、例えば、xenofree生成物を含まない培地中にある。
【0029】
本発明は、当業者が利用可能な任意の方法で、例えば、メガヌクレアーゼ若しくはエンドデオキシリボヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN若しくはZNF)、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、若しくはクラスター化され規則的に間隔を空けた短いパリンドローム反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)(CRISPR/Cas又はCRISPR/Cas9)システム、又は従来の相同組換え技術のいずれかを利用して、標的ポリヌクレオチド配列を改変することを企図する。そのようなCRISPR/Casシステムは、様々なCasタンパク質を使用することができる(Haft et al. PLoS Comput Biol. 2005; l(6)e60
)。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、CRISPRタイプIシステムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、CRISPRタイプIIシステムである。いくつかの実施形態では、CRISPR/Casシステムは、CRISPRタイプVシステムである。デュアルガイドRNA及びFokIヌクレアーゼに融合された触媒的に不活性なCas9タンパク質を導入するNEXTGEN(商標)CRISPR(Transposagen Inc.、ケンタッキー州レキシントン)を、標的ポリヌクレオチド配列を改変するために使用することもできる。当業者に現在既知であるか又は後に発見される標的細胞における発現を低減又は除去するためにポリヌクレオチド配列を標的化する他の方法を、本明細書に記載の低免疫原性細胞を生成するために使用することができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、改変により、標的ポリヌクレオチド配列の発現が低減する。いくつかの実施形態では、改変は、ホモ接合性改変である。いくつかの実施形態では、改変は、ヘテロ接合性改変である
【0031】
いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、ヒトゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、哺乳動物ゲノム配列である。いくつかの実施形態では、標的ポリヌクレオチド配列は、脊椎動物ゲノム配列である。
【0032】
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、胚性幹細胞である。特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、多能性幹細胞である。特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、人工多能性幹細胞、再プログラム化(reprogrammed)細胞、脱分化(dedifferentiated)又は分化転換(transdifferentiated)細胞である。特定の実施形態では、低免疫原性細胞
は、多能性膵臓前駆細胞である。特定の実施形態では、低免疫原性細胞は、単一ホルモン性(singly hormonal)又は多ホルモン性(polyhormonal)細胞である。特定の実施形態
では、低免疫原性細胞は、中内胚葉細胞、胚体内胚葉細胞、PDX-1陰性前腸内胚葉細胞、PDX-1陽性前腸内胚葉細胞、膵臓内胚葉細胞、内分泌前駆細胞/前駆体細胞、内分泌細胞、適切に特定された内分泌細胞、未成熟内分泌細胞、又は機能性β細胞である。
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、同種又は異種細胞集団であり得る。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、1つ以上の目的の生物活性物質を産生する細胞である。低免疫原性細胞、例えば、膵臓前駆細胞又はPDX1陽性膵臓内胚葉は、最初に移植される場合に初期には治療的に活性でなくてもよいが、ひと度移植されると、さらに発達し、成熟して、治療効果を有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、任意の細胞、組織、又は臓器を含むがこれらに限定されない、ヒト多能性幹細胞に由来することができる任意の細胞であり得、皮膚細胞、β細胞(すなわち、ランゲルハンス膵島にある膵臓の細胞)、副甲状腺細胞、腸細胞、内分泌細胞、心臓細胞、脳細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、消化管細胞及び副消化器官細胞、唾液腺細胞、副腎細胞、前立腺細胞、肺細胞、膵臓細胞、骨細胞、免疫細胞、造血細胞、血管細胞、目の細胞、結合組織細胞、筋骨格細胞、骨組織、筋骨格組織、角膜組織、皮膚組織、心臓弁、血管、免疫細胞、結合組織、肺組織、皮膚、角膜、腎臓、肝臓、肺、膵臓、心臓、並びに腸を含むことができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、懸濁液又は細胞凝集体中の個々の(単一)細胞であり得る。いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞には、全能性細胞が含まれる。一実施形態では、低免疫原性細胞には、多能性細胞が含まれる。一実施形態では、低免疫原性細胞には、単能性細胞が含まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、低免疫原性細胞は、機能的HLAクラスI発現及びリガンド活性化NK発現を欠く多能性細胞集団に由来する。この由来細胞は、任意の細胞、組織、又は臓器からなる群から選択することができ、該由来細胞には、皮膚細胞、β細胞(すなわち、ランゲルハンス膵島にある膵臓の細胞)、副甲状腺細胞、腸細胞、内分泌細胞、心臓細胞、脳細胞、腎臓細胞、肝臓細胞、消化管細胞及び副消化器官細胞、唾液腺細胞、副腎細胞、前立腺細胞、肺細胞、膵臓細胞、骨細胞、免疫細胞、造血細胞、血管細胞、目の細胞、結合組織細胞、筋骨格細胞、骨組織、筋骨格組織、角膜組織、皮膚組織、心臓弁、血管、免疫細胞、結合組織、肺組織、皮膚、角膜、腎臓、肝臓、肺、膵臓、心臓、並びに腸が含まれ得る。
【0036】
移植される低免疫原性細胞、組織及び/又は臓器は、移植を受ける対象と同系又は同種であり得る。
【0037】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト多能性細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓系統細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓内胚葉細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓前駆細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓前駆細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓内分泌細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓内分泌前駆体細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓内分泌プレβ細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓β細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒト膵臓単一ホルモン性細胞又は多ホルモン性細胞である。一実施形態では、低免疫原性細胞は、ヒトインスリン発現細胞である。
【0038】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、周知であり公的に利用可能な多能性細胞株である。本明細書に記載の発明は、全てのhES細胞及びiPSC系統並びに少なくともhESC、例えば、CyT49、CyT25、CyT203、及びCyT212において有用である。多能性細胞株には、wicell.org/home/stem-cell-lines/order-stem-cell-lines/obtain-stem-cell-lines.cmsxのWorld Wide WebでWiCellから商業的に購入することができるものが含まれ、具体的には、BG01、BG02、及びBG03
が含まれる。
【0039】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるD'Amour et al. “Production of Pancreatic Hormone-Expressing Endocrine Cells From Human Embryonic Stem Cells” (Nov. 1, 2006) Nature Biotechnology 24, 1392-1401に記載されている細胞と実質的に同様である。D’Amourらは、5つのステップの分化プロトコルを記載している:ステージ1(大部分は、胚体内胚葉が生成される)、ステージ2(大部分は、PDX1陰性前腸内胚葉が生成される)、ステージ3(大部分は、PDX1陽性前腸内胚葉が生成される)、ステージ4(大部分は、多能性膵臓前駆細胞又は膵臓内分泌前駆細胞とも呼ばれる膵臓内胚葉が生成される)、及びステージ5(大部分は、ホルモン発現内分泌細胞が生成される)。一実施形態では、低免疫原性細胞は、米国特許第7,510,876号、第7,695,965号、同第7,985,585号、同第8,586,357号、同第8,633,024号、及び同第8,129,182号(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものと実質的に同様である。
【0040】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSchulz et al. A Scalable System for Production of Functional Pancreatic Progenitors from Human Embryonic Stem Cells, PLoS One 7:5 1-17 (2012)に記載されている細胞
と実質的に同様である。Schulzらは、hESCの増殖及びバンキング(banking)
方法、並びに懸濁液ベースの分化システムを記載している。具体的には、未分化多能性細胞を動的回転懸濁培養で凝集させてクラスターにし、続いてステージ4のプロトコルで2週間一緒に分化させた。簡単に述べると、hES細胞凝集懸濁液から、hESC単層をAccutase(Innovative Cell Technologies)を用いて分離し、収集し、StemPro hESC SFM(Life Technologies;Glutamax、StemProhESCサプリメント、BSA、及び1%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシンを含む、組み合わせDMEM/F12;FGF-2及び2-メルカプトエタノールを省略)に1×106細胞/mLで再懸濁する。単一細胞懸濁液をTC処理していない6ウェルプレートに分注し(5.5mL/ウェル)、Innova2000回転機(New Brunswick Scientific)上で95rpmで回転させるか、又は500mLのNalgeneフィルターレシーバー(filter receiver)保存ボトルに分注し(150mL/ボトル)、Sartorius C
ertomat RM-50回転機(5cmの回転軸で構成される)上で65rpmで回転させる。細胞を37℃/8%CO2インキュベーター中で一晩回転させ、約100~200μmの凝集体を形成した。直径100~200μmの凝集体の場合、6ウェル皿では60~140rpmの回転速度を使用することができ、500mLボトルでは5~20rpmの回転速度を使用することができる。懸濁液凝集体の分化には、D’Amourからのほんの少数の修飾が含まれていた。ステージ2中は、TGF-βRIキナーゼ阻害剤IVが含まれ、ステージ3中は、レチノイン酸をより安定したレチノイド類似体TTNPB(3nM)に置き換えた。増殖因子KGF(50ng/mL)及びEGF(50ng/mL)をステージ4で添加し、細胞質量を保持した。ノギン(50ng/mL)もステージ4に含まれていた。一実施形態では、低免疫原性細胞は、米国特許第8,008,075号及び同第8,895,300号(これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているものと実質的に同様である。
【0041】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるAgulnick et al. Insulin-Producing Endocrine Cells Differentiated In Vitro From Human Embryonic Stem Cells Function in Macroencapsulation Devices In Vivo Stem Cells Translationalmedicine 4:1-9 (2015)に記載されている細胞と実質的に同様である。Agulnickらは、細胞集団のうちの73%~80%がPDX1陽性(PDX1+)及
びNKX6.1+膵臓前駆細胞からなるような、膵臓前駆細胞を作成するための変更プロトコルを記載した。膵臓前駆細胞は、膵島様細胞(IC)にさらに分化し、これは73%~89%の内分泌細胞を再現可能に含み、そのうち約40%~50%がインスリンを発現した。これらのインスリン陽性細胞の大部分は、単一ホルモン陽性であり、転写因子PDX1及びNKX6.1を発現した。Agulnickは、Schulzらの2012プロトコルを、ステージ3(5~7日目)においてアクチビンA、Wnt3A、及びヘレグリンβでさらに処理し、ステージ4(7~13日目)においてアクチビンA及びヘレグリンβでさらに処理することにより変更したプロトコルを記載している。一実施形態では、低免疫原性細胞は、米国特許第8,859,286号(これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている細胞と実質的に同様である。
【0042】
ヒト胚性幹細胞の成長、継代、及び増殖は、米国特許第7,964,402号、同第8,211,699号、同第8,334,138号、同第8,008,07号、及び同第8,153,429号に記載されるのと実質的に同様にして行うことができる。
【0043】
標準的な製造プロトコル
hESCに由来する膵臓内胚葉細胞(PEC)を生成するための標準的な作製方法を以下の表2に開示する。
【0044】
【0045】
hESC Agg.:hESC凝集体;XF HA:10%v/v Xeno-free KnockOut Serum Replacement、1%v/v 非必須アミノ酸、1%v/v ペニシリン/ストレプトマイシン(全てLife Technologiesから入手)、10ng/mL ヘレグリン-1β(Peprotech)、及び10ng/mL アクチビンA(R&D Systems)を補充した、GlutaMAXを含むDMEM/F12;SP:StemPro(登録商標)hESC SFM (Life Technologies);r0.2FBS:RPMI1640(Mediatech)、0.2% FBS(HyClone)、1×GlutaMAX-1(Life Technologies)、1%v/v ペニシリン/ストレプトマイシン;ITS:1:5000又は1:1000に希釈したインスリン-トランスフェリン-セレニウム(Life Technologies);A100:100ng/mL 組換えヒトアクチビンA(R&D Systems);W50:50ng/mL 組換えマウスWnt3A(R&D Systems);K25:25ng/mL 換えヒトKGF(R&D
Systems);IV:2.5μM TGF-βRIキナーゼ阻害剤IV(EMD Bioscience);db:0.5×B-27 Supplement(Life Technologies)、1×GlutaMAX、及び1%v/v ペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、DMEM HI Glucose(HyClone);CTT3:0.25μM KAAD-シクロパミン(Toronto Research Chemicals))及び3nM TTNPB(Sigma-Aldrich);N50:50ng/mL 組換えヒトノギン(R&D Systems);K50:50ng/mL 組換えヒトKGF(R&D Systems);E50:50ng/mL 組換えヒトEGF(R&D Systems)。
【0046】
カルセイン放出アッセイ
カルセイン放出アッセイは、NK細胞の細胞傷害性を研究するための非放射性代替法である。標的細胞は蛍光色素(カルセインAM)を取り込み、該蛍光色素は細胞質によって活性な蛍光色素に変換され、これは溶解時にのみ細胞から放出される。溶解した細胞は蛍光色素を上清に放出し、次いで該上清を採取し、蛍光計で蛍光量を定量する。細胞溶解率は、NK細胞(エフェクター)、遮断抗体、又はその両方の存在下又は非存在下でインキュベートした後に上清に存在する蛍光量から計算される。
【0047】
特定の溶解は、溶解%=100×[(抗体ありの場合の平均蛍光-平均自発蛍光)/(平均最大蛍光-平均自発蛍光)]の式を使用することによって計算することができる。最大蛍光は、界面活性剤(1%TritonX-100)とともにインキュベートした細胞の溶解によって決定され、自発的溶解は、抗体又はエフェクター細胞のない標的細胞で得られた蛍光とした。
【0048】
多能性幹細胞に由来する様々な細胞組成物及びその方法は、本明細書に記載されており、2002年8月6日に出願された、METHODS FOR CULTURE OF HESC ON FEEDER CELLSと
題する本出願人の米国特許出願第10/486,408号;2004年12月23日に出願された、DEFINITIVE ENDODERMと題する同第11/021,618号;2005年4月
26日に出願された、PDX1 EXPRESSING ENDODERMと題する同第11/115,868号;2005年6月23日に出願された、METHODS FOR IDENTIFYING FACTORS FOR DIFFERENTIATING DEFINITIVE ENDODERMと題する同第11/165,305号;2005年8月15
日に出願された、METHODS FOR INCREASING DEFINITIVE ENDODERM DIFFERENTIATION OF PLURIPOTENT HUMAN EMBRYONIC STEM CELLS WITH PI-3 KINASE INHIBITORSと題する同第11/573,662号;2005年10月27日に出願された、PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERMと題する同第12/729,084号;2005年11月
14日に出願された、MARKERS OF DEFINITIVE ENDODERMと題する同第12/093,590号;2006年6月20日に出願された、EMBRYONIC STEM CELL CULTURE COMPOSITIONS
AND METHODS OF USE THEREOFと題する同第11/993,399号;2006年10月
27日に出願された、PDX1-EXPRESSING DORSAL AND VENTRAL FOREGUT ENDODERMと題する
同第11/588,693号;2007年3月2日に出願された、ENDOCRINE PROGENITOR/PRECURSOR CELLS, PANCREATIC HORMONE-EXPRESSING CELLS AND METHODS OF PRODUCTION
と題する同第11/681,687号;2007年5月24日に出願された、METHODS FOR CULTURE AND PRODUCTION OF SINGLE CELL POPULATIONS OF HESCと題する同第11/8
07,223号;2007年7月5日に出願された、METHODS OF PRODUCING PANCREATIC HORMONESと題する同第11/773,944号;2007年9月24日に出願された、METHODS FOR INCREASING DEFINITIVE ENDODERM PRODUCTIONと題する同第11/860,4
94号;2008年4月8日出願された、METHODS OF PRODUCING PANCREATIC HORMONESと題する同第12/099,759号;2008年4月21日に出願された、PURIFYING ENDODERM AND PANCREATIC ENDODERM CELLS DERIVED FORM HUMAN EMBRYONIC STEM CELLSと題する同第12/107,020号;2009年11月13日に出願された、ENCAPSULATION OF PANCREATIC LINEAGE CELLS DERIVED FROM HUMAN PLURIPOTENT STEM CELLS)と題す
る同第12/618,659号;2010年4月22日及び2013年2月6日に出願された、両方とも、CELL COMPOSITIONS FROM DEDIFFERENTIATED REPROGRAMMED CELLSと題する同第12/765,714号及び同第13/761,078号;2007年8月13日に出願された、COMPOSITIONS AND METHODS USEFUL FOR CULTURING DIFFERENTIABLE CELLSと題する同第11/838,054号;2008年11月4日に出願された、STEM CELL AGGREGATE SUSPENSION COMPOSITIONS AND METHODS OF DIFFERENTIATION THEREOFと題する同第12/264,760号;2010年4月27日に出願された、SMALL MOLECULES SUPPORTING PLURIPOTENT CELL GROWTHと題する同第13/259,15号;2011年2月21日に出願された、LOADING SYSTEM FOR AN ENCAPSULATION DEVICEと題する国際出願PCT/US11/25628;2010年12月28日に出願された、AGENTS AND METHODS FOR INHIBITING PLURIPOTENT STEM CELLS)と題する同第13/992,931号;並びに2011年12月12日に出願された米国意匠出願第29/408,366号;同第2011年12月12日に出願された同第29/408,368号;2012年5月31日に出願された同第29/423,365号;及び2013年3月13日に出願された同第29/447,944号;2014年3月7日に出願された、DIMENSIONAL LARGE CAPACITY CELL ENCAPSULATION DEVICE ASSEMBLYと題する米国出願第14/201,630号
;2013年12月13日に出願された、IN VITRO DIFFERENTIATION OF PLURIPOTENT STEM CELLS TO PANCREATIC ENDODERM CELLS (PEC) AND ENDOCRINE CELLSと題する米国出願
第14/106,330号;2016年11月10日に出願された、PDX1 PANCREATIC ENDODERM CELLS IN CELL DELIVERY DEVICES AND METHODS THEREOFと題する国際出願PCT
/US2016/061442に見出すことができ、これらは全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0049】
多能性幹細胞に由来する様々な細胞組成物及びその方法は、本明細書に記載されており、本出願人によって独占的にライセンスされた出願:2008年4月24日に出願された、Pluripotent cellsと題する米国特許公開第2009/0269845号;2010年
7月20日に出願された、Differentiation of Human Embryonic Stem Cellsと題する米
国特許公開第2011/0014703号;2010年7月19日に出願された、Differentiation of Human Embryonic Stem Cellsと題する米国特許公開第2011/0014
702号;2010年12月16日に出願された、Differentiation of Human Embryonic
Stem Cellsと題する米国特許公開第2011/0151561号;2009年10月2
2日に出願された、Differentiation of Human Embryonic Stem Cellsと題する米国特許
公開第2010/0112692号;2011年8月17日に出願された、Differentiation of Pluripotent Stem Cellsと題する米国特許公開第2012/0052576号;
2009年10月23日に出願された、Differentiation of human pluripotent stem cellsと題する米国特許公開第2010/0112693号;2010/12/16日に出
願された、Differentiation of human embryonic stem cellsと題する米国特許公開第2
011/0151560号;2008年7月31日に出願された、Differentiation of human embryonic stem cellsと題する米国特許公開第2010/0015100号;20
08年11月25日に出願された、Differentiation of human embryonic stem cellsと
題する米国特許公開第2009/0170198号;2015年5月7日に出願された、Use of Small Molecules to Enhance MAFA Expression in Pancreatic Endocrine Cells
と題する米国特許公開第2015/0329828号;2013年6月6日に出願された、Differentiation of Human Embryonic Stem Cells into Pancreatic Endocrine Cells
と題する米国特許公開第2013/0330823号;2013年6月13日に出願された、Differentiation of human embryonic stem cells into pancreatic endocrine cellsと題する国際公開第2013/192005号;2013年12月30日に出願された
、Suspension and clustering of human pluripotent stem cells for differentiation into pancreatic endocrine cellsと題する米国特許公開第2014/0242693号
;2014年6月17日に出願された、Suspension and clustering of human pluripotent stem cells for differentiation into pancreatic endocrine cellsと題する米国特
許公開第2014/0295552号;2014年5月21日に出願された、Suspension
and clustering of human pluripotent stem cells for differentiation into pancreatic endocrine cellsと題する国際公開第2015/065524号;2013年6月6
日に出願された、Differentiation of Human Embryonic Stem Cells into Pancreatic Endocrine Cellsと題する米国特許公開第2013/0330823号;2013年12月
18日に出願された、Differentiation of Human Embryonic Stem Cells Into Pancreatic Endocrine Cells Using HB9 Regulatorsと題する米国特許公開第2014/0186953号;2015年12月9日に出願された米国出願第14/963730号;2015年12月11日に出願された米国出願第14/898,015号に見出すことができ、これらは全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、細胞送達デバイス内にカプセル化される。細胞送達デバイスは、不織布を含んでもよい。細胞送達デバイスは、それぞれが1つの機能又は複数の機能を果たす様々な層を含む。いくつかの実施形態では、細胞送達デバイスは、細胞除外(cell-excluding)膜及び不織布の両方を含む。別の実施形態では、送達デバイスは、TheraCyte(以前はBaxter)デバイス(Irvine、カリフォルニア州)である。TheraCyte細胞送達デバイスは、米国特許第6,773,458号、同第6,156,305号、同第6,060,640号、同第5,964,804号、同第5,964,261号、同第5,882,354号、同第5,807,406号、同第5,800,529号、同第5,782,912号、同第5,741,330号、同第5,733,336号、同第5,713,888号、同第5,653,756号、同第5,593,440号、同第5,569,462号、同第5,549,675号、同第5,545,223号、同第5,453,278号、同第5,421,923号、同第5,344,454号、同第5,314,471号、同第5,324,518号、同第5,219,361号、同第5,100,392号、及び同第5,011,494号に記載され、これらは全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
別の実施形態では、送達デバイスは、米国特許第8,278,106号に実質的に記載されているデバイス、並びに2014年3月7日に出願された米国出願第14/201,630号、及び2016年11月10日に出願された国際出願PCT/US2016/061442号、及び米国意匠第29/447,944、同第29/509,102号、同第29/484,363号、同第29/484,360号、同第29/484,359号、同第29/484,357号、同第29/484,356号、同第29/484,355号、同第29/484,362号、同第29/484,358号、同第29/408,366号、同第29/517,319号、同第29/408,368号、同第29/51
8,513号、同第29/518,516号、同第29/408,370号、同第29/517,144号、同第29/423,365号、同第29/530,325号、同第29/584,046に記載されているデバイスであり、これらは全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、細胞送達デバイス又は大容量アセンブリは、細胞送達デバイスの管腔をさらに仕切る1つ又は2つ以上のシール(seal)、すなわち仕切りシールからなる。例えば、本出願人の米国意匠出願第29/408366号、同第29/408368号、同第29/408370号、同第29/423,365号、及び同第29/584,046号を参照のこと。
【0052】
一実施形態では、低免疫原性細胞は、宿主の血管細胞とカプセル化細胞との間の直接的な細胞間接触を提供する有孔(perforated)細胞送達デバイスに移植される。有孔とは、デバイスの穴又は孔を意味する。いくつかの実施形態では、デバイスの全ての層が有孔となっているのではない。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願PCT/US2016/0061442号を参照のこと、これは、ただ1つの層、例えば細胞除外膜において又は細胞除外膜及び不織布層において有孔がある有孔細胞送達デバイスについて論じている。一実施形態では、低免疫原性細胞は、不織布に囲まれた有孔デバイス中にカプセル化される。これらの実施形態では、不織布は細胞送達デバイスの外側にある。不織布は、移植された細胞に影響を与えるのではなく、細胞ハウジング(cell housing)を取り囲む宿主の血管新生を促進する。例えば、有孔デバイス及びデバイスポリマーを記載している国際出願PCT/US2016/0061442及び米国特許第8,278,106号(これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0053】
一実施形態では、穴/有孔は、デバイスに含まれる細胞凝集体、例えば、デバイスに含まれる胚体内胚葉系統細胞凝集体などのhPSC由来の凝集体よりも小さい。一実施形態では、ラット又はヒトに移植された有孔細胞送達デバイスは、細胞除外膜のみに有孔を含み(デバイスの他の層は有孔ではない)、穴は約2mm以上離れており、穴の直径は約100ミクロン未満である。
【0054】
低免疫原性細胞の枯渇(「自殺遺伝子」)
体内の組織を置換及び回復するための胚性幹細胞及び人工多能性幹(iPS)細胞の多様性は、癌リスクの増加と並行して生じる。癌リスクの増加は遺伝子療法にも関連する。したがって、再プログラム化組織は、ES細胞又はiPS細胞に由来するかどうか(Takahashi, K. & Yamanaka, S. Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell 126, 663-676, (2006)及
びHanna, J. H., Saha, K. & Jaenisch, R. Pluripotency and Cellular Reprogramming:
Facts, Hypotheses, Unresolved Issues. Cell 143, 508-525, (2010)(これらは両方とも、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる))、又は他の多能性細胞若しくは前駆体細胞に由来するかどうか、及び遺伝子治療ベクターで処置された細胞に由来するかどうかに関係なく、安全上の懸念を与える(Knoepfler, P. S. Deconstructing Stem Cell Tumorigenicity: A Roadmap to Safe Regenerative Medicine. Stem Cells 27, 1050-1056, (2009)(これは、参照によりその全体が組み込まれる))。例えば、皮下移植さ
れたiPS細胞は奇形腫を引き起こし、iPSキメラ動物は高い発生率で原発性悪性癌を発症する(Takahashi, K. & Yamanaka, S. Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors. Cell 126, 663-676, (2006); Knoepfler, P. S. Deconstructing Stem Cell Tumorigenicity: A Roadmap
to Safe Regenerative Medicine. Stem Cells 27, 1050-1056, (2009))。良性の奇形腫は手術で容易に除去し得るが、浸潤性癌は細胞療法のリスクが残ったままである。
【0055】
自殺遺伝子戦略を含む、幹細胞の腫瘍形成性(tumorigenicity)を克服するための戦略
が検討されている(Knoepfler, P. S. Deconstructing Stem Cell Tumorigenicity: A Roadmap to Safe Regenerative Medicine. Stem Cells 27, 1050-1056, (2009))。具体的
には、全身的に利用可能なプロドラッグを局所的に活性な抗腫瘍剤へと代謝する酵素をコードする遺伝子を移植細胞に選択的に導入することができる。例えば、チミジンキナーゼによって細胞キナーゼによる三リン酸化後に毒性となる化合物へと変換されるガンシクロビルでの処置は、インビトロでの腫瘍細胞の破壊をもたらした。したがって、宿主組織と移植細胞との間における利用可能な生化学的差異を人工的に生じさせるように、移植細胞を修飾することができる。移植細胞の標的化は、自殺遺伝子を送達するために使用されるベクターの選択によって、及び使用される自殺遺伝子/プロドラッグシステムの生物学によって達成される。その結果、細胞が移植される環境でのみ生成される高用量の薬物は、他の組織での副作用を制限する。
【0056】
低免疫原性細胞の枯渇は、低免疫原性細胞に遺伝子を選択的に導入し、その遺伝子の発現が低免疫原性細胞死を直接的にもたらすか、又は低免疫原性細胞を他の剤に対して特異的に感受性にするかのいずれかにより達成され得る。この方法による低免疫原性細胞のインビボ又はエクスビボ枯渇は、レトロウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルス遺伝子送達などであるがこれらに限定されないウイルス遺伝子送達システムを使用して、所望の遺伝子を低免疫原性細胞に送達することによって達成され得る。所望のウイルス送達システムは、例えば低免疫原性細胞のアポトーシスを誘導することにより、例えば細胞死を直接引き起こすタンパク質をゲノムがコードするウイルスを含み得る。あるいは、ウイルス送達システムは、例えば単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子をゲノムがコードするウイルスを含み得る。低免疫原性細胞における単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子の発現により、低免疫原性細胞は薬理的用量のガンシクロビルに感受性を示すようになる。したがって、ウイルス形質導入された低免疫原性細胞とガンシクロビルとのその後の接触により、低免疫原性細胞の死がもたらされる。低免疫原性細胞の枯渇は、例えばZFN、CRISPR/cas、及びTALENシステムなどのゲノム編集アプリケーショを介していわゆる「自殺遺伝子」を導入することによって達成され得る。
【0057】
チミジンキナーゼなどの遺伝子の発現時に細胞の死滅を媒介するガンシクロビルなどの剤を本明細書では「細胞死誘導剤」と称する。
【0058】
低免疫原性細胞を死滅させるために使用することができる遺伝子には、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ及びシトシンデアミナーゼ、又は誘導性プロモーター/調節配列(本明細書では、「プロモーター/調節配列」又は「プロモーター」と同義的に称する)の制御下に置くことができる細胞死を誘導する任意の遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子は低免疫原性細胞に移入され、細胞は適切な選択圧下で選択され、細胞は患者に移入され、そこで生着が可能となる。次いで、患者はプロモーター活性を誘発する剤で処置され、それにより、生成物が低免疫原性細胞を死滅させるように機能する遺伝子の発現を誘発する。チミジンキナーゼの場合、この酵素による細胞の死滅を促進する他の剤、例えばガンシクロビルなども使用することができる(Bonini et al., 1997, Science 276:1719-1724; Bordignon et al., 1995, Human Gene Therapy 6:813-819; Minasi et al., 1993, J. Exp. Med. 177:1451-1459; Braun et al., 1990, Biology of Reproduction 43:684-693)。この目的に有用な他の遺伝子には、カスパーゼ3、8、及び9の構
成的に活性な形態、bax、グランザイム、ジフテリア毒素、シュードモナスA毒素、リシン(ricin)、及び本明細書の別の箇所で開示されている他の毒素遺伝子が含まれるが
、これらに限定されない。そのような遺伝子をヒトに送達するための適切な構築物の生成は、当業者には容易に明らかであり、例えば、Sambrook et al.(1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York) 及びAusubel et al.(1997, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York)に記載されている。
【0059】
細胞を死滅させる目的で低免疫原性細胞に移入される遺伝子は、適切な誘導剤が細胞に添加(哺乳動物へ投与)されたときに遺伝子発現の誘導が達成され得るように、適切なプロモーター配列の制御下に置かれることが重要である。そのような誘導性プロモーター配列には、細胞への金属の添加時に誘導されるプロモーター、ステロイド誘導性プロモーターなどが含まれるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、エクジソンプロモーターシステムを使用し得る。この実施形態では、エクジソンプロモーターは、エクジソン受容体タンパク質配列の上流にクローニングされ、該配列は、所望の遺伝子、例えば、所望の毒素に作動可能に連結されたエクジソン結合部位の発現を駆動する第2のプロモーター配列の上流に位置する。プロモーターの誘導によって毒素の発現が誘導され、それにより、毒素遺伝子が存在している細胞が死滅する。
【0060】
細胞がエクスビボ様式で形質導入される場合、細胞を死滅させるための遺伝子を形質導入した細胞は、形質導入遺伝子に加えて選択マーカーを細胞に提供することによって選択され得る(すなわち、遺伝子を含まない細胞から分離され得る)。選択可能なマーカーは、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al. (1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y.)に記載されている。
【0061】
低免疫原性細胞の枯渇は、低免疫原性細胞集団にオリゴヌクレオチド(例えば、限定するものではないが、アンチセンス分子)又はリボザイムを導入することによりさらに達成され、このオリゴヌクレオチド又はリボザイムは、低免疫原性細胞の死又は低免疫原性細胞機能の障害を誘導することができる。そのようなオリゴヌクレオチドには、低免疫原性細胞を死滅させるか、又はT細胞の刺激に関して低免疫原性細胞の機能を損なうものとして本明細書で定義される低免疫原性細胞の必須の機能を標的とするものが含まれる。低免疫原性細胞のそのような機能には、特に、B71及びB72の共刺激機能、CD40が含まれるが、これらに限定されない。したがって、本発明の方法に有用なオリゴヌクレオチド及びリボザイムには、これらの標的に対するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書に記載されるように、低免疫原性細胞の枯渇には、低免疫原性細胞機能の障害が含まれる。低免疫原性細胞機能の障害には、低免疫原性細胞の物理的除去又は枯渇を伴う又は伴わない全ての形態の低免疫原性細胞障害が含まれる。したがって、低免疫原性細胞機能の障害には、低免疫原性細胞機能に重要な低免疫原性細胞表面分子の機能を遮断する抗体の使用が含まれる。
【0063】
あるいは、遮断が低免疫原性細胞機能の障害をもたらす、低免疫原性細胞表面分子の機能を遮断するペプチドが、宿主生物における低免疫原性細胞を効果的に枯渇させるために使用され得る。そのようなペプチドには、低免疫原性細胞の表面上の受容体分子に特異的に結合するように設計されたもの、及び例えばこれらの細胞の必須の酵素機能を阻害するように設計されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
同様に、本明細書に記載されるのと同じ目的のために設計された遺伝子及びオリゴヌクレオチドも、本発明の方法におけるツールとして含まれる。したがって、低免疫原性細胞の生物学的機能を損なうペプチド、オリゴヌクレオチド、及び遺伝子は、その用語が本明細書で定義されているように、本明細書で開示される本発明の方法における使用も企図される。
【0065】
本発明は、本発明の方法を実施するための適切な低免疫原性細胞枯渇組成物の医薬組成物の使用をさらに包含し、組成物は適切な低免疫原性細胞枯渇組成物及び薬学的に許容される担体を含む。いくつかの実施形態では、細胞枯渇組成物は、抗体及び毒素を含むキメ
ラ組成物である。
【0066】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、適切な低免疫原性細胞枯渇組成物と組み合わせることができ、組み合わせ後において適切な低免疫原性細胞枯渇組成物を哺乳動物に投与するために使用することができる化学組成物を意味する。
【0067】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、経口固形製剤、眼科用製剤、坐剤、エアロゾル製剤、局所製剤、又は他の類似の製剤で全身投与され得る。そのような医薬組成物は、低免疫原性細胞枯渇組成物に加えて、薬学的に許容される担体及び薬剤投与を促進及び容易化することが知られている他の成分を含んでもよい。ナノ粒子、リポソーム、再封赤血球(resealed erythrocyte)、及び免疫学に基づくシステムなどの他の可能な製剤も、本発明の方法による適切な低免疫原性細胞枯渇組成物を投与するために使用され得る。
【0068】
「自殺遺伝子」を細胞に導入する方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0222633号に開示されている。
【0069】
本発明は、哺乳動物宿主における低免疫原性細胞を枯渇させる方法を含む。低免疫原性細胞が宿主に移植された後、この方法は、低免疫原性細胞を細胞枯渇組成物と接触させて低免疫原性細胞機能の障害又は低免疫原性細胞の死滅を引き起こし、それにより、哺乳動物宿主における低免疫原性細胞を枯渇させることを含む。
【0070】
別の態様では、低免疫原性細胞枯渇組成物は、毒素、抗体、放射性分子、核酸、ペプチド、ペプチド模倣物、及びリボザイムからなる群から選択される。
【0071】
一態様では、毒素は、免疫毒素である。毒素は、リシン、ジフテリア毒素、及びシュードモナス外毒素Aからなる群から選択される。
【0072】
別の実施形態では、抗体は、CD1aに特異的な抗体、CD11cに特異的な抗体、MHCIIに特異的な抗体、CD11bに特異的な抗体、DEC205に特異的な抗体、B71に特異的な抗体、B72に特異的な抗体、CD40に特異的な抗体、I型レクチンに特異的な抗体、及びII型レクチンに特異的な抗体からなる群から選択される。
【0073】
さらに別の実施形態では、核酸分子は、遺伝子及びオリゴヌクレオチドからなる群から選択される。
【0074】
さらなる実施形態では、放射性分子は、放射性標識抗体である。
【0075】
別の実施形態では、抗原枯渇組成物は、抗体及び毒素を含むキメラ組成物である。毒素は、リシン、ジフテリア毒素、及びシュードモナス外毒素Aからなる群から選択され得る。
【0076】
別の実施形態では、抗体は、CD1aに特異的なf抗体、CD11cに特異的な抗体、MHCIIに特異的な抗体、CD11bに特異的な抗体、DEC205に特異的な抗体、B71に特異的な抗体、B72に特異的な抗体、CD40に特異的な抗体、I型レクチンに特異的な抗体、及びII型レクチンに特異的な抗体からなる群から選択される。
【0077】
組み合わせ製品
本明細書に記載の実施形態は、低免疫原性細胞又は治療剤が充填されたデバイスを指す組み合わせ製品も開示し、すなわち、それぞれが単独で医療デバイス又は細胞製品の候補であり得るが、それらは組み合わせて使用することで組み合わせ製品となる。一実施形態
では、組み合わせ製品は、低免疫原性細胞が充填された有孔デバイスを指す。これは、「組み合わせ製品」又は「有孔組み合わせ製品」と称される。デバイス(有孔又は非有孔)は、米国特許第8,278,106号及び同第9,526,880号、国際出願PCT/US2016/0061442号、並びに米国意匠特許第D714956号、同第D718472号、同第D718467号、同第D718466号、同第D718468号、同第D718469号、同第D718470号、同第D718471号、同第D720469号、同第D726306号、同第D726307号、同第D728095号、同第D734166号、同第D734847号、同第D747467号、同第D747468号、同第D747798号、同第D750769号、同第D750770号、同第D755986号、同第D760399号、同第D761423号、同第D761424号(参照によりそれらの全体が組み込まれる)に記載されるような細胞カプセル化デバイスを含むがこれらに限定されない、本明細書に記載されている任意のマクロ細胞送達デバイスであり得る。デバイス(有孔又は非有孔)に充填される細胞は、胚体内胚葉、PDX1陽性内胚葉、PDX1陽性前腸内胚葉、膵臓内胚葉、PDX1及びNKX6.1を発現する膵臓内胚葉細胞、内分泌前駆細胞、NKX6.1及びINSを発現する内分泌前駆細胞、未成熟β細胞、NKX6.1、INS、及びMAFBを発現する未成熟β細胞、成熟内分泌細胞、INS、GCG、SST、及びPPを発現する成熟内分泌細胞、及び成熟β細胞、並びにINS及びMAFAを発現する成熟β細胞を含むがこれらに限定されない、上記で論じた任意の低免疫原性細胞であり得る。
【0078】
膵臓内胚葉又はインビボで移植されたときに成熟する膵臓前駆低免疫原性細胞が充填された有孔送達デバイスは、糖尿病患者のインスリン依存を軽減させる及び/又は低血糖を軽減させることが意図される。これには、低血糖に気付いていない、不安定な(脆弱な)、又は臓器移植を受けていて、かつ、免疫抑制療法に耐えられるか又はすでに免疫抑制療法を受けている、ハイリスクI型糖尿病患者が含まれるが、これらに限定されない。国際出願PCT/US2016/0061442号(参照によりその全体が組み込まれる)に実質的に記載されているように、主な作用方法は、直接的な宿主の血管新生を促進する透過性かつ耐久性の移植可能な医療デバイスに含まれるヒト膵臓内胚葉細胞(PEC)又は膵臓前駆低免疫原性細胞を介する。PECの低免疫原性細胞は、移植後に、治療用のグルコース応答性インスリン放出低免疫原性細胞に分化及び成熟する。したがって、有孔組み合わせ製品は、ヒトインスリンの分泌を助長する。有孔組み合わせ製品は、インビボでPEC低免疫原性細胞の分布(脱出(egress))を制限する。有孔組み合わせ製品は、デバイス内に治療用低免疫原性細胞集団を維持し、インスリン及び他の膵臓生成物の血流への分布を促進するための十分な血管生着を可能にする場所に移植される。有孔組み合わせ製品は、従来の外科手術具で移植及び外植され、治療用量を2年以上提供することが意図される。デバイスは、処方中、保存期間中、取り扱い中、及び外科的移植中に十分な用量のPEC低免疫原性細胞製品を保持して臨床効果を達成し、かつ安全性要件を満たすために細胞製品が組織カプセル内に置かれることを保証することが意図されている。
【0079】
ノックイン
特定の実施形態では、免疫寛容原性因子をゲノム編集された幹細胞株に挿入又は再挿入して、免疫特権を有するユニバーサルドナー幹細胞株を作成することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるユニバーサル幹細胞は、1つ以上の免疫寛容原性因子を発現するようにさらに修飾されている。例示的な免疫寛容原性因子には、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、及びIL-35のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子編集の任意の方法が、上記の免疫寛容原性因子などの免疫寛容原性因子をAAVS1遺伝子座に挿入することを促進して免疫拒絶を積極的に阻害するために使用され得る。
【0080】
具体的には、特定の実施形態では、本明細書に開示される発明は、少なくとも1つのM
HCクラスI遺伝子及び少なくとも1つのNK活性化リガンド遺伝子の重要な成分を低減又は欠失させるようにゲノムが改変され、1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を増加させるようにさらに改変された幹細胞に関する。特定の実施形態では、本明細書に開示される発明は、少なくとも1つのMHCクラスI遺伝子及び少なくとも1つのNK活性化リガンド遺伝子の重要な成分を低減又は欠失させるようにゲノムが改変され、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、及びIL-35のうちの1つ以上の発現を増加させるようにさらに改変された幹細胞に関する。
【0081】
実施形態
本発明の他の実施形態を以下の番号付き項目を参照して記載する。
【0082】
遮断抗体に関する:組成物
【0083】
項目1:少なくとも1つのヒト白血球抗原(HLA)クラスI遺伝子を欠く多能性由来細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンドに結合する少なくとも1つの剤を含む組成物。
【0084】
項目2:剤が抗体である、項目1の組成物。
【0085】
項目3:HLAクラスI遺伝子が、B2Mである、項目1の組成物。
【0086】
項目4:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1~3の組成物。
【0087】
項目5:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1及びCEACAM1である、項目1~2の組成物。
【0088】
項目6:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1~2の組成物。
【0089】
項目7:多能性由来細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目1~2の組成物。
【0090】
項目8:細胞死誘導剤が、ガンシクロビルである、項目7の組成物。
【0091】
項目9:多能性由来細胞が、1つ以上の免疫寛容原性因子をさらに過剰発現する、項目1~8のいずれか1つの組成物。
【0092】
項目10:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、又はIL-35である、項目9の組成物。
【0093】
項目11:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、及びHLA-Gである、項目9の組成物。
【0094】
遮断抗体に関する:方法
【0095】
項目1:ヒト多能性由来細胞の細胞移植片拒絶を防止する方法であって、少なくとも1つのHLAクラスI遺伝子を欠く標的細胞集団及び標的細胞上のNK細胞活性化リガンド
に結合する少なくとも1つの剤を含む組成物を対象のNK細胞攻撃を抑制するのに有効な量で処置を必要とする対象に投与し、それにより、ヒト多能性由来細胞の細胞移植片拒絶を防止することを含む、方法。
【0096】
項目2:剤が抗体である、項目1の方法。
【0097】
項目3:NK細胞活性化リガンドに対する対象の免疫応答が抑制される、項目1の方法。
【0098】
項目4:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、又はMICBである、項目1の方法。
【0099】
項目5:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1の方法。
【0100】
項目6:対象がヒトである、項目1の方法。
【0101】
項目7:抗体がヒト抗体である、項目2の方法。
【0102】
hES細胞ダブルノックアウトに関する:組成物
【0103】
項目1:多能性由来細胞を含むインビトロ細胞集団であって、該多能性由来細胞が、少なくとも1つのHLAクラスI遺伝子及び少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、インビトロ細胞集団。
【0104】
項目2:HLAクラスI遺伝子が、B2Mである、項目1のインビトロ細胞集団。
【0105】
項目3:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0106】
項目4:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1及びCEACAM1である、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0107】
項目5:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0108】
項目6:多能性由来細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性由来細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目1~5のインビトロ細胞集団。
【0109】
項目7:細胞死誘導剤が、ガンシクロビルである、項目6のインビトロ細胞集団。
【0110】
項目8:多能性由来細胞が、1つ以上の免疫寛容原性因子をさらに過剰発現する、項目1~7のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0111】
項目9:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、IL-35、又はその組み合わせである、項目8のインビトロ細胞集団。
【0112】
項目10:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、及びHLA-Gである、項
目9のインビトロ細胞集団。
【0113】
多能性幹細胞トリプルノックアウトに関する:組成物
【0114】
細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、(c)細胞中のCEACAM1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにCEACAM1遺伝子が編集された、第3のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含むヒト多能性幹細胞。
【0115】
転写調節因子のノックアウトに関する:組成物
【0116】
項目12:野生型多能性幹細胞に対して、1つ以上のMHCクラスI若しくはMHCクラスII遺伝子又はタンパク質複合体及び1つ以上のNK細胞活性化リガンドの調節された発現を含む多能性由来細胞であって、多能性幹細胞が、MHCクラスI又はMHCクラスIIの1つ以上の転写因子をコードする1つ以上の遺伝子及び細胞の少なくとも1つの対立遺伝子から欠失されたNK細胞活性化リガンド遺伝子を有する、多能性由来細胞。
【0117】
項目13:野生型ヒト多能性幹細胞に対して、1つ以上のNK細胞活性化リガンドの調節された発現を含む、多能性幹細胞。
【0118】
項目14:B2M又はICAM-1を発現しないヒト多能性幹細胞。
【0119】
項目15:CIITA又はICAM-1を発現しないヒト多能性幹細胞。
【0120】
項目16:LRC5又はICAM-1を発現しないヒト多能性幹細胞。
【0121】
項目17:NLRC5、CIITA、B2Mのうちの1つ以上を発現せず、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBのうちの1つ以上をさらに発現しない、ヒト多能性幹細胞。
【0122】
項目18:HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つ以上を発現せず、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBのうちの1つ以上をさらに発現しない、ヒト多能性幹細胞。
【0123】
項目19:1つ以上のMHCクラスI抗原及び1つ以上のNK細胞活性化リガンドのうちの1つ以上を発現せず、細胞の少なくとも1つの対立遺伝子のセーフハーバー遺伝子座(safe harbor locus)に挿入された1つ以上の免疫寛容原性因子をさらに有する、ヒト
多能性幹細胞。
【0124】
項目20:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集され、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾を含む、修飾されたゲノムを含むヒト多能性幹細胞。
【0125】
項目21:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含むヒト多能性幹細胞。
【0126】
hESダブルノックアウト細胞に関する:組成物
【0127】
項目1:多能性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、該多能性細胞は、少なくとも1つの機能的MHCクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つの機能的ナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質を欠く、インビトロ細胞集団。
【0128】
項目2:MHCクラスI細胞表面タンパク質が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、又はそれらの組み合わせである、項目1のインビトロ細胞集団。
【0129】
項目3:MHCクラスI細胞表面タンパク質が、B2Mである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0130】
項目4:多能性細胞が、少なくとも2つの機能的NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質を欠いている、項目1~3のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0131】
項目5:多能性細胞が、少なくとも3つの機能的NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質を欠いている、項目1~4のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0132】
項目6:NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質が、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1~5のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0133】
項目7:NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質が、ICAM-1及びCEACAM1である、項目1~5のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0134】
項目8:多能性細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目1~7のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0135】
項目9:細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性細胞を死滅させることができるタンパク質が、単純ヘルペスウイルス、チミジンキナーゼ、又はシトシンデアミナーゼである、項目1~8のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0136】
項目10:細胞死誘導剤が、ガンシクロビルである、項目8~9のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0137】
hESダブルノックアウト細胞に関する:組成物
【0138】
項目1:多能性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、該多能性細胞が、元の遺伝子型又は野生型ヒト細胞に対して、少なくとも1つのMHCクラスI細胞表面タンパク質の発現が低減され、少なくとも1つのNK活性化リガンド細胞表面タンパク質の機能及び/又は発現が低減されている、インビトロ細胞集団。
【0139】
項目2:多能性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、該多能性細胞が、元の遺伝子型又は野生型ヒト細胞に対して、HLA-A、HLA-B、及びHLA-C細胞表面タンパク質のうちの1つ以上の発現が低減され、少なくとも1つのNK活性化リガンド細胞表面タンパク質の機能及び/又は発現が低減されている、インビトロ細胞集団。
【0140】
項目3:多能性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、該多能性細胞が、機能的HL
A細胞表面タンパク質の発現、NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質の発現を欠き、多能性細胞中において細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性細胞を死滅させることができるタンパク質を有する、インビトロ細胞集団。
【0141】
項目4:1つ以上のHLAクラスI細胞表面タンパク質及び1つ以上のNK活性化リガンド細胞表面タンパク質の発現が野生型幹細胞に対して調節される、幹細胞。
【0142】
項目5:1つ以上のHLAクラスI細胞表面タンパク質、1つ以上のNK活性化リガンド細胞表面タンパク質、及び1つ以上の寛容原性細胞表面タンパク質因子の発現が野生型幹細胞に対して調節され、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、多能性細胞。
【0143】
項目6:多能性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、多能性細胞が、機能的MHCクラスI遺伝子及びナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド遺伝子を欠き、多能性細胞が、野生型多能性細胞に対して寛容原性細胞表面タンパク質因子を過剰発現し、多能性細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が多能性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、インビトロ細胞集団。
【0144】
PECダブルノックアウト細胞に関する:組成物
【0145】
項目1:膵臓内胚葉(PEC)細胞を含むインビトロ細胞集団であって、PEC細胞が、少なくとも1つの機能的HLAクラスI遺伝子及び少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、インビトロ細胞集団。
【0146】
項目2:少なくとも1つのHLAクラスI遺伝子が、B2Mである、項目1のインビトロ細胞集団。
【0147】
項目3:少なくとも1つのNK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0148】
項目4:少なくとも1つのNK細胞活性化リガンドが、ICAM-1及びCEACAM1である、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0149】
項目5:少なくとも1つのNK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0150】
項目6:PEC細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤がPEC細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目1~5のインビトロ細胞集団。
【0151】
項目7:細胞死誘導剤がガンシクロビルである、項目6のインビトロ細胞集団。
【0152】
項目8:細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤がPEC細胞を死滅させることができる遺伝子が、単純ヘルペスウイルス、チミジンキナーゼ、又はシトシンデアミナーゼである、項目6のインビトロ細胞集団。
【0153】
項目9:PEC細胞が、1つ以上の寛容原性細胞表面タンパク質をさらに過剰発現する、項目1~8のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0154】
項目10:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、IL-35、又はそれらの組み合わせである、項目1~9のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0155】
項目11:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、及びHLA-Gである、項目1~9のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0156】
項目12:膵臓内胚葉(PEC)細胞を含むインビトロ細胞集団であって、PEC細胞が、少なくとも1つの機能的MHCクラスI遺伝子、MHCクラスII遺伝子、及びナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、インビトロ細胞集団。
【0157】
項目13:膵臓内胚葉(PEC)細胞を含むインビトロ細胞集団であって、PEC細胞が、少なくとも1つの機能的MHCクラスI遺伝子及びMHCクラスII遺伝子を欠き、少なくとも2つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、インビトロ細胞集団。
【0158】
項目14:1つ以上のHLAクラスI遺伝子及び1つ以上のNK活性化リガンド遺伝子が、野生型PEC細胞に対して調節される、膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0159】
項目15:1つ以上のHLAクラスI細胞表面タンパク質、1つ以上のNK活性化リガンド、及び1つ以上の免疫寛容原性因子の発現が野生型PEC細胞に対して調節され、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤がPEC細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0160】
項目16:B2M又はICAM-1を発現しない膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0161】
項目17:CIITA又はICAM-1を発現しない膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0162】
項目18:LRC5又はICAM-1を発現しない膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0163】
項目19:NLRC5、CIITA、及びB2Mのうちの1つ以上を発現せず、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICa、及びMICBの1つ以上をさらに発現しない、膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0164】
項目20:HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つ以上を発現せず、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICa、及びMICBのうちの1つ以上をさらに発現しない、膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0165】
項目21:1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質及び1つ以上のNK細胞活性化リガンドを発現せず、細胞の少なくとも1つの対立遺伝子のセーフハーバー遺伝子座に挿入された1つ以上の免疫寛容原性因子をさらに有する、膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0166】
項目22:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集され、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾を含む、修飾されたゲノムを含む膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0167】
項目23:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と
、を含む修飾されたゲノムを含む膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0168】
項目24:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、(c)細胞中のCEACAM1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにCEACAM1遺伝子が編集された、第3のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0169】
低免疫原性細胞に関して
項目1:低免疫原性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、低免疫原性細胞が、少なくとも1つの機能的HLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つの機能的NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質を欠く、インビトロ細胞集団。
【0170】
項目2:HLAクラスI細胞表面タンパク質が、B2Mである、項目1のインビトロ細胞集団。
【0171】
項目3:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0172】
項目4:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1及びCEACAM1である、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0173】
項目5:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1~2のインビトロ細胞集団。
【0174】
項目6:低免疫原性細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が低免疫原性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目1~5のインビトロ細胞集団。
【0175】
項目7:低免疫原性細胞が、1つ以上の免疫寛容原性因子をさらに過剰発現する、項目1~6のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0176】
項目8:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E、HLA-G、PD-L1、CTLA-4-Ig、CD47、CI-阻害剤、IL-35、及びそれらの組み合わせである、項目1~7のインビトロ細胞集団。
【0177】
項目9:免疫寛容原性因子が、HLA-C、HLA-E及びHLA-Gである、項目1~7のインビトロ細胞集団。
【0178】
項目10:低免疫原性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、低免疫原性細胞が、少なくとも1つの機能的MHCクラスI遺伝子及び少なくとも1つのNK細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、インビトロ細胞集団。
【0179】
項目11:低免疫原性細胞を含むインビトロ細胞集団であって、低免疫原性細胞が、少なくとも1つの機能的MHCクラスI遺伝子、MHCクラスII遺伝子、及びNK細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、インビトロ細胞集団。
【0180】
項目12:MHCクラスI遺伝子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、又はそれらの組み合わせである、項目10又は11のインビトロ細胞集団。
【0181】
項目13:MHCクラスI遺伝子が、B2Mである、項目10、11、又は12のインビトロ細胞集団。
【0182】
項目14:低免疫原性細胞が、少なくとも2つの機能的NK細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、項目10~13のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0183】
項目15:低免疫原性細胞が、少なくとも3つの機能的NK細胞活性化リガンド遺伝子を欠く、項目10~13のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0184】
項目16:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目10~13のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0185】
項目17:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1及びCEACAM1である、項目10~13のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0186】
項目18:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目10~13のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0187】
項目19:低免疫原性細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が低免疫原性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目10~18のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0188】
項目20:低免疫原性細胞が、hES細胞又は膵臓系統細胞である、項目7~15のいずれか1つのインビトロ細胞集団。
【0189】
項目21:1つ以上のHLAクラスI細胞表面タンパク質及び1つ以上のNK活性化リガンド細胞表面タンパク質の発現が、野生型低免疫原性細胞に対して調節される、低免疫原性細胞。
【0190】
項目22:1つ以上のHLAクラスI細胞表面タンパク質、1つ以上のNK活性化リガンド、及び1つ以上の寛容原性細胞表面タンパク質因子の発現が、野生型低免疫原性細胞に対して調節され、多能性細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が低免疫原性細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、低免疫原性細胞。
【0191】
項目23:野生型多能性幹細胞に対して、1つ以上のMHCクラスI又はMHCクラスII細胞表面タンパク質及び1つ以上のNK細胞活性化リガンドの調節された発現を含む低免疫原性幹細胞であって、多能性幹細胞が、MHCクラスI又はMHCクラスIIの1つ以上の転写因子をコードする1つ以上の遺伝子及び細胞の少なくとも1つの対立遺伝子から欠失されたNK細胞活性化リガンド遺伝子を有する、低免疫原性幹細胞。
【0192】
項目24:野生型ヒト低免疫原性細胞に対して、1つ以上のNK細胞活性化リガンドの調節された発現を含む、低免疫原性細胞。
【0193】
項目25:B2M又はICAM-1を発現しないヒト低免疫原性細胞。
【0194】
項目26:CIITA又はICAM-1を発現しないヒト低免疫原性細胞。
【0195】
項目27:LRC5又はICAM-1を発現しないヒト低免疫原性細胞。
【0196】
項目28:NLRC5、CIITA、及びB2Mのうちの1つ以上を発現せず、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICa、及びMICBのうちの1つ以上をさらに発現しない、ヒト低免疫原性細胞。
【0197】
項目29:HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cのうちの1つ以上を発現せず、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICa、及びMICBのうちの1つ以上をさらに発現しない、ヒト低免疫原性細胞。
【0198】
項目30:1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質及び1つ以上のNK細胞活性化リガンドのうちの1つ以上を発現せず、細胞の少なくとも1つの対立遺伝子のセーフハーバー遺伝子座に挿入された1つ以上の免疫寛容原性因子をさらに有する、ヒト低免疫原性細胞。
【0199】
項目31:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集され、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾を含む、修飾されたゲノムを含む低免疫原性細胞。
【0200】
項目32:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む低免疫原性細胞。
【0201】
項目33:細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、(c)細胞中のCEACAM1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにCEACAM1遺伝子が編集された、第3のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む低免疫原性細胞。
【0202】
ダブルノックアウトの方法
項目1:a)移植を必要とする対象に、有効量の、膵臓内胚葉細胞集団を含む移植片を投与することを含む、移植片拒絶を低減する方法であって、少なくとも1つのHLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つのNK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質の機能が破壊されている、方法。
【0203】
項目2:HLAクラスI細胞表面タンパク質が、B2Mである、項目1の方法
【0204】
項目3:NK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質が、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1~2の方法。
【0205】
項目4:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1及びCEACAM1である、項目1~2の方法。
【0206】
項目5:NK細胞活性化リガンドが、ICAM-1、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1~2の方法。
【0207】
項目6:細胞集団中の低免疫原性細胞を枯渇させる方法であって、前記低免疫原性細胞
を低免疫原性細胞枯渇組成物と接触させて低免疫原性細胞機能の障害又は前記低免疫原性細胞の死滅をもたらし、それにより、前記細胞集団中の前記低免疫原性細胞を枯渇させることを含む、方法。
【0208】
項目7:低免疫原性細胞が、少なくとも1つの機能的HLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つのNK活性化リガンドの発現を欠く、請求項6記載の方法。
【0209】
項目8:宿主哺乳動物から低免疫原性細胞を除去する方法であって、(a)低免疫原性細胞を前記宿主哺乳動物に移入することと、(b)宿主を低免疫原性細胞枯渇組成物と接触させて低免疫原性細胞機能の障害又は前記低免疫原性細胞の死滅をもたらし、それにより、宿主哺乳動物における前記低免疫原性細胞を除去することを含む、方法。
【0210】
項目9:少なくとも1つのHLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つのNK活性化リガンドの機能を低下させる(diminished)、項目8の方法。
【0211】
項目10:標的細胞集団中のNK活性化リガンドを増加させる方法であって、標的細胞集団をIFN-γ刺激にさらし、それにより、野生型に対して標的細胞中のNK活性化リガンドを増加させることを含む、方法。
【0212】
MHCクラスI遺伝子及びNK細胞活性化リガンド遺伝子の両方の機能が破壊又は阻害された多能性細胞に関する:組成物
項目1:少なくとも1つの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI遺伝子及び少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンド遺伝子の機能が破壊又は阻害されている、多能性細胞を含むインビトロ細胞集団。
【0213】
項目2:MHC遺伝子が、β-2マイクログロブリン(B2M)をコードする、項目1のインビトロ細胞集団。
【0214】
項目3:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1、CD58、PVR、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目1のインビトロ細胞集団。
【0215】
項目4:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1及びCD58である、項目1のインビトロ細胞集団。
【0216】
項目5:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1、CD58、CD155、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目1のインビトロ細胞集団。
【0217】
項目6:多能性細胞が、ヒト胚性幹細胞である、項目1のインビトロ細胞集団。
【0218】
項目7:多能性細胞が、膵臓内胚葉細胞に分化する、項目1のインビトロ細胞集団。
【0219】
項目8:多能性細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が該細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに含む、項目1のインビトロ細胞集団。
【0220】
項目9:MHCクラスI遺伝子が、ゲノム編集アプリケーションを使用して破壊されている、項目1のインビトロ細胞集団。
【0221】
項目10:ゲノム編集アプリケーションが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、クラスター化され規則的に間隔を空けた短いパリンドローム反復(CRISPR)/c
as、又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システムである、項目9のインビトロ細胞集団。
【0222】
項目11:NK細胞活性化リガンドが、ゲノム編集アプリケーションを使用して破壊されている、項目1のインビトロ細胞集団。
【0223】
項目12:NK細胞活性化リガンドが、抗NK細胞活性化リガンド剤を使用して破壊されている、項目1のインビトロ細胞集団。
【0224】
項目13:剤が抗体である、項目8のインビトロ細胞集団。
【0225】
MHCクラスI遺伝子及びNK細胞活性化リガンド遺伝子の両方の機能が破壊又は阻害された膵臓系統細胞に関する:組成物
項目14:少なくとも1つの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI遺伝子及び少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンドの機能が破壊又は阻害されている、膵臓系統細胞を含むインビトロ細胞集団。
【0226】
項目15:MHCクラスI遺伝子が、B2Mをコードする、項目14のインビトロ細胞集団。
【0227】
項目16:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1、CD58、CD155、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目14のインビトロ細胞集団。
【0228】
項目17:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1及びCD58である、項目14のインビトロ細胞集団。
【0229】
項目18:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1、CD58、CD155、CEACAM1、CADM1、MICA、及びMICBである、項目14のインビトロ細胞集団。
【0230】
項目19:膵臓系統細胞が、胚体内胚葉、前腸内胚葉、膵臓内胚葉細胞、内分泌前駆体、又はインスリン産生細胞である、項目14のインビトロ細胞集団。
【0231】
項目20:膵臓系統細胞が、細胞死誘導剤の存在下で発現されたときに該剤が該細胞を死滅させることができるタンパク質をさらに発現する、項目14のインビトロ細胞集団。
【0232】
膵臓細胞の細胞移植片拒絶を防止する方法
項目21:以下を含む、ヒト膵臓細胞の細胞移植片拒絶を防止する方法:
【0233】
a.少なくとも1つの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI細胞表面タンパク質を発現せず、少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)活性化リガンドを発現しない、ヒト膵臓細胞集団を提供すること、及び
b.ヒト膵臓細胞集団を哺乳動物対象に移植し、MHCクラスI細胞表面タンパク質及びNK活性化リガンド発現がないことによって細胞移植片拒絶が防止されること。
【0234】
項目22:主要組織適合性複合体(MHC)クラスI細胞表面タンパク質が、β-2マイクログロブリン(B2M)又はHLA-ABC細胞表面タンパク質である、項目21の方法。
【0235】
項目23:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1、CD58、CD155、PVR、
CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目21の方法。
【0236】
項目24:ヒト膵臓細胞集団が、膵臓内胚葉細胞(PEC)である、項目21の方法。
【0237】
項目25.ヒト膵臓細胞集団が、細胞死誘導剤の存在下でヒト細胞集団において発現されたときに該剤がヒト膵臓細胞集団を死滅させることができるタンパク質をさらに含む、項目21の方法。
【0238】
インスリンの産生方法
項目26.以下を含む、インスリンの産生方法:
【0239】
a)少なくとも1つの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI細胞表面タンパク質を発現せず、少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)活性化リガンドを発現しない、ヒト膵臓内胚葉細胞集団を提供すること、及び
b)ヒト膵臓内胚葉細胞集団を哺乳動物対象に移植し、膵臓内胚葉細胞は哺乳動物対象において成熟し、グルコース刺激に応答してインスリンを産生すること。
【0240】
項目27:主要組織適合性複合体(MHC)クラスI細胞表面タンパク質が、β-2マイクログロブリン(B2M)であるか、又はHLA-ABC細胞表面タンパク質である、項目26の方法。
【0241】
項目28:NK細胞活性化リガンドが、ICAM1、CD58、CD155、PVR、CEACAM1、CADM1、MICA、MICB、又はそれらの組み合わせである、項目26の方法。
【0242】
項目29:ヒト膵臓細胞集団が、細胞死誘導剤の存在下でヒト膵臓細胞集団において発現されたときに該剤がヒト膵臓細胞集団を死滅させることができるタンパク質をさらに含む、項目26の方法。
【0243】
項目30:タンパク質が単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼであり、剤がガンシクロビルである、項目29の方法。
【0244】
低免疫原性幹細胞を調製する方法であって、低免疫原性幹細胞による1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質及び1つ以上のNK活性化リガンドの発現を調節し、それにより、低免疫原性幹細胞を調製することを含む、方法。
【0245】
低免疫原性幹細胞を調製する方法であって、1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質、1つ以上のNK活性化リガンドの発現を調節し、幹細胞上の1つ以上の免疫寛容原性因子の発現を調節し、それにより、低免疫原性幹細胞を調製することを含む、方法。
【0246】
幹細胞上の1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質及びNK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質の発現を調節する方法であって、MHC-クラスI遺伝子及びNK細胞活性化リガンドの1つ以上の転写調節因子をコードする1つ以上の遺伝子を細胞の少なくとも1つの対立遺伝子から欠失させ、それにより、1つ以上のMHCクラスI細胞表面タンパク質及びNK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質の発現を調節することを含む、方法
【0247】
(a)細胞を、配列番号1~3のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号1~3のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Ca
sタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞を、配列番号4~6のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号4~6のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む低免疫原性幹細胞。
【0248】
(a)細胞を、配列番号1~3のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号1~3のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞を、配列番号4~6のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号4~6のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、(c)細胞を、配列番号7~9のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号7~9のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のCEACAM1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにCEACAM1遺伝子が編集された、第3のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む低免疫原性幹細胞。
【0249】
(a)細胞を、配列番号1~3のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号1~3のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞を、配列番号4~6のいずれか1つに相同なリボ核酸をコードするプラスミド又は配列番号4~6のいずれか1つに相同なリボ核酸のいずれかと組み合わせて、Casタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸のいずれかと接触させることにより、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む多能性幹細胞。
【0250】
配列番号1~9の配列を以下の表4に提供し、これらの配列及び追加の配列を以下に説明する。
【0251】
配列番号1:エクソン1、マイナス鎖。
【0252】
配列番号2:エクソン2、マイナス鎖。
【0253】
配列番号3:エクソン1、マイナス鎖。
【0254】
配列番号4:エクソン2、プラス鎖。
【0255】
配列番号5:エクソン2、マイナス鎖。
【0256】
配列番号6:エクソン1、プラス鎖。
【0257】
配列番号7:エクソン1、マイナス鎖。
【0258】
配列番号8:エクソン1、プラス鎖。
【0259】
配列番号9:エクソン1、プラス鎖。
【0260】
配列番号10:ヒトICAM1のコード配列。
【0261】
配列番号11:ヒトCEACAM1のコード配列。
【0262】
配列番号12:ヒトB2Mのコード配列。
【0263】
配列番号13:ヒトCADM1のコード配列。
【0264】
配列番号14:ヒトCD58のコード配列。
【0265】
配列番号15:ヒトCD155のコード配列。
【0266】
PAM(NGG)を含むCRISPR/Cas9切断のための標的配列を以下の表に示す。
【0267】
【0268】
(a)細胞をCasタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸又は配列番号1~3のいずれか1つの配列を含むリボ核酸と接触させることにより、細胞中のB2M表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにB2M遺伝子が編集された、第1のゲノム修飾と、(b)細胞をCasタンパク質又はCasタンパク質をコードする核酸又は配列番号4~6のいずれか1つの配列を含むリボ核酸と接触させることにより、細胞中のICAM-1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにICAM-1遺伝子が編集された、第2のゲノム修飾と、(c)細胞をCasタンパク質又はCasタンパク質をコー
ドする核酸又は配列番号7~9のいずれか1つの配列を含むリボ核酸と接触させることにより、細胞中のCEACAM1表面発現及び/又は活性を低減又は排除するようにCEACAM1遺伝子が編集された、第3のゲノム修飾と、を含む修飾されたゲノムを含む膵臓内胚葉(PEC)細胞。
【0269】
低血糖を軽減する方法であって、a)移植を必要とする対象に、有効量の、膵臓内胚葉細胞集団を含む移植片を投与することを含み、少なくとも1つのHLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つのNK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質の機能が破壊され、膵臓内胚葉細胞集団がインビボで成熟し、インビボでのグルコース刺激に応答してインスリンを産生し、それにより、患者における低血糖を軽減する、方法。
【0270】
インスリン依存を軽減する方法であって、a)移植を必要とする対象に、有効量の、膵臓内胚葉細胞集団を含む移植片を投与することを含み、少なくとも1つのHLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つのNK細胞活性化リガンド細胞表面タンパク質の機能が破壊され、膵臓内胚葉細胞集団がインビボで成熟し、インビボでのグルコース刺激に応答してインスリンを産生し、それにより、患者におけるインスリン依存を軽減する、方法。
【0271】
定義
「低免疫原性」若しくは「ユニバーサルドナー細胞」若しくは「変異細胞」又はそれらの同等物は、少なくとも1つのHLAクラスI細胞表面タンパク質及び少なくとも1つのNK活性化リガンドの発現が低減又は排除された細胞を意味する。そのような細胞は、そのような細胞又は移植片が移植される対象による免疫拒絶又は移植片拒絶の傾向が少ないと予想される。例えば、改変されていない野生型細胞に対して、そのような低免疫原性細胞は、そのような細胞が移植された対象による免疫拒絶の傾向が約2.5%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97.5%、99%又はそれ以上少ないものであり得る。
【0272】
「処置する」若しくは「治癒する」という用語又はそれらの同等物は、兆候又は症状を軽減する(改善する)治療介入を指す。
【0273】
「患者」若しくは「宿主」若しくは「哺乳動物宿主」若しくは「対象」という用語又はそれらの同等物は、生きている多細胞脊椎動物、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方を含む分類を指す。いくつかの実施形態では、対象はヒト対象である。処置に好ましい患者はヒトである。標的患者集団は、組み合わせ製品自体とは関係ない形式で臨床使用/経験の時間とともに変化し得るが、むしろ免疫抑制レジメンの性質又はその欠如に関連している。例えば、組み合わせ製品は、操作上の耐性を達成するか又は傷害性及び副作用プロファイルが低い免疫抑制薬(ISD)レジメンと組み合わせて低免疫原性細胞療法を使用する、T1D集団において使用され得る。
【0274】
本明細書における「遮断剤」という用語は、抗体を含むがこれに限定されない、標的細胞の表面上のNK活性化リガンドに結合することができる任意の剤を指すか、あるいは現在既知であるか又は今後開発されるタンパク質、酵素、又は化学物質を含むがこれらに限定されない、NK活性化リガンドのタンパク質発現を防止又は阻害する剤を指す。
【0275】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、無傷のモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び所望の生物学的遮断活性を示す限り、抗体断片を特に包含する。
【0276】
本明細書で使用される「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指し、好ましくはその抗原結合領域又は可変領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、線形抗体(linear antibody)、単鎖抗体分子
、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0277】
本明細書で使用される「遮断抗体」という用語は、インビボ又はインビトロで標的細胞上のNK細胞活性化リガンドに結合したときに、標的細胞を溶解するNK細胞の能力の防止又は低下をもたらす抗体を指す。
【0278】
本明細書で使用する場合、「同系(syngenic)」又は「同系(syngeneic)」という用
語は、特に抗原又は免疫学的反応に関して、移植レシピエント(例えば、一卵性双生児)と遺伝的に同一であるか、又はそれと遺伝的に同一の供給源に由来する細胞、組織、又は器官を指す。そのような細胞、組織、又は器官は、同系移植と呼ばれる。本明細書で使用する場合、「同種(allogenic)」又は「同種(allogeneic)」という用語は、特に抗原
又は免疫学的反応に関して、移植レシピエント(例えば、非血縁ドナー)と遺伝的に同一ではないか、又はそれと遺伝的に同一ではない供給源に由来する細胞、組織、又は器官を指す。そのような細胞、組織、又は器官は、同種移植(allograft)、同種間移植(allogeneic transplant)、同種移植(homograft)、又は同種移植(allotransplant)と呼ば
れる。
【0279】
本明細書で使用する場合、「プロモーター/調節配列」という用語は、プロモーター/調節配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を意味する。いくつかの場合では、この配列は、コアプロモーター配列であり得、他の場合では、この配列は、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列及び他の調節要素も含み得る。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現するものであり得る。
【0280】
「有効量」又は「治療有効量」という用語又はそれらの同等物は、処置される対象又は細胞において所望の効果を達成するのに十分な剤の量を指す。例えば、これは、血中グルコースレベルを阻害又は測定可能に低下させ、最終的に恒常性血糖制御を達成するために必要な細胞の量であり得る。これはまた、細胞又は対象の機能又は構造を変化させるための剤の有効量を意味することもあり得る。治療有効量の剤は、単回投与又は数回投与量で投与され得る。しかしながら、有効量は、適用される特定の剤、処置される対象、病気(affliction)の重症度及び種類並びに投与方法に依存する。
【0281】
本明細書では、「減少する(decrease)」、「破壊された」、「低減した(reduced)
」、「低減」、及び「阻害する」とう用語は全て、一般には減少、具体的には統計的に有意な量の減少を意味するために使用される。しかしながら、疑義を避けるために、「減少」、「低減した」、「低減」、「阻害」には、参照レベルと比較して、少なくとも10%の減少、例えば、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは100%を含む最大100%(すなわち、参照試料と比較して、不在レベル)の減少、又は参照レベルと比較して、10~100%の任意の減少、又は参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の減少、又は参照レベルと比較して、2倍~10倍以上の任意の減少が含まれる。
【0282】
本明細書では、「増加した(increased)」、「増加する(increase)」、若しくは「
増強する」、又は「活性化する」という用語は全て、一般に、統計的に(statically)有意な量の増加を意味するために使用される。疑義を避けるために、「増加した」、「増加
する」、「増強する」、又は「活性化する」という用語は、参照レベルと比較して、少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは100%を含む最大100%の増加、又は参照レベルと比較して、10~100%の任意の増加、又は参照レベルと比較して、少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の増加、又は参照レベルと比較して、2倍~10倍以上の任意の増加を意味する。
【0283】
「統計的に有意な」又は「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般に、標準以下の参照の濃度を下回る2つの標準偏差(2SD)を意味する。この用語は、標準以下の参照の濃度を上回る2つの標準偏差(2SD)以上も意味し得る。この用語は、差異がある統計的証拠を指す。帰無仮説が実際に真である場合に、帰無仮説を棄却する決定を行う確率として定義される。この決定はしばしば、p値を使用して行われる。
【0284】
本明細書で使用する場合、「低血糖の軽減」又はその同等物は、血糖制御が悪化することなく、低血糖症状発現(episode)の数が減少することを意味し、0.2%以上のHb
A1cの増加として定義される。
【0285】
本明細書で使用される「インスリン依存の軽減」又はその同等物は、血糖制御が悪化することなく、外因性インスリン注射の回数及び/又は用量の減少を意味し、0.2%以上のHbA1cの増加として定義される。
【0286】
本明細書で使用される「組織カプセル」又はその同等物は、インプラント又は移植片の周りに形成される異物カプセルを意味する。細胞を含む組み合わせ製品及び/若しくはデバイス又は有孔デバイスは、インプラント期間中にカプセル内に保持されることが意図される。
【0287】
「生着」又はその同等物は、前駆体細胞又は未成熟細胞集団の、成熟細胞種への分化を指す。例えば、膵臓内分泌細胞集団に成熟する、PDX1陽性膵臓内胚葉細胞集団の生着である。
【0288】
「移植片」は、本明細書のデバイス中にカプセル化された又は該デバイス中で送達される分化細胞集団を指す。例えば、膵臓内胚葉、膵臓前駆細胞、PDX-1陽性膵臓内胚葉、膵臓内分泌前駆体、膵臓内分泌、単一又は多ホルモン内分泌、プレβ、β、及び/又はインスリン分泌移植片を含むがこれらに限定されない細胞集団である。
【0289】
「本質的に」若しくは「実質的に」という用語又はそれらの同等物は、任意の細胞集団又は培養物中に存在する成分又は細胞の、大部分の量又は些細な(de minimus)量又は減少した量を意味し、例えば、未成熟β細胞培養物は、「INS、NKX6.1、及びPDX1を発現し、NGN3を本質的又は実質的に発現しない、本質的又は実質的に未成熟なβ細胞」を意味する。他の例には、「本質的又は実質的にhES細胞」、「本質的又は実質的に胚体内胚葉細胞」、「本質的又は実質的に前腸内胚葉細胞」、「本質的又は実質的にPDX1陰性前腸内胚葉細胞」、「本質的又は実質的にPDX1陽性膵臓内胚葉細胞」、「本質的又は実質的に膵臓内分泌前駆体細胞」、「本質的又は実質的に膵臓内分泌細胞」などが含まれるが、これらに限定されない。
【0290】
細胞培養物又は細胞集団中の細胞に関して、「実質的にない」という用語又はその同等物は、細胞培養物又は細胞集団がない特定の細胞種が、細胞培養物又は細胞集団中に存在
する細胞の総数の約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満の量で存在することを意味する。
【0291】
「不織布」という用語又はその同等物には、製織(weaving)又は編成(knitting)以
外のプロセスで製造される接着布(bonded fabrics)、形成布(formed fabrics)、又は加工布(engineered fabrics)が含まれるが、これらに限定されない。
【0292】
本明細書に開示された発明は、その用途が詳細な説明に記載された又は例示された詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態を包含し、様々な方法で実施し又は行うことができる。本明細書で使用される用語及び専門用語は、説明を目的とするものであり、限定と見なされるべきではないことも理解されたい。
【0293】
本発明の特定の組成物、方法、及びアッセイは、特定の実施形態に従って特異的に説明されているが、以下の実施例は、本発明の方法及び組成物を説明するのに役立てるだけのものであり、それらを限定するものではない。
【0294】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される「a」及び「an」という冠詞は、反対について明確に示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。グループメンバーのうちの1つ、2つ以上、又は全てが、所与の製品又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はその他では関連する場合、反対について明確に示されない限り又はその他では文脈から明白でない限り、1つ以上のグループメンバー間に「又は」を含む請求項又は詳細な説明は満たされているとみなされる。本発明は、正確に1つのグループメンバーが、所与の製品又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はその他では関連する実施形態を含む。本発明はまた、2つ以上又は全グループメンバーが、所与の製品又はプロセスに存在するか、使用されるか、又はその他では関連する実施形態も含む。
【0295】
さらに、本発明は、別の指示がない限り又は矛盾若しくは不一致が生じることが当業者に明らかでない限り、列挙された請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の制限、要素、条項、説明用語などが同じ基本の請求項(又は関連する他の請求項)に従属する別の請求項に導入される、全ての変形、組み合わせ、及び順列変更を包含することを理解されたい。要素が列挙として提示されている場合(例えば、マーカッシュグループ又は同様の形式)、要素の各サブグループもまた開示され、任意の要素をグループから除外することができることを理解されたい。一般に、本発明又は本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとして言及される場合、本発明の特定の実施形態又は本発明の態様はそのような要素、特徴などからなるか、又は本質的にそれらからなることを理解されたい。簡潔にするために、それらの実施形態は、全ての場合で本明細書において非常に多くの言葉で具体的に説明されているわけではない。本発明の任意の実施形態又は態様は、特定の除外が本明細書に記載されているかどうかにかかわらず、特許請求の範囲から明示的に除外し得ることも理解されたい。本発明の背景を説明し、その実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書で参照される刊行物及び他の参考資料は、参照により本明細書に組み込まれる。以下の非限定的な実施例により、本開示を例示する。
【実施例0296】
実施例1:B2M欠損hES細胞の生成
B2M欠損hES細胞を、CyT49細胞株を使用して生成したが、任意のヒト多能性幹細胞株を使用することができる。B2M遺伝子の標的化破壊により、細胞表面上にHLAクラスIタンパク質を発現しない細胞を生成した。CyT49 hESC株におけるB2M遺伝子座の両方の対立遺伝子は、PCT国際公開第2016183041A号(これは、その全体が本明細書に組み込まれる)に概説される既知の技術を使用したCRISP
R/Cas9技術を使用して破壊された。しかしながら、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を含む他のヌクレアーゼを使用して、遺伝子の編集及び従来の相同組換えなどを行うことができる。B2Mの公開された配列の例は、配列番号1、2、及び3として提出している。デュアルガイドRNA及びFokIヌクレアーゼに融合された触媒的に不活性なCas9タンパク質
を導入するNEXTGEN(商標)CRISPR(Transposagen Inc.,ケンタッキー州レキシントン)が、遺伝子を編集するために使用される。ガイドRNA及びCas9を含むプラスミドをCyT49 hESCにエレクトロポレーションし、細胞を組織培養プレートに播種した。エレクトロポレーションの12日後、蛍光活性化細胞選別(FACS)により、B2M抗体(BioLegendカタログ#316306)に対する陰性反応性について細胞を選別した。選別した細胞をクローン密度でプレーティングした。個々のクローンを選び、約25日目にプレーティングした。クローンを増殖させて、凍結保存した。G分染法により正常な核型を示し、かつ、フローサイトメトリー及び/又は免疫蛍光法によりB2Mタンパク質の発現及びHLAクラスIタンパク質の表面発現が陰性である増殖クローンをさらなる実験のために選択した。
【0297】
野生型(WT)及びノックアウト細胞におけるB2M表面発現を、通常及び炎症性(インターフェロン(IFN)-γに対する曝露後)条件下でフローサイトメトリーにより評価した。
図2Aを参照のこと:通常:未処置の増殖培地(B線);炎症性:100ng/mLのIFN-γに18~24時間曝露(A線)。炎症反応は、組織の外傷に関連して発生する。これにより炎症誘発性サイトカインが放出され、そのうちのいくつかはIL-1-α、IL-1-β、TNF-α、IL-6、IL-8、及びIFN-γである。WT及びB2M-/- ESC及びPECをIFN-γで処理したが、これらの観察は他のサイトカインにおいても同様に拡張できる。
【0298】
図2Aは、IFN-γのないWT hES細胞(B線)及びIFN-γによるWT hES細胞の曝露後のB2M発現(A線)を示す。バックグラウンド(網掛け領域)と比較した、未処理のWT hES細胞(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT hES細胞がB2Mを発現することを示している。IFN-γへのWT hES細胞の曝露後のWT B2M発現(B線)を超える蛍光強度のさらなるシフト(増加)は、IFN-γへの曝露後のWT hES細胞においてB2M発現が増加することを示唆している(A線)。したがって、HLAクラスI細胞表面タンパク質の発現は、少なくともIFN-γ処理によって引き起こされるものなど、細胞ストレス及び炎症によってアップレギュレートされる。
【0299】
図2Bは、B2MノックアウトhES細胞におけるB2M発現を示し、CRISPR/Casシステムを使用してノックアウト細胞を生成した。IFN-γへの曝露を用いても又は用いなくても、バックグラウンド(網掛け領域)と比較して蛍光強度の実質的なシフト(増加)はなく、このことは、B2MノックアウトhES細胞がB2M表面発現を低減又は排除し、B2M発現をIFN-γ処理により誘導できなかったことを示唆している。このようなB2Mノックアウトにおいて、HLAクラスI細胞表面タンパク質の発現はIFN-γ処理によって引き起こされる細胞ストレス及び炎症によってアップレギュレートされない。
【0300】
この実施例は、B2M抗体を使用して示されるように、B2MノックアウトhES細胞がB2M表面発現を低減又は排除したことを実証している。
【0301】
実施例2:WT及びB2M欠損細胞におけるHLAクラスI細胞表面タンパク質発現の分析
次いで、野生型及びB2MノックアウトhES細胞をPan-HLA-ABCモノクロ
ーナル抗体(BD Pharmingen、カタログ#560169)を使用して分析し、これらのノックアウト細胞が細胞表面上でHLAクラスIタンパク質を発現しないことを確認した。Pan-HLA-ABC抗体は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIタンパク質HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cと反応する。Pan-HLA-ABC抗体の発現を、野生型及びノックアウト細胞において、IFN-γへの曝露後の通常及び炎症状態下でフローサイトメトリーにより評価した。通常:IFN-γなし(B線);炎症:100ng/mLのIFN-γへの18~24時間の曝露(A線)。
【0302】
図3Aは、WT hES細胞におけるPan-HLA-ABC細胞表面タンパク質発現(B線)及びIFN-γによるWT hES細胞の処理後のPan-HLA-ABC細胞表面タンパク質発現(A線)を示す。バックグラウンド(網掛け領域)と比較した、未処理WT hES細胞(B線)の蛍光強度の変化(増加)は、WT hES細胞がPan-HLA-ABCを発現することを示唆している。IFN-γへの曝露後のWT hES発現を超える蛍光強度のシフト(増加)は、IFN-γへの曝露後のWT hES細胞においてPan-HLA-ABC発現が増加することを示唆している。
【0303】
図3Bは、CRISPR/Casシステムを使用したB2MノックアウトhES細胞におけるPan-HLA-ABC細胞表面タンパク質発現を示す。IFN-γへの曝露を用いても又は用いなくても、バックグラウンド(網掛け領域)と比較して蛍光強度のシフト(増加)はなく、このことは、ノックアウトがHLAクラスI細胞表面発現を低減又は排除し、HLAクラスIタンパク質発現がIFN-γ処理によって誘発されなかったことを示唆している。
【0304】
この実施例は、Pan-HLA-ABC抗体を使用して示されるように、B2MノックアウトhES細胞がHLAクラスI細胞表面発現を低減又は排除したことを実証している。
【0305】
実施例3:B2M欠損細胞の膵臓系統細胞への分化
B2MノックアウトhES細胞を、Schulz et al. A Scalable System for Production
of Functional Pancreatic Progenitors from Human Embryonic Stem Cells PLoS One 7:5 1-17 (2012)及び米国特許第8,895,300号(これらは両方とも、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる)に記載されているようにWT hES細胞と同じ条件下で培養、継代、及び増殖させた。具体的には、Schulzらは、付着性hESCの増殖及び懸濁液ベースの分化について記載している。
【0306】
簡単に述べると、WT hES細胞及びB2M-/-hES細胞を、4つのステージ手順を使用して、約2週間(又は14日間)の期間にわたって懸濁凝集体中で分化させて、膵臓内胚葉細胞(PEC)と纏めて称する、膵臓前駆細胞、内分泌前駆細胞、及びホルモン発現細胞を含む、膵臓細胞種の集団を生成した。アキュターゼを使用してヒトES細胞を分離し、単一細胞をローラーボトル中に凝集させた。分化を開始させるために、凝集体をコニカルチューブ中にプールし、重力によって沈殿させ、続いて成長因子を含まないステージ1の培地(インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)の1:5000希釈を含むRPMI+0.2%vol/vol FBS)で洗浄した。凝集体を再度沈殿させ、次いで、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)の1:5000希釈を含むRPMI+0.2%vol/vol FBS、アクチビンA(100ng/mL)、及びwnt3a(50ng/mL)からなる1日目の培地に再懸濁し、ローラーボトル中に2μL/mLの密度で分配した。ローラーボトルを、FlexiRollデジタルセルローラー(FlexiRoll digital cell roller)(Argos Technologies)上
に31rpmの速度で設置した。分化プロセスの残りの間、培養物を約3lrpmで回転させ、上記のSchulzら(2012)から調整した以下の表2に記載するものに、毎
日、培地交換を行った。hESの成長、継代、及び増殖は、米国特許第7,964,402号、同8,211,699号、同8,334,138号、同8,008,07号、及び同8,153,429号に実質的に記載される通りである。ヒト胚性幹細胞由来の膵臓内胚葉細胞(PEC)を作るために使用される標準的な作製方法を以下の表2に提供する。
【0307】
【0308】
hESC Agg.:hESC凝集体;XF HA:10%v/v Xeno-free Knock Out Serum Replacement、1%v/v非必須アミノ酸、1%v/vペニシリン/ストレプトマイシン(全てLife Technologiesから入手)、10ng/mLヘレグリン-1β(Peprotech)、及び10ng/mLアクチビンA(R&D Systems)を補充した、GlutaMAXを含むDMEM/F12;SP:StemPro(登録商標)hESC SFM(Life Technologies);r0.2FBS:RPMI1640(Mediatech);0.2%FBS(HyClone)、1×GlutaMAX-1(Life Technologies)、1%v/vペニシリン/ストレプトマイシン;ITS:1:5000又は1:1000に希釈したインスリン-トランスフェリン-セレン(Life Technologies);A100:100ng/mL組換えヒトアクチビンA(R&
D Systems);W50:50ng/mL組換えマウスWnt3A(R&D Systems);K25:25ng/mL組換えヒトKGF(R&D Systems);IV:2.5μM TGF-β RIキナーゼ阻害剤IV(EMD Bioscience);db:0.5×B-27サプリメント(Life Technologies)、1×GlutaMAX、及び1%v/vペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、DMEM HIグルコース(HyClone);CTT3:0.25μM KAAD-シクロパミン(Toronto Research Chemicals)、及び3nM TTNPB(Sigma-Aldrich);N50:50ng/mL組換えヒトノギン(R&D Systems);K50:50ng/mL組換えヒトKGF(R&D Systems);E50:50ng/mL組換えヒトEGF(R&D Systems)。
【0309】
分化したB2M-/-及びWT PECをフローサイトメトリーを使用して分析し、表3に示すように、ステージ4の集団における内分泌細胞及び膵臓前駆細胞の相対量を決定した。
【0310】
【0311】
3つのクローン全てで、B2M-/-分化細胞における膵臓内分泌細胞、前駆細胞、PDX-1のみの細胞、及びトリプルネガティブ細胞の相対的レベルは、WT細胞(上段)で観察されるレベルと実質的に同様である。
【0312】
この実施例は、B2M-/-hES細胞が、WT hES細胞と同じように膵臓系統を分化することができることを示している。
【0313】
実施例4:WT及びB2M欠損膵臓内胚葉細胞におけるB2M発現の分析
次いで、実施例3の野生型及びB2Mノックアウト膵臓内胚葉細胞(PEC)を、フローサイトメトリーを使用して、IFN-γなしで又はIFN-γを用いて分析した:IFN-γなし(B線);100ng/mLのIFN-γに18~24時間曝露(A線)。
【0314】
図4Aは、IFN-γなし(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT PEC細胞におけるB2M発現を示す。バックグラウンド(網掛け領域)と比較した、未処理WT PEC細胞(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT PEC細胞がB2Mを
発現することを示している。IFN-γへのWT PECの曝露後(A線)のWT発現を超える蛍光強度のシフト(増加)は、IFN-γへの曝露後のWT PEC細胞においてB2M発現が増加することを示している。すなわち、IFN-γへの曝露は、WT PECにおけるB2M発現を増加させる。
【0315】
図4Bは、B2MノックアウトhES細胞由来のPEC細胞におけるB2M発現を示す。IFN-γへの曝露を用いても又は用いなくても、バックグラウンド(網掛け領域)と比較して蛍光強度のシフト(増加)はなく、このことは、B2MノックアウトPECがB2M細胞表面発現を減少又は排除し、B2MノックアウトhES細胞由来のPECでは、B2M発現はIFN-γ処理によって誘導できなかったことを示している。
【0316】
この実施例は、B2M発現が調節/排除されたhES細胞由来のPECがB2M表面発現を低減又は排除したことを示している。
【0317】
実施例5:WT及びB2Mノックアウト膵臓内胚葉細胞におけるHLAクラスI細胞表面タンパク質発現の分析
実施例2と同様に、野生型及びB2MノックアウトPECを、Pan-HLA-ABCモノクローナル抗体(BD Pharmingen、カタログ#560169)を使用してHLAクラスI細胞表面発現について分析した。野生型及びノックアウト細胞において(1)未処理(B線)及び(2)100ng/mLのIFN-γで18~24時間処理(A線)の2つの条件下で、フローサイトメトリーにより、発現を評価した。
【0318】
図5Aは、未処理条件下でのWT PECにおけるHLAクラスI細胞表面タンパク質発現(B線)及びIFN-γによる処理後の発現(A線)を示す。バックグラウンド(網掛け領域)と比較した、未処理WT PEC(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT PECが細胞表面上でHLAクラスIを発現することを示している。IFN-γへの曝露後のWT PEC発現を超える蛍光強度の変化(増加)は、IFN-γへの曝露後のWT PEC細胞においてHLAクラスI細胞表面発現が増加することを示唆している。
【0319】
図5Bは、B2MノックアウトhES細胞由来のPECにおけるHLAクラスI細胞表面タンパク質発現を示す。IFN-γへの曝露を用いても又は用いなくても、PEC細胞のバックグラウンド(網掛け領域)と比較して蛍光強度にシフト(増加)はなく、このことは、ノックアウトがHLA表面発現を減少又は排除し、B2M-/-PECにおけるHLAクラスIの発現はIFN-γ処理によって誘導できなかったことを示している。
【0320】
したがって、B2Mの発現が調節/排除されたPEC細胞では、HLAクラスI細胞表面発現の低減又は排除が観察された。
【0321】
実施例6:WT及びB2MノックアウトHES細胞におけるICAM-1細胞表面タンパク質発現の分析
標的細胞に対するIFN-γ処理の効果をさらに定義するために、WT及びB2MノックアウトhES細胞におけるICAM-1発現を、(1)未処理(B線)及び(2)100ng/mLのIFN-γによる18~24時間処理(A線)の2つの条件下でフローサイトメトリーにより評価した。ICAM-1は、標的細胞における抗原提示を含むいくつかの免疫学的機能に必要であり、既知のNK活性化リガンドである。インビボでは、特定のモノクローナル抗体(「mAbs」)、すなわち、抗ICAM-1又は抗LFA-1を適用することによって細胞間ICAM/LFA結合相互作用を破壊することにより、免疫学的利点を得ることが可能である。Isobe et al., Specific Acceptance of Cardiac Allograft After Treatment With Antibodies to ICAM-1 and LFA-1, 255 SCIENCE 1125-1127 (Feb. 1992)を参照のこと。本出願人は、Milteney Biotec Inc.
から得たICAM-1抗体、カタログ番号130-103-909を使用した。
【0322】
図6Aは、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT hES細胞における細胞表面上のICAM-1タンパク質発現を示す。バックグラウンド(網掛け領域)と比較した、未処理WT hES細胞(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT hES細胞が細胞表面上にICAM-1タンパク質を発現することを示している。IFN-γへのWT hES細胞の曝露後のWT発現を超える蛍光強度のシフト(増加)は、ICAM-1発現がIFN-γへの曝露後に増加することを示唆している。
【0323】
図6Bは、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のB2MノックアウトhES細胞におけるICAM-1細胞表面タンパク質発現を示す。
図6Bは、B2MノックアウトhES細胞におけるICAM-1細胞表面タンパク質発現がWT hES細胞と同様であったことを示している。
【0324】
この実施例は、WT及びB2MノックアウトhES細胞をIFN-γで処理することにより、ICAM-1の細胞表面タンパク質発現が増加することを実証している。
【0325】
実施例7:WT及びB2Mノックアウト膵臓内胚葉細胞におけるICAM-1細胞表面タンパク質発現の分析
実施例4及び5と同様に、野生型及びB2MノックアウトPECを、既知のNK活性化リガンド、例えばICAM-1に対する抗体を使用して分析した。ICAM-1の細胞表面タンパク質発現を、WT及びノックアウトPECにおいて(1)未処理及び(2)100ng/mLのIFN-γによる18~24時間処理の2つの条件下でフローサイトメトリーにより評価した。
【0326】
図7Aは、WT PECにおけるICAM-1細胞表面タンパク質発現(B線)及びIFN-γによるWT PECの処理後のICAM-1細胞表面タンパク質発現(A線)を示す。バックグラウンド(網掛け領域)と比較した、未処理WT PEC(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT PECが細胞表面上でICAM-1タンパク質を発現することを示している。IFN-γへの曝露後のWT PEC発現を超える蛍光強度のさらなるシフト(増加)は、ICAM-1発現がIFN-γへの曝露後のWT PECにおいて増加することを示唆している。これは、NK活性化リガンド、特にICAM-1がIFN-γ刺激によって非常に誘導可能であることを示している。
【0327】
図7Bは、B2MノックアウトPECにおけるICAM-1細胞表面タンパク質発現を示す。B2MノックアウトPECにおけるICAM-1細胞表面タンパク質発現は、IFN-γ曝露を用いても又は用いなくてもWT PECと同様であり、蛍光がわずかに減少した。したがって、B2MノックアウトPECをIFN-γで処理することにより、ICAM-1細胞表面タンパク質発現が増加する。
【0328】
図8は、RNA発現アレイデータ(Affymetrix)を示し、これは、mRNAレベルで、IFN-γへの曝露がWT hESC、B2M-/-hESC、WT PEC、及びB2M-/-PECにおけるICAM-1発現を増加させることを実証している。本出願人は、IFN-γへの曝露後に、NK活性化リガンドICAM-1の細胞表面タンパク質発現が分化した細胞種(WT PEC及びB2M-/-PEC)において増加することを発見した。したがって、ICAM-1は、PECにおいてIFN-γ刺激により非常に誘導可能である。
【0329】
実施例8:さらなるNK活性化リガンドに対するIFN-γ処理の効果
標的細胞に対するIFN-γ処理の効果をさらに特徴付けるために、WT PECを、
(1)未処理(B線)及び(2)100ng/mLのIFN-γによる18~24時間処理(A線)の2つの条件下でフローサイトメトリーにより評価し、他の既知のNK活性化リガンドの細胞表面タンパク質発現を分析した。
【0330】
図9は、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT PECにおける、BioLegendから得た抗体、カタログ#330909を使用したCD58(LFA-3としても知られている)細胞表面タンパク質発現を示す。バックグラウンド(C線)と比較した、未処理WT hES細胞(B線)の蛍光強度の大きなシフト(増加)は、大部分の細胞が表面上にCD58タンパク質を発現することを示している。IFN-γへの曝露後に、蛍光強度のさらなる小さなシフト(増加)があった。
【0331】
図10は、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT PECにおける、Milteneyi Biotech Inc.から得た抗体、カタログ番号130-105-905を使用したCD155(PVR、NECL-5、HVEDとしても知られる)細胞表面タンパク質発現を示す。バックグラウンド(C線)と比較した、未処理のWT PEC(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT PECがCD155を発現することを示している。IFN-γへの曝露後には未処理条件を超える蛍光強度のさらなる増加(増加)はなく、このことは、CD155発現がWT PECにおいてIFN-γへの曝露後には増加しないことを示唆している。
【0332】
図11は、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT PECにおける、Milteneyi Biotech Inc.から得た抗体、カタログ#130-098-858を使用したCEACAM1(CD66a、BGP、及びBGP1としても知られている)細胞表面タンパク質発現を示す。バックグラウンド(C線)と比較した、未処理のWT PEC(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT PECが細胞表面上でCEACAM1タンパク質を発現することを示している。IFN-γへのWT PECの曝露後における未処理条件を超える蛍光強度のシフト(増加)は、細胞表面上のCEACAM1タンパク質発現がIFN-γへの曝露後のWT PECにおいて増加することを示唆している。
【0333】
図12は、未処理(B線)及びIFNγによる処理後(A線)のWT PECにおける、Abcam Inc.から得た抗体、カタログ#ab210838を使用したBAT3
(BAG6としても知られる)細胞表面タンパク質発現を示す。バックグラウンド(C線)と比較した、未処理のPEC(B線)の蛍光強度の変化(増加)は、細胞がCEACAM1を発現することを示唆している。IFN-γへのWT PEC曝露後における未処理条件を超える蛍光強度のさらなるシフト(増加)はなく、このことは、BAT3発現がIFN-γへの曝露後のWT PECにおいて増加しないことを示唆している。
【0334】
図13は、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT PECにおける、MBL international Corporationから得た抗体、カタログ#CM004-4を使用したCADM1(NECL2、TSLC1、IGSF4、RA175としても知られる)細胞表面タンパク質発現を示す。バックグラウンド(C線)と比較した、未処理条件(B線)での蛍光強度のシフト(増加)は、WT PECが細胞表面上でCADM1タンパク質を発現することを示唆している。IFN-γへのPECの曝露後における未処理状態を超える蛍光強度の追加のシフト(増加)はなく、このことは、CADM1発現がIFN-γへの曝露後に増加しないことを示唆している。
【0335】
図14は、未処理(B線)及びIFN-γによる処理後(A線)のWT PECにおける、Milteneyi Biotech Inc.から得た抗体、カタログ#130-109-056を使用したCD112(ネクチン-2、PVRR2、HVEBとしても知
られる)発現を示す。バックグラウンド(C線)と比較した、未処理条件(B線)の蛍光強度のシフト(増加)は、WT PECが細胞表面上でCD112タンパク質を発現することを示唆している。IFN-γへのPECの曝露後における未処理条件を超える蛍光強度のさらなるシフト(増加)はなく、このことは、CD112発現がIFN-γへの曝露後に増加しないことを示唆している。
【0336】
実施例9:MHCクラスI欠損、NK細胞活性化リガンド欠損細胞は、NK細胞媒介溶解を防止する
HLAクラスI発現の低減又は排除及びNK細胞活性化リガンド発現の低減又は排除の組み合わせがNK媒介細胞溶解を防止するのに十分かどうかを試験するために、5μg/mL及び10μg/mLの濃度のICAM-1遮断抗体を使用して、ICAM-1発現を標的細胞上で遮断した。ICAM-1抗体をWT又はB2M-/-ES細胞若しくはPECに添加することにより、IFN-γ処理後の標的細胞のNK溶解が低減した(
図15)。
【0337】
カルセイン-AMによる標的細胞の染色
カルセイン放出アッセイは、NK細胞の細胞傷害性を研究するための非放射性代替法である。標的細胞は、蛍光色素(カルセインAM)を取り込み、それを細胞質で活性蛍光色素に変換し、該活性蛍光色素は溶解時にのみ細胞から放出される。溶解した細胞は蛍光色素を上清に放出し、次いで該上清を採取し、蛍光量を蛍光計で定量する。細胞溶解率は、NK細胞(エフェクター)、遮断抗体、又はその両方の存在下又は非存在下でインキュベーションを行った後に、上清に存在する蛍光の量から計算される。
【0338】
標的細胞は、標識する前に100ng/mLのIFN-γで処理された又は処理しないWT ESC、B2M-/-ESC、WT PEC、又はB2M-/-PECのいずれかを含んだ。標的細胞を調製するために、標的細胞集団を2μg/mlカルセインAM染色媒体(Enzo biosciences 1mg/mLストック溶液(カタログ#C3100MP))で染色した。標的細胞を、断続的に混合しながら、8%CO2インキュベーター中で37℃で1時間インキュベートした。標的細胞を2回洗浄して任意の遊離カルセインAMを除去し、RPMI完全培地(RPMI、10%熱不活性化FBS、及び1%抗生物質)に1×105細胞/mlで再懸濁した。
【0339】
共培養標的NK細胞及び遮断抗体
次いで、カルセインAM標識した標的細胞を、10:1のエフェクター対標的比(E:T比)を有するNK細胞(エフェクター細胞)とともにインキュベートした。具体的には、1ウェルあたり100μLのNK細胞(1×106個/mLの密度)を96ウェルV底
プレートに添加し、次いで100μLのカルセイン染色したESC又はPEC細胞を添加
した(1×105個/ウェル)。指示された場合、5μg/mL及び10μg/mLの濃度のヒトICAM-1表面抗原(R&D Systems,Inc.、カタログ#BBA3)に対する遮断抗体をウェルに添加して、NK媒介細胞溶解を低減することができるかを決定した。
【0340】
プレートを8%CO22インキュベーター中で37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、プレートを200×gで2分間遠心分離した。100μLの上清を慎重に除去し、黒色着色96ウェルプレートに移し、Molecular Deviceプレートリーダーを使用して蛍光を測定した(励起フィルター:485nm/発光フィルター:530nm)。特定の溶解は、溶解%=100×[(抗体ありの場合の平均蛍光-平均自発蛍光)/(平均最大蛍光-平均自発蛍光)]の式を使用して計算した。最大蛍光は、界面活性剤(1%TritonX-100)とともにインキュベートした細胞の溶解によって決定され、自発的溶解は、抗体又はエフェクター細胞を含まない標的細胞
で得られた蛍光とした。
【0341】
結果
図1に示すように、目標は、シナリオC(NK細胞が標的細胞を攻撃する)からシナリオA(応答なし又は応答の低減)に移行させることである。
図15では、このシナリオは条件4及び8に示される。条件4及び8では、標的細胞(B2M-/-hES細胞又はPEC)は機能的HLAクラスI表面発現を欠き、IFN-γに曝露される。上記で論じ、かつ条件4及び8に見られるように、IFN-γへの曝露は、NK活性化リガンド(ICAM-1)の増加を引き起こし、これは、IFN-γへの曝露なしのHLAクラスIノックアウトと比較して、より大きな細胞溶解をもたらす(条件3対4及び条件7対8の最初のバーを比較)。しかしながら、標的細胞上でNK活性化シグナルの発現を遮断するように作用するICAM-1阻害抗体で処理すると、NK媒介細胞溶解は、B2M-/-hES細胞では83%から73%に低下し、IFN-γで処理されたB2M-/-PECでは72%から61%に低下する。NK媒介細胞溶解率はゼロにまで低下しないが、それは、ICAM-1細胞表面タンパク質発現が遮断抗体を使用しても完全に遮断され得ず、上記で論じたように、標的細胞が2つ以上のNK活性化リガンドを発現するためである。NK媒介細胞溶解率は、ICAM-1発現がさらに阻害され、他のNK活性化リガンドが標的細胞において遮断された場合に、より大幅に低下すると予想される。したがって、ICAM-1阻害抗体は、表1に列挙されたリガンド、好ましくは分類1(既知の活性化リガンド)及び分類2(遺伝子チップデータから同定されたリガンドを活性化する潜在的候補、それらはIFNγ後にPEC及び/又はESCでアップレギュレートされる)のいずれかに対する阻害抗体を含む、さらなるNK活性化リガンド阻害抗体と組み合わせることができる。一実施形態では、ICAM1遺伝子及び他のNK活性化リガンド遺伝子は、それらの活性を完全に遮断するために破壊される。
【0342】
図1のシナリオDは、
図15の条件2及び6の最初のバーに示されている。条件2及び6では、WT hES細胞及びPECは、IFN-γへの曝露の結果として、HLAクラスI抗原及びNK活性化リガンドの両方の細胞表面タンパク質発現をアップレギュレートした。細胞をICAM-1阻害抗体とインキュベートしたとき、これは
図1のシナリオDからシナリオBに移行する状況を表す。ICAM1阻害抗体とインキュベートしたとき、細胞死がWT hES細胞では79から60%に低下し、IFN-γに曝露されたWT PECでは53%から27%に低下する。実際に、WT PECをIFN-γに曝露し、ICAM-1阻害抗体とともにインキュベートしたとき、NK細胞溶解は未処理のWT PECのものを下回り、IFN-γなしでのWT PEC及びICAM-1阻害抗体の場合での37%と比較して、WT PEC、IFN-γ、及びICAM-1阻害抗体の場合では27%である。
【0343】
図1のシナリオBは、
図15の条件1、2、5、及び6におけるICAM1抗体処理のバーによって例示される。ここでは、標的hES細胞及びPECはHLAクラスI及びNK活性化リガンドを有するが、標的細胞がIFN-γに曝露されないとき、ICAM-1の細胞表面タンパク質発現の増加はない。結果として、ICAM-1阻害抗体は効果がより少ない。したがって、細胞溶解はほぼ同じままであり、hES細胞では58%から57%であり、PEC細胞では33%から37%である。
【0344】
図1のシナリオCは、
図15の条件3、4、7、及び8における最初のバーと同様である。これらの条件では、細胞は、B2M-/-の結果としてHLAクラスI細胞表面発現を示さない。したがって、NK活性化リガンドが細胞のIFN-γ曝露によって活性化されない場合、ICAM-1阻害抗体はほとんど効果がなく、hES細胞では71%から70%であり、PECでは54%から57%である。
【0345】
一般的な観察として、NK媒介細胞溶解は、分化した細胞集団(WT PEC及びB2M-/-PEC)では未分化細胞集団(WT hES及びB2M-/-hES)と比較して少ない。NK媒介細胞溶解は、細胞(WT又はB2M-/-ノックアウト hES又はPEC)がIFN-γで活性化されたときにより大幅に増加する。
【0346】
実施例10:NK活性化リガンド欠損B2M-/-ノックアウトhES細胞の生成
実施例9は、ICAM-1発現の阻害又は抑制によって、IFN-γ処理B2M-/-PECがNK媒介細胞殺傷活性から保護されることを記載している。したがって、移植後のNK細胞媒介殺傷からB2M-/-PECを保護するためには、NK細胞活性化リガンド遺伝子を破壊することが望ましい。例えば、上記の実施例に基づき、既知のNK活性化リガンド遺伝子であるICAM-1を破壊又は「ノックアウト」することができる。好ましくは、B2M-/-CyT49 hESC株におけるICAM-1遺伝子座の両方の対立遺伝子を、CRISPR/Cas9又は現在知られている若しくは将来既知となるべき他の遺伝子編集技術を使用して破壊することができる。PCT国際公開第2016183041A号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。ICAM-1の公開された配列の例は、配列番号4、5、及び6として提出されている。例えば、本発明の一実施形態では、デュアルガイドRNA及びFoklヌクレアーゼに融合された触媒的に不活性なCas9タンパク質を導入するNEXTGEN(商標)CRISPR(Transposagen Inc.、ケンタッキー州レキシントン)が細胞の遺伝子編集に使用される。
【0347】
ガイドRNA及びCas9を含むプラスミドをB2M-/-CyT49hESCにエレクトロポレーションし、組織培養プレートに播種することができる。エレクトロポレーション後、フローサイトメトリーにより、ICAM-1抗体に対する陰性反応性について細胞を選別することができる。選別された細胞は、クローン密度でプレーティングすることができる。個々のクローンを選び、再度プレーティングすることができる。クローンを増殖し、凍結保存することができる。G分染法により正常な核型を示し、フローサイトメトリー及び/又は免疫蛍光法によりICAM-1タンパク質の発現及びICAM-1タンパク質の表面発現が陰性である増殖クローンをさらなる実験のために選択することができる。
【0348】
上記のように、ICAM1及びB2Mを欠損する細胞は、少なくとも1つのNK活性化リガンド及び少なくとも1つ又は全てのMHCクラスIタンパク質を細胞表面上で発現することができず、したがって、NK細胞活性化受容体に結合し得ず、NK媒介細胞死から保護される。
【0349】
実施例11:複数のNK活性化リガンド欠損B2M-/-ノックアウトhES細胞の生
成
実施例9及び10は、機能的細胞表面発現の阻害(抗NK活性化リガンド)及びMHCクラスI細胞表面発現の破壊(例えば、B2M-/-)と組み合わせたNK細胞活性化リガンドの遺伝子破壊(例えば、ICAM1-/-)は、NK媒介細胞死から標的細胞を保護することができることを実証している。2つ以上のNK細胞活性化リガンドを欠損した細胞の移植を行い、NK媒介細胞死からさらに保護することができる。
【0350】
CD58遺伝子は、ノックアウトするためのNK活性化リガンド遺伝子として選択される。CD58遺伝子座の両方の対立遺伝子は、国際公開第2016183041Aで概説されている既知の技術を使用したCRISPR/Cas9技術を使用して、B2M-/-:ICAM-/-ダブルノックアウトCyT49 hESC株において破壊することができる。CEACAM1の公開された配列の例は、配列番号7、8、及び9として提出されている。再度、編集バージョンは、NEXTGEN(商標)CRISPR(Transp
osagen Inc.、ケンタッキー州レキシントン)であり得る。
【0351】
ガイドRNA及びCas9を含むプラスミドをB2M-/-、ICAM-/-ノックアウトCyT49 hESCにエレクトロポレーションし、組織培養プレートに播種することができる。エレクトロポレーション後、フローサイトメトリーにより、CD58抗体に対する陰性反応性について細胞を選別することができる。選別された細胞は、クローン密度でプレーティングすることができる。個々のクローンを選び、再度プレーティングすることができる。クローンを増殖し、凍結保存することができる。G分染法により正常な核型を示し、フローサイトメトリー及び/又は免疫蛍光法によりCD58タンパク質の発現及びCD58タンパク質の表面発現が陰性である増殖クローンをさらなる実験のために選択することができる。
【0352】
上記のように、破壊、欠失、又は改変されたICAM1、CD58、及びB2Mを有する細胞は、細胞表面上でICAM1、CD58もMHCクラスIタンパク質も発現することができず、したがって、NK細胞活性化受容体に結合し得ず、NK媒介細胞死から保護される。
【0353】
CD155(PVRとしても知られる)遺伝子はまた、ノックアウトするためのNK活性化リガンド遺伝子として選択することができる。CD58に加えて又はCD58の代わりに、CD155を選択することができる。上記のように、CRISPR/Cas9技術を使用して、CD28遺伝子を破壊することができる。CD155遺伝子はまた、ノックアウトするためのNK活性化リガンド遺伝子として選択することができる。CD58に加えて又はCD58の代わりに、CD155を選択することができる。CAECAM1遺伝子はまた、ノックアウトするためのNK活性化リガンド遺伝子として選択することができる。CD58及び/若しくはCD155に加えて又はCD58及び/若しくはCD155の代わりに、CAECAM1を選択することができる。
【0354】
実施例12:NK活性化リガンドICAM1及びCD58の不活性化
【0355】
NK活性化を完全に排除するためには、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来の細胞療法)によって、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用することによって、複数のNK活性化リガンドを排除/低減する必要があり得る。標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減し得るかどうかを決定するために、WT及びB2M-/- hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を、標的細胞表面上のICAM1及びCD58タンパク質を遮断するためのICAM1及びCD58遮断抗体を使用して遮断することができる。標的細胞の細胞溶解が低減されることが期待できる(
図15と同様)。したがって、NK細胞による細胞溶解は、ICAM1及びCD58などのNK活性化リガンドを遮断することによって低減することができる。B2M-/-細胞においてNK活性化リガンドに対する抗体を使用してICAM1及びCD58の発現を遮断することは、3つのノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)は、
図1のシナリオCからシナリオAに移行する。具体的には、本発明の細胞、組織、及び器官は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、ICAM1-/-及びCD58-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することによって達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げる他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナント
ネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現されるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんどないか又は全くないためである。
【0356】
実施例13:NK活性化リガンドCADM1及びCD58の不活性化
NK活性化を完全に排除するためには、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来の細胞療法)によって、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用することによって、複数のNK活性化リガンドを排除/低減する必要があり得る。標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減し得るかどうかを決定するために、WT及びB2M-/-hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を、標的細胞表面上のCADM1及びCD58タンパク質を遮断するためのCADM1及びCD58遮断抗体を使用して遮断することができる。標的細胞の細胞溶解が低減されることが期待できる(
図15と同様)。したがって、NK細胞による細胞溶解は、CADM1及びCD58などのNK活性化リガンドを遮断することによって低減することができる。B2M-/-細胞においてNK活性化リガンドに対する抗体を使用してCADM1及びCD58の発現を遮断することは、3つのノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)は、
図1のシナリオCからシナリオAに移行する。具体的には、本発明の細胞、組織、及び器官は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、CADM1-/-及びCD58-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することによって達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げる他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現されるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんどないか又は全くないためである。
【0357】
実施例14:NK活性化リガンドCD155及びCD58の不活性化
NK活性化を完全に排除するためには、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来の細胞療法)によって、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用することによって、複数のNK活性化リガンドを排除/低減する必要があり得る。標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減し得るかどうかを決定するために、WT及びB2M-/-hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を、標的細胞表面上のCD155及びCD58タンパク質を遮断するためのCD155及びCD58遮断抗体を使用して遮断することができる。標的細胞の細胞溶解が低減されることが期待できる(
図15と同様)。したがって、NK細胞による細胞溶解は、CD155及びCD58などのNK活性化リガ
ンドを遮断することによって低減することができる。B2M-/-細胞においてNK活性化リガンドに対する抗体を使用してCD155及びCD58の発現を遮断することは、3つのノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)は、
図1のシナリオCからシナリオAに移行する。具体的には、本発明の細胞、組織、及び器官は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、CD155-/-及びCD58-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することによって達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げる他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現されるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんどないか又は全くないためである。
【0358】
実施例15:NK活性化リガンドICAM1、CD155、及びCD58の不活性化
NK活性化を完全に排除するためには、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来の細胞療法)によって、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用することによって、複数のNK活性化リガンドを排除/低減する必要があり得る。標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減し得るかどうかを決定するために、WT及びB2M-/-hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を、標的細胞表面上のICAM1、CD155、及びCD58タンパク質を遮断するためのICAM1、CD155、及びCD58遮断抗体を使用して遮断することができる。標的細胞の細胞溶解が低減されることが期待できる(
図15と同様)。したがって、NK細胞による細胞溶解は、ICAM1、CD58、及びCD155などのNK活性化リガンドを遮断することによって低減することができる。B2M-/-細胞においてNK活性化リガンドに対する抗体を使用してICAM1、CD58、及びCD155の発現を遮断することは、4つのノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)は、
図1のシナリオCからシナリオAに移行する。具体的には、本発明の細胞、組織、及び器官は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、ICAM1-/-、CD58-/-、及びCD155-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することによって達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げる他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現さ
れるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんどないか又は全くないためである。
【0359】
実施例16:NK活性化リガンドICAM1、CD155、CD58、及びCADM1の不活性化
NK活性化を完全に排除するためには、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来の細胞療法)によって、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用することによって、複数のNK活性化リガンドを排除/低減する必要があり得る。標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減し得るかどうかを決定するために、WT及びB2M-/-hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を、標的細胞表面上のICAM1、CD155、CD58、及びCADM1タンパク質を遮断するためのICAM1、CD155、CD58、及びCADM1遮断抗体を使用して遮断することができる。標的細胞の細胞溶解が低減されることが期待できる(
図15と同様)。したがって、NK細胞による細胞溶解は、ICAM1、CD58、CD155、及びCADM1などのNK活性化リガンドを遮断することによって低減することができる。B2M-/-細胞においてNK活性化リガンドに対する抗体を使用してICAM1、CD58、CD155、及びCADM1の発現を遮断することは、5つのノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)は、
図1のシナリオCからシナリオAに移行する。具体的には、本発明の細胞、組織、及び器官は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、ICAM1-/-、CD58-/-、CD155-/-、及びCADM1-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することによって達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げる他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現されるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんどないか又は全くないためである。
【0360】
実施例17:NK活性化リガンドICAM1、CD155、及びCADM1の不活性化、
NK活性化を完全に排除するためには、標的細胞における遺伝子ノックアウト(例えば、hES細胞由来の細胞療法)によって、あるいは遮断抗体又は現在既知であるか若しくは将来開発される他の戦略を使用することによって、複数のNK活性化リガンドを排除/低減する必要があり得る。標的細胞上のNK活性化リガンドの効果を阻害することによってNK細胞傷害性が低減し得るかどうかを決定するために、WT及びB2M-/-hES細胞及びPECにおけるNK活性化リガンドの発現を、標的細胞表面上のICAM1、CD155、及びCADM1タンパク質を遮断するためのICAM1、CD155、及びCADM1遮断抗体を使用して遮断することができる。標的細胞の細胞溶解が低減されることが期待できる(
図15と同様)。したがって、NK細胞による細胞溶解は、ICAM1、CD155、及びCADM1などのNK活性化リガンドを遮断することによって低減することができる。B2M-/-細胞においてNK活性化リガンドに対する抗体を使用して
ICAM1、CD155、及びCADM1の発現を遮断することは、4つのノックアウト(HLAクラスI遺伝子ノックアウト及びNK活性化リガンド遺伝子ノックアウト)を有する細胞を生成するための概念実証である。そうすることで、標的細胞(例えば、hES及び/又は膵臓系統細胞)は、
図1のシナリオCからシナリオAに移行する。具体的には、本発明の細胞、組織、及び器官は、HLAクラスI細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さず(B2M-/-)、NK活性化リガンド細胞表面タンパク質発現を阻害したか又はその発現を有さない(例えば、ICAM1-/-、CD155-/-、及びCADM1-/-)。細胞表面タンパク質発現の阻害は、遺伝子をノックアウトするか、又は抗体を使用してタンパク質の発現を遮断することによって達成することができる。細胞表面タンパク質発現を妨げる他の戦略には、アンチセンスRNA、RNAデコイ、リボザイム、RNAアプタマー、siRNA、shRNA/miRNA、トランスドミナントネガティブタンパク質(TNP)、キメラ/融合タンパク質、ヌクレアーゼ、ケモカインリガンド、抗感染性細胞タンパク質、細胞内抗体(sFv)、ヌクレオシド類似体(NRTI)、非ヌクレオシド類似体(NNRTI)、インテグラーゼ阻害剤(オリゴヌクレオチド、ジヌクレオチド、及び化学剤)、及びプロテアーゼ阻害剤の使用が含まれる。多重遺伝子ノックアウトは、細胞傷害性T細胞(CTL)媒介傷害及びNK細胞媒介傷害の両方を効果的に防止するが、それは、CTL又はNK細胞が結合するための、細胞表面上で発現されるHLAクラスIがほとんど又は全くなく、NK活性化リガンドタンパク質がほとんどないか又は全くないためである。
【0361】
本発明で有用な遮断抗体は、以下の通りである:CADM1抗体、クローン9D2、Creative Biolabs、カタログ#BRD-0007MZ;CD155抗体、クローンSKII.4、Biolegend、カタログ#337602;及びCD58抗体、クローンTS2/9、Biolegend、カタログ#330911。
膵臓系統細胞を含むインビトロ細胞集団であって、少なくとも1つの主要組織適合性複合体(MHC)クラスI遺伝子及び少なくとも1つのナチュラルキラー(NK)細胞活性化リガンドの機能が、前記膵臓系統細胞において破壊又は阻害されている、インビトロ細胞集団。