(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057090
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】貫通電極基板、配線基板および配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20240416BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240416BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H05K1/11 K
H05K1/02 C
H05K1/11 H
H05K3/40 E
H05K3/40 G
H05K1/02 J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033264
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2019165313の分割
【原出願日】2019-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】千吉良 敦子
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 裕之
(72)【発明者】
【氏名】俵屋 誠治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、貫通電極の中空部に樹脂部を充填した際に、樹脂部におけるボイドの発生を抑制できる貫通電極基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示は、貫通孔Hを有する支持基板1と、支持基板1の貫通孔Hの側壁部に配置され、貫通孔H内に中空部hを備える貫通電極2と、支持基板1の少なくとも一方の面側の中空部hの周囲に、貫通電極Hと連続して配置されたランド部3とを有し、ランド部3は、ランド部3の中空部h側の厚さよりも、ランド部3の外周側の厚さが薄い構造を有する、貫通電極基板10を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する支持基板と、
前記支持基板の前記貫通孔の側壁部に配置され、前記貫通孔内に中空部を備える貫通電極と、
前記支持基板の少なくとも一方の面側の前記中空部の周囲に、前記貫通電極と連続して配置されたランド部とを有し、
前記ランド部は、前記ランド部の前記中空部側の厚さよりも、前記ランド部の外周側の厚さが薄い構造を有する、貫通電極基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貫通電極基板、配線基板および配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化に伴い、集積回路を有する配線基板を、他の基板に実装するといった三次元実装技術の開発が進められている。三次元実装技術においては、貫通電極を有する貫通電極基板が用いられる。このような貫通電極基板は、例えば、インターポーザとして用いられ、貫通孔を有する支持基板と、貫通孔内に配置された貫通電極と、貫通電極と連続して配置されたランド部とを有するもの等を挙げることができる。上記ランド部は、貫通電極基板に配置された配線や、他の基板上に配置された配線と、貫通電極とを接続させるために用いられる部材である。
【0003】
特許文献1には、基板と上記基板の第1面側に配置され、第1配線層と上記第1配線層よりも上記基板に遠い層に配置された第2配線層とを含む第1積層体と、上記第1面と反対側の面である第2面側に配置され、第3配線層と上記第3配線層よりも上記基板に遠い層に配置された第4配線層とを含む第2積層体と、上記第1積層体と上記基板と上記第2積層体とを貫通する貫通孔と、上記貫通孔の少なくとも側壁に配置され、上記第2配線層と上記第4配線層とを接続する導電層とを備えるインターポーザが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示すような基板に貫通孔を有する貫通電極基板の一つとして、支持基板の貫通孔の側壁部に配置され、貫通孔内に中空部を備える貫通電極を有する基板を挙げることができる。コンフォーマルビアとも称される上記貫通電極を有する貫通電極基板は、配線基板として用いる際に貫通孔の部分に空間が残っていると、例えば、更なる配線形成等の後工程を行う場合に、レジスト等の後工程に用いられる材料の均一塗布が難しいといった問題や、上記材料が貫通孔を通して裏面側へ漏れてしまうといった問題が生じる場合がある。
【0006】
この問題に対して、例えば、貫通電極の中空部に樹脂部を充填することで、貫通孔を閉塞することが一般的に行われている。
【0007】
貫通電極の中空部に樹脂部を充填する方法としては、例えば、貫通電極基板の少なくとも一方の面側に、樹脂組成物を含有する樹脂材を含むフィルムを配置し、樹脂組成物を流動させることにより、貫通電極の中空部に樹脂組成物を充填して、樹脂組成物を固化する方法が挙げられる。しかしながら、上述した方法においては、貫通電極の中空部に十分な量の樹脂組成物を充填することができず、貫通電極の中空部に充填された樹脂部にボイド(空隙)が残ってしまう場合がある。このように上記ボイドが残ることで、例えば、後工程で使用した酸またはアルカリがボイドに残存することにより、電極酸化等の劣化が生じ、接続信頼性の低下が生じるといった問題や、貫通電極基板を介した表裏導通の信頼性を低下させてしまうといった問題が生じることが懸念される。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされた発明であり、貫通電極の中空部に樹脂部を充填した際に、樹脂部におけるボイドの発生を抑制できる貫通電極基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示は、貫通孔を有する支持基板と、上記支持基板の上記貫通孔の側壁部に配置され、上記貫通孔内に中空部を備える貫通電極と、上記支持基板の少なくとも一方の面側の上記中空部の周囲に、上記貫通電極と連続して配置されたランド部とを有し、上記ランド部は、上記ランド部の上記中空部側の厚さよりも、上記ランド部の外周側の厚さが薄い構造を有する、貫通電極基板を提供する。
【0010】
本開示によれば、ランド部が中心側の厚さよりも外周側の厚さが薄い構造を有することにより、樹脂材を含むフィルムを用い、上記フィルムの樹脂層中の樹脂組成物を加熱溶解させ、貫通電極の中空部に樹脂組成物を充填する工程において、溶融した樹脂組成物がランド部を超え易くできることから、中空部内の樹脂部におけるボイドの発生を抑制できる貫通電極基板とすることができる。
【0011】
上記開示においては、上記ランド部は、厚さの異なる複数の平坦部を備える段差構造を有し、上記段差構造は、上記ランド部の上記中空部側に位置する上記平坦部の厚さよりも、上記ランド部の外周側に位置する上記平坦部の厚さが薄い構造であることが好ましい。例えば、エッチング法を用いて、ランド部を形成しやすいからである。
【0012】
本開示においては、中でも、上記段差構造が、厚さの異なる2つの上記平坦部を備え、上記ランド部の上記中空部側に位置する第1平坦部の厚さよりも、上記ランド部の外周側に位置する第2平坦部の厚さが薄い構造であることが特に好ましい。低コストでの製造を可能とするからである。
【0013】
また、上記開示においては、上記第1平坦部の厚さと上記第2平坦部の厚さとの厚さの差が、0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましい。上記厚さの差が特定の範囲内であることにより、貫通電極の中空部へ樹脂組成物を流れ込みやすくすることができ、かつ製造が容易となるからである。
【0014】
さらに上記開示においては、上記ランド部の幅に対する、上記第1平坦部の幅の比率が、10%以上90%以下であることが好ましい。上記幅の比率が特定の範囲内であることにより、貫通電極の中空部へ樹脂組成物を流れ込みやすくすることができるからである。
【0015】
本開示は、上述した貫通電極基板と、上記貫通電極基板の上記貫通電極の上記中空部に充填された樹脂部と、を有する、配線基板を提供する。
【0016】
本開示は、上述した配線基板の製造方法であって、上記貫通電極基板を準備する準備工程と、上記貫通電極基板の少なくとも一方の上記ランド部側の面側に、樹脂組成物を含有する樹脂材を含むフィルムを配置し、上記貫通電極の上記中空部に上記樹脂組成物を充填する充填工程と、充填された上記樹脂組成物を固化して樹脂部を形成する固化工程とを有する、配線基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の貫通電極基板は、貫通電極の中空部に樹脂部を充填した際に、樹脂部におけるボイドの発生を抑制できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の貫通電極基板を例示する概略断面図およびランド部の概略平面図である。
【
図2】本開示の配線基板の製造方法を例示する工程図である。
【
図3】本開示の貫通電極基板を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示におけるランド部を例示する概略平面図である。
【
図5】本開示におけるランド部を例示する概略平面図および概略断面図である。
【
図6】本開示の配線基板を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示の配線基板の製造方法を例示する工程図である。
【
図8】従来の配線基板の製造方法を例示する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0020】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0021】
同様に、本明細書において、「ある部材の面側に」と表記する場合、特段の断りのない限りは、ある部材の面に接するように直接、他の部材を配置する場合と、ある部材の面に別の部材の介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0022】
本開示は、貫通電極基板、配線基板および配線基板の製造方法に関する技術である。以下、詳細を説明する。
【0023】
A.貫通電極基板
本開示の貫通電極基板は、貫通孔を有する支持基板と、上記支持基板の上記貫通孔の側壁部に配置され、上記貫通孔内に中空部を備える貫通電極と、上記支持基板の少なくとも一方の面側の上記中空部の周囲に、上記貫通電極と連続して配置されたランド部とを有し、上記ランド部は、上記ランド部の中空部側の厚さよりも、上記ランド部の外周側の厚さが薄い構造を有する。
【0024】
本開示の貫通電極基板について図を用いて説明する。
図1(a)は本開示の貫通電極基板の一例を示す概略断面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示すランド部の概略平面図である。
図1(a)、(b)に示す貫通電極基板10は、貫通孔Hを有する支持基板1と、支持基板1の貫通孔Hの側壁部に配置され、貫通孔H内に中空部hを備える貫通電極2と、支持基板1の少なくとも一方の面側の中空部hの周囲に、上記貫通電極2と連続して配置されたランド部3とを有する。
図1(a)においては、支持基板1の両面側にランド部3が配置されている例を示している。
【0025】
図1(a)、(b)に示すように、ランド部3は、貫通孔Hの中心部C側、すなわち中空部h側の厚さよりも、貫通孔Hの外部側、すなわちランド部3の外周側の厚さが薄い構造を有する。
図1(a)、(b)においては、ランド部3は、厚さの異なる2つの平坦部を備える段差構造を有し、段差構造は貫通孔Hの中心部C側に位置する第1平坦部31の厚さよりも、外周側に位置する第2平坦部32の厚さが薄い構造である例を示している。
【0026】
本開示によれば、ランド部が上記中空部側の厚さよりも、ランド部の外周側の厚さの方が薄い構造を有することにより、貫通電極の中空部に樹脂部を充填した際に、樹脂部におけるボイドの発生を抑制できる貫通電極基板とすることができる。
【0027】
なお、本明細書においては、「貫通電極の中空部に樹脂部を充填する」を、「貫通孔内に樹脂部を充填する」と表現する場合がある。
【0028】
ここで、本開示の貫通電極基板の効果について図を用いて説明する。
図2(a)~(c)は本開示の貫通電極基板を用いた配線基板の製造方法の一例を示す工程図であり、
図8(a)~(c)は、従来の貫通電極基板を用いた配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【0029】
図8(a)に示すように、従来の貫通電極基板110は、通常、1つの平坦部を備える構造(フラット構造)のランド部13を有する。また、ランド部13は、支持基板11の貫通孔Hの近傍を補強する観点から、比較的厚さを厚く形成する必要がある。このような貫通電極基板110に対し、
図8(b)に示すように、樹脂層51を配置し、その表面に加圧用フィルム52を気密に配置して樹脂材を含むフィルム50を配置する。次に、樹脂材を含むフィルム50を加熱すると共に加圧用フィルム52内を減圧する。これにより、加圧用フィルム52により樹脂層51が大気圧で加圧され、樹脂層51中の加熱溶融した樹脂組成物5a流動することにより、中空部hに樹脂組成物5aが流入する。しかしながら、従来の貫通電極基板110は、比較的厚さの厚いフラット構造を有するランド部13を有するため、ランド部13と支持基板11との段差により、中空部h内へ樹脂組成物5aの流れ込みが妨げられ、十分な量の樹脂組成物5aを中空部h内に充填することが困難となる場合がある。そのため、
図8(c)に示すように、得られた配線基板120は樹脂部15においてボイドxが発生してしまう場合がある。
【0030】
これに対し、
図2(a)に示すように、本開示の貫通電極基板10は、ランド部3が、上記中空部h側の厚さよりも、ランド部3の外周側の厚さが薄い構造を有する。このような貫通電極基板10のランド部3側の表面に、
図2(b)に示すように、ドライフィルムレジスト51を配置し、上記
図8の場合と同様にして加熱および加圧を行うと、本開示におけるランド部3は中空部h側の厚さより外周側の方の厚さの方が薄くなる構造を有するため、樹脂層51中の溶融した樹脂組成物5aがランド部3上に這い上がり易くすることができる。これにより、樹脂層51中の溶融した樹脂組成物5aを中空部h内へ流れ込みやすくすることができ、十分な量の樹脂組成物5aを中空部h内へ充填することができる。これにより、
図2(c)に示すように、樹脂部5におけるボイドの発生が抑制された配線基板20とすることができる。
【0031】
また、本開示によれば、樹脂部におけるボイドの発生を抑制することができるため、貫通電極基板を用いた配線基板に対し、酸やアルカリ等を使用して後処理を行った場合も、酸やアルカリのボイド内の残存量を極めて少なくすることができることから、電極の劣化を抑制することができ、接続信頼性、貫通電極基板を介した表裏導通の信頼性を良好にすることができる。
【0032】
以下、本開示の貫通電極基板の各構成について説明する。
【0033】
1.ランド部
本開示におけるランド部は、支持基板の少なくとも一方の面側の貫通孔の周囲に、貫通電極と連続して配置される部材である。また、ランド部は、中空部側の厚さよりも外周側の厚さが薄い構造を有する、といった特定の構造を有する。このような特定の構造を有するランド部を、以下、段差ランド部とする場合がある。
【0034】
本開示における段差ランド部は、支持基板の少なくとも一方の面側に配置されていればよく、例えば、
図1(a)に示すように、段差ランド部3は支持基板1の両方の面側に配置されていてもよく、
図3に示すように、支持基板1の一方の面側のみに配置されていてもよい。段差ランド部3が支持基板1の一方の面側のみに配置されている場合は、支持基板1の他方の面側には、通常、一つの平坦部のみを有する従来のランド部4が配置されている。段差ランド部が支持基板の一方の面側のみに配置されるか、両方の面側に配置されるかは、支持基板の用途等によって選択されるものであるが、通常は、支持基板の両方の面側に配置されるものである。
【0035】
段差ランド部は、中空部の周囲に配置されていればよく、例えば、上記中空部の周囲の一部に配置されていてもよく、上記中空部の全周に配置されていてもよいが、後者がより好ましい。支持基板の貫通孔の近傍部分は、他の部分に比べて強度が低くなりやすい傾向にあることから、段差ランド部を貫通孔の全周に配置することにより、支持基板の貫通孔の近傍部分を良好に補強することができるからである。また、段差ランド部は貫通電極と連続して配置されることから、段差ランド部を貫通孔の全周に配置することにより、段差ランド部と貫通電極との電気的接続性を良好にすることができるからである。
【0036】
段差ランド部の平面視外形形状としては、支持基板の用途等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。段差ランド部の平面視外形形状は、例えば、貫通孔の形状と同様の形状であってもよく、異なる形状であってもよい。段差ランド部の平面視外形形状は、例えば円形状、楕円形状、矩形状、五角形状、六角形状等の多角形状等を挙げることができる。また、段差ランド部の平面視外形形状は、例えば、上述した各形状の一部を切り欠いた形状を有していてもよい。
【0037】
上述したように、段差ランド部は、上記段差ランド部の中空部側の厚さよりも外周側の厚さが薄い特定の構造を有する。上記段差ランド部は、少なくとも一部に上記特定の構造を有していれば特に限定されず、例えば、段差ランド部の一部のみに上記特定の構造を有していてもよく、また例えば、段差ランド部の全体に上記特定の構造を有していてもよい。段差ランド部の一部のみに上記特定の構造を有する例としては、後述する
図4(a)~(c)に示される段差ランド部3の構造を挙げることができる。また、段差ランド部の全体に上記特定の構造を有する例としては、
図1(b)に示される段差ランド部3の構造を挙げることができる。
【0038】
本開示においては、なかでも、段差ランド部の全体に上記特定の構造を有することが好ましい。中空部内へ樹脂組成物を流れ込みやすくすることができるからである。この場合、特に段差ランド部は、貫通孔の全周に配置されていることが好ましい。貫通孔の全周に上記特定の構造を配置することができるため、強度を向上させ、かつ貫通孔内へ樹脂組成物をより流れ込みやすくすることができるからである。
【0039】
段差ランド部の構造は、中空部側の厚さよりも外周側の厚さが薄い構造を有していれば特に限定されず、例えば、厚さの異なる複数の平坦部を備える段差構造であってもよく、連続した傾斜を有するテーパ―構造であってもよいが、前者であることが好ましい。例えば、エッチング法により、所望の段差構造を形成しやすいからである。
【0040】
段差ランド部における段差構造は、上記段差ランド部の上記中空部側に位置する平坦部の厚さよりも、上記段差ランド部の外周側に位置する平坦部の厚さが薄い構造を有する。段差構造を構成する平坦部の数は、中空部側の厚さよりも外周側の厚さが薄くなるようにすることができれば特に限定されず、通常、2つ以上である。また、平坦部の数は、例えば、4つ以下であってもよく、3つ以下であってもよい。本開示においては、中でも平坦部の数が2つであることが好ましい。換言すると、段差ランド部における段差構造は、厚さの異なる2つの平坦部を備え、貫通孔の中心部側に位置する第1平坦部の厚さよりも、貫通孔の外部側に位置する第2平坦部の厚さが薄い構造であることが好ましい。製造時に、エッチング法により、所望の段差構造を形成しやすいからである。
【0041】
段差ランド部が2つの平坦部を備える段差構造を有する場合、第1平坦部の配置は、上述した特定の構造を有する段差ランド部を、貫通孔の周囲に配置することが出来れば特に限定されない。例えば
図1(b)および
図4(a)に示すように、第1平坦部31は、貫通孔Hの全周に配置されていてもよい。また、
図4(b)、(c)に示すように、第1平坦部31は、貫通孔Hの周囲の一部に配置されていてもよい。中でも、第1平坦部が貫通孔の全周に配置されていることがより好ましい。支持基板の貫通孔の近傍部分を第1平坦部で補強することができるからである。また、貫通電極と段差ランド部との電気的接続性を良好にすることができるからである。
【0042】
また、第2平坦部の配置は、樹脂材を含むフィルムの樹脂層が溶融した状態の樹脂組成物が段差ランド部上を乗り越えやすくできる状態であれば特に限定されない。例えば
図1(b)に示すように、第2平坦部32は、第1平坦部31の全周に配置されていてもよい。また、
図4(a)~(c)に示すように、第2平坦部32は、第1平坦部31の周囲の一部に配置されていてもよい。
本開示においては、第2平坦部は第1平坦部の外周の一部に配置されていてもよいが、第1平坦部の全周に配置されていることが好ましい。
【0043】
本開示においては、第1平坦部および第2平坦部の両方が、貫通孔の全周に配置されていることが好ましい。段差ランド部が、貫通孔の全周に段差構造を有することができるため、例えば、樹脂材を含むフィルムを用いて貫通孔内に樹脂組成物を充填する際に、貫通孔の全周にわたって、貫通孔内に樹脂組成物を流れ込みやすくすることができるからである。
【0044】
なお、
図4(a)~(c)は、段差ランド部を説明するための概略平面図である。
図4(a)においては、第1平坦部31が貫通孔Hの全周に配置され、第2平坦部32が貫通孔Hの周囲の一部に配置されている例を示している。
図4(b)、(c)においては、第1平坦部31および第2平坦部32が、いずれも貫通孔Hの周囲の一部に配置されている例を示している。また、
図4(c)においては、
図1(b)に示す第1平坦部31および第2平坦部32の一部に切欠き部を設けた構造の例を示している。
【0045】
また、例えば、
図5(a)~(d)に示すように、第1平坦部31は、支持基板1側とは反対側の面に、貫通孔Hの外部側から中心部C側に向かう溝部g1を備えていてもよい。溝部を有することにより、貫通孔内へ樹脂組成物を流れ込みやすくすることができるからである。また、この場合、
図5(a)に示すように、第2平坦部は溝部を有していなくてもよく、
図5(b)に示すように、貫通孔Hの外部側から中心部C側に向かう溝部g2を備えていてもよい。この場合、例えば、
図5(c)、(d)に示すように、溝部g1および溝部g2は連続して設けられていてもよい。また、図示はしないが、第2平坦部のみに溝部が設けられていてもよい。なお、
図5(a)、(c)は段差ランド部を例示する概略平面図であり、
図5(b)、(d)は
図5(a)、(c)のA-A線断面図である。
【0046】
第1平坦部および第2平坦部の平面視外形形状は、貫通電極基板の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。第1平坦部の平面視外形形状と第2平坦部の平面視外形形状とは、同様の形状であってもよく、異なる形状であってもよいが、前者がより好ましい。樹脂材を含むフィルムの樹脂層が溶融した樹脂組成物の流動性を向上させるように、段差構造における第1平坦部および第2平坦部の寸法を調整しやすいからである。
【0047】
段差ランド部における第1平坦部および第2平坦部の幅、厚さ等の寸法は、例えば、支持基板の厚さ、貫通孔の大きさ等の支持基板の形態に応じて適宜調整され、特に限定されないが、一例として下記の寸法を挙げることができる。
【0048】
本開示においては、段差ランド部の幅に対する、第1平坦部の幅の比率は、例えば、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。また、上記比率は、例えば、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、70%以下であることがさらに好ましい。上記比率が上述した範囲内であることにより、段差ランド部の強度を維持しつつ、貫通孔内に樹脂組成物を流れ込みやすくすることができるからである。
【0049】
具体的な段差ランド部の幅は、特に限定されないが、例えば、5μm以上であり、15μm以上であってもよい。また、段差ランド部の幅は、例えば、80μm以下であり、60μm以下であってもよく、40μm以下であってもよい。
【0050】
なお、段差ランド部の幅とは、段差ランド部の中空部側から外周側までの距離をいい、第1平坦部の幅とは、第1平坦部の中空部側から外周側までの距離をいい、第2平坦部の幅とは、第2平坦部の中空部側から外周側までの距離をいう。具体例として、
図1(a)中、段差ランド部の幅はw0で表される距離であり、第1平坦部の幅はw1で表される距離であり、第2平坦部の幅はw2で表される距離である。
なお、段差ランド部の平面視外形形状が円形でない場合のw0、w1、およびw2は、それぞれの最も長い距離をいうこととする。
【0051】
第1平坦部の厚さと、第2平坦部の厚さとの厚さとは、段差ランド部が所望の段差構造を有することができれば特に限定されない。第1平坦部の厚さt1に対する、第2平坦部の厚さt2の比率は、特に限定されないが、例えば、0.1以上であり、0.2以上であってもよく、0.3以上であってもよい。また、上記比率は、例えば、0.8以下であり、0.6以下であってもよく、0.5以下であってもよい。
【0052】
第1平坦部の厚さと、第2平坦部の厚さとの厚さの差は、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上であることが好ましい。上記厚さの差は、例えば、0.7μm以上であってもよく、0.9μm以上であってもよい。上記厚さの差は、例えば、1.5μm以下であることが好ましい。上記厚さの差は、例えば、1.3μm以下であってもよく、1.1μm以下であってもよい。上記厚さの差が小さすぎる場合は、樹脂材を含むフィルムを用いて上記中空部内に樹脂組成物を充填する際に、樹脂組成物を上記中空部内に十分に流れ込みやすくすることが困難となる可能性があるからである。また、上記厚さの差が大きすぎる場合は、段差構造を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0053】
具体的な第1平坦部の厚さは、特に限定されないが、例えば、2μm以上であり、4μm以上であってもよい。また、第1平坦部の厚さは、例えば、10μm以下であり、8μm以下であってもよく、6μm以下であってもよい。また、具体的な第2平坦部の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上であり、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよい。また、第2平坦部の厚さは、例えば、5μm以下であり、4μm以下であってもよい。
第1平坦部の厚さが薄すぎる場合は、段差ランド部の強度面での問題が生じる可能性があり、厚すぎる場合は、貫通電極基板が必要以上に厚くなり、用いる素子等のコンパクト化の妨げとなるからである。
【0054】
なお、第1平坦部の厚さとは、支持基板の段差ランド部側の面から、第1平坦部の支持基板側とは反対側の面までの距離をいい、第2平坦部の厚さとは、支持基板の段差ランド部側の面から、第2平坦部の支持基材側とは反対側の面までの距離をいい、第1平坦部の厚さと第2平坦部の厚さとの厚さの差とは、第2平坦部の支持基板側とは反対側の面から、第1平坦部の支持基板側とは反対側の面までの距離をいう。具体例として、
図1(a)中、第1平坦部の厚さはt1で表される距離であり、第2平坦部の厚さはt2で表される距離であり、第1平坦部の厚さと第2平坦部の厚さとの厚さの差はt3で表される距離である。
【0055】
ここで、各部材および各部材の部分の「厚さ」とは、一般的な測定方法によって得られる厚さをいう。厚さの測定方法として、触針で表面をなぞり凹凸を検出することによって厚さを算出する触針式の方法を用いた。具体的には、ケーエルエー・テンコール株式会社製の触針式膜厚計P-15を用いて針圧15mgの条件で厚さを測定することができる。なお、厚さとして、対象となる部材の複数箇所における厚さ測定結果の平均値が用いられても良い。
【0056】
段差ランド部に用いられる材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されず、一般的な配線に用いられる導電性材料を使用することができ、配線の形態や形成方法等に応じて適宜選択される。
【0057】
段差ランド部の材料としては、具体的には、銅、金、銀、白金、ロジウム、スズ、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属、またはこれらの金属を含む合金等を挙げることができる。
【0058】
上記の場合、段差ランド部は、単層であってもよく、複数の層が積層された多層であってもよい。段差ランド部は、例えば、貫通孔の側壁部に配置されたシード層と、シード層の貫通孔の側壁側とは反対側の面に配置されためっき層とを有していてもよい。シード層の材料としては、一般的なめっき法におけるシード層に用いられる材料から適宜選択することができる。シード層の材料は、支持基板に対して密着性を有する導電性材料であることが好ましく、例えば、チタン、モリブデン、タングステン、タンタル、ニッケル、クロム、アルミニウム、これらの化合物、これらの合金等を挙げることができる。めっき層が銅を含む場合、シード層の材料は、銅が支持基板の内部に拡散するのを抑制することができる材料であることが好ましく、例えば、窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タンタル等を挙げることができる。めっき層の材料としては、シード層に対して密着性を有する導電性材料であることが好ましく、例えば、上述した段差ランド部の材料を挙げることができる。
【0059】
段差ランド部の形成方法は、貫通電極と連続して形成することができ、特定の構造を有する段差ランド部を形成することができれば特に限定されず、例えば、導電性材料層をエッチングする方法を挙げることができる。一例として、段差ランド部が、厚さの異なる2つの平坦部を備える段差構造を有する場合は、以下の方法が挙げられる。まず、支持基板の少なくとも一方の面側および貫通孔の側壁部に導電性材料層を形成する。次に、貫通電極および段差ランド部の第1平坦部に対応する部分が覆われ、第2平坦部に対応する部分が露出するように、導電性材料層上にフォトレジストを配置する。次に、フォトレジストから露出した導電性材料層をエッチングして厚さを薄くすることで、第2平坦部を形成する。以上の工程により、段差ランド部を形成することができる。導電性材料層の形成方法としては、例えば、めっき法が挙げられる。
【0060】
2.貫通電極
貫通電極は、貫通孔の側壁部に配置され、貫通孔の中心部に中空部を備える部材である。本開示における貫通電極は、コンフォーマルビアとも称される。
【0061】
貫通電極は、貫通孔の少なくとも一部の側壁に配置され、上述したランド部と連続して配置されていれば特に限定されないが、貫通孔の側壁部の全体に配置されていることが好ましい。貫通電極基板の表裏の電気的接続性を良好にすることができるからである。
【0062】
貫通電極の厚さは、支持基板の形態、貫通電極に用いられる材料、貫通電極の形成方法等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。例えば、上述した「1.ランド部」の項で説明した段差ランド部の厚さと同様の厚さであってもよい。
【0063】
貫通電極に用いられる材料および形成方法は、上述した「1.ランド部」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0064】
3.支持基板
支持基板は、貫通孔を有する基板であり、上述したランド部、貫通電極を支持する基板である。
【0065】
支持基板は貫通孔を有する。貫通孔の平面視形状としては、貫通電極基板の用途等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。貫通孔の平面視形状は、例えば、円形状、楕円形状を挙げることができる。貫通孔の大きさは、貫通電極基板の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、10μm以上200μm以下であってもよく、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0066】
貫通孔の形成方法としては、例えば、プラズマエッチングやウェットエッチング等のエッチング、レーザ照射、またはサンドブラストや超音波ドリル等の機械的な加工法が挙げられる。なお、本開示においては、自ら貫通孔を形成した支持基板を用いてもよく、予め貫通孔を有する基板を購入して用いてもよい。
【0067】
支持基板に用いられる材料は、一般的な配線基板に用いられる基板の材料と同様とすることができ、特に限定されない。支持基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、シリコン基板、石英基板、サファイア基板等を挙げることができる。支持基板がガラス基板である場合、用いられるガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等を挙げることができる。また、支持基板が樹脂基板である場合、用いられる樹脂としては、例えば、ポリイミドを挙げることができる。支持基板は、耐熱性を有することが好ましい。
【0068】
支持基板の厚さは、貫通電極基板の用途等に応じて適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、10μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、300μm以上であることがさらに好ましい。また、支持基板の厚さは、例えば、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、700μm以下であることがさらに好ましい。
【0069】
4.その他の構造
本開示の貫通電極基板は、上述した支持基板、貫通電極およびランド部を有していれば特に限定されず、他にも必要な構成を適宜選択して追加することができる。他の構成としては、例えば、配線等を挙げることができる。
【0070】
5.その他
本開示の貫通電極基板を製造する方法は、例えば、貫通孔を有する支持基板を準備し、貫通電極およびランド部を形成する方法を挙げることができる。
【0071】
本開示の貫通電極基板は、後述する「B.配線基板」に用いることができる。
【0072】
B.配線基板
本開示の配線基板は、上述した「A.貫通電極基板」の項で説明した貫通電極基板と、上記貫通電極の上記中空部に充填された樹脂部と、を有する。
【0073】
本開示の配線基板について図を用いて説明する。
図6は本開示の配線基板の一例を示す概略断面図である。
図6に示す配線基板20は、貫通電極基板10と、貫通電極2の中空部hに充填された樹脂部5とを有する。なお、貫通電極10の各構成については、
図1(a)、(b)で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0074】
本開示によれば、上述した貫通電極基板を有することにより、樹脂部におけるボイドの発生が抑制された配線基板とすることができる。以下、本開示の配線基板の各構成について説明する。
【0075】
1.貫通電極基板
本開示における貫通電極基板については、上述した「A.貫通電極基板」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
2.樹脂部
本開示における樹脂部は、貫通電極基板の貫通電極の中空部に充填される部材である。
【0077】
樹脂部の充填の程度としては、配線基板の用途に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、中空部全体に樹脂部が充填されていることが好ましい。
【0078】
樹脂部の材料は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等を挙げることができる。
本開示においては、中でもドライフィルムレジストに用いられる樹脂組成物であることが好ましい。
【0079】
樹脂部の形成方法としては、貫通電極基板における貫通孔に樹脂部を充填することが出来れば特に限定されないが、例えば、樹脂材を含むフィルムを用いた形成方法であることが好ましい。樹脂材を含むフィルムを用いた樹脂部の形成方法の詳細については、後述する「C.配線基板の製造方法」の項で説明する。
【0080】
3.その他の構成
本開示の配線基板は、貫通電極基板および樹脂部を有していれば特に限定されず、他にも必要な構成を適宜選択して追加することができる。他の構成としては、例えば、ビルドアップ層を挙げることができる。ビルドアップ層が層間接続用ランド部を有する場合、層間接続用ランド部は上述した「A.貫通電極基板 1.ランド部」の項で説明した特定の構造を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0081】
配線基板の製造方法は、上述した貫通電極基板および樹脂部を有する配線基板を製造することができれば特に限定されないが、後述する「C.配線基板の製造方法」の項で説明する方法であることが好ましい。
【0082】
本開示の配線基板は、例えば、半導体装置に用いることができる。また、配線基板が用いられる半導体装置の用途としては、例えば、携帯端末(携帯電話、スマートフォンおよびノート型パーソナルコンピュータ等)、情報処理装置(デスクトップ型パーソナルコンピュータ、サーバ、カーナビゲーション等)、家電等の用途が挙げられる。
【0083】
C.配線基板の製造方法
本開示の配線基板の製造方法は、上述した「B.配線基板」を製造する方法であって、上記貫通電極基板を準備する準備工程と、上記貫通電極基板の少なくとも一方の上記段差ランド部側の面側に、樹脂材を含むフィルムを配置し、上記樹脂組成物を流動させることにより、上記貫通電極の上記中空部に上記樹脂組成物を充填する充填工程と、充填された上記樹脂組成物を固化して樹脂部を形成する固化工程とを有する。
【0084】
本開示の配線基板の製造方法について図を用いて説明する。
図2(a)~(c)は本開示の配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。本開示の配線基板の製造方法においては、まず
図2(a)に示すように、貫通電極基板10を準備する(準備工程)。次に、貫通電極基板10の少なくとも一方の段差ランド部3側の面側に、樹脂層51を配置する。次いで、上記DFR51を大気圧で押圧するための加圧フィルム52を上記樹脂層51全体が覆われるように気密に配置することにより、樹脂材を含むフィルム50を配置する。そして、全体を加熱して樹脂層51が流動できる程度に加熱すると共に、加圧フィルム52内を減圧し、大気圧により樹脂層51を加圧する。これにより、樹脂層が溶融した樹脂組成物が貫通電極2の中空部h内に流入し樹脂組成物5aを充填する(充填工程)。次に、充填された樹脂組成物5aを固化して、
図2(c)に示すように、樹脂部5を形成する(固化工程)。以上の工程により、配線基板20を製造することができる。
【0085】
図7(a)~(c)は本開示の配線基板の製造方法の他の例を示す工程図である。
図7(a)に示すように、貫通電極基板10が一方の面側のみに段差ランド部3を有する場合は、DFR51を段差ランド部3側に配置し、樹脂組成物5aを流動させることにより、貫通電極2の中空部hに樹脂組成物5aを充填することができる。なお、
図7(a)~(c)において説明していない点については、既に説明した図面の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0086】
本開示によれば、上述した貫通電極基板を用いることにより、樹脂部におけるボイドの発生を抑制して配線基板を製造することができる。
【0087】
以下、本開示の配線基板の製造方法における各工程について説明する。
【0088】
1.準備工程
本開示における準備工程は、貫通電極基板を準備する工程である。準備工程において準備される貫通電極基板については、上述した「A.貫通電極基板」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0089】
2.充填工程
本開示における充填工程は、貫通電極基板の少なくとも一方のランド部側の面側に、樹脂組成物を含有する樹脂材を含むフィルムを配置し、樹脂組成物を流動させることにより、貫通電極の中空部に樹脂組成物を充填する工程である。
【0090】
充填工程においては、貫通電極基板の段差ランド部側の面側に、樹脂組成物を含有する樹脂材を含むフィルムが配置される。貫通電極基板がその両面側に段差ランド部を有する場合、貫通電極基板の両方の面側に樹脂材を含むフィルムを配置してもよく、一方の面側に樹脂材を含むフィルムを配置してもよいが、前者がより好ましい。貫通電極の中空部内に樹脂組成物を充填しやすいからである。
【0091】
樹脂材を含むフィルムは、典型的には、フィルム層と、上記フィルム層の一方の面側に配置され樹脂組成物を含有する樹脂層とを有する。本開示においては、加圧により樹脂組成物を充填することが好ましいことから、フィルム層としては、例えば、充填時の加圧に対する耐久性を有する加圧用フィルムであることが好ましい。また、加圧用フィルムとしては、後述する熱処理に対する耐熱性を有するフィルムであることがより好ましい。フィルム層としては一般的なフィルムの中から適宜選択して用いることができる。また、樹脂層(レジスト層)としては、貫通孔に充填可能な樹脂組成物を含有していれば特に限定されない。樹脂層に用いられる樹脂組成物としては、例えば、上述した「B.配線基板」の項で説明した樹脂部に用いられる樹脂を得ることが可能な樹脂組成物を挙げることができる。
【0092】
また、樹脂材を含むフィルムの配置方法としては、例えば、フィルム層(加圧用フィルム)と樹脂層とを別々に、貫通電極基板に配置してもよく、また例えば、フィルム層および樹脂層を予め積層させて樹脂材を含むフィルムを形成し、上記樹脂材を含むフィルムを貫通電極基板に配置してもよい。
【0093】
充填工程においては、樹脂組成物を流動させることにより、貫通電極の中空部に樹脂組成物を充填する。樹脂組成物の充填方法としては、貫通電極の中空部に樹脂を流動させることができれば特に限定されないが、例えば、樹脂組成物の流動性が高くなるように、DFRに対し加熱して、樹脂組成物を充填する方法であることが好ましい。貫通電極の中空部内に樹脂組成物を流れ込みやすくすることができるからである。
【0094】
上記加熱の温度は、樹脂組成物の種類等に応じて適宜調整することができ特に限定されないが、例えば、50℃以上150℃以下であってもよい。
【0095】
また、本開示においては、貫通電極基板に樹脂材を含むフィルムを配置する前に樹脂材を含むフィルムに対し熱処理を行ってもよく、貫通電極基板上に配置された樹脂材を含むフィルムに対し熱処理をおこなってもよい。熱処理方法については、一般的なドライフィルムレジストの熱処理方法と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0096】
また、樹脂組成物の充填方法としては、例えば、樹脂材を含むフィルムおよび貫通電極基板が積層された積層体を加圧処理することにより、樹脂組成物を充填する方法であることも好ましい。加圧処理を行うことで、貫通電極の中空部内に樹脂組成物を流れ込みやすくすることができる。加圧処理としては、例えば、真空引き処理を挙げることができる。真空引き処理は、例えば、ラミネート装置を用いて行うことができる。真空引き処理の条件については、特に限定されず、樹脂組成物の種類、支持基板の厚さ等に応じて適宜調整することができる。
【0097】
樹脂組成物の充填方法としては、上述した熱処理および加圧処理の両方を行うことにより、樹脂組成物を充填する方法であることが特に好ましい。貫通電極の中空部に樹脂組成物を良好に充填することができるからである。
【0098】
3.固化工程
本開示における固化工程は、充填された上記樹脂組成物を固化して樹脂部を形成する工程である。
【0099】
樹脂組成物を固化する方法としては、樹脂組成物の種類に応じて適宜選択され、特に限定されない。例えば、樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合、熱処理を行うことにより樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。熱処理温度については、樹脂組成物の種類に応じて適宜選択することができる。また、樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物である場合、電離放射線の照射処理を行うことにより樹脂組成物を硬化させる方法が挙げられる。ここで、「電離放射線」とは、電磁波または荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線または電子線が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。電離放射線の照射条件については、樹脂組成物の種類に応じて適宜選択することができる。
【0100】
固化工程で形成された樹脂部については、上述した「B.配線基板 2.樹脂部」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0101】
4.その他
本開示の配線基板の製造方法は、上述した充填工程を有していれば特に限定されず、他にも必要な工程を適宜選択して追加することができる。
【0102】
本開示の製造方法により製造される配線基板については、上述した「B.配線基板」の項で説明した内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0103】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0104】
(実施例1~3)
(貫通電極基板の作製)
図1(a)、(b)に示す貫通電極基板を作製した。
貫通孔(孔径:130μm)を有するガラス基板(厚さ400μm)を準備した。上記ガラス基板の表裏面および貫通孔の内壁に銅スパッタ処理を行い、その上に、ドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニスク社製、サンフォート AQ4038)を用いてレジストパターンを形成した。レジストパターンは、貫通孔を覆い、
図1(a)、(b)に示される第1平坦部および第2平坦部の領域に配置した。銅用エッチング液(メルテック社製、AD-331)にて露出部分の銅層を除去した。レジストパターンを50℃の水酸化ナトリウム水溶液にて剥離して除去した。
【0105】
次に、ドライフィルムレジストを用いて、貫通孔および第1平坦部の領域を覆い、第2平坦部が露出するようにレジストパターンを形成した。次に、銅用エッチング液(メルテック社製、AD-331)にて露出部分の銅層を薄膜化した。次に、レジストパターンを50℃の水酸化ナトリウム水溶液にて剥離して除去した。以上の工程により、貫通電極基板を得た。得られた貫通電極基板における、第1平坦部の幅w1および厚さt1、第2平坦部の幅w2および厚さt2は、表1に示す値とした。
【0106】
(配線基板の作製)
得られた貫通電極基板の表裏面に、樹脂材を含むフィルムとして、100um厚さのPETフィルムにポリイミド樹脂が20um形成されたフィルムを配置した。
次に、上記樹脂材を含むフィルムを配置した貫通電極基板を、80℃で加熱し、樹脂材を含むフィルムの樹脂組成物に流動性を付与した後、真空引き(500hPa)を行うことで、貫通孔内に樹脂組成物を流動させて充填した。その後、樹脂材を含むフィルムを除去した。樹脂組成物が充填された貫通電極基板を、窒素雰囲気下230℃、30分で熱処理をすることにより、樹脂組成物を固化して樹脂部を形成した。以上の手順により、配線基板を得た。
【0107】
[比較例]
図8(a)に示す平坦なランド部を有する貫通電極基板を作製した以外は、実施例1~3と同様にして配線基板を得た。なお、ランド部の平面視形状は、
図1(b)と同様に貫通孔の全周を囲む形状とした。
【0108】
貫通孔(孔径:130μm)を有するガラス基板(厚さ400μm)を準備した。上記ガラス基板の表裏面および貫通孔の内壁に銅スパッタ処理を行い、その上に、ドライフィルムレジスト(旭化成エレクトロニスク社製、サンフォート AQ4038)を用いてレジストパターンを形成した。レジストパターンは、貫通孔を覆い、
図1(a)、(b)に示されるランド部の領域に配置した。銅用エッチング液(メルテック社製、AD-331)にて露出部分の銅層を除去した。以上の手順により、貫通電極基板を得た。ランド部の幅、および厚さは表1中、w1およびt1の値とした。
【0109】
[評価]
得られた配線基板の一方の面側(表側)に水をたらし、真空吸着を実施した。配線基板の他方の面側(裏側)に水が回り込んでいなければボイド無しとし、水が回り込んでいればボイド有りと判定した。結果を表1に示す。
【0110】
【0111】
実施例1~3および比較例の結果から、段差ランド部を有することで、ボイドの発生を抑制できることが確認された。