(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057094
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】プログラムDNA駆動型自己集合RNAハイドロゲル
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240416BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240416BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240416BHJP
C07K 2/00 20060101ALN20240416BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240416BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20240416BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240416BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12P21/00 C
C12M1/00 A
C07K2/00
C07K14/47
C07K14/62
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024034499
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2022525268の分割
【原出願日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0136416
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0077146
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520448511
【氏名又は名称】プロジェニア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROGENEER INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100201020
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 信宏
(74)【代理人】
【識別番号】100140350
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 和宏
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ベランパッティ クリシュナモーシー、 スリビスヤ
(72)【発明者】
【氏名】ウム、 スン ホ
(72)【発明者】
【氏名】オウ、 スン
(72)【発明者】
【氏名】シン、 スン ウォン
(57)【要約】
【課題】本出願は、各モノマーユニットが1つ以上のG-四重鎖配列を含む、反復モノマーユニットを有する核酸ハイドロゲル(例えば、RNAハイドロゲル)の構築に関する方法及び組成物を提供する。
【解決手段】これらのG-四重鎖配列は、核酸コンカテマーが適切な条件下でハイドロゲルに自己集合するように、核酸コンカテマーを架橋する。いくつかの実施形態では、核酸コンカテマーの各モノマー単位は、目的のポリペプチドのコード配列を含み;核酸コンカテマーによって形成された核酸ハイドロゲルは、ポリペプチドを大量に発現するために使用することができる。いくつかの実施形態では、G-四重鎖配列を含む少なくとも2つのRNAコンカテマーが製造され、一方はスペーサーをさらに含み、他方は目的のポリペプチドをコードする配列をさらに含む。これら2つのRNAコンカテマーは組み合わされ、自己集合して、単一のワイドバンドRNAハイドロゲルを形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1のプロモーター配列、及び(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む、第1の環状DNAテンプレート。
【請求項2】
第1のプロモーター配列が相補的核酸配列にハイブリダイズして第1の部分二本鎖DNA分子を形成し、
第1の部分二本鎖DNA分子が二本鎖領域及び一本鎖領域を含み、
二本鎖領域が相補的核酸配列にハイブリダイズした第1のプロモーター配列を含み、
一本鎖領域が第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む、請求項1に記載の第1の環状DNAテンプレート。
【請求項3】
スペーサーをさらに含み、スペーサーがポリチミンを含む、請求項1に記載の第1の環状DNAテンプレート。
【請求項4】
目的のポリペプチドのコード配列をさらに含む、請求項1に記載の第1の環状DNAテンプレート。
【請求項5】
第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列が、ACCCTAACCCTA(配列番号:1)の配列を含む、請求項1に記載の第1の環状DNAテンプレート。
【請求項6】
第1のプロモーター配列が、T7プロモーター、T3プロモーター、Lacプロモーター、araBadプロモーター、Trpプロモーター、Tacプロモーター、及びSP6プロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載の第1の環状DNAテンプレート。
【請求項7】
複数のモノマーを含む第1の核酸コンカテマーであって、各モノマーが、(i)第1のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)ポリチミンを含むスペーサー又は目的のポリペプチドのコード配列を含む、第1の核酸コンカテマー。
【請求項8】
第1の核酸コンカテマーがRNAコンカテマーであり、第1のG-四重鎖モチーフがUAGGGUUAGGGU(配列番号:2)を含む、請求項7に記載の第1の核酸コンカテマー。
【請求項9】
第1の核酸コンカテマーがDNAコンカテマーであり、第1のG-四重鎖モチーフがTAGGGTTAGGGT(配列番号:20)を含む、請求項7に記載の第1の核酸コンカテマー。
【請求項10】
請求項7に記載の第1の核酸コンカテマーを含む、核酸ハイドロゲル。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸ハイドロゲル、リボソーム、及び/又はアミノ酸の混合物を含む、タンパク質発現系。
【請求項12】
第1の環状DNAテンプレート及び第2の環状DNAテンプレートを含む組成物であって、
第1の環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含み、
第2の環状DNAテンプレートは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含み、
第1及び第2の環状DNAテンプレートの総量に対する第1の環状DNAテンプレートのモル分率は、25%~75%の範囲である、組成物。
【請求項13】
(1)第1のプロモーター配列が相補的核酸配列にハイブリダイズして第1の部分二本鎖DNA分子を形成し、
第1の部分二本鎖DNA分子が二本鎖領域及び一本鎖領域を含み、
第1の部分二本鎖DNA分子の二本鎖領域が、相補的核酸配列にハイブリダイズした第1のプロモーター配列を含み、
第1の部分二本鎖DNA分子の一本鎖領域が、第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含み、
(2)第2のプロモーター配列が相補的核酸配列にハイブリダイズして第2の部分二本鎖DNA分子を形成し、
第2の部分二本鎖DNA分子が二本鎖領域及び一本鎖領域を含み、
第2の部分二本鎖DNA分子の二本鎖領域が、相補的核酸配列にハイブリダイズした第2のプロモーター配列を含み、
第2の部分二本鎖DNA分子の一本鎖領域が、第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
第1のG-四重鎖モチーフと第2のG-四重鎖モチーフが同じヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列が、同じヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列が、異なるヌクレオチド配列を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
スペーサーが、30~120個のチミンを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】
コード配列が、20~300ヌクレオチドの範囲内である長さを有する、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
コード配列とスペーサーの長さ比が、1:0.2~1:2の範囲内である、請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
目的のポリペプチドが、インスリン、トランス活性化転写活性化因子(TAT)、HiBiT、及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項21】
1種以上のRNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドの混合物、及び/又はバッファーをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項22】
鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼをさらに含み、それによりローリングサークル増幅を行うことが可能である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
環状DNAテンプレート及び二本鎖DNAコンストラクトを含む組成物であって、
環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含み、
二本鎖DNAコンストラクトは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、組成物。
【請求項24】
第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを含む核酸ハイドロゲルであって、
第1の核酸コンカテマーは、請求項12に記載の組成物の第1の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅によって生成され、
第2の核酸コンカテマーは、請求項12に記載の組成物の第2の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅によって生成される、核酸ハイドロゲル。
【請求項25】
第1のRNA分子及び第2のRNA分子を含む核酸ハイドロゲルであって、
第1のRNA分子は、(i)第1のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)ポリアデニンを含むスペーサーを含み、
第2のRNA分子は、(i)第2のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、核酸ハイドロゲル。
【請求項26】
第1のRNA分子が複数のモノマーを含むRNAコンカテマーであって、各モノマーが、第1のG-四重鎖モチーフ、及び、ポリアデニンを含むスペーサー又は目的のポリペプチドのコード配列を含む、請求項25の核酸ハイドロゲル。
【請求項27】
請求項24に記載の核酸ハイドロゲル、リボソーム、及び/又はアミノ酸の混合物を含む、タンパク質発現系。
【請求項28】
目的のポリペプチドを発現させるためのキットであって、該キットは、
(1)第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることによって第1の環状DNAテンプレートを形成することができる第1のDNA分子であって、第1の環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含む、第1のDNA分子、
(2)第1のプロモーター配列に相補的な第1のスプリントオリゴヌクレオチドであって、
第1のDNAテンプレートは第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして環化し、第1の環状DNAテンプレートを形成することができる、第1のスプリントオリゴヌクレオチド、及び/又は
(3)第2のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして第2の環状DNAテンプレートを形成することができる第2のDNA分子であって、第2の環状DNAテンプレートは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、第2のDNA分子、
(4)第2のプロモーター配列に相補的な第2のスプリントオリゴヌクレオチドであって、
第2のDNAテンプレートは、第2のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして環化し、第2の環状DNAテンプレートを形成することができる、第2のスプリントオリゴヌクレオチド
を含む、キット。
【請求項29】
請求項23に記載の組成物を含む、目的のポリペプチドを発現させるためのキット。
【請求項30】
第1のG四重鎖モチーフと第2のG-四重鎖モチーフが、同じ又は異なる配列を有する、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列が、同一又は異なる、請求項28に記載のキット。
【請求項32】
スペーサーが、30~120個のチミンを含む、請求項28に記載のキット。
【請求項33】
コード配列が、20~300ヌクレオチドの範囲にある長さを有する、請求項28に記載のキット。
【請求項34】
コード配列とスペーサーの長さ比が、1:0.2~1:2の範囲内である、請求項28に記載のキット。
【請求項35】
目的のポリペプチドが、インスリン、HiBiT、トランス活性化転写活性化因子(TAT)、及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される、請求項28に記載のキット。
【請求項36】
1種以上のDNAリガーゼ、RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドの混合物、及び/又は1種以上のバッファーをさらに含む、請求項28に記載のキット。
【請求項37】
鎖置換活性を有し、それによりローリングサークル増幅を行うことができる、DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
核酸ハイドロゲルを調製する方法であって、
(1)(i)第1のプロモーター配列、及び(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む第1の環状DNAテンプレートを提供する工程;及び、
(2)第1の環状テンプレートに対してローリングサークル転写又は増幅を行って第1の核酸コンカテマーを生成する工程を含み、
第1の核酸コンカテマーが核酸ハイドロゲルを形成する、方法。
【請求項39】
第1の環状DNAテンプレートが、ポリチミンを含むスペーサーをさらに含み、
工程(1)が、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフ、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、第2の環状DNAテンプレートを提供することをさらに含み、
工程(2)が、第2の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅を行って第2の核酸コンカテマーを生成することをさらに含み、第1及び第2の核酸コンカテマーが核酸ハイドロゲルを形成する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
無細胞合成系でタンパク質を製造する方法であって、該方法が、
(i)請求項10又は24の核酸ハイドロゲルを、目的のポリペプチドの翻訳を可能にする条件下で無細胞合成系と組み合わせることを含む、方法。
【請求項41】
無細胞合成系が、リボソーム及び/又はアミノ酸の混合物を含む、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年10月30日に出願された韓国出願第10-2019-0136416号、及び2020年6月24日に出願された韓国出願第10-2020-0077146号の優先権と利益を主張し、これらの各々は全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、無細胞系における核酸又はポリペプチドの製造に関する。
【背景技術】
【0003】
RNAは現在、RNA干渉の使用により、変異した標的を、タンパク質からゲノム内のRNAに変える治療用途に使用されている。RNA部位は、遺伝的ソースコードと触媒レパートリーの両方として機能するユニークな能力により、調節タンパク質産生のための行動設計図としての用途を超えて、優れた薬物ターゲットとなる。しかし、RNAは化学的に不安定であり、生産設備の収量が少ないため、実用化はかなり限定されている。
【0004】
ハイドロゲルは、水性媒体をホストする超分子集合体であり、液体の溶質輸送特性と固体の機械的特性の両方を有している。ハイドロゲルは、高い含水率、良好な構造的特徴、及び生体適合性から、特に生物医学的な用途に有用である。核酸ハイドロゲルは一般に知られているが、従来の核酸ハイドロゲルの製造方法は、典型的には共有結合による架橋など複雑な手順を必要とする。そのため、これらの技術では、商業的生産に必要とされる十分な収量でRNAハイドロゲルを製造することができなかった。また、現在のRNAハイドロゲルの安定性、機械的性能、機能的特性も十分ではない。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書では、(i)プロモーター配列、及び(ii)第1のG-四重鎖(G-quadruplex)モチーフに相補的な配列を含む環状DNAテンプレートが開示される。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、相補的核酸配列にハイブリダイズして、第1の部分二本鎖DNA分子を形成し;第1の部分二本鎖DNA分子は、二本鎖領域と一本鎖領域を含み;二本鎖領域は、相補的核酸配列にハイブリダイズした第1のプロモーター配列を含み;一本鎖領域は、第1のG-四重鎖モチーフに相補な配列を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、環状DNAテンプレートは、スペーサーをさらに含み、スペーサーは、ポリチミン(すなわち、2つ以上のチミン)を含む。いくつかの実施形態では、第1の環状DNAテンプレートは、目的のポリペプチドのコード配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列は、ACCCTAACCCTA(配列番号:1)の配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター配列は、T7プロモーター、T3プロモーター、Lacプロモーター、araBadプロモーター、Trpプロモーター、Tacプロモーター、及びSP6プロモーターからなる群から選択される。
【0008】
また、本明細書では、複数のモノマーを含む核酸コンカテマーであって、該核酸コンカテマーは、各モノマーが、(i)G-四重鎖モチーフ、及び(ii)ポリチミンを含むスペーサー又は目的のポリペプチドのコード配列を含む核酸コンカテマーが提供される。いくつかの実施形態では、核酸コンカテマーはRNAコンカテマーであり、G-四重鎖モチーフはUAGGGUUAGGGU(配列番号:2)を含む。いくつかの実施形態では、G-四重鎖モチーフは、TAGGGTTAGGGT(配列番号:20)を含む。
【0009】
また、本明細書では、上記実施形態のいずれかの核酸コンカテマーを含む核酸ハイドロゲルが提供される。
【0010】
また、本明細書では、上記に開示された核酸ハイドロゲル、リボソーム、及び/又はアミノ酸の混合物を含むタンパク質発現系が提供される。
【0011】
また、本明細書では、第1の環状DNAテンプレート及び第2の環状DNAテンプレートを含む組成物であって、第1の環状DNAテンプレートが、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含み、第2の環状DNAテンプレートが、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含み、第1及び第2の環状DNAテンプレートの総量に対する第1の環状DNAテンプレートのモル分率は、25%から75%の範囲である、組成物が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1のプロモーター配列は、相補的核酸配列にハイブリダイズして、第1の部分二本鎖DNA分子を形成する。第1の部分二本鎖DNA分子は、二本鎖領域と一本鎖領域を含む。第1の部分二本鎖DNA分子の二本鎖領域は、相補的核酸配列にハイブリダイズした第1のプロモーター配列を含み、第1の部分二本鎖DNA分子の一本鎖領域は、第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2のプロモーター配列は、相補的核酸配列にハイブリダイズして、第2の部分二本鎖DNA分子を形成する。第2の部分二本鎖DNA分子は、二本鎖領域と一本鎖領域を含む。第2の部分二本鎖DNA分子の二本鎖領域は、相補的核酸配列にハイブリダイズした第2のプロモーター配列を含み、第2の部分二本鎖DNA分子の一本鎖領域は、第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1のG-四重鎖モチーフと第2のG-四重鎖モチーフは、同じヌクレオチド配列を含む。第1のプロモーター配列及び第2のプロモーター配列は、同じヌクレオチド配列又は異なるヌクレオチド配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、スペーサーは、30~120個のチミン(配列番号:32)を含む。いくつかの実施形態では、コード配列は、20~300ヌクレオチドの範囲内である長さを有する。いくつかの実施形態では、コード配列とスペーサーの長さ比は、1:0.2~1:2の範囲内である。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドは、インスリン、転写活性化因子(TAT)、HiBiT、及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される。
【0015】
上述の実施形態のいずれかの組成物は、1種以上のRNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドの混合物、及び/又はバッファーをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、鎖置換活性を有し、それにより、ローリングサークル増幅を行うことが可能なDNAポリメラーゼをさらに含む。
【0016】
また、本明細書では、環状DNAテンプレート及び二本鎖DNAコンストラクトを含む組成物が提供され、環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含む。二本鎖DNAコンストラクトは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む。
【0017】
また、本明細書では、第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを含む核酸ハイドロゲルが提供される。第1の核酸コンカテマーは、本開示で提供される第1の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅によって製造され、第2の核酸コンカテマーは、本開示で提供される第2の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅によって製造される。
【0018】
また、本明細書では、第1のRNA分子及び第2のRNA分子を含む核酸ハイドロゲルが提供され、第1のRNA分子は、(i)第1のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)ポリアデニン(すなわち、2つ以上のアデニン)を含むスペーサーを含み、第2のRNA分子は、(i)第2のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)目的のポリペプチドのコード配列を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のRNA分子は、複数のモノマーを含むRNAコンカテマーであり、各モノマーは、第1のG-四重鎖モチーフ、及び、ポリアデニンを含むスペーサー又は目的のポリペプチドのコード配列を含む。
【0020】
また、本明細書では、本明細書に開示される任意の核酸ハイドロゲル、リボソーム、及び/又はアミノ酸の混合物を含むタンパク質発現系も開示される。
【0021】
また、本明細書では、目的のポリペプチドを発現させるためのキットが開示され、該キットは、(1)第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることにより第1の環状DNAテンプレートを形成できる第1のDNA分子であって、第1の環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含む。第1のDNA分子、(2)第1のプロモーター配列に相補的である第1のスプリントオリゴヌクレオチドであって、第1のDNAテンプレートは第1のスプリントオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして環化し、第1の環状のDNAテンプレートを形成することができる、第1のスプリントオリゴヌクレオチド、及び/又は、(3)第2のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることにより第2の環状DNAテンプレートを形成することができる第2のDNA分子であって、第2の環状DNAテンプレートが、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、第2のDNA分子、及び(4)第2のプロモーター配列に相補的な第2のスプリントオリゴヌクレオチドであって、第2のDNAテンプレートは第2のスプリントオリゴヌクレオチドとハイブリダイズして環化し、第2の環状DNAテンプレートを形成することができる、第2のスプリントオリゴヌクレオチド、を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に開示される第1の環状DNAテンプレート及び第2の環状DNAテンプレートを含む任意の組成物を含む。いくつかの実施形態では、第1のG-四重鎖モチーフ及び第2のG-四重鎖モチーフは、同じ又は異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、第1のプロモーター配列及び第2のプロモーター配列は、同一又は異なる配列を有する。いくつかの実施形態では、スペーサーは、30~120個のチミン(配列番号:32)を含む。いくつかの実施形態では、コード配列は、20~300ヌクレオチドの範囲にある長さを有する。いくつかの実施形態では、コード配列とスペーサーの長さ比は、1:0.2~1:2の範囲内である。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドは、インスリン、HiBiT、トランス活性化転写活性化因子(TAT)、及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、キットは、1種以上のDNAリガーゼ、RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドの混合物、及び/又は1種以上のバッファーをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼをさらに含み、したがって、ローリングサークル増幅を行うことができる。
【0023】
また、本明細書では、(1)(i)第1のプロモーター配列、及び(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む第1の環状DNAテンプレートを提供すること;及び、(2)第1の環状テンプレートに対してローリングサークル転写又は増幅を行って第1の核酸コンカテマーを生成し、第1の核酸コンカテマーが核酸ハイドロゲルを形成すること、を含む、核酸ハイドロゲルの調製方法が開示される。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の環状DNAテンプレートは、ポリチミンを含むスペーサーをさらに含み、ステップ(1)は、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフ、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む第2の環状DNAテンプレートを提供することをさらに含み、ステップ(2)は、第2の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅を行って、第2の核酸コンカテマーを生成することをさらに含み、ここで、第1及び第2の核酸コンカテマーが核酸ハイドロゲルを形成する。
【0025】
また、本明細書では、無細胞合成系でタンパク質を製造する方法が開示され、該方法は、本明細書に開示された核酸ハイドロゲルのいずれかを、目的のポリペプチドの翻訳を可能にする条件下で無細胞合成系と組み合わせることを含む。いくつかの実施形態では、無細胞合成系は、リボソーム及び/又はアミノ酸の混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1A~1Fは、自己集合したローリングサークル転写(「RCT」)生成物が固有の機能性を有するRNAG-四重鎖(RG4)ゲルを形成することを示す。
図1Aは、RNA部位がRCTによってRG4を形成した自己集合プロセスの概略的なフレームワークを示す。RCTのテンプレートとして、G-四重鎖(「G4」)モチーフに相補的な配列と、ユーザーに所望の用途に適した機能的配列を含む環状DNAを用いた。架橋領域と機能性配列の相対的な位置や配列は異なっていてもよい。反復したG-四重鎖モチーフを有するRCTから合成されたタンデムに繰り返される長い一本鎖RNA(RNAコンカテマー)は、3次元ハイドロゲル集合体の理想的な足場として機能する。
図1Bは、ゲル化時間に対するRCT生成物を図示したものである(左から右に向けて、RGxコンカテマーは0,48時間、RG4コンカテマーは0,3,6,9,12,24,48時間)。白い矢印は、RCT生成物の位置を示す(RG4ハイドロゲルではゲル相、RGx溶液では溶液相)。
図1Cは、様々な多角形モールドでパターン化したRG4ハイドロゲルを示す。スケールバーは10mmを示す。
図1Dは、3次元円筒形モールドで作製したRG4ハイドロゲルの側面図であり、スケールバーは5mmを示す。
図1Eは、孔及び反復微細構造を示すためにSYBRグリーンIIで染色したRG4ハイドロゲルの共焦点顕微鏡画像(スケールバー:60μm)である。
図1Fは、凍結乾燥したRG4ハイドロゲルのFE-SEM画像であり、スケールバーは100μmである。
図1Gは、
図1Fの一部を拡大した図であり、スケールバーは20μmを示す。
【
図2】
図2A~2Cは、RG4の分光学的な検証及び同定を示す。
図2Aは、様々な塩条件下でのRCT生成物としてのG4及びスクランブルG4モチーフ(非G4)のハーフユニットを含むsG4s及びsGxsの円二色性(CD)分析である。100mMのKCl及びNaClの条件に供されたsG4の262nmの明確な正のピークと240nmの溝は、ハイドロゲルの形成に関連する現象として知られる二次構造の変化を示すが、sGx、「塩なし」、100mM MgCl2では変化が見られなかった。
図2Bは、sG4及びsGxと相互作用したときのチオフラビンT(ThT)の蛍光スペクトルを示し、ThTプローブがRG4sに特異的に結合する(挿入図)ことを示す蛍光強度の顕著な増強が観察された。t検定において統計的P値0.001で、ThTに対する特異性の低いsGxに比べてsG4では7.1倍増強した。
図2Cは、pH5.4でヘミンと複合体化したときのABTS
2-からABTS
・-への酸化(挿入図)についてのRG4及びRGxによって促進された酵素活性の比較を示す。RG4とRGxはいずれもヘミンのペルオキシダーゼ活性を増加させたが、これは、ヘミンとRG4及びRGxの自己封入(self-enclosed)保存モジュールが相互作用したためである可能性がある。しかし、RG4ゲルと複合化したヘミンのペルオキシダーゼ活性はより速く増加した。
【
図3A】
図3A~3Fは、RG4ゲルの物理的特性の解析を示す。
図3Aは、万能引張試験機で圧縮試験に供した、RG4ゲル及びRGxの応力-対-ひずみ曲線を示す。
【
図3B】
図3Bは、回転角周波数50.12rad/sでレオロジー解析を行った、作製時間に対するRG4ゲル及びRGxの貯蔵弾性率を示す。
【
図3C】
図3Cは、調製したばかりのRG4ハイドロゲルと再水和したRG4ハイドロゲルの保水及び吸水能をそれぞれ示す。
【
図3D】
図3Dは、ハイドロゲルへのThT拡散の実験的及び理論的評価を示す。左から右への6つの画像は、260秒間隔の共焦点顕微鏡画像である。ThT及びリボソームに関する理論的仮定1及び2(本開示では理論的推定1及び2とも呼ぶ)を、それらの拡散速度を推定するために検証した。
【
図3E-F】
図3Eは、RG4の細孔径を推定するためのAFM解析による顕微鏡画像である。
図3Fは、多孔質の性質を明確に表す拡大AFM画像である。主図と拡大図のスケールバーは、それぞれ200nmと50nmを示す。
【
図4A-C】
図4A~4Fは、RNAseに富むFBS血清中におけるRG4ハイドロゲルの安定性を示す。
図4Aは、安定性試験について血清中のRCT生成物を図示したものである。RG4ネットワーク(下部から)及び上清(RG4ハイドロゲルの解離生成物)中のRNA量の定量的な推定。FBS中でのアニール後の転写産物のばく露時間ベースの分解を、様々な時間で、RG4上清(
図4B)及びRG4(
図4C)のゲル画像のバンド強度から分析した。矢印は、RG4の分解の開始を示す。
【
図4D-F】RNAの分解は、48時間におけるRNA量の減少によって示されるRG4上清について観察された(
図4D)。
図4Eは、血清に起因するRNA分子の半減期がバンド強度を用いて推定されたことを示し、RGxはRG4よりも分解が速かった。
図4Fは、RG4ハイドロゲルとRGxの時間ベースの定量的ゲル電気泳動評価を示す。RG4におけるG4形成は、RNA合成時間及び合成されたRNAの総量を伸長させることが予想された。
【
図5A】
図5A~5Dは、タンパク質発現系と発現されたタンパク質の翻訳収量を図示したものである。
図5Aは、RG4ハイドロゲルテンプレートからのタンパク質発現プロセスの描写である。切断したRG4ハイドロゲルを、リボソームを含む無細胞タンパク質発現ライセートミックスに添加した。
【
図5B-D】
図5Bは、DNA及びRNAテンプレートから発現したHiBiTペプチドの相対量を、生成した相対発光(RL)シグナルで特徴付けたものを示す。
*RNAは、切断したW-RG4ハイドロゲルを示す。アニールしたRG4は、そのハイドロゲル性を失ったため、より低い収量を示した。
図5Cは、切断及び尿素処理した翻訳産物のRLによって特徴付けられる、種々のテンプレートを用いて発現したTAT及びインスリンの相対量を示す。
図5Dは、HiBiT発現タンパク質の小麦胚芽無細胞発現系を用いた非連結翻訳を、fRNAとW-RG4ハイドロゲルとの比較で示したものである。W-RG4 150は、翻訳反応混合物の体積が150μlであることを表し、8倍の収量増加が観察された。
【
図5E】
図5Eは、プラスミドクローニング技術を用いたワイドバンド(wideband)RG4ハイドロゲル(W-RG4)の模式図である。配列番号:7の配列を含むスペーサーテンプレートから転写された60T RG4とベクターpK7-レトリズマブからのRNA転写物との統合によりW-RG4ハイドロゲルが生成される。
図5Eは、配列番号:34として「60T」を開示している。
【
図5F-G】
図5Fは、レトリズマブに対応する検出されたバンドの強度を定量化した結果を示す。
図5Gは、60T RG4のスペーサーテンプレートの濃度を様々に変えて角括弧で示した、SDS-PAGEによりレトリズマブタンパク質の発現を解析した結果を示す。
【
図5H】
図5Hは、in vitro翻訳プロセスにおける相分離したRNA液滴の模式図である。RNA及びRNA結合タンパク質(RBP)は、リボ核タンパク質(RNP)液滴を構成するin vivoの重要な成分である。これらのRNPは、細胞が時空間的・機能的に制御された方法で自身を組織化し得る方法を模倣している。細胞内RNPシステムに類似したRNAハイドロゲルは、タンパク質成分の拡散を促進し、それによりタンパク質効率を高めることができる。
【
図5I-J】
図5I及び5Jは、ライセート包埋W-RG4ゲルからのHiBiTの無細胞発現終了の結果を示す。
図5Iは、様々なライセート包埋W-RG4とライセートフリーW-RG4からのHiBiT発現を、異なるテンプレート調製条件下で比較したものである。150T W-RG4のスペーサテンプレートと組み合わせたHiBiTテンプレートを用いて、包埋ライセートの存在下で生成したW-RG4ハイドロゲルは、3時間の転写反応(ゲル形成)に続く2時間の翻訳後に最高のタンパク質発現を示した。この発現レベルは、ライセートフリーW-RG4の発現量よりも高かった。
図5Iは、配列番号:33として「30T」、配列番号:35として「90T」、配列番号:37として「150T」を開示している。
図5Jは、ライセートフリーW-RG4ハイドロゲルとライセート包埋W-RG4ハイドロゲルからのHiBiT発現の結果を示す。ライセート包埋ハイドロゲル(L-ゲル)は、ライセート成分を翻訳反応混合物にさらに添加することなく、HiBiTを発現させることに成功した。翻訳反応液に添加した追加のライセートは、ライセート包埋ハイドロゲルのHiBiTの発現をさらに促進した(L-L-ゲル)。
【
図6A-B】
図6A~6Dは、DNA RCTテンプレートの作製とRNA生成物の転写を示す。
図6Aは、DNAローリングサークル転写(RCT)テンプレートの作製後にRNA生成物の転写を行う模式図である。T7プロモータープライマーの相補鎖、G四重鎖架橋配列、及びポリTスペーサーを含む前駆体テンプレートをアニールしてT7プロモーター領域で部分二本鎖を形成した。ライゲーションに成功したテンプレートは、T7プロモーターによって開始されるG-四重鎖(RG4)を有する長い反復RNA鎖の転写に参加することができた。
図6Bは、30T RG4、30T RGx、及び種々のチミンスペーサー(3T、10T(配列番号:38)、30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、90T(配列番号:35)、及び120T(配列番号:36))についての未処理(bare)の、アニールした、及びライゲーションした前駆体テンプレートのPAGE分析を示す。巨大なネットワークとして、RG4ゲルは移動せず、一方、非ゲル化RGx生成物は僅かに移動した。バンド移動の違いにより、作製の各ステップにおいて異なるスペーサーを有するテンプレートの形成に成功したことが確認できた。塗りつぶされた菱形(◆)は、サンプルの作製に成功したことを示す。3T及び10T(配列番号:38)のスペーサー長では、中空のひし形(◇)で示されるように、環状DNAテンプレートを合成できなかったが、30T(配列番号:33)以上のスペーサー長では、バンド移動に大きな差を示した。3Tは他のバンドから遠く離れており、これは長い線状DNAテンプレートを示している可能性があり、そのRNA産物は穏やかにゲル化しただけであった。
【
図6C-D】
図6Cは、バイアル倒立試験により評価した、様々な長さのスペーサーを有するRG4のゲル化を示す。スペーサー長が3T及び10T(配列番号:38)のRG4は、立体長が線状DNAを環状化させるのに不十分であったためゲル化しなかった(下向き矢印で示す)が、スペーサー長が30T(配列番号:33)以上では、環状テンプレートを形成してゲル化(上向き矢印で示す)するのに十分な長さであった。
図6Dは、様々なスペーサー長を有するテンプレートに由来する転写中の総RNAの濃度を示す。3T及び10Tについては環状DNAテンプレートは作製されなかったが、3TについてのRNA転写収量は、環状テンプレートからの転写収量と同じくらい多かった。
図6A~6Dでは、配列番号:38として「10T」、配列番号:33として「30T」、配列番号:34として「60T」、配列番号:35として「90T」、及び配列番号:36として「120T」を開示している。
【
図7】
図7は、RG4ゲルの回復試験の結果を示す。回復試験は、ゲル化プロセスが可逆的であるかどうかを調べるために実施した。まず、RG4ゲルを95℃で2時間変性させた。次に、変性したRG4ゲルを4℃、25℃、又は37℃で48時間アニールすると、RG4ゲルは自己集合ゲル特性を失っていた。上向きの矢印は形成されたハイドロゲルを、下向きの矢印は熱処理後にゲル状態に戻ることができなかった液体を示す。
【
図8A】
図8は、表面トポロジー特性評価のためのRG4ゲルのAFM画像を示す。
図8Aは、間欠接触モードでトポロジー画像を得るために、マイカ基板上に作製したRG4ゲルの表面を走査しているAFMチップを模式的に示す。カンチレバーの先端に保持された微小探針が目的の表面を走査することで、振動振幅の減衰を引き起こし、それによってトポグラフィー画像を生成する。
【
図8B-E】
図8B~
図8Eは、それぞれ30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、90T(配列番号:35)、及び120T(配列番号:36)の異なるスペーサー長を有するRNA分子がRCTプロセス中に自己集合し、孔径に形態的差異を示している、AFM画像を示す。ゲルはスペーサーが長くなるにつれて、より柔軟になり、細孔サイズもスペーサーの長さに応じて増大した。スケールバーは200nmを示す。
【
図8F-H】
図8F~
図8Hは、ImageJソフトウェア及びAFM画像を用いて分析した、それぞれ30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、及び120T(配列番号:36)を有するRG4ゲルの孔径(面積)分布を示すヒストグラムを示す。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、RG4ゲルの共焦点顕微鏡画像を示す。
図9Aは、SYBR green IIをロードしたRG4ゲルの共焦点顕微鏡画像を示す。矢印で示すように、サンプルはマイクロメータースケールで作製した(図に記載されている短幅と長幅はそれぞれ69.1μmと128.4μmである)。
図9Bは、センチメートルスケールで作製したRG4ゲルの3次元共焦点顕微鏡画像を示す。周期的に相互接続された多孔質構造が明らかであり、ハイドロゲルの形成を示す。スケールバーは50μmを示す。
【
図10】
図10は、RGxの電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)画像を示す。RGxは、孔のない平坦で欠陥の全くない形態を有し、ハイドロゲルを形成できなかった。スケールバーは100μmを示す。
【
図11】
図11A~11Fは、様々な塩条件下での合成sG4及びsGxの円二色性(CD)分析を示す。G-四重鎖部分(sG4)及びスクランブルG-四重鎖部分(sGx)を有する合成RNAアナログからの用量依存CDスペクトルである。塩濃度(KCl、NaCl、及びMgCl
2、それぞれ
図11A~11Cのとおり)に対してsG4の楕円率スペクトル及びRNAセグメントの安定性に変化が生じることが予想された。sG4については、KCl及びNaClの存在下では、264nmに顕著なピークが、240nmに谷が観察されたが、MgCl
2では、観察されなかった。一価の陽イオン、特にK
+とNa+は、2つのグアニン四連子(tetrad)の間の空洞に特異的に適合し、複合体形成に適したイオン半径によってG-四重鎖構造を安定化させる。塩溶液の濃度をKCl、NaCl、又はMgCl
2 0.1mMから100mMまで変化させることにより、sG4では、260nmのピークはKClとNaClでは濃度依存的に増加したが、MgCl
2では意味のある変化は観察されなかった。スクランブル非ゲル化sGxオリゴヌクレオチドとカチオンの間の構造活性関係は、
図11D~11Fに示されるように、言及された塩条件と塩なしの条件の間で二次構造プロファイルに差異は生じなかった。
【
図12】
図12A~12Hは、G-四重鎖を有する、及び有しないRCT生成物におけるヘミンのペルオキシダーゼ様活性の最適化を示す。H
2O
2の存在下でのABTS基質の酸化触媒のためのヘミンとのG-四重鎖相互作用の模式図である。触媒反応におけるRCT生成物の時間及びpH依存性キネティクスをpH4.4からpH7.9の範囲で試験した。ABTS
2-からABTS
・-への酸化反応におけるヘミンとRG4ゲル複合体との間の速度論的挙動は、λ=395nmでの吸光度の増加によって特徴づけられた。RG4ゲルは、酵素反応がpHに対して耐性があり、形成された生成物の安定性と酵素反応の両方を補助するため、pH4.4からpH7.9の範囲でペルオキシダーゼ活性の改善を示した。RGx生成物も同様の傾向を示したが、ペルオキシダーゼ活性の増加はRG4よりも緩やかであり、ヘミンと自己封入モジュールとの間にわずかな相互作用がある可能性が示された。RG4とRGxは、pH5.4からpH7.9の範囲の反応バッファーで有効な酵素活性を示したが、遊離ヘミンでは、RCT複合体中のヘミンの脱プロトン化のため、及び、塩基性環境ではH
2O
2に対して脆弱なため、活性が認められないか無視できる程度であり、低活性となった(43、44)。したがって、ヘミン-RG4ゲルは、RGxと比較してペルオキシダーゼ活性が増強されたが、遊離ヘミンはpH>4.9での活性がなくなった。
【
図13】
図13A~13Dは、AFM画像により、ペルオキシダーゼ活性中のRCT生成物の自己ビオチン化について調査した結果を示す。H
2O
2とビオチンチラミドの存在下でヘミンによって触媒されるG-四重鎖を、自己ビオチン化について調査した(45)。RG4とRGxのビオチン化部位を特定するために、G4領域の自己ビオチン化部位に選択的に結合するストレプトアビジンを添加した。触媒試薬による処理前と処理後のAFM画像を撮影し、その断面高さを評価した。ビオチン化部位へのストレプトアビジンの結合を確認するため,未処理及び処理済みのRCT生成物におけるストレプトアビジン結合による断面高さの違い(輝点として識別される)を測定した。未処理及び処理済みのRG4の平均ステップ高さ変動は、それぞれ6.6nmと22.9nmであった。ストレプトアビジンの結合は均一ではなかったが、G4付近にストレプトアビジンが存在することが形態から確認された。RGxの表面形態は、孔がなく、未処理及び処理済みのサンプルで30~40nmの高さ変動を示した。このことから、自己ビオチン化やストレプトアビジン結合が起こらず、G-四重鎖が存在しないことが確認された。スケールバーは200nmを示す。
【
図14】
図14A~14Dは、RG4ゲル及びRGx生成物の弾性率の測定結果を示す。
図14Aは、ナノメートルスケールでインデンテーション深さを測定するAFMインデンテーション法を用いて得られたフォースカーブである。弾性率は、ヘルツのフィッティングモデルを用いて、そのベストフィット領域で求めた。
図14Bは、RCT生成物のヤング率をゲル化時間に対してフォースモードで求めたことを示す。0、3、6時間では、弾性率はゼロに近く、これは、6時間後にゲル化は始まらないが、弾性率はゲル特性の前兆として増加した。適用された力に対する耐性は時間依存的であることがわかった。RGx生成物の弾性率は、試験したすべての時間間隔にわたってゼロのままであった。
図14C及び
図14Dは、材料の弾性部分と固体状態の挙動を表す貯蔵弾性率、及びサンプルの粘度と液体状態の挙動を表す損失弾性率をそれぞれ示す(46)。RG4ゲルは非ニュートン的な非線形挙動を示し、様々な作製時間と広範囲の角周波数で貯蔵弾性率と損失弾性率の両方に凹型パターンが見られた。RG4ゲルは大きな貯蔵弾性率と低い損失弾性率を示し、これは固体様の性質を示す。両弾性率の緩やかな増加が観察され、作製後12時間から応答が大きく減少した。RGxの弾性率はゼロに近く、これは粘性であることを示す。
【
図15】
図15は、RG4ハイドロゲル中のG-四重鎖の定量と密度計算を示す。Qubit(商標)RNA BRアッセイキットに含まれるRNA特異的蛍光色素を用いて、総RNAの濃度を測定した。RCTサイクルの1単位の濃度は、総RNAとG-四重鎖の濃度に基づいて計算した。拡散性を計算するために、RG4ハイドロゲル中のRNA量に基づいてG-四重鎖構造間の平均距離を計算した。3次元分布におけるG-四重鎖間の推定距離は21.11nmであった。
【
図16】
図16A及び16Bは、血清中のRCT生成物の安定性を描く代表的な電気泳動図である。異なるばく露時間におけるRNaseに富むウシ胎児血清(FBS)に対するRNAハイドロゲルの応答性(存在又は分解)を、RG4ハイドロゲルの安定性を評価するためにゲル電気泳動を使用して実証した。
図16Aは、FBS環境におけるアニール後の転写産物の反応時間ベースの安定性を、アガロースゲル電気泳動によって定量的に評価したことを示す。48時間でのRNA量の減少によって示されるように、RG4とRGxの両方でRNAの分解が観察された。RG4ではRNA分子の豊富さが、RGxでは不安定さが観察された。
図16Bは、RGxを血清に長時間ばく露し、48時間分解させたことを示す。矢印は、RGxの分解の開始を示す。
【
図17A-B】
図17A~17Dは、HiBiTコードRCT生成物の作製結果を示す。
図17Aは、ガラスバイアル内で作製したHiBiTコードRG4(H-RG4)及びRGx(H-RGx)生成物を比較したものであり、倒立させてハイドロゲル化を確認した。30Tスペーサー(配列番号:33)及びG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含むDNAテンプレートから転写されたRNAコンカテマーがハイドロゲル化して30T RG4ハイドロゲルを形成したのに対し、HiBiTコードRCT生成物はハイドロゲル化の肉眼で見える証拠を示さず、バイアルの底に張り付いていた。上向きの矢印は形成されたゲルを示し、下向きの矢印はゲル化に失敗した液体を示す。
図17Bは、HiBiT-G4及びHiBiT-Gxテンプレートについての環状テンプレート形成のPAGE分析を示す。ハイドロゲル化は失敗したが、作製ステップによって異なる移動位置が確認できる。各プロセスで作製に成功したテンプレートを、塗りつぶされた菱形(◆)で示す。
【
図17C-D】
図17Cは、ハイドロゲル形成を妨げると考えられる、H-RG4に予想される二次構造を示す。ハイドロゲル化の失敗は、H-RG4の間で複雑な二次構造が形成され、G4モチーフとの相互作用が阻害された結果、起きた可能性がある。構造1及び構造2の形成確率は、oxDNAによってそれぞれ96.48%及び25.39%であると推定された。G-四重鎖部分は、灰色で表示されている。
図17Cは、配列番号:29~31をそれぞれ、出現順に開示している。
図17Dは、様々なHiBiTコードRNAテンプレートのタンパク質発現効率をHiBiTペプチドからの相対発光(RL)により特徴付けたことを示す。H-RG4生成物は、ハイドロゲル化しないと思われ、H-RGxとのタンパク質発現効率の差を示さなかった。H-RG4はH-RGxに比べ、アニール時にタンパク質発現量が低下する傾向があり、これはG4の形成に依るものである可能性がある。下記表1に示す操作条件を用いて、oxDNA粗視化分子動力学シミュレーションモデルにより、構造1及び構造2の発生確率を推定した。RCT生成の1サイクルでの部分的な相補結合は、剛性の非特異的な二次構造による立体障害によって、RG4のハイドロゲル化を妨げていると考えられる。この妨害は、ワイドバンドとして挙動する支持体RG4を組み込むことで抑制された。
【0027】
【表1】
【
図18A】
図18A~18Eは、RCT生成物をハイドロゲル化するために使用することができるワイドバンドシステムを示す。
図18Aは、ワイドバンドRG4ハイドロゲル(W-RG4)作製の模式図である。タンパク質発現のためのプログラムされた自己集合RG4ハイドロゲルの利点を最大化するために、ハイドロゲル化したRG4成分により、以前はハイドロゲル化しなかったRCT生成物のハイドロゲル化を可能にする方法を設計した。それらの生成物は、30T RG4ハイドロゲル(配列番号:6の配列を有するDNAテンプレートのローリングサークル転写から生成されるRNAコンカテマーによって形成されるハイドロゲル)と同様の安定なハイドロゲル(W-RG4)を形成することが示された。
図18Aは、配列番号:33として「30T」を開示している。
【
図18B-C】
図18Bは、異なるモル分率の30T RG4によるW-RG4の形成を、バイアル倒立によってハイドロゲル化を確認すると同時に転写したことを示す。示されたモル分率(25%、50%、75%)は、スペーサーテンプレートである30T RG4のモル分率を意味する。タンパク質をコードするRG4テンプレート(H-RG4)はハイドロゲル化しないように見えたが、包埋されたG-四重鎖は支持体RG4生成物の部分構造と相互作用してハイドロゲルの生成に成功した。予想されたとおり、H-RG4のモル分率が増加し、30T RG4のモル分率が減少すると、ハイドロゲルの剛性は低下した。
図18Cは、アニーリング後のワイドバンドRNAハイドロゲルのアガロースゲル電気泳動の分析結果である。HiBiTコードRG4ハイドロゲルは、転写段階から急速かつ改善された発現パターンを示し、G-四重鎖形成体のモル分率が低下するとRNAが消失した。ハイドロゲル化RG4は、架橋されたG4により、ハイドロゲル化しない100%H-RG4よりも移動が少なかった。
【
図18D-E】
図18Dは、W-RG4ハイドロゲルのタンパク質発現効率を、発現したHiBiTからの相対発光(RL)シグナルを使用して特徴付けたことを示す。ハイドロゲル化されたW-RG4は、25%及び100%のH-RG4と比較して、効率の向上を示した。タンパク質生産収量は、75%のモル分率で最大となった。
図18Eは、AFMを用いた75%W-RG4のナノインデンテーション測定から得られたフォースカーブを示す。ヤング率は、ベストフィット領域で9.71kPaと推定された。
【
図19】
図19は、異なるカットアウト数を有するW-RG4のタンパク質発現効率を示す。W-RG4からのタンパク質発現の最適化は、翻訳成分の接近性を改善するためにハイドロゲルを切断することによって行った。カットアウト数が300のときに効率が最大となり、薄いハイドロゲルパッド(33)を模倣してタンパク質発現に関与する酵素及び基質の拡散を促進することにより、未切断サンプルとは対照的にタンパク質効率が著しく向上した。
【
図20】
図20は、線状HiBiT-Gxテンプレート及び転写RNAの段階的な作製についてのPAGE分析を示す図である。T7プロモーターとのアニーリング前後の線状HiBiTテンプレートについて、テンプレートのバンド位置の識別可能な差異が見られた。線状HiBiT-Gx RNAは、アニーリングした線状HiBiT-Gxテンプレートから転写され、DNAテンプレートの位置に明瞭なバンドを示した。転写されたRNAが瞬時に分解されるため、残留バンドも確認できる。塗りつぶされたひし形(◆)は、各ステップで作製に成功したテンプレート又は転写RNAを示す。
【
図21A-B】
図21A~21Eは、タンパク質発現増強のための反応パラメータ:反応時間、カオトロピック処理、反応温度、及びテンプレート量の最適化を示す。(A)反応時間に対する、遊離DNA(fDNA)及びRNA(fRNA)とW-RG4の相対発光(「RL」)の比較。W-RG4は他のテンプレートよりも優れた性能を示したが、翻訳反応時間が2時間を超えると、可溶性HiBiTの減少に対応するRLの減少が観察された。発現したHiBiTペプチド間の封入体による干渉が疑われた。(B)凝集したペプチドを可溶化するための尿素処理前後のHiBiT翻訳産物のRL。DIW、ライセート、及びHiBiTは、それぞれ蒸留水、テンプレートを含まない翻訳混合物、及びHiBiT翻訳混合物に相当する。DIW
*、ライセート
*、及びHiBiT
*は、尿素処理したサンプルを示す。翻訳産物では、尿素処理後にRLの顕著な増加が観察された。
【
図21C】(C)翻訳産物の尿素処理後のRLで特徴付けられる、様々なテンプレートから発現したHiBiTペプチドの相対量。
【
図21D】(D)RLに対するHiBiTの温度依存的発現収量。37℃未満では封入体により生じる時間依存的なRL低下は見られず、25℃で最適な発現が達成された。
【
図21E】(E)タンパク質効率収量に関する様々なRNAテンプレート量の影響。RCT生成物3~22μlを翻訳に使用した場合、一貫した収量が観察された。
【
図22A】
図22A~22Bは、HiBiTタグ付きTAT及びインスリンG-四重鎖テンプレートのPAGE分析を示す。
図22Aは、HiBiTタグ付きTAT及びインスリンG-四重鎖をコードする環状テンプレートの作製を示す。連続プロセスについてバンド移動の際立った違いが観察され、これはテンプレートの環状化とライゲーションの成功を示す。
【
図22B】
図22Bは、線状HiBiTタグ付きTAT及びインスリンスクランブルG-四重鎖テンプレートが、アニーリング前後のバンド移動に明らかな違いを示したことを示す。塗りつぶされた菱形(◆)は、各ステップでテンプレートの作製に成功したことを示す。
【
図23】
図23は、収量を反映する無細胞翻訳混合物のバッチ体積変動の影響を示す。脱イオン水を加えることによって翻訳混合物の体積を増加させて、空間的障害を克服し、生成物が移動するのに十分な探索空間を提供することによってタンパク質生産を増強させた。収量は150μLまでは増加し、発現したタンパク質がハイドロゲルの外に拡散できるようになり、ハイドロゲルの足場は、翻訳プロセス中のより良いターンオーバー速度に適した限られた空間を提供した。DIWでさらに容量を増やすと、ライセートが不足するか希釈されるため、収量が減少した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
概要
本出願は、反復モノマー単位を有する核酸コンカテマーからの核酸ハイドロゲル(例えば、RNAハイドロゲル)の構築に関連する方法及び組成物を提供する。各モノマー単位は、1つ又は複数のG-四重鎖配列を含む。これらのG-四重鎖配列は、コンカテマーが自己集合して(すなわち、外部架橋剤を必要とせずに)ハイドロゲルになるように、核酸コンカテマーを架橋する。核酸コンカテマーは、環状DNAテンプレートのローリングサークル増幅又はローリングサークル転写によって製造することができる。いくつかの実施形態では、核酸コンカテマーの各モノマー単位は、目的のポリペプチドのコード配列を含む。核酸コンカテマーによって形成された核酸ハイドロゲルは、ポリペプチドを大量に発現させるために使用することができる。いくつかの実施形態では、G-四重鎖配列を含む少なくとも2つのRNAコンカテマーが製造され、一方はスペーサーをさらに含み、他方は目的のポリペプチドをコードする配列をさらに含む。これら2つのRNAコンカテマーは組み合わされ、自己集合して、本開示のワイドバンドRNAハイドロゲルと呼ばれる1つのRNAハイドロゲルを形成する。
【0029】
核酸ハイドロゲル(例えば、RNAハイドロゲル)は、異なる寸法及び形状で成形することができ、これらの核酸ハイドロゲルは、良好で柔らかい機械的特性及び優れた物理化学的安定性を示す。本明細書に開示された核酸ハイドロゲルは、広範な生物学的用途(例えば、触媒、タンパク質発現)のためのプラットフォームとして機能することができる。RNAハイドロゲルタンパク質生産系は、沢山のDNAからRNAが生産され、細胞骨格に囲まれた細胞質内の限られた空間内でタンパク質が急に発現する細胞内環境に酷似している(42)。ハイドロゲル中のゲルマトリックスは、細胞に機械的支持を与える細胞骨格の役割によく似ている。核酸ハイドロゲルは、(例えば、タンパク質発現中の)酵素反応に有益な十分な水性空間を有している。核酸ハイドロゲルは、多孔性とタンパク質コード配列の近傍という有用な特徴を有し、これにより、核酸ハイドロゲル中のRNAテンプレートにリボソームが自由にアクセスできる。これらの特徴により、本明細書に開示された核酸ハイドロゲルは、理想的な無細胞タンパク質生産プラットフォームとして機能することができる。
【0030】
本明細書に開示された核酸ハイドロゲルを用いてタンパク質を生産することは、容易に行うことができる簡単で合理的な手順である。また、核酸ハイドロゲルタンパク質生産システムは、タンパク質生産効率と汎用性をさらに改善するために、より長い反応期間で連続モードでタンパク質を生産するように構成することができる。多種の工学的機能性を有することで、核酸ハイドロゲルは、多重リアルタイム病原体検出、無毒、不燃性で、環境に優しいエネルギー源としてのバイオ燃料細胞、バイオインプラント及び抗体薬物複合体など、いくつかの分野で最先端技術の応用範囲を拡大することができる。
【0031】
用語
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「抗体(an antibody)」への言及は、任意に、2つ以上のそのような分子の組み合わせを含む、など。
【0032】
本明細書で使用される用語「約」は、当技術分野の当業者に容易に知られるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指し、例えば±20%、±10%、又は±5%は、言及された値の意図される意味の範囲内であることを指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprising)」又は「含む(comprise)」は、オープンエンドである。主題の核酸(又はアミノ酸配列)に関連して使用される場合、主題の配列を部分として又はその配列全体として含む核酸配列(又はアミノ酸配列)を指す。
【0034】
用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は互換的に使用され、本明細書で使用される場合、RNA、cDNA、ゲノムDNA、及び上記の合成形態及び混合ポリマーのセンス及びアンチセンス鎖の双方を指す。特定の実施形態では、ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾形態、及びそれらの組合せを指す。この用語はまた、DNAの一本鎖及び二本鎖の形態を含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書に開示されるポリヌクレオチド、例えば、環状DNAテンプレート、本明細書に開示される核酸コンカテマーは、天然に存在するヌクレオチド及び/又は天然に存在しないヌクレオチド連結によって一緒に連結された、天然に存在するヌクレオチド及び修飾ヌクレオチドのいずれか又は両方を含み得る。核酸分子は、当業者によって容易に理解されるように、化学的又は生化学的に修飾されてもよく、あるいは非天然又は誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでもよい。このような修飾としては、例えば、標識、メチル化、1つ以上の天然に存在するヌクレオチドのアナログでの置換、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホラミデート、カルバメートなど)、荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)などのヌクレオチド間修飾、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレーター、アルキレーター、及び修飾連結(例えば、アルファアノマー核酸など)などが挙げられる。上記の用語はまた、一本鎖、二本鎖、部分二重鎖、三重鎖、ヘアピン、環状及びパドロックコンフォメーションを含む任意のトポロジカルコンフォメーションを含むことが意図される。核酸配列への言及は、他に指定されない限り、その相補体を包含する。したがって、特定の配列を有する核酸分子への言及は、その相補的な配列を有するその相補鎖を包含すると理解されるべきである。また、この用語は、同じポリペプチド配列をコードするコドン最適化核酸を含む。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「コンカテマー」は、核酸配列のタンデムリピートを含む核酸分子を指す。核酸コンカテマーは、核酸合成によって、又は、例えば、環状DNAテンプレートのローリングサークル増幅又はローリングサークル転写によって製造することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「無細胞合成」は、生物学的抽出物及び/又は規定の試薬を含む反応混合物における核酸、ポリペプチド、低分子及び/又はウイルス粒子のインビトロ合成を意味する。反応混合物は、高分子の生産のためのテンプレート、例えば、DNA、mRNAなど;合成しようとする高分子のためのモノマー、例えば、アミノ酸、ヌクレオチドなど;及び合成に必要な補因子、酵素、及びその他の試薬、例えば、リボソーム、非荷電tRNA、天然及び/又は非天然アミノ酸で荷電したtRNA、ポリメラーゼ、転写因子、tRNA合成酵素などを含むこととなる。
【0037】
用語「ライセート」は、タンパク質合成機構に必要な成分を含む任意の細胞由来の調製物であり、このような細胞成分は、所望のタンパク質をコードする核酸を発現することが可能であり、生物学的成分の大部分は、再構成されたものよりもむしろ、細胞の溶解から生じる濃度で存在する。ライセートは、ライセートが追加の細胞成分、例えば、アミノ酸、核酸、酵素などで補充されるように、さらに変更されてもよい。ライセートはまた、溶解後に追加の細胞成分が除去又は分解されるように改変されてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「RGx」は、RNAコンカテマーによって形成される非G-四重鎖構造を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「sGx」と互換的に使用される用語「RGxコンカテマー」は、RGxを形成するRNAコンカテマーを意味する。一実施形態では、RGxコンカテマーは、配列番号:13の複数のコピーを含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「RGx溶液」は、RGxによって形成される粘性溶液を指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「RG4」は、RNAコンカテマーによって形成されるRNA G-四重鎖を指す。いくつかの実施形態では、RNAコンカテマーは、ローリングサークル転写によって生成される。
【0042】
本明細書で使用される場合、「sG4」と互換的に使用される用語「RG4コンカテマー」は、RG4を形成するRNAコンカテマーを指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「RG4ゲル」と互換的に使用される用語「RG4ハイドロゲル」は、RG4のゲル化から生じたハイドロゲルを意味する。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「H-RG4ハイドロゲル」又は「H-RG4ゲル」は、配列番号:14の配列を含むDNAテンプレートのローリングサークル転写から生成されるRNAコンカテマーによって形成されるハイドロゲルを指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「W-RG4ハイドロゲル」又は「ワイドバンド(wideband)RG4ハイドロゲル」は、少なくとも一方がRG4コンカテマーである2つの異なるRNA分子によって形成されるハイドロゲルを指す。一実施形態では、両方のRNA分子はRG4コンカテマーであり、一方はポリアデニンを含み、他方は目的のポリペプチドをコードしている。一実施形態では、2つのRNA分子のうちの一方は、ポリアデニンを含むRG4コンカテマーであり、他方は、目的のポリペプチドをコードするRNA分子である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「nT RG4、」は、n個のチミンを含むDNAテンプレートのローリングサークル転写から生成されるRNAコンカテマーを指す。例えば、用語「30T RG4」、「60T RG4」、「90T RG4」、「120T RG4」、又は「150T RG4」は、30(配列番号:33)、60(配列番号:34)、90(配列番号:35)、120(配列番号:36)又は150(配列番号:37)のチミンを含むDNAテンプレートのローリングサークル転写から生成されるRNAコンカテマーを指す。nは任意の整数であり得る。いくつかの実施形態では、nは、3~400の範囲、例えば、10~300、20~200、25~180、又は30~150の範囲にある。転写され、nT RG4を生成するDNAテンプレートは、nT RG4のスペーサーテンプレートと称される。一例において、30T RG4のためのスペーサーテンプレートは、配列番号:6の配列を含む。
【0047】
本開示を通じて、用語「ゲル」と用語「ハイドロゲル」は、交換可能に使用される。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「コード配列(coding sequence)」、「タンパク質コード配列(protein encoding sequence)」、「タンパク質コード配列(protein coding sequence)」は、DNA配列を指し、これは転写されてRNA転写物を形成することができ、該RNA転写物は翻訳されて目的のポリペプチドを産生することができる。文脈に応じて、本明細書で言及される、目的のタンパク質のコード配列又は目的のタンパク質をコードするコード配列は、目的のタンパク質をコードするセンス鎖の配列(例えば、配列番号:26)であっても、又はアンチセンス鎖の配列(例えば、配列番号:21)であってもよい。本明細書で使用されるコード配列は、標的配列とも呼ばれる。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「非コード配列」は、転写され得るが翻訳できないゲノム配列を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「モル分率」は、混合物中の試薬のモル数のパーセントを指す。例えば、スペーサーテンプレート分子とコーディングテンプレート分子の両方を含む混合物中のスペーサーテンプレートのモル分率が75%であることは、スペーサーテンプレート分子のモル数の割合が75%であり、コーディングテンプレート分子のモル数の割合が25%であることを意味する。
【0051】
G四重鎖モチーフ
本明細書に開示されるG-四重鎖モチーフは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの連続するグアニン(Gs)を含む。場合によって、G-四重鎖モチーフ中のヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%がグアニンである。G-四重鎖モチーフの非限定的な例は、Phan, FEBS J. 277, 1107-1117 (2010)及びPlatella et al., Biochimica et Biophysica Acta 1861 (2017) 1429-1447に開示されており、これらの開示の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
いくつかの実施形態では、G-四重鎖モチーフは、RNA配列(RNA G-四重鎖モチーフ)である。RNA G-四重鎖モチーフの非限定的な例としては、UAGGGUUAGGGU(配列番号:2)及びGGGUUAGGGU(配列番号:22)が挙げられる。いくつかの実施形態では、G-四重鎖モチーフは、DNA配列(DNA G-四重鎖モチーフ)である。DNA G-四重鎖モチーフの非限定的な例としては、TAGGGTTAGGGT(配列番号:20)が挙げられる。
【0053】
また、本開示に包含されるのは、本明細書に開示されるか、又は参照により組み込まれる対応するDNA G-四重鎖モチーフから誘導することができるRNA G-四重鎖モチーフである。例えば、RNA G-四重鎖モチーフは、例えば、DNA G-四重鎖モチーフ中のデオキシリボヌクレオチドをそれぞれの対応するリボヌクレオチドで置き換え、窒素塩基チミンをウラシルで置き換えることにより、DNA G-四重鎖モチーフから誘導することができる。一例として、UAGGGUUAGGGU(配列番号:2)は、上記のアプローチを使用してTAGGGTTAGGGT(配列番号:20)から誘導することができる。逆に、DNA G-四重鎖モチーフは、例えば、リボヌクレオチドをそれぞれの対応するデオキシリボヌクレオチドで置き換え、窒素塩基ウラシルをチミンで置き換えることによって、本明細書に開示されるか、又は参照により組み込まれるRNA G-四重鎖モチーフのいずれかから誘導することも可能である。これらのDNA G-四重鎖モチーフもまた、本開示に包含される。
【0054】
G-四重鎖モチーフを有するRNAコンカテマーの製造
いくつかの実施形態において、本開示における方法及び組成物は、ローリングサークル転写によってRNAコンカテマーを生成するために使用することができる。
【0055】
環状DNAテンプレート
ローリングサークル転写で使用される環状DNAテンプレートは、一本鎖直鎖DNAから生成されてもよく、該直鎖DNAは、所望のRNA配列に相補的である配列を含んでいる。一本鎖直鎖DNAは、核酸ライブラリーからの化学合成単離、又は組換え技術によるものを含めた、当業者に既知の任意の方法によって調製することができる。
【0056】
一本鎖直鎖DNAは、スプリントオリゴヌクレオチドの助けを借りて、DNAリガーゼにより環状化されて環状DNAテンプレートを形成することができる。スプリントオリゴヌクレオチドは、DNAの一端に相補的な第1の配列と、直鎖DNA分子の他端に相補的な第2の配列とを含む。スプリントオリゴヌクレオチドは、一本鎖直鎖DNAの2つの末端の配列にハイブリダイズすることによって、該2つの末端を近接させる。次に、DNAリガーゼを使用して、DNA分子の両端を結合させ、環状の一本鎖DNAテンプレートを形成する。スプリントオリゴヌクレオチドは、次に、DNAコンカテマーを形成するためのローリングサークル増幅を開始するための、又はRNAコンカテマーを形成するためのローリングサークル転写を開始するための、プライマーとして機能することができる。一つの例示的な実施形態が
図1Aに示されており、この場合、スプリントオリゴヌクレオチドは、環状テンプレート中のT7プロモーター配列に相補的な配列を有している。非限定的な例として、配列番号:6の配列を有する一本鎖DNA分子が、配列番号:12の配列を有するスプリントオリゴヌクレオチドにアニールされ、DNA分子の両端が一緒になってスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることになる。DNAリガーゼの存在下で、2つの末端が結合して環状DNAテンプレートを形成する。
【0057】
環状一本鎖DNAテンプレートは、スペーサー又は目的のコード配列に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、スプリントオリゴヌクレオチドは、環状DNAテンプレート中のプロモーター配列に相補的である。一実施形態では、スプリントオリゴヌクレオチドは、配列番号:12の配列を有する。本明細書で使用されるプロモーター配列は、広範囲のプロモーターに由来し得る。プロモーターは、変異プロモーター、トランケートプロモーター、又はハイブリッドプロモーターであってよい。プロモーターは、構成的プロモーターであってもよいし、誘導的プロモーターであってもよい。好適なプロモーターの非限定的な例としては、T7プロモーター、T3プロモーター、Lacプロモーター、araBadプロモーター、Trpプロモーター、Tacプロモーター、又はSP6プロモーターが挙げられる。
【0058】
環状一本鎖DNAテンプレートは、リプレッサー、アクチベーター、転写及び翻訳エンハンサー、DNA結合タンパク質などを含むがこれらに限定されない1つ以上の他の調節配列をさらに含んでもよい。
【0059】
このような環状DNAテンプレートはまた、以下にさらに説明するように、例えば、目的のポリペプチドのコード配列又はスペーサー配列などの1つ以上の機能的配列を含んでいてもよい。
【0060】
スペーサー
スペーサーは、環状DNAテンプレート中のプロモーター配列とG4四重鎖モチーフの間に位置する。典型的には、スペーサーは非コード配列である。スペーサーは、複数のチミンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、スペーサーは、15~220、例えば、20~200、25~150、又は30~120ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、スペーサー中のヌクレオチドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも90%、少なくとも95%が、チミン(T)である。いくつかの実施形態では、スペーサーは、少なくとも10(配列番号:39)、少なくとも12(配列番号:40)、少なくとも13(配列番号:41)、少なくとも14(配列番号:42)、少なくとも15(配列番号:43)、少なくとも16(配列番号:44)、少なくとも20(配列番号:45)の連続チミンを含む。いくつかの実施形態では、スペーサーのすべてのヌクレオチドがチミンである。いくつかの実施形態では、スペーサーは、3T、10T(配列番号:38)、30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、90T(配列番号:35)、120T(配列番号:36)、又は150T(配列番号:37)を含む。いくつかの実施形態では、スペーサーは、3T、10T(配列番号:38)、30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、90T(配列番号:35)、120T(配列番号:36)、又は150T(配列番号:37)からなる。いくつかの実施形態では、環状DNAテンプレートはスペーサーを含み、該スペーサーは、配列番号:6~9、及び11からなる群から選択される配列を含む。
【0061】
コード配列
コード配列は、目的のポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、コード配列の長さは、20~300ヌクレオチド、例えば、25~200ヌクレオチド、又は30~166ヌクレオチドの範囲であってよい。下限の観点からは、コード配列は、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、少なくとも50ヌクレオチド、又は少なくとも100ヌクレオチドの長さを有する。上限の観点からは、コード配列は、300ヌクレオチド以下、200ヌクレオチド以下、又は166ヌクレオチド以下の長さを有する。
【0062】
目的のポリペプチドの非限定的な例としては、単一ドメイン抗体、単鎖抗体、抗体フラグメント(例えば、scFv又はFabフラグメント)などの抗体、成長ホルモン(例えば、インスリン)、ホルモン又は成長因子の受容体;CD-3、CD4、CD8、及びCD-19などのCDタンパク質;インターロイキン;インターフェロン;T細胞受容体;酵素;ウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレッシン;調節タンパク質(例えば、TATタンパク質);及び上に列挙した任意のポリペプチドの断片が挙げられる。いくつかの実施形態では、目的のポリペプチドは、単量体可変抗体ドメイン、例えば、単一VHHドメインを含む、単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗CD40リガンド(「抗CD40L」)単一ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体は、レトリズマブである。
【0063】
いくつかの実施形態では、コード配列は、配列番号:23、24、25及び27からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードする。
【0064】
いくつかの実施形態では、コード配列は、環状DNAテンプレート中のプロモーター配列とG4四重鎖モチーフの間に位置する。いくつかの実施形態では、コード配列は、発現コンストラクト中にある。いくつかの実施形態では、コード配列は、配列番号:14、16、18、及び26からなる群から選択される配列を有する。
【0065】
本発明により製造される目的のポリペプチドは、以下の目的又は効果の1つ以上に使用することができる:細菌、ウイルス、真菌及びその他の寄生虫を含むがこれらに限定されない感染性物質の成長、感染又は機能を阻害すること、又は殺すこと;身長、体重、髪の色、目の色、皮膚、脂肪量と除脂肪量の比、その他の組織の色素形成、又は臓器もしくは体の部分のサイズもしくは形状(例えば、乳房の増大や減少、骨の形態もしくは形状の変化など)を含むがこれらに限定されない、身体的特徴に影響(抑制又は増強)を与えること;バイオリズム、又は概日サイクル又はリズムに影響を与えること;男性又は女性の被験者の生殖能力に影響を与えること;食事性脂肪、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、補因子又はその他の栄養因子もしくは成分の代謝、異化、同化、処理、利用、貯蔵又は排泄に影響を与えること;
食欲、性欲、ストレス、認知(認知障害を含む)、うつ病(うつ病障害を含む)、暴力的行動などを含むがこれらに限定されない行動特性に影響を与えること;鎮痛作用又はその他の疼痛軽減作用を提供すること;造血系以外の系統の胚性幹細胞の分化及び成長を促進すること;ホルモン又は内分泌活性;酵素の場合、酵素の欠陥の修正及び欠乏関連疾患の治療;過増殖性疾患(例えば、乾癬など)の治療;免疫グロブリン様活性(例えば、抗原又は補体と結合する能力);及び、ワクチン組成物中の抗原として作用し、当該タンパク質又は当該タンパク質と交差反応性を有する他の物質もしくは存在に対する免疫反応を向上させる能力。
【0066】
本発明により製造されるポリペプチドは、当業者に知られている任意の目的に使用することができる。好ましい用途としては、診断的用途、予防的及び治療的用途を含む医療的用途が挙げられる。例えば、タンパク質は、局所的又は他のタイプの投与のために調製することができる。別の好ましい医学的用途は、ワクチン調製のための用途である。従って、本発明により製造されたタンパク質は、薬学的に許容される溶液に可溶化又は懸濁され、対象への投与のための医薬組成物を形成する。医学的目的のための適切なバッファー及び医薬組成物の投与方法を以下にさらに記載する。医学的組成物はまた、獣医学的目的のような、ヒト以外の対象に投与され得ることは、当業者によって理解されるであろう。
【0067】
RNAポリメラーゼ
本開示におけるRNAポリメラーゼは、上記のようにDNAテンプレート中のプロモーターを認識することができる任意のRNAポリメラーゼであり得る。RNAポリメラーゼの非限定的な例としては、T7 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、又はT3 RNA RNAポリメラーゼが挙げられる。
【0068】
転写
ローリングサークル転写は、以下の成分の1種以上を含む反応混合物中で行うことができる:上記のような環状DNAテンプレート、目的の遺伝子が作動可能に連結されているプロモーターを認識するRNAポリメラーゼ(例えば、T7ポリメラーゼ)、及び任意でテンプレートが作動可能に連結されている任意の制御配列に向けられた1種以上の転写因子、リボヌクレオチド3リン酸(rNTPs)、バッファー、任意で他の転写因子及び補因子。
【0069】
ローリングサークル転写は、好適な温度、例えば、25℃~40℃、又は約37℃で行われてよい。転写反応は、1時間から一晩の期間続いてもよい。
【0070】
任意に、ローリングサークル転写の最後に、RNA転写物は、当技術分野で良く知られている方法を用いて反応混合物から精製される。一実施形態では、RNAは、BIO-RAD(HERCULES,CA)から入手可能な管状PAGEカラム、例えばPREPCELL 491を用いて転写混合物から精製することができる。
【0071】
G-四重鎖モチーフを有するDNAコンカテマーの製造
いくつかの実施形態では、G-四重鎖モチーフを有するDNAコンカテマーは、上記に開示されたような環状DNAテンプレートを用いたローリングサークル増幅によって生成することができる。これらのDNAコンカテマーは、DNAハイドロゲルを形成することができる。
【0072】
ローリングサークル増幅は、鎖置換活性を有する、すなわち、合成中に遭遇する下流DNAを置換することができるDNAポリメラーゼを使用して行うことができる。鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼは、環状DNAテンプレートに相補的な配列の複数のコピーを有するDNAコンカテマーを生成することが可能である。ローリングサークル増幅を行うのに使用できる好適なDNAポリメラーゼとしては、これらに限定されるものではないが、全てNew England BioLabs(Ipswich,MA)から入手可能な、Phi29ポリメラーゼ、Bst DNAポリメラーゼ,ラージフラグメント、及びDeep-VentR DNAポリメラーゼが挙げられる。
【0073】
G-四重鎖
上記のように製造された核酸コンカテマーは、G-四重鎖を形成することができる。
図1Aは、核酸コンカテマー中のG-四重鎖モチーフが集合してRNA G-四重鎖(
図1A中「G4」と示す)を形成する模式的なフレームワークを示す図である。HiBiTコード配列を含むRNA G-四重鎖は、H-RG4と称される。
図1Aに示されるように、G-四重鎖は、典型的には、フーグスティーン水素結合を介して環状に会合する4つのグアニン塩基からそれぞれなる、複数の積層G-四連子を含む四本鎖らせん核酸構造を含む。これらのG-四連子は、中央のカチオン(例えば、K
+又はNa
+)への配位によって、さらに安定化され得る。合計2層以上のG-四連子が積層された構造体を総称してG-四連子コアと呼ぶ。G-四連子コアを構成する4つのグアニン列は、それぞれ1本(連続列)又は2本(不連続列)別々のグアニン伸張から生じることができる。G-四重鎖の特性は、Phan, FEBS J. 277,1107-1117(2010)で議論されており、その開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
G四重鎖は、よく知られている結合アッセイによって検出することができる。いくつかの実施形態では、蛍光ターンオンリガンドであるチオフラビンT(ThT)が関与するアッセイによって検出することができる。Umar et al.(2019)及びMohanty et al.,2013。G四重鎖がThTに結合すると、蛍光強度が顕著に増強され、蛍光強度の顕著な増強の検出は、G四重鎖の存在を示すことになる。ローリングサークル転写によって生成されたRNA転写物は、G四重鎖を生成することができる。一つの例示的な例を
図2Bに示す。ここでは、ThT検出法を用いて488nmで蛍光強度の顕著な増強が観察され、これはG四重鎖の存在を示している。
【0075】
いくつかの実施形態では、G四重鎖はまた、Li et al.(2019)に開示されているように、ヘミンと複合化されたときの自己ビオチン化に関連するシグナルを検出することによって可視化することができる。1つの例示的な実施形態では、G-四重鎖は、H
2O
2及びビオチンチラミドの存在下でヘミンと混合される。適切に形成されたG-四重鎖は自己ビオチン化し、G-四重鎖に付加されたビオチン基はストレプトアビジンと結合して明るいシグナルを生成することとなる。
図13に示すように、短いG四重鎖RNA UAGGGUUAGGGU(配列番号:2)のコピーを含むRG4コンカテマーは、明るいスポットを生じ、これは、RG4四重鎖を形成できたことを実証している。一方、短いスクランブルRNA:UACUGUUACUGU(配列番号:13)のコピーを含むRGxコンカテマーは、そのようなスポットの欠如によって示されるように、四重鎖を形成することができなかった。
【0076】
ワイドバンドハイドロゲル
いくつかの実施形態では、2つの核酸コンカテマーを組み合わせて、ワイドバンドハイドロゲルと称される単一のハイドロゲルを形成する。2つの核酸コンカテマーの各々は、環状DNAテンプレートからのローリングサークル転写又はローリングサークル増幅によって生成することができ、各々は、プロモーター及びG4四重鎖モチーフを含む。2つの環状DNAテンプレートの一方は、スペーサーをさらに含み、他方は、目的のポリペプチドのコード配列をさらに含む。上述したスペーサー及びコード配列のいずれも、ワイドバンドハイドロゲルを製造するために本明細書に開示された環状DNAテンプレートにおいて使用することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、両方の核酸コンカテマーがDNAコンカテマーである。いくつかの実施形態では、両方の核酸コンカテマーがRNAコンカテマーである。2つのRNAコンカテマーによって形成されたワイドバンドハイドロゲルは、W-RG4と称される。
図18Aは、2つの環状DNAテンプレートのローリングサークル転写からの例示的なワイドバンドハイドロゲルの形成を示す。
【0078】
2つの環状DNAテンプレートで使用されるプロモーターは、同じであっても、異なっていてもよい。同様に、2つの環状DNAテンプレートにおけるG四重鎖モチーフは、同じであっても、同じでなくてもよい。本願に開示されるプロモーター及びG四重鎖モチーフのいずれも、本願に開示されるワイドバンドハイドロゲルを形成するために使用することができる。
【0079】
2つのテンプレートの比率
本発明者らは、驚くべきことに、2つのDNA環状テンプレートを適切な割合で使用することにより、翻訳効率を向上できることを発見した。第1の環状DNAは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含む。第2の環状DNAテンプレートは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む。スペーサーを含む環状DNAテンプレートは、「スペーサーテンプレート」とも呼ばれ、コード配列を含む環状DNAテンプレートは、「コーディングテンプレート」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、スペーサーテンプレートとコーディングテンプレートの両方の混合物におけるスペーサーテンプレートのモル分率は、25%~75%の範囲である。
図18B~18Dに示すように、25%~75%の範囲のモル分率でスペーサーテンプレートを含む混合物は、いずれも十分に高い量の目的のポリペプチド(
図18のHiBiTポリペプチド)を産生した。スペーサーテンプレートのモル分率が75%のものが最も高い収量を示した。
【0080】
いくつかの実施形態では、配列番号:6~9からなる群から選択される配列を含むスペーサーテンプレート、及び配列番号:14、16、及び18からなる群から選択される配列を含むコーディングテンプレートである。
【0081】
いくつかの実施形態では、コード配列の長さとスペーサー配列の長さの比率は、1:0.2~1:2の範囲内、又は約1:1である。
【0082】
プラスミドワイドバンドハイドロゲル
いくつかの実施形態では、ワイドバンドハイドロゲルは、1)スペーサー(「スペーサーテンプレート」)及びG四重鎖モチーフを含む環状テンプレートのRCTから生成されたRNAコンカテマーと、2)上述のように、目的のポリペプチドのコード配列を含む発現コンストラクトから転写されたmRNAとのゲル化によって形成される。いくつかの実施形態では、発現コンストラクト中のコード配列によってコードされる目的のペプチドは、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも30アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、少なくとも60アミノ酸残基からなる。一実施形態では、コード配列は、単一ドメイン抗体をコードする。一実施形態では、コード配列は、抗CD40L単一ドメイン抗体(配列番号:26)をコードする。いくつかの実施形態では、発現コンストラクトは、配列番号:27の配列を含む。一実施形態では、W-RG4ハイドロゲルは、1)配列番号:7を含む環状DNAテンプレートのRCTから生成されたRNAコンカテマー、及び2)配列番号:26を含むプラスミドから転写されたmRNAのゲル化によって形成される。
【0083】
いくつかの実施形態では、発現コンストラクトとスペーサーテンプレートのモル比は、1:2~1:400、例えば、1:5~1:200、1:10~1:120、又は1:12~1:102の範囲であってよい。
【0084】
使用することができる発現コンストラクト(例えば、ベクター)の非限定的な例としては、pK7、pIVEX、pET、pTXB、pUC、及びpF3Kが挙げられる。いくつかの実施形態では、転写混合物中で使用されるスペーサーテンプレートとベクターのモル比は、1:1~1000:1、例えば、10:1~200:1の範囲内である。
【0085】
ゲル化
核酸コンカテマー(又はワイドバンドシステムのように2つの核酸コンカテマー)によって形成されるG-四重鎖(例えば、RG4)は、ハイドロゲルに自己集合することができる。この形成は、G-四重鎖モチーフ中のグアニン間の非共有結合性相互作用により容易となる。G-四重鎖ハイドロゲルは、周囲温度(例えば、20℃~40℃)で、血清、人工涙液、若しくは細胞培養培地、又はリン酸緩衝食塩水などの種々の液体を核酸に加えることによって即時に調製することができる。いくつかの実施形態では、ゲル化は、0~100時間、例えば、3~60時間、又は3~48時間かかり得る。いくつかの実施形態では、ゲル化は、例えば、3、6、9、12、24、又は48時間かかり得る。
【0086】
ゲル化は様々な方法で検出することができる。ゲル化の一般的な診断方法の1つにバイアル倒立試験がある。バイアル倒立試験は、サンプルの入ったバイアルを逆さまに置き、サンプルが自重で流れるかどうかを観察するものである。サンプルが自重で流れない場合、ゲルである。
【0087】
図1A~1Gに示すように、配列番号:2の配列のコピーを含む例示的なRG4は、ハイドロゲル(RG4ハイドロゲル)を形成した。ハイドロゲルの形成は即時に目視でき、ハイドロゲルの体積は0~48時間の間に成長した。RG4のゲル化により、バイアル倒立試験で試験すると重力に対抗する強い弾性を示す単一の塊状材料が形成された。一方、配列番号:13の配列のコピーを含むRGxは、ハイドロゲルを形成せず、代わりに、容器の底に瞬時に滑り落ちる、粘性の非ゲル溶液を生成した。
【0088】
ハイドロゲルの特性評価
構造
上記に開示されたように形成されたハイドロゲル(RG4又はW-RGハイドロゲル)は、様々な多角形の型に入れて様々な形状に成形することができる。例えば、本明細書に開示されるハイドロゲルは、円形状、三角形、長方形、及び星形(
図1C)、並びに3次元円筒形(
図1D)に成形することができる。本明細書に開示されるハイドロゲルは、すべて相互接続された多孔質構造を有し、これは、画像解析、例えば、共焦点画像解析によって検出することができる。例示的な画像化結果が
図9及び
図1Eに示されており、これは、RG4ハイドロゲルにおける周期的な相互連結多孔質構造の存在を示している。
【0089】
粘弾性と機械的特性
本明細書に開示されるRG4ゲルは、優れた粘弾性及び機械的特性を有し、それにより様々な生物学的用途のための理想的なプラットフォームとなる。これらの特性を評価するために、様々な方法を使用することができる。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルの粘弾性特性は、当技術分野においてよく知られている方法、例えば、www.rheologytestingservices.com/(その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような回転アッセイ、振動アッセイ、及び垂直アッセイを用いて試験することができる。いくつかの実施形態では、温度スイープレオロジー試験を使用して、温度ランプの上昇及び低下に伴う粘度変化を測定する。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルの粘弾性特性は、回転レオメーター、例えば、ARES-G2(TA Instruments,New Castle,DE)を用いて調べることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、ハイドロゲルの剛性は、ヤング率試験を用いて評価することができる。ヤング率試験は、単軸変形の線形弾性レジメにおいて、材料における応力(単位面積当たりの力)と歪み(比例変形)との間の関係を定義するものである。一実施形態では、ヤング率は、Hermann et al.(2001)に記載されているように、曲線の傾きから得られるセンチメートルスケールでの圧縮試験により測定した。本明細書に開示されるRG4ゲルのセンチメートルスケールでの圧縮試験により測定したヤング率は、典型的には12kPa~100kPa、例えば、20kPa~58kPaの範囲内、又は約38.4kPaである。
図3Aに示すように、本明細書で製造されたRG4ゲルの弾性率は、6~50kPaの範囲であり、これは、既報のソフトゲル(23、24、25)に匹敵するものであった。
【0091】
一実施形態では、ナノメートルスケールの原子間力顕微鏡(AFM)に基づくインデンテーション試験法が使用される。AFMに基づく試験は、典型的には、フォースカーブを用いて柔らかい水和サンプルの弾性率を分析するために使用される。AFMに基づくインデンテーション試験を使用する方法はよく知られており、(26、27)に記載されているとおりである。本明細書に開示されるRG4ゲルは、弾性率の優れた時間依存性増加を示し、弾性率の時間依存性増加は、DNAベースのゲルについて報告されているものよりも驚くほど顕著に高い。一実施形態では、弾性率の時間依存性増加は、48時間で5~20kPa(例えば、約10.93kPa)の範囲のである。1つの例示的な例を
図14A及び
図14Bに示す。
【0092】
いくつかの実施形態では、ハイドロゲルの貯蔵弾性率は、動的機械分析法を用いて測定することができる。Encyclopedia of Polymer Science and Technology,DOI:10.1002/0471440264.pst102.pub2を参照されたい。一般に、これらのアプローチは、強制振動測定を行うことによって高分子材料の粘弾性特性を分析する。一実施形態では、ハイドロゲルの貯蔵弾性率は、動的周波数スキャンを使用して測定することができる。本明細書に開示されるRG4ゲルは、24時間において貯蔵弾性率が損失弾性率よりも高いことで示されるように、固体様が支配的な構造を有する(
図14C及び
図14D)。さらに、RG4ゲルは、RGx溶液の10倍以上の高い貯蔵弾性率を示す。
図3Bを参照されたい。
【0093】
ハイドロゲルの保水及び吸水能は、一般に(31)に記載される方法を用いて分析することができる。一実施形態では、保水及び吸水能は、ゲルの体積脱水率及び再水和率を測定することによって決定される。具体的には、RG4ハイドロゲルの保水・吸水性を評価するために、初期質量のために必要な調製したばかりのハイドロゲルの質量、及び再水和質量のために必要な乾燥ハイドロゲルの質量を測定した。保水・吸収能は、以下の式1を用いて算出することができる。
【0094】
【数1】
Q:膨潤度、乾燥ゲル(媒体を含まない純粋なゲル材料)の体積に対する膨潤したハイドロゲルの体積比率で、膨潤時のハイドロゲルの体積増加を表す
ρ_1:膨潤媒体(純水)の密度
ρ_2:ポリマー(膨潤媒体を除くゲル成分)の密度
m_sw:膨潤したゲルの質量
m_d:乾燥ゲルの質量
【0095】
本願で開示されるRG4ゲルは、優れた保水及び吸水能を有する。本明細書に開示されるRG4ハイドロゲルは、典型的には、500%~5000%の膨潤度を有する。1つの例示的な例を
図3Cに示し、ここで、膨潤度は1164.1%である。
【0096】
さらに、RG4ハイドロゲルは、膨潤-再水和サイクルを受けることができ、少なくとも400%、少なくとも500%の再膨潤度を示す。1つの例示的な実施形態では、RG4ハイドロゲルは、734.2%の再膨潤度(又は再水和度)を示した(
図3C、「再水和」)。再膨潤度とは、脱水したゲルを水又は水溶液と接触させて再水和させたときの膨潤の度合いである。一実施形態では、再膨潤度は、脱水されたハイドロゲルに対する(水又は水溶液と接触した後の)再水和されたハイドロゲルの体積比によって表される。したがって、RG4ハイドロゲルは、翻訳が高効率で起こることができる高水分含有環境を維持することができる。
【0097】
本明細書に開示されるRG4ゲルは、高い拡散性を有する。これにより、反応成分及び生成物(例えば、リボソーム)が自由に拡散でき、さらに、ハイドロゲルの細孔を通じて出入りできる。これらの特徴により、翻訳効率をさらに高めることができる。ハイドロゲルの拡散性は、ハイドロゲルを横切る物質(例えば、ThT又はリボソーム)の拡散速度を測定することによって評価できる。拡散速度は、共焦点顕微鏡で捕捉した物質の移動距離及び拡散に必要な時間によって決定することができる。1つの例示的な実施形態では、G4-RNAハイドロゲル中への拡散速度の理論計算値は、以下の式を用いて計算することができる(32)。
【0098】
【数2】
r
s:溶質半径、チオフラビンTは0.7nm(47)、原核生物のリボソームラージサブユニットは5nm(48)。κ:媒体の透水性。
【0099】
無限希釈での拡散率(D0)は、ハイドロゲルの多孔性は考慮せず、溶液中の拡散に関するストークス-アインシュタインの法則により、以下のように与えられる(49)。
【0100】
【数3】
K
b:ボルツマン定数、1.38065×10
-23JK
-1
η:媒体溶液の動的粘度、20℃で1.0016mPa・s、37℃で0.696mPa・s(50)
【0101】
媒体の透水係数は以下のように与えられる(51)。
【0102】
【数4】
r
f:ハイドロゲルの孔半径、AFM画像により推定して5.65nm(
図3E)、定量RNAにより推定して13.1nm(
図15)。
φ:ゲル中のポリマーの体積分率、乾燥ハイドロゲルの質量により推定して0.0852
【0103】
拡散溶質のモル拡散流束(J)はフィックの第一法則により以下のように与えられる(52)。
【0104】
【数5】
C:溶質のモル濃度、ThTは10μM、リボソームは2.4μM
x:拡散溶質の移動距離、ThTは573.4μm、ハイドロゲルパッドは10μm
【0105】
多孔質ハイドロゲル内に輸送される溶質の拡散速度(v)は以下のように与えられる(53)。
【0106】
【0107】
一例では、リボソームが深さ20μmのハイドロゲルに完全に拡散するのに必要な時間(33)は、4.5~5.5μm/秒の範囲であった。場合によって、リボソームは、約1.8秒及び約2.2秒でハイドロゲルの片側10μmを拡散する。
図3Dを参照されたい。
【0108】
ハイドロゲルの細孔サイズを測定するために、様々な方法を用いることができる。一実施形態では、細孔サイズは、RG4ハイドロゲル中のG4構造間で計算した平均距離であると推定され、かつ/又はAFM画像(
図3E及び
図15)からの細孔サイズ推定に基づく。いくつかの実施形態では、RG4ハイドロゲルは、原子間力顕微鏡(AFM)画像から決定されたハイドロゲル中のG4構造間の平均距離を細孔サイズとして使用する場合、1~30nm、例えば、2~25nm、3~10nmの範囲、又は約5.65nmの細孔サイズを有する。
【0109】
機能
本明細書に開示されるRG4ハイドロゲルは、様々な用途のための足場として機能するだけでなく、それが複合体を形成する生物活性物質(例えば、酵素)の活性を高めることができる。いくつかの実施形態では、RG4は、それが酵素と複合体を形成するとき、ペルオキシダーゼ(例えば、ヘミン)の活性を増強できる。この増強は、酵素の基質、例えば、2,2’-アジノ-ビス-3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)の比色変化が関与する比色反応を用いて検出することができる。
図2Cを参照されたい。ペルオキシダーゼ活性の向上(A
395nmの吸光度の増加によって反映される)は、広いpH範囲(例えばpH4.9~pH7.9)にわたって検出された。
図12を参照されたい。このことにより、ゲル中のG4架橋が、足場としての役割に加え、酵素活性を促進することが示された。
【0110】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、生物活性物質と複合体化された上記に開示されたRG4ハイドロゲルを提供し、場合によりRG4は生物活性物質の活性を増強する。この増強は、RG4ハイドロゲルと複合体化されていない生物活性物質の活性に対して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%であり得る。
【0111】
好適な生物活性物質としては、これらに限定されるものではないが、ポリペプチド、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ)、抗体、成長因子、抗原、リポソーム、低分子干渉RNA、又はポリヌクレオチド、治療剤(例えば、薬剤、毒素、免疫調節剤、キレーター、抗体、抗体-薬剤結合体、光活性剤又は色素、及びラジオアイソトープ)などの生体又は化学化合物、あるいは化学誘引物質が挙げられる。生物活性物質は、天然に存在するものであっても、人工的に合成されたものであってもよい。
【0112】
安定性
本明細書に開示されるRG4ハイドロゲルは、半減期が少なくとも30時間、少なくとも35時間、又は少なくとも40時間であり、安定である。核酸ハイドロゲルに関連して使用される場合、用語「半減期」は、ゲル中の核酸含有量がその初期量の50%に減少するのに必要な時間を意味する。RG4ハイドロゲルの半減期は、RGx溶液よりも著しく長い(
図4E)。実施例6、
図4Aに示すように、例示的なRG4は、48.9時間の間、その初期RNA含有量の少なくとも53.4%を維持できたが、RGxは38.3時間後にその初期RNA含有量の21.6%を維持しただけであった。同じ条件下でRG4ゲルはRGxよりも分解が遅かったが、これはRG4が一体性の高い性質を有することに起因すると思われる。
【0113】
収量
RG4中のRNAの分解が遅いだけでなく、RG4中のG四重鎖の形成により、転写段階でのRNA合成時間が延長される。
図4Fに示すように、RGxとは対照的に、RG4中のRNA量は、転写反応開始から4時間経過後も増加し続けている。この転写時間の延長とRG4ゲルの高い安定性により、RCT中に多量のRNAを産生することが可能となる。
図4Fに示す1つの例示的な例では、RG4ハイドロゲルからのRNA収量は、RGx溶液よりも少なくとも3倍高いものであった。この高いRNA収量は、下流の翻訳プロセスにおける高いタンパク質産生に寄与することになる。
【0114】
無細胞タンパク質生産
本明細書に記載されるように製造されたRG4ハイドロゲルは、無細胞タンパク質合成に使用することができる。いくつかの実施形態では、翻訳の開始前にRG4ハイドロゲルが形成されるように、翻訳は転写と非連結化される。無細胞タンパク質合成翻訳混合物は、これらに限定されるものではないが、1種以上の細胞抽出物/ライセート、ATP又はエネルギー源(例えば、ピルビン酸、グルコース及びグルタミン酸)、補因子、酵素、及びポリペプチドの供給に必要な他の物質、例えば、リボソーム、tRNA、ポリアミンポリメラーゼ転写因子、アミノアシル合成酵素、シャペロン、伸長因子、開始因子等を含むことができる。無細胞タンパク質合成系において有用であり得る他の成分は、Spirin & Swartz(2008) Cell-free Protein Synthesis,Wiley-VCH,Weinheim,Germanyに記載の無細胞合成のための方法に記載されている。
【0115】
いくつかの実施形態では、翻訳反応において使用される細胞ライセート(ライセートとも呼ばれる)は、転写及び/又は翻訳機構を保存する条件下で細胞を溶解することによって調製され得る。細胞ライセートを調製するために使用できる細胞型の非限定的な例としては、大腸菌細胞、昆虫細胞、酵母細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽細胞、及びHela細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞ライセートは、翻訳に必要とされる成分を含む。そのような成分としては、リボソーム、アミノ酸、tRNA、tRNA合成酵素、エネルギー源(クレアチンリン酸)、クレアチンキナーゼ、及び/又はそれらの任意の組合せが挙げられる。細胞ライセート及びその製造方法はまた、Kuruma and Ueda Nature Protocols 10,1328-1344(2015)、及び、Gregorio et al.,Methods.Protoc.2019 Mar;2(1):24に記載されており、その開示内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。無細胞タンパク質合成試薬は、例えば、New England Biolabs(Ipswich,MA)から商業的に入手可能である。
【0116】
ハイドロゲルがDNAハイドロゲルである場合、上述したように、インビトロ転写に適した試薬及び条件を用いてまずRNAに転写し、次に本明細書に開示する無細胞タンパク質系に供することができる。
【0117】
本明細書に開示される核酸ハイドロゲル、例えば、W-RG4ゲルは、タンパク質を大量に生産することができる。1つの例示的な例では、W-RG4のタンパク質発現収量は、11アミノ酸ペプチドタグであるHiBiTの発現が、遊離DNAテンプレート(fDNA)に対して117倍、遊離RNA(fRNA)テンプレートに対して8倍増強されることが示された。遊離DNA/RNAテンプレートとは、溶液中のDNA/RNAを指す。
図5Bを参照されたい。
【0118】
任意に、カオトロピック処理、反応時間、温度、容量などのパラメータは、核酸ハイドロゲルタンパク質生産系のタンパク質収量を最大化するように変更することができる。1つのアプローチでは、翻訳反応は、12時間以下、10時間以下、6時間以下、5時間以下、4時間以下、3時間以下、又は2時間以下継続するように制御される。1つの例示的なアッセイにおいて、タンパク質生産は、翻訳開始から2時間程度でピークに達することが示されている。
図21Aを参照されたい。反応時間を制御するために、所定の長さの時間(例えば、翻訳の開始から2、3、12、又は48時間)翻訳を進行させた後、反応混合物を高温、例えば、約95℃に供して翻訳に必要な酵素を変性させ、それによりタンパク質生産を終了させる。あるいは、1種以上のカオトロピック剤(例えば、8M尿素)を添加して翻訳を終了させることもできる。
【0119】
1つのアプローチにおいて、反応温度は、16℃から37℃の範囲の温度、例えば、25℃に制御される。
図21Dを参照されたい。別のアプローチでは、例えば凝集ペプチドを可溶化することによって、タンパク質の可溶性を増大させることができる1種以上の試薬を翻訳混合物に添加し、タンパク質発現を改善する。そのような試薬の非限定的な例としては、Tween-20、Triton X-100、CHAPS、又はSDSなどの界面活性剤が挙げられる。
図21Bを参照されたい。さらに別のアプローチでは、無細胞合成系に添加されるW-RG4ハイドロゲルの体積を、タンパク質産生を増加させるように最適化できる。一実施形態では、使用されるW-RG4の体積は、3~22μLの範囲である。さらに別のアプローチでは、翻訳反応混合物(W-RG4を含む)の体積を、50~200μLの範囲、例えば、150μLに制御し、高いタンパク質収量を達成する。
図21Eを参照されたい。
【0120】
タンパク質は、翻訳プロセスの終了時に回収し、精製することができる。タンパク質精製、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、及び結晶化のための方法は、Coligan et al.(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc,New Yorkに記載されている。
【0121】
ライセート包埋ハイドロゲル
いくつかの実施形態では、上記のような細胞ライセートを、RG4コンカテマーを生成する転写反応に添加する。これらのRG4コンカテマーによって形成されるハイドロゲルは、細胞ライセートを含むので、本明細書ではライセート包埋ハイドロゲル(lysate-embedded hydrogel)(例えば、ライセート包埋W-RG4ハイドロゲル)と称する。対照的に、細胞ライセートが全く存在しない状態の転写物によって形成されたハイドロゲルは、ライセートフリーハイドロゲル(lysate-free hydrogel)と称する。他に特記しない限り、本開示で開示されるW-RG4ハイドロゲルは、ライセートフリーW-RG4ハイドロゲルである。
【0122】
細胞ライセートと転写混合物(細胞ライセートを除く)の体積比は、変更してもよい。場合によって、体積比は、1:1~1:3の範囲、例えば、約1:2、又は約1:2.5である。
【0123】
驚くべきことに、これらのライセート包埋ハイドロゲルは、同じ翻訳条件下で、対応するライセートフリーハイドロゲルよりもはるかに高い収量でタンパク質を生成することができ、また、タンパク質収量は対応するライセートフリーハイドロゲルよりも短時間でピークレベルに到達した。ライセート包埋W-RG4とそれに対応するライセートフリーW-RG4は、同じ核酸成分を共有している。一つの例示的な例を、
図5Jに示す。
図5Jは、大腸菌細胞から調製したライセートを含む翻訳混合物と3時間インキュベートした場合、ライセート包埋W-RG4(「L-L-ゲル」)が、ライセートフリー対応物(「未処理ゲル(Raw gel)」)よりも著しく多量のタンパク質を生成したことを示す。
【0124】
また、ライセート包埋ハイドロゲルの生産に用いる転写反応の期間を制御することが望ましいことも分かった。転写が比較的長い時間(例えば、48時間)進行すると、W-RG4ハイドロゲルの生産効率が低下する場合がある。
図5Iを参照されたい。したがって、いくつかの実施形態では、ライセート包埋ハイドロゲルを使用する場合、転写反応時間の持続時間は48時間以下、例えば、40時間以下、30時間以下、20時間以下、10時間以下、5時間以下、又は約3時間である。いくつかの実施形態では、転写反応の持続時間は、1時間から40時間、2時間から20時間、2.5時間から10時間の範囲、又は約3時間である。
【0125】
いくつかの実施形態では、ライセート包埋ハイドロゲルは、細胞ライセートを含まない翻訳混合物と組み合わされる。
図5Jに示すように、ライセート包埋ハイドロゲル(「L-ゲル」)は、翻訳プロセス中に大腸菌細胞ライセートを一切補充せずにフィード溶液(タンパク質合成バッファーとしても知られている)のみとインキュベートした場合に、十分な量のタンパク質を産生することが可能であった。フィード溶液は、典型的には、アミノ酸、及び翻訳に好適な1種以上のバッファー及び塩を含む。いくつかの実施形態では、フィード溶液はまた、エネルギー変換酵素(例えば、クレアチンキナーゼ)を含む。この結果は、ライセート包埋W-RG4が、翻訳混合物中に外部からのライセートが提供されないことが好ましいか又は要求される、移植用又は注射用の治療用途に有用であることを示唆している。
【0126】
タンパク質の生産性をさらに向上させるための追加的な改変
上記に開示したように、W-RG4ハイドロゲルは、高効率及び高収量でタンパク質を生成することができる。いくつかの実施形態では、ハイドロゲルを切断して翻訳成分の接近性を向上させ、それにより、翻訳効率をさらに向上させる。切り込みは、例えば、ピペットチップを使用してハイドロゲルに穴を開けるなど、様々な手段で導入することができる。ハイドロゲルに作製される切り込みの数を、カットアウト数(cut-out number)と称する。いくつかの実施形態では、W-RG4は、250~400の範囲、例えば、約300のカットアウト数を有する。1つの例示的な例が
図19に示されており、300のカットアウト数を有するW-RG4ゲルは、タンパク質産生をさらに増大させることができることを実証している。
【0127】
キット
本出願はまた、目的のポリペプチドを発現させるためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、スプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることによって環状DNAテンプレートを形成することができる一本鎖DNA分子を含む。環状DNAは、(i)プロモーター配列、(ii)G-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列又はスペーサーを含む。スプリントオリゴヌクレオチドは、プロモーター配列に相補的である。
【0128】
いくつかの実施形態では、キットは、第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることによって第1の環状DNAテンプレートを形成することができる第1の一本鎖DNA分子、第2のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることによって第2の環状DNAテンプレートを形成することができる第2の一本鎖DNA分子を含む。第1の環状DNAは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)スペーサーを含む。第2の環状DNAは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)スペーサーを含む。キットは、第1のプロモーター配列に相補的な配列を有する第1のスプリントオリゴヌクレオチド、及び/又は、第2のプロモーター配列に相補的な配列を有する第2のスプリントオリゴヌクレオチドをさらに含んでもよい。一実施形態では、第1及び/又は第2のスプリントオリゴヌクレオチドは、配列番号:12の配列を有する。
【0129】
本明細書に開示されるキットは、DNAテンプレートの環化及び/又はローリングサークル転写を行うのに有用な1種以上の試薬をさらに含んでもよい。これらの試薬としては、これらに限定されるものではないが、リガーゼ、RNAポリメラーゼ、1種以上のリボヌクレオチド三リン酸(rNTP)、及び転写に好適なバッファーが挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態では、キットは、in vitro翻訳に好適な1種以上の試薬、例えば、リボソーム、及びアミノ酸の混合物をさらに含んでもよい。
【0131】
以下の実施例は、説明目的のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本質的に同じ結果を得るために変更又は修正することができる様々な重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【0132】
実施形態1. (i)第1のプロモーター配列、及び(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む、第1の環状DNAテンプレート。
【0133】
実施形態2. 第1のプロモーター配列が相補的核酸配列にハイブリダイズして第1の部分二本鎖DNA分子を形成し、第1の部分二本鎖DNA分子が二本鎖領域及び一本鎖領域を含み、二本鎖領域が相補的核酸配列にハイブリダイズした第1のプロモーター配列を含み、一本鎖領域が第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む、実施形態1に記載の第1の環状DNAテンプレート。
【0134】
実施形態3. スペーサーをさらに含み、スペーサーがポリチミンを含む、先の実施形態のいずれかに記載の第1の環状DNAテンプレート。
【0135】
実施形態4. 目的のポリペプチドのコード配列をさらに含む、先述の実施形態のいずれかに記載の第1の環状DNAテンプレート。
【0136】
実施形態5. 第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列が、ACCCTAACCCTA(配列番号:1)の配列を含む、先の実施形態のいずれかに記載の第1の環状DNAテンプレート。
【0137】
実施形態6. 第1のプロモーター配列が、T7プロモーター、T3プロモーター、Lacプロモーター、araBadプロモーター、Trpプロモーター、Tacプロモーター、及びSP6プロモーターからなる群から選択される、先の実施形態のいずれかに記載の第1の環状DNAテンプレート。
【0138】
実施形態7. 複数のモノマーを含む第1の核酸コンカテマーであって、各モノマーが、(i)第1のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)ポリチミンを含むスペーサー又は目的のポリペプチドのコード配列を含む、第1の核酸コンカテマー。
【0139】
実施形態8. 第1の核酸コンカテマーがRNAコンカテマーであり、第1のG-四重鎖モチーフがUAGGGUUAGGGU(配列番号:2)を含む、実施形態7に記載の第1の核酸コンカテマー。
【0140】
実施形態9. 第1の核酸コンカテマーがDNAコンカテマーであり、第1のG-四重鎖モチーフがTAGGGTTAGGGT(配列番号:20)を含む、実施形態7~8のいずれかに記載の第1の核酸コンカテマー。
【0141】
実施形態10. 実施形態7~9のいずれかに記載の第1の核酸コンカテマーを含む核酸ハイドロゲル。
【0142】
実施形態11. 実施形態10に記載の核酸ハイドロゲル、リボソーム、及び/又はアミノ酸の混合物を含む、タンパク質発現系。
【0143】
実施形態12. 第1の環状DNAテンプレート及び第2の環状DNAテンプレートを含む組成物であって、第1の環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含み、第2の環状DNAテンプレートは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含み、第1及び第2の環状DNAテンプレートの総量に対する第1の環状DNAテンプレートのモル分率は、25%~75%の範囲である、組成物。
【0144】
実施形態13. (1)第1のプロモーター配列が相補的核酸配列にハイブリダイズして第1の部分二本鎖DNA分子を形成し、第1の部分二本鎖DNA分子が二本鎖領域及び一本鎖領域を含み、第1の部分二本鎖DNA分子の二本鎖領域が、相補的核酸配列にハイブリダイズした第1のプロモーター配列を含み、第1の部分二本鎖DNA分子の一本鎖領域が、第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含み、(2)第2のプロモーター配列が相補的核酸配列にハイブリダイズして第2の部分二本鎖DNA分子を形成し、第2の部分二本鎖DNA分子が二本鎖領域及び一本鎖領域を含み、第2の部分二本鎖DNA分子の二本鎖領域が、相補的核酸配列にハイブリダイズした第2のプロモーター配列を含み、第2の部分二本鎖DNA分子の一本鎖領域が、第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む、実施形態12に記載の組成物。
【0145】
実施形態14. 第1のG-四重鎖モチーフと第2のG-四重鎖モチーフが同じヌクレオチド配列を含む、実施形態12又は13に記載の組成物。
【0146】
実施形態15. 第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列が、同じヌクレオチド配列を含む、実施形態12~14のいずれかに記載の組成物。
【0147】
実施形態16. 第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列が、異なるヌクレオチド配列を含む、実施形態12~15のいずれかに記載の組成物。
【0148】
実施形態17. スペーサーが、30~120個のチミン(配列番号:32)を含む、実施形態12~16のいずれかに記載の組成物。
【0149】
実施形態18. コード配列が、20~300ヌクレオチドの範囲内である長さを有する、実施形態12~17のいずれかに記載の組成物。
【0150】
実施形態19. コード配列とスペーサーの長さ比が、1:0.2~1:2の範囲内である、実施形態12~18のいずれかに記載の組成物。
【0151】
実施形態20. 目的のポリペプチドが、インスリン、トランス活性化転写活性化因子(TAT)、HiBiT、及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される、実施形態12~19のいずれかに記載の組成物。
【0152】
実施形態21. 1種以上のRNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドの混合物、及び/又はバッファーをさらに含む、実施形態12~20のいずれかに記載の組成物。
【0153】
実施形態22. 鎖置換活性を有するDNAポリメラーゼをさらに含み、それによりローリングサークル増幅を行うことが可能である、実施形態12~20のいずれかに記載の組成物。
【0154】
実施形態23. 環状DNAテンプレート及び二本鎖DNAコンストラクトを含む組成物であって、環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含み、二本鎖DNAコンストラクトは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、組成物。
【0155】
実施形態24. 第1の核酸コンカテマー及び第2の核酸コンカテマーを含む核酸ハイドロゲルであって、第1の核酸コンカテマーは、実施形態12~20のいずれかに記載の組成物の第1の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅によって生成され、第2の核酸コンカテマーは、実施形態12~20のいずれかに記載の組成物の第2の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅によって生成される、核酸ハイドロゲル。
【0156】
実施形態25. 第1のRNA分子及び第2のRNA分子を含む核酸ハイドロゲルであって、第1のRNA分子は、(i)第1のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)ポリアデニンを含むスペーサーを含み、第2のRNA分子は、(i)第2のG-四重鎖モチーフ、及び(ii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、核酸ハイドロゲル。
【0157】
実施形態26. 第1のRNA分子が複数のモノマーを含むRNAコンカテマーであって、各モノマーが、第1のG-四重鎖モチーフ、及び、ポリアデニンを含むスペーサー又は目的のポリペプチドのコード配列を含む、実施形態25の核酸ハイドロゲル。
【0158】
実施形態27. 実施形態24~26のいずれかに記載の核酸ハイドロゲル、リボソーム、及び/又はアミノ酸の混合物を含む、タンパク質発現系。
【0159】
実施形態28. 目的のポリペプチドを発現させるためのキットであって、該キットは、
(1)第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることによって第1の環状DNAテンプレートを形成することができる第1のDNA分子であって、第1の環状DNAテンプレートは、(i)第1のプロモーター配列、(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)ポリチミンを含むスペーサーを含む、第1のDNA分子、
(2)第1のプロモーター配列に相補的な第1のスプリントオリゴヌクレオチドであって、第1のDNAテンプレートは第1のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして環化し、第1の環状DNAテンプレートを形成することができる、第1のスプリントオリゴヌクレオチド、及び/又は
(3)第2のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして第2の環状DNAテンプレートを形成することができる第2のDNA分子であって、第2の環状DNAテンプレートは、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフに相補的な配列、及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、第2のDNA分子、
(4)第2のプロモーター配列に相補的な第2のスプリントオリゴヌクレオチドであって、第2のDNAテンプレートは、第2のスプリントオリゴヌクレオチドにハイブリダイズして環化し、第2の環状DNAテンプレートを形成することができる、第2のスプリントオリゴヌクレオチド
を含む、キット。
【0160】
実施形態29. 実施形態12~23のいずれかに記載の組成物を含む、目的のポリペプチドを発現させるためのキット。
【0161】
実施形態30. 第1のG四重鎖モチーフと第2のG四重鎖モチーフが、同じ又は異なる配列を有する、実施形態28又は29に記載のキット。
【0162】
実施形態31. 第1のプロモーター配列と第2のプロモーター配列が、同一又は異なる、実施形態28又は29に記載のキット。
【0163】
実施形態32.
スペーサーが、30~120個のチミン(配列番号:32)を含む、実施形態28~31のいずれか1つに記載のキット。
【0164】
実施形態33.
コード配列が、20~300ヌクレオチドの範囲にある長さを有する、実施形態28~32のいずれか1つに記載のキット。
【0165】
実施形態34. コード配列とスペーサーの長さ比が、1:0.2~1:2の範囲内である、実施形態28~33のいずれかに記載のキット。
【0166】
実施形態35. 目的のポリペプチドが、インスリン、HiBiT、トランス活性化転写活性化因子(TAT)、及び単一ドメイン抗体からなる群から選択される、実施形態28~34のいずれかに記載のキット。
【0167】
実施形態36. 1種以上のDNAリガーゼ、RNAポリメラーゼ、リボヌクレオチドの混合物、及び/又は1種以上のバッファーをさらに含む、実施形態28~35のいずれかに記載のキット。
【0168】
実施形態37. 鎖置換活性を有し、それによりローリングサークル増幅を行うことができる、DNAポリメラーゼをさらに含む、実施形態28~36のいずれかに記載のキット。
【0169】
実施形態38. 核酸ハイドロゲルを調製する方法であって、(1)(i)第1のプロモーター配列、及び(ii)第1のG-四重鎖モチーフに相補的な配列を含む第1の環状DNAテンプレートを提供する工程;及び、(2)第1の環状テンプレートに対してローリングサークル転写又は増幅を行って第1の核酸コンカテマーを生成する工程を含み、第1の核酸コンカテマーが核酸ハイドロゲルを形成する、方法。
【0170】
実施形態39. 第1の環状DNAテンプレートが、ポリチミンを含むスペーサーをさらに含み、工程(1)が、(i)第2のプロモーター配列、(ii)第2のG-四重鎖モチーフ.及び(iii)目的のポリペプチドのコード配列を含む、第2の環状DNAテンプレートを提供することをさらに含み、工程(2)が、第2の環状DNAテンプレートのローリングサークル転写又は増幅を行って第2の核酸コンカテマーを生成することをさらに含み、第1及び第2の核酸コンカテマーが核酸ハイドロゲルを形成する、実施形態38に記載の方法。
【0171】
実施形態40. 無細胞合成系でタンパク質を製造する方法であって、該方法が、請求項10又は24~26の核酸ハイドロゲルを、目的のポリペプチドの翻訳を可能にする条件下で無細胞合成系と組み合わせることを含む、方法。
【0172】
実施形態41. 無細胞合成系が、リボソーム及び/又はアミノ酸の混合物を含む、実施形態40に記載の方法。
【実施例0173】
例1. 材料
塩化ナトリウム、塩化カリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、アガロース、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ヘミン、ABTS、及びH2O2はSigma Aldrichから購入した。UltraPure Dnase/Rnase-Free蒸留水、SYBR green II、ThT、及びFBSはInvitrogenから購入した。30%アクリルアミド-ビス-アクリルアミド溶液(29:1)、APS(過硫酸アンモニウム)、及び10×TBE(Tris/ホウ酸/EDTA)バッファーはPanReac Applichemから購入した。ビオチントチラミドはIris Biotechから購入し、ストレプトアビジンはRockland Immunochemicalsから購入した。尿素はDaejungから購入した。
【0174】
特記しない限り、UltraPure Dnase/Rnase-Free蒸留水を、全ての実験に使用した。本開示におけるアニーリングプロトコルでは、特記しない限り、95℃から4℃まで0.5℃/30秒で徐々に冷却した。
【0175】
実施例2. RG4ハイドロゲルの調製
RG4ハイドロゲルは、ローリングサークル転写(RCT)を用いて転写したRNAの自己集合によって作製した。RCTのための環状テンプレートは、G-四重鎖部分、目的のタンパク質のコード配列、及びT7プロモーターを有する線状テンプレートをライゲーションすることによって作製した。この線状テンプレートに、部分相補配列とT7プロモータープライマーを含む短鎖をアニールし、環状テンプレートを形成した。各鎖の濃度は、100mM NaCl中45μMであった。アニーリングした環状テンプレートは、T4 DNAリガーゼ(Promega)でライゲーションした。アニーリングしたテンプレートの濃度は10μMであり、バッファー及びT4 DNAリガーゼの量はT4 DNAリガーゼキットから提供され、その中で0.1×の全ライゲーション溶液と混合物を16℃で16時間インキュベートした。Hiscribe T7高収量RNA合成キット(New England Biolabs)を用いて、1μMのライゲーションした環状テンプレートを用いてRNAを転写し、その後37℃でインキュベートした。2時間のインキュベーションでRNAの収量が最大になると予想されたが、転写開始後48時間プロセスを継続した。すべてのテンプレートについて、同じモル数の出発物質を使用した。
【0176】
pIDTBlueプラスミド(Integrated DNA technologies, Coralville, IA)中のレトリズマブ-G4をNdeI及びSalIで切断し、pK7プラスミドにクローニングしてpK7-レトリズマブ-G4プラスミドを生成した。20ngのプラスミドを無細胞発現のポジティブコントロールとして用い、20ngのプラスミドを0.125μM、0.25μM、0.5μM、0.75μM、又は1μMの60T RG4のスペーサーテンプレートと共に転写してゲル化を誘導した。
【0177】
実施例3. ハイドロゲルの特性評価
レオロジー解析
RCT生成物のレオロジー特性を、円筒型中で調製したRCT生成物200μLを用いて、ARES-G2(TA Instruments)により特性評価した。
【0178】
RG4ハイドロゲルの顕微鏡による分析
共焦点顕微鏡による分析. カバーガラス間に作製した薄く調製したRG4ハイドロゲルをSYBR green IIで染色し、LSM710共焦点顕微鏡(Zeiss)で可視化した。
【0179】
電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)分析. RG4ハイドロゲル及びRGxを-80℃で凍結し、24時間凍結乾燥した。凍結乾燥したサンプルをイリジウムでコーティングし、SEM(JEM ARM200F,Jeol)を用いて、電圧15.0kVで特性評価した。
【0180】
AFM分析. アルミニウム還流コーティングを施した市販のDNP-Sプローブカンチレバー(公称バネ定数0.12N/m、先端半径10nm、駆動周波数16~28kHz)を用いて、RCT生成物のフォース-インデンテーション曲線をScanAsystモードにより求めた。このアプローチカーブを用いて、ヘルツの接触力学モデルをフィッティングすることにより、ハイドロゲルのヤング率を測定した。RCT生成物の表面形状は、ナノスコープVコントローラ(Bruker Inc.)を備えたマルチモード走査プローブ顕微鏡を用い、大気中で、ピークフォースタッピングモードを用いて分析した。得られたトポグラフィー画像を平坦化して、バックグラウンドスロープとコントラストを除去した。RG4ハイドロゲルを確実に平坦に作製するために、マイカ基板上に転写ミックスを30μL分注した。
【0181】
ストレプトアビジン標識. RCT生成物をマイカ上で調製し、200μLの100μMヘミン溶液(pH7.9の20mMリン酸バッファー、1%DMSO、0.1%Triton-X、100mM NaCl、100mM KCl)とともに3時間インキュベーションした。その後、50μLの6mMビオチンチラミド(pH7.9の20mMリン酸バッファー、1%DMSO、0.1%Triton-X、100mM NaCl、100mM KCl)及び50μLの4.5mM H2O2(pH7.9の20mMリン酸バッファー、1%DMSO、0.1%Triton-X、100mM NaCl、100mM KCl)を5分間隔で連続的に添加した。反応液を除去した後、10μMストレプトアビジン溶液を10μL添加した。100mM KClを用いて未結合のストレプトアビジンを十分に洗浄した後、トポグラフィー解析を行った。
【0182】
RG4ハイドロゲルの分光学的解析
RNAの定量. 転写したRCT生成物の量は、アニーリング後、RNA BRアッセイキット(Invitrogen)を用いて必要とされる50倍希釈を確保し、Qubit Flexフルオロメータ(Invitrogen社)を用いて測定した。
【0183】
CDスペクトル解析. 四重鎖及び非四重鎖RNA発現アナログ、sG4及びsGxのそれぞれによるコンフォメーション状態を特定するために、J-815 CDスペクトロメーター(JASCO)を用いて220nmから300nmの波長範囲でCDスペクトルを記録した。
【0184】
RG4結合ThTからの蛍光シグナルの特性評価. 10μlの1μM sG4及びsGxを100mM NaCl及び100mM KCl中で、40μLの10μM ThT溶液と混合し、15分後にフルオロメータ(SpectraMax M5,Molecular Devices)により蛍光スペクトル(λex=440nm,λem=460~510nm)を測定した。
【0185】
RG4結合ヘミンの酵素活性. 10μLの転写したRCT生成物を40μLの100μMヘミン溶液(pH7.9の20mMリン酸バッファー、1%DMSO、0.1%Triton-X、100mM NaCl、100mM KCl)と16時間インキュベートした。その後、25μLの3.2mM ABTS2-(20mMリン酸バッファー、pH4.4から7.9まで変化、1%DMSO、0.1%Triton-X、100mM NaCl、100mM KCl)と25μLの0.3mM H2O2(20mMリン酸バッファー、pH4.4から7.9まで変化、1%DMSO、0.1%Triton-X、100mM NaCl、100mM KCl)を十分に混合しながら溶液に連続的に添加した。ABTS2-がABTS・-に酸化されることによって生じるλ=390nmでの溶液の比色変化を、分光光度計(SpectraMax M5,MolecularDevices)を用いて4時間連続的に特性評価した。
【0186】
RG4ハイドロゲルへのThTの拡散. カバーガラス上に作製したRG4ハイドロゲルに、濃度10μMのThT溶液を、ハイドロゲルの上部や下部にThTが吸収されないようにして添加した。
【0187】
ゲル電気泳動解析
ポリアクリルアミドゲル(PAGE)電気泳動(12%)を、アニーリング及びライゲーションした環状テンプレートの特性評価に使用し、2%アガロースゲルを、アニーリング後の転写RNAの特性評価に使用した。プレキャストMini-PROTEAN(登録商標)トリス-トリシンSDS-PAGEゲル(16.5%)を、全無細胞発現からのレトルジマブ蛋白質の分離のために実施した。
【0188】
分解の特性評価. 10μLのRCT生成物を40μLの100%FBS(ウシ胎児血清)と混合し、RNaseに富む環境を提供した。RNAの総量を特性評価するために、各時間間隔後にサンプルを-20℃で保存して、血清のさらなる影響を最小にし、続いてワイブルフィットモデルを用いたゲル電気泳動分析のためにアニーリングした。
【0189】
タンパク質発現
11μLのRCT生成物を、NEB Express(登録商標)無細胞大腸菌タンパク質合成系(New England Biolabs)を用いた、50μLバッチの非連結翻訳のテンプレートとして使用した。キットで別途提供されるT7ポリメラーゼは意図的に除いた。翻訳は、特に指定がない限り、25℃で2時間行った。タンパク質の発現収量を高めるために、タンパク質封入(protein-encodeded)RG4ハイドロゲルをピペットチップで刺したところ、300回切断したゲルが最も収量が高かった。連結翻訳には、ライゲーションしたDNAテンプレート(1μM)、fDNA及びfRNAテンプレート、及び同等数の出発物質をコントロールテンプレートとして使用した。非連続翻訳では、10μgを使用したfRNAを除いて、製造元から提供されているマニュアルに従い、11μLの75%W-RG4を小麦胚芽抽出物と総量50μLで25℃、2時間混合した。様々な体積のテンプレート溶液を使用して、タンパク質効率を推定した。
【0190】
レトルジマブの非連結翻訳のために、NEB Expression(登録商標)無細胞大腸菌タンパク質合成系(New England Biolabs)を用いた50μLバッチの非連結翻訳のためのテンプレートとして12μLのRCT生成物を使用した。翻訳キットの成分を用いたが、この中でT7 ポリメラーゼは意図的に除いた。翻訳を30℃で8時間継続すると、最適なタンパク質発現が得られることが判明した。
【0191】
発現したHiBiTタグ付きタンパク質からの発光の特性評価
Nano-Glo(登録商標)HiBiT細胞外検出システム(Promega)において、2μLの処理後翻訳産物を8μLのHiBiT検出試薬と混合した。得られた発光シグナルを、4分間の回転振とうの後、ルミノメーター(SpectraMax M5,Molecular Devices)で特性評価した。その後、95℃、10分間の加熱阻害を行った。凝集タンパク質を可溶化するため、混合物を等量の8M尿素と2時間インキュベートした。相対発光単位(RLU)をブランク細胞の発光を基準として正規化した。
【0192】
例4. プログラムRNAゲルの設計及び組み立て
自然界に存在するテロメアRNAリピートの二次構造由来のG-四重鎖モチーフを選択し(12、13)、DNAテンプレートから転写されたRNAがビルディングブロック、架橋剤、及び機能性材料として機能するプログラム化DNA駆動型RNAゲルを作製した。また、ポリチミン(polyT)のようなスペーサー配列、又はタンパク質コード部位などの機能性モチーフを集合体に埋め込んだ。一本鎖DNAテンプレート(配列番号:4~10のいずれか)及びT7プロモータープライマー(配列番号:12)をアニールして環状DNAを形成し、その後T4酵素ライゲーションを行った(
図1A及び
図6A)。RG4は、G4の二次構造化会合により、3次元(3-D)ゲルに自己集合した。G4を形成できない意図的にスクランブルされた塩基配列(Gx)(配列番号:10)をRGxと称する比較群として作製した。RG4及びRGxを、PAGE分析によって特性評価した。RG4ゲルはバルク構造体であるため、移動せず、ウェル付近に留まったが、RG
xはウェル内を移動した(
図6B)。
【0193】
合成時間に対するRG4のゲル化を、バイアル倒立試験を用いて評価した。この実験では、ゲル化時間は、左から右に、RGxについては0、48時間、RG4については0、3、6、9、12、24、48時間であった(
図1B)。白い矢印は、RCT生成物の位置を示す(RG4ではゲル相、RGxでは溶液相)。ゲル化したRG4は、重力に対抗する強い弾性を示す単一の塊状材料として現れ、一方、RGxは、
図1Bの白い下向き矢印で示すように、容器の底に瞬時に滑り落ちる粘性の非ゲル溶液を生成した。
【0194】
また、様々なチミン数のスペーサー長(3T、10T(配列番号:38)、30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、90T(配列番号:35)、及び120T(配列番号:36))を、RG4の多彩なゲル化挙動を評価するために試験した(
図6B及び
図6C)。30Tから120Tのスペーサーは、環状テンプレートの構築に成功することで完全にゲル化し、転写収量の向上が認められた。興味深いことに、3T及び10Tの短いスペーサーを有するRG4(配列番号:38)はゲル化せず、溶液状態のままであったが、これは立体長が線状DNAが環状化するには不十分であったためである(14)(
図6B及び
図6D)。驚くべきことに、アニールしたRG4ゲルは、そのゲル特性を失い、様々な温度でインキュベートした後でもゲル特性が戻ることはなかった(
図7)。このように、RG4ゲルの作製の成功には、転写と組み合わせたG4架橋剤の遅延形成が不可欠であった。様々なスペーサー長を有するRG4ゲルのポアサイズにおけるトポロジーの違いを、原子間力顕微鏡(AFM)画像からポアの下の平均面積を使用して評価した:30T(配列番号:33)、60T(配列番号:34)、及び120T(配列番号:36)スペーサーについて、それぞれ100.1nm
2、437.2nm
2、及び3071.6nm
2(
図8)。
【0195】
RG4ゲルを円形状、三角形、長方形、星形(
図1C)及び3次元円筒形(
図1D)にセンチメートル及びマイクロメートルのスケールで精密にパターン化した(
図9A)。ゲルマトリックス中の細孔と架橋の特性を確認した(
図1E及び
図9B)。凍結乾燥したRG4ゲルは、RNAゲルの相互接続された細孔又は足場の性質に対応するしわの寄った表面形態を示した。これに対し、RGxはゲルを形成することができず、その代わりに、細孔のない、規則的なしわのない形態を示した(
図10)。
【0196】
実施例5. RNAゲルマトリックス中のG-四重鎖架橋剤の検証
工学的RG4コンカテマー(配列番号:2を含む)の構造的特徴及び塩溶液の用量に対するそれらの特異的反応を、それらの円二色性(CD)スペクトルの楕円率変化により分析したところ、G-四重鎖(15~17)の平行折りが示された(
図2A及び
図11)。RNAコンカテマー(配列番号:2を含むsG4、及び配列番号:13を含むsGx)がG-四重鎖構造を形成する能力を検出するために、蛍光ターンオンリガンド、チオフラビンT(ThT)を用いた(18、19)。蛍光強度の著しい増大が488nmで観察され(
図2B)、ThTプローブがRG4sに特異的に結合することが示された。
【0197】
RG4ゲル中のG4の存在と固有の機能を検証するために、RG4ゲルがヘミンと複合化したときにペルオキシダーゼ活性を発揮する能力を、pH4.4からpH7.9の範囲で調べた(
図2C及び
図12)。G4ドメインとヘミンの相互作用により、2,2’-アジノビス-3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS)の比色変化で特徴づけられるペルオキシダーゼ活性の著しい向上が生じた。広いpH範囲にわたってペルオキシダーゼ活性及び全体的な効率が向上したことから、ゲル内のG4架橋が足場であることに加え、酵素活性にも関することが示された(20、21)。また、G4モジュールのヘミンとの固有活性を利用して、自己ビオチン化及びストレプトアビジン結合を用いて、AFM画像においてG4の可視化も行った(22)。RG4(処理前後)では、輝点により高さプロファイルの違いが観察されたが、RGxではそのような輝点はなく、G4及び自己ビオチン化部位がないことが確認された(
図13)。
【0198】
実施例6. RG4ゲルの物理化学的及び機械的挙動の変化
ゲルの機械的特性を評価するためにRG4ゲルのヤング率を試験した。センチメートルスケールでの圧縮試験により測定したヤング率は、曲線の傾きから得られ、38.4kPaであった(23)(
図3A)。この弾性率は、既報のソフトゲルの範囲にあることが分かった(24、25)。さらに、AFMに基づくナノメートルスケールのインデンテーション試験法を用いて、フォースカーブにより、やわらかい水和サンプルの弾性率を解析した(26、27)。バイアル倒立試験と密接に対応する弾性率の時間依存的な増加が観察され(
図1B)、48時間で~10.93kPaであり(
図14A及び
図14B)、これは、DNAベースのゲルで報告されたものよりも著しく高いものであった(28)。貯蔵弾性率は24時間後の損失弾性率よりも常に高く(
図14C、
図14D)、RG4ゲル中の架橋領域により、固体的性質が支配的であったことが示唆された(29、30)(
図3B)。
【0199】
RG4ゲルの体積脱水率及び再水和率を測定することにより、RG4ゲルの保水・吸水能を解析した(
図3C及び前述した式(1))。我々の真新しいRG4ゲルは、水とハイドロゲルネットワークの強い相互作用により、1164.1%の膨潤度を有し、元の体積の1064.1%を保持する優れた保水能を示した(28)。さらに、RG4ハイドロゲルは膨潤-脱膨潤を繰り返すことができ、最大734.2%の再膨潤度を示した(
図3C)。これらの特性は、粘性環境に起因する反応ラグに抵抗することにより、転写収量の向上(
図6D)に関与している。
【0200】
多孔質ハイドロゲルへのThT及びリボソームの拡散の挙動を、実験と理論の両方で分析した。ThTの移動距離を共焦点顕微鏡で捕捉したところ、1550秒で573.4μmであった(
図3D)。我々は、理論的な仮定を裏付けるために、多孔質媒体中を輸送される分子の拡散性を定義したモデルを選択した(32)(前述した式(2)~(6))。理論推定値1及び2を用いた、深さ20μmのハイドロゲル中にリボソームが完全に拡散するのに必要な時間は(33)、それぞれ1.8秒及び2.2秒であった(
図3D及び以下の表2)。
【0201】
【0202】
リガンドの拡散速度は、リガンドがハイドロゲルネットワーク内で自由に移動できるだけでなく、その制御可能な細孔サイズを物質が出入りできることを示す。細孔サイズは、RG4ハイドロゲル内のG4構造間の計算平均距離及びAFM画像での細孔サイズ推定に基づいて推定した(
図3E及び
図15)。
【0203】
分解試験(
図4A)では、RG4及びRGx(RG4ゲル及び上清)中のRNA量をアガロースゲル電気泳動を用いて時系列的に評価した(
図4B、
図16)。3時間まではRG4上清にごくわずかな量のRNAが存在したが、48時間では最大74%のRNAが観察された(
図4C及び
図4D)。RG4のRNAは、RGx(38.3時間)よりも長い期間(48.9時間)持ちこたえ、それぞれの量は53.4%及び21.6%であった。RGxは、、同じ条件では、RG4よりも早く分解されたが、これは、RG4ハイドロゲルの高い一体性のため、及び、ゲル形態では、溶液相と比較してRNAが濃縮されているためである(11)(
図4E)。RG4中のRNA量は増加し続け、RGxとは異なり、12時間後に高い収量が得られた(
図4F)。このように、高い転写収量及び低い分解速度から観察されるRNA量の増加は、これらのRNAを翻訳することによって得られるタンパク質収量の向上にも寄与するであろう。
【0204】
実施例7. RG4ハイドロゲルによる各種タンパク質の発現の促進
1.HiBiT
RG4ハイドロゲルのそれらの特性に影響され、そのタンパク質生産能力を図示したように評価した(
図5A)。ポリTスペーサー領域をタンパク質コード配列(配列番号:21)に置換し、RG4ハイドロゲルを作製した後、タンパク質の非連結翻訳を行った。HiBiTは11アミノ酸のペプチドタグであり、in vitroシステムでは発現しにくい、内在性タンパク質や短いタンパク質分子の動態を調べるために広く用いられている(34)。
HiBiTのラージサブユニットLgBiT(登録商標)に対する高い親和性により、明るい発光シグナルが生成され、発現タンパク質の検出が簡素化される。HiBiTをコードするRG4(H-RG4)(同様の方法で作製された配列番号:14の配列を有する環状DNAテンプレートのRCT生成物)は、固有のG4を持っているものの、非堅牢性を示す粘性のように見えたが、その30T RG4ハイドロゲル(配列番号:6の配列を有する対応する環状DNAテンプレートのRCT生成物)は形成に成功した(
図17A)。我々のシステムでベストプラクティスを達成するために、我々は、30T RG4(配列番号:6の配列を有する環状DNAテンプレートのRCT生成物)を補充することによって、H-RG4をハイドロゲル化を可能にし、ワイドバンドRG4(W-RG4)を作製する方法を使用した。これらのテンプレートを融合すると、混合時の多価の相互作用により、強固なハイドロゲルが生成された(11)(
図18A~18C)。W-RG4は、混合比75%でタンパク質効率が上昇し(
図18D)、9.71kPaの弾性強度を有していた(
図18E)。次に、このW-RG4を300回切断した(
図19)。W-RG4のタンパク質発現量を遊離テンプレートと比較したところ、遊離DNAテンプレート(fDNA)に対して117倍の増強、遊離RNA(fRNA)テンプレートに対して8倍の増強が観察された(
図5B)。さらに、カオトロピック処理、反応時間、種類、容量、温度のパラメータを変化させることで、in vitroでのタンパク質発現の増強が達成された(
図21)。
【0205】
2. TATとインスリン
この確信を持って、我々はさらに、医療システムにおいて緊急の必要性のある治療用タンパク質生産の側面を探求した。タンパク質治療薬の処方物をRNAハイドロゲルを使用して合理的に送達することができるという治療上の重要性のために、トランス活性化転写活性化因子(TAT)及びインスリンタンパク質を選択した。この研究で使用したTATのコード配列は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)TATタンパク質の一部である10アミノ酸の機能性塩基領域 配列番号:24を含む(35)。この研究で使用したインスリンコード配列は、ヒトインスリンのB鎖の30アミノ酸 配列番号:23を含む(36)。
【0206】
HiBiTタグを埋め込んだTAT及びインスリンテンプレート(それぞれ配列番号:16及び18)は、fDNAテンプレートと比較して、W-RG4がそれぞれ10倍及び18倍増加した(
図5C及び
図22)。HiBiTを発現する非連結翻訳を、キャップに依存しない翻訳系として確立されている小麦胚芽系を用いて行ったところ、8倍の収量増加が観察された(
図5D)。RNA結合タンパク質(RBP)とそれに結合するRNA分子は凝縮してリボ核タンパク質(RNP)と呼ばれる膜のないオルガネラを形成し、相分離を促進する。我々の無細胞系では細胞骨格のようなオルガネラがないため、我々は、RNAがその中で播種、核形成、相分離するRNAハイドロゲルを開発した(
図5H)。また、無細胞系は短いペプチドの生産には不向きである。構造的に長いRNAを限られたスペースに配置することで、miRNAの局在化が可能になり、その結果、発現収量が増加する。この効率は、タンパク質発現に関与する配列の長さや種類によって大きく異なる(39)。転写されたRNA上のRBP(我々の場合リボソーム)の位置が足場内で近接しているため、翻訳成分が容易にアクセスできる。空間的な障害を克服し(40)、細胞機能の無細胞評価を通じて包括的な課題に取り組むことにより、効率をさらに向上させることができる(41)(
図23)。
【0207】
3. 単一ドメイン抗体レトリズマブ
また、pK7-レトリズマブ-G4プラスミドの発現カセットに由来するmRNAを介して、W-RG4アプローチを用いて14kDa単一ドメイン抗体レトリズマブのタンパク質産生を試験した(
図5E)。レトリズマブは、CD40Lを標的とする免疫調節目的のために開発されたFc修飾ヒトIgG1融合タンパク質コンストラクトである(37、38)。このアッセイのために、pIDTBlueプラスミド(Integrated DNA technologies,Coralville,IA)中のレトリズマブ-G4をNdeI及びSalIで消化し、pK7プラスミドにクローニングしてpK7-レトリズマブ-G4プラスミドを作製した。pK7-レトリズマブ-G4プラスミド20ngを無細胞発現のポジティブコントロールとして使用し、pK7-レトリズマブ-G4プラスミド20ngを、0.125μM、0.25μM、0.5μM、0.75μM、又は1μMのスペーサーテンプレート(プラスミドとスペーサーテンプレートのモル比は、60T RG4について、それぞれ、1:12.76、1:25.51、1:51.02、1:76.53、及び1:102.04)とともに転写してゲル化を誘導した。
【0208】
60T RG4テンプレートからのRCT生成物とプラスミドからのmRNA転写物が一緒になって、W-RG4ハイドロゲルを形成する。翻訳を、30℃で8時間行った。
図5F及び5Gは、60T-RG4テンプレートを使用した場合、発現が最大2倍まで増強されたことを示す。
【0209】
4.ライセート包埋W-RG4ゲルを用いたタンパク質生産
図5Iは、ライセート包埋W-RG4を用いたタンパク質産生と、細胞ライセートが存在しない状態で産生したW-RG4(ライセートフリーW-RG4)からのタンパク質産生の結果を示す。特記のない限り、本開示で開示されるW-RG4は、ライセートフリーW-RG4である。
【0210】
表3に示す以下の成分を混合することにより、ライセート包埋W-RG4ゲルを生成した。
【0211】
【0212】
75%のHiBiT-RG4テンプレート(配列番号:14)と、25%の30T-RG4用スペーサーテンプレート(配列番号:6)、90T-RG4用スペーサーテンプレート(配列番号:8)、又は150T-RG4用スペーサーテンプレート(配列番号:11)を含むテンプレート混合物1.1μlを上記転写反応混合物に添加した。75%及び25%は、全テンプレート混合物中のHiBiT-RG4テンプレート及びスペーサーテンプレートのそれぞれのモル分率を意味する。転写反応混合物を37℃で3時間又は48時間インキュベートし、この間にこれらのテンプレートからRNA転写物を生成し、ハイドロゲルを形成した。
【0213】
ライセート/Rnaseインヒビター混合物を添加しないこと以外は、上記と同様のプロトコルで、HiBiTを発現するライセートフリーW-RG4を生成した。また、ライセート包埋W-RG4の生成には0.3μLのDnaseフリー、Rnaseフリー水を使用したのに対し、ライセートフリーW-RG4の生成には3.3μLのDnaseフリー、Rnaseフリー水を使用した。
【0214】
ハイドロゲルを形成した後、NEB Express無細胞大腸菌タンパク質合成システム(NEB#E5360)を用いて翻訳反応を行った。11μlのライセートフリーW-RG4又はライセート包埋W-RG4を25μLのタンパク質合成バッファー、10μLのライセート/Rnaseインヒビター混合物(ライセートとRnaseインヒビターの体積比は12対1)、及び104μLのDnaseフリーRnaseフリー水とともにインキュベートし、タンパク質の翻訳を開始させた。翻訳反応は25℃に維持し、2時間後に終了させた。
【0215】
図5Iに示すように、3時間の転写反応で形成されたライセート包埋W-RG4(「3h w/ライセート」)は、ライセートフリーの対照サンプル(「3h w/oライセート」)と比較して、より多くのHiBiTを生成した。48時間の転写反応(ゲル調製時間)後に形成されたW-RG4から生成したHiBiT量は、3時間の転写反応後に形成されたW-RG4から生成したHiBiT量より少なく、これはハイドロゲルに包埋した細胞ライセートの包埋に伴うRNA分解に起因する可能性がある。
【0216】
翻訳反応混合物中の細胞ライセートのタンパク質産生への効果を試験し、その結果を
図5Jに示す。ライセートフリーW-RG4(「未処理W-RG4」)及びライセート包埋W-RG4ゲルを、150ポリチミン(配列番号:11)を含むスペーサーテンプレート及びHiBiT-RG4テンプレート(配列番号:14)を上述の方法でローリングサークル転写することによって生成した。ライセートフリーW-RG4を、12μLのライセートを含む翻訳混合物(NEB#E5360)とインキュベートし(「未処理ゲル」);ライセート包埋W-RG4をライセートを含まない翻訳混合物とインキュベートし(「L-ゲル」);ライセート包埋W-RG4を10μLのライセートを含む翻訳混合物とインキュベートした(「L-L-ゲル」)。3つの翻訳混合液はすべてフィード溶液(タンパク質合成用バッファーとしても知られている)を含む。これらの反応物からの相対的なタンパク質生成レベルを、RLU値によって示した。30T RG4(配列番号:6)のテンプレートからの翻訳をネガティブコントロールとして使用した。すべての翻訳反応は3時間後に終了させた。
【0217】
図5Jは、翻訳工程中にライセートを追加導入したライセート包埋W-RG4が最も高い発現収量を示したことを示す(「L-L-ゲル」)。驚くべきことに、ライセート包埋W-RG4は、細胞ライセートを翻訳反応混合物に添加しない場合(「L-ゲル」)でも、収率は低いものの、十分なタンパク質を産生することができた。ライセート包埋W-RG4からの発現が成功したことは、これらのライセート包埋W-RG4ゲルが自給的なタンパク質発現系として機能する可能性があることを示している。したがって、これらのライセート包埋W-RG4ゲルは、翻訳に外部からのライセートを使用しないことが望ましい、あるいは必要な移植型又は注射型の治療用途に有用であり得る。
【0218】
参考文献
【0219】
【0220】
参照による組み込み
アメリカ合衆国におけるすべての目的のために、本開示で言及される各出版物及び特許文書のすべては、そのような各出版物又は文書が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、すべての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0221】
特定の実施例及び図を参照して本発明を参照してきたが、日常的な開発及び最適化の問題として、また当業者の範囲内で、特定の文脈又は意図された使用に適合するように変更を加え、等価物を置換することができ、それにより、特許請求されたもの及びそれらの等価物の範囲から逸脱することなく本発明の利益を達成することができる。
【0222】
配列の説明
この例示的な配列リストにおいて、下線はG-四重鎖モチーフを表す。二重下線は、スクランブルG-四重鎖モチーフを表す。全ての配列は、5’→3’の方向で記載されている。
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】