(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057095
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F21S 41/64 20180101AFI20240416BHJP
F21S 41/25 20180101ALI20240416BHJP
F21S 41/32 20180101ALI20240416BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20240416BHJP
F21S 41/147 20180101ALI20240416BHJP
F21S 41/12 20180101ALI20240416BHJP
F21S 41/39 20180101ALI20240416BHJP
F21S 41/153 20180101ALI20240416BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240416BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240416BHJP
【FI】
F21S41/64
F21S41/25
F21S41/32
F21S41/143
F21S41/147
F21S41/12
F21S41/39
F21S41/153
F21W102:13
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034503
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2022094418の分割
【原出願日】2017-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2017012906
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】國井 康彦
(57)【要約】
【課題】視認性においてより優れた照明光を発生して照射することの可能なヘッドライト装置を備える車両を提供する。
【解決手段】
車両は、ヘッドライト装置を備え、ヘッドライト装置は、光を発生する光源と、光源からの光束の光軸上に配置され、光を路面に投射するための光学部と、光源と前記光学部の間の光路の一部に、光源からの光の偏光方向を変換可能な液晶パネルと、を有し、液晶パネルは、路面の状態に応じた電圧制御により前記偏光方向を変換可能であり、光学部は、偏光方向が制御された光を用いて、路面上の投射領域の異なる部分に、第一の偏光方向と第二の偏光方向との異なる偏光方向の光を投射する第一の投射と、路面上に前記第一の偏光方向と第二の偏光方向とのうちいずれか一方の偏光方向の光を投射する第二の投射と、が可能であり、液晶パネルは、入射側に偏光板が配置され、出射側に偏光板が配置されない構造である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
ヘッドライト装置を備え、
前記ヘッドライト装置は、
光を発生する光源と、前記光源からの光束の光軸上に配置され、光を路面に投射するための光学部と、前記光源と前記光学部の間の光路の一部に、前記光源からの光の偏光方向を変換可能な液晶パネルと、を有し、
前記液晶パネルは、前記路面の状態に応じた電圧制御により前記偏光方向を変換可能であり、
前記光学部は、前記偏光方向が制御された光を用いて、前記路面上の投射領域の異なる部分に、第一の偏光方向と第二の偏光方向との異なる偏光方向の光を投射する第一の投射と、前記路面上に前記第一の偏光方向と前記第二の偏光方向とのうちいずれか一方の偏光方向の光を投射する第二の投射と、が可能であり、
前記液晶パネルは、入射側に偏光板が配置され、出射側に偏光板が配置されない構造である、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両において、
前記液晶パネルは、TN型(Twisted Nematic)である、車両。
【請求項3】
請求項1に記載の車両において、
前記液晶パネルは、TFT型(Thin Film Transistor)である、車両。
【請求項4】
請求項2に記載の車両において、
前記液晶パネルは、カラーの液晶表示素子である、車両。
【請求項5】
請求項3に記載の車両において、
前記液晶パネルは、カラーの液晶表示素子である、車両。
【請求項6】
請求項1に記載の車両において、
前記光学部は、プロジェクタレンズと反射ミラーとのいずれか一方、または、双方により構成されている、車両。
【請求項7】
請求項1に記載の車両において、
前記光源は、
光を出射する1つまたは複数の半導体光源素子と、
前記半導体光源素子の各々の発光軸上に配置され、前記半導体光源素子から出射した光を略平行光に変換する1つまたは複数のコリメータを有するコリメータ部と、を含んで構成されている、車両。
【請求項8】
請求項1に記載の車両において、
前記液晶パネルと前記光学部の間には、更に、偏光板またはミラーを備え、
前記偏光板または前記ミラーは、前記光学手部側の面が光束の光軸に対し前記路面側へ所定の角度傾けて設置される、車両。
【請求項9】
請求項1に記載の車両において、
前記光源の出射面側に、更に、自由曲面レンズを設ける、車両。
【請求項10】
請求項1に記載の車両において、
更に、赤外光を発生するための赤外光発光部を備えている、車両。
【請求項11】
請求項10に記載の車両において、
前記赤外光発光部は、赤外光を出射する1つまたは複数の半導体赤外素子と、前記半導体赤外素子の各々の発光軸上に配置され、前記半導体赤外素子から出射した光を略平行光に変換する1つまたは複数の赤外コリメータを有する赤外コリメータ部とから構成されている、車両。
【請求項12】
請求項10に記載の車両において、
前記液晶パネルと前記光学部の間には、更に、偏光ミラーを備え、
前記偏光ミラーは、前記光学部側の面が光束の光軸に対し前記路面側へ所定の角度傾けて設置されており、
前記赤外光発光部は、出射する赤外光を前記偏光ミラーの出射面で反射して、前記光学部を介して所定の方向に投射するように構成されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体発光素子を用いたヘッドライト装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるLED等の固体発光素子の著しい発展に伴い、当該固体発光素子を光源として利用した照明装置は、小型・軽量で、かつ、低消費電力で環境保護にも優れた長寿命な光源として、各種の照明器具において広く利用されてきており、更には、車載の電子装置として各種の制御が可能な視認性にも優れた車両用のヘッドライト装置としても利用されてきている。
【0003】
例えば、従来、車両用のヘッドライト装置として、ロービーム用LED光源アレイとハイビーム用LED光源アレイと、これらLED光源からのロービーム光とハイビーム光を受けてコリメートする第1の光学ライトガイドと、コリメートされたロービーム光とハイビーム光を拡散パターンの組み合わせとして拡散する第2の光学のライトガイド等を備え、これらのアレイや光学ライトガイドをケーシング内に機械的に支持する車両用ヘッドランプは、以下の特許文献1により既に知られている。
【0004】
また、特許文献2によれば、レーザ光源を光源として利用し、簡単な構成で明るさの調整を行うことが可能な車両用灯具として、液晶部を利用するものが開示されている。具体的には、当該液晶部に、レーザ光を透過可能な非変調領域と、レーザ光の偏光成分の位相を90度変える変調領域とを形成し、液晶駆動部によって変調領域と非変調領域の範囲を調整することにより周辺光の明るさを調整する。
【0005】
加えて、以下の特許文献3によれば、アクティブ光源として複数のLEDを利用し、当該アクティブ光源からの光をコリメーション光学ユニット、ミキシング光学ユニット、フィールド光学ユニット等を介して予め定められた配向で放出するLED照明器具、特にLEDヘッドライトが開示されている。そして、特に、請求項25や段落番号0036等においては、アクティブ光源から放出された光が所望の形態でミキシング光学系に到達することを達成するための手段として、偏光または再形成するレンズまたはリフレクタなどの更なる光学要素を配置してもよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008-532250号公報
【特許文献2】特開2015-207390号公報
【特許文献3】特表2013-502679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体光源であるLEDは、その発光効率の向上に伴って車両用のヘッドランプ装置における発光源として用いることが有効となっている。しかしながら、上述した従来技術、特許文献1では、その光利用効率特性や均一照明特性において未だ不十分であり種々の改善の余地が存在する。
【0008】
また、特許文献2では、液晶部に予め形成した非変調領域と変調領域とを、液晶駆動部によって変調領域と非変調領域の範囲を調整することにより周辺光の明るさを調整するものであり、照明光を照射する領域の状態等に対応し、その偏光成分を含めて視認性に優れた照明光を得ることについては何ら記載されていない。また、特許文献3では、アクティブ光源から放出された光が所望の形態でミキシング光学系に到達するための手段として偏光レンズまたはリフレクタなどの更なる光学要素を利用するものであり、しかしながら、偏光成分を含めて視認性に優れた照明光を得ることについては何ら記載されていない。
【0009】
そこで、本発明は、モジュール化された面状の照明用光源として容易に利用可能な光源装置を利用することにより、LED光源から放射される光の利用効率が高く、かつ、均一な照明特性を向上すると共に、光を照射する路面等の状態などに適合してその偏光成分をも含めて制御することにより、視認性においてより優れた照明光を発生して照射することの可能なヘッドライト装置を備える車両を提供することをその目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための一つの実施形態として、本発明によれば、車両であって、ヘッドライト装置を備え、前記ヘッドライト装置は、光を発生する光源と、前記光源からの光束の光軸上に配置され、光を路面に投射するための光学部と、前記光源と前記光学部の間の光路の一部に、前記光源からの光の偏光方向を変換可能な液晶パネルと、を有し、前記液晶パネルは、前記路面の状態に応じた電圧制御により前記偏光方向を変換可能であり、前記光学部は、前記偏光方向が制御された光を用いて、前記路面上の投射領域の異なる部分に、第一の偏光方向と第二の偏光方向との異なる偏光方向の光を投射する第一の投射と、前記路面上に前記第一の偏光方向と前記第二の偏光方向とのうちいずれか一方の偏光方向の光を投射する第二の投射と、が可能であり、前記液晶パネルは、入射側に偏光板が配置され、出射側に偏光板が配置されない構造である、車両が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストで製造可能、かつ、小型でかつモジュール化が容易で、高い光利用効率を備えた光源装置を用いることにより、低消費電力で、環境保護にも優れ、かつ、長寿命であり、照射領域ごとに制御信号に応じて偏光方向を制御することが可能であり、もって、走行シーンに最適な光を得ることができるヘッドライト装置を備える車両が提供されるという優れた効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用のヘッドライト装置を自動車の前照灯として適用した全体構成(a)とその一部を拡大して示す斜視図(b)である。
【
図2】本発明の実施例に係る車両用のヘッドライト装置の全体構成(a)とその展開構成(b)を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置の全体構成の側面断面図(a)と、変形例に係る車両用のヘッドライト装置の全体構成の側面断面図(b)である。
【
図4】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置のコリメータユニットを中心とした可視光照明ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置におけるコリメータユニットを中心とした可視光照明ユニットの動作を示す上面断面図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置におけるコリメータユニットのコリメータの構造とその動作を示す一部拡大断面図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置の偏光方向変換装置の全体構成を示す展開斜視図(a)とその一部拡大断面図(b)である。
【
図8】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置における偏光方向変換装置の配置構成(a)と、その変形例になる配置構成(b)を示す図である。
【
図9】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置における偏光方向変換装置の動作を説明するための、電圧非印加時(a)と電圧印加時(b)における状態図である。
【
図10】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置におけるヘッドライトの制御(a)とヘッドライトの照射領域(b)を説明する説明図である。
【
図11】本発明の実施例1に係る車両用のヘッドライト装置におけるp偏光とs偏光に対する屈折率1.5の物質に対する反射率の角度特性の一例を示す図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る車両用のヘッドライト装置の全体構成を示す展開斜視図(a)とその側面断面図(b)である。
【
図13】本発明の実施例2に係る車両用のヘッドライト装置における可視光照明ユニットの偏光状態を説明する斜視図(a)とその断面図(b)である。
【
図14】本発明の実施例2に係る車両用のヘッドライト装置におけるヘッドライト装置の異なる入射角のs偏光とp偏光に対して、偏光ミラーの入射光の波長に対する偏光膜透過率を示すグラフである。
【
図15】本発明の実施例2に係る車両用のヘッドライト装置における太陽光線の分光放射照度を示す特性図である。
【
図16】本発明の実施例2に係る車両用のヘッドライト装置における赤外線照明ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【
図17】本発明の実施例3に係る車両用のヘッドライト装置の内部構成を示す展開斜視図(a)とその断面図(b)である。
【
図18】本発明のヘッドライト装置の変形例(実施例4)として、LCDパネルに対して可視光照明ユニットが小さい場合の展開斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(実施例)について、添付の図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付けて示し、また、その繰り返しの説明については省略する場合もある。
【0014】
まず、
図1には、本発明の実施例に係る、固体発光素子を用いた車両用ヘッドライト装置を搭載した車両1を、その斜視図およびその一部拡大図により示す。
図1(a)は、本発明の車両用のヘッドライト装置100を搭載した車両1の全体を示しており、
図1(b)は、当該車両のヘッドライト装置部分の拡大図を示している。
【0015】
図2(a)は、上記
図1(b)に示したヘッドライト装置100の全体斜視図であり、
図2(b)は、その内部構成を展開した状態で示している。加えて、
図3(a)は、上記ヘッドライト装置100の側面断面を、そして、
図3(b)は、変形例に係るヘッドライト装置の側面断面をそれぞれ示している。
【0016】
(実施例1)
ヘッドライト装置100は、これらの図にも示すように、基本的には、光源装置である可視光照明ユニット10と、当該照明ユニットからの出射照明光を車両1の前方空間、および車両1が走行する路面上に照射するための光学系である、いわゆる、プロジェクタレンズ50とから構成されている。更には、プロジェクタレンズ50に替えて、反射ミラー60を用いて投射光学性を構成してもよく、あるいは、
図3(b)にも示すように、プロジェクタレンズ50と反射ミラー60の双方から構成されてもよい。
【0017】
そして、これらの図からも明らかなように、本発明の実施例に係るヘッドライト装置100では、可視光照明ユニット10からの照明光の光路の一部には、その光軸に沿って、可視光照明ユニット10からの照明光の偏光方向を変える(変調する)偏光方向変換装置20が配置されている。なお、
図3(b)に示した構造によれば、
図3(a)と比較し、反射ミラー60により照射光束を所定の方向に折り曲げることにより、反射面の形状自由度により照射方向、強度の更なる精密な制御が可能になる。
【0018】
続いて、以下には、上述した本発明の実施例に係るヘッドライト装置100の各構成要件の詳細について説明する。
【0019】
<可視光照明ユニット>
本発明の光源装置である可視光照明ユニット10は、表面上に、後にも述べる一つまたは複数の固体光源である半導体光源素子LED(Light Emitting Diode)やその制御回路等を実装したLED基板11を含んでおり、当該基板の裏面には、LEDからの発熱を周囲の空気に放散するためのヒートシンク12が取り付けられている。なお、本例では、合計15個のLEDが、LED基板11上で、5(横)×3(縦)の格子状に配置されている。更に、LED基板11の発光面側には、以下に述べるコリメータユニット13が取り付けられている。
【0020】
このコリメータユニット13は、
図4にも示すように、板状の枠体の内部に、LED基板11上に搭載された単数または複数のLED111の各々に対応して設けられたコリメータ131(本例では、5(横)×3(縦)=15個)を平面上に並べて配置することにより構成される。
【0021】
なお、コリメータ131の各々は、例えば、ポリカーボネートやシリコン等の透光性と耐熱性を有する樹脂により形成されており、各コリメータ131は、
図5および
図6にも示すように、略放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面132を有すると共に、その頂部には、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)133を形成した凹部134を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でもよい)135を有している。なお、コリメータ131の円錐形状の外周面を形成する放物面(外周面)132は、LED111から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定されており、あるいは、その表面には反射面が形成されている。なお、かかるコリメータは、例えば、一般的な成形加工により容易かつ安価に製造することが可能である。
【0022】
他方、LED111は、それを搭載する回路基板であるLED基板11の表面上の所定の位置に取り付けられており、このLED基板11は、図からも明らかなように、コリメータ131に対して、各LED111が、それぞれ、対応するコリメータ131の凹部134の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0023】
かかる構成によれば、上述したコリメータ131により、LED111から放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図の右方向)に向かって放射される光は、図に矢印で示すように、コリメータ131のLED光が入射する面と出射する面に形成される2つの凸レンズ面133、135により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光も、また、コリメータ131の円錐形状の外周面を形成する放物面(外周面)132によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面(外周面)132を形成したコリメータ131によれば、LED111により発生した光のほぼ全てを、平行光として取り出すことが可能となる。これにより、発生した光の利用効率を十分に向上することができる。
【0024】
続いて、上述したコリメータユニット13の表面側には、図からも明らかなように、偏光変換素子14が、そして、更には配光を制御するための凸レンズ(レンズ面としては配光制御の自由度が大きい、例えば自由曲面を用いるとよい)15が取り付けられる。なお、この例では、偏光変換素子14により特定の偏波を選択して使用する。
【0025】
より具体的には、偏光変換素子14は、上述した
図5にも明らかなように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材141と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材142とが組み合わされ、コリメータユニット13からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列されて構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、偏光ビームスプリッタ(以下、「PBS」と省略する)膜と反射膜が設けられており、また、偏光変換素子14へ入射してPBS膜を透過した光が出射する出射面には、1/2λ位相の波長板143が設けられている。
【0026】
この偏光変換素子14の出射面側には、上述した自由曲面レンズ15が配置されている。この自由曲面レンズ15は、その出射面、または入射面もしくは出射面と入射面の両面を自由曲面で構成したものである。この自由曲面レンズ15によれば、
図5に矢印で示すように、遠方への照明を実現するため、光の分布を中央部が強くなるようにする等、レンズの面形状により光線の出射方向を制御して、所望の光度分布を有した照明光を得ることができる。
【0027】
以上にその詳細な構成を述べた可視光照明ユニット10を備えたヘッドライト装置100によれば、LED111からの出射した光は、コリメータユニット13の働きにより略平行光に変換される。その後、偏光変換素子14により直線偏光に変換され、更に、以下に詳細に説明する偏光方向変換装置20により、路面の状態等に応じて、適宜、その偏光方向を含めて変更・調整(制御)され、その後、自由曲面レンズ15により所望の光度分布が形成され、プロジェクタレンズ50、または、プロジェクタレンズ50と反射ミラー60により拡大投影されて、車両前方の空間や路面に照射される。
【0028】
<偏光方向変換装置>
偏光方向変換装置20は、後にも説明する制御信号により、車両の走行シーンに最適な、即ち、光路面の状態等に応じて可視光照明ユニット10からの照明光を適宜その偏光方向を含めて変更・調整(制御)する機能を実現するものである。具体的には、本実施例では、
図7にも示すように、TN型(Twisted Nematic)LCD(Liquid Crystal Display)により構成されており、可視光照明ユニット10からの照明光が照射される路面に対応するLCDの表面位置を通過する照明光を、その偏光方向を含めて制御するものである。
【0029】
具体的には、
図7(a)および(b)からも明らかなように、偏光方向変換装置20を構成するLCDパネルは、対向面に配向膜が形成された一対のガラス基板22、22の間に液晶組成物23を挟み込んで形成された多数(例えば、縦1920×横1080)のピクセルにより構成されており、その一方の面に入射した光を、各々のセルを透過させて他方の面から出射する。その際、各ピクセル内で対向して配置された配向膜の間に電圧(制御信号)を印可することによって、光が通過する各々のセルを構成する液晶組成物の特性を変化させることにより、所望の偏光を含めた変化・調整を行うことができる。
【0030】
図8(a)は、通常のTN型LCDパネルを使用する場合と同様に、LCDパネル20の前後に偏光板31、32を配置した構成を示している。なお、このLCDパネル20は、図にも示すように、光源装置である可視光照明ユニット10からの照明光の光路上に配置する。なお、この例では、得られる映像のコントラスト性能を向上するため、照明光束が入射する位置にp偏光が透過することで偏光度を向上させるための偏光板31(入射側偏光板と記述する)を配置する。また、同様に、LCDパネル20の光出射側にはp偏光を吸収する偏光板32(出射側偏光板と記述する)を配置する。その結果、光源装置で生成したp偏光光束の偏光度を入射側偏光板31で向上させ、LCDパネルの持つ偏光方向変換機能で高いコントラスト性能を得ることができる。また、
図8(b)は、上述した構成のLCDパネル20から後方の出射側偏光板32を取り除いた、変形例に係る構成を示している。
【0031】
上記に述べたTN型LCDパネルからなる偏光方向変換装置20における各ピクセルでの入射光の偏光方向の変換機能(動作)について、以下に
図9を参照しながら説明する。
【0032】
以上に述べたTN型LCDパネルからなる偏光方向変換装置20によれば、
図9(a)に示すように、各々のピクセルでは、その配向膜間に電圧を印加しない時、偏光の方向を回転させる作用を有し、例えば、pからs偏波に変換され(図の白抜きの矢印を参照)、出射側偏光板32を通過する(いわゆる、ホワイトモード)。一方、
図9(b)に示すように、所定の電圧(V)を印加した場合には、偏光方向は変化しない。そのため、p偏波のままの光は、出射側偏光板32により遮断される(いわゆる、ブラックモード)。
【0033】
そこで、本発明の実施例に係る偏光方向変換装置20では、出射側偏光板32におけるp偏光の透過率(偏光度数)を大きく、即ち、p偏光の遮光率を低く設定すること(適宜調整すること)により、p偏波のままの光をも出射側で得られるようにする。なお、その一例として、出射側偏光板32の透過率は、光を透過または遮光する制御を行なう場合p偏波の透過率は0.01から0.1%の範囲で設定することが好ましい。一方、偏光変換とコントラスト(透過率/吸収率)を両立させるためにはp偏波の透過率は1から40%の範囲が良好であり、偏光変換が目的の場合にはp偏波の透過率は80%以上が好ましく、
図8(b)に示すように出射側偏光板32を使用しない場合でもよい。または、これに替えて、上記
図8(b)にも示すように、LCDパネルの出射側には出射側偏光板32を配置しない(取り除いた)構造としてもよい。
【0034】
上述した偏光方向変換装置20によれば、TN型LCDパネルを構成する各ピクセルの配光膜に引加される電圧によって、入射した特定の偏波が回転する(捩じれる)角度が変化し、このことにより、路面上に照射される照明光束を、路面の状況に応じて適宜選択(制御)することが可能である。その結果、出射側偏光板32の透過率が変化し、印加電圧に応じて照明光束の強度が変化する。即ち、路面上に照射される照明光束を、その照射位置(即ち、LCDパネルを構成するピクセルの位置)に応じて、その偏光方向も含め、適宜制御することが可能となり、ドライバーの視認性を向上する、より優れた照明光が得られることとなる。
【0035】
すなわち、偏光方向変換装置として用いるTN型LCDパネル(ノーマリーホワイトのパネル)によれば、電圧を印加しない時、偏光の方向を回転させる作用を有し、pからs偏波に変換され、一方、所定の電圧を印加した場合には、偏光方向が変化しない。さらに、引加される電圧によって入射した特定の偏波が回転する(捩じれる)角度が変化することから、出射側の偏光板の偏光度(特定偏波の透過率と他方偏波の透過率の比)を適宜設定する(または、出射側の偏光板を設けない)ことにより、印加電圧に応じて照明光束の偏光方向を含めて制御することができる。説明の都合上、TN型の液晶パネルについて述べたが、偏光方向変換装置としてTFT(Thin Film Transistor)型の液晶パネルを使用してもよい。
【0036】
次に、以上に述べた偏光方向変換装置20を備えた本発明の実施例に係るヘッドライト装置100により、ステアリングの角度や前方監視カメラからの外部信号や制御装置のON、OFFに応じて生成する制御信号に合わせ、ヘッドライトの偏光方向や配光特性を制御する技術について以下に説明する。
【0037】
走行中の自動車のヘッドライト装置の明るさ、照射範囲、偏光度の制御方法について、
図10を用いて説明する。
図10(a)は、走行中の自動車の上面図であり、符号113は前方監視用のセンシングカメラで、前方車や障害物の有無を検知し、この例では、車両用ヘッドライト装置は、自動的に車両用ヘッドライト装置の照射範囲や照射光の強弱を制御する。
【0038】
図10(b)に示す例では、車両用ヘッドライト装置は、自動車に近い領域を照射するいわゆるロービーム(Low-Beam)領域では、特に、雨天時には、路面の水溜りでの反射を軽減するために、p偏波の光を照射する。他方、同時に、遠方を走行する前方車や障害物を視認するための遠方領域では、s偏波の光を照射することができる。このように、本発明の実施例に係る車両用ヘッドライト装置によれば、必要な光の照射範囲において最適な偏波の光を選択的に照射することができ、その結果、視認性の大幅な向上が期待できる。
【0039】
また、本発明の実施例に係る車両用ヘッドライト装置では、ステアリングの回転角度や運転者の瞳の位置をカメラで監視することで注視点の移動を検知し、それに合わせて照射領域を116-1から116-2に自動的に変更する。この時、照明装置からの光束強度(明るさ)を制御信号に合わせて変調することで、視点の移動中にも光束の照射強度と照射領域を最適にすることが可能となる。同図(b)において破線で示す領域は車両用ヘッドライト装置を無制御で点灯した場合の照射領域を示したものである。
【0040】
例えば、悪天候の場合等において、光源装置からの照明光が路面上で反射することや雨滴/霧により反射することの抑制を目的として、路面に対して垂直な平面内で振動する直線偏光である、p偏光に変換するように構成するとよい。他方、運転中の遠方視界で対象物の視認性を向上するためには
図11に示すようにp偏光に比べて反射率が高いs偏光の光を照射するとよい。即ち、照射対象物や距離によって従来の自然光を照射するヘッドライトに対して選択的に特定偏波を使用すると視認性の優れた車両用ヘッドライト装置が実現できる。
【0041】
このように、上述した車両用のヘッドライト装置によれば、LEDの採用により低消費電力でかつ環境保護にも優れ、長寿命であり、低コストで製造可能、かつ、小型でかつモジュール化が容易で、高い光利用効率を備えると共に、照射範囲において最適な偏波の光を含めて選択的に照射することによって視認性に優れた照明光を発生することが可能な、機能的にも優れた車両用ヘッドライト装置が提供されることとなる。すなわち、車両の走行シーンに最適な光を得ることができる車両用のヘッドライト装置が提供される。
【0042】
以上述べた制御の他に、本発明の実施例では制御信号に合わせて偏光方向と強度および照射領域をステアリングの角度や車線観視カメラからの外部信号や制御装置のON、OFFに応じて生成する制御信号にヘッドライトの照射光、照射領域、偏光方向を制御する。この結果、従来のハイビーム(High-Beam)とロービーム(Low-Beam)の間で変化して、例えば雨天時に路面に生じた水溜り表面でのヘッドライト装置の照射光は反射が少ないp偏波とし、遠方の対象物を視認し易いようにs偏波とする。この時、照射光強度も合わせて変調することで照射領域の最適化が実現できる。
【0043】
以上には、本発明の実施例に係るヘッドライト装置について、その主な構成要件を中心として詳細に述べたが、以下には、その変形例を含めた他の実施例について詳細に述べる。
【0044】
(実施例2)
図12(a)および(b)には、上記でその基本的な構成を述べた車両用のヘッドライト装置100において、更に、偏光方向変換装置20である液晶パネル(LCDパネル)の出射側に偏光ミラーまたは偏光板30を傾斜して設けた構成を示す。かかる構成によれば、偏光方向変換装置20を構成するLCDパネルのオン/オフを制御することによって配光を細かく制御することで、対向車線を走行する車や同一車線を走行する車への眩惑を抑制しつつ、遠方の視認性を確保した照明が可能となる。また、偏光方向変換装置20を構成するLCDパネルを、例えば、カラーの液晶表示素子(具体的には、ここでは図示しないが、
図7のLCDパネルガラス基板の一方にカラーフィルタを設ける)とすることにより、自車両の走行速度や方向などを含めた運転状態を示す情報やその他の車両の運転に関する各種の情報を、照明光を利用して、夜間に限らず、昼間においても、路上に表示するようにしてもよい。
【0045】
なお、これらの図では、上記のLCDパネル20は、光源装置である可視光照明ユニット10からの照明光の光路上に、より具体的には、可視光照明ユニット10の自由曲面レンズ15とプロジェクタレンズ50との間に配置した構成を示している。また、図中の符号21は、LCDパネル20に電気的に接続されたFPC(FLEXIBLE PRINTED CIRCUITS:フレキシブル配線基板)であり、LCDパネル20は、当該FPC21を介して制御回路(ここでは図示せず)から入力される制御信号によって制御される。
【0046】
ところで、車両用のヘッドライト装置100内にLCDパネル20を設けた場合には、外部から入射する太陽光の照射による焼けやその特性の劣化等が考えられる。このことから、本実施例では、その防止対策として、更に、偏光ミラー30を、プロジェクタレンズ50との間に配置している。なお、上述した位置に偏光ミラー30に変えて反射型の偏光板を配置しても同様の効果が得られる。
【0047】
次に、路面上に情報を投影する場合には、LCDパネル20の画素ごとにプロジェクタレンズ50を通して路面に投影される像の距離が異なる為、フォーカス性能の低下が発生することから、路面上に投影される像で発生するデフォーカス量を低減するため、LCDパネルは光軸に対して傾斜して配置することが好ましい。そのため、本実施例では、
図12にも示すように、LCDパネル20は、その出射面が上方に角度θp(例えば、10~15度)だけ光軸に対して傾斜して配置されている。また
図12に示すLCDパネル20は光軸に対して傾斜しているが、路面に情報を表示せず通常のヘッドランプとして使用する場合については、LCDパネルを光軸に対して、傾斜させなくてもよい。
【0048】
また、この時、LED111からの出射光は、LCDパネル20を透過する際にその偏光方向が90度回転する。このことから、上述した偏光変換素子14は、
図13(a)にも示すように、可視光照明ユニット10から路面に対して水平な平面で振動する直線偏光(p偏光:紙面に平行な偏光)に変換されるように構成することが望ましい。本実施例において偏光変換素子14は、
図13(b)に示すように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材141と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材142とが組み合わされ、コリメータユニット13からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列されて構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、PBS膜と反射膜が設けられており、また、偏光変換素子14へ入射してPBS膜を反射した光が出射する出射面には、1/2λ位相の波長板143を設けることで、p偏光を照射することが可能となる。
【0049】
他方、偏光ミラー30(
図12を参照)は、光軸に対して、その出射面が下方に45度以上、より好ましくは、60度の角度θoで傾斜して取り付けられている。本実施例では、
図12に示すように角度θoは、60度に設定されている(θo=60°)。なお、この偏光ミラー30の傾斜角度θoは、45度以上にすることにより偏光ミラー30のp偏光透過率を高く保ったまま、外部から入射するs偏光の反射率を高くすることができることによる。更に、偏光ミラー30の出射面を、光軸に対して上方ではなく、下方に傾けることによれば、図にも示すように、水平(光軸)方向に対して上方から入射する太陽光に対する偏光ミラーの法線面の角度θsを、より大きく設定することが可能となる。
図14は偏光ミラー30として設計した膜の偏光膜透過率特性を示している。偏光ミラーにより選択的にs偏光の透過率が低減していることと入射角が大きくなるほどその効果が大きくなっていることが分かる。そのため、偏光ミラー30により太陽光におけるs偏光成分の透過率が低くなり、LCDパネル20へ到達する太陽光の強度が弱められ、LCDパネル20の太陽光による焼けや特性劣化が防止/抑制されることとなる。
【0050】
太陽光の分光放射エネルギーは
図15に示すように380nmから780nmまでの可視光領域以外の領域、特に780nm以上の波長領域の近赤外および赤外領域においても十分なエネルギーを持っている。このため偏光ミラー30は、赤外光に対しては、その透過率が低くなる特性とすることで、太陽光に含まれて赤外光成分を低減して、より一層、太陽光による焼けや特性劣化を防止することができる。また、斜めに配置した偏光ミラー30の板厚tは、コマ収差、非点収差の発生要因ともなることから、当該板厚tは、1.5mm以下、強度の関係から0.6mm以上が好ましい。
【0051】
加えて、上述したようにLCDパネル20を設ける場合には、上記可視光照明ユニット10内において偏光変換素子14の出射面側に設けられる自由曲面レンズ15は、当該LCDパネル20に入射する光の分布がその中央部で強くなるように集光するようにその自由曲面が設定される。これにより、ヘッドライト装置で要求される遠方への照明光の照射を実現することが可能となる。
【0052】
以上に詳細を述べたヘッドライト装置によれば、LED111からの出射光は、コリメータユニット13により略平行光に変換され、偏光変換素子14により紙面に平行なs偏光に変換される。この出射光は、自由曲面レンズ15により、その中央部での光強度が強くなるように集光されてLCDパネル20上に照射され、当該LCDパネル20により各種情報の映像光に光変調されて透過し、偏光ミラー30へ出射される。その際、偏光変換素子14で変換されたs偏光は、当該LCDパネル20によりp偏光に変換されることから、偏光ミラー30に対しては効率良く、具体的には、80%以上の光が透過することとなる。この偏光ミラー30を透過した光は、更に、プロジェクタレンズ50により拡大投影されて、路面上または/および前方に照射される。
【0053】
ここで、上述したLCDパネル20に加えて、上記
図12にも示すように、更に、赤外光を照射する赤外線照明ユニット40を設けることも可能である。なお、この赤外線照明ユニット40は、例えば、夜間における車両の外部の状況を検出する赤外線センサ(ここでは図示せず)のための赤外光を照射するものである。図示の例では、ヘッドライト装置は、上記偏光ミラー30を利用することにより、可視光照明ユニット10からの照明光に赤外線照明ユニット40からの赤外光を重畳し、照明光として車両前方の路面に照射する。
【0054】
赤外線照明ユニット40は、
図16に示すように、上記の可視光照明ユニットと同様に、1つまたは複数の固体光源である半導体赤外LED(Light Emitting Diode)41を赤外LEDコリメータユニット42に取り付けて構成される。図示の例では、一例として、複数の(7個)の赤外LED41を、一列に配列し、それぞれが赤外LEDコリメータユニット42を構成する赤外LEDコリメータ421の凹部(上記
図6の符号134を参照)の中央部に位置するように固定された例を示している。なお、ここでは図示されないが、赤外LED41も、上記LED111と同様に、制御回路などを実装した基板上に配置され、かつ、当該基板の裏面には、LEDからの発熱を周囲の空気に放散するためのヒートシンクが取り付けられていることは当業者であれば当然であろう。
【0055】
この赤外線照明ユニット40は、上記
図12にも明らかなように、上述した偏光ミラー30を利用して配置されており、即ち、一例として、その出射面を光軸に対して所望の角度だけ傾斜して取り付けた偏光ミラー30の光軸より下方に配置されている。これによれば、赤外LED41から出射した赤外光は、偏光ミラー30の表面で反射し、可視光照明ユニット10からの照明光に重畳されて車両前方の路面に照射されることとなる。その際に、太陽光の偏光ミラー30で反射された成分が赤外線照明ユニット40に入射しない設置角度とすることが望ましい。
【0056】
このように、以上に詳述した実施例2によれば、太陽光による劣化を防止しながら配光制御を可能にするLCDパネルと共に、赤外光の照射が可能な赤外線照明ユニットを搭載することにより、その機能性においても更に優れたヘッドライト装置を、上述した実施例1と同様に、低コストで製造可能であり、かつ、小型化やモジュール化を容易にする効果を達成する。
【0057】
(実施例3)
更に、
図17には、上記実施例1または2の構成に加えて、ヘッドライト装置の内部において、シェード60を設けた構成の例を示す。なお、このシェード60は、車両がすれ違う際に発生する、自動車用灯具からの光線が互いにすれ違うビーム(いわゆる、ロービーム)に対して要求されるヘッドライトカットライン(配光)を形成することを可能にするものである。図にも示すように、このシェード60は、遮光部材により所定の形状に形成した部材によって構成されており、プロジェクタレンズ50の焦点近傍に配置されて固定される。
【0058】
このようなシェード60によれば、上記の可視光照明ユニット10からの照明光の一部を遮断することによりすれ違いビーム(いわゆる、ロービーム)で要求されるカットラインなど照明光の照射パターンを形成することが可能となる。なお、このシェード60は、図示したような固定式の他に、ここでは図示しないが、例えば、電動モータ等の回転機構を設けることによってその位置を移動可能とし、走行ビーム(いわゆる、ハイビーム)と共用させることも可能である。
【0059】
以上のように、実施例3によれば、更にその機能性に優れたヘッドライト装置を、低コストで製造が可能であり、ヘッドライト装置を小型化し、かつ、モジュール化を容易にすることが可能となる。
【0060】
(実施例4)
更に、
図18には、上記実施例の構成の変形として、LCDパネル20に対して、光源装置である可視光照明ユニット10が小さい場合の構成例を示す。
LCDパネル20に対して可視光照明ユニット10が小さい場合には、自由曲面レンズ15により、偏光変換素子14から照射される略平行光を、LCDパネル20のサイズに
合わせて絞り込む必要がある。
図18において、自由曲面レンズ15は、入射面と出射面をそれぞれ凸形状とすると共に、偏光変換素子とLCDパネル20の距離を長くとることで、絞り込みを実現している。また、小さなLCDパネル20からの光を、プロジェクタレンズ50を介して、広い配光角で光を放射するために、プロジェクタレンズ50の焦点距離を短くし、LCDパネル20とプロジェクタレンズ50の距離を短くしている。
【0061】
以上のように、実施例4によれば、より小さなLEDパネルを使用することで機能性に優れたヘッドライト装置を、低コストで製造が可能であり、ヘッドライト装置を小型化し、かつ、モジュール化を容易にすることが可能となる。また、以上に詳述した本発明に係る車両用のヘッドライト装置によれば、高い光利用効率を備え、低消費電力で、環境保護にも優れ、かつ、長寿命な車両用ヘッドライト装置を実現することが可能となる。
【0062】
以上、本発明の種々の実施例に係るヘッドライト装置を備える車両について述べた。しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0063】
100…ヘッドライト装置、10…可視光照明ユニット、11…LED基板、111…LED、12…ヒートシンク、13…コリメータユニット、131…コリメータ、132…外周面、133…凸部(凸レンズ面)、134…凹部、135…凸レンズ面、14…偏光変換素子、143…1/2λ位相の波長板、15…自由曲面レンズ、20…偏光方向変換装置(TN型LCDパネル(液晶パネル))、30…偏光ミラー、40…赤外線照明ユニット、41…赤外LED、42…赤外LEDコリメータユニット、50…プロジェクタレンズ、60…反射ミラー、110…自動車、113…前方監視カメラ、115…ヘッドライト装置の自車近傍照射領域、116-1…ヘッドライト装置の自車遠方照射領域(制御前)、116-2…ヘッドライト装置の自車遠方照射領域(制御後)、117…前方車両。