IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイレックス・テクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-通信端末、および、走行状況表示方法 図1
  • 特開-通信端末、および、走行状況表示方法 図2
  • 特開-通信端末、および、走行状況表示方法 図3
  • 特開-通信端末、および、走行状況表示方法 図4
  • 特開-通信端末、および、走行状況表示方法 図5
  • 特開-通信端末、および、走行状況表示方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057131
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】通信端末、および、走行状況表示方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240417BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240417BHJP
   G06Q 10/08 20240101ALI20240417BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240417BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240417BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240417BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20240417BHJP
【FI】
G05D1/02 Z
G06Q50/04
G06Q10/08
G05D1/02 G
G08G1/00 X
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163639
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】垣田 聖美
(72)【発明者】
【氏名】市川 正太
(72)【発明者】
【氏名】神谷 宗利
【テーマコード(参考)】
5H181
5H301
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H181AA15
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC17
5H181CC24
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL09
5H181MA42
5H181MC27
5H301AA01
5H301AA09
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301EE02
5H301EE04
5H301EE12
5H301EE22
5H301HH01
5H301JJ01
5L010AA16
5L049AA16
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】搬送台車の走行状況を時系列に従って容易に把握可能な走行状況の表示を行う通信端末を提供する。
【解決手段】通信端末103は、制御サーバ102からイベントログを取得する通信端末であって、特定のイベント情報、特定の搬送台車識別子、または、軌道モジュール識別子を含むユーザからの要求を受け付ける入力部208と、要求に基づいてイベントログから特定のイベント情報を抽出する抽出部202と、抽出した特定のイベント情報に基づいて乗移りイベントが発生したか否かを判定し、判定の結果、乗移りイベントが発生したと判定した場合、イベント情報から乗移りイベント時刻、乗移り前の軌道モジュール、および乗移り後の軌道モジュールを含む乗移りイベントの情報を通知するイベント判定部205と、乗移りイベントの表示を含んだ、搬送台車の走行状況を示す走行状況表示用画面を表示する表示部207とを備える。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送台車が複数の軌道モジュールからなる走行軌道を走行する搬送システムにおいて、前記搬送台車を制御すると共に搬送台車の走行状況のイベントログを収集する制御サーバから前記イベントログを取得する通信端末であって、
特定のイベント情報、特定の搬送台車識別子、または、軌道モジュール識別子を含むユーザからの要求を受け付ける入力部と、
前記要求に基づいて前記イベントログから特定のイベント情報を抽出する抽出部と、
前記抽出した特定のイベント情報に基づいて乗移りイベントが発生したか否かを判定し、
前記乗移りイベントが発生したと判定した場合、前記イベント情報から、乗移りイベント時刻、乗移り前の軌道モジュール、および乗移り後の軌道モジュールを含む乗移りイベントの情報を通知するイベント判定部と、
前記乗移りイベントの情報に基づいて、前記乗移りイベントの表示を含んだ、前記搬送台車の走行状況を示す走行状況表示用画面を表示する表示部と、
を備える、
通信端末。
【請求項2】
搬送台車が複数の軌道モジュールからなる走行軌道を走行する搬送システムにおいて、前記搬送台車を制御すると共に搬送台車の走行状況のイベントログを収集する制御サーバから前記イベントログを取得する通信端末における走行状況表示方法であって、
特定のイベント情報、特定の搬送台車識別子、または、軌道モジュール識別子を含む要求を受け付ける受付ステップと、
前記要求に基づいて前記イベントログから特定のイベント情報を抽出する抽出ステップと、
前記抽出した特定のイベント情報に基づいて乗移りイベントが発生したか否かを判定し、
前記移りイベントが発生したと判定した場合、前記イベント情報から、乗移りイベント時刻、乗移り前軌道モジュール、および乗移り後の軌道モジュールを含む乗移りイベントの情報を決定するステップと、
前記乗移りイベントの情報に基づいて、前記乗移りイベントの表示を含んだ、前記搬送台車の走行状況を示す走行状況表示用画面を表示させる表示ステップと、
を含む、
走行状況表示方法。
【請求項3】
前記走行状況表示画面は、
時間軸に沿って平行に配置された複数の軌道モジュールに対応するモジュール表示軸と、
前記イベントログに基づき、前記搬送台車が走行する軌道モジュールのモジュール表示軸上に図示される走行表示と、
前記モジュール表示軸上に対して直角に図示され、前記イベント情報に含まれる特定のイベント情報に対応した時刻を示す時刻マーカーと、
をさらに含み、
前記表示ステップに含まれる乗移りイベントの表示は、
前記乗移りイベントが発生した時刻に相当する座標位置に表示され、乗移り前軌道モジュールのモジュール表示軸上から乗移り後軌道モジュールのモジュール表示軸上に向かう標示と、
乗移りイベントが発生した時刻表示と、
を含む乗移りイベントメッセージによる、
請求項2に記載の走行状況表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末、および、走行状況表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1乃至複数の搬送台車が、軌道に沿って自律的に走行しながら生産資材や生産物を運搬する搬送台車走行システムが知られている。搬送台車走行システムは制御装置を備え、当該制御装置は搬送台車の走行状況の管理、監視、走行する搬送台車の制御中に発生し得る種々の状況、および搬送台車が行う動作の状況について、逐次ログ情報として記録を行う。また、搬送台車走行システムは、搬送台車が走行するための軌道を延長して走行範囲を拡張した単位または一定の面積ごとの区間に、論理的に区切った複数の軌道モジュールにより構成される場合がある。
【0003】
このような搬送台車走行システムでは、管理者が把握しやすいように、搬送台車の稼働状況の情報等をモニタ等に表示することが行われている。ここで、特許文献1には、時刻情報、時刻情報に対応する運搬車の位置情報を所定時間ごとに指定して蓄積し、指定された分析場所と時間帯において指定された項目の運搬台車の稼働状況を表示する稼働状況表示システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-111381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の稼働状況表示システムでは、単に運搬車がリアルタイムに稼働している状況を図示しているにすぎない。例えば、管理者が、トラブルシューティングを行うために、ログ情報を用いて過去に遡って状況を把握することができないという課題があった。また、運搬車が軌道モジュールを乗移りながら走行する際トラブルが発生した場合に、トラブルが発生するまでの間にどのように軌道モジュールを遷移しながら走行したのかを知ることができなかった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その主要な目的は、搬送台車の走行状況を時系列に従って容易に把握可能な走行状況の表示を行う通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る通信端末は、搬送台車が複数の軌道モジュールからなる走行軌道を走行する搬送システムにおいて、搬送台車を制御すると共に搬送台車の走行状況のイベントログを収集する制御サーバからイベントログを取得する通信端末であって、特定のイベント情報、特定の搬送台車識別子、または、軌道モジュール識別子を含むユーザからの要求を受け付ける入力部と、要求に基づいてイベントログから特定のイベント情報を抽出する抽出部と、抽出した特定のイベント情報に基づいて乗移りイベントが発生したか否かを判定し、判定の結果、乗移りイベントが発生したと判定した場合、イベント情報から、乗移りイベント時刻、乗移り前の軌道モジュール、および乗移り後の軌道モジュールを含む乗移りイベントの情報を通知するイベント判定部と、乗移りイベントの情報に基づいて乗移りイベントの表示を含んだ搬送台車の走行状況を示す走行状況表示用画面を表示する表示部とを備える。
【0008】
これによれば、通信端末は制御用サーバから取得したイベントログを基にして、搬送台車がどの時刻にどの軌道モジュールからどの軌道モジュールに乗移ったのかを自機が備える表示部に図示することができ、ユーザの利便性を向上することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る走行状況表示方法は、搬送台車が複数の軌道モジュールからなる走行軌道を走行する搬送システムにおいて、搬送台車を制御すると共に搬送台車の走行状況のイベントログを収集する制御サーバからイベントログを取得する通信端末における走行状況表示方法であって、特定のイベント情報、特定の搬送台車識別子、または、軌道モジュール識別子を含む要求を受け付けるステップと、要求に基づいてイベントログから特定のイベント情報を抽出する抽出ステップと、抽出した特定のイベント情報に基づいて乗移りイベントが発生したか否かを判定し、判定の結果、乗移りイベントが発生したと判定した場合、イベント情報から、乗移りイベント時刻、乗移り前軌道モジュール、および乗移り後の軌道モジュールを含む乗移りイベントの情報を決定するステップと、乗移りイベントの情報に基づいて乗移りイベントの表示を含んだ搬送台車の走行状況を示す走行状況表示用画面を表示させる表示ステップとを含む。
【0010】
これによれば、上記通信端末と同様の効果を奏する。
【0011】
また、走行状況表示画面は、時間軸に沿って平行に配置された複数の軌道モジュール対応するモジュール表示軸と、イベントログに基づき、搬送台車が走行する軌道モジュールのモジュール表示軸上に図示される走行表示と、モジュール表示軸上に対して直角に図示され、イベント情報に含まれる特定のイベント情報に対応した時刻を示す時刻マーカーと、をさらに含み、表示ステップに含まれる乗移りイベントの表示は、乗移りイベントが発生した時刻に相当する座標位置に表示され、乗移り前軌道モジュールのモジュール表示軸上から乗移り後軌道モジュールのモジュール表示軸上に向かう標示と、乗移りイベントが発生した時刻表示とを含む乗移りイベントメッセージによることが望ましい。
【0012】
これによれば、搬送台車の走行状況を、時間の経過に沿ってより具体的に図示することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トラブル解析時など、重要なイベントが発生した際に、搬送台車が複数存在する軌道モジュールのうち、いずれの軌道モジュールを走行していたのか、蓄積されたログ情報に基づいて具体的に図示することができ、ユーザの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る搬送台車走行システムの概要を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る操作用端末の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、搬送台車が各軌道モジュールを乗移る際の走行状況の一例を示す図1の一部を拡大した模式図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る操作用端末の表示部に表示される、搬送台車の走行状況を示す走行状況表示画面の例である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る操作用端末が制御用サーバよりイベントログを取得し、搬送台車の走行状況を表示部に図示するまでの一連の動作を示す処理フローである。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る操作用端末が備えるイベント判定部が搬送台車の走行状況に関するイベント情報を判定する際の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
[実施の形態]
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る搬送台車走行システムの概要を示す模式図である。
図1に示されるように、搬送台車走行システム100は、搬送台車101a~101d(総称して搬送台車101とも呼ぶ。)、制御用サーバ102、操作用端末103、無線アクセスポイント104a、104b(総称して無線アクセスポイント104とも呼ぶ。)、走行軌道107を備える。また、走行軌道107の沿線の複数のエリアには、搬送台車101が運搬するための資材や製造物等を提供または受け入れを行う装置(例えば半導体の製造装置等(図示せず))が設置され得る。なお、走行軌道107は、後述する軌道モジュール106a~106gを含む。
【0017】
操作用端末103は、ユーザ105によって操作され、制御用サーバ102が収集した搬送台車101に関するログ情報に基づいて搬送台車の走行状況表示画面を表示したり、制御用サーバ102に対して指示を送信したりするための通信端末である。操作用端末103は、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、またはスマートフォン等である。
【0018】
制御用サーバ102は、走行軌道107に存在する複数の搬送台車101の各種制御を行ったり、搬送台車101の稼働状況について情報を収集したりするためのサーバ装置である。制御用サーバ102は、搬送台車101と後述する無線アクセスポイント104を介してネットワーク接続され、搬送台車101に制御用のコマンドを送信する。また、制御用サーバ102は搬送台車101から当該台車の稼働状況(例えば走行中の軌道モジュール)に関する情報を収集し、ユーザ105の指示に基づいて操作用端末103に対して当該収集した稼働状況に関する情報を操作用端末103に無線アクセスポイント104を介して送信する。
【0019】
搬送台車101a~101dは、走行軌道107を走行する車両であり、例えば懸垂式昇降搬送台車(OHT(Overhead Hoist Transport)台車)である。搬送台車101は、人が乗車することなく走行し、また、自律的または遠隔操作(例えば、制御用サーバ102が送信する制御用コマンド等)に基づいて走行する車両である。搬送台車101は走行軌道107上に複数存在する。なお、それぞれの搬送台車101は、一意の番号等である搬送台車識別子により識別される。
【0020】
走行軌道107は、搬送台車101が走行するための物理的な走行経路である。走行軌道107は主に工場等の施設内の天井または床面等に設けられる。走行軌道107は懸垂レール、案内用磁気テープ、および軌条等により実現されてよい。
【0021】
軌道モジュール106a~106g(軌道モジュール106と総称する。)は、制御用サーバ102が走行軌道107をそれぞれのエリアに分けて管理するための論理的な単位を示す。なお、軌道モジュール106のそれぞれは、軌道モジュール識別子のような一意の番号等により識別される。また、特定の搬送台車101が、軌道モジュール106の境界を越えて別の軌道モジュール106に移動することを「乗移り」と呼ぶ。
【0022】
ここで、乗移りについて、図3を用いて説明する。図3は、図1に示される搬送台車走行システム100の走行軌道の一部分を拡大した模式図である。図3における矢印301a~301cは、それぞれ、搬送台車101a~101cの進行方向を表している。また、図3では、搬送台車101aが進行方向301a方向に走行し、軌道モジュール106gの境界を越え、軌道モジュール106aに進入する乗移りの状態が示されている。同様に、搬送台車101cについても進行方向301c方向に走行するのに際し、軌道モジュール106gの境界を越えて軌道モジュール106bに進入する乗移りの状態が示されている。なお、搬送台車101bについては、軌道モジュール106g内を進行方向301b方向に走行中である様子が示されている。
【0023】
図1に戻って、無線アクセスポイント104は、走行軌道107の近傍に複数設置され、所定の無線通信規格(例えば、IEEE802.11ac等)に基づいて搬送台車101との間で無線通信を行う。具体的には、無線アクセスポイント104は、制御用サーバ102と有線接続され、制御用サーバ102が送信する制御用コマンドを搬送台車101に向けて中継したり、搬送台車101が送信する自機の稼働状況に関する情報等を制御用サーバ102に向けて中継する。また、無線アクセスポイント104は、操作用端末103と、制御用サーバ102との間における通信を中継する役割も担う。なお、中継する通信は単一の無線アクセスポイント104が搬送台車101、制御用サーバ102間の通信および操作端末103および制御用サーバ102間の通信を中継する構成であってもよい。また、搬送台車101と制御用サーバ102との間の通信の中継、および制御用サーバ102と操作用端末103との間の通信の中継を、それぞれ個別に割り当てた割り当てられた無線アクセスポイント104が排他的に行う構成であってもよい。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態に係る操作用端末の機能構成を示すブロック図である。
図2に示すように、操作用端末103は、取得部201,抽出部202、制御部203、記憶部204、イベント判定部205、生成部206、表示部207、および入力部208を備える。操作用端末103における上記各機能は、操作用端末103が備えるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(eMMC(Embedded Multimedia Card))や、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶手段、通信モジュール等のハードウェアにより、またROMに格納されたプログラムをCPUが読み出してこれらハードウェアと協調しつつ実行することにより実現される。
【0025】
取得部201は、制御用サーバ102が搬送台車101の制御に際して記録した搬送台車101の走行状態に係るイベントログを取得する。取得部201は例えば、IEEE802.11ac等の無線通信規格に準拠する無線通信インタフェース(図示せず)により実現される。取得部201がイベントログを取得すると、記憶部204は当該取得したイベントログを保存する。なお、イベントログとは、搬送台車101が走行システム100を走行中に発生し得る種々の状況(イベントと呼ぶ)と紐づけて予め定義された「イベント識別子」に基づいて、該当するイベント識別子に対応するイベントが発生した際に、当該イベントが発生した時刻および当該イベントに付随する付加情報(例えば、特定の搬送台車101の識別子、走行位置情報、走行中の軌道モジュール識別子等)を時系列に従って記録したログファイルである。イベントログは、搬送台車101、または制御用サーバ102に記録される。また、イベントログに記憶される、イベントの発生ごとに記録されるイベント識別子および付加情報のまとまりを「イベント情報」と呼ぶこととする。
【0026】
記憶部204は、搬送台車101の走行状態に係るイベントログの記憶、搬送台車101の制御に係る制御コマンド、およびイベント識別子を記憶する。また、記憶部204は、走行状況表示画面400の描画に用いられる部品(表示要素)となるビットマップ等を記憶する。記憶部204はRAM等の揮発性メモリにより構成されてもよいし、eMMC等の不揮発性メモリにより構成されてもよい。
【0027】
制御部203は、入力部208(後述する)の指示により選択された抽出対象のイベント識別子(例えば特定の搬送台車101の識別子、乗移りイベント、乗移り前の軌道モジュール識別子、乗移り後の軌道モジュール識別子等の情報)、および記憶部204に記憶されたイベントログを、抽出部204に通知する。
【0028】
抽出部202は、制御部203によって通知された入力部208の入力情報に基づいてイベントログから出力対象のイベント情報を抽出する。より具体的には、ユーザ105が所望する特定の軌道モジュール106または特定の搬送台車101について、イベントログから時系列に従ってイベント情報を抽出する。抽出部202がイベント情報を抽出すると、当該イベント情報をイベント判定部205に通知する。
【0029】
イベント判定部205は、抽出部202により通知された、イベント情報に基づいて、特定の搬送台車101の乗移りイベントが発生したか否かを判定する。より具体的には、抽出部202が抽出したイベント情報を利用してユーザが閲覧を所望する特定の搬送台車101それぞれ、または特定の軌道モジュールそれぞれに対する乗移りイベントが発生したか否かを判定する。イベント判定部205は、乗移りイベントが発生したか否かを判定すると、当該判定の結果を基に、描画用のデータに結果を反映すべく、生成部206に通知する。
【0030】
生成部206は、搬送台車101の乗移りイベントを含んだ走行状況を図示するために必要な描画用データを生成する。また、生成部206は、描画用データおよび表示要素を基にして表示部207に表示を行うための表示用データを生成し、表示部207に通知する。なお描画用データとは、GUI(Graphical User Interface)等の視覚的な表示情報を描画するためのボタン、テキストボックスなどの表示要素それぞれを、走行状況表示画面400上に配置するために必要な座標情報を指す。また、表示用データとは、前述の座標情報により決定された座標位置に表示要素を配置したデータを指す。
【0031】
表示部207は、ユーザ105に向けて生成部206の表示用データに基づいて搬送台車101の走行状況に関する情報を図示する。表示部207はLCD(Liquid Crystal Display)や、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等で実現されてもよい。
【0032】
入力部208は、ユーザ105が所望する搬送台車101の走行状況に関する情報についての各項目の受付をし、当該受付した情報を含む要求を制御部203に通知する。より具体的には例えば、ユーザ105は閲覧を所望する特定のイベント識別子または特定のイベント情報、軌道モジュール106の識別子、および、特定の搬送台車101の識別子を含む情報等について入力部208を介して入力する。続いて、入力部208はイベント判定部205が抽出する対象とするイベント情報を特定するために当該入力された情報を含む要求を、制御部203に通知する。入力部208は、例えばGUIのような視覚的な態様や、CUI(Character User Interface)のような、コンソール画面を通した対話的な態様であってもよい。また、入力部208は、タクタイルスイッチや、タッチスクリーンのようなハードウェアにより実現されてもよい。
【0033】
次に図4を使用して本実施の形態に係る操作用端末が備える表示部に図示される搬送台車の走行状況表示画面について説明する。
図4に示すとおり、走行状況表示画面400は、軌道モジュール106a~106dに対応するモジュール表示軸401a~401d、搬送台車101aおよび101bの走行表示402a、402b、乗移りイベントメッセージ403a、403b、時刻マーカー404、および凡例表示部405を備える。
【0034】
モジュール表示軸401a~401d(総称してモジュール表示軸401とも呼ぶ。)は、搬送台車101が走行する各軌道モジュール106a~106dに対応しており、それぞれの縦軸(下向きの矢印)は、下方に向けて経過する時間の流れを示す。
【0035】
走行表示402aおよび402b(総称して走行表示402とも呼ぶ。)は、搬送台車101aおよび101bが特定の軌道モジュール106に滞在している状況を示し、搬送台車101が滞在している軌道モジュール106に対応するモジュール表示軸上に滞在時間を対応させて図示する。搬送台車101ごとの走行表示402の識別のためには、図4に示すような網掛けの態様により図示してもよいし、モジュール表示軸401の縦軸に着色することにより図示してもよい。また、凡例判例表示部405は、そうした各搬送台車に関する走行表示の表示態様区別を表すものである。
【0036】
乗移りイベントメッセージ403a~403d(総称して乗移りイベントメッセージ403とも呼ぶ。)は、特定の搬送台車101の乗移りイベントを、乗移り前モジュールから乗移り後モジュールに向けた矢印および乗移りイベント時刻により表示したものである。図4において、例えば乗移りイベントメッセージ403aは、走行表示402aに対応する搬送台車101aの、軌道モジュール106aから軌道モジュール106bへの乗移りイベントが時刻「12:34:56.000」に発生したことを図示している。また、乗移りイベントメッセージ403は、モジュール表示軸401上の、特定の搬送台車101乗移りイベントが発生した時刻の位置に対応する座標位置に図示される。例えば、特定の搬送台車101のそれぞれについて、乗移り前軌道モジュールを起点として乗移り後モジュールに向けて矢印の態様で図示する。また当該乗移りイベントが発生した時刻を、該当する特定の乗移りイベントメッセージ403に含めて図示する事で、ユーザは乗移りイベントが発生したタイミングを視覚的に知ることができる。なお、本発明の実施の形態では、図4に示すとおり、乗移りイベントメッセージは、矢印で図示するとしたが、これに限らず、実線、点線、破線などを用いた任意の標示を用いてもよい。
【0037】
時刻マーカー404は、走行状況表示画面400を表示するための基準となる時刻を示す。例えば時刻マーカー404は、搬送台車走行システム100上において搬送台車101同士が衝突する等の特定トラブルが発生した際の走行状況を表示する際の、トラブル発生時刻を示してもよいし、ユーザ105が指定した特定のイベント情報に紐づくイベント発生時刻を示してもよい。
【0038】
凡例表示部405は、走行状況表示画面400に表示される特定の走行表示402と、特定の搬送台車101との関連付けを示す。
【0039】
スクロールバー406は、モジュール表示軸401に沿って走行状況表示画面400の表示位置を垂直方向に表示位置を移動させる。ユーザ105は、モジュール表示軸401において閲覧を所望するイベント情報が図示されている位置が、マーカー404が示す基準時間から離れている場合、走行状況表示画面400の外側に該当する位置に走行表示402が描画される場合がある。この場合にユーザ105はスクロールバー406を使用して表示位置を調整し、閲覧を所望するイベント情報を表示できるようにしてもよい。また、スクロールバー406を水平に配置し、走行状況表示画面400の水平方向に表示位置を移動させるように構成してもよい(図示せず)。
[実施の形態に係るフローの説明]
【0040】
次に図5を使用して操作用端末103が制御用サーバ102より搬送台車101の走行状況に係るイベントログを取得してから自機が備える表示部に搬送台車の走行状況を表示するまでの一連の処理について説明する。
【0041】
ステップS501は、取得部201が制御用サーバ102より搬送台車101に関するイベントログを取得し、当該取得したイベントログを記憶部204に保存するステップである。ステップS501は予め設定された時刻に定期的に実行してもよいし、入力部208を介してユーザ105による指示に基づいて実行されてもよい。
【0042】
ステップS502は、抽出部202が、制御部203が記憶部204より読み込んだイベントログから、入力部208より通知された抽出対象のイベント識別子、特定の搬送台車101の識別子、または、特定の軌道モジュール106の識別子のそれぞれにおいて複数またはいずれかの情報の通知を受けて、特定のイベント情報を抽出するステップである。操作用端末103は、ステップS502の実行を終えると、イベント判定のフローであるステップS600(詳細は後に別途述べる。)を実行する。
【0043】
ステップS503は、生成部206が、ステップS600で判定されたイベント情報を基
にして走行状況表示画面400を描画するための描画用データを生成するステップである。生成部206は、例えば、判定部205で抽出されたイベント情報から得られる時刻情報を基にして走行状況表示画面400を形成するために必要なモジュール表示軸401の時刻情報や、特定の搬送台車101に関するイベントログから読み出される各軌道モジュール106の滞在時間等の情報を基に、各モジュール表示軸401上に描画するための当該搬送台車101に関する走行表示402の長さ、および走行状況表示画面400上の座標を決定する。また、新たな軌道モジュールへの乗移りイベントに対する乗移りイベントメッセージの走行状況表示画面400上における座標を決定する。
【0044】
ステップS504は、生成部206が、ステップS503にて生成した表示用データに基づいて、表示部207が走行状況表示画面400を表示するステップである。
【0045】
操作用端末103は、上記に説明したステップS501~S504の処理を順に実行することにより、ユーザ105が所望する特定の搬送台車101、特定の軌道モジュール106、または特定のイベント識別子に係る走行状況表示画面400を表示部207に表示する。
【0046】
図6は、操作用端末103が備えるイベント判定部205が抽出部202から通知を受けたイベント情報から搬送台車101が軌道モジュールの乗移りを判定する一連の処理を示すフロー図である。 ここから、図6を用いて、図5におけるステップS600、すなわち操作用端末103が備えるイベント判定部205が、イベント情報を判定し生成部206が描画用データを作成するまでの一連の処理について説明する。
【0047】
まずステップS601において、イベント判定部205は、描画用データを生成するために、抽出部202から通知を受けたイベント情報を読み込む。(ステップS601)
【0048】
次にイベント判定部205がイベントログを基にして搬送台車101が新たな軌道モジュール106に乗移ったか否か(乗移りイベントが発生したか否か)を判定する(ステップS602)。より具体的には、イベント判定部205は、制御用サーバ102または特定の搬送台車101がイベントログに記録した乗移りに特有のイベント情報(例えば、搬送台車101の進行方向に対する通信アンテナの切り替えイベント、およびバーコード読取りイベント等)を検知した場合、またはイベントログに記録された搬送台車101が走行する位置情報により軌道モジュール106を乗移ったことが明らかな場合に、軌道モジュール106を移動した旨を示す「乗移りイベント」が発生したと判定する。また、乗移りイベントは、制御用サーバ102が定める特定のイベント識別子を含むイベント情報の記録による検出としてもよい。ステップS602のフローにおいて乗移りイベントが発生した場合はステップS603を実行(ステップS602のYes)し、乗移りイベントが発生しなかった場合はステップS605を実行(ステップS602のNo)する。
【0049】
次に、イベント判定部205は次に乗移りイベントが発生したと判定すると、当該乗移りイベントが発生した時刻をイベントログから取得する(ステップS603)。
【0050】
続いて、イベント判定部205は乗移りイベントが検出された前後のイベントログから乗移り前の軌道モジュール106の識別子および乗移り後の軌道モジュール106の識別子を取得する(ステップS604)。
一方、ステップS602で、イベント判定部205が乗移りイベントが発生しなかったと判定した場合、イベントログから搬送台車101が走行中の軌道モジュールの識別子を取得する(ステップS605)。
【0051】
最後に、ステップS602の判定の結果、特定の搬送台車101に係る軌道モジュールの情報を生成部206に通知することにより、生成部206は搬送台車101の走行状況に関する走行表示402を描画するための座標およびモジュール表示軸方向への長さを決定し、描画用データに反映する(ステップS606)。より具体的には、ステップS602で乗移りイベントが発生したと判定された場合に、乗移りイベントが発生した時刻、および当該時刻の前後で搬送台車101が走行していた軌道モジュール106(乗移り前軌道モジュール識別子および乗移り後軌道モジュール識別子)の情報を決定し、生成部206に通知する。生成部206は当該通知された情報に基づいて乗移り前の軌道モジュール106に対応する走行表示402を描画するための座標と長さおよび乗移り後の軌道モジュール106に対応する走行表示402を描画するための座標と長さを決定する。続いて生成部206は、乗移りイベントが発生したタイミングの時刻および矢印を含む乗移りイベントメッセージを、表示画面に配置する座標を決定し、走行状況表示画面400の描画用データに乗移りイベントの結果を反映する。一方、ステップS602にて乗移りイベントが発生しなかったと判定された場合、イベント判定部205がステップS605で取得した特定の搬送台車101が走行中の軌道モジュール106の識別子を生成部206に通知する。生成部206は当該通知に基づいて走行表示402を描画するための座標を決定し、描画用データに反映する。
【0052】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD-ROM等の記憶媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データおよび信号は、インタネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、搬送台車走行システムの操作用端末等に適用され得る。
【符号の説明】
【0054】
100 搬送台車走行システム
101a~101d 搬送台車
102 制御用サーバ
103 操作用端末
104 無線アクセスポイント
105 ユーザ
106a~106g 軌道モジュール
107 走行軌道
201 取得部
202 抽出部
203 制御部
204 記憶部
205 イベント判定部
206 生成部
207 表示部
208 入力部
301a~301c 進行方向
400 走行状況表示画面
401a~401d モジュール表示軸
402a、402b 走行表示
403a、403b 乗移りイベントメッセージ
404 時刻マーカー
405 凡例表示部
406 スクロールバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6