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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057138
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】電気供給システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20240417BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240417BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J7/35 K
H02J7/34 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163658
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】520076772
【氏名又は名称】ヴィガラクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134669
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 道彰
(72)【発明者】
【氏名】横山 和也
(72)【発明者】
【氏名】松本 善文
【テーマコード(参考)】
5G015
5G503
【Fターム(参考)】
5G015GA01
5G015GA11
5G015JA21
5G015JA52
5G015JA64
5G015KA08
5G503AA01
5G503AA04
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503DA05
5G503DA16
5G503DA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非常時の電力供給について電気機器への優先度合いに応じた分電運用を可能とする電気供給システムを提供する。
【解決手段】電気供給システムは、自家発電装置150及び外部電源装置200から得た電気を蓄電する蓄電部120と、蓄電部120の電力の給配電を制御する給配電制御部130と、給配電制御部130から配電した電気を電気機器300に給電する複数個のコンセント口140と、を備えている。給配電制御部130は、平常時に行う平常給配電モードと、非平常時に行う非平常給配電モードを切り替えるモード切替部132と、非平常給配電モードでは複数個のコンセント口140に対する給配電の制御を配電優先順位リストに従って実行する非平常配電制御を実行する配電優先順位制御部132と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置または商用電源装置またはそれらの組み合わせの電源装置から得た電気を受電して蓄電する蓄電部と、
前記蓄電部に蓄電された電気の給配電を制御する給配電制御部と、
前記給配電制御部より配電された電気を、差し込まれたプラグを介して電気機器に給電する複数個のコンセント口を備え、
前記筐体の内または外に配置された前記電気機器に対して、前記給配電制御部の給配電制御により前記蓄電部に蓄電された電気を前記コンセント口に給配電することを特徴とする電気供給システム。
【請求項2】
前記給配電制御部が、平常時に行う平常給配電モードと、非平常時に行う非平常給配電モードを切り替えるモード切替部と、
前記給配電制御部が、前記平常給配電モードと前記非平常給配電モードというモードの違いによって、複数個の前記コンセント口に対する電気の給配電の制御を異なるものとし、平常給配電モードにおいて平常配電制御を実行し、非平常給配電モードにおいて配電優先順位に応じた配電を行う非平常配電制御を実行する配電優先順位制御部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電気供給システム。
【請求項3】
前記給配電制御部が、前記モード切替部により前記非平常給配電モードへ切り替わると、前記配電優先順位制御部により、あらかじめ決められている前記配電優先順位または動的に決定された前記配電優先順位に従って、各々の前記コンセント口に対して電気を供給する非平常配電制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の電気供給システム。
【請求項4】
前記非平常給配電モードにおける前記配電優先順位が、前記あらかじめ決められている場合は、複数個の前記コンセント口のそれぞれに当該配電優先順位に従った配電優先順位があらかじめ割り振られていることを特徴とする請求項3に記載の電気供給システム。
【請求項5】
複数個の前記コンセント口のそれぞれに配電優先順位があらかじめ割り振られている場合、当該配電優先順位の順番または高低を示す視認できる印が前記コンセント口のそれぞれに表示されていることを特徴とする請求項4に記載の電気供給システム。
【請求項6】
前記非平常給配電モードにおける前記配電優先順位が、前記動的に決定される場合は、複数個の前記コンセント口のそれぞれに接続された前記電気機器のカテゴリに応じて配電優先順位が動的に割り振られることを特徴とする請求項3に記載の電気供給システム。
【請求項7】
複数個の前記コンセント口のそれぞれの配電優先順位が動的に割り振られる場合、前記コンセント口のそれぞれに配電優先順位付けの操作が可能なスイッチが搭載されていることを特徴とする請求項6に記載の電気供給システム。
【請求項8】
複数個の前記コンセント口のそれぞれの配電優先順位が動的に割り振られる場合、前記給配電制御部と、前記コンセント口のそれぞれに接続された前記電気機器との間で、前記ソケット-前記プラグを介したデータのやりとりで前記配電優先順位の動的な割り振りを実行する請求項6に記載の電気供給システム。
【請求項9】
前記コンセント口が、単相100V用対応のもの、単相200V用対応のもの、単相240V用対応のもの、三相100V用対応のもの、三相200V用対応のもの、三相415V用対応のもののいずれかまたは組み合わせが含まれており、
対応可能な前記電気機器として、医療機器、衛生設備、消火設備、非常時照明設備、緊急車両の充電スポット、公共の通信機器、冷暖房を含む環境設備、一般照明設備、通信機器、一般家電機器のいずれかまたは組み合わせを含むものである請求項1に記載の電気供給システム。
【請求項10】
前記コンセント口が、電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車用の充電用または急速充電用のコンセント口を含み、
対応可能な前記電気機器が、前記電気自動車または前記プラグイン・ハイブリッド電気自動車のいずれかを含むものであり、自動車充電スポットとして利用可能な請求項1に記載の電気供給システム。
【請求項11】
コンテナ状の筐体を含み、
前記発電装置が、前記コンテナ状の筐体の屋上または近隣に設置したソーラーパネルまたは風力発電機のいずれかまたは組み合わせである請求項1に記載の電気供給システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気供給システムに関する。特に、平常時のみならず非平常時(停電時や災害時など)にも電気機器への給配電を維持することができる電気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
企業、医療機関、自治体などの事業主体において、BCP(事業継続計画)が重要視され始めている。中小企業庁の指針によれば、BCP(事業継続計画)とは、事業主体が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことを言う。特に最重要課題となっているのが「災害発生に伴う大規模停電時の非常用電源確保」である。
自然災害や事故によって大規模停電が発生した場合、街中のインフラが停止してしまうおそれがある。一般店舗、病院等の施設、オフィスビルなどの電気機器が稼働停止に追い込まれる。また、水道設備、冷蔵庫が使用できず、通信網も遮断されるおそれがある。
政府、省庁、自治体のみならず、各事業体においても災害時のBCP対策に真剣に取り組んでいる。
【0003】
従来技術における大規模停電時の非常用電源確保の手段としては、燃料使用の非常用発電機を稼働して発電した電気を非常用電源として利用する手段が知られている。
例えば、特許文献1には、図11に示すように、非常用発電装置に設けられる発電機駆動用のエンジンの運転を遠隔制御する非常用発電装置の制御システムが開示されている。ガソリンなどの燃料をエンジンなどの内燃機関で燃焼させて機械的回転力に変え、機械的回転力を発電機に伝導して発電するが、特許文献1には、そのエンジンのオンオフを遠隔制御する技術が開示されている。
【0004】
また、従来技術における大規模停電時の非常用電源確保の手段としては、専用バッテリ等を常設しておいて、地震等により停電になった時に使用する電源を、商用電源(系統電源)から専用バッテリ等に自動的に切り替える分電盤を用いる手段が知られている。
例えば、特許文献2には、図12に示すように、商用電源からの給電と、専用バッテリからの給電とを自動的に切り替える分電盤制御システムが開示されている。商用電源の正常時には商用電源を制御対象である測定機器などの電気機器に給電し、商用電源の異常時には専用バッテリ等に切り替えて制御対象である測定機器などの電気機器に給電する分電盤制御システムが開示されている。
【0005】
また、従来技術における大規模停電時の非常用電源確保の手段としては、非常用電源として電気自動車(EV、PHEV)を用いて、商用電源からの給電と電気自動車(EV、PHEV)からの給電とを自動的に切り替える分電盤制御システムが開示されている。
例えば、特許文献3には、図13に示すように、分電盤として付設分電盤1と家庭内分電盤2がシリアルに接続されており、付設分電盤1が主に商用電源と電気自動車(EV、PHEV)との間での充放電の切り替えを制御し、家庭内分電盤2が商用電源と電気自動車(EV、PHEV)との間での給電先の切り替えを制御するものである。屋外ガレージに充電用と放電用のコンセント18があり、平常時には商用電源から屋外ガレージの充電用ソケットを介して電気自動車(EV、PHEV)に対して充電を行い、異常時には屋外ガレージの放電用ソケットを介して電気自動車(EV、PHEV)から放電を行い、家庭内分電盤を介して家庭内の電気機器に対して給電を行うものである。
【0006】
【特許文献1】特開2015-117666号公報
【特許文献2】特開2004-312851号公報
【特許文献3】特開2010-172068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術における大規模停電時の非常用電源確保の手段には改善すべき問題があった。
特許文献1に記載された燃料使用の非常用発電機を稼働して発電した電気を非常用電源とする手段には、燃料の維持と発電機のメンテナンスにおける問題があった。
現在多くの自治体で燃料を用いる非常用発電機が設置されている。その問題点は、「燃料の維持」と「発電機のメンテナンス」の問題である。
燃料の維持については、発電機の燃料は軽油や重油がメインであるところ、使用しなければ軽油は6ヵ月、重油は3ヵ月で劣化してしまうことが知られている。非常用に必要になることは稀であるため、不使用のままでも廃棄せざるを得ず、定期的に燃料を入れ替える必要があり、コストと手間がかかる。
また、発電機のメンテナンスについては、発電機は専門業者によるタンク内の清掃、年に1回程度のメンテナンスや点検が必要とされ、コストと手間がかかる。
このように、非常用発電機は、設置者に負担が大きく、いざという時に使用できなかったという事態がみられる。実際に東日本大震災の際にも使用できなかったという問題が散見されたようである。
【0008】
特許文献2に記載されたものは、専用バッテリを常設しておいて、停電時に使用する電源を商用電源(系統電源)から専用バッテリに自動的に切り替える分電盤を用いる手段である。専用バッテリを用いて商用電源が利用できない停電時において専用バッテリに切り替える対策は現実的に有効な対策である。
しかし、特許文献2に記載されたものは、停電前に過大電流が流れるとの経験則に基づいてリレーとスイッチとの連携によって停電を判断し、専用バッテリに切り替える装置となっている。停電前に過大電流が流れるとの経験則から外れているケースには切り替え機能が稼働せず、また、専用バッテリに切り替わった後の非常時の運用については開示されていない。
【0009】
特許文献3に記載されたものは、非常用電源として電気自動車(EV、PHEV)を用いて、商用電源からの給電と電気自動車(EV、PHEV)からの給電とを自動的に切り替える分電盤制御システムが開示されている。電気自動車(EV、PHEV)は蓄電容量が大容量であり、非常時の電源として利用できれば有用なシステムではある。
しかし、非常時に提供する電源としては、常時そのために電気自動車(EV、PHEV)を駐車させた状態を維持することは難しい。つまり、平時において電気自動車(EV、PHEV)を非常時のために駐車させておく運用は現実的ではない。
また、特許文献3には、非常用電源に切り替えた後、家庭内分電盤が分電するにあたり、各負荷(電気機器)に接続する接続線に遮断器(ブレーカー)を搭載し、停電を許容する負荷(テレビ)と、停電を許容しない負荷(照明、冷蔵庫、給水ポンプ)などを分けて、遮断器(ブレーカー)を操作することで非常時の電源として利用する電気自動車(EV、PHEV)からの電力供給を効率的に行うという運用は開示されているものの、災害時や大雨時などの非常時において、遮断器(ブレーカー)の操作を適切に行うことは容易ではない。また、家庭内の常設の電気機器であれば、どの遮断器(ブレーカー)をオフにしてどの遮断器(ブレーカー)をオンにするとの判断も付きやすいが、地域のエイドステーションのような公共性まで視野に入れたシステムとなると、緊急時において多数持ち込まれる電気機器の負荷に対してプラグが差し込まれるソケットについてどの遮断器(ブレーカー)が対応するかを即座に判断することは難しく、結局あれこれ迷いつつ遮断器(ブレーカー)ごとにオン、オフ操作を試して判断することになると安定した運用ができにくくなる。
【0010】
上記問題に鑑みれば、上記した従来技術の電気供給システムはいずれも改善すべき点があることが分かる。
本発明は、運用の難しい燃料使用の発電機ではなく、安定した運用が可能な商用電源を平時電源とし、大容量バッテリと太陽光発電を非常時電源とし、かつ、非常時には貴重な非常時電源の電力供給について負荷(電気機器)への優先度合いに応じた効率的かつ容易な分電運用を可能とする電気供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる電気供給システムは、コンテナ状の筐体と、発電装置または商用電源から得た電気を受電して蓄電する蓄電部と、前記蓄電部に蓄電された電気の給配電を制御する給配電制御部と、前記給配電制御部より配電された電気を、差し込まれたプラグを介して電気機器に給電する複数個のコンセント口を備えたシステムである。筐体の内または外に配置された負荷(電気機器)に対して、給配電制御部の給配電制御により蓄電部に蓄電された電気をコンセント口に給配電することを特徴とする。
蓄電部はバッテリである。大容量であることが好ましい。電解液を用いるものは運用に注意が要るので、リチウム型の固体バッテリが好ましい。
もし、非常時に外部電源として利用可能な電気自動車(EV、PHEV)があれば、蓄電部の一つとして本発明の電気供給システムの一部材として追加することも可能である。
【0012】
上記の給配電制御部は、平常時に行う平常給配電モードと、非平常時に行う非平常給配電モードを切り替えるモード切替部を備えた構成であることが好ましい。給配電制御部が、平常給配電モードと非平常給配電モードというモードの違いによって、複数個のコンセント口に対する電気の給配電の制御を異なるものとすることができる。
給配電制御部による給配電の制御は、例えば、モード切替部により非平常給配電モードへ切り替わると、あらかじめ決められている配電優先順位または動的に決定された配電優先順位に従って、各々のコンセント口に対して電気を供給する非平常配電制御を行うことができる。
上記構成により、非平常給配電モードにおいては通常の商用電源からの電力供給が受けられない状況の中、給配電制御部は蓄電部において蓄電されている電気を分電することとなるが、あらかじめ決められている配電優先順位または動的に決定された配電優先順位に従って給配電制御部が各々のコンセント口に対して電気を供給する制御を行うことにより限られた蓄電部の電気を各々の電気機器へ供給する分電制御を行う。
【0013】
例えば、非常時でも電力供給が高い機器としては、医療機器[(外部からの常時給電が必要な一般医療機器、充電式の医療機器(AEDなどの医療機器で特に充電が切れた状態のもの)、電池式の医療機器(ペースメーカーなどの医療機器で特に電池交換が必要な状態のもの)]、衛生設備(薬品保管庫、給水タンク)、消火設備(消火栓など)、照明設備(誘導灯など)など様々なものがあり、これらは配電優先順位が高いと想定される。緊急車両の充電スポット、公共の通信機器なども比較的に配電優先順位は高い部類に入るものと想定される。その他一般の屋内照明、街頭照明、食料保管の冷蔵庫、携帯電話の充電スポット、テレビ、空調機器などは比較的配電優先順位は下げても良いと思料されるが、避難者の生活に必要な範囲で充電のニーズはある。
ここで、本発明にかかる電気供給システムは、コンテナ筐体内に常設された電気機器への固定的な分電のみならず、非常時や災害時に周辺から動的に持ち込まれる様々な電気機器への電力供給を通じて地域社会での貢献も視野に入れている。そのため、給配電制御部による分電制御は、筐体内に常設された電気機器への固定的な配電優先順位での電力供給だけでは十分ではなく、持ち込まれる様々な電気機器に適切に優先付けして電力を供給することを目指すものである。
【0014】
本発明では以下に示す配電優先順位に応じた電気供給制御を行うことができる。
まず、非平常給配電モードにおける配電優先順位が、あらかじめ決められている場合は、その配電優先順位を各々のコンセント口に対応付ける制御がある。
つまり、複数個のコンセント口のそれぞれに当該配電優先順位に従った配電優先順位があらかじめ割り振られていることを特徴とする。
なお、複数個のコンセント口のそれぞれに配電優先順位があらかじめ割り振られている場合は、コンセント口に割り振られている当該配電優先順位の順番または高低を示す視認できる印がコンセント口のそれぞれに表示されていることが好ましい。
【0015】
次に、非平常給配電モードにおける配電優先順位が、動的に決定される場合は、その配電優先順位を分電対象となる電気機器のカテゴリに応じて対応付けることができる。つまり、コンセント口自体には電気機器のプラグが差し込まれるまでは配電優先順位は付いておらず、コンセント口のそれぞれに接続された電気機器のカテゴリに応じて後から配電優先順位を動的に割り振る制御とする。
例えば、コンセント口に接続された電気機器のカテゴリに応じて配電優先順位を動的に割り振る制御としては、以下の動的な配電優先順位付けの制御方法がある。
例えば、動的な配電優先順位付けの制御方法は、コンセント口のそれぞれに配電優先順位付けの操作可能なスイッチが搭載されている構成とする。
他の動的な配電優先順位付けの制御方法は、給配電制御部と、コンセント口のそれぞれに接続された電気機器との間で、ソケット-プラグ間の接続を介したデータのやりとりで配電優先順位の動的な割り振りを実行する。例えば、電気機器にはそのカテゴリに応じた種類コードデータを送出し、ソケット-プラグ間の接続を介して給配電制御部が種類コードデータを受け取り、給配電制御部がそのソケットにプラグが差し込まれている電気機器のカテゴリに応じて当該ソケットへの電力供給の優先付けを動的に割り振る。
これらの制御方法であれば、コンセント口のそれぞれに電気機器のプラグが差し込まれた後に電気機器のカテゴリに応じて電力供給の配電優先順位を動的に割り振る制御が可能となる。
【0016】
次に、本発明にかかる電気供給システムにおいて、家庭用の電気機器で想定される電力供給は単相100V用であるものが多いが、医療機器、衛生設備、消火設備、照明設備、緊急車両の充電スポット、公共の通信機器などは三相200V用や三相415Vであるものもある。そこで、コンセント口が、単相100V用対応のもの、単相200V用対応のもの、三相100V用対応のもの、三相200V用対応のもののいずれかまたは組み合わせが含まれていることが好ましい。さらに単相240V用対応のものや三相415V用対応のものが含まれていても良い。
対応可能な電気機器としても多様なものが可能であり、医療機器、衛生設備、消火設備、非常時照明設備、緊急車両の充電スポット、公共の通信機器、冷暖房を含む環境設備、一般照明設備、通信機器、一般家電機器のいずれかまたは組み合わせを含むものであっても良い。
さらに、コンセント口が、電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車用の充電用または急速充電用のコンセント口を含まれていることも好ましい。その場合に対応可能な電気機器としては、電気自動車またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車のいずれかを含むものであり、自動車充電スポットとして利用可能となる。
【0017】
次に、本発明にかかる電気供給システムにおいて、コンテナ状の筐体を含む構成も好ましい。
コンテナ状の筐体は、移動可能な状態または静置された状態のもので良く、限定されないが壁面は鉄板などで構成されたコンテナでも良い。衛生面に十分考慮した上で物流に用いられるコンテナを改造したものを適用しても良い。
コンテナ状の筐体を備えた構成であれば、発電装置としてコンテナ状の筐体の屋上や近隣に設置したソーラーパネルまたは風力発電機のいずれかを組み込んで利用することも容易となる。ソーラーパネルや風力発電機は、非常時においても発電条件さえ満たせば発電が可能であり、非常時の発電装置として期待できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電気供給システムは、上記の給配電制御部を搭載することにより、平常時に行う平常給配電モードと、非平常時に行う非平常給配電モードを切り替えて給配電制御を行うことができ、モードの違いによって、複数個のコンセント口に対する電気の給配電の制御を自在に制御することができる。
モード切替部により非平常給配電モードへ切り替わると、あらかじめ決められている配電優先順位または動的に決定された配電優先順位に従って、各々のコンセント口に対して電気を供給する非平常配電制御を行うことができ、限られた蓄電部の電気を各々の電気機器へ供給する分電制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1にかかる本発明の電気供給システム100の構造を簡単に示した図である。
図2】実施例1にかかる本発明の電気供給システム100の電気的構成要素の接続のみを取り出して示したブロック図である。
図3】モード切替部131による平常給配電モード/非平常給配電モードのモード切替制御の概念を模式的に示す図である。
図4】あらかじめ決められている配電優先順位が与えられている場合の配電優先順位制御部132の「非平常配電制御」の例を示す図(その1)である。
図5】あらかじめ決められている配電優先順位が与えられている場合の配電優先順位制御部132の「非平常配電制御」の例を示す図(その2)である。
図6】配電優先順位制御部132の記憶装置内の配電優先順位リストデータのイニシャル状態を示す図である。
図7】コンセント口140のスイッチ142の操作例を簡単に示した図である。
図8】スイッチ142の操作がなされたコンセント口140に関する配電優先順位データが次々と設定する様子を示す図である。
図9】ソケット-プラグを介したデータのやりとりで配電優先順位の動的な設定を行う様子を簡単に示す図である。
図10】配電優先順位制御部132と電気機器300との間で配電優先順位の動的な設定が実行される様子を簡単に示した図である。
図11】従来技術の特許文献1(特開2015-117666号)の発電機のエンジン運転を遠隔制御する非常用発電装置を示す図である。
図12】従来技術の特許文献2(特開2004-312851号)の商用電源と専用バッテリの給電を切り替える分電盤制御システムを示す図である。
図13】従来技術の特許文献3(特開2010-172068号)の商用電源と電気自動車の給電を切り替える分電盤制御システムを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
【実施例0021】
以下、本発明にかかる電気供給システムの実施形態を説明する。なお、以下の実施形態は一例に過ぎず本発明の技術的範囲を制限するものではない。
実施例1にかかる本発明の電気供給システム100は基本形のものであり、種々の改変や付加物を取り込んだ応用形も可能である。
実施例1の構成では、電気供給システム100は、筐体110、蓄電部120、給配電制御部130、コンセント口140、コンピューター制御装置160を備えた構成となっている。さらに、この構成例では電源装置として、外部電源装置200とは別に、電気供給システム100に装備されている構成として発電装置150(ソーラーパネル装置151または風力発電装置152)を備えた構成となっている。また図1には電気を分配する対象となる電気機器300も図示されている。
図1は、実施例1にかかる本発明の電気供給システム100の構造を簡単に示した図である。
図1(a)は筐体110の扉112を閉じた状態の外観図、図1(b)は筐体110の扉112を開いた状態の外観図となっている。
図1には、筐体110、蓄電部120、給配電制御部130、コンピューター制御装置160(図中ではPC制御装置160と略記している。)のみが示されており、コンセント口140、発電装置150(ソーラーパネル装置151または風力発電装置152)、外部電源装置200、電気機器300などの図示は省略している。
図2は、実施例1にかかる本発明の電気供給システム100の電気的構成要素の接続のみを取り出して示したブロック図である。
以下、各構成要素について述べる。
【0022】
筐体110は、組立家屋、プレハブのようなものでも良いが、ここでは、コンテナ状の筐体とする。JIS規格に沿った海上輸送コンテナを利用したものでも良く、建築基準法の建築物適用の許可を受けたいわゆるコンテナハウスとして改造を加えたものであれば適用可能である。複数個積み重ねて多階層化することも可能である。壁面は鉄板などで形成されており切断や切削加工も可能であり、可動式のモジュール構造物として利用価値が大きい。衛生面に十分考慮した上で改造したものを適用することが好ましい。
図1に示したコンテナ状の筐体110は、鉄製のフレーム(番号は付与せず)と、そのフレームが形成する面を覆う屋上111、扉112を備えた構成である。扉112は開閉可能となっており、図1(b)の例では、正面の開閉扉112を上に上げて正面を開放している。図1(b)の例では、左側に電気関係の構成部材(蓄電部120、給配電制御部130)が搭載されている例となっている。
【0023】
コンテナ状の筐体110であれば、本発明の電気供給システム100を組み込んで運搬して常設静置する運用も可能であるし、可搬性ある状態としておいて非常時に現場までトレーラーによって運搬して仮設置することも可能である。すでにコンテナハウス自体は仮設診療所として利用したりイベントなどでの移動店舗として利用したりする例が現れ始めている。
また、この図1の構成例では、コンテナ状の筐体110の屋上111や開閉扉112を備えた構成であり、発電装置150としてコンテナ状の筐体110の屋上や近隣に設置したソーラーパネル151(図示しないが、屋上111や開閉扉112の面に搭載されている。)を組み込んだ構成となっている。
【0024】
蓄電部120は、発電装置150または外部電源装置200またはそれらの組み合わせの電源装置から得た電気を受電して蓄電する部材である。
蓄電部120の種類としては、リチウムイオンバッテリ、NAS電池型バッテリなどが好ましいが、鉛蓄電池型バッテリを除外するものではない。
蓄電部120の蓄電容量としては、BCP(事業継続計画)で推奨されるような大容量のバッテリ装置を用いることが好ましい。例えば簡易の小型のレベルであれば10kWhレベルのものも適用可能であり、さらに20kWhレベル、500kWhレベル、さらには、数MWhレベルのものの適用もあり得る。
なお、コンテナ状の筐体を平面的に並列化し、立体的にも多層化して複数台設ける大規模化も本発明の範囲からは除外されず、いわゆるBEMS(ビルエネルギー管理システム)、FEMS(ファクトリー工場エネルギー管理システム)を念頭にしたものも適用可能であり、BEMSとしてビル内の配電設備、空調設備、照明設備、換気設備、OA機器等の電力供給、FEMSとして工場内の配電設備、空調設備、照明準備、製造ラインの設備等の電力供給も本発明の範囲からは除外されない。
【0025】
蓄電部120は、発電装置150または外部電源装置200からの充電を受ける充電口を備えており、外部電源装置200や発電装置150から蓄電部120へ充電を行う仕組みであることが好ましい。平常給配電モードにおいて、蓄電部120は、給配電制御部130の制御に従って、発電装置150または外部電源装置200からの電力供給を受けて充電を行い、非平常給配電モードにおいては、蓄電部120は、給配電制御部130の制御により、配電優先順位に従ってそれぞれのコンセント口140に所定の単相/三相の電圧にて電気を供給する。
なお、平常給配電モードにおいても発電装置150を稼働させる構成であれば、平常給配電モードにおいても発電装置150から蓄電部120へ充電を併用することも好ましい。
なお、本発明の電気供給システム100は、平常給配電モードにおいても蓄電部120を介して外部電源装置200や発電装置150から充電を受けて蓄電した電力を電気機器300へ供給する仕組みであるため、電気的な一種のバッファとなり、ソーラーパネル151や風力発電152の発電条件が変動しても電気機器300へ供給される電気は蓄電された電力を使用するため、電圧変動という不具合が発生することを緩和できる。
【0026】
給配電制御部130は、蓄電部120に蓄電された電気の給配電を制御する制御部である。
この構成例では、給配電制御部130は、モード切替部131、配電優先順位制御部132、電圧変換部133を備えた例となっている。
【0027】
モード切替部131はスポットまたは地域で非常時が発生しているか否かを検知し、平常時に行う平常給配電モードから非平常時に行う非平常給配電モードへ切り替える機能である。
なお、スポットまたは地域で非常時が発生しているか否かの検知手段は限定されないが、例えば、外部の商用電源210の電力供給を直接モニタして停電を検知する手段(図2には図示せず)や、外部の商用電源210からの蓄電部120への充電が遮断されたことをもって非常時の発生を検知する手段などがある。
また、例えば、行政が発出する防災通信や防災データを受信する手段(図2には図示せず)により、非常時の発生を検知する仕組みでも良い。
また、例えば、給配電制御部130のモード切替部131を操作するスイッチが搭載されており(図2には図示せず)、電気供給システム100の管理者により当該スイッチを操作することにより非平常時に行う非平常給配電モードへ切り替えるものでも良い。
【0028】
配電優先順位制御部132は、平常給配電モードと非平常給配電モードというモードの違いによって、複数個のコンセント口に対する電気の給配電の制御を切り替える。
配電優先順位制御部132は、モード切替部131により決定されているモードにより、平常給配電モードと非平常給配電モードというモードの違いによって、複数個のコンセント口140に対する電気の給配電の制御を異なるものとし、平常給配電モードにおいて「平常配電制御」を実行し、非平常給配電モードにおいて「非平常配電制御」を実行する機能である。
これらのモード切替部131と配電優先順位制御部132の連動については詳しく後述する。
【0029】
電圧変換部133は、蓄電部120から得た電力をそれぞれのコンセント口に供給する電圧に変換する部分である。なお、電力供給を受ける電気機器300は直流のものもあり得るが、ここでは非常時に持ち込まれた多様な電気機器300にも対応すべく電気機器300が備えるプラグを介して電力を供給することを想定しているため、単相/三相の相変換および供給電圧の調整も行うものとする。
例えば、単相100V用対応の電圧、単相200V用対応の電圧、単相240V用対応の電圧、三相100V用対応の電圧、三相200V用対応の電圧、三相415V用対応の電圧などへ変換する。なお、これらは例示であり、どのような電圧変換を行うか、つまり上記したものすべてに対応するかそのうちのいずれかにのみ対応すするかはオプションで自在であり、本発明の電気供給システム100を導入する運用者が決めることができる。
【0030】
コンセント口140は、給配電制御部130より配電された蓄電部120からの電気を電気機器300に給電する給電口となる部材である。世界的にはソケット口と呼ばれることが多い。
図1ではコンセント口140の図示が省略されているが、コンセント口140は、多様な電気機器300に配電するため、適度に集合しつつも適度に分散されていることが好ましい。また、コンテナ状の筐体110の内部空間の壁面のみならず、コンテナ状の筐体110の外面側の壁面に設けられていることも好ましい。非常時に持ち込まれる電気機器300がすべてコンテナ状の筐体110の内部空間に収納できるとは限らず、コードの長さや延長コードの長さも確保できないこともあり得るため、コンテナ状の筐体110の近隣に持ち込んだ状態で電力供給を受けることも想定される。このような事情を考慮すれば、コンテナ状の筐体110の外面側の壁面に設けられている方が便利な場合も想定される。そこで、この例では、コンテナ状の筐体110の内部空間の壁面に複数個、さらに、コンテナ状の筐体110の外面側の壁面にも複数個設けられているものとする。
【0031】
コンセント口140の形状や電気的接点としての構造は、いわゆる標準化されたプラグ-コンセント口の接続構造で良いが、日本では、JIS規格に沿ったもので良い(JIS C8303-1993)。海外でも当該国で適用される規格に沿ったものであれば良い。本発明の電気供給システム100は、災害時などの非常時に持ち込まれる様々な電気機器が持つプラグにも対応できるよう、複数タイプのコンセント口140を適度な個数備えていることが好ましい。例えば、コンセント口140としてJIS規格(JIS C8303-1993)に規定されている単層接地端子無しの2穴、単層接地端子付きの3穴、三相3線式200V用の接地端子無しの3穴、三相3線式200V用の接地端子付きの4穴など多様なものを用意されていることが好ましい。または、コンセント口140のタイプを変換するアダプタを用いても良い。
【0032】
コンセント口140が対応できる電圧としては、単相100V用対応のもの、単相200V用対応のもの、単相240V用対応のもの、三相100V用対応のもの、三相200V用対応のもの、三相415V用対応のもののいずれかまたは組み合わせがあり得る。
コンセント口140の数については、限定されないが、蓄電部120の蓄電容量に応じて多数あっても良い。
【0033】
さらに、コンセント口140の形状、電圧については、いわゆる電気自動車(EV)またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)用の充電用または急速充電用のコンセント口であっても良い。
なお、ここでは、充電を受ける電気機器300の1つとして電気自動車(EV)またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)を位置づけた説明とするが、電気自動車(EV)またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)は大容量の蓄電池を搭載しており、逆に、後述するように、非常用電源の外部電源200の1つとして用いること可能である。
【0034】
発電装置150は、電気供給システム100に装備されているオプション構成とする。
発電装置150は非常時に使用できるものが好ましく、いわゆる自然再生エネルギーを用いるものが適切である。例えば、太陽光を利用するソーラーパネル装置151、風力を利用する風力発電装置152のいずれかまたは組み合わせを備えた構成が好ましい。
これら発電装置150は、コンテナ状の筐体110の屋上111に設置したり、開閉扉112に設置したり、近隣のスペースに設置したりすることができる。
ソーラーパネル装置151や風力発電装置152は、非常時においても発電条件さえ満たせば発電が可能であり、非常時の発電装置として期待できる。
【0035】
外部電源装置200は、外部の商用電源は災害時などには停電していることが想定されるが、平常時モードでは蓄電部120への充電などのために外部の商用電源210を利用することが前提となっている。
なお、災害時でもトラックやトレーラータイプの移動電源車などが外部電源装置200として近隣に出動しているタイミングもあり、そういうケースではその移動電源車の電源220を利用することも推奨される。
また、緊急時の対応として、電気自動車(EV)またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)は大容量の蓄電池を搭載しており、非常用電源の外部電源200の1つとしてこれら電気自動車(EV)またはプラグイン・ハイブリッド電気自動車(PHEV)のバッテリ230を用いること可能である。
【0036】
電気機器300は、特に限定されないが、電気供給システム100の筐体110に装備されたものに限らず、災害時や非常時に周辺から持ち込まれる電気機器300も配電対象とする。
電気機器300は、例えば、医療機器、衛生設備、消火設備、非常時照明設備、緊急車両の充電スポット、公共の通信機器、冷暖房を含む環境設備、一般照明設備、通信機器、一般家電機器のいずれかまたは組み合わせを含むものである。
なお、後述するように、これら多種多様な電気機器300に対して、給配電制御部130が平常給配電モードにおいて「平常配電制御」を実行し、非平常給配電モードにおいて各々の電気機器300の電気供給の配電優先順位に従って供給を行う「非平常配電制御」を行う。
【0037】
以上がこの実施例にかかる本発明の電気供給システム100の各構成要素の概略の説明である。
以下に給配電制御部130のモード切替部131、配電優先順位制御部132の連動による電気供給制御について述べる。
図3は、モード切替部131による平常給配電モード/非平常給配電モードのモード切替制御の概念を模式的に示す図である。図3には、給配電制御部130のみを取り出して図示している。図3の下部にはモード切替部131が発出するモードの状態をタイムラインで簡単に描いている。
モード切替部131は外部商用電源210の通電状態を検知する手段を備えている。既に述べたように、例えば、外部商用電源210の通電状態を直接モニタする検知手段(モード切替部131が外部商用電源210に接続されているケースなど)、外部商用電源210から蓄電部120への充電の有無を検知する手段(モード切替部131が蓄電部120の充電ラインに電気的に接続されているケースなど)、運用者が手動で操作するスイッチ操作手段などが想定される。この例では、例えば、モード切替部131が外部商用電源210に接続されているケースとする。
【0038】
図3に示すように、災害が発生し、モード切替部131が外部商用電源210の通電状態が停電状態になったことを検知したタイミングで、モード切替部131がモードの状態を「平常給配電モード」から「非平常給配電モード」に切り替える。
配電優先順位制御部132は、モード切替部131により非平常給配電モードへ切り替わったことを示すデータが発出されると、それぞれのコンセント口140に対する配電の配電優先順位に従った非平常配電制御を行う。
ここで、配電優先順位制御部132が行うそれぞれのコンセント口140に対する配電の配電優先順位に従った「非平常配電制御」には複数通りがあり得る。
特に、あらかじめ決められている配電優先順位が与えられている場合と、動的に配電優先順位が決定される場合によって異なる。
【0039】
以下、コンセント口140に対する配電の配電優先順位の例と実行される「非平常配電制御」の例を説明する。
[あらかじめ決められている配電優先順位が与えられている場合]
まず、配電優先順位制御部132に、あらかじめ決められている配電優先順位が与えられている場合の制御例について説明する。
図4および図5は、あらかじめ決められている配電優先順位が与えられている場合の配電優先順位制御部132の「非平常配電制御」の例を示す図である。なお、給配電制御部130のうち、配電優先順位制御部132のみを取り出して図示している。
図4の構成例は、配電優先順位制御部132内の記憶部にあらかじめ決められている配電優先順位を示すリストデータが格納されている例である。
図5の構成例は、配電優先順位制御部が参照可能なPC制御装置160の記憶部にあらかじめ決められている配電優先順位を示すリストデータ(配電優先順位リストデータ)が格納されている例である。
図4および図5の配電優先順位はコンセント口140の配電優先順位である。なお、リスト中の「内」はコンテナ状の筐体110の内部空間の壁面に設置されていることを指しており、「外」はコンテナ状の筐体110の外面側の壁面に設けられていることを指している。
【0040】
蓄電部120の充電が十分に確保されている場合には、「高」「中」「低」のすべてのコンセント口140に対して所定の相の所定の電圧の供給を行う。
【0041】
蓄電部120が供給可能な電力が少なくなってきた場合は、配電優先順位制御部132は、この配電優先順位を示すリストデータを参照しつつ、「非平常配電制御」を行う。
【0042】
配電優先順位「高」が割り振られたコンセント口140については、他の「中」や「低」が割り振られているコンセント口140については電力供給を停止してでも、配電優先順位「高」が割り振られたコンセント口140についての電力供給を優先して維持する「非平常配電制御」を行う。
「中」「低」の配電優先順位についても同様に説明され、蓄電部120が供給可能な電力が少なくなってきた場合は、配電優先順位制御部132は、配電優先順位「中」が割り振られたコンセント口140については、「低」が割り振られているコンセント口140については電力供給を停止してでも、配電優先順位「中」が割り振られたコンセント口140についての電力供給を「低」のコンセント口140よりも優先して維持する「非平常配電制御」を行う。
【0043】
このように、配電優先順位制御部132は配電優先順位に従って「高」「中」「低」の配電優先順位に従って電力供給を行うことで「非平常配電制御」を実行する。
なお、配電優先順位制御部132の配電優先順位リストデータは運用責任者の主導のもと書き換えることができることが好ましい。この例では図示しないが配電優先順位を示すリストデータを書き換える手段が搭載されているものとする。
なお、配電優先順位制御部132は当該リストデータの配電優先順位に従ってコンセント口140の「非平常配電制御」を行うが、運用責任者、利用者などは、コンセント口140にあらかじめ割り当てられている配電優先順位をすぐに把握できないこともあり得る。そこで、コンセント口140のそれぞれに配電優先順位の順番または高低を示す視認できる印が表示されていることが好ましい。
【0044】
[配電優先順位が動的に決定される場合]
次に、配電優先順位が動的に決定される場合の制御例について説明する。
ここでは、2つの構成について例を挙げる。
【0045】
第1の構成は、コンセント口140のそれぞれに、給電口141に加えて、配電優先順位付けの操作が可能なスイッチ142が搭載されている例である。
図6は、まだスイッチ142の操作がされる前の状態、つまり、配電優先順位制御部132の記憶装置内の配電優先順位リストデータのイニシャル状態を示している。
配電優先順位リストにはコンセント口の番号が割り振られているが、相・電圧の別、優先順位はまだブランクとなっている。
ここで、コンセント口140のスイッチ142が操作され、当該コンセント口140に対応する配電優先順位リストデータが設定入力される。
【0046】
図7は、コンセント口140のスイッチ142の操作例を簡単に示した図である。筐体110内に装備されている2番のコンセント口140について操作されている様子を示している。図7の例では、優先順位づけのスイッチは「高」「中」「低」の押下ボタンがあり、これら3つのレベルから選択できるものとなっている。また、供給電圧の選択スイッチは「100V」「200V」から選択できるものとなっている。なお、相については給電口141の形状によって対応する相が単相か3相のいずれであるかはあらかじめ決まっていると言える。
【0047】
図8に示すように、スイッチ142の操作がなされたコンセント口140に関する配電優先順位データが次々と設定されてゆく。
なお、図8に示す例では、スイッチ142の操作がなされたコンセント口140について任意にデータが入力されており、利用者は持ち込んだ電気機器300のプラグを差し込むコンセント口140には特に順番などは決められていない。
このようなコンセント口140のスイッチ142の操作型のメリットは、災害時や非常時などは現場が混乱していることが多く、商用電源が停電状態であるので、プラグとコンセント口の形状が対応し合う程度は瞬時に判断できても、そのコンセント口140の配電優先順位が如何なるものか、100V対応なのか200V対応なのかを確認することは難しい場合があり得る。そこで、取り敢えず、プラグに対応するコンセント口に接続した後、その場で動的に配電優先順位をスイッチ操作で単に押下し、また、電気機器が100V対応の機器か200V対応の機器かを選択してスイッチ操作で単に押下して設定できれば至便である。また、他の動的に多数持ち込まれる電気機器間で蓄電部120の電力を分け合う場合の配電優先順位を現場で簡単にコントールできることはメリットが大きい。
【0048】
第2の構成は、配電優先順位制御部132と、コンセント口140のそれぞれに接続された電気機器300との間で、ソケット-プラグを介したデータのやりとりで配電優先順位の動的な割り振りを実行するものである。
【0049】
なお、この第2の構成は、日本工業規格や業界標準規格として電気機器300には非常時の充電優先順位データを保持し、充電時にプラグを通じてそのデータを送信するという、電気機器300側の装備が必要である。現在の電気機器300においてはそのような日本工業規格や業界標準規格がなく、非常時の充電優先順位データの保持、送信は行われることは期待できる状況ではないが、近い将来、防災の必要性からこのような規格が標準化されることは期待できる。
【0050】
図9は、ソケット-プラグを介したデータのやりとりで配電優先順位の動的な設定を行う様子を簡単に示す図である。
図9で示した状態は、すでに筐体100の内1番のコンセント口140に配電優先順位が高い三相200Vの医療機器である電気機器300が接続されている状態で、他のコンセント口140にはまだ電気機器300が接続されておらず、配電優先順位データが設定されていない状態となっている。
ここで、図9に示すように、充電が必要としてスマートフォンである電気機器300が持ち込まれ、任意に筐体100の内3番のコンセント口140を選択してプラグを差し込もうとしている。
【0051】
図10は、配電優先順位制御部132と電気機器300との間で配電優先順位データのやり取りが行われ、配電優先順位の動的な設定が実行される様子を簡単に示した図である。
図10に示すように、スマートフォンである電気機器300が筐体100の内3番のコンセント口140を選択してプラグが差し込まれると、スマートフォンである電気機器300から保持されていた非常時の充電優先順位データが送信され、ソケット-プラグ接続を介して配電優先順位制御部132に受け渡される。
配電優先順位制御部132は、この受け取った非常時の充電優先順位データのやりとりを通じて配電優先順位リストの動的な設定を行う。
【0052】
以上、実施例1にかかる本発明の電気供給システム100を説明してきたが、上記の数値、形状、サイズなどは一例であり、他の変形や代替が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の電気供給システムは、平常時のみならず非平常時(停電時や災害時など)にも電気機器への給配電を維持することができる電気供給システムとして、広く適用することができる。また、企業、医療機関、自治体などの事業主体におけるBCP(事業継続計画)対策用システムとして適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100 電気供給システム
110 筐体
120 蓄電部
130 給配電制御部
140 コンセント口
150 発電装置
151 ソーラーパネル装置
152 風力発電装置
160 PC制御装置
200 外部電源装置
210 外部の商用電源
220 移動電源車の電源
230 EVまたはPHEVのバッテリ
300 電気機器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13