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特開2024-57144シミュレーションモデル構築方法、及び、シミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057144
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】シミュレーションモデル構築方法、及び、シミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/04 20060101AFI20240417BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G05B13/04
G05B23/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163670
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
(72)【発明者】
【氏名】森山 慧
【テーマコード(参考)】
3C223
5H004
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA18
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF05
3C223FF22
3C223FF23
3C223GG01
5H004GA30
5H004GB04
5H004HA03
5H004HA08
5H004HB03
5H004HB08
5H004KC22
5H004KC27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シミュレーションモデルに含まれる物理モデルのパラメータ調整を好適に行うことで、機器の挙動を精度よく予測する。
【解決手段】シミュレーションモデル構築方法では、準備された複数の入力データと、複数の入力データをシミュレーションモデルにそれぞれ入力した際にシミュレーションモデルの出力値の実測値に対する出力誤差とを含むデータセットを作成する。そしてデータセットに基づいて、入力データに対する前記出力誤差の応答曲面を作成し、応答曲面のうち出力誤差が最小となる特徴点を特定する。特定された特徴点はデータセットに追加されることにより、更新後データセットが作成される。更新後データセットを用いて、物理モデルに含まれる物理パラメータの最適化が行われる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の入出力特性を模擬し、前記機器の物理モデルを含むシミュレーションモデルを構築するためのシミュレーションモデル構築方法であって、
前記シミュレーションモデルに入力するための複数の入力データを準備する入力データ準備工程と、
前記複数の入力データと、前記複数の入力データを前記シミュレーションモデルにそれぞれ入力した際に前記シミュレーションモデルの出力値の実測値に対する出力誤差とを含むデータセットを作成するデータセット作成工程と、
前記データセットに基づいて、前記入力データに対する前記出力誤差の応答曲面を作成する応答曲面作成工程と、
前記応答曲面のうち前記出力誤差が最小となる特徴点を特定する特徴点特定工程と、
前記特徴点を前記データセットに追加することにより、更新後データセットを作成するデータセット更新工程と、
前記更新後データセットを用いて、前記物理モデルに含まれる物理パラメータの最適化を行う物理モデル最適化工程と、
を備え、
前記応答曲面作成工程では、前記データセットとして前記更新後データセットを用いて前記応答曲面を更新し、
前記特徴点特定工程では、更新された前記応答曲面に基づいて前記特徴点を更新し、
前記データセット更新工程では、更新された前記特徴点を前記データセットに追加することにより、前記更新後データセットを更に更新する、シミュレーションモデル構築方法。
【請求項2】
前記データセット更新工程では、前記特徴点に対応する前記出力誤差が予め設定された目標値以下になるまで、前記特徴点を前記データセットに追加する、請求項1に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項3】
前記応答曲面作成工程では、前記データセットを用いたガウス過程回帰により前記応答曲面を作成する、請求項1又は2に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項4】
前記入力データ準備工程では、実験計画法を用いて前記複数の入力データを選定する、請求項1又は2に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項5】
前記シミュレーションモデルは、
前記入力データに対応する前記物理モデルの定常誤差を予測するための定常誤差予測モデルと、
前記入力データに対応する前記物理モデルの過渡的誤差を予測するための過渡誤差予測モデルと、
を含む、請求項1又は2に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項6】
前記過渡誤差予測モデルは、統計的モデルである、請求項5に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項7】
前記統計的モデルは、非線形カーネル型システム同定法を用いる、請求項6に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項8】
前記過渡誤差予測モデルは、入力データに対する前記過渡誤差の予測値を算出する第1時間間隔より短い第2時間周期で、少なくとも1つの過去の前記予測値に基づいて前記予測値を算出する、請求項5に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項9】
前記機器は、発電用ガスエンジンであり、
前記過渡誤差予測モデルは、前記発電用ガスエンジンの負荷投入時に対応する第1過渡誤差予測モデル、及び、前記発電用ガスエンジンの負荷遮断時に対応する第2過渡誤差予測モデルを切替可能である、請求項5に記載のシミュレーションモデル構築方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のシミュレーションモデル構築方法によって構築された前記シミュレーションモデルを用いて、前記機器の挙動をシミュレーションするためのシミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シミュレーションモデル構築方法、及び、シミュレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器を制御するための制御コントローラの開発では、制御対象である機器をモデル化したシミュレーション技術が用いられることがある。この種のシミュレーション技術として、
機器の動特性をシミュレーションするためのSILS(Software In the Loop Simulation)やHILS(Hardware In the Loop Simulation)が知られている。SILSでは機器及び制御コントローラをそれぞれモデル化して結合されたシミュレーションモデルを用いたシミュレーションが行われる。またHILSでは、機器がモデル化されたものがコントローラ実機と結合することでシミュレーションが行われる。
【0003】
このようなシミュレーション技術では、制御対象である機器の動特性を精度良く再現することができれば、シミュレーションによる動作検証の信頼性も向上する。そのため、制御対象のモデル精度は重要なファクターである。機器の動特性を再現するモデルには、大きく分けて、物理式に基づいた物理モデルと、実測値の挙動を統計的に処理して再現した統計モデルとが含まれる。物理モデルは、その物理的な意味が明確であり、実測値が取得できていない場合においても構成可能である利点があるが、精度のよいモデルを得るためには、物理モデルに含まれる物理パラメータの調整に手間を要するという課題がある。一方で統計モデルは、実測値さえ取得できれば、機器の挙動を再現できる利点があるが、その物理的な意味が不明であり、説明性に劣ることが課題となる。このように物理モデルと統計モデルは、互いに一長一短があるため,適切に使い分ける必要がある。
【0004】
機器の挙動を精度よく再現可能なモデルを得るための手法として、例えば、非特許文献1がある。この文献では、説明性に優れた物理モデルをベースとしつつ、機器の定常状態における誤差(定常誤差)を予測するための定常誤差モデルと、機器の過渡状態における誤差(過渡誤差)を予測するための過渡誤差モデルとが組み合わされて用いられる。このモデルでは、物理モデルの予測結果が定常誤差や過渡誤差によって補正することで、機器の挙動を精度よく再現できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-165341号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川口ほか、エンジンモデル同定における誤差モデルのカーネル同定法、計測自動制御学会論文集、Vol.50、No.3、pp311-317、2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記非特許文献1では、物理モデルをベースとしつつ、物理モデルのシミュレーション結果を定常誤差及び過渡誤差によって補正することで、予測精度を向上させている。しかしながら、非特許文献1では、ベースとされる物理モデルとして、多項式のような簡易的なモデルが前提とされている。このような簡易的な物理モデルをベースとした場合、仮に定常誤差及び過渡誤差で補正したとしても、機器の挙動を精度よく再現することは難しい。また機器の挙動を再現に足る物理モデルは、一般的に、多数の物理パラメータを含んでおり、信頼性の高いシミュレーションモデルの構築のためには、これらの物理パラメータをいかに調整するかが重要である。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、シミュレーションモデルに含まれる物理モデルのパラメータ調整を好適に行うことで、機器の挙動を精度よく予測可能なシミュレーションモデルを構築可能なシミュレーションモデル構築方法、及び、シミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係るシミュレーションモデル構築方法は、上記課題を解決するために、
機器の入出力特性を模擬し、前記機器の物理モデルを含むシミュレーションモデルを構築するためのシミュレーションモデル構築方法であって、
前記シミュレーションモデルに入力するための複数の入力データを準備する入力データ準備工程と、
前記複数の入力データと、前記複数の入力データを前記シミュレーションモデルにそれぞれ入力した際に前記シミュレーションモデルの出力値の実測値に対する出力誤差とを含むデータセットを作成するデータセット作成工程と、
前記データセットに基づいて、前記入力データに対する前記出力誤差の応答曲面を作成する応答曲面作成工程と、
前記応答曲面のうち前記出力誤差が最小となる特徴点を特定する特徴点特定工程と、
前記特徴点を前記データセットに追加することにより、更新後データセットを作成するデータセット更新工程と、
前記更新後データセットを用いて、前記物理モデルに含まれる物理パラメータの最適化を行う物理モデル最適化工程と、
を備え、
前記応答曲面作成工程では、前記データセットとして前記更新後データセットを用いて前記応答曲面を更新し、
前記特徴点特定工程では、更新された前記応答曲面に基づいて前記特徴点を更新し、
前記データセット更新工程では、更新された前記特徴点を前記データセットに追加することにより、前記更新後データセットを更に更新する。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係るシミュレーションモデル方法は、上記課題を解決するために、
本開示の少なくとも一実施形態に係るシミュレーションモデル構築方法によって構築された前記シミュレーションモデルを用いて、前記機器の挙動をシミュレーションする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、シミュレーションモデルに含まれる物理モデルのパラメータ調整を好適に行うことで、機器の挙動を精度よく予測可能なシミュレーションモデルを構築可能なシミュレーションモデル構築方法、及び、シミュレーション方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】シミュレーションモデルの基本構成を示す構成図である。
図2A】物理モデルによる出力値を実際の機器の挙動と比較して示す図である。
図2B図2Aに対応する過渡誤差を示す図である。
図3】一実施形態に係るシミュレーションモデル構築方法を示すフローチャートである。
図4】過渡誤差予測モデルの最適化演算を示すフローチャートである。
図5】過渡誤差予測モデルから出力される離散的な過渡誤差の予測値の推移の一例を示す図である。
図6】他の実施形態における過渡誤差予測モデルによって予測される過渡誤差の予測値の演算処理を模式的に示す図である。
図7図6の演算処理を利用した過渡誤差予測モデルから出力される過渡誤差の予測値の時間的推移を示す図である。
図8】発電用ガスエンジンのエンジン回転数、負荷、吸気マニホールド圧力の時間的推移を示す実測データの一例である。
図9】発電用ガスエンジンを模擬対象とするシミュレーションモデルの構成を示す図である。
図10A】負荷投入期間におけるデータの一例である。
図10B】負荷遮断期間におけるデータの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
まず本開示の少なくとも一実施形態にシミュレーションモデル構築方法によって構築されるシミュレーションモデルMの基本構成について説明する。図1はシミュレーションモデルMの基本構成を示す構成図である。
【0015】
シミュレーションモデルMは、機器の入出力特性を疑似的に模擬するモデルである。シミュレーションモデルMの模擬対象は、任意の機器を含むことができ、特に、例えばエンジンのような非線形性が強い入出力特性を有する機器を含むことができる。またシミュレーションモデルMの用途は限定されないが、例えば、機器の動特性をシミュレーションするためのSILS(Software In the Loop Simulation)やHILS(Hardware In the Loop Simulation)に用いることができる。SILSでは、機器及び制御コントローラをそれぞれモデル化して結合されたシミュレーションモデルMが用いられ、HILSでは、機器がモデル化されたものがコントローラ実機と結合されたシミュレーションモデルMが用いられる。
【0016】
シミュレーションモデルMは、その基本的構成であるベースモデルとして、模擬対象である機器の物理モデルMpを含む。物理モデルMpは、機器の入出力特性を構造的又は物理的に説明できるモデルである。物理モデルMpは、その物理的な意味が明確であり、物理モデルMpに含まれる物理パラメータを調整することによりチューニング可能である。
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、シミュレーションモデルMは、前述の物理モデルMpに加えて、機器の定常状態における誤差(定常誤差)を予測するための定常誤差予測モデルMe1と、機器の過渡状態における誤差を予測するための過渡誤差予測モデルMe2とを更に備える。つまり、シミュレーションモデルMは、ベースとなる物理モデルMpに対して、定常誤差予測モデルMe1及び過渡誤差予測モデルMe2が組み合わされることにより、物理モデルMpの予測結果が、定常誤差予測モデルMe1によって予測される定常誤差、及び、過渡誤差予測モデルMe2によって予測される過渡誤差によって補正されることで、機器の挙動を精度よく再現できるシミュレーションモデルMが構成できる。
【0018】
具体的に説明すると、シミュレーションモデルMに対する入力データDinは、物理モデルMp、定常誤差予測モデルMe1及び過渡誤差予測モデルMe2にそれぞれ入力される。物理モデルMpは、入力データDinに対応する出力データDpを予測結果として出力する。出力データDpには、定常誤差予測モデルMe1によって予測される入力データDinに対応する定常誤差E1、及び、過渡誤差予測モデルMe2によって予測される入力データDinに対応する過渡誤差E2がそれぞれ加算され、シミュレーションモデルMの出力値Dout(=Dp+E1+E2)として出力される。
【0019】
尚、過渡誤差予測モデルMe2は、統計的モデルであってもよい。この場合、統計的モデルを用いることで、例えばエンジンのような非線形性が強い対象を精度良く予測可能なシミュレーションモデルMを構築できる。また統計的モデルとしては、非線形カーネル型システム同定法を用いことができる。この場合、データセットDsを用いたシミュレーションモデルMの構築時に、データセットDsに含まれるデータ数を抑え、且つ、過学習を防止できる点で有利である。尚、他の統計的モデルとしては、AR法、重回帰、ニューラルネットワークなども用いることができる。
【0020】
ここで図2Aは物理モデルMpによる出力値Dpを実際の機器の挙動Dp´と比較して示す図であり、図2B図2Aに対応する過渡誤差E2を示す図である。
【0021】
図2Aに示すように、実際の機器の挙動Dp´は、時刻t1以前は第1値V1´に一定であり、時刻t1から第2値V2´に向けて漸近的に増加する。その後、第2値V2´に落ち着いている状態から時刻t2において減少を開始する。これに対して、物理モデルMpの出力値Dpは、時刻t1以前は第1値V1を有し、時刻t1から第2値V2に変化する。その後、第2値V2から時刻t2において第3値V3に変化する。このとき過渡誤差E2は、図2Bに示すように推移する。この場合、定常誤差E1は、時刻t1、t2を境界として、それぞれ一定になるように段階的に推移するが、過渡誤差E2は、時刻t1、t2において急増し、その後、次第に減少する振る舞いを示す。
【0022】
続いて上記構成を有するシミュレーションモデルMを構築するためのシミュレーションモデル構築方法について説明する。図3は一実施形態に係るシミュレーションモデル構築方法を示すフローチャートである。
【0023】
まずシミュレーションモデルMに入力するための複数の入力データDinを準備する(ステップS100:入力データ準備工程)。複数の入力データDinは、例えば実験計画法を用いることで、好適に選定される。より具体的には、入力データDinの選定手法としては、ラテン超方格サンプリングを用いることができる。
【0024】
続いてステップS100で準備した複数の入力データDinを用いて、データセットDsを作成する(ステップS101)。データセットDsは、ステップS100で準備された各入力データDinと、各入力データDinをシミュレーションモデルMに入力した際にシミュレーションモデルMからの出力値Doutの実測値に対する出力誤差ΔDとの組み合わせとして作成される。
尚、ステップS101で入力データDinが入力されるシミュレーションモデルMは、初期状態において事前調整されたモデルパラメータを有する。
【0025】
続いてステップS101で作成されたデータセットDsに基づいて、入力データDinに対する出力誤差ΔDの応答曲面を作成する(ステップS102:応答曲面作成工程)。前述のステップS101では、データセットDsとして、入力データDinと出力誤差ΔDとの組み合わせが複数作成される。ステップS102では、これらの複数の組み合わせを仮想空間にプロットすることで、プロットされたデータ点に基づいて目的関数を近似(例えばガウス過程回帰)することにより応答曲面(ΔD=f(Din):fは任意の関数)が作成される。
【0026】
続いてステップS102で作成された複数の応答曲面上の出力誤差ΔDが最小となる特徴点Pcを多目的最適化(例えばNSGA-3で特定する(ステップS103:特徴点特定工程)。応答曲面は、前述のように入力データDinと出力誤差ΔDとの組み合わせがプロットされた点群により構成されており、ステップS103では、これらの点群のうち出力誤差ΔDが最小のものが特徴点Pcとして特定される。
【0027】
尚、ステップS103では、応答曲面から出力誤差ΔDが最小となる1つの特徴点Pcを特定するようにしたが、出力誤差ΔDが所定の閾値以下となる1以上の特徴点Pcを特定してもよい。
【0028】
続いてステップS103で特定した特徴点PcをデータセットDsに追加することにより、データセットDsの更新を行う(ステップS104:データセット更新工程)。すなわち、ステップS100で準備されたオリジナルのデータセットDsに対して、特徴点Pcに対応するデータ(入力データDinと出力誤差ΔDとの組み合わせ)が追加されることで、データセットDsに含まれるデータ数が増やされる。
【0029】
続いて更新後のデータセットDsを用いて、応答曲面を更新する(ステップS105)。ステップS105では、前述のステップS102と同様に応答曲面が作成されるが、ステップS104でもととなるデータセットDsが更新されているため、異なる応答曲面が得られる。
【0030】
続いて更新後の応答曲面に基づいて、再び特徴点Pcを特定する(ステップS106)。ステップS106においても、応答曲面が更新されていることに伴って異なる特徴点Pcが特定される。このように更新後の応答曲面に基づいて特定される特徴点Pは、更新前の応答曲面に基づいて特定される特徴点Pcに比べて出力誤差ΔDが少なくなる。これは、ステップS104でデータセットDsに新たなに追加されたデータが、最小の出力誤差ΔDに対応するためである。
【0031】
続いてステップS106で特定された更新後の特徴点Pcにおける出力誤差ΔDが、予め設定される目標値以下であるか否かを判定する(ステップS107)。出力誤差ΔDが目標値より大きい場合(ステップS107:NO)、処理をステップS104に戻すことにより、更新後の応答曲面から特定された特徴点Pc(すなわちステップS106で特定された特徴点Pc)をデータセットDsに更に追加することにより、データセットDsを再び更新する。これにより、更に更新されたデータセットDsに基づいて上記処理が繰り返されることで特徴点Pcにおける出力誤差ΔDがより小さくされる。
【0032】
そして出力誤差ΔDが目標値以下になると場合(ステップS107:YES)、更新されたデータセットDsを用いて、シミュレーションモデルMの最適化が行われる(ステップS108:モデル最適化工程)。ステップS108では、シミュレーションモデルMに対して最適化演算が行われることで、シミュレーションモデルMが有する各モデルパラメータの調整が行われる。具体的には、物理モデルMpに含まれる物理パラメータの自動調整、定常誤差予測モデルMe1の同定、過渡誤差予測モデルMe2の同定、及び、これら各モデルの結合が行われることにより、シミュレーションモデルMの最適化が行われる。
【0033】
尚、ステップS107では、出力誤差ΔDが目標値以下になるまでデータセットDsを更新しながら出力誤差ΔDの演算(シミュレーション演算)を繰り返し実施される。このような演算は、出力誤差ΔDが目標値以下になるまで繰り返されるため、その繰り返し回数は、事前にオペレータが指定する等の決定の必要もない。
【0034】
このように更新されたデータセットDsを用いてシミュレーションモデルMを最適化することにより、ベースモデルである物理モデルMpの精度が向上し、その一方で誤差予測モデル(定常誤差予測モデルMe1及び過渡誤差予測モデルMe2)への依存が減少する。その結果、予測精度を向上しつつ、説明性に有利なシミュレーションモデルMを構築することができる。
【0035】
また前述のように応答曲面法を用いることで、実用的な時間でシミュレーションモデルMの構築が可能となる。特に、合わせ込みたい状態量が複数あることを想定し、各状態量の誤差について応答曲面を複数作成し、多目的最適化を適用する。これにより、各状態量の誤差を重み付けして1つの目的関数とみなして応答曲面を作成した場合に必要な重みの調整が不要となる。
【0036】
またステップS108では、シミュレーションモデルMに含まれる過渡誤差予測モデルMe2として、統計的なモデルとして非線形カーネル型システム同定法を用いる場合には、以下のような最適化演算を行うことができる。図4は、過渡誤差予測モデルMe2の最適化演算を示すフローチャートである。
【0037】
シミュレーションモデルMに対して入力データDinを入力し、シミュレーションモデルMの出力値Doutを算出する(ステップS200)。
【0038】
続いて、ステップS200で算出した出力値Doutと、ステップS200で入力された入力データDinに対応する実測値との差分を算出し、当該差分から過渡要素を抽出することにより、訓練データを作成する(ステップS201)。
【0039】
続いてステップS201で作成した訓練データから訓練用のリグレッサ行列zτを生成し(ステップS202)、次式を算出する(ステップS203)。

【0040】
【0041】
続いてシミュレーションを終了するか否かを判定する(ステップS206)。シミュレーションを終了しない場合(ステップS206:NO)、時刻をt=t+dtに更新し(ステップS207)、処理をステップS204に戻す。一方、シミュレーションを終了する場合(ステップS205:YES)、一連の処理を終了する。
【0042】
尚、ステップS200~S203はオフラインにおいてシミュレーション開始前に一度のみ実施され、ステップS204以降はシミュレーション時間ステップ分繰り返し実施される。
【0043】
他の実施形態では、過渡誤差予測モデルMe2によって過渡誤差E2を予測する際に、過渡誤差予測モデルMe2から出力される過渡誤差E2の予測値が時間的に離散して予測されるようになっていてもよい。この場合、過渡誤差予測モデルMe2が連続的に過渡誤差E2の予測値を算出する場合に比べて、大きく演算負担を軽減できる点で有利である。
【0044】
ここで図5は過渡誤差予測モデルMe2から出力される離散的な過渡誤差E2の予測値の推移の一例を示す図である。過渡誤差予測モデルMe2は、第1時間間隔Δt1ごとに離散した過渡誤差E2の予測値を出力する。時間的に隣接する2つの予測値の間は、直近の予測値がホールドされることで一定であるとみなされる。その結果、過渡誤差予測モデルMe2が出力する過渡誤差E2の予測値の時間推移は、図5に示すように、階段状に変化する。このように時間的に離散的な過渡誤差E2の予測値を出力する過渡誤差予測モデルMe2は、演算負担が少ない点で有利ではあるが、各予測値は第1時間間隔Δt1の間ホールドされて実測値からの乖離が大きくなるため、実際の機器の挙動との間に少なからず違いが生じてしまう。
【0045】
図6は他の実施形態における過渡誤差予測モデルMe2によって予測される過渡誤差E2の予測値の演算処理を模式的に示す図であり、図7図6の演算処理を利用した過渡誤差予測モデルMe2から出力される過渡誤差の予測値の時間的推移を示す図である。本実施形態では、過渡誤差予測モデルMe2は、第1時間周期Δt1より小さい第2時間周期Δt2の演算周期を有し、現時刻から第1時間周期Δt1を単位とする過去の少なくとも1つのデータに基づいて、予測値を推定する。図6では、第2時間周期Δt2は、第1時間周期Δt1の1/4に設定されており、各時刻の予測値が過去の複数のデータに基づいて推定される。例えば予測値e1は当該予測値e1から第1時間周期Δ1ごとの過去の複数の予測値d1に基づいて推定される。そして予測値e1より第2期間周期Δ2進んだ時刻における予測値e2は当該予測値e2から第1時間周期Δ1ごとの過去の複数の予測値d1に基づいて推定される。その結果、図7に示すように、図5のような階段状な振る舞いに比べて、実際の挙動に近く比較的滑らかな過渡誤差E2の予測値が得られている。これは、時間的に離散した過渡誤差E2の予測を行うことで演算負担を軽減しつつ、実際の挙動に近い精度のよい予測ができており、上記課題が好適に解決されたことを示している。
【0046】
続いて模擬対象として発電用ガスエンジンを取り扱うシミュレーションモデルMの具体例について説明する。図8は発電用ガスエンジンのエンジン回転数、負荷、吸気マニホールド圧力の時間的推移を示す実測データの一例であり、図9は発電用ガスエンジンを模擬対象とするシミュレーションモデルMの構成を示す図である。
【0047】
図8に示すように発電用ガスエンジンは、初期状態として、停止状態から昇速されることで、無負荷状態においてエンジン回転数が定格回転数になるように運転されている。時刻t1になると、負荷の投入が開始される。

時刻t1~t2の負荷投入期間T1では、エンジン回転数が定格回転数で略一定に保持されたまま、負荷及び吸気マニホールド圧力が、それぞれ時間の経過に従って徐々に増加するように変化する。時刻t2~t3の定常運転期間T2では、エンジン回転数、負荷及び吸気マニホールド圧力はそれぞれ略一定に保持される。その後、時刻t3以降の負荷遮断期間T3では、時刻t3において負荷が遮断されると、吸気マニホールド圧力もまた急減し、エンジン回転数も次第に減少する。
【0048】
図9に示すシミュレーションモデルMは、図1と比較すると過渡誤差予測モデルMe2に代えて、第1過渡誤差予測モデルMe2aと、第2過渡誤差予測モデルMe2bとを備える点で異なる。第1過渡誤差予測モデルMe2aは、発電用ガスエンジンの負荷投入期間T1に対応する過渡誤差予測モデルであり、第2過渡誤差予測モデルMe2bは発電用ガスエンジンの負荷遮断期間T3に対応する過渡誤差予測モデルである。過渡誤差予測モデルMe2では、このような第1過渡誤差予測モデルMe2a及び第2過渡誤差予測モデルMe2bは、模擬対象が負荷投入期間T1又は負荷遮断期間T3のいずれであるかに応じて、互いに切替可能に構成される。
【0049】
尚、第1過渡誤差予測モデルMe2a及び第2過渡誤差予測モデルMe2bは、それぞれ図10A及び図10Bに示す負荷投入期間T1及び負荷遮断期間T3におけるデータ(図8と同様に発電用ガスエンジンのエンジン回転数、負荷、吸気マニホールド圧力の時間的推移を含む)を用いて調整される。
【0050】
尚、定常運転期間T2においては発電用ガスエンジンの運転状態が略一定であるため過渡誤差はほぼないとみなしてもよい(すなわち、過渡誤差の予測は行わず略ゼロとみなしてもよい)。
【0051】
仮に始動期間T1~負荷遮断期間T3の発電用ガスエンジンの一連の挙動を単一のシミュレーションモデルMで模擬しようと汎化性能の高い(すなわち期間に関わらず同じ)過渡誤差予測モデルを用いると、モデル調整のために、負荷投入期間T1や負荷遮断期間T3のような非定常な運転パターンを含む長いデータ(例えば図8に示すデータ)が必要となり、計算負荷の高くなってしまい、また精度も低下してしまうおそれがある。それに対して、上記ように予測対象となる期間に応じて、過渡誤差を予測するためのモデルを切替可能とすることで、発電用ガスエンジンの運転状態に応じた精度のよい予測を行うことができ、また計算負荷も効果的に低減できる。
【0052】
このように本実施形態によれば、発電用ガスエンジンをシミュレーション対象とする場合、シミュレーションモデルに含まれる過渡誤差予測モデルが、発電用ガスエンジンの負荷投入期間T1に対応する第1過渡誤差予測モデルMe2a、及び、発電用ガスエンジンの負荷遮断期間T3に対応する第2過渡誤差予測モデルMe2bを切替可能に構築される。これにより、発電用ガスエンジンの運転状況に応じて過渡誤差予測モデルを切り替えることで、より精度よく発電用ガスエンジンの挙動をシミュレーションできる。
【0053】
以上説明したように上記各実施形態によれば、シミュレーションモデルに対する入力データと、該入力データを入力した際のシミュレーションモデルの出力誤差とを含むデータセットに対して、入力データに対する出力誤差の応答曲面から特定される特徴点に対応するデータが追加されることで、シミュレーションモデルに含まれる物理モデルを最適化するためのデータセットが更新される。更新後のデータセットには、シミュレーションモデルの出力誤差が最小になるデータが追加されるため、物理モデルを効率的に最適化できる。
【0054】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)一態様に係るシミュレーションモデル構築方法は、
機器の入出力特性を模擬し、前記機器の物理モデルを含むシミュレーションモデルを構築するためのシミュレーションモデル構築方法であって、
前記シミュレーションモデルに入力するための複数の入力データを準備する入力データ準備工程と、
前記複数の入力データと、前記複数の入力データを前記シミュレーションモデルにそれぞれ入力した際に前記シミュレーションモデルの出力値の実測値に対する出力誤差とを含むデータセットを作成するデータセット作成工程と、
前記データセットに基づいて、前記入力データに対する前記出力誤差の応答曲面を作成する応答曲面作成工程と、
前記応答曲面のうち前記出力誤差が最小となる特徴点を特定する特徴点特定工程と、
前記特徴点を前記データセットに追加することにより、前記データセットを更新するデータセット更新工程と、
更新された前記データセットを用いて、前記物理モデルに含まれる物理パラメータの最適化を行う物理モデル最適化工程と、
を備え
前記応答曲面作成工程では、前記データセットとして前記更新後データセットを用いて前記応答曲面を更新し、
前記特徴点特定工程では、更新された前記応答曲面に基づいて前記特徴点を更新し、
前記データセット更新工程では、更新された前記特徴点を前記データセットに追加することにより、前記更新後データセットを更に更新する。
【0057】
上記(1)の構成によれば、シミュレーションモデルに対する入力データと、該入力データを入力した際のシミュレーションモデルの出力誤差とを含むデータセットに対して、入力データに対する出力誤差の応答曲面から特定される特徴点に対応するデータが追加されることで、シミュレーションモデルに含まれる物理モデルを最適化するためのデータセットが更新される。更新後のデータセットには、シミュレーションモデルの出力誤差が最小になるデータが追加されるため、物理モデルを効率的に最適化できる。
また
データが新たに追加されたデータセットを用いて再び応答曲面の作成が行われることで、応答曲面の更新が行われる。そして更新後の応答曲面から特定される特徴点に対応するデータが、データセットに対して更に追加されることで更新が繰り返される。このようなデータセットを繰り返し更新することで、物理モデルを効率的に最適化可能なデータセットの構築が可能となる。
【0058】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記データセット更新工程では、前記特徴点に対応する前記出力誤差が予め設定された目標値以下になるまで、前記特徴点を前記データセットに追加する。
【0059】
上記(2)の態様によれば、応答曲面から特定される特徴点における出力誤差が目標値以下になるように、データセットに対して特徴点に対応するデータが追加されることでデータセットの更新が行われる。これにより、物理モデルの最適化を効率的に実施可能なデータセットを得ることができる。
【0060】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記応答曲面作成工程では、前記データセットを用いたガウス過程回帰により前記応答曲面を作成する。
【0061】
上記(3)の態様によれば、ガウス過程回帰によってデータセットから応答曲面を好適に作成できる。
【0062】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記入力データ準備工程では、実験計画法を用いて前記複数の入力データを選定する。
【0063】
上記(4)の態様によれば、実験計画法によって、シミュレーションモデルに対する入力データを好適に選定できる。
【0064】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記シミュレーションモデルは、
前記入力データに対応する前記物理モデルの定常誤差を予測するための定常誤差予測モデルと、
前記入力データに対応する前記物理モデルの過渡的誤差を予測するための過渡誤差予測モデルと、
を含む。
【0065】
上記(5)の態様によれば、シミュレーションモデルには、物理モデルの定常誤差を予測するための定常誤差予測モデルと、物理モデルの過渡的誤差を予測するための過渡誤差予測モデルとが含まれる。このように、シミュレーションモデルに含まれる誤差予測モデルを、定常誤差と過渡誤差とで分けることで、定常誤差及び過渡誤差の両方の精度が優れたモデルを得ることができる(一般的に、定常誤差を予測するためのモデルは定常試験結果などと比較することで比較的容易に得られるが、過渡誤差を予測するためのモデルは様々な変化パターンが想定されるため、精度の良いモデルを得ることは容易でない)。
【0066】
(6)他の態様では、上記(5)の態様において、
前記過渡誤差予測モデルは、統計的モデルである。
【0067】
上記(6)の態様によれば、過渡誤差予測モデルとして統計的モデルを用いることで、例えばエンジンのような非線形性が強い対象を精度良く予測可能なシミュレーションモデルを構築できる。
【0068】
(7)他の態様では、上記(6)の態様において、
前記統計的モデルは、非線形カーネル型システム同定法を用いる。
【0069】
上記(7)の態様によれば、過渡誤差予測モデルに用いられる統計的モデルとして、非線形カーネル型システム同定法を用いることで、データセットを用いたシミュレーションモデルの構築時に、データセットに含まれるデータ数を抑え、且つ、過学習を防止できる点で有利である。
尚、他の統計的モデルとしては、AR法、重回帰、ニューラルネットワークなども用いることができる。
【0070】
(8)他の態様では、上記(5)の態様において、
前記過渡誤差予測モデルは、入力データに対する前記過渡誤差の予測値を算出する第1時間間隔より短い第2時間周期で、少なくとも1つの過去の前記予測値に基づいて前記予測値を算出する。
【0071】
上記(8)の態様によれば、過渡誤差予測モデルによる過渡誤差の予測値の算出は、入力データに対する過渡誤差の予測値を算出する第1時間間隔より短い第2時間周期で、少なくとも1つの過去の前記予測値に基づいて行われる。これにより、第1時間間隔の間における過渡誤差の予測値を補間的に推測することで、演算負荷を軽減しつつ、精度のよい過渡誤差の予測が可能となる。
【0072】
(9)他の態様では、上記(5)の態様において、
前記機器は、発電用ガスエンジンであり、
前記過渡誤差予測モデルは、前記発電用ガスエンジンの負荷投入時に対応する第1過渡誤差予測モデル、及び、前記発電用ガスエンジンの負荷遮断時に対応する第2過渡誤差予測モデルを切替可能である。
【0073】
上記(9)の態様によれば、発電用ガスエンジンをシミュレーション対象とする場合、シミュレーションモデルに含まれる過渡誤差予測モデルが、発電用ガスエンジンの負荷投入時に対応する第1過渡誤差予測モデル、及び、発電用ガスエンジンの負荷遮断時に対応する第2過渡誤差予測モデルを切替可能に構築される。これにより、発電用ガスエンジンの運転状況に応じて過渡誤差予測モデルを切り替えることで、より精度よく発電用ガスエンジンの挙動をシミュレーションできる。
【0074】
(10)一態様に係るシミュレーション方法では、
上記(1)から(9)のいずれか一態様に係るシミュレーションモデル構築方法によって構築された前記シミュレーションモデルを用いて、前記機器の挙動をシミュレーションする。
【0075】
上記(10)の態様によれば、上記各態様で構築されたシミュレーションモデルをSILS(Software In the Loop Simulation)やHILS(Hardware In the Loop Simulation)等に適用することで、機器を制御するための制御コントローラの開発等において、機器の動特性を精度よくシミュレーションできる。
【符号の説明】
【0076】
M シミュレーションモデル
Me1 定常誤差予測モデル
Me2 過渡誤差予測モデル
Me2a 第1過渡誤差予測モデル
Me2b 第2過渡誤差予測モデル
Mp 物理モデル
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B