(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057145
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】アンカー用受圧板
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20240417BHJP
E02D 5/80 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
E02D17/20 103Z
E02D5/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163673
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306019122
【氏名又は名称】株式会社エイチワン
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 和徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和久
(72)【発明者】
【氏名】細谷 和秀
(72)【発明者】
【氏名】小池 直哉
(72)【発明者】
【氏名】磯尾 智大
【テーマコード(参考)】
2D041
2D044
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GB01
2D044DB00
(57)【要約】
【課題】アンカー材が通される中央受圧部から枝状に延びる枝状受圧部でも斜面を確実に押圧する。
【解決手段】地盤から突出したロックボルト2の端部を緊結ナット3で緊結した際のロックボルト2の緊張力を当該地盤に伝達するアンカー用受圧板1であって、ロックボルト2が通されるボルト通し孔11a1が設けられた中央受圧部11aおよびその中央受圧部11aから外側に向かって枝状に延びる複数の枝状受圧部11bを有する受圧板本体11と、ロックボルト2が通されるボルト通し孔11a1が設けられ、緊結ナット3の緊結によって受圧板本体11の中央受圧部11aおよび複数の枝状受圧部11bを押圧する応力伝達部材12とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤から突出したアンカー材の端部を緊結ナットで緊結した際の前記アンカー材の緊張力を当該地盤に伝達するアンカー用受圧板であって、
前記アンカー材が通されるアンカー材通し孔が設けられた中央受圧部およびその中央受圧部から外側に向かって枝状に延びる複数の枝状受圧部と隣接する前記枝状受圧部同士を連結する外枠部を有する受圧板本体と、
前記受圧板本体とは独立した別体で構成され、前記アンカー材が通されるアンカー材通し孔が設けられ、前記緊結ナットの緊結によって前記受圧板本体を押圧して前記アンカー材の緊結力を伝達する応力伝達部材とを備え、
前記複数の枝状受圧部は、それぞれ、
地盤に当接して前記アンカー材の緊張力を当該地盤に伝達する枝状地盤当接部と、
その枝状地盤当接部の短手方向の両側それぞれから曲げ起こされ、前記応力伝達部材が当接して当該応力伝達部材からの前記アンカー材の緊張力が伝達される枝状応力伝達凸部と、
隣接する他の前記枝状受圧部の枝状応力伝達凸部同士を前記中央受圧部の周縁で連結する伝達凸部連結部とを有することを特徴とするアンカー用受圧板。
【請求項2】
請求項1記載のアンカー用受圧板において、
前記応力伝達部材は、
前記受圧板本体の中央受圧部を押圧して前記アンカー材の緊張力を伝達する中央側応力伝達部と、
前記中央側応力伝達部よりも外側でかつ高い位置に設けられ、前記受圧板本体の複数の枝状受圧部それぞれの前記枝状応力伝達凸部および前記伝達凸部連結部を押圧して前記アンカー材の緊張力を伝達する縁部側応力伝達部とを有することを特徴とするアンカー用受圧板。
【請求項3】
請求項2記載のアンカー用受圧板において、
前記縁部側応力伝達部は、
前記複数の枝状受圧部それぞれの前記枝状応力伝達凸部および前記伝達凸部連結部に当接する平面状の複数の縁部側応力伝達平板部と、
前記複数の縁部側応力伝達平板部それぞれの間に設けられ、下方に向かって凹んだ複数の縁部側応力伝達湾曲部とを有し、
前記縁部側応力伝達平板部と前記縁部側応力伝達湾曲部とが交互に複数設けられていることを特徴とするアンカー用受圧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面等の安定化を図るアンカー用受圧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盛土斜面等の法面は、コンクリート製(モルタル製も含む。以下、同じ。)のアンカー用受圧板に法面に埋没したロックボルト等のアンカー材とを組み合わせた受圧板があり、詳細には、ロックボルト等のアンカー材の上端部に座金を介してアンカー用受圧板を通し、その上からナットを緊結して安定化を図っている。しかしながら、このようなアンカー用受圧板は、大型で重量も重く、扱い難いため、近年は金属製や樹脂の軽量化したものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。このような金属製や樹脂の軽量化したアンカー用受圧板は、コンクリート製のものと比べて非常に軽量で施工が容易で、作業者の負担が少ない等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】意匠登録第1677231号公報
【特許文献2】意匠登録第1608129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1,2に記載された金属製や樹脂製の従来のアンカー用受圧板は、コンクリート製のものよりも軽量である。しかしながら、コンクリート製のものよりも撓み易い金属製や樹脂製等で形成されているため、アンカー材に緊張力を付与した際、アンカー材および座金直下(付近)では地表面方向に大きな押圧力が発生するが、アンカー材および座金から遠ざかるにつれて受圧板に伝達される押圧力が小さくなり、受圧板の縁部が反り上がる等して受圧板としての機能が低下し、盛土斜面等の法面等を十分に保護できないおそれがあるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑みなされたもので、金属製や樹脂製等のコンクリート製以外の材料によって形成したアンカー用受圧板であっても、アンカー材の緊結力をアンカー用受圧板の末端まで伝達して法面を確実に押圧することができるアンカー用受圧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明に係るアンカー用受圧板は、地盤から突出したアンカー材の端部を緊結ナットで緊結した際の前記アンカー材の緊張力を当該地盤に伝達するアンカー用受圧板であって、前記アンカー材が通されるアンカー材通し孔が設けられた中央受圧部およびその中央受圧部から外側に向かって枝状に延びる複数の枝状受圧部と隣接する前記枝状受圧部同士を連結する外枠部を有する受圧板本体と、前記受圧板本体とは独立した別体で構成され、前記アンカー材が通されるアンカー材通し孔が設けられ、前記緊結ナットの緊結によって前記受圧板本体を押圧して前記アンカー材の緊結力を伝達する応力伝達部材とを備え、前記複数の枝状受圧部は、それぞれ、地盤に当接して前記アンカー材の緊張力を当該地盤に伝達する枝状地盤当接部と、その枝状地盤当接部の短手方向の両側それぞれから曲げ起こされ、前記応力伝達部材が当接して当該応力伝達部材からの前記アンカー材の緊張力が伝達される枝状応力伝達凸部と、隣接する他の前記枝状受圧部の枝状応力伝達凸部同士を前記中央受圧部の周縁で連結する伝達凸部連結部とを有することを特徴とする。
また、本発明に係るアンカー用受圧板では、前記応力伝達部材は、前記受圧板本体の中央受圧部を押圧して前記アンカー材の緊張力を伝達する中央側応力伝達部と、前記中央側応力伝達部よりも外側でかつ高い位置に設けられ、前記受圧板本体の複数の枝状受圧部それぞれの前記枝状応力伝達凸部および前記伝達凸部連結部を押圧して前記アンカー材の緊張力を伝達する縁部側応力伝達部とを有することも特徴とする。
また、本発明に係るアンカー用受圧板では、前記縁部側応力伝達部は、前記複数の枝状受圧部それぞれの前記枝状応力伝達凸部および前記伝達凸部連結部に当接する平面状の複数の縁部側応力伝達平板部と、前記複数の縁部側応力伝達平板部それぞれの間に設けられ、下方に向かって凹んだ複数の縁部側応力伝達湾曲部とを有し、前記縁部側応力伝達平板部と前記縁部側応力伝達湾曲部とが交互に複数設けられていることも特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るアンカー用受圧板では、アンカー材が通されるアンカー材通し孔が設けられた中央受圧部やその中央受圧部から外側に向かって枝状に延びる複数の枝状受圧部、枝状受圧部の先端同士を連結する外枠部を有する受圧板本体と、受圧板本体とは独立した別体で構成され、アンカー材が通されるアンカー材通し孔が設けられ、緊結ナットの緊結によって受圧板本体の中央受圧部および複数の枝状受圧部を押圧する応力伝達部材とを備え、複数の枝状受圧部は、それぞれ、アンカー材の緊張力を地盤に伝達する枝状地盤当接部と、その枝状地盤当接部の短手方向の両側それぞれから曲げ起こされて応力伝達部材が押圧してアンカー材の緊張力が伝達される枝状応力伝達凸部と、隣接する他の枝状受圧部の枝状応力伝達凸部同士を中央受圧部の周縁で連結する伝達凸部連結部とを設けている。
そのため、アンカー材に緊張力を付与すると、アンカー材の緊張力は、応力伝達部材から枝状受圧部の枝状応力伝達凸部を介して枝状受圧部に伝達されるため、外枠部まで確実に力を伝達することが出来る。また、アンカー材の緊張力は、枝状受圧部の枝状応力伝達凸部のみだけでなく、応力伝達部材から枝状受圧部の伝達凸部連結部を介しても枝状受圧部に伝達されるので、法面等の地盤の凹凸等によって枝状応力伝達凸部の高さに違いがある場合でも、枝状受圧部や外枠部全体に均等に力を伝達することができる。
これにより、本発明に係るアンカー用受圧板をコンクリート以外の金属製や樹脂製の材料によって薄肉のプレート状に形成しても十分な強度を確保することができるので、盛土斜面等の法面等を確実かつ均等に安定化することができると共に、コンクリート製のものと比べても軽量化することができるので、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板の斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板を構成する受圧板本体の斜視図である。
【
図3】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板を構成する受圧板本体の平面図、正面図、側面図である。
【
図4】(a),(b)それぞれ、本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板を構成する受圧板本体のアンカー材通し孔を通る線で切断した斜視図、
図4(a)におけるA方向の断面図である。
【
図5】(a),(b)それぞれ本実施形態のアンカー用受圧板を構成する応力伝達部材の斜視図、正面図である。
【
図6】本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板の使用状態を示す断面図である。
【
図8】(a)~(c)それぞれ、本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板を構成する受圧板本体の他の構成例の平面図、正面図、側面図である。
【
図9】
図8に示す受圧板本体の他の構成例を使用したアンカー用受圧板の使用状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るアンカー用受圧板の実施形態について説明する。尚、下記に説明する実施形態は、あくまで本発明の一例であり、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の創作の範囲内で適宜変更可能である。
【0010】
<実施形態のアンカー用受圧板1の構成>
本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板1は、樹脂や金属から構成されるアンカー用受圧板であって、例えば、
図1に示すように、盛土斜面等の法面の地盤を押圧してその地盤から反力を受ける受圧板本体11と、受圧板本体11とは独立した別体で構成された応力伝達部材12等を備えて構成され、後述する
図6等に示すように法面等の地盤から突出するアンカー材としてのロックボルト2先端を、平座金4や球面ワッシャ5等を介し緊結ナット3で緊結して法面等の地盤を押圧して安定化させるものである。尚、
図6において符号の6は、ロックボルト2の頭部の防錆を保護する保護キャップである。
【0011】
(受圧板本体11)
受圧板本体11は、薄肉の鋼板プレートを所定形状に打ち抜き加工によって切断した後、金型によりプレス加工して、
図1~
図4に示すようにロックボルト2が通されるボルト通し孔11a1が設けられた中央受圧部11aと、その中央受圧部11aの中心から外側に向かって45度間隔で枝状に延びる複数(ここでは、例えば、8本とする。)の枝状受圧部11bと、その複数の枝状受圧部11bの先端部それぞれを平面視、ほぼ正方形に連結する外枠部11cとが一体成形されている。
【0012】
中央受圧部11aは、法面等の地盤に接触して地盤からの反力を受ける部分で、ロックボルト2が通されるボルト通し孔11a1が設けられている。
【0013】
複数の枝状受圧部11bは、中央受圧部11aの中心から外側に向かって45度間隔で枝状に延びる部分で、それぞれ、枝状地盤当接部11b1と、枝状応力伝達凸部11b2,11b2と、伝達凸部連結部11b3とを有する。
【0014】
枝状地盤当接部11b1は、中央受圧部11aと面一に形成され、法面等の地盤を押圧してロックボルト2の緊張力を法面等の地盤に伝達する。
【0015】
枝状応力伝達凸部11b2,11b2は、それぞれ、各枝状地盤当接部11b1の長手方向全面に亘って、短手方向の両側それぞれから曲げ起こされ、応力伝達部材12を上方から重ねた際に応力伝達部材12が接触して当該応力伝達部材12からのロックボルト2の緊張力が伝達される部位で、中央受圧部11aに近接する程、枝状地盤当接部11b1から曲げ起こされている部分の高さが高く、中央受圧部11aから離れて外枠部11cに近くなるほど低くなるように形成されている。
【0016】
伝達凸部連結部11b3は、隣接する他の枝状受圧部11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2同士を中央受圧部11aの周縁で連結する部位で、中央受圧部11aの周縁の枝状応力伝達凸部11b2,11b2の高さと同じに形成されている。
【0017】
外枠部11cは、8本の枝状受圧部11bの先端部を平面視、ほぼ正方形に連結する部位で、枝状受圧部11b先端の枝状応力伝達凸部11b2と面一で連続する外枠用連続部11c1と、外枠用連続部11c1から下方に折れ曲がり中央受圧部11aや枝状受圧部11bの枝状地盤当接部11b1と面一になって法面等の地盤を押圧する外枠用押圧部11c2とを8本の枝状受圧部11bの先端部間に設けて構成されている。
【0018】
(応力伝達部材12)
応力伝達部材12は、受圧板本体11とは独立して別体で構成された
図5(a),(b)に示すように平面視、ほぼ円形の皿状部材であって、中央側応力伝達部12aと、円錐台側面部12bと、縁部側応力伝達部12cとを有する。
【0019】
中央側応力伝達部12aは、応力伝達部材12の底部に相当する部位で、ロックボルト2が通るボルト通し孔12a1が設けられ、受圧板本体11の上に重ねられてロックボルト2および緊結ナット22によって緊結された際に、受圧板本体11の中央受圧部11aに当接してロックボルト2の緊張力を受圧板本体11の中央受圧部11aに伝達するとともに、後述する円錐台側面部12bにも力を流す部位である。
【0020】
円錐台側面部12bは、中央側応力伝達部12aの外縁部から斜めに広がって中央側応力伝達部12aを低部とする円錐台の円錐台の側面に相当する。応力伝達部材12は、受圧板本体11に設置された際に、後述する縁部応力伝達部12cが、枝状受圧部11bを介して、ロックボルト2からの緊張力を伝達するため、前記縁部応力伝達部12cに緊張力を伝達させる円錐第側面部12bは、中央側応力伝達部12a上面から受圧板本体11の中央受圧部11aの周縁上面と枝状受圧部11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2および伝達凸部連結部11b3の最高高さ部分の高さまたはその高さより若干低い高さまで斜めに立ち上がるように構成されている。
【0021】
縁部側応力伝達部12cは、
図5(a),(b)等に示すように円錐台側面部12bの上端部から外側に広がる鍔状の部位で、応力伝達部材12が受圧板本体11に設置されてロックボルト2および緊結ナット22によって緊結された際に、受圧板本体11の枝状受圧部11bの伝達凸部連結部11b3から枝状応力伝達凸部11b2,11b2の最高高さ部分に当接する平板状の縁部側応力伝達平板部12c1と、隣接する縁部側応力伝達平板部12c1,12c1間に下方に凸となるように湾曲して設けられた縁部側応力伝達湾曲部12c2とを有する。
【0022】
<実施形態のアンカー用受圧板1の使用方法や作用等>
次に、以上のように構成された実施形態のアンカー用受圧板1の使用方法や作用等について説明する。
【0023】
図6は、実施形態のアンカー用受圧板1を法面に設置した状態を示す断面図、
図7は、
図6の要部拡大断面図である。
【0024】
まずは、
図6および
図7に示すように法面等の地盤に埋め込まれ地盤から突出したロックボルト2先端に受圧板本体11を被せ、その中央受圧部11aのボルト通し孔11a1にロックボルト2先端を通す。
【0025】
次に、受圧板本体11の中央受圧板11aに応力伝達部材12を設置する。その際、その中央側応力伝達部12aのボルト通し穴12a1にロックボルト2先端を通し、平座金4および球面ワッシャ5を介し緊結ナットである球面ナット3で緊結してロックボルト2の緊張力を付与する。尚、
図6および
図7において、符号の6は、ロックボルト2先端や球面ナット3、球面ワッシャ5等を保護する保護キャップ6で、その内側には防錆油等を注入してロックボルト2先端を覆う。
【0026】
すると、ロックボルト2の緊張力は、応力伝達部材12の中央側応力伝達部12aを介して受圧板本体11の中央受圧部11aに伝達されて、さらには、法面の地盤に伝達することができるとともに、円錐台側面部12bから縁部側応力伝達部12cにも伝達される。
【0027】
また、応力伝達部材12の縁部側応力伝達平板部12c1が、受圧板本体11の複数の枝状受圧部11bの伝達凸部連結部11b3を介して、それぞれの枝状応力伝達凸部11b2,11b2を押圧するため、枝状応力伝達凸部11b2,11b2の間の枝状地盤当接部11b1が先端まで浮上ることなく地盤を確実に押圧して地盤に伝達することができる。さらに、枝状受圧部11bを介して外枠部11cにもロックボルト2の緊張力が伝達され、外枠部11cの外枠用押圧部11c2が当接している地盤を押圧して地盤に伝達することができる。
【0028】
その際、受圧板本体11の枝状受圧部11bの両側の枝状応力伝達凸部11b2,11b2は、枝状受圧部11bにロックボルト2の緊張力を確実に外枠部11cに伝達するとともに、受圧本体11自体を補強する効果もあるため、薄肉の鋼板プレートを用いた場合にも破損し難い。
【0029】
そのため、薄肉の鋼板プレートを用いた場合にも枝状受圧部11b先端部や外枠部11cの反り上がり少なくなり、受圧板としての機能の低下を防止して、特許文献1,2の受圧板よりも盛土斜面等の法面等を保護することができる。
【0030】
また、応力伝達部材12の縁部側応力伝達平板部12c1は、縁部側応力伝達平板部12c1と縁部側応力伝達湾曲部12c2を有することで、応力伝達部材12自体を補強する効果もあるため、薄肉の鋼板プレートを用いた場合にも破損し難い。
【0031】
<本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板1のまとめ>
以上説明したように、本発明に係る実施形態のアンカー用受圧板1は、ロックボルト2が通されるボルト通し孔11a1が設けられた中央受圧部11aおよびその中央受圧部11aから外側に向かって枝状に延びる複数の枝状受圧部11bを有する受圧板本体11と、ロックボルト2が通されるボルト通し孔12a1が設けられ、緊結ナット3の緊結によって受圧板本体11を押圧してロックボルトの緊結力を伝達する応力伝達部材12とを備え、複数の枝状受圧部11bは、それぞれ、地盤を押圧してロックボルト2の緊張力を当該地盤に伝達する枝状地盤当接部11b1と、その枝状地盤当接部11b1の短手方向の両側それぞれから曲げ起こされて、応力伝達部材12が当接して当該応力伝達部材12からのロックボルト2の緊張力が伝達される枝状応力伝達凸部11b2と、隣接する他の枝状受圧部11bの枝状応力伝達凸部11b2同士を中央受圧部11aの周縁で連結する伝達凸部連結部11b3とを有する。
【0032】
そのため、ロックボルト2に緊張力を付与した際、ロックボルト2の緊張力は、応力伝達部材12から受圧板本体11全体に亘って均等な前記緊張力を伝達することができる。
【0033】
その結果、ロックボルト2の緊張力を受圧板本体11の枝状受圧部11b末端や外枠部11cに至るまで均等な緊張力を伝達して盛土斜面等の法面等を確実に押圧することができるので、コンクリート製以外の金属製や樹脂製等の材料によって形成したアンカー用受圧板1であっても、十分な強度を確保することができるので、従来と比べてもアンカー用受圧板1をより軽量化することができ、作業性を向上させることができる。
【0034】
また、実施形態のアンカー用受圧板1では、受圧板本体11の8本の枝状受圧部11bでは、隣接する他の枝状受圧部11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2同士を中央受圧部11aの周縁で連結する伝達凸部連結部11b3を設けているため、仮に地盤の凸凹に応じて隣接する枝状応力伝達凸部11b2,11b2の間で多少高さが変化している場合でも、伝達凸部連結部11b3を介して高さが低くなった枝状応力伝達凸部11b2へもロックボルト2の緊張力を確実に伝達し、各枝状受圧部11bおよびその先端の各外枠部11cにも極力、均等にロックボルト2の緊張力を伝達するので、法面を確実に保護することができる。
【0035】
さらに、実施形態のアンカー用受圧板1では、応力伝達部材12が中央側応力伝達部12aから縁部側応力伝達部12cまで、円錐台側面部12bを有するお皿ないしはお椀のような形状となること及び、縁部側応力伝達部12cには、平面状の複数の縁部側応力伝達平板部12c1と、下方に向かって凹んだ複数の縁部側応力伝達湾曲部12c2とを有している。これらの構成により、ロックボルト2の緊張力を受圧板本体11の枝状受圧部11b末端や外枠部11cに確実に伝達して盛土斜面等の法面等を確実に押圧することができ、金属製や樹脂製等のコンクリート製以外の材料によって形成したアンカー用受圧板1であっても、法面を確実に保護することができる。
【0036】
尚、上記実施形態のアンカー用受圧板1を構成する応力伝達部材12は、
図1や
図5(a),(b)等に示すように縁部側応力伝達部12cに、縁部側応力伝達平板部12c1と縁部側応力伝達湾曲部12c2と交互に設けた形状に説明したが、本発明ではこれに限らず、例えば、
図8(a)~(c)に示す応力伝達部材12’のように縁部側応力伝達部12c’を平面状に形成しても勿論良い。
【0037】
図8(a)~(c)に示すように縁部側応力伝達部12c’を平面状に形成した応力伝達部材12’の場合、縁部側応力伝達平板部12c1の場合と同様に
図9に示すように縁部側応力伝達部12c’が各枝状地盤当接部11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2に当接して上方向から押圧すると共に、隣接する他の枝状地盤当接部11b,11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2同士を連結する伝達凸部連結部11b3も押圧して各枝状地盤当接部11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2に均等に押圧することができる。
【0038】
さらに、アンカー用受圧板1を構成する応力伝達部材12は、
図5(a),(b)や
図8(a)~(c)に示すように円錐台側面部12b,12b’を有していて全体としてお皿(お椀)形状でなく、円形の一枚のプレート(平面)で構成しても良い。ただし、応力伝達部材12を一枚の円形プレートで構成した場合、その応力伝達部材12は圧板本体11の複数の枝状受圧部11bの枝状応力伝達凸部11b2,11b2および枝状応力伝達凸部11b2,11b2,11b2を連結する伝達凸部連結部11b3に当接してロックボルト2の緊張力を伝達するが、枝状応力伝達凸部11b2,11b2および伝達凸部連結部11b3よりも低い中央受圧部11aに当接せず、中央受圧部11aにロックボルト2の緊張力を直接伝達することは出来ない。そのため、この場合には、プレート状の応力伝達部材下部に形成された中央受圧部11aとの間の空間にモルタル等を充填する構造にすれば良い。
【符号の説明】
【0039】
1…アンカー用受圧板、11…受圧板本体、11a…中央受圧部、11a1…ボルト通し孔、11b…枝状受圧部、11b1…枝状地盤当接部、11b2…枝状応力伝達凸部、11b3…伝達凸部連結部、11c…外枠部、11c1…外枠用連続部、11c2…外枠用押圧部、12,12’…応力伝達部材、12a,12a’…中央側応力伝達部、12a1,12a1’…ボルト通し孔、12b,12b’…円錐台側面部、12c,12c’…縁部側応力伝達部、12c1…縁部側応力伝達平板部、12c2…縁部側応力伝達湾曲部、2…ロックボルト(アンカー材)、3…緊結ナット、4…平座金、5…球面ワッシャ、6…保護キャップ。