(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057162
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】保持具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
A61M25/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163695
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267AA28
4C267AA34
4C267BB13
4C267BB40
4C267CC08
(57)【要約】
【課題】さまざまな仕様の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持可能な保持具を提供する。
【解決手段】可撓性を有する医療用の長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で保持する保持具10であって、2つの壁部材70と、2つの壁部材70間の距離を調節可能に接続する一対のレール50と、レール50と平行に延びる溝64と、当該溝64の底面65から起立して対向する一対のラック68と、を有し、レール50にスライド可能に連結された矩形形状のベース60と、ラック68に係合可能な爪39を備え、溝64に沿ってスライド可能な仕切り30と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で保持する保持具であって、
2つの壁部材と、
前記2つの壁部材間の距離を調節可能に接続する一対のレールと、
前記レールと平行に延びる溝と、当該溝の底面から起立して対向する一対のラックと、を有し、前記レールにスライド可能に連結された矩形形状のベースと、
前記ラックに係合可能な爪を備え、前記溝に沿ってスライド可能な仕切りと、を有する保持具。
【請求項2】
前記レールは、前記ベースに対して移動可能であって一方の前記壁部材に接続された第1レールと、前記第1レールに対して移動可能であって他方の前記壁部材に接続された第2レールと、を有し、
前記第1レールおよび前記ベースは、前記ベースに対する前記第1レールの移動を規制する第1規制部を有し、
前記第2レールおよび前記第1レールは、前記第1レールに対する前記第2レールの移動を規制する第2規制部を有する請求項1に記載の保持具。
【請求項3】
前記仕切りは、前記爪が前記ラックに係合した状態において、前記壁部材に向く保持面と、前記保持面の前記ベースから離れた側に位置する端部から突出する鍔部と、を有する請求項1または2に記載の保持具。
【請求項4】
前記仕切りは、前記爪を移動可能に支持するつまみ部を有する請求項1または2に記載の保持具。
【請求項5】
前記壁部材は、前記ベースに対して前記仕切りが起立する方向へ突出する補助仕切りを有する請求項1または2に記載の保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で保持する保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
血管内治療では、ガイドワイヤやカテーテルなどのさまざまな医療用の長尺デバイスが使用される。血管内治療の手技中、術者は、ガイドワイヤを体外に抜去し、再び血管内に挿入することがある。体外に抜去されたガイドワイヤは、再挿入されるまでの間、コイル状に巻かれ、液体で満たされた容器内に一時的に保管される。
【0003】
ガイドワイヤの基端部は、剛性および弾性が高い材料で形成されている。これにより、ガイドワイヤは、コイル状に巻かれた状態から直線の状態に戻ろうとし、液体で満たされた容器内から意図せずに飛び出して汚染されてしまうことがある。そのため、ガイドワイヤをコイル状に巻かれた状態で保持する手段が提案されている。
【0004】
特許文献1には、容器内に配置された特定のタブと仕切りによって、コイル状に巻いた医療用ガイドワイヤを液体内の所定の位置に保持するための容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0312703号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の容器は、仕切りの位置があらかじめ決められている。そのため、ガイドワイヤ等の医療用の長尺デバイスをコイル状に巻いて形成するループの最大直径は、容器の大きさおよび仕切りの位置によって決まる。剛性および弾性が高い長尺デバイスに対して容器の仕切りの間隔が狭い場合、長尺デバイスがコイル状に巻かれた状態から直線の状態に戻ろうとする復元力が大きくなるため、仕切りが破損したり、長尺デバイスが容器から飛び出したりする可能性がある。また、長さが短くコイル状に巻いた際のループの数が少ない長尺デバイスに対して容器の仕切りの間隔が広い場合、長尺デバイスの復元力によって長尺デバイスのループがほどけて、容器から飛び出す可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、さまざまな仕様の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持可能な保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、下記(1)に記載の発明により達成される。
(1) 本発明に係る保持具は、可撓性を有する医療用の長尺デバイスをコイル状に巻かれた状態で保持する保持具であって、2つの壁部材と、前記2つの壁部材間の距離を調節可能に接続する一対のレールと、前記レールと平行に延びる溝と、当該溝の底面から起立して対向する一対のラックと、を有し、前記レールにスライド可能に連結された矩形形状のベースと、前記ラックに係合可能な爪を備え、前記溝に沿ってスライド可能な仕切りと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)に記載の保持具は、レールを伸縮させて2つの壁部材間の距離を任意に調節することにより、保持具を配置する容器の大きさに依らず壁部材を容器の壁に対して強固に固定可能である。このため、保持具は、長尺デバイスの復元力によって保持具が容器内で移動することを抑制できる。そして、保持具は、保持する長尺デバイスの剛性や弾性、長さに応じて、仕切りの位置を調節することができるため、さまざまな仕様の長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の保持具において、前記レールは、前記ベースに対して移動可能であって一方の前記壁部材に接続された第1レールと、前記第1レールに対して移動可能であって他方の前記壁部材に接続された第2レールと、を有し、前記第1レールおよび前記ベースは、前記ベースに対する前記第1レールの移動を規制する第1規制部を有し、前記第2レールおよび前記第1レールは、前記第1レールに対する前記第2レールの移動を規制する第2規制部を有してもよい。これにより、保持具は、第1レールおよび/または第2レールがベースから脱落することを抑制できる。
【0011】
(3) 上記(1)または(2)に記載の保持具において、前記仕切りは、前記爪が前記ラックに係合した状態において、前記壁部材に向く保持面と、前記保持面の前記ベースから離れた側に位置する端部から突出する鍔部と、を有してもよい。これにより、保持具は、保持面に保持された長尺デバイスが、保持面を滑って仕切りから離脱することを鍔部により抑制できる。
【0012】
(4) 上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の保持具において、前記仕切りは、前記爪を移動可能に支持するつまみ部を有してもよい。これにより、保持具は、つまみ部を撓ませて爪を移動させ、ラックの凹凸形状から爪を離脱させることで、仕切りを溝に沿って容易に移動させることができる。
【0013】
(5) 上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の保持具において、前記壁部材は、前記ベースに対して前記仕切りが起立する方向へ突出する補助仕切りを有してもよい。これにより、保持具は、仕切りと補助仕切りとの間に、長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持できる。このため、長尺デバイスをコイル状に巻いた状態で保持するために、容器の内表面を利用する必要がなくなり、容器の内表面の形状に依らず長尺デバイスを保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る保持具を示す図であり、(A)は平面図、(B)は
図1(A)のA-A線に沿う断面図、(C)は
図1(A)のB-B線に沿う断面図である。
【
図2】実施形態に係る保持具を示す図であり、(A)は
図1(A)のC-C線に沿う断面図、(B)は仕切りの爪をラックから離脱させた状態の断面図である。
【
図3】実施形態に係る保持具を容器に配置した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。本明細書における「上」および「下」の表現は、説明のために便宜上使用するものであり、保持具の姿勢を限定するものではない。
【0016】
本実施形態に係る保持具10は、
図3~5に示すように、別途用意される任意の容器110に取り付けられて、ガイドワイヤやカテーテルなどの1つまたは複数の医療用の長尺デバイス100をループ状に複数回巻いて束ねた状態で保持するために使用される。
【0017】
保持具10は、
図1~2に示すように、容器110に固定可能な本体20と、本体20に固定可能な少なくとも1つの仕切り30とを有する。本体20は、2つの壁部材70と、2つの壁部材70間の距離を調節可能に接続する2つのレール50と、レール50にスライド可能に連結されるベース60とを有する。仕切り30は、複数準備されて、状況に応じて必要な数がベース60に取り付けられることが好ましい。本明細書では、2つのレール50が延びる方向を伸長方向X、伸長方向Xと垂直であって2つのレール50が並ぶ方向を幅方向Y、伸長方向Xおよび幅方向Yと垂直な方向を上下方向Zと定義する。上下方向Zは、上方向Z1および上方向Z1の反対方向である下方向Z2を含んでいる。
【0018】
<壁部材>
2つの壁部材70は、保持具10を容器110に固定するために、容器110の内表面に接触する部分である。2つの壁部材70は、レール50によって互いに接続されている。各々の壁部材70は、間隔を空けて並ぶ両方のレール50を接続するように、2つのレール50が並ぶ幅方向Yへ延びて形成される。2つの壁部材70のベース60に向く面と反対側の面である当接面71は、容器110の内表面に密着できるように、平面で形成されることが好ましい。
【0019】
壁部材70は、各種金属や樹脂により形成される。壁部材70を形成する樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂などである。
【0020】
<レール>
2つのレール50は、2つの壁部材70間の距離を任意に調節するための部材である。2つのレール50の各々は、外レール51(第1レール)と、内レール52(第2レール)とを有している。外レール51の各々は、円管形状であり、外レール51の一端側は壁部材70に固定され、外レール51の他端側はベース60に形成されるガイド孔61にスライド可能に挿入されている。外レール51の他端側には、内レール52が挿入される挿入孔53が形成されている。ベース60のガイド孔61に配置される外レール51の端部は、外レール51の隣接する他の部位よりも大きな外径で形成された外レール外側凸部54を有するとともに、外レール51の隣接する他の部位よりも小さな内径で形成された外レール内側凸部55を有している。外レール外側凸部54は、ガイド孔61の内周面をスライド可能である。外レール外側凸部54の外径は、ガイド孔61の内径よりも多少小さいか、略等しい。外レール内側凸部55は、内レール52の外周面をスライド可能である。外レール内側凸部55の内径は、内レール52の外径よりも多少大きいか、略等しい。
【0021】
内レール52の各々は、中実の円柱形状であり、内レール52の一端側は、外レール51が固定される壁部材70とは異なる壁部材70に固定され、内レール52の他端側は、外レール51の挿入孔53にスライド可能に挿入されている。なお、内レール52は、中空の円管形状であってもよい。外レール51の挿入孔53に配置される内レール52の端部は、内レール52の隣接する他の部位よりも大きな外径で形成された内レール外側凸部56を有する。内レール外側凸部56は、外レール51の内周面をスライド可能である。内レール外側凸部56の外径は、外レール51の内径よりも多少小さいか、略等しい。
【0022】
外レール51および内レール52を形成する材料は、上述した壁部材70に適用可能な材料を適用できる。
【0023】
<ベース>
ベース60は、上方向Z1側から見た形状および伸長方向Xと垂直な断面の形状が、略矩形である。ベース60は、幅方向Yの両側に伸長方向Xへ貫通するガイド孔61が形成されている。ベース60は、上方向Z1を向く上面62と、下方向Z2を向く下面63とを有し、上面62の幅方向Yの中央に、伸長方向Xへ延びる溝64が形成されている。溝64は、上方向Z1を向く底面65と、底面65の幅方向Yの両端から上方向Z1へ起立する2つの溝側面66とを有する。2つの溝側面66は、伸長方向Xへ平行に延びている。各々の溝側面66には、伸長方向Xへ並ぶ複数の歯67を備えた凹凸形状のラック68が形成されている。
【0024】
べース60のガイド孔61は、外レール51が挿入される側の端部に、ガイド孔61の隣接する他の部位よりも小さな内径で形成されたベース内側凸部69を有している。ベース内側凸部69は、外レール51の外周面をスライド可能である。ベース内側凸部69の内径は、外レール51の外径よりも多少大きいか、略等しい。
【0025】
ベース60を形成する材料は、上述した壁部材70に適用可能な材料を適用できる。ベース60を樹脂で形成する場合、ガイド孔61の内表面は、外レール51とベース60とをスライドしやすくするために、フッ素樹脂などの低摩擦性樹脂で形成された層を有することが好ましい。
【0026】
ベース内側凸部69と外レール外側凸部54は、ベース60に対する外側レール51の移動を規制する第1規制部を構成する。外レール51に固定された壁部材70が、ベース60に対して離れるように伸長方向Xへ移動する場合に、外レール外側凸部54は、ベース内側凸部69に突き当たる。これにより、外レール51がベース60から脱落することを防止できる。
【0027】
内レール外側凸部56と外レール内側凸部55は、外レール51に対する内レール52の移動を規制する第2規制部を構成する。内レール52に固定された壁部材70が、ベース60に対して離れるように伸長方向Xへ移動する場合に、内レール外側凸部56は、外レール内側凸部55に突き当たる。これにより、内レール52が外レール51から脱落することを防止できる。
【0028】
<仕切り>
仕切り30は、本体20に着脱可能であるとともに、容器110に取り付けた本体20に固定されることで容器110の収容空間を分割し、状況に応じて必要な数の長尺デバイス100を収容する複数の空間を提供する。
【0029】
仕切り30は、長尺デバイス100を保持する仕切り上部31と、本体20のベース60に固定される仕切り下部32とを有している。
【0030】
仕切り上部31は、仕切り30の上方向Z1側に配置されて、コイル状に巻かれた長尺デバイス100を保持する部分であり、板形状に形成されている。仕切り上部31は、長尺デバイス100を保持する2つの上方保持面33と、各々の上方保持面33の上方向Z1に配置された鍔部34とを備える。
【0031】
2つの上方保持面33は、板形状である仕切り上部31の反対方向を向く両面であり、平行な平面である。なお、2つの上方保持面33は、平行でなくてもよく、平面でなくてもよい。2つの上方保持面33は、伸長方向Xを向き、幅方向Yおよび上下方向Zへ広がっている。
【0032】
鍔部34は、各々の上方保持面33の上方向Z1に配置されて、各々の上方保持面33から当該上方保持面33と略垂直な方向へ、すなわち伸長方向Xへ突出して形成される。鍔部34は、上方保持面33に保持された長尺デバイス100が、上方保持面33を滑って上方向Z1へ離脱することを抑制する。
【0033】
仕切り下部32は、ベース60に固定される部分である。仕切り下部32は、仕切り上部31の下端から下方に向かって延びる中央部35と、中央部35の幅方向Yの両側に設けられた2つのつまみ部36とを有する。2つのつまみ部36と中央部35との間には、各々隙間が設けられている。中央部35は、仕切り上部31の2つの上方保持面33から下方向へ連続する2つの下方保持面37と、溝64の底面65にスライド可能に接触する仕切り下面38とを有する。2つの下方保持面37は、板形状である仕切り下部32の反対方向を向く両面であり、平行な平面である。なお、2つの下方保持面37は、平行でなくてもよく、平面でなくてもよい。2つの下方保持面37は、伸長方向Xを向き、幅方向Yおよび上下方向Zへ広がっている。下方保持面37は、上方保持面33から滑らかに連続することが好ましい。連続する上方保持面33および下方保持面37は、1つの保持面11を形成する。
【0034】
各々の保持面11は、長尺デバイス100の外表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有していてもよい。これにより、2つの保持面11は、長尺デバイス100が仕切り30の保持面11に沿って移動して、長尺デバイス100のループがほどけることを抑制する。このような表面形状は、保持面11に、凹凸形状、縦縞形状、または横縞形状等の模様を形成する、あるいは、粗面化処理を施すなどによって形成できる。
【0035】
つまみ部36は、仕切り上部31の幅方向Yの両端から下方向Z2へ片持ち梁状に延びる部分である。各々のつまみ部36は、溝64のラック68の凹凸形状を形成する歯67に係合可能な爪39と、術者がつまみ部36を撓ませるためにつまむ押圧部40とを有する。
【0036】
爪39は、つまみ部36の下方向Z2側の端部(下端)の幅方向Yを向く外表面に、少なくとも1つの凸部を有して形成される。爪39は、ラック68のいずれかの位置の歯67に係合することで、仕切り30を溝64の任意の位置に固定できる。押圧部40は、つまみ部36の上方向Z1側の端部(上端)から爪39までの幅方向Yを向く外表面の部分である。押圧部40は、術者の指が滑りにくいように、幅方向Yを向く外表面に凹凸形状を有する。
【0037】
術者が一対のつまみ部36の押圧部40を指でつまむことで、2つのつまみ部36は、幅方向Yの互いに近づく方向へ押し込まれる。これにより、各々のつまみ部36は、仕切り上部31に連結された上端を起点として仕切り30の仕切り下部32の中央部35に向かって撓み、つまみ部36の下端の爪39が溝64のラック68の歯67から離脱して、ラック68の歯67との係合が解除される。爪39とラック68の歯67との係合が解除されると、仕切り30は、ベース60の溝64に沿って伸長方向Xにスライド可能になる。術者が、つまみ部36を押し込む力を開放すると、つまみ部36は自己の弾性力により元の形状へ戻り、爪39がラック68の歯67に再度係合する。これにより、仕切り30は、伸長方向Xへの移動が制限され、ベース60の溝64の任意の位置で固定される。また、仕切り30は、つまみ部36の爪39とラック68の歯67との係合を解除した状態で、ベース60への着脱も可能である。なお、つまみ部36の爪39は、ばね等によってラック68へ向かって幅方向Yに付勢されていてもよい。
【0038】
仕切り30を形成する材料は、上述した壁部材70に適用可能な材料を適用できる。
【0039】
<使用方法>
次に、本実施形態に係る保持具10の使用方法について説明する。
【0040】
術者は、
図3~5に示すように、液体を満たすことのできる容器110を用意する。容器110は、例えば、樹脂製のトレイやステンレス製のバットなどである。容器110は、上方向Z1から見て矩形形状であり、底部113、底部113から上方向Z1に延びる2つの端壁112および2つの側壁111を有する。容器110は、底部113、端壁112および側壁111によって形成され上方向Z1で開口する収容空間に、上方向Z1の開口部から注入された液体と、コイル状に巻かれた長尺デバイス100を保持する。
【0041】
術者は、保持具10の伸長方向Xの長さが容器110の端壁112間の長さまたは側壁111間の長さに合うように、レール50を伸縮させる。そして、術者は、保持具10の一対の壁部材70の当接面71が容器110の一対の端壁112または一対の側壁111に接触するように、保持具10を容器110内に配置する。外レール51、内レール52およびベース60は、互いに接触する部位の摩擦力により、各部材の配置が維持される。
【0042】
次に、術者は、仕切り30を必要数準備し、ベース60の溝64に取り付ける。
図2(B)に示すように、術者が一対のつまみ部36の押圧部40を指でつまむことで、2つのつまみ部36は、幅方向Yの互いに近づく方向へ押し込まれる。次に、術者は、溝64の任意の場所に仕切り下部32を挿入し、各々の爪39を、ラック68の歯67に対向させる。続いて、術者は、仕切り30を溝64に固定したい位置でつまみ部36を押し込む力を開放する。これにより、
図3~5に示すように、つまみ部36の爪39がベース60のラック68の歯67に係合し、仕切り30がベース60に固定される。
【0043】
術者は、長尺デバイス100をコイル状に巻き、複数のループを形成する。次に、術者は、長尺デバイス100のループをベース60の上面62に平行になるように配置する。長尺デバイス100のループを配置する位置は、仕切り30同士の間の空間、または仕切り30と容器110の端壁112(または側壁111)との間の空間である。長尺デバイス100は、自己の復元力によってループの直径が大きくなり、仕切り30の上方保持面33、下方保持面37、容器110の端壁112(または側壁111)の内表面に沿うように配置される。保持具10は、長尺デバイス100の復元力に応じて仕切り30の位置を調節することで、長尺デバイス100を確実に保持できる。
【0044】
保持具10は、保持する長尺デバイス100の剛性や弾性、または長さ等に応じて、容器110に対するベース60の位置とベース60に対する仕切り30の位置を調節できる。このため、保持具10は、さまざまな仕様の長尺デバイス100をコイル状に巻いた状態で保持できる。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る保持具10は、可撓性を有する医療用の長尺デバイス100をコイル状に巻かれた状態で保持する保持具10であって、2つの壁部材70と、2つの壁部材70間の距離を調節可能に接続する一対のレール50と、レール50と平行に延びる溝64と、当該溝64の底面65から起立して対向する一対のラック68と、を有し、レール50にスライド可能に連結された矩形形状のベース60と、ラック68に係合可能な爪39を備え、溝64に沿ってスライド可能な仕切り30と、を有する。保持具10は、レール50を伸縮させて2つの壁部材70間の距離を任意に調節することにより、保持具10を配置する容器110の大きさに依らず壁部材70を容器110の壁に対して強固に固定可能である。このため、保持具10は、長尺デバイス100の復元力によって保持具10が容器110内で移動することを抑制できる。そして、保持具10は、保持する長尺デバイス100の剛性や弾性、長さに応じて、仕切り30の位置を調節することができるため、さまざまな仕様の長尺デバイス100をコイル状に巻いた状態で保持できる。
【0046】
レール50は、ベース60に対して移動可能であって一方の壁部材70に接続された外側レール51(第1レール)と、外側レール51に対して移動可能であって他方の壁部材70に接続された内側レール52(第2レール)と、を有し、外側レール51およびベース60は、ベース60に対する外側レール51の移動を規制する第1規制部を有し、内側レール52および外側レール51は、外側レール51に対する内側レール52の移動を規制する第2規制部を有する。これにより、保持具10は、外側レール51および/または内側レール52がベース60から脱落することを抑制できる。
【0047】
仕切り30は、爪39がラック68に係合した状態において、壁部材70に向く保持面11と、保持面11のベース60から離れた側に位置する端部から突出する鍔部34と、を有する。これにより、保持具10は、保持面11に保持された長尺デバイス100が、保持面11を滑って仕切り30から離脱することを抑制できる。
【0048】
仕切り30は、爪39を移動可能に支持するつまみ部36を有する。これにより、保持具10は、つまみ部36を撓ませて爪39を移動させ、ラック68の凹凸形状から爪39を離脱させることで、仕切り30を溝64に沿って容易に移動させることができる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述の実施形態において医療用の長尺デバイス100はガイドワイヤであるが、カテーテルなど他の長尺デバイスであってもよい。
【0050】
また、
図6に示す第1変形例のように、壁部材70の上下方向Zの高さが、仕切り30と同程度の高さであってもよい。この場合、保持具10は、壁部材70と仕切り30との間にコイル状に巻かれた状態の長尺デバイス100を保管できる。壁部材70の当接面71と反対側の壁内面74は、上述した仕切り上部31と同様の形状であってもよい。例えば、壁部材70は、ベース60に対して仕切り30が起立する方向(上方向Z1)へ突出する補助仕切り72を有する。また、壁部材70は、補助仕切り72の上方向Z1側の端部に、壁内面74から突出する壁鍔部73を有している。また、壁内面74は、凹部が形成されてもよく、長尺デバイス100の外表面との間に生じる摩擦力を大きくする表面形状を有してもよい。保持具10は、長尺デバイス100をコイル状に巻いた状態で保持するために容器110の内表面を利用する必要がなくなるため、容器110の内表面の形状に依らず長尺デバイス100を保持できる。
【0051】
また、仕切り30の少なくとも1つの保持面11は、凹部を有してもよい。これにより、コイル状に巻かれた長尺デバイス100は、各々の凹部の最も凹んだ位置近傍にまとまりやすくなるため、長尺デバイス100が保持面11を滑って上方向Z1へ離脱することを抑制できる。また、術者は、長尺デバイス100を容器110から容易に取り出すことができる。また、前述の第1変形例の壁内面74に凹部がある場合も、同様の効果を奏する。
【0052】
また、レール50を構成する第1レール(例えば、外レール51)および第2レール(例えば、内レール52)の形状は、第1レールと第2レールを互いにスライドさせることにより2つの壁部材70間の距離を調節可能であれば、特に限定されない。例えば、外レール51は角管であり、内レール52は角管または角柱であってもよい。または、
図7に示す第2変形例のように、2つのレール80の各々を構成する第1レール81および第2レール82は、各々の1つの側面に摺動溝83を有するように折り返された形状を有し、第1レール81と第2レール82とが互いに重なり合うように嵌合してもよい。このような構造であっても、第1レール81および第2レール82は、伸長方向Xに沿ってスライド可能である。
【0053】
また、保持具10は、保持具10を収容可能な容器110を、構成としてさらに有してもよい。容器110は、各種金属や樹脂により形成される。容器110を形成する金属は、例えば、ステンレス鋼である。容器110を形成する樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、塩化ビニルなどである。
【符号の説明】
【0054】
10 保持具
11 保持面
20 本体
30 仕切り
33 上方保持面
34 鍔部
36 つまみ部
39 爪
50、80 レール
51 外レール(第1レール)
52 内レール(第2レール)
60 ベース
64 溝
65 底面
68 ラック
70 壁部材
81 第1レール
82 第2レール
100 長尺デバイス
110 容器
X 伸長方向
Y 幅方向
Z 上下方向
Z1 上方向
Z2 下方向