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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057171
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】浮屋根式タンクの解体工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
E04G23/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163706
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】522399817
【氏名又は名称】株式会社日本エンジニア
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【弁理士】
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】塩見 良次
(72)【発明者】
【氏名】石塚 喜紀
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA15
2E176DD52
2E176DD61
(57)【要約】
【課題】コストダウン、工期短縮、安全性の確保の可能な浮屋根式タンクの解体工法を提供する。
【解決手段】側板に沿って昇降可能な浮屋根を有する浮屋根式タンクの解体工法であって、タンク内に水又は海水を注入して浮屋根を上昇させる浮屋根上昇工程(ステップS101)と、浮屋根を足場として側板を切断する側板切断工程(ステップS102)と、タンク内の水又は海水を排出して浮屋根を下降させる浮屋根下降工程(ステップS103)とを含み、浮屋根上昇工程(ステップS101)の後に、側板切断工程(ステップS102)と浮屋根下降工程(ステップS103)とを繰り返しながら、上部から下部に向かって側板を切断していく。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側板に沿って昇降可能な浮屋根を有する浮屋根式タンクの解体工法であって、
タンク内に水又は海水を注入して前記浮屋根を上昇させる浮屋根上昇工程と、前記浮屋根を足場として前記側板を切断する側板切断工程と、タンク内の水又は海水を排出して前記浮屋根を下降させる浮屋根下降工程とを含み、
前記浮屋根上昇工程の後に、前記側板切断工程と前記浮屋根下降工程とを繰り返しながら、上部から下部に向かって前記側板を切断していくことを特徴とする浮屋根式タンクの解体工法。
【請求項2】
前記側板切断工程において、切断する側板を予めクレーンで吊っておくことを特徴とする請求項1に記載の浮屋根式タンクの解体工法。
【請求項3】
前記側板切断工程において、側板の外面から内面に向かってガス切断を行うことを特徴とする請求項1に記載の浮屋根式タンクの解体工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮屋根式タンクの解体工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、製油所には、原油や石油製品などの貯蔵を目的とした屋外貯蔵タンクが設置されている。屋外貯蔵タンクには、屋根形式の違いにより固定屋根式タンクや浮屋根式タンクなどがある。このうち浮屋根式タンクは、原油やガソリンなどの揮発性が高い油を貯槽する、直径が比較的大きなタンクとして用いられている。
【0003】
ところで、屋外貯蔵タンクは、老朽化、製油所の閉鎖、設置基準の改正等に伴い、解体工事が必要になるが、巨大なタンクの解体工事は大がかりなものとなるため、効率的な解体工法が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、タンク1の側板2を側板片2aから2fに切断してタンク1内に倒すようにしたタンク解体工法に関する発明が記載されている。同様に、特許文献2には、撤去する側壁部分7を切断してタンク内1に引き倒すようにした浮き屋根式円形タンクの解体方法に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-2106号公報
【特許文献2】特開2019-65665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の屋外貯蔵タンクの解体工事においては、埃の飛散防止と作業床の確保を目的としてタンク外周に作業用の足場を設置しているが、多額のコストや工期が必要になる。また、タンクが巨大になるほど必然的に工期は長くなるため気象条件が変化するが、台風等の強風時には都度盛替え等の養生対策を行う必要がある。さらに、解体途中のタンクにおいては台風等の強風に対して構造的安全性の確保が難しい。このように、従来の屋外貯蔵タンクの解体工事は、コストアップ、工期延長、安全性の確保の面での問題点を抱えていた。
【0007】
一方、特許文献1~2に記載された発明においては、タンクの側壁をタンク内に倒すようにして解体するようになっており、足場を組む必要がないとされているが、台風等の強風への対処については触れられていない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、コストダウン、工期短縮、安全性の確保の可能な浮屋根式タンクの解体工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の浮屋根式タンクの解体工法は、側板に沿って昇降可能な浮屋根を有する浮屋根式タンクの解体工法であって、タンク内に水又は海水を注入して前記浮屋根を上昇させる浮屋根上昇工程と、前記浮屋根を足場として前記側板を切断する側板切断工程と、タンク内の水又は海水を排出して前記浮屋根を下降させる浮屋根下降工程とを含み、前記浮屋根上昇工程の後に、前記側板切断工程と前記浮屋根下降工程とを繰り返しながら、上部から下部に向かって前記側板を切断していくことを特徴とする。
【0010】
また好ましくは、前記側板切断工程において、切断する側板を予めクレーンで吊っておくことを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記側板切断工程において、側板の外面から内面に向かってガス切断を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浮屋根式タンクの解体工法は、側板に沿って昇降可能な浮屋根を有する浮屋根式タンクの解体工法であって、タンク内に水又は海水を注入して浮屋根を上昇させる浮屋根上昇工程と、浮屋根を足場として側板を切断する側板切断工程と、タンク内の水又は海水を排出して浮屋根を下降させる浮屋根下降工程とを含むものである。そして、浮屋根上昇工程の後に、側板切断工程と浮屋根下降工程とを繰り返しながら、上部から下部に向かって側板を切断していくようになっている。
【0013】
従って、浮屋根を足場として側板を切断することができるので、タンク外周に足場を設置する必要がなく、コストダウンと工期短縮につながる。また、切断時には常にタンク内に水又は海水が張っているので、解体作業時の火災発生や台風等の強風時のタンク倒壊を防止することができる。
【0014】
また、側板切断工程において、切断する側板を予めクレーンで吊っておくことにより、切断部位の落下を防止しながら撤去することができる。
【0015】
また、側板切断工程において、側板の外面から内面に向かってガス切断を行うことにより、切断時に発生する火花をタンク内に飛ばすようにして、火災発生を防止することができる。
【0016】
このように、本発明によれば、コストダウン、工期短縮、安全性の確保の可能な浮屋根式タンクの解体工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る浮屋根式タンクの解体工法のフローチャートである。
図2】浮屋根上昇工程を示す断面図である。
図3】浮屋根上昇工程を示す平面図である。
図4】側板切断工程を示す断面図である。
図5】浮屋根下降工程を示す断面図である。
図6】最終解体工程を示す断面図である。
図7】最終解体工程を示す断面図である。
図8】最終解体工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、図1乃至図8を参照して、本発明の実施形態に係る浮屋根式タンクの解体工法(以下「本解体工法」ともいう。)について説明する。本解体工法は、側板に沿って昇降可能な浮屋根を有する浮屋根式タンクを解体するための工法である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る浮屋根式タンクの解体工法のフローチャートである。本解体工法は、ステップS101~ステップS105の各工程から構成されている。以下、順番に説明する。
【0020】
(浮屋根上昇工程)
図2及び図3は、浮屋根上昇工程を示す断面図及び平面図である。浮屋根式タンク100は、底板30の上に円筒状の側板20が立設されて構築されている。そして、タンク内には、浮屋根10が設置され、タンク内の液体からの浮力により側板20に沿って昇降するようになっている。
【0021】
浮屋根10は、円形のデッキ11と、浮力を得るためのデッキ11の周縁部を囲む平面視ドーナツ状のポンツーン12を有している。また、ポンツーン12と側板20との間には、例えばウレタンフォームを用いた平面視ドーナツ状のシール13が挟み込まれている。また、シール13の上方には、平面視ドーナツ状のウェザーシールド14が設けられている。以上の構成により、浮屋根10はタンク内の液面全体を覆うようになっている。
【0022】
タンク内の貯蔵物を排出して内面をクリーニングした後に、浮屋根上昇工程(ステップS101)では、タンクに接続された注排水口2からタンク内に水1(又は海水)を注入して、浮屋根10を最上部まで上昇させる。
【0023】
(側板切断工程)
図4は、側板切断工程を示す断面図である。側板切断工程(ステップS102)では、作業者4が、浮屋根10を足場として、側板20を上部から一定の大きさに切断する(図4の破線部分)。
【0024】
このとき、切断する側板20をクレーン3で予め吊っておき、切断の都度吊り下ろすことで、切断部位の落下を防止しながら撤去することができる。
【0025】
また、側板20の外側から内側に向かってガス切断を行うことで、切断時に発生する火花をタンク内に飛ばすようにして、火災発生を防止することができる。さらに、散水やスパッタシート等による養生を適宜行うとよい。
【0026】
(浮屋根下降工程)
図5は、浮屋根下降工程を示す断面図である。浮屋根下降工程(ステップS103)では、タンクに接続された注排水口2からタンク内の水1(又は海水)を排出して、浮屋根10を下降させる。なお、複数のタンクの解体を同時に行う場合には、排出した水を別のタンクに移動させることにより、水の使用量を少なくしてコストダウンを図ることができる。
【0027】
浮屋根10の下降量(下降させる高さ)は、側板20の切断量(切断する高さ)に応じて調整し、再び作業者4が浮屋根10を足場として側板20の切断を行うことができるようにする。このとき、切断後の側板20の上端部の高さと浮屋根10の高さとの差を、作業員4の転落防止に資する高さ(例えば1.2m程度)に維持することで、安全な作業環境を確保することができる。
【0028】
浮屋根下降工程により浮屋根10が着底した場合(ステップS104Yes)、最終解体工程(ステップS105)に進む。着底していない場合(ステップS104No)、再び側板切断工程(ステップS102)に戻り側板20を切断する。このように、本解体工法は、浮屋根上昇工程(ステップS101)の後に、側板切断工程(ステップS102)と浮屋根下降工程(ステップS103)を繰り返しながら、上部から下部に向かって側板20を切断していくものである。
【0029】
(最終解体工程)
図6図8は、最終解体工程を示す断面図である。最終解体工程(ステップS105)では、まず図6に示すように、タンクに接続された注排水口2からタンク内の水1(又は海水)を全て排出する。注排水口2から排水できない低い部分については、水中ポンプ等により対応する。
【0030】
次に、図7に示すように、浮屋根10やタンク内配管等を解体する。そして、図8に示すように、残った側板20及び底板30を解体し完了する。
【0031】
本実施形態に係る浮屋根式タンクの解体工法は、側板20に沿って昇降可能な浮屋根10を有する浮屋根式タンク100の解体工法であって、タンク内に水1(又は海水)を注入して浮屋根10を上昇させる浮屋根上昇工程(ステップS101)と、浮屋根10を足場として側板20を切断する側板切断工程(ステップS102)と、タンク内の水1(又は海水)を排出して浮屋根10を下降させる浮屋根下降工程(ステップS103)とを含むものである。そして、浮屋根上昇工程(ステップS101)の後に、側板切断工程(ステップS102)と浮屋根下降工程(ステップS103)とを繰り返しながら、上部から下部に向かって側板20を切断していくようになっている。
【0032】
従って、浮屋根10を足場として側板20を切断することができるので、タンク外周に足場を設置する必要がなく、コストダウンと工期短縮につながる。また、切断時には常にタンク内に水1(又は海水)が張っているので、解体作業時の火災発生や台風等の強風時のタンク倒壊を防止することができる。
【0033】
また、側板切断工程(ステップS102)において、切断する側板20を予めクレーン3で吊っておくことにより、切断部位の落下を防止しながら撤去することができる。
【0034】
また、側板切断工程(ステップS102)において、側板20の外面から内面に向かってガス切断を行うことにより、切断時に発生する火花をタンク内に飛ばすようにして、火災発生を防止することができる。
【0035】
このように、本実施形態に係る浮屋根式タンクの解体工法によれば、コストダウン、工期短縮、安全性の確保が可能である。
【0036】
以上、本実施形態に係る浮屋根式タンクの解体工法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0037】
例えば、本実施形態においては、側板切断工程と浮屋根下降工程とを浮屋根が着底するまで繰り返したが、着底する前に浮屋根の下降を終了し、低い部分については別の方法で解体するようにしてもよい。
【0038】
また、浮屋根やタンク内配管等を最終解体工程でまとめて解体するようにしたが、例えばポンツーンと側板との間に挟み込まれたシールを途中で撤去するなど、適当なタイミングで部分的に解体するようにしてもよい。
【0039】
また、浮屋根を、円形のデッキとデッキの周縁部を囲む平面視ドーナツ状のポンツーンとを有するシングルデッキ構造としたが、浮屋根全体をポンツーンとしたダブルデッキ構造であってもよい。
【0040】
また、側板の切断をガス切断により行うようにしたが、グラインダーやカッターなどの切断工具を使用してもよい。
【0041】
また、切断した側板をクレーンにより撤去するようにしたが、解体工事用の重機などその他の装置を使用してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 水
2 注排水口
3 クレーン
4 作業者
10 浮屋根
11 デッキ
12 ポンツーン
13 シール
14 ウェザーシールド
20 側板
30 底板
100 浮屋根式タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8