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特開2024-57184トリフルオロヨードメタン溶液組成物を用いたフルオロヨードアルカンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057184
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】トリフルオロヨードメタン溶液組成物を用いたフルオロヨードアルカンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 19/16 20060101AFI20240417BHJP
   C07C 17/275 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
C07C19/16
C07C17/275
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163733
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】村上 弘英
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC21
4H006BB20
4H006BC10
4H006EA02
(57)【要約】
【課題】トリフルオロヨードメタン溶液組成物を原料としたより簡便で製造設備の制約が少ないフルオロヨードアルカンの新規製造方法を提供する。
【解決手段】トリフルオロヨードメタンと有機溶剤からなるトリフルオロヨードメタン溶液組成物であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記トリフルオロヨードメタン溶液組成物中にトリフルオロヨードメタンを10.0重量%~90.0重量%含む、
トリフルオロヨードメタン溶液組成物及びその製造方法、並びにトリフルオロヨードメタン溶液組成物を用いたフルオロヨードアルカンの製造方法を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロヨードメタンと有機溶剤からなるトリフルオロヨードメタン溶液組成物であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記トリフルオロヨードメタン溶液組成物中にトリフルオロヨードメタンを10.0重量%~90.0重量%含む、
トリフルオロヨードメタン溶液組成物。
【請求項2】
トリフルオロヨードメタンの含有量が70.0重量%~90.0重量%である、請求項1に記載のトリフルオロヨードメタン溶液組成物。
【請求項3】
有機溶剤がジメチルホルムアミドである、請求項1又は請求項2に記載のトリフルオロヨードメタン溶液組成物。
【請求項4】
耐圧容器中に有機溶剤を仕込み、絶対圧力で0.1kPa~5.0kPaに減圧した後、ゲージ圧力で0.4MPaまでトリフルオロヨードメタンを導入し、大気解放により大気圧下とする、トリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルから成る群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記トリフルオロヨードメタン溶液組成物中にトリフルオロヨードメタンを10.0重量%~90.0重量%含む、トリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法。
【請求項5】
トリフルオロヨードメタンの含有量が70.0重量%~90.0重量%である、請求項4に記載のトリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法。
【請求項6】
有機溶剤がジメチルホルムアミドである、請求項4又は請求項5に記載のトリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法。
【請求項7】
耐圧容器中、トリフルオロヨードメタン及び有機溶剤から成るトリフルオロヨードメタン溶液組成物及びラジカル開始剤存在下、反応圧力がゲージ圧力で0.4MPa以上1.0 MPa未満の範囲で不飽和炭化水素と反応させる、下記一般式(1)で表されるフルオロヨードアルカンの製造方法であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
トリフルオロヨードメタン溶液組成物中のトリフルオロヨードメタンの含有量が10.0重量%~90.0重量%である、
フルオロヨードアルカンの製造方法。
CF-CHCHX-I (1)
(式(1)中、Xは水素原子あるいはメチル基を示す。)
【請求項8】
トリフルオロヨードメタン溶液組成物中のトリフルオロヨードメタンの含有量が40.0重量%~90.0重量%である、請求項7に記載のフルオロヨードアルカンの製造方法。
【請求項9】
ラジカル開始剤が、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、ジメチル2,2’―アゾビス(2-メチルプロピナート)、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)、(2-エチルヘキサノイル)t-ブチルペルオキシド、過酸化ピバル酸t-ブチル、過酸化ピバル酸t-ヘキシル、過酸化ラウロイル、過酸化コハク酸、2-エチルヘキサン酸1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ぺルオキシド、ペルオキシジ炭酸ジn-プロピル、ペルオキシジ炭酸ジイソプロピル、ペルオキシジ炭酸ジsec-ブチル、ペルオキシネオデカン酸1,1,3,3-テトラメチルブチル、ペルオキシジ炭酸ジ2-エチルヘキシル、ペルオキシネオデカン酸t-ヘキシルおよびペルオキシネオデカン酸t-ブチルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載のフルオロヨードアルカンの製造方法。
【請求項10】
不飽和炭化水素が、エチレンおよび/またはプロピレンである、請求項7に記載のフルオロヨードアルカンの製造方法。
【請求項11】
開始剤が2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)であり、不飽和炭化水素がエチレンである、請求項7又は請求項8に記載のフルオロヨードアルカンの製造方法。
【請求項12】
反応温度が40℃~70℃である、請求項7又は請求項8に記載のフルオロヨードアルカンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロヨードメタン溶液組成物を用いたフルオロヨードアルカンの新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロヨードアルカンは溶剤や洗浄剤、冷媒等の液体組成物の不燃化あるいは医農薬中間体の合成への利用等幅広く用いられている(例えば、特許文献1)。
フルオロヨードアルカンの製造方法として、特許文献2には、含フッ素アルキル置換ビニルハライド類の還元により得られる含フッ素アルキル置換エチルハライド類のヨウ素化によりフルオロヨードアルカンを得る方法が開示されている。しかし、本反応は複数工程を要するため生産効率が悪く、さらに、還元工程ではゲージ圧力で2MPaの高圧下で反応させるため高圧ガス保安法上の特定設備が必要となるなど製造設備に制約が発生という課題があった。
【0003】
非特許文献1にはトリフルオロヨードメタンに対し、不飽和炭化水素を反応させる方法が開示されている。しかし、本方法では高価なトリフルオロヨードメタンを大過剰に必要とするうえ、反応温度が200℃となることから、反応系は高圧になることが予想され、十分な空隙率を確保するために生産効率が悪く、量産に優れた方法ではない。
非特許文献2には、光反応によりトリフルオロヨードメタンと不飽和炭化水素を反応させる方法が開示されている。しかし、反応効率が悪く長時間を要し、生成したフルオロヨードアルカンが過剰反応することで選択率が低下という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-113658号公報
【特許文献2】特開2010-1272号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of the Chemical Society C: Organic,1970年,第3巻,414-421頁
【非特許文献2】Journal of the Chemical Society (Resumed),1949年,2856-2861頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の背景技術に鑑み、トリフルオロヨードメタン溶液組成物を原料としたより簡便で製造設備の制約が少ないフルオロヨードアルカンの新規製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、耐圧容器中でトリフルオロヨードメタン及び有機溶剤から成るトリフルオロヨードメタン溶液組成物を調製し、耐圧容器中でトリフルオロヨードメタン溶液組成物をラジカル開始剤存在下、不飽和炭化水素と反応させることで、反応圧力が高圧ガス保安法上の特定設備を必要としないゲージ圧力で0.4以上1.0MPa未満の範囲で、フルオロヨードアルカンを製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は絶対圧力で0.1kPa~5.0kPaの範囲で減圧した耐圧容器中に有機溶媒を仕込み、ゲージ圧力で0.4MPaまでトリフルオロヨードメタンを導入した後、大気開放により大気圧下とすることにより得られるトリフルオロヨードメタン溶液組成物を用いて、耐圧容器中ラジカル開始剤存在下で不飽和炭化水素と反応させることを特徴とする、下記一般式(1)
CF-CHCHX-I (1)
(式(1)中、Xは水素原子あるいはメチル基を示す。)
で表されるフルオロヨードアルカンの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、製造設備の制約が少なく簡便なフルオロヨードアルカンの工業的新規製造方法が提供できる。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
<トリフルオロヨードメタン溶液組成物>
本発明は、トリフルオロヨードメタンと有機溶剤からなるトリフルオロヨードメタン溶液組成物であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記トリフルオロヨードメタン溶液組成物中にトリフルオロヨードメタンを10.0重量%~90.0重量%含む、
トリフルオロヨードメタン溶液組成物に係る。
【0012】
本発明のトリフルオロヨードメタン溶液組成物に用いられる有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリルが好ましく、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドがより好ましく、特にジメチルホルムアミドが好ましい。これらは単独で使用できるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0013】
本発明のトリフルオロヨードメタン溶液組成物中のトリフルオロヨードメタン含有量は通常10.0重量部~90.0重量部が好ましく、70.0重量部~90.0重量部がより好ましい。この範囲の含有量であれば、製造設備の制約が少なく簡便なフルオロヨードアルカンの工業的な製造方法という本発明の効果を奏することができる。
【0014】
<トリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法>
本発明は、耐圧容器中に有機溶剤を仕込み、絶対圧力で0.1kPa~5.0kPaに減圧した後、ゲージ圧力で0.4MPaまでトリフルオロヨードメタンを導入し、大気解放により大気圧下とする、トリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルから成る群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記トリフルオロヨードメタン溶液組成物中にトリフルオロヨードメタンを10.0重量%~90.0重量%含む、トリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法に係る。
【0015】
本発明のトリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法に用いられる耐圧容器としては、製造に用いられる各種材料の量に応じた規模の容器であること、製造に用いられる各種材料と反応など本来の目的以外の反応等が生じないような材質の容器とすること、製造下での圧力のレベルに応じた耐圧容器とすることなどを満たすことが望まれる。
【0016】
この耐圧容器へ有機溶剤を仕込み、絶対圧力で0.1kPa~10.0kPaに減圧することが好ましく、0.1kPa~5.0kPaがさらに好ましく、特に、0.1kPa~3.0kPaが好ましい。
減圧後、ゲージ圧力で0.4MPaまでトリフルオロヨードメタンを導入することが好ましい。
トリフルオロヨードメタンの導入後、耐圧容器を大気に対して開放し大気圧下とするとよい。
【0017】
ここで、絶対圧力は絶対真空を0としたときの絶対表記であり、実際にどれくらいの圧力がかかっているかを示す。ゲージ圧力は大気圧を0とした時の相対的な圧力表記であり、周辺圧力に対する相対的な圧力を示す。両者は以下の関係である。
(ゲージ圧力)+(大気圧)=(絶対圧力)
【0018】
本発明のトリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法に用いられる有機溶剤としては、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリルが好ましく、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミドがより好ましく、特にジメチルホルムアミドが好ましい。これらは単独で使用できるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0019】
本発明のトリフルオロヨードメタン溶液組成物の製造方法に用いられるトリフルオロヨードメタンについて、組成物中の含有量としては、通常10.0重量部~90.0重量部が好ましく、70.0重量部~90.0重量部がより好ましい。この範囲の含有量であれば、製造設備の制約が少なく簡便なフルオロヨードアルカンの工業的な製造方法という本発明の効果を奏することができる。
【0020】
<フルオロヨードアルカンの製造方法>
本発明は、耐圧容器中、トリフルオロヨードメタン及び有機溶剤からなるトリフルオロヨードメタン溶液組成物及びラジカル開始剤存在下、反応圧力がゲージ圧力で0.4MPa以上1.0 MPa未満の範囲で不飽和炭化水素と反応させる、下記一般式(1)で表されるフルオロヨードアルカンの製造方法であって、
有機溶剤が、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドンおよびアセトニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
トリフルオロヨードメタン溶液組成物中のトリフルオロヨードメタンの含有量が10.0重量%~90.0重量%である、
フルオロヨードアルカンの製造方法
CF-CHCHX-I (1)
(式(1)中、Xは水素原子あるいはメチル基を示す。)
に係る。
【0021】
本発明のフルオロヨードアルカンの製造方法に用いられる耐圧容器としては、製造に用いられる各種材料の量に応じた規模の容器であること、製造に用いられる各種材料と反応など本来の目的以外の反応等が生じないような材質の容器とすること、製造下での圧力のレベルに応じた耐圧容器とすることなどを満たすことが望まれる。
【0022】
この耐圧容器へトリフルオロヨードメタン及び有機溶剤からなるトリフルオロヨードメタン溶液組成物及びラジカル開始剤を仕込み、反応圧力がゲージ圧力で0.4MPa以上1.0 MPa未満、より好ましくは0.7MPa以上1.0MPa未満、特に好ましくは0.9MPa以上1.0MPa未満の範囲で不飽和炭化水素と反応させるとよい。
【0023】
本発明のフルオロヨードアルカンの製造方法において、トリフルオロヨードメタン溶液組成物中のトリフルオロヨードメタンの含有量は、40.0重量%~90.0重量%が好ましく、さらに60.0重量%~90.0重量%、特に80.0重量%~90.0重量%とするとよい。
【0024】
本発明の反応に具するラジカル開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、ジメチル2,2’―アゾビス(2-メチルプロピナート)、2,2’-アゾビス(2,4’-ジメチルバレロニトリル)、(2-エチルヘキサノイル)t-ブチルペルオキシド、過酸化ピバル酸t-ブチル、過酸化ピバル酸t-ヘキシル、過酸化ラウロイル、過酸化コハク酸、2-エチルヘキサン酸1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、ジ(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ぺルオキシド、ペルオキシジ炭酸ジn-プロピル、ペルオキシジ炭酸ジイソプロピル、ペルオキシジ炭酸ジsec-ブチル、ペルオキシネオデカン酸1,1,3,3-テトラメチルブチル、ペルオキシジ炭酸ジ2-エチルヘキシル、ペルオキシネオデカン酸t-ヘキシル、ペルオキシネオデカン酸t-ブチルが好ましく、特に、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)が好ましい。これらは単独で使用できるが、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0025】
本発明に使用するラジカル開始剤の使用量は、反応に具するトリフルオロヨードメタン1molに対して、0.01mol~0.10mol、さらに好ましくは0.01mol~0.05mol、特に好ましくは0.01mol~0.03mol使用すると良い。
【0026】
本発明に使用する不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、あるいは両者の混合物とすることが好ましい。
【0027】
本発明に使用する不飽和炭化水素の使用量は、反応に具するトリフルオロヨードメタン1molに対して、1.0mol~2.0mol、さらに好ましくは1.0mol~1.5mol、特に好ましくは1.0mol~1.2mol使用すると良い。
【0028】
本発明のトリフルオロヨードメタン溶液組成物の調製温度は、通常好ましくは-60℃~40℃の範囲で、より好ましくは-10℃~10℃の範囲である。
【0029】
本発明における反応温度は、通常好ましくは40℃~100℃の範囲で、より好ましくは50℃~70℃の範囲である。
【0030】
本発明における反応時間は、通常好ましくは6時間~30時間の範囲であり、より好ましくは10時間~24時間の範囲である。
【0031】
本発明の反応後の後処理としては、公知の方法で実施可能で、反応生成物は直接、または水洗後に精製することが可能である。常圧下、または減圧下で蒸留することにより単離又は精製することができ、本発明の目的化合物であるフルオロヨードアルカンを得ることができる。例えば単蒸留により粗製物を得た後に、更に必要に応じて精密蒸留により精製しても良い。
【実施例0032】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0033】
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
<NMR>
H―NMR(400MHz)、19F―NMR(376MHz):ブルカー製AVANCE II 400
【0034】
実施例1
300mLステンレス製耐圧容器に窒素雰囲気中室温でジメチルホルムアミド42g(富士フイルム和光純薬株式会社製、0.6mol)を加え、絶対圧力で3.0kPaまで減圧した後、5~30℃でトリフルオロヨードメタン173g(東ソー・ファインケム株式会社製、0.9mol)を加えた。続いて、0~10℃まで冷却し大気開放することにより、トリフルオロヨードメタン溶液組成物213g得た。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F―NMR分析から、溶液組成物にはトリフルオロヨードメタンが80重量%含まれていた。
【0035】
分析結果は以下の通りであった。
19F―NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-12.1(s、3F、CF)。
【0036】
実施例2
300mLステンレス製耐圧容器に素雰囲気中で実施例1と同様の方法で調製したトリフルオロヨードメタン溶液組成物213g(トリフルオロヨードメタンとして0.9mol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)3g(富士フイルム和光純薬株式会社製、0.02mol)を加え攪拌を開始した。続いて、65℃まで昇温したのち、内温65~70℃を維持してエチレン29g(エア・ウォーター株式会社製、1.0mol)をゲージ圧力で0.80~0.98MPaの範囲で17時間かけて断続的に加えた。室温まで冷却後、大気開放し褐色透明液体を233g得た。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F―NMR分析から、褐色透明液体には1,1,1-トリフルオロ-3-ヨードプロパンが84重量%含まれていた(収率98%)。収率は出発材料のトリフルオロヨードメタンを基準(モル収率)とした。
さらに、得られた褐色透明液体を純水で洗浄し、得られた黄色透明液体を絶対圧力40kPa下、50~100℃で単蒸留することにより1,1,1-トリフルオロ-3-ヨードプロパン(無色透明液体)を173g取得した(単離収率84%)。
【0037】
分析結果は以下の通りであった。
H―NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準:クロロホルム) δ(ppm):2.46(qt、2H,CH)、2.95(t、2H、CH)。
19F―NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-67.6(s、3F、CF)。
【0038】
比較例1
300mLステンレス製耐圧容器に素雰囲気中で実施例1と同様の方法で調製したトリフルオロヨードメタン溶液組成物259g(トリフルオロヨードメタンとして1.1mol)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)5g(富士フイルム和光純薬株式会社製、0.02mol)を加え撹拌を開始した。続いて、89℃まで昇温したのち、内温89~93℃を維持してエチレン34g(エア・ウォーター株式会社製、1.2mol)をゲージ圧力で1.4~1.6MPaの範囲で15時間かけて断続的に加えた。室温まで冷却後、大気開放し褐色透明液体を289g得た。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F―NMR分析から、褐色透明液体には1,1,1-トリフルオロ-3-ヨードプロパンが80重量%含まれていた(収率98%)。収率は出発材料のトリフルオロヨードメタンを基準(モル収率)とした。
【0039】
分析結果は以下の通りであった。
H―NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準:クロロホルム) δ(ppm):2.46(qt、2H,CH)、2.95(t、2H、CH)。
19F―NMR(溶媒:重クロロホルム、内部標準:ベンゾトリフルオリド) δ(ppm):-67.6(s、3F、CF)。
【0040】
比較例2
300mLステンレス製耐圧容器に素雰囲気中で実施例1の方法でトリフルオロヨードメタン含有量を9.5重量部に調製したトリフルオロヨードメタン溶液組成物119g(トリフルオロヨードメタンとして0.06mol)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.2g(富士フイルム和光純薬株式会社製、0.001mol)を加え攪拌を開始した。続いて、65℃まで昇温したのち、内温65~70℃を維持してエチレン(エア・ウォーター株式会社製、0.08mol)をゲージ圧力で0.80~0.98MPaの範囲で11時間かけて断続的に加えた。室温まで冷却後、大気開放し褐色透明液体を110g得た。
ベンゾトリフルオリドを内部標準とする19F―NMR分析から、褐色透明液体には1,1,1-トリフルオロ-3-ヨードプロパンは痕跡量しか含まれていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明により、高圧ガス保安法上の特定設備を必要とせず、簡便に収率よくフルオロヨードアルカンを工業的に製造できる。