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特開2024-57186車両感知装置、感知信号生成方法、および感知信号生成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057186
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】車両感知装置、感知信号生成方法、および感知信号生成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20240417BHJP
   G08G 1/08 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G08G1/01 A
G08G1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163739
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今吉 英司
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC14
5H181DD03
5H181DD04
5H181JJ06
(57)【要約】
【課題】無駄青時間を抑制し、交通流を適正に向上させることができる感応制御が行える技術を提供する。
【解決手段】取得部が、信号灯器が設置された交差点の流入路における車両の走行状況を取得する。また、感知信号生成部が、流入路に定めた感知ラインを通過する対象車両の感知信号を、取得部によって取得された流入路における車両の走行状況に応じて生成する。出力部が、感知信号生成部が生成した感知信号を信号灯器の灯色信号を切り替える信号制御装置に出力する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器が設置された交差点の流入路における車両の走行状況を取得する取得部と、
前記流入路に定めた感知ラインを通過する対象車両の感知信号を、前記取得部によって取得された前記流入路における車両の走行状況に応じて生成する感知信号生成部と、
前記感知信号生成部が生成した感知信号を前記信号灯器の灯色信号を切り替える信号制御装置に出力する出力部と、
を備えた車両感知装置。
【請求項2】
レーダ装置が前記流入路に設定した対象エリアを探査波で走査し、当該対象エリア内を走行している各車両の検知結果が入力される入力部を備え、
前記取得部は、前記レーダ装置から入力された各車両の検知結果を基に、前記流入路における車両の走行状況を取得する、
請求項1に記載の車両感知装置。
【請求項3】
前記取得部は、流入路における車両の走行状況として、前記感知ラインを通過する対象車両の速度を取得する、
請求項1、または2に記載の車両感知装置。
【請求項4】
前記感知信号生成部は、前記対象車両が前記感知ラインに達したときに、感知信号を非感知状態から感知状態に変化させ、当該対象車両の速度に応じて、前記感知信号を感知状態から非感知状態に変化させるタイミングを決定する、
請求項3に記載の車両感知装置。
【請求項5】
前記感知信号生成部は、前記対象車両の速度が設定速度よりも低速である場合、当該対象車両が前記感知ラインを通過してから、前記感知信号を感知状態から非感知状態に変化させるまでの遅れ時間を、前記対象車両の速度に応じて決定する、
請求項1、または2に記載の車両感知装置。
【請求項6】
前記取得部は、流入路における車両の走行状況として、前記流入路の混雑度を取得する、
請求項1、または2に記載の車両感知装置。
【請求項7】
前記感知信号生成部は、前記対象車両が前記感知ラインに達したときに、感知信号を非感知状態から感知状態に変化させ、前記流入路の混雑度に応じて、前記感知信号を感知状態から非感知状態に変化させるタイミングを決定する、
請求項6に記載の車両感知装置。
【請求項8】
信号灯器が設置された交差点の流入路における車両の走行状況を取得する取得ステップと、
前記流入路に定めた感知ラインを通過する対象車両の感知信号を、前記取得ステップで取得した前記流入路における車両の走行状況に応じて生成する感知信号生成ステップと、
前記感知信号生成ステップで生成した感知信号を前記信号灯器の灯色信号を切り替える信号制御装置に出力させる出力ステップと、をコンピュータが実行する感知信号生成方法。
【請求項9】
信号灯器が設置された交差点の流入路における車両の走行状況を取得する取得ステップと、
前記流入路に定めた感知ラインを通過する対象車両の感知信号を、前記取得ステップで取得した前記流入路における車両の走行状況に応じて生成する感知信号生成ステップと、
前記感知信号生成ステップで生成した感知信号を前記信号灯器の灯色信号を切り替える信号制御装置に出力させる出力ステップと、をコンピュータに実行させる感知信号生成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交差点に設置された信号灯器の灯色信号を感応制御で切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交差点に設置された信号灯器の灯色信号の切り替えは、信号制御装置によって行われている。信号灯器の灯色信号を感応制御によって切り替える信号制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。感応制御は、交差点の流入路に定めた対応車線の感知位置を通過した車両の検知結果に基づいて、信号灯器の灯色信号を切り替える制御方式である。
【0003】
感応制御が行われる灯色信号の切り替えは、例えば、青信号から黄信号への切り替えや、右折矢印信号から黄信号への切り替えである。青信号から黄信号への切り替える感応制御の対応車線は直進車線であり、右折矢印信号から黄信号への切り替える感応制御の対応車線は右折車線である。感知位置は、交差点手前に定められた停止線よりも上流である(例えば、10m~30m程度上流である。)。感知位置を通過する車両は、センサ(例えば、超音波センサ)によって検知される。信号制御装置には、感知位置を通過する車両の感知信号(感知位置を通過する車両の有無を示す検知信号)が入力される。
【0004】
信号制御装置は、車両が対応車線の感知位置を通過した時点から、予め定めた時間(単位青時間)経過したタイミングを黄信号に切り替えるタイミングに仮決定する(黄信号に切り替えるタイミングを単位青時間遅らせる。)。信号制御装置は、後続車両が感知位置を通過することなく仮決定したタイミングになると、このタイミングで黄信号に切り替える。また、信号制御装置は、仮決定したタイミングになる前に、後続車両が感知位置に達すると、黄信号に切り替えるタイミングを、この後続車両が感知位置を通過した時点から、単位青時間経過したタイミングを黄信号に切り替えるタイミングに仮決定する(仮決定した黄信号に切り替えるタイミングを更新する。)。
【0005】
なお、車両が感知位置を通過した時点は、センサが感知位置に位置している車両を検知している状態から、車両を検知していない状態に変化したときである(すなわち、車両の車尾が感知位置を通過したときである。)。また、車両が感知位置に達した時点は、センサが感知位置に位置している車両を検知していない状態から、車両を検知している状態に変化したときである(すなわち、車両の車頭が感知位置に達したときである。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-197881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、感応制御で黄信号に切り替えるタイミングを遅らせても、車両の速度が想定している速度(例えば、その流入路の制限速度)よりも低速である場合、当該車両が交差点に進入する前に、信号制御装置によって黄信号に切り替えられることがある。ドライバは、交差点に進入する前に黄信号に切り替えられた場合、交差点に進入せずに流入路(停止線手前)で車両を停車させる。したがって、信号制御装置が信号灯器の灯色信号の切り替えを感応制御で行っても、流入路に滞留する車両の台数を低減できない事態が生じることがあった。また、黄信号に切り替えるタイミングを遅らせたことで、無駄青時間の増大をまねき、その結果、交差側の流入路の交通流を低下させる。
【0008】
このように、従来の感応制御は、流入路を走行している車両の速度が想定している速度よりも低速であった場合、流入路に滞留する車両の台数を低減し、渋滞の発生頻度を抑制することができないことがあった。
【0009】
この発明の目的は、流入路における車両の走行状況に影響されることなく、渋滞の発生頻度を低下させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両感知装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0011】
取得部が、信号灯器が設置された交差点の流入路における車両の走行状況を取得する。また、感知信号生成部が、流入路に定めた感知ラインを通過する対象車両の感知信号を、取得部によって取得された流入路における車両の走行状況に応じて生成する。出力部が、感知信号生成部が生成した感知信号を信号灯器の灯色信号を切り替える信号制御装置に出力する。
【0012】
交差点の流入路における車両の走行状況は、例えば感知ラインを通過する対象車両の速度であってもよいし、流入路の混雑度であってもよいし、対象車両の速度および流入路の混雑度の両方であってもよい。また、流入路における車両の走行状況は、ここで例示したもの以外であってもよい。流入路が渋滞している場合、ドライバは先行車両に追突しないように運転するので、車両の速度がある程度低速になる。また、流入路が渋滞していない場合であっても、ドライバが車両をある程度低速で走行させることもある。
【0013】
この構成によれば、流入路における車両の走行状況に応じた感知信号を信号制御装置に生成させ、出力することができる。すなわち、流入路における車両の速度に応じた感知信号を信号制御装置に出力することができる。したがって、流入路における車両の走行状況に応じた感応制御を信号制御装置に行わせることができ、流入路における車両の走行状況に影響されることなく、渋滞の発生頻度を低下させられる。
【0014】
また、例えば、レーダ装置が流入路に設定した対象エリアを探査波で走査し、当該対象エリア内を走行している各車両の検知結果が入力される入力部を備える構成にしてもよい。この場合、取得部は、レーダ装置から入力された各車両の検知結果を基に、流入路における車両の走行状況を取得すればよい。
【0015】
また、例えば、感知信号生成部は、対象車両が感知ラインに達したときに、感知信号を非感知状態から感知状態に変化させ、当該対象車両の速度に応じて、感知信号を感知状態から非感知状態に変化させるタイミングを決定する。
【0016】
例えば、感知信号生成部は、対象車両の速度が設定速度よりも低速である場合、当該対象車両が感知ラインを通過してから、感知信号を感知状態から非感知状態に変化させるまでの遅れ時間を、対象車両の速度に応じて決定する。これにより、車両の速度が設定速度よりも低速であっても、信号制御装置による黄信号への切り替えが、当該車両が交差点に進入する前に行われるのを防止できる。
【0017】
また、例えば、取得部が、流入路における車両の走行状況として、流入路の混雑度を取得する場合、感知信号生成部は、対象車両が前記感知ラインに達したときに、感知信号を非感知状態から感知状態に変化させ、流入路の混雑度に応じて、感知信号を感知状態から非感知状態に変化させるタイミングを決定してもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、流入路における車両の走行状況に応じた感応制御を信号制御装置に行わせることができる。したがって、流入路における車両の走行状況に影響されることなく、渋滞の発生頻度を低下させられる
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この例にかかる車両感知装置を適用した信号制御システムを示す概略図である。
図2】この例の信号制御システムを適用した交差点を説明する図である。
図3】流入路に設定されている感知ラインを説明する図である。
図4図4(A)~(D)は、時間経過にともなう車両の位置の変化を示す図であり、図4(E)は、車両感知装置によって生成される感知信号を示す図である。
図5】この例の信号制御システムに適用される信号制御装置の主要部の構成を示す図である。
図6】この例にかかる車両感知装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図7】車両の追跡データを示す図である。
図8】電波レーダ装置の動作を示すフローチャートである。
図9】車両感知装置における追跡処理を示すフローチャートである。
図10】車両感知装置における感知信号生成処理を示すフローチャートである。
図11】信号制御装置の動作を示すフローチャートである。
図12図12(A)~(C)は、右折車線における対象エリアの設定例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について説明する。
【0021】
<1.適用例>
図1は、この例にかかる車両感知装置を適用した信号制御システムを示す概略図である。図2は、この例の信号制御システムを適用した交差点を説明する図である。この例にかかる信号制御システムは、車両感知装置1と、信号制御装置2と、電波レーダ装置5と、信号灯器100(100a~100d)とを備えている。
【0022】
なお、図2では、図示をわかりやすくするため、一部の車両110については符号を付していない。
【0023】
この例では、信号灯器100は、図2に示すように、主道路と従道路とが交差する交差点に設置されている。信号灯器100a、100bが、主道路を走行している車両110に対するものであり、信号灯器100c、100dが、従道路を走行している車両110に対するものである。
【0024】
この例では、信号制御装置2は、信号灯器100a、100bの灯色信号を同期して切り替え、信号灯器100c、100dの灯色信号を同期して切り替える。この例では、信号灯器100の灯色信号は、青信号、黄信号、赤信号、および右折矢印信号の4つである。信号制御装置2は、信号灯器100の灯色信号を、青信号、黄信号、右折矢印信号(このとき、赤信号も点灯)、黄信号、赤信号の順に繰り返し切り替える。この例では、信号制御装置2は、信号灯器100a、100bの右折矢印信号から黄信号への切り替えを感応制御で行う。
【0025】
なお、ここでは特に説明しないが、信号制御装置2は、信号灯器100a、100bの青信号から黄信号への切り替えを感応制御で行う構成であってもよいし、信号灯器100c、100dの右折矢印信号から黄信号への切り替えを感応制御で行う構成であってもよいし、信号灯器100c、100dの青信号から黄信号への切り替えを感応制御で行う構成であってもよい。
【0026】
図2に示すように、この例では、電波レーダ装置5は、主道路の一方の流入路に対して設定されている検知エリア(破線で示したエリア)を探査波であるミリ波で走査し、反射波を検出することによって、この流入路の検知エリア内を走行している各車両110の位置、および速度を検知する。車両110の走行方向における電波レーダ装置5の検知エリアは、例えば、停止線付近から150m程度上流側までをカバーする範囲である。また、車幅向における電波レーダ装置5の検知エリアは、例えば、主道路の流入路の全ての車線をカバーする範囲である。
【0027】
なお、電波レーダ装置5の検知エリアは、上記した範囲に限定されるものではない。この例では、電波レーダ装置5は、後述する感知ラインを探査波で走査する構成であってもよい。すなわち、この例では、電波レーダ装置5は、感知ライン上に位置する車両110の速度を取得すればよい。
【0028】
電波レーダ装置5は、例えば100msec周期で検知エリアの走査を繰り返す。すなわち、電波レーダ装置5は、流入路を走行している各車両110の検知(位置、および速度)を100msec周期で繰り返す。この例では、電波レーダ装置5は、探査波で検知エリアを走査する毎に、その走査で検知した各車両110の位置、および速度を含む検知データを出力する。また、この検知データには、各車両110の検知時刻が対応づけられている。検知時刻は、電波レーダ装置5が探査波で検知エリアの走査を開始した時刻にしてもよいし、検知エリアの走査を終了した時刻にしてもよいし、検知エリアの走査を開始した時刻と走査を終了した時刻との中間の時刻にしてもよい。
【0029】
車両感知装置1には、電波レーダ装置5が出力した各車両110の検知データが入力される。この例では、車両感知装置1は、各車両110の検知データを基に、流入路(検知エリア内)を走行している車両110毎に、その車両110の走行軌跡を示す追跡データを生成する構成を備えているものとして説明する。但し、車両感知装置1は、追跡データを生成する構成を備えていなくてもよい。追跡データは、車両110毎に、その車両110が検知された時刻、位置、および速度を時系列に並べたデータである。
【0030】
図3は、流入路に設定されている感知ラインを説明する図である。感知ラインは、停止線よりも10m~30m程度上流に設定されている。感知ラインは、検知エリア内に設定されている。
【0031】
この例の車両感知装置1は、右折車線において、感知ラインを通行する車両110に応じた感知信号を生成する。この感知信号は、信号制御装置2に出力される。図4(A)~(D)は、時間経過にともなう車両の位置の変化を示す図であり、図4(E)は、車両感知装置が生成する感知信号を示す図である。時間の経過順は、T1、T2、T3、T4の順である。
【0032】
図4(A)に示す時刻T1における車両110の位置は、感知ラインよりも上流側である。図4(B)に示す時刻T2における車両110の位置は、車頭が感知ラインに達した位置である。図4(C)に示す時刻T3における車両110の位置は、車両110の一部が感知ラインの上流側であり、残りが感知ラインの下流側である(車両110が感知ラインを跨いでいる状態である。)。図4(D)に示す時刻T4における車両110の位置は、車尾が感知ラインに達した位置である。
【0033】
感知ラインを通過する車両110は、時刻T2~時刻T4までの期間に検知される。ている期間である。
【0034】
感知ラインから停止線までの距離は一定であるが、車両110が感知ラインを通過した時点(時刻T4)から停止線に達するまでに要する時間(言い換えれば、感知ラインを通過した時点(時刻T4)から交差点に進入するまでに要する時間)は、当該車両110の速度によって変化する。
【0035】
この例の車両感知装置1は、図4(E)に示す感知信号を生成する。車両感知装置1は、図4(E)に示す感知信号を生成する。車両感知装置1は、感知信号を、時刻T2で感知ラインを通過する車両110を検知していない状態から、感知ラインを通過する車両110を検知している状態に変化させる。車両感知装置1は、感知信号を、時刻T5で感知ラインを通過する車両110を検知している状態から、感知ラインを通過する車両110を検知していない状態に変化させる。車両感知装置1は、感知信号を、時刻T2~時刻T5の期間、感知ラインを通過する車両110を検知している状態を維持する。
【0036】
この例では、時刻T5は、時刻T4以降の時刻であり、時刻T4に対して、遅れ時間Tdだけズラした(遅らせた)時刻である。遅れ時間Tdは、0以上の時間である(Td=0の場合、T4=T5である。)。車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度に応じて、遅れ時間Tdを決定する。より具体的には、車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度が低速であるほど、遅れ時間Tdを長くする。
【0037】
例えば、感知ラインを通過した車両110の速度をVとした場合、
Td=α×(V0-V)
により算出する。V0は予め定めた基準速度であり、αは、予め定めた比例定数である。
【0038】
また、V0≦Vである場合、Td=0である。
【0039】
なお、遅れ時間Tdは、車両110の速度を変数とする関数f(V)(Td=f(V))によって算出できればよく、関数f(V)は、例えば、一次関数や、二次関数であってもよいし、対数関数であってもよい。但し、関数f(V)は、Vが小さくなるにつれて、Tdが大きくなる関数である。
【0040】
信号制御装置2は、車両感知装置1から入力されている感知信号に応じて、信号灯器100a、100bの右折矢印信号から黄信号への切り替えを制御する。具体的には、信号制御装置2は、感知信号が感知ラインを通過する車両110を検知している状態から、感知ラインを通過する車両110を検知していない状態に変化した時刻T5から予め設定されている単位青時間経過したタイミングを黄信号に切り替えるタイミングに仮決定する。
【0041】
なお、時刻T5は、上記したように、実際に車両110が感知ラインを通過した時刻と、この車両110の速度を用いて算出した遅れ時間Tdによって決まる。
【0042】
信号制御装置2は、後続車両110が感知ラインに達することなく仮決定したタイミングになると、このタイミングで黄信号に切り替える。また、信号制御装置2は、仮決定したタイミングになる前に、後続車両110が感知ラインに達すると、この後続車両にかかる感知信号が感知ラインを通過する後続車両110を検知している状態から、感知ラインを通過する後続車両110を検知していない状態に変化した時刻T5から予め設定されている単位青時間経過したタイミングに仮決定する(先に仮決定した黄信号に切り替えるタイミングを更新する。)。
【0043】
なお、信号制御装置2は、仮決定したタイミングになる前に、後続車両が感知位置を通過したかどうかを、車両感知装置1から入力されている感知信号によって判断する。
【0044】
したがって、この例の信号制御システムでは、感知ラインを通過した車両110の速度Vが基準速度V0よりも低速であっても、この車両110が交差点に進入する前に右折矢印信号が黄信号に切り替えられる事態の発生頻度を抑制できる。
【0045】
また、遅れ時間Tdについては、一定時間(例えば、1~2秒程度の時間)とし、車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度Vが基準速度V0よりも低速であれば、車両110が感知ラインを通過してからTd後に、感知信号を、車両110を検知している状態から、検知していない状態に変化させてもよい。この場合、車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度Vが基準速度V0以上であれば、Td=0にすればよい(すなわち、時刻T4で、感知信号を、車両110を検知している状態から、検知していない状態に変化させればよい。)。
【0046】
<2.構成例>
図5は、この例にかかる信号制御装置の主要部の構成を示すブロック図である。この例の信号制御装置2は、公知の信号制御装置2と同様の構成である。
【0047】
信号制御装置2は、制御ユニット21と、通信部22と、入出力部23と、灯色信号切替部24とを備えている。
【0048】
制御ユニット21は、信号制御装置2本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット21は、信号制御パラメータ記憶部21a、および点灯制御信号生成部21bを有している。制御ユニット21が有する、信号制御パラメータ記憶部21a、および点灯制御信号生成部21bの詳細については後述する。
【0049】
通信部22は、図示していない管制センタに接続されている。通信部22は、管制センタから送信されてくる信号制御パラメータの受信等を行う。信号制御パラメータは、交差点に設置されている信号灯器100の灯色信号を切り替えるパラメータであり、サイクル、スプリット、オフセットを示す。信号制御パラメータについては、周知であるので、ここでは説明を省略する。
【0050】
入出力部23は、車両感知装置1との間でデータの入出力を行う。この例では、入出力部23は、その時点において、点灯させている主道路側の信号灯器100a、100bの灯色信号(青信号、黄信号、赤信号、または右折矢印信号)を車両感知装置1に出力する。また、入出力部13には、車両感知装置1から感知信号が入力される。
【0051】
信号灯器100は、点灯用電力が供給されている灯色信号が点灯し、点灯用電力が供給されていない灯色信号が消灯する。灯色信号切替部24は、交差点に設置されている各信号灯器100の灯色信号を切り替える。具体的には、灯色信号切替部24は、各信号灯器100の灯色信号毎に、点灯用電力の供給、または点灯用電力の供給停止の切り替えを行う。
【0052】
次に、制御ユニット21が有する、信号制御パラメータ記憶部21a、および点灯制御信号生成部21bについて説明する。信号制御パラメータ記憶部21aは、信号制御パラメータを記憶する。
【0053】
点灯制御信号生成部21bは、交差点に設置されている各信号灯器100で点灯させる灯色信号を指示する点灯制御信号を生成する。点灯制御信号生成部21bが生成した点灯制御信号は、灯色信号切替部24に出力される。点灯制御信号生成部21bは、主道路側の信号灯器100a、100bを右折矢印から黄信号に切り換える切換タイミングを車両感知装置1から入力された感知信号を参照して判断する。
【0054】
信号制御装置2の制御ユニット21は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUは、信号制御装置2が信号制御プログラムを実行したときに、点灯制御信号生成部21bとして機能する。また、メモリは、信号制御パラメータを記憶する信号制御パラメータ記憶部21aとして使用される記憶領域を有している。また、メモリは、信号制御プログラムを展開する領域や、この信号制御プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット21は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。
【0055】
図6は、この例にかかる車両感知装置の主要部の構成を示すブロック図である。車両感知装置1は、制御ユニット11と、検知データ入力部12と、入出力部13と、追跡データベース14(追跡DB14)とを備えている。
【0056】
制御ユニット11は、車両感知装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、追跡データ生成部11a、取得部11b、および感知信号生成部11cを有する。制御ユニット11が有する、追跡データ生成部11a、取得部11b、および感知信号生成部11cの詳細については後述する。
【0057】
検知データ入力部12には、電波レーダ装置5から車両110の検知データが入力される。電波レーダ装置5は、上記したように交差点の流入路に定めた検知エリアを探査波である電波で走査し、検知エリアを走行している各車両110の位置、および速度を検知する。電波レーダ装置5は、上述したように、検知した各車両110の位置、および速度を示す検知データを出力する。この検知データには、検知時刻が対応づけられている。
【0058】
入出力部13は、信号制御装置2と接続される。入出力部13は、感知信号を信号制御装置2に出力する。また、入出力部13には、信号灯器100aにおいて点灯させられている灯色信号が信号制御装置2から入力される。
【0059】
追跡DB14は、交差点の流入路に定めた電波レーダ装置5の検知エリアを走行した車両110毎に、その車両110の走行軌跡を示す追跡データを記憶する。図7は、ある車両の追跡データを示す図である。図7に示すように追跡データは、車両110を識別するIDに、検知時刻毎に検知された車両110の速度、および位置を対応づけたデータである。車両110の位置は、走行方向における車頭の位置(Lah、Lbh、Lch)と、走行方向における車尾の位置(Lat、Lbt、Lct)と、車幅方向における右端の位置(War、Wbr、Wcr)と、車幅方向における左端の位置(Wal、Wbl、Wcl)とを含む。
【0060】
車両感知装置1は、電波レーダ装置5によって検知された車両110の走行方向の位置(車頭の位置、および車尾の位置)から、当該車両110が感知ラインよりも上流に位置しているのか、感知ラインよりも下流に位置しているのかだけでなく、感知ライン上に位置しているのかについても検知できる。車両感知装置1には、感知ラインの位置が予め登録されている。
【0061】
また、車両感知装置1は、電波レーダ装置5によって検知された車両110の車幅方向の位置(車両の右端の位置、および左端の位置)から、当該車両110が走行している車線を検知できる。車両感知装置1には、車線毎に、その車線の位置が予め登録されている。
【0062】
なお、車両感知装置1には、交差点手前の停止線の位置等も登録されている。
【0063】
次に、制御ユニット11が有する、追跡データ生成部11a、取得部11b、および感知信号生成部11cについて説明する。
【0064】
追跡データ生成部11aは、電波レーダ装置5から入力された車両110の検知データを処理し、電波レーダ装置5が今回の探査波の走査で検知した車両110を、前回の探査波の走査で検知した車両110に対応付ける同定処理を行う。追跡データ生成部11aは、同定できた車両110については、追跡DB14に記憶されている該当するIDの追跡データに今回検知された車両110の検知時刻、位置、および速度を追加する。また、追跡データ生成部11aは、同定できなかった車両110については、この車両110に新たなIDを付与し、このIDに今回検知された車両110の検知時刻、位置、および速度を対応付けた追跡データを新規に追跡DB14に記憶させる。
【0065】
取得部11bは、電波レーダ装置5から入力された車両110の検知データを処理し、電波レーダ装置5が今回の探査波の走査で検知した車両110であって、右折車線を走行している車両110の検知データを抽出する。この例では、車両110の速度が、この発明で言う走行状況に相当する。すなわち、この例では、取得部11bは、右折車線における車両110の走行状況を取得する。
【0066】
感知信号生成部11cは、右折車線における車両110の走行状況に応じた感知信号を生成する。
【0067】
感知信号生成部11cは、電波レーダ装置5が今回の探査波の走査で感知ライン上に位置している車両110(右折車線を走行している車両110)を検知していれば、感知ラインを通過する車両110を検知している状態を示す感知信号を生成する。
【0068】
また、感知信号生成部11cは、電波レーダ装置5が今回の探査波の走査で感知ライン上に位置している車両110(右折車線を走行している車両110)を検知していなければ、以下に示す条件にしたがって感知信号を生成する。感知信号生成部11cは、直前に右折車線の感知ラインを通過した車両110の速度に応じて算出した遅れ時間Tdが経過していなければ、感知ラインを通過する車両110を検知している状態を示す感知信号を生成する。反対に、感知信号生成部11cは、直前に右折車線の感知ラインを通過した車両110の速度に応じて算出した遅れ時間Tdが経過していれば、感知ラインを通過する車両110を検知していない状態を示す感知信号を生成する。
【0069】
また、感知信号生成部11cは、電波レーダ装置5が前回の探査波の走査で右折車線の感知ライン上に位置している車両110を検知しており、今回の探査波の走査で右折車線の感知ライン上に位置している車両110を検知していなければ、前回の探査波の走査で感知ライン上に位置していた車両110の速度を基に、遅れ時間Tdを算出する。
【0070】
例えば、感知信号生成部11cは、
感知ラインを通過した車両110の速度Vを用いて、
Td=α×(V0-V)
により算出する。V0は予め定めた基準速度であり、αは予め定めた比例定数である。
また、感知信号生成部11cは、V0≦Vである場合、Td=0と算出する。
【0071】
感知信号生成部11cが生成した感知信号は、入出力部13において信号制御装置2に出力される。具体的には、電波レーダ装置5が、探査波で検知エリアを走査する周期で、感知ラインを通過する車両110の有無を示す感知信号が生成され、信号制御装置2に出力される。
【0072】
なお、上記の説明から明らかなように、直前に感知ラインを通過した車両110の速度に応じて算出した遅れ時間Tdが経過していないとき、実際に感知ラインを通過している車両110は検知されていないが、感知ラインを通過する車両110を検知している状態を示す感知信号が信号制御装置2に出力される。
【0073】
なお、上記の説明から明らかなように、追跡DB14に記憶されている各車両110の追跡データには、電波レーダ装置5から入力された最新の車両110の検知データが含まれているので、走行状況は、追跡DB14に記憶されている各車両110の追跡データから取得することもできる。
【0074】
車両感知装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる感知信号生成プログラムを実行したときに、追跡データ生成部11a、取得部11b、および感知信号生成部11cとして動作する。また、メモリは、この発明にかかる感知信号生成プログラムを展開する領域や、この感知信号生成プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる感知信号生成方法を実行するコンピュータである。
【0075】
なお、電波レーダ装置5については、公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0076】
<3.動作例>
次に、この例にかかる信号制御システムが備える車両感知装置1、信号制御装置2、および電波レーダ装置5の動作について説明する。
【0077】
図8は、電波レーダ装置の動作を示すフローチャートである。電波レーダ装置5は、流入路を走行している車両110の検知タイミングになると(s1)、流入路の検知エリアを走行している車両110を検知する検知処理を行う(s2)。s2では、電波レーダ装置5は、検知エリアを探査波で走査し、その反射波を検出(受信)する。電波レーダ装置5は、照射した探査波の反射波を受信することにより、流入路の検知エリアを走行している各車両110の位置、および速度を検知する。検知タイミングは、例えば前回の検知タイミングから100msec経過したタイミングである。すなわち、電波レーダ装置5は、流入路の検知エリア内を走行している車両110の検知を100msec周期で繰り返す。
【0078】
電波レーダ装置5は、s2にかかる検知処理が完了すると、今回の探査波の走査で検知した各車両110の位置、および速度を車両110の検知データとして出力し(s3)、s1に戻る。s3で出力する車両110の検知データには、車両110の検知時刻が含まれている。この検知時刻は、上記したように、例えば、検知エリアの走査を開始した時刻であってもよいし、検知エリアの走査を終了した時刻であってもよいし、検知エリアの走査を開始した時刻と走査を終了した時刻との中間の時刻であってもよい。
【0079】
次に、この例の車両感知装置1の動作について説明する。車両感知装置1は、電波レーダ装置5から入力された車両検知データを処理して追跡データを生成する追跡処理と、感知信号を生成して出力する感知信号生成処理とを行う。
【0080】
まず、車両感知装置1の追跡処理について説明する。図9は、車両感知装置の追跡処理を示すフローチャートである。
【0081】
車両感知装置1は、電波レーダ装置5から車両110の検知データが入力されるのを待つ(s11)。車両感知装置1は、電波レーダ装置5から車両110の検知データが入力されると、追跡データ生成部11aが、今回の走査で検知された車両110を、前回の走査で検知された車両110に対応づける同定処理を行う(s12)。この同定処理では、今回の走査で検知された車両110毎に、その車両110の位置、および速度を、前回の走査で検知された各車両110の位置、および速度と比較して対応づける。追跡データ生成部11aは、前回の走査で検知された車両110に対応づけることができた車両110(今回の走査で検知された車両110)のIDを、対応づけた車両110(前回の走査で検知された車両110)のIDにする。また、追跡データ生成部11aは、前回の走査で検知された車両110に対応づけることができなかった車両110(今回の走査で検知された車両110)については、新たなIDを付与する。
【0082】
追跡データ生成部11aは、s12での同定処理の処理結果に基づき、今回検知された各車両110の追跡データを更新し(s13)、s11に戻る。s13では、追跡DB14が記憶する各車両110の追跡データに、今回の走査で検知された車両110の検知データを追加する。また、前回の走査で検知された車両110に同定できなかった車両110については、IDに今回の検知データを対応づけた追跡データを追跡DB14に記憶させる。
【0083】
次に、車両感知装置1の感知信号生成処理について説明する。図10は、車両感知装置の感知信号生成処理を示すフローチャートである。
【0084】
車両感知装置1は、信号灯器100aの灯色信号が右折矢印信号であるかどうかを判定する(s21)。s21では、感応制御が行われる灯色信号であるかどうかを判定している。車両感知装置1は、信号灯器100aの灯色信号が右折矢印信号でなければ、右折矢印信号に切り替えられるのを待つ。
【0085】
車両感知装置1は、信号灯器100aの灯色信号が右折矢印信号であれば、電波レーダ装置5から検知データが検知データ入力部12に入力されるのを待つ(s22)。車両感知装置1は、検知データが検知データ入力部12に入力されると、電波レーダ装置5における今回の走査で、右折車線の感知ライン上に車両110が位置しているかどうかを判定する(s23)。
【0086】
車両感知装置1は、s23で、右折車線の感知ライン上に車両110が位置していると判定すると、車両有を示す感知信号を生成する(s27)。一方、車両感知装置1は、s23で、右折車線の感知ライン上に車両110が位置していないと判定すると、前回入力された検知データを用いた判定で、右折車線の感知ライン上に車両110が位置していたかどうかを判定する(s24)。s24では、電波レーダ装置5の今回の検知タイミングが、車両110が右折車線の感知ラインを通過したタイミングであるかどうかを判定している。車両感知装置1は、s24で右折車線の感知ライン上に車両110が位置していたと判定した場合、電波レーダ装置5の今回の検知タイミングが、車両110が右折車線の感知ラインを通過したタイミングでないと判定する。車両感知装置1は、s24で右折車線の感知ライン上に車両110が位置していなかったと判定した場合、電波レーダ装置5の今回の検知タイミングが、車両110が右折車線の感知ラインを通過したタイミングであると判定する。
【0087】
車両感知装置1は、s24で、右折車線の感知ライン上に車両110が位置していたと判定した場合、遅れ時間Tdを算出する(s25)。s25では、今回右折車線の感知ラインを通過したと判定した車両110の速度Vを用いて、遅れ時間Tdを算出する。右折車線の感知ラインを通過したと判定した車両110の速度Vは、当該車両110について、電波レーダ装置5によって今回検知された速度であってもよいし、ある期間に検知された当該車両110の速度の平均速度であってもよい。また、これ以外の手法で、当該車両110の速度Vを決定してもよい。
【0088】
車両感知装置1は、右折車線の感知ラインを車両110が通過したと最後に判定した時点から、この車両110についてs25で算出した遅れ時間Td経過しているかどうかを判定する(s26)。車両感知装置1は、s26で遅れ時間Td経過していないと判定すると、車両有を示す感知信号を生成する(s27)。反対に、車両感知装置1は、s26で遅れ時間Td経過していると判定すると、車両無を示す感知信号を生成する(s28)。
【0089】
車両感知装置1は、s27、またはs28で生成した感知信号を信号制御装置2に出力し(s29)、s21に戻る。
【0090】
この例の車両感知装置1は、上記したs21~s24にかかる処理を取得部11bが実行し、上記したs25~s28にかかる処理を感知信号生成部11cが実行する。
【0091】
上記したように、この例の車両感知装置1は、信号制御装置2に出力する感知信号を車両有から車両無に変化させるタイミングを、感知ラインを通過した車両110の速度Vに応じて決定する。具体的には、車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度Vが基準速度V0よりも低速である場合、信号制御装置2に出力する感知信号を車両有から車両無に変化させるタイミングを、実際に車両110が感知ラインを通過した時点から、車両110の速度Vに応じた遅れ時間だけズラす(遅らせる)。
【0092】
図11は、信号制御装置の動作を示すフローチャートである。信号制御装置2は、その時点における信号灯器100の灯色信号の切り替えを感応制御で行うかどうかを判定する(s31)。この例では、信号制御装置2は、信号灯器100a、100bの灯色信号が右折矢印信号である場合、灯色信号の切り替えを感応制御で行うと判定し、それ以外の場合、灯色信号の切り替えを感応制御で行わないと判定する。
【0093】
信号制御装置2は、信号灯器100の灯色信号の切り替えを感応制御で行わないと判定すると、その時点で適用している信号制御パラメータによって決定されるタイミングを、次の階梯の灯色信号に切り替えるタイミングに決定する(s32)。信号制御装置2は、s32で決定した切替タイミングになると、信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替え(s33、s34)、s31に戻る。
【0094】
信号制御装置2は、信号灯器100の灯色信号の切り替えを感応制御で行うと判定すると、次の階梯への切り替えタイミングを最小打切り時間経過したタイミングに仮決定する(s35)。感応制御で切り替えが行われる灯色信号の階梯については、最小打切り時間、および最大延長時間が設定されている。最小打切り時間は、感知ラインを通過した車両110の検知にかかわらず、感応制御にかかる信号灯器100の灯色信号を保持する時間(次の階梯に切り替えない時間)である。最大打切り時間は、感知ラインを通過した車両110の検知にかかわらず、感応制御にかかる信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替える時間である。すなわち、信号制御装置2は、感応制御で切り替える信号灯器100の灯色信号の切り替えを、最小打切り時間以上で、最大延長時間以下の時間帯で行う。最小打切り時間、および最大延長時間は、感応制御で切り替える信号灯器100の灯色信号の開始時刻を基準にして計測される。例えば、最小打切り時間は、3秒で、最大延長時間は、8秒である。
【0095】
信号制御装置2は、車両110が感知ラインを通過したかどうかを判定する(s36)。s36では、感知信号が車両有から車両無に変化したかどうかを判定している。また、上記したように、車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度が基準速度V0よりも低速であった場合、車両110が実際に感知ラインを通過したタイミングよりも、遅らせたタイミングで感知信号を車両有から車両無に変化させている。したがって、信号制御装置2によるs36の判定は、実際に車両110が感知ラインを通過したかどうかを判定しているわけではない。
【0096】
信号制御装置2は、s36で車両110が感知ラインを通過していないと判定すると、その時点で仮決定されている切替タイミングに達したかどうかを判定する(s41)。信号制御装置2は、s41で、その時点で仮決定されている切替タイミングに達していないと判定すると、s36に戻る。
【0097】
信号制御装置2は、s36で車両110が感知ラインを通過したと判定すると、現時点から単位青時間(例えば、1~2秒)経過したタイミングを、信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替える切替タイミングに仮決定する(s37)。信号制御装置2は、s37で仮決定した信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替える切替タイミングが、最小打切り時間経過後のタイミングであるかどうかを判定する(s38)。信号制御装置2は、s38で、最小打切り時間経過前のタイミングであると判定すると、s35に戻って、信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替える切替タイミングを最小打切り時間経過したタイミングに仮決定する。
【0098】
信号制御装置2は、s38で、最小打切り時間経過後のタイミングであると判定すると、最大延長時間経過後のタイミングであるかどうかを判定する(s39)。信号制御装置2は、s39で、最大延長時間経過後のタイミングであると判定すると、信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替える切替タイミングを最大延長時間経過時に決定する(s40)。信号制御装置2は、s39で、最大延長時間経過後のタイミングでないと判定すると、s37で仮決定した切替タイミングを保持する(s40にかかる処理を行わない。)。
【0099】
信号制御装置2は、その時点で仮決定、または決定されている切替タイミングであるかどうかを判定する(s41)。信号制御装置2は、s41で、切替タイミングでないと判定すると、s36に戻る。また、信号制御装置2は、s41で、切替タイミングであると判定すると、信号灯器100の灯色信号を次の階梯に切り替え(s42)、s31に戻る。
【0100】
信号制御装置2が実行する上記処理は、公知の感応制御である。すなわち、この例の信号制御システムは、既存の信号制御装置2を利用できる。したがって、この例の信号制御システムの構築にかかるコストを抑制できる。また、上記した通り、この例の車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度Vに応じて、感知信号を車両有から車両無に変化させるタイミングを決定する。したがって、この例の信号制御システムは、流入路における車両110の速度Vに影響されることなく、渋滞の発生頻度を低下させることができる。
【0101】
<4.変形例>
・変形例1
上記の例の車両感知装置1は、感知ラインを通過した車両110の速度Vに応じて、感知信号が車両有を示す状態から車両無を示す状態に変化させるタイミングを決定する構成であった。この変形例1の車両感知装置1は、右折車線における車両110の混雑度に応じて、感知信号が車両有を示す状態から車両無を示す状態に変化させるタイミングを決定する。この変形例1の車両感知装置1が適用される信号制御システムは、図1に示す構成であり、この変形例1の車両感知装置1は、図6に示す構成である。
【0102】
この変形例1の車両感知装置1は、図10に示した感知信号生成処理を実行する。但し、s25における遅れ時間Tdを算出する手法が、上記の例と異なる。この変形例1では、対象エリアが、右折車線に設定されている。対象エリアは、図12(A)に示すように、右折車線全体であってもよいし、図12(B)に示すように、感知ラインよりも上流側の範囲であってもよいし、図12(C)に示すように、感知ラインを跨ぐ範囲であってもよい。また、対象エリアは、右折ラインであれば、図12(A)~(C)以外の範囲に設定してもよい。
【0103】
この変形例1では、車両感知装置1は、対象エリア内に位置する車両110の台数に応じて遅れ時間Tdを設定している。対象エリア内に位置する車両110の台数は、電波レーダ装置5により検知された各車両110の位置から取得できる。例えば、対象エリア内に位置する車両台数が、X台未満である場合、Td=0、X台以上でY台未満である場合、Td=t1、Y台以上である場合、Td=t2と設定されている。但し、X<Yであり、0<t1<t2である。
【0104】
なお、X、Y、t1、t2等は、車両110の走行方向における対象エリアの長さに応じて定めればよい。この変形例1では、対象エリア内に位置する車両台数を3段階で区分し、車両台数の区分毎に遅れ時間Tdを設定している場合を例にしているが、車両台数による区分数は、2つ以上であればいくつであってもよい。
【0105】
この変形例1の車両感知装置1は、図10に示したs25における遅れ時間Tdの算出を、対象エリア内に位置する車両台数に応じて行う。
【0106】
通常、対象エリア内に位置する車両110の台数が多くなるにつれて(混雑度が高くなるにつれて)、車両110の速度が低速になる。したがって、この変形例1の構成であっても、上記の例と同様に、流入路における車両110の速度Vに影響されることなく、渋滞の発生頻度を低下させることができる。
【0107】
・変形例2
また、例えば、対象エリア内に位置する車両台数をQとした場合、遅れ時間Tdを、
Td=β×Q
により算出してもよい。βは、予め定めた比例定数である。
【0108】
なお、この場合、遅れ時間Tdは、対象エリア内に位置する車両台数Qを変数とする関数g(Q)(Td=g(Q))によって算出できればよく、関数g(Q)は、例えば、一次関数や、二次関数であってもよいし、対数関数であってもよい。但し、関数g(Q)は、Qが大きくなるにつれて、Tdが大きくなる関数である。
【0109】
・変形例3
また、感知ラインにおける車両110の検知間隔Dを用いて、図10に示したs25における遅れ時間Tdの算出を行ってもよい。ここで言う検知間隔Dは、先行車両110の車尾が感知ラインを通過してから、後続車両110の車頭が検知ラインに達するまでの時間である。
【0110】
この場合、例えば、検知間隔Dを区分した範囲毎に、遅れ時間Tdを設定しておいてもよいし、
Td=γ×D
により算出してもよい。γは、予め定めた比例定数である。
【0111】
なお、この場合、遅れ時間Tdは、検知間隔Dを変数とする関数p(D)(Td=p(D))によって算出できればよく、関数p(D)は、例えば、一次関数や、二次関数であってもよいし、対数関数であってもよい。但し、関数p(D)は、Dが大きくなるにつれて、Tdが小さくなる関数である。
【0112】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。また、上記した全ての例の説明で示したフローチャートにおける各ステップの順番は、あくまでも一例であり、可能な範囲で適宜入れ替えてもよい。
【0113】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
信号灯器(100)が設置された交差点の流入路における車両(110)の走行状況を取得する取得部(11b)と、
前記流入路に定めた感知ラインを通過する車両(110)の感知信号を、前記取得部(11b)によって取得された前記流入路における車両(110)の走行状況に応じて生成する感知信号生成部(11c)と、
前記感知信号生成部(11c)が生成した感知信号を前記信号灯器(100)の灯色信号を切り替える信号制御装置(2)に出力する出力部(13)と、
を備えた車両感知装置(1)。
【符号の説明】
【0114】
1…車両感知装置
2…信号制御装置
5…電波レーダ装置
11…制御ユニット
11a…追跡データ生成部
11b…取得部
11c…感知信号生成部
12…検知データ入力部
13…入出力部
14…追跡データベース(追跡DB)
21…制御ユニット
21a…信号制御パラメータ記憶部
21b…点灯制御信号生成部
22…通信部
23…入出力部
24…灯色信号切替部
100(100a~100d)…信号灯器
110…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12