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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057191
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/78 20060101AFI20240417BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20240417BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20240417BHJP
   F16J 15/3268 20160101ALI20240417BHJP
【FI】
F16C33/78 E
F16C19/38
F16J15/3232 201
F16J15/3268
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163745
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レー ホン トー
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AB05
3J006AE16
3J006AE30
3J006AE38
3J006AE42
3J006CA01
3J043AA16
3J043CA02
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA09
3J043HA01
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB22
3J216AB38
3J216BA01
3J216CA02
3J216CB02
3J216CB13
3J216CB14
3J216CB18
3J216CB19
3J216CC03
3J216CC14
3J216CC33
3J216CC42
3J216CC45
3J216DA01
3J216DA11
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA44
3J701AA52
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA63
3J701BA73
3J701FA31
3J701FA60
3J701GA51
(57)【要約】
【課題】密封性及び耐久性の向上を図ることができる密封装置を提供する。
【解決手段】相対的に同軸回転する外側部材3と内側部材2との間に装着され補強部材10とシール部材20とが組み合わさって構成される密封装置7であって、前記外側部材に取り付けられる前記補強部材は、前記シール部材が取り付けられる円筒部11aと、前記円筒部の一方端部11baから径方向内側に延びる鍔部11bとを備え、前記シール部材は、前記円筒部に取り付けられる芯体円筒部21aを有する芯体21と、前記芯体に固着され前記内側部材の外周面25dに弾接または近接する弾性体製のシールリップ部22とを備え、前記鍔部11bは、前記鍔部の径方向内側の端部11bbが、前記内側部材の前記外周面25dの軸方向外側における角部に設けられた面取り部25cに対し径方向に対向する位置に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に同軸回転する外側部材と内側部材との間に装着され補強部材とシール部材とが組み合わさって構成される密封装置であって、
前記外側部材に取り付けられる前記補強部材は、前記シール部材が取り付けられる円筒部と、前記円筒部の一方端部から径方向内側に延びる鍔部とを備え、
前記シール部材は、前記円筒部に取り付けられる芯体円筒部を有する芯体と、前記芯体に固着され前記内側部材の外周面に弾接または近接する弾性体製のシールリップ部とを備え、
前記鍔部は、前記鍔部の径方向内側の端部が、前記内側部材の前記外周面の軸方向外側における角部に設けられた面取り部に対し径方向に対向する位置に形成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記シール部材の前記芯体は、前記芯体円筒部の一方端部から径方向内側に延びる芯体鍔部を有しており、
前記シール部材の前記芯体円筒部は、前記補強部材の前記円筒部に対し接触した状態で設けられるように前記円筒部の内面側に沿う形状とされるとともに、
前記シール部材の前記芯体鍔部は、前記補強部材の前記鍔部に対し接触した状態で設けられるように前記鍔部の内面側に沿う形状とされていることを特徴とする密封装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記補強部材の前記円筒部の外面が、前記外側部材の内周面に嵌合されることを特徴とする密封装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記補強部材の前記円筒部は、前記外側部材の内周面よりも前記内側部材の外周面に近い位置に設けられることを特徴とする密封装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記円筒部に対して前記芯体円筒部は、金属嵌合もしくはねじ構造によって取り外し可能に取り付けられることを特徴とする密封装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記円筒部と前記芯体円筒部とは、カシメ嵌合もしくは溶接によって一体的に構成されていることを特徴とする密封装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2において、
前記補強部材は、前記円筒部の他方端部から径方向外側に延びる外方鍔部をさらに備えており、
前記外方鍔部は、前記外側部材の軸方向外側の端面と、前記端面に取り付けられる取付部との間に挟持されることを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に同軸回転する外側部材と内側部材との間に装着され補強部材とシール部材とが組み合わさって構成される密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述のような密封装置において、下記特許文献1や下記特許文献2に挙げられように、外側部材の内周面に嵌合される補強部材の円筒部と、この円筒部に嵌合される嵌合円筒部を有したシール部材とが組み合わさって構成されるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-197879号公報
【特許文献2】特開2016-109280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような密封装置は、シール対象となる外側部材と内側部材との間に塵埃や泥水等の異物が侵入しないように配されるが、シール部材に設けられたシールリップが直接異物に晒されていると、過酷な使用環境下においては密封装置の寿命が短い傾向になる点が問題となる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び上記特許文献2に開示されている密封装置はいずれも、シールリップによって軸受部の内部へ外方からの異物の侵入は守られていても、シールリップ自体は保護されていないものであった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、密封性及び耐久性の向上を図ることができる密封装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る密封装置は、相対的に同軸回転する外側部材と内側部材との間に装着され補強部材とシール部材とが組み合わさって構成される密封装置であって、前記外側部材に取り付けられる前記補強部材は、前記シール部材が取り付けられる円筒部と、前記円筒部の一方端部から径方向内側に延びる鍔部とを備え、前記シール部材は、前記円筒部に取り付けられる芯体円筒部を有する芯体と、前記芯体に固着され前記内側部材の外周面に弾接または近接する弾性体製のシールリップ部とを備え、前記鍔部は、前記鍔部の径方向内側の端部が、前記内側部材の前記外周面の軸方向外側における角部に設けられた面取り部に対し径方向に対向する位置に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る密封装置は、上述の構成としたことで、密封性及び耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る密封装置が適用される産業機械用軸受装置の一例を概略的に示す模式的断面図である。
図2図1のX部の拡大図であって、第1実施形態に係る密封装置を模式的に示す断面図である。
図3】(a)~(c)は第1実施形態に係る密封装置を分解する工程を説明するための模式的断面図である。
図4】(a)~(d)は第1実施形態に係る密封装置の変形例を説明するための模式的部分断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る密封装置を模式的に示す断面図である。
図6】(a)及び(b)は第2実施形態に係る密封装置の変形例を模式的に示す断面図である。
図7】(a)及び(b)は第2実施形態に係る密封装置の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
本実施形態に係る密封装置7は、相対的に同軸回転する外側部材3と内側部材2との間に装着され、補強部材10とシール部材20とが組み合わさって構成される。外側部材3に取り付けられる補強部材10は、シール部材20が取り付けられる円筒部11aと、円筒部11aの一方端部11baから径方向内側に延びる鍔部11bとを備えている。シール部材20は、円筒部11aに取り付けられる芯体円筒部21aを有する芯体21と、芯体21に固着され内側部材2の外周面25dに弾接または近接する弾性体製のシールリップ部22とを備えている。鍔部11bは、鍔部11bの径方向内側の端部11bbが、内側部材2の外周面25dの軸方向外側における角部に設けられた面取り部25cに対し径方向に対向する位置に設けられている。以下では、産業機械用軸受装置に密封装置7を適用した例について詳述する。
【0011】
<第1実施形態>
まずは図1図3を参照しながら、第1実施形態に係る密封装置7について説明する。
図1に示すとおり、軸受装置1は計4列の円錐台形状のころ5,5・・・を有した軸受である。外側部材3である外輪と、内側部材2である内輪との間には、2列のころ5,5が、中央部位に配されたシール部材6を挟んで左右に一対配されている。内側部材2及び外側部材3は、メンテナンス時等に分解点検できる構成となっているため、複数の内輪部材25,25、複数の外輪部材32及び取付部30・・・を組み合わせて構成されている。ころ5,5は、内輪部材25に形成された軌道面25aと、外輪部材32に形成された軌道面32aとの間に配される。ころ5,5は、保持器4によって転動自在に保持されるよう保持器4が挿通される貫通孔(不図示)を備えている。軸受装置1の両端部には、密封装置7,7が装着されており、この密封装置7,7によって軸受空間内に供給されたグリース漏れを防ぐとともに、軸受空間内への水や異物等の侵入を防止する。
【0012】
図2図1のX部を拡大した部分拡大断面図である。図2に示す密封装置7は、外側部材3の一部を構成し且つ外輪部材32の端面32bに取り外し可能に構成される取付部30によって外輪部材32に固定される。よって取付部30の外輪部材32側の側面30bは、外輪部材32の端面32bに接触した状態で固定される。取付部30は、断面形状が略方形の環状体とされ、径方向の長さ寸法は外輪部材32と略同一になるように形成されている。取付部30の内径側且つ外輪部材32側の角部には、切欠き形状とされた段差部30ba(図3(b)参照)が設けられている。段差部30baは、後記する芯金部材11の外方鍔部11cと、取付部30との間に、弾性部材12が介在できる厚みを持って形成されている。取付部30の外径側端面30aには、周方向に沿って溝部30aaが設けられている。そして溝部30aa内には、環状のOリング31が装着される。Oリング31は、ゴム等の弾性材からなり、外側部材3が装着されるハウジング(不図示)と取付部30との間をシールするとともに、取付部30と密封装置7とが一体的に構成されるよう設けられる。内輪部材25の外周面25dの軸方向外側における角部(内輪部材25の端面25bの径方向外側における角部)は、面取り加工された面取り部25cを備えている。
【0013】
密封装置7は、上述のとおり、補強部材10と、シール部材20とを備える。補強部材10は、芯金部材11と弾性部材12とを備えている。芯金部材11は、SPCC又はSUS等の鋼板を段差状にプレス加工して形成される。芯金部材11は、シール部材20が取り付けられる円筒部11aと、円筒部11aの一方端部11baから径方向内側に延びる鍔部11bと、円筒部11aの他方端部11aaから径方向外側に延びる外方鍔部11cとを備えている。円筒部11a及び外方鍔部11cの取付部30側の面、すなわち、円筒部11aの外周面11abと、外方鍔部11cの外面11cbとには、ゴム等からなる弾性部材12が固着されている。弾性部材12は、円筒部11aに固着される弾性円筒部12aと、外方鍔部11cに固着される弾性鍔部12bと、外方鍔部11cの端部11caを覆う弾性覆い部12cとを備えている。弾性円筒部12aには、取付部30の内周面30cに向けて突出し弾接する突部12aaが設けられている。円筒部11aの外周面11abは、弾性円筒部12aを介して取付部30の内周面30cに嵌合している。また外方鍔部11cは、外輪部材32の軸方向外側の端面32bと、取付部30の段差部30baの端面30bbとの間に弾性鍔部12bを介して挟持される。鍔部11bは、鍔部11bの径方向内側の端部11bbが、内輪部材25の外周面25dの軸方向外側における角部に設けられた面取り部25cに対し径方向に対向する位置に形成され、シールリップ部22を覆うように設けられている。鍔部11bの径方向内側の端部11bbと面取り部25cとの径方向の間は、非接触でありながら近接して取り付けられ、その間隔d(図2参照)は0.75mm~3.00mm程度になるように設けられる。
【0014】
シール部材20は、芯体21と、弾性体製のシールリップ部22とを備えている。芯体21は、SPCC又はSUS等の鋼板をプレス加工して形成される。芯体21は円筒部11aに取り付けられる芯体円筒部21aと、芯体円筒部21aの一方端部21aaから径方向内側に延びる芯体鍔部21bと、芯体鍔部21bの一方端部21baから軸方向内側に延びる芯体第2円筒部21cと、芯体第2円筒部21cからの一方端部21caから径方向内側に延びる芯体第2鍔部21dとを備えている。シールリップ部22は、芯体21の芯体第2円筒部21cに固着される固着部22aと、芯体21の芯体第2円筒部21cと芯体第2鍔部21dの外周面に固着された第1リップ22bと、第2リップ22cとを備えている。第1リップ22bは、外部空間から軸受空間内への水や異物等の侵入を防ぐために設けられ、芯体第2鍔部21dの端部21daから内輪部材25の外周面25dに弾接し、面取り部25c側に向けて延出して形成されている。第1リップ22dの外周面側の中間部位には、ガータースプリング23が装着されている。第1リップ22bは、このガータースプリング23によって、第1リップ22dの当接部22baが外周面25dに弾接し弾性変形した状態となる。第2リップ22cは、非接触リップであり、ころ5に充填されるグリースの漏出を防止するため、ころ5側に向けて突出して配されている。シール部材20の芯体21の芯体円筒部21aは、補強部材10の芯金部材11の円筒部11aに対し接触した状態で設けられるように円筒部11aの内面11ac側に沿う形状とされるとともに、芯体21の芯体鍔部21bは、芯金部材11の鍔部11bに対し接触した状態で設けられるように鍔部11bの内面11bc側に沿う形状とされている。すなわち、芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21a、芯金部材11の鍔部11bと芯体21の芯体鍔部21bとは、隙間なく重なり合って金属材同士の2重構造となり金属嵌合されている。よって、芯金部材11と芯体21とが、強固に嵌合されるので、補強部材10とシール部材20とが装着後に容易に分離することがない。また鍔部11bの内面11bc側に芯体鍔部21bが配されているので、端部11bbを長尺に形成しても、鍔部11bが容易に変形しにくく、鍔部11bの径方向内側の端部11bbを面取り部25cに対して近接して設けることができる。
【0015】
芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21aとは、上述のように金属嵌合に限定されず、ねじ構造として、取り外し可能に取り付けられるものとしてもよい。この場合は、補強部材10からシール部材20を取り外すことができる。よって、後記するように例えばメンテナンス時にシール部材20のシールリップ部22に損傷がみられる場合、シール部材20のみを交換することができる。特にシール部材20の第1リップ22dは、外周面25dに摺接して密封するので、発熱が大きく寿命が短いため、シール部材20のみを交換できるメリットは大きい。
【0016】
またシール部材20のみを交換する要請のない箇所に用いられる密封装置7の場合は、円筒部11aと芯体円筒部21aとをカシメ嵌合もしくは溶接によって一体的に構成してもよい。この場合は、補強部材10とシール部材20とが一体的に構成されているので、容易に取り外すことができない。よって、例えばメンテナンス時でも、ばらけることなく、補強部材10とシール部材20とをひとつの装置として、管理できる。
【0017】
上記構成によれば、補強部材10の鍔部11bは、鍔部11bの径方向内側の端部11bbが、面取り部25cに対し径方向に対向する位置まで延出して形成されているので、水や異物等が侵入し難く、密封性を向上させることができる。また上記構成の鍔部11bによって、シールリップ部22を外部空間から保護することができるので、シールリップ部22に直接、水等がかかることを防ぐことができ、シールリップ部22の耐久性が向上し長寿命化を図ることができる。さらに上記構成の鍔部11bによって、シールリップ部22に直接、水等がかかることが抑制されるので、シールリップ部22の第1リップ22bを内輪部材25の外周面25dに弾接させる場合でも反力(緊迫力)を小さくできる。よって内側部材2が高速回転し内部温度が上昇するような過酷な環境下で用いられても、発熱が小さくなり、メンテナンス周期を延ばすことができる。また外方鍔部11cは、外輪部材32の軸方向外側の端面32bと、取付部30の段差部30baの端面30bbとの間に、弾性鍔部12bを介して挟持されるので、補強部材10を安定して強固に外輪部材32に取り付けることができる。そしてこのように補強部材10が安定すれば、それに嵌合されるシール部材20も安定して取り付けられ、密封装置7として機能を発揮することができる。また密封装置7は、取付部30の段差部30ba内に収まるように芯金部材11を弾性部材12を介在させて嵌合させればよいので、位置決めがしやすい。さらに上記のとおり、水や異物等の侵入を抑制できるので、第1リップ22dのリップ反力を従来のものに比べて小さくしてもよい。
【0018】
次に図3(a)~図3(c)を参照しながら、密封装置7の取り外し・分解工程について説明する。軸受装置1は定期的に部品の点検・交換等のメンテナンスが行われる。そのときには、密封装置7も点検の対象となる。密封装置7は、外側部材3の一部を構成し且つ外輪部材32の端面32bに取り外し可能に構成される取付部30によって外輪部材32に固定されている。よって、メンテナンス時には取付部30を外輪部材32から取り外すと、取付部30に嵌合されている密封装置7も取り外される。そして取り外された取付部30を、図3(a)に示すように密封装置7が突出するように取り外し台100の上に載置する。そして密封装置7の鍔部11bあたりをハンマー等でたたいていく。すると、図3(b)に示すように取付部30に嵌合された密封装置7を取りはずことができる。そしてさらに補強部材10に金属嵌合されているシール部材20を工具等を使って取り外せば、図3(c)に示すように補強部材10からシール部材20から取り外すことができる。
【0019】
<変形例>
次に図4(a)~図4(d)を参照しながら、第1実施形態に係る密封装置7の変形例について説明する。上述の例と同じ箇所には同様の符号付し、その説明は省略し、以下では主に異なる点を説明する。また図4(a)~図4(d)では変形例の要部を拡大して図示している。図示されていないシール部材20の内径側の構成は図2と同様のものが採用される。
【0020】
図4(a)に示す例は、外方鍔部11cの長さ寸法が図2に示す例より短い点が異なる。すなわち、この例では、外方鍔部11cの径方向の長さは外輪部材32の端面32bの半分以下程度とされている。また外輪部材32の構成は同様であるが、取付部30の径方向の長さ寸法が、外輪部材32の端面32bよりも小さく形成されている点も図2に示す例と異なる。この例のように外方鍔部11cが短くても、円筒部11aと外方鍔部11cとを弾性部材12を介して、内周面30cと端面30bbに嵌合させることができる。またこの例においても、外方鍔部11cは、外輪部材32の軸方向外側の端面32bと、段差部30baの端面30bbとの間に弾性鍔部12bを介して挟持されるので、補強部材10を安定して外輪部材32に取り付けることができる。
【0021】
図4(b)に示す例は、外方鍔部11cの一方端部11caから外方に傾斜し延出して形成される傾斜部11dと、傾斜部11dの一方端部11daからさらに外方に延出して形成される第2外方鍔部11eとを備えている点で、図2に示す例と異なる。また外方鍔部11cに固着される弾性鍔部12bが、これら傾斜部11dと第2外方鍔部11eも覆うように且つ厚みが芯金部材11の厚みより倍程度厚く形成されている点も異なる。またシール部材20の芯体21に、芯体第3鍔部21eを備えている点でも異なる。芯体第3鍔部21eは、芯体円筒部21aの他方端部21abから径方向外側に延出して形成されており、その径方向外側の端部21eaは、外方鍔部11cと外輪部材32の軸方向外側の端面32bとの間に挟持される。よって、この例においても、補強部材10を安定して強固に外輪部材32に取り付けることができる。
【0022】
図4(c)及び図4(d)に示す例は、弾性部材12を備えていない例であり、外輪部材32の端面32bと取付部30の側面30bとの間に芯金部材11が挟持されてない点で上述の例と異なる。補強部材10の構成は、特に限定されず、必ずしも外輪部材32の端面32bと取付部30の側面30bとの間に芯金部材11が挟持されていなくてもよい。
【0023】
図4(c)に示す例は、取付部30の段差部30caの形成位置が、外輪部材32側の角部でなく、取付部30の内径側且つ外方空間側の角部に形成されている点で上述の例と異なる。この場合でも、芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21aとが互いに金属嵌合された状態で、取付部30の内周面30cに嵌合されるので、安定して取付部30に密封装置7を取り付けることができる。また取付部30の段差部30ca内に収まるように芯金部材11及び芯体21を嵌合させればよいので、位置決めもしやすい。
【0024】
図4(d)に示す例は、取付部30に段差部30ba,30caを備えていない例である。この例では、芯金部材11と芯体21との嵌合力を強めるため、芯金部材11は、円筒部11aの他方端部11aaから径方向内側に延出して形成された折曲部11adを備えている。この場合でも、芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21aとが互いに金属嵌合された状態で、取付部30の内周面30cに嵌合されるので、安定して取付部30に密封装置7を取り付けることができる。
【0025】
<第2実施形態>
続いて図5図7を参照しながら、第2実施形態に係る密封装置7について説明する。
第2実施形態に係る密封装置7も、第1実施形態と同様に軸受装置1の密封装置として図1のX部に適用することができる。第1実施形態と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する点の説明は省略して主に異なる点を説明する。
【0026】
図5に示す密封装置7は、補強部材10と、シール部材20とを備える。補強部材10は、芯金部材11と弾性部材12とを備えている。芯金部材11は、シール部材20が取り付けられる円筒部11aと、円筒部11aの一方端部11baから径方向内側に延びる鍔部11bと、円筒部11aの他方端部11aaから径方向外側に延びる第1外方鍔部11fと、第1外方鍔部11fの一方端部11faから軸方向外側に延びる第2円筒部11gと、第2円筒部11gの一方端部11gaから径方向外側に延びる第2外方鍔部11hと、第2外方鍔部11hの一方端部11haから軸方向内側に延びる第3円筒部11iと、第3円筒部11iの一方端部11iaから径方向外側に延びる第3外方鍔部11jとを備えている。第3円筒部11i及び第3外方鍔部11jの取付部30側の面、すなわち、第3円筒部11iの外周面11ibと、第3外方鍔部11jの外面11jaとには、ゴム等からなる弾性部材12が固着される。弾性部材12は、第3円筒部11iに固着される弾性円筒部12aと、第3外方鍔部11jに固着される弾性鍔部12bと、第3外方鍔部11jの端部11jbを覆う弾性覆い部12cと、第2外方鍔部11hの一部を覆う弾性覆い部12dを備えている。このように弾性部材12の固着面が大きく確保されていれば、芯金部材11に強固に固着することができる。第3円筒部11iの外周面11ibは、弾性円筒部12aを介して取付部30の内周面30cに嵌合している。また第3外方鍔部11jは、外輪部材32の軸方向外側の端面32bと、取付部30の段差部30baの端面30bbとの間に弾性鍔部12bを介して挟持される。鍔部11bは、鍔部11bの径方向内側の端部11bbが、内輪部材25の外周面25dの軸方向外側における角部に設けられた面取り部25cに対し径方向に対向する位置に形成され、シールリップ部22を覆うように設けられている。鍔部11bの径方向内側の端部11bbと面取り部25cとの間は、非接触でありながら近接して取り付けられる点は第1実施形態と同様である。
【0027】
シール部材20は、芯体21と、弾性体製のシールリップ部22とを備えている。芯体21は、円筒部11aに取り付けられる芯体円筒部21aと、芯体円筒部21aの他方端部21abから径方向内側に延びる芯体鍔部21bとを備えている。シールリップ部22の構成は第1実施形態と同様である。シール部材20の芯体21の芯体円筒部21aは、補強部材10の芯金部材11の円筒部11aに対し接触した状態で設けられるように円筒部11aの内面11ac側に沿う形状とされるとともに、芯体21の一方端部21aaが鍔部11bの内面11bc側に当接するように嵌合されている。すなわち、芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21aとは、隙間なく重なり合って金属材同士の2重構造となり金属嵌合されている。よって、芯金部材11と芯体21とが、強固に嵌合されるので、補強部材10とシール部材20とが装着後に容易に分離し難い。また図5に示す密封装置7の場合、補強部材10の円筒部10aは、取付部30の内周面30cよりも内輪部材25の外周面25dに近い位置に設けられる。そうすると、円筒部10aの径寸法を小さくでき、自ずとシール部材20の径寸法も小さく構成できるので、シール部材20をコンパクトに設計することができる。また鍔部11bの径寸法も小さく構成できるので、鍔部11bが容易に変形しにくく、鍔部11bの径方向内側の端部11bbを面取り部25cに対して近接して設けることができる。さらに上記構成によれば、シール部材20をコンパクトに設計できるので、円筒部10aに対して芯体円筒部21aを、金属嵌合もしくはねじ構造によって取り外し可能とした場合、取扱性がよく交換部品としてコスト抑制を図ることもできる。
【0028】
<変形例>
次に図6(a)及び図6(b)、図7(a)及び図7(b)を参照しながら、第2実施形態に係る密封装置7の変形例について説明する。上述の例と同じ箇所には同様の符号付し、その説明は省略し、以下では主に異なる点を説明する。
【0029】
図6(a)に示す例は、シール部材20の芯体21の構成が図5の例とは異なり、芯金部材11の沿うように形成された略U字形状部位を備え、芯体円筒部21aが2重円筒に折り曲げ形成されている。また補強部材10が弾性部材12を備えていない点でも異なる。芯金部材11及びシールリップ部22の基本構成は図5と同様である。芯体21は、芯体円筒部21a,21a及び芯体鍔部21bに加え、2重円筒に形成された芯体円筒部21a,21aのうち径方向外側に配された芯体円筒部21aの他方端部21abから径方向外側に延出して形成された芯体第3鍔部21eと、芯体第3鍔部21eの一方端部21eaから軸方向外側に延出して形成された芯体第2円筒部21fとを備えている。芯体21の略U字形状部位は、芯金部材11の略U字形状部位に沿う形状とされている。すなわち、芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21a,21a、芯金部材11の第1外方鍔部11fと芯体21の芯体第3鍔部21e、芯金部材11の第2円筒部11gと芯体21の芯体第2円筒部21fとが、隙間なく重なり合って金属材同士の2重構造となり金属嵌合されている。よって、芯金部材11と芯体21とが、強固に嵌合されるので、補強部材10とシール部材20とが装着後に容易に分離することがない。また鍔部11bの内面11bc側に2重円筒の芯体円筒部21a,21aが設けられているので、鍔部11bが容易に変形しにくく、鍔部11bの径方向内側の端部11bbを面取り部25cに対して近接して設けることができる。
【0030】
図6(b)に示す例は、芯金部材11の円筒部11aも折り曲げ形成され2重円筒に形成されている点で図6(a)の例と異なる。また芯金部材11の第3円筒部11iが斜めに傾斜し、取付部30に嵌合されていない点が図6(a)と異なる。補強部材10が弾性部材12を備えていない点は図6(a)と同様である。芯体21は、芯体円筒部21aと、芯体第3鍔部21eと、芯体第2円筒部21fとで略U字形状を構成する点は、図6(a)と同様であるが、芯体第3鍔部21eと、芯体第2円筒部21fとが、芯金部材11の円筒部11a,11aに嵌合されている点で異なる。よって芯体21の略U字形状部位は、芯金部材11の2重円筒に構成された円筒部11a,11aに沿う形状とされている。すなわち、芯金部材11の円筒部11a,11aと芯体21の芯体円筒部21a,21aとが嵌合状態とされ、さらに芯金部材11の円筒部11a,11aと芯体21の芯体第3鍔部21e及び芯体第2円筒部21fとが、隙間なく重なり合って金属材同士の層構造となり金属嵌合されている。以上によれば、芯金部材11と芯体21とが、強固に嵌合されるので、補強部材10とシール部材20とが装着後に容易に分離することがない。また鍔部11bの内面11bc側に2重円筒の芯体円筒部21a,21aが設けられているので、鍔部11bが容易に変形しにくく、鍔部11bの径方向内側の端部11bbを面取り部25cに対して近接して設けることができる。
【0031】
図7(a)に示す例は、図6(a)の変形例といえる例である。芯金部材11、芯体21の構成は図例に限定されず、図7(a)に示すように第2外方鍔部11hを長く形成し、その内面11hb側に略L字状に芯体21を配してもよい。芯体21は、芯体円筒部21a,21a、芯体鍔部21b及び芯体第3鍔部21eに加えて、芯体第3鍔部21eの一方端部21eaから軸方向外側に傾斜し延出して形成された芯体第2円筒部21fと、芯体第2円筒部21fの一方端部21faから軸方向内側に傾斜し延出して形成された延出部21gとを備えている。延出部21gの端部21gaは、芯金部材11の第3円筒部11iの内周面11icに当接しており、芯体第2円筒部21fの一方端部21fa(折り曲がり部位)は、芯金部材11の第2外方鍔部11hの内面側hbに当接して配されている。以上によれば、芯金部材11と芯体21とが、強固に嵌合されるので、補強部材10とシール部材20とが装着後に容易に分離することがない。
【0032】
図7(b)に示す例は、図5の変形例といえる例である。図5とは補強部材10が弾性部材12を備えていない点で異なる。また取付部30の内周面30cが外輪部材32の内周面32cと連なって配されていない点で異なる。よって図7(b)の例は、第2外方鍔部11hが図5の例よりも大きい径寸法に形成されている。以上の構成においても、図5の例と同様の効果を奏する。
【0033】
なお、前記実施形態に係る密封装置7の構成は、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば外輪部材32の一部を構成する取付部30への密封装置7の取付態様は、図例に限定されず、弾性部材12を備えていれば、芯金部材11の取付部30への嵌合力に加え、水や異物等の侵入を効果的に防止できる。一方、弾性部材12を備えていなくても、金属嵌合されるので、強固な嵌合を実現できる。また外側部材3、外輪部材32、取付部30、内輪部材25の構成も図例に限定されない。さらに図2以外の密封装置7においても、芯金部材11の円筒部11aと芯体21の芯体円筒部21aとは、金属嵌合に限定されず、ねじ構造として、取り外し可能に取り付けられるものとしてもよいし、円筒部11aと芯体円筒部21aとをカシメ嵌合もしくは溶接によって一体的に構成してもよい。また前記実施形態に係る密封装置7の構成は、産業機械用の密封装置として適用されるが、例えばメンテナンス時等に分解点検する圧延機等のロールネックシールに好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 軸受装置
2 内側部材
25 内輪部材
25d 外周面
25c 面取り部
3 外側部材
30 取付部
32 外輪部材
7 密封装置
10 補強部材
11 芯金部材
11a 円筒部
11b 鍔部
11bb 径方向内側の端部
11c 外方鍔部
12 弾性部材
12a 弾性円筒部
12b 弾性鍔部
20 シール部材
21 芯体
21a 芯体円筒部
21b 芯体鍔部
21c 芯体第2円筒部
21d 芯体第2鍔部
22 シールリップ部
22b 第1リップ
22c 第2リップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7