(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057192
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】軒樋支持具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
E04D13/072 501S
E04D13/072 501P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163750
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】593178409
【氏名又は名称】株式会社オーティス
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌司
(57)【要約】
【課題】樋支持具本体をスムーズにスライド移動可能な軒樋支持具を提供する。
【解決手段】軒樋支持具1は、ロックレバー40側に突出する膨出部32と、連続凹凸部23側に突出するバネ片33及び係止片36とを備えた座金部材30を有し、前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと樋支持具本体20とが前記膨出部を介して圧接状態となり、平板部35が複数の凸部23bに当接して前記バネ片が前記ロックレバーに押圧されて弾性変形し、前記係止片は先端部36aが前記連続凹凸部の凹部23a内に位置して該凹部に係止される一方、前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記樋支持具本体との圧接状態が解除されて前記バネ片が弾性復帰し、前記係止片は前記先端部が前記凹部外に変位して前記連続凹凸部との係止が解除される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物に固定される取付部と、該取付部に対してスライド移動可能に連結された、軒樋を支持する樋支持具本体と、該樋支持具本体に対して回動可能に連結されたロックレバーと、前記樋支持具本体と前記ロックレバーとの間に介在する座金部材とを備え、これらを重ねて貫通する固定具で連結し、前記樋支持具本体が前記取付部に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした軒樋支持具であって、
前記ロックレバーの回転操作により、前記取付部に対する前記樋支持具本体のスライド移動のロック状態/アンロック状態の切り替えが自在とされ、
前記樋支持具本体は、前後方向に延びる長孔と、該長孔に沿うように凹部と凸部とが交互に連続的に配された連続凹凸部とを備え、
前記座金部材は、前記ロックレバー側に突出する膨出部と、前記連続凹凸部側に突出するバネ片及び係止片とを有し、
前記バネ片は、前記アンロック状態において前記係止片よりも前記連続凹凸部側に突出する立設部と、該立設部の端部から延出し、複数の前記凸部にまたがる前後方向の寸法を有する平板部とを備えており、
前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記樋支持具本体とが前記膨出部を介して圧接状態となることで、前記平板部が複数の前記凸部に当接して前記バネ片が前記ロックレバーに押圧されて弾性変形し、前記係止片は先端部が前記連続凹凸部の前記凹部内に位置して該凹部に係止される一方、
前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記樋支持具本体との圧接状態が解除されて前記バネ片が弾性復帰し、前記係止片は前記先端部が前記凹部外に変位して前記連続凹凸部との係止が解除されることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項2】
請求項1において、
前記係止片は、前後方向に離隔して2以上設けられており、
前記バネ片は、前記係止片間に設けられていることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記平板部の先端部は、前記座金部材の本体側に曲がっていることを特徴とする軒樋支持具。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
前記座金部材は、金属製の板材によって形成され、
前記バネ片及び前記係止片は、前記板材を切り起こして形成されていることを特徴とする軒樋支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋を支持する軒樋支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築構造物に固定された取付部に対して前後方向にスライド移動可能に連結された樋支持具本体の前後位置を調整することで、軒先からの軒樋の出具合を調整できる軒樋支持具が知られている。
【0003】
下記特許文献1のものは、ロックレバーの操作でロック(樋支持具本体の固定)/アンロック(同固定解除)の切り替えができ、ロック状態では係止片が樋支持具本体に設けられた連続凹凸部の凹部に係止してスライド移動を規制し、アンロック状態では係止片による係止が解除されてスライド移動を許容する構造となっている。
【0004】
特にこの軒樋支持具では、樋支持具本体をスライド移動させる際に、樋支持具本体の連続凹凸部の係止片が引っ掛かることを回避するために、連続凹凸部の凸部を滑動できる滑り片部を設けて、スライド移動をしやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の滑り片部は湾曲して形成されているため、特許文献1・
図2のアンロック状態の図に示すように、連続凹凸部の凹部に滑り片部の一部が入り込んで引っ掛かり、樋支持具本体をスムーズにスライドできないおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、樋支持具本体をスムーズにスライド移動可能な軒樋支持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の軒樋支持具は、建築構造物に固定される取付部と、該取付部に対してスライド移動可能に連結された、軒樋を支持する樋支持具本体と、該樋支持具本体に対して回動可能に連結されたロックレバーと、前記樋支持具本体と前記ロックレバーとの間に介在する座金部材とを備え、これらを重ねて貫通する固定具で連結し、前記樋支持具本体が前記取付部に対して前後方向の所望の位置で固定されるようにした軒樋支持具であって、前記ロックレバーの回転操作により、前記取付部に対する前記樋支持具本体のスライド移動のロック状態/アンロック状態の切り替えが自在とされ、前記樋支持具本体は、前後方向に延びる長孔と、該長孔に沿うように凹部と凸部とが交互に連続的に配された連続凹凸部とを備え、前記座金部材は、前記ロックレバー側に突出する膨出部と、前記連続凹凸部側に突出するバネ片及び係止片とを有し、前記バネ片は、前記アンロック状態において前記係止片よりも前記連続凹凸部側に突出する立設部と、該立設部の端部から延出し、複数の前記凸部にまたがる前後方向の寸法を有する平板部とを備えており、前記ロックレバーのロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記樋支持具本体とが前記膨出部を介して圧接状態となることで、前記平板部が複数の前記凸部に当接して前記バネ片が前記ロックレバーに押圧されて弾性変形し、前記係止片は先端部が前記連続凹凸部の前記凹部内に位置して該凹部に係止される一方、前記ロックレバーのアンロック操作がされたときには、前記ロックレバーと前記樋支持具本体との圧接状態が解除されて前記バネ片が弾性復帰し、前記係止片は前記先端部が前記凹部外に変位して前記連続凹凸部との係止が解除されることを特徴とする。
【0009】
上記軒樋支持具において、前記係止片は、前後方向に離隔して2以上設けられており、前記バネ片は、前記係止片間に設けられてもよい。
【0010】
上記軒樋支持具において、前記平板部の先端部は、前記座金部材の本体側に曲がっていてもよい。
【0011】
上記軒樋支持具において、前記座金部材は、金属製の板材によって形成され、前記バネ片及び前記係止片は、前記板材を切り起こして形成されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の軒樋支持具は上述した構成とされるため、樋支持具本体をスムーズにスライド移動可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る軒樋支持具の模式的分解斜視図である。
【
図2】(a)は座金部材の模式的斜視図であり、(b)(c)は(a)のX-X’線矢視断面図に対応した同軒樋支持具の要部の概略的縦断面図であり(b)はアンロック状態、(c)はロック状態を示す図である。
【
図3】(a)(b)同軒樋支持具の要部の概略的底面図であり、(a)はアンロック状態、(b)はロック状態を示す図であり、(c)は(a)のY1-Y1’線矢視断面図、(d)は(b)のY2-Y2’線矢視断面図である。
【
図4】座金部材の変形例を示す模式的斜視図である。
【
図5】(a)は第1実施形態の変形例に係る軒樋支持具の模式的分解斜視図、(b)は
図2(c)に対応したアンロック状態における同軒樋支持具の要部の概略的断面図である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る軒樋支持具の模式的分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る軒樋支持具1について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、軒樋50が取り付けられる、建築構造物の軒先壁面側から見た方向を基準として、前後、上下、横などの方向を記述している。前方向は前後方向において軒先壁面から離れる方向、後方向はその反対方向である。また、一部の図では他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
【0015】
軒樋支持具1は、建築構造物に固定される取付部10と、取付部10に対してスライド移動可能に連結された、軒樋50を支持する樋支持具本体20とを備える。さらに軒樋支持具1は、樋支持具本体20に対して回動可能に連結されたロックレバー40と、樋支持具本体20とロックレバー40との間に介在する座金部材30とを備える。軒樋支持具1は、これら取付部10、樋支持具本体20、座金部材30、ロックレバー40を重ねて貫通する固定具であるリベットRで連結し、樋支持具本体20が取付部10に対して前後方向の所望の位置で固定されるように構成されている。
【0016】
軒樋支持具1は、ロックレバー40の回転操作により、取付部10に対する樋支持具本体20のスライド移動のロック状態/アンロック状態の切り替えが自在とされる。樋支持具本体20は、前後方向に延びる長孔22と、長孔22に沿うように凹部23aと凸部23bとが交互に連続的に配された連続凹凸部23とを備える。座金部材30は、ロックレバー40側に突出する膨出部32と、連続凹凸部23側に突出するバネ片33及び係止片36とを有する。バネ片33は、アンロック状態において係止片36よりも連続凹凸部23側に突出する立設部34と、立設部34の端部から延出し、複数の凸部23bにまたがる前後方向の寸法を有する平板部35とを備えている。
【0017】
ロックレバー40のロック操作がされたときには、ロックレバー40と樋支持具本体20とが膨出部32を介して圧接状態となる。これにより、平板部35が複数の凸部23bに当接してバネ片33がロックレバー40に押圧されて弾性変形し、係止片36は先端部36aが連続凹凸部23の凹部23a内に位置して凹部23aに係止される。一方、ロックレバー40のアンロック操作がされたときには、ロックレバー40と樋支持具本体20との圧接状態が解除されてバネ片33が弾性復帰し、係止片36は先端部36aが凹部23a外に変位して連続凹凸部23との係止が解除される。
【0018】
次に、第1実施形態に係る軒樋支持具1の詳細について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は軒樋支持具1の模式的分解斜視図である。
図2(a)は座金部材30の模式的斜視図であり、(b)(c)は(a)のX-X’線矢視断面図に対応した軒樋支持具1の要部の概略的縦断面図であり、(b)はアンロック状態、(c)はロック状態を示す図である。
図3(a)(b)は軒樋支持具1の要部の概略的底面図であり、(b)はアンロック状態、(c)はロック状態を示す図である。また、
図3(c)は
図3(a)のY1-Y1’線矢視断面図、
図3(d)は
図3(b)のY2-Y2’線矢視断面図である。
【0019】
図1等に示す軒樋支持具1では、ロックレバー40の回転操作によって、樋支持具本体20のスライド移動を規制するロック状態と、樋支持具本体20のスライド移動が可能なアンロック状態とを切り替える構成となっている。詳しくは後述するが、ロック状態では、ロックレバー40の略全体が樋支持具本体20と上下方向に重なった状態、すなわち樋支持具本体20の前後方向(長手方向)とロックレバー40の長手方向とが合致した状態となっている。また、アンロック状態では、樋支持具本体20の前後方向とロックレバー40の長手方向とが略直交した状態となっている。
【0020】
次に、軒樋支持具1を構成する各部材について説明する。
図1に示すように、取付部10は、建築構造物の軒先壁面等に固定される部材であり、ビス等で軒先壁面等に固定される平板状の取付基板11と、その上端中央から前方に向けて延びた長尺状の足部12とを備える。足部12の前方部には下方に段落ち形成された連結部13が形成されており、連結部13には固定具であるリベットRが挿通される挿通孔14が上下方向に貫通して形成されている。この挿通孔14の上側には、リベットRの頭部R1が配される。
【0021】
図1に示すように、樋支持具本体20は、取付部10の連結部13の下方に配される部材であり、取付部10に対して前後方向にスライド移動自在に連結される部材である。樋支持具本体20は、前後方向に延びる長尺状の本体部21と、本体部21の前側に配されて軒樋50の前耳51を係止する前耳係止部24と、本体部21の後側に配されて軒樋50の後耳52を係止する後耳係止部25とを備える。さらに本体部21の前後方向の略中央部には、前後方向に延びる長孔22と、長孔22の横方向の両側に隣接するとともに、長孔22に沿って前後方向に延びた連続凹凸部23とが形成されている。連続凹凸部23は、長孔22に沿うように凹部23aと凸部23bとが交互に連続的に配されている。また、樋支持具本体20の本体部21の下面の横方向の両端部には、後述する座金部材30の壁部38,38が入り込む溝部26,26が形成されている(
図3(c)(d)参照)。
【0022】
図1に示すように、座金部材30は、樋支持具本体20の本体部21の下方に配される部材である。座金部材30は、金属製の板材によって形成されており、バネ片33及び係止片36は、金属製の板材を切り起こして形成されている。
【0023】
図2(a)に示す座金部材30は、本体部31、膨出部32、バネ片33、係止片36、挿通孔37及び壁部38を備える。本体部31は、面部が上下方向に向いた平板状に形成されている。壁部38は、本体部31の横方向の両側の端部からそれぞれ上方向に延び相対するように略平行に形成されている。膨出部32は、本体部31から下方に突出して形成されており、前後方向に離隔して一対設けられている。膨出部32は、横方向に長く、前後方向の縦断面が
図2(b)(c)に示すように略半円状とされ、その中央には下方向に突出した半球小突起状のへそ部32aを有している。
【0024】
図2(a)に示すように、前後方向に離隔して設けられた一対の膨出部32,32の間には、挿通孔37、バネ片33及び係止片36が設けられている。挿通孔37は、本体部31の略中央に位置しており、上下方向に貫通した丸孔とされてリベットRが挿通される。
【0025】
挿通孔37と横方向の両側に離隔する位置には、それぞれバネ片33が形成されている。バネ片33は、前後方向に離隔する係止片36,36間に設けられており、本体部31から切り起こされて前後方向に延びた長尺状に形成されている。バネ片33は、上方向(連続凹凸部23側)に突出するとともに後方向に傾斜した立設部34と、立設部34の上端部から後方向に延出し、複数の凸部23bにまたがる前後方向の寸法を有する平板部35とを備える。平板部35は、本体部31と略平行に形成されており、その先端部(後方向の端部)35aは、座金部材30の本体部31側に曲がっている。本実施形態における平板部35の先端部35aは、平板部35の本体側から折曲されて後方向に下り傾斜して形成されている。
【0026】
そして、係止片36は、各バネ片33,33の前後方向に離隔した位置にそれぞれ形成され、本体部31上に計4つ設けられている。係止片36は、上方向に突出するように本体部31から切り起こされて、平板状に形成されている。係止片36の突出寸法は、本体部31の上面から、弾性復帰状態(アンロック状態)におけるバネ片33の立設部34の上面までの寸法よりも小さい。係止片36は、連続凹凸部23の凹部23a内に入り込むことが可能な大きさに形成されている。
【0027】
ロックレバー40は、逆略U字折曲状の板状体とされ、長尺状の基板部42と、基板部42の短手方向の端部より下方に延び相対するように略平行に配されたレバー部41とを備えている。基板部42の略中央には、リベットRが挿通される丸穴状の挿通孔43が上下方向に貫通して設けられている。この挿通孔43の下側には、リベットRのカシメ部R2が配される。
【0028】
また、基板部42の長手方向に離隔して、基板部42の短手方向に延びて上下方向に貫通した貫通孔である一対のロック凹部44が形成されている。なお、ロック凹部44は、貫通孔ではなく、連続凹凸部23側(上側)の面が下方に凹んだ窪みであってもよい。
【0029】
取付部10の挿通孔14、樋支持具本体20の長孔22、座金部材30の挿通孔37及びロックレバー40の挿通孔43を上下方向に重ねてリベットRが挿通されることで、取付部10、樋支持具本体20、座金部材30及びロックレバー40が連結される。これにより、ロックレバー40は、リベットRの軸を中心として回動可能となる。
【0030】
本実施形態では、ロックレバー40はリベットRの軸を中心として横回転が可能とされている。
図2(b)、
図3(a)に示すように、ロックレバー40の基板部42が座金部材30の膨出部32と当接していない状態では、樋支持具本体20は取付部10に対して前後方向のスライド移動可能とされている(アンロック状態)。アンロック状態で取付部10に対する樋支持具本体20の前後方向の位置を調整することによって、軒樋50を支持した際の軒樋50の出具合を調整することができる。一方、
図2(c)、
図3(b)に示すように、ロックレバー40の基板部42が膨出部32と当接してロック凹部44と膨出部32とが上下方向に重なっている状態では、樋支持具本体20のスライド移動が規制されている(ロック状態)。
【0031】
次に、樋支持具本体20のスライド移動のロック状態/アンロック状態について詳しく説明する。ロックレバー40を操作してロック操作(
図2(b)、
図3(a)の状態から
図2(c)、
図3(b)の状態に移行させる操作)がされると、膨出部32が基板部42に乗り上がり、ロック凹部44が膨出部32に対し底面視で十字状に重なる。
図2(c)、
図3(b)の状態に移行させた場合、ロックレバー40と樋支持具本体20とが膨出部32を介して圧接状態となる。圧接状態となると、ロックレバー40により座金部材30は、樋支持具本体20側に押圧されて樋支持具本体20側に変位する。この変位により平板部35は連続凹凸部23の複数の凸部23bに当接し、バネ片33はロックレバー40に押圧されて弾性変形する。そして、係止片36は、連続凹凸部23の凹部23a内に入り込んで凹部23aに係止される。これにより、樋支持具本体20の取付部10に対する前後方向のスライド移動が規制される。
【0032】
また、座金部材30の壁部38は、樋支持具本体20の溝部26内に入り込んで配されている。
図3(c)(d)に示すように、アンロック状態/ロック状態のいずれの状態であっても溝部26に壁部38の少なくとも先端部が入り込んでいることによって、座金部材30の横方向の回動が規制される。
【0033】
なお、ロックレバー40を回転操作してロック凹部44の近傍部に膨出部32が乗り上げ、膨出部32の中央のへそ部32aがロック凹部44の中央位置に相対移動した(へそ部32aが基板部42の圧接より外れた)際には、へそ部32aとロック凹部44との嵌合(へそ部32aと基板部42との圧接解除)により、手指に「カチッ」とした感触が得られる。その結果、作業者は適切な位置で操作を止めることができる。
【0034】
一方、ロックレバー40を操作して
図2(c)、
図3(b)の状態から
図2(b)、
図3(a)の状態に移行させると、膨出部32は基板部42への乗り上げによる圧接状態が解除されてロックレバー40による座金部材30への押圧が解除され、バネ片33が弾性復帰する。バネ片33が弾性復帰することにより座金部材30の本体部31がロックレバー40側に押圧され、係止片36は凹部23aの外側(下方、ロックレバー40側)に変位する。バネ片33の立設部34は、
図2(b)の一点鎖線に示すように、アンロック状態において係止片36よりも連続凹凸部23側に突出しているため、係止片36は連続凹凸部23よりも下側に変位する。これにより、樋支持具本体20を前後方向にスライド移動させる際に、係止片36は連続凹凸部23の凹部23aや凸部23bに係止しなくなり、引っ掛かることが抑制される。
【0035】
また、バネ片33の平板部35は、前後方向に延びて本体部31と略平行な平板状のものであり、その前後方向の寸法は、連続凹凸部23の複数の凸部23bにまたがる寸法とされる。本実施形態では、平板部35はアンロック状態においても連続凹凸部23の凸部23bに当接する構成となっている。そのため、樋支持具本体20のスライド移動中であっても平板部35は凸部23bに当接して、平板部35が連続凹凸部23の凹部23a内に入り込んで引っ掛かることが抑制される。
【0036】
なお、平板部35が、アンロック状態において連続凹凸部23の下側に離隔して凸部23bに当接しない構成であってもよい。そのような構成であっても、樋支持具本体20のスライド移動中に座金部材30が上側にブレた際には、平板部35は凸部23bに当接するので、平板部35が連続凹凸部23の凹部23a内に入り込んで引っ掛かることが抑制される。
【0037】
本実施形態の軒樋支持具1によれば、平板部35が複数の凸部23bにまたがる前後方向の寸法を有するとともに、アンロック状態において立設部34が係止片36よりも連続凹凸部23側に突出する構成となっている。これにより、樋支持具本体20を前後方向にスライド移動させる際に係止片36や平板部35が連続凹凸部23の凹部23aや凸部23bに引っ掛かることが抑制され、樋支持具本体20をスムーズにスライド移動可能となる。平板部35は、スライド移動中においても常時、少なくとも2つの凸部23bにまたがる長さ(凹部23a内に入り込まない長さ)とすることが望ましい。
【0038】
また、平板部35の先端部35aは、座金部材30の本体部31側に曲がっているため、樋支持具本体20をスライド移動させる際にこの先端部35aが連続凹凸部23に引っ掛かることが抑制される。この先端部35aは、平板部35の本体部から折曲状に形成されているが、湾曲して形成されてもよい。
【0039】
また、
図1~
図3のバネ片33は、前後方向に延びた長尺状に形成されているが、
図4に示すように横方向に延びた長尺状に形成されてもよい。その場合、平板部35の短手方向の寸法である前後方向の寸法が連続凹凸部23の少なくとも2つの凸部23bにまたがる寸法で形成されていれば、平板部35が凹部23aに入り込まずに凸部23bに引っ掛かることが抑制される。また、バネ片33は前後方向に2つ並べてあるので、より安定的に、引っ掛かりのないスライド移動が可能となる。また、
図1~
図3の座金部材30では、係止片36が4つ設けられているがこの数に限定されることはなく、例えば
図4に示すように前後方向に離隔して2つの係止片36が設けられてもよい。
【0040】
<第1実施形態の変形例>
次に
図1~
図3の第1実施形態の変形例について、
図5(a)(b)及び
図6を参照しながら説明する。なお、上述した
図1~
図3の軒樋支持具1と共通する部材の構成及び効果についてはその説明を省略する。まず、
図5(a)(b)に示す軒樋支持具1Aについて説明する。
図5(a)は軒樋支持具1Aの模式的分解斜視図、
図5(b)は
図4(b)に対応する軒樋支持具1Aのアンロック状態を示す要部断面図である。
【0041】
上述した
図1~
図3に示す第1実施形態の軒樋支持具1では、上から取付部10の挿通孔14、樋支持具本体20の長孔22、座金部材30の挿通孔37、ロックレバー40の挿通孔43の順に重ねてリベットRにより連結されている。一方、
図5(a)(b)に示す軒樋支持具1Aでは、上からロックレバー40の挿通孔43、座金部材30の挿通孔37、樋支持具本体20の長孔22、取付部10の挿通孔14の順、すなわち第1実施形態の軒樋支持具1とは逆の順番で配されている。
【0042】
図5(a)に示す樋支持具本体20は、第1実施形態とは主に連結部13の構成が異なっており、連結部13は、足部12の前端部における横方向の一方側から段落ちして横方向の一方側に延出して形成されている。連結部13には、挿通孔14が上下方向に貫通して形成されている。足部12及び連結部13は、連結部13の上側に配された樋支持具本体20の前後方向のスライド移動及びロックレバー40の横方向の回転操作に干渉しない位置に形成されている。
【0043】
図5(a)に示す座金部材30は、第1実施形態のものとは異なり壁部38を備えない構成となっており、それ以外の構成は第1実施形態のものと略同一である。座金部材30は、第1実施形態とは上下逆に裏返して配されており、バネ片33、係止片36が下側となるように配されている。ロックレバー40も同様に第1実施形態とは上下逆に裏返して配されており、基板部42がレバー部41よりも下側に配されている。
【0044】
樋支持具本体20の上方に、バネ片33及び係止片36を下方に向けた座金部材30が配されている。そのため、外力が作用しない場合には、重力によりバネ片33の平板部35は係止片36よりも下方に突出して、下方に位置する連続凹凸部23の凸部23bに当接する。したがって、
図5(b)に示すように、アンロック状態のときにはバネ片33によって、係止片36は凹部23aに入り込むことなく凸部23bよりも上方の位置に維持される。これにより、係止片36が連続凹凸部23に引っ掛かることなく、樋支持具本体20を前後方向にスムーズにスライド移動させることが可能となる。このように係止片36を樋支持具本体20の上方に配したものでは、バネ片33は特に有効である。
【0045】
次に
図6に示す軒樋支持具1Bについて説明する。
図6は、軒樋支持具1Bの模式的分解斜視図である。
上述した
図1~
図3に示す軒樋支持具1では、上から取付部10の連結部13、樋支持具本体20の本体部21、座金部材30、ロックレバー40の順に重ねてリベットRにより連結されているが、
図6に示すようにこれらを横方向に重ねて固定具により連結されてもよい。
図6の軒樋支持具1Bは、簡単に説明すると上述した
図1~
図3に示す第1実施形態の取付部10の連結部13、樋支持具本体20の本体部21、座金部材30及びロックレバー40の「上下方向」と「横方向」とを入れ替えて読み替えた構成となっている。また、ロックレバー40は縦方向に回動される。
【0046】
図6の軒樋支持具1Bの構成について詳しく説明する。
図6の取付部10は、取付基板11と足部12の構成は、
図1のものと略同じ構成である。足部12の前方部に形成された連結部13の構成が
図1のものと異なっており、連結部13は面部が横方向を向くように形成されている。そのため、挿通孔14は横方向に貫通して形成されている。
【0047】
図6の樋支持具本体20は、前耳係止部24と後耳係止部25の構成は、
図1のものと略同じ構成である。前耳係止部24と後耳係止部25との間に設けられている本体部21の構成が
図1のものと異なっており、本体部21は、面部が横方向を向くように形成されている。そして、本体部21の略中央に設けられた長孔22は、前後方向に延びるとともに横方向に貫通して形成されている。また、連続凹凸部23は、長孔22の上下方向に隣接し、横方向に凹む凹部23aと横方向に突出する凸部23bとが交互に連続して形成されている。
【0048】
座金部材30及びロックレバー40の構成は、
図1のものと略同一であり、横方向に貫通する取付部10の挿通孔14及び樋支持具本体20の長孔22に合わせて、座金部材30の挿通孔37とロックレバー40の挿通孔43とが横方向を向くように配されている。そして、取付部10の挿通孔14、樋支持具本体20の長孔22、座金部材30の挿通孔37及びロックレバー40の挿通孔43が横方向に重なった状態でリベットRが挿通されて、取付部10、樋支持具本体20、座金部材30及びロックレバー40が連結される。これにより、ロックレバー40は、リベットRの軸を中心として回動可能となる。
図6のロックレバー40は、リベットRの軸を中心として縦回転が可能とされる。
【0049】
図6の座金部材30は、
図1のものと略同一としているが、壁部38は、座金部材30と取付部10等とが連結された状態において、連結部13の上下方向の端面の少なくとも一方に当接する構成が望ましい。そのようにすれば、壁部38,38間に配された樋支持具本体20は、リベットRを軸の中心にして縦回転することを抑制でき、安定した状態で軒樋50を支持することができる。
【0050】
図6の軒樋支持具1Bでは、座金部材30のバネ片33及び係止片36は、横方向の一方側に突出した構成となっている。このような構成であっても、アンロック状態においては係止片36よりも連続凹凸部23側(横方向の一方側)に突出するバネ片33によって、係止片36は連続凹凸部23の凹部23a外に変位して連続凹凸部23に係止しない構成となる。また、バネ片33の平板部(不図示)は、複数の凸部23bにまたがる寸法の前後方向の寸法で形成されている。これにより、樋支持具本体20の前後方向にスライド移動させた際に、バネ片33の平板部(不図示)は、常に2以上の凸部23bに当接し、凹部23a内に入り込んで引っ掛かることが抑制される。
【0051】
上述した軒樋支持具1,1A,1Bの構成は、図示したものに限定されることはない。例えば、平板部35の先端部35aは、曲げられることなく座金部材30の本体部31と略平行に延びて形成されてもよい。また、バネ片33、係止片36は、本体部31を切り起こして形成されることに限定されることはなく、本体部31とは別に形成されたものを溶接等で本体部31に固着されて設けられてもよい。また、座金部材30は、壁部38が設けられていなくてもよい。また、固定具はリベットRに限定されることはなく、例えばネジとナットとの組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B 軒樋支持具
10 取付部
20 樋支持具本体
22 長孔
23 連続凹凸部
23a 凹部
23b 凸部
30 座金部材
32 膨出部
33 バネ片
34 立設部
35 平板部
35a 先端部
36 係止片
36a 先端部
40 ロックレバー
50 軒樋
51 前耳
52 後耳
R リベット(固定具)