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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057196
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】薪生産用木材乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/00 20060101AFI20240417BHJP
   F26B 23/00 20060101ALI20240417BHJP
   F26B 9/06 20060101ALI20240417BHJP
   F26B 3/28 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
F26B21/00 B
F26B23/00 B
F26B9/06 H
F26B3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163760
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】513042540
【氏名又は名称】岸本 励
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 励
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AB06
3L113AC02
3L113AC44
3L113AC46
3L113AC49
3L113AC72
3L113BA05
3L113CB01
3L113DA02
3L113DA06
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】 設置場所の最小化を図り、設置効率及び生産効率の向上を図るとともに、小型コンパクト化及びシンプル化を実現する。木材を十分に乾燥させて薪の品質向上を図るとともに、温室効果ガスの削減及び自然環境保護に寄与する。
【解決手段】 複数の木材Wo…を含む木材群Gwを収容するとともに、少なくとも底面部位4d及び上面部位4uの通気性を確保した筒状又は袋状の保温用シート部4と、通気性を有し、かつ木材群Gwを収容した保温用シート部4の底面部位4dを載置する載置面部2uを設けるとともに、側面2pに通気空間Spを有する所定の高さの基台部2と、載置面部2uに載置した保温用シート部4に収容した木材群Gwの上面部位Gwuを所定の間隔Fsを介して覆う天板部3b,及び当該天板部3bの中央又はその近傍に設けて上方へ突出させた煙突部3sを有する煙突ユニット部3とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薪を生産する木材を乾燥する薪生産用木材乾燥装置において、所定の大きさに切断した複数の木材を含む木材群を収容するとともに、少なくとも底面部位及び上面部位の通気性を確保した筒状又は袋状の保温用シート部と、通気性を有し、かつ前記木材群を収容した前記保温用シート部の前記底面部位を載置する載置面部を設けるとともに、側面に通気空間を有する所定の高さの基台部と、前記基台部に載置した前記保温用シート部に収容した木材群の上面部位を所定の間隔を介して覆う天板部,及び当該天板部の中央又はその近傍に設けて上方へ突出させた煙突部を有する煙突ユニット部とを備えてなることを特徴とする薪生産用木材乾燥装置。
【請求項2】
前記木材群は、前記保温用シート部に対して、一端面が下端となる起立した状態で収容した複数の木材,又はランダムな状態で収容した複数の木材を含むことを特徴とする請求項1記載の薪生産用木材乾燥装置。
【請求項3】
前記天板部は、前記煙突部から外側下がりに傾斜した傾斜面を有することを特徴とする請求項1記載の薪生産用木材乾燥装置。
【請求項4】
前記天板部は、前記木材群の側面部位の上部一部を覆う側面カバー部を有することを特徴とする請求項1又は3記載の薪生産用木材乾燥装置。
【請求項5】
前記煙突部は、上端に少なくとも雨の侵入を防止する上端カバー部を有することを特徴とする請求項1記載の薪生産用木材乾燥装置。
【請求項6】
前記保温用シート部は、フレキシブルコンテナバッグを用いることを特徴とする請求項1記載の薪生産用木材乾燥装置。
【請求項7】
前記保温用シート部は、全体を熱吸収性の高い熱吸収色により着色することを特徴とする請求項1又は6記載の薪生産用木材乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薪を生産する際に用いることにより木材を乾燥する薪生産用木材乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、薪ストーブやアウトドアのキャンプ等では、木材を乾燥させた薪が利用されるため、薪の生産に際しては、木材乾燥装置により木材を乾燥させる必要がある。一般家庭等で個人的に使用する薪の場合には、そのまま住宅の軒下等に放置して自然乾燥するケースも多いが、ある程度の数量を効率的に確保するには、できるだけ乾燥期間を短くし、かつ良質な薪が得られることも要請される。
【0003】
従来、このような要請に応えることを目的とした木材乾燥装置も提案されており、この種の木材乾燥装置としては、特許文献1に記載される空気集熱方式による木材乾燥装置及び特許文献2に記載される太陽熱パッシブ利用木材乾燥装置が知られている。
【0004】
特許文献1の空気集熱方式による木材乾燥装置は、透明カバーで外周面を被覆した風洞内に、太陽光を受光するポーラスなシート状集熱材を傾斜設置してなる空気集熱式コレクターにより得た温風を木材乾燥用空気として循環使用する木材乾燥装置であって、木材乾燥室を2重天井とし、外側天井に前記集熱式コレクター用空気循環ファンを設けるとともに、該循環ファンにて2重天井内に送風された乾燥用空気を乾燥室と2重天井内を循環させる乾燥用空気循環ファンを内側天井に設け、集熱式コレクター用空気楯環系統と乾燥用仝気循環系統をそれぞれ別系統としたものである。
【0005】
また、特許文献2の太陽熱パッシブ利用木材乾燥装置は、太陽熱のパッシブ利用による低温乾燥にて、農業用ビニールハウスを改良して行う太陽熱パッシブ利用木材乾燥装置の提供を目的としたものであり、具体的には、農業用ビニールハウス枠を改良した乾燥室は、北側を頂点として南側に緩やかに傾斜した屋根構造を持ち、北側壁を除き、屋根と3側壁の東側壁、酉側壁、南側壁は2重の透明フイルムで被われている。屋根と南側壁は仕切フイルムで東西に2分され、さらにそれらが透明フイルムで南北方向に並列に6つの空気通路に仕切られており、2重の透明フイルム間に断熱材を介して空気層を形成して、その内側に集熱空間を空けてもうl枚の透明フイルムで被い、該透明フイルムの上に炭素繊維シートを浮かせて載せ、半透過性にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63-70048号公報
【特許文献2】特開2007-112009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来の木材乾燥装置は、次のような問題点があった。
【0008】
第一に、乾燥室を設置し、この乾燥室に木材を収容するとともに、他の場所に別途設置した集熱手段をダクトを通して接続し、乾燥室と集熱手段間に温風を循環させることにより乾燥処理を行うため、設備が大掛かりとなり、設備全体の大規模化(大型化)を招くとともに、送風ファンや構造資材などを多用する必要があるなど、全体のコストアップ(イニシャルコスト)を招く。
【0009】
第二に、乾燥期間が不十分の場合、湿気が残存してしまう。湿気が残存した場合、燃焼時に発生する熱量が湿気(水分)を蒸発させるエネルギーに使用されるため、燃焼効率が極端に低下し、結果的に、必要な暖かさを確保しにくいのみならず、多量の煙や煤が発生しやすくなる。しかも、カビや菌類の繁殖により薪(商品)としての品質劣化を招きやすい。
【0010】
第三に、薪(木材)が紫外線を含む日光に晒された場合、色褪せ(変色)が発生し、薪の外観性(外観品質)の低下を来たしやすい。薪は、使用前に薪ストーブの近くとなる室内に保存する場合もあるため、虫の混入が無視できない。特に、虫の混入は、乾燥期間における混入や伐採前の木の中に居る卵や幼虫など、薪の生産に際しては、虫が混入しやすい課題がある。
【0011】
第四に、複数の送風用ファンにより送風を常時循環させる必要がある。したがって、電力消費を排除して、温室効果ガスの削減を図るとともに、自然環境の保護を図る観点からはマイナス要因になる。しかも、ランニングコストが増加し、経済性にも劣るとともに、故障等が生じやすいなど、メンテナンス性にも劣る。
【0012】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した薪生産用木材乾燥装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した課題を解決するため、薪W…を生産する木材Wo…を乾燥する薪生産用木材乾燥装置1を構成する際して、所定の大きさに切断した複数の木材Wo…を含む木材群Gwを収容するとともに、少なくとも底面部位4d及び上面部位4uの通気性を確保した筒状又は袋状の保温用シート部4と、通気性を有し、かつ木材群Gwを収容した保温用シート部4の底面部位4dを載置する載置面部2uを設けるとともに、側面2pに通気空間Spを有する所定の高さの基台部2と、載置面部2uに載置した保温用シート部4に収容した木材群Gwの上面部位Gwuを所定の間隔Fsを介して覆う天板部3b,及び当該天板部3bの中央又はその近傍に設けて上方へ突出させた煙突部3sを有する煙突ユニット部3とを備えることを特徴とする。
【0014】
この場合、発明の好適な態様により、木材群Gwには、保温用シート部4に対して、一端面Wos…が下端となる起立した状態で収容した複数の木材Wo…,又はランダムな状態で収容した複数の木材Wo…を含ませることができる。また、天板部3bは、煙突部3sから外側下がりに傾斜した傾斜面3uiを設けることができるとともに、この天板部3bには、木材群Gwの側面部位Gwpの上部一部Gwpuを覆う側面カバー部11を設けることができる。一方、煙突部3sには、上端に少なくとも雨の侵入を防止する上端カバー部12を設けることができる。さらに、保温用シート部4には、フレキシブルコンテナバッグ13を用いることができる。なお、この保温用シート部4は、全体を熱吸収性の高い熱吸収色4cにより着色することが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このような構成を有する本発明に係る薪生産用木材乾燥装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0016】
(1) 乾燥させる木材群Gwの全幅とほぼ同じ幅となる必要最小限のスペースがあれば設置可能になるなど、設置場所の最小化を図ることができるため、設置効率の向上、更には生産効率の向上を図ることができる。しかも、乾燥装置1の小型コンパクト化及びシンプル化を実現できるとともに、送風ファンが不要となり、構造資材も必要最小限で足りるため、全体の大幅なコストダウンを実現できる。
【0017】
(2) 木材Wo…を十分に乾燥させることができるため、湿気の残存による悪影響、具体的には、燃焼効率の低下による十分な暖かさを確保できない弊害、燃焼時に多量の煙や煤が発生しやすい弊害などを解消し、安定した高品質の薪W…を効率的に生産できる。加えて、カビや菌類の繁殖による品質低下を解消し、薪W…を室内に保存した場合であっても室内環境を低下させる不具合を回避できる。
【0018】
(3) 対流作用の利用によりファン等の送風機器を使用しないため、電力消費が伴わない。したがって、温室効果ガスの削減及び自然環境保護に貢献できるとともに、電線設備がない農地や僻地の空地等を有効利用して効果的に実施できる。しかも、ランニングコストもほとんど不要となるため、経済性に優れるとともに、故障等を回避できるため、メンテナンス性にも優れた木材乾燥装置1として提供できる。
【0019】
(4) 好適な態様により、木材群Gwに、保温用シート部4に対して、一端面Wos…が下端となる起立した状態で収容した複数の木材Wo…,又はランダムな状態で収容した複数の木材Wo…を含ませれば、木材Wo…に対する既存の生産設備(カッティング工程等)に臨機応変に対応させることができるなど、汎用性の高い乾燥装置1として提供することができる。
【0020】
(5) 好適な態様により、天板部3bに、煙突部3sから外側下がりに傾斜した傾斜面3uiを設ければ、下側から上側へ流れる対流作用をより円滑化できるため、空気の無用な滞留を回避し、乾燥効率をより高めることができる。
【0021】
(6) 好適な態様により、天板部3bに、木材群Gwの側面部位Gwpの上部一部Gwpuを覆う側面カバー部11を設ければ、木材群Gwから上昇する湿気が含まれる空気をより確実に回収できるため、より円滑で効率的な対流作用を確保することができる。
【0022】
(7) 好適な態様により、煙突部3sの上端に少なくとも雨の侵入を防止する上端カバー部12を設ければ、煙突部3sに対する雨や風の無用な侵入を防止できるとともに、外部からのゴミ等の無用な侵入を防止することができる。特に、キャップ等により煙突部3sの通気空間を閉塞することが可能になるため、侵入した虫や木材内の幼虫等を含む木材群Gwに虫類が存在する場合であっても、一時的に煙突部3sの通気性を遮断することにより、保温用シート部4の内部をより高温化させ、薬剤を用いることなく混入した虫等の殺虫や駆除を行うことができる。
【0023】
(8) 好適な態様により、保温用シート部4に、フレキシブルコンテナバッグ13を用いれば、いわば汎用的な市販品を転用(活用)できるため、更なるコスト削減を実現することができる。特に、フレキシブルコンテナバッグ13のような耐候性及び遮光性に優れた素材を用いることにより、日光や風雨による薪W…の色褪せ,変色,着色等を防止し、薪W…の外観性向上及び商品性向上に寄与できる。
【0024】
(9) 好適な態様により、保温用シート部4の全体を、熱吸収性の高い熱吸収色4cにより着色すれば、着色のみの容易な手法により保温効果を高めることができるため、乾燥能力の向上を容易かつ低コストに実現できるとともに、木材Wo…の変色等の品質低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の好適実施形態に係る薪生産用木材乾燥装置の使用時における正面断面構成図、
図2】同木材乾燥装置の使用時における平面図、
図3】同木材乾燥装置の使用時における正面外観図、
図4】同木材乾燥装置に備える基台部の一部断面側面図、
図5】同木材乾燥装置の作用説明図、
図6】同木材乾燥装置の使用手順を説明するためのフローチャート、
図7】同木材乾燥装置の使用手順を説明するための工程図、
図8】同木材乾燥装置の使用手順を説明するための他の工程図、
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る薪生産用木材乾燥装置1の構成について、図1図4及び図8を参照して説明する。
【0028】
この木材乾燥装置1は、図1に示すように、大別して、基台部2,煙突ユニット部3及び保温用シート部4を備える。
【0029】
基台部2は、通気性を有し、かつ所定の大きさに切断した複数の木材Wo…を含む木材群Gwを収容した保温用シート部4の底面部位4dを載置する載置面部2uを設けるとともに、側面2pに通気空間Spを有する所定の高さに構成する。
【0030】
例示の基台部2は、図1に示すように、断面円形となる金属製の棒材21r…を使用し、図4に示すように、両端を溶接等により結合して矩形枠状のフレームメンバ21を構成するとともに、このフレームメンバ21…を複数本(例示は11本)用意する。そして、図1及び図2に示すように、各フレームメンバ21…を一定間隔置きに配置するとともに、図4に示すように、各フレームメンバ21…の内側を6枚の連結プレート22…により溶接等により連結する。この場合、各フレームメンバ21…の上側に位置する長辺を構成する各上フレーム部21u…を、所定間隔に配して交差させた3枚の連結プレート22…により連結するとともに、各フレームメンバ21…の下側に位置する長辺を構成する各下フレーム部21d…を、所定間隔に配して交差させた3枚の連結プレート22…により連結する。
【0031】
これにより、図1に示すように、各上フレーム部21u…の上端部位により載置面部2uが構成され、この載置面部2uに、薪W…の大きさに切断した複数の木材Wo…、即ち、木材群Gwを収容した後述する保温用シート部4を載置することができる。また、各フレームメンバ21…の間隔により生じる隙間により通気性が確保される。さらに、図4に示すように、基台部2の側面2pに矩形枠状の通気空間Spが形成されるとともに、各フレームメンバ21…の短辺を構成する左右フレーム部21p,21qにより所定の高さを有する基台部2が構成される。
【0032】
図1に示す基台部2の構成は、一例であり、載置面部2uをプレート材或いはネット材等により構成してもよく、基本的には、通気性を有し、かつ木材群Gwを収容した保温用シート部4の底面部位4dを載置する載置面部2uを設けるとともに、側面2pに通気空間Spを有する所定の高さの基台部2を構成すればよい。
【0033】
煙突ユニット部3は、図1及び図8に示すように、載置面部2uに載置した木材Wo…全体を含む木材群Gwの上面部位Gwuを所定の間隔Fsを介して覆う天板部3b,及び当該天板部3bの中央(又はその近傍)に設けて上方へ突出させた煙突部3sを備える。この場合、天板部3bは、全体を円盤状に形成するとともに、煙突部3sから外側下がりに傾斜した傾斜面3uiを有する。このような傾斜面3uiを形成すれば、下側から上側へ流れる対流作用をより円滑化できるため、空気の無用な滞留を回避し、乾燥効率をより高めることができる。
【0034】
また、天板部3bの外周縁には、木材群Gwの側面部位Gwpの上部一部Gwpuを覆う下方に垂下した側面カバー部11を一体に設ける。このような側面カバー部11を設ければ、木材群Gwから上昇する湿気が含まれる空気をより確実に回収できるため、より円滑で効率的な対流作用を確保することができる。
【0035】
一方、煙突部3sは、天板部3bの中央(又はその近傍)に形成した排出口25から上方へ起立したパイプ状の煙突本体部26を備え、この煙突本体部26の上端に、雨の侵入を防止する上端カバー部12を設ける。例示の上端カバー部12は、図1に示すように、逆カップ形に形成し、この上端カバー部12を、煙突本体部26の上端開口を覆うように配置するとともに、煙突本体部26の上端口近傍の外周面に一端を固定した複数の支持ステー26s…の他端を上端カバー部12の内周面に固定する。これにより、煙突本体部26の上端に上端カバー部12が支持される。このような上端カバー部12を設ければ、煙突部3sに対する雨や風の無用な侵入を防止できるとともに、外部からのゴミ等の無用な侵入を防止することができる。
【0036】
この場合、キャップ等により煙突部3sの通気空間を閉塞することが可能になるため、侵入した虫や木材内の幼虫等を含む木材群Gwに虫類が存在する場合であっても、一時的に煙突部3sの通気性を遮断することにより、保温用シート部4の内部をより高温化させ、薬剤を用いることなく混入した虫等の殺虫や駆除を行うことができる。
【0037】
煙突ユニット部3は、全体を、耐熱性を有するプラスチック素材により形成した部品の組合わせにより構成してもよいし、金属素材(金属パネル)の加工により形成してもよい。また、プラスチック素材と金属素材、更には他の素材との組み合わせにより構成してもよく、その素材の種類は問わない。
【0038】
保温用シート部4は、木材群Gwの側面部位Gwp,及び煙突部3sの側面部位3spの一部及び天板部3bの上面部位3buを遮蔽できるように形成する。この場合、保温用シート部4には、図8に示すようなフレキシブルコンテナバッグ(フレコンバッグ)13を用いることができる。フレコンバッグ13は、ポリエチレンやポリプロピレン等の化学繊維により製作された袋であり、本来は、穀物,飼料,土砂等を収容するものであるが、保温用シート部4として転用する。保温用シート部4に、このようなフレコンバッグ13を用いれば、いわば汎用的な市販品を転用(活用)できるため、更なるコスト削減を実現することができる。この場合、フレコンバッグ13は、未使用品でもよいし、中古品の再利用であってもよい。
【0039】
実施形態で用いたフレコンバッグ13は、図8に示すように、筒状の本体部31,この本体部31の一端に設けた投入口32,この本体部31の他端を閉塞する閉塞面33,及びこの閉塞面33の中央に設けた排出口33hから延出した小筒状の排出筒34を有する。なお、図8に仮想線で示すように、本体部31から閉塞面33と排出筒34を除去し、本体部31の他端に投入口32と同様の開口35sを設けた形状であってもよい。
【0040】
この場合、図8に示すいずれのフレコンバッグ13も全体の形態としては一端と他端に開口を有する筒状となるが、その他、他端(開口35s)を、通気性を有するネット材等により閉塞し、袋状に形成してもよい。袋状に形成した場合には、他端(開口35s)を下側に位置させ、一端の開口を上方に向けた状態にして、カッティング加工した木材Wo…を、当該一端の開口から投入することもできる。この状態の複数の木材Wo…は、ランダムな状態で収容した木材群Gwとなる。
【0041】
したがって、木材群Gwには、保温用シート部4に対して、一端面Wos…が下端となる起立した状態で収容した複数の木材Wo…であってもよいし、或いはランダムな状態で収容した複数の木材Wo…であってもよい。このように、木材群Gwには、保温用シート部4に対して、各種態様により収容する形態を含ませることができるため、木材Wo…に対する既存の生産設備(カッティング工程等)を臨機応変に対応させることができるなど、汎用性の高い乾燥装置1として提供することができる。
【0042】
また、保温用シート部4は、全体を、熱吸収性の高い熱吸収色4c、具体的には、黒色により着色することが望ましい。このような熱吸収色4cにより着色すれば、着色のみの容易な手法により保温効果を高めることができるため、乾燥能力の向上を容易かつ低コストに実現できるとともに、木材Wo…の変色等の品質低下を防止することができる。
【0043】
特に、フレコンバッグ13のような耐候性及び遮光性に優れた素材を用いれば、日光や風雨による薪W…の色褪せ,変色,着色等を防止し、薪W…の外観性及び商品性の向上に寄与できる。したがって、フレコンバッグ13の素材と同等(同様)の耐候性及び遮光性に優れた素材により、専用の保温用シート部4を作成することも勿論可能である。
【0044】
以上により、薪W…を生産する木材Wo…を乾燥する薪生産用木材乾燥装置1が構成される。
【0045】
次に、本実施形態に係る薪生産用木材乾燥装置1の使用方法について、各図を参照しつつ図6のフローチャート及び図7図8の工程図に従って説明する。
【0046】
まず、日差しが良好となる屋外等に、図7に示すように、基台部2を設置する(ステップS1)。例示は、平らな地面Eにそのまま設置した状態を示す。次いで、基台部2の載置面部2uに、薪W…の大きさに切断した複数の木材(未乾燥薪)Wo…の一端面Wos…が下端となるように起立させ、図7に示す所定の数量を載置する(ステップS2)。同図は、載置面部2u上に設置した木材群Gwを示す。なお、必要により複数の木材Wo…(木材群Gw)が崩れないように紐等により仮止めしてもよい。
【0047】
次いで、図8に示すように、載置面部2u上に設置した木材群Gwの上に、煙突ユニット部3の天板部3bを設置する(ステップS3)。この際、木材群Gwの外周縁に天板部3bの外周縁が当接して煙突ユニット部3が支持されるとともに、木材群Gwの側面部位Gwpの上部一部Gwpuが天板部3bに設けた側面カバー部11により覆われる。図8がこの状態を示す。この側面カバー部11により、木材群Gwから上昇する湿気が含まれる空気をより確実に回収できるため、より円滑で効率的な対流作用を確保することができる。
【0048】
次いで、フレコンバッグ13(保温用シート部4)を用意し、図8に示すように、フレコンバッグ13の投入口32を下側に向け、矢印線に沿って、煙突ユニット部3の上端から被せることにより装着する(ステップS4)。これにより、木材群Gwの側面部位Gwpがフレコンバッグ13の本体部31により覆われるとともに、フレコンバッグ13の閉塞面33が煙突ユニット部3の天板部3bの上面部位3buに載置され、さらに、フレコンバッグ13の排出筒34により煙突部3sの側面部位3spの一部が覆われる。この位置関係は図1のようになる。
【0049】
フレコンバッグ13を装着したなら、図3に示すように、紐等の固定部材41…により、排出筒34を煙突部3sの側面部位3spに固定し、側面部位3spと排出筒34間の気密性を確保する(ステップS5)。なお、例示の固定部材41…は、一例を原理的に示したものであり、実際には、ゴムシート等のパッキンを介在させるなど、公知の手段により気密処理(水密処理)することができる。
【0050】
以上により、木材乾燥装置1の装着が終了するため、所定期間にわたって、自然放置する(ステップS6)。
【0051】
図5は、自然放置した際における木材乾燥装置1の内部の作用を示す。自然放置により、点線矢印で示す太陽光Ds…がフレコンバッグ13の外面に照射され、フレコンバッグ13内の空気が暖められる(ステップS7,S8)。これにより、木材Wo…に対する乾燥処理が行われる(ステップS9)。そして、木材Wo…内の湿気成分を含む空気Da…は実線矢印で示すように、対流作用により上昇する(ステップS10)。上昇した空気Da…は、傾斜面3uiに沿って煙突本体部26に侵入し、さらに、煙突本体部26を上昇した後、上端カバー部12を通して外部に排出される(ステップS11)。
【0052】
また、この対流作用により、フレコンバッグ13の下端における投入口32からフレコンバッグ13の内部に外気Dc…が侵入する。この外気Dc…は、基台部2の側面2pに設けた通気空間Spを通り、基台部2における通気性を有する載置面部2uを通ってフレコンバッグ13の内部に侵入する(ステップS12)。
【0053】
そして、所定期間が経過したなら木材乾燥装置1を上述した設置時と逆の手順により分解し、乾燥により得た薪Wの取り出しを行う(ステップS13,S14,S15)。
【0054】
よって、このような本実施形態に係る薪生産用木材乾燥装置1によれば、基本的な構成として、所定の大きさに切断した複数の木材Wo…を含む木材群Gwを収容するとともに、少なくとも底面部位4d及び上面部位4uの通気性を確保した筒状又は袋状の保温用シート部4と、通気性を有し、かつ木材群Gwを収容した保温用シート部4の底面部位4dを載置する載置面部2uを設けるとともに、側面2pに通気空間Spを有する所定の高さの基台部2と、載置面部2uに載置した保温用シート部4に収容した木材群Gwの上面部位Gwuを所定の間隔Fsを介して覆う天板部3b,及び当該天板部3bの中央又はその近傍に設けて上方へ突出させた煙突部3sを有する煙突ユニット部3とを備えるため、乾燥させる木材群Gwの全幅とほぼ同じ幅となる必要最小限のスペースがあれば設置可能になるなど、設置場所の最小化を図ることができるため、設置効率の向上、更には生産効率の向上を図ることができる。しかも、乾燥装置1の小型コンパクト化及びシンプル化を実現できるとともに、送風ファンが不要となり、構造資材も必要最小限で足りるため、全体の大幅なコストダウンを実現できる。
【0055】
また、木材Wo…を十分に乾燥させることができるため、湿気の残存による悪影響、具体的には、燃焼効率の低下による十分な暖かさを確保できない弊害、燃焼時に多量の煙や煤が発生しやすい弊害などを解消し、安定した高品質の薪W…を効率的に生産できる。加えて、カビや菌類の繁殖による品質低下を解消し、薪W…を室内に保存した場合であっても室内環境を低下させる不具合を回避できる。加えて、対流作用の利用によりファン等の送風機器を使用しないため、電力消費が伴わない。したがって、温室効果ガスの削減及び自然環境保護に貢献できる。しかも、ランニングコストもほとんど不要となるため、経済性に優れるとともに、故障等を回避できるため、メンテナンス性にも優れた木材乾燥装置1として提供できる。
【0056】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0057】
例えば、載置面部2uを形成するに際し、木材Wo…の一端面Wos…に対して点接触又は線接触可能に形成することが望ましいが必須の構成要素となるものではない。天板部3bは、煙突部3sから外下がりに傾斜した傾斜面3uiを設けることが望ましいが、平坦面に形成する場合を排除するものではない。さらに、天板部3bに、木材群Gwの側面部位Gwpの上部一部Gwpuを覆う側面カバー部11を設けることが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。煙突部3sに設ける上端カバー部12は、煙突部3sの上端に雨の侵入を防止する機能を有すれば足り、その構成や形状は任意である。一方、保温用シート部4には、フレキシブルコンテナバッグ13を用いた例を示したが、同様の機能を有する各種素材や形状の保温用シート部により置換可能である。したがって、専用の保温用シート部を作成したり、一枚の保温用シート部を巻付けるなど、各種の保温用シート部により実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る薪生産用木材乾燥装置は、木材を乾燥させることにより、薪ストーブやアウトドアのキャンプ等で使用する薪を生産する際に利用できる。
【符号の説明】
【0059】
1:薪生産用木材乾燥装置,2:基台部,2u:載置面部,2p:基台部の側面,3:煙突ユニット部,3b:天板部,3s:煙突部,3ui:傾斜面,3sp:煙突部の側面部位,3bu:天板部の上面部位,4:保温用シート部,4c:熱吸収性の高い熱吸収色,11:側面カバー部,12:上端カバー部,13:フレキシブルコンテナバッグ,W…:薪,Wo…:木材,Wos…:木材の一端面,Sp:通気空間,Gw:木材群,Gwu:木材群の上面部位,Gwp:木材群の側面部位,Gwpu:木材群の側面部位の上部一部,Fs:所定の間隔
図1
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図8