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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057210
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】積層造形物組立体
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/08 20060101AFI20240417BHJP
   F28D 7/00 20060101ALI20240417BHJP
   F28F 21/08 20060101ALI20240417BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240417BHJP
   B23K 1/00 20060101ALN20240417BHJP
【FI】
F28F13/08
F28D7/00 Z
F28F21/08
B33Y80/00
B23K1/00 330H
B23K1/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163785
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 佑太
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103AA37
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD08
3L103DD09
3L103DD31
(57)【要約】
【課題】積層造形技術の利点を享受しつつ、低コストで製造することができる積層造形物組立体を提供する。
【解決手段】熱交換器Tは、積層した金属粉末を溶融する積層造形によって形成された積層造形物である熱交換部10と、積層造形とは異なる方法で形成された金属製の非積層造形物である上流側ガス管路21と、を備え、熱交換部10と上流側ガス管路21とを組み立てることで構成される。熱交換器Tは、熱交換部10と上流側ガス管路21とが当接する当接部40Aと、当接部40Aと同じ位置で熱交換部10と上流側ガス管路21とが固定される固定部50Aと、を備える。当接部40Aにおいて、積層造形物である熱交換部10の厚さは、非積層造形物である上流側ガス管路21の厚さよりも薄い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層した金属粉末を溶融する積層造形によって形成された積層造形物と、前記積層造形とは異なる方法で形成された金属製の非積層造形物と、を備え、前記積層造形物と前記非積層造形物とを組み立てることで構成される積層造形物組立体であって、
前記積層造形物と前記非積層造形物とが当接する当接部と、
前記当接部と同じ位置、若しくは前記当接部とは異なる位置であって、前記積層造形物と前記非積層造形物とが固定される固定部と、を備え、
前記当接部において、前記積層造形物の厚さは、前記非積層造形物の厚さよりも薄い、積層造形物組立体。
【請求項2】
請求項1に記載の積層造形物組立体であって、
前記積層造形物の体積は、前記非積層造形物の体積よりも小さい、積層造形物組立体。
【請求項3】
請求項1に記載の積層造形物組立体であって、
前記当接部と前記固定部は同じ位置に設けられ、
前記積層造形物と前記非積層造形物との前記当接部が前記固定部を構成する、積層造形物組立体。
【請求項4】
請求項1に記載の積層造形物組立体であって、
前記当接部と前記固定部は異なる位置に設けられ、
前記積層造形物と前記非積層造形物との前記当接部の周囲が前記固定部を構成する、積層造形物組立体。
【請求項5】
請求項1に記載の積層造形物組立体であって、
前記非積層造形物は、前記積層造形物との相対的位置を規制する位置決め突起を有する、積層造形物組立体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層造形物組立体であって、
前記非積層造形物の前記位置決め突起は、前記当接部を囲うように設けられる、積層造形物組立体。
【請求項7】
請求項5に記載の積層造形物組立体であって、
前記積層造形物は、開口部を有し、
前記非積層造形物は、
前記開口部に挿入される筒部と、
前記筒部から外周側に膨出するフランジ部と、を有し、
前記非積層造形物の前記位置決め突起は、前記フランジ部である、積層造形物組立体。
【請求項8】
請求項1に記載の積層造形物組立体であって、
前記固定部は、接合材により形成されている、又は前記積層造形物と前記非積層造形物との間の溶接部分である、積層造形物組立体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層造形物組立体であって、
前記固定部は、ロウ材により形成されている、積層造形物組立体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層造形物組立体であって、
前記非積層造形物は、
前記積層造形物に第1流体を導入する第1部材と、
前記積層造形物に前記第1流体とは異なる第2流体を導入する第2部材と、を含み、
前記積層造形物は、前記第1流体と前記第2流体とが熱交換する熱交換部を含む、積層造形物組立体。
【請求項11】
請求項10に記載の積層造形物組立体であって、
前記第1部材は、前記積層造形物の積層方向に沿って前記積層造形物に組付けられ、
前記第2部材は、前記積層方向と直交する方向に沿って前記積層造形物に組付けられる、積層造形物組立体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形によって形成された積層造形物と、積層造形とは異なる方法で形成された非積層造形物と、を組み立てることで構成される積層造形物組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の材料(例えば金属)を一層ずつ積層凝固させて三次元の複雑な形状の部品を製作することができる付加製造技術(Additive Manufacturing技術、以下AM技術)が知られている。AM技術では、機械加工や鋳造のような製造方法では製造が困難であった微細で複雑な三次元形状の部品を製作することができ、部品の性能向上が期待できる。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱交換器を付加製造技術を用いてモノリシック構成要素とすることで、従来の複数の部品の各々を位置決めし、方向付けし、ロウ付け、溶接等により接合して組み立てることよりも製造時間及びコストを削減できることが記載されている。しかしながら、AM技術では、粉末材料を一層ずつ積層して造形するため、積層回数が増えることで製造コストが高くなる場合がある。AM技術により部品を製作する際、AM技術の利点を享受しつつ、製造コストを低減することが望まれる。
【0004】
特許文献2には、金属積層造形により熱交換器を成形することで、十分な伝熱性能と剛性強度を確保可能としつつ小型且つ軽量化も達成可能となるが記載されている。また、熱交換器本体のみを金属積層造形により一体成形し、それとは別個に製造されたガス管路及び冷却水管路を熱交換器本体に固着してもよいことが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-27772号公報
【特許文献2】特開2021-188872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2にも、積層造形によって形成された積層造形物と、積層造形とは異なる方法で形成された非積層造形物と、を組み立てることで構成される積層造形物組立体に関する具体的な記載はなく、積層造形物組立体の製造コストの面で改善の余地があった。AM技術(積層造形)は、上述したように微細で複雑な三次元形状の部品を製作することができるものの、体積が増えるほどAM技術による付加価値と低コスト化とが両立しなくなる。一方で、機械加工や鋳造のような従来の製造方法では、微細で複雑な三次元形状の部品を製作することはできないが、体積の大きな部品であっても低コストで製造できる。
【0007】
本発明は、積層造形技術の利点を享受しつつ、低コストで製造することができる積層造形物組立体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
積層した金属粉末を溶融する積層造形によって形成された積層造形物と、前記積層造形とは異なる方法で形成された金属製の非積層造形物と、を備え、前記積層造形物と前記非積層造形物とを組み立てることで構成される積層造形物組立体であって、
前記積層造形物と前記非積層造形物とが当接する当接部と、
前記当接部と同じ位置、若しくは前記当接部とは異なる位置であって、前記積層造形物と前記非積層造形物とが固定される固定部と、を備え、
前記積層造形物の前記当接部の厚さは、前記非積層造形物の前記当接部の厚さよりも薄い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、積層造形技術の利点を享受しつつ、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の積層造形物組立体である熱交換器Tを示す図であり、その熱交換器Tを内燃機関用EGRガスの冷却に用いた一例を示す。
図2】熱交換器Tの斜視図である。
図3】熱交換器Tの側面図である。
図4図3のA-A線断面図であり、熱交換部10に形成された第1流路L1及び第2流路L2の横断面形状を示す。
図5図4のX部分の拡大断面図である。
図6図5のB-B線断面図である。
図7】1つの筒状隔壁W3の構造を拡大して示すものであって、(A)は筒状隔壁W3の斜視図であり、(B)は(A)のC-C線断面図及び要部横断面図である。
図8】1つの筒状隔壁のW3の横断面を示す図であり、(A)は1つの筒状隔壁の中間部W3mの横断面図であり、(B)は1つの筒状隔壁W3の中間部W3mと両端部W3a,W3bの各横断面積の関係を示す面積比較図である。
図9図3のD-D線断面図である。
図10図9におけるY部分、すなわち熱交換部10と上流側ガス管路21との接続箇所周辺の拡大断面図である。
図11図3のF-F線断面図である。
図12図3のE-E線断面図である。
図13図12のZ部分、すなわち、熱交換部10と冷媒流入管路31との接続箇所周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の積層造形物組立体の一実施形態について、積層造形物組立体を熱交換器とした場合を例に、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1に示すように、積層造形物組立体である熱交換器Tは、車両(例えば自動車)に搭載される内燃機関E用のEGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスの冷却に用いられるEGRクーラーである。以下では、EGRガスを単に排気ガスという。内燃機関Eは、運転状況に応じて排気管Ex内の排気ガスの一部を吸気管Inに循環させる排気ガス再循環装置Rを備える。排気ガス再循環装置Rは、排気管Ex内と吸気管In内との間に接続される排気ガス再循環路100を有する。排気ガス再循環路100の途中には、再循環される排気ガスを冷却するための熱交換器Tと、排気ガスの流量を制御する制御弁Vとが直列に設けられている。内燃機関Eの運転中、制御弁Vが開くと、排気管Ex内の排気ガスの一部が排気ガス再循環路100を経て吸気管Inに向けて流れ、熱交換器Tにおいて冷却される。
【0013】
図1図3に示すように、熱交換器Tは、排気ガス管路20と、冷媒管路30と、熱交換部10と、を備える。排気ガス管路20は、排気ガス再循環路100の一部を構成して内部に排気ガスを流通させる。冷媒管路30は、冷媒(例えば冷却水)が循環する冷媒循環路(不図示)の一部を構成して内部に冷媒を流通させる。熱交換部10は、略直方体形状を有し、内部で排気ガス管路20の排気ガスと冷媒管路30の冷媒とが熱交換するように構成される。詳細は後述するが、熱交換部10の内部には、図4図8に示すように、排気ガス管路20に連通して排気ガスを流通させる多数の第1流路L1と、冷媒管路30に連通して冷媒を流通させる多数の第2流路L2と、が設けられている。
【0014】
(排気ガス管路)
排気ガス管路20は、図2図3、及び図9に示すように、排気ガスを熱交換部10に導入する上流側ガス管路21と、熱交換部10に導入された排気ガスを熱交換部10から流出させる下流側ガス管路22と、を有する。上流側ガス管路21は、排気ガス再循環路100における熱交換部10の上流側に設けられており、排気管Exに連通する。下流側ガス管路22は、排気ガス再循環路100における熱交換部10の下流側に設けられており、吸気管Inに連通する。
【0015】
上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22は、熱交換部10に当接して固定されている。また、上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22には、排気ガスの流れ方向(図3及び図9における上下方向)において熱交換部10との接続箇所である接続端部211,221(図9参照)とは反対側に接続フランジ部21f,22fがそれぞれ一体的に設けられている。接続フランジ部21f,22fは排気ガス再循環路100の不図示の管路に接続する。
【0016】
上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22は、接続端部211,221において排気ガスの流れ方向に直交する流路断面が略長方形となっており(図11参照)、略直方体形状の熱交換部10に当接する。上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22の流路断面は、それぞれ接続フランジ部21f,22fから接続端部211,221に向かって大きくなるように構成されている。また、上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22の流路断面は、それぞれ接続フランジ部21f,22fから接続端部211,221に向かって円形断面から略長方形断面へと連続的に変化する。なお、上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22の形状はこれに限られず、任意の形状とすることができる。
【0017】
(冷媒管路)
冷媒管路30は、図2図3、及び図12に示すように、熱交換部10に冷媒を導入する冷媒流入管路31と、熱交換部10に導入された冷媒を流出させる冷媒流出管路32と、を有する。冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32は、熱交換部10の側部に当接して固定されている。詳細には、冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32は、熱交換部10の後述する冷媒管路取付壁132及び133に当接して固定されている。本実施形態では、冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32は、いずれも円筒形状を有するが、これに限られず、角筒形状であってもよく、任意の形状とすることができる。
【0018】
排気ガス管路20と冷媒管路30との体積(ここでの体積は、各管路の中実部分を指し、流路部分は含まない)を比較すると、排気ガス管路20の体積は冷媒管路30の体積よりも大きい。したがって、排気ガス管路20と冷媒管路30とを同じ材料で形成したとき、排気ガス管路20は冷媒管路30よりも重量が大きくなる。また、排気ガス管路20と冷媒管路30との流路断面積を比較すると、排気ガス管路20は、冷媒管路30よりも流路断面積が大きい。したがって、排気ガス管路20を流れる排気ガスの流量は冷媒管路30を流れる冷媒の流量よりも多く、即ち、排気ガス管路20に多量の排気ガスを流通させることができる。
【0019】
(熱交換部)
熱交換部10は、例えば図2図3、及び図9に示すように、概略角筒状のケース筒体13cと、ケース筒体13cの一端を閉塞し且つ上流側ガス管路21の下流端に位置する上流端板W1と、ケース筒体13cの他端を閉塞し且つ下流側ガス管路22の上流端に位置する下流端板W2とを一体に有する。ケース筒体13cの側部には、冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32がそれぞれ固定される冷媒管路取付壁132及び133が設けられており、換言すると、熱交換部10は、冷媒管路取付壁132及び133も一体に有する。
【0020】
熱交換部10の内部には、図4図8に示すように、多数の第1流路L1と多数の第2流路L2とが設けられている。第1流路L1は、上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22間を互いに並列に連通させる。第2流路L2は、第1流路L1に隔壁W(後述)を介して隣接配置されて冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32間を互いに並列に連通させる。
【0021】
第1流路L1には排気ガス再循環路100を流れる排気ガスが流通可能である。第2流路L2には、冷媒流入管路31から導入された冷媒が流通可能である。したがって、第1流路L1内を流れる排気ガスと、第2流路L2内を流れる冷媒とは、その間に介在する隔壁Wを通して熱交換され、これにより、排気ガスが冷却される。
【0022】
隔壁Wは、前述した上流端板W1及び下流端板W2と、多数の筒状隔壁W3とを備える。上流端板W1は、排気ガスの流れ方向で熱交換部10の上流端側の隔壁部として機能する。下流端板W2は、排気ガスの流れ方向で熱交換部10の下流端側の隔壁部として機能する。筒状隔壁W3は、ケース筒体13c内に収容されて上流端板W1と下流端板W2との間を一体に結合する。各筒状隔壁W3の上端部W3a及び下端部W3bは、上流端板W1及び下流端板W2を通して上流側ガス管路21内及び下流側ガス管路22内にそれぞれ直接開口している。
【0023】
各筒状隔壁W3は、図6及び図7に示すように、上流端板W1及び下流端板W2と直交するように直線状に延びている。換言すると、各筒状隔壁W3は、排気ガスの流れ方向に沿って直線状に延びている。各筒状隔壁W3の内部空間は、第1流路L1を構成する。
【0024】
第1流路L1が延びる方向(図6及び図7中の上下方向)における、各筒状隔壁W3の少なくとも一部は、星形断面に形成されている。本実施形態では、図4図5及び図7に示すように、第1流路L1が延びる方向における、各筒状隔壁W3の中間部W3m(両端部W3a,W3bを除いた部分)が星形断面に形成されている。各筒状隔壁W3の中間部W3mは、相互に一体に結合されていて、横断面が幾何学模様をなす隔壁結合部Cを構成する。そして、この幾何学模様の要素図形は、図4及び図5に示すように、各筒状隔壁W3の中間部W3mの横断面形状に相当する星形要素図形e1と、複数の星形要素図形e1で周囲が取り囲まれる六角形要素図形e2とを含む。
【0025】
上記幾何学模様は、各要素図形、例えば星形要素図形e1がそれらの頂点で相互に繋がり、且つその頂点に集合する星形要素図形e1の辺部の数が偶数(図示例では4つ)となる幾何学模様で構成される。
【0026】
各筒状隔壁W3の中間部W3mの隔壁結合部Cにおいて、第2流路L2は、これを取り囲む数個の筒状隔壁W3の星形断面部(上記中間部W3m)の外周面相互間において横断面が六角形状(即ち上記六角形要素図形e2に相当)に画成される。しかも、この隔壁結合部Cにおいて、各複数の第1流路L1及び第2流路L2は、互いに平行且つ隣接して直線状に延びている。
【0027】
また、筒状隔壁W3は、上端部W3a及び下端部W3bの各横断面が六角形に形成される。筒状隔壁W3の内部空間である第1流路L1は、上端部W3aから中間部W3m及び下端部W3bから中間部W3mにかけて、流路断面形状が星形断面部(中間部W3m)から六角形断面部(上端部W3a・下端部W3b)へと徐々に滑らかに変化するように形成されている。
【0028】
この場合、筒状隔壁W3(第1流路L1)の流路断面積は、図8に示すように、星形断面部と六角形断面部とで略同じに設定される。換言すれば、筒状隔壁W3の星形断面部(中間部W3m)と六角形断面部(上端部W3a・下端部W3b)とは、筒状隔壁W3と直交する投影面で見て互いに重なり合わない部分の断面積が略同じ、即ちa1≒a2に設定される。
【0029】
上記したような筒状隔壁W3の流路断面形状の変化によれば、隣り合う筒状隔壁W3の上端部W3a及び下端部W3bにおける各六角形断面部の外周面相互間には、第1流路L1の流路方向と直交する方向の第1空隙s及び第2空隙s′がそれぞれ形成される。
【0030】
熱交換部10内において、第2空隙s′は、図4図7に示すように、六角網目状に展開していて第2流路L2の出口空間L2oを構成すると共に冷媒流出管路32に連通する。一方、熱交換部10内において、第1空隙sは、図4図7に示すように、第2空隙s′と同様の六角網目状に展開していて第2流路L2の入口空間L2iを構成すると共に冷媒流入管路31に連通する。より詳細に説明すると、前述の冷媒管路取付壁132と第1空隙s(入口空間L2i)との間、及び冷媒管路取付壁133と第2空隙s′(出口空間L2o)との間には空間が形成されており(図12参照)、当該空間を介して、第1空隙s及び第2空隙s′はそれぞれ冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32に連通する。
【0031】
ところで、本実施形態の隔壁結合部Cは、図4及び図5に示すように、複数の隔壁結合部要素Caに分割され、隣り合う隔壁結合部要素Caの間には扁平な小間隙18が設けられている。また、図1図3図6に示すように、隣り合う隔壁結合部要素Caは、筒状隔壁W3の延出方向の中間部において小間隙18の一部を埋める閉塞壁部Csを介して互いに一体に結合される。この閉塞壁部Csは、上記した入口空間L2iと出口空間L2oとの相互間での、小間隙18を介した連通(即ち短絡)を阻止する遮断壁として機能する。
【0032】
本実施形態の閉塞壁部Csは、図1に示すように、第2流路L2の延出方向と直交する方向(図1中の上下方向)に対し傾斜した配置となっている。このような閉塞壁部Csの配置により、入口空間L2iは、第2流路L2の延出方向の幅が冷媒流入管路31に近いものほど幅広となり、且つ、出口空間L2oは、当該幅が冷媒流出管路32に近いものほど幅広となる。冷媒流入管路31と入口空間L2iとの間の間口が広いので、冷媒が冷媒流入管路31から入口空間L2iにスムーズに流入し易く、また、出口空間L2oと冷媒流出管路32との間の間口が広いので、冷媒が出口空間L2oから冷媒流出管路32にスムーズに流出し易くなる。
【0033】
また、図4図6に示すように、複数の隔壁結合部要素Caにおける最も外側の筒状隔壁W3群と、筒状隔壁W3群の外側面を覆うケース筒体13cとの間には、第1空隙s及び第2空隙s′にそれぞれ連通する第1扁平水路16及び第2扁平水路16′が設けられる。第1扁平水路16及び第2扁平水路16′もそれぞれ入口空間L2i及び出口空間L2oの一部として機能する。
【0034】
ケース筒体13cの一部、特に閉塞壁部Csに対応する部分には、横断面波形に湾曲形成された帯状波板部13caが形成されている。帯状波板部13caは、図5に示すように、最も外側の筒状隔壁W3に接近し且つ一部が筒状隔壁W3に一体に接続される。この帯状波板部13caと、最も外側の筒状隔壁W3の中間部W3m(星形断面部)との間には、流路断面が第1扁平水路16及び第2扁平水路16′よりも幅狭の複数の異形水路17が互いに並列状態で設けられる。これら異形水路17は、第1扁平水路16と第2扁平水路16′との間を連通して、第2流路L2の中間部(六角断面部)と同様に冷媒流路としての機能を有する。
【0035】
上記帯状波板部13caは、ケース筒体13cの側面視(即ち図3)で閉塞壁部Csと重なるように(即ち閉塞壁部Csと同様に傾斜するように)形成される。なお、上記異形水路17を形成する代わりに、当該水路部分を閉塞壁部Csで一体に埋めるようにしてもよい。
【0036】
(積層造形物組立体)
続いて、本発明の積層造形物組立体の一実施形態である熱交換器Tの製作方法について説明する。具体的には、熱交換器Tを構成する前述した熱交換部10、排気ガス管路20、及び冷媒管路30の形成方法と、これらの組み立てについて説明する。
【0037】
本実施形態の熱交換部10は、積層した金属粉末を溶融する金属積層造形によって形成された積層造形物である。金属積層造形(以下、単に積層造形とも称する)とは、電子ビーム又はファイバーレーザーにより金属粉末を溶解し、積層凝固させて金属部品を製作する成形技術であり、付加製造技術(AM技術)として知られている。積層造形時、熱交換部10は、隔壁Wの下流端板W2が底面となり、図2における下方から上方に向かって、金属粉末が一層ずつ積層されて溶融されることで形成される。なお、「下流端板W2が底面となる」とは、積層造形時に、下流端板W2が不図示の積層造形装置のベースプレート上に配置されることを意味する。以下では、金属粉末が積層されていく方向(上下方向)を積層方向とも称する。
【0038】
積層造形は、機械加工や鋳造のような従来の製造方法では製造が困難であった微細で複雑な三次元形状の部品の製作を得意とする。このような微細で複雑な三次元形状により、部品の性能が向上することも多く、すなわち、積層造形によって部品の性能向上が期待できる。熱交換部10は、横断面が前述したような幾何学模様をなしており、微細で複雑な三次元形状を有する。本実施形態では、このような熱交換部10を積層造形によって、ケース筒体13c及び冷媒管路取付壁132,133も含めて一体的に成形する。これにより、機械加工や鋳造によって成形した熱交換部と比較して、熱交換部10(熱交換器T)の熱交換効率の向上が期待できる。
【0039】
一方で、積層造形は、積層回数が増えることで、製造コストが高くなる場合がある。特に部品の体積が大きい場合には、積層造形によって部品を製作すると、製造コストの増大が顕著となる。したがって、機械加工や鋳造のような積層造形とは異なる方法によって部品を製作できる場合、当該方法で部品を製作した方が製造コストを低減させることができる。
【0040】
そこで、本実施形態では、熱交換器Tを構成する部品の一部を、積層造形とは異なる方法(例えば機械加工や鋳造)で形成する。具体的には、排気ガス管路20及び冷媒管路30は、積層造形とは異なる方法で形成された金属製の非積層造形物である。すなわち、熱交換器Tは、全体を積層造形によって一体で製作したものではなく、積層造形物である熱交換部10と、非積層造形物である排気ガス管路20及び冷媒管路30とを組み立てることで構成される。
【0041】
ここで、熱交換部10と排気ガス管路20とは、熱交換部10と排気ガス管路20とを当接させ、当接箇所で固定することで組付けられる。熱交換部10と冷媒管路30とは、熱交換部10と冷媒管路30とを当接させ、当接箇所とは異なる位置で固定することで組付けられる。以下、熱交換部10と排気ガス管路20との当接部40A及び固定部50A、並びに、熱交換部10と冷媒管路30との当接部40B及び固定部50Bについて、詳細を説明する。
【0042】
先ず、熱交換部10と排気ガス管路20(上流側ガス管路21及び下流側ガス管路22)との当接部40A及び固定部50Aについて、図9及び図10を参照して説明する。なお、熱交換部10と下流側ガス管路22との当接部及び固定部は、熱交換部10と上流側ガス管路21との当接部40A及び固定部50Aの構造と同様であるので、以下では熱交換部10と上流側ガス管路21との当接部40A及び固定部50Aの構造についてのみ説明する。
【0043】
熱交換部10と上流側ガス管路21とは、図10に示すように、熱交換部10の外周縁部131及び上流側ガス管路21の接続端部211において当接する。熱交換部10の外周縁部131は、熱交換部10の積層方向(上下方向)における上端部に、全周に沿って形成されている。外周縁部131は、ケース筒体13cの側面及び上流端板W1に連続して設けられており、熱交換部10(ケース筒体13c)の側面に直交する方向における熱交換部10の外側に向かって延在している。上流側ガス管路21の接続端部211は、熱交換部10に接続される部分である。熱交換部10の外周縁部131の上面と、上流側ガス管路21の接続端部211の下面とが当接し、これらの当接面が熱交換部10と上流側ガス管路21との当接部40Aとなる。
【0044】
また、熱交換部10と上流側ガス管路21とは、固定部50Aで固定される。固定部50Aは、当接部40Aと同じ位置に存在する。具体的に説明すると、固定部50Aは、ロウ材により形成されており、例えば、当接部40Aの全面にシート状のロウ材を配置し真空炉で加熱することで、熱交換部10と上流側ガス管路21とが適切に固定される。これにより、固定部50Aの強度やシール性が確保される。なお、当接部40Aに、シート状のロウ材ではなくペースト状のロウ材を塗布して真空炉で加熱することで、熱交換部10と上流側ガス管路21とを固定してもよい。
【0045】
以上のようにして、非積層造形物である上流側ガス管路21が、積層造形物である熱交換部10に、熱交換部10の積層方向に沿って組み付けられる。
【0046】
ここで、当接部40A及びその近傍における、熱交換部10及び上流側ガス管路21の構造について、より詳しく説明する。
図10に示すように、熱交換部10と上流側ガス管路21とが当接する当接部40Aにおいて、熱交換部10の厚さは、上流側ガス管路21の厚さよりも薄く形成されている。ここでの「厚さ」とは、当接部40Aと直交する方向(図10の例では、紙面上の上下方向)における最小の厚さと定義される。具体的に説明すると、本実施形態では、当接部40Aにおける熱交換部10の厚さは、当接部40Aと直交する方向において、当接部40Aの最も外側位置P1において最小となる。この最小厚さをt1とする。一方、当接部40Aにおける上流側ガス管路21の厚さは、当接部40Aと直交する方向において、当接部40Aの最も外側位置P1において最小となる。この最小厚さをt2とする。本実施形態では、当接部40Aにおいて、熱交換部10の厚さt1は、上流側ガス管路21の厚さt2よりも薄い。
【0047】
熱交換部10と上流側ガス管路21とが当接する当接部40Aにおいて、積層造形物である熱交換部10の厚さt1を非積層造形物である上流側ガス管路21の厚さt2よりも薄くすることで、積層造形の利点を享受しつつ、熱交換器Tの製造コストを低減できる。即ち、微細さが要求されて厚さを薄くする熱交換部10は積層造形で形成する一方で、微細さが要求されず厚さを薄くしない上流側ガス管路21は積層造形とは異なる方法で形成する。このように積層造形物とする部分と非積層造形物とする部分を適切に分けることで、熱交換器Tの熱交換性能を積層造形によって向上させることができ、且つ、熱交換器Tの全てを積層造形で製作する場合と比較して熱交換器Tの製造コストを低減することができる。
【0048】
また、前述のとおり、熱交換部10と上流側ガス管路21との当接部40A及び固定部50Aは同じ位置に設けられ、熱交換部10と上流側ガス管路21との当接部40Aが固定部50Aを構成する。当接部40Aと同じ位置に固定部50Aを設けることで、熱交換部10と上流側ガス管路21とを固定するための新たな領域を積層造形で形成する必要がない。したがって、積層造形物である熱交換部10の製造時間及び製造コストを低減することができる。
【0049】
さらに、上流側ガス管路21には、熱交換部10との相対的位置を規制する位置決め突起212が設けられている。より詳細には、位置決め突起212は、上流側ガス管路21の接続端部211に設けられている。位置決め突起212は、熱交換部10(ケース筒体13c)の側面に直交する方向において当接部40Aよりも外側に設けられており、且つ、上下方向において当接部40Aよりも熱交換部10側に(すなわち下方に)突出している。さらに、位置決め突起212は、上流側ガス管路21の接続端部211の全周に沿って設けられている。即ち、位置決め突起212は、当接部40Aを囲むように設けられている。
【0050】
このような位置決め突起212によると、上流側ガス管路21を熱交換部10の積層方向における端部に嵌め込む構成となり、熱交換部10と上流側ガス管路21との位置決めを精度高く行うことができる。
【0051】
また、位置決め突起212を非積層造形物である上流側ガス管路21に設けることで、仮に位置決め突起212を積層造形物である熱交換部10に設ける場合と比較して、熱交換器Tの製造コストを低減することができる。特に、当接部40Aを囲むように設けられる位置決め突起を熱交換部10に設けると、熱交換部10が大型化して熱交換部10の製造時間及び製造コストが増大するが、位置決め突起212を非積層造形物である上流側ガス管路21に設けることで、積層造形物である熱交換部10の大型化を回避して、熱交換部10の製造時間及び製造コストを低減することができる。
【0052】
ところで、上流側ガス管路21の中実部分の体積と熱交換部10の中実部分の体積とを比較すると、熱交換部10を構成する隔壁Wは微細で厚さが薄いので、熱交換部10の体積は上流側ガス管路21の体積よりも小さい。体積が大きい上流側ガス管路21を積層造形によって形成していないので、熱交換器Tの製造コストを低減できる。
【0053】
次に、熱交換部10と冷媒管路30(冷媒流入管路31及び冷媒流出管路32)との当接部40B及び固定部50Bについて、図12及び図13を参照して説明する。なお、熱交換部10と冷媒流出管路32との当接部及び固定部は、熱交換部10と冷媒流入管路31との当接部40B及び固定部50Bの構造と同様であるので、以下では熱交換部10と冷媒流入管路31との当接部40B及び固定部50Bの構造についてのみ説明する。
【0054】
熱交換部10と冷媒流入管路31とは、図2図3図12、及び図13に示すように、熱交換部10の冷媒管路取付壁132及び冷媒流入管路31のフランジ部312において当接する。より詳しく説明すると、図12及び図13に示すように、冷媒流入管路31は、内部に冷媒を流通させる筒部311と、筒部から外周側に膨出するフランジ部312と、を有する。フランジ部312は、筒部311の熱交換部10側の端部からわずかに距離を空けて設けられている。冷媒管路取付壁132の一部には、筒部311が挿入される開口部132aが設けられており、筒部311が熱交換部10側の端部から開口部132aに挿入される。このように、冷媒流入管路31の筒部311を熱交換部10の開口部132aに挿入することで冷媒流入管路31を熱交換部10に組付けることができる。開口部132aの大きさは、筒部311の直径と同一又は僅かに大きいが、フランジ部312の直径よりは小さい。よって、筒部311を開口部132aに挿入すると、フランジ部312が開口部132aの周囲に当接する。フランジ部312と冷媒管路取付壁132との当接面が、冷媒流入管路31と熱交換部10との当接部40Bとなる。
【0055】
冷媒流入管路31のフランジ部312は、上流側ガス管路21の位置決め突起212と同様に、熱交換部10との相対的位置を規制する位置決め突起として機能する。フランジ部312により、挿入方向における熱交換部10と冷媒流入管路31との位置決めの精度を高めることができる。さらに、位置決め突起として機能するフランジ部312を非積層造形物である冷媒流入管路31に設けることで、仮にフランジ部312を積層造形物である熱交換部10に設ける場合と比較して、熱交換器Tの製造コストを低減することができる。
【0056】
また、熱交換部10と冷媒流入管路31とは、固定部50Bで固定されている。固定部50Bは、当接部40Bとは異なる位置に存在する。具体的に説明すると、固定部50Bは、ロウ材により形成されており、当接部40Bの周囲にペースト状のロウ材を塗布して熱交換部10と冷媒流入管路31とが固定される。以上のようにして、熱交換部10と冷媒流入管路31とが組み付けられる。なお、当接部40Bの周囲にペースト状のロウ材を塗布する前に、熱交換部10と冷媒流入管路31とを当接させた状態を保持するために、両部品を例えば点付け溶接等で仮固定してもよい。また、熱交換部10と冷媒流入管路31との固定部50Bを、当接部40Bと同じ位置に設ける構成であってもよい。
【0057】
ところで、上流側ガス管路21は冷媒流入管路31よりも重い部材であるので、前述のとおり、熱交換部10の全周(即ち外周縁部131)に対して積層方向(上下方向)から上流側ガス管路21を嵌め込むことで正確な位置決め及び固定を行った。一方、冷媒流入管路31は上流側ガス管路21よりも軽量であるので、熱交換部10の全周に上流側ガス管路21を嵌め込んで位置決め及び固定をする必要はない。すなわち、前述のとおり、積層方向と直交する方向(水平方向)において、冷媒流入管路31を熱交換部10の一部に設けられた開口部132aに挿入し、フランジ部312と熱交換部10とを当接させることで、冷媒流入管路31と熱交換部10との正確な位置決め及び固定を行うことができる。
【0058】
ここで、当接部40B及びその近傍における、熱交換部10及び冷媒流入管路31の構造について、より詳しく説明する。
図13に示すように、熱交換部10と冷媒流入管路31とが当接する当接部40Bにおいて、熱交換部10の厚さは、冷媒流入管路31の厚さよりも薄く構成されている。ここでの「厚さ」とは、当接部40Bと直交する方向(図13の例では、紙面上の左右方向)における最小の厚さと定義される。具体的に説明すると、当接部40Bにおける熱交換部10の厚さは、当接部40Bと直交する方向における冷媒管路取付壁132の厚さに相当する。冷媒管路取付壁132の厚さは当接部40Bにおいて場所に依らず一定であり、即ち、当接部40Bにおける熱交換部10の厚さを冷媒管路取付壁132の厚さt3とする。一方、当接部40Bにおける冷媒流入管路31の厚さは、当接部40Bと直交する方向において、当接部40Bの最も外側位置P2において最小となり、この厚さをt4とする。本実施形態では、当接部40Bにおいて、熱交換部10の厚さt3は冷媒流入管路31の厚さt4よりも薄い。
【0059】
熱交換部10と冷媒流入管路31とが当接する当接部40Bにおいて、積層造形物である熱交換部10の厚さt3を非積層造形物である冷媒流入管路31の厚さt4よりも薄くすることで、積層造形の利点を享受しつつ、熱交換器Tの製造コストを低減できる。即ち、微細さが要求されて厚さを薄くする熱交換部10は積層造形で形成する一方で、微細さが要求されず厚さを薄くしない冷媒流入管路31は積層造形とは異なる方法で形成する。このように積層造形物とする部分と非積層造形物とする部分を適切に分けることで、熱交換器Tの熱交換性能を積層造形によって向上させることができ、且つ、熱交換器Tの全てを積層造形で製作する場合と比較して熱交換器Tの製造コストを低減することができる。
【0060】
また、前述のとおり、熱交換部10と冷媒流入管路31との当接部40B及び固定部50Bは異なる位置に設けられ、熱交換部10と冷媒流入管路31との当接部40Bの周囲が固定部50Bを構成する。当接部40Bの周囲に固定部50Bを設けることで、熱交換部10と冷媒流入管路31とを固定するための新たな領域を積層造形する必要がない。したがって、積層造形物である熱交換部10の製造時間及び製造コストを低減することができる。
【0061】
図2及び図3に戻り、熱交換部10と上流側ガス管路21(下流側ガス管路22)とは、熱交換部10の積層方向(上下方向)に沿って組付けられるのに対して、熱交換部10と冷媒流入管路31(又は冷媒流出管路32)とは、積層方向と直交する方向に沿って組付けられる。仮に熱交換器Tの全部品を積層造形により形成する場合、積層造形時に、積層方向と直交する方向に延在する冷媒流入管路31を下方から支持するサポート部材(不図示)も下方から同時に積層造形で形成する必要がある。このサポート部材が必要となる理由としては、積層造形時に下方から上方に向かって金属粉末を積層して溶融していく際、部材が形成されていない空間から冷媒流入管路31を下方から支持せずに形成することが困難であるためである。サポート部材は、熱交換器Tを製作した後に例えば手作業で除去する必要がある。
【0062】
本実施形態では、冷媒流入管路31は熱交換部10の積層方向と直交する方向に延在して設けられるものの、積層造形とは異なる方法で形成して熱交換部10に組み付けるので、冷媒流入管路31を積層造形で形成した場合に必要となる上述のサポート部材が不要である。したがって、サポート部材の形成や除去作業が不要となるため製造コストを低減することができる。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0064】
前述した実施形態では、本発明の積層造形物組立体の一例として、EGRクーラーである熱交換器Tを例示したが、これに限られない。本発明の積層造形物組立体は、EGRクーラーではない熱交換器であってもよい。また、積層造形物組立体は、積層造形物と非積層造形物とを組み立てて構成されるものであれば、熱交換器でなくてもよい。
【0065】
また、前述した実施形態では、積層造形物組立体の一例として熱交換器Tを例示し、排気ガスと冷媒(冷却水)との熱交換を行う構成を説明したが、これに限られない。熱交換器Tで熱交換される流体は、液体・気体を問わず任意である。例えば、熱交換器Tにおいて、液体相互の熱交換を行ってもよいし、気体相互の熱交換を行ってもよい。
【0066】
また、前述した実施形態では、固定部50A,50Bは、ロウ材により形成されたが、これに限られない。固定部50A,50Bは、例えばロウ材の代わりに接着剤により形成されてもよい。また、積層造形物と非積層造形物とを溶接により固定する場合、固定部50A,50Bは、積層造形物と非積層造形物との間の溶接部であってもよい。
【0067】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0068】
(1) 積層した金属粉末を溶融する積層造形によって形成された積層造形物(熱交換部10)と、前記積層造形とは異なる方法で形成された金属製の非積層造形物(上流側ガス管路21、下流側ガス管路22、冷媒流入管路31、冷媒流出管路32)と、を備え、前記積層造形物と前記非積層造形物とを組み立てることで構成される積層造形物組立体(熱交換器T)であって、
前記積層造形物と前記非積層造形物とが当接する当接部(当接部40A,40B)と、
前記当接部と同じ位置、若しくは前記当接部とは異なる位置であって、前記積層造形物と前記非積層造形物とが固定される固定部(固定部50A,50B)と、を備え、
前記当接部において、前記積層造形物の厚さは、前記非積層造形物の厚さよりも薄い、積層造形物組立体。
【0069】
積層造形技術は、微細で複雑な三次元形状の部品を製作することができ、部品の性能向上が期待できるが、積層回数が増えることで製造コストが高くなる場合がある。一方で機械加工や鋳造のような従来の製造方法は、微細で複雑な三次元形状の部品を製作することが苦手であるが、体積の大きな部品であっても低コストで製造できる。(1)によれば、両部品が当接する当接部において、積層造形物の厚さを非積層造形物の厚さよりも薄くすることで、積層造形技術の利点を享受しつつ、積層造形物組立体を低コストで製造できる。即ち、微細さが要求されて厚さを薄くする部分は積層造形により形成する一方で、微細さが要求されず厚さを薄くしない部分は積層造形とは異なる方法で形成する。このように積層造形物とする部分と非積層造形物とする部分を適切に分けることで、積層造形物組立体の性能を積層造形によって向上させることができ、且つ、全てを積層造形で製作する場合と比較して積層造形物組立体の製造コストを低減することができる。
【0070】
(2) (1)に記載の積層造形物組立体であって、
前記積層造形物(熱交換部10)の体積は、前記非積層造形物(上流側ガス管路21、下流側ガス管路22)の体積よりも小さい、積層造形物組立体。
【0071】
(2)によれば、積層造形物の体積を非積層造形物の体積よりも小さくすることで、積層造形物組立体の製造コストを低減することができる。
【0072】
(3) (1)に記載の積層造形物組立体であって、
前記当接部(当接部40A)と前記固定部(固定部50A)は同じ位置に設けられ、
前記積層造形物と前記非積層造形物との前記当接部が前記固定部を構成する、積層造形物組立体。
【0073】
(3)によれば、当接部と同じ位置に固定部を設けることで、固定部のための新たな領域を積層造形する必要がなく、積層造形物の製造時間及び製造コストを低減することができる。
【0074】
(4) (1)に記載の積層造形物組立体であって、
前記当接部(当接部40B)と前記固定部(固定部50B)は異なる位置に設けられ、
前記積層造形物と前記非積層造形物との前記当接部の周囲が前記固定部を構成する、積層造形物組立体。
【0075】
(4)によれば、当接部の周囲に固定部を設けることで、固定部のための新たな領域を積層造形する必要がなく、積層造形物の製造時間及び製造コストを低減することができる。
【0076】
(5) (1)に記載の積層造形物組立体であって、
前記非積層造形物は、前記積層造形物との相対的位置を規制する位置決め突起(位置決め突起212、フランジ部312)を有する、積層造形物組立体。
【0077】
(5)によれば、位置決めに必要な位置決め突起を非積層造形物に設けることで、積層造形物組立体の製造コストを低減することができる。
【0078】
(6) (5)に記載の積層造形物組立体であって、
前記非積層造形物(上流側ガス管路21、下流側ガス管路22)の前記位置決め突起(位置決め突起212)は、前記当接部(当接部40A)を囲うように設けられる、積層造形物組立体。
【0079】
(6)によれば、位置決め突起は当接部を囲うように設けられるので、より精度の高い位置決めを行うことができる。また、当接部を囲うように設けられる位置決め突起を積層造形物に設けると積層造形物が大型化して積層造形物の製造時間及び製造コストが増大するが、位置決め突起を非積層造形物に設けることで、積層造形物の大型化を回避して積層造形物の製造時間及び製造コストを低減することができる。
【0080】
(7) (5)に記載の積層造形物組立体であって、
前記積層造形物は、開口部(開口部132a)を有し、
前記非積層造形物(冷媒流入管路31、冷媒流出管路32)は、
前記開口部に挿入される筒部(筒部311)と、
前記筒部から外周側に膨出するフランジ部(フランジ部312)と、を有し、
前記非積層造形物の前記位置決め突起は、前記フランジ部である、積層造形物組立体。
【0081】
(7)によれば、非積層造形物の筒部を積層造形物の開口部に挿入して積層造形物と非積層造形物と組付けることができる。また、非積層造形物のフランジ部により、積層造形物と非積層造形物との位置決めの精度を高めることができる。
【0082】
(8) (1)に記載の積層造形物組立体であって、
前記固定部は、接合材により形成されている、又は前記積層造形物と前記非積層造形物との間の溶接部である、積層造形物組立体。
【0083】
(8)によれば、接合材又は溶接により積層造形物と非積層造形物とを適切に固定することができる。
【0084】
(9) (8)に記載の積層造形物組立体であって、
前記固定部は、ロウ材により形成されている、積層造形物組立体。
【0085】
(9)によれば、ロウ材により積層造形物と非積層造形物とを適切に固定することができる。
【0086】
(10) (1)~(9)のいずれかに記載の積層造形物組立体であって、
前記非積層造形物は、
前記積層造形物に第1流体(排気ガス)を導入する第1部材(上流側ガス管路21、下流側ガス管路22)と、
前記積層造形物に前記第1流体とは異なる第2流体(冷媒)を導入する第2部材(冷媒流入管路31、冷媒流出管路32)と、を含み、
前記積層造形物は、前記第1流体と前記第2流体とが熱交換する熱交換部(熱交換部10)を含む、積層造形物組立体。
【0087】
(10)によれば、積層造形物が熱交換部であるので、熱交換部は積層造形技術を利用して高い熱交換効性能を有する構造とすることができる。一方、熱交換部に流体を導入する第1部材及び第2部材は非積層造形物であるので、全てを積層造形で製作する場合と比較して、積層造形物組立体の製造コストを低減することができる。
【0088】
(11) (10)に記載の積層造形物組立体であって、
前記第1部材は、前記積層造形物の積層方向に沿って前記積層造形物に組付けられ、
前記第2部材は、前記積層方向と直交する方向に沿って前記積層造形物に組付けられる、積層造形物組立体。
【0089】
第1部材、第2部材、及び熱交換部を全て積層造形により形成する場合、積層造形時に積層方向と直交する方向に設けられる第2部材を形成するために、第2部材を下方から支えるためのサポート部材が必要となる。第2部材は非積層造形物であるので、サポート部材を設けることなく、(11)のように、第2部材を積層方向と直交する方向に沿って熱交換部に組付けることができる。
【符号の説明】
【0090】
10 熱交換部(積層造形物)
132a 開口部
21 上流側ガス管路(非積層造形物、第1部材)
212 位置決め突起
22 下流側ガス管路(非積層造形物、第1部材)
31 冷媒流入管路(非積層造形物、第2部材)
311 筒部
312 フランジ部(フランジ部、位置決め突起)
32 冷媒流出管路(非積層造形物、第2部材)
40A,40B 当接部
50A,50B 固定部
T 熱交換器(積層造形物組立体)
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
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図13