(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057211
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】印判
(51)【国際特許分類】
B41K 1/56 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B41K1/56 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163788
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】518351045
【氏名又は名称】一般社団法人未来ものづくり振興会
(72)【発明者】
【氏名】ビョウ ケイイ
(72)【発明者】
【氏名】スウ ゴ
(57)【要約】
【課題】
本発明は、印判本体に適正荷重以上の力で押圧されたとしても印字体に印加される荷重を常に略一定に保つことで良好な印影を得ることができる印判を提供することを目的とする。
【解決するための手段】
本発明は、本体と、該本体の一端に印字体を有する印判であって、前記本体が捺印時の荷重により弾性変形することにより、前記印字体の周囲が被捺印面に当接することを特徴とする印判である。また、前記本体が中空の部材で形成されていることが好ましい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体の一端に印字体を有する印判であって、
前記本体が捺印時の荷重により弾性変形することにより、前記印字体の周囲が被捺印面に当接することを特徴とする印判。
【請求項2】
前記本体が中空の部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の印判。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印判本体に適正荷重以上の力で押圧されたとしても印字体に印加される荷重を常に略一定に保つことで良好な印影を得ることができる印判に関する。
【背景技術】
【0002】
印鑑を用いて捺印する際、捺印荷重が強すぎると過剰量のインキが被捺印面に転写され、印影の滲み等の不具合が発生していた。この不具合はインキ浸透式の印字体の場合に特に顕著であり、良好な印影を得る為には適切な荷重で捺印することが重要である。このような課題を解決する手段として、従来から、印字部材に所定の押圧力が印加されたことを発光により報知する印判が知られている(引用文献1)。
【0003】
引用文献1記載の印判では、印字部材に圧力が印加された場合、第2端子が第1端子に近づいて接触することで発光部が発光するものであり、これにより、印字部材に所定の押圧力が印加されたことを視覚で認識することができる。しかしながら、当該印判は、適正な捺印荷重が印加されたことを報知するに留まり、適正な荷重以上の力が印字部材に印加されること自体を防止するものではない為、依然として印影の滲み等の不具合が発生する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであって、印判本体に適正荷重以上の力で押圧されたとしても印字体に印加される荷重を常に略一定に保つことで良好な印影を得ることができる印判を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために完成された本発明は、本体と、該本体の一端に印字体を有する印判であって、前記本体が捺印時の荷重により弾性変形することにより、前記印字体の周囲が被捺印面に当接することを特徴とする印判である。
【0007】
前記本体が中空の部材で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、本体と、該本体の一端に印字体を有する印判であって、前記本体が捺印時の荷重により弾性変形することにより、前記印字体の周囲が被捺印面に当接することを特徴とする印判である為、印判本体を適正荷重以上の力で押圧したとしても、印字体周囲部に作用する被捺印面からの反発力により、本体の押圧力が相殺され、印字体に印加される荷重を常に略一定に保つことで良好な印影を得ることができる。
【0009】
更に好ましくは、前記本体が中空の部材で形成されている為、印字体周囲部が被捺印面に当接させるのに必要な変形量を十分に備えており、また、変形に伴って本体内部の内圧が上昇することによる押圧時の印字体周囲部に作用する被捺印面からの反発力は、印加する押圧力に比例して大きくなる為、当該押圧力を効率的に相殺でき、印字体に印加される荷重を常に略一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態を示す捺印前の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態を示す捺印時の正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態の捺印前後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は、本発明に係る印判の捺印前の正面図、
図2は捺印時の正面図、
図3は底面図、
図4は捺印前後の断面図である。尚、本発明において「下」とは、捺印時に、印字体が被捺印面に作用する力の方向を指し、「上」とは、その反対側を指す。
【0012】
本体1は、
図1に示すように、上端に曲面部、下端に平面部を有し、下方が大径の円柱状をしたボーリングのピン様の形状から成る中空の部材である。また、
図4に示すように、本体1は弾力性を有する樹脂により、全周に亘り略均等の厚みで成形されている。本体1下端の平面部には、
図3に示すように、底面視において本体1より一回り面積が小さい印字体2が接着固定されており、該印字体2の周囲の本体1の一部が印字体周囲部1aである。
【0013】
本発明において、
図2、
図4(b)に示すように、本体1を押圧した際、本体1下部の一部が弾性変形し印字体周囲部1aが被捺印面Pに接触するのであるが、この時点において印字体2に印加されている荷重が最適になるように設定している。最適荷重の設定は、本体1の材質の選定、厚み、本体1の変形可能量によって調整していく。本体1の変形可能量とは、印字体周囲部1aが被捺印面Pに接触するまでに要する変形量のことを指し、この変形量が大きい程、本体1内部の気圧が高くなり、印字体2に印加される荷重は大きくなる。当該変形可能量の調整は印字体2の厚みや、印字体周囲部1aと被捺印面Pとのなす角度によって調整可能である。当該角度により調整する場合、例えば、角度が0度(平行)より大きい場合、被捺印面Pと平行な平面で形成されている場合と比較し、印字体周囲部1aが被捺印面Pに当接するまでの変形量が大きくなる為、印字体2に印加される荷重は大きくなる。
尚、最適荷重は印字体2の材質や、多孔質体か非多孔質体によって変動するものである為、一概に決める事は出来ず、印字体2の種類に応じて適宜変更する必要がある。
【0014】
本実施形態では、後述するように印字体2として非多孔質性のゴム印字体2を使用しており、浸透式に比べて適正荷重が大きくなる為、
図1、
図4に示すように、印字体周囲部1aと被捺印面Pとのなす角度を40°前後に設定している。当該角度とすることで、印字体周囲部1aが被捺印面Pに当接するまでの変形量を増やし、適正荷重を大きくしている。
【0015】
本体1の弾力性樹脂は、本体1を把持して押印すると本体1下部の一部が弾性変形し、印字体周囲部1aが被捺印面Pに当接するような柔軟性を有する素材が使用できる。具体的に、本体1に使用できる弾力性を有する樹脂としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、或いはスチレンブタジエンゴム等の熱硬化性エラストマー、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、或いはフッ素系等の熱可塑性エラストマー、又はそれらの複合物等が挙げられる。
【0016】
本実施形態では、本体1を「中空」の弾力性樹脂で成形することが好ましいが、これに限定されるものではなく、捺印時に、印字体周囲部1aが被捺印面Pに当接するように弾性変形する素材であれば適宜使用可能である。例えば、前記した熱硬化性エラストマー、熱可塑性エラストマーからなる「中実材」や、「ポーラス体(スポンジ)」等が挙げられる。
【0017】
本体1の形状は実施形態のものに限られず、通常印鑑の本体に用いられる形状であれば適宜採用することができ、例えば、円柱、楕円柱、三角柱、四角柱等の多角柱等が挙げられる。
【0018】
また、本実施形態において、本体1は場所によらず均等な厚みを有するものとしたが、下部の一部周囲において局所的に肉薄部(図示無し)を設けることもできる。この場合、押印する際、常に当該肉薄部を起点として弾性変形する為、押印時に本体1が傾斜していても、被捺印面Pに対して印字体2周囲の本体1を均等に当接させることができる。
【0019】
印字体2は、下面に印字面を有し、ゴム、セラミックス、熱可塑性樹脂などの材質を用いることができる。本実施例では、非多孔質性のゴムとしているが、ポーラス体(スポンジゴム)等の無数の連続気泡を有する多孔質体としても良い。印字体2が多孔質体の場合、インキ吸蔵体を多孔質体の上面に配置してもよい。また、印字体2の本体1への固定方法は接着固定以外にも適宜採用でき、例えば、本体1及び印字体2に篏合部或いは螺合部を設けて篏合・螺合固定とすることも可能である。
【0020】
また、本実施形態において、印字体2は底面視において本体1より一回り面積が小さいものを使用しているが、これに限らず、底面視或いは平面視において印字体2と本体1が同じ面積、或いは印字体2が本体1より面積が大きくても良い。尚、この場合、印字体2と本体1との接着面近傍が印字体周囲部1aとなる。当該構成としたとき、印字体周囲部1aが印字体2より外周に張り出していない為、印字体周囲部1aが被捺印面Pに当接するまでの変形量が必然的に大きくなる。その為、印字体2に印加される荷重は大きくなり、非多孔質体の印字体2を使用する場合の適正荷重の調整に好適である。
【0021】
また、他の実施形態として、図示しないが、印字体2に適正荷重が印加された事を認識できる機構を本体1に設けても良い。当該機構としては、例えば、適正荷重を検知できる感圧センサー、又は印字体周囲部1aに配し、被捺印面との接触を検知する接触センサー等と、当該センサーにより音や光を発する報知部と、からなるものが考えられる。この機構により、印判の使用者は適正荷重が印加されたことを視覚的、聴覚的に認識することができる為、不必要に大きな押圧力で本体を押し込む必要が無く操作性がより向上する。
【0022】
次に本実施形態の印判の効果について
図4を参照しながら説明する。
捺印前の状態(
図4(a))において、本体1を把持したまま被捺印面P(紙)に対して下方向に押圧すると本体1下部が弾性変形する為、印字体周囲部1aが被捺印面Pの方へ移動する。この時、本体1内部の圧力は弾性変形により徐々に大きくなり、それに比例して印字体2に印加される荷重も大きくなる。更に本体1を押圧すると印字体周囲部1aが被捺印面Pに接触し、この時に印字体2に印加される荷重は最適荷重に達する(
図4(b))。この状態から更に本体1を押圧した場合、当該押圧力は、印字体周囲部1aが被捺印面Pから受ける反発力によって相殺される為、印字体2に印加される荷重が適正荷重のまま略一定を維持することができる。以上より、印判本体1に適正荷重以上の力で押圧されたとしても、常に良好な印影を得ることができる。
【0023】
以上、本発明に係る印判の好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的思想は、ここで説明された実施形態に限定して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の要旨又は技術思想から逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜、変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を伴う印判及び関連する周辺技術は、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0024】
1 本体
1a 印字体周囲部
2 印字体
P 被捺印面