IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラルパッカー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-シール装置及びシール装置の制御方法 図1
  • 特開-シール装置及びシール装置の制御方法 図2
  • 特開-シール装置及びシール装置の制御方法 図3
  • 特開-シール装置及びシール装置の制御方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057215
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】シール装置及びシール装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 51/32 20060101AFI20240417BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B65B51/32
B65B51/10 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163802
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108281
【氏名又は名称】ゼネラルパッカー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】安田 雅克
(72)【発明者】
【氏名】大島 雅志
【テーマコード(参考)】
3E094
【Fターム(参考)】
3E094AA12
3E094CA04
3E094CA06
3E094CA22
3E094DA06
3E094FA21
3E094GA01
3E094GA23
3E094HA08
(57)【要約】
【課題】シーラーが被シール部へ印加する熱量を制御して、シーラント層を適切に溶融して、シール不良を防ぐと共に高温の影響がシール装置外へ波及することを防止し、省エネ効果を高めると共に、冷却器が被シール部から吸収する熱量を制御して、当該被シール部のシール強度をシールの目的に応じて調整するようにしたシール装置と当該シール装置の制御方法を提供する。
【解決手段】シール装置10は、テストシールを行って基本プロファイルを形成する。当該基本プロファイル上で、シーラント層を構成する熱溶着性合成樹脂材が溶融する第1温度(T2)、さらに合成樹脂材に含まれる高分子ポリマー鎖が解かれ完全に溶融する最高温度Tmaxである第2温度、溶融し所定の圧力で押圧されて一体化したシーラント層が再結晶化する第3温度(T4)が測定抽出される。特に第3温度を基に、当該第3温度までの到達速度を制御して、シール強度を目的に応じて調整する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ポリマーを含有する熱溶着性合成樹脂からなる一のシーラント層と他のシーラント層を対向配置してなる被シール部を備えた包材に対し、
当該包材の所定部位を挟持し、前記被シール部へ所定の圧力と所定の熱量を印加するシーラー対と、
前記被シール部を冷却する冷却器とからなり、
前記シーラー対が、前記シーラント層を前記熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させ、
前記冷却器が、融けて一体化した前記シーラント層を冷却して、当該シーラント層を再結晶化させて、
前記被シール部をシールすることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記シール装置に、
前記被シール部をシールするときに前記シーラー対と前記冷却によって変化する前記被シール部の温度又は圧力に係る一連の温度変化又は圧力変化を予め記録した所定の基本プロファイルに基づいて、前記シーラー対及び前記冷却装置を制御する制御部を設け、
前記シーラー対が、前記シーラント層を前記熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させるとき、
前記制御部が、前記基本プロファイルに係る前記温度に基づいて、前記シーラー対が前記被シール部へ印加する前記熱量を制御して、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの溶融度を調整し、
前記冷却器が、融けて一体化した前記シーラント層を冷却するとき、
前記制御部が、前記基本プロファイルに係る前記温度に基づいて、前記冷却器が前記被シール部を冷却し、吸収する前記熱量を制御して、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの再結晶度を調整して、
前記シーラー対が溶融させた前記高分子ポリマーを前記冷却器が冷却して再結晶化させる際に、当該高分子ポリマーが規則的に折り畳まれて形成される球晶の大きさを、前記被シール部の温度変化に応じて調整して、前記被シール部をシールするようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記被シール部の前記温度を検出し、当該温度を温度信号に変換して出力する温度センサを設け、
当該温度センサが出力した前記温度信号に係る前記温度、又は当該温度に応じて前記シーラー対が印加する所定の前記圧力に基づいて、前記制御部が前記基本プロファイルを形成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項4】
前記球晶の大きさが、大気雰囲気の下で自然冷却したときに形成される球晶の大きさよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項5】
前記球晶の大きさが、大気雰囲気の下で自然冷却したときに形成される球晶の大きさと略同じか、若しくは当該球晶の大きさよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項6】
前記制御部が、前記基本プロファイルに係る前記圧力に基づいて、前記シーラー対が前記被シール部を圧接する前記圧力を制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項7】
前記シーラー対が前記被シール部を圧接するとき、前記制御部が、互いに相対して押圧している前記シーラー対の一方又は双方を所定の周波数で振動させるようにしたことを特徴とする請求項6に記載のシール装置。
【請求項8】
前記周波数が、50Hz~1kHzであることを特徴とする請求項7に記載のシール装置。
【請求項9】
高分子ポリマーを含有する熱溶着性合成樹脂からなる一のシーラント層と他のシーラント層を対向配置してなる被シール部を備えた包材に対し、
当該包材の所定部位を挟持し、前記被シール部へ所定の圧力と所定の熱量を印加するシーラー対と、
前記被シール部を冷却する冷却器と、
前記シーラー対及び前記冷却装置を制御する制御部とからなるシール装置であって、
前記制御部が前記シーラー対を制御し、当該シーラー対が前記シーラント層を前記熱量で溶融すると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させる処理を行う加熱圧接工程と、
前記制御部が前記冷却器を制御し、当該冷却器が融けて一体化した前記シーラント層を冷却して、当該シーラント層を再結晶化させる処理を行う冷却工程を備えるシール装置の制御方法において、
前記制御部は、前記被シール部をシールするときに前記シーラー対と前記冷却によって変化する前記被シール部の温度又は圧力に係る一連の温度変化又は圧力変化を予め記録した所定の基本プロファイルを備え、
前記加熱圧接工程は、第1加熱圧接工程と、第2加熱圧接工程からなり、
前記第1加熱圧接工程は、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が上昇する第1温度上昇率にしたがって、シール開始温度から所定の第1温度に到達するまで前記シーラー対に前記シーラント層へ所定の熱量を印加させる処理を行い、
前記第2加熱圧接工程は、前記第1加熱圧接工程に続いて、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が上昇し、かつ、前記第1温度上昇率よりも緩やかに温度が上昇する第2温度上昇率にしたがって、前記第1温度から所定の第2温度に到達するまで前記シーラー対に前記シーラント層へ所定の熱量を印加させる処理を行って、
前記シーラー対が、前記シーラント層を前記熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させるときに、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの溶融度を調整し、
前記冷却工程は、第1冷却工程と、第2冷却工程からなり、
前記第1冷却工程は、前記第2加熱圧接工程に続いて、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が下降する第1温度下降率を基準にした所定の第3温度下降率で、前記第2温度から所定の第3温度に到達するまで前記冷却器に前記シーラント層を冷却させる処理を行い、
前記第2冷却工程は、前記第1冷却工程に続いて、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が下降し、かつ、前記第1温度下降率と略同じか若しくは当該第1温度下降率よりも緩やかに温度が下降する第2温度下降率にしたがって、前記第3温度からシール終了温度まで前記冷却器に、若しくは大気解放雰囲気で前記シーラント層を冷却させる処理を行って、
前記冷却器が、融けて一体化した前記シーラント層を冷却するときに、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの再結晶度を調整して、
前記シーラー対が溶融させた前記高分子ポリマーを前記冷却器が冷却して再結晶化させる際に、当該高分子ポリマーが規則的に折り畳まれて形成される球晶の大きさを、前記被シール部の温度変化に応じて調整して、前記被シール部をシールするようにしたことを特徴とするシール装置の制御方法。
【請求項10】
前記シール装置に、前記被シール部の前記温度を検出し、当該温度を温度信号に変換して出力する温度センサを設け、
当該温度センサが出力した前記温度信号に係る前記温度、又は当該温度に応じて前記シーラー対が印加する所定の前記圧力に基づいて、前記制御部が前記基本プロファイルを形成する処理を行うプロファイル形成工程を設けたことを特徴とする請求項9に記載のシール装置の制御方法。
【請求項11】
前記基本プロファイルに基づいて、前記第3温度下降率を、前記第1温度下降率よりも大きくして、前記シーラント層が急冷されるようにしたことを特徴とする請求項9に記載のシール装置の制御方法。
【請求項12】
前記基本プロファイルに基づいて、前記第3温度下降率を、前記第1温度下降率と略同じ、若しくは当該自然温度下降率よりも小さくして、前記シーラント層が緩やかに冷却されるようにしたことを特徴とする請求項9に記載のシール装置の制御方法。
【請求項13】
前記制御部が、前記第1加熱圧接工程と前記第2加熱圧接工程において、前記基本プロファイルに基づいて、それぞれ異なる前記圧力で前記シーラント層を圧接するように前記シーラー対を制御するようにしたことを特徴とする請求項9に記載のシール装置の制御方法。
【請求項14】
前記制御部が、前記第1加熱圧接工程と前記第2加熱圧接工程のいずれか一方又は双方において、互いに相対して押圧している前記シーラー対のいずれか一方又は双方を所定の周波数で振動させる処理を行うようにしたことを特徴とする請求項13に記載のシール装置の制御方法。
【請求項15】
前記周波数が、50Hz~1kHzであることを特徴とする請求項14に記載のシール装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置及びシール装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装機に組み込まれ、包装袋又は包装容器の蓋等、包材をシールするシール装置は、高温のヒータバーの熱で包材の被シール部を溶かして溶着させるヒートシール装置、超音波で微細振動するホーンをアンビルへ押圧して摩擦熱を発生させて被シール部を溶かして溶着させる超音波シール装置、高抵抗値のヒータ線へ瞬間的にパルス状の大電流を流して発熱させて被シール部を溶かして溶着させるインパルス式シール装置等が知られている。
上記シール装置は、いずれも被シール部を熱で溶かして溶着している。
ここで、被シール部は、たとえば包装袋を構成するフィルム状の包材の場合、非熱溶着・溶解性の素材からなる基層にポリプロピレン等の熱溶着性合成樹脂材からなるシーラント層を積層させ、当該シーラント層を対向配置して包装袋が構成されている。
そして、対向配置された一のシーラント層と他のシーラント層へ少なくとも合成樹脂材が十分に溶融する熱量が上記のシール装置によって印加され、相対して溶融した両シーラント層を基層側からシール装置が押圧して一体化するように構成されている。その後、被シール部は、大気雰囲気の下で自然冷却又は冷却器にて冷却される。これによって、一体化したシーラント層が再結晶化して固化し、被シール部をシールすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】引用なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の各シール装置が有するシーラーは、シーラント層を構成する合成樹脂材が十分に溶融しないままに被シール部が溶着されることによるシール不良が起きることを防止すべく、合成樹脂材の融点以上に加熱される。これによって、シーラント層を十分に溶解して被シール部を溶着することができる一方で、シーラント層を過剰に溶融してしまい、被シール部の仕上がりが悪化したり、またシーラント層が広範囲亘って必要以上に溶け、被シール部がズレて溶着されたりして、シール不良が発生するおそれがあり、さらに、高温に発熱するシール装置を包装機に組み込んだとき、シール装置が熱源となって、高温の影響が包装機全体へ波及するおそれ、さらにはシール装置におけるエネルギーロスが大きくなるおそれがある。
【0005】
そして、溶着された被シール部は、従来、大気雰囲気下で自然冷却され、或いは風を当てる等して強制冷却されている。
自然冷却の場合は、被シール部がゆっくりと冷まされる。このとき、シーラント層の合成樹脂材を構成する高分子ポリマー鎖は、溶融状態から固化するにしたがって徐々に再結晶化が行われ、規則的な折りたたみ構造を形成しながら凝集して球晶と呼ばれる球状の半結晶体が形成されることが知られている。当該球晶自体の構造は、規則的な折りたたみ構造(ラメラ構造)であるため頑丈であるが、球晶同士は、球晶へ形成されなかった非晶質(アモルファス)状態の短分子鎖で結合されていることから、当該球晶が大きく育てば育つほどに球晶同士を結ぶ短分子鎖が細長くなり、球晶間の結合力が弱くなってしまう。このように、溶着された被シール部が自然冷却されると、シーラント層内は脆い結晶構造となるので、当該被シール部の耐衝撃性は低く、シール強度が低くなるおそれがある。
一方、強制冷却の場合は、冷却器を用いて急速に被シール部が冷まされる。高温環境下で溶融した高分子ポリマー鎖を急速に冷却すると、溶融状態で複雑に絡み合っていた構造がほぼそのままで固まるため、上記の球晶が大きく育たず固化した後も分子が無秩序に並んだ構造となることが知られている。そのため、所定の条件の下で急速に冷却した場合、被シール部の耐衝撃性が高く、シール強度を高くすることができる。
さらに、シーラント層が積層される基層は、包材全体の強度を確保するため、一般的に高分子ポリマーの配向を延伸方向へ揃えることによって強度が上げられている。しかし、上記のようにシーラーから被シール部へ過剰に熱が印加された場合、シーラント層だけに止まらず基層が溶融するおそれがある。そして、溶融した基層がシーラント層と共に上記のように冷却された場合、高分子ポリマーの配向を揃えて形成した基層のポリマー鎖が切断され、或いは球晶が形成され、配向が乱れて組織が脆弱化して、基層の強度が落ちるおそれがある。
ここで、包材の被シール部は徒にシール強度を上げれば良いというものではなく、シールする場所によって、開けやすくするためにシール強度、引っ張り強度を落としたり、破断し難くするためにシール強度を上げたりする等して適宜調整する必要がある。
従来、シール強度の調整には、冷却に要する時間、冷却速度等は積極的に制御されておらず、包装機及びシール装置を設置する技術者の経験則、或いは実機の本格的な稼働の前に長期に亘って試行を重ねて冷却タイミングが調整されていた。
そのため、従来のように経験則に基づき、或いは長期に亘る試行によってシール強度を調整することは、非常に手間がかかり、シール装置ひいては包装機の納期、稼働開始時期等に大きく影響を及ぼしていた。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、シーラーが被シール部へ印加する熱量を制御して、シーラント層を適切に溶融して、シール不良を防ぐと共に高温の影響がシール装置外へ波及することを防止し、省エネ効果を高めると共に、冷却器が被シール部から吸収する熱量を制御して、当該被シール部のシール強度をシールの目的に応じて調整するようにしたシール装置と当該シール装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のシール装置は、高分子ポリマーを含有する熱溶着性合成樹脂からなる一のシーラント層と他のシーラント層を対向配置してなる被シール部を備えた包材に対し、
当該包材の所定部位を挟持し、前記被シール部へ所定の圧力と所定の熱量を印加するシーラー対と、
前記被シール部を冷却する冷却器とからなり、
前記シーラー対が、前記シーラント層を前記熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させ、
前記冷却器が、融けて一体化した前記シーラント層を冷却して、当該シーラント層を再結晶化させて、前記被シール部をシールすることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載のシール装置は、請求項1に記載の発明において、前記シール装置に、
前記被シール部をシールするときに前記シーラー対と前記冷却によって変化する前記被シール部の温度又は圧力に係る一連の温度変化又は圧力変化を予め記録した所定の基本プロファイルに基づいて、前記シーラー対及び前記冷却装置を制御する制御部を設け、
前記シーラー対が、前記シーラント層を前記熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させるとき、
前記制御部が、前記基本プロファイルに係る前記温度に基づいて、前記シーラー対が前記被シール部へ印加する前記熱量を制御して、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの溶融度を調整し、
前記冷却器が、融けて一体化した前記シーラント層を冷却するとき、
前記制御部が、前記基本プロファイルに係る前記温度に基づいて、前記冷却器が前記被シール部を冷却し、吸収する前記熱量を制御して、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの再結晶度を調整して、
前記シーラー対が溶融させた前記高分子ポリマーを前記冷却器が冷却して再結晶化させる際に、当該高分子ポリマーが規則的に折り畳まれて形成される球晶の大きさを、前記被シール部の温度変化に応じて調整して、前記被シール部をシールするようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載のシール装置は、請求項1に記載の発明において、前記被シール部の前記温度を検出し、当該温度を温度信号に変換して出力する温度センサを設け、
当該温度センサが出力した前記温度信号に係る前記温度、又は当該温度に応じて前記シーラー対が印加する所定の前記圧力に基づいて、前記制御部が前記基本プロファイルを形成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載のシール装置は、請求項1に記載の発明において、前記球晶の大きさが、大気雰囲気の下で自然冷却したときに形成される球晶の大きさよりも小さいことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載のシール装置は、請求項1に記載の発明において、前記球晶の大きさが、大気雰囲気の下で自然冷却したときに形成される球晶の大きさと略同じか、若しくは当該球晶の大きさよりも大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載のシール装置は、請求項1に記載の発明において、前記制御部が、前記基本プロファイルに係る前記圧力に基づいて、前記シーラー対が前記被シール部を圧接する前記圧力を制御するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載のシール装置は、請求項6に記載の発明において、前記シーラー対が前記被シール部を圧接するとき、前記制御部が、互いに相対して押圧している前記シーラー対の一方又は双方を所定の周波数で振動させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載のシール装置は、請求項7に記載の発明において、前記周波数が、50Hz~1kHzであることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載のシール装置の制御方法は、高分子ポリマーを含有する熱溶着性合成樹脂からなる一のシーラント層と他のシーラント層を対向配置してなる被シール部を備えた包材に対し、
当該包材の所定部位を挟持し、前記被シール部へ所定の圧力と所定の熱量を印加するシーラー対と、
前記被シール部を冷却する冷却器と、
前記シーラー対及び前記冷却装置を制御する制御部とからなるシール装置であって、
前記制御部が前記シーラー対を制御し、当該シーラー対が前記シーラント層を前記熱量で溶融すると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させる処理を行う加熱圧接工程と、
前記制御部が前記冷却器を制御し、当該冷却器が融けて一体化した前記シーラント層を冷却して、当該シーラント層を再結晶化させる処理を行う冷却工程を備えるシール装置の制御方法において、
前記制御部は、前記被シール部をシールするときに前記シーラー対と前記冷却によって変化する前記被シール部の温度又は圧力に係る一連の温度変化又は圧力変化を予め記録した所定の基本プロファイルを備え、
前記加熱圧接工程は、第1加熱圧接工程と、第2加熱圧接工程からなり、
前記第1加熱圧接工程は、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が上昇する第1温度上昇率にしたがって、シール開始温度から所定の第1温度に到達するまで前記シーラー対に前記シーラント層へ所定の熱量を印加させる処理を行い、
前記第2加熱圧接工程は、前記第1加熱圧接工程に続いて、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が上昇し、かつ、前記第1温度上昇率よりも緩やかに温度が上昇する第2温度上昇率にしたがって、前記第1温度から所定の第2温度に到達するまで前記シーラー対に前記シーラント層へ所定の熱量を印加させる処理を行って、
前記シーラー対が、前記シーラント層を前記熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を前記圧力で互いに圧接して一体化させるときに、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの溶融度を調整し、
前記冷却工程は、第1冷却工程と、第2冷却工程からなり、
前記第1冷却工程は、前記第2加熱圧接工程に続いて、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が下降する第1温度下降率を基準にした所定の第3温度下降率で、前記第2温度から所定の第3温度に到達するまで前記冷却器に前記シーラント層を冷却させる処理を行い、
前記第2冷却工程は、前記第1冷却工程に続いて、前記制御部が、前記基本プロファイルに基づいて算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が下降し、かつ、前記第1温度下降率と略同じか若しくは当該第1温度下降率よりも緩やかに温度が下降する第2温度下降率にしたがって、前記第3温度からシール終了温度まで前記冷却器に、若しくは大気解放雰囲気で前記シーラント層を冷却させる処理を行って、
前記冷却器が、融けて一体化した前記シーラント層を冷却するときに、前記熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの再結晶度を調整して、
前記シーラー対が溶融させた前記高分子ポリマーを前記冷却器が冷却して再結晶化させる際に、当該高分子ポリマーが規則的に折り畳まれて形成される球晶の大きさを、前記被シール部の温度変化に応じて調整して、前記被シール部をシールするようにしたことを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載のシール装置の制御方法は、請求項9に記載の発明において、前記シール装置に、前記被シール部の前記温度を検出し、当該温度を温度信号に変換して出力する温度センサを設け、
当該温度センサが出力した前記温度信号に係る前記温度、又は当該温度に応じて前記シーラー対が印加する所定の前記圧力に基づいて、前記制御部が前記基本プロファイルを形成する処理を行うプロファイル形成工程を設けたことを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載のシール装置の制御方法は、請求項9に記載の発明において、前記基本プロファイルに基づいて、前記第3温度下降率を、前記第1温度下降率よりも大きくして、前記シーラント層が急冷されるようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載のシール装置の制御方法は、請求項9に記載の発明において、前記基本プロファイルに基づいて、前記第3温度下降率を、前記第1温度下降率と略同じ、若しくは当該自然温度下降率よりも小さくして、前記シーラント層が緩やかに冷却されるようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載のシール装置の制御方法は、請求項9に記載の発明において、前記制御部が、前記第1加熱圧接工程と前記第2加熱圧接工程において、前記基本プロファイルに基づいて、それぞれ異なる前記圧力で前記シーラント層を圧接するように前記シーラー対を制御するようにしたことを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載のシール装置の制御方法は、請求項13に記載の発明において、前記制御部が、前記第1加熱圧接工程と前記第2加熱圧接工程のいずれか一方又は双方において、互いに相対して押圧している前記シーラー対のいずれか一方又は双方を所定の周波数で振動させる処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載のシール装置の制御方法は、請求項14に記載の発明において、前記周波数が、50Hz~1kHzであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るシール装置によれば、制御部は、シーラー対と冷却器によって変化する被シール部の温度又は圧力を一連の温度変化又は圧力変化として予め記録形成した所定の基本プロファイルに係る被シール部、すなわちシーラント層の温度に基づいて、シーラー対が被シール部へ印加する所定の熱量を制御して、シーラント層を構成する熱溶着性合成樹脂に含まれる高分子ポリマーの溶融度を調整するようにした。これによって、シーラント層を過剰に溶融させることなく、必要十分な範囲で溶融して、シール不良を防ぐと共に高温の影響がシール装置外へ波及することを防止することができ、さらにはシール装置を省エネ化することができる。
また、制御部は、基本プロファイルに係る被シール部、すなわちシーラント層の温度に基づいて、冷却器が被シール部を冷却し、吸収する所定の熱量を制御して、シーラント層を構成する熱溶着性合成樹脂に含まれる前記高分子ポリマーの再結晶度を調整するようにした。
このとき、再結晶度を急速に進める、すなわち、被シール部を、たとえば、大気雰囲気下における自然冷却よりも急速に冷却すると、シーラント層内に小さな球晶を形成することができる。そして、当該小さな球晶間の隙間は、溶融状態で複雑に、かつ無秩序に並んで絡み合っていた高分子ポリマーで埋め、略そのままの状態で固化させることができるので、被シール部のシール強度を高くすることができる。
一方、再結晶度を緩やかに進める、すなわち、被シール部を、たとえば、大気雰囲気下における自然冷却と同様か、それよりも緩やかに冷却すると、シーラント層内に大きな球晶を形成することができる。このような大きな球晶同士は非晶質な短分子鎖で互いに結合されるので、被シール部のシール強度を低くすることができる。
したがって、冷却器が被シール部を冷却し、吸収する熱量を制御部が制御することによって、当該被シール部のシール強度をシールの目的に応じて調整することができる。
【0023】
本発明に係るシール装置の制御方法によれば、制御部がシーラー対と冷却器によって変化する被シール部の温度又は圧力を一連の温度変化又は圧力変化として予め記録形成した所定の基本プロファイルを形成する処理を行うプロファイル形成工程を設け、さらには、シーラー対が、シーラント層を所定の熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を圧力で互いに圧接して一体化させる処理を行う加熱圧接工程と、冷却器が、融けて一体化したシーラント層を冷却して、当該シーラント層を再結晶化させる処理を行う冷却工程を備えるシール装置において、まずは、加熱圧接工程を、第1加熱圧接工程と、第2加熱圧接工程から構成するようにした。
ここで、第1加熱圧接工程は、基本プロファイルに係る温度に基づいて制御部が算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が上昇する第1温度上昇率にしたがって、当該制御部が、シール開始温度から所定の第1温度に到達するまでシーラー対にシーラント層へ所定の熱量を印加させる処理を行うようにした。そして、続いて、第2加熱圧接工程は、基本プロファイルに係る温度に基づいて制御部が算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が上昇し、かつ、第1温度上昇率よりも緩やかに温度が上昇する第2温度上昇率にしたがって、当該制御部が、所定の第1温度から所定の第2温度に到達するまでシーラー対にシーラント層へ所定の熱量を印加させる処理を行うようにした。
このように、第1加熱圧接工程と第2加熱圧接工程によって、シーラー対が、シーラント層を所定の熱量で溶融させると共に、当該シーラント層を所定の圧力で互いに圧接して一体化させるときに、熱溶着性合成樹脂に含まれる高分子ポリマーの溶融度を調整するようにした。
これによって、加熱圧接工程においては、シーラント層を構成する熱溶着性合成樹脂だけではなく、当該熱溶着性合成樹脂に含まれる高分子ポリマーを十分に解きほぐして溶解させることができ、溶解するに必要十分な所定の熱量を被シール部へ適宜印加することによって、被シール部を過剰に溶解することによるシール不良を防止することができる。
また、冷却工程を、第1冷却工程と、第2冷却工程から構成するようにした。
ここで、第1冷却工程は、第2加熱圧接工程に続いて、基本プロファイルに係る温度に基づいて制御部が算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が下降する第1温度下降率にしたがって、当該制御部が、所定の第2温度から所定の第3温度に到達するまで冷却器にシーラント層を冷却させる処理を行うようにした。そして、続いて、第2冷却工程は、基本プロファイルに係る温度に基づいて制御部が算出した所定の単位時間当たりに所定の割合で温度が下降し、かつ、第1温度下降率よりも緩やかに温度が下降する第2温度下降率にしたがって、当該制御部が、所定の第3温度からシール終了温度まで冷却器に、若しくは大気解放雰囲気でシーラント層を冷却させる処理を行うようにした。
このように、第1冷却工程と第2冷却工程によって、冷却器が、融けて一体化したシーラント層を冷却するときに、熱溶着性合成樹脂に含まれる高分子ポリマーの再結晶度を調整するようにした。
このとき、再結晶度を急速に進める、すなわち、第1冷却工程で第1温度下降率を大きく取って被シール部を急速に冷却し、その後、第2冷却工程で第1温度下降率よりも緩やかな第2温度下降率で冷却器、或いは大気解放雰囲気下で被シール部を冷却した場合、シーラント層内に小さな球晶を形成することができる。そして、当該小さな球晶間の隙間は、溶融状態で複雑に、かつ無秩序に並んで絡み合っていた高分子ポリマーで埋め、略そのままの状態で固化させることができるので、被シール部のシール強度を高くすることができる。
一方、再結晶度を緩やかに進める、すなわち、第1冷却工程で第1温度下降率を小さく取って被シール部を緩やかに冷却し、さらに、第2冷却工程で第1温度下降率よりも緩やかな第2温度下降率で冷却器、或いは大気解放雰囲気下で被シール部を冷却した場合、シーラント層内に大きな球晶を形成することができる。このような大きな球晶同士は非晶質な短分子鎖で互いに結合されるので、被シール部のシール強度を低くすることができる。
これによって、冷却工程においては、シーラント層を構成する熱溶着性合成樹脂を単に冷却して固化させるだけではなく、当該熱溶着性合成樹脂に含まれる高分子ポリマーからなる球晶の大きさをシールの目的に応じて変化させることができ、被シール部に蓄積された所定の熱量を冷却器が適宜冷却、吸熱することによって、被シール部のシール強度をシールの目的に応じて調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施例に係るシール装置の構成の概略を示すブロック図である。
図2】第1実施例に係るシール装置がシールする包装袋の構成の概略を示す説明図である。
図3】第1実施例に係るシール装置のシーラーと温度センサの構成の概略を示す説明図である。
図4】第1実施例に係るシール装置によるテストシール後に得られた基本プロファイルに係るグラフ図である。
【実施例0025】
本発明に係る実施例を、添付した図面にしたがって説明する。図1は、本実施例に係るシール装置の構成の概略を示すブロック図である。
本実施例に係るシール装置10は、包装機又は包装機及びその他の装置からなる一連の包装工程に組み込まれ、包装袋の袋口をシールして封止したり、包装容器をシールして覆蓋したりする等包材をシールするように構成された装置である。
ここで、包材について、たとえば、包装袋Bは、一枚のフィルムを折り返し、又は一対のフィルムを貼り合わせる等して構成されている。当該フィルムは、図2に示すように、非熱溶着性の素材からなる基層20に、熱溶着性のシーラント層21を積層して構成されている。そして、包装袋Bは、シーラント層21を互いに対向するよう内側に配して形成されている。このとき、図2に示すように、包装袋Bの袋口近傍に設けられた封止する部分を被シール部25とし、シール装置10は、当該被シール部25をシールして包装袋Bを封止するように構成されている。シール装置10の具体的な構成については以下説明する。
【0026】
シール装置10は、図1に示すように、互いに相対する一対のシーラー対と11,11、包材の被シール部を冷却する冷却器12と、被シール部25の温度を検出する温度センサ13と、制御部14とを有している。
シーラー対11,11は、被シール部25を所定の圧力で挟持し、当該被シール部25へ所定の熱量を印加可能に構成されている。シーラー対11,11は、一のシーラント層21と対向配置された他のシーラント層21を所定の熱量を印加して溶解し、被シール部25外側面の基層20側からシーラント層21側へ向かって互いに所定の圧力で押圧して、溶解したシーラント層21を一体化させるように構成されている。このとき、シーラー対11,11の双方又はいずれか一方がシーラー対11,11の長手方向に沿った突条を有している場合、シーラー対11,11の長手方向に対して包装袋Bの幅方向を合わせ、シーラー対11,11が当該幅方向に沿って被シール部25を溶着したとき、被シール部25は、シーラー対11,11の突条に沿う形で包装袋Bの幅方向に沿って線状25aにシールされ、包装袋Bの袋口が封止される。
また、シーラー対11,11を加熱する方法によってシール装置10は様々な方式に分けることができ、たとえば、ヒートシール装置、超音波シール装置、インパルスシール装置等が知られている。
ヒートシール装置は、シーラー対11,11が所定の温度に発熱するヒータバーから構成されている。ヒータバーが被シール部25を所定の圧力で挟持すると共に、ヒータバーから被シール部25へ所定の熱量が印加されてシーラント層21が溶着される。
超音波シール装置は、シーラー対11,11が超音波振動で発信するホーンと当該超音波振動を受けるアンビルとからなり、ホーンとアンビルの間に挟まれた被シール部25をホーンがアンビルへ向かって所定の圧力で押圧するように構成されている。これによって、ホーンが被シール部25を擦って発生した所定熱量の摩擦熱でシーラント層21が溶着されている。
また、インパルスシール装置は、シーラー対11,11が高抵抗の電極を備えた電熱バーから構成されている。そして、電熱バーが被シール部25を所定の圧力で挟持すると共に、電極へ瞬間的なパルス状の大電流を通電して発熱させて、所定の熱量を被シール部25へ印加して、シーラント層21が溶着されている。
なお、本実施例に係るシール装置10は、これらのシール装置に限定されることなく、被シール部25を所定の圧力で挟持すると共に所定の熱量を印加するシーラー対11,11を備え、シーラント層21を溶着させるように構成されたシール装置10であれば良い。
【0027】
冷却器12は、シーラー対11,11が溶融した被シール部25を冷却し、或いは当該被シール部25から所定の熱量を吸収するように構成されている。冷却器12が被シール部25を冷却、吸熱するとき、冷却速度、すなわち、シーラント層21に蓄積されている熱量を所定の時間で単位時間あたりどれだけ冷却、或いは吸熱するかが制御部14で制御される。
冷却器12は、たとえば、シーラー対11,11が被シール部25を解放後、当該被シール部25へ直接風を当てて冷やすように構成した空冷ファンを有するエアブロー装置、または、熱源となるホーン又はアンビルから水冷又は空冷で排熱を吸収すると共にホーンとアンビルで挟まれた被シール部25をも冷却するチラー装置、或いは、シーラー対11,11として働くヒータバーが被シール部25を溶着して、当該被シール部25を解放した後、当該ヒータバーと入れ替わるように、略室温又はそれ以下の温度に冷却された冷たいクーラバーで被シール部25を挟持して、当該クーラバーと熱せられた被シール部25との間で熱平衡を取って冷却する装置等がある。なお、本実施例に係る冷却器12は、後述するように冷却時間、冷却効率等を容易に制御可能なエアブロー装置を例示したが、これに限定されるものではなく、上記のチラー装置、クーラバー或いはこれらに類する冷却装置類を用いても良い。
また、シーラー対11,11の一方のシーラー11を高温に熱し、他方のシーラー11を一方のそれよりも低い温度、好ましくは被シール部25を冷却可能な温度となるように構成し、高温シーラー11と低温シーラー11間に被シール部25を挟持圧接してシールした後、高温シーラー11を被シール部25から離す一方で、引き続き低温シーラー11側へ被シール部25を抑えつけて冷却するといったシーラー対11,11の一方に加熱部、他方に冷却部を備えるように構成したヒートシール装置を用いても良い。
【0028】
温度センサ13は、被シール部25の温度を検出して電気的に変換した温度信号を制御部14へ出力するように構成されている。温度センサ13が被シール部25の温度を検出する箇所は、被シール部25の少なくとも一点、若しくは複数のポイントから検出するように構成することが好ましい。検出するポイントは、たとえば、図3に示すように、シーラー対11,11の両端部及び中央部近傍に相当する包装袋Bの被シール部25の溶着部分25aで、シーラー対11,11が包装袋Bの被シール部25へ印加する熱を検出可能なポイントが好ましい。またさらに好ましくは、後述する基本プロファイルを形成するテストシールを行っている間は、図3に示すように、温度センサ13を被シール部25で溶着される部分25aの対向するシーラント層21間に挿入するようにしても良い。これによって、被シール部25の温度分布・温度変化の傾向を温度信号に基づいて把握することができる。
なお、本実施例に係る温度センサ13は、熱電対を使用したものからなるが、これに限定されるものではなく、被シール部25の温度を検出可能なセンサであれば良い。
そして、シーラー対11,11の比熱、質量が既知であり、冷却器12の冷却効率も既知であることから、被シール部25の温度を検出することによって、被シール部25へ印加され、或いは冷却された熱量を計測することができる。
【0029】
制御部14は、温度センサ13が出力した温度信号を取得し、当該温度信号に基づいて被シール部25の温度分布・温度変化を記録して後述するシール温度プロファイルを作成し、当該シール温度プロファイルに係る温度分布・温度変化に基づいて、シーラー対11,11が被シール部25へ印加する熱量を制御すると共に、当該シーラー対11,11が被シール部25を互いに押圧する圧力を制御するように構成されている。また、制御部14は、冷却器12が被シール部25を冷却し、或いは当該被シール部25から吸収する熱量を制御するように構成されている。
より詳しくは、制御部14は、シール対象の包材、本実施例では包装袋Bに対して、予め被シール部25を少なくとも1回乃至は複数回のテストシールを行って、シール対象の包材独自の温度変化を表すシール温度プロファイルを形成する。そして、テストシール後は、作成したシール温度プロファイルに基づいて、被シール部25が所定の温度変化を示すように、シーラー対11,11が印加する熱量に係る温度、及び冷却器12が冷却、吸収する熱量に係る温度について、シーラー対11,11と冷却器12を制御するように構成されている。当該シール温度プロファイルの形成方法とその後の温度制御方法については後述する。
これによって、被シール部25に対して適切な所定の熱量を印加すると共に適切な所定の圧力で押圧してシーラント層21を溶融し、一体化させて溶着し、冷却されて固化したシーラント層21の強度を自在に調整することができる。
【0030】
上記の構成を有するシール装置10の制御方法を以下説明する。
まず、シール装置10は、少なくとも1回乃至は複数回の包材のテストシールを行って、包装機が設置されている工場内の気温を基準とした常温の大気雰囲気下で図4に示すようなシール温度プロファイルを作成する処理を行うプロファイル形成工程を有している。当該プロファイル形成工程で作成されるシール温度プロファイルを、以下「基本プロファイル」と称し、プロファイル形成工程について説明する。
図4に示した基本プロファイルに係るグラフは、横軸が時間、縦軸がシーラント層21の温度である。グラフ上で温度が変化する点を、Tmax,T1,T2,T3,T4とし、シール開始温度をT0としたとき、T0-T2間の温度傾斜をa、T2-Tmax間の温度傾斜をb、Tmax-T3間の温度傾斜をc、T3-T4間の温度傾斜をd、T4以降の温度傾斜をeとし、T2-Tmax間の温度差をδTとする。また、T0からTmaxに到達するまでの時間をδtmaxとする。
【0031】
シーラー対11,11が被シール部25を挟持し、設定された所定の圧力で当該被シール部25を押圧したときからシールが開始される。このとき、所定の温度で発熱しているシーラー対11,11に加熱され、被シール部25は包材の熱伝導係数、比熱等にしたがって温度傾斜aで急激に温度が上昇する。このとき、温度傾斜aは温度T1で傾きが若干変化して、温度T2まで上昇している。この温度T1で若干変化した傾きを均し、シール開始温度T0から温度T2に至る温度傾斜aについて、所定の単位時間当たりに所定の割合で上昇する温度比率を第1温度上昇率とする。
傾きが若干変化した理由は、本実施例に使用した包装袋Bのシーラント層21が、高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」とする)と低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」とする)を混合した二種類の熱溶着性合成樹脂材から形成され、HDPEの融点が137℃、LDPEの融点が115℃とそれぞれ融点が異なることによるものであり、基本プロファイル上の温度T1はLDPEの結晶溶融温度、温度T2はHDPEの結晶溶融温度である。
なお、第1温度上昇率で温度T2に至るまで昇温している間は、シーラント層21を構成する熱溶着性合成樹脂材が完全に相溶していないことによるものである。そのため、本実施例に係る基本プロファイルの場合は、T2に至るまでにT1で温度傾斜が1回変化しているが、シーラント層21を構成している素材が複数の熱溶着性合成樹脂材からなる場合は、温度傾斜aの傾きがT1の一回ではなく、複数回変化する場合がある。
そして、温度T2を境にして温度傾斜aが大きく温度傾斜bへ変化している。当該温度傾斜bを示す所定の単位時間当たりに所定の割合で上昇する温度比率を第2温度上昇率とする。ここで、第1温度上昇率と第2温度上昇率との境界であって温度傾斜が大きく変化したポイントである温度T2を第1温度とする。
第2温度上昇率は、第1温度上昇率と比べて緩やかに温度が上昇している。これは、シーラー対11,11に溶融されて液相状態になっているシーラント層21を構成する熱溶着性合成樹脂材に含まれている高分子ポリマーの結晶体が溶融し始めているからであって、結晶状の高分子ポリマーの結晶が溶融分解されるにあたって、当該高分子ポリマーに吸収された熱エネルギーが当該高分子ポリマーの運動エネルギーに変換されることによるものである。これによって、T2-Tmax間では、シーラント層21内で溶け残っていた高分子ポリマーが解けて結晶体が溶融し、シーラー対11,11に接触しているシーラント層21全体が溶融しているものと推察できる。
第1温度上昇率及び第2温度上昇率は、包装袋B及びシーラント層21の材質構成、たとえば、熱伝導性又は放熱性に係る比熱若しくは熱容量、シーラント層21と基層20の厚み、シーラー対11,11と接触している溶着される部分25aの面積等によって変化する。したがって、上記したようにテストシールを行って、適切なシール状態を適宜調整することが重要である。
【0032】
最高温度Tmaxは、上記したように、シーラント層21全体が溶融したと基本プロファイル上で推定された温度である。被シール部25の温度がTmaxとなったとき、シーラー対11,11は被シール部25を解放するように制御される。これによって、シーラー対11,11が被シール部25をシールする時間が、δtmaxとなる。そこで、シーラー対11,11による加熱が終了して被シール部25は冷却へ移行する最高温度Tmaxのポイントを第2温度とする。
【0033】
ここで、図4に示す基本プロファイル上において、第1温度上昇率に係る温度傾斜a及び第2温度上昇率に係る温度傾斜bを斜辺とし、底辺をδtmax、高さをTmaxとする略三角形の面積Qは、シーラー対11,11が当該シーラント層21へ印加した熱量、すなわち、溶融エネルギーに等しい。そのため、基本プロファイルに基づくと、シーラー対11,11が接している被シール部25のシーラント層21全体を溶融することについて、定量的に把握し、制御することができる。そのため、従来のシール装置のように、シール装置を設置する技術者の経験則、テストシールによる現物確認によって調整を繰り替えすといったシール装置導入の際の手間暇、またはシールする包材を変更した際に繰り返される調整といった手間を省くことができ、シール装置10をより簡単に導入し、利用することができる。
【0034】
また、上記のテストシールで得られた基本プロファイルに基づくと、包装袋Bをシールするとき、基本プロファイルに係る最高温度Tmax、第2温度を超える温度まで被シール部25を加熱し、δTを大きくとると、シーラント層21を十分に溶融させることができ、溶融不足によって被シール部が溶着されないというシール不良の防止を実現することが容易であることがわかる。
しかしながら、δTを大きく取る、或いはδtmaxを長く取ると、基本プロファイルの最高温度Tmax、第2温度を容易に超えて温度を上昇させることができるが、溶融エネルギーがシーラント層21へ過大に注入されることとなる。この場合に、溶融エネルギーに係る熱量が被シール部25へ過大に印加されることによって、包装袋Bを構成するシーラント層21と基層20の双方又はいずれか一方へ大きなダメージを与えるおそれがあり、また、シールする際、シーラント層21を構成する熱溶着性合成樹脂材と高分子ポリマーをしっかりと溶かすことができるメリットよりも、包装袋Bへ大きなダメージが加わるデメリットの方が大きくなるおそれがある。
したがって、制御部14は、基本プロファイルに基づいて、被シール部25が少なくとも最高温度Tmax、第2温度まで加熱されるように、δTとδtmaxを設定すればよい。これによって、シーラント層21を完全に溶かすことができる共に、包装袋Bに加わるダメージを極力小さくすることができる。さらに、従来のシール装置では、その構成上、過熱したシーラー対11,11によってシーラント層21のみならず基層20まで溶かしてしまい被シール部25周辺へダメージが広がってしまうような問題が生じる場合が多々あったが、本実施例に係るシール装置10は、温度管理されたシーラー対11,11が必要十分な範囲でシーラント層21を溶着させることができるので、包装袋Bの被シール部25近傍へダメージが広がることを防止することができる。
【0035】
そして、シーラー対11,11は、上記のように被シール部25へ所定の熱量を印加すると共に、所定の圧力で被シール部25を押圧して、溶融した一のシーラント層21と他のシーラント層21を一体化させるようにも構成されている。このとき、シール開始から温度Tmax、すなわち第2温度のシール終了まで一様な圧力で被シール部25を挟持するようにしても良いが、たとえば、図4に示した基本プロファイルにしたがって、つまりは上記のようにシーラント層が温度T1から温度T2を経て温度Tmaxへ至る際の溶融度にしたがって、シーラー対11,11が被シール部25を加圧する時間、圧力の強さを段階的に制御することが好ましい。
これはたとえば、基本プロファイル上でシール開始の温度T0からT2、すなわち、第1温度上昇率で第1温度まで被シール部25の温度が上昇しているとき、シーラー対11,11が被シール部25を強く押圧するように処理し、T2からTmax、すなわち、第1温度から第2温度まで第2温度上昇率で温度が上昇するときは、シーラー対11,11が先の第1温度上昇率で昇温しているときの圧力よりも被シール部25を押圧する圧力を小さくするように処理するといった圧力制御である。
このように被シール部25の温度変化、被シール部25に係るシーラント層21の溶融度の変化に伴って圧力を変化させることによって、溶融したシーラント層21を必要以上に押しつぶして包装袋Bを構成する包材のフィルムが損傷してしまうようなシール不良を防止することができる。
【0036】
次に、最高温度Tmax、第2温度以降の冷却区間について説明する。基本プロファイル上では最高温度Tmax(第2温度)のタイミングで、シーラー対11,11は被シール部25を解放するように構成されている。これによって、最高温度Tmax以降は、被シール部25が冷却される工程へ移行する。テストシール時の基本プロファイル作成工程では、冷却時の基準となるように、シール装置10が設置されている場所の常温下で大気解放冷却が行われる。大気雰囲気に晒された大気解放冷却では、被シール部25の外側に配された基層20側から冷え、シーラント層21は緩慢に冷却される。
大気解放冷却では、冷却する段階に応じて、図4に示すように、Tmax-T3間で温度傾斜c、T3-T4間で温度傾斜d、T4以降に温度傾斜eとなっている。基本プロファイル上に示した温度T3近傍と温度T4近傍の領域では温度の下降速度が緩慢となっている。これは上記したように本実施例に係るシーラント層21がHDPEとLDPEとから構成されていることによって、再結晶化する温度が異なること、及び、HDPEとLDPEそれぞれに含まれる高分子ポリマーのポリマー鎖がシーラント層の溶融時、すなわち、温度T2から温度Tmax間で溶融した後、再結晶化するにあたって、溶融時におけるポリマー鎖の運動エネルギーが熱エネルギーとして放出され発熱することによるものである。そして、温度T4近傍では、シーラント層21の再結晶化が終了し、以後、被シール部25は常温まで冷まされる。
ここで、温度傾斜cと温度傾斜dを平均して、単位時間あたりに所定の温度で下降する温度下降率を第1温度下降率とし、第1温度下降率と略同じかそれよりも緩やかに下降する温度傾斜eに係る温度下降率を第2温度下降率とする。また、シーラント層21の再結晶化が終了するポイントである温度T4を第3温度とする。
【0037】
基本プロファイルで得られた第1温度下降率でシーラント層21が冷却されたとき、当該シーラント層21は再結晶化し、溶融していたシーラント層21内部には所定の大きさの球晶が形成される。
ここで、球晶とは、所定の高分子ポリマーからなる合成樹脂材が溶融したシーラント層21で当該高分子ポリマーを含む合成樹脂材を結晶化させたときにみられる形態で、球状に発達した半結晶の集合体をいう。球晶一つの大きさは数μm~数mmであって、その大きさは球晶が発生する際の条件によって大きく異なる。球晶は、所定の結晶核を中心に、或いは一本乃至は数本の規則的に折り畳まったポリマー鎖を中心に樹枝状、放射状にその折り畳み構造(ラメラ構造)のポリマー鎖が成長し、各ラメラ構造の隙間を折り畳まれなかった非晶質(アモルファス)状態のポリマー分子が埋めて略球体状に形成される。このように形成された結果、球晶自体は、ラメラ構造、密に折り畳まれたポリマー鎖を含むことから、高密度で頑丈に形成される。一方、球晶同士は、球晶にならなかった非結晶体のポリマー分子で互いに結合されているので、球晶同士の結合力は小さくなる傾向にある。
球晶の大きさ、形状は、シーラント層21を構成する高分子ポリマーの分子構造、核となる物質の量、冷却速度と多くの要素の影響を受けるが、球晶の大きさを決定づける主な要因は冷却速度である。球晶は、ゆっくりと冷却すると大きくなり、急冷すると小さくなることが知られている。
大きな球晶が形成された場合、球晶中のラメラ構造の割合が低く、隙間を埋めるアモルファスのポリマー分子の割合が多くなり、密度、強度の低下が起きる。さらに、大きく形成された球晶同士の結合力も小さくなり、強度低下が起きる。すなわち、包装袋Bの被シール部25の引張強度、破断強度を落とすことができる。
一方、小さな球晶が形成された場合、或いは、シーラント層21内に球晶が形成される前に急冷した場合、溶融したポリマー鎖が液相状態の下で互いに複雑に絡み合っていた構造がほぼそのままで固化するため、固化した後、ポリマー分子が無秩序に絡み合った構造となり、また小さく高密度で形成された球晶が無秩序に絡み合ったポリマー分子で結合され、高密度、高強度となるので、包装袋Bの被シール部25の引張強度、破断強度を上げることができる。
したがって、冷却速度を制御して球晶を所定の大きさに形成することによって、開封を容易にする、或いは強固に封止するといったシール目的に合わせて包材の被シール部25の強度を制御することができる。
図4で示したように、テストシールにおいて大気解放冷却を行って形成された基本プロファイル上では、当該大気解放冷却によって基準となる径の球晶が形成されたものとの推定する。このとき、テストシールされた包装袋Bのサンプルを抜き取って、引張強度、破断強度を測定するようにしても良い。そして、当該基準径の球晶に対して、どのような大きさの球晶を形成するかによって、被シール部25の強度を自在に設計することができる。
これは、たとえば、被シール部25にエアブロー装置からなる冷却器12で冷風を当てたり、チラー装置で冷却したりする等して、基本プロファイルに係る第1温度下降率よりも急速に冷却した場合には、球晶は小さく形成されるか、又は球晶が形成される前に一体化したシーラント層21が固化するので、被シール部25の引張強度、破断強度を上げることができる。
一方、被シール部25を基本プロファイルに係る第1温度下降率にしたがって大気解放冷却し、或いは保温装置等を用いて第1温度下降率と同じか若しくは第1温度下降率よりも緩やかに冷却した場合には、シーラント層21内に大きな球晶を形成することができるので、一体化したシーラント層21の引張強度、破断強度を下げることができる。
そこで、基本プロファイルで得られた第1温度下降率を基準として、それよりも大きく、又は略同じ或いは小さくと新たに設定される所定の温度下降率を第3温度下降率とする。
当該第3温度下降率に基づく冷却工程に係る処理の後、所定の大きさの球晶が形成され、所望の引張強度、破断強度でシールされた被シール部25は、第2温度下降率で常温まで緩やかに冷まされる処理が行われる。
【0038】
上記したように、プロファイル形成工程では、所定の包材に対する1回乃至複数回のテストシールによって図4に示した基本プロファイルが形成される。その後、実際にシール装置10を本稼働させるにあたって、当該基本プロファイルに基づいて、シーラー対11,11の温度、シーラー対11,11が被シール部を押圧する圧力、シール時間、冷却器12による冷却速度等が設定され、これらの値が制御部14へ入力される。
【0039】
具体的には、シール装置10の制御方法は、加熱圧接工程と、冷却工程とからなる。
加熱圧接工程は、シーラー対11,11が被シール部25を所定の圧力で挟持し、所定の熱量を印加してシーラント層21を溶融し、一体化させて溶着する処理を行う工程であって、さらに第1加熱圧接工程と第2加熱圧接工程とからなる。
【0040】
第1加熱圧接工程は、温度センサ13が検出した温度に基づいて形成された基本プロファイルに係る第1温度上昇率にしたがって、シール開始温度T0から温度T1を経て温度T2のポイントに設定された第1温度に至るまで、シーラー対11,11が被シール部25へ所定の熱量を印加する処理を行うと共に、所定の圧力で被シール部25を挟持する処理を行う工程である。
第2加熱圧接工程は、温度センサ13が検出した温度に基づいて形成された基本プロファイルに係る第2温度上昇率にしたがって、温度T2から温度Tmaxのポイントに設定された第2温度に至るまで、シーラー対11,11が被シール部25へ所定の熱量を印加する処理を行うと共に、所定の圧力で被シール部25を挟持する処理を行う工程である。
第1加熱圧接工程と第2加熱圧接工程は、連続的に行われ、たとえば、第1加熱圧接工程と第2加熱圧接工程からなる加熱圧接工程の総処理時間、すなわち、図4に示す基本プロファイル上で、シール開始から最高温度Tmaxの第2温度に至るシール時間δtmaxが0.3秒である場合に、当該基本プロファイルに基づいて、シール開始温度T0から温度T2(第1温度)に達する第1加熱圧接工程を0.2秒、温度T2から温度Tmax(第2温度)に達する第2加熱圧接工程を0.1秒としたとき、第1加熱圧接工程では、シーラー対11,11が被シール部25を1800N/m2で押圧する処理を行い、第2加熱圧接工程では、シーラー対11,11が被シール部25を500N/m2で押圧する処理を行うように設定する。
このように、第1加熱圧接工程で急激に温度が上昇している間は強く押圧し、シーラント層21の大部分を素早く溶融させる処理を行うと共に強く圧接し、第2加熱圧接工程では、ポリマー鎖を解く程度に緩やかに加熱すると共に圧を抜いて押圧するといったように段階的に圧力を変えてシールすることができる。
これによって、包装袋Bを構成する包材のフィルム厚が薄い場合であってもフィルム厚を保持してシールすることができ、さらには、フィルム全体の強度を保持しながら、互いに対向するシーラント層21を構成する合成樹脂を一体化させることができる。
なお、第1温度と第2温度は包材に係るフィルムを構成する熱溶着性合成樹脂材の種類、混合比率等によって定まる所定の温度である。
【0041】
また好ましくは、第1加熱圧接工程と第2加熱圧接工程において、上記のように圧力制御に係る処理と並行して、シーラー対11,11が、挟持した被シール部25に対して、振動を印加する制御を行っても良い。
当該振動印加制御は、シーラー対11,11を互いに微振動で擦り合わせる処理を行う制御であって、たとえば、ヒートシール装置の場合は、被シール部を挟んで互いに押圧しているヒータバー対を互いに相反する上下左右方向へ擦り合わせるように微振動で動かし、或いは、超音波シール装置の場合は、被シール部を挟んでアンビルに対して押圧されたホーンが上下方向に超音波振動を印加しているとき、アンビルとホーンを互いに相反するように左右方向へ微振動で動かすといった動作を行わせる制御である。当該微振動は、超音波振動となってしまう20kHz以下の振動が好ましく、特に、50Hz~1kHzの周期的な微細振動が好ましい。50Hz以下の場合は、シーラント層の一体化を促すことが十分でなく、また、1kHz以上で超音波振動に迫るような振動の場合は、シーラント層へ摩擦熱を印加するおそれがあるからである。
これによって、被シール部25のシーラー対11,11が接している溶着部分25aで溶融しているシーラント層を一体化させるとき、溶融し、液相化した熱溶着性合成樹脂材の構造を緻密化することができ、当該熱溶着性合成樹脂材に含まれる高分子ポリマーのポリマー鎖の絡まりを促進させることができる。そのため、次に続く冷却工程において急冷した場合、球晶を小さくして、ポリマー鎖を複雑に絡み合わせることができ、シール強度を向上させることができる。
一方、後述する冷却工程において急冷しない場合は、殊更にシール強度を上げる必要が無いため振動印加制御を行わなくとも良く、当該振動印加制御は、包装袋の被シール部のシール目的に応じて任意に設定することができる。
【0042】
冷却工程は、処理を行う工程であって、さらに第1冷却工程と第2冷却工程とからなる。
第1冷却工程は、温度センサが検出した温度に基づいて形成された基本プロファイルに係る第1温度下降率を基準にした第3温度下降率にしたがって、最高温度Tmax(第2温度)から温度T3を経て温度T4(第3温度)に至るまで、冷却器12が被シール部25を構成するシーラント層21を冷却し、又は当該シーラント層21から吸熱して冷却する処理を行う工程である。第1冷却工程において、第1温度下降率を基準にした第3温度下降率は、基本プロファイルにおける第1温度下降率が、大気解放冷却によって決定されていることから、当該第1温度下降率よりも急激に冷却したとき、すなわち、第3温度下降率を第1温度下降率よりも大きく設定した場合に、被シール部25のシーラント層21は急冷され、小さな球晶が形成される。
一方、第1温度下降率と略同じか又は第1温度下降率よりも緩やかに冷却したとき、すなわち、第3温度下降率を第1温度下降率と略同じか又は第1温度下降率よりも小さくした場合には、被シール部25のシーラント層21は緩やかに冷却され、大きな球晶が形成される。このように、第1冷却工程では、第1温度下降率を基準にして所望の球晶を形成するように設定された第3温度下降率にしたがって、制御部14に制御された冷却器12が、溶着された被シール部25のシーラント層21を冷却して再結晶化させる処理が行われる。
このように、第1冷却工程では、第1温度下降率を基準にして設定された第3温度下降率にしたがって、最高温度Tmaxに係る第2温度から再結晶化が終了する第3温度まで冷却する冷却速度が、シールする目的に応じて変化するように構成されている。
第2冷却工程は、温度センサ13が検出した温度に基づいて形成された基本プロファイルに係る第2温度下降率にしたがって、シーラント層21の再結晶化が終了するポイントである温度T4(第3温度)からシール終了温度まで、冷却器12又は大気解放冷却によって被シール部25を構成するシーラント層21を冷却する処理を行う工程である。
なお、第2冷却工程へ移行する第3温度、すなわち基本プロファイル上の温度T4以降、シール終了温度までは、第1冷却工程で形成された球晶を含むシーラント層21を備えた被シール部25を冷ますだけの工程であるから、コスト或いは手間暇等を鑑みて、基本プロファイル上の第2温度下降率に係る大気解放冷却で自然に冷却することが好ましいが、これに限定されるものではなく、冷却器12を用いて第2温度下降率よりも大きな温度下降率で急冷しても良い。
さらに、第2加熱圧接工程と第1冷却工程を並行させて、シーラー対11,11が被シール部25を挟持する圧力を軽減する処理を行っている際に、エアブロー装置からなる冷却器12で被シール部25近傍へブローエアーを当てる冷却処理を開始し、第2加熱圧接工程が終了したとき、すなわち、シーラー対11,11が被シール部25を解放したときに、露出した被シール部25へ直接ブローエアーを当てて急冷する処理を行うようにしても良い。これによって、フィルムに対する圧力ストレスを緩めて包材の損傷を防ぎ、被シール部25外へ熱の影響が波及することを防止することができる。
なお、第1冷却工程と第2冷却工程で被シール部25が解放され、冷却されているとき、又は、第2加熱圧接工程でシーラー対11,11が被シール部25を挟持する圧力を軽減させているとき、シーラー対11,11が冷め過ぎないように、シーラー対11,11に熱を印加して加温し、或いはシーラー対11,11を保温する等しても良い。これによって、シールに係る各工程間をスムーズに連携させることができ、素早くシール処理を繰り替えすことができる。
【0043】
本実施例に係るシール装置10の制御方法によれば、シール装置10を本格的に稼働させる前に少なくとも1回、好ましくは複数回にわたってテストシールを行い、図4に示した基本プロファイルを作成するようにした。当該基本プロファイルでは、シール開始温度から被シール部のシーラント層を構成する熱溶着性合成樹脂材が融ける第1温度、さらに当該熱溶着性合成樹脂材に含まれる高分子ポリマーまでも完全に溶け切る最高温度である第2温度を測定抽出し、シーラー対11,11がどのように被シール部25を加熱するか、また、何度まで加熱して、どのくらいの時間加熱するかを定量的な数値として把握することができる。これによって、従来、経験的に定めていた温度設定を簡単にすると共に、被シール部25へ過大に熱を印加して、被シール部25を過剰に溶融し、被シール部25の仕上がりが悪化するようなシール不良を防止することができる。
また、被シール部25を溶着した最高温度である第2温度から、自然な大気解放冷却においてシーラント層21の再結晶化が終了する第3温度を測定抽出し、どのくらいの時間でどのように温度が下がって被シール部25が冷却されるかをも定量的な数値として把握することができる。これによって、従来、溶着されて熱くなっている被シール部25に対してブローエアーを適当に当てて冷やしていた冷却工程において、再結晶化が終了する第3温度までの冷却速度を制御し、再結晶化される被シール部25のシーラント層内に形成される球晶の大きさを調整することができ、それによって、被シール部25の引張強度、破断強度等の強度を自在に調整することができる。
【0044】
そして、本実施例に係るシール装置10の制御方法によれば、被シール部25を所定の圧力で挟持すると共に、所定の熱を印加して被シール部25を溶着させる加熱圧接工程を第1加熱圧接工程と第2加熱圧接工程とから構成した。
第1加熱圧接工程では、温度センサ13で検知した温度に基づいて形成された基本プロファイルから得られた第1温度上昇率にしたがって、シーラー対11,11が、主に被シール部25のシーラント層21を構成する熱溶着性合成樹脂材を溶かすと共に、好ましくは、高圧で被シール部25を挟持して互いに対向するシーラント層21を圧接して一体化させるようにした。そして、第2加熱圧接工程では、同基本プロファイルから得られた第2温度上昇率にしたがって、シーラー対11,11が、主に熱溶着性合成樹脂材に含まれている高分子ポリマーのポリマー鎖を解くようにシーラント層21を加熱する共に、好ましくは、第1加熱圧接工程よりも低圧で被シール部25を挟持して一体化させたシーラント層21を保持するようにした。
これによって、被シール部25のシーラント層21を構成する熱溶着性合成樹脂材を溶かしきると共に当該熱溶着性合成樹脂材に含まれている高分子ポリマーの分子鎖を解いて、シーラー対11,11が熱を印加している被シール部25のシーラント層21を完全に液相化したうえで、所定の圧力を加えて一体化させて被シール部25を溶着してシールすることができる。このとき、シールするに必要十分な範囲のシーラント層21を溶着することができるので、溶かしきれずに溶着不良となったり、溶かし過ぎて溶着過多となったりするようなシール不良を防止することができる。
【0045】
また、本実施例に係るシール装置10の制御方法によれば、被シール部25を冷却する冷却工程を第1冷却工程と第2冷却工程とから構成した。
第1冷却工程では、温度センサ13で検知した温度に基づいて形成された基本プロファイルから得られた第1温度下降率を基準とした第3温度下降率にしたがって、冷却器12が、被シール部25を急冷し、或いは緩やかに冷却して、シーラント層21の再結晶化を促進させるようにした。第3温度下降率を第1温度下降率よりも大きくした場合は、被シール部25は急冷され、このとき、再結晶化されたシーラント層21内は小さな球晶が形成され、或いは溶融状態で複雑に絡み合ったままの高分子ポリマーがそのまま固化される。これによって、被シール部25の引張強度、破断強度を強くすることができる。一方、第3温度下降率を第1温度下降率と同じか、それよりも小さくした場合は、被シール部25は緩やかに冷却され、、このとき、再結晶化されたシーラント層25内は大きな球晶が形成され、当該大球晶間は短い非晶質なポリマーで接続される。これによって、被シール部25の引張強度、破断強度を弱くすることができる。
第2冷却工程では、温度センサ13で検知した温度に基づいて形成された基本プロファイルから得られた第2温度下降率にしたがって、冷却器12、或いは大気解放冷却で常温近傍まで被シール部25を冷ますようにした。これによって、シール終了と共に再結晶化し、固化した被シール部25を備えた包装袋Bを包装機の包装工程から搬出することができ、他の包装袋B、或いは包装機に対して熱の影響が拡散しないように構成することができ、より安全に包装機を使用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…シール装置、
11…シーラー、12…冷却器、13…温度センサ、14…制御部、
20…基層、21…シーラント層、25…被シール部、
B…包装袋。
図1
図2
図3
図4