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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057219
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ロボット用アーム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B25J19/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163812
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】518101222
【氏名又は名称】株式会社共和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】河口 治也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CU01
3C707CY34
(57)【要約】
【課題】 ロボット用アームのハウジングにCFRP材を採用しつつ、ハウジングの熱を効率よく外部に逃すことができ、ハウジングの保護性能を良好に保つ。
【解決手段】 ロボット用アーム12は、アーム長さ方向に一体的に連なる、CFRP材からなるハウジング20と、ハウジング20に貫通して設けられる、ハウジング20よりも熱伝導率の大きい金属材からなる伝熱パイプ30とを備える。ハウジングの外側には、伝熱パイプ30のパイプ孔を通して放熱口Hが開口する。伝熱パイプ30は、縦パイプPyと横パイプPxを有する十字パイプであることが望ましい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム長さ方向に一体的に連なる、炭素繊維強化プラスチック材からなるハウジングと、
前記ハウジングに貫通して設けられる、前記ハウジングよりも熱伝導率の大きい金属材からなる伝熱パイプと、
前記伝熱パイプのパイプ孔を通して前記ハウジングの外側に開口する放熱口と、を備えることを特徴とする、ロボット用アーム。
【請求項2】
請求項1記載のロボット用アームであって、
前記伝熱パイプは、
前記ハウジングが水平状態に保持されるとき、前記ハウジングの上下方向に貫通する縦パイプと、
前記ハウジングが水平状態に保持されるとき、前記ハウジングをアーム長さ方向に見て左右方向に貫通する横パイプと、を備えるロボット用アーム。
【請求項3】
請求項2記載のロボット用アームであって、
前記縦パイプと前記横パイプが前記ハウジング内で互いに交差して連通する十字パイプである、ロボット用アーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットに適したアームに関し、たとえば垂直多関節ロボットや水平多関節ロボットのアームに適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の製造現場では、部品の組み付け、搬送、溶接といった作業に産業用ロボットが用いられる。産業用ロボットとしては多関節型のものが多く採用されており、このようなロボットは、アームとこれを動作させるジョイント(関節)とによりヒトの動きに近い動作を再現できるようになっている。
アームの外殻となるハウジングは、アーム長さ方向に一体的に連なっており、通常、鉄やステンレス、銅、アルミニウムなどの金属材を成型加工することにより形成される。ハウジングの所定位置にジョイントの各種部品(モータ、減速機、制御基板等)が組み込まれる。
【0003】
このような従来のロボット用アームの課題としては、金属材からなるハウジングの熱膨張および熱収縮によるアーム長さの変動がある。特にジョイント部分の負荷による発熱量が多い場合にはこの問題が顕著になる。この対策として熱膨張および熱収縮による誤差をあらかじめ演算予測し、アーム長さを補正して位置決め精度を高めることが行われているが、補正値を精確に求めることは難しく、ロボットの作業精度を十分に向上させることが困難になっている。
【0004】
これに対し、アームのハウジングに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材を採用する技術が知られている。CFRP材には、金属材を凌ぐ剛性があり、熱膨張率が極めて小さい特性があるため、温度変動によるアーム長さの補正が不要になる。このため、このような特性を活かすことで、金属材よりもロボットの作業精度を向上させることができる。
なお、CFRP材を用いるロボット用アームの先行技術としては、特許文献1~3が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-115161号公報
【特許文献2】特開2010-115732号公報
【特許文献3】特開昭59-224337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ロボット用アームのハウジングにCFRP材を採用する場合、ハウジングの温度変動による影響を抑えられる反面、熱伝導率の小さいCFRP材の特性によりハウジングに熱がこもりやすいという問題が生じる。ハウジング内の温度が過度に上昇すると、ジョイントを構成するモータや制御基板の故障を招くおそれもある。
上記の対策として、CFRP材のハウジングに放熱口を設けて内部の熱を直接外部に逃がす構造が考えられるが、このような構造では、放熱口を通してハウジング内に異物が混入しやすくなり、また、防水性が悪化することからハウジングの保護性能が不十分になる。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、ハウジングにCFRP材を採用しつつ、ハウジングの熱を効率よく外部に逃すことができ、しかも、ハウジングの保護性能を良好に保つことができるロボット用アームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の解決にあたり、本発明者らは、ロボット用アームのハウジングの放熱構造について検討を行い、CFRP材と金属材とを組み合わせるハイブリッド構造に着目した。すなわち、温度変化による影響を受けにくいCFRP材の特性と、伝熱性に優れた金属材の特性を互いに活かすことで前述の問題を解消しうる。そして、試作品の評価・改良を重ねる中で、CFRP材のハウジングから効率よく熱を外部に逃し、かつハウジング内の密閉性を良好に保つことができる独自の放熱構造を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
[第1発明]
前記課題を解決するための本発明のロボット用アーム(12)は、
アーム長さ方向に一体的に連なる、CFRP材からなるハウジング(20)と、
前記ハウジングに貫通して設けられる、前記ハウジングよりも熱伝導率の大きい金属材からなる伝熱パイプ(30)と、
前記伝熱パイプのパイプ孔を通して前記ハウジングの外側に開口する放熱口(H)と、を備える構成とした。
【0010】
第1発明のロボット用アームによれば、ジョイントの負荷によりハウジングが加熱されると、その熱がハウジング内で伝熱パイプに伝わり、このパイプ孔を通して放熱口からハウジングの外側に放出される。これにより、CFRP材のハウジングに熱がこもりにくくなる。したがって、アームのハウジングにCFRP材を採用しつつ、ハウジングの熱を効率よく外部に逃すことができる。
また、第1発明の構成では、伝熱パイプのパイプ孔を通してハウジングの外側に放熱口が開口するため、ハウジング内の空間を外部から遮断した密閉状態に保つことができる。これにより、放熱口からのハウジング内への異物混入や、防水性の悪化を回避することができ、ハウジングの保護性能を良好に保つことができる。
【0011】
[第2発明]
第2発明のロボット用アームは、第1発明の構成を備えるものであって、
前記伝熱パイプは、
前記ハウジングが水平状態に保持されるとき、前記ハウジングの上下方向に貫通する縦パイプ(Py)と、
前記ハウジングが水平状態に保持されるとき、前記ハウジングをアーム長さ方向に見て左右方向に貫通する横パイプ(Px)と、を有する構成とした。
【0012】
第2発明のロボット用アームによれば、ハウジング内で縦パイプと横パイプとをそれぞれ垂直方向および水平方向に向けて配置することができる。このとき、垂直方向に向いた縦パイプでは、パイプ温度の上昇に伴ってパイプ孔に煙突効果による上昇気流が生じ、この気流によってパイプ孔の熱を外部に放出することができる。一方、水平方向に向いた横パイプでは、アームが左右方向に動作するのに伴ってパイプ孔にその動作方向と逆向きに気流が生じる。これにより、この気流によってパイプ孔の熱をハウジングの外部に放出することができる。
つまり、アームが静止しているときにはパイプ孔の煙突効果、アームが動作しているときには、パイプ孔の煙突効果に加えて、アーム動作に伴う気流発生効果によりハウジングの熱を効率よく外部に放出することができる。
【0013】
[第3発明]
第3発明のロボット用アームは、第2発明の構成を備えるものであって、
前記縦パイプと前記横パイプが前記ハウジング内で互いに交差して連通する十字パイプである構成とした。
【0014】
第3発明の構成によっても、第2発明と同様に、パイプ孔の煙突効果と、アーム動作に伴う気流発生効果とによりハウジングの熱を効率よく外部に放出することができる。
加えて、縦パイプと横パイプがハウジング内で交差する十字パイプとなっているため、これらのパイプをそれぞれ独立に設ける場合に比べ、取付スペースが小さくて済み、ハウジング内の空間を有効利用することが可能になる。
【0015】
[第1~3発明]
第1~3発明は、垂直多関節ロボットや水平多関節ロボット(スカラロボット)のアームに適用することができる。その他、直交ロボットや円筒座標ロボットのアームにも適用することも可能である。特に、第2および第3発明は、動作方向が水平方向に限定されるアームに適用することで、前述したパイプ孔の煙突効果と、アーム動作に伴う気流発生効果を得られやすくなる。
本発明において、CFRP材の種類は、特に限定されず、ロボット用アームとして必要な剛性や耐熱性を得られるものであればよい。たとえばPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維もしくはピッチ系炭素繊維を熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のバインダーで積層したものを採用することができる。熱硬化性樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド、熱可塑性樹脂としてはポリアミド、ポリカーボネイト、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等を用いることができる。
金属材としては、熱伝導率の大きい銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、スズ、鉛等やこれらの合金を用いることができる。これらの金属材をメッキ材として使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のロボット用アームを適用した垂直多関節ロボットを示す斜視図である。
図2】同アームを示す斜視図である。
図3】同アームを示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図4】同アーム内の空間を説明するための説明図である。
図5】同アームの断面を示すもので、図3(B)の[5]-[5]矢視図である。
図6】第2実施形態のロボット用アームを示すもので、(A)は平面図、(B)は正面図である。
図7】同アームの断面を示すもので、図6(B)の[7]-[7]断面矢視図である。
図8】第3実施形態のロボット用アームを示すもので、(A)はアーム要部を説明するための部分斜視図、(B)は同アームの内枠を示す斜視図である。
図9】第4実施形態のロボット用アームを示すもので、アーム要部を説明するための部分斜視図である。
図10】第5実施形態によるロボット用アームを適用した水平多関節ロボットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に記載の実施形態は、本発明を適用した形態の一例であり、発明の範囲がこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の構成を図1~5に示した。第1実施形態は、垂直多関節ロボット10のアームに本発明を適用したものである。
ロボット10は、ベース10Bに支持される旋回台11にアーム12~15が取り付けられる。アーム12~15はこれらを動作させるジョイントD1~4により連結されており、先端側のアーム15にはワーク等を掴むためのハンド16が取り付けられている。ジョイントD1~D4の回動・直動等により各アームの姿勢が制御されて各種の動作が行われる。
【0019】
ロボット10が動作する際には、先端側よりも基端側のアームに大きな負荷がかかる。特に、ジョイントD1およびD2の負荷が大きいアーム12は、これらのジョイントを熱源として温度変動による影響を受けやすくなる。そこで、本実施形態ではアーム12に本発明の放熱構造を適用して温度変動による影響を抑えている。
【0020】
図2に示すように、アーム12は、CFRP材からなるハウジング20と、ハウジング20よりも熱伝導率の大きい銅、アルミニウム等の金属材からなる伝熱パイプ30とを備えている。ハウジング20は、アーム12の外殻を形成するように、アーム長さ方向に角筒状に連なっている。ハウジング20の前後には角筒状の壁面に半円筒状の壁面が連なる。ハウジング20内の両端位置にはジョイントD1,D2の作動軸等が組み込まれ、これらの軸を中心にアーム12が回動するようになっている。
【0021】
ハウジング20内のほぼ中間位置には、ハウジング20内を貫通するように伝熱パイプ30が設けられる。伝熱パイプ30は、縦パイプPyと横パイプPxとを有する十字パイプであり、これらのパイプ孔がハウジング20内で互いに連通している。
ハウジング20の外壁面には、伝熱パイプ30のパイプ孔を通してハウジング20の外側に開口する放熱口Hが設けられる。つまり、ハウジング20の外壁面に、縦パイプPyおよび横パイプPxのパイプ孔に通じる4個の放熱口Hが開口している。
【0022】
図3(A)および(B)にハウジング20の概略構成を示した。
ハウジング20は、側板21,21と、外フレーム22,22と、内フレーム23,23と、蓋板24,24とから構成される。側板21,21は、CFRPからなる板材を長円形にカットしてなる。外フレーム22,22および内フレーム23,23は、CFRPからなる角パイプ材を所定長さにカットしてなる。蓋板24,24は、CFRPからなる板材を断面円弧状に成形されるものである。これらのパーツが接着剤等で貼り合わされてハウジング20が組み立てられる。
外フレーム22,22の間には内フレーム23,23が架け渡されるように固定され、これらのフレームの図3(A)で上下両側に側板21,21、左右両側に蓋板24,24が固定される。つまり、外フレーム22,22と内フレーム23,23とが梯子のような格好になって骨格を形成し、これを側板21,21と蓋板24,24で囲む形でハウジング20が形成されている。
【0023】
側板21,21の両端部には開口部21a,21aが設けられる。開口部21a,21aは、アーム12とジョイントD1,D2とを接続するため挿入口であり、ジョイントD1,D2を組み込むのに必要な口径を有する。
【0024】
図4にハウジング20内の空間Sの構成を示した。
図4に示すように、ハウジング20の外フレーム22,22と内フレーム23,23の壁面には連通口Rが設けられる。外フレーム22,22の連通口Rは、アーム長さ方向に所定の間隔を保って内向きに開口し、内フレーム23,23の連通口Rは、フレーム中間位置でアーム長さ方向に貫通するように開口する。これにより、ハウジング20内の空間Sが各フレーム内の空間と繋がることになって、ハウジング20全体の熱が伝熱パイプ30に伝わりやすくなっている。
【0025】
図5に示すように、伝熱パイプ30は、ハウジング20を水平状態に保持したときにハウジング20の上下方向に貫通する縦パイプPyと、このハウジング20をアーム長さ方向に見て左右方向に貫通する横パイプPxとを備えている。
【0026】
伝熱パイプ30が加熱されると、上下方向に向いた縦パイプPyでは、パイプ温度の上昇に伴ってパイプ孔に煙突効果による上昇気流が生じ(図5破線矢印参照)、この気流によってパイプ孔の熱を外部に放出する。
一方、左右方向に向いた横パイプPxでは、アーム12が左右方向に動作するのに伴ってパイプ孔にその動作方向と逆向きに気流が生じる。アーム12が上下方向に動作する際には、上下方向に向いた縦パイプPyにその動作方向と逆向きに気流が生じる。これにより、この気流によってパイプ孔の熱をハウジングの外部に放出する。
つまり、アーム12が静止しているときには伝熱パイプ30のパイプ孔による煙突効果、アーム12が動作しているときには、パイプ孔の煙突効果に加えて、アーム動作に伴う気流発生効果によりパイプ孔の熱を効率よく外部に放出することができる。
【0027】
第1実施形態のアーム12によれば、ジョイントD1,D2の負荷によりアーム12のハウジング20が加熱されると、その熱がハウジング20内で伝熱パイプ30に伝わり、このパイプ孔を通して放熱口Hからハウジング20の外側に放出される。これにより、ハウジング20に熱がこもりにくくなる。
この結果、アーム12のハウジング20にCFRP材を採用しつつ、ハウジング20の熱を効率よく外部に逃すことができる。
【0028】
また、アーム12によれば、伝熱パイプ30のパイプ孔を通してハウジング20の外側に放熱口Hが開口するため、ハウジング20内の空間Sを外部から遮断した密閉状態に保つことができる。これにより、放熱口Hからのハウジング20内への異物混入や、防水性の悪化を回避することができ、ハウジング20の保護性能を良好に保つことができる。
【0029】
さらに、アーム12によれば、縦パイプPyと横パイプPxがハウジング20内で交差する十字パイプとなっているため、これらのパイプをそれぞれ独立に設ける場合に比べ、取付スペースが小さくて済み、ハウジング20内の空間Sを有効利用することが可能になる。
【0030】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の構成を図6および図7に示す。
第2実施形態のアーム12Aは、第1実施形態の伝熱パイプ30を十字パイプから独立型のパイプに変更したものである。その他の構成は、第1実施形態と実質的に同一である。
第2実施形態では、伝熱パイプ30を形成する縦パイプPyと横パイプPxがハウジング20内に独立して設けられる。図7に示すように、縦パイプPyはハウジング20を水平状態に保持したときに上下方向に貫通し、横パイプPxはこのハウジング20を長さ方向に見て左右方向に貫通している。ハウジング20の外壁面には、これらのパイプ孔に通じる放熱口Hがアーム長さ方向にズレた位置に開口している。
【0031】
第2実施形態の構成によっても、第1実施形態と同様に、CFRP材からなるハウジング20の熱を外部に効率よく放出することができ、かつ、ハウジング20の保護性能を良好にすることができる。また、ハウジング20内で伝熱パイプ30が熱交換する面積が大きくなるため、放熱口Hからの熱の放出量を増大させることができる。
【0032】
[第3実施形態]
第3実施形態の構成を図8に示す。
第3実施形態のアーム12Bは、図8(A)に示すように、CFRP材からなる角筒状のハウジング40を有する。ハウジング40の内壁に、アーム長さ方向に所定の間隔を保って複数の内枠41が固定される。つまり、内枠41が角筒の内節のような形になってハウジング40を補強している。
CFRP材からなる内枠41は、図8(B)に示すように、矩形枠41aとその中間に架け渡されるリブ41bとから形成される。このリブ41bにより内枠41の強度が高められている。ハウジング40の所定位置には、第1実施形態と同様な金属材からなる伝熱パイプ30が設けられる。ハウジング40の外壁面には、これらのパイプ孔に通じる放熱口Hが開口している。なお、図示されていないが、ハウジング40の前後端部には第1実施形態と同様にジョイントが組み込まれる。
【0033】
第3実施形態の構成によっても、前述の実施形態と同様にCFRP材からなるハウジングの熱を効率よく外部に放出することができ、かつ、ハウジングの保護性能を良好にすることができる。加えて、ハウジング40をシンプルで強度に優れた構造にすることができるため、アームの軽量化を図りやすくなる。
【0034】
[第4実施形態]
第4実施形態の構成を図9に示す。
第4実施形態のアーム12Cは、CFRP材からなる角筒状のハウジング50を有する。ハウジング50内の四隅部にアーム長さ方向に沿ってCFRP材からなる補強用の角パイプ51が固定される。
ハウジング50の所定位置には、第1実施形態と同様な金属材からなる伝熱パイプ30が設けられる。ハウジング50の外壁面にはこれらのパイプ孔に通じる放熱口Hが開口している。ハウジング50の前後端部には第1実施形態と同様にジョイントが組み込まれる。
【0035】
第4実施形態の構成によっても、前述の実施形態と同様にCFRP材からなるハウジングの熱を効率よく外部に放出することができ、かつ、ハウジングの保護性能を良好にすることができる。さらに、ハウジング50内の空間Sがアーム長さ方向に直線的に連なるため、熱の対流が起こりやすく、伝熱パイプの熱交換による放熱性を向上させることができる。
【0036】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の構成を図10に示した。第5実施形態は、水平多関節ロボットのアームに本発明を適用したものである。
ロボット60は、ベース60Bに支持される基台61にアーム62,63が取り付けられる。アーム62,63はこれらを動作させるジョイントD5,D6で水平方向に連結されており、先端側のアーム63には押し込み操作等を行うための作動軸64が設けられている。ジョイントD5,D6の回動等により各アームの姿勢が制御されて各種の動作が行われる。
【0037】
第5実施形態では、基端側のアーム62に本発明の放熱構造が適用される。アーム62は、第1実施形態と実質的に同様な構成のハウジングと伝熱パイプを有し、ハウジングの外壁面には、これらの伝熱パイプのパイプ孔に通じる放熱口Hが開口している。なお、アーム62は、第1実施形態のアーム12を基準にしてアーム軸回りに90゜傾けた状態でロボット60に取り付けられるため、伝熱パイプを構成する縦パイプPyと横パイプPxの位置関係がアーム12とは逆になる。
【0038】
第5実施形態の構成によれば、アーム62に本発明の放熱構造を採用することで、前述の実施形態と同様にCFRP材からなるハウジングを採用しつつ、ハウジングの熱を効率よく外部に放出することができる。また、ハウジングの保護性能を良好に保つことができる。
さらに、第5実施形態の構成では、アーム62の動作が水平方向に制限されるため、縦パイプPyと横パイプPxが常に垂直方向と水平方向に向くことになる。このため、前述のパイプ孔の煙突効果と、アーム動作に伴う気流発生効果がより顕著になり、アーム62の放熱性をさらに向上させることができる。
【0039】
[変形例]
以上、第1~5実施形態のロボット用アームを説明したが、本発明の実施形態は、これらの構成に限定されることなく、種々の変形や変更を伴ってもよい。
前記実施形態では、多関節ロボットの単一のアームに本発明の放熱構造を適用しているが、複数のアームに放熱構造を適用することもできる。
また、前記実施形態では、ロボット用アームのハウジング形状を角筒形としているが、これに限らず、円筒その他の形状にしてもよい。
さらに、前記実施形態では、伝熱パイプ(縦パイプおよび横パイプ)がハウジングの長さ方向に対してほぼ直交する方向に配置されているが、必要に応じて伝熱パイプ(縦パイプおよび横パイプ)を傾けることもできる。
【符号の説明】
【0040】
10・・ロボット
11・・旋回台
12~15・・アーム(ロボット用アーム)
16・・ハンド
20・・ハウジング
21・・側板
22・・外フレーム
23・・内フレーム
30・・伝熱パイプ
D1~D4・・ジョイント
H・・放熱口
Px・・横パイプ
Py・・縦パイプ
R・・連通口
S・・空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10