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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057234
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163835
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸吾
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB05
5H605BB14
5H605CC01
5H605DD13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷却範囲を拡大しつつ、冷媒をスムーズに流して、冷却効率を向上させた回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機ケーシング22は、螺旋通路の上流端と下流端との間で少なくとも一部が一定の傾斜角で螺旋状に延在する流路形成壁420を有する。螺旋通路412は、第1及び第2拡幅領域441、442を有する。第1及び第2拡幅領域441、442に、螺旋通路412に沿って延在する第1及び第2整流隔壁451、452が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ及びステータを収容するケーシングを備え、液状の冷媒を流す螺旋通路を前記ケーシングが有する回転電機であって、
前記ケーシングは、前記螺旋通路の上流端と下流端との間で少なくとも一部が一定の傾斜角で螺旋状に延在する流路形成壁を有し、
前記螺旋通路は、前記ケーシングの軸方向において隣り合う前記流路形成壁の流路幅が他の部分よりも大きい拡幅領域を有し、
前記拡幅領域は、前記軸方向において前記螺旋通路の少なくとも一端側に形成され、
前記螺旋通路に沿って延在する整流隔壁が前記拡幅領域に形成され、
前記拡幅領域は、前記整流隔壁の上流端によって前記冷媒の流れを分岐させる分岐部と、前記整流隔壁の下流端によって前記冷媒を合流させる合流部とを有する、回転電機。
【請求項2】
請求項1記載の回転電機において、
前記螺旋通路のうち隣り合う前記流路形成壁の傾斜角度が異なる部分によって前記拡幅領域が形成され、
互いに傾斜角度が異なる前記流路形成壁の間に前記整流隔壁が配置されている、回転電機。
【請求項3】
請求項1記載の回転電機において、
前記拡幅領域は、前記ケーシングの周方向において、前記螺旋通路の前記上流端又は前記下流端に隣接する位置に設けられ、
前記流路形成壁は、前記軸方向において前記螺旋通路の少なくとも一端部を形成する端部形成壁を有し、
前記端部形成壁は前記周方向と平行に延在し、前記整流隔壁は前記螺旋通路の前記上流端又は前記下流端に向かって延在する、回転電機。
【請求項4】
請求項3記載の回転電機において、
前記整流隔壁は、前記端部形成壁と平行に延在する、回転電機。
【請求項5】
請求項4記載の回転電機において、
前記整流隔壁は、前記ケーシングの半周よりも短い長さに形成される、回転電機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の回転電機において、
前記拡幅領域は、前記軸方向において前記螺旋通路の一端側に設けられた第1拡幅領域と、前記軸方向において前記螺旋通路の他端側に設けられた第2拡幅領域とを有し、
前記整流隔壁は、前記第1拡幅領域に配置された第1整流隔壁と、前記第2拡幅領域に配置された第2整流隔壁とを有する、回転電機。
【請求項7】
請求項6記載の回転電機において、
前記ケーシングは、前記螺旋通路の前記上流端と接続する入口通路と、前記螺旋通路の前記下流端と接続する排出通路とを有し、
前記入口通路及び前記排出通路の一方は、前記ケーシングの外周部を接線方向に貫通する接線方向孔であり、
前記入口通路及び前記排出通路の他方は、前記ケーシングの一端部を前記ケーシングの軸方向に貫通する軸方向孔であり、
前記第1拡幅領域は、前記螺旋通路の前記上流端及び前記下流端のうち前記接線方向孔と接続する側に隣接する位置に設けられ、
前記第2拡幅領域は、前記螺旋通路の前記上流端及び前記下流端のうち前記軸方向孔と接続する側に隣接する位置に設けられ、
前記第2整流隔壁の延在長さは、前記第1整流隔壁の延在長さよりも短い、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1、2には回転電機の冷却構造が開示されている。特許文献1に開示された水冷式モータは、一定角度に傾斜した螺旋状隔壁によって形成された冷却通路を有するケーシングを備える。特許文献2に開示された水冷式モータでは、冷媒を入口近傍から出口近傍まで行き渡らせるために、水平通路と部分的な傾斜通路とにより冷却通路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5717669号公報
【特許文献2】特開第6302736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ケーシングの両端(入口と出口の近傍)に冷媒が行き渡らず、冷却性能において改善の余地がある。特許文献2では、冷却通路の途中部分がクランク状に大きく屈曲するため、冷媒がスムーズに流れにくい。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ロータ及びステータを収容するケーシングを備え、液状の冷媒を流す螺旋通路を前記ケーシングが有する回転電機であって、前記ケーシングは、前記螺旋通路の上流端と下流端との間で少なくとも一部が一定の傾斜角で螺旋状に延在する流路形成壁を有し、前記螺旋通路は、前記ケーシングの軸方向において隣り合う前記流路形成壁の流路幅が他の部分よりも大きい拡幅領域を有し、前記拡幅領域は、前記軸方向において前記螺旋通路の少なくとも一端側に形成され、前記螺旋通路に沿って延在する整流隔壁が前記拡幅領域に形成され、前記拡幅領域は、前記整流隔壁の上流端によって前記冷媒の流れを分岐させる分岐部と、前記整流隔壁の下流端によって前記冷媒を合流させる合流部とを有する、回転電機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の回転電機によれば、螺旋通路の拡幅領域に整流隔壁が設けられているため、流路の拡大部位において冷媒の流れに偏りが生じることを抑制し、螺旋通路の流路全体に冷媒を行き渡らせることができる。これにより、冷却範囲を拡大しつつ、冷媒をスムーズに流して、冷却効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る回転電機を備えたドライブユニットの全体概略図である。
図2図2は、螺旋通路を含む第1冷却通路の流路形状を示す斜視図である。
図3図3は、円筒カバーを透視した回転電機ケーシングの側面図(図2の矢印A方向から見た側面図)である。
図4図4は、ドライブユニットを備えたプロペラ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すドライブユニット10は、回転電機12と、回転電機12に一体化された変速機14と、回転電機12と変速機14とを冷却する冷却構造15とを備える。このドライブユニット10は、回転電機12の回転軸線AX(以下、単に「軸線AX」という)が上下方向を向いた状態で使用される。なお、「上下方向」とは、厳密な鉛直方向だけでなく、鉛直方向に対して若干傾いた方向も含む。ドライブユニット10の用途は特に限定されないが、例えば、垂直離着陸型航空機のプロペラ106を駆動するための動力源として使用され得る(図4参照)。
【0010】
回転電機12は、電動モータである。回転電機12は、回転可能に支持されたシャフト16と、シャフト16に固定されたロータ18と、ロータ18を囲むステータ20と、シャフト16、ロータ18及びステータ20を収容する回転電機ケーシング22とを有する。以下、「軸方向」とは、回転電機12、シャフト16、ロータ18、ステータ20又は回転電機ケーシング22の軸方向を意味するものとする。
【0011】
ロータ18は、回転電機12の軸線AX上に配置されている。詳細は図示しないがロータ18は、例えば積層鋼板からなるロータコアと、ロータコアに固定された磁石とを有する。シャフト16とロータ18とは一体的に回転する。ロータ18は、回転電機ケーシング22の一端部と他端部とにそれぞれ配置された軸受24、26によって、回転可能に支持されている。
【0012】
ステータ20は、中空円筒状に形成されており、回転電機ケーシング22の内周面に固定されている。詳細は図示しないが、ステータ20は、ステータコアと、ステータコアに保持されたコイルとを有する。図示しないバッテリからステータ20に電力が供給され、コイルに電流が流れて磁界が発生することで、ロータ18及びシャフト16が回転駆動される。
【0013】
回転電機ケーシング22は、ステータ20を囲む円筒状の周壁部28と、回転電機ケーシング22の一端部(上端部)を構成する天井部32と、回転電機ケーシング22の他端部(下端部)を構成する底壁部30と、を有する。周壁部28は、外周面に螺旋状の溝34が形成された周壁本体36と、周壁本体36を囲む円筒カバー38とを有する。
【0014】
回転電機12には、冷却構造15の第1冷却通路41が設けられている。第1冷却通路41は、回転電機12を冷却する。第1冷却通路41には液状の冷媒(例えば水又は不凍液)が供給される。
【0015】
第1冷却通路41は、入口通路411と、螺旋通路412と、排出通路413とを有する。入口通路411は、回転電機ケーシング22に冷媒を導入する。入口通路411は、螺旋通路412の上流端412aと連通する。入口通路411は、回転電機ケーシング22の外周部を接線方向に貫通する接線方向孔である(図2参照)。なお、入口通路411は、回転電機ケーシング22の底壁部30を軸方向に貫通する軸方向孔であってもよい。
【0016】
入口通路411は、回転電機12の軸線AXが上下方向を向いた使用状態における回転電機ケーシング22の下部に設けられている。本実施形態では、入口通路411は、円筒カバー38の下部に設けられた入口ポート40に形成されている。入口ポート40には、冷媒循環装置60の供給ライン612が接続されている。
【0017】
本実施形態では、周壁本体36と円筒カバー38との間に螺旋通路412が形成されている。螺旋通路412の下端が、螺旋通路412の上流端412aである。螺旋通路412の上端が、螺旋通路412の下流端412bである。
【0018】
図2に示すように、螺旋通路412は、入口通路411の下流側で回転電機12の軸線AXを中心に回転電機ケーシング22の周壁部28内を螺旋状に延在する。
【0019】
図3に示すように、回転電機ケーシング22は、螺旋通路412の上流端412aと下流端412bとの間で少なくとも一部が一定の傾斜角で螺旋状に延在する流路形成壁420を有する。螺旋通路412は、回転電機ケーシング22の軸方向において隣り合う流路形成壁420の流路幅が他の部分よりも大きい拡幅領域(第1拡幅領域441及び第2拡幅領域442)を有する。拡幅領域は、軸方向において螺旋通路412の少なくとも一端側に形成されている。螺旋通路412に沿って延在する整流隔壁(第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452)が拡幅領域に形成されている。整流隔壁は、流路形成壁420から離間している。
【0020】
流路形成壁420は、軸方向において螺旋通路412の一端部を形成する第1端部形成壁431と、軸方向において螺旋通路412の他端部を形成する第2端部形成壁432とを有する。第1端部形成壁431及び第2端部形成壁432は、回転電機ケーシング22の周方向と平行に延在する。
【0021】
本実施形態において、螺旋通路412は、軸方向において螺旋通路412の一端側に設けられた第1拡幅領域441と、軸方向において螺旋通路412の他端側に設けられた第2拡幅領域442とを有する。螺旋通路412は、第1拡幅領域441と第2拡幅領域442との間に、螺旋状に延在する中間領域443を有する。第1拡幅領域441に第1整流隔壁451が配置され、第2拡幅領域442に第2整流隔壁452が配置されている。
【0022】
第1拡幅領域441及び第2拡幅領域442の流路幅は、中間領域443の流路幅Tよりも大きい。具体的に、中間領域443の流路幅Tが螺旋通路412における通常幅である。第1拡幅領域441の上流端の流路幅C及び下流端の流路幅Dは、中間領域443の流路幅Tよりも大きい。第2拡幅領域442の上流端の流路幅E及び下流端の流路幅Fは、中間領域443の流路幅Tよりも大きい。第1拡幅領域441の流路幅は、第1拡幅領域441において軸方向に隣り合う流路形成壁420間の軸方向距離である。第2拡幅領域442の流路幅は、第2拡幅領域442において軸方向に隣り合う流路形成壁420間の軸方向距離である。中間領域443の流路幅は、中間領域443において軸方向に隣り合う流路形成壁420間の軸方向距離である。中間領域443において軸方向に隣り合う流路形成壁420は、互いに平行である。従って、中間領域443の流路幅は、中間領域443の延在方向に沿って一定である。
【0023】
第1拡幅領域441は、回転電機ケーシング22の周方向において螺旋通路412の上流端412aに隣接する位置に配置されている。螺旋通路412のうち隣り合う流路形成壁420の傾斜角度が異なる部分によって第1拡幅領域441が形成されている。互いに傾斜角度が異なる流路形成壁420の間に第1整流隔壁451が配置されている。
【0024】
第1拡幅領域441は、第1整流隔壁451の上流端によって冷媒の流れを分岐させる第1分岐部461と、第1整流隔壁451の下流端によって冷媒を合流させる第1合流部471とを有する。第1合流部471が第1拡幅領域441の下流端であり、第1合流部471の箇所で螺旋通路412の流路幅が減少する。流路形成壁420は、第1合流部471の箇所で螺旋通路412の流路幅を減少させるように傾斜する第1傾斜部421を有する。回転電機ケーシング22の周方向に対する第1傾斜部421の傾斜角度βは、流路形成壁420のうち中間領域443を形成する部分(中間形成壁423)の傾斜角度αよりも大きい。
【0025】
第1整流隔壁451によって第1拡幅領域441が2つのサブ流路441a、441bに軸方向に分割される。一方のサブ流路441aの流路幅方向の一方側が第1端部形成壁431によって形成される。図2に示すように、サブ流路441aと螺旋通路412の上流端412aとは、軸線AXを中心とする同一円周上に配置される。第1整流隔壁451の下流側は、螺旋通路412の上流端412aに向かって延在する。
【0026】
図3に示すように、第1整流隔壁451は、第1端部形成壁431と平行に延在する。第1整流隔壁451は、第1端部形成壁431に対して傾斜してもよい。第1整流隔壁451は、回転電機ケーシング22の半周よりも短い長さに形成される。第1整流隔壁451は、回転電機ケーシング22の半周と同じ長さか、それよりも長く形成されてもよい。
【0027】
第2拡幅領域442は、回転電機ケーシング22の周方向において螺旋通路412の下流端412bに隣接する位置に配置されている。螺旋通路412のうち隣り合う流路形成壁420の傾斜角度が異なる部分によって第2拡幅領域442が形成されている。互いに傾斜角度が異なる流路形成壁420の間に第2整流隔壁452が配置されている。
【0028】
第2拡幅領域442は、第2整流隔壁452の上流端によって冷媒の流れを分岐させる第2分岐部462と、第2整流隔壁452の下流端によって冷媒を合流させる第2合流部472とを有する。第2分岐部462が第2拡幅領域442の上流端であり、第2分岐部462の箇所で螺旋通路412の流路幅が拡大する。流路形成壁420は、第2分岐部462の箇所で螺旋通路412の流路幅を拡大させるように傾斜する第2傾斜部422を有する。回転電機ケーシング22の周方向に対する第2傾斜部422の傾斜角度γは、中間形成壁423の傾斜角度αよりも大きい。
【0029】
第2整流隔壁452によって第2拡幅領域442が2つのサブ流路442a、442bに軸方向に分割される。一方のサブ流路442bの流路幅方向の一方側が第2端部形成壁432によって形成される。図2に示すように、サブ流路442bと螺旋通路412の下流端412bとは、軸線AXを中心とする同一円周上に配置される。第2整流隔壁452の上流側は、螺旋通路412の下流端412bに向かって延在する。
【0030】
図3に示すように、第2整流隔壁452は、第2端部形成壁432と平行に延在する。第2整流隔壁452は、第2端部形成壁432に対して傾斜してもよい。第2整流隔壁452は、回転電機ケーシング22の半周よりも短い長さに形成される。第2整流隔壁452の延在長さL2は、第1整流隔壁451の延在長さL1よりも短い。なお、第2整流隔壁452の延在長さL2は、第1整流隔壁451の延在長さL1と同じか、第1整流隔壁451の延在長さL1より長くてもよい。第2整流隔壁452は、回転電機ケーシング22の半周と同じ長さか、それよりも長く形成されてもよい。つまり、第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452の形態(長さや肉厚など)は適宜変更が可能であり、第1拡幅領域441及び第2拡幅領域442における流路断面積をそれぞれ変化させることで、冷媒の流れを調整することが可能である。
【0031】
排出通路413は、螺旋通路412の下流端412bと連通する。排出通路413は、螺旋通路412を通過した冷媒を回転電機ケーシング22から排出する。排出通路413は、使用状態における回転電機ケーシング22の一端部を構成する端壁部(天井部32)を回転電機12の軸方向に貫通する軸方向孔である。なお、排出通路413は、回転電機ケーシング22の外周部を接線方向に貫通する接線方向孔であってもよい。
【0032】
図1に示すように、変速機14は、回転電機12の一端部(天井部32)に固定されている。本実施形態では、変速機14は、遊星歯車装置として構成されている。本実施形態では、変速機14は、回転電機12と同軸に配置されている。変速機14は、回転電機12のシャフト16の一端(上端)に固定された太陽歯車141と、太陽歯車141と噛み合う複数の遊星歯車142とを有する。
【0033】
変速機14は、複数の遊星歯車142を支持するキャリア143と、キャリア143に固定された出力軸144と、複数の遊星歯車142と噛み合う内歯車145とをさらに有する。出力軸144がシャフト16と同軸に配置されている。出力軸144に負荷(例えば、図4に示すプロペラ106)が連結される。変速機14は、太陽歯車141、遊星歯車142、キャリア143、出力軸144及び内歯車145を収容する変速機ケーシング50をさらに有する。内歯車145は、変速機ケーシング50の内周面に形成されている。なお、変速機14の構成は、遊星歯車装置に限定されず、他の変速機構でもよい。
【0034】
変速機14の内部では潤滑油が循環する。変速機14は、潤滑油を貯留する油溜まり部52を有する。油溜まり部52は変速機ケーシング50の下部に設けられている。油溜まり部52は、回転電機12の軸線AXを中心とする円環状に形成されている。詳細は図示しないが、変速機ケーシング50の内部には、油溜まり部52から潤滑油を回収し、歯車列(太陽歯車141、遊星歯車142及び内歯車145)の上方から潤滑油を噴射(散布)する潤滑油循環機構が設けられている。油溜まり部52から潤滑油を回収するためのポンプは、例えば、シャフト16の回転に機械的に連動するカム式ポンプであり得る。
【0035】
冷却構造15は、変速機14を冷却する第2冷却通路42をさらに有する。第1冷却通路41と第2冷却通路42とが互いに連通し、第1冷却通路41と第2冷却通路42とに共通の冷媒が流れる。変速機ケーシング50は、第1冷却通路41と第2冷却通路42とを繋ぐ図示しない連絡通路を有する。第1冷却通路41と第2冷却通路42とが直列に配置されている。本実施形態では、第1冷却通路41は、第2冷却通路42の上流側に配置されている。具体的に、第2冷却通路42は、回転電機ケーシング22と変速機ケーシング50との間に設けられた隙間によって形成されている。
【0036】
第2冷却通路42は、回転電機12の軸線AXを囲むように形成される。第2冷却通路42は、油溜まり部52に沿って形成される。回転電機ケーシング22の天井部32の上面に、軸線AXを囲む溝54が形成されている。この溝54と、変速機ケーシング50の下面とによって、第2冷却通路42が形成されている。油溜まり部52の底壁521の下面は、変速機ケーシング50の下面の一部である。従って、油溜まり部52の底壁521の下面と、上記の溝54とによって、第2冷却通路42が形成されている。変速機ケーシング50は、第2冷却通路42を通過した冷媒を変速機ケーシング50から排出する図示しない出口通路をさらに有する。出口通路は、変速機ケーシング50に設けられた出口ポート64にて開口する。
【0037】
ドライブユニット10は、回転電機12と変速機14との間に配置された内側シール部材56と外側シール部材58とをさらに備える。内側シール部材56は、円弧状(C字状)に延在する第2冷却通路42の内側で、回転電機12と変速機14との間に配置されている。外側シール部材58は、第2冷却通路42の外側で、回転電機12と変速機14との間に配置されている。内側シール部材56及び外側シール部材58は、回転電機ケーシング22と変速機ケーシング50との間に挟持されている。内側シール部材56及び外側シール部材58は、軸線AXに対して同心状に配置されている。
【0038】
出口ポート64には、冷媒循環装置60の回収ライン613が接続されている。冷媒は、回収ライン613を介して、冷媒循環装置60の供給ユニット610に導入される。詳細は図示しないが、供給ユニット610は、例えば、冷媒を冷却する熱交換器と、冷却構造15の第1冷却通路41へと冷媒を送給するポンプとを有する。なお、ポンプは機械駆動式又は電動駆動式など駆動形式は問わず、採用できる。
【0039】
冷媒循環装置60の供給ユニット610が供給ライン612を介して冷媒を第1冷却通路41に供給する。冷媒は、第1冷却通路41の入口通路411、螺旋通路412及び排出通路413を順次経由して、回転電機ケーシング22から排出される。冷媒が螺旋通路412を流れる過程で、冷媒により回転電機ケーシング22が冷却される。
【0040】
具体的には、図3に示すように、冷媒は、入口通路411を介して螺旋通路412に導入される。冷媒は、第1拡幅領域441の第1分岐部461にてサブ流路441a、441bに分流される。分流された冷媒は、第1合流部471にて合流し、中間領域443へと流れる。冷媒は、中間領域443を経由して第2拡幅領域442へと流れる。冷媒は、第2拡幅領域442の第2分岐部462にてサブ流路442a、442bに分流される。分流された冷媒は、第2合流部472にて合流し、排出通路413へと至る。
【0041】
図1において、冷媒は、第1冷却通路41の排出通路413から図示しない連絡通路を介して第2冷却通路42へと流入する。冷媒が第2冷却通路42を流れる過程で、冷媒により変速機ケーシング50が冷却される。冷媒は、第2冷却通路42から出口ポート64を介して変速機ケーシング50の外部へと排出される。変速機ケーシング50から排出された冷媒は、冷媒循環装置60の回収ライン613を介して供給ユニット610へと戻される。
【0042】
図4に示すように、ドライブユニット10は、プロペラ装置100に適用され得る。なお、ドライブユニット10は、プロペラ装置100に限らず、他の装置の動力源として用いることができる。プロペラ装置100は、ドライブユニット10と、ドライブユニット10を収容する収容部104と、ドライブユニット10の変速機14に連結されたプロペラ106とを備える。
【0043】
プロペラ装置100は、例えば、垂直離着陸型航空機に用いられる。そのため、プロペラ装置100の使用状態で回転電機12の軸線AXが上下方向を向くように、回転電機12が配置される。プロペラ装置100は、使用状態での回転電機12の軸線AXが略水平方向を向くように配置される構成であってもよい。
【0044】
回転電機12のシャフト16の下端には、収容部104内に気流を発生させるファン108が取り付けられており、例えば供給ユニット610の熱交換器(不図示)に送風する。プロペラ106は、変速機14の出力軸144に連結されたプロペラシャフト110と、プロペラシャフト110の上端に設けられたハブ112と、ハブ112から径方向外方に突出した複数のブレード114とを有する。なお、本発明はドライブユニット10の変速機14の出力軸144の回転軸線を水平方向に向けるようにすることで、二輪、四輪等の車両や航空機、船舶等にも用いることが可能である。
【0045】
本実施形態は、以下の効果を奏する。
【0046】
図3に示すように、螺旋通路412の第1拡幅領域441に第1整流隔壁451が設けられ、第2拡幅領域442に第2整流隔壁452が設けられているため、流路の拡大部位において冷媒の流れに偏りが生じることを抑制し、螺旋通路412の流路全体に冷媒を行き渡らせることができる。これにより、冷却範囲を拡大しつつ、冷媒をスムーズに流して、冷却効率を向上させることができる。
【0047】
螺旋通路412のうち隣り合う流路形成壁420の傾斜角度が異なる部分によって第1拡幅領域441及び第2拡幅領域442が形成され、互いに傾斜角度が異なる流路形成壁420の間に第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452が配置されている。流路幅の拡大による流れの偏りを第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452によって分散させることで、冷却対象面積を拡大することができる。
【0048】
第1拡幅領域441及び第2拡幅領域442は、回転電機ケーシング22の周方向において、螺旋通路412の上流端412a及び下流端412bに隣接する位置に設けられる。第1端部形成壁431及び第2端部形成壁432は回転電機ケーシング22の周方向と平行に延在し、第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452はそれぞれ螺旋通路412の上流端412a及び下流端412bに向かって延在する。従来技術に見られるように、螺旋通路412の上流端412a及び下流端412bを避けるために、上流端412a及び下流端412bの近傍に流路を設置しない場合、冷却範囲の制限を受けやすい。これに対し本実施形態では、上流端412a及び下流端412bの近傍にも流路を配置することで、冷却対象面積を拡大することができる。
【0049】
第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452は、それぞれ第1端部形成壁431及び第2端部形成壁432と平行に延在する。第1整流隔壁451と第1端部形成壁431との間隔を一定に確保するとともに、第2整流隔壁452と第2端部形成壁432との間隔を一定に確保することで、冷媒の流量変化を抑えて、効率よく冷却することが可能となる。
【0050】
第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452は、回転電機ケーシング22の半周よりも短い長さに形成される。冷媒と第1整流隔壁451との接触面積を極力小さくし、冷媒と第2整流隔壁452との接触面積を極力小さくして、第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452での摩擦抵抗を抑制し、第1整流隔壁451及び第2整流隔壁452による圧力損失の増大を抑制することができる。
【0051】
螺旋通路412は、軸方向において螺旋通路412の一端側に設けられた第1拡幅領域441と、軸方向において螺旋通路412の他端側に設けられた第2拡幅領域442とを有する。第1拡幅領域441に第1整流隔壁451が配置され、第2拡幅領域442に第2整流隔壁452が配置される。螺旋通路412の上流端412aと下流端412bの各々の側で冷却範囲を拡大させることにより、冷却効率を一層向上させることができる。
【0052】
入口通路411及び排出通路413の一方は、回転電機ケーシング22の外周部を接線方向に貫通する接線方向孔であり、入口通路411及び排出通路413の他方は、回転電機ケーシング22の一端部を軸方向に貫通する軸方向孔である。第2整流隔壁452の延在長さは、第1整流隔壁451の延在長さよりも短い。第2整流隔壁452の延在長さを第1整流隔壁451の延在長さよりも短くすることで、周方向長さが短くなりやすい第2拡幅領域442での流路幅を適切に確保することができる。これにより、冷媒をスムーズに流して、冷却効率を向上させることができる。
【0053】
上記の実施形態をまとめると、以下のようになる。
【0054】
上記の実施形態は、ロータ(18)及びステータ(20)を収容するケーシング(22)を備え、液状の冷媒を流す螺旋通路(412)を前記ケーシングが有する回転電機(12)であって、前記ケーシングは、前記螺旋通路の上流端(412a)と下流端(412b)との間で少なくとも一部が一定の傾斜角で螺旋状に延在する流路形成壁(420)を有し、前記螺旋通路は、前記ケーシングの軸方向において隣り合う前記流路形成壁の流路幅が他の部分よりも大きい拡幅領域(441、442)を有し、前記拡幅領域は、前記軸方向において前記螺旋通路の少なくとも一端側に形成され、前記螺旋通路に沿って延在する整流隔壁(451、452)が前記拡幅領域に形成され、前記拡幅領域は、前記整流隔壁の上流端によって前記冷媒の流れを分岐させる分岐部(461、462)と、前記整流隔壁の下流端によって前記冷媒を合流させる合流部(471、472)とを有する、回転電機を開示する。
【0055】
螺旋通路の拡幅領域に整流隔壁が設けられているため、流路の拡大部位において冷媒の流れに偏りが生じることを抑制し、螺旋通路の流路全体に冷媒を行き渡らせることができる。これにより、冷却範囲を拡大しつつ、冷媒をスムーズに流して、冷却効率を向上させることができる。
【0056】
前記螺旋通路のうち隣り合う前記流路形成壁の傾斜角度が異なる部分によって前記拡幅領域が形成され、互いに傾斜角度が異なる前記流路形成壁の間に前記整流隔壁が配置されている。
【0057】
流路幅の拡大による冷媒の流れの偏りを整流隔壁によって分散させることで、冷却対象面積を拡大することができる。
【0058】
前記拡幅領域は、前記ケーシングの周方向において、前記螺旋通路の前記上流端又は前記下流端に隣接する位置に設けられ、前記流路形成壁は、前記軸方向において前記螺旋通路の少なくとも一端部を形成する端部形成壁(431、432)を有し、前記端部形成壁は前記周方向と平行に延在し、前記整流隔壁は前記螺旋通路の前記上流端又は前記下流端に向かって延在する。
【0059】
螺旋通路の上流端又は下流端を避けるために当該上流端又は下流端の近傍に流路を設置しない場合、冷却範囲の制限を受けやすい。これに対し、上流端又は下流端の近傍にも流路を配置することで、冷却対象面積を拡大することができる。
【0060】
前記整流隔壁は、前記端部形成壁と平行に延在する。
【0061】
整流隔壁と端部形成壁との間隔を一定に確保することで冷媒の流量変化を抑えて、効率よく冷却することが可能となる。
【0062】
前記整流隔壁は、前記ケーシングの半周よりも短い長さに形成される。
【0063】
冷媒と整流隔壁との接触面積を極力小さくして、整流隔壁での摩擦抵抗を抑制し、整流隔壁による圧力損失の増大を抑制することができる。
【0064】
前記拡幅領域は、前記軸方向において前記螺旋通路の一端側に設けられた第1拡幅領域(441)と、前記軸方向において前記螺旋通路の他端側に設けられた第2拡幅領域(442)とを有し、前記整流隔壁は、前記第1拡幅領域に配置された第1整流隔壁(451)と、前記第2拡幅領域に配置された第2整流隔壁(452)とを有する。
【0065】
上流端と下流端の各々の側で冷却範囲を拡大させることにより、冷却効率を一層向上させることができる。
【0066】
前記ケーシングは、前記螺旋通路の前記上流端と接続する入口通路(411)と、前記螺旋通路の前記下流端と接続する排出通路(413)とを有し、前記入口通路及び前記排出通路の一方は、前記ケーシングの外周部を接線方向に貫通する接線方向孔であり、前記入口通路及び前記排出通路の他方は、前記ケーシングの一端部を前記ケーシングの軸方向に貫通する軸方向孔であり、前記第1拡幅領域は、前記螺旋通路の前記上流端及び前記下流端のうち前記接線方向孔と接続する側に隣接する位置に設けられ、前記第2拡幅領域は、前記螺旋通路の前記上流端及び前記下流端のうち前記軸方向孔と接続する側に隣接する位置に設けられ、前記第2整流隔壁の延在長さは、前記第1整流隔壁の延在長さよりも短い。
【0067】
螺旋通路の上流端及び下流端のうち軸方向孔と接続する側に隣接する位置に設けられた第2拡幅領域は、接線方向孔に隣接する位置に設けられた第1拡幅領域よりも周方向長さが短くなりやすい。第2整流隔壁の延在長さを第1整流隔壁の延在長さよりも短くすることで、第2拡幅領域での流路幅を適切に確保することができる。これにより、冷媒をスムーズに流して、冷却効率を向上させることができる。
【0068】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0069】
12…回転電機 22…回転電機ケーシング(ケーシング)
412…螺旋通路 420…流路形成壁
441…第1拡幅領域 442…第2拡幅領域
451…第1整流隔壁 452…第2整流隔壁
461…第1分岐部 462…第2分岐部
471…第1合流部 472…第2合流部
図1
図2
図3
図4