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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057265
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】蓄熱槽
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20220101AFI20240417BHJP
   F24H 9/00 20220101ALI20240417BHJP
【FI】
F24H1/18 C
F24H9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163876
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】水川 洸一
【テーマコード(参考)】
3L036
3L122
【Fターム(参考)】
3L036AB05
3L036AB07
3L122AA02
3L122AA26
3L122AA33
3L122AA62
3L122AB12
3L122AB22
3L122AB25
3L122AB66
(57)【要約】
【課題】蓄熱槽内の高温水の利用時に温度成層が崩れ難くなるように構成した蓄熱槽を提供すること。
【解決手段】内部の高温水を上部から取り出して外部の熱交換器(4)で熱交換によって温度が下がった低温水を下部に戻す循環通路(5)が接続された蓄熱槽(10)において、湯水の貯留部分が長方形の底部(10a)を有する直方体形状に形成され、高温水の取り出し口(12)と低温水の戻り口(13)が、貯留部分の複数の側壁部のうち面積が大きい第1側壁部(10b)の対角線(L)上の位置に離隔して設けられ、第1側壁部(10b)と、この第1側壁部(10b)に対向する第2側壁部(10c)には、内部に向かって突出する複数の仕切り板(14,15)が異なる高さ位置に形成され、最も低い位置の仕切り板(14)が、第2側壁部(10c)に、戻り口(13)よりも高い位置に形成された。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の高温水を上部から取り出して外部の熱交換器で熱交換によって温度が下がった低温水を下部に戻す循環通路が接続された蓄熱槽において、
湯水の貯留部分が長方形の底部を有する直方体形状に形成され、
前記高温水の取り出し口と前記低温水の戻り口が、前記貯留部分の複数の側壁部のうち面積が大きい第1側壁部の対角線上の位置に離隔して設けられ、
前記第1側壁部と、この第1側壁部に対向する第2側壁部には、内部に向かって突出する複数の仕切り板が異なる高さ位置に形成され、
最も低い位置の前記仕切り板は、前記第2側壁部に、前記戻り口よりも高い位置に形成されたことを特徴とする蓄熱槽。
【請求項2】
最も高い位置の前記仕切り板は、前記第1側壁部に、前記取り出し口よりも低い位置に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱槽。
【請求項3】
複数の前記仕切り板は、内部に突出した先端側部分が互いに重なり合う突出量を有するように夫々形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄熱槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒の熱を利用する設備機器の熱媒を貯留する蓄熱槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、蓄熱槽に蓄えられた熱を利用する例えば給湯暖房システムのような設備機器が広く知られている。蓄熱槽には熱媒として例えば湯水が貯留され、例えば機器の排熱を利用する外部熱源機によって蓄熱槽の湯水が加熱されて熱が蓄えられる。この蓄熱動作のとき、蓄熱槽の下部から低温水が外部熱源機に供給され、外部熱源機で加熱された高温水が蓄熱槽の上部に戻され、上側の高温水層と下側の低温水層からなる温度成層が形成されて高温水層が下方に拡大してゆく。
【0003】
温度成層が形成された蓄熱槽内は、上側の温度が高いので自然対流が発生し難く、高温水と低温水が混合されない。それ故、蓄熱槽が高温水で満たされていなくても、蓄熱槽の上部から高温水を取り出して利用することが可能である。この蓄熱槽の高温水を利用するときには、取り出された高温水が暖房等に利用され、温度が下がった低温水が蓄熱槽の下部に戻されることにより、高温水層が上方に縮小してゆくと共に低温水層が上方に拡大してゆく。
【0004】
しかし、蓄熱槽に戻された低温水によって蓄熱槽内の湯水が撹拌されて高温水と低温水が混合され、温度成層が崩れて蓄熱槽に蓄えられた熱を十分に利用することができなくなる虞がある。そのため、例えば特許文献1のように、蓄熱槽である開放式の湯水槽の上部から高温水を取り出し、湯水槽内に上下方向に延びるように設けられた給水導管を介して湯水槽の下部に低温水を供給し、給水導管には低温水の流速を低下させる流速減少部を設けた構成が知られている。
【0005】
また、特許文献2には、蓄熱槽である扁平箱形の貯湯タンクにおいて、入水部と出湯部の間に複数の仕切り壁部によって湯水を蛇行させる蛇行流路が形成され、高温水と低温水が混ざり合わないように、入水部からの低温水によって高温水を蛇行流路に沿って出湯部側に押し出すことが記載されている。この貯湯タンクは、一部の仕切り壁部がヒータになっており、蛇行流路内で高温水が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭53-44351号公報
【特許文献2】特開2007-271228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のように低温水によって高温水を押し出すためには、複数の仕切り壁部によって蛇行流路の流路断面積を小さくすることが好ましい。しかし、仕切り壁部が多いほど貯湯タンクの容量が減少すると共に重量が増加し、容量減少を補うためには貯湯タンクが大きくなってさらに重くなるので、設置性が低下する。また、高温水を押し出すために貯湯タンクが湯水で満たされた状態が維持されるが、湯水の熱膨張を吸収する膨張タンク等が貯湯タンクの外部に必要であり、設備機器が大きくなると共に製造コストが上昇するので好ましくない。
【0008】
一方、特許文献1の湯水槽は、湯水槽内の高温水の利用時に高温水層の給水導管に接する部分が、給水導管を介して供給される低温の湯水によって冷却されて沈み込み、自然対流が生じて温度成層が崩れてしまう虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、蓄熱槽内の高温水の利用時に温度成層が崩れ難くなるように構成した蓄熱槽を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明の蓄熱槽は、内部の高温水を上部から取り出して外部の熱交換器で熱交換によって温度が下がった低温水を下部に戻す循環通路が接続された蓄熱槽において、湯水の貯留部分が長方形の底部を有する直方体形状に形成され、前記高温水の取り出し口と前記低温水の戻り口が、前記貯留部分の複数の側壁部のうち面積が大きい第1側壁部の対角線上の位置に離隔して設けられ、前記第1側壁部と、この第1側壁部に対向する第2側壁部には、内部に向かって突出する複数の仕切り板が異なる高さ位置に形成され、最も低い位置の前記仕切り板は、前記第2側壁部に、前記戻り口よりも高い位置に形成されたことを特徴としている。
【0011】
上記構成によれば、湯水の貯留部分が長方形の底部を有する直方体形状に形成された蓄熱槽は、内部の高温水が上部から取り出され、その熱が利用されて温度が下がった低温水が下部に戻される。この貯留部分の複数の側壁部のうちの面積が大きい第1側壁部の対角線上に、高温水の取り出し口と低温水の戻り口が離隔して形成され、戻された低温水が取り出し口に到達するまで時間がかかるようにしている。そして、第1側壁部と、この第1側壁部に対向する第2側壁部から、夫々蓄熱槽の内部に向かって突出する複数の仕切り板が形成されている。これら複数の仕切り板は高さ位置が異なっており、そのうちの最も低い位置の仕切り板が、第2側壁部から突出するように戻り口よも高い位置に形成されている。それ故、戻り口から蓄熱槽に流入する低温水は、進行方向にある第2側壁部に衝突して上方に向きを変え、最も低い位置の仕切り板によって第1側壁部に向かうようにさらに向きを変えて流動する。従って、流入した低温水の流動によって最も低い位置の仕切り板の上方の高温水と下方の低温水とが混合されることが、この最も低い位置の仕切り板によって防止され、蓄熱槽の高温水の利用時に温度成層を崩れ難くすることができる。
【0012】
請求項2の発明の蓄熱槽は、請求項1の発明において、最も高い位置の前記仕切り板は、前記第1側壁部に、前記取り出し口よりも下方に設けられたことを特徴としている。
上記構成によれば、最も高い位置の仕切り板が高温水の取り出し口の下方で第1壁部から突出している。従って、最も低い位置の仕切り板の下側に流入した低温水がすぐに取り出し口に到達することが防止され、取り出される高温水の温度を長く維持して蓄えられた熱を十分に利用することができる。
【0013】
請求項3の発明の蓄熱槽は、請求項1又は2の発明において、複数の前記仕切り板は、内部に突出した先端側部分が互いに重なり合う突出量を有するように夫々形成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、第1側壁部に形成された仕切り板の先端側部分と第2側壁部に形成された仕切り板の先端側部分とが互いに重なり合う突出量を有する。それ故、低温水は、第1側壁部の仕切り板と第2側壁部の仕切り板の間を水平方向に進行してから、これらの仕切り板によって上下方向に仕切られた蓄熱槽内の区画を1段上がる。従って、低温水の流動方向が整えられて蓄熱槽内の高温水が低温水と混合され難くなり、蓄熱槽の高温水の利用時に温度成層を崩れ難くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蓄熱槽によれば、蓄熱槽内の高温水の利用時に温度成層を崩れ難くすることができ、蓄えられた熱を十分に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例に係る蓄熱槽の熱を利用する設備機器の説明図である。
図2】実施例に係る蓄熱槽の斜視図である。
図3図2の蓄熱槽の膨張室を含むIII-III線縦断面図である。
図4図3の蓄熱槽内の湯水の流動説明図である。
図5図3の蓄熱槽の取り出し口における湯水温度の変化を示すグラフである。
図6】仕切り板が無い蓄熱槽の取り出し口における湯水温度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例0017】
最初に、蓄熱槽10に蓄熱した熱を利用する設備機器1について説明する。
図1に示すように、設備機器1は、開放式の蓄熱槽10と、外部熱源機2と、この外部熱源機2で蓄熱槽10の湯水を加熱して蓄熱槽10に熱を蓄えるための蓄熱通路3と、蓄熱槽10に蓄えられた熱を利用する熱交換器4を備えた循環通路5を有する。蓄熱槽10には開閉弁を備えた給水管6が接続され、蓄熱槽10に給水可能である。設備機器1は、蓄熱槽10の熱を利用して熱交換器4で加熱した流体を暖房に利用する暖房装置、又は熱交換器4で上水を加熱して給湯する給湯装置である。
【0018】
蓄熱通路3は、蓄熱槽10の下部から低温水を矢印A1のように外部熱源機2に供給し、この外部熱源機2によって加熱された高温水を矢印A2のように蓄熱槽10の上部に戻すことができるように、蓄熱槽10に接続されている。外部熱源機2と蓄熱槽10の間で湯水を循環させるためのポンプは、外部熱源機2に装備されているが、蓄熱通路3に装備されていてもよい。外部熱源機2は、例えば機器の排熱を利用するタイプのものであるが、例えば電力を利用して加熱するタイプのものであってもよい。
【0019】
循環通路5は、矢印A3のように蓄熱槽10の上部から高温水を取り出して外部の熱交換器4に供給し、矢印A4のように熱交換器4で熱交換されて温度が下がった低温水を蓄熱槽10の下部に戻すことができるように、蓄熱槽10に接続されている。熱交換器4と蓄熱槽10の間で湯水を循環させるポンプは、熱交換器4に内蔵されていてもよく、循環通路5に装備されていてもよい。熱交換器4は、蓄熱槽10に貯留された高温水の熱を利用して矢印A5のように供給される流体を加熱し、矢印A6のように加熱した流体を送り出す。
【0020】
図2に示すように、蓄熱槽10は、湯水の貯留部分が長方形の底部10aを有する直方体形状に形成され、湯水の熱膨張を吸収する膨張室11が湯水の貯留部分から上方に突出するように設けられている。膨張室11には、例えば2つの電極11aからなる水位センサが配設され、一定水位以上の湯水を排水する排水管が接続されるオーバーフロー口11b、給水管6が接続される給水口11c等が設けられている。
【0021】
蓄熱槽10の長方形の底部10aの4つの辺に対応する4つの側壁部のうち、面積が大きい2つの側壁部を第1,第2側壁部10b,10cとし、残りの側壁部を第3,第4側壁部10d,10eとする。第1側壁部10bには、蓄熱槽10に貯留された高温水を蓄熱槽10の上部から取り出す取り出し口12と、取り出された高温水が熱交換器4で熱交換されて温度が下がった低温水を蓄熱槽10の下部に戻す戻り口13が形成されている。
【0022】
取り出し口12と戻り口13は、第1側壁部10bの対角線L上に離隔して形成され、循環通路5がこれら取り出し口12と戻り口13に接続される。図示を省略するが、蓄熱通路3が接続される2つの接続口は、例えば第2側壁部10cにその対角線上に離隔して形成されていてもよく、第2側壁部10c以外の側壁部に設けられていてもよい。
【0023】
図3の蓄熱槽10の縦断面図に示すように、蓄熱槽10には、第1側壁部10b、第2側壁部10cから夫々蓄熱槽10の内部に向かって突出する複数の仕切り板14,15が異なる高さ位置に形成されている。仕切り板14,15は、第1、第2側壁部10b,10cの幅方向にわたって水平姿勢の平板状に形成され、この幅方向における両端が第3、第4側壁部10d,10eに夫々接続されている。
【0024】
取り出し口12と戻り口13が形成された第1側壁部10bに対向する第2側壁部10cには、取り出し口12よりも低く且つ戻り口13よりも高い位置に、最も低い位置の仕切り板14が形成されている。一方、第1側壁部10bには、取り出し口12よりも下方であって仕切り板14よりも高い位置に、最も高い位置の仕切り板15が形成されている。これら複数の仕切り板14,15は、第1側壁部10bの仕切り板15の先端側部分と第2側壁部10cの仕切り板14の先端側部分とが互いに重なり合う(オーバーラップする)突出量を有するように形成されている。
【0025】
仕切り板15の突出量(基端から先端までの長さ)は、仕切り板14,15が重なり合う領域の突出方向の長さOLと、第1側壁部10bと仕切り板14の先端との間の突出方向における隙間の長さSLの和である。同様に、仕切り板14の突出量は、仕切り板14,15が重なり合う領域の突出方向の長さOLと、第2側壁部10cと仕切り板15の先端との間の突出方向における隙間の長さSLの和である。そして、重なり合う領域の突出方向の長さOLは、隙間の長さSLよりも大きい。尚、仕切り板14,15の隙間の長さSLが等しくなるように仕切り板14,15が形成されている。
【0026】
蓄熱槽10の湯水の貯留部分の内部は、複数の仕切り板14,15によって、高さ方向に並ぶ複数の区画(下段区画16、中段区画17、上段区画18)に仕切られている。これら複数の区画は、仕切り板14の先端と第1側壁部10bの間の隙間及び仕切り板15の先端と第2側壁部10cの間の隙間を介して連通する。下段区画16の高さh1は中段区画17の高さh2よりも大きく、上段区画18の高さh3は下段区画16の高さh1よりも大きい。
【0027】
蓄熱槽10への蓄熱時には、蓄熱槽10の下部の下段区画16から低温水が外部熱源機2に供給され、高温水が蓄熱槽10の上部の上段区画18に戻される。このとき、一般的に、戻される高温水の流速を小さくして撹拌を抑制するので、上段区画18に上側の高温水層と下側の低温水層からなる温度成層が形成される。そして、高温水層が下方に拡大してゆき、最終的に蓄熱槽10の湯水の貯留部分が高温水で満たされて蓄熱が終了する。
【0028】
蓄熱槽10内の高温水の利用時には、蓄熱槽10の上部の上段区画18の取り出し口12から高温水が取り出され、熱交換器4で熱交換されて温度が下がった低温水が蓄熱槽10の下部に戻される。このとき図4に矢印で示すように、下段区画16において、戻り口13から流入する低温水は、底部10aに沿って第1、第2側壁部10b,10cの幅方向にも広がりながら進行し、流速が低下する。そして、第2側壁部10cに衝突して上方に向きを変え、最も低い位置の仕切り板14によってこの仕切り板14に沿って第1側壁部10bに向かうように向きを変える。
【0029】
取り出し口12から高温水が取り出され、戻り口13から低温水が流入するので、低温水流動によって押し出されるように高温水が流動する。そして、下段区画16に流入した低温水が第1側壁部10bと第2側壁部10cの間を往復する際に、下段区画16において高温水と低温水の混合が抑制される。
【0030】
また、仕切り板14と第1側壁部10bの間の隙間から中段区画17に流入する流速は、戻り口13から流入する低温水の流速よりも遅くなっている。そして、下段区画16よりも高さが小さい中段区画17では、低温水と高温水とが混合されずに第1側壁部10b側から第2側壁部10c側に向かうように流動方向が整えられる。
【0031】
中段区画17が低温水でほぼ満たされると、上段区画18に低温水が流入する。上段区画18に流入する流速は遅くなっているので、上段区画18における高温水と低温水の混合が抑制される。従って、上段区画18を仕切り板でさらに仕切る必要がなく、複数の仕切り板の数を、仕切り板14,15の2つだけにすることができる。
【0032】
こうして蓄熱槽10は、仕切り板14,15によって戻り口13から流入する低温水の流動方向を規制して、低温水と高温水との混合を抑制することができる。従って、蓄熱槽10に蓄えられた熱を十分に利用することができる。
【0033】
図5には複数の仕切り板14,15を備えた場合、図6には仕切り板14,15を備えていない場合について、蓄熱槽10からの高温水の取り出し開始から所定時間経過するまで、取り出し口12を通過する高温水の温度変化を示している。ここでは、例えば湯水の貯留量が15Lの蓄熱槽10の貯留部分に75℃の高温水が満たされており、15L/分の流量で高温水が取り出され40℃の低温水が戻り口13から流入する状態を30秒継続させている。
【0034】
仕切り板14,15を備えた場合には、開始から17秒程度経過するまで高温水が低温水と混合されずに取り出されており、貯留量の半分が取り出された30秒経過時でも71℃以上の温度が維持されている。一方、仕切り板14,15を備えていない場合には、開始から5秒程度まで高温水が低温水と混合されずに取り出されているが、その後は徐々に温度が下がり、貯留量の容量の半分が取り出された30秒経過時には63℃まで温度が低下している。
【0035】
このように、蓄熱槽10の複数の仕切り板14,15によって、高温水と低温水の撹拌、混合が抑制され、蓄熱槽10の熱を循環通路5の熱交換器4で十分に利用することができる。また、戻り口13と取り出し口12は、高さ方向だけでなく、第1側壁部10bの幅方向にも離隔されており、戻り口13から流入した低温水が取り出し口12に到達するまでの流動距離が長くなって時間がかかるので、蓄熱槽10の熱を十分利用することができる。
【0036】
上記蓄熱槽10の作用、効果について説明する。
湯水の貯留部分が長方形の底部10aを有する直方体形状に形成された蓄熱槽10は、内部の高温水が上部から取り出され、その熱が利用されて温度が下がった低温水が下部に戻される。貯留部分の複数の側壁部のうちの面積が大きい第1側壁部10bの対角線L上には、高温水の取り出し口12と低温水の戻り口13とが、戻された低温水が取り出し口12に到達するまで時間がかかるように離隔して形成されている。
【0037】
第1側壁部10bと、この第1側壁部10bに対向する第2側壁部10cから、夫々蓄熱槽10の内部に向かって突出する複数の仕切り板14,15が形成されている。これら複数の仕切り板14,15は高さ位置が異なっており、最も低い位置の仕切り板14が、第2側壁部10cから突出するように取り出し口12よりも低く且つ戻り口13よりも高い位置に形成されている。それ故、戻り口13から蓄熱槽10に流入する低温水は、進行方向にある第2側壁部10cに衝突して上方に向きを変え、最も低い位置の仕切り板14によって第1側壁部10bに向かうようにさらに向きを変えて流動する。従って、最も低い位置の仕切り板14よりも上方の高温水と流入した低温水との混合が防止され、蓄熱槽10内の高温水の利用時に温度成層を崩れ難くすることができる。
【0038】
第1側壁部10bに形成された最も高い位置の仕切り板15は、仕切り板14よりも高い位置であって高温水の取り出し口12の下方にある。この仕切り板15によって、最も低い位置の仕切り板14の下側に流入した低温水がすぐに取り出し口12に到達することが妨げられ、取り出される高温水の温度を長く維持して蓄えられた熱を十分に利用することができる。
【0039】
第1側壁部10bに形成された仕切り板15と第2側壁部10cに形成された仕切り板14は、互いに先端側部分が重なり合う突出量を有する。それ故、低温水が第1側壁部10bの仕切り板15と第2側壁部10cの仕切り板14の間を水平方向に進行してから、これらの仕切り板14,15によって上下方向に仕切られた蓄熱槽10内の区画を1段上がる。従って、低温水の流動方向が整えられて蓄熱槽10内の高温水が低温水と混合され難くなり、蓄熱槽10の高温水の利用時に温度成層を崩れ難くすることができる。
【0040】
中段区画17に、異なる高さ位置の複数の仕切り板を第1側壁部10bと第2側壁部10cに交互に形成し、高温水の利用時に湯水を蛇行させるようにして、高さ方向に大きい蓄熱槽に対応させることも可能である。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0041】
1 :設備機器
2 :外部熱源機
3 :蓄熱通路
4 :熱交換器
5 :循環通路
6 :給水管
10 :蓄熱槽
10a :底部
10b :第1側壁部
10c :第2側壁部
11 :膨張室
12 :取り出し口
13 :戻り口
14,15:仕切り板
16 :下段区画
17 :中段区画
18 :上段区画
L :対角線
図1
図2
図3
図4
図5
図6