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特開2024-57273エレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057273
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】エレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/00 20060101AFI20240417BHJP
【FI】
B66B11/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163888
(22)【出願日】2022-10-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田平 尚己
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306AA01
3F306DA24
3F306DA27
(57)【要約】
【課題】本発明は、エレベーター釣合い調整錘の各実測重量情報に基づき、釣合い調整錘の総重量を調整・確認する方法を提供する。
【解決手段】本発明のエレベーター10の釣合い調整錘21の総重量の調整・確認方法は、釣合い調整錘の各々の実測重量を計測し、実測重量と紐付けられた実測重量情報31として添付し、釣合い調整錘を据付現場18に持ち込み、持ち込まれた各々の釣合い調整錘の実測重量情報を読取り機器40で読み取って確認し、読み取られた実測重量情報に紐付けられた実測重量の総重量が、釣合い設計重量に最も近くなる釣合い調整錘の組合せを読取り機器の表示画面41に表示し、表示された組合せの釣合い調整錘を釣合い錘枠22に搭載し、搭載された釣合い調整錘の各実測重量情報を読取り機器により読み取り、読み取られた実測重量情報から、搭載された釣合い調整錘の総重量を算出して表示画面に表示する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣合い調整錘の各々の実測重量を計測し、前記実測重量と紐付けられ、読取り機器により読み取り可能な実測重量情報として前記釣合い調整錘の各々に添付する添付ステップ、
かごに対する釣合い設計重量よりも多くの前記釣合い調整錘をエレベーターの据付現場に持ち込む持込ステップ、
前記据付現場に持ち込まれた各々の釣合い調整錘の前記実測重量情報を前記読取り機器で読み取る確認ステップ、
前記読み取られた前記実測重量情報に紐付けられた実測重量の総重量が、前記釣合い設計重量に最も近くなる釣合い調整錘の組合せを前記読取り機器の表示画面に表示する第1組合せ表示ステップ、
前記表示画面に表示された前記釣合い調整錘の組合せに基づいて選択された前記釣合い調整錘を釣合い錘枠に搭載する第1釣合い調整錘搭載ステップ、
搭載された前記釣合い調整錘の各実測重量情報を前記読取り機器により読み取る第1読取りステップ、
読み取られた前記実測重量情報から、前記搭載された前記釣合い調整錘の総重量を算出し、前記読取り機器の前記表示画面に表示する第1実測重量表示ステップ、
とを含む、
エレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法。
【請求項2】
前記第1実測重量表示ステップの後、
前記かごを昇降させて、前記かごと前記釣合い調整錘のバランス調整を行なう第1バランス調整ステップ、
前記第1バランス調整ステップにて、前記かごと前記釣合い調整錘の総重量の差が誤差範囲内か、誤差範囲外かを判定する第1判定ステップ、
前記第1判定ステップの判定が、誤差範囲外である場合、前記釣合い調整錘の増量指示又は減量指示を前記読取り機器の前記表示画面に表示する第2組合せ表示ステップ、
とを含む、
請求項1に記載のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法。
【請求項3】
前記第2組合せ表示ステップは、前記持込ステップにて持ち込まれた前記釣合い調整錘の中から、増量又は減量に必要な釣合い調整錘の組合せを算出し、前記読取り機器の前記表示画面に表示するステップである、
請求項2に記載のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法。
【請求項4】
前記第2組合せ表示ステップで前記表示画面に表示された前記釣合い調整錘の組合せに基づいて選択された前記釣合い調整錘を釣合い錘枠に搭載する第2釣合い調整錘搭載ステップ、
搭載された前記釣合い調整錘の各実測重量情報を前記読取り機器により読み取る第2読取りステップ、
読み取られた前記実測重量情報から、前記搭載された前記釣合い調整錘の総重量を算出し、前記読取り機器の前記表示画面に表示する第2実測重量表示ステップ、
とを含む、
請求項3に記載のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法。
【請求項5】
前記第2実測重量表示ステップの後、
前記かごを昇降させて、前記かごと前記釣合い調整錘のバランス調整を行なう第2バランス調整ステップ、
前記第2バランス調整ステップにて、前記かごと前記釣合い調整錘の総重量の差が誤差範囲内か、誤差範囲外かを判定する第2判定ステップ、
とを含み、
前記第2判定ステップの判定が、前記誤差範囲内になるまで、前記第2組合せ表示ステップ以降のステップを繰り返す、
請求項4に記載のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの釣合い調整錘の各実測重量情報に基づき、釣合い調整錘の総重量を調整・確認する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、メインロープの一端にかご、他端に釣合い調整錘を装着し、メインロープが掛けられたシーブを駆動モーターで回転させることにより、かごの昇降を行なっている。釣合い調整錘は、かごに対する総重量を調整することで、消費電力を抑えて安定したかごの走行を実現できる。
【0003】
釣合い調整錘は、メインロープに連結された釣合い錘枠に積み重ねて載置され、かごに対する釣合い錘を構成する。釣合い錘枠は、エレベーターのシャフトに設置された釣合い錘用のガイドレールに沿って走行する。
【0004】
エレベーターの設置時に、据付現場において釣合い調整錘の総重量のバランス調整が行なわれる。バランス調整では、たとえば、かごとかごの最大積載重量の50%の和の重量となる総重量の釣合い調整錘を搭載し、かごを上下方向に移動させて、駆動モーターの負荷電流の差が所定の誤差範囲内に収まるように、釣合い調整錘を増減している。
【0005】
釣合い調整錘が設置時、或いは、調整後にどの程度の総重量であるかを把握するために、釣合い調整錘の各設計重量と数量から作業員が算出する方法が知られている。しかしながら、釣合い調整錘の数量等の数え間違いや計算間違いがあれば、正しい釣合い調整錘の総重量を把握できない。そこで、特許文献1では、釣合い錘枠に高さ目盛りを付し、釣合い調整錘の総積高から釣合い調整錘の総重量を計算できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60-85567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この場合も、釣合い調整錘の塗装厚みの差による総積高の計測誤差や、釣合い調整錘の重量の個体差によって、算出値と実重量の誤差が懸念される。
【0008】
本発明は、エレベーター釣合い調整錘の各実測重量情報に基づき、釣合い調整錘の総重量を調整・確認する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法は、
釣合い調整錘の各々の実測重量を計測し、前記実測重量と紐付けられ、読取り機器により読み取り可能な実測重量情報として前記釣合い調整錘の各々に添付する添付ステップ、
かごに対する釣合い設計重量よりも多くの前記釣合い調整錘をエレベーターの据付現場に持ち込む持込ステップ、
前記据付現場に持ち込まれた各々の釣合い調整錘の前記実測重量情報を前記読取り機器で読み取る確認ステップ、
前記読み取られた前記実測重量情報に紐付けられた実測重量の総重量が、前記釣合い設計重量に最も近くなる釣合い調整錘の組合せを前記読取り機器の表示画面に表示する第1組合せ表示ステップ、
前記表示画面に表示された前記釣合い調整錘の組合せに基づいて選択された前記釣合い調整錘を釣合い錘枠に搭載する第1釣合い調整錘搭載ステップ、
搭載された前記釣合い調整錘の各実測重量情報を前記読取り機器により読み取る第1読取りステップ、
読み取られた前記実測重量情報から、前記搭載された前記釣合い調整錘の総重量を算出し、前記読取り機器の前記表示画面に表示する第1実測重量表示ステップ、
とを含む。
【0010】
前記第1実測重量表示ステップの後、
前記かごを昇降させて、前記かごと前記釣合い調整錘のバランス調整を行なう第1バランス調整ステップ、
前記第1バランス調整ステップにて、前記かごと前記釣合い調整錘の総重量の差が誤差範囲内か、誤差範囲外かを判定する第1判定ステップ、
前記第1判定ステップの判定が、誤差範囲外である場合、前記釣合い調整錘の増量指示又は減量指示を前記読取り機器の前記表示画面に表示する第2組合せ表示ステップ、
とを含むことが望ましい。
【0011】
前記第2組合せ表示ステップは、前記持込ステップにて持ち込まれた前記釣合い調整錘の中から、増量又は減量に必要な釣合い調整錘の組合せを算出し、前記読取り機器の前記表示画面に表示するステップとすることができる。
【0012】
前記第2組合せ表示ステップで前記表示画面に表示された前記釣合い調整錘の組合せに基づいて選択された前記釣合い調整錘を釣合い錘枠に搭載する第2釣合い調整錘搭載ステップ、
搭載された前記釣合い調整錘の各実測重量情報を前記読取り機器により読み取る第2読取りステップ、
読み取られた前記実測重量情報から、前記搭載された前記釣合い調整錘の総重量を算出し、前記読取り機器の前記表示画面に表示する第2実測重量表示ステップ、
とを含むことが望ましい。
【0013】
前記第2実測重量表示ステップの後、
前記かごを昇降させて、前記かごと前記釣合い調整錘のバランス調整を行なう第2バランス調整ステップ、
前記第2バランス調整ステップにて、前記かごと前記釣合い調整錘の総重量の差が誤差範囲内か、誤差範囲外かを判定する第2判定ステップ、
とを含み、
前記第2判定ステップの判定が、前記誤差範囲内になるまで、前記第2組合せ表示ステップ以降のステップを繰り返すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法によれば、釣合い調整錘には、実測重量と紐付けられた実測重量情報を付し、読取り機器で読取り可能としている。そして、据付現場に持ち込まれた釣合い調整錘の各々の実測重量情報から、読取り機器に搭載すべき釣合い調整錘の組合せを表示し、表示どおりに釣合い調整錘を搭載すればよい。また、正しい重さだけ釣合い調整錘が搭載されたことは、読取り機器で搭載された釣合い調整錘の実測重量情報を読み込むことで算出できるから、計算間違い等の発生を防ぐことができる。これにより、正しい重量の釣合い調整錘を搭載することができる。
【0015】
また、釣合い調整錘を搭載した後、バランス調整を行ない、かごと釣合い調整錘の総重量差が誤差範囲外であれば、改めて搭載すべき釣合い調整錘の組合せが表示され、表示どおりに釣合い調整錘を搭載すればよい。これにより、バランス調整も容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、エレベーターのかごと釣合い錘の一実施形態を示す説明図である。
図2図2は、釣合い調整錘の斜視図である。
図3図3は、釣合い調整錘に付された実測重量情報を含むラベルの一例を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例を示すエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認を行なうシステムの一例を示すブロック図である。
図5図5は、本発明のエレベーターの釣合い調整錘の総重量の調整・確認方法の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、読取り機器の表示画面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のエレベーター10の釣合い調整錘21の総重量の調整・確認方法について、図面を参照しながら説明を行なう。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベーター10の概要構成を示す説明図である。エレベーター10は、建物内を貫通するシャフト11内に上下にガイドレール13,14が配置され、かご12と釣合い錘20が夫々昇降可能に案内される。一般的に釣合い錘20は、かご12の背面側に配置され、ガイドレール13,14は、かご12の左右、釣合い錘20の左右に配置されるが、図1では、ガイドレール13,14が視認可能となるように向きを変えて示している。
【0019】
かご12と釣合い錘20は、メインロープ15に連結され、シーブ16に連繋された駆動モーター17の回転、停止によってかご12を昇降させる。釣合い錘20は、図1に示すように、ガイドレール14に連繋された釣合い錘枠22に複数の釣合い調整錘21を積み重ねて配置される。釣合い錘枠22の上枠23は、メインロープ15に連結される。
【0020】
かご12を据付現場に設置する際に、駆動モーター17の出力を抑え、省エネルギー化を図るために、かご12に対して、釣合い調整錘21と釣合い錘枠22を含めた釣合い錘20の総重量とのバランス調整が行なわれる。なお、調整可能な重量は、釣合い調整錘21のみであるから、以下では、釣合い錘20の総重量は、単に「釣合い調整錘21の総重量」ともいう。
【0021】
バランス調整は、釣合い調整錘21の総重量が、たとえば、かご12の自重に最大積載量の50%を加えた重量(以下、「釣合い設計重量」という)とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
個々の釣合い調整錘21は、たとえば、表1に示すように、型番A:4kgの品番1(小錘)と30kgの品番2(大錘)の組合せ、また、型番B:6kgの品番1(小錘)、18kgの品番2(中錘)、40kgの品番3(大錘)の組合せを例示できる。型番Aの釣合い調整錘どうしは、幅と奥行きが同じであり、厚さのみが異なる構成である。また、型番Bの釣合い調整錘も、幅と奥行きが同じであり、厚さのみが異なる構成である。しかしながら、各釣合い調整錘21の実測重量は、個体差があり、表1の右欄に示すように、目標重量とは異なる。このため、たとえば釣合い調整錘21の総重量の目標が2500kgの場合、10kg~100kg超の誤差が生じてしまうこともある。
【0023】
【表1】
【0024】
そこで、本発明では、釣合い調整錘21の各々の実測重量を測定し、実測重量と紐付けられた実測重量情報31を各釣合い調整錘21に貼付しておき、読取り機器40で読み取り可能としている。
【0025】
具体的実施形態として、図2に示すように、釣合い調整錘21には、作業者が据付時に視認可能な面、一般的には長手方向の側面に実測重量と紐付けられた実測重量情報31を含むラベル30を付している。ラベル30は、テープや両面テープ、接着剤等により貼付することができる。
【0026】
釣合い調整錘21の実測重量は、工場出荷時に重量計により測定することができ、実測重量情報31は、当該釣合い調整錘21の実測重量や型番、品番を含む情報とすることができる。実測重量情報31は、たとえば、図3に示す二次元バーコード(QRコード、マイクロQRコード、DataMatrix、MaxiCode、PDF417、MicroPDF417:登録商標又は各社の商標)やバーコード(一次元バーコード)などのプリントされた情報や、ICチップ、スマートタグなどを採用でき、ラベル30にプリントや貼着等することが望ましい。また、実測重量情報31は、実測重量を数字やアルファベットで表記したものであってもよい。
【0027】
なお、作業者が目視により、型番、品番、実測重量等を読み取ることができるように、ラベル30には、図3に示すように、釣合い調整錘21が適用されるエレベーター10の型番32、品番33、釣合い調整錘21の実測重量34などをプリントしておくことが望ましい。
【0028】
他方、実測重量情報31を読み取る読取り機器40は、専用のリーダーや、専用ソフト、アプリを入れたスマートホン、タブレット、ノート型PCなどを例示できる。読取り機器40には、作業者が視認可能な表示画面41を有することが望ましい。表示画面41には、釣合い錘枠22に搭載すべき釣合い調整錘21の組合せ(品番や実測重量)の他、据付現場の名称、号機番号、エレベーター10の型番、釣合い設計重量などを表示することができる。
【0029】
本発明のエレベーター10の釣合い調整錘21の総重量の調整・確認するシステム50は、図4に示すように、上記読取り機器40と、釣合い調整錘21の調整・確認に必要な各種情報、データ、プログラムを格納したサーバー51、クラウドなどの記憶手段から構成することができる。これら情報等は読取り機器40が記憶、実行するようにしてもよい。サーバー51やクラウドの場合、読取り機器40はインターネット52などの通信ネットワークを経由して無線又は有線によりアクセス可能とすることができる。
【0030】
サーバー51等に記憶される情報、データとして、据え付けられるエレベーター10の据付現場、号機番号、型番、目標となる釣合い設計重量、据付現場に持ち込むべき釣合い調整錘21の各品番と実測重量、バランス調整時の駆動電流に対する重量の誤差範囲と、誤差が生じた場合に増量又は減量すべき重量などを例示できる。一方、プログラムとしては、据付現場に持ち込むべき釣合い調整錘21の組合せを決定するプログラム、釣合い調整錘21の総重量(目標重量)に対する釣合い調整錘21の品番の組合せを抽出するプログラム、バランス調整時の駆動電流に対する重量の誤差範囲と、誤差が生じた場合に増量又は減量すべき重量、また、このときに抽出すべき釣合い調整錘21の品番の組合せ等を算出するプログラムを例示できる。
【0031】
然して、フローチャート図5に示すように、上記構成のエレベーター10の釣合い調整錘21の総重量の調整・確認するシステム50では、予め各釣合い調整錘21の実測重量を計測する(実測重量計測ステップS1)。そして、実測重量に紐付けられた実測重量情報31をプリントしたラベル30(図3参照)を作成し、図2に示すように、釣合い調整錘21に貼付する(添付ステップS2)。
【0032】
実測重量情報31が添付された釣合い調整錘21について、据付現場18に持ち込む釣合い調整錘21を決定する(持込み釣合い調整錘決定ステップS3)。持ち込む釣合い調整錘21は、据え付けられるエレベーター10の据付現場や型番から決定された上記の釣合い設計重量(たとえば、かご12の自重に最大積載量の50%を加えた重量)よりも総重量が多くなるようにする。これは、釣合い設計重量により近い重量の釣合い調整錘21の組合せを提示できるようにするため、また、第1バランス調整ステップS11において、釣合い設計重量よりも重い釣合い調整錘21が必要となったときに、改めて釣合い調整錘21を持ち込むことによる時間等のロスをなくすためである。持ち込むべき釣合い調整錘21の組合せは、たとえば、上記したプログラムにより決定することができる。この組合せは、読取り機器40の表示画面41に表示することができる。
【0033】
作業者は、上記により決定された持ち込むべき釣合い調整錘21の組合せに基づいて、持ち込むべき釣合い調整錘21を選択する(持込み釣合い調整錘選択ステップS3)。なお、選択した釣合い調整錘21が持ち込むべき釣合い調整錘21と一致するかどうかを、読取り機器40で読み取り、サーバー51で確認、照合することが望ましい(ステップS4)。
【0034】
そして、作業者は、選択された釣合い調整錘21を据付現場に持ち込む(持込ステップS5)。持ち込まれた釣合い調整錘21の総重量は、釣合い設計重量よりも重くしている。
【0035】
据付現場18では、読取り機器40にまず、据え付けられるエレベーター10の据付現場、号機番号、型番、釣合い設計重量などをサーバー51からダウンロード等して、表示画面41に表示する(図6参照:ただし、図6は、釣合い調整錘の組合せを示している)。
【0036】
また、据付現場18に持ち込まれた釣合い調整錘21の実測重量情報31をラベル30から読取り機器40で夫々読み取ってサーバー51に送信し、サーバー51は、持込み釣合い調整錘決定ステップで選択された釣合い調整錘21の組合せと照合を行なう(照合ステップS6)。持ち込まれた釣合い調整錘21が一致しない場合(ステップS6のNo)には、その旨を通知し、作業者は、ステップS4に戻って正しい釣合い調整錘21の組合せを改めて準備すればよい。
【0037】
持ち込まれた釣合い調整錘21が持ち込むべき釣合い調整錘21の組合せと一致した場合には(ステップS6のYes)、サーバー51は、表示画面41に釣合い設計重量に最も近くなる釣合い調整錘21の組合せを表示させる(第1組合せ表示ステップS7)。表示画面41の一例を図6に示す。釣合い設計重量に最も近くなる釣合い調整錘21の組合せは、個々の釣合い調整錘21の実測重量から算出できる。
【0038】
作業者は、表示画面41に表示された釣合い調整錘21の組合せに従って、釣合い調整錘21を選択し、釣合い錘枠22に搭載する(第1釣合い調整錘搭載ステップS8)。
【0039】
釣合い調整錘21の搭載が完了すると、作業者は、搭載した釣合い調整錘21の各々のラベル30の実測重量情報31を読取り機器40で読み取る(第1読取りステップS9)。
【0040】
読み取られた実測重量情報31は、サーバー51に送信される。このとき、搭載された釣合い調整錘21の組合せが、第1組合せ表示ステップS7にて選択された釣合い調整錘21の組合せと一致しない場合には(ステップS9のNo)、その旨の報知を表示画面41に表示等を行ない、ステップS8に戻り、改めて表示された釣合い調整錘21の正しい組合せを搭載すればよい。組合せが一致する場合には(ステップS9のYes)、サーバー51は、釣合い調整錘21の総重量を算出し、読取り機器40に送信して、表示画面41に表示させる(第1実測重量表示ステップS10)。
【0041】
これにより、エレベーター10のかご12の釣合い設計重量に対して、最も近い重量の釣合い調整錘21の組合せが正しく搭載されたこと、また、当該釣合い調整錘21(釣合い錘20)の総重量を確認できる。
【0042】
第1実測重量表示ステップS10の後、第1バランス調整ステップS11を実行する。第1バランス調整ステップS11は、公知の要領で行なうことができ、釣合い設計重量と、搭載された釣合い調整錘21の総重量の差がどの程度かを計測する。たとえば、かご12を昇降させ、上昇時の駆動モーター17の負荷電流と、下降時の駆動モーター17の負荷電流をサーバー51に送信し、サーバー51がこれら負荷電流の差或いは比から、釣合い設計重量と、搭載された釣合い調整錘21の総重量の差を換算することで算出できる。
【0043】
なお、第1バランス調整ステップS11において、釣合い設計重量と、搭載された釣合い調整錘21の総重量の差が検知されるのは、釣合い調整錘21の総重量が相違している場合だけでなく、かご12にマット等の装備品を追加した場合(増量)、装備品の搭載漏れ(減量)の可能性もある。もちろん、号機や品番違いの場合も重量差が検知される。これらの場合は、装備品の有無、号機、品番違いなどを確認するよう表示画面41に表示することが望ましい。
【0044】
次に、サーバー51は、第1バランス調整ステップS11により得られた釣合い設計重量と、搭載された釣合い調整錘21の総重量との差が、所定の誤差範囲内にあるかどうかを判定する(第1判定ステップS12)。これらが所定の誤差範囲内にあれば(ステップS12のYes)、サーバー51は、釣合い調整錘21の調整が完了したことを読取り機器40に送信し、表示画面41に釣合い調整錘21の調整完了を表示する。これにより、釣合い調整錘21の確認・調整は終了する。
【0045】
一方、第1判定ステップS12において、重量差が、所定の誤差範囲外であれば(ステップS12のNo)、サーバー51は、搭載する釣合い調整錘21の増量又は減量の指示を作成し、改めて算出された新たな設計重量と共に、読取り機器40に送信、表示画面41に表示させる(第2組合せ表示ステップS13)。サーバー51は、据付現場18に持ち込まれた釣合い調整錘21の組合せの中から、増量又は減量によって新たに設定された釣合い設計重量に必要な釣合い調整錘21の組合せを改めて算出し、当該組合せを品番により表示画面41に表示させることが望ましい。作業効率を高めるために、増量又は減量のために交換すべき釣合い調整錘21の品番と実測重量のみを表示画面41に表示してもよい。
【0046】
作業者は、表示画面41の表示に従って、釣合い調整錘21を選択し、改めて釣合い錘枠22に搭載する(第2釣合い調整錘搭載ステップS14)。そして、作業員は、第1読取りステップS9と同様、釣合い錘枠22に搭載された各釣合い調整錘21のラベル30の実測重量情報31を読取り機器40で読み取る(第2読取りステップS15)。
【0047】
読み取られた実測重量情報31は、サーバー51に送信される。このとき、搭載された釣合い調整錘21の組合せが、第2組合せ表示ステップS13にて選択された釣合い調整錘21の組合せと一致しない場合には(ステップS15のNo)、その旨を表示画面41に表示等を行ない、ステップS14に戻り、改めて表示された釣合い調整錘21の正しい組合せを搭載すればよい。組合せが一致する場合には(ステップS15のYes)、サーバー51は、釣合い調整錘21の総重量を算出し、読取り機器40に送信して、表示画面41に表示させる(第2実測重量表示ステップS16)。
【0048】
これにより、エレベーター10のかご12の新たな釣合い設計重量の釣合い調整錘21の組合せに対して、改めて搭載された釣合い調整錘21の組合せが正しく搭載されたこと、また、当該釣合い調整錘21の総重量を確認できる。
【0049】
第2実測重量表示ステップS16の後、再度、第2バランス調整ステップS17を実行する。第2バランス調整ステップS17は、上記ステップS11と同様の要領で行なうことができ、新たな釣合い設計重量と、搭載された釣合い調整錘21の総重量の差が算出される。
【0050】
サーバー51は、第2バランス調整ステップS17により得られた釣合い設計重量と、搭載された釣合い調整錘21の総重量との差が、所定の誤差範囲内にあるかどうかを判定し(第2判定ステップS18)、これらが所定の誤差範囲内にあれば(ステップS18のYes)、サーバー51は、釣合い調整錘21の調整が完了したことを読取り機器40に送信し、表示画面41に釣合い調整錘21の調整完了を表示する。これにより、釣合い調整錘21の確認・調整は終了する。
【0051】
一方、第2バランス調整ステップS17でも、バランス調整が完了しない場合には(ステップS18のNo)、第2組合せ表示ステップS13において、搭載する釣合い調整錘21の増量又は減量の指示を作成する手順以降のステップを繰り返して実行すればよい。
【0052】
上記のように、本発明によれば、作業員が、釣合い設計重量や個々の釣合い調整錘21の重量を確認しなくても、読取り機器40で実測重量情報を読み取り、表示画面41に表示される指示に従うだけで、バランス調整を行なうことができ、作業の効率化を図ることができる。
【0053】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、釣合い調整錘21に実重量の誤差がある前提で説明を行なっているが、実重量の誤差がない、或いは、誤差がほとんどない釣合い調整錘21にも、本発明は適用でき、釣合い調整錘21の数え間違えなどを防止できる。
【符号の説明】
【0055】
10 エレベーター
12 かご
13 ガイドレール
14 ガイドレール
20 釣合い錘
21 釣合い調整錘
22 釣合い錘枠
30 ラベル
31 実測重量情報
51 サーバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6