(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057287
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20240417BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240417BHJP
B60H 1/34 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
E02F9/16 C
B60H1/00 102N
B60H1/34 651C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163922
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘之
【テーマコード(参考)】
2D015
3L211
【Fターム(参考)】
2D015EC01
3L211AA09
3L211BA42
3L211BA51
3L211BA56
3L211DA14
3L211DA71
(57)【要約】
【課題】運転室を構成する構造体の複雑化や大型化を防ぎつつ、運転席の側方に位置する窓の曇りや凍結を抑制可能な建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル1は、運転室13内に設けられた運転席40と、運転席40の側方に配置された窓30と、調温された空気を送り出す空調装置60とを備えた油圧ショベル(建設機械)1であって、運転席40と窓30との間であって運転席40の斜め後方位置で、かつ、運転席40を構成する背もたれ44の高さに配置され、空調装置60に接続されて空調装置60により調温された空気が内部に供給され、運転席40の前方に向けて傾斜する保温ボックス(箱体)100を備え、保温ボックス100における傾斜した上面部100aに、空気吹き出し口160が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室内に設けられた運転席と、前記運転席の側方に配置された窓と、調温された空気を送り出す空調装置とを備えた建設機械であって、
前記運転席と前記窓との間であって前記運転席の斜め後方位置で、かつ、前記運転席を構成する背もたれの高さに配置され、前記空調装置に接続されて前記空調装置により調温された空気が内部に供給され、前記運転席の前方に向けて傾斜する箱体を備え、
前記箱体における傾斜した上面部に、空気吹き出し口を形成した
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記空気吹き出し口は、前記窓に沿って延びるように前記箱体の前記窓側の端部に形成される請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記箱体は、本体部と、前記本体部と前記窓と間に設けられて前記本体部と連通するダクト部とを有し、
前記空気吹き出し口は、前記ダクト部の上面部に形成される
請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記箱体は、内部に収容された収容物を保温するための保温ボックスである請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械に関し、特に運転席の側方に位置する窓の曇りや凍結を防止する建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベルといった建設機械の運転室内において、窓に空調装置により調温された空気を供給し、曇りや凍結を除去するための技術が知られている。また、特許文献1には、運転席右後方に位置するピラーに空調装置から供給される空気の吹き出し口を設け、当該吹き出し口から運転席の右側に位置する窓に沿って空気を吹き出す建設機械の空調装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構造のように運転室を構成する構造体であるピラーをダクトとして使用する場合、空調装置や吹き出し口を接続するために上記構造体の複雑化や大型化を招いてしまう可能性がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、運転室を構成する構造体の複雑化や大型化を防ぎつつ、運転席の側方に位置する窓の曇りや凍結を抑制可能な建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、運転室内に設けられた運転席と、前記運転席の側方に配置された窓と、調温された空気を送り出す空調装置とを備えた建設機械であって、前記運転席と前記窓との間であって前記運転席の斜め後方位置で、かつ、前記運転席を構成する背もたれの高さに配置され、前記空調装置に接続されて前記空調装置により調温された空気が内部に供給され、前記運転席の前方に向けて傾斜する箱体を備え、
前記箱体における傾斜した上面部に、空気吹き出し口を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の建設機械によれば、運転室を構成する構造体の複雑化や大型化を防ぎつつ、運転席の側方に位置する窓の曇りや凍結を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態にかかる建設機械としての油圧ショベルを示す側面図である。
【
図3】保温ボックスの近傍を左上側から視た斜視図である。
【
図4】運転席の後側の構造を右上側から視た斜視図である。
【
図5】保温ボックスの近傍を右上側から視た斜視図である。
【
図6】保温ボックスの内部を示す部分断面図である。
【
図7】複数の羽根により空気吹き出し口を閉じた状態の保温ボックスの近傍を示す斜視図である。
【
図8】複数の羽根により空気吹き出し口を閉じた状態のダクト部の内部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。以下の説明においては、建設機械に搭乗した運転者を主体として、建設機械の車両前後方向、車幅方向(左右方向)および上下方向を表現する。
【0010】
(油圧ショベル)
図1は、実施形態にかかる建設機械としての油圧ショベルを示す側面図である。油圧ショベル1は、建設現場において、例えば土砂の掘削作業などに用いられる建設機械である。油圧ショベル1は、作業機本体10と、作業装置である作業装置20とを備えている。
【0011】
(作業機本体)
作業機本体10は、下部走行体11と、上部旋回体12とを備える。下部走行体11は、油圧ショベル1を走行させるための駆動装置としてクローラ11aを含む。クローラ11aは、図示しない走行用油圧モータにより駆動される。上部旋回体12は、下部走行体11上に旋回可能に設けられる。上部旋回体12は、図示しない旋回用油圧モータにより駆動されて旋回する。上部旋回体12のフレーム12a上の前部には、運転者が搭乗する運転室13が設けられている。また、上部旋回体12の運転室13の後方には、機械室14、15およびカウンタウェイト16などが設けられている。機械室15には、図示しないエンジンや、当該エンジンにより駆動される図示しない油圧ポンプなどが搭載される。図示しない油圧ポンプは、上記走行用油圧モータ、上記旋回用油圧モータおよび作業装置20の各構成要素へと供給される作動油を圧送し、それにより各油圧機器が作動する。
【0012】
(作業装置)
作業装置20は、多関節型の作業装置であり、上部旋回体12のフレーム12aの前部に取り付けられている。作業装置20は、ブーム21と、アーム22と、バケット23と、複数の油圧シリンダ24、25、26とを備える。
【0013】
ブーム21は、上部旋回体12に回転自在に連結される。アーム22は、ブーム21に回転自在に連結される。バケット23は、掘削作業などを行うための油圧作業具であり、アーム22に回転自在に連結される。なお、バケット23が油圧ブレーカや油圧クラッシャーに交換された場合には、交換後の機器が油圧作業具として機能する。
【0014】
油圧シリンダ24は、上部旋回体12とブーム21との間に接続され、油圧により伸縮してブーム21の角度を調整する。油圧シリンダ25は、ブーム21とアーム22との間に接続され、油圧により伸縮してアーム22の角度を調整する。油圧シリンダ26は、アーム22とバケット23との間に接続され、油圧により伸縮してバケット23の角度を調整する。複数の油圧シリンダ24、25、26には、機械室15に設けられた図示しない油圧ポンプからの作動油が図示しない油圧ホースを介して供給される。
【0015】
(運転室)
次に、運転室13の構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、運転室の内部を示す説明図である。運転室13は、上部旋回体12に設けられたキャブユニットであり、フロアプレート13aと、フロアプレート13aから立ち上がる壁面および天井部とを有するキャブボックス13bとにより区画された空間である。キャブボックス13bの側面には、運転者が搭乗するための図示しないドアが設けられている。また、キャブボックス13bの車幅方向の両側面、すなわち、後述する運転席40の両側方には、窓30が嵌め込まれている。
【0016】
運転室13には、運転者が着座するためのシートである運転席40が配置される。運転席40は、フロアプレート13a上にシートキャリアやサスペンションなどを介して取り付けられる。運転席40は、運転者が着座する座面42と、座面42から立ち上がる背もたれ44とを有する。背もたれ44は、上部に取り付けられたヘッドレスト46を含む。また、フロアプレート13a上には、下部走行体11を走行させるための走行レバー51や走行ペダル52、作業装置20を駆動させるための操縦レバーなどが設けられたコンソール53といった油圧ショベル1を操縦するための各種装置が配置される。
【0017】
また、運転室13には、冷暖房といった空調を行うために、調温した空気を生成して運転室13内へと供給する空調装置60(
図5参照)が配置されている。本実施形態において、空調装置60は、運転席40の後方に配置されたリヤカバー13c内の下部でフロアプレート13a上に搭載される。空調装置60には、複数の図示しないダクトが接続されており、空調装置60で生成された空気が複数のダクトを介して運転室13に設けられた複数の空気吹き出し口から室内へと供給される。複数の空気吹き出し口は、例えば、運転席40の右前側の隅部に配置されたフロントカバー13dに設けられた空気吹き出し口61や、リヤカバー13cに設けられた空気吹き出し口62などを含む。
【0018】
また、上記空気吹き出し口61、62などに加えて、本実施形態の油圧ショベル1では、窓30の近傍に空気を供給して窓30の凍結や曇りを抑制するための空気吹き出し口160が、運転室13に配置された保温ボックス100の上面部100aに形成されている。本実施形態において、保温ボックス100の上面部100aとは、後述する蓋部材120およびダクト上面部132である。
【0019】
以下、
図2から
図6を参照しながら、本実施形態の保温ボックス100および空気吹き出し口160の構成について説明する。
図3は、保温ボックス100の近傍を左上側から視た斜視図である。
図4は、運転席の後側の構造を右上側から視た斜視図である。
図5は、保温ボックス100の近傍を右上側から視た斜視図である。
図6は、保温ボックス100の内部を示す説明図である。
図6は、保温ボックス100の車両前後方向の中途部における切断面を示している。
【0020】
(保温ボックス)
保温ボックス100は、例えば飲料容器といった収容物を保温しながら収容しておくための箱体であり、
図2に示すように、車幅方向において運転席40と窓30との間に配置される。また、保温ボックス100は、右側のコンソール53の後方側かつキャブボックス13bを構成する構造体である右側のピラー13pの前方に配置される。つまり、保温ボックス100は、運転席40の右斜め後ろに配置される。また、保温ボックス100は、上下方向において、運転席40の背もたれ44の高さに配置される。より詳細には、保温ボックス100は、運転席40が基準姿勢である状態で、座面42から背もたれ44の上端(ヘッドレスト46の上端)44aまでの間に配置される。運転席40の基準姿勢とは、油圧ショベル1の通常の運転時に使用される運転席40の姿勢であり、背もたれ44が座面42に対して略垂直の角度をなす状態である。このように配置される保温ボックス100は、本体部110と、蓋部材120と、ダクト部130とを備えている。なお、蓋部材120は、
図4のみに記載している。
【0021】
(本体部)
本体部110は、
図5に示すように、底面部111と、上面部112と、車幅方向で互いに間隔を空けて底面部111と上面部112との間を上下方向に延びる一対の側面部113と、車両前後方向で互いに間隔を空けて底面部111と上面部112との間を上下方向に延びる前面部114および後面部115とを含む。本体部110は、底面部111、一対の側面部113、前面部114および後面部115により囲まれた内部空間を画成する。本体部110は、例えば
図6に示すように、リヤカバー13cに接続されている。また、上面部112には、図示しない飲料容器などを本体部110の内部へと挿入したり取り出したりするための開口110aが形成されている。
【0022】
開口110aには、
図4に示すように、蓋部材120が取り付けられる。蓋部材120は、左側の側面部113および上面部112に設けられた取り付け部116(
図6参照)に回転自在に取り付けられ、開口110aを開閉可能とされている。したがって、蓋部材120は、開口110aを閉じている状態で保温ボックス100の上面部100aの一部を形成する。保温ボックス100の上面部100aは、運転席40の前方に向けて傾斜する。すなわち、上面部100aは、車両前後方向の後側から前側に向かうにつれて、下方に向かうように傾斜しながら延びる。
【0023】
本体部110は、
図5に示すように、空調装置60の上方に配置され、支持ブラケット105を介して底面部111がキャブボックス13bに固定される。また、空調装置60から延びるダクト65が底面部111に接続されており、空調装置60で調温された空気がダクト65を介して後面部115の背面に設けられた図示しない密閉空間へと供給される。また、後面部115には、
図6に示すように、複数の空気供給口140が形成されている。空調装置60で調温された空気は、上記図示しない密閉空間から複数の空気供給口140を介して本体部110の内部へと供給される。さらに、本実施形態において、本体部110の窓30側の側面部113には、後述するダクト部130と連通する複数の連通口150が形成されている。
【0024】
なお、本体部110の前部には、他の飲料容器を保持するためのカップホルダ180が設けられている。カップホルダ180は、本体部110の前端および後述するダクト部130のダクト上面部132の前端から連なって形成されている。
【0025】
(ダクト部)
ダクト部130は、
図6に示すように、本体部110の窓30側(右側)の側面部113に隣接して、本体部110と窓30との間に設けられる。すなわち、ダクト部130は、保温ボックス100の窓30側の端部を構成する。
【0026】
ダクト部130は、
図5および
図6に示すように、ダクト底面部131と、ダクト底面部131と対向するダクト上面部132と、ダクト底面部131とダクト上面部132との間を上下方向に延びるダクト側面部133、ダクト前面部134およびダクト後面部135と、本体部110の側面部113とにより囲まれた内部空間を画成する。なお、
図5では、ダクト上面部132の一部およびダクト側面部133の記載を省略している。上述したように、本体部110の側面部113には、複数の連通口150が形成されており、ダクト部130の内部空間は、複数の連通口150を介して本体部110の内部空間と連通する。また、ダクト上面部132は、保温ボックス100の上面部100aの一部を形成し、車両前後方向の後側から前側に向かうにつれて、下方に向けて傾斜しながら延びる。
【0027】
そして、ダクト上面部132には、空気吹き出し口160が形成されている。空気吹き出し口160は、ダクト部130の概ね全長にわたって形成され、ダクト上面部132の傾斜方向に沿って車両前後方向の前側に向かうにつれて下方に向かうように延びる。それにより、空気吹き出し口160は、窓30に沿って延在する。また、空気吹き出し口160には、複数の羽根170が空気吹き出し口160の延在方向において互いに間隔を空けて設けられている。
【0028】
以上のように構成された保温ボックス100では、空調装置60で調温されて本体部110へと供給された空気が、複数の連通口150を介してダクト部130へと流入し、さらに空気吹き出し口160から車室内へと供給される。その結果、空気吹き出し口160から供給された空気によって窓30の凍結や曇りが抑制される。
【0029】
(開閉部材)
また、
図3から
図6では具体的な記載を省略したが、空気吹き出し口160に取り付けられた複数の羽根170は、
図7および
図8に示すように、当該空気吹き出し口160を開閉可能な開閉部材として構成されることが好ましい。
図7は、複数の羽根170により空気吹き出し口160を閉じた状態の保温ボックス100の近傍を示す斜視図である。また、
図8は、複数の羽根170により空気吹き出し口160を閉じた状態のダクト部130の内部を示す説明図である。
図8では、ダクト側面部133および後述する回転軸172の記載を省略している。
【0030】
各羽根170は、
図7に破線で模式的に例示するように、空気吹き出し口160の延在方向と直交する方向、すなわち、車幅方向に延びる回転軸172周りに回転自在に取り付けられる。回転軸172は、例えばダクト上面部132、または、本体部110の側面部113およびダクト側面部133との間に取り付けられる。それにより、各羽根170が回転軸172周りに空気吹き出し口160に対して回転自在となる。複数の羽根170は、
図7および
図8に示すように、空気吹き出し口160の延在方向に沿った方向を向いたとき、互いに一部分が重なり合うことによって空気吹き出し口160を閉じることができるように構成されている。
【0031】
各羽根170は、
図8に例示するように、空気吹き出し口160を閉じた状態でダクト部130の内部空間側に向けて突出する突出端171を有する。各羽根170の突出端171同士は、図示しないリンク機構で連結されており、複数の羽根170の1つを回転軸172と共に回転させると、図示しないリンク機構を介して残りの羽根170も同様に回転する。なお、複数の羽根170のうち、空気吹き出し口160の延在方向における略中央部に位置する羽根170には、運転者が各羽根170を回転させる際に把持する把持部174が形成されている。この構成により、複数の羽根170により空気吹き出し口160を閉じれば、保温ボックス100全体を密閉して内部の温度変化を抑制することができる。また、運転者が1つの羽根170を回転させるだけで、すべての羽根170を回転させて空気吹き出し口160を容易に開閉することができる。また、複数の羽根170の回転角度を調整することで、空気吹き出し口160からの空気の供給方向を運転者の所望の方向とすることができる。さらに、ダクト部130に空気吹き出し口160および複数の羽根170が設けられるため、複数の羽根170の突出端171に取り付けられる上記図示しないリンク機構の配置スペースをダクト部130内に確保することができる。
【0032】
(実施形態の効果)
以上説明したように、実施形態にかかる建設機械としての油圧ショベル1は、運転室13内に設けられた運転席40と、運転席40の側方に配置された窓30と、調温された空気を送り出す空調装置60とを備えた油圧ショベル(建設機械)1であって、運転席40と窓30との間であって運転席40の斜め後方位置で、かつ、運転席40を構成する背もたれ44の高さに配置され、空調装置60に接続されて空調装置60により調温された空気が内部に供給され、運転席40の前方に向けて傾斜する保温ボックス(箱体)100を備え、保温ボックス100における傾斜した上面部100aに空気吹き出し口160を形成したことを特徴とする。
【0033】
この構成により、運転席40と窓30との間に配置された保温ボックス(箱体)100を利用し、保温ボックス100の上面部100aに形成された空気吹き出し口160から、空調装置60により調温された空気を窓30の近傍に供給することができる。その結果、窓30の近傍に空調装置60からの空気を供給するために、例えばピラー13pといった運転室13の構造体に空調装置60からダクトを延ばすと共に空気吹き出し口を設ける必要がない。したがって、実施形態にかかる建設機械としての油圧ショベル1によれば、運転室13を構成する構造体の複雑化や大型化を防ぎつつ、運転席40の側方に位置する窓30の曇りや凍結を抑制することができる。
【0034】
また、保温ボックス100が運転席40の斜め後方位置、かつ、背もたれ44の高さに配置されるため、保温ボックス100により運転席に着座する運転者の側方の視界を妨げることなく、運転者の側方の目線位置に相当する窓の部位の曇りを解消することができる。さらに、保温ボックス100が空調装置60に近接して配置されるため、空調装置60と保温ボックス100との間を延びるダクト65をできる限り短くし、運転室13内のスペースが逼迫したり熱損失が増加したりすることを抑制可能となる。加えて、保温ボックス100の上面部100aが前方に向けて傾斜するため、空気吹き出し口160から上方および前方の広い範囲に向けて空気を吹き出しやすくなり、窓30に対して空気を満遍なく供給することが可能となる。
【0035】
また、空気吹き出し口160は、窓30に沿って延びるように保温ボックス100の窓30側の端部に形成される。この構成により、空調装置60からの空気を窓30の近傍に効率的に供給することができる。
【0036】
また、保温ボックス100は、本体部110と、本体部110と窓30との間に設けられて本体部110と連通するダクト部130とを有し、空気吹き出し口160は、ダクト部130の上面に形成される。この構成により、本体部110と窓30との間のスペースに配置されるダクト部130によって、空気吹き出し口160を窓30の近傍に容易に設けることができる。特に、実施形態で例示したように保温ボックス100を利用する場合、本体部110の形状や容量、配置位置などを既存の構造から変更することなく、空気吹き出し口160を窓30の近傍に設けることができる。
【0037】
また、空気吹き出し口160が設けられる箱体は、内容物を保温するための保温ボックス100である。この構成により、運転室13内に従来から配置される保温ボックス100を利用して窓30に空調装置60からの空気を供給することができるため、運転室13内のスペース逼迫や部品点数の増加を抑制することが可能となる。
【0038】
(変形例)
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、建設機械として油圧ショベル1を例示したが、本実施形態の構成は、運転席40、空調装置60および空調装置60からの空気が供給される箱体が配置された運転室13を備えるものであれば、いかなる建設機械に適用されてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、保温ボックス100の窓30側の端部すなわちダクト部130に、窓30に沿って空気吹き出し口160を形成するものしたが、空気吹き出し口160の形成位置や延在方向は、これに限られない。空気吹き出し口160は、保温ボックス100の上面部100aのいずれかに形成されるものであればよい。例えば、保温ボックス100の上面部100aの一部を構成する蓋部材120に、空気吹き出し口160を形成してもよい。また、空気吹き出し口160は、保温ボックス100の上面部100aに、車幅方向に延びるように形成されてもよい。また、保温ボックス100は、運転席40の左斜め後ろに配置されるものであってもよい。
【0040】
また、本実施形態では、空気吹き出し口160を開閉するための開閉部材として複数の羽根170を用いるものとしたが、開閉部材の構成はこれに限られない。開閉部材は、例えば、保温ボックス100の開口110aを開閉する蓋部材120のように、空気吹き出し口160全体を覆うと共にダクト部130に対して回転自在な蓋部材であってもよい。
【0041】
また、本実施形態では、空気吹き出し口160が形成される箱体を、飲料容器などを保温するための保温ボックス100としたが、箱体は、空調装置60からの空気が供給されるものであれば、いかなるものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 油圧ショベル(建設機械)
10 作業機本体
13 運転室
20 作業装置
30 窓
40 運転席
44 背もたれ
60 空調装置
61、62、160 空気吹き出し口
65 ダクト
100 保温ボックス(箱体)
100a 上面部
110 本体部
110a 開口
120 蓋部材
130 ダクト部
170 複数の羽根(開閉部材)