(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005729
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106052
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦史
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA03
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GM10
5F102GQ01
5F102GR01
5F102GR06
5F102GS01
5F102GT01
5F102GV03
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC11
5F102HC21
(57)【要約】
【課題】コンタクト抵抗の低い、高性能の半導体装置を実現する。
【解決手段】半導体装置1は、チャネル層10と、その面10a側に設けられたバリア層20とを有する。チャネル層10は、Gaを含有する窒化物半導体を含む。バリア層20は、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体を含む。バリア層20の面20a側に、ソース電極40及びドレイン電極50と、それらの間のゲート電極30とが設けられる。バリア層20は、ソース電極40と対向する第1領域21及びドレイン電極50と対向する第2領域22の各々のIn組成が、第1領域21と第2領域22との間の第3領域23のIn組成よりも小さい。第1領域21及び第2領域22は、第3領域23よりも低電気抵抗となる。ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減され、半導体装置1が高性能化される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Gaを含有する第1窒化物半導体を含むチャネル層と、
前記チャネル層の第1面側に設けられ、InとAlとGaとを含有する第2窒化物半導体を含むバリア層と、
前記バリア層の、前記チャネル層側とは反対の第2面側に設けられたソース電極及びドレイン電極と、
前記バリア層の前記第2面側の、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、
を有し、
前記バリア層は、前記ソース電極と対向する第1領域及び前記ドレイン電極と対向する第2領域の各々のIn組成が、前記バリア層の、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域のIn組成よりも小さい、半導体装置。
【請求項2】
前記バリア層の前記第1領域及び前記第2領域は、前記バリア層の前記第2面から、前記第2面とは反対の第3面まで延びる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バリア層は、前記第1領域及び前記第2領域の各々のAl組成が0.40以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バリア層は、前記第1領域及び前記第2領域の各々のIn組成が0.05以下である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記チャネル層と前記バリア層との間に、Alを含有する第3窒化物半導体を含むスペーサ層を有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の前記バリア層の前記第2面側に設けられ、Gaを含有する第4窒化物半導体を含むキャップ層を有し、
前記ゲート電極は、前記バリア層の前記第2面側に、前記キャップ層を介して設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
Gaを含有する第1窒化物半導体を含むチャネル層の第1面側に、InとAlとGaとを含有する第2窒化物半導体を含むバリア層を形成する工程と、
前記バリア層の、前記チャネル層側とは反対の第2面側に、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記バリア層の前記第2面側の、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に、ゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記バリア層を形成する工程は、前記バリア層の、前記ソース電極と対向する第1領域及び前記ドレイン電極と対向する第2領域の各々のIn組成を、前記バリア層の、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域のIn組成よりも小さくする工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記バリア層を形成する工程は、前記第3領域を形成する領域を保護膜で覆い、前記第1領域及び前記第2領域を形成する領域を露出させた状態で、水素雰囲気での熱処理を行うことによって、In組成が前記第3領域よりも小さい前記第1領域及び前記第2領域を形成する工程を含む、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
Gaを含有する第1窒化物半導体を含むチャネル層と、
前記チャネル層の第1面側に設けられ、InとAlとGaとを含有する第2窒化物半導体を含むバリア層と、
前記バリア層の、前記チャネル層側とは反対の第2面側に設けられたソース電極及びドレイン電極と、
前記バリア層の前記第2面側の、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、
を有し、
前記バリア層は、前記ソース電極と対向する第1領域及び前記ドレイン電極と対向する第2領域の各々のIn組成が、前記バリア層の、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域のIn組成よりも小さい半導体装置を備えた電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、半導体装置の製造方法及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体を用いた半導体装置が知られている。例えば、GaN(窒化ガリウム)等を用いたチャネル層(キャリア走行層、電子走行層等とも言う)、及びAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)等を用いたバリア層(キャリア供給層、電子供給層等とも言う)を含む高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor;HEMT)が知られている。
【0003】
このようなHEMTに関し、電子走行層の上方に、In(インジウム)を含有した電子供給層を含む窒化物半導体層を設ける技術、その窒化物半導体層の上方に、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を設ける技術が知られている(特許文献1)。更に、窒化物半導体層内の、例えばIn組成が0.35から0.40のIn含有層における、ゲート電極とソース電極との間の領域及びゲート電極とドレイン電極との間の領域の表層部に、電子走行層側よりもIn組成が低いIn脱離領域を設ける技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、キャリア走行層上の障壁層に、キャリア走行層に至るリセスを設け、そのリセスにIn組成比が17%以上18%以下のInAlN(窒化インジウムアルミニウム)層を設け、その上にソース又はドレインの電極を設ける技術が知られている(特許文献2)。
【0005】
また、チャネル層及びその上の電子供給層に設けたリセスに、III-N材料を含む部分を設け、その上に更に、III-N材料と上面に向かって組成が増大するInとを含む部分を設け、そこにソース又はドレインのコンタクトを設ける技術が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-178325号公報
【特許文献2】特開2018-64027号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0220004号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、窒化物半導体を用いた半導体装置として、チャネル層にGaNを用い、バリア層にInAlGaN(窒化インジウムアルミニウムガリウム)を用いたHEMTを備えたものが知られている。InAlGaNは、比較的高いAl(アルミニウム)組成を実現することができ、Al組成を高めて大きな自発分極を得ることのできる材料である。バリア層にInAlGaNを用いることで、AlGaNを用いる場合に比べて、より高濃度の二次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas;2DEG)をチャネル層内に生成させ、HEMTを高出力化することができると期待されている。
【0008】
しかし、バリア層に、In及びGaと比較的高い組成のAlとを含有する窒化物半導体を用いた場合には、次のようなことが起こり得る。即ち、バリア層の比較的高いAl組成に起因した大きなバンドギャップのために、その上に設けられるソース電極及びドレイン電極との間の障壁が大きくなり、チャネル層とソース電極及びドレイン電極との間のコンタクト抵抗が高くなる。コンタクト抵抗が高くなると、HEMT内の電子輸送経路の電気抵抗が高くなり、HEMTを備えた高性能の半導体装置が実現できなくなる恐れがある。
【0009】
1つの側面では、本発明は、コンタクト抵抗の低い、高性能の半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様では、Gaを含有する第1窒化物半導体を含むチャネル層と、前記チャネル層の第1面側に設けられ、InとAlとGaとを含有する第2窒化物半導体を含むバリア層と、前記バリア層の、前記チャネル層側とは反対の第2面側に設けられたソース電極及びドレイン電極と、前記バリア層の前記第2面側の、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられたゲート電極と、を有し、前記バリア層は、前記ソース電極と対向する第1領域及び前記ドレイン電極と対向する第2領域の各々のIn組成が、前記バリア層の、前記第1領域と前記第2領域との間の第3領域のIn組成よりも小さい、半導体装置が提供される。
【0011】
また、別の態様では、上記のような半導体装置の製造方法、及び上記のような半導体装置を備えた電子装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
1つの側面では、コンタクト抵抗の低い、高性能の半導体装置を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図2】窒化物半導体のAl組成と電流との関係の一例を示す図である。
【
図3】第2実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図4】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
【
図5】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
【
図6】第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
【
図7】第3実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
【
図8】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その1)である。
【
図9】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その2)である。
【
図10】第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図(その3)である。
【
図11】第4実施形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。
【
図12】第5実施形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。
【
図13】第6実施形態に係る電源装置の一例について説明する図である。
【
図14】第7実施形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1は第1実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図1には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0015】
図1に示す半導体装置1は、HEMTを備えた半導体装置の一例である。半導体装置1は、チャネル層10、バリア層20、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50を有する。
【0016】
チャネル層10は、Gaを含有する窒化物半導体(「第1窒化物半導体」とも言う)を含む。例えば、チャネル層10には、GaNが用いられる。ここでは図示を省略するが、チャネル層10は、所定の基板上に設けられる。基板には、SiC(シリコンカーバイド)基板、GaN基板、Si(シリコン)基板、サファイア基板等、或いはそのような基板上に核形成層が設けられたもの等が用いられてもよい。
【0017】
バリア層20は、チャネル層10の一方の面10a(「第1面」とも言う)側に設けられる。チャネル層10の面10aは、例えば、(0001)面(c面、III族極性面)である。バリア層20は、チャネル層10に含まれる窒化物半導体よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体を含む。バリア層20は、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体(「第2窒化物半導体」とも言う)を含む。
【0018】
バリア層20に含まれる窒化物半導体は、含有されるIII族元素のInとAlとGaとの組成(「組成比」とも言う)が異なる領域を有する。ここで、「組成」とは、窒化物半導体のIII族元素についての組成の比、即ち、III族元素全体の組成を1.00とした時の特定III族元素の組成を表す。例えば、バリア層20には、組成が異なる領域を有するInAlGaNが含まれる。バリア層20には、後述のように、一定組成のInAlGaNに加えて、部分的にAlGaNが含まれてもよい。このように、バリア層20に含まれる窒化物半導体、即ち、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体には、例えば、組成が異なる領域を有するInAlGaNのほか、一定組成のInAlGaNとAlGaNとを備えたものが含まれてもよい。
【0019】
バリア層20は、In組成が比較的低い第1領域21及び第2領域22を含む。第1領域21及び第2領域22の各々のIn組成は、第1領域21と第2領域22との間の第3領域23のIn組成よりも低い。第1領域21及び第2領域22は、例えば、バリア層20の一方の面20a(「第2面」とも言う)から、それとは反対の他方の面20b(「第3面」とも言う)まで延びる。第3領域23は、バリア層20の一方の面20aから、それとは反対の他方の面20bまで延びる。尚、第3領域23に比べてIn組成が低い第1領域21及び第2領域22を、以下では「低In組成」の第1領域21及び第2領域22とも言う。
【0020】
チャネル層10及びバリア層20は、例えば、有機金属気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition;MOCVD、若しくはMetal Organic Vapor Phase Epitaxy;MOVPE)法、又は分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法を用いて、成長される。Inを含有する成長後のバリア層20に対し、第1領域21及び第2領域22を形成する領域を露出させ、それらの間の領域を保護膜で覆った状態で、水素雰囲気での熱処理が行われる。このような熱処理により、バリア層20の、露出された領域からその内部に含有されるInが脱離し、当該領域に低In組成の第1領域21及び第2領域22が形成される。第1領域21及び第2領域22が形成され、それらの間に第3領域23が形成される。
【0021】
半導体装置1では、バリア層20の自発分極及びチャネル層10との格子定数差に起因した歪みによって発生するピエゾ分極により、チャネル層10の、バリア層20との接合界面近傍に、2DEGが生成される。
【0022】
ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50は、バリア層20の、チャネル層10側とは反対の面20a側に設けられる。バリア層20の面20aは、例えば、(0001)面(c面、III族極性面)である。ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50には、それぞれ所定の金属が用いられる。ゲート電極30は、ソース電極40とドレイン電極50との間に設けられる。例えば、ゲート電極30は、ショットキー電極として機能するように設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、ゲート電極30の両側にそれぞれ、ゲート電極30と離間して位置するように設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、オーミック電極として機能するように設けられる。
【0023】
バリア層20の第1領域21は、ソース電極40と対向する領域である。ソース電極40は、バリア層20の低In組成の第1領域21、即ち、In組成が第3領域23よりも低い第1領域21に、設けられる。ソース電極40の直下に、バリア層20における低In組成の第1領域21が設けられるとも言える。例えば、ソース電極40は、第1領域21と接するように、設けられる。
【0024】
バリア層20の第2領域22は、ドレイン電極50と対向する領域である。ドレイン電極50は、バリア層20の低In組成の第2領域22、即ち、In組成が第3領域23よりも低い第2領域22に、設けられる。ドレイン電極50の直下に、バリア層20における低In組成の第2領域22が設けられるとも言える。例えば、ドレイン電極50は、第2領域22と接するように、設けられる。
【0025】
バリア層20の第3領域23は、ソース電極40が設けられる第1領域21と、ドレイン電極50が設けられる第2領域22との間の領域である。第3領域23は、第1領域21から第2領域22に至るまでの領域であるとも言える。ゲート電極30は、バリア層20における第3領域23、即ち、In組成が第1領域21及び第2領域22よりも高い第3領域23の一部に、ソース電極40とドレイン電極50との間であって且つそれらから離間して、設けられる。バリア層20の、第1領域21と第2領域22との間の第3領域23は、ゲート電極30が設けられる部位、ゲート電極30とソース電極40との間の部位、及びゲート電極30とドレイン電極50との間の部位を含む領域であるとも言える。
【0026】
半導体装置1の動作時には、ソース電極40とドレイン電極50との間に所定の電圧が供給され、それらの間に位置するゲート電極30に所定のゲート電圧が供給される。ソース電極40とドレイン電極50との間のチャネル層10にキャリアである電子の輸送経路が形成され、半導体装置1のトランジスタ機能が実現される。
【0027】
半導体装置1では、バリア層20に、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられる。このバリア層20に、低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。ソース電極40の直下に、バリア層20における低In組成の第1領域21が設けられ、ドレイン電極50の直下に、バリア層20における低In組成の第2領域22が設けられる。これにより、半導体装置1では、バリア層20に、InとAlとGaとを含有し且つそのAl組成が比較的高い窒化物半導体を用いた場合でも、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗の上昇を抑えることが可能になっている。この点について説明する。
【0028】
一般に、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体、例えば、InAlGaNは、比較的高いAl組成を実現することのできる材料として知られている。HEMTのバリア層に、Al組成が比較的高いInAlGaNを用い、大きな自発分極を得ることで、バリア層にAlGaNを用いる場合に比べて、より高濃度の2DEGをチャネル層内に生成させ、HEMTを高出力化することができると期待されている。しかし、バリア層に、Al組成が比較的高いInAlGaNを用いた場合には、そのAl組成に起因した大きなバンドギャップのために、その上に設けられるソース電極及びドレイン電極との間の障壁が大きくなる。その結果、チャネル層とソース電極及びドレイン電極との間のコンタクト抵抗が高くなる。コンタクト抵抗が高くなると、HEMT内の電子輸送経路の電気抵抗が高くなり、その高出力化が難しくなる。
【0029】
図2は窒化物半導体のAl組成と電流との関係の一例を示す図である。
図2には、Al
xGa
1-xN層及びIn
0.04Al
xGa
0.96-xN層におけるショットキー接合逆方向電流のAl組成xに対する依存性を示している。横軸はAl組成xを表し、縦軸は電流を表している。
【0030】
図2より、Al
xGa
1-xN層及びIn
0.04Al
xGa
0.96-xN層のいずれも、Al組成xの増大と共に電流が増大する傾向が認められる。
図2より、Al組成xが0.40以上(40%以上)になると、Inを含有しないAl
xGa
1-xN層の電流が、Inを含むIn
0.04Al
xGa
0.96-xN層の電流よりも大きくなることが分かる。つまり、Al組成xが0.40以上の範囲では、In組成の小さい層の方が、電気抵抗が小さくなることを示している。従って、Al組成が0.40以上と比較的高くなる場合でも、In組成が小さいInAlGaNを用いれば、コンタクト抵抗の低減が可能になると言うことができる。
【0031】
上記半導体装置1では、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20の、ソース電極40及びドレイン電極50の直下にそれぞれ、低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。
【0032】
ここで、半導体装置1のバリア層20における第1領域21及び第2領域22は、例えば、Al組成が0.40以上の範囲に設定される。バリア層20における第1領域21及び第2領域22は、In組成が0.05以下の範囲に設定される。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、例えば、チャネル層10上に所定の初期組成で成長されたInAlGaNのバリア層20に対し、上記のような水素雰囲気での熱処理を行い、バリア層20の一部のInを脱離させることによって形成される。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、Inを含有する窒化物半導体(例えばIn組成が0.00超であるInAlGaN)となっていてもよく、Inを含有しない窒化物半導体(例えばIn組成が0.00であるAlGaN)となっていてもよい。バリア層20は、熱処理によりInを脱離させて第1領域21及び第2領域22を形成した時に、形成される第1領域21及び第2領域22が、上記のような範囲のAl組成及びIn組成となるような初期組成で、チャネル層10上に成長される。
【0033】
バリア層20の初期組成は、例えば、そのAl組成が0.10以上1.00未満の範囲に設定される。バリア層20の初期組成は、例えば、そのIn組成が0.00超0.20以下の範囲に設定される。このような初期組成に設定されるバリア層20の、第1領域21及び第2領域22を形成する領域のInが上記熱処理で脱離され、In組成が0.05以下の範囲である第1領域21及び第2領域22が形成される。Inの脱離によってIn量が減少し、相対的にAl量が増大することで、Al組成が0.40以上の範囲である第1領域21及び第2領域22が形成される。尚、第1領域21及び第2領域22が形成された時、それらの間にあってInの脱離が抑えられた第3領域23は、バリア層20の初期組成と同じか或いはほぼ同じ組成を有してよい。また、上記のような組成を有する第1領域21、第2領域22及び第3領域23を含むバリア層20は、引張り歪みを発現し、これが接合されるチャネル層10に2DEGを生成させる。
【0034】
半導体装置1では、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20の、ソース電極40及びドレイン電極50の直下にそれぞれ、上記のような低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。これにより、半導体装置1では、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗の上昇が抑えられる。コンタクト抵抗の上昇が抑えられることで、ソース電極40からドレイン電極50に至る電子輸送経路の高抵抗化が抑えられ、半導体装置1の高出力化が実現される。
【0035】
従来、ソース電極及びドレイン電極とチャネル層との間のコンタクト抵抗を低減するための技術としては、例えば、再成長層形成技術や、ピットアシストエッチング技術が知られている。再成長層形成技術は、バリア層を貫通してチャネル層に達するリセスを設け、そのリセスに、所定のドーパントがドーピングされた再成長層(n型GaN層等)を設け、その再成長層上に、ソース電極及びドレイン電極を設ける技術である。また、ピットアシストエッチング技術は、バリア層にその結晶転位を起点としてピットをエッチング形成し、形成したピット内にソース電極の一部及びドレイン電極の一部を形成する技術である。しかし、これらのような技術のうち、再成長層形成技術では、半導体装置の製造において、リセスの形成及び再成長層の形成に伴い、工数が増大してしまう。また、ピットアシストエッチング技術では、GaN自立基板等の結晶転位密度の低い基板上にチャネル層を介して成長されるバリア層では、その結晶転位密度も低くなる。そのため、バリア層に形成されるピット数が少なくなり、ピット内に形成される電極部分も少なくなって、十分なコンタクト抵抗低減効果が得られなくなる。
【0036】
これに対し、上記半導体装置1のバリア層20における低In組成の第1領域21及び第2領域22は、成長後のバリア層20に、第1領域21及び第2領域22を形成する領域を露出させた状態で、水素雰囲気での熱処理を行うことで、形成される。水素雰囲気での熱処理により、成長後のバリア層20の、露出させた当該領域のInが脱離され、低In組成の第1領域21及び第2領域22が形成される。半導体装置1では、このようにして形成される第1領域21及び第2領域22により、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。従って、上記のような再成長層形成技術を採用する場合のような工数の増大を抑えて、コンタクト抵抗の低い高性能の半導体装置1を実現することが可能になる。また、上記のようなピットアシストエッチング技術を採用する場合のような、バリア層20及びその下層のチャネル層10や基板の結晶転位密度に対する依存性を抑えて、コンタクト抵抗の低い高性能の半導体装置1を実現することが可能になる。
【0037】
[第2実施形態]
図3は第2実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図3には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0038】
図3に示す半導体装置1Aは、HEMTを備えた半導体装置の一例である。半導体装置1Aは、下地基板60、核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80、バリア層20、ゲート電極30、ソース電極40、ドレイン電極50及びパッシベーション膜90を有する。
【0039】
尚、半導体装置1Aにおいて、チャネル層10、バリア層20、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50には、上記第1実施形態で述べた半導体装置1(
図1)と同様のものが用いられる。
【0040】
半導体装置1Aにおいて、その下地基板60には、例えば、半絶縁性SiC基板が用いられる。このほか、下地基板60には、導電性SiC基板、GaN基板、Si基板、サファイア基板等が用いられてもよい。下地基板60の一方の面60aに、核形成層70が設けられる。核形成層70には、例えば、AlN(窒化アルミニウム)が用いられる。
【0041】
核形成層70の、下地基板60側とは反対の面70a側に、上記第1実施形態で述べたようなチャネル層10、例えば、GaNのチャネル層10が設けられる。核形成層70の面70aは、例えば、(0001)面(c面、III族極性面)である。
【0042】
チャネル層10の、核形成層70側とは反対の面10a((0001)面)側に、スペーサ層80が設けられる。スペーサ層80は、チャネル層10に含まれる窒化物半導体よりもバンドギャップの大きい窒化物半導体を含む。スペーサ層80は、Alを含有する窒化物半導体(「第3窒化物半導体」とも言う)を含む。例えば、スペーサ層80には、チャネル層10のGaNよりもバンドギャップの大きいAlGaN、AlN等が用いられる。
【0043】
スペーサ層80の、チャネル層10側とは反対の面80a側に、上記第1実施形態で述べたようなバリア層20が設けられる。スペーサ層80の面80aは、例えば、(0001)面(c面、III族極性面)である。バリア層20には、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられる。尚、バリア層20の窒化物半導体は、含有されるIII族元素のInとAlとGaとの組成(組成比)が異なる領域を有する。バリア層20に含まれる窒化物半導体、即ち、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体には、例えば、組成が異なる領域を有するInAlGaNのほか、一定組成のInAlGaNとAlGaNとを備えたものが含まれてもよい。
【0044】
バリア層20は、低In組成の第1領域21及び第2領域22を含む。第1領域21及び第2領域22の各々のIn組成は、第1領域21と第2領域22との間の第3領域23のIn組成よりも低い。ここで、第3領域23のIn組成は0.00超0.20以下の範囲とされる。第3領域23のAl組成は0.10以上1.00未満の範囲とされる。第1領域21及び第2領域22のIn組成は0.05以下の範囲とされる。第1領域21及び第2領域22のAl組成は0.40以上の範囲とされる。尚、第1領域21及び第2領域22のIn組成が0.00超の場合、第1領域21、第2領域22及び第3領域はInAlGaNとなる。第1領域21及び第2領域22のIn組成が0.00の場合、第1領域21及び第2領域22はAlGaNとなり、第3領域23はInAlGaNとなる。第1領域21及び第2領域22は、例えば、バリア層20の一方の面20aから他方の面20bまで延びるように設けられる。
【0045】
バリア層20の、チャネル層10(又はスペーサ層80)側とは反対の面20a((0001)面)側に、上記第1実施形態で述べたようなゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50が設けられる。ゲート電極30は、バリア層20の第3領域23における一部に設けられる。例えば、ゲート電極30は、ショットキー電極として機能するように設けられる。ソース電極40は、バリア層20の第1領域21に設けられ、ドレイン電極50は、バリア層20の第2領域22に設けられる。ソース電極40及びドレイン電極50は、オーミック電極として機能するように設けられる。尚、バリア層20の、第1領域21と第2領域22との間の第3領域23は、ゲート電極30が設けられる部位、ゲート電極30とソース電極40との間の部位、及びゲート電極30とドレイン電極50との間の部位を含む領域である。
【0046】
パッシベーション膜90は、バリア層20、ソース電極40及びドレイン電極50を覆うように設けられる。パッシベーション膜90は、バリア層20に通じる開口部91を有する。パッシベーション膜90の開口部91の位置に、ゲート電極30が設けられる。パッシベーション膜90には、例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物といった各種絶縁材料が用いられる。例えば、パッシベーション膜90には、SiN(窒化ケイ素)が用いられる。
【0047】
半導体装置1Aでは、チャネル層10上のバリア層20に、InとAlとGaとを含有し且つそのAl組成が比較的高い窒化物半導体が用いられることが好ましい。これにより、比較的(例えばAlGaNと比べて)大きな自発分極が得られ、チャネル層10内に生成される2DEGの高濃度化、それによる半導体装置1Aの高出力化が実現される。
【0048】
半導体装置1Aでは、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20に、低In組成の第1領域21及び第2領域22、例えば、Al組成が0.40以上で、In組成が0.05以下の第1領域21及び第2領域22が設けられる。ソース電極40の直下に、低In組成の第1領域21が設けられ、ドレイン電極50の直下に、低In組成の第2領域22が設けられる。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、それらの間の第3領域23に比べて、電気抵抗が低くなる。
【0049】
従って、半導体装置1Aでは、第1領域21及び第2領域22のIn組成を第3領域23よりも小さくしていない場合、即ち、第3領域23と同じ組成としている場合に比べて、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。また、この時、第3領域23のIn組成を0.20以下としておくことで、ソース電極40とドレイン電極50との間の第3領域23に引張り歪みが発現され、チャネル層10内に高濃度の2DEGが生成される。
【0050】
半導体装置1Aでは、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減されることで、チャネル層10を介してソース電極40とドレイン電極50との間に形成される電子輸送経路の抵抗の上昇、オン抵抗の上昇が抑えられる。上記構成によれば、コンタクト抵抗が低く、低オン抵抗であり、且つ、出力の高い、高性能の半導体装置1Aが実現される。
【0051】
続いて、上記構成を有する半導体装置1Aの製造方法について、次の
図4から
図6、及び上記
図3を参照して、説明する。
図4から
図6は第2実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。
図4(A)、
図4(B)、
図5(A)、
図5(B)、
図6(A)及び
図6(B)にはそれぞれ、半導体装置製造における各工程の要部断面図を模式的に示している。
【0052】
まず、
図4(A)に示すように、下地基板60上に、核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80及びバリア層20が順次成長された積層構造が形成される。
例えば、半絶縁性SiCの下地基板60の面60aに、MOVPE法を用いて、AlNの核形成層70が成長される。核形成層70の厚さは、例えば、100nmに設定される。核形成層70の面70aに、MOVPE法を用いて、GaNのチャネル層10が成長される。チャネル層10の厚さは、例えば、3μmに設定される。チャネル層10の面10aに、MOVPE法を用いて、AlGaN又はAlN(組成式Al
sGa
1-sN)のスペーサ層80が成長される。スペーサ層80の厚さは、例えば、2nmに設定される。スペーサ層80のAl
sGa
1-sNのAl組成sは、例えば、0.40≦s≦1.00に設定される。スペーサ層80の面80aに、MOVPE法を用いて、初期組成のInAlGaN(組成式In
yAl
zGa
1-y-zN)のバリア層20が成長される。バリア層20の厚さは、例えば、6nmに設定される。初期組成のバリア層20のIn
yAl
zGa
1-y-zNは、そのAl組成zが、例えば、0.10≦z<1.00に設定される。初期組成のバリア層20のIn
yAl
zGa
1-y-zNは、そのIn組成yが、例えば、0.00<y≦0.20に設定される。但し、0.00<y+z<1.00である。
【0053】
MOVPE法を用いた各窒化物半導体層(核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80及びバリア層20)の成長において、GaNの成長には、Ga源であるトリメチルガリウム(Tri-Methyl-Gallium;TMGa)とNH3(アンモニア)との混合ガスが用いられる。AlGaNの成長には、Al源であるトリメチルアルミニウム(Tri-Methyl-Aluminum;TMAl)とTMGaとNH3との混合ガスが用いられる。AlNの成長には、TMAlとNH3との混合ガスが用いられる。InAlGaNの成長には、In源であるトリメチルインジウム(Tri-Methyl-Indium;TMIn)とTMAlとTMGaとNH3との混合ガスが用いられる。成長する窒化物半導体に応じて、TMGa、TMAl、TMInの供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。キャリアガスには、H2(水素)又はN2(窒素)が用いられる。成長時の圧力条件は、1kPa程度から100kPa程度の範囲とされる。成長時の温度条件は、700℃程度から1200℃程度の範囲とされる。
【0054】
尚、ここでは、スペーサ層80を設ける例を示すが、スペーサ層80を設けず、チャネル層10上に直接、バリア層20を成長することもできる。
下地基板60上に、核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80及びバリア層20が順次成長された積層構造の形成後、素子間分離領域(図示せず)が形成される。例えば、まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、素子間分離領域を形成する領域に開口部を有するマスク(図示せず)が形成される。そして、そのマスクの開口部の窒化物半導体層に対し、塩素系ガスを用いたドライエッチング、又はAr(アルゴン)等のイオン注入が行われ、素子間分離領域が形成される。素子分離領域の形成後、マスクは除去される。
【0055】
上記のような窒化物半導体層の積層構造及び素子間分離領域の形成後、
図4(B)に示すように、バリア層20の面20a上に、後述のように第1領域21及び第2領域22を形成する領域に開口部101を有する表面保護膜100(「保護膜」とも言う)が形成される。表面保護膜100には、例えば、Si、Al、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)及びW(タングステン)の少なくとも1種を含む酸化物、窒化物、酸窒化物といった各種絶縁材料が用いられる。例えば、表面保護膜100には、SiNが用いられる。表面保護膜100の形成には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法が用いられる。このほか、表面保護膜100の形成には、原子層堆積(Atomic Layer Deposition;ALD)法、スパッタ法等が用いられてもよい。開口部101を有する表面保護膜100は、例えば、プラズマCVD法等を用いて全面に表面保護膜100の材料を形成した後、フォトリソグラフィ技術、及び塩素系又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、所定の領域に開口部101を形成することで、得られる。
【0056】
開口部101を有する表面保護膜100の形成後、
図5(A)に示すように、表面保護膜100の開口部101に露出するバリア層20に、低In組成の第1領域21及び第2領域22が形成される。第1領域21及び第2領域22を形成する際には、表面保護膜100の開口部101からバリア層20が露出する状態で、水素雰囲気中、600℃から800℃の範囲の温度条件、例えば、700℃の温度で、熱処理が行われる。このような熱処理が行われることで、表面保護膜100の開口部101から露出するバリア層20の領域からInが脱離される。これにより、表面保護膜100の開口部101から露出するバリア層20の領域に、低In組成の第1領域21及び第2領域22が形成される。例えば、熱処理により、Al組成zが0.40≦z<1.00で、In組成yが0≦x≦0.05(但し0.00<y+z<1.00)のIn
yAl
zGa
1-y-zNの第1領域21及び第2領域22が形成される。第1領域21と第2領域22との間の領域、即ち、表面保護膜100で覆われてInの脱離が抑えられた領域が、第1領域21及び第2領域22よりもIn組成の高い第3領域23となる。例えば、上記のような初期組成のIn
yAl
zGa
1-y-zNの第3領域23が形成される。
【0057】
低In組成の第1領域21及び第2領域22は、例えば、バリア層20の一方の面20aから他方の面20bまで延びるように、即ち、スペーサ層80の面80a(スペーサ層80を設けない場合はチャネル層10の面10a)と接するように、形成される。このように形成されると、チャネル層10と、後述のように第1領域21及び第2領域22の直上にそれぞれ形成されるソース電極40及びドレイン電極50との間のバリア層20が、低In組成により低電気抵抗となる第1領域21及び第2領域22で占められる。そのため、チャネル層10とソース電極40及びドレイン電極50との間のバリア層20を、部分的に、例えば、表層部のみを低In組成とする場合に比べて、チャネル層10とソース電極40及びドレイン電極50との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0058】
バリア層20の第1領域21及び第2領域22の形成後、表面保護膜100は除去される。表面保護膜100の除去後、
図5(B)に示すように、バリア層20に形成された第1領域21及び第2領域22の直上にそれぞれ、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。その際は、まず、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ソース電極40を形成する第1領域21、及びドレイン電極50を形成する第2領域22にそれぞれ、電極用金属が形成される。例えば、電極用金属として、厚さ20nmのTaと厚さ200nmのAlとの積層体が形成される。そして、電極用金属の形成後、窒素雰囲気中、400℃から1000℃の範囲の温度条件、例えば、550℃の温度で熱処理が行われ、電極用金属のオーミックコンタクトが確立される。これにより、第1領域21及び第2領域22の直上にそれぞれ、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。
【0059】
バリア層20の、ソース電極40と対向する領域、即ち、ソース電極40の直下の領域が、低In組成の第1領域21となる。バリア層20の、ドレイン電極50と対向する領域、即ち、ドレイン電極50の直下の領域が、低In組成の第2領域22となる。
【0060】
ソース電極40及びドレイン電極50の形成後、
図6(A)に示すように、バリア層20、ソース電極40及びドレイン電極50を覆うように、パッシベーション膜90が形成される。例えば、プラズマCVD法を用いて、厚さが2nmから500nmの範囲、例えば、厚さが100nmのSiN等のパッシベーション膜90が形成される。パッシベーション膜90の形成には、ALD法、スパッタ法等が用いられてもよい。
【0061】
パッシベーション膜90の形成後、
図6(B)に示すように、ゲート電極30を形成する領域のパッシベーション膜90が部分的に除去され、バリア層20に通じる開口部91が形成される。その際は、まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート電極30を形成する領域に開口部を有するマスク(図示せず)が形成され、ドライエッチングが行われる。このエッチングにより、マスクの開口部から露出するパッシベーション膜90が除去され、パッシベーション膜90の開口部91が形成される。パッシベーション膜90のエッチングは、例えば、フッ素系又は塩素系ガスを用いたドライエッチングによって行われる。このほか、パッシベーション膜90のエッチングは、フッ酸やバッファードフッ酸等を用いたウェットエッチングによって行われてもよい。パッシベーション膜90のエッチングによる開口部91の形成後、マスクは除去される。
【0062】
パッシベーション膜90の開口部91の形成後、その開口部91の位置に、上記
図3に示したように、ゲート電極30が形成される。その際は、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、パッシベーション膜90の開口部91の位置に、電極用金属が形成される。例えば、電極用金属として、厚さ30nmのNi(ニッケル)と厚さ400nmのAu(金)との積層体が形成される。電極用金属は、パッシベーション膜90の上面のほか、開口部91内に入り込むように形成される。これにより、ショットキー電極として機能するゲート電極30が形成される。
【0063】
以上のような工程により、上記
図3に示したような半導体装置1Aが製造される。
半導体装置1Aでは、上記のように、ソース電極40の直下に、バリア層20における低In組成の第1領域21が設けられ、ドレイン電極50の直下に、バリア層20における低In組成の第2領域22が設けられる。これにより、半導体装置1Aでは、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。コンタクト抵抗が低減されることで、チャネル層10を介してソース電極40とドレイン電極50との間に形成される電子輸送経路の抵抗の上昇、オン抵抗の上昇が抑えられる。従って、コンタクト抵抗が低く、低オン抵抗であり、且つ、出力の高い、高性能の半導体装置1Aが実現される。
【0064】
更に、このような半導体装置1Aの製造において、バリア層20の低In組成の第1領域21及び第2領域22は、水素雰囲気での熱処理によりInを脱離させることによって形成される。これにより、再成長層形成技術を採用する場合のような工数の増大を抑えて、コンタクト抵抗の低い高性能の半導体装置1Aを実現することが可能になる。また、ピットアシストエッチング技術を採用する場合のような、バリア層20及びその下層のチャネル層10や下地基板60の結晶転位密度に対する依存性を抑えて、コンタクト抵抗の低い高性能の半導体装置1Aを実現することが可能になる。
【0065】
尚、半導体装置1Aにおいて、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50に用いる金属の種類及び層構造は上記の例に限定されるものではなく、それらの形成方法も上記の例に限定されるものではない。ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50にはそれぞれ、単層構造が用いられてもよいし、積層構造が用いられてもよい。ソース電極40及びドレイン電極50の形成時には、それらの電極用金属の形成によってオーミックコンタクトが実現されるようであれば、必ずしも上記のような熱処理が行われることを要しない。ゲート電極30の形成時には、その電極用金属の形成後、更に熱処理が行われてもよい。
【0066】
ここでは、半導体装置1Aにショットキー電極として機能するゲート電極30を設ける例を示すが、ゲート電極30とバリア層20との間に、酸化物、窒化物又は酸窒化物等が用いられたゲート絶縁膜を設け、MIS(Metal Insulator Semiconductor)型ゲート構造としてもよい。
【0067】
[第3実施形態]
図7は第3実施形態に係る半導体装置の一例について説明する図である。
図7には、半導体装置の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0068】
図7に示す半導体装置1Bは、HEMTを備えた半導体装置の一例である。半導体装置1Bは、バリア層20の、チャネル層10(又はスペーサ層80)側とは反対の面20a側に、キャップ層110が設けられた構成を有する。半導体装置1Bは、このような構成を有する点で、上記第2実施形態で述べた半導体装置1Aと相違する。
【0069】
尚、半導体装置1Bにおいて、チャネル層10、バリア層20、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50には、上記第1実施形態で述べた半導体装置1(
図1)及び上記第2実施形態で述べた半導体装置1A(
図3等)と同様のものが用いられる。半導体装置1Bにおいて、下地基板60、核形成層70、スペーサ層80及びパッシベーション膜90には、上記第2実施形態で述べた半導体装置1A(
図3等)と同様のものが用いられる。
【0070】
キャップ層110は、バリア層20の面20a((0001)面)側に設けられる。キャップ層110の、バリア層20側とは反対の面110a側に、パッシベーション膜90と、その開口部91に位置するゲート電極30とが設けられる。キャップ層110の面110aは、例えば、(0001)面(c面、III族極性面)である。ゲート電極30は、バリア層20の面20a側に、キャップ層110を介して設けられる。キャップ層110は、Gaを含有する窒化物半導体(「第4窒化物半導体」とも言う)を含む。例えば、キャップ層110には、AlGaN、GaN等が用いられる。
【0071】
半導体装置1Bでは、このようなキャップ層110により、バリア層20が保護される。例えば、バリア層20にInを含有するInAlGaN等の窒化物半導体が用いられる場合には、次のようなことが起こり得る。即ち、バリア層20が、パッシベーション膜90の開口部91を形成する際のエッチングや、加熱を伴う工程で熱に曝されると、比較的弱いInとN(窒素)との結合が切れて欠陥が生じてしまったり、バリア層20からInが脱離してしまったりする。Inを含有するバリア層20には、このような欠陥の発生やInの脱離等のダメージが加わり易い。バリア層20にこのようなダメージが加わると、リーク電流の増大等を招く恐れがある。
【0072】
これに対し、半導体装置1Bのように、バリア層20の面20aにキャップ層110が設けられていると、熱によるInの脱離やエッチングによる欠陥の発生等のダメージがバリア層20に加わることが抑えられる。これにより、リーク電流の増大等が抑えられた、高性能の半導体装置1Bが実現される。
【0073】
続いて、上記構成を有する半導体装置1Bの製造方法について、次の
図8から
図10、及び上記
図7を参照して、説明する。
図8から
図10は第3実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例について説明する図である。
図8(A)、
図8(B)、
図9(A)、
図9(B)、
図10(A)及び
図10(B)にはそれぞれ、半導体装置製造における各工程の要部断面図を模式的に示している。
【0074】
まず、
図8(A)に示すように、下地基板60上に、核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80、バリア層20及びキャップ層110が順次成長された積層構造が形成される。
【0075】
例えば、半絶縁性SiCの下地基板60の面60aに、MOVPE法を用いて、AlNの核形成層70が成長される。核形成層70の厚さは、例えば、100nmに設定される。核形成層70の面70aに、MOVPE法を用いて、GaNのチャネル層10が成長される。チャネル層10の厚さは、例えば、3μmに設定される。チャネル層10の面10aに、MOVPE法を用いて、AlGaN又はAlN(組成式AlxGa1-xN)のスペーサ層80が成長される。スペーサ層80の厚さは、例えば、2nmに設定される。スペーサ層80のAlxGa1-xNのAl組成xは、例えば、0.40≦x≦1.00に設定される。スペーサ層80の面80aに、MOVPE法を用いて、初期組成のInAlGaN(組成式InyAlzGa1-y-zN)のバリア層20が成長される。バリア層20の厚さは、例えば、6nmに設定される。初期組成のバリア層20のInyAlzGa1-y-zNは、そのAl組成zが、例えば、0.10≦z<1.00に設定される。初期組成のバリア層20のInyAlzGa1-y-zNは、そのIn組成yが、例えば、0.00<y≦0.20に設定される。但し、0.00<y+z<1.00である。
【0076】
更に、バリア層20の面20aに、MOVPE法を用いて、AlGaN又はGaN(組成式AltGa1-tN)のキャップ層110が成長される。キャップ層110の厚さは、例えば、4nmに設定される。キャップ層110のAltGa1-tNのAl組成tは、例えば、0.00≦t<1.00に設定される。尚、キャップ層110にAlが含有されていると、Alが含有されていない場合に比べて、バリア層20に含有されるInのキャップ層110への拡散が抑えられる。
【0077】
MOVPE法を用いた各窒化物半導体層(核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80及びバリア層20)の成長において、GaNの成長には、Ga源であるTMGaとNH3との混合ガスが用いられる。AlGaNの成長には、Al源であるTMAlとTMGaとNH3との混合ガスが用いられる。AlNの成長には、TMAlとNH3との混合ガスが用いられる。InAlGaNの成長には、In源であるTMInとTMAlとTMGaとNH3との混合ガスが用いられる。成長する窒化物半導体に応じて、TMGa、TMAl、TMInの供給と停止(切り替え)、供給時の流量(他原料との混合比)が適宜設定される。キャリアガスには、H2又はN2が用いられる。成長時の圧力条件は、1kPa程度から100kPa程度の範囲とされる。成長時の温度条件は、700℃程度から1200℃程度の範囲とされる。
【0078】
尚、ここでは、スペーサ層80を設ける例を示すが、スペーサ層80を設けず、チャネル層10上に直接、バリア層20を成長することもできる。
下地基板60上に、核形成層70、チャネル層10、スペーサ層80、バリア層20及びキャップ層110が順次成長された積層構造の形成後、素子間分離領域(図示せず)が形成される。例えば、まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、素子間分離領域を形成する領域に開口部を有するマスク(図示せず)が形成される。そして、そのマスクの開口部の窒化物半導体層に対し、塩素系ガスを用いたドライエッチング、又はAr等のイオン注入が行われ、素子間分離領域が形成される。素子分離領域の形成後、マスクは除去される。
【0079】
上記のような窒化物半導体層の積層構造及び素子間分離領域の形成後、
図8(B)に示すように、キャップ層110の面110a上に、後述のように第1領域21及び第2領域22を形成する領域に開口部101を有する表面保護膜100が形成される。表面保護膜100には、例えば、Si、Al、Hf、Zr、Ti、Ta及びWの少なくとも1種を含む酸化物、窒化物、酸窒化物といった各種絶縁材料が用いられる。例えば、表面保護膜100には、SiNが用いられる。表面保護膜100の形成には、プラズマCVD法が用いられる。このほか、表面保護膜100の形成には、ALD法、スパッタ法等が用いられてもよい。開口部101を有する表面保護膜100は、例えば、プラズマCVD法等を用いて全面に表面保護膜100の材料を形成した後、フォトリソグラフィ技術、及び塩素系又はフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、所定の領域に開口部101を形成することで、得られる。
【0080】
表面保護膜100の開口部101の形成時には、
図8(B)に示すように、その開口部101の形成により露出するキャップ層110の部位が続けて除去されてもよい。例えば、塩素系ガスを用いて表面保護膜100をドライエッチングすることで、表面保護膜100に開口部101を形成し、更にその開口部101のキャップ層110を除去する。このほか、表面保護膜100に所定のエッチングプロセスで開口部101を形成した後、その開口部101に露出するキャップ層110を、別のエッチングプロセスで除去することもできる。
【0081】
開口部101を有する表面保護膜100の形成、及びキャップ層110の一部除去後、
図9(A)に示すように、表面保護膜100及びキャップ層110から露出するバリア層20に、低In組成の第1領域21及び第2領域22が形成される。第1領域21及び第2領域22を形成する際には、表面保護膜100及びキャップ層110からバリア層20が露出する状態で、水素雰囲気中、600℃から800℃の範囲の温度条件、例えば、700℃の温度で、熱処理が行われる。このような熱処理が行われることで、表面保護膜100及びキャップ層110から露出するバリア層20の領域からInが脱離される。これにより、表面保護膜100及びキャップ層110から露出するバリア層20の領域に、低In組成の第1領域21及び第2領域22が形成される。例えば、熱処理により、Al組成zが0.40≦z<1.00で、In組成yが0≦x≦0.05(但し0.00<y+z<1.00)のIn
yAl
zGa
1-y-zNの第1領域21及び第2領域22が形成される。第1領域21と第2領域22との間の領域、即ち、表面保護膜100で覆われてInの脱離が抑えられた領域が、第1領域21及び第2領域22よりもIn組成の高い第3領域23となる。例えば、上記のような初期組成のIn
yAl
zGa
1-y-zNの第3領域23が形成される。
【0082】
低In組成の第1領域21及び第2領域22は、例えば、バリア層20の一方の面20aから他方の面20bまで延びるように、即ち、スペーサ層80の面80a(スペーサ層80を設けない場合はチャネル層10の面10a)と接するように、形成される。このように形成されると、チャネル層10と、後述のように第1領域21及び第2領域22の直上にそれぞれ形成されるソース電極40及びドレイン電極50との間のバリア層20が、低In組成により低電気抵抗となる第1領域21及び第2領域22で占められる。そのため、チャネル層10とソース電極40及びドレイン電極50との間のバリア層20を、部分的に、例えば、表層部のみを低In組成とする場合に比べて、チャネル層10とソース電極40及びドレイン電極50との間のコンタクト抵抗を低減することができる。
【0083】
バリア層20の第1領域21及び第2領域22の形成後、表面保護膜100は除去される。表面保護膜100の除去後、
図9(B)に示すように、バリア層20に形成された第1領域21及び第2領域22の直上にそれぞれ、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。その際は、まず、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、ソース電極40を形成する第1領域21、及びドレイン電極50を形成する第2領域22にそれぞれ、電極用金属が形成される。例えば、電極用金属として、厚さ20nmのTaと厚さ200nmのAlとの積層体が形成される。そして、電極用金属の形成後、窒素雰囲気中、400℃から1000℃の範囲の温度条件、例えば、550℃の温度で熱処理が行われ、電極用金属のオーミックコンタクトが確立される。これにより、第1領域21及び第2領域22の直上にそれぞれ、ソース電極40及びドレイン電極50が形成される。
【0084】
バリア層20の、ソース電極40と対向する領域、即ち、ソース電極40の直下の領域が、低In組成の第1領域21となる。バリア層20の、ドレイン電極50と対向する領域、即ち、ドレイン電極50の直下の領域が、低In組成の第2領域22となる。
【0085】
ソース電極40及びドレイン電極50の形成後、
図10(A)に示すように、キャップ層110、ソース電極40及びドレイン電極50を覆うように、パッシベーション膜90が形成される。例えば、プラズマCVD法を用いて、厚さが2nmから500nmの範囲、例えば、厚さが100nmのSiN等のパッシベーション膜90が形成される。パッシベーション膜90の形成には、ALD法、スパッタ法等が用いられてもよい。
【0086】
パッシベーション膜90の形成後、
図10(B)に示すように、ゲート電極30を形成する領域のパッシベーション膜90が部分的に除去され、キャップ層110に通じる開口部91が形成される。その際は、まず、フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート電極30を形成する領域に開口部を有するマスク(図示せず)が形成され、ドライエッチングが行われる。このエッチングにより、マスクの開口部から露出するパッシベーション膜90が除去され、パッシベーション膜90の開口部91が形成される。パッシベーション膜90のエッチングは、例えば、フッ素系又は塩素系ガスを用いたドライエッチングによって行われる。このほか、パッシベーション膜90のエッチングは、フッ酸やバッファードフッ酸等を用いたウェットエッチングによって行われてもよい。エッチング時のバリア層20へのダメージが、キャップ層110によって抑えられる。パッシベーション膜90のエッチング後、マスクは除去される。
【0087】
パッシベーション膜90の開口部91の形成後、その開口部91の位置に、上記
図7に示したように、ゲート電極30が形成される。その際は、フォトリソグラフィ技術、蒸着技術及びリフトオフ技術を用いて、パッシベーション膜90の開口部91の位置に、電極用金属が形成される。例えば、電極用金属として、厚さ30nmのNiと厚さ400nmのAuとの積層体が形成される。電極用金属は、パッシベーション膜90の上面のほか、開口部91内に入り込むように形成される。これにより、ショットキー電極として機能するゲート電極30が形成される。
【0088】
以上のような工程により、上記
図7に示したような半導体装置1Bが製造される。
半導体装置1Bでは、上記のように、ソース電極40の直下に、バリア層20の低In組成の第1領域21が設けられ、ドレイン電極50の直下に、バリア層20の低In組成の第2領域22が設けられる。これにより、半導体装置1Bでは、ソース電極40及びドレイン電極50とチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。コンタクト抵抗が低減されることで、チャネル層10を介してソース電極40とドレイン電極50との間に形成される電子輸送経路の抵抗の上昇、オン抵抗の上昇が抑えられる。更に、半導体装置1Bでは、バリア層20を覆うキャップ層110が設けられることで、バリア層20のダメージが抑えられ、リーク電流等が抑えられる。従って、コンタクト抵抗が低く、低オン抵抗であり、且つ、出力の高い、高性能の半導体装置1Bが実現される。
【0089】
更に、このような半導体装置1Bの製造において、バリア層20の低In組成の第1領域21及び第2領域22は、水素雰囲気での熱処理によりInを脱離させることによって形成される。これにより、再成長層形成技術を採用する場合のような工数の増大を抑えて、コンタクト抵抗の低い高性能の半導体装置1Bを実現することが可能になる。また、ピットアシストエッチング技術を採用する場合のような、バリア層20及びその下層のチャネル層10や下地基板60の結晶転位密度に対する依存性を抑えて、コンタクト抵抗の低い高性能の半導体装置1Bを実現することが可能になる。
【0090】
尚、半導体装置1Bにおいて、ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50に用いる金属の種類及び層構造は上記の例に限定されるものではなく、それらの形成方法も上記の例に限定されるものではない。ゲート電極30、ソース電極40及びドレイン電極50にはそれぞれ、単層構造が用いられてもよいし、積層構造が用いられてもよい。ソース電極40及びドレイン電極50の形成時には、それらの電極用金属の形成によってオーミックコンタクトが実現されるようであれば、必ずしも上記のような熱処理が行われることを要しない。ゲート電極30の形成時には、その電極用金属の形成後、更に熱処理が行われてもよい。
【0091】
ここでは、半導体装置1Bにショットキー電極として機能するゲート電極30を設ける例を示すが、ゲート電極30とバリア層20との間に、酸化物、窒化物又は酸窒化物等が用いられたゲート絶縁膜を設け、MIS型ゲート構造としてもよい。
【0092】
以上、第1から第3実施形態について説明した。
上記第1から第3実施形態で述べたような構成を有する半導体装置1、1A、1B等は、各種電子装置に適用することができる。一例として、上記のような構成を有する半導体装置を、半導体パッケージ、力率改善回路、電源装置及び増幅器に適用する場合について、以下に説明する。
【0093】
[第4実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、半導体パッケージへの適用例を、第4実施形態として説明する。
【0094】
図11は第4実施形態に係る半導体パッケージの一例について説明する図である。
図11には、半導体パッケージの一例の要部平面図を模式的に示している。
図11に示す半導体パッケージ200は、ディスクリートパッケージの一例である。半導体パッケージ200は、例えば、上記第1実施形態で述べた半導体装置1(
図1)、半導体装置1が搭載されたリードフレーム210、及びそれらを封止する樹脂220を含む。
【0095】
半導体装置1は、例えば、リードフレーム210のダイパッド210a上にダイアタッチ材等(図示せず)を用いて搭載される。半導体装置1には、上記ゲート電極30と接続されたパッド30a、ソース電極40と接続されたパッド40a、及びドレイン電極50と接続されたパッド50aが設けられる。パッド30a、パッド40a及びパッド50aはそれぞれ、Au、Al等のワイヤ230を用いてリードフレーム210のゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213に接続される。ゲートリード211、ソースリード212及びドレインリード213の各一部が露出するように、リードフレーム210とそれに搭載された半導体装置1及びそれらを接続するワイヤ230が、樹脂220で封止される。
【0096】
半導体装置1の、ゲート電極30と接続されたパッド30a及びドレイン電極50と接続されたパッド50aが設けられる面とは反対側の面に、ソース電極40と接続された外部接続用電極が設けられてもよい。当該外部接続用電極を、ソースリード212に繋がるダイパッド210aに、半田等の導電性接合材を用いて接続してもよい。
【0097】
例えば、上記第1実施形態で述べた半導体装置1が用いられ、このような構成を有する半導体パッケージ200が得られる。
上記のように、半導体装置1では、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20の、その上に設けられるソース電極40及びドレイン電極50の直下にそれぞれ、低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、それらの間にあってそれらよりもIn組成が高くなる第3領域23よりも低電気抵抗となる。従って、ソース電極40及びドレイン電極50と、バリア層20の下に設けられるチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。これにより、低コンタクト抵抗、低オン抵抗、高出力となる、高性能の半導体装置1が実現される。このような半導体装置1が用いられ、高性能の半導体パッケージ200が実現される。
【0098】
ここでは、半導体装置1を例にしたが、他の半導体装置1A、1B等を用いて同様に半導体パッケージを得ることが可能である。
[第5実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、力率改善回路への適用例を、第5実施形態として説明する。
【0099】
図12は第5実施形態に係る力率改善回路の一例について説明する図である。
図12には、力率改善回路の一例の等価回路図を示している。
図12に示す力率改善(Power Factor Correction;PFC)回路300は、スイッチ素子310、ダイオード320、チョークコイル330、コンデンサ340、コンデンサ350、ダイオードブリッジ360及び交流電源370(AC)を含む。
【0100】
PFC回路300において、スイッチ素子310のドレイン電極と、ダイオード320のアノード端子及びチョークコイル330の一端子とが接続される。スイッチ素子310のソース電極と、コンデンサ340の一端子及びコンデンサ350の一端子とが接続される。コンデンサ340の他端子とチョークコイル330の他端子とが接続される。コンデンサ350の他端子とダイオード320のカソード端子とが接続される。また、スイッチ素子310のゲート電極には、ゲートドライバが接続される。コンデンサ340の両端子間には、ダイオードブリッジ360を介して交流電源370が接続され、コンデンサ350の両端子間から直流電源(DC)が取り出される。
【0101】
例えば、このような構成を有するPFC回路300のスイッチ素子310に、上記半導体装置1、1A、1B等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A、1B等では、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20の、その上に設けられるソース電極40及びドレイン電極50の直下にそれぞれ、低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、それらの間にあってそれらよりもIn組成が高くなる第3領域23よりも低電気抵抗となる。従って、ソース電極40及びドレイン電極50と、バリア層20の下に設けられるチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。これにより、低コンタクト抵抗、低オン抵抗、高出力となる、高性能の半導体装置1、1A、1B等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B等が用いられ、高性能のPFC回路300が実現される。
【0102】
[第6実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、電源装置への適用例を、第6実施形態として説明する。
【0103】
図13は第6実施形態に係る電源装置の一例について説明する図である。
図13には、電源装置の一例の等価回路図を示している。
図13に示す電源装置400は、一次側回路410及び二次側回路420、並びに一次側回路410と二次側回路420との間に設けられるトランス430を含む。
【0104】
一次側回路410には、上記第5実施形態で述べたようなPFC回路300、及びPFC回路300のコンデンサ350の両端子間に接続されたインバータ回路、例えば、フルブリッジインバータ回路440が含まれる。フルブリッジインバータ回路440には、複数、ここでは一例として4つのスイッチ素子441、スイッチ素子442、スイッチ素子443及びスイッチ素子444が含まれる。
【0105】
二次側回路420には、複数、ここでは一例として3つのスイッチ素子421、スイッチ素子422及びスイッチ素子423が含まれる。
例えば、このような構成を有する電源装置400の、一次側回路410に含まれるPFC回路300のスイッチ素子310、及びフルブリッジインバータ回路440のスイッチ素子441~444に、上記半導体装置1、1A、1B等が用いられる。例えば、電源装置400の、二次側回路420のスイッチ素子421~423には、Siを用いた通常のMIS型電界効果トランジスタが用いられる。
【0106】
上記のように、半導体装置1、1A、1B等では、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20の、その上に設けられるソース電極40及びドレイン電極50の直下にそれぞれ、低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、それらの間にあってそれらよりもIn組成が高くなる第3領域23よりも低電気抵抗となる。従って、ソース電極40及びドレイン電極50と、バリア層20の下に設けられるチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。これにより、低コンタクト抵抗、低オン抵抗、高出力となる、高性能の半導体装置1、1A、1B等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B等が用いられ、高性能の電源装置400が実現される。
【0107】
[第7実施形態]
ここでは、上記のような構成を有する半導体装置の、増幅器への適用例を、第7実施形態として説明する。
【0108】
図14は第7実施形態に係る増幅器の一例について説明する図である。
図14には、増幅器の一例の等価回路図を示している。
図14に示す増幅器500は、デジタルプレディストーション回路510、ミキサー520、ミキサー530及びパワーアンプ540を含む。
【0109】
デジタルプレディストーション回路510は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー520は、非線形歪みが補償された入力信号SIと交流信号とをミキシングする。パワーアンプ540は、入力信号SIが交流信号とミキシングされた信号を増幅する。増幅器500では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力信号SOをミキサー530で交流信号とミキシングしてデジタルプレディストーション回路510に送出することができる。増幅器500は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。
【0110】
このような構成を有する増幅器500のパワーアンプ540に、上記半導体装置1、1A、1B等が用いられる。
上記のように、半導体装置1、1A、1B等では、InとAlとGaとを含有する窒化物半導体が用いられたバリア層20の、その上に設けられるソース電極40及びドレイン電極50の直下にそれぞれ、低In組成の第1領域21及び第2領域22が設けられる。低In組成の第1領域21及び第2領域22は、それらの間にあってそれらよりもIn組成が高くなる第3領域23よりも低電気抵抗となる。従って、ソース電極40及びドレイン電極50と、バリア層20の下に設けられるチャネル層10との間のコンタクト抵抗が低減される。これにより、低コンタクト抵抗、低オン抵抗、高出力となる、高性能の半導体装置1、1A、1B等が実現される。このような半導体装置1、1A、1B等が用いられ、高性能の増幅器500が実現される。
【0111】
上記半導体装置1、1A、1B等を適用した各種電子装置(上記第4から第7実施形態で述べた半導体パッケージ200、PFC回路300、電源装置400及び増幅器500等)は、各種電子機器(「電子装置」と称されてもよい)に搭載することができる。例えば、コンピュータ(パーソナルコンピュータ、スーパーコンピュータ、サーバ等)、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、センサ、カメラ、オーディオ機器、測定装置、検査装置、製造装置、送信器、受信器、レーダー装置といった、各種電子機器に搭載することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1、1A、1B 半導体装置
10 チャネル層
10a、20a、20b、60a、70a、80a、110a 面
20 バリア層
21 第1領域
22 第2領域
23 第3領域
30 ゲート電極
30a、40a、50a パッド
40 ソース電極
50 ドレイン電極
60 下地基板
70 核形成層
80 スペーサ層
90 パッシベーション膜
91、101 開口部
100 表面保護膜
110 キャップ層
200 半導体パッケージ
210 リードフレーム
210a ダイパッド
211 ゲートリード
212 ソースリード
213 ドレインリード
220 樹脂
230 ワイヤ
300 PFC回路
310、421、422、423、441、442、443、444 スイッチ素子
320 ダイオード
330 チョークコイル
340、350 コンデンサ
360 ダイオードブリッジ
370 交流電源
400 電源装置
410 一次側回路
420 二次側回路
430 トランス
440 フルブリッジインバータ回路
500 増幅器
510 デジタルプレディストーション回路
520、530 ミキサー
540 パワーアンプ