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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057291
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】流量切替機構及び質量分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240417BHJP
   H01J 49/24 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N27/62 B
H01J49/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163929
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】司馬 駿希
(72)【発明者】
【氏名】松下 知義
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA14
(57)【要約】
【課題】低コストに実現可能且つ制御が容易な流量切替機構を提供する。
【解決手段】内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、狭隘部よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリー230と、通路内でキャピラリーを支持すると共に、キャピラリーの外周面と通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部200、第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部300、及び出口端153と、第1流路絞り部の通路の他端に接続された第1入口端151と、第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端152とを有し、出口端が第1入口端に接続された状態と第2入口端に接続された状態とを切り替え可能な三方弁150を有する流量切替機構。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
吸気口と排気口を有し、前記吸気口が前記真空チャンバに接続された第1ポンプと、
吸気口と排気口を有し、前記排気口が大気開放された第2ポンプと、
前記第1ポンプの前記排気口と前記第2ポンプの前記吸気口とを繋ぐ接続配管と、
一端が前記接続配管の中途に接続され、該接続配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から前記接続配管に導入される空気の流量を切り替える流量切替機構と、
制御部と、
を有し、
前記流量切替機構が、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
前記空気供給配管の他端に接続された出口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口端と、前記第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端とを有し、前記出口端と前記第1入口端とが接続された第1状態と、前記出口端と前記第2入口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
を有するものであり、
前記制御部が、質量分析の実行時には、前記三方弁が前記第1状態となり、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが稼働中であってなお且つ質量分析が行われていない待機時には、前記三方弁が前記第2状態となるよう、前記三方弁を制御する、質量分析装置。
【請求項2】
真空チャンバと、
吸気口と排気口を有し、前記吸気口が前記真空チャンバに接続された第1ポンプと、
吸気口と排気口を有し、前記排気口が大気開放された第2ポンプと、
前記第1ポンプの前記排気口と前記第2ポンプの前記吸気口とを繋ぐ接続配管と、
一端が前記接続配管の中途に接続され、該接続配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から前記接続配管に導入される空気の流量を切り替える流量切替機構と、
制御部と、
を有し、
前記流量切替機構が、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
入口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の前記一端に接続された第1出口端と、前記第2流路絞り部の通路の一端に接続された第2出口端とを有し、前記入口端と前記第1出口端とが接続された第1状態と、前記入口端と前記第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
前記空気供給配管の他端に接続された出口ポートと、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口ポートと、前記第2流路絞り部の前記通路の他端に接続された第2入口ポートとを有する分岐管と、
を有するものであり、
前記制御部が、質量分析の実行時には、前記三方弁が前記第1状態となり、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが稼働中であってなお且つ質量分析が行われていない待機時には、前記三方弁が前記第2状態となるよう、前記三方弁を制御する、質量分析装置。
【請求項3】
前記密閉支持部材が、前記キャピラリーが挿通される貫通孔を備えたゴム弾性を有する素材から成り、前記通路に圧入されるものである請求項1又は2に記載の質量分析装置。
【請求項4】
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
出口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口端と、前記第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端とを有し、前記出口端と前記第1入口端とが接続された第1状態と、前記出口端と前記第2入口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
を有するものである、流量切替機構。
【請求項5】
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
入口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の前記一端に接続された第1出口端と、前記第2流路絞り部の通路の一端に接続された第2出口端とを有し、前記入口端と前記第1出口端とが接続された第1状態と、前記入口端と前記第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
出口ポートと、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口ポートと、前記第2流路絞り部の前記通路の他端に接続された第2入口ポートとを有する分岐管と、
を有するものである、流量切替機構。
【請求項6】
前記密閉支持部材が、前記キャピラリーが挿通される貫通孔を備えたゴム弾性を有する素材から成り、前記通路に圧入されるものである請求項4又は5に記載の流量切替機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管中を流れる気体の流量を切り替えるための流量切替機構、及びそれを備えた質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析装置のような真空チャンバを備えた装置において、該真空チャンバを真空引きするために、動作可能圧力の異なる複数の真空ポンプが用いられる場合がある(例えば、特許文献1等を参照)。
【0003】
このような複数の真空ポンプを備えた質量分析装置について、図7を参照しつつ説明する。この質量分析装置は、試料からイオンを生成するイオン化部10と、生成されたイオンを質量分離して検出する分析部20と、該分析部20の内部空間を排気する排気部30とを備えている。分析部20は、イオン化部10に近い側から順に、第1真空室21、第2真空室22、及び第3真空室23を備えており、この順に段階的に真空度が高められた多段差動排気系の構成を有している。排気部30は、ターボ分子ポンプである第1ポンプ31と、ロータリーポンプである第2ポンプ32とを備えている。第2ポンプ32の吸気口33は第1配管34を介して第1真空室21に接続され、同ポンプの排気口35は大気開放されている。また、第1ポンプ31に設けられた2つの吸気口36、37のうちの一方の吸気口36は第2真空室22に直接接続され、他方の吸気口37は第3真空室23に直接接続されている。また、第1ポンプ31の排気口38は第2配管39を介して第1配管34の中途に接続されている。
【0004】
このような構成において、第2ポンプ32は、第1真空室21を目的の真空度まで真空引きして該真空度を維持する役割と、第2真空室22及び第3真空室23を第1ポンプ31の動作可能圧力まで真空引きする粗引きポンプとしての役割を担うと共に、第1ポンプ31から送出される空気を排出することによって第1ポンプ31の背圧を維持する補助ポンプとしての役割も担っている。なお、第1ポンプ31によって水素等の分子量の小さいガス(軽ガス)を十分に排気するには、第1ポンプ31と第2ポンプ32の間に分子量の大きいガスを導入する必要がある。そのため、排気部30には、第2配管39中に少量の空気を送り込むための空気供給部40が設けられている。ただし、質量分析を行ってない待機時(すなわち、第1ポンプ31及び第2ポンプ32は作動しているが分析部20にイオンが導入されていない状態)には、質量分析の実行中である分析時よりも第2配管39中の圧力が低くなるため、第2ポンプ32が発する騒音が大きくなったり、第2ポンプ32から第1配管34中にオイルが逆流したりするおそれがある。これを防ぐには、待機時に空気供給部40から第2配管39に導入される空気の流量を、分析時における流量よりも大きくする必要がある。そのため、空気供給部40には内径の異なる2種類の流路絞り部44、47が設けられており、待機時と分析時とで使用する流路絞り部44、47を切り替えることによって第2配管39に導入される空気の流量を変更できるようになっている。
【0005】
具体的には、空気供給部40には、第1バルブ43、第1流路絞り部44、及び第1エアフィルター45を備えた第1流路41と、第2バルブ46、第2流路絞り部47、及び第2エアフィルター48を備えた第2流路42とが並行に設けられている。第1バルブ43を開状態とし、第2バルブ46を閉状態とすると、第1流路41を通過した空気が第2配管39に流入する状態(第1状態)となり、逆に、第1バルブ43を閉状態とし、第2バルブ46を開状態とすると、第2流路42を通過した空気が第2配管39に流入する状態(第2状態)となる。第1流路絞り部44と第2流路絞り部47には、それぞれ石英管等から成るキャピラリー(図示略)が含まれており、各流路絞り部44、47に流入した空気が、当該キャピラリーを通過することによって、該空気の流量が制限される。第2流路絞り部47に含まれているキャピラリーは第1流路絞り部44に含まれているキャピラリーよりも内径が小さいため、待機時には上述の第1状態となり、分析時には上述の第2状態となるように、第1バルブ43及び第2バルブ46の開閉を制御することによって、空気供給部40から第2流路42へと導入される空気の流量を、待機時には相対的に大きく、分析時には相対的に小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-091988号公報([0020],図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成では、流量の切り替えを実現するために多数の部品が必要となるため製造コストが高くなり、なお且つ制御も煩雑になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、低コストに実現可能且つ制御が容易な流量切替機構及びそれを備えた質量分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る流量切替機構は、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
出口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口端と、前記第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端とを有し、前記出口端と前記第1入口端とが接続された第1状態と、前記出口端と前記第2入口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
を有するものである。
【0010】
本発明に係る流量切替機構は、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
入口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の前記一端に接続された第1出口端と、前記第2流路絞り部の通路の一端に接続された第2出口端とを有し、前記入口端と前記第1出口端とが接続された第1状態と、前記入口端と前記第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
出口ポートと、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口ポートと、前記第2流路絞り部の前記通路の他端に接続された第2入口ポートとを有する分岐管と、
を有するものであってもよい。
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る質量分析装置は、
真空チャンバと、
吸気口と排気口を有し、前記吸気口が前記真空チャンバに接続された第1ポンプと、
吸気口と排気口を有し、前記排気口が大気開放された第2ポンプと、
前記第1ポンプの前記排気口と前記第2ポンプの前記吸気口とを繋ぐ接続配管と、
一端が前記接続配管の中途に接続され、該接続配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から前記接続配管に導入される空気の流量を切り替える流量切替機構と、
制御部と、
を有し、
前記流量切替機構が、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
前記空気供給配管の他端に接続された出口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口端と、前記第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端とを有し、前記出口端と前記第1入口端とが接続された第1状態と、前記出口端と前記第2入口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
を有するものであり、
前記制御部が、質量分析の実行時には、前記三方弁が前記第1状態となり、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが稼働中であってなお且つ質量分析が行われていない待機時には、前記三方弁が前記第2状態となるよう、前記三方弁を制御するものである。
【0012】
本発明に係る質量分析装置は、
真空チャンバと、
吸気口と排気口を有し、前記吸気口が前記真空チャンバに接続された第1ポンプと、
吸気口と排気口を有し、前記排気口が大気開放された第2ポンプと、
前記第1ポンプの前記排気口と前記第2ポンプの前記吸気口とを繋ぐ接続配管と、
一端が前記接続配管の中途に接続され、該接続配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から前記接続配管に導入される空気の流量を切り替える流量切替機構と、
制御部と、
を有し、
前記流量切替機構が、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
入口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の前記一端に接続された第1出口端と、前記第2流路絞り部の通路の一端に接続された第2出口端とを有し、前記入口端と前記第1出口端とが接続された第1状態と、前記入口端と前記第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
前記空気供給配管の他端に接続された出口ポートと、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口ポートと、前記第2流路絞り部の前記通路の他端に接続された第2入口ポートとを有する分岐管と、
を有するものであり、
前記制御部が、質量分析の実行時には、前記三方弁が前記第1状態となり、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが稼働中であってなお且つ質量分析が行われていない待機時には、前記三方弁が前記第2状態となるよう、前記三方弁を制御するものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明に係る流量切替機構又は質量分析装置によれば、流量の切り替えが低コストに実現できると共に、該流量の切り替えに関する制御も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る質量分析装置の概略構成を示す模式図。
図2】同実施形態における空気供給部の具体的構成の一例を示す図。
図3】同実施形態における第2流路絞り部の構成を示す断面図。
図4】同実施形態における第1流路絞り部の構成を示す断面図。
図5】同実施例に係る質量分析装置の動作を示すフローチャート。
図6】本発明の別の実施形態に係る質量分析装置の概略構成を示す模式図。
図7】従来の質量分析装置の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る質量分析装置の概略構成を示す模式図である。この質量分析装置は、誘導結合プラズマにより試料からイオンを生成するイオン化部110と、生成されたイオンを質量分離して検出する分析部120と、分析部120の内部空間を排気する排気部130と、前記各部の動作を制御する制御部181と、を備えている。
【0016】
イオン化部110は、略大気圧であるイオン化室111と、イオン化室111内に配置されたプラズマトーチ112とを備えている。プラズマトーチ112は、ネブライザガスにより霧化した液体試料を流通させる試料管と、該試料管の外周に形成されたプラズマガス管と、該プラズマガス管の外周に形成された冷却ガス管と、該冷却ガス管の先端に巻き付けられた高周波誘導コイルとを備えている(いずれも図示略)。プラズマトーチ112の前記試料管の入口端には、液体試料をプラズマトーチ112に導入するオートサンプラ113が設けられている。前記プラズマガス管にアルゴンガス等のプラズマ生成用ガスを流しつつ、前記高周波誘導コイルに高周波電流を流すとプラズマトーチ112の先端にプラズマが生成される。この状態で前記試料管から試料を導入すると、高温のプラズマ中で該試料中の化合物がイオン化され、生成されたイオンが分析部120に導かれる。
【0017】
分析部120は、イオン化室111に近い側から順に、第1真空室121、第2真空室122、及び第3真空室123を備えており、この順に段階的に真空度が高められた多段差動排気系の構成を有している。なお、ここでは、分析部120が3つの真空室で構成されているものとしたが、真空室を区画する数は適宜に変更することができる。第1真空室121は、イオン化室111から供給されるイオンを後段へと送ると共に溶媒ガス等を排出するためのインターフェイスとして機能する。第1真空室121の入口側の壁面には略円錐状のサンプリングコーンが設けられており、該サンプリングコーンの頂部に形成された微小なイオン通過口を通して第1真空室121内にイオンが導入される。第2真空室122には、イオンの飛行軌道を収束させるためのイオンレンズ124と、ヘリウムガス等の不活性ガスと衝突させることにより多原子イオン等の干渉イオンを除去するためのコリジョンセル125とが配置されている。第3真空室123には、イオンを質量(厳密にはm/z)に基づいて分離する四重極マスフィルタ126と、質量分離された試料を検出する検出器127とが配置されている。第1真空室121と第2真空室122との間、及び第2真空室122と第3真空室123との間は、微小なイオン通過口を通して連通している。なお、ここでは、四重極マスフィルタ126によってイオンの質量分離を行うものとしたが、四重極マスフィルタ以外の機構による質量分離を行う構成としてもよい。
【0018】
排気部130は、ターボ分子ポンプ131(本発明における第1ポンプに相当)と、ロータリーポンプ132(本発明における第2ポンプに相当)とを備えている。ターボ分子ポンプ131は2つの吸気口136、137と1つの排気口138を備え、ロータリーポンプ132は1つの吸気口133と1つの排気口135を備えている。ロータリーポンプ132の吸気口133は、第1配管134を介して第1真空室121に接続され、同ポンプの排気口135は大気開放されている。ターボ分子ポンプ131の2つの吸気口136、137のうちの一方の吸気口136は第2真空室122に直接接続され、他方の吸気口137は第3真空室123に直接接続されている。また、ターボ分子ポンプ131の排気口138は第2配管139を介して第1配管134の中途に接続されている(第1配管134の前記中途よりも下流側の領域及び第2配管139が、本発明における接続配管に相当する)。本実施形態において、ロータリーポンプ132は、第1真空室121を目的の真空度まで真空引きして該真空度を維持する役割を担うと共に、第2真空室122及び第3真空室123をターボ分子ポンプ131によって真空排気可能な所定の圧力まで真空引きする粗引きポンプとしての役割と、ターボ分子ポンプ131から送出される空気を排出することによってターボ分子ポンプ131の背圧を維持する補助ポンプとしての役割も担っている。一方、ターボ分子ポンプ131は、ロータリーポンプ132によって前記所定の圧力まで真空引きされた第2真空室122及び第3真空室123を、目的とする真空度まで真空引きして該真空度を維持する役割を担っている。
【0019】
上述した通り、ターボ分子ポンプ131によって水素等の軽ガスを十分に排気するには、ターボ分子ポンプ131とロータリーポンプ132の間に分子量の大きいガスを導入する必要がある。そのため、排気部130には、第2配管139中に少量の空気を送り込むための空気供給部140が設けられている。更に、上述した通り、質量分析装置の待機時には第2配管139に導入する空気の流量を相対的に大きく、分析実行時には前記流量を相対的に小さくする必要があることから、空気供給部140は、第2配管139に流入する空気の流量を待機時と分析実行時とで切り替えることのできる構成となっている。以下、この空気供給部140について詳しく説明する。
【0020】
本実施形態における空気供給部140の具体的構成の一例を図2に示す。空気供給部140は、いずれも内部を気体が流通可能に構成されている第1流路絞り部200、第2流路絞り部300、三方弁150、分岐管160、及びエアフィルター170を備えている(ただし、図2ではエアフィルター170の図示を省略している)。なお、このうち第1流路絞り部200、第2流路絞り部300、及び三方弁150が本発明における流量切替機構に相当する。三方弁150は、2つの入口端(以下、第1入口端151及び第2入口端152とよぶ)と1つの出口端153を備えた電磁弁又は電動弁であって、第1入口端151と出口端153とが接続された第1状態と、第2入口端152と出口端153とが接続された第2状態とを択一的に切り替えることができる構成となっている。分岐管160は、3つの開口端(以下、第1開口端161、第2開口端162、及び第3開口端163とよぶ)を備えている。第1流路絞り部200は1つの入口端201と1つの出口端202を有しており、同じく第2流路絞り部300も1つの入口端301と1つの出口端302を有している。三方弁150の出口端153は第3配管141(本発明における空気供給配管に相当)を介して第2配管139の中途に接続されている。分岐管160の第3開口端163は第4配管142を介して大気開放されており、第4配管142の中途にはエアフィルター170が配設されている。第1流路絞り部200の入口端201は第5配管143を介して分岐管160の第1開口端161に接続され、第1流路絞り部200の出口端202は三方弁150の第1入口端151に直接接続されている。第2流路絞り部300の入口端301は第6配管144を介して分岐管160の第2開口端162に接続され、第2流路絞り部300の出口端302は三方弁150の第2入口端152に直接接続されている。なお、第1流路絞り部200と第5配管143は第1の継手145を介して互いに連結されており、第2流路絞り部300と第6配管144は第2の継手146を介して互いに連結されている。
【0021】
第1流路絞り部200及び第2流路絞り部300は、いずれも空気が流れる流路の断面積を絞ることによって、第2配管139に流入する空気の流量を制限する部分である。ここでは、まず、構成がより簡単である第2流路絞り部300について、図3を参照しつつ説明する。なお、同図の右側に位置する端部が第2流路絞り部300の入口端301であり、同図の左側に位置する端部が第2流路絞り部300の出口端302である。第2流路絞り部300は、図3に示すような断面形状を備えた筐体310を有している。筐体310は、典型的には金属で構成されているが、これに限らず、硬質のプラスチック、又はセラミックス等から成るものとしてもよい。筐体310は、略円柱状の本体部311と、本体部311の入口端301とは逆側の端面から突出し本体部311よりも外径の小さい略円柱状の突出部312とを備えている。突出部312は、三方弁150の第2入口端152に螺入される部分であって、その外周面にはねじ山313が形成されている。
【0022】
筐体310の内部には、空気が流通するための通路320が該筐体310を貫通するように形成されており、該通路320は、本体部311の入口端301側の端面と、突出部312の出口端302側の端面とでそれぞれ開口している。通路320は、筐体310の入口端301側の末端に位置する大径部321及び出口端302側の末端に位置する小径部327(本発明における狭隘部に相当)と、大径部321と小径部327の間に位置する縮小部329を備えている。縮小部329は、第1テーパー部322、第1中間部323、第2テーパー部324、第2中間部325、及び第3テーパー部326を備えている。第1テーパー部322、第1中間部323、第2テーパー部324、第2中間部325、及び第3テーパー部326は、大径部321側から小径部327側に向かってこの順に設けられており、第1中間部323は大径部321の内径よりも小さい内径を有し、第2中間部325は第1中間部323の内径よりも小さく、小径部327の内径よりも大きい内径を有している。第1テーパー部322は大径部321側から第1中間部323側に向かって徐々に径が小さくなるテーパー状の内周形状を有し、第2テーパー部324は第1中間部323側から第2中間部325側に向かって徐々に径が小さくなるテーパー状の内周形状を有している。また、第3テーパー部326は、第2中間部325側から小径部327側に向かって徐々に径が小さくなるテーパー状の内周形状を有している。ただし、本発明における縮小部329は大径部321側から小径部327側に向かって段階的又は連続的に断面積が縮小するよう構成されていればよく、必ずしも上記構成に限定されるものではない。大径部321の入口端301側の領域は、第2の継手146の端部が螺入される部分であって、当該領域の内周面にはねじ山328が形成されている。なお、本実施形態において、大径部321及び小径部327はいずれも円形の断面形状を有し、その内径は、大径部321が5mm~10mm、小径部327が0.3mm~1mmであるが、これに限定されるものではない。なお、三方弁150の第2入口端152と接続するための機械的強度を確保するため、突出部312の壁面は、ある程度大きな厚みを持たせる必要がある。
【0023】
続いて、第1流路絞り部200の構成について図4を参照しつつ説明する。なお、同図において、図3で示したものと対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付している。図4に示すように、第1流路絞り部200は、筐体210と、筐体210の通路220内に該通路220と同軸に配置されるキャピラリー230と、キャピラリー230を保持して通路320内に固定する密閉支持部材240と、を備えている。筐体210の形状、寸法、及び素材は、第2流路絞り部300の筐体310と同じであるため、ここでは説明を省略する。キャピラリー230は、筐体210の小径部227の内径よりも小さな内径を有する細管である。なお、キャピラリー230の内径は、例えば、0.05mm~0.5mm程度とすることが望ましい。キャピラリー230の外径は特に限定されるものではなく、小径部227の内径より小さくても大きくてもよい。また、キャピラリーの長さは、通路220の全長よりも短ければよく、例えば通路の1/3~2/3程度の長さとすることが望ましい。図4では、キャピラリー230の先端(出口端202側に位置する端部)が第2中間部225に位置しているが、これに限らず、キャピラリー230の先端を、例えば第3テーパー部226又は小径部227に位置させてもよい。キャピラリー230は、典型的には石英で構成されているが、これに限らず、例えば、ガラス、硬質の樹脂、セラミックス、又は金属等から成るものとすることもできる。密閉支持部材240は、ゴム弾性を有する素材、例えば、天然ゴム、又はシリコンゴム若しくはウレタンゴム等の合成ゴムから成る円柱状の部材であって、その軸方向中央にはキャピラリー230を挿通するためのキャピラリー挿通孔(図示略)が形成されている。密閉支持部材240の外径は筐体210の第1中間部223の内径よりも僅かに大きくなっており、前記キャピラリー挿通孔にキャピラリー230を挿通した状態で、密閉支持部材240を入口端201側の開口から通路220内に進入させて第1中間部223に圧入することによって、キャピラリー230が通路220中に保持される。更に、このときキャピラリー230の外周と通路220の内周との間が密閉支持部材240によって気密に封止される。なお、第1流路絞り部200の突出部212は三方弁150の第1入口端151に螺入され、第1流路絞り部200の大径部221の入口端201側の領域には第1の継手145の端部が螺入される。
【0024】
筐体210、310の小径部227、327の断面積は、空気供給部140に含まれるその他の領域(すなわち、第3配管141、第4配管142、第5配管143、第6配管144、三方弁150、エアフィルター170、分岐管160、第1の継手145、及び第2の継手146)における空気の流路の断面積よりも十分に小さくなっている。また、小径部227、327は円形の断面形状を有し、その直径はキャピラリー230の内径よりも大きくなっている。したがって、空気供給部140から第2配管139に流入する空気の流量は、第1流路絞り部200におけるキャピラリー230の内径、又は第2流路絞り部300における小径部327の内径に依存しており、且つ三方弁150が第1状態にあるときよりも、第2状態にあるときのほうが、前記流量が大きくなるようになっている。
【0025】
制御部181の実体は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、該コンピュータが備えるCPUが所定のプログラムを実行することによって、本実施形態に係る質量分析装置による試料の分析が実行される。前記コンピュータには、オペレータからの指示を入力するためのキーボード又はマウス等を備えた入力部182が接続されている。なお、図1では簡略化のため、制御部181と三方弁150又はオートサンプラ113を繋ぐ制御線のみを示しているが、ターボ分子ポンプ131及びロータリーポンプ132の動作、並びにイオン化部110及び分析部120の動作も制御部181によって制御される。
【0026】
続いて、本実施形態に係る質量分析装置における特徴的な動作について図5のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0027】
なお、分析開始前の待機状態では、第1真空室121、第2真空室122、及び第3真空室123は、ロータリーポンプ132及びターボ分子ポンプ131によって、それぞれ目的の真空度まで真空排気された状態となっている。更に、このとき、空気供給部140の三方弁150は、上述の第2状態となっており、空気供給部140の第4配管142に流入してエアフィルター170を通過した空気は、第2流路絞り部300を通過した上で、三方弁150及び第3配管141を介して第2配管139に流入するようになっている。
【0028】
上記の状態において、オペレータによって又は予め設定された自動分析プログラムによって分析開始の指示がなされると(ステップ1)、制御部181の制御の下に、オートサンプラ113によってプラズマトーチ112の試料管に液状の試料が導入され(ステップ2)、更に、制御部181の制御の下に、空気供給部140の三方弁150が上述の第1状態に切り替えられる(ステップ3)。これにより、空気供給部140の第4配管142に流入してエアフィルター170を通過した空気は、第1流路絞り部200を通過した上で、三方弁150及び第3配管141を介して第2配管139に流入するようになる。なお、ステップ2とステップ3は逆の順で行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0029】
ステップ2において試料管に導入された試料は、プラズマトーチ112においてイオン化され、当該イオンが分析部120に導入されて分析される。その後、該試料の分析が完了したと制御部181が判断すると(すなわちステップ4でYesになると)、制御部181の制御の下に、三方弁150が再び第2状態に切り替える(ステップ5)。なお、試料の分析が完了したか否かは、例えば、検出器127からの検出信号の大きさ等に基づいて判断したり、あるいはオートサンプラ113による試料の導入から予め定められた時間が経過したか否かに基づいて判断したりすることができる。
【0030】
その後、制御部181は予め設定された1つ以上の試料の全てについてイオン化部110への導入及び分析部120での分析が完了したか否かを判断する(ステップ6)。そして、まだ分析していない試料がある場合は、ステップ2に戻って上記ステップ3~6を繰り返し実行し、全ての試料の分析が完了したと判断した時点(すなわちステップ6でYesになった時点)で一連の処理を終了する。
【0031】
このように、本実施形態に係る質量分析装置では、分析実行時には三方弁150を第1状態に、待機時には第2状態に切り替えることによって、空気供給部140から第2配管139に供給される空気の流量を、分析実行時において相対的に小さく、待機時において相対的に大きくすることができる。また、第1流路絞り部200と第2流路絞り部300に同一構成の筐体210、310を使用し、キャピラリー230の有無によって流量の制限効果を異ならせる構成としたことにより、部品を共通化して製造コストを低減することができる。
【0032】
また、本実施形態に係る質量分析装置では、上記のように、第1流路絞り部200において、筐体210の内部にキャピラリー230を保持し、その筐体210の端部を前後の流路を構成する部材(三方弁150及び継手145)と接続する構成としたことにより、空気供給部140から第2流路139に供給される空気の流量を分析実行時に要求される大きさに絞る機能と、第1流路絞り部200を前後の流路に接続する機能とがそれぞれ異なる部品(すなわちキャピラリー230と筐体210)によって実現される。そのため、本実施形態に係る質量分析装置では、キャピラリー230を三方弁150又は継手145等の部材と直接接続する必要がなく、なお且つ、前記部材と直接接続可能に構成された筐体210に、キャピラリー230に要求されるようなごく小さな内径の深穴を加工する必要がない。これにより、第1流路絞り部200の製造が容易となり、製造コストの一層の低減を図ることができる。
【0033】
更に、本実施形態に係る質量分析装置では、一つの三方弁150を切り替えることで、第1流路絞り部200と第2流路絞り部300のいずれか一方を択一的に流量の制限に使用することができるため、流量の切り替えに関する制御を簡略化することができる。また、2つの流路絞り部200、300に対して一つのエアフィルター170を設ける構成としたことにより、部品点数を減らすことができると共に、消耗品であるエアフィルター170の交換頻度の管理等を容易にすることができる。
【0034】
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。例えば、本発明に係る質量分析装置は、上記のような誘導結合プラズマによる試料のイオン化を行うものに限らず、いかなる種類の質量分析装置であってもよい。また、本発明に係る流量切替機構は、質量分析装置に限らず、真空チャンバと、該真空チャンバを真空引きする第1ポンプと、該第1ポンプから送出される気体を排気する第二ポンプと、を備えた装置であれば、いかなる装置に適用してもよい。なお、本発明における第1ポンプ及び第2ポンプは、上記のようなターボ分子ポンプ及びロータリーポンプに限らず、いかなる種類のポンプであってもよい。
【0035】
また、本発明における密閉支持部材は、上記実施形態における密閉支持部材240のように、キャピラリー230を通路220内に支持する機能と、キャピラリー230の外周と通路220の内周との間をシールする機能とを兼ね備えたものに限らず、例えば、キャピラリー230が挿通される穴を備えた金属又は樹脂等から成るブロック、又はフェルール等であって、通路220中に配置される支持部材と、該支持部材の外周面と通路220の内周面との間をシールするOリング等のシール部材を組み合わせたものであってもよい。この場合、前記支持部材は、前記シール部材によって通路中に固定されるものとしてもよく、あるいは、筐体210の外周から径方向に挿通されるネジ等によって通路220中に固定されるものとしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、分岐管160を空気供給部140における空気の流れの上流側に、三方弁150を下流側に配置するものとしたが、三方弁150を上流側に、分岐管160を下流側に配置した構成としてもよい。このような質量分析装置の一構成例を図6に示す。なお、同図において、図1で示したものと同一又は対応する構成要素については下二桁が共通する符号を付して適宜説明を省略する。また、本構成例における第1流路絞り部500及び第2流路絞り部600は、それぞれ上記実施形態における第1流路絞り部200及び第2流路絞り部300と同一構成であるため詳しい説明を省略する。図6に示す構成において、三方弁450は、1つの入口端と2つの出口端(以下、第1出口端及び第2出口端とよぶ)を備えた電磁弁又は電動弁であって、入口端には第4配管442が接続され、第1出口端には第5配管443を介して第1流路絞り部500の入口端が接続され、第2出口端には第6配管444を介して第2流路絞り部600の入口端が接続されている。また、分岐管460は、3つの開口端を備えており、そのうちの一つの開口端(本発明における第1入口ポートに相当)には第1流路絞り部500の出口端が接続され、別の一つの開口端(本発明における第2入口ポートに相当)には第2流路絞り部600の出口端が接続され、残りの一つの開口端(本発明における出口ポートに相当)には第3配管441(本発明における空気供給配管に相当)が接続されている。三方弁450は、入口端と第1出口端とが接続された第1状態と、入口端と第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替えることができる構成となっており、分析実行時には三方弁450を第1状態に、待機時には第2状態に切り替えることによって、空気供給部440から第2配管439に供給される空気の流量を、分析実行時において相対的に小さく、待機時において相対的に大きくすることができる。
【0037】
[態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0038】
(第1項)本発明の一態様に係る質量分析装置は、
真空チャンバと、
吸気口と排気口を有し、前記吸気口が前記真空チャンバに接続された第1ポンプと、
吸気口と排気口を有し、前記排気口が大気開放された第2ポンプと、
前記第1ポンプの前記排気口と前記第2ポンプの前記吸気口とを繋ぐ接続配管と、
一端が前記接続配管の中途に接続され、該接続配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から前記接続配管に導入される空気の流量を切り替える流量切替機構と、
制御部と、
を有し、
前記流量切替機構が、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
前記空気供給配管の他端に接続された出口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口端と、前記第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端とを有し、前記出口端と前記第1入口端とが接続された第1状態と、前記出口端と前記第2入口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
を有するものであり、
前記制御部が、質量分析の実行時には、前記三方弁が前記第1状態となり、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが稼働中であってなお且つ質量分析が行われていない待機時には、前記三方弁が前記第2状態となるよう、前記三方弁を制御するものである。
【0039】
(第2項)本発明の別の態様に係る質量分析装置は、
真空チャンバと、
吸気口と排気口を有し、前記吸気口が前記真空チャンバに接続された第1ポンプと、
吸気口と排気口を有し、前記排気口が大気開放された第2ポンプと、
前記第1ポンプの前記排気口と前記第2ポンプの前記吸気口とを繋ぐ接続配管と、
一端が前記接続配管の中途に接続され、該接続配管に空気を供給する空気供給配管と、
前記空気供給配管から前記接続配管に導入される空気の流量を切り替える流量切替機構と、
制御部と、
を有し、
前記流量切替機構が、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
入口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の前記一端に接続された第1出口端と、前記第2流路絞り部の通路の一端に接続された第2出口端とを有し、前記入口端と前記第1出口端とが接続された第1状態と、前記入口端と前記第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
前記空気供給配管の他端に接続された出口ポートと、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口ポートと、前記第2流路絞り部の前記通路の他端に接続された第2入口ポートとを有する分岐管と、
を有するものであり、
前記制御部が、質量分析の実行時には、前記三方弁が前記第1状態となり、前記第1ポンプ及び前記第2ポンプが稼働中であってなお且つ質量分析が行われていない待機時には、前記三方弁が前記第2状態となるよう、前記三方弁を制御するものである。
【0040】
第1項又は第2項に係る質量分析装置によれば、空気供給配管を経て接続配管に供給される空気の流量を、質量分析の実行時において相対的に小さく、待機時において相対的に大きくすることができる。また、第1流路絞り部と第2流路絞り部に同一構成の筐体を使用し、キャピラリーの有無によって流量の制限効果を異ならせる構成としたことにより、部品を共通化して製造コストを低減することができる。更に、一つの三方弁の切り替えによって、第1流路絞り部と第2流路絞り部のいずれか一方を択一的に流量の制限に使用することができるため、流量の切り替えに関する制御を簡略化することができる。
【0041】
(第3項)第3項に係る質量分析装置は、第1項又は第2項に係る質量分析装置において、
前記密閉支持部材が、前記キャピラリーが挿通される貫通孔を備えたゴム弾性を有する素材から成り、前記通路に圧入されるものである。
【0042】
第3項に係る質量分析装置によれば、密閉支持部材の構造を簡素化して製造コストを一層低減することができる。
【0043】
(第4項)本発明の一態様に係る流量切替機構は、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
出口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口端と、前記第2流路絞り部の通路の他端に接続された第2入口端とを有し、前記出口端と前記第1入口端とが接続された第1状態と、前記出口端と前記第2入口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
を有するものである。
【0044】
(第5項)本発明の別の態様に係る流量切替機構は、
内部を貫通する通路を有し、該通路がその一端から離間した位置に、該一端における前記通路の断面積よりも断面積の小さい狭隘部を有する第1筐体と、前記狭隘部の断面積よりも断面積の小さい内部通路を有するキャピラリーと、前記通路内で前記キャピラリーを支持すると共に、前記キャピラリーの外周面と前記通路の内周面との間をシールする密閉支持部材と、を備えた第1流路絞り部と、
前記第1筐体と同一形状の第2筐体を有し、キャピラリー及び密閉支持部材を有しない第2流路絞り部と、
入口端と、前記第1流路絞り部の前記通路の前記一端に接続された第1出口端と、前記第2流路絞り部の通路の一端に接続された第2出口端とを有し、前記入口端と前記第1出口端とが接続された第1状態と、前記入口端と前記第2出口端とが接続された第2状態とを択一的に切り替え可能に構成された三方弁と、
出口ポートと、前記第1流路絞り部の前記通路の他端に接続された第1入口ポートと、前記第2流路絞り部の前記通路の他端に接続された第2入口ポートとを有する分岐管と、
を有するものである。
【0045】
第4項又は第5項に係る流量切替機構によれば、一つの三方弁の切り替えによって、第1流路絞り部と第2流路絞り部のいずれか一方を択一的に流量の制限に使用することができるため、流量の切り替えに関する制御を簡略化することができる。また、第1流路絞り部と第2流路絞り部に同一構成の筐体を使用し、キャピラリーの有無によって流量の制限効果を異ならせる構成としたことにより、部品を共通化して製造コストを低減することができる。
【0046】
(第6項)第6項に係る流量切替機構は、第4項又は第5項に係る流量切替機構において、
前記密閉支持部材が、前記キャピラリーが挿通される貫通孔を備えたゴム弾性を有する素材から成り、前記通路に圧入されるものである。
【0047】
第6項に係る流量切替機構によれば、密閉支持部材の構造を簡素化して製造コストを一層低減することができる。
【符号の説明】
【0048】
110…イオン化部
120…分析部
121…第1真空室
122…第2真空室
123…第3真空室
130…排気部
131…ターボ分子ポンプ
132…ロータリーポンプ
134…第1配管
139…第2配管
140…空気供給部
141…第3配管
150…三方弁
160…分岐管
170…エアフィルター
200…第1流路絞り部
210…筐体
220…通路
227…小径部
230…キャピラリー
240…密閉支持部材
300…第2流路絞り部
310…筐体
320…通路
327…小径部
181…制御部
182…入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7