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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057335
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】車両用バックドアの補強構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240417BHJP
   B60J 5/10 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
B60J5/00 P
B60J5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163998
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】赤松 秀太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
(57)【要約】
【課題】 車両用バックドアを構成する部品の素材選択自由度を高く維持しながら、車両用バックドアに対する複数の設計要求を満たす。
【解決手段】 バックドア1の屈曲部4あるいは側辺部7において、インナパネル20および補強材30が、ハット形構造体50を構成する。インナパネル20が、底壁部55を構成し、補強材30が、一対のフランジ部51,52の少なくとも一方を構成する。一対の縦壁部53,54のうち、補強材30により構成されたフランジ部31,32をインナパネル20により構成された底壁部25と接続しているものに関し、フランジ部31,32から連続する補強材縦壁部33,34と、底壁部25から連続するパネル縦壁部23,24とが、車幅方向に互いに重ねられて接合される。パネル縦壁部23,24は、フランジ部31,32よりも厚さ方向の内側で上下方向に延びる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に形成された開口を開閉する車両用バックドアの補強構造であって、
前記バックドアの外面を構成するアウタパネルと、
前記バックドアの厚さ方向に前記アウタパネルに重ねられ、前記バックドアの内面を構成するインナパネルと、
前記厚さ方向において前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に介在する補強材と、を備え、
前記バックドアは、窓材で覆われる貫通孔の車幅方向外側で上下方向に延びる一対の側辺部を有し、
前記側辺部において、前記アウタパネルは、前記バックドアの外周縁を成す外端部および前記貫通孔を画定する内端部を有し、前記インナパネルおよび前記補強材は、前記外端部および前記内端部それぞれと接合される一対のフランジ部、前記一対のフランジ部それぞれから前記厚さ方向の内側へ延びる一対の縦壁部、および前記一対の縦壁部同士を前記車幅方向に繋ぐ底壁部を有するハット形構造体を構成し、
前記底壁部が、前記インナパネルにより構成され、前記一対のフランジ部の少なくとも一方が、前記補強材により構成され、
前記一対の縦壁部のうち、前記補強材により構成された前記フランジ部を前記底壁部と接続する分割縦壁部においては、前記フランジ部から連続する補強材縦壁部と、前記底壁部から連続するパネル縦壁部とが、前記車幅方向に互いに重ねられて接合され、前記パネル縦壁部が前記フランジ部よりも前記厚さ方向の内側で上下方向に延びる、
車両用バックドアの補強構造。
【請求項2】
前記バックドアは、側面視でV字状に湾曲された屈曲部を有し、前記屈曲部は、前記側辺部の下部から前記側辺部よりも下方の部位にわたる範囲に設けられ、
前記ハット形構造体は、前記屈曲部に設けられる、
請求項1に記載の車両用バックドアの補強構造。
【請求項3】
前記一対のフランジ部の両方が、前記補強材により構成され、前記一対の縦壁部の両方が、前記分割縦壁部である、
請求項1に記載の車両用バックドアの補強構造。
【請求項4】
前記補強材は、前記厚さ方向において前記アウタパネルと前記底壁部との間で、前記一対の補強材縦壁部を前記車幅方向に接続する橋部を有する、
請求項3に記載の車両用バックドアの補強構造。
【請求項5】
前記橋部に、前記ハット形構造体内で上下方向に延びるビード部が設けられる、
請求項4に記載の車両用バックドアの補強構造。
【請求項6】
前記補強材が、前記一対のフランジ部のうち前記外端部と接合される外フランジ部を有する第1補強材と、前記一対のフランジ部のうち前記内端部と接続される内フランジ部を有する第2補強材とを含み、
前記第1補強材および前記第2補強材が、互いに重ね合わされて接合される、
請求項3に記載の車両用バックドアの補強構造。
【請求項7】
前記インナパネルは、前記側辺部を除く前記バックドアの外周縁部において、前記アウタパネルのヘミング曲げにより前記アウタパネルと接合され、
前記一対のフランジ部のうち外フランジ部は、前記アウタパネルのヘミング曲げにより前記アウタパネルの前記外端部と接合され、
前記外フランジ部が前記補強材により構成される場合において、前記外フランジ部は、前記インナパネルと同等の板厚を有する、
請求項1に記載の車両用バックドアの補強構造。
【請求項8】
前記補強材縦壁部は、前記厚さ方向の内側に向けて開口するスリットを形成し、前記パネル縦壁部は、前記スリット内に受容される、
請求項1に記載の車両用バックドアの補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バックドアの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用バックドアは、主要な構成部品として、バックドアの外面を構成するアウタパネルと、バックドアの内面を構成するインナパネルとを備える。両パネルは、外周縁部においてバックドアの厚さ方向に互いに重ねられ、アウタパネルのヘミング曲げにより互いに組み付けられる。
【0003】
車両用バックドアは、その特徴的な部位の一例として、後方視界を確保するために窓材がはめ殺しされる貫通孔と、貫通孔の車幅方向両側で上下方向に延びる一対の側辺部とを有する。側辺部の車幅方向の外端部は、上記の外周縁部の一部である。側辺部の車幅方向の内端部は、貫通孔を画定する。
【0004】
側辺部においては、アウタパネルが、外端部のみならず内端部でもインナパネルと厚さ方向に接合される。また、側辺部は、広い後方視界が得られるように車幅方向に細くありつつ、高い強度を有することを要求される。
【0005】
そこで、例えば特許文献1に開示されるように、側辺部において、インナパネルは、ハット形状の断面を有する。インナパネルの一対のフランジが、アウタパネルの外端部および内端部とそれぞれ接合される。これにより、バックドアの外面のデザイン性が保たれ、側辺部の断面係数が大きくなる。さらに、強度の向上のため、補強材が、両パネルとは別の部品として側辺部に局所的に追加される。
【0006】
一般に、2つのパネルの素材には鋼板が採用される。軽量化その他の設計要求を満たすために、鋼板以外の材料が選択肢に挙がる場合もある。インナパネルが金属板材から成形される場合には、側辺部に局所的に絞り加工が施され、これによりハット形状がインナパネルに付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-116388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
パネルの素材の選択肢の中には、鋼板よりも軽い一方で鋼板よりも成形性に劣るものがある。当該材料に絞り加工を施した場合、鋼板にとって支障ない絞り量および縦壁角度で加工しても、割れやしわが発生する等してパネルの品質が損なわれるおそれがある。
【0009】
品質を維持すべく絞り量を浅くすると、側辺部の断面係数が小さくなる。必要とされる強度を得るためには、補強材の板厚あるいは個数の増加を要する。軽い素材を選択していても、その効果が相殺される。絞り量も品質も維持すべく縦壁角度を小さくすると、側辺部が車幅方向に太くなる。その分、貫通孔が車幅方向に狭められ、後方視界が狭くなる。
【0010】
そこで本発明は、車両用バックドアを構成する部品の素材選択自由度を高く維持しながら、例えば強度の確保、軽量化、あるいは後方視界の確保といったような、車両用バックドアに対する複数の設計要求を同時に満たすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態は、車両の後部に形成された開口を開閉する車両用バックドアの補強構造であって、前記バックドアの外面を構成するアウタパネルと、前記バックドアの厚さ方向に前記アウタパネルに重ねられ、前記バックドアの内面を構成するインナパネルと、前記厚さ方向において前記アウタパネルと前記インナパネルとの間に介在する補強材と、を備え、前記バックドアは、窓材で覆われる貫通孔の車幅方向外側で上下方向に延びる一対の側辺部を有し、前記側辺部において、前記アウタパネルは、前記バックドアの外周縁を成す外端部および前記貫通孔を画定する内端部を有し、前記インナパネルおよび前記補強材は、前記外端部および前記内端部それぞれと接合される一対のフランジ部、前記一対のフランジ部それぞれから前記厚さ方向の内側へ延びる一対の縦壁部、および前記一対の縦壁部同士を前記車幅方向に繋ぐ底壁部を有するハット形構造体を構成し、前記底壁部が、前記インナパネルにより構成され、前記一対のフランジ部の少なくとも一方が、前記補強材により構成され、前記一対の縦壁部のうち、前記補強材により構成された前記フランジ部を前記底壁部と接続する分割縦壁部において、前記フランジ部から連続する補強材縦壁部と、前記底壁部から連続するパネル縦壁部とが、前記車幅方向に互いに重ねられて接合され、前記パネル縦壁部が前記フランジ部よりも前記厚さ方向の内側で上下方向に延びる、車両用バックドアの補強構造を提供する。
【0012】
上記構成によれば、側辺部において、アウタパネルの外端部および内端部が、ハット形構造体の一対のフランジ部それぞれと接合される。ハット形構造体は、インナパネルおよび補強材により構成され、一対のフランジ部の両方もしくは片方が、補強材により構成される。
【0013】
ここで、一対の縦壁部のうち、補強材により構成されたフランジ部を底壁部と接続しているものを、「分割縦壁部」として定義する。分割縦壁部は、フランジ部から連続する補強材の補強材縦壁部と、底壁部から連続するインナパネルのパネル縦壁部とにより構成される。補強材縦壁部およびパネル縦壁部は、車幅方向に互いに重ねられて接合され、パネル縦壁部は、フランジ部よりも厚さ方向の内側で上下方向に延びる。分割縦壁部は、厚さ方向に分割された補強材とインナパネルとを接合することにより構成され、それにより高さ(厚さ方向の寸法)ひいては断面係数の維持もしくは向上を実現する。
【0014】
インナパネルは、一対のパネル縦壁部および底壁部を有する。インナパネルを金属板材で製造する場合、インナパネルは、絞り加工で成形され得る。インナパネルがハット形構造体の要素を全て有してアウタパネルと接合される従来の形態と対比すると、縦壁部全体としての高さが従来同様であっても、インナパネルのパネル縦壁部は低くなる。そのため、インナパネルの絞り量を小さくしながら、ハット形構造体全体としての縦壁部の高さを確保できる。このとき、絞り量が小さくなることから、縦壁角度が従来同様であっても、割れやしわの発生を回避しやすい。
【0015】
このように、仮に成形性に劣る材料がインナパネルの素材として選択されても、インナパネルの品質を損なうことなく、側辺部の断面係数および細さが維持もしくは向上する。よって、素材選択自由度を向上しつつ、強度の確保と視界の確保とを両立できる。車両用バックドアに要求される複数の設計要求を同時に満たしながら、例えば軽さのように、成形容易性以外の特性に重点をおいて素材を選択することが許容される。
【0016】
前記バックドアは、側面視でV字状に湾曲された屈曲部を有し、前記屈曲部は、前記側辺部の下部から前記側辺部よりも下方の部位にわたる範囲に設けられ、前記ハット形構造体は、前記屈曲部に設けられてもよい。これにより、屈曲部において高い強度を確保できる。
【0017】
前記一対のフランジ部の両方が、前記補強材により構成され、前記一対の縦壁部の両方が、前記分割縦壁部であってもよい。これにより、一対のパネル側壁部を両方とも低背化でき、側辺部におけるインナパネルの成形難度がより一層低下する。インナパネルの品質の維持、強度の確保、後方視界の確保、およびインナパネルの素材選択自由度の向上を同時に達成しやすくなる。
【0018】
前記補強材は、前記厚さ方向において前記アウタパネルと前記底壁部との間で、前記一対の補強材縦壁部を前記車幅方向に接続する橋部を有してもよい。これにより、側辺部の強度が向上する。
【0019】
前記橋部に、前記ハット形構造体内で上下方向に延びるビード部が設けられてもよい。これにより、補強材の強度が更に向上する。
【0020】
前記補強材が、前記一対のフランジ部のうち前記外端部と接合される外フランジ部を有する第1補強材と、前記一対のフランジ部のうち前記内端部と接続される内フランジ部を有する第2補強材とを含み、前記第1補強材および前記第2補強材が、互いに重ね合わされて接合されてもよい。これにより、補強材が一対のフランジ部の両方を構成する場合において、補強材が車幅方向において第1補強材と第2補強材とに分割されている。補強材を絞り加工で成形する必要がなくなり、補強材の成形難度が低下する。また、ハット形構造体を組み立てやすくなる。
【0021】
前記インナパネルは、前記側辺部を除く前記バックドアの外周縁部において、前記アウタパネルのヘミング曲げにより前記アウタパネルと接合され、前記一対のフランジ部のうち外フランジ部は、前記アウタパネルのヘミング曲げにより前記アウタパネルの前記外端部と接合され、前記外フランジ部が前記補強材により構成される場合において、前記外フランジ部は、前記インナパネルと同等の板厚を有してもよい。これにより、インナパネルと補強材の外フランジ部とが互いに同等の板厚を有するため、バックドアの外周縁部を全周にわたって段差なく成形できる。ヘミング曲げが施されるアウタパネルの品質が向上する。
【0022】
前記補強材縦壁部は、前記厚さ方向の内側に向けて開口するスリットを形成し、前記パネル縦壁部は、前記スリット内に受容されてもよい。これにより、補強材が一対のフランジ部の両方を構成する場合において、補強材が車幅方向において第1補強材と第2補強材とに分割される。補強材を絞り加工する必要がなくなるため、補強材を成形しやすくなる。また、ハット形構造体を組み立てやすくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、車両用バックドアを構成する部品の素材選択自由度を高く維持しながら、車両用バックドアに対する複数の設計要求を同時に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態に係るバックドアの側面図。
図2】第1実施形態に係るバックドアの後面図。
図3A】バックドアのうち補強構造が適用されていない部位におけるヘム加工部の断面図。
図3B】補強構造の外端部および外フランジの断面図。
図4】第1実施形態に係る補強構造の断面図。
図5】第2実施形態に係る補強構造の断面図。
図6】第3実施形態に係る補強構造の断面図。
図7】第4実施形態に係る補強構造の断面図。
図8】第5実施形態に係る補強構造の断面図。
図9】第6実施形態に係る補強構造の断面図。
図10】第7実施形態に係る補強構造の断面図。
図11】第8実施形態に係る補強構造の断面図。
図12】第9実施形態に係る補強構造の断面図。
図13】第10実施形態に係る補強構造の断面図。
図14】第11実施形態に係る補強構造の断面図。
図15】第1参考例の断面図。
図16】第2参考例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、同一のまたは対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、詳細な説明の重複を省略する。上下、前後、および左右の方向は、車両の運転席上の運転者から見る方向を基準とする。
【0026】
(第1実施形態)
図1を参照して、車両用のバックドア1は、車体の後端部に後向きに開放された開口を開放および閉鎖する。図1は、バックドア1が開口を閉鎖している閉鎖姿勢を示す。バックドア1は、上部2、下部3、および屈曲部4を有している。閉鎖姿勢において、上部2は、バックドア1全体の上端部から後傾しながら下方へ延びる。下部3は、バックドア1全体の下端部から上方へ延びる。屈曲部4は、互いに延在方向が異なる上部と下部3との間に介在し、側面視で後に凸のV字状に湾曲され、上部2と下部3とを繋ぐ。
【0027】
図2を参照して、バックドア1は、窓材(図示せず)で覆われるべき貫通孔5を有する。窓材は、ガラス等の可視光透過性を有する板材で成形され、貫通孔5にはめ殺しされる。運転者は、後写鏡(図示せず)および窓材を介し、運転席上で前を向いたまま車両の後方を視認できる。貫通孔5は、長方形状あるいは等脚台形状である。その4つの角部は、湾曲されていてもよい。バックドア1は、貫通孔5を取り囲む窓枠部6を有する。窓枠部6は、貫通孔5の車幅方向外側で上下方向に延びる一対の側辺部7を含む。運転者の後方視界の広さは、貫通孔5の車幅方向の大きさ、逆に言えば一対の側辺部7の細さに依存する。
【0028】
なお、バックドア1は、プレート取付部8および一対のランプ取付部9を更に有する。プレート取付部8は、貫通孔5の下方且つ車幅方向の中央部に設けられる。プレート取付部8には、自動車番号登録標(図示せず)が取り付けられる。一対のランプ取付部9は、上下方向において貫通孔5とプレート取付部8との間に設けられ、車幅方向に互いに離れている。一対のランプ取付部9にはそれぞれ、一対のリアコンビネーションランプ(図示せず)が取り付けられる。
【0029】
貫通孔5および側辺部7の大半が、バックドア1の上部2に形成される。貫通孔5の下部および側辺部7の下部は、屈曲部4に形成される。屈曲部4は、貫通孔5および一対の側辺部7よりも下方の部位を更に含む。プレート取付部8の上部、およびランプ取付部9は、屈曲部4に形成される。
【0030】
図1および図3を参照して、バックドア1は、主要な構成部品として、アウタパネル10およびインナパネル20を備える。アウタパネル10は、バックドア1の外面を構成する。インナパネル20は、バックドア1の内面を構成する。バックドア1の閉鎖姿勢において、外面は車外後方に向けられ、内面は車内前方に向けられる。
【0031】
アウタパネル10およびインナパネル20の素材は、特に限定されず、例えば、鋼板、アルミニウム板、あるいはアルミニウム合金板などから適宜選択される。本実施形態では、軽さおよび強度に優れたアルミニウム合金板が、素材として選択される。アウタパネル10およびインナパネル20は、互いに同種の金属板材から成形され、これにより後述する接合を容易化可能である。
【0032】
バックドア1の外周縁部は、全周にわたってヘム加工部1aを形成する。この点、アウタパネル10の外周縁部10aは、全周にわたってヘミング曲げされており、インナパネル20の外周縁部20aは、ヘミング曲げされたアウタパネル10の外周縁部10aに挟み込まれる。このようにしてヘム加工部1aが構成され、アウタパネル10とインナパネル20とがヘム加工部1aにて互いに組み付けられる。なお、バックドア1の厚さ方向において、アウタパネル10が配置される側を外側とし、インナパネル20が配置される側を内側とする。
【0033】
本実施形態に係る補強構造100は、上記のように構成されたバックドア1の車幅方向両端部に適用されており、概略的に上下方向に延びる。補強構造100は、少なくとも側辺部7に設けられ、更には側辺部7の下方の部位にも設けられている。すなわち、補強構造100は、屈曲部4に設けられている。
【0034】
図4を参照して、アウタパネル10およびインナパネル20は、補強構造100を構成している。補強構造100は、パネル10,20とは別の部品として、補強材30を更に備えている。補強材30は、バックドア1の厚さ方向において、アウタパネル10とインナパネル20との間に介在する。補強構造100は、アウタパネル10に接合されるハット形構造体50を備えている。ハット形構造体50は、インナパネル20単体により構成されるのではなく、インナパネル20および補強材30により構成されている。
【0035】
補強構造100の適用部位の一例としての側辺部7において、アウタパネル10は、車幅方向に互いに離れた外端部11および内端部12を有する。外端部11は、バックドア1の外周縁部の一部であり、ヘミング曲げされている。内端部12は、貫通孔5を画定している。
【0036】
ハット形構造体50は、一対のフランジ51,52、一対の縦壁部53,54、および底壁部55を有する。一対のフランジ51,52は、車幅方向に互いに離れ、アウタパネル10の外端部11および内端部12それぞれと接合される。2つのうち外側の外フランジ51は、ヘミング曲げされた外端部11によって挟持される。2つのうち内側の内フランジ52は、内端部12の内面に重ねられ、上下方向に間隔をあけて設定された複数の接合点において接合される。接合の手法は、特に限定されず、スポット溶接、ガスシールドアーク溶接、あるいは摩擦撹拌点接合が用いられる。
【0037】
一対の縦壁部53,54は、一対のフランジ51,52の車幅方向内端部から厚さ方向の内側へ延び、車幅方向において互いに対向する。外縦壁部53は、外フランジ51から連続し、内縦壁部54は、内フランジ52から連続する。
【0038】
底壁部55は、一対の縦壁部53,54同士を車幅方向に繋ぐ。底壁部55の表面は、バックドア1の内面の一部を構成するとともに、バックドア1が閉鎖姿勢にあるときに車体の開口の周縁部に設けられたウェザーストリップ(図示せず)を押し潰すシール面を構成する。車室の密閉性を得るため、底壁部55は、ウェザーストリップと密着するために十分に大きい車幅方向の寸法を有する。換言すれば、底壁部55ひいては側辺部7の車幅方向の寸法の縮小には限界がある。
【0039】
概略的に言えば、ハット形構造体50のうち厚さ方向の外側の部位は、補強材30で構成されている一方、ハット形構造体50のうち厚さ方向の内側の部位は、インナパネル20で構成されている。底壁部55は、インナパネル20によって構成される。一対のフランジ部51,52の少なくとも一方は、補強材30によって構成される。
【0040】
本実施形態では、一対のフランジ部51,52が、単体の部品内で一体化されている(一対のフランジ部51,52が別体の部品に分かれている場合については、第2~第4実施形態を参照)。本実施形態では、一対のフランジ部51,52の両方とも、補強材30により構成されている(片方のフランジ部のみ補強材により構成される場合については、第5および第6実施形態を参照)。
【0041】
補強構造100の適用部位の一例としての側辺部7において、インナパネル20は、底壁部25、および一対のパネル縦壁部23,24を有する。すなわち、インナパネル20は、U字状の断面を有する。補強材30は、一対の補強材フランジ部31,32、および一対の補強材縦壁部33,34を有する。底壁部25は、ハット形構造体50における底壁部55として機能する。一対の補強材フランジ部31,32は、ハット形構造体50における一対のフランジ部51,52として機能する。
【0042】
以下、一対の縦壁部53,54のうち、補強材30により構成されたフランジ部51,52(補強材フランジ部31,32)を底壁部55と接続しているものを「分割縦壁部」と称する。本実施形態では、一対の縦壁部53,54が両方とも、分割縦壁部に該当する。
【0043】
分割縦壁部としての外縦壁部53においては、補強材外フランジ部31から連続する補強材外縦壁部33と、底壁部25から連続するパネル外縦壁部23とが、車幅方向に互いに重ねられて接合される。外縦壁部23,33は、上下方向に間隔をあけて設定された複数の接合点それぞれにおいて、互いに接合される。接合の手法は、特に限定されず、スポット溶接、ガスシールドアーク溶接、あるいは摩擦撹拌点接合が用いられる。
【0044】
パネル外縦壁部23は、外フランジ部51(補強材外フランジ部31)よりも厚さ方向内側で上下方向に延びる。そのため、側辺部7では、側面視において、インナパネル20のパネル外縦壁部23のエッジが上下方向に延び、補強材30の補強材外縦壁部23の表面が、このエッジとアウタパネル10との間で露出される。
【0045】
分割縦壁部としての内縦壁部54においても上記同様である。パネル外縦壁部24と補強材内縦壁部34とが、車幅方向に互いに重ねられて接合される。パネル内縦壁部23が、内フランジ部52(補強材内フランジ部32)よりも厚さ方向の内側で上下方向に延びる。
【0046】
補強材30は、一対の補強材縦壁部33,34同士を車幅方向に接続する橋部36を有している。橋部36は、厚さ方向においてアウタパネル10と底壁部55(35)との間に配置される。
【0047】
本実施形態では、一対の補強材フランジ部31,32が、一対の補強材縦壁部33,34および橋部36を介し、継ぎ目なく連続して一体化される。すなわち、補強材30は、ハット形状の断面を有する。また、本実施形態では、橋部36は、アウタパネル10の表面からもインナパネル20の底壁部25の表面からも離隔されている。
【0048】
ここで、ヘム加工部1a(特に、アウタパネル10の外端部)から底壁部55の厚さ方向の内側の表面までの厚さ方向の寸法を「ハット形構造体50の深さD50」とする。また、断面視において、外縦壁部53の延在方向の車幅方向に対する傾斜角度を「縦壁角度θ53」とする。外縦壁部53の縦壁角度θ53が小さくなるように外縦壁部53の設計を変更することを「外縦壁部53を倒す」と称することがある。
【0049】
図15および図16は、ハット形構造体850,950がインナパネル820,920のみによって構成された参考例に係る補強構造800,900をそれぞれ示す。第1参考例では、補強材830が、アウタパネル810とインナパネル820との間に介在するものの、一対のフランジ部851,852のどちらも構成しておらず、分割縦壁部が存在しない。そのため、参考例におけるハット形構造体850の深さD850は、インナパネル820に施される絞り加工の絞り量と同義である。第2参考例においても、これと同様である。どちらの参考例においても、本実施形態と同様、インナパネル820,920の素材には、アルミニウム合金板が選択されているものとする。
【0050】
図15に示す第1参考例に係る補強構造800では、深さD850(インナパネル820の絞り量)が、本実施形態に係る深さD50と同等である。この場合、縦壁角度θ853を本実施形態に係る縦壁角度θ53と同等とすることが困難である。アルミニウム合金板の絞り加工は難度が高いため、インナパネル20に割れやしわが発生し、品質を維持できなくなるからである。外縦壁部853を本実施形態よりも倒す必要があるため、底壁部855の寸法の縮小が困難であることも相まって、アウタパネル810の外端部811から内端部812までの車幅方向の寸法W800が大きくなる。すなわち、側辺部807が車幅方向に太くなり、貫通孔805の車幅方向の寸法が小さくなる。これにより、運転者の後方視界が狭くなる。
【0051】
図16に示す第2参考例に係る補強構造900では、縦壁角度θ953が、本実施形態に係る縦壁角度θ53と同等である。そのため、アウタパネル910の外端部911から内端部912までの車幅方向の寸法W900が、本実施形態における同様の寸法W100と同等である。すなわち、側辺部907の細さひいては貫通孔905の寸法が維持される。しかし、深さD950(インナパネル920の絞り量)を本実施形態に係る深さD50と同等とすることが困難である。深さD950がより小さくなるため、強度が低下する。そのため、補強材930の板厚あるいは点数を増やさなければ、必要な強度が得られなくなり、素材の軽さを十分に生かせなくなる。
【0052】
これに対し、本実施形態では、アルミニウム合金板のように絞り加工の難度が高い素材が選択されたとしても、インナパネル20に必要とされる絞り量D20が小さくて済み、深さD50を大きくすることと縦壁角度θ53を大きくすることとを同時に実現できる。すなわち、断面係数を大きくすることと側辺部7の車幅方向の寸法W100を細くすることとを同時に実現できる。このように、素材の選択自由度を向上しつつ、必要な強度の確保、軽量化、および後方視界の確保のようにバックドア1に対する複数の設計要求を同時に満たすことができる。
【0053】
また、図3Bに示すように、補強材外フランジ部31の板厚t31は、インナパネル20の板厚t20と同等である。このため、アウタパネル10の外周縁部10aに施されるヘミング加工を、全周にわたって均等に行うことができる。よって、アウタパネル10の品質が向上する。
【0054】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。第1実施形態と同様にして、ハット形構造体50の一対のフランジ部51,52は両方とも、補強材30により構成される。
【0055】
本実施形態では、補強材30が、外フランジ部31を有する第1補強材30Aと、内フランジ部32を有する第2補強材30Bとを含む。第1補強材30Aおよび第2補強材30Bは、厚さ方向に互いに重ねられ、上下方向に間隔をあけて設定された複数の接合点それぞれにおいて互いに接合される。接合の手法は、特に限定されず、スポット溶接、ガスシールドアーク溶接、あるいは摩擦撹拌点接合が用いられる。
【0056】
第1補強材30Aは、外フランジ部31とともに、補強材外縦壁部33および第1橋部36Aを有する。第2補強材30Bは、内フランジ部32とともに、補強材内縦壁部34および第2橋部36Bを有する。第1橋部36Aおよび第2橋部36Bが、厚さ方向に互いに重ねられて接合される。
【0057】
第1補強材30Aおよび第2補強材30Bは、曲げ加工によっても成形され得る。そのため、補強材30の成形難度が低下し、ハット形構造体50をより深く構成することも容易となる。また、第1橋部36Aおよび第2橋部36Bは、上記実施形態に対して概ね2倍の板厚を有する橋部36を構成する。これにより、高い強度が得られる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第3実施形態について説明する。第2実施形態と同様にして、ハット形構造体50の一対のフランジ部51,52は両方とも、補強材30により構成されており、補強材30は、第1補強材30Aおよび第2補強材30Bを含んでいる。
【0059】
本実施形態では、第1補強材30Aが、外フランジ部31とともに、補強材外縦壁部33、橋部36、および第1補強材内縦壁部34Aを有する。第2補強材30Bが、内フランジ部32とともに、第2補強材内縦壁部34Bを有する。第1補強材内縦壁部34Aは、パネル内縦壁部24と車幅方向に重ねられて接合されるとともに、第2補強材内縦壁部34Bと車幅方向に重ねられて接合される。なお、これら2つの接合箇所は、厚さ方向に互いに離れている。この場合においても、第2実施形態と同様、補強材30の成形難度が低下する。
【0060】
第1補強材30Aは、橋部36に設けられたビード部37を更に有する。ビード部37は、橋部36の車幅方向の中央部から厚さ方向の外側に突出し、上下方向に延びている。これにより、重量の増加を抑えつつ、補強材30ひいては補強構造100の強度が向上する。
【0061】
(第4実施形態)
次に、図7を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第4実施形態について説明する。第2実施形態と同様にして、ハット形構造体50の一対のフランジ部51,52は両方とも、補強材30により構成されており、補強材30は、第1補強材30Aおよび第2補強材30Bを含んでいる。
【0062】
本実施形態では、第1補強材30Aが、外フランジ部31とともに、第1補強材外縦壁部33A、第1橋部36A、および第1補強材内縦壁部34Aを有する。第2補強材30Bが、内フランジ部32とともに、第2補強材内縦壁部34B、第2橋部36B、および第2補強材外縦壁部33Bを有する。第1橋部36Aは、厚さ方向において第2橋部36Bと底壁部25との間にあり、第1橋部36Aと第2橋部36Bとは車幅方向に互いに平行に延びている。
【0063】
第1補強材外縦壁部33Aは、パネル外縦壁部23と車幅方向に重ねられて接合されるとともに、第2補強材外縦壁部33Bと車幅方向に重ねられて接合される。第2補強材外縦壁部34Aは、パネル内縦壁部24と車幅方向に重ねられて接合されるとともに、第2補強材内縦壁部34Bと車幅方向に重ねられて接合される。外縦壁部53および内縦壁部54における接合は、第3実施形態と同様にして厚さ方向に離れた2か所で接合されてもよいし(図7に示す外縦壁部53を参照)、3枚重ねで接合されてもよいし(図7に示す内縦壁部54を参照)。
【0064】
本実施形態においても、第2実施形態と同様、補強材30の成形難度が低下する。また、2本の橋部36A,36Bがアウタパネル10とインナパネル20との間に介在するため、補強材30ひいては補強構造100の強度が向上する。
【0065】
(第5実施形態)
次に、図8を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第5実施形態について説明する。第1実施形態と同様に、補強材30は単体である。本実施形態では、ハット形構造体50の一対のフランジ部51,52のうち片方が補強材30により構成され、もう片方がインナパネル20により構成されている。
【0066】
具体的には、インナパネル20が、底壁部25、パネル外縦壁部23、パネル内縦壁部24、およびパネル内フランジ部22を有する。パネル内フランジ部22は、アウタパネル10の内端部に厚さ方向に重ねられ、アウタパネル10に接合される。ハット形構造体50の内縦壁部54は、これまでの実施形態のようにインナパネル20および補強材30により構成された分割縦壁部ではなく、インナパネル20により構成される。
【0067】
補強材30は、補強材外フランジ部31、補強材外縦壁部33、橋部36、および補強材内縦壁部34を有する。補強材外縦壁部33とパネル外縦壁部23とは、車幅方向に互いに重ねられて接合されており、ハット形構造体50の外縦壁部53は、分割縦壁部である。補強材内縦壁部34は、パネル内縦壁部24の車幅方向の内面に重ねられてパネル内縦壁部24に接合されており、これにより補強材30がアウタパネル10およびインナパネル20に安定的に固定される。
【0068】
インナパネル20および補強材30は、曲げ加工によっても成形され得る。インナパネル20および補強材30の成形難度が低下する。
【0069】
(第6実施形態)
次に、図9を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第6実施形態について説明する。第5実施形態と同様にして、ハット形構造体50の一対のフランジ部51,52のうち片方が補強材30により構成され、もう片方がインナパネル20により構成されている。
【0070】
具体的には、インナパネル20が、底壁部25、パネル外縦壁部23、パネル内縦壁部24、およびパネル外フランジ部21を有する。パネル外フランジ部21は、ヘミング曲げされたアウタパネル10の外端部11により挟み込まれる。ハット形構造体50の外縦壁部53は、これまでの実施形態のようにインナパネル20および補強材30により構成された分割縦壁部ではなく、インナパネル20により構成される。
【0071】
補強材30は、補強材内フランジ部32、補強材外縦壁部33、橋部36、および補強材内縦壁部34を有する。補強材内縦壁部34とパネル内縦壁部24とは、車幅方向に互いに重ねられて接合されており、ハット形構造体50の内縦壁部54は、分割縦壁部である。補強材外縦壁部33は、パネル外縦壁部23の車幅方向の内面に重ねられてパネル外縦壁部23に接合されており、これにより補強材30がアウタパネル10およびインナパネル20に安定的に固定される。
【0072】
本実施形態では、第5実施形態とは逆に、外フランジ部51がインナパネル20により構成され、内フランジ部52が補強材30により構成されている。本実施形態においても、第5実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0073】
(第7実施形態)
次に、図10を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第7実施形態について説明する。第1実施形態と同様にして、ハット形構造体50の外縦壁部53は、分割縦壁部である。
【0074】
本実施形態では、補強材30の板厚が、部位により異なる。補強材外フランジ部31の板厚t31は、第1実施形態と同様にして、インナパネル20の板厚t20と同等であり、ヘミング加工の安定性に寄与する。
【0075】
ここで、補強材外縦壁部33の上部33aは、厚さ方向の外側にあり補強材外フランジ部31と連続する。補強材外縦壁部33の下部33bは、厚さ方向の内側にあり橋部36と連続する。下部33bの板厚は、上部33aの板厚よりも薄い。上部33aおよび下部33bは、車幅方向の内側において段差なしに連続する共通内面を形成している。その一方、補強材外縦壁部33の外面には、上部33aおよび33bとの板厚差に基づいて段差が付いている。
【0076】
インナパネル20のパネル外縦壁部23は、下部33bの外面に面接触して補強材30に接合される。下部33bはインナパネル20と重ね合わされることで、強度が増すため、薄肉化が許容される。上部33aの板厚は、相対的に大きく、例えば、下部とインナパネルの板厚の和と同等である。このため、外縦壁部53のうち補強材30単独で構成される部位においても、十分な強度を確保できる。このため、他のバックドア1の取付部品(例えば、ダンパステー等)が取り付けられる場合であっても、当該取付部品を安定的に支持することができる。
【0077】
更に、橋部36が、下部33aよりも厚い板厚を有する。橋部36の板厚が相対的に大きいため、ハット形構造体50の強度を効率的に増加させることができる。
【0078】
詳細図示を省略するが、上記の構成は、内縦壁部54にも同様にして適用可能である。なお、板厚を部位により異ならせることは、押出成形によって比較的容易に実現可能である。補強材30は、ロール成形された板材をプレス加工することによって成形されてもよいが、押出材であってもよい。
【0079】
(第8実施形態)
次に、図11を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第8実施形態について説明する。第1実施形態と同様にして、ハット形構造体50の外縦壁部53は、分割縦壁部であり、補強材外縦壁部33の外面には段差が付いている。
【0080】
本実施形態では、補強構造100は、分割縦壁部においてプレート40を備える。プレート40は、補強材外縦壁部33の上部33aの外面に重ねられて補強材外縦壁部33に接合される。プレート40は、上下方向に延びるとともに、上部33aよりも厚さ方向内側へ突出されている。補強材外縦壁部33およびプレート40は、厚さ方向の内側に向けて開口するスリット38を形成する。スリット38は、補強材外縦壁部33の下部33bとプレート40とによって画定される。インナパネル20のパネル外縦壁部23は、スリット38内に受容される。
【0081】
これにより、ハット形構造体50の外部から見ると、その内部までの経路がラビリンス状になる。そのため、アウタパネル10が部分的に補強材30とヘム加工部1aを構成する構造を採用しながら、バックドア1の内部空間の密閉性が向上する。詳細図示を省略するが、上記の構成は、内縦壁部54にも同様にして適用可能である。
【0082】
(第9実施形態)
次に、図12を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第9実施形態について説明する。第8実施形態と同様にして、分割縦壁部にはスリット38が設けられ、インナパネル20がスリット38内に受容される。
【0083】
本実施形態では、補強材外縦壁部33が単独でスリット38を形成している。そのために、本実施形態においても、バックドア1の内部空間の密閉性が向上する。なお、詳細図示を省略するが、上記の構成は、内縦壁部54にも同様にして適用可能である。
【0084】
(第10実施形態)
次に、図13を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第10実施形態について説明する。第1実施形態と同様にして、インナパネル20が、一対のパネル縦壁部23,24および底壁部25を有する。
【0085】
本実施形態では、インナパネル20が、底壁部25から厚さ方向の外側に突出する凸部27を有する。凸部27を設けたことにより、インナパネル20の剛性が向上する。組立後には、側辺部7あるいは屈曲部4の強度向上に寄与し、また、組立前には、搬送中の変形を防止できる。
【0086】
(第11実施形態)
次に、図14を参照して、上記実施形態との相違を中心に、第11実施形態について説明する。第10実施形態と同様にして、インナパネル20が、底壁部25に設けられた凸部27を有する。本実施形態では、凸部27が厚さ方向の内側に突出している。本実施形態においても、第10実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0087】
(変形例)
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の趣旨の範囲内で適宜追加、変更、または削除可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 バックドア
1a ヘム加工部
2 上部
3 下部
4 屈曲部
5 貫通孔
6 窓枠部
7 側辺部
8 プレート取付部
9 ランプ取付部
10 アウタパネル
10a 外周縁部
11 (側辺部における)外端部
12 (側辺部における)内端部
20 インナパネル
20a 外周縁部
21 パネル外フランジ部
22 パネル内フランジ部
23 パネル外縦壁部
24 パネル内縦壁部
25 底壁部
27 ビード部
30 補強材
30A 第1補強材
30B 第2補強材
31 補強材外フランジ部
32 補強材内フランジ部
33 補強材外縦壁部
34 補強材内縦壁部
36 橋部
37 ビード部
38 スリット
40 プレート
50 ハット形構造体
51 外フランジ部
52 内フランジ部
53 外縦壁部
54 内縦壁部
55 底壁部
100 補強構造
D20 絞り量
D50 深さ
W100 幅
θ53 縦壁角度
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16