IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特開-計測方法及び計測装置 図1
  • 特開-計測方法及び計測装置 図2
  • 特開-計測方法及び計測装置 図3
  • 特開-計測方法及び計測装置 図4
  • 特開-計測方法及び計測装置 図5
  • 特開-計測方法及び計測装置 図6
  • 特開-計測方法及び計測装置 図7
  • 特開-計測方法及び計測装置 図8
  • 特開-計測方法及び計測装置 図9
  • 特開-計測方法及び計測装置 図10
  • 特開-計測方法及び計測装置 図11
  • 特開-計測方法及び計測装置 図12
  • 特開-計測方法及び計測装置 図13
  • 特開-計測方法及び計測装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057336
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】計測方法及び計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240417BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240417BHJP
   H10K 71/70 20230101ALI20240417BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240417BHJP
   G01B 15/04 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
G01N23/04
G09F9/00 338
G09F9/00 352
H10K71/70
H10K59/122
G01B15/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164001
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 暁
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和之
(72)【発明者】
【氏名】真喜志 康太
【テーマコード(参考)】
2F067
2G001
3K107
5G435
【Fターム(参考)】
2F067AA04
2F067AA27
2F067BB01
2F067BB04
2F067CC14
2F067CC15
2F067EE04
2F067HH04
2F067JJ03
2F067KK06
2F067NN02
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001HA13
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
3K107DD89
3K107GG56
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435KK05
5G435LL04
5G435LL07
5G435LL08
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】表示装置の信頼性の低下を抑制することが可能な計測方法及び計測装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る計測方法は、基材の第1面側に配置された下部と、下部の側面から突出した上部とを有する隔壁を形成することと、基材の第1面側または基材の第1面と対向する第2面側から電磁波を照射することによって生成された隔壁を含む第1画像を取得することと、取得された第1画像を解析することと、解析結果に基づいて、下部の側面から上部の端部が突出している突出量を計測することとを具備する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の第1面側に配置された下部と、前記下部の側面から突出した上部とを有する隔壁を形成することと、
前記基材の第1面側または前記基材の第1面と対向する第2面側から電磁波を照射することによって生成された前記隔壁を含む第1画像を取得することと、
前記取得された第1画像を解析することと、
前記解析結果に基づいて、前記下部の側面から前記上部の端部が突出している突出量を計測することと
を具備する計測方法。
【請求項2】
前記解析することは、前記第1画像を構成する複数の画素の輝度値に基づいて、前記下部の側面に対応する第1画素及び前記上部の端部に対応する第2画素を特定することを含み、
前記計測することは、前記特定された第1及び第2画素の間に配置されている画素数に基づいて前記突出量を計測することを含む
請求項1記載の計測方法。
【請求項3】
前記計測することは、1つの画素に対応する長さを示す変換情報に基づいて、前記画素数を前記突出量に変換することを含み、
前記変換情報は、前記電磁波を照射することによって生成されたサイズが既知であるサンプルを含む第2画像に基づいて予め用意されている
請求項2記載の計測方法。
【請求項4】
前記計測することは、予め用意されたデータセットを学習することによって生成された機械学習モデルに前記特定された第1及び第2画素の間に配置されている画素数を入力することによって当該機械学習モデルから出力される前記突出量を取得することを含み、
前記データセットは、前記電磁波を照射することによって生成された前記突出量が既知である隔壁を含む第3画像から特定される前記第1及び第2画素の間に配置されている画素数と、前記既知である突出量とを含む
請求項2記載の計測方法。
【請求項5】
前記第1画像は、前記基材及び前記隔壁を透過した前記電磁波の強度に基づいて生成され、
前記電磁波は、前記基材の第1及び第2面側の一方に配置された照射器から照射され、前記基材の第1及び第2面側の他方に配置された検出器によって検出される
請求項1記載の計測方法。
【請求項6】
前記電磁波は、X線である請求項5記載の計測方法。
【請求項7】
前記第1画像は、前記基材及び前記隔壁において反射した前記電磁波の強度に基づいて生成され、
前記電磁波は、前記基材の第1または第2面側に配置された照射器から照射され、
前記隔壁及び前記基材において反射した電磁波は、前記基材の第1及び第2面側のうち、前記照射器と同一の面側に配置された検出器によって検出される
請求項1記載の計測方法。
【請求項8】
下部と当該下部の側面から突出した上部とを有する隔壁が第1面側に形成された基材の第1面側または前記基材の第1面と対向する第2面側から電磁波を照射することによって生成された前記隔壁を含む第1画像を取得する取得部と、
前記取得された第1画像を解析する解析部と、
前記解析結果に基づいて、前記下部の側面から前記上部の端部が突出している突出量を計測する計測部と
を具備する計測装置。
【請求項9】
下部と当該下部の側面から突出した上部とを有する隔壁が第1面側に形成された基材の第1面側または前記基材の第1面と対向する第2面側から電磁波を照射する照射部と、
前記照射された電磁波を検出する検出部と、
前記検出された電磁波の強度に基づいて生成された前記隔壁を含む第1画像を取得する取得部と、
前記取得された第1画像を解析する解析部と、
前記解析結果に基づいて、前記下部の側面から前記上部の端部が突出している突出量を計測する計測部と
を具備する計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、計測方法及び計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。
【0003】
しかしながら、表示装置が適切に製造されない場合には、当該表示装置の信頼性が低下する可能性がある。したがって、表示装置を製造する過程において、当該表示装置の信頼性の低下を抑制する技術が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【特許文献8】特開2013-213733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、表示装置の信頼性の低下を抑制することが可能な計測方法及び計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る計測方法は、基材の第1面側に配置された下部と、前記下部の側面から突出した上部とを有する隔壁を形成することと、前記基材の第1面側または前記基材の第1面と対向する第2面側から電磁波を照射することによって生成された前記隔壁を含む第1画像を取得することと、前記取得された第1画像を解析することと、前記解析結果に基づいて、前記下部の側面から前記上部の端部が突出している突出量を計測することとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態における表示装置の構成例を示す図である。
図2図2は、副画素のレイアウトの一例を示す図である。
図3図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図4図4は、隔壁の概略的な断面図である。
図5図5は、隔壁を利用して形成される表示素子について説明するための概略的な断面図である。
図6図6は、隔壁を利用して形成される表示素子について説明するための概略的な断面図である。
図7図7は、隔壁を利用して形成される表示素子について説明するための概略的な断面図である。
図8図8は、隔壁の突出量の計測について説明するための図である。
図9図9は、X線の透過率について説明するための図である。
図10図10は、隔壁の突出量の計測について説明するための図である。
図11図11は、計測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図12図12は、計測装置の機能構成の一例を示す図である。
図13図13は、計測装置の処理手順の一例について説明するための図である。
図14図14は、X線画像の一部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の趣旨を保っての適宜変更について容易に相当し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより正確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を記載する。X軸に沿った方向を方向Xと称し、Y軸に沿った方向を方向Yと称し、Z軸に沿った方向を方向Zと称する。また、方向Zと平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0010】
本実施形態における表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末等に搭載され得る。
【0011】
図1は、本実施形態における表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基材10の上に、画像を表示する表示領域DAと、当該表示領域DAの周辺の非表示領域NDAとを有している。基材10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0012】
本実施形態においては、平面視における基材10の形状が長方形である。ただし、基材10の平面視における形状は長方形に限らず、正方形、円形または楕円形等の他の形状であってもよい。
【0013】
表示領域DAは、方向X及び方向Yにマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、複数の副画素SPを含む。一例では、画素PXは、赤色の副画素SP1、緑色の副画素SP2及び青色の副画素SP3を含む。なお、画素PXは、副画素SP1、SP2及びSP3とともに白色等の他の色の副画素SPを含んでいてもよい。また、画素PXは、副画素SP1、SP2及びSP3のいずれかに代えて他の色の副画素SPを含んでいてもよい。
【0014】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子20とを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2及び駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0015】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極及びドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極及びキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極及びドレイン電極の一方は電源線PL及びキャパシタ4に接続され、他方は表示素子20に接続されている。
【0016】
なお、画素回路1の構成は、図1に示す例に限られない。画素回路1は、例えばより多くの薄膜トランジスタ及びキャパシタを備えていてもよい。
【0017】
表示素子20は、発光素子としての有機発光ダイオード(OLED)である。例えば、副画素SP1は赤色の波長域の光を放つ表示素子20を備え、副画素SP2は緑色の波長域の光を放つ表示素子20を備え、副画素SP3は青色の波長域の光を放つ表示素子20を備えている。
【0018】
なお、図1は主に表示装置DSPの製造に用いられる表示パネルを示しており、当該表示装置DSPは、当該表示パネルを駆動するドライバ(駆動ICチップ)等を備える回路基板が当該表示パネルに接続された構造を有する。
【0019】
図2は、副画素SP1、SP2及びSP3のレイアウトの一例を示す。図2に示す例においては、副画素SP1とSP2とが方向Yに並んでいる。更に、副画素SP1及びSP2は、それぞれ副画素SP3と方向Xに並んでいる。
【0020】
副画素SP1、SP2及びSP3が図2に示すようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP1及びSP2が方向Yに交互に配置された列と、複数の副画素SP3が方向Yに繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、方向Xに交互に並ぶ。
【0021】
なお、副画素SP1、SP2及びSP3のレイアウトは、図2に示す例に限られない。他の一例として、各画素PXにおける副画素SP1、SP2及びSP3は、方向Xに順に並んでいてもよい。
【0022】
表示領域DAには、リブ5及び隔壁6が配置されている。リブ5は、副画素SP1、SP2及びSP3においてそれぞれ開口AP1、AP2及びAP3を有している。図2に示す例においては、開口AP2が開口AP1よりも大きく、開口AP3が開口AP2よりも大きい。隔壁6は、隣り合う副画素SPの境界に配置され、平面視においてリブ5と重なっている。
【0023】
隔壁6は、方向Xに延びる複数の第1隔壁6xと、方向Yに延びる複数の第2隔壁6yとを有している。複数の第1隔壁6xは、方向Yに隣り合う開口AP1とAP2との間、及び、方向Yに隣り合う2つの開口AP3の間にそれぞれ配置されている。第2隔壁6yは、方向Xに隣り合う開口AP1とAP3との間、及び、方向Xに隣り合う開口AP2とAP3との間にそれぞれ配置されている。
【0024】
図2に示す例においては、第1隔壁6x及び第2隔壁6yが互いに接続されている。これにより、隔壁6は全体として開口AP1、AP2及びAP3を囲う格子状である。隔壁6は、リブ5と同様に副画素SP1、SP2及びSP3において開口を有するということもできる。
【0025】
すなわち、本実施形態において、リブ5及び隔壁6は、副画素SP1、SP2及びSP3を区画するように配置されている。
【0026】
副画素SP1は、開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1を備えている。副画素SP2は、開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2を備えている。副画素SP3は、開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3を備えている。図2に示す例においては、上電極UE1及び有機層OR1の外形が一致し、上電極UE2及び有機層OR2の外形が一致し、上電極UE3及び有機層OR3の外形が一致している。
【0027】
下電極LE1、上電極UE1及び有機層OR1は、副画素SP1の表示素子20を構成する。下電極LE2、上電極UE2及び有機層OR2は、副画素SP2の表示素子20を構成する。下電極LE3、上電極UE3及び有機層OR3は、副画素SP3の表示素子20を構成する。
【0028】
下電極LE1は、コンタクトホールCH1を通じて副画素SP1(の表示素子20)を駆動する画素回路1に接続されている。下電極LE2は、コンタクトホールCH2を通じて副画素SP2(の表示素子20)を駆動する画素回路1に接続されている。下電極LE3は、コンタクトホールCH3を通じて副画素SP3(の表示素子20)を駆動する画素回路1に接続されている。
【0029】
図2に示す例において、コンタクトホールCH1及びCH2は、方向Yに隣り合う開口AP1とAP2との間の第1隔壁6xと全体的に重なっている。コンタクトホールCH3は、方向Yに隣り合う2つの開口AP3の間の第1隔壁6xと全体的に重なっている。他の例として、コンタクトホールCH1、CH2及びCH3の少なくとも一部が第1隔壁6xと重なっていなくてもよい。
【0030】
図2に示す例において、下電極LE1及びLE2は、突部PR1及びPR2をそれぞれ有している。突部PR1は、下電極LE1の本体(開口AP1と重なる部分)からコンタクトホールCH1に向けて突出している。突部PR2は、下電極LE2の本体(開口AP2と重なる部分)からコンタクトホールCH2に向けて突出している。コンタクトホールCH1及びCH2は、突部PR1及びPR2とそれぞれ重なっている。
【0031】
図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。表示装置DSPにおいては、基材10の第1面10A(表示素子20等が配置される側の面)上にアンダーコート層と称される絶縁層11が配置されている。
【0032】
絶縁層11は、例えばシリコン酸化膜(SiO)、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン酸化膜(SiO)を有する三層積層構造を有する。なお、絶縁層11は、三層積層構造に限られず、三層よりも多い積層構造を有していてもよいし、単層構造または二層積層構造を有していてもよい。
【0033】
絶縁層11の上には、回路層12が配置されている。回路層12は、図1に示す画素回路1、走査線GL、信号線SL及び電源線PL等の副画素SP(SP1、SP2及びSP3)を駆動する各種回路及び配線を有する。回路層12は、絶縁層13により覆われている。
【0034】
絶縁層13は、回路層12により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。図3には示されていないが、上記したコンタクトホールCH1、CH2及びCH3は、絶縁層13に設けられている。
【0035】
下電極LE(LE1、LE2及びLE3)は、絶縁層13の上に配置されている。リブ5は、絶縁層13と下電極LEとの上に配置されている。下電極LEの端部(一部)は、リブ5により覆われている。
【0036】
隔壁6は、リブ5の上に配置された下部61と、当該下部61の上面を覆う上部62とを有する。上部62は、下部61よりも方向X及び方向Yに大きい幅を有している。これにより、隔壁6は、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出した形状を有する。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状ということもできる。
【0037】
有機層OR(OR1、OR2及びOR3)及び上電極UE(UE1、UE2及びUE3)は上記した下電極LE(LE1、LE2及びLE3)とともに表示素子20を構成するが、図3に示すように、有機層OR1は、互いに離間した第1有機層OR1a及び第2有機層OR1bを含む。上電極UE1は、互いに離間した第1上電極UE1a及び第2上電極UE1bを含む。第1有機層OR1aは、開口AP1を通じて下電極LE1に接触するとともに、リブ5の一部を覆っている。第2有機層OR1bは、上部62の上に位置している。第1上電極UE1aは、下電極LE1と対向するとともに、第1有機層OR1aを覆っている。更に、第1上電極UE1aは、下部61の側面に接触している。第2上電極UE1bは、隔壁6の上方に位置し、第2有機層OR1bを覆っている。
【0038】
また、図3に示すように、有機層OR2は、互いに離間した第1有機層OR2a及び第2有機層OR2bを含む。上電極UE2は、互いに離間した第1上電極UE2a及び第2上電極UE2bを含む。第1有機層OR2aは、開口AP2を通じて下電極LE2に接触するとともに、リブ5の一部を覆っている。第2有機層OR2bは、上部62の上に位置している。第1上電極UE2aは、下電極LE2と対向するとともに、第1有機層OR2aを覆っている。更に、第1上電極UE2aは、下部61の側面に接触している。第2上電極UE2bは、隔壁6の上方に位置し、第2有機層OR2bを覆っている。
【0039】
また、図3に示すように、有機層OR3は、互いに離間した第1有機層OR3a及び第2有機層OR3bを含む。上電極UE3は、互いに離間した第1上電極UE3a及び第2上電極UE3bを含む。第1有機層OR3aは、開口AP3を通じて下電極LE3に接触するとともに、リブ5の一部を覆っている。第2有機層OR3bは、上部62の上に位置している。第1上電極UE3aは、下電極LE3と対向するとともに、第1有機層OR3aを覆っている。更に、第1上電極UE3aは、下部61の側面に接触している。第2上電極UE3bは、隔壁6の上方に位置し、第2有機層OR3bを覆っている。
【0040】
図3に示す例において、副画素SP1、SP2及びSP3は、有機層OR1、OR2及びOR3の発光層が発する光の光学特性を調整するためのキャップ層CP1、CP2及びCP3を含む。
【0041】
キャップ層CP1は、互いに離間した第1キャップ層CP1a及び第2キャップ層CP1bを含む。第1キャップ層CP1aは、開口AP1に位置し、第1上電極UE1aの上に配置されている。第2キャップ層CP1bは、隔壁6の上方に位置し、第2上電極UE1bの上に配置されている。
【0042】
キャップ層CP2は、互いに離間した第1キャップ層CP2a及び第2キャップ層CP2bを含む。第1キャップ層CP2aは、開口AP2に位置し、第1上電極UE2aの上に配置されている。第2キャップ層CP2bは、隔壁6の上方に位置し、第2上電極UE2bの上に配置されている。
【0043】
キャップ層CP3は、互いに離間した第1キャップ層CP3a及び第2キャップ層CP3bを含む。第1キャップ層CP3aは、開口AP3に位置し、第1上電極UE3aの上に配置されている。第2キャップ層CP3bは、隔壁6の上方に位置し、第2上電極UE3bの上に配置されている。
【0044】
副画素SP1、SP2及びSP3には、封止層SE1、SE2及びSE3がそれぞれ配置されている。封止層SE1は、第1キャップ層CP1a、隔壁6及び第2キャップ層CP1bを含む副画素SP1の各部材を連続的に覆っている。封止層SE2は、第1キャップ層CP2a、隔壁6及び第2キャップ層CP2bを含む副画素SP2の各部材を連続的に覆っている。封止層SE3は、第1キャップ層CP3a、隔壁6及び第2キャップ層CP3bを含む副画素SP3の各部材を連続的に覆っている。
【0045】
図3に示す例においては、副画素SP1とSP3との間の隔壁6上の第2有機層OR1b、第2上電極UE1b、第2キャップ層CP1b及び封止層SE1と、当該隔壁6上の第2有機層OR3b、第2上電極UE3b、第2キャップ層CP3b及び封止層SE3とが離間している。また、副画素SP2とSP3との間の隔壁6上の第2有機層OR2b、第2上電極UE2b、第2キャップ層CP2b及び封止層SE2と、当該隔壁6上の第2有機層OR3b、第2上電極UE3b、第2キャップ層CP3b及び封止層SE3とが離間している。
【0046】
封止層SE1、SE2及びSE3は、樹脂層14により覆われている。樹脂層14は、封止層15により覆われている。更に、封止層15は、樹脂層16により覆われている。
【0047】
絶縁層13と樹脂層14及び16とは、有機材料で形成されている。リブ5と封止層15及びSE(SE1、SE2及びSE3)とは、例えばシリコン窒化物(SiNx)等の無機材料で形成されている。
【0048】
隔壁6が有する下部61は、導電性を有している。隔壁6が有する上部62も同様に導電性を有していてもよい。下電極LEは、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電性酸化物で形成されてもよいし、銀(Ag)等の金属材料と導電性酸化物との積層構造を有していてもよい。上電極UEは、例えばマグネシウムと銀との合金(MgAg)等の金属材料で形成されている。上電極UEは、ITO等の導電性酸化物で形成されてもよい。
【0049】
下電極LEの電位が上電極UEの電位よりも相対的に高い場合、下電極LEがアノードに相当し、上電極UEがカソードに相当する。また、上電極UEの電位が下電極LEの電位よりも相対的に高い場合、上電極UEがアノードに相当し、下電極LEがカソードに相当する。
【0050】
有機層ORは、一対の機能層と、これら機能層の間に配置された発光層とを含む。一例として、有機層ORは、正孔注入層、正孔輸入層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層及び電子注入層を順に積層した構造を有している。
【0051】
キャップ層CP(CP1、CP2及びCP3)は、例えば透明な複数の薄膜の多層体によって形成されている。多層体は、複数の薄膜として、無機材料によって形成された薄膜及び有機材料によって形成された薄膜を含んでもよい。また、これらの複数の薄膜は、互いに異なる屈折率を有している。多層体を構成する薄膜の材料は、上電極UEの材料とは異なり、また、封止層SEの材料とも異なる。なお、キャップ層CPは省略されてもよい。
【0052】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE(第1上電極UE1a、UE2a及びUE3a)にそれぞれ供給される。下電極LE(LE1、LE2及びLE3)には、副画素SP(SP1、SP2及びSP3)がそれぞれ有する画素回路1を通じて画素電圧が供給される。
【0053】
下電極LE1と上電極UE1との間に電位差が形成されると、第1有機層OR1aの発光層が赤色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2との間に電位差が形成されると、第1有機層OR2aの発光層が緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3との間に電位差が形成されると、第1有機層OR3aの発光層が青色の波長域の光を放つ。
【0054】
他の例として、有機層OR1、OR2及びOR3の発光層が同一色(例えば、白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層が放つ光を副画素SP1、SP2及びSP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層が放つ光により励起して副画素SP1、SP2及びSP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0055】
図4は、隔壁6の概略的な拡大断面図である。図4においては、リブ5、隔壁6、絶縁層13及び一対の下電極LE以外の要素を省略している。一対の下電極LEは、上記した下電極LE1、LE2及びLE3のいずれかに相当する。また、上記した第1隔壁6x及び第2隔壁6yは、図4に示す隔壁6と同様の構造を有している。
【0056】
図4に示す例において、隔壁6が有する下部61は、リブ5の上に配置されたバリア層611と、当該バリア層611の上に配置された金属層612とを含む。バリア層611は、金属層612とは異なる材料で形成されており、例えばモリブデン等の金属材料によって形成されている。金属層612は、バリア層611よりも厚く形成されている。金属層612は、単層構造であってもよいし、異なる金属材料の積層構造であってもよい。一例として、金属層612は、例えばアルミニウム(Al)により形成される。
【0057】
上部62は、下部61よりも薄い。図4に示す例において、上部62は、金属層612の上に配置された第1層621と、当該第1層621の上に配置された第2層622とを含む。一例としては、第1層621は例えばチタン(Ti)により形成され、第2層622は例えばITOにより形成される。ここでは、上部62が二層積層構造であるものとして説明したが、当該上部62は例えばチタンのような金属材料により形成される単層構造であってもよい。また、上部62は、金属材料以外であってもよく、シリコン酸化物(SiO)等の無機材料でもよい。更に、上部62は、上記したITO等の導電性酸化物、チタン等の金属材料、シリコン酸化物等の無機材料を適宜組み合わせて積層してもよいし、上記したいずれかの材料による単層でもよい。
【0058】
図4に示す例においては、下部61の幅が上部62に近づくにつれて小さくなる。すなわち、下部61の側面61a及び61bは、方向Zに対して傾斜している。なお、上部62は、側面61aから突出した端部62aと、側面61bから突出した端部62bとを有している。
【0059】
側面61a及び61bから端部62a及び62bが突出している量D(以下、隔壁6の突出量Dと表記)は、例えば2.0μm以下である。本実施形態における隔壁6の突出量Dは、側面61a及び61bの下端(バリア層611)と端部62a及び62bとの間の、隔壁6の方向Zと直交する幅方向(方向Xまたは方向Y)における長さ(距離)に相当する。隔壁6の突出量Dは、側面61a及び61bの上端と端部62a及び62bとの間の、隔壁6の方向Zと直交する幅方向における長さであってもよい。
【0060】
隔壁6の構造及び当該隔壁6の各部の材料は、例えば隔壁6を形成する手法等を考慮して、適宜、選定することができるものとする。
【0061】
ここで、本実施形態において、隔壁6は、平面視において副画素SPを区画するように形成されている。上記した有機層ORは例えば異方性あるいは指向性のある真空蒸着法によって形成されるが、隔壁6が配置された状態で当該有機層ORを形成するための有機材料を基材10全体に蒸着した場合、隔壁6は図3及び図4に示すような形状を有しているため、当該隔壁6の側面には有機層ORは殆ど形成されない。これによれば、隔壁6によって副画素SP毎に分断されるような有機層OR(表示素子20)を形成することができる。
【0062】
図5図7は、隔壁6を利用して形成される表示素子20について説明するための概略的な断面図である。この図5図7に示す副画素SPα、SPβ及びSPγは、副画素SP1、SP2及びSP3のいずれかに相当する。
【0063】
上記したように隔壁6が配置された状態で図5に示すように基材10全体に対して有機層OR、上電極UE、キャップ層CP及び封止層SEが順に蒸着によって形成される。有機層ORは、副画素SPαに対応する色の光を放つ発光層を含む。オーバーハング状の隔壁6によって、有機層ORは下電極LEを覆う第1有機層ORaと隔壁6上の第2有機層ORbに分断され、上電極UEは第1有機層ORaを覆う第1上電極UEaと第2有機層ORbを覆う第2上電極UEbとに分断され、キャップ層CPは第1上電極UEaを覆う第1キャップ層CPaと第2上電極UEbを覆う第2キャップ層CPbとに分断される。第1上電極UEaは、隔壁6の下部61に接触している。封止層SEは、第1キャップ層CPa、第2キャップ層CPb及び隔壁6を連続的に覆っている。
【0064】
次に、図6に示すように、封止層SEの上にレジストRが形成される。レジストRは、副画素SPαを覆っている。すなわち、レジストRは、副画素SPαに位置する第1有機層ORa、第1上電極UEa及び第1キャップ層CPaの直上に配置されている。レジストRは、副画素SPαと副画素SPβとの間の隔壁6上の第2有機層ORb、第2上電極UEb及び第2キャップ層CPbのうち、副画素SPα寄りの部分の直上にも位置している。すなわち、隔壁6の少なくとも一部は、レジストRから露出している。
【0065】
更に、レジストRをマスクとしたエッチングにより、図7に示すように有機層OR、上電極UE、キャップ層CP及び封止層SEのうちレジストRから露出した部分が除去される。これにより、副画素SPαには下電極LE、第1有機層ORa、第1上電極UEa及び第1キャップ層CPaを含む表示素子20が形成される。一方で、副画素SPβ及びSPγにおいては下電極LEが露出する。なお、上記したエッチングは、例えば封止層SEのドライエッチング、キャップ層CPのウェットエッチング及びドライエッチング、上電極UEのウェットエッチング、有機層ORのドライエッチングを含む。
【0066】
上記したように副画素SPαの表示素子20が形成されると、レジストRが除去され、副画素SPβ及びSPγの表示素子20が、副画素SPαと同様に、順に形成される。
【0067】
以上の副画素SPα、SPβ及びSPγについて例示したように副画素SP1、SP2及びSP3の表示素子20を形成し、更に樹脂層14、封止層15及び樹脂層16を形成することにより、図3に示した表示装置DSPの構造が実現される。
【0068】
ここで、上記したように隔壁6は下部61と当該下部61の側面から突出した上部62とを有するが、当該隔壁6の突出量Dが十分に大きくない場合には、当該有機層ORを適切に分断することができない可能性がある。また、隔壁6が有する下部61の側面が有機層ORで覆われてしまった場合には、下部61と上電極UEとの電気的な接続が阻害されてしまう。一方で、表示装置DSPにおいては隔壁6が有する下部61の側面に上電極UEが接触しているが、当該隔壁6の突出量Dが設計の値を超えるような場合には、当該下部61の側面に上電極UEが接触しない可能性がある。
【0069】
すなわち、上記した隔壁6の突出量Dが適切でない場合には信頼性が高い表示装置DSPを製造することができないため、当該表示装置DSPの製造工程において、当該突出量D(つまり、隔壁6が有する下部61の側面と上部62の端部との間の長さ)を計測することが有用である。
【0070】
ここで、上記した隔壁6の突出量Dの計測に例えば物体の拡大像を観察することが可能な光学顕微鏡を利用することを考える。
【0071】
この場合、例えば図8に示すように、隔壁6が形成された段階で、光学顕微鏡100を用いて方向Z(つまり、基材10の第1面A側)から隔壁6を観察することによって当該隔壁6の突出量Dを計測するものとすると、隔壁6が有する上部62は下部61よりも大きい幅を有している(つまり、隔壁6の形状はオーバーハング状である)ため、当該光学顕微鏡100では下部61の側面(つまり、下部61の方向Xまたは方向Yの端部)を観察することができない。すなわち、図8に示すように方向Zから隔壁6を光学顕微鏡100で観察した場合には、上部62の方向X及び方向Yの長さ(幅)を計測することはできるが、隔壁6の突出量Dを計測することはできない。
【0072】
ところで、電磁波の一種であるX線は、物体を透過し、かつ、当該透過率が当該物体の材質及び厚みによって異なることが知られている。なお、図9は、物体の材質及び厚みに応じて変化するX線の透過率を模式的に示している。図9に示すように、X線の透過率は、原子番号が小さい材質であるほど高く、原子番号が大きい材質であるほど低い。換言すれば、原子番号が小さい材質であるほどX線を透過し、原子番号が大きい材質であるほどX線を遮蔽する。また、X線の透過率は、物体が薄いほど高く、物体が厚いほど低い。
【0073】
本実施形態においては、このようなX線を利用して、隔壁6の突出量Dを計測するものとする。具体的には、図10に示すように基材10の第1面A側に配置されたX線照射器201からX線を照射し、隔壁6と基材10、当該基材1上に形成された絶縁層11、回路層12、絶縁層13及びリブ5(以下、便宜的に基材10等と表記)とを透過したX線(の強度)を基材10の第2面B側に配置されたX線検出器202が検出することによって生成されるX線画像(透過光画像)に基づいて、隔壁6の突出量Dを計測する。
【0074】
なお、例えば隔壁6及び回路層12の少なくとも一部は金属材料で形成されるが、本実施形態においては、当該金属材料を透過することができる程度の強度を有するX線がX線照射器201から照射されるものとする。
【0075】
また、本実施形態において、隔壁6の突出量Dは、上記したX線照射器201及びX線検出器202を備え、X線画像を生成するように構成された画像生成装置と通信可能に接続される計測装置によって計測されるものとする。なお、計測装置は、画像生成装置と一体として実現されていてもよい。
【0076】
以下、本実施形態に係る計測装置について説明する。図11は、計測装置のハードウェア構成の一例を示す。
【0077】
図11に示す計測装置300は、例えばパーソナルコンピュータ等によって実現され、CPU300a、不揮発性メモリ300b、メインメモリ300c及び通信装置300d等を備える。
【0078】
CPU300aは、計測装置300の動作を制御するためのプロセッサであり、不揮発性メモリ300bからメインメモリ300cにロードされる各種プログラムを実行する。通信装置300dは、計測装置300の外部装置(例えば、画像生成装置等)との通信を実行する。
【0079】
図12は、計測装置300の機能構成の一例を示す。図12に示すように、計測装置300は、上記したX線照射器201及びX線検出器202を備える画像生成装置200と通信可能に接続され、画像取得部301、画像解析部302及び計測部303を含む。
【0080】
なお、計測装置300に含まれる各部301~303の一部または全ては、例えば上記したCPU300a(つまり、計測装置300のコンピュータ)が所定のプログラムを実行すること(つまり、ソフトウェア)により実現される機能部であるが、例えばIC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組合せによって実現されてもよい。
【0081】
画像取得部301は、画像生成装置200によって生成された隔壁6を含むX線画像を当該画像生成装置200から取得する。画像解析部302は、画像取得部301によって取得されたX線画像を解析する。計測部303は、画像解析部302による解析結果に基づいて、上記した基材10上に形成されている隔壁6の突出量D(つまり、当該隔壁6が有する下部61の側面から上部62の端部が突出している突出量)を計測する。
【0082】
なお、上記したように計測装置300は画像生成装置200と一体として実現されてもよいが、この場合、計測装置300は、X線照射器201に相当するX線照射部及びX線検出器202に相当するX線検出部を含むように構成されていればよい。
【0083】
以下、図13のフローチャートを参照して、本実施形態に係る計測装置300の処理手順の一例について説明する。
【0084】
まず、基材10上に絶縁層11、回路層12、絶縁層13、下電極LE、リブ5及び隔壁6が形成されると、画像生成装置200に備えられるX線照射器201は、当該基材10の第1面10A側から隔壁6に向けてX線を照射する。このようにX線照射器201から照射されたX線は、隔壁6及び基材10等を透過し、X線検出器202によって検出される。なお、X線検出器202によって検出されるX線(透過X線)の強度は、当該X線が透過した物体の材質及び厚み等に応じて変化している。画像生成装置200は、このようなX線検出器202によって検出されたX線の強度に基づいて、X線画像(透過X線画像)を生成する。なお、画像生成装置200によって生成されるX線画像は、隔壁6を含むX-Y平面画像である。画像生成装置200は、上記したように画像生成装置200によって生成されたX線画像を計測装置300に出力する。
【0085】
計測装置300に含まれる画像取得部301は、画像生成装置200から出力されたX線画像を取得する(ステップS1)。
【0086】
ここで、上記したステップS1において取得されたX線画像は複数の画素から構成され、当該画素の各々は、X線の強度に基づく輝度値(当該X線画像を表示するための画素値)を保持している。このため、画像解析部302は、ステップS2においてX線画像を構成する複数の画素の各々が保持する輝度値(以下、単に画素の輝度値と表記)を取得する(ステップS2)。
【0087】
次に、画像解析部302は、ステップS2において取得された複数の画素の輝度値に基づいて、X線画像に含まれる下部61の側面に対応する画素(以下、第1画素と表記)及び上部62の端部に対応する画素(以下、第2画素と表記)を特定する(ステップS3)。なお、ステップS3の処理は、X線画像上の下部61の側面の座標値及び上部62の端部の座標値を特定する処理に相当する。
【0088】
ステップS3の処理が実行されると、画像解析部302は、ステップS1において取得されたX線画像を参照して、当該ステップS3において特定された第1及び第2画素の間に配置されている画素数を取得(カウント)する(ステップS4)。
【0089】
ここで、図14を参照して、上記したステップS4の処理について具体的に説明する。図14は、X線画像の一部を拡大した図である。
【0090】
図14に示す例において、X線画像は、第1~第3領域401~403を含む。第1領域401は、平面視において、基材10等、下部61及び上部62と重畳する領域に相当する。第2領域402は、平面視において、基材10等及び上部62と重畳し、下部61とは重畳しない領域に相当する。第3領域403は、平面視において、基材10等と重畳し、隔壁6(下部61及び上部62)とは重畳しない領域に相当する。
【0091】
図14に示す第1~第3領域401~403の各々に付されているハッチングは当該第1~第3領域401~403の各々を構成する画素の輝度値を表しており、当該輝度値(つまり、X線の透過率に基づく強度)は、X線が透過した物体の材質及び厚みによって異なる。
【0092】
具体的には、第1領域401を構成する画素の輝度値は、上部62、下部61及び基材10を順に透過したX線の強度に応じた値である。この場合、第1領域401を構成する画素の輝度値は、第2領域402及び第3領域403を構成する画素の輝度値よりも低い。
【0093】
また、第2領域402を構成する画素の輝度値は、上部62及び基材10を順に透過したX線の強度に応じた値である。この場合、第2領域402を構成する画素の輝度値は、第1領域401を構成する画素の輝度値よりも高く、第3領域403を構成する画素の輝度値よりも低い。
【0094】
第3領域403を構成する画素の輝度値は、基材10を透過したX線の強度に応じた値である。この場合、第3領域403を構成する画素の輝度値は、第1領域401及び第2領域402を構成する画素の輝度値よりも高い。
【0095】
このようなX線画像によれば、例えば第1領域401と第2領域402との境界に対応する画素404が第1画素に相当し、第2領域402と第3領域403との境界に対応する画素405が第2画素に相当する。この場合、画素404(第1画素)及び画素405(第2画素)の間に配置されている画素数が隔壁6の突出量Dに相当する。
【0096】
なお、第1領域401と第2領域402との境界(つまり、第1画素)及び第2領域402と第3領域403との境界(つまり、第2画素)は、例えば方向Xに隣接する画素との輝度値の変化量が予め定められた値以上であるか否かに基づいて特定することができる。また、第1領域401と第2領域402との境界上に位置する画素404(第1画素)が特定された場合、例えば第2領域402と第3領域403との境界上に位置する複数の画素のうちの当該画素404に最も近い画素405が第2画素として特定される。
【0097】
再び図13に戻ると、計測部303は、ステップS4において取得された画素数に基づいて、隔壁6の突出量Dを計測する(ステップS5)。
【0098】
ステップS5において、計測部303は、例えば予め用意されている変換情報に基づいて、ステップS4において取得された画素数を隔壁6の突出量D(下部61の側面と上部62の端部との間の長さ)に変換する処理を実行する。
【0099】
変換情報は、例えばサイズ(長さ)が既知であるサンプルを含むX線画像(X線を照射することによって生成されたサンプルを含む標準サンプル画像)に基づいて生成される。具体的には、標準サンプル画像に含まれるサンプルの一端(に対応する画素)から他端(に対応する画素)までの間に配置されている画素数をカウントし、当該サンプルの既知のサイズを当該画素数で除算することによって、1つの画素に対応する長さを示す変換情報が生成される。このような変換情報によれば、当該変換情報によって示される1つの画素に対応する長さにステップS4において取得された画素数を乗算することによって、当該画素数を隔壁6の突出量Dに変換することができる。なお、変換情報は、画素数を長さに変換することが可能な情報(つまり、画素数と長さとの対応関係が定義された情報)であればよい。
【0100】
ここでは上記した変換情報に基づいて隔壁6の突出量Dが計測されるものとして説明したが、当該隔壁6の突出量Dは、ニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムで生成された機械学習モデルを用いて計測(計算)されても構わない。このような機械学習モデルは、突出量Dが既知である隔壁6を含むX線画像から人手により、または自動的に特定された第1及び第2画素の間に配置されている画素数と当該X線画像に含まれる隔壁6の既知である突出量Dと(の組み合わせ)を含むデータセットを学習することによって、第1及び第2画素の間に配置されている画素数を入力することによって隔壁6の突出量Dを出力(予測)するように構成されていればよい。
【0101】
上記した図13に示す処理が実行されることによって計測された隔壁6の突出量Dが適切である場合には、上記した図5図7において説明したように各副画素SPの表示素子20を形成することができる。
【0102】
なお、上記した図13においては基材10上に形成された隔壁6の一部の突出量Dを計測する場合について説明したが、当該図13に示す処理は、隔壁6の複数の部分について突出量Dを計測するように複数回実行されてもよい。
【0103】
また、一般に、表示装置DSPの製造工程においては、複数の基材10を含むマザー基材上に複数の表示パネルを形成したマザー基板を製造し、当該マザー基板からカットされた表示パネルの各々を用いて表示装置DSPを製造することが行われているが、本実施形態に係る計測装置300は、当該マザー基材上に絶縁層11、回路層12、絶縁層13、下電極LE、リブ5及び隔壁6が形成されたマザー基板が製造された際に、当該マザー基板(マザー基材上に形成された隔壁6)にX線を照射することによって当該隔壁6の突出量Dを計測する場合に用いられる。
【0104】
上記したように本実施形態においては、基材10の第1面10A側に配置された下部61と、当該下部61の側面から突出した上部とを有する隔壁を形成し、当該基材10の第1面10A側からX線を照射することによって生成された隔壁6を含むX線画像(第1画像)を取得し、当該取得されたX線画像を解析し、当該解析結果に基づいて隔壁6の突出量D(下部61の側面から上部62の端部までの長さ)を計測する。
【0105】
本実施形態においては、上記した構成により、隔壁6の突出量Dを計測して(つまり、当該隔壁6の突出量Dが適切であるか否かを確認して)表示装置DSPを製造することができるため、当該表示装置DSPの信頼性の低下を抑制することが可能である。
【0106】
ここで、上記したように画像生成装置200によって生成されるX線画像はX-Y平面画像であり、当該X線画像には隔壁6有する下部61の側面及び上部62の端部が含まれる。このため、例えば下部61の側面及び上部62の端部を手動で指定することによって隔壁6の突出量Dを計測する(つまり、X線画像を参照して隔壁6の計測を人手により行う)ことが可能である。
【0107】
しかしながら、上記したようにX線画像を構成する複数の画素の各々の輝度値(画素値)は隔壁6及び基材10等を透過したX線の強度に基づくため、当該X線画像によっては当該X線画像に含まれる隔壁6が不鮮明(つまり、下部61の側面及び上部62の端部を視認することが困難)であり、上記した隔壁6の突出量Dを人手により計測する場合には手間がかかり、表示装置DSPの製造工程における隔壁6の突出量Dの効率的な計測を実現することができない。
【0108】
これに対して、本実施形態においては、X線画像を構成する複数の画素の輝度に基づいて下部61の側面(の基材10側の端部)に対応する第1画素及び上部62の端部に対応する第2画素を特定し、当該特定された第1及び第2画素の間に配置されている画素数に基づいて隔壁6の突出量Dを計測する。本実施形態においては、このような構成により、例えばX線を照射することによって生成された隔壁6を含むX線画像に基づいて自動的に隔壁6の突出量Dを計測することができるため、当該突出量Dの計測に係る手間を軽減することができる。
【0109】
なお、本実施形態においてはX線画像から特定される第1及び第2画素の間に配置されている画素数に基づいて隔壁6の突出量Dが計測される構成であればよいが、当該隔壁6の突出量Dは、例えば変換情報または機械学習モデルを用いて計測されることができる。この場合、変換情報は、例えばX線を照射することによって生成されたサイズが既知であるサンプルを含むX線画像(第2画像)に基づいて予め用意されていればよい。また、機械学習モデルは、X線を照射することによって生成された突出量Dが既知である隔壁6(サンプル)を含むX線画像(第3画像)から特定される第1及び第2画素の間に配置されている画素数と当該既知である突出量D(実測値)とを含むデータセットを学習することによって予め用意(生成)されていればよい。
【0110】
また、本実施形態においては図13に示す処理が実行されることによって隔壁6の突出量Dが計測されるものとして説明したが、例えば突出量Dが既知である隔壁6(サンプル)を含むX線画像と当該既知である突出量Dとを含むデータセットを学習した機械学習モデルが用意されていてもよい。このような構成によれば、計測装置300は、例えば画像生成装置200によって生成されたX線画像を機械学習モデルに入力することによって当該機械学習モデルから出力される隔壁6の突出量Dを取得する(つまり、X線画像から当該X線画像に含まれる隔壁6の突出量Dを予測する)ことが可能となる。
【0111】
なお、本実施形態においては、基材10の第1面10A側に配置されたX線照射器201からX線が照射され、隔壁6及び基材10等を透過したX線が基材10の第2面10B側に配置されたX線検出器202によって検出されることによって(つまり、基材10の第1面10A側から第2面10B側に向けて隔壁6及び基材10等を透過したX線の強度に基づいて)X線画像が生成されるものとして説明したが、当該X線画像は、基材10の第2面10B側に配置されたX線照射器201からX線が照射され、基材10等及び隔壁6を透過したX線が第1面10A側に配置されたX線検出器202によって検出されることによって生成されてもよい。換言すれば、本実施形態においてX線は、基材10の第1面10A側及び第2面10B側の一方に配置されたX線照射器201から照射され、当該基材10の第1面10A側及び第2面10B側の他方に配置されたX線検出器202によって検出されてもよい。
【0112】
更に、本実施形態においてはX線を照射することによって生成された隔壁6を含むX線画像に基づいて当該隔壁6の突出量Dを計測するものとして説明したが、当該X線は一例であり、本実施形態は、例えば物体の材質または厚み等によって透過率が異なる電磁波を照射することによって生成された隔壁6を含む画像(透過光画像)に基づいて当該隔壁6の突出量Dを計測する構成であればよい。なお、本実施形態において隔壁6に照射されるX線以外の電磁波(画像を生成するために用いられる電磁波)としては、例えば赤外線等が含まれる。
【0113】
また、本実施形態においては隔壁6及び基材10等を透過したX線(電磁波)の強度に基づいて生成された画像を用いて当該隔壁6の突出量Dが計測されるものとして説明したが、当該電磁波として例えば赤外線等が照射される場合には、当該隔壁6及び基材10において反射した電磁波(反射波)の強度に基づいて生成された画像を用いて隔壁6の突出量Dが計測される構成であってもよい。この場合、電磁波は、基材10の第1面10A側または第2面10B側に配置された照射器(電磁波照射器)から照射され、当該基材10の第1面10A及び第2面10Bのうちの当該照射器と同一面側に配置された検出器(電磁波検出器)によって検出されればよい。
【0114】
具体的には、電磁波照射器が基材10の第1面10A側から電磁波を照射する場合、電磁波検出器は、隔壁6の表面(上部62の方向Z側の面)において反射された電磁波(反射波)を検出することができる。また、電磁波(の一部)は例えば隔壁6が有する上部62を透過するため、電磁波検出器は、上部62を透過して下部61及び上部62の界面において反射された電磁波(反射波)を検出する。ここでは下部61及び上部62の界面において電磁波が反射される場合について説明したが、例えば下部61及びリブ5の界面等においても同様に電磁波が反射され、電磁波検出器は当該反射波を検出する。このように電磁波検出器によって検出された電磁波の反射波によれば例えば隔壁6を含むX-Y平面画像またはX-Z平面画像(断面画像)が生成され得るため、当該画像に基づいて隔壁6の突出量Dを計測することが可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施形態として説明した計測方法及び計測装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての計測方法及び計測装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0116】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0117】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0118】
DSP…表示装置、DA…表示領域、NDA…非表示領域、PX…画素、SP,SP1,SP2,SP3…副画素、LE,LE1,LE2,LE3…下電極、UE,UE1,UE2,UE3…上電極、OR,OR1,OR2,OR3…有機層、SE,SE1,SE2,SE3…封止層、1…画素回路、2…画素スイッチ、3…駆動トランジスタ、4…キャパシタ、5…リブ、6…隔壁、10…基材、11…絶縁層、12…回路層、13…絶縁層、14…樹脂層、15…封止層、16…樹脂層、20…表示素子、61…下部、62…上部、201…X線照射器、202…X線検出器、300…計測装置、300a…CPU、300b…不揮発性メモリ、300c…メインメモリ、300d…通信装置、301…画像取得部、302…画像解析部、303…計測部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14