(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057342
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】デマンド制御装置、水素製造システムおよびデマンド制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/46 20060101AFI20240417BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/38 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164013
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和人
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB08
5G066JA07
5G066JB10
5G066KA01
5G066KB01
5G066KC01
(57)【要約】
【課題】再生可能エネルギー電力を用いた水素製造プラントの契約電力からの超過量を抑制する。
【解決手段】実施形態によればデマンド制御装置100は、水素製造計画値、水素製造装置の電力負荷の実績値、授受電力の実績値および最大受電電力量を含む授受電力に関する条件を含む入力情報を受け入れる入力部と、これらを記憶する記憶部と、所定の電力量と授受電力の実績値を用いて第1制御指令演算値を出力する第1制御目標指令値演算部141と、水素製造計画値と水素製造量の実績値を用いて第2制御指令演算値を出力する第2制御目標指令値演算部142と、最大受電電力量の条件の遵守程度を規定する安全率を算出する安全率演算部145と、第1制御指令演算値、第2制御指令演算値および安全率に基づいて水素製造装置の電力負荷指令値を算出する指令値演算部146を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の電力系統に接続されて、再生可能エネルギー発電装置、水素製造計画値が与えられた水素製造装置、および前記電力系統との授受電力を測定する取引用電力計を備えた水素製造プラントの前記水素製造装置の電力負荷を制御するデマンド制御装置であって、
前記水素製造計画値と、前記水素製造装置の前記電力負荷の実績値と、前記取引用電力計による前記授受電力の実績値と、最大受電電力量を含む前記授受電力に関する条件とを含む入力情報を受け入れる入力部と、
前記入力部で受け入れた前記入力情報を記憶する記憶部と、
所定の電力量を目標値とし前記授受電力の実績値をフィードバック信号として制御演算により第1制御指令演算値を算出する第1制御目標指令値演算部と、
前記水素製造計画値を目標値とし前記水素製造装置による水素製造量の実績値をフィードバック信号として制御演算により第2制御指令演算値を算出する第2制御目標指令値演算部と、
前記最大受電電力量の条件の遵守程度を規定する安全率を算出する安全率演算部と、
前記第1制御指令演算値、前記第2制御指令演算値および前記安全率に基づいて、前記水素製造装置の電力負荷指令値を算出する指令値演算部と、
を具備することを特徴とするデマンド制御装置。
【請求項2】
前記安全率は、0より大きく1以下の範囲の値をもち、
前記指令値演算部は、前記安全率による前記第1制御指令演算値と前記第2制御指令演算値との内挿値である中間値とに基づいて前記電力負荷指令値を算出することを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項3】
前記指令値演算部は、前記の算出した値をさらに前記第2制御指令演算値と比較し、小さい側の値を前記電力負荷指令値として出力することを特徴とする請求項2に記載のデマンド制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記電力負荷指令値の上限値である電力負荷指令上限値を記憶し、
前記指令値演算部は、算出された前記電力負荷指令値が前記電力負荷指令上限値を超える場合は、算出された前記電力負荷指令値に代えて前記電力負荷指令上限値を前記電力負荷指令値として出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記電力負荷指令値の上限値である電力負荷指令上限値を記憶し、
前記指令値演算部は、前記電力負荷指令上限値に前記安全率を乗じた値と、前記第2制御指令演算値との小さい側の値を前記電力負荷指令値として出力する、
ことを特徴とする請求項2に記載のデマンド制御装置。
【請求項6】
前記第2制御目標指令値演算部は、前記水素製造計画値に対して不足する分をその後の制御目標値に加算する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項7】
前記入力部は、前記最大受電電力量からのマージン分の電力をさらなる入力として受け入れ、
前記第1制御目標指令値演算部は、前記マージン分の電力を用いて、前記第1制御指令演算値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項8】
前記入力部は、再生可能エネルギー発電装置によるPV発電量に関する予測値または前記予測値の信頼区間情報をさらなる入力として受け入れ、
前記安全率演算部は、前記予測値または前記信頼区間情報を用いて、前記安全率を演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項9】
前記水素製造プラントは、電力を消費する負荷設備をさらに備え、
前記記憶部は、前記負荷設備の消費電力を予測するための負荷設備モデルを記憶する負荷設備モデル記憶部をさらに有し、
前記デマンド制御装置は、
前記負荷設備モデルを用いて前記負荷設備の消費電力を予測する負荷設備消費電力予測部をさらに有し、
前記指令値演算部は、前記負荷設備の消費電力の予測値を用いて、前記水素製造装置への前記電力負荷指令値を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項10】
前記デマンド制御装置は、前記電力系統との電力授受条件の順守への影響の可能性が大きな前記負荷設備の起動、停止について、その影響を回避するように指示を出力する負荷設備起動停止計画確認部をさらに有することを特徴とする請求項9に記載のデマンド制御装置。
【請求項11】
前記水素製造量の実績値が、当該1日の終了予定時刻となっても前記水素製造計画値に達しない場合に、前記終了予定時刻の延長時間を算出る延長残り時間演算部をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項12】
前記水素製造プラントの所定の期間の運用コストを算出する運用コスト演算部と、
前記運用コストが最小となる、前記再生可能エネルギー発電装置の容量、前記最大受電電力量の条件の少なくとも1つの値を最適化する最適化演算部と、
をさらに具備ずることを特徴とする請求項1に記載のデマンド制御装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の水素製造プラントと、
請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載のデマンド制御装置と、
を備えることを特徴とする水素製造システム。
【請求項14】
外部の電力系統に接続されて、再生可能エネルギー発電装置、水素製造計画値が与えられた水素製造装置、および前記電力系統との授受電力を測定する取引用電力計を備えた水素製造プラントの前記水素製造装置の電力負荷を制御するデマンド制御方法であって、
入力部が、前記水素製造計画値と、前記水素製造装置の前記電力負荷の実績値と、前記取引用電力計による前記授受電力の実績値と、前記授受電力に関する条件としての最大受電電力量とを含む入力情報を受け入れ記憶部が記憶するステップと、
第1制御目標指令値演算部が、所定の電力量を目標値とし前記授受電力の実績値をフィードバック信号として制御演算により第1制御指令演算値を出力するステップと、
第2制御目標指令値演算部が、前記水素製造計画値を目標値とし前記水素製造装置による水素製造量の実績値をフィードバック信号として制御演算により第2制御指令演算値を出力するステップと、
安全率演算部が、前記最大受電電力量の条件の遵守程度を規定する安全率を算出するステップと、
指令値演算部が、前記第1制御指令演算値、前記第2制御指令演算値および前記安全率に基づいて、前記水素製造装置の電力負荷指令値を算出するステップと、
を有することを特徴とするデマンド制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、デマンド制御装置およびデマンド制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギー(以下、「再エネ」とよぶ場合がある)を活用した水素製造プラントにおいて、運用コストとして電気料金が大きな割合を占める。ここで、電気料金に関して、従量料金は電力系統から受電した電力量の分を支払い、基本料金は、たとえば、1年間における30分電力量の最大値(以下、契約電力とする)をもとに契約した料金を支払う。ここで、たとえば、水素需要の都合で水素製造量が少ない場合や、再エネの発電量が非常に多い場合は、1か月間ほとんど電力系統から受電しない場合も考えられるが、この場合でも基本料金として契約電力に相当する料金を支払う必要がある。このため、水素製造プラントの運用コストを低減するためには、なるべく小さな契約電力とすることが望ましい。ただし、1度でも30分電力量が契約電力を超過してしまうと、その分のペナルティの支払いや、翌月以降の契約電力も増加する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-96709号公報
【特許文献2】特許第7134043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再エネを活用した水素製造プラントでは、再エネの発電電力を有効利用しながら、需要分の水素を製造する必要がある。所定期間(例えば、1日)で製造する水素量の目標がある一方で、急激に再エネの発電電力が減少した場合は、30分電力量が契約電力を超過することが考えられる。したがって、再エネの発電電力を有効利用して水素を製造することを前提としつつ、再エネの発電電力の変動などを考慮しながら、できるだけ30分電力量が契約電力を超過しないように水素製造量を制御することが求められる。
【0005】
本発明の目的は、再生可能エネルギーによる発電電力を用いた水素製造プラントについて、契約電力からの超過量を抑制可能なデマンド制御装置およびデマンド制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係るデマンド制御装置は、外部の電力系統に接続されて、再生可能エネルギー発電装置、水素製造計画値が与えられた水素製造装置、および前記電力系統との授受電力を測定する取引用電力計を備えた水素製造プラントの前記水素製造装置の電力負荷を制御するデマンド制御装置であって、前記水素製造計画値と、前記水素製造装置の前記電力負荷の実績値と、前記取引用電力計による前記授受電力の実績値と、最大受電電力量を含む前記授受電力に関する条件とを含む入力情報を受け入れる入力部と、前記入力部で受け入れた前記入力情報を記憶する記憶部と、所定の電力量を目標値とし前記授受電力の実績値をフィードバック信号として制御演算により第1制御指令演算値を算出する第1制御目標指令値演算部と、前記水素製造計画値を目標値とし前記水素製造装置による水素製造量の実績値をフィードバック信号として制御演算により第2制御指令演算値を算出する第2制御目標指令値演算部と、前記最大受電電力量の条件の遵守程度を規定する安全率を算出する安全率演算部と、前記第1制御指令演算値、前記第2制御指令演算値および前記安全率に基づいて、前記水素製造装置の電力負荷指令値を算出する指令値演算部と、を具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る水素製造システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るデマンド制御装置の作用を示す制御ブロック図である。
【
図4】第1の実施形態の変形例に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係るデマンド制御方法の手順を示すフロー図である。
【
図6】第2の実施形態に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】第3の実施形態に係る水素製造システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】第3の実施形態に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図9】第4の実施形態に係る水素製造システムの構成を示すブロック図である。
【
図10】第4の実施形態に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】第5の実施形態に係る水素製造システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】第5の実施形態に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】第6の実施形態に係るデマンド制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図14】第6の実施形態に係るデマンド制御方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るデマンド制御装置、水素製造システムおよびデマンド制御方法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る水素製造システム40の構成を示すブロック図である。
【0010】
水素製造システム40は、水素製造プラント10、水素製造計画装置41およびデマンド制御装置100を備える。
【0011】
水素製造プラント10は、再生可能エネルギー発電装置11、水素製造装置21および所内母線31を有する。
【0012】
再生可能エネルギー発電装置11は、例えば太陽光発電や風力発電などによる発電装置である。再生可能エネルギー発電装置11で生成された電力は、所内母線31に供給される。本実施形態においては、再生可能エネルギー発電装置11は太陽光や風力などの環境条件にしたがって生成されたままで、パワーコンディショナー(図示しない)等により出力を抑制されることなく所内母線31に供給される場合を例にとって示している。
【0013】
水素製造装置21は、電力負荷として、所内母線31より電力を供給されて、水電解により水素を製造する。水素製造装置21は、デマンド制御装置100からの電力負荷指令値に基づいて水素製造を行う。すなわち、水素製造装置21は、それ自身の制御装置を有しており、その制御装置が受け入れた電力負荷指令値を水素製造量指令値に換算することにより、水素製造装置21はその水素製造量指令値に基づいて水素製造を行う。また、水素製造装置21は、水素製造による水素製造実績値を出力する。
【0014】
所内母線31は、外部の電力系統1と接続されており、外部の電力系統1との電力の授受が可能である。なお、電力系統1との授受電力を測定するために取引用電力計1aが設けられている。なお、
図1では、電力系統1と所内母線31との間に設けられる遮断器や変圧器等の図示を省略している。
【0015】
水素製造計画装置41は、水素製造プラント10の水素製造の予定を計画し、水素製造計画値を出力する。
【0016】
デマンド制御装置100は、水素製造計画装置41による水素製造計画値、取引用電力計1aによる授受電力の測定値、および水素製造装置21からの水素製造実績値を入力情報として受け入れて、水素製造プラント10の電力系統1からの受電電力の、契約電力からの超過量を抑制する。また、図示していないが、必要に応じて、再生エネルギー発電装置11の出力の実績値を入力情報として受け入れる。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係るデマンド制御装置100の構成を示すブロック図である。
【0018】
ここで、デマンド制御装置100の構成を説明する前に、時間に関して用いる指標について定義しておく。まず、電力系統1との電力の授受に関連する指標として、たとえば、1日、すなわち0時0分から24時0分までを複数に分割した分割単位時間の時間幅を分割単位時間幅Tと呼ぶものとする。たとえば1日を48に分割した場合は、その分割単位時間幅Tである30分を1コマと呼ぶ。また、1日における分割単位時間の総数をM(M=1日/T)、1日におけるある分割単位時間の順番をm(m=1~M)と表記する。
【0019】
また、演算に関する指標として、分割単位時間幅Tの中で、各演算時刻tの間隔(演算ステップの間隔)を演算ステップ幅と呼びΔtで表す。演算ステップ幅Δtはたとえば1分であり、この場合、分割単位時間幅Tが30分であれば、分割単位時間幅Tにおいて30ステップの演算がなされることになる。また、分割単位時間Tにおける演算ステップの総数をN(N=T/Δt)、分割単位時間Tにおけるある演算ステップの順番をn(n=1~N)、時刻を時刻tと表記する。たとえば、分割単位時間幅Tが30分、演算ステップ幅Δtが1分であれば、Nは30、nは1ないし30となる。また、デマンド制御装置100が連続して制御を実行する期間を、制御期間と呼ぶものとする。制御期間はたとえば、1年である。
【0020】
デマンド制御装置100は、入力部110、記憶部120、演算部140および出力部160を具備する。
【0021】
入力部110は、入力情報として、水素製造計画装置41による水素製造計画値、取引用電力計1aによる授受電力の測定値および水素製造装置21からの水素製造実績値を受け入れる。また、入力部110は、授受電力の条件として最大受電電力量を遵守すべき時間帯およびそれぞれの時間帯において遵守すべき最大受電電力量Gmax、再生可能エネルギー発電装置11の容量、演算部140での制御演算のためPID定数および制御期間などの制御パラメータを入力情報として受け入れる。なお、入力部110は、以上の情報を含んで、さらに他の情報を入力情報として受け入れもよい。なお、最大受電電力量は、たとえば、分割単位時間幅Tにわたる受電電力の合計値(積分値)として与えられる。
【0022】
記憶部120は、実績値記憶部121、最大受電電力量記憶部122、制御パラメータ記憶部124、水素製造計画記憶部125、および演算結果記憶部126を有する。
【0023】
実績値記憶部121は、入力部110が受け入れた取引用電力計1aによる授受電力の測定値および水素製造装置21からの水素製造実績値などの実績値に関する情報を収納、記憶する。
【0024】
最大受電電力量記憶部122は、入力部110が受け入れた授受電力に関する条件としての最大受電電力量および遵守すべき時間帯を収納、記憶する。ここで、分割単位時間幅に亘る最大受電電力量を、以下では、最大受電電力量Gmaxと表す。
【0025】
制御パラメータ記憶部124は、入力部110が受け入れた制御演算のための制御パラメータを収納、記憶する。
【0026】
水素製造計画記憶部125は、入力部110が受け入れた水素製造計画装置41による水素製造計画値を収納、記憶する。
【0027】
演算結果記憶部126は、演算部140の各要素がそれぞれ演算した結果を収納、記憶する。
【0028】
演算部140は、第1制御目標指令値演算部141、第2制御目標指令値制御演算部142、安全率演算部145、指令値演算部146、延長残り時間演算部147、および判定部155を有する。
【0029】
第1制御目標指令値演算部141は、所定の電力量を目標値とし授受電力の実績値をフィードバック信号として制御演算を行い、第1制御指令演算値を算出する。第1制御目標指令値演算部141の詳細は、後に
図3を引用しながら説明する。
【0030】
第2制御目標指令値制御演算部142は、水素製造計画値を目標値とし水素製造プラント10による水素製造量の実績値をフィードバック信号として制御演算を行い、第2制御指令演算値を算出する。第2制御目標指令値演算部141の詳細は、後に
図3を引用しながら説明する。
【0031】
安全率演算部145は、最大受電電力量の条件の遵守程度を規定する安全率safeを算出する。安全率Safeは、0以上1以下の値を有する。安全率Safeが1に近いほど最大受電電力量Gmaxの条件の遵守程度が大きくなる。安全率Safeが1の場合は、受電電力が最大受電電力量Gmaxの条件を完全に満たすように、水素製造が抑制される。安全率Safeは各時刻で算出されてもよく、この場合、安全率safe(t)で表す。
【0032】
指令値演算部146は、第1制御目標指令値演算部141が算出した第1制御指令演算値、第2制御目標指令値演算部141が算出した第2制御指令演算値、および安全率演算部145が算出した安全率safeに基づいて、水素製造プラント10の水素製造装置21の電力負荷の指令として、電力負荷指令値を算出する。
【0033】
延長残り時間演算部147は、ある1日についてみたときに、水素製造計画装置41による水素製造計画では、たとえば当該日の18時が水素製造の終了予定時刻であったとする。一方、最大受電電力量の条件により、当該日の水素製造量の実績が、終了予定時刻となっても予定された水素製造量に達しない場合がある。このような場合に、延長残り時間演算部147は、終了予定時刻の18時をどの程度延長すれば予定された水素製造量に達するかの延長時間を算出する。
【0034】
判定部155は、制御演算期間の終了の有無を判定する。
【0035】
出力部160は、指令値出力部161、および表示部162を有する。指令値出力部161は、指令値演算部146により算出された電力負荷指令値を、水素製造プラント10の水素製造装置21に出力する。表示部162は、入力部110が受け入れた入力情報、あるいは、演算結果記憶部126に収納されている演算結果を表示する。
【0036】
なお、入力部110ならびに出力部160の表示部162は、たとえば対話型であって要求に応じて必要な指示や情報が表示されるものでもよい。
【0037】
図3は、第1の実施形態に係るデマンド制御装置100の作用を示す制御ブロック図である。
図3は、デマンド制御装置100における演算部140の第1制御目標指令値演算部141および第2制御目標指令値制御演算部142の構成、これらと、安全率演算部145および指令値演算部146の関係を示している。
【0038】
第1制御目標指令値演算部141は、第1制御目標値演算部141aおよび第1制御演算部141bを有する。
【0039】
第1制御目標値演算部141aは、分割単位時間幅Tに亘る最大受電電力量Gmaxを用いて、分割単位時間幅Tの中の各演算時刻tにおける第1リアルタイム制御目標値r1(t)を次の式(1)により第1制御指令演算値を算出する。なお、第1リアルタイム制御目標値r1(t)は、分割単位時間幅Tの終了の都度、ゼロ(kWh)にリセットされる。
r1(t)=r1(t-Δt)+Gmax/N …(1)
【0040】
第1制御演算部141bは、第1リアルタイム制御目標値r1(t)を制御目標値とし、取引用電力計1aの出力に基づく受電電力実績値G(t)をフィードバック信号として、制御演算を行う。このため、第1リアルタイム制御目標値r1(t)から受電電力実績値G(t)を減じて電力偏差e1(t)を出力する減算器と、電力偏差e1(t)に基づいて、次の式(2)、(3)によるPID演算により第1制御指令演算値SV1(t)を算出するPID演算回路を有する。受電電力実績値G(t)は、その分割単位時間幅Tの開始時刻から当該演算時刻tまでの受電電力の積分値である。このため、図示はしないが、受電電力実績値G(t)も、分割単位時間幅Tの終了の都度、ゼロ(kWh)にリセットされる。なお、PID演算回路は、水素製造プラント10の特性に比較して急速な応答性を要しない場合はPI演算回路でもよい。さらに、
図3では、第1制御演算部141bが減算器とPID演算回路のみを有する場合を例にとって示しているが、さらに、モデル制御や先行制御の機能分を有していてもよい。
e1(t)=r1(t)-G(t) …(2)
【0041】
【0042】
第2制御目標指令値演算部142は、第2制御目標値演算部142aおよび第2制御演算部142bを有する。
【0043】
第2制御目標値演算部142aは、m番目の分割単位時間に亘る水素製造計画値H(m)(m=1~M)を用いて、分割単位時間幅Tの中の各演算時刻tにおける第2リアルタイム制御目標値r2(t)を次の式(4)により算出する。なお、第2リアルタイム制御目標値r2(t)は、分割単位時間幅Tの終了の都度、ゼロ(Nm3)にリセットされる。
r2(t)=r2(t-Δt)+H(m)/N …(4)
【0044】
第2制御演算部142bは、第2リアルタイム制御目標値r2(t)を制御目標値とし、水素製造装置21からの水素製造量H(t)をフィードバック信号として、制御演算を行う。このため、第2リアルタイム制御目標値r2(t)から水素製造量H(t)を減じて水素製造量偏差e2(t)を出力する減算器と、e2(t)に基づいて、次の式(5)、(6)によるPID演算により第2制御指令演算値SV2(t)を算出するPID演算回路を有する。水素製造量H(t)は、その分割単位時間幅Tの開始時刻から当該演算時刻tまでの受電電力の積分値である。このため、図示はしないが、水素製造量H(t)も、分割単位時間幅Tの終了の都度、ゼロ(Nm
3)にリセットされる。なお、PID演算回路は、水素製造プラント10の特性と比較して急速な応答性を要しない場合はPI演算回路でもよい。さらに、
図3では、第2制御演算部142bが減算器とPID演算回路のみを有する場合を例にとって示しているが、さらに、モデル制御や先行制御の機能分を有していてもよい。
e2(t)=r2(t)-H(t) …(5)
【0045】
【0046】
安全率演算部145は、安全率safeを外部入力により設定してもよい。あるいは、時間依存として、各分割単位時間において次の式(7)を用いて算出してもよい。
safe(t)=n/N …(7)
【0047】
指令値演算部146は、前述の様に、第1制御指令演算値SV1(t)、第2制御指令演算値SV2(t)、および安全率safe(t)に基づいて水素製造装置21への電力負荷指令値set(t)を出力する。
【0048】
以下に、水素製造装置21への電力負荷指令値set(t)の演算について、複数の具体例を示す。
【0049】
第1の具体例では、次の式(8)、(9)に示すように、安全率safe(t)に応じて、第1制御指令演算値SV1(t)と第2制御指令演算値SV2(t)から内挿した中間値SVtmp(t)を算出し、この中間値SVtmp(t)と第2制御指令演算値SV2(t)の最小値を選択して電力負荷指令値set(t)を算出する。なお、内挿した中間値SVtmp(t)を電力負荷指令値set(t)としてもよい。
SVtmp(t)
=SV1(t)+(1-safe(t))・(SV2(t)-SV1(t))
‥‥(8)
set(t)=min(SVtmp(t),SV2(t)) …(9)
【0050】
これにより、安全率safe(t)が1(100%)の場合は、中間値SVtmp(t)の値が第1制御指令演算値SV1(t)の値となり、第2制御目標指令値演算部142で演算された第2制御指令演算値指令値SV2(t)の値が大きくとも電力負荷指令値set(t)の値が第1制御指令演算値SV1(t)の値に制限され、第1制御指令演算値SV1(t)に従った動作となる。また、第2制御目標指令値演算部142で演算された第2制御指令演算値指令値SV2(t)の値が小さい場合は、第2制御指令演算値指令値SV2(t)に従った動作となり、水素製造計画通りの水素量を製造することとなる。
【0051】
第2の具体例では、n番目の分割単位時間(たとえば30分)に亘る水素製造計画値H(n)に対する不足量Hlack(t)を用いて第2リアルタイム制御目標値r2(t)を算出する。このとき、第2リアルタイム制御目標値r2(t)は分割単位時間毎に0Nm3にリセットするが、不足量Hlack(t)は分割単位時間毎にはリセットせず、1日の水素製造計画終了時にリセットする。次の式(10)に示すのは、例えば次の分割単位時間幅T(例えば30分間)の水素製造計画値に割り増しする場合を示す。
r2(t)=r2(t-Δt)+(H(t)+Hlack(t))/N
…(10)
【0052】
あるいは、水素製造計画をなるべく変更しないことを考慮して、不足量Hlack(t)を、水素製造計画終了時までに解消するようにしてもよい。この場合、第2リアルタイム制御目標値r2(t)は、水素製造計画終了時までの時間TtoEnd(t)を用いて次の式(11)のように算出できる。
r2(t)
=r2(t-Δt)+H(t)/N+Hlack(t)/TtoEnd(t)
…(11)
【0053】
図4は、第1の実施形態の変形例に係るデマンド制御装置100aの構成を示すブロック図である。
【0054】
第3の具体例は、第1の実施形態の変形であり、演算部140aは、演算部140の第1制御目標指令値141に代えて演算部第1制御目標上限値演算部143を、また、第2制御目標指令値142に代えて演算部第2制御目標上限値演算部144を有する。
【0055】
演算部140aは、水素製造プラント10への指令値の上限を制限するように、第1制御目標上限値演算部143では、分割単位時間T内でのステップn(時刻t)において、最大受電電力量Gmax、受電電力量実績値G(t)、およびPV瞬時発電電力実績値PV(t)を用いて、次の式(12)のように水素製造装置21への制御指令値の上限値SVmax(t)を算出する。指令値演算部146は、次の式(13)、(14)のように第1制御指令演算値と第2制御指令演算値との内挿値である中間値SVtmp(t)に基づいて電力負荷指令値set(t)を算出する。
SVmax(t)=(Gmax-G(t))/(N-n)+PV(t)
…(12)
SVtmp(t)
=SV1(t)+(1-safe(t))・(SV2(t)-SV1(t))
…(13)
【0056】
set(t)
=min(min(SVtmp(t),SV2(t)),SVmax(t))
…(14)
【0057】
水素製造プラント10の電力負荷に応じて安全率safe(t)を変化させる場合において、水素製造量が水素製造計画値に対して大幅に不足しているときに、常に電力負荷指令値set(t)の値が第2制御指令演算値指令値SV2(t)の値となる可能性がある。つまり、第1制御目標である受電電力量の条件を順守できない可能性がある。本具体例により、このような問題が解消され第1制御目標である受電電力量の条件を順守することができる。
【0058】
なお、指令値演算部146が、第1制御目標上限値演算部143で演算した水素製造装置21への制御指令値の上限値SVmax(t)と安全率safeを用いて、次の式(15)のように電力負荷指令値set(t)を算出することでもよい。なお、この場合の安全率safe(t)の値は、0より大きくかつ1以下の値、たとえば、0.1以上で1.0以下の値とする。
set(t)=min(SVmax(t)・safe(t),SV2(t))
…(15)
【0059】
図5は、第1の実施形態に係るデマンド制御方法の手順を示すフロー図である。
【0060】
デマンド制御方法は、読み込みステップS10、制御ステップS20、および延長計算ステップS30を有する。
【0061】
読み込みステップS10は、入力部110によりそれぞれ行われる制御パラメータの読み込み(ステップS11)、水素製造計画値を含む水素製造計画の読み込み(ステップS12)、および再エネ容量、最大受電電力量の条件の読み込み(ステップS13)を有する。なお、
図5では、この順番に記載されているが、ステップS11ないしステップS13の順番の前後は問わず、また、互いに並行してなされてもよい。
【0062】
読み込みステップS10に続く制御ステップS20においては、まず、入力部110が、各実績値の読み込み(ステップS21)を行う。
【0063】
制御ステップS20においては、各実績値の読み込み(ステップS21)と最後の制御期間の終了判定ステップ(S26)との間で、演算ステップ幅Δtごとの繰り返し演算が行われる。
【0064】
各実績値の読み込み(ステップS21)の次に、第1制御目標指令値演算部141による第1の制御目標指令算出値SV1(t)の算出(ステップS22)および第2制御目標指令値演算部142による第2の制御目標指令算出値SV2(t)の算出(ステップS23)が行われる。ここで、ステップS22とステップS23の前後は問わず、また、互いに並行してなされてもよい。
次に、安全率演算部145が安全率safe(t)を算出する(ステップS24)。次に、指令値演算部146が、第1の制御目標指令算出値SV1(t)、第2の制御目標指令算出値SV2(t)および安全率safe(t)にもとづいて電力負荷指令値set(t)を算出し、出力部160が水素製造プラント10の水素製造装置21に指令信号としてこれを出力する(ステップS25)。
【0065】
次に、判定部155が、制御期間の終了か否かを判定する(ステップS26)。ここで、制御期間とは、デマンド制御装置100が連続して制御を行う期間であり、制御期間は、たとえば1年あるいは数か月の期間であり、その値は、ステップS11における制御パラメータの読み込み時に入力部110により読み込まれる。
【0066】
判定部155が制御期間の終了と判定しなかった(ステップS26 NO)場合には、ステップS21からステップS26までを繰り返す。また、判定部155が制御期間の終了と判定した(ステップS26 YES)場合には、制御ステップS20を終了する。
【0067】
なお、
図5には表記していないが、ステップS26において、判定部155は、当該演算ステップが分割単位時間幅Tの最後のステップであるか否かを判定する。判定部155は、分割単位時間幅Tの最後のステップであると判定した場合は、第1制御目標指令値演算部141および第2制御目標指令値制御演算部142に、第1リアルタイム制御目標値r1(t)をゼロ(kWh)に、第2リアルタイム制御目標値r2(t)をゼロ(Nm
3)に、それぞれリセットするように指示を出力する。
【0068】
延長計算ステップS30は、制御ステップS20に並行して実行される。
【0069】
延長計算ステップS30としては、制御ステップS20の繰り返し計算において、分割単位時間幅Tの終了の都度、延長残り時間演算部147が、その分割単位時間幅Tで得られた水素製造量H(t)を積算し、当該日の予定終了時刻までに得られるであろう水素製造量を予測する(ステップS31)。
【0070】
次に、延長残り時間演算部147は、当該m番目までの分割単位時間の水素製造計画値H(m)(m=1~M)の合計値と比較して、当該日の予定終了時刻までに、当該日における必要水素製造量を達成する見込みの有無を判定する(ステップS32)。
【0071】
延長残り時間演算部147が、当該日の予定終了時刻までに必要水素製造量を達成する見込みが有ると判定(ステップS32 YES)した場合は、ステップS31からステップS32を繰り返す。
【0072】
延長残り時間演算部147が、当該日の予定終了時刻までに必要水素製造量を達成する見込みがないと判定(ステップS32 NO)した場合は、延長残り時間演算部147は、終了時刻延長計算を行う(ステップS33)。すなわち、当該日において、たとえば、18時の予定終了時刻から、たとえば、終了時刻を延長してさらに3時間は水素製造を行う必要がある等、終了時刻の延長時間を算出する。
【0073】
以上のように、本実施形態によれば、水素製造プラント10の水素製造に関して、授受電力に関する条件としての最大受電電力量Gmaxからの超過をできる限り抑制しながら、再エネの発電電力を有効利用して水素製造量を確保することができる。
【0074】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係るデマンド制御装置100bの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。
【0075】
本実施形態における記憶部120bは、実績値記憶部121、最大受電電力量記憶部122、目標電力記憶部123、制御パラメータ記憶部124、水素製造計画記憶部125に加えて、マージン電力記憶部127、PV発電量予測値記憶部128、天候情報記憶部129、ペナルティ許容量記憶部130をさらに有する。
【0076】
また、入力部110は、外部入力として、最大受電電力量Gmaxに対するマージン分の電力値Margin、再生可能エネルギー発電装置11の発電量であるPV発電量の実績値およびその予測値、再生可能エネルギー発電装置11の設置場所の天候情報、および最大受電電力量Gmaxを超過してもよい許容量をさらに受け入れる。
【0077】
マージン電力記憶部127は、入力部110により読み込まれた最大受電電力量Gmaxに対するマージン分Marginの電力値を記憶する。マージン分の電力値としては、kWhの絶対値でもよいし、比率として記憶してもよい。
【0078】
PV発電量予測値記憶部128は、入力部110により読み込まれたPV発電量に関する予測値を記憶する。予測値は、分割単位時間ごとのPV発電量予測値だけでなく、予測値の信頼区間の情報であってもよい。なお、PV発電量予測値あるいは信頼区間の情報に関しては、入力部110より読み込む例を説明したが、これに限定されない。たとえば、過去のPV発電量実績値より予測値を演算してもよい。あるいは、信頼区間の情報は、PV発電量の誤差が正規分布と仮定して演算してもよいが、これに限るものではない。
【0079】
天候情報記憶部129は、入力部110により読み込まれた天候情報を記憶する。天候情報は、例えば、過去の晴れ、曇り、雨などの天気情報、PV発電量実績値とPV発電量予測値の時系列データ、および、現在の天気情報などである。
【0080】
ペナルティ許容量記憶部130は、入力部110により読み込まれた最大受電電力量Gmaxを超過してもよい許容量を記憶する。許容量としては、超過電力量Excess、超過回数、あるいは超過によるペナルティ金額などがある。
【0081】
安全率演算部145では、マージン電力記憶部127で記憶した最大受電電力量Gmaxからのマージン分の電力Margin、PV発電量予測値記憶部128で記憶したPV発電量予測値と信頼区間の情報、天候情報記憶部129で記憶した過去のPV発電量実績値とPV発電量予測値と天気情報、ペナルティ許容量記憶部130で記憶した最大受電電力量Gmaxを超過してもよい超過電力量Excessを利用して、第1制御目標の順守度合を表す安全率safeを、以下の具体例のように演算する。
【0082】
第1制御目標指令値演算部141では、時刻tにおいて、現時刻の分割単位時間幅Tの間の最大受電電力量Gmax、最大受電電力量Gmaxからのマージン分の電力Marginを用いて、各演算周期Δtにおける第1リアルタイム制御目標値r1(t)を次の式(16)で計算する。
r1(t)=r1(t-Δt)+(Gmax-Margin)/N …(16)
【0083】
このように、予め最大受電電力量に対して一定のマージンを考慮した第1リアルタイム制御目標値r1(t)を目標として制御することによって、より最大受電電力量Gmaxを超過するリスクを低減することができる。
【0084】
また、ペナルティ許容量記憶部130において、最大受電電力量Gmaxを超過してもよい超過電力量Excessを記憶している場合は、第1リアルタイム制御目標値r1(t)を次の式(17)で計算してもよい。
r1(t)
=r1(t-Δt)+(Gmax-Margin+Excess)/N
…(17)
【0085】
安全率演算部145では、PV発電量予測値PVpre(t)、PV発電量の予測誤差が±σとなる誤差量PVpre1σ(t)(以下、信頼区間情報と呼ぶ)を用いて、次の式(18)のように安全率safeを演算してもよい。例えば、PV発電量予測値PVpre(t)が1000kWh、信頼区間情報PVpre1σ(t)が200kWの場合は、安全率safe(t)は80%となる。
safe=(PVpre(t)-PVpre1σ(t))/PVpre(t)
…(18)
【0086】
PV発電予測値PVpre(t)に対して信頼区間情報PVpre1σ(t)の割合が小さければ安全率safeも小さくなり、信頼区間情報PVpre1σ(t)の割合が大きければ安全率safeも大きくなる。つまり、信頼区間情報PVpre1σ(t)の割合が大きいほど、PV発電量予測値PVpre(t)の誤差が大きくなる可能性が高いため、安全率safeを高く設定することができる。これにより、PV発電量予測値PVpre(t)が大きく外れた場合でも最大受電電力量Gmaxを超過するリスクを低減することができる。
【0087】
また、過去のPV発電量実績値とPV発電量予測値と天気情報を利用することで、さらに最大受電電力量Gmaxを超過するリスクを低減することも可能である。例えば、現在の天気情報と一致する過去の時系列データを抽出し、抽出した過去の時系列データであるPV発電量実績値とPV発電量予測値PVpre(t)よりPV発電量誤差率を演算する。このPV発電量誤誤差PVerror(t)(0以上かつ1以下)を用いて、次の式(19)のように安全率safeを演算することによって、過去の天気情報を元にしたPV発電量の誤差を考慮することが可能となる。
safe(t)
=[(PVpre(t)-PVpre1σ(t))/PVpre(t)]
・PVerror(t) …(19)
【0088】
安全率演算部145において、現時刻の分割単位時間のPV発電量予測値PVpre(t)と、現時刻の分割単位時間幅T内のnステップまでのPV発電量実績値PVkWh(t)を利用して、次の式(20)のようにリアルタイムで予測値との誤差を考慮しながら安全率safeを算出してもよい。
safe(t)=PVkWh(t)/[(PVpre(t)・(n/N)]
…(20)
【0089】
なお、ペナルティ許容量記憶部130にて、記憶している情報が最大受電電力量Gmaxを超過してもよい超過電力量Excessではなく、最大受電電力量Gmaxを超過してもよい超過回数、または、超過によるペナルティ金額の場合は、それに応じた安全率を設定する。
【0090】
上述の例では、安全率演算部145において、PV発電量予測値PVpre(t)、信頼区間情報PVpre1σ(t)を用いて安全率safeを算出した。この場合、PV発電量予測値PVpre(t)よりも信頼区間情報PVpre1σ(t)のほうが大きくなる場合や、誤って信頼区間情報PVpre1σ(t)がマイナスの値となる場合は、安全率が0から1(0%から100%)の範囲を逸脱することが考えられる。この場合は、上下限値を設定してもよいし、例えばシグモイド関数を用いて0から1(0%から100%)に変換してもよい。なお、シグモイド関数以外であっても、0%から100%に変換する関数であればよい。
【0091】
本実施例の形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて、さらに、最大受電電力量Gmaxを超過しないようにマージン分の電力を考慮すること、PV発電量予測値や天候情報を利用することで、様々な要因により最大受電電力量を超過するリスクを低減することができる。また、ペナルティ許容量がある場合は、それを考慮した運用が可能となる。なお、ペナルティ許容量記憶部130では、”許容量”ではなくペナルティを許容する”時間帯”も記憶してもよい。この場合、ペナルティを許容する時間帯においては、最大受電電力量の許容量が大きくなる(または、最大受電電力量の制限がなくなる)ことが考えられ、その許容量に応じた水素製造装置21への電力負荷指令値を演算する。
【0092】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係る水素製造システム40cの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、水素製造プラント10cが、電力を消費する負荷設備22をさらに有する点が異なる。異なる部分が、デマンド制御装置100cに反映されている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0093】
図8は、第3の実施形態に係るデマンド制御装置100cの構成を示すブロック図である。
【0094】
デマンド制御装置100cの記憶部120は、負荷設備22の消費電力を予測するための負荷設備モデルを記憶する機器モデル記憶部131をさらに有する。機器モデル記憶部131に記憶されるデータは、入力部110により受け入れられる。また、デマンド制御装置100cの演算部140は、負荷設備消費電力予測部148をさらに有する。
【0095】
負荷設備モデルは、次の分割単位時間幅Tにおける負荷設備22の消費電力を予測するものであれば、予測手法を限定するものではない。例えば、時系列分析手法の一つであるARMA(自己回帰移動平均モデル)でもよく、あるいは、ニューラルネットワークや木構造を用いたランダムフォレストなど深層学習によるものでもよい。
【0096】
負荷設備消費電力予測部148は、機器モデル記憶部131で記憶された負荷設備モデルを利用して、予測演算上で必要となる実績値記憶部121で記憶した実績値を用いて次の分割単位時間幅Tにおける負荷設備22の消費電力(負荷設備消費電力)Laod(t)を予測する。
【0097】
第1制御目標指令値演算部141は、負荷設備消費電力予測部148により算出された負荷設備消費電力の予測値を用いて、受電電力量実績値G(t)が最大受電電力量Gmaxに一致するように、水素製造装置21への制御指令値を演算する。この際、次の分割単位時間幅Tにおける負荷設備消費電力量Laod(t)を用いて次の式(21)により第1リアルタイム制御目標値r1(t)を算出する。
【0098】
r1(t)=r1(t-Δt)+(Gmax-Load(t))/N …(21)
【0099】
このように、本実施形態では、第1の実施形態による効果に加えて、水素製造プラント10c内に水素製造装置21以外の負荷設備22がある場合、負荷設備22の消費電力を予測することによって、負荷設備22の消費電力の変動により最大受電電力量Gmaxを超過するリスクを低減することができる。
【0100】
[第4の実施形態]
図9は、第4の実施形態に係る水素製造システム40dの構成を示すブロック図である。
【0101】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、電力計画装置42をさらに有する。電力計画装置42は、水素製造プラント10における売電計画などの電力系統との電力授受計画を立案する装置であり、目標電力は分割単位時間ごとの売電電力量となる。あるいは、電力計画装置42は、電力系統1の安定化を目的とした装置として、売電電力の瞬時値、もしくは、受電電力の瞬時値を目標電力とする計画を立案する装置であってもよい。その他、外部の蓄電設備と当該水素製造プラント10が連携して、蓄電設備側から指定された電力が目標電力となってもよい。すなわち、電力計画装置42は、電力に関する目標に基づいて計画する装置であればこれらに限るものではない。
【0102】
図10は、第4の実施形態に係るデマンド制御装置100dの構成を示すブロック図である。
【0103】
デマンド制御装置100dの記憶部120dは、最大受電電力量記憶部122に代えて目標電力記憶部123を有する。
【0104】
デマンド制御装置100dは、電力計画装置42より目標電力を受け取り、目標電力記憶部123に収納、記憶する。演算部140は、この目標電力を順守しつつ、水素製造計画装置41による水素製造計画を可能な限り達成するための水素製造装置21への指令値を演算する。
【0105】
第1制御目標指令値演算部141では、時刻tにおいて、現時刻の分割単位時間の売電電力量Gs(t)を用いて、各演算周期Δtにおける第1リアルタイム制御目標値r1(t)を次の式(22)により算出する。なお、分割単位時間の売電電力量Gs(t)は負(マイナス)の値を取る。
r1(t)=r1(t-Δt)+Gs(t)/N …(22)
【0106】
一方、目標電力記憶部123にて、目標電力が時刻tにおける売電電力瞬時値Gsinstant(t)の場合は、各演算周期における第1リアルタイム制御目標値r1(t)を次の式(23)により算出する。
r1(t)=Gsinstant(t) …(23)
【0107】
売電電力瞬時値Gsinstant(t)の場合、瞬時売電電力実績値g(t)が第1リアルタイム制御目標値r1(t)と一致するように水素製造装置21への制御指令値SV1(t)を、次の式(24)、(25)により算出する。なお、目標電力が受電電力瞬時値の場合も同様に演算できる。
e1(t)=r1(t)-g(t) …(24)
【0108】
【0109】
本実施例形態によれば、第1の実施形態による効果に加えて、外部より電力の指令(売電電力量、売電電力瞬時値、受電電力瞬時値)がある場合に、その目標電力を順守しつつ、第2制御目標を可能な限り達成することが可能となる。
【0110】
[第5の実施形態]
図11は、第5の実施形態に係る水素製造システム40eの構成を示すブロック図である。また、
図12は、第5の実施形態に係るデマンド制御装置100eの構成を示すブロック図である。
【0111】
本実施形態は、第1、第3および第4の実施形態の変形であり、
図12に示すように、水素製造システム40eにおいて、水素製造プラント10eは、第3の実施形態と同様の負荷設備22を有する。また、水素製造システム40eは、電力計画装置42eを有する。
【0112】
ここで、電力計画装置42eは、第4の実施形態における電力計画装置42と同様に、電力系統1の安定化を目的とした装置であるが、本実施形態における電力計画装置42eは、売電電力の瞬時値、もしくは、受電電力の瞬時値を目標電力とする計画を立案する点に特徴がある。
【0113】
図13に示すように、デマンド制御装置100eは、第3の実施形態と同様の負荷設備消費電力予測部148を有するとともに、さらに、負荷設備起動停止計画確認部149を有する。負荷設備起動停止計画確認部149は、水素製造計画装置41によって計画された水素製造装置21の運転計画に関連して生ずる負荷設備22の起動および停止のタイミングを確認し、必要に応じて負荷設備22の起動および/または停止(起動/停止)に関する変更指令を出力する。出力部160の指令値出力部161は、負荷設備22に変更された起動/停止の指示を出力する。起動/停止に関する変更指令は、たとえば、起動/停止のタイミングの変更指令、あるいは、補機の起動/停止台数の変更指令である。
【0114】
<作用、効果の説明>
負荷設備22は、例えば、水素の圧力を昇圧する圧縮機のように、起動/停止によりその消費電力の変動に大きく影響する補機を有する。また、負荷設備22は、デマンド制御装置100eより起動/停止に関する変更指令を受け取り、それに従った運転を行う制御装置を有する。
【0115】
負荷設備起動停止計画確認部149は、負荷設備22の起動/停止について、最大受電電力量記憶部122に記憶された電力系統1との電力授受条件の順守に影響しないか、たとえば、売電電力の瞬時値、もしくは、受電電力の瞬時値を目標電力として遵守すべき時間帯内にないか否かを確認、監視する。荷設備起動停止計画確認部149は、電力系統1との電力授受条件の順守への影響の可能性がある場合に、その影響を回避するような指示を出力する。たとえば、売電電力の瞬時値、もしくは、受電電力の瞬時値が、最大受電電力を遵守すべき時間帯内にあるときは、この時間帯での起動/停止を避けるように、起動/停止のタイミングの計画を補正する。この結果を、指令値出力部161が、負荷設備22への指令タイミングを出力する。
【0116】
本実施形態によれば、負荷設備22の起動/停止の指令タイミングを、電力授受条件を順守すべき時間対帯避けるように作用することによって、負荷設備22の起動/停止により消費電力が大きく変動する場合でも、電力授受条件を順守することができる。なお、負荷設備22の起動/停止が水素製造計画に影響を及ぼす場合は、指令タイミングに応じて水素製造計画装置41の水素製造計画を補正しても良い。さらに、デマンド制御装置100eでは、負荷設備22の起動/停止のタイミングを演算し、その指令タイミングを監視画面への出力やメールによって負荷設備の運転員へ通知してもよい。
【0117】
[第6の実施形態]
図13は、第6の実施形態に係るデマンド制御装置100fの構成を示すブロック図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。
【0118】
記憶部120fは水素製造プラント10における各機器のモデルを記憶する機器モデル記憶部131をさらに有する。演算部140fは、運用コスト演算部150および最適化演算部151をさらに有する。出力部160は、最適化変数出力部163をさらに有する。また、入力部110は、再生可能エネルギー発電装置11の再エネ発電実績値をさらに受け入れる。また、実績値記憶部121fは、入力部110で受け入れた再エネ発電実績値をさらに収納、記憶する。実績値記憶部121fが記憶する再エネ発電実績値は、たとえば、1年分の時系列実績データである。
【0119】
運用コスト演算部150は、実績値記憶部121fで記憶した再エネ発電データと、機器モデル記憶部131で記憶した水素製造装置21のモデルと、指令値演算部146で演算した水素製造装置21への制御指令値とを利用して、1年分のシミュレーションを実行し、水素製造プラント10の運用コストを演算する。運用コストは、電力料金、水素販売料金などを元に計算する。また、設備の資本的支出(Capital Expenditure)等を考慮して運用コストを計算しても良い。
【0120】
最適化演算部151は、実績値記憶部121fで記憶した再エネ発電データ実績値を元に、再エネ容量の変更として定数倍したデータを作成し、最大受電電力量記憶部122で記憶した最大受電電力量Gmaxを変更し、運用コストが最小となる、再エネ容量と最大受電電力量を算出する。なお、最適化演算部151は、運用コストが最小となる、再生可能エネルギー発電装置11の容量、最大受電電力量の条件の少なくとも1つの値を最適化することでもよい。
【0121】
最適化変数出力部163は、最適化演算部151で演算された運用コストが最小となる再エネ容量と最大受電電力量を出力する。
【0122】
図14は、第6の実施形態に係るデマンド制御方法の手順を示すフロー図である。
【0123】
本実施形態におけるデマンド制御方法は、読み込みステップS10、制御ステップS20、および最適化ステップS40を有する。読み込みステップS10および制御ステップS20は、第1の実施形態と同様であるので説明を省略し、最適化ステップS40について説明する。
【0124】
制御ステップS20の制御期間の終了判定ステップS26で制御期間が終了したと判定(ステップS26 YES)される都度、運用コスト演算部150は、運用コストを演算する(ステップS41)。次に、運用コスト演算部150は、運用コストが最小か否かを判定する(ステップS42)。
【0125】
運用コストが最小と判定されなかった(ステップS42 NO)場合には、ステップS13に戻り、再エネ容量、最大受電電力量の新たな条件を読み込み、ステップS20、およびステップS41、ステップS42を繰り返す。
【0126】
運用コストが最小と判定された(ステップS42 YES)場合には、最適化変数出力部163が、運用コストが最小となる再エネ容量、最大受電電力量を出力する。
【0127】
以上、
図14を引用しながら、外部入力で再エネ容量、最大受電電力量の新たな条件を読み込む場合を例にとって示したが、外部入力に拠らずに、
図13に示す最適化演算部151が、再エネ容量、最大受電電力量の新たな条件を生成することでもよい。あるいは、繰り返し演算に拠らずに、最適化演算部151が、再エネ容量、最大受電電力量の最適解を導出することでもよい。
【0128】
本実施形態によれば、最大受電電力量を順守しつつ、水素製造計画を可能な限り達成するように水素製造装置への制御指令値を演算することで、運用コストが最小となる再エネ容量、最大受電電力量の条件を演算することができる。例えば、水素製造プラントの建設時において最適な再エネ容量を決定することができる。あるいは、稼働中の水素製造プラントにおいても最適な最大受電電力量を決定することができる。
【0129】
以上、説明した実施形態によれば、再生可能エネルギーによる発電電力を用いた水素製造プラントについて、契約電力からの超過量を抑制可能なデマンド制御装置およびデマンド制御方法を提供することができる。
【0130】
[その他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、各実施形態は互いに背反する構成ではないことから、複数のあるいはすべての実施形態の特徴を組み合わせてもよい。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1…電力系統、1a…取引用電力計、10、10c…水素製造プラント、11…再生可能エネルギー発電装置(PV)、21…水素製造装置、22…負荷設備、31…所内母線、40、40c、40d…水素製造システム、41…水素製造計画装置、42…電力計画装置、100、100a、100b、100c、100d、100e、100f…デマンド制御装置、110…入力部、120…記憶部、121…実績値記憶部、122…最大受電電力量記憶部、123…目標電力記憶部、124…制御パラメータ記憶部、125…水素製造計画記憶部、126…演算結果記憶部、127…マージン電力記憶部、128…PV発電量予測値記憶部、129…天候情報記憶部、130…ペナルティ許容量記憶部、131…機器モデル記憶部、140、140a…演算部、141…第1制御目標指令値演算部、141a…第1制御目標値演算部、141b…第1制御演算部、142…第2制御目標指令値制御演算部、142a…第2制御目標値演算部、142b…第2制御演算部、143…第1制御目標上限値演算部、144…第1制御目標上限値演算部、145…安全率演算部、146…指令値演算部、147…延長残り時間演算部、148…負荷設備消費電力予測部、149…負荷設備起動停止計画確認部、150…運用コスト演算部、151…最適化演算部、155…判定部、160…出力部、161…指令値出力部、162…表示部、163…最適化変数出力部