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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057343
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】ドハティ増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20240417BHJP
   H03F 1/32 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164017
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 翔平
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA21
5J500AA41
5J500AC02
5J500AC04
5J500AC18
5J500AC21
5J500AC36
5J500AC57
5J500AC81
5J500AF10
5J500AF14
5J500AH02
5J500AH06
5J500AH09
5J500AH19
5J500AH25
5J500AH29
5J500AK05
5J500AM01
5J500AM04
5J500AM08
5J500AM19
5J500AT01
5J500LV08
5J500NG00
5J500NH20
(57)【要約】
【課題】特性の変化を抑制する。
【解決手段】ドハティ増幅回路は、1つ又は複数の増幅器を含むキャリアアンプと、1つ又は複数の増幅器を含むピークアンプと、を含む。少なくとも1つの増幅器は、第1高周波信号がベース又はゲートに入力され、第1高周波信号を増幅した第2高周波信号をエミッタ又はソースから出力する第1トランジスタと、制御信号に基づく電流を第1トランジスタのエミッタ又はソースから引き抜く電流引き抜き回路と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の増幅器を含むキャリアアンプと、
1つ又は複数の増幅器を含むピークアンプと、
を含み、
少なくとも1つの前記増幅器は、
第1高周波信号がベース又はゲートに入力され、前記第1高周波信号を増幅した第2高周波信号をエミッタ又はソースから出力する第1トランジスタと、
制御信号に基づく電流を前記第1トランジスタのエミッタ又はソースから引き抜く電流引き抜き回路と、
を含む、
ドハティ増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載のドハティ増幅回路であって、
前記電流引き抜き回路は、
コレクタ又はドレインが前記第1トランジスタのエミッタに電気的に接続され、前記制御信号がベース又はゲートに入力され、エミッタ又はソースが基準電位に電気的に接続された第2トランジスタを含む、
ドハティ増幅回路。
【請求項3】
請求項1に記載のドハティ増幅回路であって、
エミッタ又はソースが前記第1トランジスタのエミッタ及び前記電流引き抜き回路に電気的に接続され、ベース又はゲートが交流的に接地され、前記第2高周波信号を増幅後の第3高周波信号をコレクタ又はドレインから出力する第3トランジスタを更に含む、
ドハティ増幅回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のドハティ増幅回路であって、
前記制御信号は、高周波信号の包絡線、電源電圧、温度、前記キャリアアンプの飽和状態及び反射電力の内の少なくとも1つに基づいて変化する、
ドハティ増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドハティ増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ピークアンプのバイアス点を変化させるドハティ増幅回路が記載されている。ピークアンプは、バイアス点を変化させると、利得を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0149099号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エミッタ接地増幅器は、バイアス点が変化すると、入力インピーダンスや通過位相特性が大きく変化することがある。このエミッタ接地増幅器の特性の変化は、ドハティ増幅回路のキャリアアンプ及びピークアンプの通過位相特性に影響を及ぼすことがある。ドハティ増幅回路は、キャリアアンプ及びピークアンプの通過位相特性の関係性が重要であり、キャリアアンプ及びピークアンプの通過位相特性が変化しないことが望ましい。従って、ドハティ増幅回路は、上記のエミッタ接地増幅器の特性の変化により、結果的に良好な特性を得られない(高周波出力信号が歪む)ことがあった。
【0005】
また、エミッタ接地増幅器は、バイアス回路によってバイアス点を決定することがしばしば行われる。一般的に用いられるバイアス回路は、高い入力電圧(トランジスタの閾値電圧(VBE)のおおよそ2倍程度)が必要であり、この高い入力電圧の信号に更にバイアス点を変化させるための信号を付加することが難しいことがあった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、特性の変化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面のドハティ増幅回路は、1つ又は複数の増幅器を含むキャリアアンプと、1つ又は複数の増幅器を含むピークアンプと、を含む。少なくとも1つの増幅器は、第1高周波信号がベース又はゲートに入力され、第1高周波信号を増幅した第2高周波信号をエミッタ又はソースから出力する第1トランジスタと、制御信号に基づく電流を第1トランジスタのエミッタ又はソースから引き抜く電流引き抜き回路と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、特性の変化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施の形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態のドハティ増幅回路の利得可変の増幅器の構成を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態のドハティ増幅回路の電流引き抜き回路の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。
図5図5は、第2の実施の形態の利得可変の増幅器の構成を示す図である。
図6図6は、第1の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。
図7図7は、第2の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。
図8図8は、第2の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2の実施の形態以降では第1の実施の形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施の形態毎には逐次言及しない。
【0011】
<第1の実施の形態>
(構成)
図1は、第1の実施の形態のドハティ増幅回路の構成を示す図である。ドハティ増幅回路1は、入力端子1aに入力される高周波信号RFinを増幅して、高周波信号RFoutを出力端子1bから出力する。
【0012】
ドハティ増幅回路1は、ディバイダ11と、キャリアアンプ12と、ピークアンプ13と、結合器14と、を含む。
【0013】
キャリアアンプ12は、前段の増幅器21と、後段の増幅器22と、を含む。増幅器21は、利得可変の増幅器である。増幅器22は、利得非可変の増幅器である。
【0014】
ピークアンプ13は、前段の増幅器31と、後段の増幅器32と、を含む。増幅器31は、利得可変の増幅器である。増幅器32は、利得非可変の増幅器である。
【0015】
増幅器21及び増幅器31は、バイアス点が変えられることにより、利得が変化する。
【0016】
実施の形態では、キャリアアンプ12及びピークアンプ13の各々が2個の増幅器を含むこととしたが、本開示はこれに限定されない。キャリアアンプ12及びピークアンプ13の各々は、1個又は3個以上の増幅器を含むこととしても良い。
【0017】
実施の形態では、前段の増幅器21及び増幅器31が利得可変の増幅器であることとしたが、本開示はこれに限定されない。キャリアアンプ12及びピークアンプ13に含まれる複数の増幅器の内の少なくとも1個が利得可変の増幅器であれば良い。
【0018】
ドハティ増幅回路1は、ピークアンプ13を必要最小限で動作させることとすると効率が良い。従って、ピークアンプ13に含まれる複数の増幅器の内の少なくとも1個が利得可変の増幅器であると、好ましい。
【0019】
増幅器21及び増幅器31は、バイアス点が変えられることにより、直接的に効率が向上する。前段の増幅器21及び増幅器31の利得が制御されることにより、後段の増幅器22及び増幅器32の消費電力が減少する。即ち、後段の増幅器22及び増幅器32は、前段の増幅器21及び増幅器31のバイアス点が変えられることにより、間接的に効率が向上する。なお、後段の増幅器22及び増幅器32のバイアス点が変えられることとすれば、後段の増幅器22及び増幅器32は、直接的に効率が向上する。
【0020】
増幅器21は、高周波信号RFinを増幅した高周波信号RF1を増幅器22に出力する。増幅器22は、高周波信号RF1を増幅した高周波信号RF2を、結合器14に出力する。
【0021】
ディバイダ11は、高周波信号RFinと位相が略90°異なる高周波信号RF3を増幅器31に出力する。なお、「略90°」とは、90°の位相のみではなく、90°±45°の位相をも含むものとする。ディバイダ11は、90°ハイブリッド回路が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0022】
増幅器31は、高周波信号RF3を増幅した高周波信号RF4を増幅器32に出力する。増幅器32は、高周波信号RF4を増幅した高周波信号RF5を結合器14に出力する。
【0023】
結合器14は、高周波信号RF2と高周波信号RF5とを結合した高周波信号RFoutを、ドハティ増幅回路1の出力端子1bから出力する。
【0024】
図2は、第1の実施の形態のドハティ増幅回路の利得可変の増幅器の構成を示す図である。図2は、増幅器31の構成を示す。なお、増幅器21の構成も、増幅器31の構成と同様であるので、図示及び説明を省略する。
【0025】
増幅器31は、入力端子31aに入力される高周波信号RF3を増幅して、高周波信号RF4を出力端子31bから出力する。
【0026】
増幅器31は、トランジスタQと、コンデンサC及びCと、定電流源41と、バイアス回路42と、制御回路43と、電流引き抜き回路44と、を含む。
【0027】
実施の形態では、各トランジスタは、バイポーラトランジスタとするが、本開示はこれに限定されない。バイポーラトランジスタは、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ(Heterojunction Bipolar Transistor:HBT)が例示されるが、本開示はこれに限定されない。トランジスタは、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)であっても良い。トランジスタは、複数の単位トランジスタを電気的に並列接続した、マルチフィンガートランジスタであっても良い。単位トランジスタとは、トランジスタが構成される最小限の構成を言う。
【0028】
各トランジスタがFETである場合、FETのドレインがバイポーラトランジスタのコレクタに相当し、FETのゲートがバイポーラトランジスタのベースに相当し、FETのソースがバイポーラトランジスタのエミッタに相当する。
【0029】
トランジスタQが、本開示の「第1トランジスタ」の一例に相当する。
【0030】
コンデンサCの一端は、入力端子31aに電気的に接続されている。コンデンサCの他端は、トランジスタQのベースに電気的に接続されている。コンデンサCは、高周波信号RF3の直流成分をカットするDCカットコンデンサである。
【0031】
定電流源41は、予め定められた定電流をバイアス回路42に出力する。
【0032】
バイアス回路42は、トランジスタQ11及びQ12と、抵抗R11と、を含む。
【0033】
トランジスタQ11のコレクタは、ベースに電気的に接続されている。つまり、トランジスタQ11は、ダイオード接続されている。トランジスタQ11のコレクタ及びベースには、定電流源41から定電流が入力される。
【0034】
トランジスタQ12のコレクタは、ベースに電気的に接続されている。つまり、トランジスタQ12は、ダイオード接続されている。トランジスタQ12のコレクタ及びベースは、トランジスタQ11のエミッタに電気的に接続されている。トランジスタQ12のエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0035】
トランジスタQ11及びQ12は、一定の電圧(ダイオード2個分の電圧)を発生する。
【0036】
抵抗R11の一端は、トランジスタQ11のコレクタ及びベースに電気的に接続されている。抵抗R11の他端は、トランジスタQのベースに電気的に接続されている。トランジスタQのベースには、抵抗R11の他端からバイアス電圧又はバイアス電流BIASが入力される。
【0037】
トランジスタQのコレクタには、電源電圧が供給される。つまり、トランジスタQは、エミッタフォロワ(コレクタ接地)増幅器である。トランジスタQのエミッタは、コンデンサCの一端に電気的に接続されている。コンデンサCの他端は、出力端子31bに電気的に接続されている。トランジスタQは、ベースに入力される高周波信号RF3を増幅し、高周波信号RF4をエミッタからコンデンサCを介して出力端子31bに出力する。
【0038】
制御回路43は、入力される信号Sに基づいて、制御信号Sを電流引き抜き回路44に出力する。
【0039】
信号Sは、信号S1から信号S5までを含むことが例示される。信号S1は、高周波信号RFinの包絡線に応じて変化するエンベロープトラッキング信号が例示される。信号S2は、ドハティ増幅回路1に供給される電源電圧を表す信号が例示される。信号S3は、ドハティ増幅回路1の温度を表す信号が例示される。信号S4は、キャリアアンプ12の飽和状態を表す信号が例示される。信号S5は、ドハティ増幅回路1の反射電力を表す信号が例示される。但し、本開示はこれらに限定されない。
【0040】
電流引き抜き回路44は、トランジスタQを含む。
【0041】
トランジスタQが、本開示の「第2トランジスタ」の一例に相当する。
【0042】
トランジスタQのコレクタは、トランジスタQのエミッタ及びコンデンサCの一端に電気的に接続されている。トランジスタQのベースには、制御信号Sが入力される。トランジスタQのエミッタは、基準電位に電気的に接続されている。
【0043】
トランジスタQには、制御信号Sに応じたコレクタ電流が流れる。つまり、トランジスタQは、制御信号Sに応じて、トランジスタQのエミッタから電流を引き抜く。これにより、トランジスタQは、バイアス点が可変し、利得が可変する。
【0044】
なお、実施の形態では、電流引き抜き回路44は、トランジスタQのエミッタ電流を引き抜くトランジスタQとしたが、本開示はこれに限定されない。電流引き抜き回路44は、制御信号Sに応じてトランジスタQのエミッタ電流を引き抜くことができる回路であれば良い。例えば、電流引き抜き回路44として、図3に示すように、スイッチ切替型の抵抗を用いもよい。電流引き抜き回路44は、トランジスタQのエミッタに電気的に接続される端子44aを有する。スイッチ切替型の抵抗である電流引き抜き回路44は、トランジスタQのエミッタと基準電位との間において互いに並列接続された複数のスイッチSW、SW、・・・、SW(nは、2以上の整数)と、複数のスイッチSW、SW、・・・、SWと基準電位との間において複数のスイッチSW、SW、・・・、SWの各々に直列に接続された複数の抵抗素子R21、R22、・・・、R2nとを含んで構成される。このようなスイッチ切替型の抵抗によれば、制御信号SC1、SC2、・・・、SCnに応じて抵抗値をデジタル的に制御することができ、トランジスタQから引き抜かれるエミッタ電流を制御することが可能となる。
【0045】
(効果)
[1]
エミッタフォロア増幅器であるトランジスタQは、バイアス点を制御すると、主目的である利得の制御が可能となるだけではなく、エミッタ接地増幅器で問題となっていた入力インピーダンスの変化を抑制できる。
【0046】
エミッタ接地増幅器は、低いバイアス点(オフ状態)では入力インピーダンスが高く、高いバイアス点(オン状態)では入力インピーダンスが低い。
【0047】
一方、エミッタフォロア増幅器であるトランジスタQは、高いバイアス点(オン状態)でも、入力インピーダンスは出力インピーダンスの数十倍以上となり、入力インピーダンスが高い状態が維持される。つまり、トランジスタQは、バイアス点の変化が入力インピーダンスの変化に影響せず、ディバイダ11(図1参照)の分配比に影響を与えない特徴がある。
【0048】
[2]
増幅器31は、エミッタフォロア増幅器であるトランジスタQのエミッタ電流をトランジスタQによる引き抜き電流で制御する。これにより、増幅器31は、トランジスタQのエミッタ電流を制御するための信号(制御信号S)の電圧基準を下げることができる。
【0049】
引き抜き電流はトランジスタQのコレクタ電流であり、トランジスタQのベースに制御信号Sが入力される。このとき、トランジスタQのベース電圧(制御信号S)は、時間とともに変化する状況(高周波入力信号、電源電圧、温度、飽和状態、反射電力等)に適応しながら、概ねトランジスタQの閾値電圧(VBE)を中心に、わずかに上下することになる。つまり、制御信号Sに必要な電圧最大値は小さく、携帯電話装置に代表される可搬装置で要求が厳しい電源電圧制限下においても適用が可能となる。
【0050】
増幅器31と同等の回路をエミッタ接地増幅器とバイアス回路とで実現しようとした場合、電源電圧制限下での動作と高速動作との両立が難しくなる。
【0051】
[3]
エミッタフォロワ増幅器であるトランジスタQでは、理想的には、電圧増幅率は1であり、且つ、高周波信号RF3と高周波信号RF4の位相も同相となる。つまり、トランジスタQは、出力電力による入出力端子間(トランジスタQのベース-エミッタ間)の電圧振幅の変化を抑制できる。
【0052】
その結果、トランジスタQの入出力端子間(ベース-エミッタ間)に、電圧によって変化する寄生容量が介在していたとしても、寄生容量の出力電力に対する依存性が抑制され、出力信号の位相の変化が抑制される。これにより、ドハティ増幅回路1は、高周波信号RFoutの歪みを抑制できる。
【0053】
図4は、第1の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。図4において、縦軸は、通過位相(deg)を表し、横軸は、出力電力(dBm)を表す。
【0054】
線101は、制御信号S=0.1mA(ミリアンペア)の場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線102は、制御信号S=0.2mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線103は、制御信号S=0.3mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線104は、制御信号S=0.4mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線105は、制御信号S=0.5mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。
【0055】
線101から線105で示すように、通過位相は、出力電力が変化しても殆ど変化しない。また、通過位相は、制御信号Sが異なっていても殆ど差がない。
【0056】
[4]
トランジスタQのエミッタと基準電位との間に抵抗を挿入すれば、過電流に対するダメージのリスクを軽減することができる。
【0057】
例えば、トランジスタQのベースに、高い電圧が制限されずに印加されることがあり得る。その結果、トランジスタQのベース-エミッタ間に大きな電圧が掛かり、コレクタ-エミッタ間に大電流が流れ、トランジスタQが大きなダメージを受けることが考えられる。
【0058】
しかし、トランジスタQのエミッタと基準電位との間に抵抗を挿入すれば、トランジスタQのベースに大きな電圧が印加されコレクタに電流が流れると、抵抗で電圧降下が発生し、トランジスタQのエミッタ電位が上昇する。結果として、トランジスタQのベース-エミッタ間に大きな電圧が掛かることが抑制されるので、トランジスタQが大きなダメージを受けることが抑制される。
【0059】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の構成要素のうち、第1の実施の形態の構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
(構成)
図5は、第2の実施の形態の利得可変の増幅器の構成を示す図である。
【0061】
増幅器31Aは、増幅器31(図2参照)と比較して、トランジスタQと、コンデンサCと、抵抗R及びRと、を更に含む。
【0062】
トランジスタQが、本開示の「第3トランジスタ」の一例に相当する。
【0063】
抵抗Rの一端は、電源電位に電気的に接続されている。抵抗Rの他端は、トランジスタQのコレクタ及びコンデンサCの一端に電気的に接続されている。
【0064】
抵抗Rの一端は、トランジスタQのエミッタ及びトランジスタQのコレクタに電気的に接続されている。抵抗Rの他端は、トランジスタQのエミッタに電気的に接続されている。
【0065】
トランジスタQのベースは、コンデンサCの一端に電気的に接続されている。コンデンサCの他端は、基準電位に電気的に接続されている。つまり、トランジスタQは、ベース接地増幅器である。トランジスタQのベースは、トランジスタQ11のコレクタ及びベースに電気的に接続されており、トランジスタQ11のコレクタ及びベースの電圧が供給される。
【0066】
トランジスタQは、トランジスタQが出力する高周波信号を増幅して、増幅後の高周波信号をコレクタから出力する。
【0067】
トランジスタQ11のコレクタ及びベースの電圧は、トランジスタQのベース及びトランジスタQのベースに共用されている。電流引き抜き回路44は、トランジスタQのエミッタ及びトランジスタQのエミッタに共用されている。
【0068】
(効果)
[1]
第1の実施の形態の増幅器31(図2参照)では、利得制御される増幅トランジスタは、エミッタフォロア増幅器であるトランジスタQの1個だけである。エミッタフォロア増幅器であるトランジスタQは、電圧増幅は行わない(電圧増幅率=1)。そのため、増幅器31は、利得を制御できる幅が狭い。
【0069】
一方、増幅器31Aは、トランジスタQを含み、電圧増幅を行うことができ、利得制御範囲を拡大することができる。
【0070】
図6は、第1の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。図6において、縦軸は、利得(dB)を表し、横軸は、出力電力(dBm)を表す。
【0071】
線111は、制御信号S=0.1mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線112は、制御信号S=0.2mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線113は、制御信号S=0.3mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線114は、制御信号S=0.4mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線115は、制御信号S=0.5mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。
【0072】
図6に示すように、増幅器31では、可変できる利得の範囲が1dBに満たない場合も存在する。
【0073】
図7は、第2の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。図7において、縦軸は、利得(dB)を表し、横軸は、出力電力(dBm)を表す。
【0074】
線121は、制御信号S=0.1mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線122は、制御信号S=0.2mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線123は、制御信号S=0.3mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線124は、制御信号S=0.4mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。線125は、制御信号S=0.5mAの場合の、利得と出力電力との関係を示す図である。
【0075】
図7に示すように、増幅器31Aは、増幅器31と比べて、可変できる利得の範囲を拡大できる。
【0076】
なお、トランジスタQ及びトランジスタQは、バイアス回路42及び電流引き抜き回路44を共用している。従って、増幅器31Aは、回路要素の増加を抑制できる。
【0077】
[2]
トランジスタQをバイポーラトランジスタとした場合、以下の効果がある。
【0078】
ベース接地増幅器では、半導体素子構造上、入出力端子間(エミッタ-コレクタ間)に直接的な接合はなく、寄生容量は極めて少ない。そのため、通過位相の出力電力依存性も少なく、エミッタ接続増幅器と比べて優れている。
【0079】
図8は、第2の実施の形態の利得可変の増幅器の回路シミュレーション結果を示す図である。図8において、縦軸は、通過位相(deg)を表し、横軸は、出力電力(dBm)を表す。
【0080】
線131は、制御信号S=0.1mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線132は、制御信号S=0.2mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線133は、制御信号S=0.3mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線134は、制御信号S=0.4mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。線135は、制御信号S=0.5mAの場合の、通過位相と出力電力との関係を示す図である。
【0081】
図8に示すように、増幅器31Aでは、出力電力が変化しても数度の位相変化しか発生していない。また、増幅器31Aでは、制御信号Sが変化しても数度の位相変化しか発生していない。
【0082】
このように、増幅器31Aは、位相変化を抑制しながら、利得を制御することが可能となる。
【0083】
<本開示の構成例>
本開示は、下記の構成をとることもできる。
【0084】
(1)
1つ又は複数の増幅器を含むキャリアアンプと、
1つ又は複数の増幅器を含むピークアンプと、
を含み、
少なくとも1つの前記増幅器は、
第1高周波信号がベース又はゲートに入力され、前記第1高周波信号を増幅した第2高周波信号をエミッタ又はソースから出力する第1トランジスタと、
制御信号に基づく電流を前記第1トランジスタのエミッタ又はソースから引き抜く電流引き抜き回路と、
を含む、
ドハティ増幅回路。
【0085】
(2)
上記(1)に記載のドハティ増幅回路であって、
前記電流引き抜き回路は、
コレクタ又はドレインが前記第1トランジスタのエミッタに電気的に接続され、前記制御信号がベース又はゲートに入力され、エミッタ又はソースが基準電位に電気的に接続された第2トランジスタを含む、
ドハティ増幅回路。
【0086】
(3)
上記(1)又は(2)に記載のドハティ増幅回路であって、
エミッタ又はソースが前記第1トランジスタのエミッタ及び前記電流引き抜き回路に電気的に接続され、ベース又はゲートが交流的に接地され、前記第2高周波信号を増幅後の第3高周波信号をコレクタ又はドレインから出力する第3トランジスタを更に含む、
ドハティ増幅回路。
【0087】
(4)
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のドハティ増幅回路であって、
前記制御信号は、高周波信号の包絡線、電源電圧、温度、前記キャリアアンプの飽和状態及び反射電力の内の少なくとも1つに基づいて変化する、
ドハティ増幅回路。
【0088】
なお、上記した実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 ドハティ増幅回路
11 ディバイダ
12 キャリアアンプ
13 ピークアンプ
14 結合器
21、22、31、31A、32 増幅器
41 定電流源
42 バイアス回路
43 制御回路
44 電流引き抜き回路
、Q、Q、Q11、Q12 トランジスタ
、C、C コンデンサ
、R、R11 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8