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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024057347
(43)【公開日】2024-04-24
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240417BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240417BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164031
(22)【出願日】2022-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 淳仁
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA26
5J097BB15
5J097CC05
5J097JJ03
5J097JJ09
5J097KK03
5J097KK04
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐電力性を高めるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置10は、直列腕共振子と、複数の並列腕共振子とが構成されている圧電性基板2と、圧電性基板に接合されている第1~第6のパッケージ層12a~12fとが積層されたパッケージ基板12と、を備える。第1のパッケージ層12aの、第2のパッケージ層12bが積層されている第2の面12yには、第1の配線電極6が設けられている。平面視において、圧電性基板が2対の対辺を有し、各1対の対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置する中央領域Cに、複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子P3の一部が位置している。第1の配線電極は、複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子P3の中央領域Cに位置している部分と平面視において重なっている、重なり部6xを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、
前記圧電性基板において構成されている少なくとも1つの直列腕共振子と、
前記圧電性基板において構成されている複数の並列腕共振子と、
少なくとも、前記圧電性基板に接合されている第1のパッケージ層と、前記第1のパッケージ層に積層されている第2のパッケージ層と、前記第2のパッケージ層に積層されている第3のパッケージ層と、を有するパッケージ基板と、
を備え、
前記第1のパッケージ層が、前記圧電性基板に接合されている第1の面と、前記第1の面に対向している第2の面と、を有し、前記第2の面に前記第2のパッケージ層が積層されており、
前記第1のパッケージ層の前記第1の面または前記第2の面に設けられている配線電極をさらに備え、
平面視において、前記圧電性基板が2対の対辺を有し、前記圧電性基板における、1対の前記対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置し、かつ他の1対の前記対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置する領域が中央領域であり、
前記圧電性基板の前記中央領域に、前記複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子の少なくとも一部が位置しており、
前記配線電極が、前記複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子が前記中央領域に位置している部分と、平面視において重なっている、重なり部を有する、フィルタ装置。
【請求項2】
前記配線電極が、前記第1のパッケージ層の前記第2の面に設けられている、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記配線電極が、直線部と、コーナー部と、を有し、前記直線部の幅が、前記コーナー部の幅よりも狭く、
前記配線電極の前記重なり部が前記直線部を含む、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記配線電極の前記重なり部が前記直線部のみを含む、請求項3に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記配線電極が第1の配線電極であり、
前記パッケージ基板における、前記第2のパッケージ層の前記圧電性基板側の面に設けられている、少なくとも1つの第2の配線電極をさらに備え、
前記第1の配線電極の前記重なり部の幅が、前記第2の配線電極の幅よりも狭い、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記第1の配線電極の前記重なり部の幅が、前記第1の配線電極における前記重なり部以外の部分の幅以下である、請求項5に記載のフィルタ装置。
【請求項7】
前記配線電極が第1の配線電極であり、
前記パッケージ基板における前記第3のパッケージ層の前記圧電性基板側の面に設けられている、少なくとも1つの第3の配線電極をさらに備え、
前記第1の配線電極の前記重なり部が、平面視において、前記第3の配線電極と重なっていない、請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項8】
前記パッケージ基板が、前記第3のパッケージ層よりも、前記圧電性基板から遠ざかる方向に積層されている、少なくとも1層のパッケージ層をさらに有し、
前記パッケージ基板における前記第1のパッケージ層、前記第2のパッケージ層及び前記第3のパッケージ層以外の前記パッケージ層の面のうちいずれかに設けられている、少なくとも1つの第4の配線電極をさらに備え、
前記第1の配線電極の前記重なり部が、平面視において、前記第4の配線電極と重なっていない、請求項7に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波共振子を有するフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波共振子を有するフィルタ装置は携帯電話機などに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波共振子を用いたフィルタ装置としての、分波器の一例が開示されている。この分波器は、2つのフィルタを有する。一方のフィルタは直列共振子及び並列共振子を含む。並列共振子は、接続配線によりグラウンド端子に接続されている。他方のフィルタは、他の接続配線によってグラウンド端子に接続されている。直列共振子、並列共振子、または直列共振子及び並列共振子を接続している配線と電磁界結合するための接続配線が、上記のグラウンド端子に接続された各接続配線と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/105337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された分波器においては、並列共振子及びグラウンド端子を接続する接続配線に接続される配線が多い。そのため、並列共振子の放熱性が高くなる。この場合には、従来の知見においては、並列共振子の温度が上昇し難く、フィルタ装置の耐電力性は高くなる。これに対して、本発明者は、並列共振子の放熱性が高くなると、フィルタ装置において、耐電力性が低くなる場合があることを見出した。
【0005】
本発明の目的は、耐電力性を高めることができる、フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフィルタ装置は、圧電性基板と、前記圧電性基板において構成されている少なくとも1つの直列腕共振子と、前記圧電性基板において構成されている複数の並列腕共振子と、少なくとも、前記圧電性基板に接合されている第1のパッケージ層と、前記第1のパッケージ層に積層されている第2のパッケージ層と、前記第2のパッケージ層に積層されている第3のパッケージ層とを有するパッケージ基板とを備え、前記第1のパッケージ層が、前記圧電性基板に接合されている第1の面と、前記第1の面に対向している第2の面とを有し、前記第2の面に前記第2のパッケージ層が積層されており、前記第1のパッケージ層の前記第1の面または前記第2の面に設けられている配線電極をさらに備え、平面視において、前記圧電性基板が2対の対辺を有し、前記圧電性基板における、1対の前記対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置し、かつ他の1対の前記対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置する領域が中央領域であり、前記圧電性基板の前記中央領域に、前記複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子の少なくとも一部が位置しており、前記配線電極が、前記複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子が前記中央領域に位置している部分と、平面視において重なっている、重なり部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るフィルタ装置によれば、耐電力性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の略図的正面断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態における圧電性基板上の電極構成を示す略図的透視平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態における第1のパッケージ層上の電極構成を示す略図的平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態における第2のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。
図6】本発明の第1の実施形態における第3のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。
図7】本発明の第1の実施形態における第4のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。
図8】本発明の第1の実施形態における第5のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。
図9】本発明の第1の実施形態における第6のパッケージ層の、圧電性基板から遠い側の面を示す略図的透視平面図である。
図10】本発明の第1の実施形態における並列腕共振子の電極構成を示す透視平面図である。
図11】本発明の第1の実施形態及び比較例のフィルタ装置の、温度が十分に上昇した状態における減衰量周波数特性と、第1の実施形態のフィルタ装置の、温度が上昇していない状態における減衰量周波数特性とを示す図である。
図12図11の拡大図であって、フィルタ装置に電力を印加する周波数付近を示す図である。
図13】本発明の第1の実施形態における第1の配線電極の一部を示す平面図である。
図14】本発明の第1の実施形態の変形例における第1の配線電極の一部を示す平面図である。
図15】本発明の第2の実施形態における第2のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置の回路図である。
【0012】
フィルタ装置10はラダー型フィルタである。フィルタ装置10は、第1の信号端子3Aと、第2の信号端子3Bと、複数のグラウンド端子4と、複数の直列腕共振子と、複数の並列腕共振子とを有する。第1の信号端子3Aは入力電位に接続される。第2の信号端子3Bは出力電位に接続される。グラウンド端子4は基準電位に接続される。
【0013】
複数の直列腕共振子は、具体的には、直列腕共振子S1、直列腕共振子S2、直列腕共振子S3、直列腕共振子S4及び直列腕共振子S5である。複数の並列腕共振子は、具体的には、並列腕共振子P1、並列腕共振子P2、並列腕共振子P3及び並列腕共振子P4である。本実施形態においては、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子は全て弾性波共振子である。複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子は、本実施形態においては、並列腕共振子P3である。
【0014】
フィルタ装置10はBand7の送信フィルタである。具体的には、フィルタ装置10の通過帯域は、2500MHz~2570MHzである。なお、フィルタ装置10の通過帯域は上記に限定されない。さらに、フィルタ装置10は受信フィルタであってもよい。あるいは、本発明に係るフィルタ装置は、2つ以上のフィルタを含むマルチプレクサであってもよい。以下において、本実施形態における弾性波共振子の具体的な構成を示す。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係るフィルタ装置の略図的正面断面図である。なお、図2においては、配線などの位置を略図的に示しており、他の平面図における配線などとは位置が異なることがある。図2においては、共振子を、矩形に2本の対角線を加えた略図により示す。後述する略図的平面図などにおいても同様である。
【0016】
フィルタ装置10は、弾性波フィルタチップ1と、パッケージ基板12とを有する。弾性波フィルタチップ1は、圧電性基板2と、上記複数の直列腕共振子と、上記複数の並列腕共振子とを有する。複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子は、圧電性基板2において構成されている。弾性波フィルタチップ1は、パッケージ基板12にフリップチップ実装されている。本実施形態では、フィルタ装置10はCSP(Chip Size Package)構造である。もっとも、本発明に係るフィルタ装置においては、WLP(Wafer Level Package)構造の弾性波フィルタチップ1がパッケージ基板12に実装されていてもよい。
【0017】
パッケージ基板12上には、弾性波フィルタチップ1を覆うように、封止樹脂層11が設けられている。なお、封止樹脂層11は必ずしも設けられていなくともよい。
【0018】
パッケージ基板12は6層の積層基板である。具体的には、パッケージ基板12においては、第1のパッケージ層12a、第2のパッケージ層12b、第3のパッケージ層12c、第4のパッケージ層12d、第5のパッケージ層12e及び第6のパッケージ層12fがこの順序で積層されている。より具体的には、第1のパッケージ層12aは、第1の面12x及び第2の面12yを有する。第1の面12x及び第2の面12yは互いに対向している。第1の面12xが、パッケージ基板12における最も外側の面のうち一方である。パッケージ基板12における最も外側の面のうち他方は、第6のパッケージ層12fに含まれる。第1のパッケージ層12aの第2の面12yに、第2のパッケージ層12bが積層されている。
【0019】
なお、パッケージ基板12の層数は3層以上であればよい。よって、パッケージ基板12においては、第1のパッケージ層12aに第2のパッケージ層12bが積層されており、第2のパッケージ層12bに第3のパッケージ層12cが積層されていればよい。
【0020】
第1のパッケージ層12aの第1の面12xに、弾性波フィルタチップ1の圧電性基板2が接合されている。このように、パッケージ基板12においては、複数のパッケージ層のうち、第1のパッケージ層12aが最も圧電性基板2側に位置している。そして、第2のパッケージ層12bから第6のパッケージ層12fまでが、圧電性基板2から遠ざかる方向に積層されている。各パッケージ層の材料としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂や適宜のセラミックスなどを用いることができる。
【0021】
以下においては、図2などにおける上方に相当する方向からフィルタ装置10を見ることを、平面視と記載する。例えば、図2においては、圧電性基板2側及びパッケージ基板12側のうち、圧電性基板2側が上方である。
【0022】
図3は、第1の実施形態における圧電性基板上の電極構成を示す略図的透視平面図である。
【0023】
圧電性基板2は主面2aを有する。圧電性基板2の主面2aに複数の機能電極が設けられている。これにより、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子が構成されている。なお、本実施形態では、機能電極はIDT(Interdigital Transducer)電極である。平面視において、圧電性基板2は矩形の形状を有する。よって、平面視において、圧電性基板2は2対の対辺を有する。具体的には、圧電性基板2の主面2aが2対の対辺を有する。より具体的には、主面2aは、第1の辺2c、第2の辺2d、第3の辺2e及び第4の辺2fを有する。2対の対辺のうち1対の対辺は、第1の辺2c及び第3の辺2eである。他の1対の対辺は、第2の辺2d及び第4の辺2fである。なお、圧電性基板2の平面視における形状は上記に限定されない。圧電性基板2は、平面視において、少なくとも2対の対辺を有していればよい。
【0024】
圧電性基板2における、1対の対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置し、かつ他の1対の対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置する領域が中央領域Cである。中央領域Cには、複数の並列腕共振子のうち、共振周波数が最も高い並列腕共振子P3の一部が位置している。なお、中央領域Cに、並列腕共振子P3の全体が位置していてもよい。
【0025】
圧電性基板2の主面2aには、複数の電極パッドが設けられている。複数の電極パッドは、具体的には、上記の第1の信号端子3A、第2の信号端子3B及び複数のグラウンド端子4である。図2に示すように、各電極パッドには、導電性接合部材としてのバンプ5が接合されている。そして、バンプ5により、弾性波フィルタチップ1がパッケージ基板12に接合されている。もっとも、導電性接合部材として、例えば、導電性接着剤などが用いられてもよい。
【0026】
図4は、第1の実施形態における第1のパッケージ層上の電極構成を示す略図的平面図である。図5は、第1の実施形態における第2のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。図6は、第1の実施形態における第3のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。図7は、第1の実施形態における第4のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。図8は、第1の実施形態における第5のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。図9は、第1の実施形態における第6のパッケージ層の、圧電性基板から遠い側の面を示す略図的透視平面図である。
【0027】
なお、図4図8においては、一点鎖線により、図3に示した圧電性基板2の中央領域C、及びフィルタ装置10の共振周波数が最も高い並列腕共振子P3と平面視において重なっている部分を示す。加えて、図4及び5においては、後述する重なり部6xを、ハッチングを付して示す。図6図8においては、該重なり部6xと平面視において重なっている部分を、ハッチングを付して示す。
【0028】
図4に示すように、第1のパッケージ層12aの第1の面12xには、複数の実装用電極ランド13が設けられている。これらの実装用電極ランド13に、図2に示したバンプ5により、弾性波フィルタチップ1が接合されている。
【0029】
一方で、パッケージ基板12内に複数の配線パターンが設けられている。図5図8は、各パッケージ層の圧電性基板2側の面にそれぞれ、配線パターンが設けられていることを示している。
【0030】
より詳細には、図2に示すように、各パッケージ層同士の間にそれぞれ、複数の配線パターンが設けられている。本実施形態においては、パッケージ層の圧電性基板2側の面に設けられた配線パターンは、該パッケージ層の圧電性基板2側に隣接したパッケージ層に埋め込まれている。本明細書においては、パッケージ層の一方の面側から埋め込まれた配線パターンも、該面に設けられた配線パターンであるとする。例えば、第2のパッケージ層12bの圧電性基板2側の面に設けられた配線パターンは、第1のパッケージ層12aの第2の面12y側から、第1のパッケージ層12aに埋め込まれている。この場合、第2のパッケージ層12bの圧電性基板2側の面に設けられた配線パターンは、第1のパッケージ層12aの第2の面12yに設けられた配線パターンでもある。
【0031】
なお、パッケージ層における圧電性基板2から遠い側の面に設けられた配線パターンが、該パッケージ層の圧電性基板2から遠い側に隣接したパッケージ層に埋め込まれていてもよい。
【0032】
他方、図9に示すように、第6のパッケージ層12fにおける圧電性基板2から遠い側の面には、複数の外部接続用電極ランド15が設けられている。より具体的には、図2に示すように、複数の外部接続用電極ランド15が設けられている面は、パッケージ基板12の最も外側に位置している面である。
【0033】
各パッケージ層を貫通するように、複数の貫通電極14が設けられている。複数の貫通電極14のうち一部の貫通電極14は、第1のパッケージ層12aにおける実装用電極ランド13と、第2のパッケージ層12bにおける電極パターンとを接続している。他の一部の貫通電極14は、各パッケージ層の配線パターン同士を接続している。残りの一部の貫通電極14は、第5のパッケージ層12eにおける配線パターン、及び第6のパッケージ層12fにおける外部接続用電極ランド15を接続している。弾性波フィルタチップ1は、実装用電極ランド13、貫通電極14、各パッケージ層における配線パターン及び外部接続用電極ランド15を介して、外部に電気的に接続される。
【0034】
ここで、図4及び図5に示すように、第1のパッケージ層12aの第2の面12y、及び第2のパッケージ層12bの圧電性基板2側の面には、第1の配線電極6が設けられている。第1の配線電極6が、本発明における配線電極である。第1の配線電極6は重なり部6xを有する。重なり部6xとは、複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子P3が中央領域Cに位置している部分と、平面視において重なっている部分である。なお、第1の配線電極6は、パッケージ基板12内の配線パターンではなくともよい。第1の配線電極6は、第1のパッケージ層12aの第1の面12xに設けられていてもよい。
【0035】
本実施形態の特徴は、第1の配線電極6が重なり部6xを有することにある。それによって、フィルタ装置10の弾性波フィルタチップ1における耐電力性を高めることができる。第1の配線電極6は、第1のパッケージ層12aの第1の面12xまたは第2の面12yに設けられていればよい。本実施形態の上記効果の詳細を、フィルタ装置の回路構成や並列腕共振子P3などの構成の詳細と共に、以下において説明する。
【0036】
図1に示すように、第1の信号端子3A及び第2の信号端子3Bの間に、直列腕共振子S1、直列腕共振子S2、直列腕共振子S3、直列腕共振子S4及び直列腕共振子S5がこの順序で、互いに直列に接続されている。直列腕共振子S1及び直列腕共振子S2の間の接続点とグラウンド端子4との間に、並列腕共振子P1が接続されている。直列腕共振子S2及び直列腕共振子S3の間の接続点とグラウンド端子4との間に、並列腕共振子P2が接続されている。直列腕共振子S3及び直列腕共振子S4の間の接続点とグラウンド端子4との間に、並列腕共振子P3が接続されている。直列腕共振子S4及び直列腕共振子S5の間の接続点とグラウンド端子4との間に、並列腕共振子P4が接続されている。
【0037】
なお、フィルタ装置10の回路構成は上記に限定されない。フィルタ装置10は、少なくとも1つの直列腕共振子と、複数の並列腕共振子とを有していればよい。もっとも、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子が設けられていることが好ましい。この場合には、フィルタ特性を良好とし易い。
【0038】
図10は、第1の実施形態における並列腕共振子の電極構成を示す透視平面図である。なお、図10においては、並列腕共振子P3に接続された配線は省略している。
【0039】
並列腕共振子P3は、他の弾性波共振子と共に、圧電性基板2を共有している。圧電性基板2は、圧電材料のみからなる基板である。本実施形態においては、圧電材料として、LiTaOなどのタンタル酸リチウムが用いられている。もっとも、圧電性基板2の圧電材料は上記に限定されず、例えば、LiNbOなどのニオブ酸リチウムを用いることもできる。なお、圧電性基板2は、圧電体層を含む積層基板であってもよい。
【0040】
圧電性基板2の主面2aに、機能電極としてのIDT電極17と、1対の反射器16A及び反射器16Bが設けられている。IDT電極17に交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。IDT電極17は、第1のバスバー18a及び第2のバスバー18bと、複数の第1の電極指19a及び複数の第2の電極指19bとを有する。第1のバスバー18a及び第2のバスバー18bは互いに対向している。第1のバスバー18aに、複数の第1の電極指19aの一端がそれぞれ接続されている。第2のバスバー18bに、複数の第2の電極指19bの一端がそれぞれ接続されている。複数の第1の電極指19a及び複数の第2の電極指19bは互いに間挿し合っている。第1の電極指19a及び第2の電極指19bは、互いに異なる電位に接続される。以下においては、第1の電極指19a及び第2の電極指19bを単に電極指と記載することがある。
【0041】
複数の電極指が延びる方向を電極指延伸方向とし、電極指延伸方向と直交する方向からIDT電極17を見たときに、隣り合う電極指同士が重なり合っている領域が交叉領域Aである。交叉領域Aにおいて弾性波が励振される。なお、本実施形態においては、電極指延伸方向と直交する方向は、弾性波伝搬方向と平行である。
【0042】
1対の反射器16A及び反射器16Bは、電極指延伸方向と直交する方向において、IDT電極17を挟み互いに対向している。反射器16A及び反射器16Bはそれぞれ、複数の電極指を有する。反射器16A及び反射器16Bのそれぞれにおいて、複数の電極指の両端が短絡されている。
【0043】
図1に示した、並列腕共振子P3以外の各並列腕共振子及び各直列腕共振子もそれぞれ、並列腕共振子P3と同様に、IDT電極及び反射器を有する。本実施形態においては、複数の直列腕共振子及び複数の並列腕共振子はいずれも、弾性表面波共振子である。
【0044】
第1の実施形態及び比較例を比較することにより、第1の実施形態において耐電力性を高められることを示す。比較例は、第2のパッケージ層に設けられた配線パターンの配置のみにおいて、第1の実施形態と異なる。具体的には、比較例は、第2のパッケージ層に設けられた配線パターンが、図5に示した重なり部6xを有しない点において、第1の実施形態と異なる。第1の実施形態及び比較例において、減衰量周波数特性を比較した。
【0045】
なお、第1の実施形態及び比較例のフィルタ装置の設計パラメータは、表1に示す通りである。表1における弾性波共振子を示す符号は、本明細書における直列腕共振子及び並列腕共振子を示す符号と一致する。以下においては、交叉領域の電極指延伸方向に沿う寸法を交叉幅とする。IDT電極の波長は、IDT電極の電極指ピッチにより規定される波長である。反射器の波長は、反射器の電極指ピッチにより規定される波長である。なお、電極指ピッチとは、隣り合う電極指同士の電極指延伸方向と直交する方向における中心間距離である。IDT電極における電極指ピッチは、具体的には、隣り合う第1の電極指及び第2の電極指の中心間距離である。第1の電極指の先端及び第2のバスバーの間の距離、または第2の電極指の先端及び第1のバスバーの間の距離を電極間ギャップ長とする。
【0046】
【表1】
【0047】
第1の実施形態及び比較例における、減衰量周波数特性の比較の結果を、図11により示す。なお、図11においては、第1の実施形態及び比較例のフィルタ装置に電力を印加してから、十分に時間が経過し、温度が十分に上昇した状態における減衰量周波数特性を示す。加えて、図11においては、第1の実施形態のフィルタ装置に電力を印加した直後の、温度が上昇していない状態における減衰量周波数特性も示す。なお、第1の実施形態及び比較例においては、フィルタ装置に電力を印加した直後の、温度が上昇していない状態における減衰量周波数特性はほぼ変わらない。
【0048】
図11は、第1の実施形態及び比較例のフィルタ装置の、温度が十分に上昇した状態における減衰量周波数特性と、第1の実施形態のフィルタ装置の、温度が上昇していない状態における減衰量周波数特性とを示す図である。図12は、図11の拡大図であって、フィルタ装置に電力を印加する周波数付近を示す図である。以下においては、フィルタ装置に電力を印加する周波数を、電力印加周波数と記載することがある。図12では、電力印加周波数を二点鎖線により示す。
【0049】
図11及び図12に示すように、第1の実施形態においては、温度が上昇していない状態から温度が上昇した状態にかけて、減衰量周波数特性が全体的に低域側に移動している。なお、上述したように、第1の実施形態及び比較例においては、温度が上昇していない状態における減衰量周波数特性はほぼ変わらない。よって、比較例においても、温度の上昇により、減衰量周波数特性が全体的に低域側に移動していることがわかる。
【0050】
図12中の二点鎖線により示す電力印加周波数においては、比較例における挿入損失の大きさは5dBである。これに対して、第1の実施形態では、電力印加周波数における挿入損失の大きさは4.8dBと小さくなっている。電力印加周波数において挿入損失が小さくなると、機能電極において生じる熱量も低くなる。よって、第1の実施形態においては、機能電極としてのIDT電極が破損し難く、フィルタ装置の耐電力性を高めることができる。これは、図12に示すように、第1の実施形態では、通過帯域の低域側において、温度の上昇による周波数の移動量が大きいことによる。具体的には、通過帯域の低域側において、第1の実施形態では比較例よりも、温度の上昇による周波数の移動量が0.2MHz大きい。
【0051】
図1に示す第1の実施形態のフィルタ装置10のようなラダー型フィルタにおいては、通過帯域を構成している並列腕共振子の反共振周波数が通過帯域内に位置している。一方で、該並列腕共振子の共振周波数は、通過帯域よりも低域側に位置している。なお、並列腕共振子における共振周波数が高いほど、該共振周波数は、ラダー型フィルタの通過帯域に近い。そのため、ラダー型フィルタの並列腕共振子のうち、共振周波数が最も高い並列腕共振子の共振周波数の変化量の、通過帯域の低域側における周波数の移動量に対する影響は、特に大きい。
【0052】
上記のように、第1の実施形態においては、複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子は、並列腕共振子P3である。フィルタ装置10においては、並列腕共振子P3の放熱性を敢えて低くすることによって、並列腕共振子P3の温度の変化を大きくすることができている。例えば、シミュレーションを行った結果、該並列腕共振子P3に相当する共振子の温度を、他の共振子よりも21℃程度高くできることがわかっている。これにより、並列腕共振子P3の共振周波数の変化量を大きくすることができ、通過帯域の低域側における周波数の移動量を大きくすることができる。この結果、電力印加周波数において挿入損失を小さくすることができ、IDT電極が破損するほどの熱量を生じ難くすることができる。
【0053】
より詳細には、フィルタ装置10に電力を印加した際には、各弾性波共振子だけではなく、図2に示すパッケージ基板12における各配線パターンにも電力が印加される。これにより、各配線パターンにおいて熱が生じる。そして、パッケージ基板12における配線パターンのうち、第2のパッケージ層12bに設けられている配線パターンが、各弾性波共振子に特に近い。そして、第1の実施形態では、第2のパッケージ層12bにおける第1の配線電極6が、並列腕共振子P3と平面視において重なっている。そのため、パッケージ基板12における、並列腕共振子P3と対向している部分の温度が高くなっている。これにより、弾性波フィルタチップ1及びパッケージ基板12の間の空間に、並列腕共振子P3から放熱されることを抑制できる。
【0054】
加えて、並列腕共振子P3が平面視において第1の配線電極6と重なっている部分は、並列腕共振子P3における、圧電性基板2の中央領域Cに位置している部分である。そのため、並列腕共振子P3は、圧電性基板2上の電極パッドから遠い部分を含む。さらに、並列腕共振子P3が、他の弾性波共振子により囲まれた配置となり易い。これらにより、並列腕共振子P3の放熱性をより確実に低くすることができる。
【0055】
以上のように、第1の実施形態においては、フィルタ装置10に電力を印加した際、複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い、並列腕共振子P3の温度の変化を大きくすることができる。よって、上記のように、通過帯域の低域側における周波数の移動量を大きくすることができ、電力印加周波数において挿入損失を小さくすることができる。従って、IDT電極17が破損するほどの熱量を生じ難くすることができ、フィルタ装置10の耐電力性を高くすることができる。
【0056】
以下において、本実施形態の構成のさらなる詳細を説明する。
【0057】
図13は、第1の実施形態における第1の配線電極の一部を示す平面図である。
【0058】
第1の配線電極6は直線部6a及びコーナー部6bを有する。直線部6a及びコーナー部6bが接続されている。直線部6aは2つの端縁部を有する。2つの端縁部は互いに対向しており、かつ平行に延びている。なお、本明細書において、直線部6aの2つの端縁部が平行に延びているとは、2つの端縁部がなす角度が0°±5°以内であることをいう。直線部6aが延びる方向は、2つの端縁部の中点を結んだ線が延びる方向である。
【0059】
図13においては、直線部6a及びコーナー部6bの境界を破線により示す。直線部6a及びコーナー部6bの境界は、平面視において、直線部6aが延びる方向と直交する方向に延びている線である。より具体的には、該境界の線は、直線部6aの2つの端縁部のうち少なくとも一方を通る線である。
【0060】
図13に示すように、直線部6aの幅は、コーナー部6bの幅よりも狭い。なお、直線部6aの幅は、直線部6aが延びる方向と直交する方向に沿う、該直線部6aの寸法である。第1の実施形態では、第1の配線電極6のコーナー部6bの幅は、コーナー部6bの外周縁または内周縁の接線と直交する線の、コーナー部6b上における寸法である。図13に示す第1の配線電極6においては、直線部6aの幅の値はW1である。一方で、コーナー部6bの幅の値はW1+W2である。よって、直線部6aの幅はコーナー部6bの幅よりも狭い。
【0061】
配線電極においては、幅が狭いほど電気抵抗は高い。配線電極の電気抵抗が高いほど、該配線電極に電力を印加した場合に生じる熱量は大きい。そして、第1の配線電極6においては、直線部6aの幅はコーナー部6bの幅よりも狭い。よって、第1の配線電極6に電力を印加した際、直線部6aにおける温度を効果的に高くすることができる。図5に示すように、第1の実施形態では、重なり部6xが直線部6aを含む。すなわち、フィルタ装置10の共振周波数が最も高い並列腕共振子P3における中央領域Cに位置する部分と、平面視において重なっている部分が、直線部6aを含む。それによって、並列腕共振子P3の放熱性を効果的に低くすることができ、電力印加周波数における挿入損失を効果的に小さくすることができる。従って、フィルタ装置10の耐電力性を効果的に高くすることができる。
【0062】
重なり部6xが直線部6aのみを含むことが好ましい。それによって、並列腕共振子の放熱性をより確実に、効果的に低くすることができる。従って、フィルタ装置の耐電力性をより確実に、効果的に高めることができる。もっとも、重なり部6xは、コーナー部6bを含んでいてもよい。
【0063】
なお、コーナー部6bにおいて、外周縁の接線と直交する線を通る内周縁の点に着目したときに、内周縁の当該点を通る接線は、上記外周縁の接線とは平行ではないこともある。そのため、外周縁に接する接線を基準とするか、内周縁に接する接線を基準とするかによって、コーナー部6bの幅の値が異なることもある。あるいは、コーナー部6bの位置によって、幅は異なる。一方で、直線部6aの2つの端縁部がなす角度が、0°ではない場合には、直線部6aの幅は、位置によって異なる。これらの場合においても、直線部6aにおける最も広い幅が、コーナー部6bの最も狭い幅よりも狭いことが好ましい。これにより、フィルタ装置10の耐電力性をより確実に、効果的に高めることができる。
【0064】
コーナー部6bの形状や、幅の基準となる接線が接する外周縁の位置によっては、該接線に直交する線が、直線部6aに至ることもある。この場合には、外周縁における接線が接する点と、内周縁における、直線部6aとの境界に位置する点と間の距離を、コーナー部6bの当該部分の幅とすればよい。同様に、内周縁に接する接線に直交する線が、直線部6aに至る場合には、内周縁における接線が接する点と、外周縁における、直線部6aとの境界に位置する点と間の距離を、コーナー部6bの当該部分の幅とすればよい。
【0065】
なお、コーナー部6bの内周縁は、例えば、点として構成されていてもよい。図14に示す第1の実施形態の変形例においては、コーナー部26bの外周縁は曲線である。他方、内周縁は直線状の端縁部同士が接続された点として構成されている。本変形例では、直線部6aの幅と、コーナー部26bの幅とが同じとされている。もっとも、本変形例においても、第1の実施形態と同様に、第1の配線電極26は重なり部6xを有する。それによって、フィルタ装置の耐電力性を高めることができる。
【0066】
本変形例のコーナー部26bの外周縁に相当する部分が、例えば、直線状であっても構わない。この場合においても、本変形例と同様に、フィルタ装置の耐電力性を高めることができる。
【0067】
図4においては省略しているが、図5に示すように、第1のパッケージ層12aの第2の面12y、及び第2のパッケージ層12bの圧電性基板2側の面には、第1の配線電極6以外に、複数の第2の配線電極7が設けられている。さらに、パッケージ基板12内には、第1の配線電極6及び第2の配線電極7以外の配線パターンも設けられている。
【0068】
具体的には、図6に示す、第3のパッケージ層12cの圧電性基板2側の面に設けられた配線パターンは、第3の配線電極8である。第1の実施形態においては、第3の配線電極8は、平面視において、第1の配線電極6の重なり部6xと重なっていない。よって、第1の配線電極6の重なり部6xから第3の配線電極8に、熱が伝搬し難い。これにより、並列腕共振子P3の放熱性をより確実に低くすることができる。もっとも、第3の配線電極8の配置は上記に限定されない。第3の配線電極8は、第1の配線電極6の重なり部6xと、平面視において重なっていてもよい。
【0069】
図2に示す、第1のパッケージ層12a、第2のパッケージ層12b及び第3のパッケージ層12c以外のパッケージ層の圧電性基板2側の面に設けられた配線パターンは、第4の配線電極9である。第1の実施形態においては、図7及び図8に示すように、各第4の配線電極9は、第1の配線電極6の重なり部6xと、平面視において重なっていない。よって、第1の配線電極6の重なり部6xから各第4の配線電極9に、熱が伝搬し難い。これにより、並列腕共振子P3の放熱性をより確実に低くすることができる。もっとも、各第4の配線電極9の配置は上記に限定されない。少なくとも1つの第4の配線電極9が、第1の配線電極6の重なり部6xと、平面視において重なっていてもよい。
【0070】
ところで、上記のように、第1の実施形態では、各並列腕共振子は弾性表面波共振子である。弾性表面波共振子同士の共振周波数は、IDT電極の電極指ピッチ及びデューティ比を用いて比較することができる。例えば、弾性表面波共振子同士の電極指の厚みが同じである場合には、電極指ピッチ及びデューティ比の積の逆数が大きい方の弾性表面波共振子の共振周波数が、他方の弾性表面波共振子の共振周波数よりも高い。
【0071】
弾性表面波共振子同士の電極指の厚みが互いに異なる場合には、電極指ピッチ、デューティ比及び電極指の厚みの積の逆数が大きい方の弾性表面波共振子の共振周波数が、他方の弾性表面波共振子の共振周波数よりも高い。
【0072】
第1の実施形態においては、フィルタ装置10における全ての並列腕共振子のうち、図3に示す、並列腕共振子P3のIDT電極における電極指ピッチ、デューティ比及び電極指の厚みの積の逆数が最も大きい。
【0073】
図3に示す圧電性基板2の主面2aには、各直列腕共振子及び各並列腕共振子のIDT電極を覆うように、保護膜が設けられていてもよい。それによって、各直列腕共振子及び各並列腕共振子が破損し難い。保護膜には、適宜の誘電体を用いることができる。
【0074】
保護膜を有する弾性表面波共振子同士の保護膜の厚みが同じである場合には、電極指ピッチ、デューティ比及び電極指の厚みの積の逆数が大きい方の弾性表面波共振子の共振周波数が、他方の弾性表面波共振子の共振周波数よりも高い。
【0075】
図15は、第2の実施形態における第2のパッケージ層の、圧電性基板側の面を示す略図的平面図である。
【0076】
本実施形態は、第1の配線電極36の重なり部36xの幅が、第2の配線電極7の幅よりも狭い点において、第1の実施形態と異なる。本実施形態は、第1の配線電極36の重なり部36xの幅が、第1の配線電極36の重なり部36x以外の部分の幅以下である点においても、第1の実施形態と異なる。より具体的には、本実施形態では、第1の配線電極36の重なり部36xの幅が、第1の配線電極36の重なり部36x以外の部分の幅よりも狭い。上記の点以外においては、本実施形態のフィルタ装置は第1の実施形態のフィルタ装置10と同様の構成を有する。
【0077】
上述したように、配線電極においては、幅が狭いほど電気抵抗は高い。配線電極の電気抵抗が高いほど、該配線電極に電力を印加した場合に生じる熱量は大きい。そして、第1の配線電極36の重なり部36xの幅は、第2の配線電極7の幅よりも狭い。よって、フィルタ装置に電力を印加した際、重なり部36xにおける温度を効果的に高くすることができる。これにより、フィルタ装置の複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子の放熱性を効果的に低くすることができ、電力印加周波数における挿入損失を効果的に小さくすることができる。従って、耐電力性を効果的に高めることができる。
【0078】
加えて、第1の配線電極36の重なり部36xの幅が、第1の配線電極36の重なり部36x以外の部分の幅以下であることにより、重なり部36xにおける電気抵抗を大きくすることができる。これにより、フィルタ装置に電力を印加した際、重なり部36xにおける温度をより確実に、効果的に高めることができる。
【0079】
本実施形態のように、第1の配線電極36の重なり部36xの幅が、第1の配線電極36の重なり部36x以外の部分の幅よりも狭いことが好ましい。なお、第1の配線電極36の重なり部36x以外の部分と、重なり部36xとの境界における幅は、第1の配線電極36の重なり部36x以外の部分の幅には含まれないものとする。上記構成によって、重なり部36xにおける温度をより確実に、より一層高くすることができる。それによって、耐電力性をより確実に、より一層に高めることができる。
【0080】
以下において、本発明に係るフィルタ装置10の形態の例をまとめて記載する。
【0081】
<1>圧電性基板と、前記圧電性基板において構成されている少なくとも1つの直列腕共振子と、前記圧電性基板において構成されている複数の並列腕共振子と、少なくとも、前記圧電性基板に接合されている第1のパッケージ層と、前記第1のパッケージ層に積層されている第2のパッケージ層と、前記第2のパッケージ層に積層されている第3のパッケージ層と、を有するパッケージ基板と、を備え、前記第1のパッケージ層が、前記圧電性基板に接合されている第1の面と、前記第1の面に対向している第2の面と、を有し、前記第2の面に前記第2のパッケージ層が積層されており、前記第1のパッケージ層の前記第1の面または前記第2の面に設けられている配線電極をさらに備え、平面視において、前記圧電性基板が2対の対辺を有し、前記圧電性基板における、1対の前記対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置し、かつ他の1対の前記対辺の間を3等分した領域のうち中央の領域に位置する領域が中央領域であり、前記圧電性基板の前記中央領域に、前記複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子の少なくとも一部が位置しており、前記配線電極が、前記複数の並列腕共振子のうち共振周波数が最も高い並列腕共振子が前記中央領域に位置している部分と、平面視において重なっている、重なり部を有する、フィルタ装置。
【0082】
<2>前記配線電極が、前記第1のパッケージ層の前記第2の面に設けられている、<1>に記載のフィルタ装置。
【0083】
<3>前記配線電極が、直線部と、コーナー部と、を有し、前記直線部の幅が、前記コーナー部の幅よりも狭く、前記配線電極の前記重なり部が前記直線部を含む、<1>または<2>に記載のフィルタ装置。
【0084】
<4>前記配線電極の前記重なり部が前記直線部のみを含む、<3>に記載のフィルタ装置。
【0085】
<5>前記配線電極が第1の配線電極であり、前記パッケージ基板における、前記第2のパッケージ層の前記圧電性基板側の面に設けられている、少なくとも1つの第2の配線電極をさらに備え、前記第1の配線電極の前記重なり部の幅が、前記第2の配線電極の幅よりも狭い、<1>~<4>のいずれか1つに記載のフィルタ装置。
【0086】
<6>前記第1の配線電極の前記重なり部の幅が、前記第1の配線電極における前記重なり部以外の部分の幅以下である、<5>に記載のフィルタ装置。
【0087】
<7>前記配線電極が第1の配線電極であり、前記パッケージ基板における前記第3のパッケージ層の前記圧電性基板側の面に設けられている、少なくとも1つの第3の配線電極をさらに備え、前記第1の配線電極の前記重なり部が、平面視において、前記第3の配線電極と重なっていない、<1>~<6>のいずれか1つに記載のフィルタ装置。
【0088】
<8>前記パッケージ基板が、前記第3のパッケージ層よりも、前記圧電性基板から遠ざかる方向に積層されている、少なくとも1層のパッケージ層をさらに有し、前記パッケージ基板における前記第1のパッケージ層、前記第2のパッケージ層及び前記第3のパッケージ層以外の前記パッケージ層の面のうちいずれかに設けられている、少なくとも1つの第4の配線電極をさらに備え、前記第1の配線電極の前記重なり部が、平面視において、前記第4の配線電極と重なっていない、<7>に記載のフィルタ装置。
【符号の説明】
【0089】
1…弾性波フィルタチップ
2…圧電性基板
2a…主面
2c~2f…第1~第4の辺
3A,3B…第1,第2の信号端子
4…グラウンド端子
5…バンプ
6…第1の配線電極
6a…直線部
6b…コーナー部
6x…重なり部
7~9…第2~4の配線電極
10…フィルタ装置
11…封止樹脂層
12…パッケージ基板
12a~12f…第1~第6のパッケージ層
12x、12y…第1,第2の面
13…実装用電極ランド
14…貫通電極
15…外部接続用電極ランド
16A,16B…反射器
17…IDT電極
18a,18b…第1,第2のバスバー
19a,19b…第1,第2の電極指
26…第1の配線電極
26b…コーナー部
36…第1の配線電極
36x…重なり部
A…交叉領域
C…中央領域
P1~P4…並列腕共振子
S1~S5…直列腕共振子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15